JPWO2006040869A1 - フィルタ回路、及びそれを搭載する差動伝送システムと電源装置 - Google Patents

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Abstract

フィルタ回路(1)では、二つの入力端子(1a、1b)を通して受信されるコモンモード信号に対し、コモンモードチョーク(2)のインピーダンスが極めて高く、ノーマルモードチョーク(3)のインピーダンスが極めて低い。差動信号に対してはその逆である。特に、それらのインピーダンス間の差が大きい。更に、ノーマルモードチョーク(3)がコモンモードチョーク(2)の前段に設置されるので、二つの入力端子(1a、1b)を通して侵入するコモンモードノイズはノーマルモードチョーク(3)を透過し、コモンモードチョーク(2)を透過せず、かつコモンモードチョーク(2)で反射されない。特にコモンモード電流がノーマルモードチョーク(3)を流れ、コモンモードチョーク(2)を流れない。

Description

本発明は、差動伝送方式で電子機器間の通信を行う差動伝送システム、及び、例えば商用交流電源等の外部電源から供給される電力を変換する電源装置に関し、特にそれらに搭載されるフィルタ回路に関する。
電子機器全般にわたり、多機能化や高機能化への要求に応えるべく、処理速度が更なる上昇を続けている。それに伴い、電子機器間の通信に対し、更なる高速化が求められている。通信の更なる高速化にはパラレル伝送よりシリアル伝送が有利である。従って、近年では例えば、USB、IEEE1394、LVDS、DVI、HDMI、シリアルATA、PCIエクスプレス等、様々な規格で広範に、シリアル伝送方式が採用されている。
特に、カーナビや運転支援システム等の車載電子機器(電子制御ユニット(ECU))では動作周波数の上昇が著しい。従って、車載LANでは、シリアル通信プロトコルであるコントローラエリアネットワーク(CAN)が実質上、標準化されつつある。
高速のシリアル伝送では一般に、差動伝送方式が採用されている。差動伝送方式とは、一連のシリアルデータを互いに逆位相の二つの信号(差動信号又はノーマルモード信号)で伝送する方式をいう。特に、各差動信号の伝送路が並走する。受信装置(差動レシーバ)は二つの差動信号間の差分からシリアルデータを読み取る。それにより、差動伝送方式では、シリアルデータを単独の信号で伝送する方式(シングルエンド伝送方式)と比べ、信号の振幅が半分で良い。従って、信号の立ち上がり/立ち下がりが一般に速い。すなわち、スルーレートが低い。こうして、差動伝送方式は信号伝送の更なる高速化に有利である。
差動伝送方式は更に、電磁障害(EMI)の低減に有利である。例えば、二つの差動信号の伝送路(差動伝送路)が並走するので、各差動伝送路から周辺に輻射される電磁波が相殺する。従って、差動伝送方式では不要電磁輻射が極めて弱い。逆に、周辺の電子機器等から差動伝送路に電磁波が輻射された場合、二つの差動伝送路には同相のノイズ(コモンモードノイズ)が生じる。しかし、各差動伝送路上のコモンモードノイズは、二つの差動信号間の差分では互いに相殺する。こうして、差動伝送方式は外部からの不要電磁輻射に起因するコモンモードノイズに強い。
差動伝送方式は特に、CANを初め、様々な車載LANに共通して採用されている。自動車内ではエンジン等の基幹部品や様々な電子制御ユニット(ECU)(例えば、ドアミラーを回転させるモータ)が車載LANにノイズを与える。更に、自動車は様々な環境を走行するので、車載LANは自動車の外部からも様々な電磁輻射を受ける。従って、ノイズを出しにくく、かつノイズに強いという差動伝送方式の利点が車載LANには不可欠である。
差動伝送方式を利用する送受信装置(差動送受信装置)には一般に、コモンモードノイズによる悪影響を更に確実に抑えるべく、フィルタ回路が搭載される。フィルタ回路はコモンモードチョークを含み、コモンモードノイズのレベルを差動レシーバの入力レンジの上限以下に抑える。それにより、差動レシーバの誤動作と破壊とを防止する。
従来のフィルタ回路には、例えば図48に示されているように、コモンモードチョークとその後段に接続されたノーマルモードチョークとを含むものが知られている(例えば特許文献1参照)。このフィルタ回路は、高周波で生体内の細胞Bを加熱する装置に搭載される。生体内の細胞Bは二つの電極T1、T2の間に置かれている。高周波発生器Aは電極T1、T2の各電圧を高い周波数で変化させる。そのとき、各電極T1、T2の電圧変動の同相成分(すなわちコモンモードノイズ)に対し、コモンモードチョーク110は高いインピーダンスを示し、ノーマルモードチョーク120は低いインピーダンスを示す。従って、前段のコモンモードチョーク110では、インダクタL1、L2を同相で流れる電流(コモンモード電流)が抑えられる。更に、その抑えられたコモンモード電流の大部分が後段のノーマルモードチョーク120を通る。こうして、二つの電極T1、T2と生体内の細胞Bとの間にはコモンモード電流が流れない。すなわち、細胞Bから電極T1、T2以外への電流の漏れが防止される。
従来のフィルタ回路には上記の他に、例えば図49に示されているように、終端素子、コモンモードチョーク、及び、抵抗素子を含むものが知られている(例えば特許文献2参照)。終端素子210は二つの差動伝送路200の終端間に直列に接続された二つの等価な抵抗素子であり、それらの間の接続点が接地されている。抵抗素子230はコモンモードチョーク220の出力端子間に接続される。
差動伝送路200を伝搬するコモンモード信号に対し、コモンモードチョーク220のインピーダンスは極めて高いので、終端素子210のコモンモードインピーダンスが差動伝送路200のコモンモードインピーダンスと整合するように設定される。一方、差動伝送路200を伝搬する差動信号に対し、コモンモードチョーク220のインピーダンスは極めて低いので、終端素子210の差動インピーダンスと抵抗素子230のインピーダンスとの合成が差動伝送路200の差動インピーダンスと整合するように調整される。こうして、コモンモードチョーク220によるコモンモードノイズの反射が抑えられ、かつ、終端素子210とコモンモードチョーク220とによる差動信号の歪みや減衰が抑えられる。更に、差動伝送路200を伝わるコモンモード電流は終端素子210とコモンモードチョーク220とに分かれて流れる。従って、コモンモードチョーク220を流れるコモンモード電流が低減するので、コモンモードチョーク220のコアが磁気飽和を生じにくく、かつ後段の回路には過電流が流れない。こうして、このフィルタ回路は高い信頼性を維持する。
EMI対策は、差動伝送方式による通信システム(差動伝送システム)だけでなく、外部から供給される交流電力を適切な電力に変換する電源装置についても重要である。その電源装置は例えば商用交流電源等、外部の交流電源に接続され、好ましくはスイッチング電源を利用して交流電圧を直流電圧に変換する。その他に、外部の交流電源から供給される電力の力率を改善する。更に、電源装置を電力線通信(PLC)に利用する場合、EMI対策は不可欠である。
そのような電源装置では差動伝送システムと同様に、上記のフィルタ回路がEMIの低減に有効である。フィルタ回路は外部の電源線に生じるコモンモードノイズを電源装置から遮断することで、後段に送出される電力を安定化させる。フィルタ回路は更に、例えば電源装置内のスイッチングに伴うコモンモードノイズ、又は後段の回路から伝わるコモンモードノイズを外部の電源線から遮断する。それにより、電源装置に起因する不要電磁輻射が抑えられる。
特開昭59−207148号公報 特開2002−261842号公報
シリアル伝送を更に高速化するには、差動伝送路でのコモンモードノイズの発生を更に効果的に抑制することで、シリアル信号の品質を更に向上させ、かつ周辺に対する不要電磁輻射を更に抑制しなければならない。一方、電源装置の信頼性を更に向上させるには、電源線でのコモンモードノイズの発生を更に効果的に抑制することで、変換された電力の品質を更に向上させ、かつ周辺に対する不要電磁輻射を更に抑制しなければならない。このように、差動伝送システムと電源装置とのいずれでも、コモンモードノイズに対するフィルタ回路の抑制効果を更に向上させることが望まれる。
しかし、図48に示されているような従来のフィルタ回路では、高周波発生器Aから送出されたコモンモードノイズの大半はコモンモードチョーク110で反射され、その電力は高周波発生器Aとコモンモードチョーク110との間のケーブルから周辺に電磁輻射として放散される。すなわち、このフィルタ回路では、不要電磁輻射に対する抑制効果を更に向上させることは困難である。更に、コモンモード電流が過大な場合、コモンモードチョーク110ではコアが磁気飽和を生じ、コモンモードノイズに対する抑制効果を損なうおそれがある。すなわち、このフィルタ回路では、コモンモードチョーク110のコアを小型に維持したまま、コモンモードノイズに対する抑制効果を更に向上させることが困難である。
図49に示されているような従来のフィルタ回路では、コモンモードノイズに対しては終端素子210がコモンモードチョーク220での反射を抑えるので、フィルタ回路からの不要電磁輻射が弱い。更に、コモンモード電流が終端素子210とコモンモードチョーク220とに分かれて流れるので、コモンモードチョーク220のコアが磁気飽和を生じにくい。一方、差動信号に対しては終端素子210と抵抗素子230との合成インピーダンスが差動伝送路200の差動インピーダンスと整合する。従って、フィルタ回路から出力される差動信号は歪みや減衰が小さい。
しかし、終端素子210の差動インピーダンスはそのコモンモードインピーダンス(すなわち、各抵抗素子の抵抗値)で決まり、しかも両者間の差が小さい(差動インピーダンスはコモンモードインピーダンスの四倍程度である)。従って、「終端素子210と差動伝送路との間でコモンモードインピーダンスを整合させる」という条件下では、終端素子210の差動インピーダンスを更に上昇させることが困難である。それ故、コモンモードチョーク220によるコモンモードノイズの反射を十分に抑えたままでは、終端素子210や抵抗素子230による差動信号の歪みや減衰を更に抑制することが困難である。
その他に、コモンモードチョーク220に起因する差動信号の歪みや減衰を抑えるには、抵抗素子230がコモンモードチョーク220の後段に設置されねばならない。その場合、終端素子210と抵抗素子230との間の経路長がある程度、大きくならざるを得ない。従って、差動信号の周波数が更に上昇し、その波長が終端素子210と抵抗素子230との間の経路長に対して無視できない程度まで短縮するとき、終端素子210と抵抗素子230との合成インピーダンスを差動伝送路の差動インピーダンスに高精度で整合させることが困難である。こうして、更に高い周波数帯域では、差動信号の歪みや減衰を更に抑制することが困難である。
本発明は、十分に広い周波数帯域で、差動信号に過大な歪みや減衰を生じさせることなく、かつコモンモード信号を反射することなく、差動信号とコモンモード信号とを分離し、その上、コモンモード電流によるコモンモードチョークのコアの磁気飽和を確実に回避するフィルタ回路、の提供を目的とする。
本発明によるフィルタ回路は、
第一と第二との入力端子;
第一、第二、第三、及び第四の出力端子;
第一の入力端子と第一の出力端子との間に接続された、第一のインダクタ、及び、
第一のインダクタと磁気的に結合し、第二の入力端子と第二の出力端子との間に第一のインダクタと同じ極性で接続された、第二のインダクタ、
を含む、コモンモードチョーク;
並びに、
第一の入力端子と第三の出力端子との間に接続された、第三のインダクタ、及び、
第三のインダクタと磁気的に結合し、第二の入力端子と第四の出力端子との間に第三のインダクタとは逆の極性で接続された、第四のインダクタ、
を含む、ノーマルモードチョーク;
を有する。
ここで、第一から第四までのインダクタは好ましくは、積層インダクタ又は薄膜インダクタである。その場合、コモンモードチョークとノーマルモードチョークとが同じチップ上に集積されるので、このフィルタ回路は極めて小さい。
その他に、コモンモードチョークとノーマルモードチョークとがそれぞれ、一つのコアとそれに巻き付けられた二本のコイルとを含んでも良い。特にノーマルモードチョークでは好ましくは、コモンモード電流により生じる磁束が互いに相殺するような向きで、二本のコイルがコアに巻かれている。すなわち、二本のコイルのいずれかが、バイファイラ巻き又はキャンセル巻きとは逆向きに巻かれている。それにより、ノーマルモードチョークとフィルタ回路の入力端子又は出力端子との間の配線が短いので、フィルタ回路の小型化が容易である。
更に、ノーマルモードチョークでは一般的なコモンモードチョークと同様に、二本のコイルがバイファイラ巻き又はキャンセル巻きで巻かれていても良い。その場合、第三と第四とのインダクタ間で、フィルタ回路の入力端子/出力端子への接続の極性が逆であれば良い。
本発明によるこのフィルタ回路では、コモンモードチョークのインピーダンスがコモンモード信号に対しては十分に高く、差動信号に対しては十分に低い。ノーマルモードチョークのインピーダンスは逆に、コモンモード信号に対しては十分に低く、差動信号に対しては十分に高い。特に、それらのインピーダンスの差が十分に大きい。更に、ノーマルモードチョークがコモンモードチョークの前段に設置され、すなわちコモンモードチョークより第一と第二との入力端子に近い所に接続される。従って、第一と第二との入力端子を通して受信される信号のうち、実質上、ノーマルモード成分のみがコモンモードチョークを透過し、コモンモード成分のみがノーマルモードチョークを透過する。こうして、第一と第二との入力端子を通して受信されるコモンモードノイズが第一と第二との出力端子から遮断される。その上、コモンモードチョークによるコモンモードノイズの反射が実質上生じないので、周辺への不要電磁輻射が抑制される。それに加え、コモンモードチョークにはコモンモード電流が実質上流れないので、コモンモードチョークのコアが磁気飽和を生じない。従って、コモンモードチョークは信頼性が高い。
好ましくは、本発明による上記のフィルタ回路が更に、第一と第二とのインピーダンス素子を含む。第一のインピーダンス素子は、第三のインダクタと第三の出力端子との間、若しくは第一の入力端子と第三のインダクタとの間のいずれか、又はその両方に接続される。第二のインピーダンス素子は、第四のインダクタと第四の出力端子との間、若しくは第二の入力端子と第四のインダクタとの間のいずれか、又はその両方に接続される。第一と第二のインピーダンス素子により、差動伝送路とフィルタ回路との間では、差動信号に対するインピーダンス整合が高精度に維持されたまま、コモンモード信号に対するインピーダンス整合の精度が更に向上する。それにより、コモンモードチョークによるコモンモードノイズの反射が更に抑えられるので、周辺への不要電磁輻射が更に効果的に抑制される。
本発明による上記のフィルタ回路は、好ましくは、
第五と第六との出力端子;並びに、
第一の出力端子と第五の出力端子との間に接続された、第五のインダクタ、及び、
第五のインダクタと磁気的に結合し、第二の出力端子と第六の出力端子との間に第五のインダクタとは逆の極性で接続された、第六のインダクタ、
を含む、第二のノーマルモードチョーク;
を更に有する。ここで、第五と第六のインダクタは好ましくは、積層インダクタ又は薄膜インダクタである。その他に、第二のノーマルモードチョークが一つのコアとそれに巻き付けられた二本のコイルとを含んでも良い。その場合、好ましくは、二本のコイルのいずれかがバイファイラ巻き又はキャンセル巻きとは逆に巻かれている。それとは別に、上記のノーマルモードチョークと同様に、二本のコイルがバイファイラ巻き又はキャンセル巻きで巻かれていても良い。その場合、第五と第六とのインダクタ間でフィルタ回路の出力端子への接続の極性が逆であれば良い。
第二のノーマルモードチョークのインピーダンスはコモンモード信号に対しては十分に低い。従って、第一と第二との出力端子を通して受信されるコモンモードノイズは第二のノーマルモードチョークを通して第五と第六との出力端子に送出され、コモンモードチョークには伝達されない。すなわち、第一と第二との出力端子を通して受信されるコモンモードノイズが第一と第二との入力端子から遮断される。更に、コモンモードチョークによるコモンモードノイズの反射が弱い。その結果、周辺への不要電磁輻射が抑制される。
その上、二つのノーマルモードチョークがコモンモードチョークに対し、対称的に配置される。従って、本発明による上記のフィルタ回路は入力と出力とを逆にしても、すなわち双方向で、コモンモードノイズの抑制効果が高い。
好ましくは、本発明による上記のフィルタ回路が更に、第三と第四とのインピーダンス素子を含む。第三のインピーダンス素子は、第五のインダクタと第五の出力端子との間、若しくは第一の出力端子と第五のインダクタとの間のいずれか、又はその両方に接続される。第四のインピーダンス素子は、第六のインダクタと第六の出力端子との間、若しくは第二の出力端子と第六のインダクタとの間のいずれか、又はその両方に接続される。第三と第四とのインピーダンス素子により、フィルタ回路と外部との間で、差動信号に対するインピーダンス整合が高精度に維持されたまま、コモンモード信号に対するインピーダンス整合の精度が更に向上する。それにより、周辺への不要電磁輻射が更に効果的に抑制される。
本発明による差動受信装置は、好ましくは、本発明による上記のフィルタ回路、及び、そのフィルタ回路の第一と第二との出力端子に接続された入力端子対を有する差動レシーバ、を具備する。この差動受信装置では特に、第一と第二との入力端子が外部の差動伝送路に接続され、第三と第四との出力端子が一定の電位(好ましくは接地電位)に維持される。従って、差動伝送路から伝わるコモンモードノイズは第三と第四との出力端子に伝達され、差動レシーバには伝達されない。更に、コモンモードノイズは差動伝送路には反射されない。こうして、本発明による差動受信装置はコモンモードノイズに強く、かつ不要電磁輻射を十分に低減させる。
本発明による差動送信装置は、好ましくは、本発明による上記のフィルタ回路、及び、そのフィルタ回路の第一と第二との入力端子に接続された出力端子対を有する差動ドライバ、を具備する。この差動送信装置では特に、第一と第二との出力端子が外部の差動伝送路に接続され、第三と第四との出力端子が一定の電位(好ましくは接地電位)に維持される。従って、差動ドライバから送出されるコモンモードノイズは第三と第四との出力端子に伝達され、差動伝送路には伝達されない。更に、コモンモードノイズは差動ドライバには反射されない。こうして、本発明による差動送信装置はコモンモードノイズに強く、かつ不要電磁輻射を十分に低減させる。
第二のノーマルモードチョークを有する本発明による上記のフィルタ回路は、好ましくは、差動送受信装置に搭載される。その差動送受信装置では、フィルタ回路の第一と第二との入力端子が第一と第二との入出力端子として利用され、第一と第二との出力端子が第三と第四との入出力端子として利用される。第一と第二との入出力端子は差動レシーバの入力端子対と差動ドライバの出力端子対とに接続され、第三と第四との入出力端子は外部の差動伝送路に接続される。更に、フィルタ回路の第三から第六までの出力端子(以下、第一から第四までの出力端子という)はいずれも、一定の電位(好ましくは接地電位)に維持される。従って、差動ドライバから送出されるコモンモードノイズはノーマルモードチョークを通して第一と第二との出力端子に伝達され、差動伝送路には伝達されない。更に、コモンモードノイズは差動レシーバと差動ドライバとには反射されない。逆に、差動伝送路から伝わるコモンモードノイズは第二のノーマルモードチョークを通して第三と第四との出力端子に伝達され、差動レシーバと差動ドライバとには伝達されない。更に、コモンモードノイズは差動伝送路には反射されない。こうして、本発明による差動送受信装置はコモンモードノイズに強く、かつ不要電磁輻射を十分に低減させる。
本発明による電源装置は、好ましくは、本発明による上記のフィルタ回路、及び、そのフィルタ回路の第一と第二との出力端子に接続された入力端子対を有する電力変換部、を具備する。この電源装置では特に、第一と第二との入力端子が外部の電源線に接続され、第三と第四との出力端子が一定の電位(好ましくは接地電位)に維持される。従って、電源線から受信されるコモンモードノイズは第三と第四との出力端子に伝達され、電力変換部には伝達されない。更に、コモンモードノイズは電源線には反射されない。本発明による電源装置は更に、第二のノーマルモードチョークを搭載しても良い。それにより、電力変換部、又は後段の回路から送出されるコモンモードノイズが、外部の電源線から遮断される。こうして、本発明による電源装置はコモンモードノイズに強く、かつ不要電磁輻射を十分に低減させる。
本発明によるフィルタ回路では上記の通り、第一と第二との入力端子を通して受信される信号のうち、ノーマルモード成分はコモンモードチョークを透過し、コモンモード成分はノーマルモードチョークを透過する。特に、コモンモードノイズは第一と第二との出力端子には伝達されず、第一と第二との入力端子には反射されない。こうして、本発明によるフィルタ回路は、差動信号に過大な歪みや減衰を生じさせることなく、かつコモンモード信号を反射することなく、差動信号とコモンモード信号とを分離する。特に、差動信号からコモンモードノイズが反射されることなく除去される。従って、コモンモードノイズに起因する不要電磁輻射が十分に低減すると共に、過大なコモンモードノイズによる回路素子の誤動作や破壊が確実に阻止される。更に、コモンモード電流がノーマルモードチョークを通り、コモンモードチョークを通らないので、コモンモードチョークのコアが磁気飽和を生じない。その結果、本発明によるフィルタ回路では特に、コアの小型化が容易であり、かつ信頼性が高い。
このように、本発明によるフィルタ回路は従来のフィルタ回路と比べ、特に、EMIの低減、コモンモードノイズに対する耐性の強化、及び小型化に有利である。従って、例えば、USB、IEEE1394、LVDS、DVI、HDMI、シリアルATA、PCIエクスプレス等、様々なシリアルインタフェースに搭載される差動伝送システム、特に車載LANや携帯情報機器(モバイル機器)に搭載される差動伝送システム、及び電源装置での利用に適している。
本発明の実施形態による車載LANを示すブロック図 図1に示されている車載LANの接続形態を示すブロック図 図1に示されている車載LANの別の接続形態を示すブロック図 図2、3に示されている差動受信装置の変形例を示すブロック図 図2、3に示されている差動受信装置の別の変形例を示すブロック図 図2、3に示されている差動送信装置の変形例を示すブロック図 本発明の実施形態1によるフィルタ回路の等価回路を示す図 コモンモードチョークとノーマルモードチョークとを一つのパッケージとして含む、本発明の実施形態1によるフィルタ回路の等価回路を示す図 本発明の実施形態1によるフィルタ回路の別の等価回路を示す図 図9に示されているノーマルモードチョークのコアを示す図 図9に示されているノーマルモードチョークの別のコアを示す図 図9に示されているノーマルモードチョークの更に別のコアを示す図 本発明の実施形態1によるフィルタ回路の更に別の等価回路を示す図 本発明の実施形態2によるフィルタ回路の等価回路を示す図 図14に示されているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図15に示されているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとの平面図 図16に示されている直線XVII−XVIIに沿った断面を示す図 本発明の実施形態2によるフィルタ回路に含まれている、別のコモンモードチョークとノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図18に示されている直線XIX−XIXに沿った断面を示す図 本発明の実施形態2によるフィルタ回路に含まれているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとの間に挟まれている磁気分離層を示す分解斜視図 本発明の実施形態2によるフィルタ回路に含まれている、更に別のコモンモードチョークとノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図21に示されているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとの平面図 図22に示されている直線XXIII−XXIIIに沿った断面を示す図 本発明の実施形態2によるフィルタ回路の別の等価回路を示す図 図24に示されているフィルタ回路に含まれているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図25に示されているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとの平面図 本発明の実施形態3によるフィルタ回路の等価回路を示す図 本発明の実施形態3によるフィルタ回路の別の等価回路を示す図 コモンモードチョークとノーマルモードチョークとを一つのパッケージとして含む、本発明の実施形態3によるフィルタ回路の等価回路を示す図 コモンモードチョークとノーマルモードチョークとを積層(又は薄膜)インダクタとして含む、本発明の実施形態3によるフィルタ回路の等価回路を示す図 第三と第四との出力端子が共通の出力端子に統合されている、本発明の実施形態3によるフィルタ回路の等価回路を示す図 本発明の実施形態4によるフィルタ回路の等価回路を示す図 コモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとを一つのパッケージとして含む、本発明の実施形態4によるフィルタ回路の等価回路を示す図 本発明の実施形態5によるフィルタ回路の等価回路を示す図 図34に示されているフィルタ回路に含まれているコモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図35に示されているコモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとの平面図 図36に示されている直線37−37に沿った断面を示す図 本発明の実施形態5によるフィルタ回路の別の等価回路を示す図 図38に示されているフィルタ回路に含まれているコモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図39に示されているコモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとの平面図 本発明の実施形態6によるフィルタ回路の等価回路を示す図 コモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとを一つのパッケージとして含む、本発明の実施形態6によるフィルタ回路の等価回路を示す図 コモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとを積層(又は薄膜)インダクタとして含む、本発明の実施形態6によるフィルタ回路の等価回路を示す図 第三と第四との出力端子、及び第五と第六との出力端子がそれぞれ、共通の出力端子に統合されている、本発明の実施形態6によるフィルタ回路の等価回路を示す図 本発明の実施形態7による携帯情報機器を示すブロック図 図45に示されている携帯情報機器に搭載されている、本発明の実施形態7による差動伝送システムを示すブロック図 本発明の実施形態8による電源装置を示すブロック図 従来のフィルタ回路を示す等価回路図 従来の別のフィルタ回路を示す等価回路図
符号の説明
1 フィルタ回路
1a 第一の入力端子
1b 第二の入力端子
2 コモンモードチョーク
L1 第一のインダクタ
L2 第二のインダクタ
2a 第一の出力端子
2b 第二の出力端子
3 ノーマルモードチョーク
L3 第三のインダクタ
L4 第四のインダクタ
3a 第三の出力端子
