JPWO2011148564A1 - カートリッジ式ディスペンサー - Google Patents

Abstract

ピストンがカートリッジ本体から簡単に脱落せず、なおかつスムーズな作動のもとで内容物を注出できる粘性材料の注出に適したカートリッジ式ディスペンサーを提案する。内容物の充填空間Ｍを有しその先端に注出ノズル１ａを備えた本体１と、該本体１の充填空間Ｍ内で摺動可能に配置され、押し込み力の付加によって該充填空間Ｍ内の内容物を注出ノズル１ａの先端より押し出すピストン２とを備えたカートリッジ式ディスペンサーにおいて、ピストン２を、本体１の内周壁に沿う外周壁を有し該本体の内周壁との相互間にて隙間を隔てて配置される胴体部２ａと、この胴体部２ａの一端に設けられ充填空間Ｍ内の内容物に直接接触する先端壁部２ｂと、該胴体部２ａのもう一端に設けられ、押し込み冶具のロッドを押し当ててピストン２そのものに押し込み力を付加する後端壁部２ｃからなるものにて構成する。そして、胴体部２ａの外周壁に、該本体１の内周壁に当接し、該当接部位をピストン２の摺動部とするが該本体の内部を封鎖しない突起３を設ける。

Description

本発明は、歯科診療等において使用される充填材の如き粘性材料を注出するのに好適なカートリッジ式ディスペンサーに関するものであり、内容物を押し出すピストンの本体からの脱落を防止しつつもそのスムーズな作動を実現しようとするものである。

歯科診療等においては、充填材や接着材等、粘性の高いペースト状の材料が頻繁に使用されており、通常は、シリンジ本体内に組み込まれたプランジャーに押し込み力を付加して該プランジャーをシリンジ本体内でスライドさせ、内容物をノズルから押し出す注射器タイプのディスペンサーや、カートリッジ本体（以下、単に「本体」と表示）内にピストンを配置し、別途に用意した押し込み冶具（トリガー式押し込み冶具）に該本体を装着してピストンを押し込んで内容物を注出するカートリッジ式のディスペンサーが使用されている（例えば特許文献１参照）。

とくに、カートリッジ式のディスペンサーは、本体内に充填された内容物を一回の治療で使い切るタイプのものであり、充填材の品質確保、衛生面の観点から、近年ではこの種のディスペンサーが多用されているが、ディスペンサーを構成するピストンや本体には成形精度にばらつき等があるため、ピストンの径寸法が小さい場合には該ピストンが本体から簡単に抜け落ちることがあり、また、ピストンの径寸法が大きい場合には気密性が高まる利点があるものの、内容物を充填してピストンをセットする際に内圧上昇を伴うため該圧力によりピストンが本体から抜け出てしまうことがあり組み付けに手間がかかる不具合があるうえ、内容物の注出する作動が重くなり、ときには作動不良を引き起こすことがあって内容物をスムーズに注出することができない場合があった。

特開２００１−５７９８７号公報

本発明の課題は、ピストンの抜け落ちがなく、かつ、スムーズな作動のもとに内容物を注出することができる粘性材料の注出に適したカートリッジ式ディスペンサーを提案するところにある。

本発明は、内容物の充填空間を有しその先端に注出ノズルを備えた本体と、該本体の充填空間内で摺動可能に配置され、押し込み力の付加によって該充填空間内の内容物を注出ノズルの先端より押し出すピストンとを備えたカートリッジ式ディスペンサーであって、
前記ピストンが、該本体の内周壁に沿う外周壁を有し該本体の内周壁との相互間にて隙間を隔てて配置される胴体部と、この胴体部の一端に設けられ充填空間内の内容物に直接接触する先端壁部と、該胴体部のもう一端に設けられ、押し込み冶具のロッドを押し当ててピストンそのものに押し込み力を付加する後端壁部からなり、
前記胴体部の外周壁に、該本体の内周壁に当接し、該当接部位をピストンの摺動部とするが該本体の内部を封鎖しない突起を設けたことを特徴とするカートリッジ式ディスペンサーである。

