JPWO2005089800A1 - hsHRD3を含む医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、滑膜組織又は滑膜細胞の増殖やインターロイキン−6の産生を抑制する物質を含む医薬組成物の提供であり、リウマチ、線維症、関節炎、癌及び脳神経疾患から選ばれる少なくとも1つの疾患を診断又は治療するために有用な、滑膜組織又は滑膜細胞の増殖やインターロイキン−6の産生を抑制する医薬組成物、並びに滑膜細胞のhsHRD3の発現を抑制することを特徴とする、滑膜細胞の増殖やインターロイキン−6の産生を抑制する方法である。

Description

本発明は、シノビオリンと複合体を形成するヒトHrd3オルソログ(hsHRD3)を含む医薬組成物、特にリウマチを診断又は治療するための医薬組成物に関する。
関節リウマチ(以下、RAという)は、関節の滑膜組織に異常な増殖が見られる全身性の炎症性疾患である。本発明者は、この滑膜組織の異常増殖に必須の遺伝子としてシノビオリン遺伝子を同定している(WO 02/052007)。
シノビオリンは、RA患者由来の滑膜細胞に存在する膜タンパク質であり、RING fingerモチーフを有するE3ユビキチンライゲースをコードするものである。このモチーフは、タンパク質のユビキチン化に重要な役割を果たすが、実際、自己ユビキチン化活性を有すること、P4HA1というコラーゲン合成に必須のタンパク質のユビキチン化を起こすことが証明されている(WO 02/052007)。また、最近では、シノビオリンが線維症、癌又は脳神経疾患の発症にも関与することが見出されている(Genes Dev.2003 Vol.17,p.2436−49)。
シノビオリンは酵母からヒトまで高度に保存されており、出芽酵母において詳細な解析が行われている。シノビオリンの出芽酵母オルソログであり、コレステロール還元酵素の分解に関わる遺伝子であるHrd1p(HMG−CoA Reductase Degradation 1)は、出芽酵母Hrd3p(HMG−CoA Reductase Degradation 3)と機能的複合体を形成し、小胞体における異常タンパク質の分解にかかわることが見出されている(J.C.B.2000.Vol.151,p.69−82)。しかしながら、Hrd3pに関する機能は明らかではない。
インターロイキン−6はインターロイキン−1、TNF−αとともに炎症性サイトカインとよばれ、種々の炎症反応を引き起こすサイトカインである。通常免疫系の細胞により産生されるが、リウマチ滑膜細胞、白血病、骨髄腫など様々な増殖性疾患を引き起こす細胞からも産生され、それらの増殖に必須である。インターロイキン−6が関与する病気として、リウマチ、多発骨髄腫、キャッスルマン病、クローン病、全身型若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、骨粗しょう症などがある。インターロイキン−6は細胞表面に発現するインターロイキン−6レセプターに結合する場合もあれば、細胞表面から遊離したレセプターと結合し、レセプターを発現していない細胞に結合することにより、炎症反応を誘導する場合もある。インターロイキン−6の炎症作用として、B細胞の抗体産生細胞への分化、肝臓におけるC−反応性タンパク質産生量の増加、骨髄における血小板の誘導、免疫系細胞の炎症部位への誘導、白血球のアポトーシスへの抵抗性の寄与、VEGFの誘導を介した血管の誘導などが挙げられる。最近、インターロイキン−6とレセプターとの結合を阻害する抗インターロイキン−6レセプター抗体が作られるようになり、リウマチ、骨髄腫、クローン病などに効果を発揮している。
本発明は、滑膜細胞の異常増殖やインターロイキン−6の産生を抑制する物質を含む医薬組成物、及びhsHRD3を抑制することを特徴とする滑膜細胞の増殖を抑制する方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。出芽酵母のhrd3破壊株において、Hrd1pタンパク質が不安定かつ減少しており、基質が生理学的に安定化かつ増加していることが報告されていることから、ヒトHrd3pオルソログも、シノビオリンと同様に滑膜組織の異常増殖やインターロイキン−6の産生に必須であることがわかった。そして、hsHRD3を用いて、新たな炎症反応の抑制、リウマチ、線維症、関節症、癌及び脳神経疾患等の診断法及び治療法の開発に有効であると考え、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)滑膜細胞の増殖を抑制する物質を含む医薬組成物。
滑膜細胞の増殖を抑制する物質としては、例えばシノビオリンの発現阻害物質が挙げられる。シノビオリンの発現阻害物質は、hsHRD3をコードする遺伝子の発現を抑制する物質、好ましくは、hsHRD3をコードする遺伝子に対するsiRNA(small interfering RNA)又はshRNA(short hairpin RNA)を例示することができる。
具体的にはhsHRD3をコードする遺伝子は、以下の(a)又は(b)のDNAを含むものである。すなわち、
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつhsHRD3活性を有するタンパク質をコードするDNAである。
さらに、siRNAは、配列番号1に示す塩基配列のうち一部の配列を標的とするものであってもよい。
本発明の医薬組成物は、リウマチ、線維症、関節炎、癌及び脳神経疾患から選ばれる少なくとも1つの疾患を診断又は治療するために使用される。
(2)滑膜細胞のhsHRD3の発現を抑制することを特徴とする、滑膜細胞の増殖を抑制する方法。
(3)滑膜細胞のhsHRD3の発現を抑制することを特徴とする、滑膜細胞、がん細胞、白血病又は悪性腫瘍におけるアポトーシスを誘起させる方法。
(4)滑膜細胞のhsHRD3の発現を抑制することを特徴とする、滑膜細胞、肺の線維化又は肝硬変におけるコラーゲンの産生を抑制する方法。
(5)滑膜細胞のhsHRD3の発現を抑制することを特徴とする、滑膜細胞、がん細胞、白血病細胞、骨肉種細胞、悪性腫瘍細胞、免疫系細胞、破骨細胞からなる群から選ばれる少なくとも一種の細胞からインターロイキン−6の産生を抑制する方法。
(6)インターロイキン−6の産生を抑制する物質を含む医薬組成物。
インターロイキン−6の産生を抑制する物質としては、例えばシノビオリンの発現阻害物質が挙げられる。シノビオリンの発現阻害物質は、hsHRD3をコードする遺伝子の発現を抑制する物質、好ましくは、hsHRD3をコードする遺伝子に対するsiRNA又はshRNAを例示することができる。
具体的にはhsHRD3をコードする遺伝子は、以下の(a)又は(b)のDNAを含むものである。すなわち、
(a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号1に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつhsHRD3活性を有するタンパク質をコードするDNAである。
さらに、siRNAは、hsHRD3をコードする遺伝子の塩基配列のうち一部の配列を標的とするものであってもよい。
