本発明は、遮光部と、該遮光部により区画された区画領域を有する透明基板に対して、複数の吐出ノズルを有するインクジェットヘッドによってインクを供給し、前記区画領域をインクで充填するカラーフィルタ製造方法、およびこのカラーフィルタ製造方法において特に好適なカラーフィルタ用インクに関する。
近年、パーソナルコンピュータ、カラー液晶ディスプレイの需要が増加し、ディスプレイの大きさも大型化してきている。
従来から提供されているカラーフィルタ製造装置としては、スピンコーター、あるいはコーターによるフォトリソグラフィを主体とする製造プロセスを利用する装置が主として使用されていた。
しかし、近年は、コスト低減、環境への配慮が強く望まれるようになってきたことを配慮して、複数の吐出ノズルを有するインクジェットヘッドを用いるカラーフィルタ製造方法が注目されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
そして、インクジェットヘッドを用いるカラーフィルタ製造方法でカラーフィルタを製造すれば、レジスト、インクの量を削減できるという利点を享受できるとともに、現像等の薬剤処理を不要にできるという利点を享受できる。
さらに説明する。
特許文献1に記載されたカラーフィルタ製造方法では、基板上にその上面が撥インク性を有する凸部を形成し、その凸部により区切られた凹部にインクジェット方式によってインクを吹き付けて凹部にインクを堆積させて着色層を形成するカラーフィルタの製造方法において、凹部を親インク処理剤により表面処理した基板を用いるようにしている。
特許文献2に記載されたカラーフィルタ製造方法では、基材上に凸部を形成し、その凸部により区切られた凹部にインクジェット方式によってインクを吹き付けて凹部にインクを堆積させて着色層を形成するカラーフィルタの製造方法において、凸部を形成後、エネルギー線を照射することにより凹部の親インク性を制御し、その後インクジェット方式によりインクを吹き付けるようにしている。
特許文献3に記載されたカラーフィルタ製造方法では、支持基板上に複数の画素と隣接する画素間に位置する樹脂組成物からなる隔壁とを少なくとも有する光学素子の製造方法であって、支持基板上に、該基板の法線方向の断面が逆テーパー形状の隔壁を形成する工程と、上記隔壁表面にフッ素化処理を施す工程と、インクジェット方式により上記隔壁で囲まれた領域にインクを付与して画素を形成する工程とを有するようにしている。
特許文献4に記載されたカラーフィルタの製造方法では、溶剤は20℃での蒸気圧が0.33mmHgより小さく、60〜90℃での蒸気圧が20℃での蒸気圧の5倍以上であり、及び/または60〜90℃での蒸発速度がブチルアセテートの20℃での蒸発速度の十分の一より大きいインクを用いることが記載されている。
また、インクジェット方式により紙媒体にインクを供給する用途においては、インクとして、紙に塗布する関係上、紙への浸透性が重視されるだけでなく、塗布後に加熱なしで使用される関係上、耐熱性があまり必要ではなく、色材の光の吸収により反射色にて発色する発色メカニズムを採用し、安全性、浸透性の観点から主に水系のものが採用される。
特開平9−203803号公報
特開平9−230129号公報
特開2002−62422号公報
特開2007−4181号公報
インクジェットヘッドを用いるカラーフィルタ製造方法でカラーフィルタを製造する場合には、吐出ノズルの詰まりに起因するインクの吐出不良、定量性の低下、着弾精度の低下、遮光部により区画された区画領域の白抜け等の不都合が生じてしまう。
そして、これらの不都合によって、遮光部により区画された区画領域に所定のインクが隙間なく充填されるという保証がなくなり、目標とする区画領域に隣接する区画領域にインクが飛散してしまい、これらの結果、所望の着色性が達成できなくなってしまう。
したがって、製造したカラーフィルタをパーソナルコンピュータ、カラー液晶ディスプレイとして使用すると、ドット抜けの発生、色むらの発生、色彩性の低下、色コントラストの低下などの不都合が生じ、最悪の場合には、カラーフィルタが不良品になってしまう。
これらの不都合が生じる原因は、インクが吐出ノズル面に付着し、固化すること、または、インクの濡れ広がり性よりも速乾性があることであり、また、ガラス基板上にある画素面の濡れ性が悪いこと、または部分的に濡れ性が悪いことであるが、従来は、紫外線、プラズマ等を用いる物理的改質洗浄装置等により被着色物である透明ガラス基板を洗浄することで、インクの濡れ性を向上させ、白抜けを抑制するようにしていた。
さらに説明する。
特許文献1に記載されたカラーフィルタ製造方法では、凸部により区切られた凹部という極めて微小な区域に対して「親インク処理剤による表面処理」を行うことが必須であり、撥インク性を有する凸部に「親インク処理剤」を付着させることなく前記表面処理を実施するためには、格段の注意を必要とし、非常に手間がかかるので、実用的でないという問題がある。
特許文献2に記載されたカラーフィルタ製造方法では、エネルギー線の照射のために光源と、エネルギー線を対象物全体に照射するための空間と、光源と照射対象物との間の遮蔽物のない装置環境とが必要であり、一般的な門型の移動台に設置されるインクジェット塗布装置との干渉等を考慮すると、カラーフィルタ製造装置の大型化、または塗布装置とエネルギー線照射装置の別体化による設置面積の巨大化等の問題がある。
特許文献3に記載されたカラーフィルタ製造方法では、基板の法線方向の断面が逆テーパー状の隔壁を形成するに当って、ネガ型の感光剤を適正露光より少なめに露光して逆テーパー形状を形成し、または積層パターニングした順テーパーの反転形状転写により逆テーパー形状を形成するという、非常に不安定な、または複雑な工程を採用しなければならず、実用的でないという問題がある。
特許文献4に記載されたカラーフィルタの製造方法では、特定の蒸気圧を持つ溶剤を用いることが記載されているが、インクジェット装置に関する知見はほとんど得られていなかった。実際、このようなインクを用いただけでは安定してカラーフィルタを製造することは困難であるという問題があり、材料及び装置の両方を改善することにより、不都合なく製造可能なカラーフィルタの製造方法が求められていた。
すなわち、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載されたカラーフィルタ製造方法は、BM(ブラックマトリクス)の上面とBMで囲まれた領域のそれぞれの平坦部分に撥インク性の差をつけ、インクの付着が必要な部分は親インク性をより強くし、インクの付着が好ましくない部分は撥インク性をより強くすることで、白抜け、混色等の問題を払拭しようとしているが、それぞれが上記の問題点を有している。
また、前記不都合が生じる原因は、吐出ノズルによるインクの吐出量が極めて微量であるため、所定の区画領域に標的したインクが飛翔中、および着弾すると同時に乾燥することであり、白抜け、厚みむらが発生することになってしまう。
さらに、前記不都合が生じる原因は、複数の吐出ノズルがインク吐出動作を休止している間にインクが乾燥固化すること、固化した残渣物が堆積することに起因して吐出ノズルが詰まること、残渣物に起因して吐出されるインクの方向が曲がること、インクの吐出量がばらつくことである。
さらに説明する。
近年の高精細なディスプレイ用のカラーフィルタ開発の要求に応えるためには、「画素の微細化に応じた塗布インクの液滴の微細化」が必要であり、塗布インクの液滴を微細化すると、液滴の飛行軌跡、および対象とする画素領域にインクが付着した後のインクの乾燥の影響が無視できなくなってしまう。
この結果、上記の問題が生じるのである。
また、カラーフィルタ用インクは、遮光部により区画された区画領域を有する透明基板に塗布される関係上、基板に対する浸透性が全くないだけでなく、塗布後に加熱硬化が必要である関係上、耐熱性が要求され、バックライト光を透過させることにより発色させ、耐熱性などの観点から有機溶剤系でなければならないので、インクジェット方式により紙媒体に供給されるインクとは全く異なる。
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、白抜け、混色等の発生を防止し、または抑制し、しかも、液滴を微細化した場合であっても、乾燥の影響を低減することができるカラーフィルタ用インクを提供することを第1の目的とし、白抜け、混色等の発生を防止し、または抑制し、しかもインク(着色剤)の液滴を微細化した場合であっても、乾燥の影響を低減することができるカラーフィルタ製造方法に提供することを第2の目的としている。
本発明のカラーフィルタ用インクは、遮光部と、該遮光部により区画された区画領域を有する透明基板に対して、複数の吐出ノズルを有するインクジェットヘッドによって供給され、前記区画領域を充填するカラーフィルタ用インクであって、20℃において2〜200Paの飽和蒸気圧を有する溶剤を50〜88重量%含むことを特徴とするものである。
このカラーフィルタ用インクを吐出ノズルから吐出し、透明基板に供給することにより、白抜け、混色等の発生を防止した状態でカラーフィルタを製造することができる。
そして、カラーフィルタ用インクが上記溶剤を含んでいるので、カラーフィルタ製造方法に適用した場合に、カラーフィルタ用インクが乾燥し、または乾燥固化することに起因する不都合(吐出ノズルの詰まり、カラーフィルタ用インクの飛行軌跡の曲がり)の発生を防止し、または低減することができる。
また、前記溶剤が、20℃において2〜50Paの飽和蒸気圧を有するものであり、前記溶剤を50〜88重量%含むものであることが好ましく、吐出ノズルの詰まり、カラーフィルタ用インクの飛行軌跡の曲がりの発生を防止し、または低減することができるとともに、所望の区画領域に白抜けを生じさせることなくカラーフィルタ用インクを充填することができ、しかも区画領域内のカラーフィルタ用インクの厚みを均一にすることができるという利点を達成することができる。
また、前記カラーフィルタ用インクが少なくとも2種類の溶剤を含み、そのうちの1種類は表面張力が35〜45mN/mの溶剤であり、かつ、他のうちの1種類は表面張力が20〜30mN/mの溶剤であることが好ましく、さらに安定なインクジェット吐出を行うことが可能になるとともに、カラーフィルタ用インクの着弾時の拡がりが格別に良好となり白抜けなどの欠点を抑制し、歩留まり良くカラーフィルタを製造することができる。
また、表面張力が35〜45mN/mの溶剤の蒸気圧が、表面張力が20〜30mN/mの溶剤の蒸気圧よりも高いことが好ましく、表面張力が35〜45mN/mの溶剤が吐出の安定性効果に寄与するとともに、着弾時には蒸気圧が比較的高いために優先的に蒸発していき、着弾後には表面張力が20〜30mN/mの溶剤の効果が増大するため画素内での拡がりを格段に良好にすることができる。
本発明のカラーフィルタ製造方法は、遮光部と、該遮光部により区画された区画領域を有する透明基板に対して、複数の吐出ノズルを有するインクジェットヘッドによってインクを供給し、前記区画領域をインクで充填する方法において、
前記インクが、20℃において2〜200Paの飽和蒸気圧を有する溶剤を50〜88重量%含むことを特徴とするものである。
このカラーフィルタ製造方法では、上記溶剤を含むインクを吐出ノズルから吐出し、透明基板に供給することにより、白抜け、混色等の発生を防止した状態でカラーフィルタを製造することができる。
そして、インクが上記溶剤を含んでいるので、インクが乾燥し、または乾燥固化することに起因する不都合(吐出ノズルの詰まり、インクの飛行軌跡の曲がり)の発生を防止し、または低減することができる。
また、前記溶剤が、20℃において2〜50Paの飽和蒸気圧を有するものであり、前記インクが、前記溶剤を50〜88重量%含むものであることが好ましく、吐出ノズルの詰まり、インクの飛行軌跡の曲がりの発生を防止し、または低減することができるとともに、所望の区画領域に白抜けを生じさせることなくインクを充填することができ、しかも区画領域内のインクの厚みを均一にすることができるという利点を達成することができる。
また、前記インクが少なくとも2種類の溶剤を含み、そのうちの1種類は表面張力が35〜45mN/mであり、かつ、他のうちの1種類は表面張力が20〜30mN/mであることが好ましく、さらに安定なインクジェット吐出を行うことが可能になるとともに、インクの着弾時の拡がりが格別に良好となり白抜けなどの欠点を抑制し、歩留まり良くカラーフィルタを製造することができる。
また、表面張力が35〜45mN/mの溶剤の蒸気圧が、表面張力が20〜30mN/mの溶剤の蒸気圧よりも高いことが好ましく、表面張力が35〜45mN/mの表面張力を持つ溶剤が吐出の安定性効果に寄与するとともに、着弾時には蒸気圧が比較的高いために優先的に蒸発していき、着弾後には表面張力が20〜30mN/mの溶剤の効果が増大するため画素内での拡がりを格段に良好にすることができる。
