JPWO2011037150A1 - ニッケル微粉及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

結晶性に優れ、収縮開始温度が高く、高温に至るまで焼結に伴う収縮が抑制されるとともに樹脂バインダの分解温度に影響を及ぼさないニッケル微粉及びその製造方法を提供することを目的とする。平均粒径が0.05〜0.3μm、比表面積径に対する結晶子径が60〜90%、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%、及び酸素含有量が0.4〜1.5質量%であり、表面に酸素を含む厚さが2〜15nmの被覆層を有し、該被覆層の最外面がニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物を含む混合物で構成されるニッケル微粉とする。さらに、X線光電子分光法分析において、最外面に含有される硫黄化合物における硫化ニッケルの存在比が50%〜100%、ニッケル酸素化合物における水酸化ニッケルの存在比が0〜50%であることが好ましい。

Description

本発明は、ニッケル微粉及びその製造方法に関する。より詳しくは、積層セラミックコンデンサの内部電極などの電子部品用電極材料として用いられるニッケル微粉及びその製造方法に関するものである。
本出願は、日本国において2009年9月24日に出願された日本特許出願番号特願2009−219286を基礎として優先権を主張するものであり、この出願を参照することにより、本出願に援用される。
近年の電子機器の小型化の要求に対応して、電子機器の部品用材料として用いられるニッケル微粉に対しても、更なる微粒化が要求されている。例えば、積層セラミックコンデンサ(MLCC:Multilayer Ceramic Chip Capacitors)においては、MLCC用内部電極材料の薄膜化に対応するニッケル微粉の小粒径化が要求されている。また、次世代のMLCC用のニッケル微粉には、粒径0.2μm以下の小粒径化のみならず、その他の特性にも優れた高品質なものが要求されている。
MLCCの製造は、例えば、次のような方法で行われる。
先ず、金属微粉とエチルセルロース(以下、ECと略称する場合がある。)等の樹脂を主成分とする樹脂バインダとターピネオール等の有機溶剤等とを混錬して得られた導電ペーストを、セラミック誘電体グリーンシート上にスクリーン印刷して内部電極を作製する。次に、印刷された内部電極が交互に重なるように誘電体グリーンシートを積層し、圧着して積層体とする。その後、積層体を所定の大きさにカットし、樹脂バインダとして使用したEC等の樹脂の燃焼除去を行うための脱バインダ処理を行った後、1300℃まで高温焼成してセラミック体を得る。そして、このセラミック体に外部電極を取り付け、積層セラミックコンデンサとする。
ここで、内部電極となる導電ペースト中の金属微粉は、ニッケル微粉が主流となっていることから、積層体の脱バインダ処理では、ニッケル微粉が酸化しないように、極めて微量の酸素を含んだ雰囲気下にして行われている。
従来、この脱バインダ工程において、バインダの熱分解がニッケル粒子表面の触媒活性によって低温化され、例えばバインダがECなどの場合は260℃付近で熱分解されることが判明した。この時点でのバインダの熱分解はニッケル粒子の表面近傍に限定され、その他のバインダは分解されない。そのため、バインダの部分的分解によって発生したガスはその場に閉じ込められる形で残留するため、このガスによってニッケル内部電極層とセラミック誘電体層の間が押し広げられ、これにより内部電極の不連続性あるいは剥離が発生するという問題がある。
一方で、上記焼成工程においては、ニッケル粉などの内部電極材料は、MLCCでよく用いられているチタン酸バリウムなどのセラミック誘電体よりも収縮開始温度が低く、しかも熱収縮率が大きい。したがって、焼成に際してセラミック誘電体と内部電極材料との間で焼結特性の差による収縮度合の不適合が大きくなり、クラックや剥離などの構造欠陥を起こし易いという問題がある。
上記内部電極の不連続性やクラックあるいは剥離の問題は、近年の電極の薄層化に伴いニッケル粉が微細化されるほど、ニッケル粉表面の触媒活性の増大及び収縮開始温度の低下が生じるため顕著になる。内部電極の不連続性やクラックあるいは剥離が多発した場合、コンデンサとして機能しなくなる。
そこで、MLCC内部電極形成用のニッケル粉において、上記問題点を改善する方法が提案されている。
このような提案としては、例えば、以下のような特許文献1〜4が挙げられている。
<特許文献1>
特許文献1には、平均粒径0.1〜1.0μmで、かつ硫黄含有率が0.02〜1.0%であるニッケル超微粉が提案されている。この提案では、ニッケル超微粉の製造方法として、硫黄及び硫黄化合物の一方又は両方を随伴させながら行う塩化ニッケル蒸気の気相還元法が示され、硫黄を含有することで優れた球状のニッケル超微粉が得られるとされている。また、球状粒子であることが、積層セラミックコンデンサの製造工程で高い充填密度の薄層の内部電極を形成し、クラックや剥離を生じない特性を発揮するとしている。
しかしながら、特許文献1には、MLCC作製時のクラックやデラミネーション発生の抑制についての効果が示されているものの、焼成時の収縮特性については言及されていない。このため、電極が薄層化され、小型化されたMLCCにおける焼結時の収縮抑制については不明である。さらに、気相還元法によって塩化ニッケル蒸気から得られるニッケル超微粉には、塩素が含有されているため、塩素を除去するための水洗が必要となる。このため、ニッケル超微粉表面に厚い酸化層が形成されてしまい、最終的に得られるニッケル超微粉に含有される酸素が大幅に増加して焼結挙動に悪影響を及ぼすこととなる。また、水洗後の乾燥時に凝集が起こる虞があり、粉砕等の後工程を入れたとしても超微粉であるため凝集が激しく、実際の使用においては焼成時の収縮率が大きくなると思われる。また、脱バインダ時のバインダの分解挙動については全く言及されていない。
<特許文献2>
特許文献2には、粒子形状が球状で、粒径が0.1〜1.0μmで、0.05〜0.2%の硫黄を含有する導電ペースト用ニッケル粉末が提案されている。この提案では、硫黄が主として表面部分に存在するとされ、この硫黄の作用により、球状化が促進され、粒子形状が球状で単分散性に優れたニッケル粉末が得られるとされている。また、その製造法として、硫黄を含有する雰囲気にて、塩化ニッケルの蒸気に気相還元反応を行わせることが開示されている。
しかしながら、この特許文献2に記載された提案においても、焼成時の収縮特性については言及されておらず、得られたニッケル粉末の収縮特性については不明であり、気相還元法における塩素の除去のため、ニッケル超微粉表面に厚い酸化層が形成されてしまう。さらに、この提案においても、上記脱バインダ時の分解挙動については言及されていない。
<特許文献3>
特許文献3には、表面を硫黄換算で0.02〜0.20質量%の硫黄又は硫酸基で被覆してなるニッケル粉末が提案されている。この提案では、硫黄又は硫酸基でニッケル粉末が被覆されることにより、ニッケル粉末表面に、硫化ニッケル又は硫酸ニッケルが濃集した被膜層が形成され、高温での収縮が抑制され、焼結特性に優れたニッケル粉末が得られるとされている。また、その製造法として、硫黄を含むガスとニッケル粉末を接触処理することが開示されている。
しかしながら、得られたニッケル粉末については、収縮開始温度の高温化効果が記載されているのみで、上記脱バインダの分解挙動については言及されていない。さらに、焼成時の収縮特性については考慮されておらず、むしろ、適切な厚みの酸化膜が形成されてないため、焼成時の収縮特性は悪いと推察される。