本発明の医薬組成物は、リウマチ、多発骨髄腫、キャッスルマン病、クローン病、全身型若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス及び骨粗しょう症から選ばれる少なくとも1つの疾患を診断又は治療するために使用される。また、本発明の医薬組成物は炎症反応を抑制することもできる。
上記(2)〜(5)記載の方法において、滑膜細胞のhsHRD3の発現抑制は、例えばhsHRD3とシノビオリンとの結合阻害により行うことができる。
図1は、Hrd3pとSEL1L/hsHRD3のドメイン構造を示す図である。
図2は、siRNAによるSEIL/hsHRD3の発現が抑制されたことを示す図である。
図3は、SEIL/hsHRD3の発現抑制により、滑膜細胞の増殖活性が抑制されたことを示す図である。
図4は、SEIL/hsHRD3の発現抑制により、滑膜細胞のアポトーシスが誘導されたことを示す図である。
図5は、SEIL/hsHRD3の発現抑制により、滑膜細胞へのアポトーシスが誘導されたことを示す図である。
図6は、SEIL/hsHRD3の発現抑制により、滑膜細胞のシノビオリンタンパク質が減少したことを示す図である。
図7は、SEIL/hsHRD3の発現抑制により、滑膜細胞のコラーゲン産生が抑制されたことを示す図である。
図8は、SEIL/hsHRD3とシノビオリンが複合体を形成したことを示す図である。
図9は、SEIL/hsHRD3とシノビオリンが小胞体に共局在することを示す図である。
図10は、SEL1L/hsHRD3の発現抑制により、滑膜細胞のインターロイキン−6の産生が抑制されたことを示す図である。
図11は、SEL1L/hsHRD3、およびシノビオリンの発現抑制により、両タンパク質の発現が抑制されたことを示す図である。
図12Aは、シノビオリンの非存在下ではSEL1L/hsHRD3は不安定であることを示す図である。
図12Bは、シノビオリンの非存在下ではSEL1L/hsHRD3は不安定であることを示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、hsHRD3の発現を抑制し、滑膜細胞の異常増殖やインターロイキン−6の産生を抑制する物質を含む、リウマチ等の疾患の診断、治療に有効な医薬組成物に関する。
シノビオリンは酵母からヒトまで高度に保存されており、出芽酵母において詳細な解析が行われている。シノビオリンの出芽酵母オルソログであるHrd1pは、Hrd3pと機能的な複合体を形成し、小胞体における異常タンパク質の分解に関わることが見出されている。出芽酵母のhrd3破壊株ではHrd1pの不安定化と減少が観察され、生理学的な基質の安定化と増加が報告されている。このことは、ヒトHrd3pオルソログ(hsHRD3)もシノビオリンと同様に、滑膜組織の異常増殖に必須であり、新たな関節症の診断、および治療法の開発に有効であることを示している。
そこで、本発明において、まず出芽酵母Hrd3pのアミノ酸配列を用いてホモロジー検索をした結果、SEL1Lという既知の遺伝子が見出された。Hrd3pとSEL1Lとの間においてアミノ酸配列の相同性は30%、類似性は45%であり、いずれも高くはないが、特異的な繰り返し構造と膜貫通ドメインが保存されている。従って、SEL1LはHrd3pのオルソログであると決定した(図1)。次に2本鎖RNA(siRNA)を用いて滑膜細胞を処理すると、hsHRD3の発現を抑制できることを確認した(図2)。この条件下においては、滑膜細胞の細胞増殖活性は顕著に減少していた(図3)。また約30%の細胞がアポトーシスを起こしていた(図4、5)。
出芽酵母においてHrd3pはHrd1pの安定化に必須である。そこでシノビオリンタンパク質をウェスタンブロットで検出したところ、シノビオリンタンパク質は、hsHRD3抑制下において著しく減少していた(図6)。また、シノビオリンの発現が抑制されると、コラーゲン産生量も減少する。そこで、細胞内のコラーゲン量を測定したところ、これもコントロールに比べて減少していた(図7)。さらに、hsHRD3はシノビオリンと細胞内で複合体を形成し(図8)、共に小胞体に局在している(図9)ことが明らかとなった。なお、滑膜細胞の増殖に重要な役割を果たしているインターロイキン−6も63.2%まで減少していた(図10)。また、細胞内にシノビオリンタンパク質が存在しないときは、hsHRD3は著しく減少し(図11)、非常に不安定であった(図12A及び図12B)。
以上の結果は、hsHRD3をターゲットとするアプローチは、RAをはじめとする関節炎、線維症、癌及び脳神経疾患の新たな診断及び治療法の開発に有効であることを示している。特にSEL1L/hsHRD3の発現や機能のコントロールを介して、シノビオリンの発現や機能を制御するという作用機序に基づいた薬剤の開発に有用である。
1.滑膜細胞の増殖抑制
本発明において、「滑膜細胞」とは、リウマチ患者の関節部位において異常増殖している一連の細胞群を意味し、滑膜組織も包含する。
本発明において、「hsHRD3」とは、酵母のシノビオリンであるHrd1pと結合して機能的複合体を形成し、小胞体の異常なタンパク質の分解に携わっている「Hrd3p」と呼ばれるタンパク質のヒトオルソログをいう。シノビオリンは、酵母からヒトまで高度に保存されており、特に出芽酵母において詳細な解析が行われている。この出芽酵母のオルソログであるHrd3pとアミノ酸のホモロジーが相同性で80%、類似性で45%であり、特異的な繰返し構造と膜貫通ドメインが保存されているSEL1Lという遺伝子が見いだされ、これが後にhsHRD3とされた。このhsHRD3は、配列番号1に示される塩基配列およびそのような配列と実質的に同一な塩基配列よりなる。実質的に同一な塩基配列とは、配列番号1からなるDNAに対し相補的な塩基配列よりなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつhsHRD3活性を有するタンパク質をコードする塩基配列をいう。「hsHRD3活性」とは、小胞体において、異常なタンパク質を分解する活性をいう。このような、hsHRD3をコードするDNAは、当業者に公知の方法で適当な断片を用いてプローブを作製し、このプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、サザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法により、cDNAライブラリーおよびゲノムライブラリーから得ることができる。上記ハイブリダイゼーションにおいてストリンジェントな条件としては、たとえば、ハイブリダイゼーションにおいて洗浄時の塩濃度が100〜500mM、好ましくは150〜300mMであり、温度が50〜70℃、好ましくは55〜65℃の条件が挙げられる。
hsHRD3のアミノ酸配列を配列番号2に、Hrd3pのアミノ酸配列を配列番号3に示す。
このhsHRD3の発現を抑制すると、滑膜細胞の増殖活性が著しく抑制される。滑膜細胞とは、通常の関節構成要素となる細胞であって、関節腔の内側の層を満たす滑液を産生する細胞である。
シノビオリン遺伝子の発現を抑制するには、hsHRD3の発現を抑制する方法が採用される。hsHRD3の発現を抑制するには、RNAiという現象を利用することができるが、遺伝子工学技術を用いた部位特異的突然変異誘発法、アンチセンスヌクレオチド、リボザイムを用いてもよい。
RNAiとは、dsRNA(double−strand RNA)が標的遺伝子に特異的かつ選択的に結合し、当該標的遺伝子を切断することによりその発現を効率よく阻害する現象である。例えば、dsRNAを細胞内に導入すると、そのRNAと相同配列の遺伝子の発現が抑制(ノックダウン)される。
