JPWO2013058364A1 - 高分子薄膜構造体及び有機膜の深さ方向の分析方法 - Google Patents

高分子薄膜構造体及び有機膜の深さ方向の分析方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2013058364A1
JPWO2013058364A1 JP2013539703A JP2013539703A JPWO2013058364A1 JP WO2013058364 A1 JPWO2013058364 A1 JP WO2013058364A1 JP 2013539703 A JP2013539703 A JP 2013539703A JP 2013539703 A JP2013539703 A JP 2013539703A JP WO2013058364 A1 JPWO2013058364 A1 JP WO2013058364A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thin film
polymer
depth direction
polymer thin
analysis method
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013539703A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6281283B2 (ja
Inventor
美那 松尾
美那 松尾
雄貴 野原
雄貴 野原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Chemical Corp
Original Assignee
Nissan Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissan Chemical Corp filed Critical Nissan Chemical Corp
Publication of JPWO2013058364A1 publication Critical patent/JPWO2013058364A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6281283B2 publication Critical patent/JP6281283B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N23/00Investigating or analysing materials by the use of wave or particle radiation, e.g. X-rays or neutrons, not covered by groups G01N3/00 – G01N17/00, G01N21/00 or G01N22/00
    • G01N23/22Investigating or analysing materials by the use of wave or particle radiation, e.g. X-rays or neutrons, not covered by groups G01N3/00 – G01N17/00, G01N21/00 or G01N22/00 by measuring secondary emission from the material
    • G01N23/225Investigating or analysing materials by the use of wave or particle radiation, e.g. X-rays or neutrons, not covered by groups G01N3/00 – G01N17/00, G01N21/00 or G01N22/00 by measuring secondary emission from the material using electron or ion
    • G01N23/2255Investigating or analysing materials by the use of wave or particle radiation, e.g. X-rays or neutrons, not covered by groups G01N3/00 – G01N17/00, G01N21/00 or G01N22/00 by measuring secondary emission from the material using electron or ion using incident ion beams, e.g. proton beams
    • G01N23/2258Measuring secondary ion emission, e.g. secondary ion mass spectrometry [SIMS]
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J49/00Particle spectrometers or separator tubes
    • H01J49/02Details
    • H01J49/10Ion sources; Ion guns
    • H01J49/14Ion sources; Ion guns using particle bombardment, e.g. ionisation chambers
    • H01J49/142Ion sources; Ion guns using particle bombardment, e.g. ionisation chambers using a solid target which is not previously vapourised
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2223/00Investigating materials by wave or particle radiation
    • G01N2223/60Specific applications or type of materials
    • G01N2223/61Specific applications or type of materials thin films, coatings
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2223/00Investigating materials by wave or particle radiation
    • G01N2223/60Specific applications or type of materials
    • G01N2223/633Specific applications or type of materials thickness, density, surface weight (unit area)

Landscapes

  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Plasma & Fusion (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Spectroscopy & Molecular Physics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)
  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)

Abstract

2種以上の高分子化合物が含まれる高分子薄膜構造体において、そのうち少なくとも1種を安定同位体で標識し、安定同位体を用いて標識した高分子化合物を含む構造体をその深さ方向に沿ってスパッタイオンによってスパッタリングする工程と、飛行時間型二次イオン質量分析法によって該安定同位体を含む二次イオンの質量スペクトルを取得する工程とを繰り返すことで、該安定同位体を含むフラグメントのデプスプロファイルを得る高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法、及び有機膜の表面に導電性カーボンコーティング層を形成し、カーボンコーティングされた上記有機膜をその深さ方向に沿ってスパッタイオンによってスパッタリングする工程と、飛行時間型二次イオン質量分析法によって上記有機膜中の分析対象物質の二次イオン質量スペクトルを取得する工程とを繰り返すことで、上記分析対象物質のデプスプロファイルを得る有機膜の深さ方向の分析方法を提供する。

