本発明は、光ディスク等の情報記録媒体およびこれを用いて記録/再生を行う情報記録再生装置に関し、特に、記録パワー校正領域を有する情報記録媒体とそれを用いる情報記録再生装置に関する。
光学的に情報信号を情報層にディジタル記録し、記録マークまたは記録ピット(以下、記録マークと称する)により情報層に記録された情報信号を再生できる情報記録媒体は、当該記録マークの品質及び検索性の高さで普及している。また、近年動画等のように大容量の情報信号を記録する要請に応えるべく、1枚に記録できる情報量を高めた高密度記録媒体としてDVD(ディジタル・バーサタイル・ディスク)が提案され、市場ニーズに合致した点で受け容れられている。また、例えばコンピュータプログラムを予め記録した再生専用の情報媒体(例えば、CD−ROM等)と同様に、この記録可能なDVD(以下、記録型DVDと称す)も、再生速度及び記録速度の高速化が要望されている。ところで、記録密度を高めるためには線速度一定(CLV)方式が有利であるため、記録型DVDを記録再生する記録再生装置では、CLV方式を基本とした記録方式(以下、ZCLV方式等も含めCLV方式またはCLV記録方式と称す)が開発され採用されている。
一方、記録型DVDは、前述したように大容量の情報信号を記録するために、記録密度が高くなるよう設計されているが、高記録密度を有しているがため、記録型DVDの製造メーカが推奨する記録速度や記録パワー等の記録情報、記録に際しての記録型DVDと記録再生装置との相性及び/または記録型DVDに記録した記録再生装置の情報を、当該記録型DVDに記述すること等が要請されている。このため、データ領域(Data Recordable area)の内周のリードイン領域の更に内周に、記録管理情報を記述した記録管理領域(Recording Management Area)と、データ領域に記録した際の記録速度や照射するレーザパワー等を記述したパワー校正領域(Power Calibration Area)とを備えている。このパワー校正領域は、記録管理領域の内周側に設けられ、記録速度が目標値に達した時点で、当該記録速度で情報層に照射するレーザパワー等の情報を記述する領域である。この情報は、記録再開時の記録速度に応じた照射パワーの学習のために、履歴として残される。
前述したように記録再生装置はCLV方式で記録するため、記録型DVDを回転させるスピンドルモータの回転数は、内周になるほど高速回転となる。従って、記録型DVDの最内周に備えるパワー校正領域では例えば4倍速の記録速度には記録履歴情報の記述はできるが、8倍速、16倍速のように高速化が進行するとスピンドルモータの回転に限界を来たし追従できなくなり、記録履歴をパワー校正領域に記述できなくなると言う問題が想定される。
このようにパワー校正領域を最内周に備えるだけでは、高速化の要請に対して何れ対応できなくなる事態を鑑み、非特許文献1には、内周ディスクテスト領域(Inner Disc Test Zone)では対応できない記録履歴情報を記述する領域として、リードアウト領域の外周側に外周ドライブ領域(Outer Drive Area)を新たに設け、当該外周ドライブ領域の外周ディスクテスト領域(Outer Disc Test Zone)に高速記録速度に対応できる記録履歴情報を記述する構成が開示されている。
例えば、図17、図18は、従来の光ディスクの断面概念図であって、図17はDVD−Rの内周側の記録領域、図18はDVD+RWの外周側の記録領域の概念図を示す。DVD−Rの場合、リードインエリアの内周側にRMA領域とOPC領域が設けられている。情報記録再生装置は、データ記録開始に最適記録パワー校正(OPC、Optimum Power Calibration)を行い、それにより半導体レーザの記録パワーを決定する。ここで、OPCとは、光ディスクに所定のテスト記録マークを試し書きし、そのテスト記録マークから再生されたアナログ信号のβ値に基づいて半導体レーザの記録パワーを校正する操作をいう。OPC情報とは、OPCに関する情報で、OPC時の記録パワー条件と記録ストラテジを含む。また、DVD−RAMやDVD+RWの場合、内周側と外周側にディスクテストゾーンと呼ばれるOPC領域が設けられているが、図18は外周側のみ図示している。データ容量がフルに記録された時、データ領域が半径58mmまでで、その後に、リードアウト領域が半径58.0〜58.05mmに記録され、ディスクテストゾーンは半径58.1〜58.3mmに記録される。
ところが、記録再生光を透過する基板は、記録型DVDに限らず、ポリカーボネイト等の樹脂を射出成形することにより形成される。この射出成形で樹脂を射出するノズルは、成形型全面に樹脂が行き渡るように内周近辺に設けられている。しかしながら、成形型の表面にはトラックやエンボス等の複雑な形状を備えているため、成形型全面に樹脂が行き渡るように設計したとしても、基板の内周部と外周部とでは樹脂の供給量が異なり、外周部の成形精度が劣る。これにより、ディスク外周部の平面精度及び/またはトラックの成形精度は、内周部に比べると低下する。
また、従来、記録型DVDの情報層の主成分は、周知のように、書換可能型ディスクの場合は無機材料であり、追記型ディスクの場合は有機色素である。無機材料による情報層の形成には、スパッタまたは真空蒸着等のいわゆる気相堆積法が適用されるが、有機色素の場合は、一般的に、回転した基板に有機色素溶液を滴下する、いわゆるスピンコート法が適用されている。このスピンコート法は、基板の回転により発生する遠心力を利用するため、有機色素溶液は基板の内周部から滴下する。従って、特に有機色素溶液をスピンコートして形成する情報層を有する追記記録型DVD(いわゆるDVD−R、DVD+R)では、外周側の情報層は内周の情報層に比べて色素溶液の供給量が不足する傾向にあるため、情報層の膜質が低下する。
さらに、記録型DVDに限らず樹脂成形した基板を適用した情報記録媒体の平面度は、例えばガラスのような無機材料より低い。これに起因して、ディスクの回転時に、「面ぶれ」と称される、回転軸方向にディスク面が上下動する現象が発生する。この面ぶれ現象は、外周になるほど、また、回転速度が高速になるほど大きくなる。従って、高速で外周に情報を記録する際に、面ぶれが問題となる可能性がある。
以上のように、重要な情報を記述する領域としては、内周の方が適性が高く、外周になるほど信頼性の観点では劣る。従って、上述の非特許文献1に開示されているように、記録型DVDの最外周に外周ディスクテスト領域(Outer Disc Test Zone)を新たに設け、記録速度に対応する照射パワー等の情報(記録履歴情報)を記録する従来の構成では、この情報について信頼性の保証ができないという課題がある。