上記RNAiを起こさせるために、例えばシノビオリン遺伝子に対するsiRNA又はshRNAを設計及び合成し、これを作用させればよい。あるいは、hsHRD3をコードする遺伝子の発現を抑制しても、シノビオリンの発現を抑制することができる。
siRNAの設計基準は、以下の通りである。
(a)シノビオリンをコードする遺伝子の開始コドンから100ヌクレオチド下流の領域を選択する。
(b)選択した領域から、AAで始まる連続する15〜30塩基、好ましくは19塩基の配列を探し、その配列のGC含量が30〜70%、好ましくは35〜45%となるものを選択する。
具体的には、以下の塩基配列を有するものをsiRNAとして使用することができる。
センス鎖 : CUUGAUAUGGACCAGCUUUTT(配列番号4)
アンチセンス鎖: AAAGCUGGUCCAUAUCAAGTT(配列番号5)
siRNAを滑膜細胞に導入するには、in vitroで合成したsiRNAをプラスミドDNAに連結してこれを細胞に導入する方法、2本鎖RNAをアニールする方法などを採用することができる。
このようにsiRNAで滑膜細胞を処理して、hsHRD3の発現を抑制する。
また、本発明は、RNAi効果をもたらすためにshRNAを使用することもできる。shRNAとは、ショートヘアピンRNAと呼ばれ、一本鎖の一部の領域が他の領域と相補鎖を形成するためにステムループ構造を有するRNA分子である。
shRNAは、その一部がステムループ構造を形成するように設計することができる。例えば、ある領域の配列を配列Aとし、配列Aに対する相補鎖を配列Bとすると、配列A、スペーサー、配列Bの順でこれらの配列が一本のRNA鎖に存在するように連結し、全体で45〜60塩基の長さとなるように設計する。配列Aは、標的となるhsHRD3遺伝子(配列番号1)の一部の領域の配列であり、標的領域は特に限定されるものではなく、任意の領域を候補にすることが可能である。そして配列Aの長さは19〜25塩基、好ましくは19〜21塩基である。
滑膜細胞の増殖を測定する方法は、培養液中にalamarBlueを適当量添加し、数時間後の540nmを励起波長としたときの590nmの蛍光強度を測定すればよい。
さらに、シノビオリン遺伝子又はhsHRD3をコードする遺伝子の発現を抑制するために、部位特異的突然変異誘発法等を使用することができる。部位特異的突然変異誘発法は当分野において周知であり、市販のキット、例えばGeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等(タカラバイオ社製))を使用することができる。
本発明は、hsHRD3とシノビオリンが結合して形成された、小胞体に局在する複合体の形成を阻害することにより、シノビオリンの発現を抑制する方法を提供する。
hsHRD3とシノビオリンとが結合して複合体を形成すると、シノビオリンの発現が上昇する。この場合、hsHRD3とシノビオリンの複合体は小胞体に局在する。小胞体内腔における生合成途中のタンパク質は不安定であるため、種々の物理化学的ストレス(例えば虚血、低酸素、熱ショック、アミノ酸飢餓、遺伝子変異等)に曝される。このようなストレスを小胞体ストレス(ERストレス)といい、小胞体内に異常な折りたたみ構造を持つタンパク質(unfolded protein)の出現頻度を上昇させる。適切な高次構造がとれずに立体構造に異常をきたした不良又は損傷タンパク質は小胞体を出てゴルジ体に輸送されないため、そのままでは小胞体内に不良タンパク質等が蓄積されてしまう。そこで、これらのERストレスに対して、細胞はUPR(Unfolded Protein Response)及びERAD(Endplasmic Reticulum−Associated Degradation)と呼ばれる小胞体特異的なストレス応答機構によって、不良タンパク質等を分解し、そのような不良タンパク質が蓄積することによる小胞体のストレスを防ぐことにより、小胞体の品質管理を行い、細胞機能の恒常性を保持している。出芽酵母のhrd3破壊株においては、Hrd1pタンパク質が不安定かつ減少しており、基質が生理学的に安定化かつ増加していることが観察されているため、ヒトにおいても、シノビオリンと複合体を形成しているhsHRD3がこの品質管理機能に何らかの関与をしていると考えられる。
つまり、hsHRD3の発現が抑制されると、シノビオリンと結合するhsHRD3が減少し、その結果シノビオリンの発現も抑制されるのである。
また、シノビオリンの発現が増加すると、ERADが亢進されることにより、ERストレスによるアポトーシスの感受性が低下し、反対に、シノビオリンの発現が抑制されると、アポトーシスの感受性が増加する。したがって、hsHRD3の発現が抑制されると、シノビオリンの機能も低下し、結果としてアポトーシスが亢進する。
一方、コラーゲンについては、シノビオリンはP4HA1というコラーゲン合成に必須のタンパク質のユビキチン化を通じて、その酵素としての品質を保つことにより、コラーゲン合成に必須の働きをしている。シノビオリンの発現が抑制されるとP4HA1の酵素活性が低下し、コラーゲン合成が低下する。したがってhsHRD3の発現が抑制されると、シノビオリンの機能も低下し、結果としてコラーゲン合成が低下する。
したがって、hsHRD3もシノビオリンと同様に、滑膜組織の異常増殖に必須であり、hsHRD3の発現を抑制することにより、滑膜細胞の増殖を抑制すること、滑膜細胞、癌細胞、白血病又は悪性腫瘍のアポトーシスを誘起させること、及び、滑膜細胞、肺の繊維化又は肝硬変におけるコラーゲンの産生を抑制することができるため、新たなリウマチ、線維症、関節症、癌および脳神経疾患の診断、および治療法を開発することができる。
上記の滑膜細胞の増殖を抑制するシノビオリンの発現阻害物質は、インターロイキン−6の産生を抑制する物質でもある。
インターロイキン−6はBリンパ球の増殖分化のみならず、広く免疫応答、造血反応、炎症反応、及び神経系の細胞の増殖・分化、あるいは機能発現に重要な役割をしている多機能を有する典型的なサイトカインである。その作用は、骨髄における血小板の誘導、免疫系細胞の炎症部位への誘導、白血球のアポトーシスへの抵抗性の寄与、VEGFの誘導を介した血管の誘導、B細胞の抗体産生細胞への分化、肝臓におけるC−反応性タンパク質産生量の増加などがある。インターロイキン−6は、通常免疫系の細胞により産生されるが、リウマチ滑膜細胞、白血病、骨髄腫など様々な増殖性疾患を引き起こす細胞からも産生され、それらの増殖に必須である。インターロイキン−6が関与する疾患として、リウマチ、多発骨髄腫、キャッスルマン病、クローン病、全身型若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、骨粗しょう症などがある。また、慢性炎症性増殖性疾患においては、インターロイキン−6が病態を形成するのに重要な役割を演じていることが知られており、インターロイキン−6遺伝子の異常発現によりリウマチ等の自己免疫疾患や、血液中の細胞ががん化して起こる多発性骨髄腫及び白血病等の形質細胞腫の発症が誘導されることが明らかになっている。例えば、リウマチ患者関節液中ではインターロイキン−6が著増していること、形質細胞腫/多発性骨髄腫の増殖因子がインターロイキン−6そのものであること、インターロイキン−6が、骨髄性白血病細胞に作用し、増殖を抑制するとともに、マクロファージへの分化を誘導することなどである。