Description

本発明は、高分子薄膜構造体及び有機膜の深さ方向の分析方法に関する。詳しくは、高分子薄膜構造体や有機膜の表面近傍に偏在する微量成分の深さ方向の分布状態を飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS:Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)を用いて評価する分析方法に関する。
有機薄膜、高分子薄膜等の機能性材料は材料表面、基板界面での組成、層分離状態等によってその特性が大きく変化する。特に、液晶配向膜、半導体リソグラフィー用反射防止膜、有機EL材料等の機能性有機材料においては、配向特性、リソグラフィー特性、表面撥液性等の特性を付与する添加剤等の材料最表面での組成や内部での分布状態が、その機能発現に大きく関与する。そのため、このような物質の材料表面から深さ方向における分布状態を評価することは、機能性有機材料の開発には必要不可欠である。
従来、こうした情報を取得する場合は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)や透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による断面観察、ラザフォード後方散乱分析法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)やX線反射率法(XRR:X-ray Reflection)による深さ方向の組成分析等が用いられてきた。しかし、これらの分析方法においては、分析対象中に識別因子となるような他の成分と異なる化学結合状態や元素を有していること、更に、こうした識別因子をパーセントオーダーで含有している必要があった。しかし、材料によってはこうした識別因子を有していない、あるいはその量が微量であることから深さ方向の組成や層分離構造を分析するのが非常に困難な場合があった。
また、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)による表面・深さ方向の分析も、薄膜構造体の層分離構造の分析法として用いられている。
XPSでは元素組成分析だけでなく官能基の同定と定量が可能であるが、上記と同様に、パーセントオーダー未満の微量成分や化学シフトを変化させるような特徴的な化学結合状態を含有していない場合には明確な同定・定量が困難であった。このような問題を解決するために、官能基を化学修飾する誘導体化XPS法が報告されている(非特許文献1、2)。この方法によれば、光イオン化断面積の大きいフッ素や塩素等のヘテロ原子を含む試薬を特定の官能基と選択的に反応させ、このヘテロ原子を検出することにより微量成分等の同定・定量を行うことができるとされている。しかしながら、特定の官能基と特異的に反応する標識試薬や反応条件に限りがあるため、誘導体化XPS法により薄膜構造体の深さ方向の分布状態や層構造が分析できる官能基は一部に限られており、必ずしも万能な手法ではなく、また、同一又は類似の官能基を有する化合物同士のブレンド材料では分析が困難であった。
XPSでは、検出可能な深さは5〜10nm程度であり、これより浅い領域の深さ方向の組成分布を評価することは困難であった。このような問題を解決するために、光電子の検出角度を変化させることにより、非破壊で元の試料の化学結合状態を維持したまま極表面領域を段階的に測定する角度分解XPS法(AR−XPS)による深さ方向分析が行われている。また、RBSでは、イオンビーム照射により発生する散乱イオンのエネルギースペクトルを計測することで、表面領域における元素の深さ方向分析が可能である。しかし、XPS、RBSともに材料中に分析対象物質が数%以上含有されていなければ検出することができず、微量成分の分布状態の評価には不向きである。
更に表面・深さ方向の分析方法として、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)も挙げられ、半導体等の無機材料分野で広く用いられてきた。
SIMSは、主に一次イオンの照射量の違いにより、Dynamic−SIMS(D−SIMS)とStatic−SIMS(S−SIMS)に分類される。
D−SIMSは、一次イオンビームの照射によって試料表面をスパッタリングすることで二次イオンを発生させる方法であり、これによって深さ方向の元素組成分析を行うことが可能である。
しかしながら、D−SIMSによる深さ方向分析ではスパッタリングによって分子構造が破壊されるため、元の構造を保ったまま測定するのは困難であった。また、特徴的な分子構造を有していないため他の成分との識別ができない場合もあった。そのため、有機物の分析には適さなかった。
一方、S−SIMSは、パルス状にした少量の一次イオン照射で試料表面の化学構造の情報を持ったフラグメントイオンや分子イオン(二次イオン)を発生させ、質量分析計によってその質量を測定することによって、固体試料の最表面にどのような成分(原子、分子)が存在するかを調べる方法である。
S−SIMSは、主に飛行時間型(TOF:Time of Flight)質量分析装置を用いて行われており(TOF−SIMS)、高感度な質量分析法、表面分析法として生体試料や電子材料分野において広く使われるようになってきた。その理由の一つとして、一次イオン照射量が著しく少ないため、有機化合物は化学構造を保った状態でイオン化され、質量スペクトルから有機化合物の構造を知ることができるという点が挙げられる。このため、TOF−SIMSは有機膜の評価に優れている。
TOF−SIMSでは、試料に照射する一次イオンの量を極力抑えた条件で放出される二次イオンを分析の対象としており、一次イオンの電流密度はD−SIMSに比べて5桁以上も小さい。S−SIMSにおいては、通常、一次イオンのトータルドーズ量は1012ions/cm2以下であって、一次イオンが同じ場所に二度以上当たる確率は極めて低い。このような条件では、固体を構成する原子や分子のイオン化以外に、試料表面に吸着した化合物分子内の比較的弱い結合が切れて脱離を起こす確率が高くなり、原子間結合が保たれたままの分子イオンやフラグメントイオンが生成し、放出される。その結果、TOF−SIMSの測定では元素組成のほかに、D−SIMSでは扱うことのできなかった表面の極めて浅い領域における分子や化学構造に関する情報が得られる。
しかし、TOF−SIMSでは、一次イオンの照射量がD−SIMSに比べて小さく、スパッタ速度が非常に遅いため、原理的に深さ方向の解析が困難であった。
こうした問題の解決法として近年ミクロトーム(特許文献1)やSAICAS(サイカス:ダイプラ・ウィンテス社製)(非特許文献3)を利用した精密斜め切削法により断面を切り出して切削面を測定することで、スパッタすることなく直接深さ方向の情報を取得する手法が提案された。これにより、スパッタによるフラグメント化の影響を受けることなく、目的成分の分子構造を深さ方向で追跡することが可能となった。
その一方で、電子デバイス、センサー、記憶媒体等の材料・素子の研究開発においては、構造の微細化や材質の複合化、高機能化が進み、液晶配向膜や半導体材料等の薄膜化が要求されている。しかし、極薄膜においては、ミクロトームやSAICASによる精密斜め切削法を利用した深さ方向分析は非常に困難である。また、測定表面が直接切刃と接触するため、切刃からの汚染も懸念される。更に、極薄膜ではなく、ある程度の厚みをもった薄膜であっても熟練を要する技術であり、材料の特性によってはμmオーダーの厚さがあっても切断面が波打ち、平滑な切削面が得られない場合も多いという問題がある。