3b 第四の出力端子
以下、本発明の最良の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
《実施形態1》
本発明の実施形態1による差動伝送システムは好ましくは、CAN等の車載LANに搭載される(図1参照)。車載LANには様々なECUが接続される。例えば、エンジン、トランスミッション、及びブレーキ等、自動車の駆動系統(パワートレイン系)を制御するECUE1;ABSやエアバック等、安全装置類(安全走行系)を制御するECUE2;ヘッドライト、エアコン、及びサイドミラー等、自動車の付属部品(ボディ系)を制御するECUE3;が含まれる。車載LANには更に、車載カメラ、車間距離計測用レーザ、及び加速度センサ等のセンサ類;カーナビやETC等の情報電子機器類(ITS系)E4;並びに、DVDプレーヤやオーディオコンポ等のAV機器が接続される。それらのECUや車載電子機器(以下、ECU等と略す)の接続形態は好ましくはバス型である。その他に、スター型であっても良い。多種多様なECU等が車載LANを通して通信を行い、相互に連携する。それにより、様々な、高度な機能が実現される。
車載LANではECU等の間がケーブル40で接続される。このケーブル40は一般に長い(例えば2m以上のものを含む)。一方、自動車内では、例えばエンジンEやドアミラーDMを回転させるモータ等、様々な部品から電磁波が放射される。更に、自動車は様々な環境を走行するので、外部からも様々な電磁波が自動車内に侵入する。それらの電磁波がケーブル40にノイズを発生させる。そのノイズに加え、ECU等からケーブル40に直接送出されたノイズがケーブル40の周囲に電磁波として放射され、他のケーブル40やアンテナATにノイズを与える。このように車載LANでは、不要電磁輻射とそれに起因するノイズとが共に高い。それらのノイズによる各ECU等に対する悪影響、すなわちEMIを抑える目的で、車載LANでの通信は差動伝送方式で行われる。
ECU等U1、U2、U3、…はそれぞれ、差動受信装置10、差動送信装置20、又は差動送受信装置30を通信ポートとして含む(図2、3参照)。これらの通信ポートがケーブル40で互いに接続され、差動伝送システムを構成する。ケーブル40は二本の差動伝送路を含む。各差動伝送路を伝搬する信号(差動信号)間では位相が互いに逆である。ケーブル40には好ましくは、シールド付ツイストペアケーブルが使用される。その他に、シールドなしのツイストペアケーブル、フラットケーブル、又はフレキケーブルが使用されても良い。ケーブル40は好ましくは、通信ポートを一対一で接続する(図2参照)。その場合、各ECU等U1、U2、U3、…が受信した信号を次のECU等へリピートすることで、バス型のLANを論理的に構成する。その他に、ケーブルがバス40Bと分岐線40Aとに物理的に分けられても良い(図3参照)。
差動受信装置10は受信専用の装置であり、例えばディスプレイU1に搭載される(図2、3参照)。差動受信装置10は、本発明によるフィルタ回路1、差動レシーバ11、及び差動配線12を含む。フィルタ回路1の二つの入力端子1a、1bは、ケーブル40に含まれている差動伝送路に接続される。ここで、ケーブル40とフィルタ回路1との間には、例えば直流阻止キャパシタや静電保護ダイオードが更に接続されても良い。フィルタ回路1はケーブル40を通して他のECU等から差動信号を受信し、その差動信号からコモンモードノイズを除去する。フィルタ回路1は特に、差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。その一方で、コモンモードノイズを反射することなく、実質上完全に吸収する(詳細は後述)。フィルタ回路1の二つの出力端子2a、2bは差動配線12に接続される。ここで、フィルタ回路1と差動配線12との間には、例えばローパスフィルタが接続されても良い。フィルタ回路1から送出された差動信号は、差動配線12を通し、差動レシーバ11の入力端子対で受信される。差動レシーバ11は受信された差動信号の差分を増幅する。ディスプレイU1は差動レシーバ11の出力信号から、例えば画像データを解読し、それに基づいてスクリーンに画像を再現する。
差動受信装置10では更に好ましくは、差動レシーバ11の入力端子対に終端素子13、14、又は15が接続される(図4、5参照)。終端素子13、14、15は好ましくは抵抗素子であり、差動レシーバ11と共に、一つのLSI上に集積される。図4では、差動レシーバ11の各入力端子が終端素子13、14を通して定電位端子(好ましくは接地端子)に接続される。図5では、差動レシーバ11の入力端子間が終端素子15で接続される。差動信号に対してはフィルタ回路1のインピーダンスが十分に低い。従って、差動配線12の差動インピーダンスと終端素子13、14、15のインピーダンスとがそれぞれ、ケーブル40の差動インピーダンスと整合するように調整される。例えば、ケーブル40の差動インピーダンスが100Ωである場合、差動配線12の差動インピーダンスが100Ω程度に設定される。更に、図4では終端素子13、14のインピーダンスがそれぞれ50Ω程度に設定され、図5では終端素子15のインピーダンスが100Ω程度に設定される。その結果、差動レシーバ11により受信される差動信号には実質的な歪みや減衰が生じない。その上、差動配線12のレイアウトがインピーダンス整合からは大きな制約を受けないので、差動受信装置10は回路設計の柔軟性が高い。
差動送信装置20は送信専用の装置であり、例えばディスプレイU1の制御回路U2に搭載される(図2、3参照)。差動送信装置20は、差動ドライバ21、本発明によるフィルタ回路1、及び差動配線22を含む。制御回路U2内では、例えば画像データに基づいて差動信号が生成される。差動ドライバ21はその差動信号を増幅する。増幅された差動信号は差動ドライバ21の出力端子対から差動配線22に送出される。フィルタ回路1の二つの入力端子1a、1bは差動配線22に接続される。ここで、差動配線22とフィルタ回路1との間には、例えばローパスフィルタが接続されても良い。フィルタ回路1は差動配線22を通して差動信号を受信し、その差動信号からコモンモードノイズを除去する。フィルタ回路1は特に、差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。その一方で、コモンモードノイズを反射することなく、実質上完全に吸収する(詳細は後述)。フィルタ回路1の二つの出力端子2a、2bは、ケーブル40に含まれている差動伝送路に接続される。ここで、フィルタ回路1とケーブル40との間には、例えば直流阻止キャパシタや静電保護ダイオードが更に接続されても良い。フィルタ回路1はケーブル40を通して他のECU等に差動信号を送出する。
差動送信装置20では更に好ましくは、差動ドライバ21の出力端子対がそれぞれ、終端素子23、24を通して差動配線22に接続される(図6参照)。終端素子23、24は好ましくは抵抗素子であり、更に好ましくは、差動ドライバ21と共に、一つのLSI上に集積される。その他に、差動ドライバ21とは異なる独立素子として実装されても良い。
フィルタ回路1の差動インピーダンスが十分に低いので、差動配線22の差動インピーダンス、及び、差動ドライバ21のオン抵抗と終端素子23、24のインピーダンスとの合成がそれぞれ、ケーブル40の差動インピーダンスと整合するように調整される。例えば、ケーブル40の差動インピーダンスが100Ωである場合、差動配線22の差動インピーダンスが100Ω程度に設定され、差動ドライバ21のオン抵抗と終端素子23、24のインピーダンスとの合成がそれぞれ50Ω程度に設定される。その結果、ケーブル40に送出される差動信号には実質的な歪みや減衰が生じない。その上、差動配線22のレイアウトがインピーダンス整合からは大きな制約を受けないので、差動送信装置20は回路設計の柔軟性が高い。
差動送受信装置30は差動受信装置10と差動送信装置20とを一体化した装置であり、送信と受信との両方を行うECU等U3に搭載される(図2、3参照)。差動送受信装置30は、差動レシーバ31、差動ドライバ32、本発明によるフィルタ回路1、及び差動配線33を含む。
フィルタ回路1の二つの入力端子1a、1bは、ケーブル40に含まれている差動伝送路に接続される。ここで、ケーブル40とフィルタ回路1との間には、例えば直流阻止キャパシタや静電保護ダイオードが更に接続されても良い。フィルタ回路1はケーブル40を通して他のECU等から差動信号を受信し、その差動信号からコモンモードノイズを除去する。フィルタ回路1は特に、差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。その一方で、コモンモードノイズを反射することなく、実質上完全に吸収する(詳細は後述)。フィルタ回路1の二つの出力端子2a、2bは差動配線33に接続される。ここで、フィルタ回路1と差動配線33との間には、例えばローパスフィルタが接続されても良い。フィルタ回路1から送出された差動信号は、差動配線33を通し、差動レシーバ31の入力端子対で受信される。差動レシーバ31は受信された差動信号の差分を増幅する。ECU等U3は差動レシーバ31の出力信号から通信データを解読する。
ECU等U3内では、他のECU等に伝えられるべきデータに基づいて差動信号が生成される。差動ドライバ32はその差動信号を増幅する。増幅された差動信号は差動ドライバ32の出力端子対から差動配線33に送出される。フィルタ回路1は、差動配線33、及び第一と第二との出力端子2a、2bを通して差動信号を受信し、その差動信号からコモンモードノイズを除去する。フィルタ回路1は特に、差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。フィルタ回路1は更に、第一と第二との入力端子1a、1bを通してケーブル40に差動信号を送出する。このように、差動送受信装置30では、フィルタ回路1の二つの入力端子1a、1b、及び二つの出力端子2a、2bがいずれも、入出力端子として利用される。
差動送受信装置30では好ましくは、差動受信装置10と同様に、差動レシーバ31の入力端子対に終端素子13、14、又は15が接続される(図4、5参照)。それにより、差動レシーバ31により受信される差動信号には実質的な歪みや減衰が生じない。更に好ましくは、差動送信装置20と同様に、差動ドライバ32の出力端子対がそれぞれ、終端素子23、24を通して差動配線33に接続される(図6参照)。それにより、ケーブル40に送出される差動信号には実質的な歪みや減衰が生じない。その上、差動配線33のレイアウトがインピーダンス整合からは大きな制約を受けないので、差動送受信装置30は回路設計の柔軟性が高い。
フィルタ回路1は、二つの入力端子1a、1b、四つの出力端子2a、2b、3a、3b、コモンモードチョーク2、及びノーマルモードチョーク3を有する(図7参照)。
二つの入力端子1a、1bは図2、3に示されている通り、差動受信装置10と差動送受信装置30とではケーブル40に接続され、差動送信装置20では差動ドライバ21の出力端子に接続される。第一と第二との出力端子2a、2bは図2、3に示されている通り、差動受信装置10と差動送受信装置30とでは差動レシーバ11、31の入力端子に接続され、差動送信装置20ではケーブル40に接続される。第三と第四との出力端子3a、3bは定電位端子(好ましくは接地端子)に接続される。
コモンモードチョーク2は二つのインダクタL1、L2を含む。第一のインダクタL1は第一の入力端子1aと第一の出力端子2aとの間に接続される。第二のインダクタL2は第二の入力端子1bと第二の出力端子2bとの間に接続される。二つのインダクタL1、L2は互いに磁気的に結合し、特に、入力端子と出力端子との間に同じ極性で接続される。すなわち、二つの入力端子1a、1bと二つの出力端子2a、2bとの間に、コモンモード電流が流れるときは二つのインダクタL1、L2に生じる磁束が互いに強め合い、ノーマルモード電流が流れるときは二つのインダクタL1、L2に生じる磁束が相殺する。それにより、コモンモードチョーク2のインピーダンスは、二つの入力端子1a、1bを通して受信される信号のうち、コモンモード成分に対しては極めて高く、ノーマルモード成分に対しては極めて低い。
本発明の実施形態1では、コモンモードチョーク2が一つのコアとそれに巻き付けられた二本のコイルとを含む。好ましくは、二本のコイルがコアにバイファイラ巻き又はキャンセル巻きで巻かれている。
ノーマルモードチョーク3は二つのインダクタL3、L4を含む。第三のインダクタL3は第一の入力端子1aと第三の出力端子3aとの間に接続される。第四のインダクタL4は第二の入力端子1bと第四の出力端子3bとの間に接続される。二つのインダクタL3、L4は互いに磁気的に結合し、特に、入力端子と出力端子との間に逆の極性で接続される。すなわち、二つの入力端子1a、1bと二つの出力端子3a、3bとの間に、ノーマルモード電流が流れるときは二つのインダクタL3、L4に生じる磁束が互いに強め合い、コモンモード電流が流れるときは二つのインダクタL3、L4に生じる磁束が相殺する。それにより、ノーマルモードチョーク3のインピーダンスは、二つの入力端子1a、1bを通して受信される信号のうち、ノーマルモード成分に対しては極めて高く、コモンモード成分に対しては極めて低い。
本発明の実施形態1では、ノーマルモードチョーク3が一つのコアとそれに巻き付けられた二本のコイルとを含む。好ましくは、二本のコイルがコアにバイファイラ巻き又はキャンセル巻きで巻かれている。すなわち、ノーマルモードチョーク3がコモンモードチョーク2と同じ構成を持つ。その場合、図7に示されている通り、第三と第四とのインダクタL3、L4間で入力端子/出力端子への接続の極性が逆である。更に好ましくは、二つのコモンモードチョークを含むコモンモードチョークアレイ2Aが、本発明の実施形態1によるコモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との組み合わせとして利用される(図8参照)。それにより、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3とが一つのパッケージに集約されるので、フィルタ回路1の小型化に有利である。
ノーマルモードチョーク3では上記の他に、コモンモード電流により生じる磁束が互いに相殺するような向きで二本のコイルがコアに巻かれても良い(図9参照)。すなわち、二本のコイルのいずれかがバイファイラ巻き又はキャンセル巻きとは逆向きに巻かれている(図10、11、12参照)。図10ではトロイダルコアTCに二本のコイルL3、L4が重ねて巻かれている(実線のコイルが第三のインダクタL3に相当し、破線のコイルが第四のインダクタL4に相当する)。但し、バイファイラ巻きとは異なり、二本のコイルL3、L4間ではトロイダルコアTCへの巻き方が逆である。図11ではトロイダルコアTCに二本のコイルL3、L4が半周ずつ、別々に巻かれている。但し、キャンセル巻きとは異なり、二本のコイルL3、L4間では、トロイダルコアTCへの巻き方が同じである。図12では棒状コアRCに二本のコイルL3、L4が重ねて巻かれている(実線のコイルが第三のインダクタL3に相当し、破線のコイルが第四のインダクタL4に相当する)。但し、バイファイラ巻きとは異なり、二本のコイルL3、L4間では棒状コアRCへの巻き方が逆である。図10、11、12のいずれでも、図9に示されている通り、ノーマルモードチョーク3とフィルタ回路1の入力端子1a、1b/出力端子3a、3bとの間の配線は図7、8に示されている配線より短い。従って、フィルタ回路1の小型化には有利である。
本発明の実施形態1によるフィルタ回路1では上記の通り、コモンモードチョーク2のインピーダンスがコモンモード信号に対しては十分に高く、差動信号に対しては十分に低い。ノーマルモードチョーク3のインピーダンスは逆に、コモンモード信号に対しては十分に低く、差動信号に対しては十分に高い。特に、それらのインピーダンスの差が十分に大きい。更に、ノーマルモードチョーク3がコモンモードチョーク2の前段に設置され、すなわちコモンモードチョーク2より第一と第二との入力端子1a、1bに近い所に接続される(図7、8、9参照)。従って、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信される差動信号のうち、実質上、ノーマルモード成分のみがコモンモードチョーク2を透過し、コモンモード成分のみがノーマルモードチョーク3を透過する。こうして、差動信号から両成分が分離される。特に、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信されるコモンモードノイズが第一と第二との出力端子1a、1bから遮断される。その上、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が実質上生じない。それに加え、コモンモードチョーク2にはコモンモード電流が実質上流れないので、コモンモードチョーク2のコアが磁気飽和を生じない。それ故、フィルタ回路1は信頼性が高い。
図2、3に示されている差動受信装置10(及び、差動送受信装置30)では、フィルタ回路1が、ケーブル40を通して受信される差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。従って、差動信号のノーマルモード成分に対しては上記の通り、差動レシーバ11(31)、差動配線12(33)、及びケーブル40間でのインピーダンス整合が差動信号の実質的な歪みや減衰を抑える(図4、5参照)。その上、そのインピーダンス整合は差動配線12(33)のレイアウトに大きな制約を与えないので、差動受信装置10(差動送受信装置30)は回路設計の柔軟性が高い。フィルタ回路1では更に、ノーマルモードチョーク3がコモンモードノイズを実質上、完全に吸収する。従って、差動レシーバ11とその後段の回路(差動レシーバ31とその後段の回路、及び差動ドライバ32)がコモンモードノイズから確実に保護される。更に、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が実質上完全に抑制される。それ故、ケーブル40から周辺への不要電磁輻射が十分に低減する。
尚、図2、3に示されている差動受信装置10では、コモンモード信号に対し、第一と第二との出力端子2a、2bに接続される差動レシーバ11の入力インピーダンスがノーマルモードチョーク3のインピーダンスより十分に高い。その場合、フィルタ回路1ではコモンモードチョーク2が除去されても良い(図13参照)。二つの入力端子1a、1bから侵入するコモンモードノイズはノーマルモードチョーク3を透過し、二つの出力端子2a、2bから差動レシーバ11へは伝達されない。
図2、3に示されている差動送信装置20では、フィルタ回路1が、差動ドライバ21から送出される差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。従って、差動信号のノーマルモード成分に対しては上記の通り、差動ドライバ21、差動配線22、及びケーブル40間でのインピーダンス整合が差動信号の実質的な歪みや減衰を抑える(図6参照)。その上、そのインピーダンス整合は差動配線22のレイアウトに大きな制約を与えないので、差動送信装置20は回路設計の柔軟性が高い。フィルタ回路1では更に、ノーマルモードチョーク3が、差動ドライバ21又は差動配線22に起因するコモンモードノイズを実質上、完全に吸収する。従って、ケーブル40から周辺への不要電磁輻射が十分に低減する。更に、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が実質上完全に抑制される。それ故、差動ドライバ21が、コモンモードチョーク2により反射されたコモンモードノイズから確実に保護される。
《実施形態2》
本発明の実施形態2による差動伝送システムは好ましくは、実施形態1によるシステムと同様に、車載LANに搭載される。フィルタ回路1が積層インダクタ又は薄膜インダクタを含む点で、本発明の実施形態2は実施形態1とは異なる。本発明の実施形態2による構成要素のうち、実施形態1による構成要素と同様な構成要素については、実施形態1による構成要素についての説明と図面とを援用する。
本発明の実施形態2によるフィルタ回路1は実施形態1によるフィルタ回路と同様な等価回路で表される(図14参照)。しかし、実施形態1によるフィルタ回路とは異なり、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3とに含まれているインダクタL1、L2、L3、L4がいずれも積層インダクタ又は薄膜インダクタであり、同じチップ2B上に集積される(図15、16、17参照)。それにより、本発明の実施形態2によるフィルタ回路1は極めて小さい。
この場合、第一と第二との入力端子1a、1b、第一から第四までの出力端子2a、2b、3a、3bは好ましくは、チップ2Bと同一平面上に設置される。その他に、それらの端子のいずれか、又は全部が、チップ2Bと垂直に交わる平面上に設置されても良い。
フィルタ回路1は好ましくは、積層された12枚の磁性体シート(以下、層という)S1、S2、…、S12を含む(図15参照)。ここで、磁性体シートは好ましくは、セラミック製のシートである。各層S1、S2、…、S12上には、導線(好ましくは金属箔)C1、C2、…、C12が好ましくは、スクリーン印刷により形成されている。その他に、スパッタリングや蒸着で形成されていても良い。以下、各層を上から順に、第一層S1、第二層S2、…、と呼ぶ。
第一層S1から第三層S3までの三つの層が第一のインダクタL1に相当する(図15参照)。第一層S1上の導線C1と第二層S2上の導線C2とが第二のビアホールV2で接続され、第二層S2上の導線C2と第三層S3上の導線C3とが第三のビアホールV3で接続される。それにより、三つの導線C1、C2、C3は、第三層S3から第一層S1へ貫く法線Nの方向から見て時計回りにほぼ(2+1/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図16参照)。第一層S1上の導線C1の一端T1Aは第一の入力端子1aに接続され、第三層S3上の導線C3の一端T2Aは第一の出力端子2aに接続される(図14参照)。
第四層S4から第六層S6までの三つの層が第二のインダクタL2に相当する(図15参照)。第四層S4上の導線C4と第五層S5上の導線C5とが第五のビアホールV5で接続され、第五層S5上の導線C5と第六層S6上の導線C6とが第六のビアホールV6で接続される。それにより、三つの導線C4、C5、C6は、第四層S4から第六層S6へ貫く法線Nの方向から見て時計回りにほぼ(2+3/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図16参照)。第四層S4上の導線C4の一端T1Bは第二の入力端子1bに接続され、第六層S6上の導線C6の一端T2Bは第二の出力端子2bに接続される(図14参照)。
第七層S7から第九層S9までの三つの層が第三のインダクタL3に相当する(図15参照)。第七層S7上の導線C7と第八層S8上の導線C8とが第七のビアホールV7で接続され、第八層S8上の導線C8と第九層S9上の導線C9とが第八のビアホールV8で接続される。それにより、三つの導線C7、C8、C9は、第九層S9から第七層S7へ貫く法線Nの方向から見て時計回りにほぼ(2+1/8)回巻かれた矩形コイルを成す(図16参照)。第七層S7上の導線C7の一端は第一のビアホールV1を通して第一層S1上の導線C1の一端T1Aに接続されるので、第一の入力端子1aに接続される(図14参照)。第九層S9上の導線C9の一端T3Aは第三の出力端子3aに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図14参照)。
第十層S10から第十二層S12までの三つの層が、第四のインダクタL4に相当する(図15参照)。第十層S10上の導線C10と第十一層S11上の導線C11とが第九のビアホールV9で接続され、第十一層S11上の導線C11と第十二層S12上の導線C12とが第十のビアホールV10で接続される。それにより、三つの導線C10、C11、C12は、第十二層S12から第十層S10へ貫く法線Nの方向から見て反時計回りにほぼ(2+1/8)回巻かれた矩形コイルを成す(図16参照)。第十層S10上の導線C10の一端は第四のビアホールV4を通して第四層S4上の導線C4の一端T1Bに接続されるので、第二の入力端子1bに接続される(図14参照)。第十二層S12上の導線C12の一端T3Bは第四の出力端子3bに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図14参照)。
第一層S1の上には更に、別の磁性体シートS0が重ねられる(図17参照)。積層された磁性体シート全体を加熱することにより、全層の磁性体が一体化する。それにより、第一層S1から第三層S3までのコイルC1、C2、C3と、第四層S4から第六層S6までのコイルC4、C5、C6とが、一体化された磁性体をコアとして磁気的に結合する。特に、両方のコイルが法線Nを中心に同じ方向に巻かれているので、第一層S1から第六層S6まで、すなわち第一と第二とのインダクタL1、L2がコモンモードチョーク2を構成する。
同様に、第七層S7から第九層S9までのコイルC7、C8、C9と、第十層S10から第十二層S12までのコイルC10、C11、C12とが、一体化された磁性体をコアとして磁気的に結合する。特に、両方のコイルが法線Nを中心に逆方向に巻かれているので、第七層S7から第十二層S12まで、すなわち第三と第四とのインダクタL3、L4がノーマルモードチョーク3を構成する。
本発明の実施形態2によるフィルタ回路では実施形態1によるフィルタ回路と同様に、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信される差動信号のうち、実質上、ノーマルモード成分のみがコモンモードチョーク2を透過し、コモンモード成分のみがノーマルモードチョーク3を透過する。こうして、差動信号から両成分が分離される。特に、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信されるコモンモードノイズが第一と第二との出力端子1a、1bから遮断される。その上、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が実質上生じない。それに加え、コモンモードチョーク2にはコモンモード電流が実質上流れないので、コモンモードチョーク2のコアが磁気飽和を生じない。それ故、フィルタ回路1は信頼性が高い。特に、コモンモードチョーク2のコアの体積が小さくても良いので、コモンモードチョーク2が上記のように積層インダクタ(又は薄膜インダクタ)として形成され得る。
尚、層数や導線の巻数が図15に示されているものとは異なっても良い。更に、コイルが図15、16に示されている矩形状とは異なり、円形状又は他の多角形状であっても良い。但し、第一のインダクタL1に含まれているコイルC1、C2、C3と、第二のインダクタL2に含まれているコイルC4、C5、C6との間では、巻数と形状との正確な一致が好ましい。同様に、第三のインダクタL3に含まれているコイルC7、C8、C9と、第四のインダクタL4に含まれているコイルC10、C11、C12との間では、巻数と形状との正確な一致が好ましい。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間では平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
その他に、第九層S9上の導線C9の一端T3Aと第十二層S12上の導線C12の一端T3Bとが、図15、16に示されているものとは異なり、第一層S1上の導線C1の一端T1Aと第四層S4上の導線C4の一端T1Bとから等距離の位置に設けられても良い(例えば、図16に一点鎖線で示されている部分T3D、T3E参照)。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間では平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