さらに、微小な前記区画領域に微量のインクを吐出、着弾させて、当該区画領域にインクを濡れ広げるために、従来は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類等の高い飽和蒸気圧を有する溶剤を用いていたので、濡れ広がり速度よりも乾燥速度(乾燥時間が1秒以下)の方が早いため、前記透明基板の洗浄等により濡れ広がり性を改善する処理が必要であったのに対して、本発明では、低い飽和蒸気圧を有する溶剤を用いることで乾燥速度を遅くすることができるので(乾燥時間が5秒以上)、濡れ広がり性を改善するための処理を特別に行う必要がなくなり、インクを1発のみ吐出着弾させたときの着弾直径が従来は60μm程度であったが80〜150μmと着弾直径が大きく濡れ性が改善できる。
さらにまた、低い飽和蒸気圧を有する溶剤を用いることによって、吐出液滴形成時においては、熱或いは圧力変化によるインクの吐出に当って、インクの液性状が安定し、液滴形成も安定であり、吐出ノズル周辺においては、吐出ノズル口周辺に液残渣があっても、乾燥固化することが少なく、吐出時の液滴形成への影響を低くでき、液滴飛行中においては、溶剤の蒸発量を少なくすることができ、着弾後においては、複数の着弾液滴の混じりを良好にすることができる、などの利点を享受することができる。
本発明のカラーフィルタ用インクは、白抜け、混色等の発生を防止した状態でのカラーフィルタの製造に貢献することができ、しかも、カラーフィルタ製造方法に適用した場合に、カラーフィルタ用インクが乾燥し、または乾燥固化することに起因する不都合(吐出ノズルの詰まり、カラーフィルタ用インクの飛行軌跡の曲がり)の発生を防止し、または低減することができるという特有の効果を奏する。
本発明のカラーフィルタ製造方法は、白抜け、混色等の発生を防止した状態でカラーフィルタを製造することができ、しかも、インクが乾燥し、または乾燥固化することに起因する不都合(吐出ノズルの詰まり、インクの飛行軌跡の曲がり)の発生を防止し、または低減することができるという特有の効果を奏する。
以下、添付図面を参照して、本発明のカラーフィルタ用インクおよびカラーフィルタ製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明のカラーフィルタ製造方法が適用されるカラーフィルタ製造装置の一実施形態を示す概略図である。
このカラーフィルタ製造装置は、機台1上に吸着テーブル3、塗布ガントリー4、カメラガントリー6などを支承している。
吸着テーブル3は、ガラス基板2を吸着保持するものであり、このガラス基板2の位置決めを達成するために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、回転駆動されるとともに、Y方向に駆動される。
塗布ガントリー4は、インクジェットヘッド5を保持するものであり、ガラス基板2にインク(カラー材料、カラーフィルタ用インク)を塗布するために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、X方向に駆動される。また、ガラス基板2に対する相対位置を調整するために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、Z方向、Y方向に駆動される。
カメラガントリー6は、ガラス基板2のアラインメントのためのアラインメントカメラ7、8、およびガラス基板2のブラックマトリックスの画素を検出するためのスキャンカメラ9を保持するものであり、アラインメント、画素検出のために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、X方向に駆動される。また、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、アラインメントカメラ7、8、スキャンカメラ9をY方向に駆動する。
アラインメントカメラ7、8はガラス基板2のマーク(図示せず)を検出するものであり、アラインメントカメラ7、8によるマーク検出結果に基づいて吸着テーブル3を回転させ、および/またはY方向に移動させることにより、ガラス基板2のアラインメントを達成することができる。
なお、X、Yは、吸着テーブル3により吸着保持されたガラス基板2の上面と平行な平面を規定すべく設定された互いに直交する方向を表し、Zは、X、Yにより規定された平面と直交する方向を表している。
したがって、塗布ガントリー4を移動させながらインクジェットヘッド5を動作させることによって、ガラス基板2にインクを供給し、カラーフィルタを製造することができる。
図2はインクジェットヘッド5に対するインク供給のための構成を示す概略図である。
この構成は、インクを収容するメインタンク51と、メインタンク51からインクを導出する連通路52と、連通路52に介在された開閉バルブ53と、連通路52を介して上部にインクが供給されるサブタンク54と、サブタンク54の下部からインクが導かれるインクジェットヘッド5と、開閉バルブ56を介在させた連通路57を通してメインタンク51に圧力を加える圧空レギュレータ58と、サブタンク54の上部に連通されたエア抜きバルブ59と、サブタンク54の上部および下部と連結されるとともに、サブタンク54を包囲して負圧室を形成するケーシング部材55を有している。
したがって、開閉バルブ53を開いてメインタンク51からサブタンク54にインクを供給した後は、開閉バルブ53を閉じて、インクジェットヘッド5の吐出ノズルを動作させることによって、インクを吐出することができる。
前記インクは、樹脂、溶剤、色素、必要に応じて硬化剤、分散剤や、その他の添加剤などが混合されたものであり、遮光部で囲まれた領域に噴射された後、乾燥、加熱もしくは紫外線などのエネルギー線を照射することによって硬化させ、カラーフィルタの画素とすることができる。
ここで、樹脂としては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニールアルコール、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどが例示できるが、これらに限定されない。
これらの中でもポリイミド樹脂は好ましく、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸の状態であっても良いし、骨格にヒドロキシル基やスルホニル基などの極性基を導入することにより溶剤への溶解性を向上させた可溶性ポリイミドを用いても良い。ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンの反応により得ることができ、脂肪族系または脂環式系、芳香族系、フッ素含有のものなど、任意のものを用いることができる。また、ジアミンの一部として、シロキサンジアミンを用いると、無機基板との接着性を良好にすることができる。シロキサンジアミンは、通常、全ジアミン中の1〜20モル%量用いる。シロキサンジアミンの量が少なすぎれば接着性向上効果が発揮されず、多すぎれば耐熱性が低下する。シロキサンジアミンの具体例としては、ビス−3−(アミノプロピル)テトラメチルシロキサンなどが挙げられる。
また、アクリル樹脂も好ましく用いられ、特に限定はないが、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体を好ましく用いることができる。不飽和カルボン酸の例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、あるいは酸無水物などが挙げられる。これらは単独で用いても良いが、他の共重合可能なエチレン性不飽和化合物と組み合わせて用いても良い。共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸nープロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソ−ブチル、メタクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ペンチル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸アルキルエステル、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、1,3−ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン、それぞれ末端にアクリロイル基、あるいはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリシリコーンなどのマクロモノマーなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
そして、耐熱性を有している樹脂であることが好ましい。また、可視領域で透明性が高い樹脂であることが必要である。
色素は、染料、顔料系のものの何れであってもよいが、耐熱性を考慮すれば顔料系のものであることが好ましく、有機顔料系のものであることが一層好ましい。インクに使用できる代表的な有機顔料をカラーインデックスナンバーで表すと、赤色顔料としては、ピグメントレッド9、97、122、123、144、149、166、168、177、190、192、209、215、216、224、254等が例示でき、緑色顔料としては、ピグメントグリーン7、10、36、47等が例示でき、青色顔料としては、ピグメントブルー15:3、15:4、15:6、21、22、60、64等が例示できる。そして、顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理、塩基性処理等の表面処理が施されていてもよい。
前記溶剤は、ヘッドの詰まりを防止し、かつインクが基板上に着弾した時にも固化しない効果を有するものである。ヘッドの詰まりについては、インクを間欠的に、例えば5秒間の吐出停止の後に吐出可能かどうかで判断できる。また、インクが基板上に着弾した時にも固化していないことは、着弾後の基板を加熱乾燥することなく、綿棒のようなもので拭き取ってやり、綿棒にインクが付着していることで確認できる。
このような溶剤としては、20℃における飽和蒸気圧が、2〜200Paの範囲内であるものが好ましく、2〜50Paの範囲内であるものがより好ましい。飽和蒸気圧が2Pa未満であれば、予備乾燥時間が長くなり、基板を搬送できるまでに長時間を要し、タクトタイムが遅くなるという問題があり、飽和蒸気圧が200Paを越えれば、インクの画素内における濡れ広がり速度よりも乾燥速度が早くなりムラになりやすく、またヘッドの詰まりの問題が発生するため好ましくない。これら溶剤はインク全量に対して50〜88重量%含むことが好ましい。50重量%未満であれば、溶剤の効果が小さくなり、ヘッドの詰まりが発生しやすくなるため好ましくなく、88重量%よりも多ければ、色素や樹脂等の固形物の必要量を確保できなくなり、カラーフィルタとしての所望の色を得ることが困難になるからである。
このような溶剤としては、例えば、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、しゅう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、N−メチルピロリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、マロン酸ジエチル、β―プロピオラクトン、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、δ―バレロラクトン、γ―カプロラクトン、ε―カプロラクトン、ダイアセトンアルコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテートなどが挙げられる。これらの溶剤の中でも、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、γ―ブチロラクトンが乾燥の抑制効果および顔料分散性が良好な点から好ましく、さらにジプロピレングリコールn−ブチルエーテルがより好ましい。また、これら溶剤を2種類以上混合することもでき、さらに、他の溶剤を含むこともできる。
他の溶剤としては、例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールエーテル系溶剤、あるいは、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸エチル、メチル―3―メトキシプロピオネート、3―メチル―3―メトキシブチルアセテートなどの脂肪族エステル類、あるいは、エタノール、ブタノール、3―メチル―3―メトキシブタノールなどの脂肪族アルコール類、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、N―メチル―2―ピロリドン、N,N―ジメチルアセトアミド、N,N―ジメチルホルムアミドなどのアミド系極性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などが挙げられるがこれらに限定されない。