従って、滑膜細胞、がん細胞、白血病細胞、骨肉種細胞、悪性腫瘍細胞、免疫系細胞及び破骨細胞において、インターロイキン−6の産生を抑制することにより、これらのリウマチ等の自己免疫疾患や、血液中の細胞ががん化して起こる多発性骨髄腫、又は、白血病等の発症を抑制することができる。
インターロイキン−6の産生を抑制するには、上記の滑膜細胞の増殖を抑制するシノビオリンの発現阻害物質を用いることができる。具体的には、hsHRD3をコードする遺伝子の発現を抑制する物質である、hsHRD3をコードする遺伝子に対するsiRNA又はshRNAなどを用いることができる。
2.医薬組成物
(1)滑膜細胞の増殖を抑制する物質を含む医薬組成物
本発明の医薬組成物の適用疾患としては、リウマチ、線維症、関節炎、癌などの細胞増殖性疾患及び脳神経疾患などが挙げられ、単独でも複数の疾患が併発していても適用の対象となる。
本発明の医薬組成物を癌の治療剤として使用する場合は、適用部位は特に限定されず、脳腫瘍、舌癌、咽頭癌、肺癌、乳癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、胆道癌、胆嚢癌、十二指腸癌、大腸癌、肝癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、腎癌、膀胱癌、横紋筋肉腫、線維肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、皮膚癌、各種白血病(例えば急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、成人型T細胞白血病、悪性リンパ腫)等を対象として適用される。
上記癌は、原発巣であっても、転移したものであっても、他の疾患と併発したものであってもよい。
脳神経系疾患としては、例えばアルツハイマー、パーキンソン病、ポリグルタミン病が挙げられる。
(2)インターロイキン−6の産生を抑制する物質を含む医薬組成物
本発明の医薬組成物の適用疾患としては、リウマチ、多発骨髄腫、キャッスルマン病、クローン病、全身型若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、骨粗しょう症などが挙げられる。
また、インターロイキン6は炎症に伴う多くの症状(痛み、発熱など)を引き起こすサイトカインでもある。したがって、本発明の医薬組成物は、炎症反応を抑制することもできる。炎症反応とは、生体に感染や外傷、火傷あるいはアレルゲンなどの刺激により起こる局所的な組織反応をいい、局所反応に伴う全身的な現象も含まれる。具体的には、発赤、発熱、疼痛、腫脹に機能障害を加えて、炎症の五徴という。これらは急性炎症の肉眼的特徴を示しているが、この現象は局所的な血管の変化、すなわち、血管の拡張、透過性の亢進、白血球の浸潤によるものである。
本発明の滑膜組織の異常増殖やインターロイキン−6の産生を抑制する物質を有効成分として含有する医薬組成物の投与形態は、経口、非経口投与のいずれでも可能である。経口投与の場合は、液剤として、または適当な剤型により投与が可能である。非経口投与の場合は、経肺剤型(例えばネフライザーなどを用いたもの)、経鼻投与剤型、経皮投与剤型(例えば軟膏、クリーム剤)、注射剤型等が挙げられる。注射剤型の場合は、例えば点滴等の静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等により全身又は局部的に投与することができる。
本発明の医薬組成物を遺伝子治療剤として使用する場合は、本発明の医薬組成物を注射により直接投与する方法のほか、核酸が組込まれたベクターを投与する方法が挙げられる。上記ベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等が挙げられ、これらのウイルスベクターを用いることにより効率よく投与することができる。
また、本発明の医薬組成物をリポソームなどのリン脂質小胞体に導入し、その小胞体を投与することも可能である。本発明の医薬組成物を保持させた小胞体をリポフェクション法により所定の細胞に導入する。そして、得られる細胞を例えば静脈内、動脈内等から全身投与する。脳等に局所投与することもできる。本発明の医薬組成物を目的の組織又は器官に導入するために、市販の遺伝子導入キット(例えばアデノエクスプレス:クローンテック社)を用いることもできる。
本発明の医薬組成物は、常法にしたがって製剤化することができ、医薬的に許容される担体や添加物を含むものであってもよい。このような担体及び添加物として、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤等が挙げられる。
上記添加物は、本発明の治療剤の剤型に応じて上記の中から単独で又は適宜組み合わせて選ばれる。例えば、注射用製剤として使用する場合、精製された滑膜組織の異常増殖を抑制する物質を溶剤(例えば生理食塩水、緩衝液、ブドウ糖溶液等)に溶解し、これにTween 80、Tween 20、ゼラチン、ヒト血清アルブミン等を加えたものを使用することができる。あるいは、使用前に溶解する剤形とするために凍結乾燥したものであってもよい。凍結乾燥用賦形剤としては、例えば、マンニトール、ブドウ糖等の糖アルコールや糖類を使用することができる。
本発明の医薬組成物の投与量は、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なる。投与方法は、患者の年齢、症状により適宜選択する。有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.1μg〜100mg、好ましくは1〜10μgである。但し、上記治療剤はこれらの投与量に制限されるものではない。アデノウイルスの場合の投与量は1日1回あたり10〜1013個程度であり、1〜8週間隔で投与される。但し、本発明の医薬組成物はこれらの投与量に制限されるものではない。siRNAを混合する場合の用量は、0.01〜10μg/ml、好ましくは0.1〜1μg/mlである。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
出芽酵母Hrd3pを用いたホモロジー検索
出芽酵母Hrd3p/Ylr207wpのアミノ酸配列を用いてホモロジーサーチを実行した。
その結果、酵母Hrd3pのヒトオルソログである配列番号1に示す塩基配列によりコードされるアミノ酸配列に相当するタンパク質を同定し、SEL1L遺伝子が見出された。Hrd3pのアミノ酸配列を配列番号3に示す。Hrd3pとSEL1Lとの間においてアミノ酸配列の相同性は30%、類似性は45%であり、いずれも高くはないが、特異的な繰り返し構造と膜貫通ドメインが保存されている。従って、SEL1LはHrd3pのオルソログであると決定した(図1)。
SEL1L/hsHRD3の発現抑制の検討
(1)RA滑膜細胞を各遺伝子に対する2本鎖RNA(siRNA)でトランスフェクションし、96時間後に細胞を回収した。RNAを抽出しRT−PCRで各遺伝子の発現量を定量した。