コモンモードチョーク2では、図15、17に示されているものとは異なり、第一のインダクタL1を構成する三つの層S1、S2、S3と第二のインダクタL2を構成する三つの層S4、S5、S6とが交互に重ねられても良い(図18、19参照)。それにより、第一のインダクタL1に含まれている導線C1、C2、C3と第二のインダクタに含まれている導線C4、C5、C6との間で、例えば線間距離、及びそれに依存する寄生容量が均一化される(図19参照)。その結果、フィルタ回路1に含まれる差動信号の経路では平衡度が更に向上する。従って、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
尚、コモンモードチョーク2と同様に、ノーマルモードチョーク3では、第三のインダクタL3を構成する三つの層S7、S8、S9と第四のインダクタL4を構成する三つの層S10、S11、S12とが交互に重ねられても良い(図示せず)。
ノーマルモードチョーク3を構成する六つの層S7〜S12が、コモンモードチョーク2を構成する六つの層S1〜S6の上に形成されても良い。
コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との間、例えば、第六層S6と第七層S7との間には磁気分離層Ssが挿入されても良い(図20参照)。磁気分離層Ssは好ましくは磁性体シートであり、その上に導体膜GNDが形成されている。導体膜GNDは、各層S1、…、S12上の導線C1、…、C12により囲まれる面積全体を一様に覆う。その他に、導体膜GNDが、その面積全体に拡がるメッシュ状の導体膜であっても良い。導体膜GNDは一定電位(好ましくは接地電位)に維持される。それにより、磁界が導体膜GNDを透過できないので、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との間が磁気的に分離される。その結果、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3とが互いに干渉しないので、それぞれの信頼性が更に向上する。
コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との間の磁気的干渉を抑える目的では、磁気分離層Ssが挿入される場合(図20参照)の他に、二つのチョーク2、3が磁性体シート上の異なる領域に形成されても良い(図21、22、23参照)。図21、22、23に示されている7枚の磁性体シートS1、S2、…、S7の右半分がコモンモードチョーク2に相当し、左半分がノーマルモードチョーク3に相当する。
第一層S1上の第一の導線C1が第三層S3上の第一の導線C3と、第二のビアホールV2で接続され、第三層S3上の第一の導線C3が第五層S5上の導線C5と、第三のビアホールV3で接続される。それにより、三つの第一の導線C1、C3、C5は、第五層S5から第一層S1へ貫く第一の法線N1の方向から見て時計回りにほぼ(2+1/2)回巻かれた矩形コイルを成す(図21参照)。この第一のコイルC1、C3、C5が第一のインダクタL1に相当する。第一層S1上の第一の導線C1の一端T1Aは第一の入力端子1aに接続され、第五層S5上の第一の導線C5の一端T2Aは第一の出力端子2aに接続される(図14参照)。
第一層S1上の第二の導線C7が第二層S2上の第一の導線C2と、第五のビアホールV5で接続され、第二層S2上の第一の導線C2が第四層S4上の第一の導線C4と、第六のビアホールV6で接続され、第四層S4上の第一の導線C4が第六層S6上の第一の導線C6と、第七のビアホールV7で接続される。それにより、三つの第一の導線C2、C4、C6は、第六層S6から第一層S1へ貫く第一の法線N1の方向から見て時計回りにほぼ(2+1/2)回巻かれた矩形コイルを成す(図21参照)。この第二のコイルC2、C4、C6が第二のインダクタL2に相当する。第一層S1上の第二の導線C7の一端T1Bは第二の入力端子1bに接続され、第六層S6上の第一の導線C6の一端T2Bは第二の出力端子2bに接続される(図14参照)。
第一層S1上の第一の導線C1が第二層S2上の第二の導線C8と、第一のビアホールV1で接続され、第二層S2上の第二の導線C8が第四層S4上の第二の導線C10と、第八のビアホールV8で接続され、第四層S4上の第二の導線C10が第六層S6上の第二の導線C12と、第九のビアホールV9で接続される。それにより、三つの第二の導線C8、C10、C12は、第六層S6から第一層S1へ貫く第二の法線N2の方向から見て時計回りにほぼ(2+3/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図21参照)。この第三のコイルC8、C10、C12が、第三のインダクタL3に相当する。第六層S6上の第二の導線C12の一端T3Aは第三の出力端子3aに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図14参照)。
第一層S1上の第二の導線C7が第三層S3上の第二の導線C9と、第四のビアホールV4で接続され、第三層S3上の第二の導線C9が第五層S5上の第二の導線C11と、第十のビアホールV10で接続され、第五層S5上の第二の導線C11が第七層S7上の導線C13と、第十一のビアホールV11で接続される。それにより、三つの導線C9、C11、C13は、第七層S7から第一層S1へ貫く第二の法線N2の方向から見て反時計回りにほぼ(2+3/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図21参照)。この第四のコイルC9、C11、C13が第四のインダクタL4に相当する。第七層S7上の導線C13の一端T3Bは第四の出力端子3bに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図14参照)。
第一層S1の上には更に、別の磁性体シートS0が重ねられる(図23参照)。積層された磁性体シート全体を加熱することにより全層の磁性体が一体化する。それにより、第一のコイルC1、C3、C5と第二のコイルC2、C4、C6とが、一体化された磁性体をコアとして磁気的に結合する。特に、両方のコイルが第一の法線N1を中心に同じ方向に巻かれているので、第一と第二とのインダクタL1、L2がコモンモードチョーク2を構成する。
同様に、第三のコイルC8、C10、C12と第四のコイルC9、C11、C13とが、一体化された磁性体をコアとして磁気的に結合する。特に、両方のコイルが第二の法線N2を中心に逆方向に巻かれているので、第三と第四とのインダクタL3、L4がノーマルモードチョーク3を構成する。
図21、22、23から明らかな通り、第一と第二とのコイルC1〜C6により生じる磁束は第三と第四とのコイルC8〜C13により生じる磁束とほとんど相互作用をしない。従って、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との間が磁気的に分離される。その結果、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3とが互いに干渉しないので、それぞれの信頼性が更に向上する。
尚、層数や導線の巻数が図21に示されているものとは異なっても良い。更に、コイルが図21、22に示されている矩形状とは異なり、円形状又は他の多角形状であっても良い。但し、第一のコイルC1、C2、C3と第二のコイルC4、C5、C6との間では、巻数と形状との正確な一致が好ましい。同様に、第三のコイルC8、C10、C12と第四のコイルC9、C11、C13との間では、巻数と形状との正確な一致が好ましい。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間では平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
その他に、第六層S6上の第二の導線C12の一端T3Aと、第七層S7上の導線C13の一端T3Bとが、図21、22に示されているものとは異なり、第一層S1上の第一の導線C1の一端T1Aと第二の導線C7の一端T1Bとから等距離の位置に設けられても良い。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間では平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
図14に示されているフィルタ回路1の等価回路では、第三と第四との出力端子3a、3bが別々の端子に分かれている。その他に、共通の出力端子3cが第三と第四との出力端子3a、3bとして兼用されても良い(図24参照)。それにより、フィルタ回路1の端子数が削減されるので、周辺の回路設計の柔軟性が更に向上する。
例えば、図15、16、17に示されているフィルタ回路1とは異なり、第九層S9上の導線C9Aが第十一のビアホールV11で第十二層S12上の導線C12Aと接続される(図25参照)。更に、第十二層S12上の導線C12Aの一端T3Cが共通の出力端子3cに接続され、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される。ここで、第十二層S12上の導線C12Aの一端T3Cは第一層S1上の導線C1の一端T1Aと第四層S4上の導線C4の一端T1Bとから等距離の位置に設けられる(図26参照)。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間で平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
《実施形態3》
本発明の実施形態3による差動伝送システムは好ましくは、実施形態1によるシステムと同様に、車載LANに搭載される。フィルタ回路1が終端素子を含む点で、本発明の実施形態3は実施形態1、2とは異なる。本発明の実施形態3による構成要素のうち、実施形態1、2による構成要素と同様な構成要素については、実施形態1、2による構成要素についての説明と図面とを援用する。
本発明の実施形態3によるフィルタ回路1は実施形態1によるフィルタ回路1と同様な等価回路で表される(図27、28、29、30、31参照)。しかし、実施形態1によるフィルタ回路1とは異なり、ノーマルモードチョーク3に終端素子Z1、Z2が接続される。終端素子Z1、Z2はインピーダンス素子であり、好ましくはキャパシタである。その他に、インダクタ、バリスタ、ダイオード、抵抗素子、又はそれらの組み合わせであっても良い。
ノーマルモードチョーク3がコモンモードチョーク2から独立した素子である場合、好ましくは、第一の終端素子Z1が第三のインダクタL3と第三の出力端子3aとの間に接続され、第二の終端素子Z2が第四のインダクタL4と第四の出力端子3bとの間に接続される(図27参照)。その他に、第一の終端素子Z1が第一の入力端子1aと第三のインダクタL3との間に接続され、第二の終端素子Z2が第二の入力端子1bと第四のインダクタL4との間に接続されても良い(図28参照)。
二つのコモンモードチョークを含むコモンモードチョークアレイ2Aがコモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との組み合わせとして利用される場合も同様に、第一の終端素子Z1が第三のインダクタL3と第三の出力端子3aとの間に接続され、第二の終端素子Z2が第四のインダクタL4と第四の出力端子3bとの間に接続される(図29参照)。更に、第一の終端素子Z1が第一の入力端子1aと第三のインダクタL3との間に接続され、第二の終端素子Z2が第二の入力端子1bと第四のインダクタL4との間に接続されても良い(図29に示されている破線部参照)。
本発明の実施形態2のように、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3とが積層インダクタ(又は薄膜インダクタ)である場合、第一の終端素子Z1が第三のインダクタL3の一端T3Aと第三の出力端子3aとの間に接続され、第二の終端素子Z2が第四のインダクタL4の一端T3Bと第四の出力端子3bとの間に接続される(図14、30参照)。更に、共通の出力端子3cが第三と第四との出力端子3a、3bとして兼用される場合、第一と第二との終端素子Z1、Z2が一つの終端素子Zに統合され、第三と第四とのインダクタL3、L4の共通端T3Cと共通の出力端子3cとの間に接続される(図24、31参照)。
第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信されるコモンモード信号に対し、コモンモードチョーク2のインピーダンスは極めて高く、ノーマルモードチョーク3のインピーダンスは極めて低い。従って、図2、3に示されている差動受信装置10(及び、差動送受信装置30)では、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンス(図31では、統合された終端素子Zのインピーダンス)が、ケーブル40のコモンモードインピーダンスと整合するように調整される。例えば、ケーブル40のコモンモードインピーダンスが30Ωである場合、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンスが60Ω程度に設定される(図31では、統合された終端素子Zのインピーダンスが30Ω程度に設定される)。こうして、コモンモード信号に対し、ケーブル40とフィルタ回路1との間でインピーダンス整合が高精度に実現するので、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が更に低減する。それ故、ケーブル40から周辺への不要電磁輻射が更に低減する。
図2、3に示されている差動送信装置20でも同様に、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンス(図31では、統合された終端素子Zのインピーダンス)が、差動配線22のコモンモードインピーダンスと整合するように調整される。例えば、差動配線22のコモンモードインピーダンスが30Ωである場合、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンスが60Ω程度に設定される(図31では、統合された終端素子Zのインピーダンスが30Ω程度に設定される)。こうして、コモンモード信号に対し、差動配線22とフィルタ回路1との間でインピーダンス整合が高精度に実現するので、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が更に低減する。それ故、差動ドライバ21を含むLSI、更にその前段の回路へのコモンモードノイズの侵入が防止されるので、反射されたコモンモードノイズによる電源電位や接地電位の変動が確実に抑制される。
第一と第二との終端素子Z1、Z2がインダクタである場合、各インピーダンスが差動信号の周波数に依存して変化する(一般に、自己共振周波数と呼ばれる特定の周波数でピークに達する)。そのインピーダンスの周波数特性を利用することで、ノーマルモードチョーク3、及び第一と第二との終端素子Z1、Z2の間で合成されたコモンモードインピーダンスの周波数特性が調節される。例えば、IEEE1394でのスピード信号(通信機器間で伝送速度を照合するための信号)の利用のように、差動伝送路を通してコモンモード信号が伝送される場合がある。その場合、上記のコモンモードインピーダンスは、そのコモンモード信号の周波数帯域では十分に高く、それ以外の周波数帯域では十分に低く調節される。それにより、上記のコモンモード信号に過大な歪みや減衰を生じさせることなく、コモンモードノイズが除去される。
第一と第二との終端素子Z1、Z2がキャパシタである場合、各インピーダンスが差動信号のコモンモード成分の低周波数帯域(特にバイアス電圧を含む)に対しては十分に高く、高周波数帯域に対しては十分に低い。そのインピーダンス特性により、図2、3に示されている差動伝送システムがバイアス電圧を利用する場合、フィルタ回路1は第三と第四との出力端子3a、3bを通した定電位端子への短絡を防止できる。
第一と第二との終端素子Z1、Z2がバリスタ又はダイオードである場合、コモンモードノイズが所定のレベルを超えるとき、各インピーダンスが急落する。そのインピーダンス特性により、コモンモードノイズのレベルが所定のレベル(例えばバイアス電圧より十分に高いレベル)を超えたときは、フィルタ回路1が第一と第二との入力端子1a、1bを定電位端子へ短絡させる。それにより、過大なコモンモードノイズによる回路素子の破壊、及び過大な不要電磁輻射の発生を防止できる。
《実施形態4》
本発明の実施形態4による差動伝送システムは好ましくは、実施形態1によるシステムと同様に、車載LANに搭載される。フィルタ回路1が第二のノーマルモードチョーク4を含む点で、本発明の実施形態4は実施形態1とは異なる。本発明の実施形態4による構成要素のうち、実施形態1による構成要素と同様な構成要素については、実施形態1による構成要素についての説明と図面とを援用する。
フィルタ回路1は、第五と第六との出力端子4a、4b、及び第二のノーマルモードチョーク4を更に有する(図32参照)。
第五と第六との出力端子4a、4bは定電位端子(好ましくは接地端子)に接続される。
第二のノーマルモードチョーク4は二つのインダクタL5、L6を含む。第五のインダクタL5は第一の出力端子2aと第五の出力端子4aとの間に接続される。第六のインダクタL6は第二の出力端子2bと第六の出力端子4bとの間に接続される。二つのインダクタL5、L6は互いに磁気的に結合し、特に入力端子と出力端子との間に逆の極性で接続される。すなわち、第一と第二との出力端子2a、2b、及び第五と第六との出力端子4a、43bの間に、ノーマルモード電流が流れるときは二つのインダクタL5、L6に生じる磁束が互いに強め合い、コモンモード電流が流れるときは二つのインダクタL5、L6に生じる磁束が相殺する。それにより、第二のノーマルモードチョーク4のインピーダンスは第一と第二との出力端子2a、2bを通して受信される信号のうち、ノーマルモード成分に対しては極めて高く、コモンモード成分に対しては極めて低い。
本発明の実施形態4では、第二のノーマルモードチョーク4が一つのコアとそれに巻き付けられた二本のコイルとを含む。好ましくは、二本のコイルがコアにバイファイラ巻き又はキャンセル巻きで巻かれている。すなわち、第二のノーマルモードチョーク4がコモンモードチョーク2と同じ構成を持つ。その場合、図32に示されている通り、第五と第六とのインダクタL5、L6間で入力端子/出力端子への接続の極性が逆である。更に好ましくは、三つのコモンモードチョークを含むコモンモードチョークアレイ2Cが、本発明の実施形態4によるコモンモードチョーク2、ノーマルモードチョーク3、及び第二のノーマルモードチョーク4の組み合わせとして利用される(図33参照)。それによりコモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4とが一つのパッケージに集約されるので、フィルタ回路1の小型化に有利である。
第二のノーマルモードチョーク4では上記の他に、ノーマルモードチョーク3と同様に、コモンモード電流により生じる磁束が互いに相殺するような向きで二本のコイルがコアに巻かれても良い(図9参照)。すなわち、二本のコイルのいずれかがバイファイラ巻き又はキャンセル巻きとは逆向きに巻かれている(図10、11、12参照)。図10、11、12のいずれでも、第二のノーマルモードチョーク4とフィルタ回路1の出力端子2a、2b、4a、4bとの間の配線は図32に示されている配線より短い(図9参照)。従って、フィルタ回路1の小型化には有利である。
本発明の実施形態4によるフィルタ回路1では、図32に示されている通り、第一と第二との入力端子1a、1b、及び第一と第二との出力端子2a、2bの間に、コモンモードチョーク2に対してノーマルモードチョーク3と第二のノーマルモードチョーク4とが対称的に配置される。更に、ノーマルモードチョーク3と第二のノーマルモードチョーク4とはインピーダンス特性も対称的である。すなわち、第二のノーマルモードチョーク4のインピーダンスはノーマルモードチョーク3のインピーダンスと同様に、コモンモード信号に対しては十分に低く、差動信号に対しては十分に高い。特に、それらのインピーダンスの差が十分に大きい。
第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信される差動信号については、コモンモードチョーク2を透過し得たわずかなコモンモード成分が第二のノーマルモードチョーク4を透過する。こうして、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信されるコモンモードノイズが更に確実に、第一と第二との出力端子2a、2bから遮断される。
逆に、第一と第二との出力端子2a、2bを通して受信される差動信号については、そのノーマルモード成分がコモンモードチョーク2を透過し、コモンモード成分が第二のノーマルモードチョーク4を透過する。更に、コモンモードチョーク2を透過し得たわずかなコモンモード成分がノーマルモードチョーク3を透過する。こうして、第一と第二との出力端子2a、2bを通して受信されるコモンモードノイズが確実に、第一と第二との入力端子1a、1bから遮断される。その上、コモンモードチョーク2から第一と第二との出力端子2a、2bへのコモンモードノイズの反射が実質上生じない。それに加え、コモンモードチョーク2にはコモンモード電流が実質上流れないので、コモンモードチョーク2のコアが磁気飽和を生じない。それ故、フィルタ回路1は双方向のコモンモードノイズフィルタとして、信頼性が高い。
図2、3に示されている差動受信装置10では、フィルタ回路1が、ケーブル40を通して受信される差動信号のノーマルモード成分を実質上、完全に透過させる。従って、差動信号のノーマルモード成分に対しては、差動レシーバ11、差動配線12、及びケーブル40間でのインピーダンス整合が差動信号の実質的な歪みや減衰を抑える(図4、5参照)。更に、そのインピーダンス整合は差動配線12のレイアウトに大きな制約を与えないので、差動受信装置10は回路設計の柔軟性が高い。フィルタ回路1では更に、二つのノーマルモードチョーク3、4が、コモンモードチョーク2の前後でコモンモードノイズを実質上、完全に吸収する。それ故、差動レシーバ11とその後段の回路とがコモンモードノイズから確実に保護される。その上、コモンモードチョーク2、差動配線12、及び差動レシーバ11によるコモンモードノイズの反射がいずれも実質上完全に抑制される。それにより、ケーブル40や差動配線12から周辺への不要電磁輻射が十分に低減する。
図2、3に示されている差動送信装置20では、フィルタ回路1が、差動ドライバ21から送出される差動信号のノーマルモード成分を実質上、完全に透過させる。従って、差動信号のノーマルモード成分に対しては、差動ドライバ21、差動配線22、及びケーブル40間でのインピーダンス整合が差動信号の実質的な歪みや減衰を抑える(図6参照)。更に、そのインピーダンス整合は差動配線22のレイアウトに大きな制約を与えないので、差動送信装置20は回路設計の柔軟性が高い。フィルタ回路1では更に、二つのノーマルモードチョーク3、4が、コモンモードチョーク2の前後でコモンモードノイズを実質上、完全に吸収する。それ故、差動配線22やケーブル40から周辺への不要電磁輻射が十分に低減する。その上、差動ドライバ21が、コモンモードチョーク2により反射されたコモンモードノイズとケーブル40を通して侵入するコモンモードノイズとの両方から確実に保護される。
図2、3に示されている差動送受信装置30では、フィルタ回路1が、差動配線33とケーブル40との間で双方向に、差動信号のノーマルモード成分を実質上、完全に透過させる。従って、差動信号のノーマルモード成分に対しては、差動レシーバ31、差動配線33、及びケーブル40間でのインピーダンス整合が差動信号の実質的な歪みや減衰を抑える(図4、5参照)。更に、そのインピーダンス整合は差動配線33のレイアウトに大きな制約を与えないので、差動送受信装置30は回路設計の柔軟性が高い。フィルタ回路1では更に、二つのノーマルモードチョーク3、4が、コモンモードチョーク2の前後でコモンモードノイズを実質上、完全に吸収する。それ故、差動レシーバ31とその後段の回路、及び差動ドライバ32がコモンモードノイズから確実に保護される。その上、差動配線33やケーブル40から周辺への不要電磁輻射が十分に低減する。
《実施形態5》
本発明の実施形態5による差動伝送システムは好ましくは、実施形態4によるシステムと同様に、車載LANに搭載される。フィルタ回路1が積層インダクタ又は薄膜インダクタを含む点で、本発明の実施形態5は実施形態4とは異なる。本発明の実施形態5による構成要素のうち、実施形態4による構成要素と同様な構成要素については、実施形態4による構成要素についての説明と図面とを援用する。
本発明の実施形態5によるフィルタ回路1は実施形態4によるフィルタ回路と同様な等価回路で表される(図34参照)。しかし、実施形態4によるフィルタ回路とは異なり、コモンモードチョーク2、ノーマルモードチョーク3、及び第二のノーマルモードチョーク4に含まれているインダクタL1、L2、L3、L4、L5、L6がいずれも積層インダクタ又は薄膜インダクタであり、同じチップ2D上に集積される(図35、36、37参照)。それにより、本発明の実施形態5によるフィルタ回路1は極めて小さい。
この場合、第一と第二との入力端子1a、1b、第一から第六までの出力端子2a、2b、3a、3b、4a、4bは好ましくは、チップ2Dと同一平面上に設置される。その他に、それらの端子のいずれか、又は全部が、チップ2Dと垂直に交わる平面上に設置されても良い。
フィルタ回路1は好ましくは、積層された18枚の磁性体シート(以下、層という)S1、S2、…、S12、S13、S14、…、S18を含む(図35参照)。ここで、磁性体シートは好ましくは、セラミック製のシートである。以下、各層を上から順に、第一層S1、第二層S2、…、と呼ぶ。
フィルタ回路1の第一層S1から第十二層S12までは、図15に示されている本発明の実施形態1によるフィルタ回路と全く同様な構造である。従って、その詳細は実施形態1についての説明を援用する。但し、第七層S7から第九層S9までのコイルC7、C8、C9はほぼ(2+1/4)回巻かれた矩形コイルを成し、第十層S10から第十二層S12までのコイルC10、C11、C12はほぼ(2+1/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図36参照)。
第十三層S13から第十八層S18上には、導線(好ましくは金属箔)C13、C14、…、C18が好ましくは、スクリーン印刷により形成されている。その他に、スパッタリングや蒸着で形成されていても良い。
第十三層S13から第十五層S15までの三つの層が第五のインダクタL5に相当する(図35参照)。第十三層S13上の導線C13と第十四層S14上の導線C14が第十二のビアホールV12で接続され、第十四層S14上の導線C14と第十五層S15上の導線C15とが第十三のビアホールV13で接続される。それにより、三つの導線C13、C14、C15は、第十五層S15から第十三層S13へ貫く法線Nの方向から見て反時計回りにほぼ(2+1/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図36参照)。第十三層S13上の導線C13の一端は第十一のビアホールV11を通して第三層S3上の導線C3の一端T2Aに接続されるので、第一の出力端子2aに接続される(図34参照)。第十五層S15上の導線C15の一端T4Aは第五の出力端子4aに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図34参照)。