<特許文献4>
特許文献4には、平均粒径0.05〜1.0μm、全重量に対して硫黄の含有量が100〜2000ppmであるニッケル粉末が記載されている。また、ニッケル粉末のESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)による表面解析においてニッケル原子に結合した硫黄原子に帰せられるピーク強度が粒子表面から中心方向に変化しているものであって、その強度が粒子表面から3nmより深い位置で最大となり、また、硫黄の含有する深さは30nmと厚いニッケル粉末が記載されている。その製造方法としては、硫黄を含有するニッケル粉末を非酸化性ガス雰囲気中に分散させ、300〜800℃の温度範囲で酸化性ガスと接触させ、短時間で表面酸化処理することが開示されている。この提案では、酸化性雰囲気中で脱バインダを行った場合にも酸化が進行せず、焼成中の酸化還元による体積変化が少なく、クラックやデラミネーション等の構造欠陥がなく、優れた積層電子部品を製造できるとしている。
しかしながら、この提案では、得られたニッケル粉末の耐酸化性については評価されているものの、焼成時の収縮特性については全く開示されていない。また、上記脱バインダの分解挙動については言及されていない。さらに、高温状態において微細なニッケル粉末を酸化性ガスと接触させているため、急激に酸化してニッケル粉末自体が燃焼する虞がある。このため、酸化膜の厚みが厚くなり、適切な厚みの形成は困難であると推察される。
特開平11−80817号公報 特開平11−80816号公報 特開2004−244654号公報 特開2008−223068号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、結晶性に優れ、収縮開始温度が高く、高温に至るまで焼結に伴う収縮が抑制されたニッケル微粉、さらに樹脂バインダの分解温度が本来の樹脂バインダの分解温度と同等に改善されたニッケル微粉を提供することを目的とする。
本発明者は、熱プラズマにより製造された結晶性に優れたニッケル微粉について鋭意開発を進めた結果、ニッケル微粉表面の酸素を含有する被覆層の厚さを特定の数値とすることで焼成時の収縮開始温度と収縮特性が改善されること、また、該被覆層中に含まれるニッケル硫黄化合物の形態を制御することで樹脂バインダの分解温度が本来の樹脂バインダの分解温度と同等に改善されることを見出した。さらに、熱プラズマにより気化させ凝縮させて得た硫黄含有ニッケル微粉を弱酸化性雰囲気中で保持して徐々に表面を酸化することで所定の厚さの被覆層を有するとともに前記ニッケル硫黄化合物の形態が制御されたニッケル微粉が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係るニッケル微粉は、平均粒径が0.05〜0.3μm、比表面積径に対する結晶子径が60〜90%、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%、及び酸素含有量が0.4〜1.5質量%であり、表面に酸素を含む厚さが2〜15nmの被覆層を有し、少なくとも該被覆層の最外面がニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物を含む混合物で構成されていることを特徴とする。
ここで、前記被覆層は、ニッケル酸素化合物を含有し、最表面側に存在するニッケル硫黄化合物を含む層と、内面側に存在するニッケル硫黄化合物を含まない層との2層から構成されることが好ましい。
また、X線光電子分光法(XPS)分析において、最外面に含有される硫黄化合物における硫化ニッケルの存在比が50%〜100%、ニッケル酸素化合物における水酸化ニッケルの存在比が0〜50%であることが好ましく、前記最外面のニッケル硫黄化合物における硫酸ニッケルの存在比が40%以下であることが好ましい。
さらに、前記被覆層におけるニッケル硫黄化合物を含む層は、さらに最表面側に存在する硫酸ニッケルを含む層と、内面側に存在するニッケル硫黄化合物として主に硫化ニッケルを含む層との2層から構成されることが好ましい。また、被覆層は、最表面から10nm以下の範囲に硫黄の傾斜的な濃度勾配を有することが好ましく、前記被覆層におけるニッケル硫黄化合物の濃度分布は、前記最外面で最大となることが好ましい。
本発明に係るニッケル微粉は、還元性雰囲気中において1300℃まで加熱した場合の収縮率が、熱機械的分析装置による測定において15%以下であることを特徴とする。
さらに、上記ニッケル微粉は、還元性雰囲気中において熱プラズマにより気化させ、発生した蒸気を凝縮させて得た硫黄含有ニッケル微粉を弱酸化性雰囲気中で保持して得られるものであることが好ましい。
本発明に係るニッケル微粉の製造方法は、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%となるニッケル原料を調製する原料調製工程と、調製されたニッケル原料を、不活性ガスと水素ガスを含む還元雰囲気中にて熱プラズマにより気化させ、発生した硫黄及び酸素を含むニッケル蒸気を凝縮させて微粉化させる微粉化工程と、微粉化された微粉化ニッケルを冷却して回収する回収工程と、回収された微粉化ニッケルを、酸素を含有する弱酸化性の不活性ガス雰囲気中で保持して微粉化ニッケル表面を徐酸化し、ニッケル微粉を得る徐酸化工程とを有する。
ここで、徐酸化工程における保持温度が100℃以下であることが好ましく、徐酸化工程における不活性ガス雰囲気中の酸素含有量が1〜5容量%であることが好ましい。
また、原料調製程では、予め硫黄含有量が0.1〜0.5質量%含まれるニッケルをニッケル原料として調製するか、又は硫黄を含有した酸化ニッケルとニッケルとを配合し、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%となるニッケル原料を調製することが好ましい。
さらに、熱プラズマとして高周波誘導プラズマを用いることが好ましい。
本発明に係るニッケル微粉は、高純度で結晶性に優れ、電子機器・部品用材料として好適である。特に、MLCCの内部電極形成用のニッケル微粉として用いた場合、収縮開始温度を高くすることができ、焼結に伴う収縮を抑制することができるため、クラックや剥離などの構造欠陥の発生を防止することができる。また、表面化合物層を制御することで、樹脂バインダの分解温度が本来の樹脂バインダの分解温度と同等にできるため、内部電極の不連続性あるいは剥離の発生をさらに防止することができる。さらに、上記ニッケル微粉の製造方法は、容易で工業的規模においても可能であり、その工業的価値は極めて大きい。
図1は、実施例1のニッケル微粉のFE−AESによる深さ方向の分析結果である。 図2は、実施例3のニッケル微粉のFE−AESによる深さ方向の分析結果である 図3は、比較例2のニッケル微粉のFE−AESによる深さ方向の分析結果である。 図4は、実施例1〜4及び比較例2における各層の厚さ示すグラフである。 図5は、実施例及び比較例のニッケル微粉のEC熱分解特性結果である。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.ニッケル微粉
1−1.平均粒径
1−2.結晶子径
1−3.硫黄含有量
1−4.酸素含有量
2.ニッケル微粉の製造方法
2−1.原料調製工程
2−2.微粉化工程
2−3.回収工程
2−4.徐酸化工程
3.実施例
<1.ニッケル微粉>