また、記録型DVDで情報信号を記録できる情報領域(Information Area)は、一般的に、パワー校正領域、記録管理領域、リードイン領域、データ領域、及びリードアウト領域を言うが、前記従来の構成では、リードアウト領域の更に外周までも記録を補償する情報領域の範囲を拡大しなければならないという課題もある。
「DVD+R4.7Gbytes Basic Format Specifications Version1.2」(2003年7月発行)(第48頁16.1 Physical Sector Numbers(PSNs)Figure22、第49頁 Table7のOuter Drive Area欄のOuter Disc Test Zone、第60頁21.3 Outer Disc Test Zone、及び第117頁〜第119頁 Annex H Optimum Power Control and Recording Conditions)
本発明は、係る従来提案されている構成が本質的に有する課題を解決し、信頼性が高いパワー校正領域を備えた情報記録媒体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明にかかる情報記録媒体は、ユーザ情報信号を記録するデータ領域と、前記データ領域の内周側に設けられたリードイン領域と、前記リードイン領域よりも内周側に設けられテスト記録パターンが記録される内周パワー校正領域と、前記内周パワー校正領域に関する記録管理情報が記録される記録管理領域とを備えた記録層を有する情報記録媒体であって、前記記録層において前記ユーザ情報信号の記録終端の外周に外周パワー校正領域を備えることを特徴とする。
本発明にかかる情報記録媒体は、記録層においてユーザ情報信号の記録終端の外周に、外周パワー校正領域を設けたことにより、従来のようにリードアウト領域よりも外周側(光ディスクの最外周)にパワー校正領域を設けた記録媒体と比較して、面振れ等の機械特性がより良好な領域でパワー校正を行うことが可能となる。これにより、情報記録再生装置が、最適な記録パワーを確実かつ短時間で決定できるという利点がある。
[図1]図1は、本発明の一実施形態にかかる情報記録媒体における外周PCAとレコーダブルエリアの関係を示す断面模式図である。
[図2]図2は、DVD−R論理フォーマットの概念図である。
[図3]図3は、PCA記録選択の概念図である。
[図4A]図4Aは8倍速記録時の半径位置とジッタの関係を示すグラフである。
[図4B]図4Bは8倍速記録時の半径位置と記録パワーの関係を示すグラフである。
[図5]図5は、本発明の一実施形態にかかる情報記録再生装置の構成を示すブロック図である。
[図6]図6は、本発明の一実施形態にかかる情報記録再生装置の動作を表すフローチャートである。
[図7]図7は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体の構成を示す断面図である。
[図8A]図8Aは、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
[図8B]図8Bは、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
[図8C]図8Cは、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
[図8D]図8Dは、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。モードの一例を示す模式図である。
[図8E]図8Eは、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
[図9]図9は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体のエリア構造の一例を示す断面模式図である。
[図10]図10は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体のエリア構造の他の例を示す断面模式図である。
[図11]図11は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体のエリア構造のさらに他の例を示す断面模式図である。
[図12]図12は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体のPCAの構造を示す断面模式図である。
[図13]図13は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体のPCAの構造を示す断面模式図である。
[図14]図14は、本発明の第2の実施形態にかかるRMDフィールドの概念図である。
[図15A]図15Aは、コンテンツを消去する際に外周側のRMAからRMD情報も消去する動作を説明する図であって、消去前の状態を示す。
[図15B]図15Bは、コンテンツを消去する際に外周側のRMAからRMD情報も消去する動作を説明する図であって、タイトルが消去された状態を示す。
[図15C]図15Cは、コンテンツを消去する際に外周側のRMAからRMD情報も消去する動作を説明する図であって、RMD情報が消去された状態を示す。
[図16]図16は、DVD−R論理フォーマットの概念図である。
[図17]図17は、従来のDVD−Rの内周PCAの概念図である。
[図18]図18は、従来のDVD+RWの外周PCAの概念図である。
本発明にかかる情報記録媒体は、ユーザ情報信号を記録するデータ領域と、前記データ領域の内周側に設けられたリードイン領域と、前記リードイン領域よりも内周側に設けられテスト記録パターンが記録される内周パワー校正領域と、前記内周パワー校正領域に関する記録管理情報が記録される記録管理領域とを備えた記録層を有する情報記録媒体であって、前記記録層において前記ユーザ情報信号の記録終端の外周に外周パワー校正領域を備えた構成である。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記記録層にリードアウト領域をさらに備え、前記外周パワー校正領域が、前記データ領域と前記リードアウト領域との間に設けられた構成としても良い。あるいは、前記外周パワー校正領域が、前記データ領域の一部である構成としても良い。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記記録層を複数備え、前記複数の記録層のうち、相隣接して積層する二つの記録層のうち一方の記録層に対して当該情報記録媒体の内周側から外周側へ向かってユーザ情報信号の記録が行われ、前記二つの記録層のうち他方の記録層に対して当該情報記録媒体の外周側から内周側へ向かってユーザ情報信号の記録が行われ、前記一方の記録層においては前記ユーザ情報信号の記録終端の外周部に前記外周パワー構成領域が設けられ、前記他方の記録層においては前記ユーザ情報信号の記録始端の外周部に前記外周パワー構成領域が設けられた構成としても良い。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記記録層を複数備え、前記複数の記録層の全てにおいて、当該情報記録媒体の内周側から外周側へ向かってユーザ情報信号の記録が行われ、前記複数の記録層のそれぞれに、前記ユーザ情報信号の記録終端の外周部に前記外周パワー構成領域が設けられた構成としても良い。