近年、測定用の一次イオンビームとスパッタリング用のスパッタイオンビームを併用したデュアルビーム法を用いることで各イオンビームを個別に最適化できることから、TOF−SIMSによる水平分解能、質量分解能に優れた深さ方向分析が可能となった。
しかし、この場合、D−SIMSと同様にスパッタリングによって分子構造が破壊されるため、元の構造を保ったまま測定するのは困難であるという問題があった。
更に、TOF−SIMSによる深さ方向分析では、スパッタイオンによるエッチング開始直後に二次イオン収率の安定しない遷移領域が存在する。そのため、材料の表面近傍における目的物質の分布状態を評価するのは非常に困難であった。また、帯電しやすい試料であるほど、この遷移領域の幅が広くなり、このことが有機膜の表面近傍での深さ方向分析を困難にしていた。
特開2004−219261号公報
Batich, C.D., Appl. Surf. Sci., vol. 32, pp. 57-73 (1988) Nakayama, Y. et al., J. Polym. Sci. A, Polym. Chem., vol. 26, pp. 559-572 (1988) Itoh, H., J. Surf. Anal., vol. 15, pp. 235-238 (2009)
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高分子薄膜構造体中の構成成分の深さ方向の分布状態や層分離構造を簡便かつ正確に分析する分析方法を提供することを目的とする。また、有機膜の表面近傍に偏在する微量成分の分布状態を簡便かつ正確に分析する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、2種以上の高分子化合物が含まれる高分子薄膜構造体であっても、少なくとも1種の高分子化合物を安定同位体で標識し、標識した高分子化合物を含む高分子薄膜構造体をその深さ方向に沿ってスパッタイオンによってスパッタリングする工程と、飛行時間型二次イオン質量分析法によって該安定同位体を含む二次イオンの質量スペクトルを取得する工程とを繰り返して該安定同位体を含むフラグメントのデプスプロファイルを得ることによって、高分子薄膜構造体中の構成成分の深さ方向の分布状態や層分離状態を簡便かつ正確に分析することができることを見出した。
更に、本発明者らは、有機膜の表面に導電性カーボンコーティング層を形成し、カーボンコーティングされた上記有機膜をその深さ方向に沿ってスパッタイオンによってスパッタリングする工程と、飛行時間型二次イオン質量分析法によって上記有機膜中の分析対象物質の二次イオン質量スペクトルを取得する工程とを繰り返して上記分析対象物質のデプスプロファイルを得ることで、有機膜の表面近傍での微量成分の分布状態を簡便かつ正確に分析することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1.高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法であって、
上記高分子薄膜構造体の厚さが10〜500nmであり、上記高分子薄膜構造体中には2種以上の高分子化合物が含まれ、そのうち少なくとも1種を安定同位体で標識し、
安定同位体を用いて標識した高分子化合物を含む構造体をその深さ方向に沿ってスパッタイオンによってスパッタリングする工程と、飛行時間型二次イオン質量分析法によって該安定同位体を含む二次イオンの質量スペクトルを取得する工程とを繰り返すことで、該安定同位体を含むフラグメントのデプスプロファイルを得ることを特徴とする高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法、
2.上記高分子薄膜構造体の厚さが10〜200nmである1の高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法、
3.上記2種以上の高分子化合物に含まれる連結基が、互いに同一である1又は2の高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法、
4.上記高分子薄膜構造体が2種以上の高分子化合物を含む高分子ブレンド薄膜を備える1〜3のいずれかの高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法、
5.上記高分子薄膜構造体が2層以上の多層構造である1〜4のいずれかの高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法、
6.上記安定同位体が、重水素、炭素13、窒素15、酸素17、酸素18、ケイ素29、ケイ素30、硫黄33及び硫黄36から選ばれる1〜5のいずれかの高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法、
7.有機膜の表面に導電性カーボンコーティング層を形成し、
カーボンコーティングされた上記有機膜をその深さ方向に沿ってスパッタイオンによってスパッタリングする工程と、飛行時間型二次イオン質量分析法によって上記有機膜中の分析対象物質の二次イオン質量スペクトルを取得する工程とを繰り返すことで、上記分析対象物質のデプスプロファイルを得ることを特徴とする有機膜の深さ方向の分析方法、
8.上記導電性カーボンコーティング層が、物理気相成長法又は化学気相成長法によって形成される7の分析方法、
9.上記導電性カーボンコーティング層が、真空蒸着法によって形成される8の分析方法、
10.蒸着の際の真空度が、0.5〜10Paである9の分析方法、
11.上記導電性カーボンコーティング層の厚さが5〜50nmである7〜10のいずれかの分析方法
を提供する。
本発明の高分子薄膜構造体の分析方法によれば、高分子薄膜構造体中の構成成分の深さ方向の分布状態や層分離構造を簡便かつ正確に分析することができる。本発明の分析方法は、厚さが薄い高分子薄膜構造体に対しても適用することができる。また、ポリマーを2種以上ブレンドした高分子ブレンド薄膜を備える構造体中の構成成分の深さ方向の分布状態や層分離構造の分析方法として好適である。
本発明の高分子薄膜構造体の分析方法は、従来の分析方法のように、分析対象物質が他の成分と異なる化学結合状態や元素を有しており、かつ、こうした識別因子となる元素をパーセントオーダーで含有している高分子薄膜構造体であること、又はミクロトームやSAICASによる精密斜め切削が可能な厚さ及び物理特性を有している高分子薄膜構造体であることに限定されず、種々の高分子薄膜構造体に対して適用可能であるため、液晶配向膜等の高分子薄膜構造体に関するより高度な情報を提供し得る。
また、本発明の有機膜の分析方法によれば、有機膜表面に導電性カーボンコーティング層を形成することで、上記コーティング層を二次イオン収率の安定しない遷移領域とすることができ、コーティング層下にある有機膜の表面近傍における分析対象物質の深さ方向の分布を遷移領域の影響を受けずに分析することが可能となる。また、導電性カーボンコーティング層は、試料の帯電を抑える効果もある。