何れの場合にも、溶剤は、20℃(通常使用される温度)において2〜200Paの飽和蒸気圧を有するものであり、インクが、溶剤を50〜88重量%含むものであれば、他の溶剤を含んでいてもよく、また、溶剤は、20℃において2〜50Paの飽和蒸気圧を有するものであり、インクが、溶剤を50〜88重量%含むものであることが好ましく、その場合に他の溶剤を含んでいてもよい。
なぜならば、飽和蒸気圧が2Pa未満であれば、予備乾燥時間が長くなり、基板を搬送できるまでに長時間を要し、タクトタイムが遅くなるという問題があり、飽和蒸気圧が200Paを越えれば、また、溶剤が50重量%未満であれば、濡れ広がり速度よりも乾燥速度が早くなるという問題があるからであり、溶剤が88重量%よりも多ければ、色素や樹脂等の固形物の必要量を確保できなくなるからである。
そして、インクとして、20℃において39Paの飽和蒸気圧を有するN−メチル−2ピロリドンを溶剤とし、顔料、樹脂、分散剤等の固形分を15重量%としたものを採用することが可能であり、この場合には、溶剤を85重量%含むことになる。
また、N−メチル−2ピロリドンと、50Paの飽和蒸気圧を有する2−エトキシエチルエーテル、8Paの飽和蒸気圧を有するジプロピレングリコールn−ブチルエーテルとを混合したものを溶剤として採用してもよい。
要するに、20℃において2〜200Paの飽和蒸気圧、好ましくは2〜50Paの飽和蒸気圧を有するように、任意の溶剤を混合することが可能である。
インクとしては、表面張力が30〜40mN/mのものであることが好ましい。表面張力がこの範囲から外れるとインクジェットヘッド5の吐出ノズルから吐出する際に、サテライトや飛行曲がりなどが発生することがあり、カラーフィルタの異なる色の画素へ混色が起きるおそれがあるため好ましくない。表面張力の測定方法としては、リング法、プレート法、懸滴法などが挙げられるが、測定誤差の小ささから懸滴法が好ましい。懸滴法による測定装置としては、例えば協和界面科学株式会社の“Drop Master 500”があげられる。
インクは、上記の範囲の吐出前の表面張力を有し、かつ着弾時の表面張力が20〜30mN/mのものであることが好ましい。基板への着弾時の表面張力が大きすぎる場合、つまり30mN/mより大きい場合はインク自体が表面積を小さくしようとする力が働く。さすれば画素内でのインクの拡がりが悪化し、結果としてカラーフィルタの白抜け欠陥を生じてしまうため好ましくない。すなわち、インクの吐出前の表面張力として好ましい30〜40mN/mでは大き過ぎ、インクの着弾時の表面張力はこれより小さく20〜30mN/mとなることが好ましい。インクの着弾時の表面張力を20mN/mより小さくすることはインクの拡がりの点では有利だと考えられるが、このような表面張力となるインクの調整は溶剤や樹脂の選択が困難であるため現実的ではない。これらインクの着弾時の表面張力は、通常基板を置く位置にインクの回収用のボトルなどを置き、実際にインクをインクジェット吐出を行った後の回収したインクにより測定することができる。
さらに、前記インクが少なくとも2種類の溶剤を含み、そのうちの1種類の表面張力が35〜45mN/mであり、かつ、他のうちの1種類の表面張力が20〜30mN/mであることが好ましい。少なくともこれら2種類の溶剤を含むことにより、着弾時のインクの拡がりを損なうことなくインクの表面張力をコントロールすることが可能となり、安定したインクジェット吐出を行うことが可能となる。
表面張力が35〜45mN/mの溶剤としては、具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、N−メチルピロリドン、炭酸プロピレン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
表面張力が20〜30mN/mの溶剤としては、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、テトラヒドロフルフリルアセテート、1,6−ヘキサノールジアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテートなどが挙げられる。
これらのなかでも、表面張力が35〜45mN/mの溶剤の蒸気圧が、表面張力が20〜30mN/mの溶剤の蒸気圧よりも高いことがより好ましい。溶剤をこのような組み合わせで含むことにより、さらに安定なインクジェット吐出を行うことが可能になるとともに、インクの着弾時の拡がりが格別に良好となり白抜けなどの欠点を抑制し、歩留まり良くカラーフィルタを製造することができる。これは、表面張力が35〜45mN/mの溶剤が吐出の安定性効果に寄与するとともに、着弾時には蒸気圧が比較的高いために優先的に蒸発していき、着弾後には表面張力が20〜30mN/mの溶剤の効果が増大するため画素内での拡がりが格段に良好となるものと推察される。
このような溶剤として具体的には、表面張力が35〜45mN/mのジエチレングリコールモノメチルエーテルと、表面張力が20〜30mN/mのトリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、1,6−ヘキサノールジアセテートの各組み合わせ、表面張力が35〜45mN/mのエチレングリコールモノフェニルエーテルと、表面張力が20〜30mN/mのトリプロピレングリコールn−ブチルエーテルの組み合わせ、表面張力が35〜45mN/mのN−メチルピロリドン、炭酸プロピレン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールのいずれかと、表面張力が20〜30mN/mのトリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの各組み合わせ、表面張力が35〜45mN/mのγ−ブチロラクトンと、表面張力が20〜30mN/mのトリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、1,6−ヘキサノールジアセテートの各組み合わせが挙げられる。さらに好ましくは、顔料分散性の観点から、上記の中でもγ―ブチロラクトンとジプロピレングリコールn−ブチルエーテルとの組み合わせを含むものが特に好ましい。上記のような溶剤の組み合わせの好ましい比率としては、表面張力が20mN/m〜30mN/mの溶剤と表面張力が35mN/m〜45mN/mの溶剤の比率が、90/10〜90/10の範囲である。この範囲から外れても本発明の効果は得られるが、安定なインクジェット吐出とインクの着弾時の濡れ広がりを格段に良好とする効果は小さくなってしまうため、上記の比率が好ましい。また、これらの組み合わせを含むものは、さらには他の溶剤を含んでいても上記のような利点を何ら妨げるものではなく、任意の溶剤を用いることができる。特に、20℃での蒸気圧が200Pa以上であり、かつ表面張力が20〜30mN/mの溶剤をさらに含む場合、吐出時のインク表面張力のコントロールに好適なばかりでなく、着弾時には該溶剤が速やかに蒸発するため、表面張力が20mN/m〜30mN/mの溶剤と表面張力が35mN/m〜45mN/mの溶剤の組み合わせを含む効果が十分に得られるため好ましい。このような速やかに蒸発する溶剤は、蒸気圧が2〜200Paの溶剤全量に対して1〜40重量%含むことができる。このような溶剤としては、特に限定されるわけではないが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
その他の添加剤として界面活性剤が好ましく用いられ、アクリル系、シリコン系、フッ素系を用いることができるが、特にアクリル系界面活性剤を用いると着弾時の濡れ広がり向上に効果が大きいため好ましい。
アクリル系界面活性剤としては、アクリル系モノマーを共重合体したものが好ましく、共重合可能なものとして、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル、2−ヒドロキシ−4−メタクリルロイルオキシエトキシ−ベンゾフェノン、3−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾールー2−イル)−4−ヒドロキシフェネチル−(メタ)アクリレートなどの芳香族含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキレンオキシドエステル類、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリオキシプロピレンテトラオキシエチレン(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールのエチレンオキシド6モル付加物のモノ(メタ)アクリレートなどのモノオールまたはジオールのアルキレンオキシド2〜10モル付加物の(メタ)アクリル酸アルキルである(メタ)アクリル酸アルキルエーテルエステル類、アミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル類、(メタ)アクリルアミド、αフェニル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−n−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N´−メチレンビス((メタ)アクリルアミド)、N−ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリル酸アミド化合物類が挙げられる。
また、アクリル系モノマーと共重合可能なものとして、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、などのアルキルビニルエーテル類、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルモノビニルフェニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノエチルエーテルモノビニルフェニルエーテル、メトキシペンタオキシプロピレンテトラオキシエチレンビニルフェニルエーテル、テトラプロピレングリコールのエチレンオキシド8モル付加物のモノビニルフェニルエーテルなどのアルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレンモノオールまたはジオールのモノビニルフェニルエーテルである芳香族含有ビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル類、1,3−ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン、それぞれ末端にアクリロイル基、あるいはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリシリコーンなどのマクロモノマーなどがあげられる。
これらの中でも、特にアクリル系モノマーとアルキルビニルエーテル類および/または芳香族含有ビニルエーテル類との共重合体を含むアクリル系界面活性剤を用いた場合に、着弾時の画素内の濡れ広がりを格段に向上させることができ、特に好ましい。
上記のようなアクリル系モノマーを含むアクリル系界面活性剤を製造する方法としては、過酸化物やアゾ系の化合物の存在下で行うラジカル重合法、酸触媒を用いたアニオン重合法、アルカリ金属系の触媒を用いるアニオン重合法などを用いることができる。
上記アクリル系界面活性剤のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)による重量平均分子量は、好ましくは1,000〜50,000、さらに好ましくは2,000〜5,000である。1,000より小さいと画素内への濡れ拡がりの効果が小さく、50,000より大きいと溶剤への溶解性が悪化することがある。
上記のインクをインクジェットヘッド5の吐出ノズルから吐出することによってカラーフィルタを製造する場合には、20℃において2〜200Paの飽和蒸気圧、好ましくは2〜50Paの飽和蒸気圧を有する溶剤を50〜88重量%含むのであるから、吐出ノズルによるインクの吐出量が極めて微量であるため、所定の区画領域に標的したインクが飛翔中、および着弾すると同時に乾燥するという不都合を防止、または低減することができる。
また、インクジェットヘッド5の複数の吐出ノズルがインク吐出動作を休止している間にインクが乾燥固化すること、固化した残渣物が堆積することに起因して吐出ノズルが詰まること、残渣物に起因して吐出されるインクの方向が曲がること、インクの吐出量がばらつくこと、等の不都合を防止、または低減することができる。
本発明のカラーフィルタは、例えば、以下のようにして作製されるが、これらに限定されるものではない。