本発明の一実施の形態におけるニッケル微粉は、平均粒径が0.05〜0.3μm、比表面積径に対する結晶子径が60〜90%、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%、及び酸素含有量が0.4〜1.5質量%であり、表面に酸素を含む厚さが2〜15nmの被覆層を有し、少なくとも該被覆層の最外面がニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物を含む混合物で構成されている。
ニッケル微粉は、表面に酸素を含む厚さが2〜15nmの被覆層を有し、少なくとも該被覆層の最外面がニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物を含む混合物で構成されている。ここで、最外面とは、得られたニッケル微粉をスパッタリング等によりエッチングしない様態で、AES(Auger Electron Spectroscopy)による分析が及ぶ範囲であり、通常は最表面から2〜3nm程度の範囲である。
ニッケル微粉が有する酸素(原子)を含む被覆層の厚さは2〜15nmであり、さらには5〜15nmであることが好ましい。被覆層の厚さが2nm未満であると、焼成時の収縮開始温度及び収縮率の改善効果が得られない。また、被覆層の厚さが15nmを超えても、焼成時の収縮開始温度及び収縮率の改善効果が得られない。これは、焼成時に該被覆層にクラック、剥離などが発生して、内面に存在するニッケル面が露出して被覆層の効果が低下するからであると思われる。
また、ニッケル微粉の最外面は、ニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物を含む混合物で構成されている。これにより、焼成時の収縮開始温度を高温化させるとともに、焼結に伴う収縮を抑制することができる。これは、ニッケル硫黄化合物がニッケル粒子間のニッケルの固相拡散を阻害するからであると思われる。ニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物に注目した場合、被覆層の最外面がほぼニッケル酸素化合物のみが存在する状態になると、MLCC(Monolithic Ceramic Chip Capacitors)の焼成時に用いられる弱還元性雰囲気によって、表面が還元され収縮開始温度を高温化する効果が得られない。一方、最外面にニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物が存在することで、焼結の進行を遅らせて焼成時の収縮開始温度を高温化させるとともに、焼結に伴う収縮を抑制することができる。
前記ニッケル硫黄化合物(ニッケル硫化物)は、硫化ニッケル(NiS)や、酸化された硫酸ニッケル(NiSO)の形態をとってもよい。すなわち、被覆層中のニッケル硫黄化合物は、硫化ニッケル、硫酸ニッケルなどを含むものである。
一方、前記ニッケル酸素化合物(ニッケル酸化物)は、酸化ニッケル(NiO)や、水が吸着して生成する水酸化ニッケル(Ni(OH))の形態をとってもよい。すなわち、被覆層中のニッケル酸素化合物は、酸化ニッケル、水酸化ニッケルなどを含むものである。
さらに、被覆層は、ニッケル酸素化合物を含有し、最表面側に存在するニッケル硫黄化合物を含む層と、内面側に存在するニッケル硫黄化合物を含まない層との2層から構成されることが好ましい。被覆層が、上記2層から構成されることで、被覆層中の硫黄含有量を低減し、かつ焼成時の収縮開始温度及び収縮率を向上させることができる。すなわち、ニッケル硫黄化合物による収縮開始温度及び収縮率の向上を内面側に存在するニッケル酸素化合物を含む層が補完することで、収縮開始温度及び収縮率の改善効果をさらに向上させることができる。さらに、後述の樹脂バインダの熱分解温度低温化の抑制効果を向上させることができる。
一方、ニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物を含む層の1層のみを必要な厚みで形成すると、上記効果の改善は達成されるが、表面の被覆層に含有される硫黄の量が多くなり、焼成時に腐食性ガスが発生する虞がある。よって、電子部品用材料として使用された場合に、電子部品あるいは電子機器の回路を腐食させる虞がある。
また、本発明の一実施の形態におけるニッケル微粉は、X線光電子分光法(XPS)分析において、最表面近傍に含有されるニッケル硫黄化合物における硫化ニッケルの存在比が50%〜100%、ニッケル酸素化合物のおける水酸化ニッケルの存在比が0〜50%であることが好ましい。
最表面近傍の化学状態としての硫酸ニッケルと硫化ニッケルとの存在比は、XPSによる分析で得られるピークを解析することで求めることができる。上記硫化ニッケルの存在比が50%未満、すなわち、硫酸ニッケルの存在比が50%を超えている状態では、ニッケル微粉表面の酸化度合いが高く、表面のニッケル酸化物、あるいはニッケル水酸化物が多くなる。このような状態では、焼成時の収縮開始温度及び収縮率増加を起こし、焼結性を低下させる可能性がある。焼結性を良好なものに保持するためには、硫酸ニッケルの存在比を40%以下とすることが好ましい。なお、XPSによる分析が及ぶ範囲は、通常は最表面から5nm程度の範囲であり、最表面近傍はこの範囲を意味する。
一方、最表面近傍のニッケル酸素化合物における水酸化ニッケルの存在比が50%を超えると、ニッケル微粉の親水性が高まり、ペースト作製後に樹脂成分から水分を奪い、ペースト粘度が増加するため、ペーストとして不安定、且つ使用ができなくなる。
最表面近傍の化学状態としての硫酸ニッケルと硫化ニッケルとの存在比は、ペーストを作製するためのエチルセルロース(EC)等の樹脂を主成分とする樹脂バインダの熱分解温度にも影響を与えるが、硫化ニッケルの存在比が高いのみでは不十分であり、結晶性の高い硫化ニッケル及び硫酸ニッケルとすることで、ニッケルの触媒活性を抑制して樹脂バインダの熱分解温度の低温化を抑制することができる。
硫化ニッケル及び硫酸ニッケルの結晶性は、例えば、透過電子顕微鏡の電子線回折(TEM−EDX)による分析によって確認することできる。TEM−EDXおいて回折スポットが確認される程度であれば、結晶性はよいと言え、樹脂バインダの熱分解温度低温化の抑制効果が得られる。本発明のニッケル微粉は、前記TEM−EDXおいて、硫化ニッケル及び硫酸ニッケルの回折スポットが確認されている。
本発明の一実施の形態におけるニッケル微粉においては、上記被覆層におけるニッケル硫黄化合物を含む層が、さらに最表面側に存在する硫酸ニッケルを含む層と、内面側に存在するニッケル硫黄化合物として主に硫化ニッケルを含む層との2層から構成されることが好ましい。微粉表面の硫化ニッケルは酸化されやすいため、最表面側に酸化した状態の硫酸ニッケルを含有させることでニッケル微粉の酸化を防止することができる。前記硫酸ニッケルを含む層が厚くなると、上記硫化ニッケルの存在比が低下するため、最表面から5nm以下であることが好ましく、2〜3nmであることがより好ましい。一方、上記主に硫化ニッケルを含む層が存在することで、最表面近傍における硫化ニッケルの存在比を十分なものとすることができる。ここで、主に硫化ニッケルを含む層は、前記TEM−EDXおいて、硫化ニッケルの回折スポットが確認され、硫酸ニッケルの回折スポットが確認されない状態を意味する。