実施例及び比較例で用いた2層分離構造モデル試料の断面図である。 実施例1で用いた2層分離構造モデル試料のデプスプロファイルである。 比較例1で用いた2層分離構造モデル試料のデプスプロファイルである。 実施例2で用いた2層分離構造モデル試料のデプスプロファイルである。 実施例3で用いたカーボンコーティングを施した試料の断面図である。 実施例3のカーボンコーティングを施した試料のTOF−SIMSによるデプスプロファイルである。 比較例3のカーボンコーティングを施さない試料のTOF−SIMSによるデプスプロファイルである。
本発明の高分子薄膜構造体の分析方法において、分析対象となる高分子薄膜構造体の厚さは、他の手法で分析が困難とされる10〜500nmであるが、500nmを超えても数μmまでの厚さであれば分析は可能である。本発明の分析方法によれば、分析対象となる高分子薄膜構造体の厚さが10〜200nm、10〜150nm、更には10〜100nmといった特に薄いものであっても分析することが可能である。
上記高分子薄膜構造体は、2種以上の高分子化合物を含むものである。本発明の分析方法によれば、高分子薄膜構造体に含まれる高分子化合物が、互いに同一の化学結合、構造又は元素を有する場合であっても、少なくとも1種の高分子化合物を安定同位体を用いて標識することによって、互いに識別して分析することが可能である。例えば、互いにアミド結合、エステル結合等の同一の連結基を有する高分子化合物であっても識別して分析することが可能である。
本発明の分析方法によれば、特定の化学結合、構造又は元素を有する高分子化合物に限定されず、様々な高分子化合物を分析対象とすることができる。
上記高分子薄膜構造体は、2種以上の高分子化合物を含む高分子ブレンド薄膜を備えるものであってもよい。また、上記高分子薄膜構造体は2層以上の多層構造となっていてもよい。
高分子化合物の標識に用いる安定同位体は、特に限定されないが、例えば、重水素(2H(D))、炭素13(13C)、窒素15(15N)、酸素17(17O)、酸素18(18O)、ケイ素29(29Si)、ケイ素30(30Si)、硫黄33(33S)、硫黄36(36S)等が挙げられる。上記高分子化合物は、1種又は2種以上の安定同位体を使用して標識することができる。
安定同位体の使用量は、検出器の感度、質量分解能、使用する安定同位体の天然存在比等を考慮して決定すればよい。
上記安定同位体の導入は分析対象物質の構成原子のうち、重合反応、縮合反応等により損失し得る原子ではなく、生成するポリマー骨格内に確実に残存する原子、例えばポリイミド中のイミド結合を形成する窒素原子や主骨格の炭素を安定同位体の置換の対象とすることが好ましい。
高分子化合物を安定同位体で標識する方法は、従来公知の方法でよい。例えば、単量体を安定同位体で標識した後、該標識した単量体を用いて高分子化合物を合成してもよく、安定同位体で標識した架橋剤や重合開始剤を用いて高分子化合物を合成してもよい。また、高分子化合物を重水素で標識する場合は、上記方法のほか、重水素交換反応によって標識してもよい。
本発明においては、安定同位体を用いて標識した高分子化合物を含む構造体をその深さ方向に沿ってスパッタイオンによってスパッタリングする工程と、TOF−SIMSによって該安定同位体を含む二次イオンの質量スペクトルを取得する工程とを繰り返すことで、該安定同位体を含むフラグメントのデプスプロファイルを得る。
高分子薄膜構造体をスパッタリングする際に用いるスパッタイオンとしては、一般的には数百eVから数keV程度に加速されたCs+、O2 +、Ar+、C60 +等が用いられる。特に、有機物では負イオンの生成が多いため、負イオン化率増大効果のあるCs+が好ましい。更に、高分子材料に対するダメージの少ない低加速(200eVから500eV)のCs+等がより好ましい。ただし、目的イオンが正イオンの場合はこの限りではない。
高分子薄膜構造体を分析対象とする場合、TOF−SIMSで用いる一次イオンは、一般的には数keVから数十keV程度に加速されたGa+、Aun m+、Bin m+、Ar+、C60 +等が用いられる。特にポリイミドなどの有機物の分析にはクラスターイオン源であるAun m+、Bin m+、C60 +等が好ましい。特に、Biイオン源は高感度の3量体(Bi3)がより好ましい。
上述したスパッタリングとTOF−SIMS測定を繰り返すことで、高分子薄膜構造体における構成成分の深さ方向の分布状態を簡便かつ正確に分析することができる。
また、本発明の有機膜の分析方法は、有機膜の表面に導電性カーボンコーティング層を形成し、カーボンコーティングされた上記有機膜をその深さ方向に沿ってスパッタイオンによってスパッタリングする工程と、飛行時間型二次イオン質量分析法によって上記有機膜中の分析対象物質の二次イオン質量スペクトルを取得する工程とを繰り返すことで、上記分析対象物質のデプスプロファイルを得ることを特徴とする有機膜の深さ方向の分析方法である。
上記カーボンコーティング層を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長法、熱CVD、プラズマCVD等の化学気相成長法等の方法が挙げられる。これらのうち、特に、真空蒸着法が好ましい。
真空蒸着法でカーボンコーティング層を形成する場合は、カーボンコーターや真空蒸着装置を用いて形成することができる。上記カーボンコーターとしては、非導電性試料を走査電子顕微鏡(SEM)や電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)等の荷電粒子線装置を用いて観察や分析を行なう際の試料の前処理に用いられるものと同様のものを用いることができる。そのため、特別な前準備や熟練を要する技術ではなく、容易に短時間で前処理を行うことができる。
蒸着の際の真空度は0.5〜10Paが好ましく、0.5〜2Paがより好ましい。
蒸着時間は、目的の厚さを得るために適宜設定すればよい。
上記カーボンコーティング層の厚さは、分析初期に発生する二次イオン収率の不安定な遷移領域の厚さに相当するものであればよい。具体的には、5nm以上が好ましい。厚さの上限は特に規定されないが、測定時間の短縮及びカーボンコーティング層形成による熱ダメージを抑えるためには、可能な限り薄い方が好ましい。そのためには、厚さは50nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、20nm以下が更に好ましく、10nm以下が特に好ましい。しかし、TOF−SIMS測定によるスパッタレートが速い場合にはこの限りではない。
上記カーボンコーティング層を形成するためのカーボン源としては、特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト(黒鉛)、カーボンブラック、活性炭等が挙げられ、中でもグラファイト(黒鉛)が好ましい。また、その形状も、特に限定されるものではなく、粉末状、粒状、繊維状、芯状等の各種形状を採用できるが、中でも繊維状および芯状が好ましい。繊維状および芯状のカーボンの直径については、5〜10μmのものが好ましい。カーボンの純度は、99.9%以上が好ましく、99.99%以上がより好ましい。
本発明の分析対象となる有機膜は特に限定されないが、上記方法でカーボンコーティング層を形成中は試料に輻射熱がかかるため、熱に弱い試料やガスを発生しやすい試料には適さない。しかし、輻射熱は室温より数十℃高い程度と想定されるため、試料冷却機構を備えた装置を用いれば多くの有機膜に適用可能である。