上記の情報記録媒体において、相隣接して積層する第n層目の記録層と第n+1層目の記録層とにそれぞれ備える第n層目の内周パワー校正領域、第n+1層目の内周パワー校正領域、第n層目の外周パワー校正領域および第n+1層目の外周パワー校正領域において、それぞれのパワー校正領域に設けられたテスト記録実行領域が、当該記録層の積層方向において互いに重なり合わないよう設けられた構成とすることが好ましい。
上記の情報記録媒体において、前記第n層目の内周パワー校正領域および第n層目の外周パワー校正領域において、パワー校正のために行うテスト記録の方向が、第n層目の記録層に対するユーザ情報信号の記録方向とは逆方向から実行されることが好ましい。ここで、「記録層に対するユーザ情報信号の記録方向」とは、内周から外周へ向かう方向、あるいは、外周から内周へ向かう方向、のいずれかである。
上記の情報記録媒体において、相隣接して積層する第n層目の記録層と第n+1層目の記録層とに第n層目の外周パワー校正領域および第n+1層目の外周パワー校正領域をそれぞれ備え、前記n層目の記録層における前記第n層目の外周パワー校正領域の内周側に第n層目のミドル領域と、前記第n+1番目の記録層における前記n+1番目の外周パワー校正領域の内周側にn+1番目のミドル領域とを備えることが好ましい。
さらに、上記の構成にかかる情報記録媒体において、相隣接して積層する第n層目の記録層と第n+1層目の記録層の各々において、第n層目のミドル領域と第n+1層目のミドル領域および第n層目のパワー校正領域と第n+1層目のパワー校正領域の少なくとも一部が、ユーザ情報信号を記録可能な最外周位置よりも内周側に位置するよう、前記第n番目のミドル領域と前記第n+1番目のミドル領域および前記第n番目のパワー校正領域と前記第n+1番目のパワー校正領域の全体が前記内周側へシフト配置された構成とすることが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記外周パワー校正領域が、データ領域における記録可能な最外周位置から少なくとも0.2mm外周側に環状に設けられたことが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記外周パワー校正領域に関する記録管理情報も前記記録管理領域に記録されることが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記外周パワー校正領域に関する記録管理情報を記録する外周記録管理領域を、前記データ領域より外周側に備えた構成とすることが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記外周パワー校正領域は、前記データ領域へのデータ記録速度が所定の速度以上の場合にテスト記録パターンが記録されることが好ましい。あるいは、上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記外周パワー校正領域は、前記データ領域へのデータ記録速度が、当該データ領域への過去の記録速度を超える場合にテスト記録パターンが記録されることも好ましい。なお、これらにおいて「データ領域への記録速度」とは、情報記録媒体が複数の記録層を有する場合であれば、外周パワー校正領域と同じ記録層に存在するデータ領域への記録速度を意味する。
また、本発明にかかる情報記録再生装置は、上述のいずれかの情報記録媒体の前記データ領域に所望のユーザ情報信号を記録する情報記録再生装置であって、前記情報媒体を回転させる回転駆動部と、前記情報記録媒体へ光を照射することにより情報信号の記録または情報信号の再生を行う光ピックアップと、前記情報記録媒体の内周および外周パワー校正領域の少なくとも一方へ前記光ピックアップを移動させて、前記光ピックアップによる照射パワーの校正を実行する校正制御部とを備えた構成である。
上記の構成において、前記回転駆動部による前記情報記録媒体の回転速度を制御する回転制御部をさらに備え、前記校正制御部が、前記回転制御部から前記情報記録媒体の回転速度情報を取得し、取得した回転速度情報に応じて、前記光ピックアップによる照射パワーの校正を前記内周および前記外周パワー校正領域のいずれにおいて実行するかを決定することが好ましい。
上記の構成において、前記回転速度情報が表す速度が所定速度を越える場合、前記校正制御部が、前記光ピックアップによる照射パワーの校正を前記外周パワー校正領域において実行することがさらに好ましい。
上記の構成において、記録動作を開始する度に、前記内周パワー校正領域に記載されているテスト記録パターンのうち最新のテスト記録パターンを、前記外周パワー校正領域に複写する手段をさらに備えたことが好ましい。
上記の構成において、前記データ領域からデータを消去するとき、前記外周パワー校正領域に記録されているテスト記録パターンのうち、前記消去対象のデータに対応するテスト記録パターンを消去する手段をさらに備えたことが好ましい。
上記の構成において、前記情報記録媒体の記録管理領域に、前記データ領域の記録可能な領域の範囲を表す情報が含まれ、前記情報記録再生装置が、前記データ領域の記録可能な領域の範囲を表す情報を、前記情報記録媒体における当該記録可能な領域の最外周が内周側へ移動するよう変更する手段をさらに備えたことが好ましい。
また、本発明にかかる情報記録再生装置は、上述の複数の記録層を備えた情報記録媒体の前記データ領域に所望のユーザ情報信号を記録する情報記録再生装置であって、前記情報記録媒体を回転させる回転駆動部と、前記情報記録媒体が備える複数の記録層のうち任意の記録層へ光を照射することにより、当該記録層へ情報信号の記録または情報信号の再生を行う光ピックアップと、情報信号の記録または再生を行おうとする記録層において前記情報記録媒体の内周および外周パワー校正領域の少なくとも一方へ前記光ピックアップを移動させて、前記光ピックアップによる照射パワーの校正を実行する校正制御部とを備えた構成としても良い。
以下、本発明の情報記録媒体および情報記録再生装置について、より具体的な実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