本発明の一実施の形態におけるニッケル微粉における被覆層は、明確にニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物を含む層と内部のニッケル部とに区分されるものであってもよいが、被覆層は、最表面から10nm以下の範囲に硫黄(原子)の傾斜的な濃度勾配を有してもよい。すなわち、硫黄(原子)の濃度が内部方向に徐々に低くなる濃縮層となっていてもよい。ここで、硫黄の濃縮層とは、硫黄(原子)が存在する層であり、AES(オージェ電子分光分析)によって容易に確認される。また、硫黄の濃度分布は、被覆層中でピークを持ったものでもよいが、濃度ピークは、最外面(最表面から2〜3nm程度)にあることが好ましい。ただし、ニッケル微粉表面には炭素(C)が付着している場合があり、AESによる分析においてニッケル微粉の最表面の位置が正しく認識できないことがある。このような場合、たとえばAES分析において最表面(スパッター深さ0nmの位置)でC濃度が10原子%を超えるような場合には、分析上の最表面から1〜2nm内部の位置を実際のニッケル微粉の最表面とすればよい。最外面において硫黄の濃度が最大となることで、焼結性及び樹脂バインダの熱分解温度に対する効果を高めることができる。
被覆層における硫黄の濃縮層の厚さは、2〜10nmであることが好ましい。硫黄の濃縮層の厚さが10nmを超えると、焼成時の腐食性ガスの発生、電子部品あるいは電子機器の回路の腐食問題が起こる虞がある。
また、上記ニッケル微粉は、還元性雰囲気中において熱プラズマにより気化させ、発生した蒸気を凝縮させて得た硫黄含有ニッケル微粉を弱酸化性雰囲気中で保持して得られるものであることが好ましい。熱プラズマを用いることにより、気化したニッケル蒸気が、プラズマ領域から出ると急冷凝縮され、完全に液滴化した状態から凝固するため、微粉化されたニッケルは、ほぼ球状化するとともに結晶性が極めて高い。
このような構成を有するニッケル微粉は、還元性雰囲気中において1300℃まで加熱すると、その収縮率は、熱機械的分析装置による測定において15%以下となる。熱機械的分析装置による測定における収縮率が15%以下であることにより、MLCCの薄層化した電極に用いた場合、焼成時の焼結性による収縮差によって生じる電極のクラックや剥離の発生を防ぐことができる。また、脱バインダ時の樹脂バインダの熱分解温度の低温化も抑制される。
以下、ニッケル微粉の主な構成要素について、詳細に説明する。
<1−1.平均粒径>
ニッケル微粉の平均粒径は、0.05〜0.3μmである。平均粒径が0.05μm未満であると、凝集が激しくなり、ペースト中へ均一に分散させることができず、塗布による電極の形成が困難となる。また、凝集粉が存在することで見かけ上の粒径が大きくなり、薄膜化した電極へ対応することができないばかりか、焼成時の焼結による収縮が大きくなってしまう。一方、平均粒径が0.3μmを超えると、薄膜化した電極へ対応することができない。平均粒径を0.05〜0.3μmとすることにより、ペースト中へ均一に分散させることができ、薄膜化した電極へ対応することができる。
<1−2.結晶子径>
ニッケル微粉の結晶子径は、比表面積径に対して60〜90%である。結晶子径は、焼結の進行に大きく影響する。結晶性が良い、すなわち、比表面積径に対する結晶子径が大きいものは、同程度の粒径を有するニッケル微粉に比べて、収縮開始温度が高く、焼結による収縮率が小さい。結晶子径を比表面積径に対して60〜90%とすることで、結晶性による効果と被覆層による効果との相乗化効果で、良好な収縮開始温度と収縮率が得られる。結晶子径が比表面積径に対して60%未満であると、ニッケル微粉の結晶性が悪いため、良好な収縮開始温度と収縮率が得られない。比表面積径に対する結晶子径の上限は、90%を超えてもよいが、比表面積径に対して100%、すなわち、ニッケル微粉が単結晶で構成されるニッケル微粉を得るのは困難であり、現実的ではない。
<1−3.硫黄含有量>
ニッケル微粉の硫黄含有量は、0.1〜0.5質量%であることが好ましく、さらに、0.2質量%を超え、0.5質量%未満であることが好ましい。硫黄含有量が、0.1質量%未満であると、表面の被覆層の形成が十分でなく、焼成時の収縮開始温度の高温化効果、及び収縮率の低減効果が十分に得られない。さらに、硫黄含有量が0.2質量%以下であると、収縮開始温度が改善されても収縮率の低減効果が十分出ない場合がある。一方、硫黄含有量が0.5質量%を超えると、酸素を含む適切な厚さの被覆層を得ることが困難となり、焼成時の腐食性ガスの発生、電子部品あるいは電子機器の回路の腐食問題が生じる。また、800℃付近よりSOxガスが大量に発生し、電極のクラック、剥離などが生じる。
<1−4.酸素含有量>
ニッケル微粉の酸素含有量は、0.4〜1.5質量%であることが好ましい。酸素含有量が0.4質量%未満であると、表面の被覆層の形成が十分でなく、良好な収縮開始温度と収縮率が得られない。また、ニッケル微粉の表面活性が高いため、大気中での僅かの加熱によっても激しい酸化を起こす虞がある。酸素含有量が1.5質量%を超えると、水素含有ガスなどの弱還元性雰囲気中で焼成時に、ガス発生が激しくなり、電極のクラック、剥離などが生じる。
以上のように、本実施の形態におけるニッケル微粉は、所定の平均粒径と、所定の硫黄含有量と、所定の酸素含有量と、所定の厚さの被覆層を有し、被覆層の最外面がニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物を含む結晶性の高い混合物で構成されている。これにより、収縮開始温度を高くすることができるとともに、焼結に伴う収縮を抑制することができる。また、ニッケルの触媒活性を抑制することができ、樹脂バインダの熱分解温度を樹脂バインダ本来の分解温度付近まで高温化できる。
<2.ニッケル微粉の製造方法>
本発明の一実施の形態にけるニッケル微粉の製造方法(以下、本製法という。)は、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%となるニッケル原料を調製する原料調製工程と、調製されたニッケル原料を、不活性ガスと水素ガスを含む還元雰囲気中にて熱プラズマにより気化させ、発生した硫黄及び酸素を含むニッケル蒸気を凝縮させて微粉化させる微粉化工程と、微粉化された微粉化ニッケルを冷却して回収する回収工程と、回収された微粉化ニッケルを、酸素を含有する弱酸化性の不活性ガス雰囲気中で保持して微粉化ニッケル表面を徐酸化し、ニッケル微粉を得る徐酸化工程とを有する。以下、各工程について詳細に説明する。
<2−1.原料調製工程>
原料調製工程は、ニッケル原料中に含有される硫黄の量を調整する工程である。原料調製工程では、ニッケル、酸化ニッケル、硫黄化合物から少なくともニッケルを選択して、ニッケル原料中の硫黄含有量が0.1〜0.5質量%となるように配合し、ニッケル原料を得る。この原料調製工程においては、得られるニッケル微粉の硫黄含有量、すなわち、ニッケル原料中の硫黄含有量が0.1〜0.5質量%となるように配合すればよい。硫黄は、原料として用いるニッケル又は酸化ニッケルのいずれかに含有されていればよく、硫黄化合物として配合してもよい。
また、原料調製工程では、予め硫黄含有量が0.1〜0.5質量%含まれるニッケルをニッケル原料として調製するか、又は硫黄を含有した酸化ニッケルとニッケルとを配合し、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%となるニッケル原料を調製することが好ましい。ニッケル源として酸化ニッケルを選択すると、次工程である微粉化工程において酸化ニッケルが混入する虞があるため、ニッケル源としてニッケルを選択する。また、硫黄化合物を配合した場合、得られるニッケル微粉に硫黄が偏在する虞がある。
硫黄を0.1〜0.5質量%含むニッケルは、硫黄化合物の水溶液にニッケルを浸漬して、ニッケル表面に硫黄を吸着させることで得られる。硫黄の含有量は、水溶液中の硫黄化合物量で容易に調整することができる。水溶液中でニッケル表面に硫黄を吸着させた後は、通常の方法で乾燥させればよい。
また、硫黄を含有した酸化ニッケルとしては、例えば、硫酸ニッケルを焙焼して製造された酸化ニッケルを用いることができる。このような酸化ニッケルは、一般に市販されており、酸化ニッケルに含有される硫黄量を分析して、ニッケル原料中の硫黄含有量が所望の量となるように酸化ニッケルを配合すればよい。