有機膜をスパッタリングする際に用いるスパッタイオンは、一般的には数百eVから数keV程度に加速されたCs+、O2 +、Ar+、C60 +等が用いられる。特に、有機物では負イオンの生成が多いため、負イオン化率増大効果のあるCs+が好ましい。特に、有機物へのダメージの少ない低加速(200eVから500eV)のCs+等がより好ましい。ただし、目的イオンが正イオンの場合はこの限りではない。
有機膜を対象とする場合、TOF−SIMSで用いる一次イオンは、一般的には数keVから数十keV程度に加速されたGa+、Aun m+、Bin m+、Ar+、C60 +等が用いられる。特に有機物の分析にはクラスターイオン源であるAun m+、Bin m+、C60 +等が好ましい。特に、Biイオン源は高感度の3量体(Bi3)がより好ましい。
なお、分析対象物質が他の構成成分と同一の化学結合や元素を有している場合は、スパッタリングによって生成する二次イオンが同一の構造となることがあるため、分析対象物質由来の二次イオンを特定できないことがある。
上記問題を解決する方法としては、例えば、分析対象物質を安定同位体で標識する方法が挙げられる。これによって、分析対象物質由来の二次イオンを特定することが可能となる。
標識に用いる安定同位体は、特に限定されないが、例えば、重水素(2H(D))、炭素13(13C)、窒素15(15N)、酸素17(17O)、酸素18(18O)、ケイ素29(29Si)、ケイ素30(30Si)、硫黄33(33S)、硫黄36(36S)等が挙げられる。上記分析対象物質は、1種又は2種以上の安定同位体を使用して標識することができる。
安定同位体の使用量は、検出器の感度、質量分解能、使用する安定同位体の天然存在比等を考慮して決定すればよい。
分析対象物質を安定同位体で標識する方法は、従来公知の方法でよい。
上述した方法によって、有機膜における表面近傍の深さ方向の分布状態を簡便かつ正確に分析することが可能となる。本発明の分析方法は、特に、材料表面から10nm程度の表面近傍における深さ方向の分布状態の分析に好適である。
以下、調製例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、組成比(モル比)は仕込み比から算出した。
[調製例1]薄膜形成用組成物Aの調製
20mL四口フラスコにジアミン成分として、15Nで標識されたp−フェニレンジアミン(p−PDA−15N、Aldrich製)0.243g(2.25mmol)、4−オクタデシルオキシ−1,3−ジアミノベンゼン(APC18)0.094g(0.25mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)3.70g、γ−ブチロラクトン(GBL)3.70gを加え、約10℃に冷却し、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)0.485g(2.50mmol)を加え、室温に戻し窒素雰囲気下24時間反応させ、ポリアミック酸(ポリマーA)の濃度10質量%の溶液を得た。ポリマーA中の各構成単位の組成比は、CBDA:p−PDA−15N:APC18=1.0:0.9:0.1であった。
上記ポリマーA溶液8.22gを50mL三角フラスコに移し、GBL2.74g及びブチルセロソルブ(BC)2.74gを加えて希釈し、ポリマーAが6質量%、GBLが47質量%、NMPが27質量%、BCが20質量%の薄膜形成用組成物Aを調製した。
[調製例2]薄膜形成用組成物A’の調製
p−PDA−15Nの代わりに15Nで標識されていないp−PDAを用いた以外は調製例1と同じ方法でポリマーA’を合成し、薄膜形成用組成物A’を調製した。ポリマーA’中の各構成単位の組成比は、CBDA:p−PDA:APC18=1.0:0.9:0.1であった。
[調製例3]薄膜形成用組成物Bの調製
30mL四口フラスコにジアミン成分として、4,4’−ジアミノジフェニルアミン(DADPA)0.996g(5.00mol)、NMP8.23g、GBL8.23gを加え、約10℃に冷却し、CBDA0.902g(4.60mmol)を加え、室温に戻し窒素雰囲気下24時間反応させ、ポリアミック酸(ポリマーB)の濃度10質量%の溶液を得た。ポリマーB中の各構成単位の組成比は、CBDA:DADPA=1.0:1.0であった。
上記ポリマーB溶液15gを50mL三角フラスコに移し、GBL5.00g及びBC5.00gを加えて希釈し、ポリマーBが6質量%、GBLが47質量%、NMPが27質量%、BCが20質量%の薄膜形成用組成物Bを調製した。
[調製例4]モデル試料の作製
図1に、作製した2層分離構造モデル試料の断面図を示す。まず、ITO基板3上に上記薄膜形成用組成物Bをスピンコート法によって塗布し、下記成膜条件にしたがってポリマーB層2を形成した。成膜後、ポリマーB層2上に上記薄膜形成用組成物Aをスピンコート法によって塗布し、下記成膜条件にしたがってポリマーA層1を形成し、実施例1用の2層分離構造のモデル試料を作製した。
また、上記薄膜形成用組成物A’を用いてポリマーA’層1を形成した以外は上記方法と同じ方法で比較例1用の2層分離構造モデル試料を作製した。
成膜条件:一層目(ポリマーB層)予備乾燥70℃、70sec、焼成250℃、10min、膜厚120nm、
二層目(ポリマーA(A’)層)焼成250℃、10min、膜厚120nm(膜厚合計240nm)
[実施例1、比較例1]
調製例4で作製した2層分離構造モデル試料に対し、ION TOF社製TOF−SIMS5を用いて深さ方向にスパッタイオンによるスパッタリングを行い、その後、一次イオンを照射して試料から放出される安定同位体を含む二次イオンのTOF−SIMSスペクトルを負イオンモードで取得した。一次イオンとしてビスマス三量体クラスターの2価の正イオンを用い、スパッタイオンとしてセシウムの正イオンを用いた。また、スパッタリング面積は300μm×300μmとし、スパッタ分析面積は100μm×100μmとした。スパッタリングとTOF−SIMS測定を繰り返すことで、試料表面から深さ方向への安定同位体によるフラグメントイオンの分布を評価した。
そして、スパッタ時間を横軸に、当該スパッタ時間における二次イオンの検出強度を縦軸にとって測定値をプロットし、スパッタ時間と二次イオン強度との関係をグラフ化することによりデプスプロファイルを取得し、2層分離構造を評価した。なお、TOF−SIMSの測定条件は以下のとおりである。
一次イオン:25keV Bi3 2+、0.2pA(パルス電流値)、ランダムスキャンモード
一次イオンスキャン範囲(測定領域):100μm×100μm
一次イオンのパルス周波数:10kHz(100μs/shot)
一次イオンのビーム径:約5μm
二次イオン検出モード:negative
スキャン数:1scan/cycle
(帯電補正としてフラットガンを使用)
<スパッタリング条件>
スパッタイオン:Cs+(35nA、500eV)
スパッタリング領域:300μm×300μm
実施例1であるポリマーAを用いたモデル試料の結果を図2に、比較例1であるポリマーA’を用いたモデル試料の結果を図3に示す。
図2に示されるように、安定同位体を導入したポリマーAを用いた2層分離構造のモデル試料の場合、ポリマーA層とポリマーB層の境界が可視化され、2層分離構造を分析できた。
一方、図3に示されるように、安定同位体を導入していないポリマーA’を用いた2層分離構造のモデル試料の場合、ポリマーA’層とポリマーB層の境界を把握できなかった。