第十六層S16から第十八層S18までの三つの層が、第六のインダクタL6に相当する(図35参照)。第十六層S16上の導線C16と第十七層S17上の導線C17とが第十五のビアホールV15で接続され、第十七層S17上の導線C17と第十八層S18上の導線C18とが第十六のビアホールV16で接続される。それにより、三つの導線C16、C17、C18は、第十八層S18から第十六層S16へ貫く法線Nの方向から見て時計回りにほぼ(2+1/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図36参照)。第十六層S16上の導線C16の一端は第十四のビアホールV14を通して第六層S6上の導線C6の一端T4Bに接続されるので、第二の出力端子2bに接続される(図34参照)。第十八層S18上の導線C18の一端T4Bは第六の出力端子4bに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図34参照)。
第一層S1の上には更に、別の磁性体シートS0が重ねられる(図37参照)。積層された磁性体シート全体を加熱することにより、全層の磁性体が一体化する。それにより、第一層S1から第十二層S12までと同様に、第十三層S13から第十五層S15までのコイルC13、C14、C15と、第十六層S16から第十八層S18までのコイルC16、C17、C18とが、一体化された磁性体をコアとして磁気的に結合する。特に、両方のコイルが法線Nを中心に逆方向に巻かれているので、第十三層S13から第十八層S18まで、すなわち第五と第六とのインダクタL5、L6が第二のノーマルモードチョーク4を構成する。
本発明の実施形態5によるフィルタ回路1では実施形態4によるフィルタ回路と同様、第一と第二との入力端子1a、1b、及び第一と第二との出力端子2a、2bの間に、コモンモードチョーク2に対してノーマルモードチョーク3と第二のノーマルモードチョーク4とが対称的に配置される。更に、ノーマルモードチョーク3と第二のノーマルモードチョーク4とのいずれのインピーダンスも、コモンモード信号に対しては十分に低く、差動信号に対しては十分に高い。従って、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信されるコモンモードノイズが確実に、第一と第二との出力端子2a、2bから遮断される。逆に、第一と第二との出力端子2a、2bを通して受信されるコモンモードノイズが確実に、第一と第二との入力端子1a、1bから遮断される。その上、コモンモードチョーク2から第一と第二との出力端子2a、2b、及び第一と第二との入力端子1a、1bへのコモンモードノイズの反射が実質上生じない。それに加え、コモンモードチョーク2にはコモンモード電流が実質上流れないので、コモンモードチョーク2のコアが磁気飽和を生じない。それ故、フィルタ回路1は双方向のコモンモードノイズフィルタとして、信頼性が高い。特に、コモンモードチョーク2のコアの体積が小さくても良いので、コモンモードチョーク2が上記のように積層インダクタ(又は薄膜インダクタ)として形成され得る。
尚、層数や導線の巻数が図35に示されているものとは異なっても良い。更に、コイルが図35、36に示されている矩形状とは異なり、円形状又は他の多角形状であっても良い。但し、第一のインダクタL1に含まれているコイルC1、C2、C3と、第二のインダクタL2に含まれているコイルC4、C5、C6との間では、巻数と形状との正確な一致が好ましい。同様に、第三のインダクタL3に含まれているコイルC7、C8、C9と、第四のインダクタL4に含まれているコイルC10、C11、C12との間、及び、第五のインダクタL5に含まれているコイルC13、C14、C15と、第六のインダクタL6に含まれているコイルC16、C17、C18との間のそれぞれで、巻数と形状との正確な一致が好ましい。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間、及び第一と第二との出力端子2a、2b間ではいずれも平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
その他に、第九層S9上の導線C9の一端T3Aと第十二層S12上の導線C12の一端T3Bとが、図35、36に示されているものとは異なり、第一層S1上の導線C1の一端T1Aと第四層S4上の導線C4の一端T1Bとから等距離の位置に設けられても良い(例えば、図36に一点鎖線で示されている部分T3D、T3E参照)。同様に、第十五層S15上の導線C15の一端T4Aと第十八層S18上の導線C18の一端T4Bとが、第三層S3上の導線C3の一端T2Aと第六層S6上の導線C6の一端T2Bとから等距離の位置に設けられても良い(例えば、図36に一点鎖線で示されている部分T3D、T3E参照)。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間、及び第一と第二との出力端子2a、2b間ではいずれも、平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
コモンモードチョーク2では、図35、37に示されているものとは異なり、第一のインダクタL1を構成する三つの層S1、S2、S3と第二のインダクタL2を構成する三つの層S4、S5、S6とが交互に重ねられても良い(図18、19参照)。それにより、第一のインダクタL1に含まれている導線C1、C2、C3と第二のインダクタに含まれている導線C4、C5、C6との間で、例えば線間距離、及びそれに依存する寄生容量が均一化される(図19参照)。その結果、フィルタ回路1に含まれる差動信号の経路では平衡度が更に向上する。従って、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
コモンモードチョーク2と同様に、ノーマルモードチョーク3では、第三のインダクタL3を構成する三つの層S7、S8、S9と第四のインダクタL4を構成する三つの層S10、S11、S12とが交互に重ねられても良い(図示せず)。更に、第二のノーマルモードチョーク4では、第五のインダクタL5を構成する三つの層S13、S14、S15と第六のインダクタL6を構成する三つの層S16、S17、S18とが交互に重ねられても良い(図示せず)。
コモンモードチョーク2を構成する六つの層S1〜S6、ノーマルモードチョーク3を構成する六つの層S7〜S12、及び、第二のノーマルモードチョーク4を構成する六つの層S13〜S18の間では、積層の順序が自由に設定されても良い。
コモンモードチョーク2、ノーマルモードチョーク3、及び第二のノーマルモードチョーク4のいずれか二つの間、例えば、第六層S6と第七層S7との間、又は、第十二層S12と第十三層S13との間には磁気分離層Ssが挿入されても良い(図20参照)。磁気分離層Ssは実施形態1によるものと同様であり、特に磁界を遮断する。それにより、コモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4とが互いに磁気的に分離される。その結果、コモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4とが互いに干渉しないので、それぞれの信頼性が更に向上する。コモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4との間の磁気的干渉を抑える目的では、上記の他に、三つのチョーク2、3、4が磁性体シート上の異なる領域に形成されても良い(図21、22、23参照)。
図34に示されているフィルタ回路1の等価回路では、第三と第四との出力端子3a、3b、及び第五と第六との出力端子4a、4bがそれぞれ、別々の端子に分かれている。その他に、第一の共通出力端子3cが第三と第四との出力端子3a、3bとして兼用され、第二の共通出力端子4cが第五と第六との出力端子4a、4bとして兼用されても良い(図38参照)。それによりフィルタ回路1の端子数が削減されるので、周辺の回路設計の柔軟性が更に向上する。
例えば、図35、36、37に示されているフィルタ回路1とは異なり、第九層S9上の導線C9Aが第十七のビアホールV17で第十二層S12上の導線C12Aと接続される(図39参照)。第十二層S12上の導線C12Aの一端T3Cが第一の共通出力端子3cに接続され、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される。ここで、第十二層S12上の導線C12Aの一端T3Cは第一層S1上の導線C1の一端T1Aと第四層S4上の導線C4の一端T1Bとから等距離の位置に設けられる(図40参照)。同様に、第十五層S15上の導線C15Aが第十八のビアホールV18で第十八層S18上の導線C18Aと接続される(図39参照)。第十八層S18上の導線C18Aの一端T4Cが第二の共通出力端子4cに接続され、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される。ここで、第十八層S18上の導線C18Aの一端T4Cは第三層S3上の導線C3の一端T2Aと第六層S6上の導線C6の一端T2Bとから等距離の位置に設けられる(図40参照)。第一と第二との入力端子1a、1b間、及び第一と第二との出力端子2a、2b間ではいずれも平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
《実施形態6》
本発明の実施形態6による差動伝送システムは好ましくは、実施形態4によるシステムと同様に、車載LANに搭載される。フィルタ回路1が終端素子を含む点で、本発明の実施形態6は実施形態4、5とは異なる。本発明の実施形態6による構成要素のうち、実施形態4、5による構成要素と同様な構成要素については、実施形態4、5による構成要素についての説明と図面とを援用する。
本発明の実施形態6によるフィルタ回路1は実施形態3によるフィルタ回路と同様に、二つのノーマルモードチョーク3、4のいずれか一方、又は両方に終端素子Z1、Z2、Z3、Z4が接続される(図41、42、43、44参照)。終端素子Z1、Z2、Z3、Z4はいずれも、実施形態3による終端素子Z1、Z2と同様なインピーダンス素子である。従って、その詳細は実施形態3での説明を援用する。
二つのノーマルモードチョーク3、4がコモンモードチョーク2から独立した素子である場合、好ましくは、第一の終端素子Z1が第三のインダクタL3と第三の出力端子3aとの間に接続され、第二の終端素子Z2が第四のインダクタL4と第四の出力端子3bとの間に接続され、第三の終端素子Z3が第五のインダクタL5と第五の出力端子4aとの間に接続され、第四の終端素子Z4が第六のインダクタL6と第六の出力端子4bとの間に接続される(図41参照)。その他に、第一の終端素子Z1が第一の入力端子1aと第三のインダクタL3との間に接続され、第二の終端素子Z2が第二の入力端子1bと第四のインダクタL4との間に接続され、第三の終端素子Z3が第五のインダクタL5と第五の出力端子4aとの間に接続され、第四の終端素子Z4が第六のインダクタL6と第六の出力端子4bとの間に接続されても良い(図41に示されている破線部参照)。但し、第一と第二との終端素子Z1、Z2の組、又は第三と第四との終端素子Z3、Z4の組のいずれか一方が省略されても良い。三つのコモンモードチョークを含むコモンモードチョークアレイ2Cがコモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4との組み合わせとして利用される場合も同様である(図42参照)。
本発明の実施形態5のように、コモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4とが積層インダクタ(又は薄膜インダクタ)である場合、第一の終端素子Z1が第三のインダクタL3の一端T3Aと第三の出力端子3aとの間に接続され、第二の終端素子Z2が第四のインダクタL4の一端T3Bと第四の出力端子3bとの間に接続され、第三の終端素子Z3が第五のインダクタL5の一端T4Aと第五の出力端子4aとの間に接続され、第四の終端素子Z4が第六のインダクタL6の一端T4Bと第六の出力端子4bとの間に接続される(図35、43参照)。更に、第一の共通出力端子3cが第三と第四との出力端子3a、3bとして兼用され、第二の共通出力端子4cが第五と第六との出力端子4a、4bとして兼用される場合、第一と第二との終端素子Z1、Z2が第一の共通終端素子Zに統合され、第三と第四とのインダクタL3、L4の共通端T3Cと第一の共通出力端子3cとの間に接続される。更に、第三と第四との終端素子Z3、Z4が第二の共通終端素子Zaに統合され、第五と第六とのインダクタL5、L6の共通端T4Cと第二の共通出力端子4cとの間に接続される(図39、44参照)。
第一と第二との入力端子1a、1b、又は第一と第二との出力端子2a、2bを通して受信されるコモンモード信号に対し、コモンモードチョーク2のインピーダンスは極めて高く、二つのノーマルモードチョーク3、4のインピーダンスはいずれも極めて低い。従って、図2、3に示されている差動受信装置10(及び、差動送受信装置30)では、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンス(図44では、第一の共通終端素子Zのインピーダンス)が、ケーブル40のコモンモードインピーダンスと整合するように調整される。更に、第三と第四との終端素子Z3、Z4の各インピーダンス(図44では、第二の共通終端素子Zaのインピーダンス)が、差動レシーバ11(31)の入力インピーダンスと差動配線12(33)のコモンモードインピーダンスとそれぞれ、整合するように調整される。こうして、コモンモード信号に対し、ケーブル40とフィルタ回路1との間、及びフィルタ回路1と差動配線12(33)との間でそれぞれ、インピーダンス整合が高精度に実現する。それ故、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が更に低減する。その結果、ケーブル40と差動配線12(33)とから周辺への不要電磁輻射が更に低減し、かつ差動レシーバ11(31)が、反射されたコモンモードノイズから更に確実に保護される。
図2、3に示されている差動送信装置20でも同様に、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンス(図44では、第一の共通終端素子Zのインピーダンス)が、差動ドライバ21の出力インピーダンスと差動配線22のコモンモードインピーダンスとそれぞれ、整合するように調整される。更に、第三と第四との終端素子Z3、Z4の各インピーダンス(図44では、第二の共通終端素子Zaのインピーダンス)が、ケーブル40のコモンモードインピーダンスと整合するように調整される。こうして、コモンモード信号に対し、差動配線22とフィルタ回路1との間、及びフィルタ回路1とケーブル40との間でそれぞれ、インピーダンス整合が高精度に実現する。それ故、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が更に低減する。その結果、ケーブル40と差動配線22とから周辺への不要電磁輻射が更に低減する。更に、差動ドライバ32を含むLSIやその前段の回路へのコモンモードノイズの侵入が防止されるので、反射されたコモンモードノイズによる電源電位や接地電位の変動が確実に抑制される。
《実施形態7》
本発明の実施形態7による差動伝送システムは好ましくは、携帯電話等の携帯情報機器に搭載される(図45参照)。携帯情報機器には、例えば画像処理用LSIM1やRF回路M2等、様々なモジュールが搭載される。それらのモジュールがケーブル41を通してCPUM3に接続され、統合的に制御される。
携帯情報機器、特に携帯電話はRF回路M2を利用して外部と通信を行う。その際、RF回路M2やアンテナATから電磁波が放射される。それらの電磁波がケーブル41にノイズを発生させる。そのノイズに加え、画像処理用LSIM1やCPUM3からケーブル41に直接送出されたノイズがケーブル41の周囲に電磁波として放射され、他のケーブル41やアンテナATにノイズを与える。画像処理用LSIM1やCPUM3が、特にカメラモジュールCAにより生成される画像データ等、大量のデータを処理する場合、その処理速度が通信の周波数と近いので、RF回路M2やアンテナATに対してノイズを与えやすい。このように、携帯情報機器内では不要電磁輻射とそれに起因するノイズとが共に高い。それらのノイズによる各回路M1、M2、M3等に対する悪影響、すなわちEMIを抑える目的で、携帯情報機器内でのケーブル41を用いた通信は一般に、差動伝送方式で行われる。
図2、3に示されているECU等と同様に、画像処理用LSIM1は差動送信装置20を通信ポートとして含み、CPUM3は差動受信装置10を通信ポートとして含む(図46参照)。その他に、図2、3に示されているような差動送受信装置30が、各通信ポートとして含まれても良い。これらの通信ポートはケーブル41で互いに接続され、差動伝送システムを構成する。ケーブル41は二本の差動伝送路を含む。各差動伝送路を伝搬する信号(差動信号)間では位相が互いに逆である。ケーブル41には好ましくは、シールド付ツイストペアケーブルが使用される。その他に、シールドなしのツイストペアケーブル、フラットケーブル、又はフレキケーブルが使用されても良い。特に折り畳み可能な携帯電話では、ケーブル41が蝶番部Hを超えて回路間を接続しても良い(図45参照)。
差動受信装置10と差動送信装置20とはいずれも、実施形態1によるものと同様な構成要素を有する(図2、3、46参照)。特に、本発明によるフィルタ回路1を含む。ここで、フィルタ回路1は上記の実施形態1〜6のいずれによるものと同様であっても良い。いずれのフィルタ回路1も、ケーブル41を伝搬する差動信号からコモンモードノイズを実質上完全に除去すると共に、差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。その一方で、コモンモードノイズを反射することなく、実質上完全に吸収する。その結果、ケーブル41や差動配線12、22から周辺への不要電磁輻射が低減し、差動レシーバ11や差動ドライバ21が、反射されたコモンモードノイズから確実に保護される。フィルタ回路1では更に、コモンモード電流がコモンモードチョークのコアには流れないので、コモンモードチョークのコアが磁気飽和を生じない。従って、フィルタ回路1は信頼性が高い。その上、コモンモードチョークのコアの体積が小さくても良い。それ故、フィルタ回路1は小型化が容易であるので、携帯情報機器での利用に有利である。
差動受信装置10と差動送信装置20とでは更に好ましくは、実施形態1によるものと同様に、差動配線12、22に終端素子が接続される(図4、5参照)。差動信号に対してはフィルタ回路1のインピーダンスが十分に低いので、差動配線12、22の差動インピーダンスと終端素子のインピーダンスとがそれぞれ、ケーブル41の差動インピーダンスと整合するように調整される。その結果、差動信号には実質的な歪みや減衰が生じない。その上、差動配線12、22のレイアウトがインピーダンス整合からは大きな制約を受けないので、差動受信装置10と差動送信装置20とはいずれも、回路設計の柔軟性が高い。
本発明による差動伝送システムを搭載可能なシステムは、実施形態1〜6のような車載LANや、実施形態7のような携帯情報機器には限られない。例えば、USB、IEEE1394、LVDS、DVI、HDMI、シリアルATA、PCIエクスプレス等のシリアルインタフェースを利用する電子機器全般で、本発明による差動伝送システムは利用可能である。そのことは、上記の実施形態から当業者には自明であろう。
《実施形態8》
本発明の実施形態8による電源装置は、好ましくは、電子機器に搭載される(図47参照)。ここで、電子機器DVは、好ましくは、パソコン、携帯電話、FAX等の情報処理機器である。その他に、その電源装置が、差動伝送方式で他の回路に電力を供給する給電装置であっても良い。
電源装置50はプラグPLと電源線42とを通し、商用交流電源等、外部の交流電源ACに接続される。電源線42は二本の差動伝送路を含む。それらの差動伝送路間では電圧/電流の位相が互いに逆である。尚、電源装置がプラグPL自体に内蔵されても良い。
電源装置50は本発明によるフィルタ回路1とスイッチング電源51とを有する。フィルタ回路1は電源線42に接続され、電源線42上からコモンモードノイズを実質上完全に除去する。それと共に、外部の交流電源ACから供給される電力(差動信号)を実質上完全に透過させる。スイッチング電源51は電力変換部であり、好ましくは、フィルタ回路1を通して外部の交流電源ACから交流電圧を受け、その交流電圧を所定の直流電圧Vdd、Vssに変換する。その他に、交流電源ACから供給される電力の力率を改善しても良い。更に、差動伝送方式で他の回路に電力を供給しても良い。電源装置50を電力線通信(PLC)に利用する場合、スイッチング電源51に代え、PLCモデムがフィルタ回路1に接続されても良い。
フィルタ回路1は上記の実施形態1〜6のいずれによるものであっても良い。それにより、コモンモードノイズがフィルタ回路1により反射されることなく、実質上完全に吸収される。その結果、電源線42や内部の配線から周辺への不要電磁輻射が低減し、スイッチング電源51や電子機器DV内部の回路が、反射されたコモンモードノイズから確実に保護される。PLCを行う場合は、その通信品質が向上する。フィルタ回路1では更に、コモンモード電流がコモンモードチョークのコアには流れないので、コモンモードチョークのコアが磁気飽和を生じない。従って、フィルタ回路1は信頼性が高い。その上、コモンモードチョークのコアの体積が小さくても良い。それ故、フィルタ回路1は小型化が容易であるので、電源装置DVの小型化に有利である。
本発明は差動伝送システムや電源装置に搭載されるフィルタ回路に関し、上記の通り、コモンモードチョークとノーマルモードチョークとの組み合わせを利用してコモンモードノイズを差動信号から除去する。このように、本発明は明らかに産業上利用可能である。
本発明は、差動伝送方式で電子機器間の通信を行う差動伝送システム、及び、例えば商用交流電源等の外部電源から供給される電力を変換する電源装置に関し、特にそれらに搭載されるフィルタ回路に関する。
電子機器全般にわたり、多機能化や高機能化への要求に応えるべく、処理速度が更なる上昇を続けている。それに伴い、電子機器間の通信に対し、更なる高速化が求められている。通信の更なる高速化にはパラレル伝送よりシリアル伝送が有利である。従って、近年では例えば、USB、IEEE1394、LVDS、DVI、HDMI、シリアルATA、PCIエクスプレス等、様々な規格で広範に、シリアル伝送方式が採用されている。
特に、カーナビや運転支援システム等の車載電子機器(電子制御ユニット(ECU))では動作周波数の上昇が著しい。従って、車載LANでは、シリアル通信プロトコルであるコントローラエリアネットワーク(CAN)が実質上、標準化されつつある。
高速のシリアル伝送では一般に、差動伝送方式が採用されている。差動伝送方式とは、一連のシリアルデータを互いに逆位相の二つの信号(差動信号又はノーマルモード信号)で伝送する方式をいう。特に、各差動信号の伝送路が並走する。受信装置(差動レシーバ)は二つの差動信号間の差分からシリアルデータを読み取る。それにより、差動伝送方式では、シリアルデータを単独の信号で伝送する方式(シングルエンド伝送方式)と比べ、信号の振幅が半分で良い。従って、信号の立ち上がり/立ち下がりが一般に速い。すなわち、スルーレートが低い。こうして、差動伝送方式は信号伝送の更なる高速化に有利である。
差動伝送方式は更に、電磁障害(EMI)の低減に有利である。例えば、二つの差動信号の伝送路(差動伝送路)が並走するので、各差動伝送路から周辺に輻射される電磁波が相殺する。従って、差動伝送方式では不要電磁輻射が極めて弱い。逆に、周辺の電子機器等から差動伝送路に電磁波が輻射された場合、二つの差動伝送路には同相のノイズ(コモンモードノイズ)が生じる。しかし、各差動伝送路上のコモンモードノイズは、二つの差動信号間の差分では互いに相殺する。こうして、差動伝送方式は外部からの不要電磁輻射に起因するコモンモードノイズに強い。
差動伝送方式は特に、CANを初め、様々な車載LANに共通して採用されている。自動車内ではエンジン等の基幹部品や様々な電子制御ユニット(ECU)(例えば、ドアミラーを回転させるモータ)が車載LANにノイズを与える。更に、自動車は様々な環境を走行するので、車載LANは自動車の外部からも様々な電磁輻射を受ける。従って、ノイズを出しにくく、かつノイズに強いという差動伝送方式の利点が車載LANには不可欠である。
差動伝送方式を利用する送受信装置(差動送受信装置)には一般に、コモンモードノイズによる悪影響を更に確実に抑えるべく、フィルタ回路が搭載される。フィルタ回路はコモンモードチョークを含み、コモンモードノイズのレベルを差動レシーバの入力レンジの上限以下に抑える。それにより、差動レシーバの誤動作と破壊とを防止する。
従来のフィルタ回路には、例えば図48に示されているように、コモンモードチョークとその後段に接続されたノーマルモードチョークとを含むものが知られている(例えば特許文献1参照)。このフィルタ回路は、高周波で生体内の細胞Bを加熱する装置に搭載される。生体内の細胞Bは二つの電極T1、T2の間に置かれている。高周波発生器Aは電極T1、T2の各電圧を高い周波数で変化させる。そのとき、各電極T1、T2の電圧変動の同相成分(すなわちコモンモードノイズ)に対し、コモンモードチョーク110は高いインピーダンスを示し、ノーマルモードチョーク120は低いインピーダンスを示す。従って、前段のコモンモードチョーク110では、インダクタL1、L2を同相で流れる電流(コモンモード電流)が抑えられる。更に、その抑えられたコモンモード電流の大部分が後段のノーマルモードチョーク120を通る。こうして、二つの電極T1、T2と生体内の細胞Bとの間にはコモンモード電流が流れない。すなわち、細胞Bから電極T1、T2以外への電流の漏れが防止される。
従来のフィルタ回路には上記の他に、例えば図49に示されているように、終端素子、コモンモードチョーク、及び、抵抗素子を含むものが知られている(例えば特許文献2参照)。終端素子210は二つの差動伝送路200の終端間に直列に接続された二つの等価な抵抗素子であり、それらの間の接続点が接地されている。抵抗素子230はコモンモードチョーク220の出力端子間に接続される。
差動伝送路200を伝搬するコモンモード信号に対し、コモンモードチョーク220のインピーダンスは極めて高いので、終端素子210のコモンモードインピーダンスが差動伝送路200のコモンモードインピーダンスと整合するように設定される。一方、差動伝送路200を伝搬する差動信号に対し、コモンモードチョーク220のインピーダンスは極めて低いので、終端素子210の差動インピーダンスと抵抗素子230のインピーダンスとの合成が差動伝送路200の差動インピーダンスと整合するように調整される。こうして、コモンモードチョーク220によるコモンモードノイズの反射が抑えられ、かつ、終端素子210とコモンモードチョーク220とによる差動信号の歪みや減衰が抑えられる。更に、差動伝送路200を伝わるコモンモード電流は終端素子210とコモンモードチョーク220とに分かれて流れる。従って、コモンモードチョーク220を流れるコモンモード電流が低減するので、コモンモードチョーク220のコアが磁気飽和を生じにくく、かつ後段の回路には過電流が流れない。こうして、このフィルタ回路は高い信頼性を維持する。
EMI対策は、差動伝送方式による通信システム(差動伝送システム)だけでなく、外部から供給される交流電力を適切な電力に変換する電源装置についても重要である。その電源装置は例えば商用交流電源等、外部の交流電源に接続され、好ましくはスイッチング電源を利用して交流電圧を直流電圧に変換する。その他に、外部の交流電源から供給される電力の力率を改善する。更に、電源装置を電力線通信(PLC)に利用する場合、EMI対策は不可欠である。