ニッケル原料として用いるニッケルあるいは酸化ニッケルの形状は、特に限定されるものではないが、供給の容易さから、粉末であることが好ましく、その平均粒径は0.5〜10μmであることが好ましい。
<2−2.微粉化工程>
微粉化工程は、原料調製工程で得たニッケル原料を、不活性ガスと水素ガスを含む還元雰囲気中にて熱プラズマにより気化させ、発生したニッケル蒸気を凝縮させて微粉化させる工程である。
高周波プラズマやアークプラズマのような熱プラズマは、プラズマ領域が10000℃以上の温度を有するため、その中に導入されたニッケル原料は、瞬時に気化し、ニッケル蒸気となる。例えば、ニッケル原料として酸化ニッケルを用いた場合、酸化ニッケルは、熱プラズマ中でニッケルと酸素に分解し、ニッケル蒸気となる。
熱プラズマにより発生したニッケル蒸気は、急冷凝縮により微粉化される。熱プラズマは、外部加熱方式等と比較すると高温領域が狭いため、気化したニッケル蒸気は、プラズマ尾炎部への移動中に凝縮し、プラズマ領域から出ると急冷凝縮され、強制的な冷却を行わなくても微粉化される。ニッケルは、完全に液滴化した状態から凝固するため、ほぼ球状化し、比表面積径に対する結晶子径が60%以上の結晶性が極めて高い微粉となる。
また、ニッケル原料には、0.1〜2.0質量%の酸素が含有されていることが好ましい。酸素含有量が0.1質量%未満であると、水蒸気の発生が少なく安定化が十分でない場合がある。また、酸素含有量が2.0質量%を超えると、プラズマ中の水素による酸素とニッケルの再結合の抑制が十分でなくなり、最終的に得られるニッケル微粉の酸素含有量が多くなり過ぎる場合がある。
ニッケル粉は、一般に微量の酸素を含有しており、酸化ニッケルを用いなくても、ニッケル原料に酸素が含有される。本製法においては、不活性ガス-水素プラズマを用いるため、原料中に含有されている酸素とニッケルの再結合を抑制することができる。また、酸素は、プラズマ中の水素と結合して水蒸気を発生させ、形成された被覆層の表面に微量の水分を吸着させる。これにより、微粉化されたニッケル表面が安定化され、凝集が少なく、分散性が向上した微粉を得ることが可能である。
微粉化工程においては、プラズマによる微粉化方法が用いられる。熱プラズマとしては、直流プラズマ、高周波プラズマのどちらでも用いることができるが、高周波プラズマを用いることが好ましい。例えば、直流プラズマであるアークプラズマ法では、電極材(一般的にタングステントリウムが用いられる。)の消耗が起こり、不純物となってニッケル微粉に混入することがある。不活性ガスなどのシールドガスを流すなどの工夫によって不純物の混入を防ぐこともできるが、連続的な量産には不向きである。一方、高周波プラズマ法は、無電極であるため、電極材からの不純物混入の問題がなく、高純度のニッケル微粉を連続的に量産することができる。
不活性ガスは、特に限定されるものではないが、ニッケルと化合物を生成しないアルゴンを用いることが好ましい。
ニッケル原料の供給方法は、プラズマ中に所望の量を一定速度で供給できればよい。例えば、原料としてニッケル粉を用いた場合、搬送ガスによりニッケル粉をプラズマ中に供給すればよい。
<2−3.回収工程>
回収工程は、微粉化工程において生成した微粉化ニッケルを冷却して回収する工程である。本製法において用いる熱プラズマは、高温領域が狭いため、プラズマ領域から出ると急冷凝縮されてニッケルが微粉化される。このとき、ニッケルが微粉であるため、ニッケルの凝固点以下の温度であっても、微粉化ニッケルが接触すると容易に焼結する。したがって、微粉化工程後の回収工程においては、微粉化ニッケルが気体中に分散している間、すなわち、回収装置で回収される前に十分に冷却する必要がある。
冷却は、120℃以下、好ましくは50℃以下にすることが好ましい。また、冷却は、プラズマ領域外で急冷凝縮されて微粉化されたニッケルに、還元雰囲気もしくは不活性ガスを噴射することによって行うことが好ましい。特に、コスト面を考慮すると、回収して再利用が可能なようにプラズマに用いた雰囲気と同種のガスを用いることが好ましい。また、プラズマ領域への再侵入を防止して、粗大粒子の発生を防止するために、冷却に用いるガスにプラズマ領域の周りで旋回流を形成させて冷却するとともに回収装置に搬送することが好ましい。
<2−4.徐酸化工程>
徐酸化工程は、回収した微粉化ニッケルを、酸素を含有する弱酸化性の不活性ガス雰囲気中で保持して微粉化ニッケル表面を徐酸化し、ニッケル微粉を得る工程である。
ニッケル微粉などの活性な微粉は、大気中では急激な酸化による異常発熱の恐れがある。そのため、回収工程で回収された微粉化ニッケルは、酸素を含む不活性ガス雰囲気において、一定時間保持して微粉化ニッケルの表面を酸化する徐酸化処理を行う必要がある。徐酸化処理により、ニッケル微粉の表面に酸素を含む被覆層が形成される。なお、大気雰囲気に触れると、微粉化ニッケルが異常発熱の恐れがあるので、密閉状態で回収工程から徐酸化工程に移すことが好ましい。
徐酸化工程を経ることによって、表面にニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物を含む被覆層が形成される。被覆層が形成される理由は、以下のように推定される。まず、2−2.微粉化工程において、微粉化ニッケル表面にニッケル硫黄化合物を含む被覆層が形成される。ニッケル硫黄化合物及びニッケルの生成は、それぞれの生成における標準自由エネルギーによって支配される。まず、ニッケル原料はプラズマ中で蒸発し、冷却過程で先ずニッケルが液滴化する。気化状態にある硫黄は、その後の冷却で硫化物の標準生成自由エネルギー(Ni<HS<S)に従ってニッケル液滴表面でNiを形成する。その後、融点がNi>Niであるため、ニッケル液滴の凝固時に、液状のままのNiが、微粉化ニッケル表面に濃縮して表面に均一な被覆層を形成する。
次に、微粉化工程にプラズマ中の水素と原料から分解した酸素が結合した水蒸気が表面層に付着するため、最表面近傍は硫化ニッケル、硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケルの混合物になると考えられる。
さらに、ニッケル酸素化合物が増加する原因の詳細は不明であるが、徐酸化工程によって表面が酸化され、増加するものと推定される。徐酸化工程は、酸素を含有する弱酸化性雰囲気で行われるため、酸素が内面側に徐々に拡散してニッケルの酸化が進行する。このため、ニッケル硫黄化合物を含む層の下にある微粉化ニッケル表面では硫黄が存在せず、ニッケル硫黄化合物を含まない層が形成される。もしくは、内部から表面にニッケルが拡散し、最外面の酸素と結合して酸化物が形成されると考えられる。
酸素を含む不活性ガス雰囲気としては、1〜5容量%の酸素とアルゴンを含むガスが好ましく、1〜3容量%の酸素とアルゴンとを含むガスがより好ましい。酸素が1容量%未満であると、表面の被覆層の形成が十分でなく、得られたニッケル微粉が大気中で急激な酸化による異常発熱する虞がある。また、酸素が5容量%を超えると、発熱あるいは酸化が内部まで進行して被覆層の厚さが15nmを超えてしまうことがある。
徐酸化処理を行う温度は、120℃以下とすることが好ましく、50℃以下とすることがより好ましい。また、徐酸化処理は、強制的に冷却した雰囲気でなくてもよく、一般的な室温の範囲、例えば、0〜40℃であれば十分に行うことができる。100℃以下で徐酸化処理を行うことで、被覆層を有したニッケル微粉が得られる。一方、100℃を越える温度で酸素を含む不活性ガス雰囲気中で保持すると、急激に酸化が進み酸化が内部まで進行して被覆層の厚さが15nmを超えてしまうばかりか、最外面に存在するニッケル酸素化合物が大幅に増加して焼結の進行を遅らせる効果が得られない場合がある。