近年、光学式情報記録技術、すなわち、記録可能型光ディスクへのデータ記録技術が著しく発展している。それに伴い、光学式記録再生装置すなわち光ディスク記録再生装置が各種開発されている。特に、例えばDVD−RAMドライブのように、コンピュータの外部記録装置等として応用されたものが、既に広く普及し始めている。
記録可能型光ディスクは、追記型光ディスクと書換型光ディスクとに分類される。追記型光ディスクとは、データを一回のみ記録可能な光ディスクをいう。追記型光ディスクはCD−R(Recordable)とDVD−RとDVD+Rを含む。
追記型光ディスクでの記録マークの作成は次の通りに行われる。記録層が有機色素を含む。その有機色素は所定のパワーのレーザを照射されると分解する。その結果、特にその光学的反射率が低下する。こうして、レーザ照射を受けた記録層の部分が記録マークとなる。
追記型光ディスクではデータの記録が次の理由で一回に限られる。記録マークの作成時、記録層のレーザ照射部分で多量の熱が生じる。その熱は周囲の樹脂等を変形させる。それらの変形は不可逆的であるので、レーザ照射前の状態に戻すことができない。それ故、追記型光ディスクでは、データの記録が一回に限られる。
書換型光ディスクとは、データを書き換えて多数回記録可能な光ディスクをいう。書換型光ディスクはCD−RW(Re−Writable)、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等を含む。
書換型光ディスクの内、相変化記録方式によるものでは、記録マークの作成が次の通りに行われる。記録層は、結晶相とアモルファス相との二種類の固相を有する合金を含む。この記録層の光学的反射率は、一般的に、結晶相では高く、アモルファス相では低くなるように、設計される。従って、記録層の内、アモルファス相の部分が記録マークである。記録マークの作成、すなわち、結晶相からアモルファス相への転移は、次のようにして実現する。記録層に対して比較的高いパワーのレーザをパルス照射する。それにより、記録層の狭い範囲が融点以上の温度まで瞬間的に加熱され、その直後ガラス化点以下の温度まで急冷される。その結果、記録層のその狭い範囲がアモルファス相へ転移する。
更に、相変化記録方式による書換型光ディスクでは、既存の記録マークを次のようにして消去できる。記録マークは、上記の通り記録層のアモルファス相部分である。従って、記録マークを消去するには、記録マークの範囲でアモルファス相から結晶相へ転移させれば良い。アモルファス相から結晶相への転移は、次のようにして実現する。回転中の書換型光ディスクの記録層に対して比較的低いパワーのレーザを比較的長時間照射する。それにより、記録層の広い範囲が、ガラス化点より高く融点を超えない程度の温度、まで加熱される。その時、加熱された記録層の範囲は加熱後ゆっくりと冷える。その結果、記録層のその広い範囲が結晶相へ転移する。こうして、書換型光ディスクでは既存の記録マークを消去できる。なお、データ領域に記録されたユーザデータを消去、または記録されたユーザデータに別のユーザデータを記録(すなわち、記録されたユーザデータを消去し別のユーザデータを重ね書き)するオーバーライトを行う場合には、外周パワー校正領域における当該記録されたユーザデータに関するテスト記録パターン及び/または記録管理領域に記述された記録管理情報も消去またはオーバーライトする。
相変化記録方式による書換型光ディスクへの実際のデータ記録では、レーザを上記の高いパワーと低いパワーとの間で切り換えながら照射する。それにより、記録マークの消去と作成とを同時に実行して、データを光ディスクに上書きできる。
以下、本発明を実施するための形態について、その好ましい実施例を挙げて、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
(情報記録媒体)
図1に、本発明の情報記録媒体の一実施形態にかかる光ディスク(DVD−R)の記録領域の概念図を示す。なお、図1は、本実施形態にかかるDVD−Rの外周側の記録領域を示すものである。
図1に示すように、本実施形態にかかるDVD−Rは、リードアウトエリア60よりも内周側に、記録履歴情報を記述する外周PCA70(第2のPCA)を有する。なお、図1には示されていないが、このDVD−Rは、ユーザエリア50よりも内周側にリードインエリアを備え、そのさらに内周側に記録管理領域(RMA)と内周PCA(第1のPCA)とを備えている。
なお、本実施形態では、DVD−R上のインフォメーションエリアをユーザエリア50とリードアウトエリア60とに分類し、リードエンドデータ54および外周PCA70がユーザエリア50の一部であるものとして説明する。しかし、将来の規格では、リードエンドデータ54および外周PCA70を含む領域が、「ユーザエリア」とは別の領域として定義される可能性もある。
図1において、内周側の図示は省略されているが、ユーザエリアには、内周側から外周側へ向かって、順次、ユーザデータ51が記録されており、このDVD−Rに対して最後に記録されたユーザデータが、参照符号52で表されるユーザデータ(最終ユーザデータ)である。最終ユーザデータ52の外側には、ボーダアウト53が記録されている。なお、ボーダアウトについては後述する。図1の例では、ボーダアウト53の後端のアドレスが、ユーザデータ51の最終アドレスである。最終ユーザデータ52およびそのボーダアウト53の外側には、リードエンドデータ54が記録され、そのさらに外側に、外周PCA70(第2のPCA)が設けられている。リードエンドデータ54は、ユーザデータ51および外周PCA70との境界を明確にするためのデータであるので、これらと識別が可能であることを条件として、任意のデータを用いることができる。
従来のDVD−Rでは、データ領域(ユーザエリア)が半径58mmまで、リードアウト領域が58.0〜58.5mmであったが、本実施形態のDVD−Rは、従来ランドプリピット情報のコピーであったRMD情報の記録可能なデータ領域の最終アドレスを書き換えることで、データ領域のラストアドレスを、半径58mm位置よりも内周側に変更する。これによって、ユーザデータの記録はRMD情報の最終アドレス位置で終了し、その後にリードエンドデータ54を記録しても、外周PCA70を上書きすることはない。
本実施例ではユーザデータは半径57.7mmまで、リードエンドデータ54は半径57.9mmまで、外周PCAは半径57.9〜58.0mmとしている。つまりリードアウト領域は幅0.2mm、外周PCAは幅0.1mmとなる。データ容量はリードアウト領域で約100MB、PCAで約20MBとなる。リードエンドデータ54の領域は、DVDプレイヤーが再生時に検出できればよいので、互換性が確保できれば、幅0.1mmにすることも可能である。その際は、ユーザデータは57.7mmまで、リードエンドデータは57.8mmまで、外周PCAは57.8〜57.9mmとなり、より内周側に外周PCAを構成することができる。