そのような電源装置では差動伝送システムと同様に、上記のフィルタ回路がEMIの低減に有効である。フィルタ回路は外部の電源線に生じるコモンモードノイズを電源装置から遮断することで、後段に送出される電力を安定化させる。フィルタ回路は更に、例えば電源装置内のスイッチングに伴うコモンモードノイズ、又は後段の回路から伝わるコモンモードノイズを外部の電源線から遮断する。それにより、電源装置に起因する不要電磁輻射が抑えられる。
特開昭59−207148号公報 特開2002−261842号公報
シリアル伝送を更に高速化するには、差動伝送路でのコモンモードノイズの発生を更に効果的に抑制することで、シリアル信号の品質を更に向上させ、かつ周辺に対する不要電磁輻射を更に抑制しなければならない。一方、電源装置の信頼性を更に向上させるには、電源線でのコモンモードノイズの発生を更に効果的に抑制することで、変換された電力の品質を更に向上させ、かつ周辺に対する不要電磁輻射を更に抑制しなければならない。このように、差動伝送システムと電源装置とのいずれでも、コモンモードノイズに対するフィルタ回路の抑制効果を更に向上させることが望まれる。
しかし、図48に示されているような従来のフィルタ回路では、高周波発生器Aから送出されたコモンモードノイズの大半はコモンモードチョーク110で反射され、その電力は高周波発生器Aとコモンモードチョーク110との間のケーブルから周辺に電磁輻射として放散される。すなわち、このフィルタ回路では、不要電磁輻射に対する抑制効果を更に向上させることは困難である。更に、コモンモード電流が過大な場合、コモンモードチョーク110ではコアが磁気飽和を生じ、コモンモードノイズに対する抑制効果を損なうおそれがある。すなわち、このフィルタ回路では、コモンモードチョーク110のコアを小型に維持したまま、コモンモードノイズに対する抑制効果を更に向上させることが困難である。
図49に示されているような従来のフィルタ回路では、コモンモードノイズに対しては終端素子210がコモンモードチョーク220での反射を抑えるので、フィルタ回路からの不要電磁輻射が弱い。更に、コモンモード電流が終端素子210とコモンモードチョーク220とに分かれて流れるので、コモンモードチョーク220のコアが磁気飽和を生じにくい。一方、差動信号に対しては終端素子210と抵抗素子230との合成インピーダンスが差動伝送路200の差動インピーダンスと整合する。従って、フィルタ回路から出力される差動信号は歪みや減衰が小さい。
しかし、終端素子210の差動インピーダンスはそのコモンモードインピーダンス(すなわち、各抵抗素子の抵抗値)で決まり、しかも両者間の差が小さい(差動インピーダンスはコモンモードインピーダンスの四倍程度である)。従って、「終端素子210と差動伝送路との間でコモンモードインピーダンスを整合させる」という条件下では、終端素子210の差動インピーダンスを更に上昇させることが困難である。それ故、コモンモードチョーク220によるコモンモードノイズの反射を十分に抑えたままでは、終端素子210や抵抗素子230による差動信号の歪みや減衰を更に抑制することが困難である。
その他に、コモンモードチョーク220に起因する差動信号の歪みや減衰を抑えるには、抵抗素子230がコモンモードチョーク220の後段に設置されねばならない。その場合、終端素子210と抵抗素子230との間の経路長がある程度、大きくならざるを得ない。従って、差動信号の周波数が更に上昇し、その波長が終端素子210と抵抗素子230との間の経路長に対して無視できない程度まで短縮するとき、終端素子210と抵抗素子230との合成インピーダンスを差動伝送路の差動インピーダンスに高精度で整合させることが困難である。こうして、更に高い周波数帯域では、差動信号の歪みや減衰を更に抑制することが困難である。
本発明は、十分に広い周波数帯域で、差動信号に過大な歪みや減衰を生じさせることなく、かつコモンモード信号を反射することなく、差動信号とコモンモード信号とを分離し、その上、コモンモード電流によるコモンモードチョークのコアの磁気飽和を確実に回避するフィルタ回路、の提供を目的とする。
本発明によるフィルタ回路は、
第一と第二との入力端子;
第一、第二、第三、及び第四の出力端子;
第一の入力端子と第一の出力端子との間に接続された、第一のインダクタ、及び、
第一のインダクタと磁気的に結合し、第二の入力端子と第二の出力端子との間に第一のインダクタと同じ極性で接続された、第二のインダクタ、
を含む、コモンモードチョーク;
並びに、
第一の入力端子と第三の出力端子との間に接続された、第三のインダクタ、及び、
第三のインダクタと磁気的に結合し、第二の入力端子と第四の出力端子との間に第三のインダクタとは逆の極性で接続された、第四のインダクタ、
を含む、ノーマルモードチョーク;
を有する。
ここで、第一から第四までのインダクタは好ましくは、積層インダクタ又は薄膜インダクタである。その場合、コモンモードチョークとノーマルモードチョークとが同じチップ上に集積されるので、このフィルタ回路は極めて小さい。
その他に、コモンモードチョークとノーマルモードチョークとがそれぞれ、一つのコアとそれに巻き付けられた二本のコイルとを含んでも良い。特にノーマルモードチョークでは好ましくは、コモンモード電流により生じる磁束が互いに相殺するような向きで、二本のコイルがコアに巻かれている。すなわち、二本のコイルのいずれかが、バイファイラ巻き又はキャンセル巻きとは逆向きに巻かれている。それにより、ノーマルモードチョークとフィルタ回路の入力端子又は出力端子との間の配線が短いので、フィルタ回路の小型化が容易である。
更に、ノーマルモードチョークでは一般的なコモンモードチョークと同様に、二本のコイルがバイファイラ巻き又はキャンセル巻きで巻かれていても良い。その場合、第三と第四とのインダクタ間で、フィルタ回路の入力端子/出力端子への接続の極性が逆であれば良い。
本発明によるこのフィルタ回路では、コモンモードチョークのインピーダンスがコモンモード信号に対しては十分に高く、差動信号に対しては十分に低い。ノーマルモードチョークのインピーダンスは逆に、コモンモード信号に対しては十分に低く、差動信号に対しては十分に高い。特に、それらのインピーダンスの差が十分に大きい。更に、ノーマルモードチョークがコモンモードチョークの前段に設置され、すなわちコモンモードチョークより第一と第二との入力端子に近い所に接続される。従って、第一と第二との入力端子を通して受信される信号のうち、実質上、ノーマルモード成分のみがコモンモードチョークを透過し、コモンモード成分のみがノーマルモードチョークを透過する。こうして、第一と第二との入力端子を通して受信されるコモンモードノイズが第一と第二との出力端子から遮断される。その上、コモンモードチョークによるコモンモードノイズの反射が実質上生じないので、周辺への不要電磁輻射が抑制される。それに加え、コモンモードチョークにはコモンモード電流が実質上流れないので、コモンモードチョークのコアが磁気飽和を生じない。従って、コモンモードチョークは信頼性が高い。
好ましくは、本発明による上記のフィルタ回路が更に、第一と第二とのインピーダンス素子を含む。第一のインピーダンス素子は、第三のインダクタと第三の出力端子との間、若しくは第一の入力端子と第三のインダクタとの間のいずれか、又はその両方に接続される。第二のインピーダンス素子は、第四のインダクタと第四の出力端子との間、若しくは第二の入力端子と第四のインダクタとの間のいずれか、又はその両方に接続される。第一と第二のインピーダンス素子により、差動伝送路とフィルタ回路との間では、差動信号に対するインピーダンス整合が高精度に維持されたまま、コモンモード信号に対するインピーダンス整合の精度が更に向上する。それにより、コモンモードチョークによるコモンモードノイズの反射が更に抑えられるので、周辺への不要電磁輻射が更に効果的に抑制される。
本発明による上記のフィルタ回路は、好ましくは、
第五と第六との出力端子;並びに、
第一の出力端子と第五の出力端子との間に接続された、第五のインダクタ、及び、
第五のインダクタと磁気的に結合し、第二の出力端子と第六の出力端子との間に第五のインダクタとは逆の極性で接続された、第六のインダクタ、
を含む、第二のノーマルモードチョーク;
を更に有する。ここで、第五と第六のインダクタは好ましくは、積層インダクタ又は薄膜インダクタである。その他に、第二のノーマルモードチョークが一つのコアとそれに巻き付けられた二本のコイルとを含んでも良い。その場合、好ましくは、二本のコイルのいずれかがバイファイラ巻き又はキャンセル巻きとは逆に巻かれている。それとは別に、上記のノーマルモードチョークと同様に、二本のコイルがバイファイラ巻き又はキャンセル巻きで巻かれていても良い。その場合、第五と第六とのインダクタ間でフィルタ回路の出力端子への接続の極性が逆であれば良い。
第二のノーマルモードチョークのインピーダンスはコモンモード信号に対しては十分に低い。従って、第一と第二との出力端子を通して受信されるコモンモードノイズは第二のノーマルモードチョークを通して第五と第六との出力端子に送出され、コモンモードチョークには伝達されない。すなわち、第一と第二との出力端子を通して受信されるコモンモードノイズが第一と第二との入力端子から遮断される。更に、コモンモードチョークによるコモンモードノイズの反射が弱い。その結果、周辺への不要電磁輻射が抑制される。
その上、二つのノーマルモードチョークがコモンモードチョークに対し、対称的に配置される。従って、本発明による上記のフィルタ回路は入力と出力とを逆にしても、すなわち双方向で、コモンモードノイズの抑制効果が高い。
好ましくは、本発明による上記のフィルタ回路が更に、第三と第四とのインピーダンス素子を含む。第三のインピーダンス素子は、第五のインダクタと第五の出力端子との間、若しくは第一の出力端子と第五のインダクタとの間のいずれか、又はその両方に接続される。第四のインピーダンス素子は、第六のインダクタと第六の出力端子との間、若しくは第二の出力端子と第六のインダクタとの間のいずれか、又はその両方に接続される。第三と第四とのインピーダンス素子により、フィルタ回路と外部との間で、差動信号に対するインピーダンス整合が高精度に維持されたまま、コモンモード信号に対するインピーダンス整合の精度が更に向上する。それにより、周辺への不要電磁輻射が更に効果的に抑制される。
本発明による差動受信装置は、好ましくは、本発明による上記のフィルタ回路、及び、そのフィルタ回路の第一と第二との出力端子に接続された入力端子対を有する差動レシーバ、を具備する。この差動受信装置では特に、第一と第二との入力端子が外部の差動伝送路に接続され、第三と第四との出力端子が一定の電位(好ましくは接地電位)に維持される。従って、差動伝送路から伝わるコモンモードノイズは第三と第四との出力端子に伝達され、差動レシーバには伝達されない。更に、コモンモードノイズは差動伝送路には反射されない。こうして、本発明による差動受信装置はコモンモードノイズに強く、かつ不要電磁輻射を十分に低減させる。
本発明による差動送信装置は、好ましくは、本発明による上記のフィルタ回路、及び、そのフィルタ回路の第一と第二との入力端子に接続された出力端子対を有する差動ドライバ、を具備する。この差動送信装置では特に、第一と第二との出力端子が外部の差動伝送路に接続され、第三と第四との出力端子が一定の電位(好ましくは接地電位)に維持される。従って、差動ドライバから送出されるコモンモードノイズは第三と第四との出力端子に伝達され、差動伝送路には伝達されない。更に、コモンモードノイズは差動ドライバには反射されない。こうして、本発明による差動送信装置はコモンモードノイズに強く、かつ不要電磁輻射を十分に低減させる。
第二のノーマルモードチョークを有する本発明による上記のフィルタ回路は、好ましくは、差動送受信装置に搭載される。その差動送受信装置では、フィルタ回路の第一と第二との入力端子が第一と第二との入出力端子として利用され、第一と第二との出力端子が第三と第四との入出力端子として利用される。第一と第二との入出力端子は差動レシーバの入力端子対と差動ドライバの出力端子対とに接続され、第三と第四との入出力端子は外部の差動伝送路に接続される。更に、フィルタ回路の第三から第六までの出力端子(以下、第一から第四までの出力端子という)はいずれも、一定の電位(好ましくは接地電位)に維持される。従って、差動ドライバから送出されるコモンモードノイズはノーマルモードチョークを通して第一と第二との出力端子に伝達され、差動伝送路には伝達されない。更に、コモンモードノイズは差動レシーバと差動ドライバとには反射されない。逆に、差動伝送路から伝わるコモンモードノイズは第二のノーマルモードチョークを通して第三と第四との出力端子に伝達され、差動レシーバと差動ドライバとには伝達されない。更に、コモンモードノイズは差動伝送路には反射されない。こうして、本発明による差動送受信装置はコモンモードノイズに強く、かつ不要電磁輻射を十分に低減させる。
本発明による電源装置は、好ましくは、本発明による上記のフィルタ回路、及び、そのフィルタ回路の第一と第二との出力端子に接続された入力端子対を有する電力変換部、を具備する。この電源装置では特に、第一と第二との入力端子が外部の電源線に接続され、第三と第四との出力端子が一定の電位(好ましくは接地電位)に維持される。従って、電源線から受信されるコモンモードノイズは第三と第四との出力端子に伝達され、電力変換部には伝達されない。更に、コモンモードノイズは電源線には反射されない。本発明による電源装置は更に、第二のノーマルモードチョークを搭載しても良い。それにより、電力変換部、又は後段の回路から送出されるコモンモードノイズが、外部の電源線から遮断される。こうして、本発明による電源装置はコモンモードノイズに強く、かつ不要電磁輻射を十分に低減させる。
本発明によるフィルタ回路では上記の通り、第一と第二との入力端子を通して受信される信号のうち、ノーマルモード成分はコモンモードチョークを透過し、コモンモード成分はノーマルモードチョークを透過する。特に、コモンモードノイズは第一と第二との出力端子には伝達されず、第一と第二との入力端子には反射されない。こうして、本発明によるフィルタ回路は、差動信号に過大な歪みや減衰を生じさせることなく、かつコモンモード信号を反射することなく、差動信号とコモンモード信号とを分離する。特に、差動信号からコモンモードノイズが反射されることなく除去される。従って、コモンモードノイズに起因する不要電磁輻射が十分に低減すると共に、過大なコモンモードノイズによる回路素子の誤動作や破壊が確実に阻止される。更に、コモンモード電流がノーマルモードチョークを通り、コモンモードチョークを通らないので、コモンモードチョークのコアが磁気飽和を生じない。その結果、本発明によるフィルタ回路では特に、コアの小型化が容易であり、かつ信頼性が高い。
このように、本発明によるフィルタ回路は従来のフィルタ回路と比べ、特に、EMIの低減、コモンモードノイズに対する耐性の強化、及び小型化に有利である。従って、例えば、USB、IEEE1394、LVDS、DVI、HDMI、シリアルATA、PCIエクスプレス等、様々なシリアルインタフェースに搭載される差動伝送システム、特に車載LANや携帯情報機器(モバイル機器)に搭載される差動伝送システム、及び電源装置での利用に適している。
以下、本発明の最良の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
《実施形態1》
本発明の実施形態1による差動伝送システムは好ましくは、CAN等の車載LANに搭載される(図1参照)。車載LANには様々なECUが接続される。例えば、エンジン、トランスミッション、及びブレーキ等、自動車の駆動系統(パワートレイン系)を制御するECUE1;ABSやエアバック等、安全装置類(安全走行系)を制御するECUE2;ヘッドライト、エアコン、及びサイドミラー等、自動車の付属部品(ボディ系)を制御するECUE3;が含まれる。車載LANには更に、車載カメラ、車間距離計測用レーザ、及び加速度センサ等のセンサ類;カーナビやETC等の情報電子機器類(ITS系)E4;並びに、DVDプレーヤやオーディオコンポ等のAV機器が接続される。それらのECUや車載電子機器(以下、ECU等と略す)の接続形態は好ましくはバス型である。その他に、スター型であっても良い。多種多様なECU等が車載LANを通して通信を行い、相互に連携する。それにより、様々な、高度な機能が実現される。
車載LANではECU等の間がケーブル40で接続される。このケーブル40は一般に長い(例えば2m以上のものを含む)。一方、自動車内では、例えばエンジンEやドアミラーDMを回転させるモータ等、様々な部品から電磁波が放射される。更に、自動車は様々な環境を走行するので、外部からも様々な電磁波が自動車内に侵入する。それらの電磁波がケーブル40にノイズを発生させる。そのノイズに加え、ECU等からケーブル40に直接送出されたノイズがケーブル40の周囲に電磁波として放射され、他のケーブル40やアンテナATにノイズを与える。このように車載LANでは、不要電磁輻射とそれに起因するノイズとが共に高い。それらのノイズによる各ECU等に対する悪影響、すなわちEMIを抑える目的で、車載LANでの通信は差動伝送方式で行われる。
ECU等U1、U2、U3、…はそれぞれ、差動受信装置10、差動送信装置20、又は差動送受信装置30を通信ポートとして含む(図2、3参照)。これらの通信ポートがケーブル40で互いに接続され、差動伝送システムを構成する。ケーブル40は二本の差動伝送路を含む。各差動伝送路を伝搬する信号(差動信号)間では位相が互いに逆である。ケーブル40には好ましくは、シールド付ツイストペアケーブルが使用される。その他に、シールドなしのツイストペアケーブル、フラットケーブル、又はフレキケーブルが使用されても良い。ケーブル40は好ましくは、通信ポートを一対一で接続する(図2参照)。その場合、各ECU等U1、U2、U3、…が受信した信号を次のECU等へリピートすることで、バス型のLANを論理的に構成する。その他に、ケーブルがバス40Bと分岐線40Aとに物理的に分けられても良い(図3参照)。
差動受信装置10は受信専用の装置であり、例えばディスプレイU1に搭載される(図2、3参照)。差動受信装置10は、本発明によるフィルタ回路1、差動レシーバ11、及び差動配線12を含む。フィルタ回路1の二つの入力端子1a、1bは、ケーブル40に含まれている差動伝送路に接続される。ここで、ケーブル40とフィルタ回路1との間には、例えば直流阻止キャパシタや静電保護ダイオードが更に接続されても良い。フィルタ回路1はケーブル40を通して他のECU等から差動信号を受信し、その差動信号からコモンモードノイズを除去する。フィルタ回路1は特に、差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。その一方で、コモンモードノイズを反射することなく、実質上完全に吸収する(詳細は後述)。フィルタ回路1の二つの出力端子2a、2bは差動配線12に接続される。ここで、フィルタ回路1と差動配線12との間には、例えばローパスフィルタが接続されても良い。フィルタ回路1から送出された差動信号は、差動配線12を通し、差動レシーバ11の入力端子対で受信される。差動レシーバ11は受信された差動信号の差分を増幅する。ディスプレイU1は差動レシーバ11の出力信号から、例えば画像データを解読し、それに基づいてスクリーンに画像を再現する。
差動受信装置10では更に好ましくは、差動レシーバ11の入力端子対に終端素子13、14、又は15が接続される(図4、5参照)。終端素子13、14、15は好ましくは抵抗素子であり、差動レシーバ11と共に、一つのLSI上に集積される。図4では、差動レシーバ11の各入力端子が終端素子13、14を通して定電位端子(好ましくは接地端子)に接続される。図5では、差動レシーバ11の入力端子間が終端素子15で接続される。差動信号に対してはフィルタ回路1のインピーダンスが十分に低い。従って、差動配線12の差動インピーダンスと終端素子13、14、15のインピーダンスとがそれぞれ、ケーブル40の差動インピーダンスと整合するように調整される。例えば、ケーブル40の差動インピーダンスが100Ωである場合、差動配線12の差動インピーダンスが100Ω程度に設定される。更に、図4では終端素子13、14のインピーダンスがそれぞれ50Ω程度に設定され、図5では終端素子15のインピーダンスが100Ω程度に設定される。その結果、差動レシーバ11により受信される差動信号には実質的な歪みや減衰が生じない。その上、差動配線12のレイアウトがインピーダンス整合からは大きな制約を受けないので、差動受信装置10は回路設計の柔軟性が高い。
差動送信装置20は送信専用の装置であり、例えばディスプレイU1の制御回路U2に搭載される(図2、3参照)。差動送信装置20は、差動ドライバ21、本発明によるフィルタ回路1、及び差動配線22を含む。制御回路U2内では、例えば画像データに基づいて差動信号が生成される。差動ドライバ21はその差動信号を増幅する。増幅された差動信号は差動ドライバ21の出力端子対から差動配線22に送出される。フィルタ回路1の二つの入力端子1a、1bは差動配線22に接続される。ここで、差動配線22とフィルタ回路1との間には、例えばローパスフィルタが接続されても良い。フィルタ回路1は差動配線22を通して差動信号を受信し、その差動信号からコモンモードノイズを除去する。フィルタ回路1は特に、差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。その一方で、コモンモードノイズを反射することなく、実質上完全に吸収する(詳細は後述)。フィルタ回路1の二つの出力端子2a、2bは、ケーブル40に含まれている差動伝送路に接続される。ここで、フィルタ回路1とケーブル40との間には、例えば直流阻止キャパシタや静電保護ダイオードが更に接続されても良い。フィルタ回路1はケーブル40を通して他のECU等に差動信号を送出する。
差動送信装置20では更に好ましくは、差動ドライバ21の出力端子対がそれぞれ、終端素子23、24を通して差動配線22に接続される(図6参照)。終端素子23、24は好ましくは抵抗素子であり、更に好ましくは、差動ドライバ21と共に、一つのLSI上に集積される。その他に、差動ドライバ21とは異なる独立素子として実装されても良い。
フィルタ回路1の差動インピーダンスが十分に低いので、差動配線22の差動インピーダンス、及び、差動ドライバ21のオン抵抗と終端素子23、24のインピーダンスとの合成がそれぞれ、ケーブル40の差動インピーダンスと整合するように調整される。例えば、ケーブル40の差動インピーダンスが100Ωである場合、差動配線22の差動インピーダンスが100Ω程度に設定され、差動ドライバ21のオン抵抗と終端素子23、24のインピーダンスとの合成がそれぞれ50Ω程度に設定される。その結果、ケーブル40に送出される差動信号には実質的な歪みや減衰が生じない。その上、差動配線22のレイアウトがインピーダンス整合からは大きな制約を受けないので、差動送信装置20は回路設計の柔軟性が高い。
差動送受信装置30は差動受信装置10と差動送信装置20とを一体化した装置であり、送信と受信との両方を行うECU等U3に搭載される(図2、3参照)。差動送受信装置30は、差動レシーバ31、差動ドライバ32、本発明によるフィルタ回路1、及び差動配線33を含む。
フィルタ回路1の二つの入力端子1a、1bは、ケーブル40に含まれている差動伝送路に接続される。ここで、ケーブル40とフィルタ回路1との間には、例えば直流阻止キャパシタや静電保護ダイオードが更に接続されても良い。フィルタ回路1はケーブル40を通して他のECU等から差動信号を受信し、その差動信号からコモンモードノイズを除去する。フィルタ回路1は特に、差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。その一方で、コモンモードノイズを反射することなく、実質上完全に吸収する(詳細は後述)。フィルタ回路1の二つの出力端子2a、2bは差動配線33に接続される。ここで、フィルタ回路1と差動配線33との間には、例えばローパスフィルタが接続されても良い。フィルタ回路1から送出された差動信号は、差動配線33を通し、差動レシーバ31の入力端子対で受信される。差動レシーバ31は受信された差動信号の差分を増幅する。ECU等U3は差動レシーバ31の出力信号から通信データを解読する。
ECU等U3内では、他のECU等に伝えられるべきデータに基づいて差動信号が生成される。差動ドライバ32はその差動信号を増幅する。増幅された差動信号は差動ドライバ32の出力端子対から差動配線33に送出される。フィルタ回路1は、差動配線33、及び第一と第二との出力端子2a、2bを通して差動信号を受信し、その差動信号からコモンモードノイズを除去する。フィルタ回路1は特に、差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。フィルタ回路1は更に、第一と第二との入力端子1a、1bを通してケーブル40に差動信号を送出する。このように、差動送受信装置30では、フィルタ回路1の二つの入力端子1a、1b、及び二つの出力端子2a、2bがいずれも、入出力端子として利用される。
差動送受信装置30では好ましくは、差動受信装置10と同様に、差動レシーバ31の入力端子対に終端素子13、14、又は15が接続される(図4、5参照)。それにより、差動レシーバ31により受信される差動信号には実質的な歪みや減衰が生じない。更に好ましくは、差動送信装置20と同様に、差動ドライバ32の出力端子対がそれぞれ、終端素子23、24を通して差動配線33に接続される(図6参照)。それにより、ケーブル40に送出される差動信号には実質的な歪みや減衰が生じない。その上、差動配線33のレイアウトがインピーダンス整合からは大きな制約を受けないので、差動送受信装置30は回路設計の柔軟性が高い。
フィルタ回路1は、二つの入力端子1a、1b、四つの出力端子2a、2b、3a、3b、コモンモードチョーク2、及びノーマルモードチョーク3を有する(図7参照)。
二つの入力端子1a、1bは図2、3に示されている通り、差動受信装置10と差動送受信装置30とではケーブル40に接続され、差動送信装置20では差動ドライバ21の出力端子に接続される。第一と第二との出力端子2a、2bは図2、3に示されている通り、差動受信装置10と差動送受信装置30とでは差動レシーバ11、31の入力端子に接続され、差動送信装置20ではケーブル40に接続される。第三と第四との出力端子3a、3bは定電位端子(好ましくは接地端子)に接続される。
コモンモードチョーク2は二つのインダクタL1、L2を含む。第一のインダクタL1は第一の入力端子1aと第一の出力端子2aとの間に接続される。第二のインダクタL2は第二の入力端子1bと第二の出力端子2bとの間に接続される。二つのインダクタL1、L2は互いに磁気的に結合し、特に、入力端子と出力端子との間に同じ極性で接続される。すなわち、二つの入力端子1a、1bと二つの出力端子2a、2bとの間に、コモンモード電流が流れるときは二つのインダクタL1、L2に生じる磁束が互いに強め合い、ノーマルモード電流が流れるときは二つのインダクタL1、L2に生じる磁束が相殺する。それにより、コモンモードチョーク2のインピーダンスは、二つの入力端子1a、1bを通して受信される信号のうち、コモンモード成分に対しては極めて高く、ノーマルモード成分に対しては極めて低い。
本発明の実施形態1では、コモンモードチョーク2が一つのコアとそれに巻き付けられた二本のコイルとを含む。好ましくは、二本のコイルがコアにバイファイラ巻き又はキャンセル巻きで巻かれている。
ノーマルモードチョーク3は二つのインダクタL3、L4を含む。第三のインダクタL3は第一の入力端子1aと第三の出力端子3aとの間に接続される。第四のインダクタL4は第二の入力端子1bと第四の出力端子3bとの間に接続される。二つのインダクタL3、L4は互いに磁気的に結合し、特に、入力端子と出力端子との間に逆の極性で接続される。すなわち、二つの入力端子1a、1bと二つの出力端子3a、3bとの間に、ノーマルモード電流が流れるときは二つのインダクタL3、L4に生じる磁束が互いに強め合い、コモンモード電流が流れるときは二つのインダクタL3、L4に生じる磁束が相殺する。それにより、ノーマルモードチョーク3のインピーダンスは、二つの入力端子1a、1bを通して受信される信号のうち、ノーマルモード成分に対しては極めて高く、コモンモード成分に対しては極めて低い。