次に、本発明の実施例1で示したモデル試料よりも薄い構造体に本発明の手法を適用した別の実施態様について以下に説明する。
[調製例5]ポリマーCの調製
20mL四口フラスコにジアミン成分として、p−PDA−15N(Aldrich製)0.243g(2.25mmol)、APC18を0.094g(0.25mmol)、NMP4.35gを加え、約10℃に冷却し、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物(TDA)0.750g(2.50mmol)を加え、窒素雰囲気下、40℃で16時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−1)の濃度20質量%の溶液を得た。
上記PAA−1溶液5.44gに、NMP12.69gを加えて希釈し、無水酢酸0.57g及びピリジン0.24gを加え、50℃で3時間反応させた。この反応溶液を室温程度まで冷却後、約10℃に冷やしたメタノール70mL中に攪拌しながらゆっくり注ぎ、固体を析出させた。沈殿した固体を回収し、更に70mLのメタノールで2回分散洗浄し、100℃で減圧乾燥することで、ポリイミド(ポリマーC)の白色粉末を得た。ポリマーC中の各構成単位の組成比は、TDA:p−PDA−15N:APC18=1.0:0.9:0.1であった。
[調製例6]モデル試料の作製
1gの上記ポリマーCをGBL12.00gとBC2.22gとの混合溶媒に溶解し、薄膜形成用組成物Cを調製した。
図1(実施例1と同じ形態)に、作製した2層分離構造モデル試料の断面図を示す。まず、ITO基板3上に上記薄膜形成用組成物Bをスピンコート法によって塗布し、下記成膜条件にしたがってポリマーB層2を形成した。成膜後、ポリマーB層上に上記薄膜形成用組成物Cをスピンコート法によって塗布し、下記成膜条件にしたがってポリマーC層1を形成し、実施例2用の2層分離構造のモデル試料を作製した。
成膜条件:一層目(ポリマーB層)予備乾燥70℃、70sec、焼成250℃、10min、膜厚60nm、
二層目(ポリマーC層)焼成250℃、10min、膜厚60nm
(膜厚合計120nm)
[実施例2、比較例2]
調製例6で作製した2層分離構造モデル試料に対し、実施例1と同様に試料表面から深さ方向への安定同位体によるフラグメントイオンの分布を評価した。ただし、スパッタリング面積は200μm×200μmとし、スパッタ分析面積は60μm×60μmとした。TOF−SIMSの測定条件は以下のとおりである。
一次イオン:25keV Bi3 2+、0.2pA(パルス電流値)、ランダムスキャンモード
一次イオンスキャン範囲(測定領域):60μm×60μm
一次イオンのパルス周波数:10kHz(100μs/shot)
一次イオンのビーム径:約5μm
二次イオン検出モード:negative
スキャン数:1scan/cycle
(帯電補正としてフラットガン及び酸素ガス(真空度:1.0×10-6mbar)を使用)
<スパッタリング条件>
スパッタイオン:Cs+(20nA、500eV)
スパッタリング領域:200μm×200μm
実施例2であるポリマーCを用いたモデル試料の結果を図4に示す。
図4に示したように、安定同位体を導入したポリマーCを用いた2層分離構造のモデル試料の場合でもポリマーC層とポリマーB層の境界が可視化され、2層分離構造を分析できた。
これより、本発明の方法は、膜厚120nm程度の極薄膜構造体の層分離構造を分析するのにも適していることが証明された。
[調製例7]オリゴアニリン化合物の合成
国際公開第2008/129947号に記載の方法にしたがって、下記式(1)で表されるオリゴアニリン化合物を合成した。
Figure 2013058364
[調製例8]電荷受容性ドーパントの合成
国際公開第2006/025342号に記載の方法にしたがって、下記式(2)で表される電荷受容性ドーパントを合成した。
Figure 2013058364
[調製例9]有機膜形成用材料の調製
式(1)で示されるオリゴアニリン化合物と式(2)で示される電荷受容性ドーパントとを1:1のモル比で、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)とシクロヘキサノールとの混合溶媒(組成比=2:4(質量比))に、固形分濃度3質量%になるように溶解し、更にその固形分に対して10質量%のトリフルオロプロピルトリメトキシシラン及びフェニルトリメトキシシラン(ともに信越シリコーン(株)製)(質量比1:2)を添加して有機膜形成用材料を調製した。
[調製例10]分析用モデル試料の作製
図1に示すように、調製例3で調製した有機膜形成用材料をITO基板3上にスピンコート法によって塗布し、220℃で15分間加熱処理して有機膜2を形成した。上記有機膜2の厚さは50nmとした。
更に、メイワフォーシス(株)製の親水化処理機能付カーボンコーター(CADE−E)を用いて、真空度0.5〜1Pa、プリヒート時間5秒、蒸着時間1.8秒の条件で、真空蒸着法によって有機膜2の表面にカーボンコーティング層1(厚さ約35nm)を形成し、実施例用の試料とした。なお、カーボン源として黒鉛繊維(メイワフォーシス(株)製、高純度分析用カーボンファイバー(商品名))を用いた。また、カーボンコーティングを施さない試料を比較例用とした。
[実施例3、比較例3]
ION TOF社製TOF−SIMS5を用いて、実施例用と比較例用のモデル試料に対し、それぞれ深さ方向にスパッタリングイオンによるスパッタリングを行い、その後、一次イオンを照射して試料から放出される分析対象物質(シラン添加剤)由来の二次イオンのTOF−SIMSスペクトルを、負イオンモードで取得した。一次イオンとしてビスマス三量体クラスターの2価の正イオンを用い、スパッタイオンとしてセシウムの正イオンを用いた。また、スパッタリング面積は200μm×200μmとし、スパッタ分析面積は50μm×50μmとした。スパッタリングとTOF−SIMS測定を繰り返すことで、シラン添加剤由来のフラグメントイオンの試料表面から深さ方向の分布を評価した。実施例及び比較例におけるTOF−SIMSの測定条件を以下に示す。
一次イオン:25keV Bi3 2+、0.2pA(パルス電流値)、ランダムスキャンモード
一次イオンスキャン範囲(測定領域):50μm×50μm
一次イオンのパルス周波数:10kHz(100μs/shot)
一次イオンのビーム径:約5μm
二次イオン検出モード:negative
スキャン数:1scan/cycle
(帯電補正としてフラットガンを使用)
<スパッタリング条件>
スパッタリングイオン:Cs+(35nA、500eV)
スパッタリング領域:200μm×200μm
スパッタ時間を横軸に、当該スパッタ時間における二次イオンの検出強度を縦軸にとって測定値をプロットし、スパッタ時間と二次イオン強度との関係をグラフ化することによってデプスプロファイルを取得し、シラン添加剤の膜内分布を評価した。実施例3の結果を図6に、比較例3の結果を図7に示す。
図6及び図7において、横軸(スパッタ時間)は試料表面からの深度を表し、縦軸(検出強度)は各イオンの濃度を表す。図6から明らかなように、シラン添加剤の構成原子であるSiに着目することで、有機膜におけるシラン添加剤の表面偏在状態を分析することができた。
1 ポリマーA(A’)又はポリマーC層
2 ポリマーB層
3 ITO基板
4 カーボンコーティング層
5 有機膜
6 ITO基板