ピストンの胴体部に突起を設け、この突起をピストンの摺動部とすることによって、ピストンと本体の内周壁との接触面積を小さくすることが可能となり、該摺動部でピストンを本体にしっかりと嵌合させてピストンが簡単に抜け落ちないようにしても該ピストンのスムーズなスライドが可能となり作業性が改善される。ピストンの摺動部を除いた領域の、ピストンと本体との相互間には、極わずかな隙間が形成されるため、内容物を充填したのちのピストンの組み付けに際してその隙間を通して本体内部に存在する空気が外界へと注出されることとなり内圧上昇を伴うことがない。

ピストンの胴体部は、その押し込み方向中央部で細径化した鼓形状としておくことにより、ピストンと本体の内周壁との接触面積をより小さくすることが可能になる。

また、前記ピストンの胴体部の各端部の寸法をＤ_１、Ｄ_２（先端側をＤ_１、後端側をＤ_２とする）とし、前記本体の内部の寸法をＸとすると、その差、すなわち、本体及びピストンの胴体部との相互間に生じる隙間は、Ｘ−Ｄ_１≦１ｍｍ、かつＸ−Ｄ_２≦１ｍｍとすると、より長時間の保存に優れるので望ましい。ここで、隙間を確保する観点から、０．０１ｍｍ≦Ｘ−Ｄ_１≦１ｍｍ、かつ０．０１ｍｍ≦Ｘ−Ｄ_２≦１ｍｍとするのがより好ましく、０．０２ｍｍ≦Ｘ−Ｄ_１≦０．５ｍｍ、かつ０．０２ｍｍ≦Ｘ−Ｄ_２≦０．５ｍｍとするのがさらに好ましく、０．０４ｍｍ≦Ｘ−Ｄ_１≦０．２ｍｍ、かつ０．０４ｍｍ≦Ｘ−Ｄ_２≦０．２ｍｍとするのが最も好ましい。
さらに、前記突起を含めたピストンの胴体部の各端部の寸法をＤ_３、Ｄ_４（先端側をＤ_３、後端側をＤ_４とする）とすると、Ｘとの差、すなわち、突起が本体へ嵌合する際の寸法は、Ｄ_３−Ｘ≧０．０１ｍｍ、かつＤ_４−Ｘ≧０．０１ｍｍとすると、よりピストンが脱落し難くなるので望ましい。ここで、スムーズなスライドを可能とする観点から、０．５ｍｍ≧Ｄ_３−Ｘ≧０．０１ｍｍ、かつ０．５ｍｍ≧Ｄ_４−Ｘ≧０．０１ｍｍとするのがより好ましく、０．３ｍｍ≧Ｄ_３−Ｘ≧０．０５ｍｍ、かつ０．３ｍｍ≧Ｄ_４−Ｘ≧０．０５ｍｍとするのがさらに好ましく、０．２６ｍｍ≧Ｄ_３−Ｘ≧０．１０ｍｍ、かつ０．２６ｍｍ≧Ｄ_４−Ｘ≧０．１０ｍｍとするのが最も好ましい。一方で、前記ピストンの押し込み方向の全長をＤ_５とすると、Ｄ_５の最適な長さは前記本体内部の押し込み方向の長さと押し込み冶具のストロークに左右されるため、適宜設定する必要がある。

（ａ）（ｂ）は、本発明にしたがうディスペンサーの実施の形態を全体について示した図であり、（ａ）はディスペンサーの側面を断面で示した図であり、（ｂ）は、図１（ａ）に示したディスペンサーの後方端面側から見た図である。 図１に示したディスペンサーに配置されるピストンの外観斜視図であり、円柱状の胴体部に突起を３つ配置したものとして示した図である。 本発明に用いて好適なピストンの他の例を示した図であり、図２に示したピストンに配置した突起の中間を削って該リブを上端、下端に分割し、本体との接触部位をさらに減らした例を示した図である。 本発明に用いて好適なピストンのさらに他の例を示した図であり、図３に対してピストンの端部以外に突起を配置した例を示した図である。 本発明に用いて好適なピストンのさらに他の例を示した図であり、突起１つを螺旋状につなげた例を示した図である。 本発明に用いて好適なピストンのさらに他の例を示した図であり、図３に示したピストンの胴体部をへこませた形状を有し、ピストン自体が変形しても本体に接触しない例を示した図である。 本発明に用いて好適なピストンのさらに他の例を示した図であり、図６に示したピストンにおいて上端、下端に設けた突起をつなげた例を示した図である。