本発明の実施形態1では、ノーマルモードチョーク3が一つのコアとそれに巻き付けられた二本のコイルとを含む。好ましくは、二本のコイルがコアにバイファイラ巻き又はキャンセル巻きで巻かれている。すなわち、ノーマルモードチョーク3がコモンモードチョーク2と同じ構成を持つ。その場合、図7に示されている通り、第三と第四とのインダクタL3、L4間で入力端子/出力端子への接続の極性が逆である。更に好ましくは、二つのコモンモードチョークを含むコモンモードチョークアレイ2Aが、本発明の実施形態1によるコモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との組み合わせとして利用される(図8参照)。それにより、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3とが一つのパッケージに集約されるので、フィルタ回路1の小型化に有利である。
ノーマルモードチョーク3では上記の他に、コモンモード電流により生じる磁束が互いに相殺するような向きで二本のコイルがコアに巻かれても良い(図9参照)。すなわち、二本のコイルのいずれかがバイファイラ巻き又はキャンセル巻きとは逆向きに巻かれている(図10、11、12参照)。図10ではトロイダルコアTCに二本のコイルL3、L4が重ねて巻かれている(実線のコイルが第三のインダクタL3に相当し、破線のコイルが第四のインダクタL4に相当する)。但し、バイファイラ巻きとは異なり、二本のコイルL3、L4間ではトロイダルコアTCへの巻き方が逆である。図11ではトロイダルコアTCに二本のコイルL3、L4が半周ずつ、別々に巻かれている。但し、キャンセル巻きとは異なり、二本のコイルL3、L4間では、トロイダルコアTCへの巻き方が同じである。図12では棒状コアRCに二本のコイルL3、L4が重ねて巻かれている(実線のコイルが第三のインダクタL3に相当し、破線のコイルが第四のインダクタL4に相当する)。但し、バイファイラ巻きとは異なり、二本のコイルL3、L4間では棒状コアRCへの巻き方が逆である。図10、11、12のいずれでも、図9に示されている通り、ノーマルモードチョーク3とフィルタ回路1の入力端子1a、1b/出力端子3a、3bとの間の配線は図7、8に示されている配線より短い。従って、フィルタ回路1の小型化には有利である。
本発明の実施形態1によるフィルタ回路1では上記の通り、コモンモードチョーク2のインピーダンスがコモンモード信号に対しては十分に高く、差動信号に対しては十分に低い。ノーマルモードチョーク3のインピーダンスは逆に、コモンモード信号に対しては十分に低く、差動信号に対しては十分に高い。特に、それらのインピーダンスの差が十分に大きい。更に、ノーマルモードチョーク3がコモンモードチョーク2の前段に設置され、すなわちコモンモードチョーク2より第一と第二との入力端子1a、1bに近い所に接続される(図7、8、9参照)。従って、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信される差動信号のうち、実質上、ノーマルモード成分のみがコモンモードチョーク2を透過し、コモンモード成分のみがノーマルモードチョーク3を透過する。こうして、差動信号から両成分が分離される。特に、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信されるコモンモードノイズが第一と第二との出力端子1a、1bから遮断される。その上、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が実質上生じない。それに加え、コモンモードチョーク2にはコモンモード電流が実質上流れないので、コモンモードチョーク2のコアが磁気飽和を生じない。それ故、フィルタ回路1は信頼性が高い。
図2、3に示されている差動受信装置10(及び、差動送受信装置30)では、フィルタ回路1が、ケーブル40を通して受信される差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。従って、差動信号のノーマルモード成分に対しては上記の通り、差動レシーバ11(31)、差動配線12(33)、及びケーブル40間でのインピーダンス整合が差動信号の実質的な歪みや減衰を抑える(図4、5参照)。その上、そのインピーダンス整合は差動配線12(33)のレイアウトに大きな制約を与えないので、差動受信装置10(差動送受信装置30)は回路設計の柔軟性が高い。フィルタ回路1では更に、ノーマルモードチョーク3がコモンモードノイズを実質上、完全に吸収する。従って、差動レシーバ11とその後段の回路(差動レシーバ31とその後段の回路、及び差動ドライバ32)がコモンモードノイズから確実に保護される。更に、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が実質上完全に抑制される。それ故、ケーブル40から周辺への不要電磁輻射が十分に低減する。
尚、図2、3に示されている差動受信装置10では、コモンモード信号に対し、第一と第二との出力端子2a、2bに接続される差動レシーバ11の入力インピーダンスがノーマルモードチョーク3のインピーダンスより十分に高い。その場合、フィルタ回路1ではコモンモードチョーク2が除去されても良い(図13参照)。二つの入力端子1a、1bから侵入するコモンモードノイズはノーマルモードチョーク3を透過し、二つの出力端子2a、2bから差動レシーバ11へは伝達されない。
図2、3に示されている差動送信装置20では、フィルタ回路1が、差動ドライバ21から送出される差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。従って、差動信号のノーマルモード成分に対しては上記の通り、差動ドライバ21、差動配線22、及びケーブル40間でのインピーダンス整合が差動信号の実質的な歪みや減衰を抑える(図6参照)。その上、そのインピーダンス整合は差動配線22のレイアウトに大きな制約を与えないので、差動送信装置20は回路設計の柔軟性が高い。フィルタ回路1では更に、ノーマルモードチョーク3が、差動ドライバ21又は差動配線22に起因するコモンモードノイズを実質上、完全に吸収する。従って、ケーブル40から周辺への不要電磁輻射が十分に低減する。更に、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が実質上完全に抑制される。それ故、差動ドライバ21が、コモンモードチョーク2により反射されたコモンモードノイズから確実に保護される。
《実施形態2》
本発明の実施形態2による差動伝送システムは好ましくは、実施形態1によるシステムと同様に、車載LANに搭載される。フィルタ回路1が積層インダクタ又は薄膜インダクタを含む点で、本発明の実施形態2は実施形態1とは異なる。本発明の実施形態2による構成要素のうち、実施形態1による構成要素と同様な構成要素については、実施形態1による構成要素についての説明と図面とを援用する。
本発明の実施形態2によるフィルタ回路1は実施形態1によるフィルタ回路と同様な等価回路で表される(図14参照)。しかし、実施形態1によるフィルタ回路とは異なり、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3とに含まれているインダクタL1、L2、L3、L4がいずれも積層インダクタ又は薄膜インダクタであり、同じチップ2B上に集積される(図15、16、17参照)。それにより、本発明の実施形態2によるフィルタ回路1は極めて小さい。
この場合、第一と第二との入力端子1a、1b、第一から第四までの出力端子2a、2b、3a、3bは好ましくは、チップ2Bと同一平面上に設置される。その他に、それらの端子のいずれか、又は全部が、チップ2Bと垂直に交わる平面上に設置されても良い。
フィルタ回路1は好ましくは、積層された12枚の磁性体シート(以下、層という)S1、S2、…、S12を含む(図15参照)。ここで、磁性体シートは好ましくは、セラミック製のシートである。各層S1、S2、…、S12上には、導線(好ましくは金属箔)C1、C2、…、C12が好ましくは、スクリーン印刷により形成されている。その他に、スパッタリングや蒸着で形成されていても良い。以下、各層を上から順に、第一層S1、第二層S2、…、と呼ぶ。
第一層S1から第三層S3までの三つの層が第一のインダクタL1に相当する(図15参照)。第一層S1上の導線C1と第二層S2上の導線C2とが第二のビアホールV2で接続され、第二層S2上の導線C2と第三層S3上の導線C3とが第三のビアホールV3で接続される。それにより、三つの導線C1、C2、C3は、第三層S3から第一層S1へ貫く法線Nの方向から見て時計回りにほぼ(2+1/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図16参照)。第一層S1上の導線C1の一端T1Aは第一の入力端子1aに接続され、第三層S3上の導線C3の一端T2Aは第一の出力端子2aに接続される(図14参照)。
第四層S4から第六層S6までの三つの層が第二のインダクタL2に相当する(図15参照)。第四層S4上の導線C4と第五層S5上の導線C5とが第五のビアホールV5で接続され、第五層S5上の導線C5と第六層S6上の導線C6とが第六のビアホールV6で接続される。それにより、三つの導線C4、C5、C6は、第四層S4から第六層S6へ貫く法線Nの方向から見て時計回りにほぼ(2+3/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図16参照)。第四層S4上の導線C4の一端T1Bは第二の入力端子1bに接続され、第六層S6上の導線C6の一端T2Bは第二の出力端子2bに接続される(図14参照)。
第七層S7から第九層S9までの三つの層が第三のインダクタL3に相当する(図15参照)。第七層S7上の導線C7と第八層S8上の導線C8とが第七のビアホールV7で接続され、第八層S8上の導線C8と第九層S9上の導線C9とが第八のビアホールV8で接続される。それにより、三つの導線C7、C8、C9は、第九層S9から第七層S7へ貫く法線Nの方向から見て時計回りにほぼ(2+1/8)回巻かれた矩形コイルを成す(図16参照)。第七層S7上の導線C7の一端は第一のビアホールV1を通して第一層S1上の導線C1の一端T1Aに接続されるので、第一の入力端子1aに接続される(図14参照)。第九層S9上の導線C9の一端T3Aは第三の出力端子3aに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図14参照)。
第十層S10から第十二層S12までの三つの層が、第四のインダクタL4に相当する(図15参照)。第十層S10上の導線C10と第十一層S11上の導線C11とが第九のビアホールV9で接続され、第十一層S11上の導線C11と第十二層S12上の導線C12とが第十のビアホールV10で接続される。それにより、三つの導線C10、C11、C12は、第十二層S12から第十層S10へ貫く法線Nの方向から見て反時計回りにほぼ(2+1/8)回巻かれた矩形コイルを成す(図16参照)。第十層S10上の導線C10の一端は第四のビアホールV4を通して第四層S4上の導線C4の一端T1Bに接続されるので、第二の入力端子1bに接続される(図14参照)。第十二層S12上の導線C12の一端T3Bは第四の出力端子3bに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図14参照)。
第一層S1の上には更に、別の磁性体シートS0が重ねられる(図17参照)。積層された磁性体シート全体を加熱することにより、全層の磁性体が一体化する。それにより、第一層S1から第三層S3までのコイルC1、C2、C3と、第四層S4から第六層S6までのコイルC4、C5、C6とが、一体化された磁性体をコアとして磁気的に結合する。特に、両方のコイルが法線Nを中心に同じ方向に巻かれているので、第一層S1から第六層S6まで、すなわち第一と第二とのインダクタL1、L2がコモンモードチョーク2を構成する。
同様に、第七層S7から第九層S9までのコイルC7、C8、C9と、第十層S10から第十二層S12までのコイルC10、C11、C12とが、一体化された磁性体をコアとして磁気的に結合する。特に、両方のコイルが法線Nを中心に逆方向に巻かれているので、第七層S7から第十二層S12まで、すなわち第三と第四とのインダクタL3、L4がノーマルモードチョーク3を構成する。
本発明の実施形態2によるフィルタ回路では実施形態1によるフィルタ回路と同様に、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信される差動信号のうち、実質上、ノーマルモード成分のみがコモンモードチョーク2を透過し、コモンモード成分のみがノーマルモードチョーク3を透過する。こうして、差動信号から両成分が分離される。特に、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信されるコモンモードノイズが第一と第二との出力端子1a、1bから遮断される。その上、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が実質上生じない。それに加え、コモンモードチョーク2にはコモンモード電流が実質上流れないので、コモンモードチョーク2のコアが磁気飽和を生じない。それ故、フィルタ回路1は信頼性が高い。特に、コモンモードチョーク2のコアの体積が小さくても良いので、コモンモードチョーク2が上記のように積層インダクタ(又は薄膜インダクタ)として形成され得る。
尚、層数や導線の巻数が図15に示されているものとは異なっても良い。更に、コイルが図15、16に示されている矩形状とは異なり、円形状又は他の多角形状であっても良い。但し、第一のインダクタL1に含まれているコイルC1、C2、C3と、第二のインダクタL2に含まれているコイルC4、C5、C6との間では、巻数と形状との正確な一致が好ましい。同様に、第三のインダクタL3に含まれているコイルC7、C8、C9と、第四のインダクタL4に含まれているコイルC10、C11、C12との間では、巻数と形状との正確な一致が好ましい。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間では平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
その他に、第九層S9上の導線C9の一端T3Aと第十二層S12上の導線C12の一端T3Bとが、図15、16に示されているものとは異なり、第一層S1上の導線C1の一端T1Aと第四層S4上の導線C4の一端T1Bとから等距離の位置に設けられても良い(例えば、図16に一点鎖線で示されている部分T3D、T3E参照)。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間では平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
コモンモードチョーク2では、図15、17に示されているものとは異なり、第一のインダクタL1を構成する三つの層S1、S2、S3と第二のインダクタL2を構成する三つの層S4、S5、S6とが交互に重ねられても良い(図18、19参照)。それにより、第一のインダクタL1に含まれている導線C1、C2、C3と第二のインダクタに含まれている導線C4、C5、C6との間で、例えば線間距離、及びそれに依存する寄生容量が均一化される(図19参照)。その結果、フィルタ回路1に含まれる差動信号の経路では平衡度が更に向上する。従って、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
尚、コモンモードチョーク2と同様に、ノーマルモードチョーク3では、第三のインダクタL3を構成する三つの層S7、S8、S9と第四のインダクタL4を構成する三つの層S10、S11、S12とが交互に重ねられても良い(図示せず)。
ノーマルモードチョーク3を構成する六つの層S7〜S12が、コモンモードチョーク2を構成する六つの層S1〜S6の上に形成されても良い。
コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との間、例えば、第六層S6と第七層S7との間には磁気分離層Ssが挿入されても良い(図20参照)。磁気分離層Ssは好ましくは磁性体シートであり、その上に導体膜GNDが形成されている。導体膜GNDは、各層S1、…、S12上の導線C1、…、C12により囲まれる面積全体を一様に覆う。その他に、導体膜GNDが、その面積全体に拡がるメッシュ状の導体膜であっても良い。導体膜GNDは一定電位(好ましくは接地電位)に維持される。それにより、磁界が導体膜GNDを透過できないので、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との間が磁気的に分離される。その結果、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3とが互いに干渉しないので、それぞれの信頼性が更に向上する。
コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との間の磁気的干渉を抑える目的では、磁気分離層Ssが挿入される場合(図20参照)の他に、二つのチョーク2、3が磁性体シート上の異なる領域に形成されても良い(図21、22、23参照)。図21、22、23に示されている7枚の磁性体シートS1、S2、…、S7の右半分がコモンモードチョーク2に相当し、左半分がノーマルモードチョーク3に相当する。
第一層S1上の第一の導線C1が第三層S3上の第一の導線C3と、第二のビアホールV2で接続され、第三層S3上の第一の導線C3が第五層S5上の導線C5と、第三のビアホールV3で接続される。それにより、三つの第一の導線C1、C3、C5は、第五層S5から第一層S1へ貫く第一の法線N1の方向から見て時計回りにほぼ(2+1/2)回巻かれた矩形コイルを成す(図21参照)。この第一のコイルC1、C3、C5が第一のインダクタL1に相当する。第一層S1上の第一の導線C1の一端T1Aは第一の入力端子1aに接続され、第五層S5上の第一の導線C5の一端T2Aは第一の出力端子2aに接続される(図14参照)。
第一層S1上の第二の導線C7が第二層S2上の第一の導線C2と、第五のビアホールV5で接続され、第二層S2上の第一の導線C2が第四層S4上の第一の導線C4と、第六のビアホールV6で接続され、第四層S4上の第一の導線C4が第六層S6上の第一の導線C6と、第七のビアホールV7で接続される。それにより、三つの第一の導線C2、C4、C6は、第六層S6から第一層S1へ貫く第一の法線N1の方向から見て時計回りにほぼ(2+1/2)回巻かれた矩形コイルを成す(図21参照)。この第二のコイルC2、C4、C6が第二のインダクタL2に相当する。第一層S1上の第二の導線C7の一端T1Bは第二の入力端子1bに接続され、第六層S6上の第一の導線C6の一端T2Bは第二の出力端子2bに接続される(図14参照)。
第一層S1上の第一の導線C1が第二層S2上の第二の導線C8と、第一のビアホールV1で接続され、第二層S2上の第二の導線C8が第四層S4上の第二の導線C10と、第八のビアホールV8で接続され、第四層S4上の第二の導線C10が第六層S6上の第二の導線C12と、第九のビアホールV9で接続される。それにより、三つの第二の導線C8、C10、C12は、第六層S6から第一層S1へ貫く第二の法線N2の方向から見て時計回りにほぼ(2+3/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図21参照)。この第三のコイルC8、C10、C12が、第三のインダクタL3に相当する。第六層S6上の第二の導線C12の一端T3Aは第三の出力端子3aに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図14参照)。
第一層S1上の第二の導線C7が第三層S3上の第二の導線C9と、第四のビアホールV4で接続され、第三層S3上の第二の導線C9が第五層S5上の第二の導線C11と、第十のビアホールV10で接続され、第五層S5上の第二の導線C11が第七層S7上の導線C13と、第十一のビアホールV11で接続される。それにより、三つの導線C9、C11、C13は、第七層S7から第一層S1へ貫く第二の法線N2の方向から見て反時計回りにほぼ(2+3/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図21参照)。この第四のコイルC9、C11、C13が第四のインダクタL4に相当する。第七層S7上の導線C13の一端T3Bは第四の出力端子3bに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図14参照)。
第一層S1の上には更に、別の磁性体シートS0が重ねられる(図23参照)。積層された磁性体シート全体を加熱することにより全層の磁性体が一体化する。それにより、第一のコイルC1、C3、C5と第二のコイルC2、C4、C6とが、一体化された磁性体をコアとして磁気的に結合する。特に、両方のコイルが第一の法線N1を中心に同じ方向に巻かれているので、第一と第二とのインダクタL1、L2がコモンモードチョーク2を構成する。
同様に、第三のコイルC8、C10、C12と第四のコイルC9、C11、C13とが、一体化された磁性体をコアとして磁気的に結合する。特に、両方のコイルが第二の法線N2を中心に逆方向に巻かれているので、第三と第四とのインダクタL3、L4がノーマルモードチョーク3を構成する。
図21、22、23から明らかな通り、第一と第二とのコイルC1〜C6により生じる磁束は第三と第四とのコイルC8〜C13により生じる磁束とほとんど相互作用をしない。従って、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との間が磁気的に分離される。その結果、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3とが互いに干渉しないので、それぞれの信頼性が更に向上する。
尚、層数や導線の巻数が図21に示されているものとは異なっても良い。更に、コイルが図21、22に示されている矩形状とは異なり、円形状又は他の多角形状であっても良い。但し、第一のコイルC1、C2、C3と第二のコイルC4、C5、C6との間では、巻数と形状との正確な一致が好ましい。同様に、第三のコイルC8、C10、C12と第四のコイルC9、C11、C13との間では、巻数と形状との正確な一致が好ましい。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間では平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
その他に、第六層S6上の第二の導線C12の一端T3Aと、第七層S7上の導線C13の一端T3Bとが、図21、22に示されているものとは異なり、第一層S1上の第一の導線C1の一端T1Aと第二の導線C7の一端T1Bとから等距離の位置に設けられても良い。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間では平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
図14に示されているフィルタ回路1の等価回路では、第三と第四との出力端子3a、3bが別々の端子に分かれている。その他に、共通の出力端子3cが第三と第四との出力端子3a、3bとして兼用されても良い(図24参照)。それにより、フィルタ回路1の端子数が削減されるので、周辺の回路設計の柔軟性が更に向上する。
例えば、図15、16、17に示されているフィルタ回路1とは異なり、第九層S9上の導線C9Aが第十一のビアホールV11で第十二層S12上の導線C12Aと接続される(図25参照)。更に、第十二層S12上の導線C12Aの一端T3Cが共通の出力端子3cに接続され、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される。ここで、第十二層S12上の導線C12Aの一端T3Cは第一層S1上の導線C1の一端T1Aと第四層S4上の導線C4の一端T1Bとから等距離の位置に設けられる(図26参照)。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間で平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
《実施形態3》
本発明の実施形態3による差動伝送システムは好ましくは、実施形態1によるシステムと同様に、車載LANに搭載される。フィルタ回路1が終端素子を含む点で、本発明の実施形態3は実施形態1、2とは異なる。本発明の実施形態3による構成要素のうち、実施形態1、2による構成要素と同様な構成要素については、実施形態1、2による構成要素についての説明と図面とを援用する。
本発明の実施形態3によるフィルタ回路1は実施形態1によるフィルタ回路1と同様な等価回路で表される(図27、28、29、30、31参照)。しかし、実施形態1によるフィルタ回路1とは異なり、ノーマルモードチョーク3に終端素子Z1、Z2が接続される。終端素子Z1、Z2はインピーダンス素子であり、好ましくはキャパシタである。その他に、インダクタ、バリスタ、ダイオード、抵抗素子、又はそれらの組み合わせであっても良い。
ノーマルモードチョーク3がコモンモードチョーク2から独立した素子である場合、好ましくは、第一の終端素子Z1が第三のインダクタL3と第三の出力端子3aとの間に接続され、第二の終端素子Z2が第四のインダクタL4と第四の出力端子3bとの間に接続される(図27参照)。その他に、第一の終端素子Z1が第一の入力端子1aと第三のインダクタL3との間に接続され、第二の終端素子Z2が第二の入力端子1bと第四のインダクタL4との間に接続されても良い(図28参照)。
二つのコモンモードチョークを含むコモンモードチョークアレイ2Aがコモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3との組み合わせとして利用される場合も同様に、第一の終端素子Z1が第三のインダクタL3と第三の出力端子3aとの間に接続され、第二の終端素子Z2が第四のインダクタL4と第四の出力端子3bとの間に接続される(図29参照)。更に、第一の終端素子Z1が第一の入力端子1aと第三のインダクタL3との間に接続され、第二の終端素子Z2が第二の入力端子1bと第四のインダクタL4との間に接続されても良い(図29に示されている破線部参照)。
本発明の実施形態2のように、コモンモードチョーク2とノーマルモードチョーク3とが積層インダクタ(又は薄膜インダクタ)である場合、第一の終端素子Z1が第三のインダクタL3の一端T3Aと第三の出力端子3aとの間に接続され、第二の終端素子Z2が第四のインダクタL4の一端T3Bと第四の出力端子3bとの間に接続される(図14、30参照)。更に、共通の出力端子3cが第三と第四との出力端子3a、3bとして兼用される場合、第一と第二との終端素子Z1、Z2が一つの終端素子Zに統合され、第三と第四とのインダクタL3、L4の共通端T3Cと共通の出力端子3cとの間に接続される(図24、31参照)。