まず、遮光部の形成について述べる。遮光部は、下層を遮光層、上層を撥液層とする2層構造であることが好ましい。遮光層の形成には黒色樹脂層を用い、該黒色樹脂層を形成すべき組成物に感光性を付与してフォトリソグラフィの方法によってパターン化してもよいし、感光性を付与せずフォトレジスト法によってパターン化しても良い。
遮光層に用いられる材料が感光性の場合について述べる。この場合、遮光層のみをパターニングした後、しかるべき方法によって撥液層をパターニングすることによって、遮光層と撥液層が積層したBMを得ることができる。
遮光層は、感光性黒色樹脂組成物を用いてパターニングすることが好ましい。感光性黒色樹脂組成物を基板上に塗布する方法としては、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、スクリーン印刷法などで基板に塗布する方法、基板を着色組成物中に浸漬する方法、着色組成物を基板に噴霧するなどの種々の方法を用いることができる。
透明基板としては、特に限定されず、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどのガラスや、プラスチックフィルム、シートなどを用いることができる。また、透明基板上には、必要に応じて遮光層および画素と透明基板の接着性を向上する透明薄膜を塗布しておくことができる。接着性向上のための透明薄膜としては、シランカップリング剤などの接着助剤で基板表面を処理しておくと、着色膜と基板の接着力を向上させることができる。
上記により、基板上に黒色樹脂組成物を塗布した後、風乾、減圧乾燥、加熱乾燥などにより溶剤を除去し、塗膜を形成する。この後、必要に応じて塗膜上に酸素遮断膜を設けても良い。続いて該塗膜上にマスクを置き、露光装置を用いて紫外線を照射する。ついでアルカリ性現像液で現像を行う。ここで、現像液として非イオン系界面活性剤などの界面活性剤を0.01〜1質量%添加したアルカリ性現像液を使用すると、より良好なパターンが得られるため好ましい。
得られた遮光層の塗膜パターンは、その後、加熱処理することによってパターンニングされた遮光層となる。加熱処理は通常、空気中、窒素雰囲気中、あるいは、真空中などで、150〜300℃、好ましくは180〜250℃の温度のもとで、0.25〜5時間、連続的または段階的に行われる。
次に、パターニングされた遮光層の上層に撥液層を形成させる。撥液層に用いる材料としては感光性樹脂組成物が好ましく、ネガ型レジスト、ポジ型レジストのどちらも使用することができるが、ポジ型レジストを使用することが好ましい。撥液性のポジ型レジストとした場合には、パターニングされた遮光層の上に、遮光層の塗膜形成と同様の方法にて撥液層の塗膜を形成し、その後、透明基板側から紫外線を照射するいわゆる裏露光を行うことが好ましい。かかる方法によれば、レジストを露光する時にレジスト用マスクを使用することなく、パターニングされた遮光層自身をマスクとして利用出来る為、レジスト用マスクと既形成の遮光層との位置合わせが不要になり工程が簡単となる。また裏露光では、裏からの光がガラス基板を透過する際、ガラス面内での多重反射などにより、遮光層により囲われた画素部にあるレジスト全体にまんべんなく照射されるため、遮光層側壁面にも画素部のガラス面にもレジスト残渣が残らないため、BM側壁面の親液性が維持され、画素部のガラス面の親液性も向上し、結果としてインクが画素全体に塗れ広がるという効果が得られる。
露光工程に使用できるランプとしては、超高圧水銀灯、ケミカル灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、紫外線LEDランプ等を用いることができる。また、裏露光の特徴としてマスクを設置することなくパターニング露光が可能である。
次に現像工程を行う。撥液層の塗膜パターンを得た後、加熱処理することによってパターニングされた撥液層となる。加熱処理は通常、空気中、窒素雰囲気中、あるいは、真空中などで、150〜300℃、好ましくは180〜250℃の温度のもとで、0.25〜5時間、連続的または段階的に行われる。
一方、遮光層に用いられる材料が非感光性の場合について述べる。この場合、遮光層自体をフォトリソ法によりパターニングすることは出来ないため、印刷法、転写法、フォトレジスト法などにより、パターニングした遮光層を得ることができるが工程が長く、コスト的に不利である。よって、好ましくは、遮光層の塗膜を形成した後にパターン化することなく、その上に撥液層となる感光性樹脂組成物層を形成し、この感光性樹脂組成物層をレジストとしてフォトリソ法によりパターン化し、さらにそのレジストパターンをマスクとして遮光層をエッチングし、パターン化する。この方法によれば、1回のフォトリソ工程で遮光層と撥液層を同時に形成することが出来る。撥液層となる感光性樹脂組成物は、ネガ型レジストでもポジ型レジストでも良い。
続いて、複数のノズルを有するインクジェットヘッド5によってインクを供給する。インクジェット法としては、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法や、帯電したインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用でき、中でも圧電素子を用いたいわゆるピエゾ方式が好ましい。インクジェット装置を用いて着色する方法としては、例えば、R、G、B3色分のヘッドを用意し、それぞれのヘッドから微小インキ滴を噴射しBMで囲まれた領域にカラー材料を形成させる。
上記方法により任意の色数について着色パターンを形成せしめると、所望のパターン状に設けられた着色層からなる画素を有するカラーフィルタが作製できる。また、色数は任意だが、R、G、Bの3色が好ましい。
また必要に応じて、保護膜、透明電導膜等を形成することができる。これらを形成する位置、形成順序、形成方法などは、特に限定されない。一例として、BMおよび着色層の上に保護膜、さらにその上に透明導電膜を形成するなどの構成が挙げられる。
実施例
樹脂、溶剤(ジプロピレングリコールn‐ブチルエーテル、2‐エトキシエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテートの少なくとも1種類)、色素(顔料)の各々をそれぞれの組成にて均一に分散させた後、タンク(メインタンク51またはサブタンク54)に充填し、所定の100の区画領域に対して、インクジェットノズルを動作させて順次所定量のインクを供給し、自然乾燥させた後の白抜け画素数を確認した。また、1発のみガラス基板にインクを着弾させたときの着弾直径を測定し濡れ広がり性を確認した。
なお、本実施例では、色素、樹脂等の固形分を12重量%、20重量%の何れかに設定し、各々の量の固形分に対して4種類の溶剤の組成比を変え、以下のようにカラーフィルタ用インクを作製した。
顔料としてピグメントレッド254、ピグメントレッド177(80/20)の混合物を15重量部、高分子分散剤としてPB821(味の素ファインテクノ(株)製)3重量部、および表1に記載の溶剤82重量部を混合してジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、顔料分散液を得た。
次にこの顔料分散液100重量部に対し、ポリマーとしてメタクリル酸、スチレン、メタクリル酸メチルを共重合した後、グリシジルメタクリレートを付加したアクリルポリマー(再沈殿により粉末状に精製、以下ポリマーAとする)を20重量部、エポキシ樹脂“エピコート”828(油化シェル社)5重量部、アクリル系界面活性剤として“ディスパロン”LHP−95(楠本化成(株)製)0.2重量部、および溶剤を混合し、表1に記載の溶剤組成および固形分濃度となるように調整を行った。
次に、20℃の温度下でインク供給動作を行った。そしてガラス基板コーニング1737(コーニング社製)に上記方法にて作製したBM及び撥液層によりパターニングされた画素領域にメイン液滴速度を6.5m/sに設定し、インクジェットヘッドのノズル面とのクリアランスを0.5mmに設定し、画素領域内にインクを500pL程吐出させた後、1時間常温乾燥、100℃にて10分間予備加熱した後、レーザー顕微鏡にて白抜けの数および着弾直径を計測した。そして、計測結果を表1に示した。なお、表1中のサンプルに上から順に(1)(2)・・とサンプル番号を付与する。
@0001
サンプル(1)〜(6)においては、溶剤として、8Paの飽和蒸気圧を有するジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、50Paの飽和蒸気圧を有する2‐エトキシエチルエーテルが50〜80重量%含まれているので、白抜けがないことが分かり、着弾直径も92〜124μmと大きく、濡れ広がり易い事が分かる。
サンプル(7)〜(9)においては、溶剤として、420Paの飽和蒸気圧を有するプロピレングリコールモノメチルアセテートを80重量%、または50重量%含んでいるので、溶剤全体として200Paを越す飽和蒸気圧を有することになり、白抜けの数が35、16、21であることが分かり着弾直径も57〜72μmと小さく、濡れ広がりにくい事が分かる。
サンプル(10)〜(19)においては、8Paの飽和蒸気圧を有するジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、または50Paの飽和蒸気圧を有する2‐エトキシエチルエーテルを50重量%含んでいるので、溶剤全体として200Paを越えない飽和蒸気圧を有することになり、白抜けがないことが分かり、着弾直径も90〜135μmと大きく、濡れ広がり易い事が分かる。
サンプル(20)〜(24)においては、溶剤として、420Paの飽和蒸気圧を有するプロピレングリコールモノメチルアセテートを88重量%、58重量%、または50重量%含んでいるので、溶剤全体として100Paを越す飽和蒸気圧を有することになり、白抜けの数が32、10、17、11、19であることが分かり着弾直径も57〜76μmと小さく、濡れ広がりにくい事が分かる。
サンプル(25)〜(28)においては、2種類の溶剤を含み、そのうちの1種類は表面張力が41.4mN/mであるγ−ブチロラクトンであり、かつもう1種類は表面張力が27.4mN/mのジプロピレングリコールn−ブチルエーテルである。蒸気圧はともに2〜200Paの範囲に入っているが、表面張力が35mN/m〜45mN/mの範囲にあるγ−ブチロラクトンの方が表面張力が20〜30mN/mの範囲にあるジプロピレングリコールn−ブチルエーテルより蒸気圧が高い。結果、白抜けがないことが分かり、着弾直径も110〜135μmと大きく、濡れ広がり易い事が分かる。
サンプル(29)、(30)においては、溶剤は蒸気圧が150Paとやや高めのγ−ブチロラクトンのみ、またはγ−ブチロラクトンおよびプロピレングリコールモノメチルアセテートのみを含んでおり、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテルを含んでいないため、わずかに白抜けが起こり、着弾直径も78μm、64μmとやや濡れ広がりにくくなっている。
サンプル(31)、(32)においては、通常の溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの他に、2種類の溶剤を含み、そのうちの1種類は表面張力が41.4mN/mであるγ−ブチロラクトンであり、かつ他の1種類は表面張力が27.4mN/mのジプロピレングリコールn−ブチルエーテルである。蒸気圧はともに2〜200Paの範囲に入っているが、表面張力が35mN/m〜45mN/mの範囲にあるγ−ブチロラクトンの方が表面張力が20〜30mN/mの範囲にあるジプロピレングリコールn−ブチルエーテルより蒸気圧が高い。結果、白抜けがないことが分かり、着弾直径も143μm〜148μmと大きく、濡れ広がり易い事が分かる。
サンプル(33)、(34)においては、アクリル系界面活性剤の添加をせずに、もしくはアクリル系界面活性剤に代えてフッ素系界面活性剤を添加したインクを用いた。どちらの場合においても若干の白抜けが見られ、サンプル(32)の場合と比較してアクリル系界面活性剤の効果が大きいことが分かる。
表1から、飽和蒸気圧が低い溶剤を用いるほど白抜けを発生させることなく、区画領域をインクで充填することができることが分かり、着弾直径も90〜148μmと大きく濡れ広がり易いことが分かった。
本発明のカラーフィルタ製造方法が適用されるカラーフィルタ製造装置の一実施形態を示す概略図である。
インクジェットヘッド5に対するインク供給のための構成を示す概略図である。
符号の説明
2 ガラス基板
5 インクジェットヘッド
本発明は、遮光部と、該遮光部により区画された区画領域を有する透明基板に対して、複数の吐出ノズルを有するインクジェットヘッドによってインクを供給し、前記区画領域をインクで充填するカラーフィルタ製造方法、およびこのカラーフィルタ製造方法において特に好適なカラーフィルタ用インクに関する。