徐酸化処理の時間は、雰囲気及び温度で十分に被覆層が形成される時間とすればよいが、2〜24時間とすることが好ましい。2時間未満では十分に被覆層が形成されない場合がある。また、24時間を越えて処理しても、効果がなくコストが増加するのみである。
さらに、水洗し乾燥させることで徐酸化処理を行ってもよい。水洗は、不純物の混入を防止するため純水等を用いて通常の方法で行えばよく、その後、乾燥させればよいが、過度の酸化を防止するため、乾燥は真空中120℃以下で行うことが好ましい。
この徐酸化処理により、表面に酸素を含む所定厚さの被覆層が形成されたニッケル微粉が得られる。このニッケル微粉は、表面が安定しているため発火の恐れがなく、取り扱いが極めて容易となる。
上述した本製法によれば、気化状態にある硫黄が存在する中でニッケル蒸気が凝縮され、微粉化されるため、高純度で結晶性が高く、表面に被覆層が形成されたニッケル微粉を容易に得ることができ、次世代の積層セラミックコンデンサ用電極材料で用いられる0.2μm以下のニッケル微粉を得ることができる。しかも、本製法により得られるニッケル微粉は、表面に被覆層が形成されているため、焼結体の熱収縮特性を改善することができる。また、ニッケル微粉は、表面に有機物、分散剤などにより表面が被覆されていないため、ペースト等の作製が容易で、焼結時にも均一に収縮が起こり、クラック等の発生も防止することができる。
<3.実施例>
以下、本発明の一実施の形態におけるニッケル微粉及びその製造方法について、実施例を用いてさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本実施例においては、最高入力200kWの高周波プラズマ微粉製造装置(高周波プラズマ発振機:日本電子社製、TP−12020)を用いた。また、本実施例及び比較例における各種測定は、以下の方法にて行った。
(1)透過型電子顕微鏡(以下、TEMと記載する。)観察:TEM((株)日立ハイテクノロジーズ製、HF−2200)を用いて観察した。また、電子線回折分析(以下、EDXと記載する。)(NORAN製、VANTAGE)も行った。
(2)比表面積径(以下、BET径と記載する。):多検体BET比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製、Multisorb―16)を用いて比表面積を測定し、BET径に換算した。
(3)結晶子サイズ:X線回折装置(以下、XRDと記載する。)(PANalytical製、X’PertPRO)を用いて測定した。
(4)硫黄測定:ICP発光分光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製、SPS3000)を用いて測定した。
(5)酸素測定:酸素・窒素・アルゴン分析装置(LECO社製、TC−336)を用いて測定した。
(6)表面層分析:アルゴンイオンエッチング法を用い、FE−AES(ULVAC−PHI(株)製、Model 680)によって表面深さ方向分析を行った。表面に存在すると考えられるニッケル、硫黄、酸素、炭素について分析した。また、表面近傍に存在すると考えられるニッケル、硫黄、酸素について、XPS(VG Scientific製、ESCALAB220i―XL)を用いて分析を行った。
(7)ニッケル微粉の触媒活性の評価:ニッケル微粉に対して5重量%の樹脂バインダであるエチルセルロース(EC)を物理混合したニッケル微粉と、ニッケル微粉のみを、それぞれ、TG測定装置(ブルカー・エイエックスエス社製TG−DTA2000SR)を用いて、窒素ガス中、5℃/分の昇温速度で重量変化を測定した。その後、ECを混合したニッケル微粉の重量変化からニッケル微粉のみの重量変化を引き去り、ニッケル微粉中のECの重量変化を求めた。さらに、ニッケル微粉の触媒活性の評価として、ECの重量変化を一次微分して、ECの分解速度を求め、分解速度のピークをECの分解温度とした。
(8)熱収縮特性の評価:試料を約0.15g用い、ペレット状(φ5mm×t約1.5mm)に成型し、10gの加重をかけながら、98容量%窒素及び2容量%水素からなる混合ガス(200mL/分)による還元性雰囲気中において、熱機械分析装置(以下、TMAと記載する。)(ブルカー・エイエックスエス社製TMA4000SA)を用いて、熱収縮特性を測定した。温度範囲は室温から1300℃で昇温速度は5℃/分とした。収縮開始温度は、0.5%収縮した温度として評価した。また、収縮した最大値を収縮率として評価した。
[実施例1]
プラズマ入力約60kWで高周波プラズマを点火して、アルゴンの総量209L/分、水素45L/分、雰囲気圧力60kPaに調整し、安定したプラズマ炎を得た。搬送ガス(アルゴン10リットル/分)により、プラズマ炎の内部にニッケル原料を1kg/hrで供給して微粉を作製した。
なお、ニッケル原料としては、ニッケル粉末(Inco Special Products and Inco Limited製、ニッケル、Type255、平均粒径2.2〜2.8μm)90質量%に酸化ニッケル(約2質量%硫黄入り)10質量%を混合したものを用いた。ニッケル原料中の硫黄含有量は0.2質量%であり、酸素含有量は2質量%であった。
このプラズマは10000℃以上であるため、ニッケル原料粉末は瞬時に蒸発気化し、温度が低くなるプラズマ尾炎部で凝縮し、微粉化した。得られた微粉化ニッケルは、大気雰囲気に暴露することなく回収装置に搬送され、回収装置内にて、アルゴン−10容量%空気(約2容量%酸素)雰囲気中で約10時間保持する徐酸化処理を行った後、装置から回収した。
得られたニッケル微粉のBET径は、159nmであった。このニッケル微粉をXRDにより解析し、結晶子径をScherrer法によって算出したところ、998Åであった。BET径に対する結晶子サイズは63%であり、単結晶に近い結晶性のニッケル微粉ができていることがわかった。硫黄及び酸素含有量は、それぞれ0.17質量%、0.68質量%であった。TMAによる測定の結果、収縮開始温度は約320℃であり、収縮率は11.0%であった。また、EDSによる分析結果から、表面にのみ硫黄及び酸素は分布していることを確認した。表1に各評価結果を他例と併せて示す。
図1は、FE−AESの分析結果を示すグラフである。硫黄及び酸素は、それぞれニッケル硫化物及びニッケル酸化物を形成していると考えられる。酸素を含む被覆層は、厚さが10nmと薄いものであった。また、硫黄を含む層は、厚さが6nmと薄いものであった。また、ニッケル硫化物として、硫化ニッケルが100%含まれていた。また、ニッケル硫化物の濃度分布において、表面から2〜3nmの範囲に濃度ピークが見られた。図4に各層の厚さを他例と併せて示す。
[実施例2]
プラズマに供給する水素ガスを9L/分にした以外は実施例1と同様してニッケル微粉を得るとともに評価した。ニッケル微粉のBET径は152nmであった。このニッケル微粉をXRDにより解析し、結晶子径をScherrer法によって算出したところ、1298Åであった。BET径に対する結晶子サイズは85%であり、単結晶に近い結晶性のニッケル微粉ができていることがわかった。硫黄及び酸素含有量は、それぞれ0.24質量%、1.0質量%であった。TMAによる測定の結果、収縮開始温度は約360℃であり、収縮率は7.9%であった。表1に各評価結果を他例と併せて示す。
また、FE−AESの分析により、酸素を含む被覆層は、厚さが14nmと薄いものであった。また、硫黄を含む層は、厚さが8nmであった。図4に各層の厚さを他例と併せて示す。
[実施例3]