第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信されるコモンモード信号に対し、コモンモードチョーク2のインピーダンスは極めて高く、ノーマルモードチョーク3のインピーダンスは極めて低い。従って、図2、3に示されている差動受信装置10(及び、差動送受信装置30)では、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンス(図31では、統合された終端素子Zのインピーダンス)が、ケーブル40のコモンモードインピーダンスと整合するように調整される。例えば、ケーブル40のコモンモードインピーダンスが30Ωである場合、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンスが60Ω程度に設定される(図31では、統合された終端素子Zのインピーダンスが30Ω程度に設定される)。こうして、コモンモード信号に対し、ケーブル40とフィルタ回路1との間でインピーダンス整合が高精度に実現するので、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が更に低減する。それ故、ケーブル40から周辺への不要電磁輻射が更に低減する。
図2、3に示されている差動送信装置20でも同様に、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンス(図31では、統合された終端素子Zのインピーダンス)が、差動配線22のコモンモードインピーダンスと整合するように調整される。例えば、差動配線22のコモンモードインピーダンスが30Ωである場合、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンスが60Ω程度に設定される(図31では、統合された終端素子Zのインピーダンスが30Ω程度に設定される)。こうして、コモンモード信号に対し、差動配線22とフィルタ回路1との間でインピーダンス整合が高精度に実現するので、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が更に低減する。それ故、差動ドライバ21を含むLSI、更にその前段の回路へのコモンモードノイズの侵入が防止されるので、反射されたコモンモードノイズによる電源電位や接地電位の変動が確実に抑制される。
第一と第二との終端素子Z1、Z2がインダクタである場合、各インピーダンスが差動信号の周波数に依存して変化する(一般に、自己共振周波数と呼ばれる特定の周波数でピークに達する)。そのインピーダンスの周波数特性を利用することで、ノーマルモードチョーク3、及び第一と第二との終端素子Z1、Z2の間で合成されたコモンモードインピーダンスの周波数特性が調節される。例えば、IEEE1394でのスピード信号(通信機器間で伝送速度を照合するための信号)の利用のように、差動伝送路を通してコモンモード信号が伝送される場合がある。その場合、上記のコモンモードインピーダンスは、そのコモンモード信号の周波数帯域では十分に高く、それ以外の周波数帯域では十分に低く調節される。それにより、上記のコモンモード信号に過大な歪みや減衰を生じさせることなく、コモンモードノイズが除去される。
第一と第二との終端素子Z1、Z2がキャパシタである場合、各インピーダンスが差動信号のコモンモード成分の低周波数帯域(特にバイアス電圧を含む)に対しては十分に高く、高周波数帯域に対しては十分に低い。そのインピーダンス特性により、図2、3に示されている差動伝送システムがバイアス電圧を利用する場合、フィルタ回路1は第三と第四との出力端子3a、3bを通した定電位端子への短絡を防止できる。
第一と第二との終端素子Z1、Z2がバリスタ又はダイオードである場合、コモンモードノイズが所定のレベルを超えるとき、各インピーダンスが急落する。そのインピーダンス特性により、コモンモードノイズのレベルが所定のレベル(例えばバイアス電圧より十分に高いレベル)を超えたときは、フィルタ回路1が第一と第二との入力端子1a、1bを定電位端子へ短絡させる。それにより、過大なコモンモードノイズによる回路素子の破壊、及び過大な不要電磁輻射の発生を防止できる。
《実施形態4》
本発明の実施形態4による差動伝送システムは好ましくは、実施形態1によるシステムと同様に、車載LANに搭載される。フィルタ回路1が第二のノーマルモードチョーク4を含む点で、本発明の実施形態4は実施形態1とは異なる。本発明の実施形態4による構成要素のうち、実施形態1による構成要素と同様な構成要素については、実施形態1による構成要素についての説明と図面とを援用する。
フィルタ回路1は、第五と第六との出力端子4a、4b、及び第二のノーマルモードチョーク4を更に有する(図32参照)。
第五と第六との出力端子4a、4bは定電位端子(好ましくは接地端子)に接続される。
第二のノーマルモードチョーク4は二つのインダクタL5、L6を含む。第五のインダクタL5は第一の出力端子2aと第五の出力端子4aとの間に接続される。第六のインダクタL6は第二の出力端子2bと第六の出力端子4bとの間に接続される。二つのインダクタL5、L6は互いに磁気的に結合し、特に入力端子と出力端子との間に逆の極性で接続される。すなわち、第一と第二との出力端子2a、2b、及び第五と第六との出力端子4a、43bの間に、ノーマルモード電流が流れるときは二つのインダクタL5、L6に生じる磁束が互いに強め合い、コモンモード電流が流れるときは二つのインダクタL5、L6に生じる磁束が相殺する。それにより、第二のノーマルモードチョーク4のインピーダンスは第一と第二との出力端子2a、2bを通して受信される信号のうち、ノーマルモード成分に対しては極めて高く、コモンモード成分に対しては極めて低い。
本発明の実施形態4では、第二のノーマルモードチョーク4が一つのコアとそれに巻き付けられた二本のコイルとを含む。好ましくは、二本のコイルがコアにバイファイラ巻き又はキャンセル巻きで巻かれている。すなわち、第二のノーマルモードチョーク4がコモンモードチョーク2と同じ構成を持つ。その場合、図32に示されている通り、第五と第六とのインダクタL5、L6間で入力端子/出力端子への接続の極性が逆である。更に好ましくは、三つのコモンモードチョークを含むコモンモードチョークアレイ2Cが、本発明の実施形態4によるコモンモードチョーク2、ノーマルモードチョーク3、及び第二のノーマルモードチョーク4の組み合わせとして利用される(図33参照)。それによりコモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4とが一つのパッケージに集約されるので、フィルタ回路1の小型化に有利である。
第二のノーマルモードチョーク4では上記の他に、ノーマルモードチョーク3と同様に、コモンモード電流により生じる磁束が互いに相殺するような向きで二本のコイルがコアに巻かれても良い(図9参照)。すなわち、二本のコイルのいずれかがバイファイラ巻き又はキャンセル巻きとは逆向きに巻かれている(図10、11、12参照)。図10、11、12のいずれでも、第二のノーマルモードチョーク4とフィルタ回路1の出力端子2a、2b、4a、4bとの間の配線は図32に示されている配線より短い(図9参照)。従って、フィルタ回路1の小型化には有利である。
本発明の実施形態4によるフィルタ回路1では、図32に示されている通り、第一と第二との入力端子1a、1b、及び第一と第二との出力端子2a、2bの間に、コモンモードチョーク2に対してノーマルモードチョーク3と第二のノーマルモードチョーク4とが対称的に配置される。更に、ノーマルモードチョーク3と第二のノーマルモードチョーク4とはインピーダンス特性も対称的である。すなわち、第二のノーマルモードチョーク4のインピーダンスはノーマルモードチョーク3のインピーダンスと同様に、コモンモード信号に対しては十分に低く、差動信号に対しては十分に高い。特に、それらのインピーダンスの差が十分に大きい。
第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信される差動信号については、コモンモードチョーク2を透過し得たわずかなコモンモード成分が第二のノーマルモードチョーク4を透過する。こうして、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信されるコモンモードノイズが更に確実に、第一と第二との出力端子2a、2bから遮断される。
逆に、第一と第二との出力端子2a、2bを通して受信される差動信号については、そのノーマルモード成分がコモンモードチョーク2を透過し、コモンモード成分が第二のノーマルモードチョーク4を透過する。更に、コモンモードチョーク2を透過し得たわずかなコモンモード成分がノーマルモードチョーク3を透過する。こうして、第一と第二との出力端子2a、2bを通して受信されるコモンモードノイズが確実に、第一と第二との入力端子1a、1bから遮断される。その上、コモンモードチョーク2から第一と第二との出力端子2a、2bへのコモンモードノイズの反射が実質上生じない。それに加え、コモンモードチョーク2にはコモンモード電流が実質上流れないので、コモンモードチョーク2のコアが磁気飽和を生じない。それ故、フィルタ回路1は双方向のコモンモードノイズフィルタとして、信頼性が高い。
図2、3に示されている差動受信装置10では、フィルタ回路1が、ケーブル40を通して受信される差動信号のノーマルモード成分を実質上、完全に透過させる。従って、差動信号のノーマルモード成分に対しては、差動レシーバ11、差動配線12、及びケーブル40間でのインピーダンス整合が差動信号の実質的な歪みや減衰を抑える(図4、5参照)。更に、そのインピーダンス整合は差動配線12のレイアウトに大きな制約を与えないので、差動受信装置10は回路設計の柔軟性が高い。フィルタ回路1では更に、二つのノーマルモードチョーク3、4が、コモンモードチョーク2の前後でコモンモードノイズを実質上、完全に吸収する。それ故、差動レシーバ11とその後段の回路とがコモンモードノイズから確実に保護される。その上、コモンモードチョーク2、差動配線12、及び差動レシーバ11によるコモンモードノイズの反射がいずれも実質上完全に抑制される。それにより、ケーブル40や差動配線12から周辺への不要電磁輻射が十分に低減する。
図2、3に示されている差動送信装置20では、フィルタ回路1が、差動ドライバ21から送出される差動信号のノーマルモード成分を実質上、完全に透過させる。従って、差動信号のノーマルモード成分に対しては、差動ドライバ21、差動配線22、及びケーブル40間でのインピーダンス整合が差動信号の実質的な歪みや減衰を抑える(図6参照)。更に、そのインピーダンス整合は差動配線22のレイアウトに大きな制約を与えないので、差動送信装置20は回路設計の柔軟性が高い。フィルタ回路1では更に、二つのノーマルモードチョーク3、4が、コモンモードチョーク2の前後でコモンモードノイズを実質上、完全に吸収する。それ故、差動配線22やケーブル40から周辺への不要電磁輻射が十分に低減する。その上、差動ドライバ21が、コモンモードチョーク2により反射されたコモンモードノイズとケーブル40を通して侵入するコモンモードノイズとの両方から確実に保護される。
図2、3に示されている差動送受信装置30では、フィルタ回路1が、差動配線33とケーブル40との間で双方向に、差動信号のノーマルモード成分を実質上、完全に透過させる。従って、差動信号のノーマルモード成分に対しては、差動レシーバ31、差動配線33、及びケーブル40間でのインピーダンス整合が差動信号の実質的な歪みや減衰を抑える(図4、5参照)。更に、そのインピーダンス整合は差動配線33のレイアウトに大きな制約を与えないので、差動送受信装置30は回路設計の柔軟性が高い。フィルタ回路1では更に、二つのノーマルモードチョーク3、4が、コモンモードチョーク2の前後でコモンモードノイズを実質上、完全に吸収する。それ故、差動レシーバ31とその後段の回路、及び差動ドライバ32がコモンモードノイズから確実に保護される。その上、差動配線33やケーブル40から周辺への不要電磁輻射が十分に低減する。
《実施形態5》
本発明の実施形態5による差動伝送システムは好ましくは、実施形態4によるシステムと同様に、車載LANに搭載される。フィルタ回路1が積層インダクタ又は薄膜インダクタを含む点で、本発明の実施形態5は実施形態4とは異なる。本発明の実施形態5による構成要素のうち、実施形態4による構成要素と同様な構成要素については、実施形態4による構成要素についての説明と図面とを援用する。
本発明の実施形態5によるフィルタ回路1は実施形態4によるフィルタ回路と同様な等価回路で表される(図34参照)。しかし、実施形態4によるフィルタ回路とは異なり、コモンモードチョーク2、ノーマルモードチョーク3、及び第二のノーマルモードチョーク4に含まれているインダクタL1、L2、L3、L4、L5、L6がいずれも積層インダクタ又は薄膜インダクタであり、同じチップ2D上に集積される(図35、36、37参照)。それにより、本発明の実施形態5によるフィルタ回路1は極めて小さい。
この場合、第一と第二との入力端子1a、1b、第一から第六までの出力端子2a、2b、3a、3b、4a、4bは好ましくは、チップ2Dと同一平面上に設置される。その他に、それらの端子のいずれか、又は全部が、チップ2Dと垂直に交わる平面上に設置されても良い。
フィルタ回路1は好ましくは、積層された18枚の磁性体シート(以下、層という)S1、S2、…、S12、S13、S14、…、S18を含む(図35参照)。ここで、磁性体シートは好ましくは、セラミック製のシートである。以下、各層を上から順に、第一層S1、第二層S2、…、と呼ぶ。
フィルタ回路1の第一層S1から第十二層S12までは、図15に示されている本発明の実施形態1によるフィルタ回路と全く同様な構造である。従って、その詳細は実施形態1についての説明を援用する。但し、第七層S7から第九層S9までのコイルC7、C8、C9はほぼ(2+1/4)回巻かれた矩形コイルを成し、第十層S10から第十二層S12までのコイルC10、C11、C12はほぼ(2+1/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図36参照)。
第十三層S13から第十八層S18上には、導線(好ましくは金属箔)C13、C14、…、C18が好ましくは、スクリーン印刷により形成されている。その他に、スパッタリングや蒸着で形成されていても良い。
第十三層S13から第十五層S15までの三つの層が第五のインダクタL5に相当する(図35参照)。第十三層S13上の導線C13と第十四層S14上の導線C14が第十二のビアホールV12で接続され、第十四層S14上の導線C14と第十五層S15上の導線C15とが第十三のビアホールV13で接続される。それにより、三つの導線C13、C14、C15は、第十五層S15から第十三層S13へ貫く法線Nの方向から見て反時計回りにほぼ(2+1/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図36参照)。第十三層S13上の導線C13の一端は第十一のビアホールV11を通して第三層S3上の導線C3の一端T2Aに接続されるので、第一の出力端子2aに接続される(図34参照)。第十五層S15上の導線C15の一端T4Aは第五の出力端子4aに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図34参照)。
第十六層S16から第十八層S18までの三つの層が、第六のインダクタL6に相当する(図35参照)。第十六層S16上の導線C16と第十七層S17上の導線C17とが第十五のビアホールV15で接続され、第十七層S17上の導線C17と第十八層S18上の導線C18とが第十六のビアホールV16で接続される。それにより、三つの導線C16、C17、C18は、第十八層S18から第十六層S16へ貫く法線Nの方向から見て時計回りにほぼ(2+1/4)回巻かれた矩形コイルを成す(図36参照)。第十六層S16上の導線C16の一端は第十四のビアホールV14を通して第六層S6上の導線C6の一端T4Bに接続されるので、第二の出力端子2bに接続される(図34参照)。第十八層S18上の導線C18の一端T4Bは第六の出力端子4bに接続されるので、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される(図34参照)。
第一層S1の上には更に、別の磁性体シートS0が重ねられる(図37参照)。積層された磁性体シート全体を加熱することにより、全層の磁性体が一体化する。それにより、第一層S1から第十二層S12までと同様に、第十三層S13から第十五層S15までのコイルC13、C14、C15と、第十六層S16から第十八層S18までのコイルC16、C17、C18とが、一体化された磁性体をコアとして磁気的に結合する。特に、両方のコイルが法線Nを中心に逆方向に巻かれているので、第十三層S13から第十八層S18まで、すなわち第五と第六とのインダクタL5、L6が第二のノーマルモードチョーク4を構成する。
本発明の実施形態5によるフィルタ回路1では実施形態4によるフィルタ回路と同様、第一と第二との入力端子1a、1b、及び第一と第二との出力端子2a、2bの間に、コモンモードチョーク2に対してノーマルモードチョーク3と第二のノーマルモードチョーク4とが対称的に配置される。更に、ノーマルモードチョーク3と第二のノーマルモードチョーク4とのいずれのインピーダンスも、コモンモード信号に対しては十分に低く、差動信号に対しては十分に高い。従って、第一と第二との入力端子1a、1bを通して受信されるコモンモードノイズが確実に、第一と第二との出力端子2a、2bから遮断される。逆に、第一と第二との出力端子2a、2bを通して受信されるコモンモードノイズが確実に、第一と第二との入力端子1a、1bから遮断される。その上、コモンモードチョーク2から第一と第二との出力端子2a、2b、及び第一と第二との入力端子1a、1bへのコモンモードノイズの反射が実質上生じない。それに加え、コモンモードチョーク2にはコモンモード電流が実質上流れないので、コモンモードチョーク2のコアが磁気飽和を生じない。それ故、フィルタ回路1は双方向のコモンモードノイズフィルタとして、信頼性が高い。特に、コモンモードチョーク2のコアの体積が小さくても良いので、コモンモードチョーク2が上記のように積層インダクタ(又は薄膜インダクタ)として形成され得る。
尚、層数や導線の巻数が図35に示されているものとは異なっても良い。更に、コイルが図35、36に示されている矩形状とは異なり、円形状又は他の多角形状であっても良い。但し、第一のインダクタL1に含まれているコイルC1、C2、C3と、第二のインダクタL2に含まれているコイルC4、C5、C6との間では、巻数と形状との正確な一致が好ましい。同様に、第三のインダクタL3に含まれているコイルC7、C8、C9と、第四のインダクタL4に含まれているコイルC10、C11、C12との間、及び、第五のインダクタL5に含まれているコイルC13、C14、C15と、第六のインダクタL6に含まれているコイルC16、C17、C18との間のそれぞれで、巻数と形状との正確な一致が好ましい。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間、及び第一と第二との出力端子2a、2b間ではいずれも平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
その他に、第九層S9上の導線C9の一端T3Aと第十二層S12上の導線C12の一端T3Bとが、図35、36に示されているものとは異なり、第一層S1上の導線C1の一端T1Aと第四層S4上の導線C4の一端T1Bとから等距離の位置に設けられても良い(例えば、図36に一点鎖線で示されている部分T3D、T3E参照)。同様に、第十五層S15上の導線C15の一端T4Aと第十八層S18上の導線C18の一端T4Bとが、第三層S3上の導線C3の一端T2Aと第六層S6上の導線C6の一端T2Bとから等距離の位置に設けられても良い(例えば、図36に一点鎖線で示されている部分T3D、T3E参照)。それにより、第一と第二との入力端子1a、1b間、及び第一と第二との出力端子2a、2b間ではいずれも、平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
コモンモードチョーク2では、図35、37に示されているものとは異なり、第一のインダクタL1を構成する三つの層S1、S2、S3と第二のインダクタL2を構成する三つの層S4、S5、S6とが交互に重ねられても良い(図18、19参照)。それにより、第一のインダクタL1に含まれている導線C1、C2、C3と第二のインダクタに含まれている導線C4、C5、C6との間で、例えば線間距離、及びそれに依存する寄生容量が均一化される(図19参照)。その結果、フィルタ回路1に含まれる差動信号の経路では平衡度が更に向上する。従って、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
コモンモードチョーク2と同様に、ノーマルモードチョーク3では、第三のインダクタL3を構成する三つの層S7、S8、S9と第四のインダクタL4を構成する三つの層S10、S11、S12とが交互に重ねられても良い(図示せず)。更に、第二のノーマルモードチョーク4では、第五のインダクタL5を構成する三つの層S13、S14、S15と第六のインダクタL6を構成する三つの層S16、S17、S18とが交互に重ねられても良い(図示せず)。
コモンモードチョーク2を構成する六つの層S1〜S6、ノーマルモードチョーク3を構成する六つの層S7〜S12、及び、第二のノーマルモードチョーク4を構成する六つの層S13〜S18の間では、積層の順序が自由に設定されても良い。
コモンモードチョーク2、ノーマルモードチョーク3、及び第二のノーマルモードチョーク4のいずれか二つの間、例えば、第六層S6と第七層S7との間、又は、第十二層S12と第十三層S13との間には磁気分離層Ssが挿入されても良い(図20参照)。磁気分離層Ssは実施形態1によるものと同様であり、特に磁界を遮断する。それにより、コモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4とが互いに磁気的に分離される。その結果、コモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4とが互いに干渉しないので、それぞれの信頼性が更に向上する。コモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4との間の磁気的干渉を抑える目的では、上記の他に、三つのチョーク2、3、4が磁性体シート上の異なる領域に形成されても良い(図21、22、23参照)。
図34に示されているフィルタ回路1の等価回路では、第三と第四との出力端子3a、3b、及び第五と第六との出力端子4a、4bがそれぞれ、別々の端子に分かれている。その他に、第一の共通出力端子3cが第三と第四との出力端子3a、3bとして兼用され、第二の共通出力端子4cが第五と第六との出力端子4a、4bとして兼用されても良い(図38参照)。それによりフィルタ回路1の端子数が削減されるので、周辺の回路設計の柔軟性が更に向上する。
例えば、図35、36、37に示されているフィルタ回路1とは異なり、第九層S9上の導線C9Aが第十七のビアホールV17で第十二層S12上の導線C12Aと接続される(図39参照)。第十二層S12上の導線C12Aの一端T3Cが第一の共通出力端子3cに接続され、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される。ここで、第十二層S12上の導線C12Aの一端T3Cは第一層S1上の導線C1の一端T1Aと第四層S4上の導線C4の一端T1Bとから等距離の位置に設けられる(図40参照)。同様に、第十五層S15上の導線C15Aが第十八のビアホールV18で第十八層S18上の導線C18Aと接続される(図39参照)。第十八層S18上の導線C18Aの一端T4Cが第二の共通出力端子4cに接続され、一定電位(好ましくは接地電位)に維持される。ここで、第十八層S18上の導線C18Aの一端T4Cは第三層S3上の導線C3の一端T2Aと第六層S6上の導線C6の一端T2Bとから等距離の位置に設けられる(図40参照)。第一と第二との入力端子1a、1b間、及び第一と第二との出力端子2a、2b間ではいずれも平衡度が高く維持されるので、フィルタ回路1を透過する差動信号に歪みが生じない。
《実施形態6》
本発明の実施形態6による差動伝送システムは好ましくは、実施形態4によるシステムと同様に、車載LANに搭載される。フィルタ回路1が終端素子を含む点で、本発明の実施形態6は実施形態4、5とは異なる。本発明の実施形態6による構成要素のうち、実施形態4、5による構成要素と同様な構成要素については、実施形態4、5による構成要素についての説明と図面とを援用する。
本発明の実施形態6によるフィルタ回路1は実施形態3によるフィルタ回路と同様に、二つのノーマルモードチョーク3、4のいずれか一方、又は両方に終端素子Z1、Z2、Z3、Z4が接続される(図41、42、43、44参照)。終端素子Z1、Z2、Z3、Z4はいずれも、実施形態3による終端素子Z1、Z2と同様なインピーダンス素子である。従って、その詳細は実施形態3での説明を援用する。
二つのノーマルモードチョーク3、4がコモンモードチョーク2から独立した素子である場合、好ましくは、第一の終端素子Z1が第三のインダクタL3と第三の出力端子3aとの間に接続され、第二の終端素子Z2が第四のインダクタL4と第四の出力端子3bとの間に接続され、第三の終端素子Z3が第五のインダクタL5と第五の出力端子4aとの間に接続され、第四の終端素子Z4が第六のインダクタL6と第六の出力端子4bとの間に接続される(図41参照)。その他に、第一の終端素子Z1が第一の入力端子1aと第三のインダクタL3との間に接続され、第二の終端素子Z2が第二の入力端子1bと第四のインダクタL4との間に接続され、第三の終端素子Z3が第五のインダクタL5と第五の出力端子4aとの間に接続され、第四の終端素子Z4が第六のインダクタL6と第六の出力端子4bとの間に接続されても良い(図41に示されている破線部参照)。但し、第一と第二との終端素子Z1、Z2の組、又は第三と第四との終端素子Z3、Z4の組のいずれか一方が省略されても良い。三つのコモンモードチョークを含むコモンモードチョークアレイ2Cがコモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4との組み合わせとして利用される場合も同様である(図42参照)。
本発明の実施形態5のように、コモンモードチョーク2と二つのノーマルモードチョーク3、4とが積層インダクタ(又は薄膜インダクタ)である場合、第一の終端素子Z1が第三のインダクタL3の一端T3Aと第三の出力端子3aとの間に接続され、第二の終端素子Z2が第四のインダクタL4の一端T3Bと第四の出力端子3bとの間に接続され、第三の終端素子Z3が第五のインダクタL5の一端T4Aと第五の出力端子4aとの間に接続され、第四の終端素子Z4が第六のインダクタL6の一端T4Bと第六の出力端子4bとの間に接続される(図35、43参照)。更に、第一の共通出力端子3cが第三と第四との出力端子3a、3bとして兼用され、第二の共通出力端子4cが第五と第六との出力端子4a、4bとして兼用される場合、第一と第二との終端素子Z1、Z2が第一の共通終端素子Zに統合され、第三と第四とのインダクタL3、L4の共通端T3Cと第一の共通出力端子3cとの間に接続される。更に、第三と第四との終端素子Z3、Z4が第二の共通終端素子Zaに統合され、第五と第六とのインダクタL5、L6の共通端T4Cと第二の共通出力端子4cとの間に接続される(図39、44参照)。