図2は、本実施形態にかかる情報記録媒体としてのDVD−Rの記録領域上の物理フォーマットを示す図である。特に、図2の(a)はDVD−Rの記録領域全体の物理フォーマットを示す。DVD−Rの記録領域は、最内周から外側に向けて順に、R−情報領域100、リードインエリア200、データ領域300及びリードアウトエリア400に分割されている。それぞれの領域は、整数個のECCブロックから成り、プリピットにより識別される。R−情報領域100は、記録パワー校正領域(PCA:Power Calibration Area)101と記録管理情報領域(RMA:Recording Management Area)102とを含む。
PCA101は、後述の記録ストラテジの補正時、及び、レーザの記録パワーの校正(最適記録パワー校正(OPC:Optimum Power Calibration))時、所定の記録パターンを試し書きするための領域である。
RMA102は、本実施形態にかかるDVD−Rのファイルシステムの情報及び記録管理情報(RMD:Recording Management Data)を記録した領域である。
リードインエリア200はデータ領域300の先頭を示す所定のデータを記録するための領域である。リードインエリア200のデータは、最初の記録時に記録される一連のデータの記録終了時、すなわち、図2の(a)の場合であれば、タイトルT3のデータの記録終了時に記録される。
データ領域300は、記録目的のデータを書き込むための領域である。データ領域300は、記録時ごとにボーダゾーンBi(i=1,2,3・・・)で分割されている。ボーダゾーンBiは、ディスク内周側のボーダアウトエリアBioutと、外周側のボーダインエリアBiinとから成る。二つのボーダゾーンBiおよびB(i+1)の間に、一回の記録時に記録される一連のデータ、すなわち、一つのタイトルのデータが記録される。ボーダアウトエリアBiout及びボーダインエリアBiinは、対応するタイトルの記録開始時のリンキング処理で確保される。更に、それぞれの領域へのデータの書き込みは、対応するタイトルの記録終了時に実行される。なお、データ領域300におけるリードアウトエリア400側の末端部には、前述のリードエンドデータが記述されるリードエンド領域310と、外周側のPCA320(第2のPCA)とが設けられている。
リードアウトエリア400は、データ領域300の末尾を示す所定のデータを記録するための領域である。リードアウトエリア400のデータは、データ領域300への書き込みの完了時、すなわち、ファイナライズ処理時に記録される。
図2の(b)は、RMA102内の物理フォーマットの詳細である。RMA102は、例えば、701個のECCブロックから成る。先頭のECCブロックはRMAリードインエリア102aである。RMAリードインエリア102aは、PCA101と、RMDを記録した領域102b1〜102b700との間の緩衝領域である。それにより、PCA101上での試し書き時、誤ってRMDを上書きして破壊することを防ぐ。領域102b1〜102b700は、それぞれ、RMDを一つのタイトルごとに記録するための領域である。
図2の(c)は、一つのRMD内の物理フォーマットの詳細を示す図である。RMDは、一つのECCブロックから成り、それ故、16個のセクタを含む。先頭の1セクタはリンキングロスエリアである。リンキングロスエリアには、空白を示す所定のデータ、例えば00hだけが記録されている。つまり、リンキングロスエリアは、別々のRMDの間の緩衝領域である。それにより、一つのタイトルの記録終了後、別のタイトルの追加記録時、新たなRMDを既存のRMDに上書きすることを防ぐ。
RMDの残り15個のセクタは、それぞれフィールドと呼ばれる領域である。それぞれのフィールドには先頭から順に、#0から#14までの番号が付けられている。先頭のフィールド#0には、本実施形態にかかるDVD−Rの一般的な情報が記録される。例えば、ディスクステータス及びプリピット情報のコピー等が含まれる。二番目のフィールド#1には、OPC関連情報が記録される。
図2の(d)はフィールド#0内の論理フォーマットの詳細を示す図である。フィールド#0は一つのセクタから成る。従って、フィールド#0内に実質的に記録可能なデータは、2048バイト=2KBである。それぞれのデータには1バイトずつ、バイトポジション(BP)と呼ばれる通し番号#0〜#2047が付けられている。
BP#0〜#1にはRMDフォーマットコードが、BP#2にはディスクステータス(disc status)、BP#3にはリザーブが、それぞれ記録される。ディスクステータスは、ディスクの記録モードを示すものであり、未記録、ディスクアットワンス(Disc at once)、インクリメンタルレコーディング(incremental recording)、ファイナライズ(finalized)を識別するものである。
BP#4〜#21には、ユニークディスクID(Unique Disc ID)が記録されている。ドライブがテスト記録した時の年月日、時間が記録されるものである。
BP#22〜#127には、プリピット情報のコピーが、BP#128〜#2047にはリザーブがそれぞれ記録される。図2の(e)は、プリピット情報のコピーの詳細を示す図である。
また、プリピット情報は、フィールド#0〜#13まで存在し、その内のフィールド#1の情報はRMDの#22〜#29まで、フィールド#2の情報はRMDの#30〜#37、フィールド#3の情報はRMDの#38〜#45、というように、RMDの8バイト毎に、各フィールドの情報が入っている。なお、各フィールドには各記録速度に応じた記録パワー、記録ストラテジ情報が入っている。例えば、フィールド#2〜#5は1倍速に関する情報、フィールド#6および#7には2倍速に関する情報、フィールド#8〜#13には4倍速に関する情報が入っている。なお、これはあくまでも一例であり、さらに高速の記録速度に関する情報が記録されていても良い。
BP#22のフィールドIDは、プリピットフィールド#1に対応し、BP#23にはアプリケーションコードが、BP#24にはディスクフィジカルコードが、それぞれ記録される。ディスクフィジカルコードは、トラックピッチ、線速度、ディスク直径などが記録されるものである。
BP#25〜#27には、記録可能なデータ領域のラストアドレス情報(Last Address of Data Recordable area)が、BP#28には、パートバージョン(Part Version)が、BP#29にはリザーブが、それぞれ記録されている。BPデータ領域のラストアドレス情報は、ディスクの外周側の記録可能な範囲を決定するものである。BP#28は、どの規格のバージョンに対応したディスクかどうか識別するためのものである。