近年、パーソナルコンピュータ、カラー液晶ディスプレイの需要が増加し、ディスプレイの大きさも大型化してきている。
従来から提供されているカラーフィルタ製造装置としては、スピンコー夕ー、あるいはコー夕ーによるフォトリソグラフィを主体とする製造プロセスを利用する装置が主として使用されていた。
しかし、近年は、コスト低減、環境への配慮が強く望まれるようになってきたことを配慮して、複数の吐出ノズルを有するインクジェットヘッドを用いるカラーフィルタ製造方法が注目されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
そして、インクジェットヘッドを用いるカラーフィルタ製造方法でカラーフィルタを製造すれば、レジスト、インクの量を削減できるという利点を享受できるとともに、現像等の薬剤処理を不要にできるという利点を享受できる。
さらに説明する。
特許文献1に記載されたカラーフィルタ製造方法では、基板上にその上面が撥インク性を有する凸部を形成し、その凸部により区切られた凹部にインクジェット方式によってインクを吹き付けて凹部にインクを堆積させて着色層を形成するカラーフィルタの製造方法において、凹部を親インク処理剤により表面処理した基板を用いるようにしている。
特許文献2に記載されたカラーフィルタ製造方法では、基材上に凸部を形成し、その凸部により区切られた凹部にインクジェット方式によってインクを吹き付けて凹部にインクを堆積させて着色層を形成するカラーフィルタの製造方法において、凸部を形成後、エネルギー線を照射することにより凹部の親インク性を制御し、その後インクジェット方式によりインクを吹き付けるようにしている。
特許文献3に記載されたカラーフィルタ製造方法では、支持基板上に複数の画素と隣接する画素間に位置する樹脂組成物からなる隔壁とを少なくとも有する光学素子の製造方法であって、支持基板上に、該基板の法線方向の断面が逆テーパー形状の隔壁を形成する工程と、上記隔壁表面にフッ素化処理を施す工程と、インクジェット方式により上記隔壁で囲まれた領域にインクを付与して画素を形成する工程とを有するようにしている。
特許文献4に記載されたカラーフィルタの製造方法では、溶剤は20℃での蒸気圧が0.33mmHgより小さく、60〜90℃での蒸気圧が20℃での蒸気圧の5倍以上であり、及び/または60〜90℃での蒸発速度がブチルアセテートの20℃での蒸発速度の十分の一より大きいインクを用いることが記載されている。
また、インクジェット方式により紙媒体にインクを供給する用途においては、インクとして、紙に塗布する関係上、紙への浸透性が重視されるだけでなく、塗布後に加熱なしで使用される関係上、耐熱性があまり必要ではなく、色材の光の吸収により反射色にて発色する発色メカニズムを採用し、安全性、浸透性の観点から主に水系のものが採用される。
特開平9−203803号公報
特開平9−230129号公報
特開2002−62422号公報
特開2007−4181号公報
インクジェットヘッドを用いるカラーフィルタ製造方法でカラーフィルタを製造する場合には、吐出ノズルの詰まりに起因するインクの吐出不良、定量性の低下、着弾精度の低下、遮光部により区画された区画領域の白抜け等の不都合が生じてしまう。
そして、これらの不都合によって、遮光部により区画された区画領域に所定のインクが隙間なく充填されるという保証がなくなり、目標とする区画領域に隣接する区画領域にインクが飛散してしまい、これらの結果、所望の着色性が達成できなくなってしまう。
したがって、製造したカラーフィルタをパーソナルコンピュータ、カラー液晶ディスプレイとして使用すると、ドット抜けの発生、色むらの発生、色彩性の低下、色コントラストの低下などの不都合が生じ、最悪の場合には、カラーフィルタが不良品になってしまう。
これらの不都合が生じる原因は、インクが吐出ノズル面に付着し、固化すること、または、インクの濡れ広がり性よりも速乾性があることであり、また、ガラス基板上にある画素面の濡れ性が悪いこと、または部分的に濡れ性が悪いことであるが、従来は、紫外線、プラズマ等を用いる物理的改質洗浄装置等により被着色物である透明ガラス基板を洗浄することで、インクの濡れ性を向上させ、白抜けを抑制するようにしていた。
さらに説明する。
特許文献1に記載されたカラーフィルタ製造方法では、凸部により区切られた凹部という極めて微小な区域に対して「親インク処理剤による表面処理」を行うことが必須であり、撥インク性を有する凸部に「親インク処理剤」を付着させることなく前記表面処理を実施するためには、格段の注意を必要とし、非常に手間がかかるので、実用的でないという問題がある。
特許文献2に記載されたカラーフィルタ製造方法では、エネルギー線の照射のために光源と、エネルギー線を対象物全体に照射するための空間と、光源と照射対象物との間の遮蔽物のない装置環境とが必要であり、一般的な門型の移動台に設置されるインクジェット塗布装置との干渉等を考慮すると、カラーフィルタ製造装置の大型化、または塗布装置とエネルギー線照射装置の別体化による設置面積の巨大化等の問題がある。
特許文献3に記載されたカラーフィルタ製造方法では、基板の法線方向の断面が逆テーパー状の隔壁を形成するに当って、ネガ型の感光剤を適正露光より少なめに露光して逆テーパー形状を形成し、または積層パターニングした順テーパーの反転形状転写により逆テーパー形状を形成するという、非常に不安定な、または複雑な工程を採用しなければならず、実用的でないという問題がある。
特許文献4に記載されたカラーフィルタの製造方法では、特定の蒸気圧を持つ溶剤を用いることが記載されているが、インクジェット装置に関する知見はほとんど得られていなかった。実際、このようなインクを用いただけでは安定してカラーフィルタを製造することは困難であるという問題があり、材料及び装置の両方を改善することにより、不都合なく製造可能なカラーフィルタの製造方法が求められていた。
すなわち、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載されたカラーフィルタ製造方法は、BM(ブラックマトリクス)の上面とBMで囲まれた領域のそれぞれの平坦部分に撥インク性の差をつけ、インクの付着が必要な部分は親インク性をより強くし、インクの付着が好ましくない部分は撥インク性をより強くすることで、白抜け、混色等の問題を払拭しようとしているが、それぞれが上記の問題点を有している。
また、前記不都合が生じる原因は、吐出ノズルによるインクの吐出量が極めて微量であるため、所定の区画領域に標的したインクが飛翔中、および着弾すると同時に乾燥することであり、白抜け、厚みむらが発生することになってしまう。
さらに、前記不都合が生じる原因は、複数の吐出ノズルがインク吐出動作を休止している間にインクが乾燥固化すること、固化した残渣物が堆積することに起因して吐出ノズルが詰まること、残渣物に起因して吐出されるインクの方向が曲がること、インクの吐出量がばらつくことである。
さらに説明する。
近年の高精細なディスプレイ用のカラーフィルタ開発の要求に応えるためには、「画素の微細化に応じた塗布インクの液滴の微細化」が必要であり、塗布インクの液滴を微細化すると、液滴の飛行軌跡、および対象とする画素領域にインクが付着した後のインクの乾燥の影響が無視できなくなってしまう。
この結果、上記の問題が生じるのである。
また、カラーフィルタ用インクは、遮光部により区画された区画領域を有する透明基板に塗布される関係上、基板に対する浸透性が全くないだけでなく、塗布後に加熱硬化が必要である関係上、耐熱性が要求され、バックライト光を透過させることにより発色させ、耐熱性などの観点から有機溶剤系でなければならないので、インクジェット方式により紙媒体に供給されるインクとは全く異なる。
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、白抜け、混色等の発生を防止し、または抑制し、しかも、液滴を微細化した場合であっても、乾燥の影響を低減することができるカラーフィルタ用インクを提供することを第1の目的とし、白抜け、混色等の発生を防止し、または抑制し、しかもインク(着色剤)の液滴を微細化した場合であっても、乾燥の影響を低減することができるカラーフィルタ製造方法に提供することを第2の目的としている。
本発明のカラーフィルタ用インクは、遮光部と、該遮光部により区画された区画領域を有する透明基板に対して、複数の吐出ノズルを有するインクジェットヘッドによって供給され、前記区画領域を充填するカラーフィルタ用インクであって、20℃において2〜200Paの飽和蒸気圧を有する溶剤を50〜88重量%含むことを特徴とするものである。
このカラーフィルタ用インクを吐出ノズルから吐出し、透明基板に供給することにより、白抜け、混色等の発生を防止した状態でカラーフィルタを製造することができる。
そして、カラーフィルタ用インクが上記溶剤を含んでいるので、カラーフィルタ製造方法に適用した場合に、カラーフィルタ用インクが乾燥し、または乾燥固化することに起因する不都合(吐出ノズルの詰まり、カラーフィルタ用インクの飛行軌跡の曲がり)の発生を防止し、または低減することができる。
また、前記溶剤が、20℃において2〜50Paの飽和蒸気圧を有するものであり、前記溶剤を50〜88重量%含むものであることが好ましく、吐出ノズルの詰まり、カラーフィルタ用インクの飛行軌跡の曲がりの発生を防止し、または低減することができるとともに、所望の区画領域に白抜けを生じさせることなくカラーフィルタ用インクを充填することができ、しかも区画領域内のカラーフィルタ用インクの厚みを均一にすることができるという利点を達成することができる。
また、前記カラーフィルタ用インクが少なくとも2種類の溶剤を含み、そのうちの1種類は表面張力が35〜45mN/mの溶剤であり、かつ、他のうちの1種類は表面張力が20〜30mN/mの溶剤であることが好ましく、さらに安定なインクジェット吐出を行うことが可能になるとともに、カラーフィルタ用インクの着弾時の拡がりが格別に良好となり白抜けなどの欠点を抑制し、歩留まり良くカラーフィルタを製造することができる。
また、表面張力が35〜45mN/mの溶剤の蒸気圧が、表面張力が20〜30mN/mの溶剤の蒸気圧よりも高いことが好ましく、表面張力が35〜45mN/mの溶剤が吐出の安定性効果に寄与するとともに、着弾時には蒸気圧が比較的高いために優先的に蒸発していき、着弾後には表面張力が20〜30mN/mの溶剤の効果が増大するため画素内での拡がりを格段に良好にすることができる。
本発明のカラーフィルタ製造方法は、遮光部と、該遮光部により区画された区画領域を有する透明基板に対して、複数の吐出ノズルを有するインクジェットヘッドによってインクを供給し、前記区画領域をインクで充填する方法において、前記インクが、20℃において2〜200Paの飽和蒸気圧を有する溶剤を50〜88重量%含むことを特徴とするものである。
このカラーフィルタ製造方法では、上記溶剤を含むインクを吐出ノズルから吐出し、透明基板に供給することにより、白抜け、混色等の発生を防止した状態でカラーフィルタを製造することができる。
そして、インクが上記溶剤を含んでいるので、インクが乾燥し、または乾燥固化することに起因する不都合(吐出ノズルの詰まり、インクの飛行軌跡の曲がり)の発生を防止し、または低減することができる。
また、前記溶剤が、20℃において2〜50Paの飽和蒸気圧を有するものであり、前記インクが、前記溶剤を50〜88重量%含むものであることが好ましく、吐出ノズルの詰まり、インクの飛行軌跡の曲がりの発生を防止し、または低減することができるとともに、所望の区画領域に白抜けを生じさせることなくインクを充填することができ、しかも区画領域内のインクの厚みを均一にすることができるという利点を達成することができる。
また、前記インクが少なくとも2種類の溶剤を含み、そのうちの1種類は表面張力が35〜45mN/mであり、かつ、他のうちの1種類は表面張力が20〜30mN/mであることが好ましく、さらに安定なインクジェット吐出を行うことが可能になるとともに、インクの着弾時の拡がりが格別に良好となり白抜けなどの欠点を抑制し、歩留まり良くカラーフィルタを製造することができる。
また、表面張力が35〜45mN/mの溶剤の蒸気圧が、表面張力が20〜30mN/mの溶剤の蒸気圧よりも高いことが好ましく、表面張力が35〜45mN/mの表面張力を持つ溶剤が吐出の安定性効果に寄与するとともに、着弾時には蒸気圧が比較的高いために優先的に蒸発していき、着弾後には表面張力が20〜30mN/mの溶剤の効果が増大するため画素内での拡がりを格段に良好にすることができる。