以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図１（ａ）（ｂ）は、本発明にしたがうディスペンサーの全体構成を断面で示した図であり、図２は、図１に示したディスペンサーのピストンの外観斜視図である。

図における１は、内容物の充填空間Ｍを有する本体である。この本体１は、高密度ポリエチレン（ＨＤＰＥ）、低密度ポリエチレン（ＬＤＰＥ）、ポリプロピレン（ＰＰ）、アクリル、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリオキシメチレン（ＰＯＭ）、ポリブチレンテレフタレート（ＰＢＴ）等により構成することができるものであって、先端に注出ノズル１ａを一体的に備えており、その後端開口部１ｂの外周壁には、別途に用意される押し込み冶具（図示せず）に連係させるためのフランジ部１ｃが設けられている。本体１としては、とくにＰＢＴで構成するのが望ましい。

また、２は、本体１の内部に配置されたピストンである。このピストン２は、本体１の内周壁に沿う外周壁を有し、該本体１の内周壁との相互間にて隙間を隔てて配置される胴体部２ａと、この胴体部２ａの一端に設けられ、充填空間Ｍ内の内容物に直接接触する先端壁部２ｂと、該胴体部２ａのもう一端に設けられ、押し込み冶具のロッド（図示せず）を押し当ててピストン２そのものに押し込み力を付加する後端壁部２ｃから構成されている。ピストン２の胴体部２ａは各端部における寸法（径）Ｄ_１、Ｄ_２（２ｂ側をＤ_１、２ｃ側をＤ_２とする）と押し込み方向中央部における寸法Ｄとが同等になる円柱状のものを適用している。

３は、ピストン２の胴体部２ａに一体的に設けられた縦リブ状の突起である。この突起３は、胴体部２ａの外周壁の３箇所に等間隔で設けてあり、該突起３の先端が、本体１の内周壁に当接してピストン２の動きに合わせて本体１内で摺動するようになっている。そして、該突起３を含めたピストン２の各端部の寸法Ｄ_３、Ｄ_４（２ｂ側をＤ_３、２ｃ側をＤ_４とする）は本体１の内径Ｘよりも大きくなっている。なお、ピストン２は、エラストマーやゴム、ＬＤＰＥ（直鎖状低密度ポリエチレン（ＬＬＤＰＥ）を含む）、ＨＤＰＥ、ＰＰ、アクリル等を適用することが可能であり、とくにＬＤＰＥを適用するのが望ましい。

さらに、４は、注出ノズル１ａに装着され、該注出ノズル１ａの注出開口を閉塞するノズルキャップである。このノズルキャップ４は、図示の例では、アンダーカットの如き係合手段にて連係させるものとして示したが、ねじによって螺合させる構造としてもよい。これらの係合、螺合構造等による嵌合効果を適用するとキャップの位置決めができるので組立が容易となり、装着が緩い時のキャップの外れや装着がきつい（深い）ときのキャップの破損を防ぐことができる。

また、ノズルキャップ４に嵌合効果を付与する場合には、ノズルキャップ４は変形し難いものとするのが好ましい。変形し易いノズルキャップ４は、寸法が厳密に設定されていなくても装着できる利点があるがキャップが外れたり破損し易くなるからである。ノズルキャップ４の変形を小さくし注出ノズル１ａとの嵌合効果を付与するため該ノズルキャップ４はＨＤＰＥ、ＬＤＰＥ、ＰＰ、アクリル等を適用することが可能であり、とくにＨＤＰＥを適用するのが望ましい。

注出ノズル１ａの外径については、歯科診療においてはできるだけ小さい方が好ましく、必然的にその内径Ｄ_６は小さくなる。注出ノズル１ａの内径Ｄ_６については、Ｄ_６／Ｘ＝０．０１〜０．６０、より好ましくは、Ｄ_６／Ｘ＝０．２５〜０．５５とするのがよい。

上記構成のディスペンサーは、ピストン２を本体１に組み入れたとき、その接触部位は、突起３のみであることから、該突起３と本体１の内周壁が強く接触するような嵌合状態(ピストン２が抜け落ちることがない状態)であってもピストン２はスムーズに摺動することになる。