Claims (11)

  1. 高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法であって、
    上記高分子薄膜構造体の厚さが10〜500nmであり、上記高分子薄膜構造体中には2種以上の高分子化合物が含まれ、そのうち少なくとも1種を安定同位体で標識し、
    安定同位体を用いて標識した高分子化合物を含む構造体をその深さ方向に沿ってスパッタイオンによってスパッタリングする工程と、飛行時間型二次イオン質量分析法によって該安定同位体を含む二次イオンの質量スペクトルを取得する工程とを繰り返すことで、該安定同位体を含むフラグメントのデプスプロファイルを得ることを特徴とする高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法。
  2. 上記高分子薄膜構造体の厚さが10〜200nmである請求項1記載の高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法。
  3. 上記2種以上の高分子化合物に含まれる連結基が、互いに同一である請求項1又は2記載の高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法。
  4. 上記高分子薄膜構造体が2種以上の高分子化合物を含む高分子ブレンド薄膜を備える請求項1〜3のいずれか1項記載の高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法。
  5. 上記高分子薄膜構造体が2層以上の多層構造である請求項1〜4のいずれか1項記載の高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法。
  6. 上記安定同位体が、重水素、炭素13、窒素15、酸素17、酸素18、ケイ素29、ケイ素30、硫黄33及び硫黄36から選ばれる請求項1〜5のいずれか1項記載の高分子薄膜構造体の深さ方向の分析方法。
  7. 有機膜の表面に導電性カーボンコーティング層を形成し、
    カーボンコーティングされた上記有機膜をその深さ方向に沿ってスパッタイオンによってスパッタリングする工程と、飛行時間型二次イオン質量分析法によって上記有機膜中の分析対象物質の二次イオン質量スペクトルを取得する工程とを繰り返すことで、上記分析対象物質のデプスプロファイルを得ることを特徴とする有機膜の深さ方向の分析方法。
  8. 上記導電性カーボンコーティング層が、物理気相成長法又は化学気相成長法によって形成される請求項7記載の分析方法。
  9. 上記導電性カーボンコーティング層が、真空蒸着法によって形成される請求項8記載の分析方法。
  10. 蒸着の際の真空度が、0.5〜10Paである請求項9記載の分析方法。
  11. 上記導電性カーボンコーティング層の厚さが5〜50nmである請求項7〜10のいずれか1項記載の分析方法。
JP2013539703A 2011-10-21 2012-10-19 高分子薄膜構造体及び有機膜の深さ方向の分析方法 Active JP6281283B2 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011231663 2011-10-21
JP2011231655 2011-10-21
JP2011231663 2011-10-21
JP2011231655 2011-10-21
PCT/JP2012/077109 WO2013058364A1 (ja) 2011-10-21 2012-10-19 高分子薄膜構造体及び有機膜の深さ方向の分析方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2013058364A1 true JPWO2013058364A1 (ja) 2015-04-02
JP6281283B2 JP6281283B2 (ja) 2018-02-21