BP#25〜#27に記録されているラストアドレス情報をドライブで書き換えることによって、当該DVD−Rにおいて記録可能なデータ領域の範囲を変更することができる。すなわち、BP#25〜#27に記録されているラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置を指すアドレスに書き換えることにより、ユーザデータを記録可能な領域の範囲を内周側へ縮小し、ユーザエリアとリードアウトエリアとの境界部に外周PCAを確保することができる。また、これにより、あるドライブで本実施形態のDVD−Rに記録を行った後、同じDVD−Rに対して他のドライブで記録を行おうとする際に、外周PCAが破壊されることを防止できる。
例えば、本発明に対応する新しいドライブが、本発明にかかるDVD−Rの外周PCAにテスト記録パターンを記録した後に、同じDVD−Rを従来の低速記録ドライブ(過去から市場に存在する低速記録ドライブ)に装着した場合、この低速記録ドライブは、外周にPCAが存在することを認識できないため、外周PCAにユーザデータを上書きしてしまうおそれがある。しかし、本発明に対応する新しいドライブが記録を行う度に、外周PCAよりも内周を指すように、RMD情報の中のラストアドレス情報(BP#25〜#27)を書き換えれば、その後に同じDVD−Rを使用する従来の低速記録ドライブは、このラストアドレス情報が指す位置を超えるアドレスにデータを上書きすることはないので、外周PCAが破壊されることを防止できる。
8倍速ディスクや16倍速ディスクなど、高速記録に対応したディスクを高速で記録する際は、外周PCAを使用する頻度が高いと考えられる。このため、ドライブがラストアドレス情報を書き換える際、外周PCAがより内周側に構成されるようにラストアドレス情報を変更することで、より安定した記録条件を求めることができる。もちろん、ディスク製造段階で、ラストアドレス情報をより内周側にして、外周PCAをより内周側に構成させることも可能である。
図3に、あるドライブで記録を行った後、同じディスクに他のドライブが記録を行う場合を想定し、それぞれの場合について、どちらのドライブがラストアドレス情報を書き換えるべきかを示す。なお、DVD−Rのレコーディングモードとしては、ディスクアットワンス(Disc at once)モードと、インクリメンタルレコーディング(incremental recording)モードがあるが、ここでは、複数のドライブが1枚のディスクに記録するインクリメンタルレコーディングについて説明する。
図3のケース1は、先に記録を行う第1記録ドライブが外周PCAを使用し、それ以降に記録を行う第2記録ドライブも外周PCAを使用する場合である。この場合は、第1記録ドライブが、RMDのラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えることにより、ユーザデータを記録可能なデータ領域のラストアドレスが変更される。そして、第2記録ドライブも、外周PCAを使用する(すなわち外周PCAを正しく認識できるドライブである)ため、外周PCAは上書きされることはない。
ケース2は、第1記録ドライブが外周PCAを使用し、それ以降に記録を行う第2記録ドライブが内周PCAのみを使用する場合(すなわち第2記録ドライブが従来のドライブである場合)である。この場合は、第1記録ドライブが、RMDのラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えることにより、ユーザデータを記録可能なデータ領域のラストアドレスが変更される。第2記録ドライブは、内周PCAのみを使用し、外周PCAを使用することはない。また、RMDのラストアドレス情報が外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えられているので、第2記録ドライブがこのラストアドレス情報を超えてユーザデータを書くことはないので、外周PCAがユーザデータにより上書きされることはない。
ケース3は、第1記録ドライブが内周PCAのみを使用し(すなわち第1記録ドライブが従来のドライブである場合)、それ以降に記録を行う第2記録ドライブが外周PCAを使用する場合である。この場合は、第2記録ドライブが、外周PCAを使用すると共に、RMDのラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えることにより、ユーザデータを記録可能なデータ領域のラストアドレスが変更される。
ケース4は、第1記録ドライブが内周PCAのみを使用し、それ以降に記録を行う第2記録ドライブも内周PCAのみを使用する場合である。この場合は、外周PCAは使用されず、従来の低倍速記録動作と同じである。
以上のケース1〜4より、外周PCAを使用するドライブ(本実施形態にかかるドライブ)と、外周PCAを使用しない(認識しない)従来のドライブとの間で本実施形態にかかるDVD−Rを共用して記録を行ったとしても、全てのケースにおいて外周PCAが確保されることが分かる。
図4AにDVD−Rの8倍速記録用サンプルディスクの半径位置(最外周部)とジッタの関係を示す。X軸にディスク半径位置、Y軸にジッタを表す。記録条件は同一記録ストラテジで、各位置での最適記録パワーで記録している。半径58.0mmを超えると急激にジッタが悪化しているのが分かる。
図4BにDVD−Rの8倍速記録用ディスクの半径位置(最外周部)と記録パワーの関係を示す。X軸にディスク半径位置、Y軸に最適記録パワーを表す。記録条件は同一記録ストラテジで、各位置での最適記録パワーで記録している。半径58.0mmを超えると急激に記録感度が悪化しているのが分かる。
以上のことから、半径58.0mmより内周側に外周PCAを設けてパワー校正を行うことにより、より安定した特性が得られる。
(情報記録再生装置)
次に、上述した実施形態にかかる情報記録媒体(ここではDVD−R)の情報記録再生装置の例として、DVD−Rレコーダをとりあげ、その構成および動作について説明する。
[情報記録再生装置の構成]
本実施形態にかかる情報記録再生装置(DVD−Rレコーダ)の構成の一例を、図5に示す。図5に示すように、本実施形態にかかる情報記録再生装置は、ピックアップ1、ヘッドアンプ2、イコライザ3、二値化器4、PLL5、記録ストラテジ復調部6、記録ストラテジ補正部7、記録パターン決定部8、記録パルス決定部9、記録パワー条件復調部10、β値算出部11、記録パワー決定部12、レーザ駆動部13、スピンドルモータ14、記録速度情報復調部15、記録速度設定部17、制御部40等を備えている。制御部40は、他の各部との接続の図示を省略したが、情報記録再生装置の各部に必要な制御命令等を送ることにより、情報記録再生装置の全体動作を制御する。制御部40が行う制御動作は種々の種類に及ぶが、図5では、制御部40のサブブロックとして、校正制御部22と校正情報管理部23のみを示した。校正制御部22は、後述するように、外周PCAまたは内周PCAのいずれにおいてパワー校正を行うかを決定し、ピックアップ1やその他の必要なブロックを制御することにより、パワー校正を実行する。校正情報管理部23は、後述するように、内周PCAと外周PCAとの間でデータの複写を行ったり、各PCAにおけるテスト記録データの削除等を行ったりするために、ピックアップ1やその他の必要なブロックを制御する。