突起３が設けられていない領域の、ピストン２と本体１との相互間には極僅かな隙間Ｐ（図１（ａ）参照）が形成されることになるが、内容物を充填してピストン２を本体１に組み入れるべく、該ピストン２をゆっくりと押し込んでいくと、本体１内に残存する空気は該隙間を通して外界へと排出されるため、内圧が上昇することがなく、したがって内圧上昇によってピストン２が本体1から抜け出すことがない。

図３〜７は、本発明にしたがうカートリッジ式ディスペンサーに用いて好適なピストンの他の形態を示した図である。

図３は、ピストン２の胴体部２ａを円柱状としたままで突起３を該胴体部２ａの端部に設けたものであり、この場合、ピストン２の、本体１に対する接触はピストン２の先端側、後端側の突起３になるため接触面積がより小さくなり、作動性が一層改善されることとなる。

図４は、ピストン２の胴体部２ａを円柱状としたままで突起３を該胴体部の端部以外に設けたものであり、図３と同様に接触面積がより小さくなり、作動性が一層改善されることとなる。

図５は、ピストン２の胴体部２ａを円柱状としたままで突起３を螺旋状に１個だけ設けたものであり、突起の数が最小個数であっても本発明の要求特性を満たすことを示した例である。

図６、図７は、ピストン２の胴体部２ａの各端部における寸法（径）Ｄ_１、Ｄ_２（Ｄ_１＝Ｄ_２）に対し、その押し込み方向の中央部の寸法（径）Ｄを最も小さくして各端部から押し込み方向の中央部に向けてテーパーが付された鼓形の断面形状としたものである。

ピストン２の胴体部２ａを鼓形状とする図６、図７のものにあっては、ピストン２の、本体１に対する接触は、上掲図３と同様に、ピストン２の先端側、後端側の突起３になるので、接触面積がより小さくなり作動性が改善される。

突起３は、胴体部２ａの端部にのみ設けることもできるし該胴体部２ａの全長にわたって設けてもよく、さらには、ピストン２の胴体部２ａの各端部で互い違いに設けることもできる。とくに突起３を、ピストン２の胴体部２ａ各端部で互い違いに設ける場合には、隙間からの光の侵入をより防ぐことができるため、内容物の品質をより安定的に維持できる。

また、突起３は、図では胴体部２ａの周りに沿って１つ、３つ、あるいは６つ設けた場合について示したが、突起の数についてはとくに限定されることはない。

＜実施例＞
以下、本発明に関する実施例について述べるが、本発明はここで示す実施例だけに制限されるものではない。

カートリッジ式ディスペンサーとしてＰＢＴ製の本体、および以下に述べる材質のピストンを使用し、振動試験、減圧試験、荷重試験、硬化試験により性能を評価した。
・振動試験
ピストンを装着した本体を振動機（ＴＵＢＥ ＭＩＸＥＲ ＴＲＩＯ ＨＭ−２Ｆ、アズワン製）に固定した秤量皿に静置して、ダイヤル目盛り１０で１分間振動させてピストンの本体からの脱落の有無を確認した。
・減圧試験
注出ノズルにクリアフィル フォトコア（クラレメディカル株式会社製）を充填し、ジェットライト３０００（株式会社モリタ製）で２０秒間光を照射して硬化させて注出ノズルを封鎖したのち、本体にピストンを装着して７０Ｔｏｒｒの下で３分間静置して、ピストンの本体からの脱落の有無を確認した。
・荷重試験
本体にピストンを装着して、オートグラフ（ＡＧＳ−Ｇ ５００Ｎ、島津製作所製）を用いてピストンをクロスヘッドスピード１００ｍｍ／ｍｉｎで押し込み、ピストンの先端壁部２ｂが本体の内周壁に接触するまでの荷重の最大値を計測して、該最大値をピストンの押し込みに必要な力とした。
・硬化試験
本体にクリアフィル フォトコアを充填したのちピストンを装着し、ピストン側からジェットライト３０００で１分間光を照射し、充填物の硬化の有無を確認した。