Family

ID=48141007

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013539703A Active JP6281283B2 (ja) 2011-10-21 2012-10-19 高分子薄膜構造体及び有機膜の深さ方向の分析方法

Country Status (4)

Country Link
JP (1) JP6281283B2 (ja)
KR (1) KR102006348B1 (ja)
TW (1) TWI640769B (ja)
WO (1) WO2013058364A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP3587482A1 (en) * 2018-06-25 2020-01-01 INTA, Instituto Nacional de Technica Aeroespacial Isotopically labelled materials for degradation detection
CN115235861A (zh) * 2022-08-25 2022-10-25 胜科纳米(苏州)股份有限公司 一种用于飞行时间二次离子质谱分析的超薄有机膜层的制样及分析方法

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06249805A (ja) * 1993-03-01 1994-09-09 Nissin Electric Co Ltd 表面分析方法
JP2005178371A (ja) * 2003-11-27 2005-07-07 Mitsubishi Plastics Ind Ltd ガスバリア性フィルム
US20070071982A1 (en) * 2003-11-27 2007-03-29 Mitsubishi Plastics, Inc. Gas barrier film

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004219261A (ja) 2003-01-15 2004-08-05 Fuji Photo Film Co Ltd 薄膜の解析方法
JP5142580B2 (ja) * 2006-06-29 2013-02-13 キヤノン株式会社 表面解析方法および表面解析装置

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06249805A (ja) * 1993-03-01 1994-09-09 Nissin Electric Co Ltd 表面分析方法
JP2005178371A (ja) * 2003-11-27 2005-07-07 Mitsubishi Plastics Ind Ltd ガスバリア性フィルム
US20070071982A1 (en) * 2003-11-27 2007-03-29 Mitsubishi Plastics, Inc. Gas barrier film

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
HARTON S E ET AL: "Carbon-13 Labeled Polymers: An Alternative Tracer for Depth Profiling of Polymer Films and Multilaye", ANALYTICAL CHEMISTRY, vol. 78, no. 10, JPN6012063811, 15 May 2006 (2006-05-15), pages Page.3452-3460 *
HARTON S E ET AL: "Carbon-13 Labeling for Quantitative Analysis of Molecular Movement in Heterogeneous Organic Material", ANALYTICAL CHEMISTRY, vol. 79, no. 14, JPN6012063812, 15 July 2007 (2007-07-15), pages Page.5358-5363 *
HU X ET AL: "Dynamics of Polymers in Organosilicate Nanocomposites", MACROMOLECULES, vol. vol.36,No.3 , JPN6017007705, 2003, pages Page.823-829 *

Also Published As

Publication number Publication date
KR102006348B1 (ko) 2019-08-01
KR20140090207A (ko) 2014-07-16
JP6281283B2 (ja) 2018-02-21
TWI640769B (zh) 2018-11-11
WO2013058364A1 (ja) 2013-04-25
TW201331579A (zh) 2013-08-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9905408B2 (en) Sample plate using MALDI-TOF mass spectrometer and manufacturing method of the sample plate
Ràfols et al. Assessing the potential of sputtered gold nanolayers in mass spectrometry imaging for metabolomics applications
WO2007145232A1 (ja) 二次イオン質量分析方法及びイメージング方法
Weidner et al. Imaging mass spectrometry for examining localization of polymeric composition in matrix‐assisted laser desorption/ionization samples
Hanton et al. Imaging the morphology of solvent-free prepared MALDI samples
JP6281283B2 (ja) 高分子薄膜構造体及び有機膜の深さ方向の分析方法
Cristaudo et al. Ion yield enhancement at the organic/inorganic interface in SIMS analysis using Ar-GCIB
Prysiazhnyi et al. Silver nanoparticles for solvent-free detection of small molecules and mass-to-charge calibration of laser desorption/ionization mass spectrometry
Kratochvíl et al. Gas aggregated Ag nanoparticles as the inorganic matrix for laser desorption/ionization mass spectrometry
Lagator et al. Sensitivity enhancement using chemically reactive gas cluster ion beams in secondary ion mass spectrometry (SIMS)
Norrman et al. Photodegradation of poly (ether sulphone) Part 1. A time‐of‐flight secondary ion mass spectrometry study
Kulkarni et al. The effects of molecular weight distribution and sample preparation on matrix‐assisted laser desorption/ionization time‐of‐flight mass spectrometric analysis of petroleum macromolecules
Woldegiorgis et al. Matrix‐assisted and polymer‐assisted laser desorption/ionization time‐of‐flight mass spectrometric analysis of low molecular weight polystyrenes and polyethylene glycols
Soltwisch et al. A binary matrix of 2, 5‐dihydroxybenzoic acid and glycerol produces homogenous sample preparations for matrix‐assisted laser desorption/ionization mass spectrometry
Amato et al. Laser desorption ionisation quadrupole ion trap time‐of‐flight mass spectrometry of titanium‐carbon thin films
Mouhib et al. Organic ion yield enhancement in secondary ion mass spectrometry using water vapour injection
KR102062447B1 (ko) 그래핀을 이용한 maldi 질량 분석 플레이트 및 이를 이용하는 질량 분석 방법
Michałowski Probing a chemical state during ultra low impact energy secondary ion mass spectrometry depth profiling
KR101761484B1 (ko) 말디-질량분석용 유기 매트릭스 용액의 제조 방법 및 이에 의해 제조된 유기 매트릭스
US8450684B2 (en) Quantification method of functional groups of organic layer
Miksa et al. Application of parylene for surface (polymer) enhanced laser desorption/ionization of synthetic polymers
WO2017221846A1 (ja) 物理構造の評価方法
Yang et al. Techniques for analysing biomaterial surface chemistry
Green et al. Analysis of thin films and molecular orientation using cluster SIMS
Naujokas et al. Fluoride ions at the Cu–fluoropolymer interface

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151008

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160621

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20160818

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170314

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20170511

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170710

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171226

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180108

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6281283

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350