ニッケル粉として以下に記載するニッケル粉末を用いた以外は実施例1と同様してニッケル微粉を得るとともに評価した。ニッケル粉末(Inco Special Products and Inco Limited製、ニッケル、Type255、平均粒径2.2〜2.8μm)4kgを50℃に調整した純水16Lに投入し、一硫化水素ナトリウムn水和物を18g添加して30分間攪拌させた。その後に1回レパルプし、ろ過・真空乾燥(36時間)を行い、解砕してニッケル原料とした。ニッケル原料中の硫黄含有量は0.2質量%であり、酸素含有量は0.4質量%であった。
ニッケル微粉のBET径は125nmであった。このニッケル微粉をXRDにより解析し、結晶子径をScherrer法によって算出したところ、936Åであった。BET径に対する結晶子サイズは75%であり、単結晶に近い結晶性のニッケル微粉ができていることがわかった。硫黄及び酸素含有量は、それぞれ0.26質量%、0.99質量%であった。TMAによる測定の結果、収縮開始温度は330℃であり、収縮率は12.6%であった。表1に各評価結果を併せて示す。
図2は、FE−AESの分析結果を示すグラフである。酸素を含む被覆層は、厚さが10nmと薄いものであった。また、硫黄を含む層は、厚さが6nmであった。また、ニッケル硫化物として、硫化ニッケルが73%、硫酸ニッケルが27%含まれていた。また、ニッケル硫化物の濃度分布において、表面から2〜3nmの範囲に濃度ピークが見られた。図4に各層の厚さを他例と併せて示す。
[実施例4]
一硫化水素ナトリウムn水和物の添加量を36gとした以外は実施例3と同様にしてニッケル粉末を得た。得られたニッケル粉末は硫黄含有量が0.37質量%であり、酸素含有量が0.4質量%であった。このニッケル粉末をニッケル原料として用いた以外は実施例1と同様してニッケル微粉を得るとともに評価した。
ニッケル微粉のBET径は117nmであった。結晶子サイズは819Åであった。BET径に対する結晶子径70%であり、単結晶に近い結晶性のニッケル微粉ができていることがわかった。硫黄及び酸素含有量はそれぞれ0.39質量%、0.82質量%であった。TMAによる測定の結果、収縮開始温度は310℃であり、収縮率は12.8%であった。表1に各評価結果を併せて示す。
また、FE−AESの分析により、酸素を含む被覆層は、厚さが12nmと薄いものであった。また、硫黄を含む層は、厚さが10nmであった。図4に各層の厚さを他例と併せて示す。
[比較例1]
プラズマに供給するガスをアルゴンの総量180L/分、水素6L/分としたこと、ニッケル原料としてニッケル粉末(Inco Special Products and Inco Limited製、ニッケル、Type255、平均粒径2.2〜2.8μm)のみを用いたこと以外は実施例1と同様してニッケル微粉を得るとともに評価した。なお、ニッケル原料中の硫黄含有量は0質量%であり、酸素含有量は0.05質量%であった。
ニッケル微粉のBET径は169nmであり、結晶子サイズは828Åであった。BET径に対する結晶子径は49%であり、結晶性が悪いニッケル微粉であることがわかった。硫黄は含有されておらず、酸素含有量は0.63質量%であった。TMAによる測定の結果、収縮率は14.0%であり、収縮開始温度は約190℃であった。表1に各評価結果を併せて示す。
[比較例2]
従来技術の一つである塩化ニッケル蒸気を水素で還元する化学気相反応法で製造されたニッケル微粉を比較例として用いた。その微粉のBET径は130nmであり、結晶子サイズは903Åであった。BET径に対する結晶子サイズは69%であった。硫黄及び酸素含有量はそれぞれ0.18質量%、1.6質量%であった。TMAによる測定の結果、収縮開始温度は320℃であり、収縮率は15.5%であった。
図3は、FE−AESの分析結果を示すグラフである。酸素を含む被覆層は、厚さが16nmと厚いものであった。また、硫黄を含む層は、厚さが8nmであった。また、ニッケル硫化物として、硫化ニッケルが100%含まれていた。また、ニッケル硫化物の濃度分布において、表面から2〜3nmの範囲に濃度ピークが見られた。図4に各層の厚さを他例と併せて示す。
Figure 2011037150
本製法によって得られた実施例1〜4は、比表面積径に対する結晶子径60%以上と結晶性が非常に良いニッケル微粉である。また、表面にニッケル硫化物及びニッケル酸化物を含む混合物が形成されており、酸素を含む被覆層の厚さが15nm以下であることから、収縮開始温度が高く、収縮率も小さく、良好な熱収縮特性を有していることがわかる。
一方、硫黄を含有しない比較例1は、収縮開始温度が低く、収縮率が大きく、熱収縮特性が良好でない。また、塩化ニッケル蒸気を水素で還元する化学気相反応法で製造された比較例2は、結晶性は良好で、収縮開始温度が高いが、収縮率が大きいものとなっている。これは、化学気相反応法を用いているため、塩素を除去するための洗浄が必要となり、過剰な洗浄により表面が酸化して、酸素を含む被覆層が厚くなったためと考えられる。
次に、ニッケル微粉の触媒活性について評価した。評価方法は、上記(7)に示す「ニッケル微粉の触媒活性の評価」により行った。
[実施例5]
プラズマ入力約60kWで高周波プラズマを点火して、アルゴンの総量209L/分、水素45L/分、雰囲気圧力60kPaに調整し、安定したプラズマ炎を得た。搬送ガス(アルゴン24リットル/分)により、プラズマ炎の内部に実施例3と同様のニッケル原料を1kg/hrで供給して微粉を作製した。
得られた微粉化ニッケルは、大気雰囲気に暴露することなく回収装置に搬送され、回収装置内にて、アルゴン−10容量%空気(約2容量%酸素)雰囲気中で約10時間保持する徐酸化処理を行った後、装置から回収した。
得られたニッケル微粉のBET径は、130nmであった。硫黄及び酸素含有量は、それぞれ0.12質量%、0.90質量%であった。
また、上記(7)に示す「ニッケル微粉の触媒活性の評価」のように、エチルセルロース(EC)を用いて導電ペーストを作製した。この導電ペーストをTG測定装置により測定した結果、ECの熱分解温度は339℃であり、EC本来の熱分解温度と同等であった。表2に各評価結果を他例と併せて示す。また、図5に、ニッケル微粉のEC熱分解特性結果を表すグラフを示す。
[実施例6]
プラズマに供給する水素ガスを9L/分にした以外は実施例5と同様してニッケル微粉を得るとともに評価した。ニッケル微粉のBET径は123nmであった。硫黄及び酸素含有量は、それぞれ0.16質量%、1.0質量%であった。
また、上記(7)に示す「ニッケル微粉の触媒活性の評価」のように、エチルセルロース(EC)を用いて導電ペーストを作製した。この導電ペーストをTG測定装置により測定した結果、ECの熱分解温度は336℃であり、EC本来の熱分解温度と同等であった。表2に各評価結果を他例と併せて示す。また、図5に、ニッケル微粉のEC熱分解特性結果を表すグラフを示す。
[実施例7]
ニッケル粉としてニッケル原料中の硫黄含有量は0.15質量%とし、プラズマ入力約105kWで高周波プラズマを点火して、アルゴンの総量209L/分、水素18L/分、雰囲気圧力50kPaに調整し、安定したプラズマ炎を得た。搬送ガス(アルゴン24リットル/分)により、プラズマ炎の内部にニッケル原料を2.2kg/hrで供給して微粉を作製した。ニッケル微粉のBET径は、130nmであった。硫黄及び酸素含有量は、それぞれ0.2質量%、0.85質量%であった。
また、上記(7)に示す「ニッケル微粉の触媒活性の評価」のように、エチルセルロース(EC)を用いて導電ペーストを作製した。この導電ペーストをTG測定装置により測定した結果、ECの熱分解温度は336℃であり、EC本来の熱分解温度と同等であった。表2に各評価結果を他例と併せて示す。また、図5に、ニッケル微粉のEC熱分解特性結果を表すグラフを示す。