さらに、微小な前記区画領域に微量のインクを吐出、着弾させて、当該区画領域にインクを濡れ広げるために、従来は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類等の高い飽和蒸気圧を有する溶剤を用いていたので、濡れ広がり速度よりも乾燥速度(乾燥時間が1秒以下)の方が早いため、前記透明基板の洗浄等により濡れ広がり性を改善する処理が必要であったのに対して、本発明では、低い飽和蒸気圧を有する溶剤を用いることで乾燥速度を遅くすることができるので(乾燥時間が5秒以上)、濡れ広がり性を改善するための処理を特別に行う必要がなくなり、インクを1発のみ吐出着弾させたときの着弾直径が従来は60μm程度であったが80〜150μmと着弾直径が大きく濡れ性が改善できる。
さらにまた、低い飽和蒸気圧を有する溶剤を用いることによって、吐出液滴形成時においては、熱或いは圧力変化によるインクの吐出に当って、インクの液性状が安定し、液滴形成も安定であり、吐出ノズル周辺においては、吐出ノズルロ周辺に液残渣があっても、乾燥固化することが少なく、吐出時の液滴形成への影響を低くでき、液滴飛行中においては、溶剤の蒸発量を少なくすることができ、着弾後においては、複数の着弾液滴の混じりを良好にすることができる、などの利点を享受することができる。
本発明のカラーフィルタ用インクは、白抜け、混色等の発生を防止した状態でのカラーフィルタの製造に貢献することができ、しかも、カラーフィルタ製造方法に適用した場合に、カラーフィルタ用インクが乾燥し、または乾燥固化することに起因する不都合(吐出ノズルの詰まり、カラーフィルタ用インクの飛行軌跡の曲がり)の発生を防止し、または低減することができるという特有の効果を奏する。
本発明のカラーフィルタ製造方法は、白抜け、混色等の発生を防止した状態でカラーフィルタを製造することができ、しかも、インクが乾燥し、または乾燥固化することに起因する不都合(吐出ノズルの詰まり、インクの飛行軌跡の曲がり)の発生を防止し、または低減することができるという特有の効果を奏する。
本発明のカラーフィルタ製造方法が適用されるカラーフィルタ製造装置のー実施形態を示す概略図である。
インクジェットヘッド5に対するインク供給のための構成を示す概略図である。
以下、添付図面を参照して、本発明のカラーフィルタ用インクおよびカラーフィルタ製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明のカラーフィルタ製造方法が適用されるカラーフィルタ製造装置の一実施形態を示す概略図である。
このカラーフィルタ製造装置は、機台1上に吸着テーブル3、塗布ガントリー4、カメラガントリー6などを支承している。
吸着テーブル3は、ガラス基板2を吸着保持するものであり、このガラス基板2の位置決めを達成するために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、回転駆動されるとともに、Y方向に駆動される。
塗布ガントリー4は、インクジェットヘッド5を保持するものであり、ガラス基板2にインク(カラー材料、カラーフィルタ用インク)を塗布するために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、X方向に駆動される。また、ガラス基板2に対する相対位置を調整するために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、Z方向、Y方向に駆動される。
カメラガントリー6は、ガラス基板2のアラインメントのためのアラインメントカメラ7、8、およびガラス基板2のブラックマトリックスの画素を検出するためのスキャンカメラ9を保持するものであり、アラインメント、画素検出のために、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、X方向に駆動される。また、図示しない駆動機構、ガイド機構によって、アラインメントカメラ7、8、スキャンカメラ9をY方向に駆動する。
アラインメントカメラ7、8はガラス基板2のマーク(図示せず)を検出するものであり、アラインメントカメラ7、8によるマーク検出結果に基づいて吸着テーブル3を回転させ、および/またはY方向に移動させることにより、ガラス基板2のアラインメントを達成することができる。
なお、X、Yは、吸着テーブル3により吸着保持されたガラス基板2の上面と平行な平面を規定すべく設定された互いに直交する方向を表し、Zは、X、Yにより規定された平面と直交する方向を表している。
したがって、塗布ガントリー4を移動させながらインクジェットヘッド5を動作させることによって、ガラス基板2にインクを供給し、カラーフィルタを製造することができる。
図2はインクジェットヘッド5に対するインク供給のための構成を示す概略図である。
この構成は、インクを収容するメインタンク51と、メインタンク51からインクを導出する連通路52と、連通路52に介在された開閉バルブ53と、連通路52を介して上部にインクが供給されるサブタンク54と、サブタンク54の下部からインクが導かれるインクジェットヘッド5と、開閉バルブ56を介在させた連通路57を通してメインタンク51に圧力を加える圧空レギュレータ58と、サブタンク54の上部に連通されたエア抜きバルブ59と、サブタンク54の上部および下部と連結されるとともに、サブタンク54を包囲して負圧室を形成するケーシング部材55を有している。
したがって、開閉バルブ53を開いてメインタンク51からサブタンク54にインクを供給した後は、開閉バルブ53を閉じて、インクジェットヘッド5の吐出ノズルを動作させることによって、インクを吐出することができる。
前記インクは、樹脂、溶剤、色素、必要に応じて硬化剤、分散剤や、その他の添加剤などが混合されたものであり、遮光部で囲まれた領域に噴射された後、乾燥、加熱もしくは紫外線などのエネルギー線を照射することによって硬化させ、カラーフィルタの画素とすることができる。
ここで、樹脂としては、アクリル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニールアルコール、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどが例示できるが、これらに限定されない。
これらの中でもポリイミド樹脂は好ましく、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸の状態であっても良いし、骨格にヒドロキシル基やスルホニル基などの極性基を導入することにより溶剤への溶解性を向上させた可溶性ポリイミドを用いても良い。ポリアミック酸は、テトラカルポン酸二無水物とジアミンの反応により得ることができ、脂肪族系または脂環式系、芳香族系、フッ素含有のものなど、任意のものを用いることができる。
また、ジアミンのー部として、シロキサンジアミンを用いると、無機基板との接着性を良好にすることができる。シロキサンジアミンは、通常、全ジアミン中の1〜20モル%量用いる。シロキサンジアミンの量が少なすぎれば接着性向上効果が発揮されず、多すぎれば耐熱性が低下する。シロキサンジアミンの具体例としては、ビスー3−(アミノ
プロピル)テトラメチルシロキサンなどが挙げられる。
また、アクリル樹脂も好ましく用いられ、特に限定はないが、不飽和カルポン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体を好ましく用いることができる。不飽和カルポン酸の例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、あるいは酸無水物などが挙げられる。これらは単独で用いても良いが、他の共重合可能なエチレン性不飽和化合物と組み合わせて用いても良い。
共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、アクリル酸イソ−ブチル、メタクリル酸イソ−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ペンチル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどの不飽和カルポン酸アルキルエステル、スチレン、p−メチルスチレン、O−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アミノエチルアクリレートなどの不飽和カルポン酸アミノアルキルエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどの不飽和カルポン酸グリシジルエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルポン酸ビニルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、1,3−ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン、それぞれ末端にアクリロイル基、あるいはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリシリコーンなどのマクロモノマーなどがあげられるが、これらに限定されるものではない。
そして、耐熱性を有している樹脂であることが好ましい。また、可視領域で透明性が高い樹脂であることが必要である。
色素は、染料、顔料系のものの何れであってもよいが、耐熱性を考慮すれば顔料系のものであることが好ましく、有機顔料系のものであることが一層好ましい。インクに使用できる代表的な有機顔料をカラーインデックスナンバーで表すと、赤色顔料としては、ピグメントレッド9、97、122、123、144、149、166、168、177、190、192、209、215、216、224、254等が例示でき、緑色顔料としては、ピグメントグリーン7、10、36、47等が例示でき、青色顔料としては、ピグメントブルー15:3、15:4、15:6、21、22、60、64等が例示できる。そして、顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理、塩基性処理等の表面処理が施されていてもよい。
前記溶剤は、ヘッドの詰まりを防止し、かつインクが基板上に着弾した時にも固化しない効果を有するものである。ヘッドの詰まりについては、インクを間欠的に、例えば5秒間の吐出停止の後に吐出可能かどうかで判断できる。また、インクが基板上に着弾した時にも固化していないことは、着弾後の基板を加熱乾燥することなく、綿棒のようなもので拭き取ってやり、綿棒にインクが付着していることで確認できる。
このような溶剤としては、20℃における飽和蒸気圧が、2〜200Paの範囲内であるものが好ましく、2〜50Paの範囲内であるものがより好ましい。飽和蒸気圧が2Pa未満であれば、予備乾燥時間が長くなり、基板を搬送できるまでに長時間を要し、タクトタイムが遅くなるという問題があり、飽和蒸気圧が200Paを越えれば、インクの画素内における濡れ広がり速度よりも乾燥速度が早くなりムラになりやすく、またヘッドの詰まりの問題が発生するため好ましくない。これら溶剤はインク全量に対して50〜88重量%含むことが好ましい。50重量%未満であれば、溶剤の効果が小さくなり、ヘッドの詰まりが発生しやすくなるため好ましくなく、88重量%よりも多ければ、色素や樹脂等の固形物の必要量を確保できなくなり、カラーフィルタとしての所望の色を得ることが困難になるからである。
このような溶剤としては、例えば、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、しゆう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、N−メチルピロリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルプアセテート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、マロン酸ジエチル、β−プロピオラクトン、γ−プチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ダイアセトンアルコール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテートなどが挙げられる。
これらの溶剤の中でも、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、γ−ブチロラクトンが乾燥の抑制効果および顔料分散性が良好な点から好ましく、さらにジプロピレングリコールn−ブチルエーテルがより好ましい。また、これら溶剤を2種類以上混合することもでき、さらに、他の溶剤を含むこともできる。
他の溶剤としては、例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールエーテル系溶剤、あるいは、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどの脂肪族エステル類、あるいは、エタノール、ブタノール、3−メチルー3−メトキシブタノールなどの脂肪族アルコール類、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系極性溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類などが挙げられるがこれらに限定されない。