すなわち、トランスフェクション前日、リウマチ患者から単離した滑膜細胞を6cmディッシュ1枚に付き、1×10個の細胞を播いた。3種類のRNAi用オリゴとRNAオリゴ無し(ネガティブコントロール)の各サンプルに付きディッシュ1枚、合計4枚播いた。培地は10%FBS(牛胎児血清)を含み、抗生物質を含まないDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium,Sigma D6046)を3ml用いた。24時間後、血清も抗生物質も含まないDMEM3mlで1回洗い、同じDMEMを1.6ml加えた。
その後トランスフェクション試薬を添加した。トランスフェクション試薬は次のように調整した。GFP、hsHRD3、シノビオリンを標的としたRNAiのために、下記配列に示したRNAオリゴ(配列番号4〜9)を最終濃度が100μMになるようにTEに溶かした。
hsHRD3を標的としたsiRNAのセンス鎖:CUUGAUAUGGACCAGCUUUTT(配列番号4)
hsHRD3を標的としたsiRNAのアンチセンス鎖:AAAGCUGGUCCAUAUCAAGTT(配列番号5)
GFPを標的としたsiRNAのセンス鎖:GGCUACGUCCAGGAGCGCATT(配列番号6)
GFPを標的としたsiRNAのアンチセンス鎖:UGCGCUCCUGGACGUAGCCTT(配列番号7)
シノビオリンを標的としたsiRNAのセンス鎖:GGUGUUCUUUGGGCAACUGAGTT(配列番号8)
シノビオリンを標的としたsiRNAのアンチセンス鎖:CUCAGUUGCCCAAAGAACACCTT(配列番号9)
各遺伝子に対するRNAオリゴのセンス鎖とアンチセンス鎖を20μMになるように混合した。90℃で2分間熱変性した後、37℃で1時間ゆっくり冷却することにより、両オリゴをアニーリングさせた。アニーリングした20μM RNAオリゴ10μlをオプティメン(Optimem)350μlと混合しA液を作った。次にOligofectamineTM Reagent(Invitrogen,Cat.No.12252−011)8μlをオプティメン32μlと混合しB液を作った。A液とB液を5分間インキュベート後、両者を混合し、さらに15分インキュベートした。この混合液400μlを全量、培地を交換した各ディッシュに加えた。その4時間後、FBSを200μl添加した。
トランスフェクション試薬添加96時間後、細胞からフェノール抽出法で全RNAを抽出し、RT−PCRに用いた。RT−PCRはSUPERSCRIPTTM One−Step RT−PCT 100 Reactions(Invitogen Cat.No.10928−042)を用いた。すなわち、2×RXN混合物50μl、RT/Platinum2μl、DEPC水28μl、以下に示す増幅用プライマー3.2μM溶液の各セット10μl×2、合計100μlを混合し、10/μlずつPCRチューブに分注した。そして1μlのRNAをRT−PCR鋳型として添加してPCR反応を開始した。
hsHRD3増幅用オリゴマー(5’−>3’):GGCTGAACAGGGCTATG(配列番号10)
hsHRD3増幅用オリゴマー(3’−>5’):CCGCTCGAGTTACTGTGGTGGCTGCTGCTC(配列番号11)
シノビオリン増幅用オリゴマー(5’−>3’):AGCTGGTGTTTGGCTTTGAG(配列番号12)
シノビオリン増幅用オリゴマー(3’−>5’):GGGTGGCCCCTGATCCGCAG(配列番号13)
hGAPDH増幅用オリゴマー(5’−>3’):AGGTGAAGGTCGGAGTCAACGGA(配列番号14)
hGAPDH増幅用オリゴマー(3’−>5’):AGTCCTTCCACGATACCAAAGTTG(配列番号15)
RNAオリゴ無しは100、50、10ng、その他は100ngのRNAを鋳型として用いた。サイクルは、cDNA伸長反応として50℃30分94℃2分を1回、続けてPCR増幅反応として94℃30秒、50℃30秒、72℃1分を30回行い、最後に72℃5分最終伸長反応を行った後4℃で保存した。このPCR反応液に2μlの6×サンプルバッファーを加え、全量を0.8%アガロースで100ボルト30分泳動しUVイルミネーターでPCR産物を検出した。
その結果、siRNAにより、SEIL/hsHRD3の発現が抑制された(図2)。図2において、hsHRD3のRNAiによりPCR産物の量が、10ngのオリゴ無し(ネガティブコントロール)と同じレベルに減少したことから、hsHRD3のmRNAの発現レベルが10%以下に抑制されたことが分かった。またこのときシノビオリンのmRNAは100ngのオリゴ無しやGFP RNAiと同レベルであったことからhsHRD3の発現抑制はシノビオリンの転写には影響を与えないことが分かった。
(2)RA滑膜細胞を各遺伝子に対する二本鎖RNA(siRNA)でトランスフェクションし、48時間後にalamarBlueTMを添加した。さらに48時間後に細胞増殖活性を測定した。
すなわち、トランスフェクション前日、リウマチ患者から単離した滑膜細胞を96−ウェルプレートの各ウェルに、160個の細胞を播いた。培地は10%FBS(牛胎児血清)を含み、抗生物質を含まないDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium,Sigma D6046)を100μl用いた。24時間後、血清も抗生物質も含まないDMEM100μlで1回洗い、同じDMEMを80μl加えた。その後実施例2(1)と同様の方法で調製したトランスフェクション試薬を20μlずつ、培地を交換した各ウェルに加えた。さらに4時間後、FBSを10μl添加した。トランスフェクション試薬添加48時間後に各ウェルに10μlのalamarBlueTMを添加した。48時間37℃でインキュベートした後、560nmで励起したときの590nmの蛍光強度を測定した。
その結果、SEIL/hsHRD3の発現抑制により、滑膜細胞の増殖活性が約60%にまで抑制された(図3)。
このことは、hsHRD3はシノビオリン同様にRA滑膜細胞の細胞増殖に重要であり、その発現抑制は細胞の増殖低下を引き起こすことを意味する。
(3)RA滑膜細胞を各遺伝子に対する二本鎖RNA(siRNA)でトランスフェクションし120時間後に細胞を回収した。回収した細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、FACSでDNA含量を測定した。
すなわち、トランスフェクション前日、リウマチ患者から単離した滑膜細胞を6cmディッシュ1枚に、1×10個の細胞を播いた。三種類のRNAi用オリゴとRNAオリゴ無し(ネガティブコントロール)の各サンプルをそれぞれディッシュ1枚、合計4枚播いた。培地は10%FBS(牛胎児血清)を含み、抗生物質を含まないDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium,Sigma D6046)を3ml用いた。24時間後、血清も抗生物質も含まないDMEM3mlで1回洗い、同じDMEMを1.6ml加えた。その後実施例2(1)と同様の方法で調製したトランスフェクション試薬400μlを全量、培地を交換した各ディッシュに加えた。さらに4時間後、FBSを200μl添加した。
トランスフェクション試薬添加120時間後、全細胞を回収し、0.5mlのPBS(−)/0.2%TritonX−100で可溶化した後、ナイロンメッシュを通して、細胞塊を取り除いた。1mlの50μg/ml RNase/PBS(−)と1mlの100μg/mlのヨウ化プロピジウム/PBS(−)を加え、混合した後、氷中に保存した。各細胞の蛍光量をFACSCalibur(BECTON DICKINSON)で計測し、CELLQuestで解析した。