[再生系]
まず、図5に示す情報記録再生装置の再生系について説明する。
図5において、30は光ディスク(ここではDVD−R)である。光ディスク30は、スピンドルモータ14によりその中心軸の周りに回転している。
光ヘッドすなわちピックアップ1は次のようにして、光ディスク30に対してレーザを照射し、その反射光をアナログ信号へ変換する。半導体レーザ1aが所定のパワーのレーザを出力する。その時のパワー(再生パワー)は、光ディスク30の記録層を変質させない程度に小さい。半導体レーザ1aから出力されたレーザR1は、集光レンズ1b、スプリッタ1c及び対物レンズ1dを通して、光ディスク30の記録層に焦点を結ぶ。レーザR1は光ディスク30の記録層で反射される。反射されたレーザR2は対物レンズ1d、スプリッタ1c及び検出レンズ1eを通して、光検出器1f上に焦点を結ぶ。光検出器1fは反射されたレーザR2を検出し、アナログ信号d1へ変換する。その時、アナログ信号d1の振幅は、反射されたレーザR2の強度に実質的に比例している。
ピックアップ1は、ステッピングモータ(図示せず)により、光ディスク30の半径方向に移動する。それにより、半導体レーザ1aから出力されたレーザR1の焦点を光ディスク30の半径方向に移動させる。
ヘッドアンプ2は、ピックアップ1からのアナログ信号d1を増幅して得られるアナログ信号d2を、イコライザ3へ出力する。イコライザ3は、ヘッドアンプ2からのアナログ信号d2の波形を整形する。二値化器4は整形されたアナログ信号d3を所定の閾値と比較して、その閾値を境に二値化する。それにより、アナログ信号d3はディジタル信号d4に変換される。位相同期ループ(PLL)5はディジタル信号d4と所定のクロック信号とを同期させる。データ復調部(図示せず)は、クロック信号と同期したディジタル信号d5からデータを復調する。
[記録系]
次に、本実施形態にかかる情報記録再生装置の記録系について、一例を説明する。
記録パターン決定部8は、光ディスク30への記録目的のデータに対応して、記録パターンを決定する。ここで、記録パターンとは、一定の高さの矩形パルス列をいう。記録パターンのそれぞれのパルス幅が記録マークの長さ(マーク長)を、パルス間隔が記録スペースの長さ(スペース長)を、それぞれ示す。
記録パルス決定部9は、記録パターン決定部8により決定された記録パターンd8に基づいて、記録パルスd9を決定する。ここで、記録パルスとは、半導体レーザ1aから出力されるレーザパルスと実質的に同じ矩形波形のパルスをいう。記録パルスd9の波形は後述の通り、記録パターンd8の波形とは異なる。記録パルスd9は記録パターンd8に基づいて、一定の条件に従って決定される。その一定の条件を記録ストラテジ(Write Strategy)という。その他に、記録パルス条件又は記録パルス構造(Write Pulse Structure)ともいう。記録ストラテジの詳細については後述する。
記録パワー決定部12はデータ記録時、半導体レーザ1aのパワーを決定する。それにより決定されたパワーの値を記録パワーという。決定された記録パワーd12はレーザ駆動部13へ出力される。
レーザ駆動部13は半導体レーザ1aへの駆動電流d13を制御する。それにより、駆動電流d13は記録パワーd12に対応する大きさで半導体レーザ1aを流れる。その結果、半導体レーザ1aは記録パワーd12に相当するパワーのレーザR1を照射する。
[記録ストラテジの補正及び記録パワーの校正のための構成]
レーザ照射によって形成される記録マークの形は、記録パルス及び記録パワーだけでは一意には決まらない。例えば、記録層の冷却速度は、記録時の環境温度に依存する。更に、半導体レーザの波長は、半導体レーザの温度変動に実質的に比例して変動する。例えば、DVD−Rの記録層に含まれる有機色素の光吸収特性は吸収光の波長に依存するので、レーザの波長の変動は記録層による吸収エネルギーを変動させる。その上、半導体レーザの波長及び光ディスクの構造等は通常、製品ごとに規格値の周辺でばらついている。以上のような変動因子により、記録マークの形は変動する。従って、記録パルス及び記録パワーを規格通りの記録ストラテジ及び記録パワー条件に従って定めるだけでは、記録マークの整形の精度、特にエッジの位置決めの精度を十分には上げられない。その結果、実際に記録されたデータのエラーレートを十分に低減できない。そこで、光ディスク及び光ディスク記録再生装置ごとに記録ストラテジを補正し、かつ記録パワーを校正する。それにより、最適な記録パルス及び記録パワーをそれぞれ決定する。
また、本実施形態の光ディスク記録再生装置は、記録ストラテジの補正及び記録パワーの校正を目的として、例えば、以下のような構成を有している。
β値算出部11は、ヘッドアンプ2からの信号d2のβ値を算出する。ここで、アナログ信号のβ値とは、アナログ信号の極大値a及び極小値bにより次式で定義される:
β=(a+b)/(a−b)。
つまり、β値は、アナログ信号波形の上下方向での中心値((a+b)/2)を振幅(a−b)で規格化したもの、に相当する。
更に、アナログ信号のβ値は以下の通り、半導体レーザ1aの記録パワーを決定するパラメータである。ピックアップ1により再生されたアナログ信号d1は二値化器4により所定の閾値を境に二値化される。その時、アナログ信号d1の波形の上下方向での中心値が閾値からずれると、元のディジタルデータの再生精度が低下する。つまり、ディジタルデータのエラーレートがβ値に依存して変化する。従って、そのエラーレートが所定の許容値以下になるように、アナログ信号d1のβ値を最適値に選択しなければならない。アナログ信号d1のβ値は光ディスク30の記録マークの光学的反射率及び形で実質上決まるので、半導体レーザ1aから照射されるレーザR1の記録パワーで決まる。逆に、アナログ信号d1のβ値を決めると、それらに対応する記録パワーを決定できる。アナログ信号のβ値と記録パワーとの対応関係を記録パワー条件という。
光ディスク30は、規格上定められた標準記録ストラテジ及び標準記録パワー条件と共に、過去に行われたデータ記録における記録ストラテジ及び記録パワー条件の履歴を所定領域に記録している。記録ストラテジ復調部6は、PLL5により出力されたディジタル信号d5から記録ストラテジd6を復調し、記録ストラテジ補正部7へ出力する。一方、記録パワー条件復調部10は、ディジタル信号d5から記録パワー条件d10を復調し、記録パワー決定部12へ出力する。