何れの場合にも、溶剤は、20℃(通常使用される温度)において2〜200Paの飽和蒸気圧を有するものであり、インクが、溶剤を50〜88重量%含むものであれば、他の溶剤を含んでいてもよく、また、溶剤は、20℃において2〜50Paの飽和蒸気圧を有するものであり、インクが、溶剤を50〜88重量%含むものであることが好ましく、その場合に他の溶剤を含んでいてもよい。
なぜならば、飽和蒸気圧が2Pa未満であれば、予備乾燥時間が長くなり、基板を搬送できるまでに長時間を要し、タクトタイムが遅くなるという問題があり、飽和蒸気圧が200Paを越えれば、また、溶剤が50重量%未満であれば、濡れ広がり速度よりも乾燥速度が早くなるという問題があるからであり、溶剤が88重量%よりも多ければ、色素や樹脂等の固形物の必要量を確保できなくなるからである。
そして、インクとして、20℃において39Paの飽和蒸気圧を有するN−メチルー2ピロリドンを溶剤とし、顔料、樹脂、分散剤等の固形分を15重量%としたものを採用することが可能であり、この場合には、溶剤を85重量%含むことになる。
また、N−メチル−2ピロリドンと、50Paの飽和蒸気圧を有する2−エトキシエチルエーテル、8Paの飽和蒸気圧を有するジプロピレングリコールn−ブチルエーテルとを混合したものを溶剤として採用してもよい。
要するに、20℃において2〜200Paの飽和蒸気圧、好ましくは2〜50Paの飽和蒸気圧を有するように、任意の溶剤を混合することが可能である。
インクとしては、表面張力が30〜40mN/mのものであることが好ましい。表面張力がこの範囲から外れるとインクジェットヘッド5の吐出ノズルから吐出する際に、サテライトや飛行曲がりなどが発生することがあり、カラーフィルタの異なる色の画素へ混色が起きるおそれがあるため好ましくない。表面張力の測定方法としては、リング法、プレート法、懸滴法などが挙げられるが、測定誤差の小ささから懸滴法が好ましい。懸滴法による測定装置としては、例えば協和界面科学株式会社の“Drop Master 500”があげられる。
インクは、上記の範囲の吐出前の表面張力を有し、かつ着弾時の表面張力が20〜30mN/mのものであることが好ましい。基板への着弾時の表面張力が大きすぎる場合、つまり30mN/mより大きい場合はインク自体が表面積を小さくしようとする力が働く。さすれば画素内でのインクの拡がりが悪化し、結果としてカラーフィルタの白抜け欠陥を生じてしまうため好ましくない。すなわち、インクの吐出前の表面張力として好ましい30〜40mN/mでは大き過ぎ、インクの着弾時の表面張力はこれより小さく20〜30mN/mとなることが好ましい。インクの着弾時の表面張力を20mN/mより小さくすることはインクの拡がりの点では有利だと考えられるが、このような表面張力となるインクの調整は溶剤や樹脂の選択が困難であるため現実的ではない。これらインクの着弾時の表面張力は、通常基板を置く位置にインクの回収用のボトルなどを置き、実際にインクをインクジェット吐出を行った後の回収したインクにより測定することができる。
さらに、前記インクが少なくとも2種類の溶剤を含み、そのうちの1種類の表面張力が35〜45mN/mであり、かつ、他のうちの1種類の表面張力が20〜30mN/mであることが好ましい。少なくともこれら2種類の溶剤を含むことにより、着弾時のインクの拡がりを損なうことなくインクの表面張力をコントロールすることが可能となり、安定したインクジェット吐出を行うことが可能となる。
表面張力が35〜45mN/mの溶剤としては、具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、N−メチルピロリドン、炭酸プロピレン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、γ−プチロラクトンなどが挙げられる。
表面張力が20〜30mN/mの溶剤としては、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、テトラヒドロフルフリルアセテート、1,6−ヘキサノールジアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシ−3−メチルーブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチルーブチルアセテートなどが挙げられる。
これらのなかでも、表面張力が35〜45mN/mの溶剤の蒸気圧が、表面張力が20〜30mN/mの溶剤の蒸気圧よりも高いことがより好ましい。溶剤をこのような組み合わせで含むことにより、さらに安定なインクジェット吐出を行うことが可能になるとともに、インクの着弾時の拡がりが格別に良好となり白抜けなどの欠点を抑制し、歩留まり良くカラーフィルタを製造することができる。これは、表面張力が35〜45mN/mの溶剤が吐出の安定性効果に寄与するとともに、着弾時には蒸気圧が比較的高いために優先的に蒸発していき、着弾後には表面張力が20〜30mN/mの溶剤の効果が増大するため画素内での拡がりが格段に良好となるものと推察される。
このような溶剤として具体的には、表面張力が35〜45mN/mのジエチレングリコールモノメチルエーテルと、表面張力が20〜30mN/mのトリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、1,6−ヘキサノールジアセテートの各組み合わせ、表面張力が35〜45mN/mのエチレングリコールモノフェニルエーテルと、表面張力が20〜30mN/mのトリプロピレングリコールn−ブチルエーテルの組み合わせ、表面張力が35〜45mN/mのN−メチルピロリドン、炭酸プロピレン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールのいずれかと、表面張力が20〜30mN/mのトリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートの各組み合わせ、表面張力が35〜45mN/mのγ−プチロラクトンと、表面張力が20〜30mN/mのトリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、1,6−ヘキサノールジアセテートの各組み合わせが挙げられる。さらに好ましくは、顔料分散性の観点から、上記の中でもγ−プチロラクトンとジプロピレングリコールn−ブチルエーテルとの組み合わせを含むものが特に好ましい。上記のような溶剤の組み合わせの好ましい比率としては、表面張力が20mN/m〜30mN/mの溶剤と表面張力が35mN/m〜45mN/mの溶剤の比率が、90/10〜90/10の範囲である。この範囲から外れても本発明の効果は得られるが、安定なインクジェット吐出とインクの着弾時の濡れ広がりを格段に良好とする効果は小さくなってしまうため、上記の比率が好ましい。また、これらの組み合わせを含むものは、さらには他の溶剤を含んでいても上記のような利点を何ら妨げるものではなく、任意の溶剤を用いることができる。特に、20℃での蒸気圧が200Pa以上であり、かつ表面張力が20〜30mN/mの溶剤をさらに含む場合、吐出時のインク表面張力のコントロールに好適なばかりでなく、着弾時には該溶剤が速やかに蒸発するため、表面張力が20mN/m〜30mN/mの溶剤と表面張力が35mN/m〜45mN/mの溶剤の組み合わせを含む効果が十分に得られるため好ましい。このような速やかに蒸発する溶剤は、蒸気圧が2〜200Paの溶剤全量に対して1〜40重量%含むことができる。このような溶剤としては、特に限定されるわけではないが、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
その他の添加剤として界面活性剤が好ましく用いられ、アクリル系、シリコン系、フッ素系を用いることができるが、特にアクリル系界面活性剤を用いると着弾時の濡れ広がり向上に効果が大きいため好ましい。
アクリル系界面活性剤としては、アクリル系モノマーを共重合体したものが好ましく、共重合可能なものとして、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル、2−ヒドロキシ−4−メタクリルロイルオキシエトキシ−ベンゾフェノン、3−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチル−(メタ)アクリレートなどの芳香族含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸アルキレンオキシドエステル類、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ペンタエチレングリコールモノブチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリオキシプロピレンテトラオキシエチレン(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールのエチレンオキシド6モル付加物のモノ(メタ)アクリレートなどのモノオールまたはジオールのアルキレンオキシド2〜10モル付加物の(メタ)アクリル酸アルキルである(メタ)アクリル酸アルキルエーテルエステル類、アミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル類、(メタ)アクリルアミド、αフェニル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−n−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−メチレンビス((メタ)アクリルアミド)、N−ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリンなどの(メタ)アクリル酸アミド化合物類が挙げられる。
また、アクリル系モノマーと共重合可能なものとして、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、などのアルキルビニルエーテル類、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルモノビニルフェニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノエチルエーテルモノビニルフェニルエーテル、メトキシペンタオキシプロピレンテトラオキシエチレンビニルフェニルエーテル、テトラプロピレングリコールのエチレンオキシド8モル付加物のモノビニルフェニルエーテルなどのアルキレン基の炭素数が2〜4のポリオキシアルキレンモノオールまたはジオールのモノビニルフェニルエーテルである芳香族含有ビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルポン酸ビニルエステル類、スチレン、p−メチルスチレン、O−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル類、1,3−ブタジエン、イソプレンなどの脂肪族共役ジエン、それぞれ末端にアクリロイル基、あるいはメタクリロイル基を有するポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリシリコーンなどのマクロモノマーなどがあげられる。
これらの中でも、特にアクリル系モノマーとアルキルビニルエーテル類および/または芳香族含有ビニルエーテル類との共重合体を含むアクリル系界面活性剤を用いた場合に、着弾時の画素内の濡れ広がりを格段に向上させることができ、特に好ましい。
上記のようなアクリル系モノマーを含むアクリル系界面活性剤を製造する方法としては、過酸化物やアゾ系の化合物の存在下で行うラジカル重合法、酸触媒を用いたアニオン重合法、アルカリ金属系の触媒を用いるアニオン重合法などを用いることができる。
上記アクリル系界面活性剤のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)による重量平均分子量は、好ましくは1,000〜50,000、さらに好ましくは2,000〜5,000である。1,000より小さいと画素内への濡れ拡がりの効果が小さく、50,000より大きいと溶剤への溶解性が悪化することがある。
上記のインクをインクジェットヘッド5の吐出ノズルから吐出することによってカラーフィルタを製造する場合には、20℃において2〜200Paの飽和蒸気圧、好ましくは2〜50Paの飽和蒸気圧を有する溶剤を50〜88重量%含むのであるから、吐出ノズルによるインクの吐出量が極めて微量であるため、所定の区画領域に標的したインクが飛翔中、および着弾すると同時に乾燥するという不都合を防止、または低減することができる。