その結果、図4に示すようにアポトーシスを起こしたと考えられるDNA含量2n以下の細胞群がhsHRD3のRNAiにより30%以上にまで増加した。またこの割合はシノビオリンに対するRNAiと同程度に高かった(図5)。このことは、hsHRD3はシノビオリン同様に滑膜細胞の増殖に必須の遺伝子であり、その発現抑制は高頻度のアポトーシスを引き起こすことを意味している。
(1)SEL1L/hsHRD3の発現抑制下におけるウェスタンブロットを用いたシノビオリンの検出
RA滑膜細胞を各遺伝子に対する二本鎖RNA(siRNA)でトランスフェクションし、48時間後に細胞を回収した。総抽出液を抽出しウェスタンブロットで各タンパク質を検出した。
すなわち、トランスフェクション前日、リウマチ患者から単離した滑膜細胞を10cmディッシュ1枚に付き、9×10個の細胞を播いた。三種類のRNAi用オリゴとRNAオリゴ無し(ネガティブコントロール)の各サンプルに付きディッシュ1枚、合計4枚播いた。培地は10%FBS(牛胎児血清)を含み、抗生物質を含まないDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium,Sigma D6046)を10ml用いた。24時間後、血清も抗生物質も含まないDMEM10mlで1回洗い、同じDMEMを9ml加えた。その後実施例2(1)と同様の方法で調製したトランスフェクション試薬の3倍量1.2mlを、培地を交換した各ディッシュに加えた。さらに4時間後、FBSを1ml添加した。
トランスフェクション試薬添加48時間後、全細胞を回収し、50μlの抽出バッファーIV(50mM Tris−HCl pH7.5、2mM EDTA、0.1%Triton X−100、1%NP−40、500mM NaCl、1mM PMSF、0.1%アプロティニン(Aprotinin)、0.5μg/mlペプスタチンA(PepstatinA)、1μg/mlリューペプチン(Leupeptin))に再縣濁した後、氷中に30分置き、14000rpm、4℃、30分遠心した。上清1μlをBio−Rad DC ProteinAssay Reagent(BIO−RAD、Cat.No.500−0116)を用いたタンパク質濃度測定に用い、残り45μlに15μlの4×SDSバッファーを加え、100℃で5分加熱した。10μg相当の細胞抽出液を7.5%アクリルアミドゲル2枚で泳動、分離し、ニトロセルロース膜(OPTITRAN BA−S 85 REINFORCEDNC、Schleicher & Schuell、Cat.No.10 439196)にブロット後、5%スキムミルクで30分ブロッキングした。
一次抗体として1000倍希釈した抗シノビオリンモノクローナル抗体(10Da)または抗CREB−1抗体(Santa Cruze、Cat.No.sc−58)で30分インキュベートした。抗シノビオリンモノクローナル抗体の二次抗体には2000倍希釈したHRP−結合抗−マウスIgG(Amersham Biosciences、Cat.No.NA931V)を、抗CREB−1抗体には3000倍希釈したHRP−結合抗−ウサギIgG(Amersham Biosciences、Cat.No.NA931V)を使用し、30分インキュベートした。検出はHome−made ECL(44μlの90mMクマリン酸、100μlの250mMルミノール、6μlの過酸化水素水を20mlの100mM Tris pH8.5で混合したもの)を使用した。
その結果、シノビオリンタンパク質は、SEL1L/hsHRD3抑制下において著しく減少していた(図6)。すなわち、hsHRD3の発現抑制はシノビオリンタンパク質の不安定化を引き起こすことが明らかになった。
(2)シノビオリンの発現抑制下におけるコラーゲン産生量の検討
RA滑膜細胞を各遺伝子に対する二本鎖RNA(siRNA)でトランスフェクションし、48時間後に細胞を回収した。総抽出液を調製し、細胞内のコラーゲン量を測定した。
すなわち、実施例3(1)と同様な方法でトランスフェクション、細胞抽出液を調製し、30μg相当の抽出液を抽出バッファーIVで100μlに調節した後、SIRCOL Collagen Assay Kit(QBS社/フナコシ Cat.No.S1111)でコラーゲン量を測定した。
その結果、hsHRD3をノックアウトした細胞はコントロール(GFP)に比べて、細胞内コラーゲン量が約70%にまで減少していた(図7)。
すなわち、hsHRD3はシノビオリンタンパク質の安定化を通じて、コラーゲンの産生を促進しており、hsHRD3の発現を抑制することにより、シノビオリンタンパク質の量が減少し、コラーゲン産生量を低下させることができる。
SEL1L/hsHRD3とシノビオリンの細胞内における複合体の形成
HEK293細胞にSP−HA−hsHRD3BとFLAG−シノビオリンのプラスミドをトランスフェクションした。48時間後に細胞を回収し、総抽出液を調整した。抗FLAG抗体(a)、または抗HA抗体(b)で免疫沈降し、それぞれの抗体でウェスタンブロットを行った。
すなわち、hsHRD3Bのシグナルペプチド(SP)の直後、配列番号1に示されたアミノ酸配列の26番目と27番目との間にHA−タグが挿入されるようにDNA構築したプラスミド(SP−HA−hsHRD3B)をpcDNA3−ベクターにクローニングした。
8×10個のHEK293細胞を10cmディッシュ4枚に播いた。24時間後、以下の(c)〜(f)の4種類の組み合わせのプラスミドをトランスフェクションした。
(c)10μgのSP−HA−hsHRD3B/pcDNA3と3μgのpCAGGS−ベクター
(d)10μgのSP−HA−hsHRD3B/pcDNA3と3μgのFLAG−シノビオリン/pCAGGS
(e)10μgのpcDNA3−ベクターと3μgのFLAG−シノビオリン/pCAGGS
(f)10μgのSP−HA−hsHRD3B/pcDNA3と3μgのFLAG−シノビオリン/pCAGGS
トランスフェクション48時間後、細胞を回収し、200μlの抽出バッファーII(10mM Tris−HCl pH7.5、150mM NaCl、0.5%NP−40、10mM MgCl10%glycerol、5mM EGTA、20mM NaF、50mM β−グリセロフォスフェート(glycerophosphate)、1mM NaVO、10mM NEM(N−エチルマレイミド)、1mM PMSF、1mM DTT、0.1%アプロティニン、0.5μg/mlペプスタチンA、1μg/mlリューペプチン)に再縣濁し、氷上で30分インキュベートした後、14000rpm、4℃、30分遠心した。タンパク質100μg相当の抽出物を抽出バッファーIIで1mlに調節した。このとき同時に牛血清アルブミンを最終濃度0.5%になるように加えた。
次に、トランスフェクション(c)(d)由来の抽出物には4.9mgの抗FLAG抗体(M2、SIGMA、Cat.No.F3165)を、(e)(f)由来の抽出物には2.4mgの抗HA抗体(12CA5、Roche、Cat.No.1 583 816)を加え、4℃で一晩浸透しながらインキュベートした。翌日、50%スラリーのプロテイン−Gセファロースビーズを60μl加え、さらに4℃で1時間インキュベートした。このビーズを0.5mlの抽出バッファーIIで2回、0.5mlの抽出バッファーII+150mM NaCl(最終濃度300mM NaCl)で2回洗い、30μlの2×SDSサンプルバッファーを加え、100℃、5分加熱することにより、吸着したタンパク質を溶出した。実施例3(1)と同様の方法でSDS−PAGE、ウェスタンブロットを行い、免疫沈降したタンパク質を検出した。