〈実施例１〉
Ｘ＝４．４２ｍｍの本体、および図３のごとき形状でＤ_１（＝Ｄ_２）＝４．３０ｍｍ、Ｄ_３（＝Ｄ_４）＝４．６０ｍｍ、Ｄ_５＝６．８０ｍｍであるアクリル製のピストンを成形した。評価結果を表１に示す。
〈実施例２〉
Ｘ＝４．４２ｍｍの本体、および図７のごとき形状でＤ_１（＝Ｄ_２）＝４．３０ｍｍ、Ｄ_３（＝Ｄ_４）＝４．６０ｍｍ、Ｄ_５＝６．８０ｍｍであるＬＤＰＥ製のピストンを成形した。評価結果を表１に示す。
〈比較例１〉
Ｘ＝４．４２ｍｍの本体、および突起がなくＤ_１（＝Ｄ_２）＝４．３０ｍｍ、Ｄ_５＝６．８０ｍｍであるＬＤＰＥ製のピストンを成形した。評価結果を表１に示す。
〈比較例２〉
Ｘ＝４．４２ｍｍの本体、および突起がなくＤ_１（＝Ｄ_２）＝４．５４ｍｍ、Ｄ_５＝３．４０ｍｍであるＬＤＰＥ製のピストンを成形した。評価結果を表１に示す。

表１より明らかなように、ピストンの外表面に突起がなくピストンの直径を本体の内径よりも小さくしたカートリッジ式ディスペンサーにあっては、振動によってピストンは簡単に脱落した。また、ピストンの外表面に突起がなくピストンの直径を本体の内径よりも大きくしたカートリッジ式ディスペンサーにあっては、ピストンは振動では脱落しないものの内圧の上昇が伴う場合にあっては脱落が避けられず、さらにピストン押し込み時の負荷が非常に大きくなった。これに対して、本発明にしたがうカートリッジ式ディスペンサーにあっては、振動させても内圧の上昇を伴う場合でもピストンは脱落せず、ピストン押し込み時の負荷が小さいことが確認された。

ピストンが本体から簡単に脱落することがなく、かつ、スムーズな作動のもとで内容物を注出し得る粘性材料の注出に適したカートリッジ式ディスペンサーが提供できる。

１ 本体
１ａ 注出ノズル
１ｂ 後端開口部
１ｃ フランジ部
２ ピストン
２ａ 胴体部
２ｂ 先端壁部
２ｃ 後端壁部
３ 突起
４ ノズルキャップ
Ｍ 充填空間
Ｐ ピストンと本体とによって形成される隙間

Claims (4)

1. 内容物の充填空間を有しその先端に注出ノズルを備えたカートリッジ本体と、該本体の充填空間内で摺動可能に配置され、押し込み力の付加によって該充填空間内の内容物を注出ノズルの先端より押し出すピストンとを備えたカートリッジ式ディスペンサーであって、
   前記ピストンが、該本体の内周壁に沿う外周壁を有し該本体の内周壁との相互間にて隙間を隔てて配置される胴体部と、この胴体部の一端に設けられ充填空間内の内容物に直接接触する先端壁部と、該胴体部のもう一端に設けられ、押し込み冶具のロッドを押し当ててピストンそのものに押し込み力を付加する後端壁部からなり、
   前記胴体部の外周壁に、該本体の内周壁に当接し、該当接部位をピストンの摺動部とするが該本体の内部を封鎖しない突起を設けたことを特徴とするカートリッジ式ディスペンサー。
2. 前記ピストンの胴体部が、押し込み方向中央部で細径となる鼓形状をなすものである、請求項１記載のカートリッジ式ディスペンサー。
3. 前記ピストンの胴体部の各端部の寸法をＤ_１、Ｄ_２とし、前記本体の内部の寸法をＸとした場合に、下記の条件を満足する、請求項１又は２記載のカートリッジ式ディスペンサー。
   記
   Ｘ−Ｄ_１≦１ｍｍ、かつ、Ｘ−Ｄ_２≦１ｍｍ
4. 前記突起を含めたピストンの胴体部の各端部の寸法をＤ_３、Ｄ_４とし、前記本体の内部の寸法をＸとした場合に、下記の条件を満たす、請求項１〜３の何れかに記載のカートリッジ式ディスペンサー。
   記
   Ｄ_３−Ｘ≧０．０１ｍｍ、かつ、Ｄ_４−Ｘ≧０．０１ｍｍ

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