また、インクジェットヘッド5の複数の吐出ノズルがインク吐出動作を休止している間にインクが乾燥固化すること、固化した残渣物が堆積することに起因して吐出ノズルが詰まること、残渣物に起因して吐出されるインクの方向が曲がること、インクの吐出量がばらつくこと、等の不都合を防止、または低減することができる。
本発明のカラーフィルタは、例えば、以下のようにして作製されるが、これらに限定されるものではない。
まず、遮光部の形成について述べる。遮光部は、下層を遮光層、上層を撥液層とする2層構造であることが好ましい。遮光層の形成には黒色樹脂層を用い、該黒色樹脂層を形成すべき組成物に感光性を付与してフォトリソグラフィの方法によってパターン化してもよいし、感光性を付与せずフォトレジスト法によってパターン化しても良い。
遮光層に用いられる材料が感光性の場合について述べる。この場合、遮光層のみをパターニングした後、しかるべき方法によって撥液層をパターニングすることによって、遮光層と撥液層が積層したBMを得ることができる。
遮光層は、感光性黒色樹脂組成物を用いてパターニングすることが好ましい。感光性黒色樹脂組成物を基板上に塗布する方法としては、スピンコー夕ー、バーコー夕ー、ブレードコー夕ー、ロールコー夕ー、ダイコーター、スクリーン印刷法などで基板に塗布する方法、基板を着色組成物中に浸漬する方法、着色組成物を基板に噴霧するなどの種々の方法を用いることができる。
透明基板としては、特に限定されず、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどのガラスや、プラスチックフィルム、シートなどを用いることができる。また、透明基板上には、必要に応じて遮光層および画素と透明基板の接着性を向上する透明薄膜を塗布しておくことができる。接着性向上のための透明薄膜としては、シランカップリング剤などの接着助剤で基板表面を処理しておくと、着色膜と基板の接着力を向上させることができる。
上記により、基板上に黒色樹脂組成物を塗布した後、風乾、減圧乾燥、加熱乾燥などにより溶剤を除去し、塗膜を形成する。この後、必要に応じて塗膜上に酸素遮断膜を設けても良い。続いて該塗膜上にマスクを置き、露光装置を用いて紫外線を照射する。ついでアルカリ性現像液で現像を行う。ここで、現像液として非イオン系界面活性剤などの界面活性剤を0.01〜1質量%添加したアルカリ性現像液を使用すると、より良好なパターンが得られるため好ましい。
得られた遮光層の塗膜パターンは、その後、加熱処理することによってパターンニングされた遮光層となる。加熱処理は通常、空気中、窒素雰囲気中、あるいは、真空中などで、150〜300℃、好ましくは180〜250℃の温度のもとで、0.25〜5時間、連続的または段階的に行われる。
次に、パターニングされた遮光層の上層に撥液層を形成させる。撥液層に用いる材料としては感光性樹脂組成物が好ましく、ネガ型レジスト、ポジ型レジストのどちらも使用することができるが、ポジ型レジストを使用することが好ましい。撥敵性のポジ型レジストとした場合には、パターニングされた遮光層の上に、遮光層の塗膜形成と同様の方法にて撥液層の塗膜を形成し、その後、透明基板側から紫外線を照射するいわゆる裏露光を行うことが好ましい。かかる方法によれば、レジストを露光する時にレジスト用マスクを使用することなく、パターニングされた遮光層自身をマスクとして利用出来る為、レジスト用マスクと既形成の遮光層との位置合わせが不要になり工程が簡単となる。また裏露光では、裏からの光がガラス基板を透過する際、ガラス面内での多重反射などにより、遮光層により囲われた画素部にあるレジスト全体にまんべんなく照射されるため、遮光層側壁面にも画素部のガラス面にもレジスト残渣が残らないため、BM側壁面の親液性が維持され、画素部のガラス面の親液性も向上し、結果としてインクが画素全体に濡れ広がるという効果が得られる。
露光工程に使用できるランプとしては、超高圧水銀灯、ケミカル灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、紫外線LEDランプ等を用いることができる。また、裏露光の特徴としてマスクを設置することなくパターニング露光が可能である。
次に現像工程を行う。撥液層の塗膜パターンを得た後、加熱処理することによってパターニングされた撥液層となる。加熱処理は通常、空気中、窒素雰囲気中、あるいは、真空中などで、150〜300℃、好ましくは180〜250℃の温度のもとで、0.25〜5時間、連続的または段階的に行われる。
一方、遮光層に用いられる材料が非感光性の場合について述べる。この場合、遮光層自体をフォトリソ法によりパターニングすることは出来ないため、印刷法、転写法、フォトレジスト法などにより、パターニングした遮光層を得ることができるが工程が長く、コスト的に不利である。よって、好ましくは、遮光層の塗膜を形成した後にパターン化することなく、その上に撥液層となる感光性樹脂組成物層を形成し、この感光性樹脂組成物層をレジストとしてフォトリソ法によりパターン化し、さらにそのレジストパターンをマスクとして遮光層をエッチングし、パターン化する。この方法によれば、1回のフォトリソ工程で遮光層と撥液層を同時に形成することが出来る。撥液層となる感光性樹脂組成物は、ネガ型レジストでもポジ型レジストでも良い。
続いて、複数のノズルを有するインクジェットヘッド5によってインクを供給する。インクジェット法としては、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法や、帯電したインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用でき、中でも圧電素子を用いたいわゆるピエゾ方式が好ましい。インクジェット装置を用いて着色する方法としては、例えば、R、G、B3色分のヘッドを用意し、それぞれのヘッドから微小インキ滴を噴射しBMで囲まれた領域にカラー材料を形成させる。
上記方法により任意の色数について着色パターンを形成せしめると、所望のパターン状に設けられた着色層からなる画素を有するカラーフィルタが作製できる。また、色数は任意だが、R、G、Bの3色が好ましい。
また必要に応じて、保護膜、透明電導膜等を形成することができる。これらを形成する位置、形成順序、形成方法などは、特に限定されない。一例として、BMおよび着色層の上に保護膜、さらにその上に透明導電膜を形成するなどの構成が挙げられる。
樹脂、溶剤(ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、2−エトキシエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテートの少なくとも1種類)、色素(顔料)の各々をそれぞれの組成にて均一に分散させた後、タンク(メインタンク51またはサブタンク54)に充填し、所定の100の区画領域に対して、インクジェットノズルを動作させて順次所定量のインクを供給し、自然乾燥させた後の白抜け画素数を確認した。また、1発のみガラス基板にインクを着弾させたときの着弾直径を測定し濡れ広がり性を確認した。
なお、本実施例では、色素、樹脂等の固形分を12重量%、20重量%の何れかに設定し、各々の量の固形分に対して4種類の溶剤の組成比を変え、以下のようにカラーフィルタ用インクを作製した。
顔料としてピグメントレッド254、ピグメントレッド177(80/20)の混合物を15重量部、高分子分散剤としてPB821(味の素ファインテクノ(株)製)3重量部、および表1に記載の溶剤82重量部を混合してジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、顔料分散液を得た。
次にこの顔料分散液100重量部に対し、ポリマーとしてメタクリル酸、スチレン、メタクリル酸メチルを共重合した後、グリシジルメタクリレートを付加したアクリルポリマー(再沈殿により粉末状に精製、以下ポリマーAとする)を20重量部、エポキシ樹脂“エピコード828(油化シェル社)5重量部、アクリル系界面活性剤として“ディスパロン”LHP−95(楠本化成(株)製)0.2重量部、および溶剤を混合し、表1に記載の溶剤組成および固形分濃度となるように調整を行った。
次に、20℃の温度下でインク供給動作を行った。そしてガラス基板コーニング1737(コーニング社製)に上記方法にて作製したBM及び撥液層によりパターニングされた画素領域にメイン液滴速度を6.5m/sに設定し、インクジェットヘッドのノズル面とのクリアランスを0.5mmに設定し、画素領域内にインクを500pL程吐出させた後、1時間常温乾燥、100℃にて10分間予備加熱した後、レーザー顕微鏡にて白抜けの数および着弾直径を計測した。そして、計測結果を表1に示した。なお、表1中のサンプルに上から順に(1)(2)‥とサンプル番号を付与する。
サンプル(1)〜(6)においては、溶剤として、8Paの飽和蒸気圧を有するジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、50Paの飽和蒸気圧を有する2−エトキシエチルエーテルが50〜80重量%含まれているので、白抜けがないことが分かり、着弾直径も92〜124μmと大きく、濡れ広がり易い事が分かる。
サンプル(7)〜(9)においては、溶剤として、420Paの飽和蒸気圧を有するプロピレングリコールモノメチルアセテートを80重量%、または50重量%含んでいるので、溶剤全体として200Paを越す飽和蒸気圧を有することになり、白抜けの数が35、16、21であることが分かり着弾直径も57〜72μmと小さく、濡れ広がりにくい事が分かる。
サンプル(10)〜(19)においては、8Paの飽和蒸気圧を有するジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、または50Paの飽和蒸気圧を有する2−エトキシエチルエーテルを50重量%含んでいるので、溶剤全体として200Paを越えない飽和蒸気圧を有することになり、白抜けがないことが分かり、着弾直径も90〜135μmと大きく、濡れ広がり易い事が分かる。
サンプル(20)〜(24)においては、溶剤として、420Paの飽和蒸気圧を有するプロピレングリコールモノメチルアセテートを88重量%、58重量%、または50重量%含んでいるので、溶剤全体として100Paを越す飽和蒸気圧を有することになり、白抜けの数が32、10、17、11、19であることが分かり着弾直径も57〜76μmと小さく、濡れ広がりにくい事が分かる。
サンプル(25)〜(28)においては、2種類の溶剤を含み、そのうちの1種類は表面張力が41.4mN/mであるγ−プチロラクトンであり、かつもう1種類は表面張力が27.4mN/mのジプロピレングリコールn−ブチルエーテルである。蒸気圧はともに2〜200Paの範囲に入っているが、表面張力が35mN/m〜45mN/mの範囲にあるγ−プチロラクトンの方が表面張力が20〜30mN/mの範囲にあるジプロピレングリコールn−ブチルエーテルより蒸気圧が高い。結果、白抜けがないことが分かり、着弾直径も110〜135μmと大きく、濡れ広がり易い事が分かる。
サンプル(29)、(30)においては、溶剤は蒸気圧が150Paとやや高めのγ−プチロラクトンのみ、またはγ−プチロラクトンおよびプロピレングリコールモノメチルアセテートのみを含んでおり、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテルを含んでいないため、わずかに白抜けが起こり、着弾直径も78μm、64μmとやや濡れ広がりにくくなっている。
サンプル(31)、(32)においては、通常の溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの他に、2種類の溶剤を含み、そのうちの1種類は表面張力が41.4mN/mであるγ−プチロラクトンであり、かつ他の1種類は表面張力が27.4mN/mのジプロピレングリコールn−ブチルエーテルである。蒸気圧はともに2〜200Paの範囲に入っているが、表面張力が35mN/m〜45mN/mの範囲にあるγ−プチロラクトンの方が表面張力が20〜30mN/mの範囲にあるジプロピレングリコールn−ブチルエーテルより蒸気圧が高い。結果、白抜けがないことが分かり、着弾直径も143μm〜148μmと大きく、濡れ広がり易い事が分かる。
サンプル(33)、(34)においては、アクリル系界面活性剤の添加をせずに、もしくはアクリル系界面活性剤に代えてフッ素系界面活性剤を添加したインクを用いた。どちらの場合においても若干の白抜けが見られ、サンプル(32)の場合と比較してアクリル系界面活性剤の効果が大きいことが分かる。
表1から、飽和蒸気圧が低い溶剤を用いるほど白抜けを発生させることなく、区画領域をインクで充填することができることが分かり、着弾直径も90〜148μmと大きく濡れ広がり易いことが分かった。
2ガラス基板
5インクジェットヘッド