その結果、SEL1L/hsHRD3はシノビオリンと細胞内で複合体を形成していることが判明した(図8)。
(2)SEL1L/hsHRD3とシノビオリンの細胞内における共局在
HEK293細胞をSP−HA−hsHRD3BとFLAG−シノビオリンのプラスミドでトランスフェクションした。24時間後に細胞を固定し、抗HA抗体と抗シノビオリンモノクローナル抗体で免疫染色した。
すなわち、2000個のHEK293細胞をチャンバースライドの各チャンバーに播いた。24時間後、0.15μgのSP−HA−hsHRD3B/pcDNA3と0.05μgのFLAG−シノビオリンでトランスフェクションした。トランスフェクション48時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで30分固定し、3%BSA/PBS(−)で1晩ブロッキングした。翌日最終濃度が1ng/μlになるように0.3%BSA/PBS(−)で希釈した抗HA抗体(3F10、Roche、Cat.No.1 867 431)と100倍希釈した抗シノビオリンモノクローナル抗体(10Da)で染色し、抗HA抗体は抗ラットIg FITC抗体(DAKO、Cat.No.F0234)で、抗シノビオリン抗体は抗マウスIg TRITC抗体(DAKO、Cat.No.R0270)で検出した。サンプルの観察、撮影は共焦点レーザースキャン顕微鏡LSM510(Carl Zeiss Co.,Ltd.)で、画像解析はLSM510−v3.0で行った。
その結果、SEL1L/hsHRD3とシノビオリンは小胞体に共局在した(図9)。図9において、左列はhsHRD3の局在の図(緑色)、中央列はシノビオリンの局在の図(赤色)、右列は両者を重ね合わせた図(黄色)である。
これらの結果より、hsHRD3はシノビオリンと小胞体において複合体を形成していることが判明した。
SEL1L/hsHRD3の発現抑制下におけるインターロイキン−6産生量の検討
(1)RA滑膜細胞を各遺伝子に対する二本鎖RNA(siRNA)でトランスフェクションし、96時間後に培地を新しいものに交換した。さらに24時間後に培地を回収し、その中に含まれるインターロイキン−6の量を測定した。
すなわち、トランスフェクション前日に、リウマチ患者から単離した滑膜細胞を6cmディッシュ1枚に付き、1×10個の細胞を播いた。三種類のRNAiとRNAオリゴ無し(ネガティブコントロール)の各サンプルに付きディッシュ1枚、合計4枚播いた。培地は10%FBS(牛胎児血清)を含み、抗生物質を含まないDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium,Sigma D6046)を3ml用いた。24時間後、血清も抗生物質も含まないDMEM3mlで1回洗い、同じDMEMを1.6ml加えた。その後実施例2(1)と同様の方法で調製したトランスフェクション試薬400μlを全量、培地を交換した各ディッシュに加えた。さらに4時間後、FBSを200μl添加した。
トランスフェクション試薬添加96時間後、培地を新しいものに交換した。24時間培養後、培地を回収し、14000rpm、30min、4℃で遠心した。その上清中に含まれるインターロイキン−6タンパク質量をELISA Kit(BIOSOURCE Immunoassay Kit for Human IL−6,Cat.# KHC0061)で測定した。同時に細胞も回収し、20μLの抽出バッファーIII(10mM Tris−HCl pH7.5,5mM EDTA,1%NONIDET P−40,0.1%SDS,200mM NaCl 10mM N−エチルマレイミド(NEM),1mMフェニルメチルスルフォニルフルオリド(phenylmethylsulfonylfluoride)(PMSF),1mMジチオトレイトール,0.1%アポロティニン,0.5μg/mlペプスタチンA,1μg/mlリューペプチン)に溶かし氷上に30分置いた。14000rpm、30min、4℃で遠心した後、上清1μlをBio−Rad DC ProteinAssay Reagent(BIO−RAD、Cat.No.500−0116)を用いたタンパク質濃度測定に用いて、総タンパク質量を算出した。培地中のインターロイキン−6タンパク質量をこの総タンパク質量で割った値をグラフ化した(図10)。
その結果、SEL1L/hsHRD3の発現抑制により、インターロイキン−6タンパク質の産生量がコントロールに比べ、63.2%にまで減少した(図10)。すなわちSEL1L/hsHRD3はインターロイキン−6の産生に必須な因子であることが明らかになった。
(2)上記(1)で調整した細胞総抽出液45μlに15μlの4×SDSバッファーを加え、37℃で10分加熱した。10μg相当の細胞抽出液を7.5%アクリルアミドゲルで泳動、分離し、ニトロセルロース膜(OPTITRAN BA−S 85 REINFORCED NC、Schleicher & Schuell、Cat.No.10 439196)を用いてブロットした後、5%スキムミルクで30分ブロッキングした。
一次抗体として1000倍希釈した抗SEL1L/hsHRD3ペプチド抗体で30分インキュベートした。二次抗体には10000倍希釈したHRP−結合抗−ウサギIgG(Amersham Biosciences、Cat.No.NA934V)を用いて30分インキュベートした。検出はECL plus Western Blotting Detection System(Amersham Biosciences、Cat.No.RPN2132)を使用した。
検出後、再度ブロッキングし、一次抗体として1000倍希釈した抗シノビオリン抗体と5000倍希釈した抗α−チューブリン抗体(SIGMA Clone B−5−1−2)を用いて30分インキュベートした。二次抗体には10000倍希釈したHRP−結合抗−マウスIgG(Amersham Biosciences、Cat.No.NA931V)を用いて30分インキュベートした。検出はECL plus Western Blotting Detection System(Amersham Biosciences、Cat.No.RPN2132)を使用した。
その結果、SEL1L/hsHRD3、およびシノビオリンの発現抑制により両タンパク質は発現が見られなくなった(図11)。すなわち両タンパク質は相互に安定化しあっていることが判明した。
SEL1L/hsHRD3の安定性とシノビオリンとの複合体形成による影響
HEK293細胞にSP−HA−hsHRD3Bとベクター、またはFLAG−シノビオリンのプラスミドをトランスフェクションした。36時間後にシクロヘキシミドを加えてチェイスアッセイを開始した。0、1、2、4、6時間後に細胞を回収し、総抽出液を調整した。ウェスタンブロットで各タンパク質を検出、定量した。
すなわち、2×10個のHEK293細胞を6−ウェルプレートに播いた。24時間後、以下の(g)、(h)の2種類の組み合わせのプラスミドをトランスフェクションした。
(g)0.5μgのSP−HA−hsHRD3B/pcDNA3と0.25μgのpcDNA3−ベクター