[実施例8]
ニッケル粉としてニッケル原料中の硫黄含有量は0.18質量%とし、プラズマ入力約60kWで高周波プラズマを点火して、アルゴンの総量175L/分、水素6.4L/分、雰囲気圧力60kPaに調整し、安定したプラズマ炎を得た。搬送ガス(アルゴン15リットル/分)により、プラズマ炎の内部にニッケル原料を1.6kg/hrで供給して微粉を作製した。ニッケル微粉のBET径は、86nmであった。硫黄及び酸素含有量はそれぞれ0.27質量%、1.30質量%であった。
また、上記(7)に示す「ニッケル微粉の触媒活性の評価」のように、エチルセルロース(EC)を用いて導電ペーストを作製した。この導電ペーストをTG測定装置により測定した結果、ECの熱分解温度は337℃であり、EC本来の熱分解温度と同等であった。表2に各評価結果を他例と併せて示す。酸素を含む被覆層は、厚さが10nm以下と薄いものであった。また、ニッケル硫化物として、電子線回折からスポット状であるため、非常に結晶性の良いものであった。XPSより表面層は硫化ニッケルが65%、硫酸ニッケルが35%の割合で含まれていた。
[比較例3]
ニッケル粉としてニッケル原料中の硫黄含有量は0質量%にした以外は実施例8と同様の条件で行った。ニッケル微粉のBET径は、147nmであった。酸素含有量は0.79質量%であった。
また、上記(7)に示す「ニッケル微粉の触媒活性の評価」のように、エチルセルロース(EC)を用いて導電ペーストを作製した。この導電ペーストをTG測定装置により測定した結果、ECの熱分解温度は280℃及び339℃であり、ニッケルの触媒作用によりEC本来の熱分解温度より60℃以上低温で分解が起こった。表2に各評価結果を他例と併せて示す。
比較例3のニッケル粉の酸素を含む被覆層は、厚さが10nm以下と薄いものであった。また、ニッケル酸化物として、電子線回折からスポット状であるため、非常に結晶性の良いものであった。しかし、ECの分解温度が低温化されていることから、ニッケル硫黄化合物が触媒活性をおさえる効果があるものと考えられる。
Figure 2011037150
本製法によって得られた実施例5〜8は、表面にニッケル硫化物及びニッケル酸化物を含む混合物が形成され、特に硫酸ニッケルと硫化ニッケルとの存在比が高く、結晶性の高い硫化ニッケル及び硫酸ニッケルが形成されているため、ECの熱分解温度は337℃であり、EC本来の熱分解温度と同等であることが分かる。
一方、硫黄を含有しない比較例3は、ECの分解温度が低温化されており良好でない。
本発明の一実施の形態におけるニッケル微粉は、EC本来の熱分解温度と同等であり、MLCCの内部電極形成用のニッケル微粉として好適である。また、高純度であることから、電子機器・部品の配線形成用材料としても好適に用いられる。

Claims (15)

  1. 平均粒径が0.05〜0.3μm、比表面積径に対する結晶子径が60〜90%、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%、及び酸素含有量が0.4〜1.5質量%であり、
    表面に酸素を含む厚さが2〜15nmの被覆層を有し、少なくとも該被覆層の最外面がニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物を含む混合物で構成されていることを特徴とするニッケル微粉。
  2. 前記被覆層は、ニッケル酸素化合物を含有し、
    最表面側に存在するニッケル硫黄化合物を含む層と、内面側に存在するニッケル硫黄化合物を含まない層との2層から構成されることを特徴とする請求項1に記載のニッケル微粉。
  3. X線光電子分光法(XPS)分析において、最外面に含有される硫黄化合物における硫化ニッケルの存在比が50%〜100%、ニッケル酸素化合物における水酸化ニッケルの存在比が0〜50%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル微粉。
  4. 前記最外面のニッケル硫黄化合物における硫酸ニッケルの存在比が40%以下であることを特徴とする請求項3に記載のニッケル微粉。
  5. 前記被覆層におけるニッケル硫黄化合物を含む層が、さらに最表面側に存在する硫酸ニッケルを含む層と、内面側に存在するニッケル硫黄化合物として主に硫化ニッケルを含む層との2層から構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニッケル微粉。
  6. 前記被覆層は、表面から10nm以下の範囲に硫黄の傾斜的な濃度勾配を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のニッケル微粉。
  7. 前記被覆層におけるニッケル硫黄化合物の濃度分布は、前記最外面で最大となることを特徴とする請求項6に記載のニッケル微粉。
  8. 還元性雰囲気中において1300℃まで加熱した場合の収縮率が、熱機械的分析装置による測定において15%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のニッケル微粉。
  9. 還元性雰囲気中において熱プラズマにより気化させ、発生した蒸気を凝縮させて得た硫黄含有ニッケル微粉を弱酸化性雰囲気中で保持して得られるものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のニッケル微粉。
  10. 硫黄含有量が0.1〜0.5質量%となるニッケル原料を調製する原料調製工程と、
    前記調製されたニッケル原料を、不活性ガスと水素ガスを含む還元雰囲気中にて熱プラズマにより気化させ、発生した硫黄及び酸素を含むニッケル蒸気を凝縮させて微粉化させる微粉化工程と、
    前記微粉化された微粉化ニッケルを冷却して回収する回収工程と、
    前記回収された微粉化ニッケルを、酸素を含有する弱酸化性の不活性ガス雰囲気中で保持して微粉化ニッケル表面を徐酸化し、ニッケル微粉を得る徐酸化工程とを有するニッケル微粉の製造方法。
  11. 前記徐酸化工程における保持温度が100℃以下であることを特徴とする請求項10に記載のニッケル微粉の製造方法。
  12. 前記徐酸化工程における不活性ガス雰囲気中の酸素含有量が1〜5容量%であることを特徴とする請求項10又は11に記載のニッケル微粉の製造方法。
  13. 前記原料調製程では、予め硫黄含有量が0.1〜0.5質量%含まれるニッケルを前記ニッケル原料として調製するか、又は硫黄を含有した酸化ニッケルとニッケルとを配合し、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%となるニッケル原料を調製することを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のニッケル微粉の製造方法。
  14. 前記熱プラズマとして高周波誘導プラズマを用いることを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載のニッケル微粉の製造方法。
  15. 平均粒径が0.05〜0.3μm、比表面積径に対する結晶子径が60〜90%、硫黄含有量が0.1〜0.5質量%、及び酸素含有量が0.4〜1.5質量%であり、
    表面に酸素を含む厚さが2〜15nmの被覆層を有し、該被覆層の最外面がニッケル硫化物及びニッケル酸化物を含む混合物で構成されていることを特徴とするニッケル微粉。
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