第一と第二との入力端子1a、1b、又は第一と第二との出力端子2a、2bを通して受信されるコモンモード信号に対し、コモンモードチョーク2のインピーダンスは極めて高く、二つのノーマルモードチョーク3、4のインピーダンスはいずれも極めて低い。従って、図2、3に示されている差動受信装置10(及び、差動送受信装置30)では、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンス(図44では、第一の共通終端素子Zのインピーダンス)が、ケーブル40のコモンモードインピーダンスと整合するように調整される。更に、第三と第四との終端素子Z3、Z4の各インピーダンス(図44では、第二の共通終端素子Zaのインピーダンス)が、差動レシーバ11(31)の入力インピーダンスと差動配線12(33)のコモンモードインピーダンスとそれぞれ、整合するように調整される。こうして、コモンモード信号に対し、ケーブル40とフィルタ回路1との間、及びフィルタ回路1と差動配線12(33)との間でそれぞれ、インピーダンス整合が高精度に実現する。それ故、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が更に低減する。その結果、ケーブル40と差動配線12(33)とから周辺への不要電磁輻射が更に低減し、かつ差動レシーバ11(31)が、反射されたコモンモードノイズから更に確実に保護される。
図2、3に示されている差動送信装置20でも同様に、第一と第二との終端素子Z1、Z2の各インピーダンス(図44では、第一の共通終端素子Zのインピーダンス)が、差動ドライバ21の出力インピーダンスと差動配線22のコモンモードインピーダンスとそれぞれ、整合するように調整される。更に、第三と第四との終端素子Z3、Z4の各インピーダンス(図44では、第二の共通終端素子Zaのインピーダンス)が、ケーブル40のコモンモードインピーダンスと整合するように調整される。こうして、コモンモード信号に対し、差動配線22とフィルタ回路1との間、及びフィルタ回路1とケーブル40との間でそれぞれ、インピーダンス整合が高精度に実現する。それ故、コモンモードチョーク2によるコモンモードノイズの反射が更に低減する。その結果、ケーブル40と差動配線22とから周辺への不要電磁輻射が更に低減する。更に、差動ドライバ32を含むLSIやその前段の回路へのコモンモードノイズの侵入が防止されるので、反射されたコモンモードノイズによる電源電位や接地電位の変動が確実に抑制される。
《実施形態7》
本発明の実施形態7による差動伝送システムは好ましくは、携帯電話等の携帯情報機器に搭載される(図45参照)。携帯情報機器には、例えば画像処理用LSIM1やRF回路M2等、様々なモジュールが搭載される。それらのモジュールがケーブル41を通してCPUM3に接続され、統合的に制御される。
携帯情報機器、特に携帯電話はRF回路M2を利用して外部と通信を行う。その際、RF回路M2やアンテナATから電磁波が放射される。それらの電磁波がケーブル41にノイズを発生させる。そのノイズに加え、画像処理用LSIM1やCPUM3からケーブル41に直接送出されたノイズがケーブル41の周囲に電磁波として放射され、他のケーブル41やアンテナATにノイズを与える。画像処理用LSIM1やCPUM3が、特にカメラモジュールCAにより生成される画像データ等、大量のデータを処理する場合、その処理速度が通信の周波数と近いので、RF回路M2やアンテナATに対してノイズを与えやすい。このように、携帯情報機器内では不要電磁輻射とそれに起因するノイズとが共に高い。それらのノイズによる各回路M1、M2、M3等に対する悪影響、すなわちEMIを抑える目的で、携帯情報機器内でのケーブル41を用いた通信は一般に、差動伝送方式で行われる。
図2、3に示されているECU等と同様に、画像処理用LSIM1は差動送信装置20を通信ポートとして含み、CPUM3は差動受信装置10を通信ポートとして含む(図46参照)。その他に、図2、3に示されているような差動送受信装置30が、各通信ポートとして含まれても良い。これらの通信ポートはケーブル41で互いに接続され、差動伝送システムを構成する。ケーブル41は二本の差動伝送路を含む。各差動伝送路を伝搬する信号(差動信号)間では位相が互いに逆である。ケーブル41には好ましくは、シールド付ツイストペアケーブルが使用される。その他に、シールドなしのツイストペアケーブル、フラットケーブル、又はフレキケーブルが使用されても良い。特に折り畳み可能な携帯電話では、ケーブル41が蝶番部Hを超えて回路間を接続しても良い(図45参照)。
差動受信装置10と差動送信装置20とはいずれも、実施形態1によるものと同様な構成要素を有する(図2、3、46参照)。特に、本発明によるフィルタ回路1を含む。ここで、フィルタ回路1は上記の実施形態1〜6のいずれによるものと同様であっても良い。いずれのフィルタ回路1も、ケーブル41を伝搬する差動信号からコモンモードノイズを実質上完全に除去すると共に、差動信号のノーマルモード成分を実質上完全に透過させる。その一方で、コモンモードノイズを反射することなく、実質上完全に吸収する。その結果、ケーブル41や差動配線12、22から周辺への不要電磁輻射が低減し、差動レシーバ11や差動ドライバ21が、反射されたコモンモードノイズから確実に保護される。フィルタ回路1では更に、コモンモード電流がコモンモードチョークのコアには流れないので、コモンモードチョークのコアが磁気飽和を生じない。従って、フィルタ回路1は信頼性が高い。その上、コモンモードチョークのコアの体積が小さくても良い。それ故、フィルタ回路1は小型化が容易であるので、携帯情報機器での利用に有利である。
差動受信装置10と差動送信装置20とでは更に好ましくは、実施形態1によるものと同様に、差動配線12、22に終端素子が接続される(図4、5参照)。差動信号に対してはフィルタ回路1のインピーダンスが十分に低いので、差動配線12、22の差動インピーダンスと終端素子のインピーダンスとがそれぞれ、ケーブル41の差動インピーダンスと整合するように調整される。その結果、差動信号には実質的な歪みや減衰が生じない。その上、差動配線12、22のレイアウトがインピーダンス整合からは大きな制約を受けないので、差動受信装置10と差動送信装置20とはいずれも、回路設計の柔軟性が高い。
本発明による差動伝送システムを搭載可能なシステムは、実施形態1〜6のような車載LANや、実施形態7のような携帯情報機器には限られない。例えば、USB、IEEE1394、LVDS、DVI、HDMI、シリアルATA、PCIエクスプレス等のシリアルインタフェースを利用する電子機器全般で、本発明による差動伝送システムは利用可能である。そのことは、上記の実施形態から当業者には自明であろう。
《実施形態8》
本発明の実施形態8による電源装置は、好ましくは、電子機器に搭載される(図47参照)。ここで、電子機器DVは、好ましくは、パソコン、携帯電話、FAX等の情報処理機器である。その他に、その電源装置が、差動伝送方式で他の回路に電力を供給する給電装置であっても良い。
電源装置50はプラグPLと電源線42とを通し、商用交流電源等、外部の交流電源ACに接続される。電源線42は二本の差動伝送路を含む。それらの差動伝送路間では電圧/電流の位相が互いに逆である。尚、電源装置がプラグPL自体に内蔵されても良い。
電源装置50は本発明によるフィルタ回路1とスイッチング電源51とを有する。フィルタ回路1は電源線42に接続され、電源線42上からコモンモードノイズを実質上完全に除去する。それと共に、外部の交流電源ACから供給される電力(差動信号)を実質上完全に透過させる。スイッチング電源51は電力変換部であり、好ましくは、フィルタ回路1を通して外部の交流電源ACから交流電圧を受け、その交流電圧を所定の直流電圧Vdd、Vssに変換する。その他に、交流電源ACから供給される電力の力率を改善しても良い。更に、差動伝送方式で他の回路に電力を供給しても良い。電源装置50を電力線通信(PLC)に利用する場合、スイッチング電源51に代え、PLCモデムがフィルタ回路1に接続されても良い。
フィルタ回路1は上記の実施形態1〜6のいずれによるものであっても良い。それにより、コモンモードノイズがフィルタ回路1により反射されることなく、実質上完全に吸収される。その結果、電源線42や内部の配線から周辺への不要電磁輻射が低減し、スイッチング電源51や電子機器DV内部の回路が、反射されたコモンモードノイズから確実に保護される。PLCを行う場合は、その通信品質が向上する。フィルタ回路1では更に、コモンモード電流がコモンモードチョークのコアには流れないので、コモンモードチョークのコアが磁気飽和を生じない。従って、フィルタ回路1は信頼性が高い。その上、コモンモードチョークのコアの体積が小さくても良い。それ故、フィルタ回路1は小型化が容易であるので、電源装置DVの小型化に有利である。
本発明は差動伝送システムや電源装置に搭載されるフィルタ回路に関し、上記の通り、コモンモードチョークとノーマルモードチョークとの組み合わせを利用してコモンモードノイズを差動信号から除去する。このように、本発明は明らかに産業上利用可能である。
本発明の実施形態による車載LANを示すブロック図 図1に示されている車載LANの接続形態を示すブロック図 図1に示されている車載LANの別の接続形態を示すブロック図 図2、3に示されている差動受信装置の変形例を示すブロック図 図2、3に示されている差動受信装置の別の変形例を示すブロック図 図2、3に示されている差動送信装置の変形例を示すブロック図 本発明の実施形態1によるフィルタ回路の等価回路を示す図 コモンモードチョークとノーマルモードチョークとを一つのパッケージとして含む、本発明の実施形態1によるフィルタ回路の等価回路を示す図 本発明の実施形態1によるフィルタ回路の別の等価回路を示す図 図9に示されているノーマルモードチョークのコアを示す図 図9に示されているノーマルモードチョークの別のコアを示す図 図9に示されているノーマルモードチョークの更に別のコアを示す図 本発明の実施形態1によるフィルタ回路の更に別の等価回路を示す図 本発明の実施形態2によるフィルタ回路の等価回路を示す図 図14に示されているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図15に示されているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとの平面図 図16に示されている直線XVII−XVIIに沿った断面を示す図 本発明の実施形態2によるフィルタ回路に含まれている、別のコモンモードチョークとノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図18に示されている直線XIX−XIXに沿った断面を示す図 本発明の実施形態2によるフィルタ回路に含まれているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとの間に挟まれている磁気分離層を示す分解斜視図 本発明の実施形態2によるフィルタ回路に含まれている、更に別のコモンモードチョークとノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図21に示されているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとの平面図 図22に示されている直線XXIII−XXIIIに沿った断面を示す図 本発明の実施形態2によるフィルタ回路の別の等価回路を示す図 図24に示されているフィルタ回路に含まれているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図25に示されているコモンモードチョークとノーマルモードチョークとの平面図 本発明の実施形態3によるフィルタ回路の等価回路を示す図 本発明の実施形態3によるフィルタ回路の別の等価回路を示す図 コモンモードチョークとノーマルモードチョークとを一つのパッケージとして含む、本発明の実施形態3によるフィルタ回路の等価回路を示す図 コモンモードチョークとノーマルモードチョークとを積層(又は薄膜)インダクタとして含む、本発明の実施形態3によるフィルタ回路の等価回路を示す図 第三と第四との出力端子が共通の出力端子に統合されている、本発明の実施形態3によるフィルタ回路の等価回路を示す図 本発明の実施形態4によるフィルタ回路の等価回路を示す図 コモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとを一つのパッケージとして含む、本発明の実施形態4によるフィルタ回路の等価回路を示す図 本発明の実施形態5によるフィルタ回路の等価回路を示す図 図34に示されているフィルタ回路に含まれているコモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図35に示されているコモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとの平面図 図36に示されている直線37−37に沿った断面を示す図 本発明の実施形態5によるフィルタ回路の別の等価回路を示す図 図38に示されているフィルタ回路に含まれているコモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとを示す分解斜視図 図39に示されているコモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとの平面図 本発明の実施形態6によるフィルタ回路の等価回路を示す図 コモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとを一つのパッケージとして含む、本発明の実施形態6によるフィルタ回路の等価回路を示す図 コモンモードチョークと二つのノーマルモードチョークとを積層(又は薄膜)インダクタとして含む、本発明の実施形態6によるフィルタ回路の等価回路を示す図 第三と第四との出力端子、及び第五と第六との出力端子がそれぞれ、共通の出力端子に統合されている、本発明の実施形態6によるフィルタ回路の等価回路を示す図 本発明の実施形態7による携帯情報機器を示すブロック図 図45に示されている携帯情報機器に搭載されている、本発明の実施形態7による差動伝送システムを示すブロック図 本発明の実施形態8による電源装置を示すブロック図 従来のフィルタ回路を示す等価回路図 従来の別のフィルタ回路を示す等価回路図
符号の説明
1 フィルタ回路
1a 第一の入力端子
1b 第二の入力端子
2 コモンモードチョーク
L1 第一のインダクタ
L2 第二のインダクタ
2a 第一の出力端子
2b 第二の出力端子
3 ノーマルモードチョーク
L3 第三のインダクタ
L4 第四のインダクタ
3a 第三の出力端子
3b 第四の出力端子

Claims (22)

  1. 第一と第二との入力端子;
    第一、第二、第三、及び第四の出力端子;
    前記第一の入力端子と前記第一の出力端子との間に接続された、第一のインダクタ、及び、
    前記第一のインダクタと磁気的に結合し、前記第二の入力端子と前記第二の出力端子との間に前記第一のインダクタと同じ極性で接続された、第二のインダクタ、
    を含む、コモンモードチョーク;
    並びに、
    前記第一の入力端子と前記第三の出力端子との間に接続された、第三のインダクタ、及び、
    前記第三のインダクタと磁気的に結合し、前記第二の入力端子と前記第四の出力端子との間に前記第三のインダクタとは逆の極性で接続された、第四のインダクタ、
    を含む、ノーマルモードチョーク;
    を有するフィルタ回路。
  2. 前記コモンモードチョークと前記ノーマルモードチョークとが同じパッケージに封入された、請求項1に記載のフィルタ回路。
  3. 前記ノーマルモードチョークがコアを含み;
    前記第三と第四とのインダクタが、コモンモード電流により生じる磁束が相殺されるような向きで互いに重ねられて又は分離されて前記コアに巻かれている二本のコイル、である;
    請求項1に記載のフィルタ回路。
  4. 前記第一から第四までのインダクタがそれぞれ、表面に所定のパターンの導線を含む磁性体シート、を重ねて形成された積層インダクタ又は薄膜インダクタであり、更に、
    前記第一と第二とのインダクタが互いに重なって形成され、
    前記第三と第四とのインダクタが互いに重なって形成された、
    請求項1に記載のフィルタ回路。
  5. 前記コモンモードチョークと前記ノーマルモードチョークとが互いに重なって形成されたフィルタ回路であり、
    前記コモンモードチョークと前記ノーマルモードチョークとの間に挟まれた磁気分離層、
    を更に有する、請求項4に記載のフィルタ回路。
  6. 定電位に維持される導体を前記磁気分離層が含む、請求項5に記載のフィルタ回路。
  7. 前記第三のインダクタと前記第三の出力端子との間、若しくは前記第一の入力端子と前記第三のインダクタとの間のいずれか、又は両方に接続された第一のインピーダンス素子、及び、
    前記第四のインダクタと前記第四の出力端子との間、若しくは前記第二の入力端子と前記第四のインダクタとの間のいずれか、又は両方に接続された第二のインピーダンス素子、
    を更に有する、請求項1に記載のフィルタ回路。
  8. 第五と第六との出力端子;並びに、
    前記第一の出力端子と前記第五の出力端子との間に接続された、第五のインダクタ、及び、
    前記第五のインダクタと磁気的に結合し、前記第二の出力端子と前記第六の出力端子との間に前記第五のインダクタとは逆の極性で接続された、第六のインダクタ、
    を含む、第二のノーマルモードチョーク;
    を更に有する、請求項1に記載のフィルタ回路。
  9. 前記コモンモードチョーク、前記ノーマルモードチョーク、及び前記第二のノーマルモードチョークが同じパッケージに封入された、請求項8に記載のフィルタ回路。
  10. 前記第二のノーマルモードチョークがコアを含み;
    前記第五と第六とのインダクタが、コモンモード電流により生じる磁束が相殺されるような向きで互いに重ねられて又は分離されて前記コアに巻かれている二本のコイル、である;
    請求項8に記載のフィルタ回路。
  11. 前記第一から第六までのインダクタがそれぞれ、表面に所定のパターンの導線を含む磁性体シート、を重ねて形成された積層インダクタ又は薄膜インダクタであり、更に、
    前記第一と第二とのインダクタが互いに重なって形成され、
    前記第三と第四とのインダクタが互いに重なって形成され、
    前記第五と第六とのインダクタが互いに重なって形成された、
    請求項8に記載のフィルタ回路。
  12. 前記コモンモードチョーク、前記ノーマルモードチョーク、及び前記第二のノーマルモードチョークのうち、少なくともいずれか二つが互いに重なって形成されたフィルタ回路であり、
    それら互いに重なって形成された二つのフィルタ間に挟まれた磁気分離層、
    を更に有する、請求項11に記載のフィルタ回路。
  13. 定電位に維持される導体を前記磁気分離層が含む、請求項12に記載のフィルタ回路。
  14. 前記第五のインダクタと前記第五の出力端子との間、若しくは前記第一の出力端子と前記第五のインダクタとの間のいずれか、又は両方に接続された第三のインピーダンス素子、及び、
    前記第六のインダクタと前記第六の出力端子との間、若しくは前記第二の出力端子と前記第六のインダクタとの間のいずれか、又は両方に接続された第四のインピーダンス素子、
    を更に有する、請求項8に記載のフィルタ回路。
  15. 外部の差動伝送路に接続される、第一と第二との入力端子;
    第一と第二との出力端子;
    一定の電位に維持される、第三と第四との出力端子;
    前記第一の入力端子と前記第一の出力端子との間に接続された、第一のインダクタ、及び、
    前記第一のインダクタと磁気的に結合し、前記第二の入力端子と前記第二の出力端子との間に前記第一のインダクタと同じ極性で接続された、第二のインダクタ、
    を含む、コモンモードチョーク;
    及び、
    前記第一の入力端子と前記第三の出力端子との間に接続された、第三のインダクタ、及び、
    前記第三のインダクタと磁気的に結合し、前記第二の入力端子と前記第四の出力端子との間に前記第三のインダクタとは逆の極性で接続された、第四のインダクタ、
    を含む、ノーマルモードチョーク;
    を有するフィルタ回路;
    並びに、
    前記フィルタ回路の前記第一と第二との出力端子に接続された入力端子対、を有する差動レシーバ;
    を具備する差動受信装置。
  16. 前記差動レシーバの前記入力端子対と外部の定電位端子との間に接続される終端素子、を更に具備する、請求項15に記載の差動受信装置。
  17. 前記差動レシーバの前記入力端子対を互いに接続する終端素子、を更に具備する、請求項15に記載の差動受信装置。
  18. 第一と第二との入力端子;
    外部の差動伝送路に接続される、第一と第二との出力端子;
    一定の電位に維持される、第三と第四との出力端子;
    前記第一の入力端子と前記第一の出力端子との間に接続された、第一のインダクタ、及び、
    前記第一のインダクタと磁気的に結合し、前記第二の入力端子と前記第二の出力端子との間に前記第一のインダクタと同じ極性で接続された、第二のインダクタ、
    を含む、コモンモードチョーク;
    及び、
    前記第一の入力端子と前記第三の出力端子との間に接続された、第三のインダクタ、及び、
    前記第三のインダクタと磁気的に結合し、前記第二の入力端子と前記第四の出力端子との間に前記第三のインダクタとは逆の極性で接続された、第四のインダクタ、
    を含む、ノーマルモードチョーク;
    を有するフィルタ回路;
    並びに、
    前記フィルタ回路の前記第一と第二との入力端子に接続された出力端子対、を有する差動ドライバ;
    を具備する差動送信装置。
  19. 第一と第二との入出力端子;
    外部の差動伝送路に接続される、第三と第四との入出力端子;
    一定の電位に維持される、第一、第二、第三、及び第四の出力端子;
    前記第一と第三との入出力端子間に接続された、第一のインダクタ、及び、
    前記第一のインダクタと磁気的に結合し、前記第二と第四との入出力端子間に前記第一のインダクタと同じ極性で接続された、第二のインダクタ、
    を含む、コモンモードチョーク;
    前記第一の入出力端子と前記第一の出力端子との間に接続された、第三のインダクタ、及び、
    前記第三のインダクタと磁気的に結合し、前記第二と第四との入出力端子間に前記第三のインダクタとは逆の極性で接続された、第四のインダクタ、
    を含む、第一のノーマルモードチョーク;
    及び、
    前記第三の入出力端子と前記第三の出力端子との間に接続された、第五のインダクタ、及び、
    前記第五のインダクタと磁気的に結合し、前記第四の入出力端子と前記第四の出力端子との間に前記第五のインダクタとは逆の極性で接続された、第六のインダクタ、
    を含む、第二のノーマルモードチョーク;
    を有するフィルタ回路;
    前記フィルタ回路の前記第一と第二との入出力端子に接続された入力端子対、を有する差動レシーバ;
    並びに、
    前記フィルタ回路の前記第一と第二との入出力端子に接続された出力端子対、を有する差動ドライバ;
    を具備する差動送受信装置。
  20. 第一と第二との入力端子、
    第一と第二との出力端子、
    一定の電位に維持される、第三と第四との出力端子、
    前記第一の入力端子と前記第一の出力端子との間に接続された、第一のインダクタ、及び、
    前記第一のインダクタと磁気的に結合し、前記第二の入力端子と前記第二の出力端子との間に前記第一のインダクタと同じ極性で接続された、第二のインダクタ、
    を含む、第一のコモンモードチョーク、
    及び、
    前記第一の入力端子と前記第三の出力端子との間に接続された、第三のインダクタ、及び、
    前記第三のインダクタと磁気的に結合し、前記第二の入力端子と前記第四の出力端子との間に前記第三のインダクタとは逆の極性で接続された、第四のインダクタ、
    を含む、第一のノーマルモードチョーク、
    を有する第一のフィルタ回路、
    及び、
    前記第一のフィルタ回路の前記第一と第二との入力端子に接続された出力端子対、を有する差動ドライバ、
    を具備する差動送信装置;
    第三と第四との入力端子、
    第五と第六との出力端子、
    一定の電位に維持される、第七と第八との出力端子、
    前記第三の入力端子と前記第五の出力端子との間に接続された、第五のインダクタ、及び、
    前記第五のインダクタと磁気的に結合し、前記第四の入力端子と前記第六の出力端子との間に前記第五のインダクタと同じ極性で接続された、第六のインダクタ、
    を含む、第二のコモンモードチョーク、
    及び、
    前記第三の入力端子と前記第七の出力端子との間に接続された、第七のインダクタ、及び、
    前記第七のインダクタと磁気的に結合し、前記第四の入力端子と前記第八の出力端子との間に前記第七のインダクタとは逆の極性で接続された、第八のインダクタ、
    を含む、第二のノーマルモードチョーク、
    を有する第二のフィルタ回路、
    及び、
    前記第二のフィルタ回路の前記第三と第四との出力端子に接続された入力端子対、を有する差動レシーバ、
    を具備する差動受信装置;
    並びに、
    前記第一と第二との出力端子を前記第三と第四との入力端子に接続する差動伝送路;
    を具備する差動伝送システム。
  21. 第一と第二との入出力端子;
    第三と第四との入出力端子;
    一定の電位に維持される、第一、第二、第三、及び第四の出力端子;
    前記第一と第三との入出力端子間に接続された、第一のインダクタ、及び、
    前記第一のインダクタと磁気的に結合し、前記第二と第四との入出力端子間に前記第一のインダクタと同じ極性で接続された、第二のインダクタ、
    を含む、第一のコモンモードチョーク;
    前記第一の入出力端子と前記第一の出力端子との間に接続された、第三のインダクタ、及び、
    前記第三のインダクタと磁気的に結合し、前記第二と第四との入出力端子間に前記第三のインダクタとは逆の極性で接続された、第四のインダクタ、
    を含む、第一のノーマルモードチョーク;
    及び、
    前記第三の入出力端子と前記第三の出力端子との間に接続された、第五のインダクタ、及び、
    前記第五のインダクタと磁気的に結合し、前記第四の入出力端子と前記第四の出力端子との間に前記第五のインダクタとは逆の極性で接続された、第六のインダクタ、
    を含む、第二のノーマルモードチョーク;
    を有するフィルタ回路;
    前記フィルタ回路の前記第一と第二との入出力端子に接続された入力端子対、を有する差動レシーバ;
    及び、
    前記フィルタ回路の前記第一と第二との入出力端子に接続された出力端子対、を有する差動ドライバ;
    をそれぞれ具備する、二つの差動送受信装置;
    並びに、
    前記二つの差動送受信装置間で、前記第三の入出力端子同士を接続し、前記第四の入出力端子同士を接続する差動伝送路;
    を具備する差動伝送システム。
  22. 外部の電源線に接続される、第一と第二との入力端子;
    第一と第二との出力端子;
    一定の電位に維持される、第三と第四との出力端子;
    前記第一の入力端子と前記第一の出力端子との間に接続された、第一のインダクタ、及び、
    前記第一のインダクタと磁気的に結合し、前記第二の入力端子と前記第二の出力端子との間に前記第一のインダクタと同じ極性で接続された、第二のインダクタ、
    を含む、コモンモードチョーク;
    及び、
    前記第一の入力端子と前記第三の出力端子との間に接続された、第三のインダクタ、及び、
    前記第三のインダクタと磁気的に結合し、前記第二の入力端子と前記第四の出力端子との間に前記第三のインダクタとは逆の極性で接続された、第四のインダクタ、
    を含む、ノーマルモードチョーク;
    を有するフィルタ回路;
    並びに、
    前記フィルタ回路の前記第一と第二との出力端子に接続された入力端子対、を有する電力変換部;
    を具備する電源装置。
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