(h)0.5μgのSP−HA−hsHRD3B/pcDNA3と0.25μgのFLAG−シノビオリン/pcDNA3
トランスフェクション36時間後、培地を新鮮なものに交換した。さらに2時間後、最終濃度が30μg/mlになるようにシクロヘキシミドを添加した。0、1、2、4、6時間後に細胞を回収し、50μlの抽出バッファーIII(10mM Tris−HCl pH7.5,5mM EDTA,1%NONIDET P−40,0.1%SDS,200mM NaCl 10mM N−エチルマレイミド(NEM)、1mMフェニルメチルスルフォニルフルオリド(PMSF),1mMジチオトレイトール,0.1%アプロティニン,0.5μg/mlペプスタチンA,1μg/mlリューペプチン)に溶かし氷上に30分置いた。14000rpm、30min、4℃で遠心した後、上清1μlをBio−Rad DC ProteinAssay Reagent(BIO−RAD、Cat.No.500−0116)を用いたタンパク質濃度測定に用いた。残り45μlに15μlの4×SDSバッファーを加え、37℃で10分加熱した。10μg相当の細胞抽出液を7.5%アクリルアミドゲルで泳動、分離し、ニトロセルロース膜(OPTITRAN BA−S 85 REINFORCED NC、Schleicher & Schuell、Cat.No.10 439196)を用いてブロットした後、5%スキムミルクで1晩ブロッキングした。一次抗体として10000倍希釈した抗HA抗体(3F10、Roche、Cat.No.1867 431)で30分インキュベートし、10000倍希釈したHRP−結合抗−ラットIgGで30分インキュベートした。検出はECL plus Western blotting Detection System(Amersham Cat.No.RPN2132)を用いた。検出したバンドをImageJSoftwareで定量した。正確な測定のために0時間目のサンプルを2倍、4倍希釈したものを用いて標準曲線を作成し、それに基づいて両比を推定した。
その結果、SEL1L/hsHRD3はシノビオリンの非存在下では、半減期が4.3時間から1.8時間と半分以下に短くなった(図12A、B)。すなわちSEL1L/hsHRD3はシノビオリンと複合体を形成できないと、細胞内で不安定化することが判明した。
本発明により滑膜細胞(滑膜組織を含む)の異常増殖やインターロイキン−6の産生を抑制する物質を含む医薬組成物が提供される。この物質は、滑膜組織又は滑膜細胞の異常増殖を抑制することができるため、リウマチ、線維症、関節症、癌及び脳神経疾患から選ばれる少なくとも1つ疾患の診断用又は治療用医薬組成物として有用である。
配列番号4:DNA/RNA結合分子
配列番号5:DNA/RNA結合分子
配列番号6:DNA/RNA結合分子
配列番号7:DNA/RNA結合分子
配列番号8:DNA/RNA結合分子
配列番号9:DNA/RNA結合分子
配列番号10:合成DNA
配列番号11:合成DNA
配列番号12:合成DNA
配列番号13:合成DNA
配列番号14:合成DNA
配列番号15:合成DNA

Claims (20)

  1. 滑膜細胞の増殖を抑制する物質を含む医薬組成物。
  2. 滑膜細胞の増殖を抑制する物質が、シノビオリンの発現阻害物質である請求項1記載の医薬組成物。
  3. シノビオリンの発現阻害物質が、hsHRD3をコードする遺伝子の発現を抑制する物質である請求項2記載の医薬組成物。
  4. hsHRD3をコードする遺伝子の発現を抑制する物質が、hsHRD3をコードする遺伝子に対するsiRNA又はshRNAである請求項3記載の医薬組成物。
  5. hsHRD3をコードする遺伝子が、以下の(a)又は(b)のDNAを含むものである請求項3又は4記載の医薬組成物。
    (a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA
    (b)配列番号1に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつhsHRD3活性を有するタンパク質をコードするDNA
  6. siRNAが、配列番号1に示す塩基配列のうち一部の配列を標的とするものである請求項4記載の医薬組成物。
  7. リウマチ、線維症、関節炎、癌及び脳神経疾患から選ばれる少なくとも1つの疾患を診断又は治療するための請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  8. 滑膜細胞のhsHRD3の発現を抑制することを特徴とする、滑膜細胞の増殖を抑制する方法。
  9. 滑膜細胞のhsHRD3の発現を抑制することを特徴とする、滑膜細胞、がん細胞、白血病又は悪性腫瘍のアポトーシスを誘起させる方法。
  10. 滑膜細胞のhsHRD3の発現を抑制することを特徴とする、滑膜細胞、肺の線維化又は肝硬変におけるコラーゲンの産生を抑制する方法。
  11. 滑膜細胞のhsHRD3の発現を抑制することを特徴とする、滑膜細胞、がん細胞、白血病細胞、骨肉種細胞、悪性腫瘍細胞、免疫系細胞及び破骨細胞からなる群から選ばれる少なくとも一種の細胞からインターロイキン−6の産生を抑制する方法。
  12. hsHRD3の発現の抑制が、hsHRD3とシノビオリンとの結合阻害によるものである、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. インターロイキン−6の産生を抑制する物質を含む医薬組成物。
  14. インターロイキン−6の産生を抑制する物質がシノビオリンの発現阻害物質である請求項13記載の医薬組成物。
  15. シノビオリンの発現阻害物質が、hsHRD3をコードする遺伝子の発現を抑制する物質である請求項14記載の医薬組成物。
  16. hsHRD3をコードする遺伝子の発現を抑制する物質が、hsHRD3をコードする遺伝子に対するsiRNA又はshRNAである請求項15記載の医薬組成物。
  17. hsHRD3をコードする遺伝子が、以下の(a)又は(b)のDNAを含むものである請求項15又は16記載の医薬組成物。
    (a)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA
    (b)配列番号1に示される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつhsHRD3活性を有するタンパク質をコードするDNA
  18. siRNAが、配列番号1に示す塩基配列のうち一部の配列を標的とするものである請求項16記載の医薬組成物。
  19. リウマチ、多発骨髄腫、キャッスルマン病、クローン病、全身型若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス及び骨粗しょう症からなる群から選ばれる少なくとも1つの疾患を診断又は治療するための請求項13〜18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
  20. 炎症反応を抑制することができる、請求項13〜18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
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