ジッタ検出部20は、二値化器4からディジタル信号d4aを、PLL5からディジタル信号d4のクロック信号からのずれ、すなわちジッタd5aを、それぞれ入力する。それらの入力に基づいて、ジッタ検出部20は、ディジタル信号d4のパルス前端でのジッタd20a、及び後端でのジッタd20bを検出し、記録ストラテジ補正部7へ出力する。
記録ストラテジ補正部7は、入力した記録ストラテジd6を内部のメモリ(図示せず)に記憶する。更に、記憶した記録ストラテジの補正時、ディジタル信号d4のパルス前端でのジッタd20a及び後端でのジッタd20bをそれぞれ所定の許容値と比較する。その比較結果を、記録ストラテジ補正部7は、その時記憶している記録ストラテジに対応づけて前記メモリへ記憶する。その後、記録ストラテジ補正部7は、その記録ストラテジを所定の補正値だけ補正する。補正後、その記録ストラテジd7を記憶すると共に、記録パルス決定部9へ出力する。
[DVD−Rへのタイトル記録動作]
本実施形態にかかる情報記録再生装置(DVD−Rレコーダ)では、次のようにしてタイトル記録を実行する。
図6は、本実施形態にかかる情報記録再生装置(DVD−Rレコーダ)が、光ディスク30としてDVD−Rを用い、これにタイトルを記録する動作を示すフローチャートである。
<ステップS1>
まず、DVD−RをDVD−Rレコーダへ装着する。
<ステップS2>
DVD−Rの装着の検知後、DVD−Rをスピンドルモータ14で回転させる。ピックアップ1はまず、DVD−RのRMAを参照し、RMDを読み出す。
<ステップS3>
DVD−Rレコーダのユーザが、記録速度設定部17により記録速度を設定する。具体的には、標準記録速度3.49m/sに対する設定記録速度の倍率を示す正の整数n0が、設定記録速度情報として入力される。
<ステップS4>
記録速度情報復調部15により、RMA内のRMDの一つから記録速度情報を読み出す。好ましくは、最新のものから順に読み出される。この時読み出された記録速度情報は、上記の通り、標準記録速度3.49m/sに対する記録速度の倍率を示す正の整数nである。
<ステップS5>
記録速度情報復調部15から読み出された記録速度情報d15は、制御部40の校正制御部22に入力され、記録速度情報nとして、設定記録速度情報n0と比較される。記録速度情報nが設定記録速度情報n0より大きい場合は、処理をステップS6へ進める。それ以外の時は、処理をステップS8へ進める。なお、RMA情報がない場合は、記録速度情報n0が予め設定した記録速度nより大きい場合はS6に進み、小さい場合はS8に進む。
ステップS4で読み出した記録速度情報と同じOPC情報から、記録ストラテジ復調部6により記録ストラテジを、記録パワー条件復調部10により記録パワー条件を、それぞれ読み出す。記録ストラテジ復調部6は記録ストラテジd6を記録ストラテジ補正部7へ出力する。記録ストラテジ補正部7は記録ストラテジd6を補正せずにそのまま内部のメモリに記憶した後、記録パルス決定部9へ出力する。一方、記録パワー条件復調部10は記録パワー条件を記録パワー決定部12へ出力する。
<ステップS6>
制御部40の校正制御部22の制御により、DVD−Rの外周部へ光ピックアップ1を移動させ、外周PCA内で既に記録された領域を読み取り、パワー校正を実行するための、外周PCAの未記録領域をサーチする。書き換え型のディスクの場合は、PCAの記録領域を使い切った場合は上書きするが、DVD−R/RWでは、記録領域がどこまで使用されているかの情報は存在しないため、外周PCAを再生することにより、未記録領域をサーチする。なお、このとき、外周PCAに既に記録されているテスト記録パターンも読み出す。
<ステップS7>
DVD−Rの外周PCAの記録開始位置はラストアドレス情報に基づいて決定され、外周PCAの最外周から記録される。記録される信号は、8−14変調ランダム信号や、3T信号と14T信号の混合パターン等である。記録パワーの校正は次のように行う。記録パターン決定部8が、テスト記録パターンd8を出力する。記録パルス決定部9が、テスト記録パターンd8に基づき、テスト記録パルスd9を決定する。次に、記録パワー決定部12が、記録パワーを所定の初期値に設定する。ただし、この初期値としては、目標のβ値に対応する記録パワーを、記録パワー条件から選択しておく(例えば、目標のβ値は、記録パワー条件復調部10で復調した記録パワー条件に含まれる等)。記録パワーd12に相当するレーザ光をディスクに照射し、テスト記録マークをPCAに作成する。
ピックアップ1は、PCAのテスト記録マークに再生パワーのレーザ光を照射し、反射光を得る。反射光は、アナログ信号d1に変換され、ヘッドアンプ2がアナログ信号d2を出力する。β値算出部11は、アナログ信号d2に基づき、β値d11を算出する。記録パワー決定部12は、算出したβ値を記憶する。その後、記録パワーを初期値から所定パワー幅で1ステップずつ変化させて、上記過程を繰り返す。例えば、記録パワー条件から最適記録パワーを30mWと読み取った場合、28mWから32mWまで1セクタ0.5mW幅毎に記録すると9ステップとなり、9セクタが割り当てられる。こうすることで、1ECCブロック(=16セクタ)内で記録が完結するようになる。記録後直ちに再生を行い、その結果、最も特性のよい記録パワーとβ値とを記録パワー決定部12で選択する。このように、記録パワーの変化回数(ステップ数)とβ値との対応表、すなわち新たな記録パワー条件が得られる。その新たな記録パワー条件から目標のβ値に対応する最適記録パワーが選択される。
<ステップS8>
制御部40の校正制御部22が、決定された記録速度で、内周PCAでテスト記録可能かどうか判断する。記録速度が高い場合や、内周PCAで特性が得られない場合は、ステップS6に進み、外周PCAへ移動してテスト記録する。
<ステップS9>
内周PCAで最適パワーを算出するため、OPCが実行される。
<ステップS10>
記録パワー決定後は、RMAより復調された記録ストラテジおよびメモリに記録された記録ストラテジでテスト記録を行う。この際、記録速度に応じたテスト記録が内周PCAおよび外周PCAで記録される。
<ステップS11>
記録ストラテジを決定する。
<ステップS12>
ストラテジを決定した後、内周に移動してデータ記録を開始する。
<ステップS13>
データ記録終了後、校正情報管理部23が、内周と外周でPCAに記録された最適記録情報をRMAおよび記録再生装置のメモリに記録する。
以上のステップS1〜S13により、DVD−Rへのタイトル記録が完了する。
なお、ステップS10では、DVD−R30から推奨記録ストラテジ及び推奨記録パワー条件を読み出す。ここで、推奨記録ストラテジ及び推奨記録パワー条件としては、例えば、次のようなものを選択できる。DVD−R30のRMDのフィールド#1を参照し、ドライブに関する情報を読み出す。それらの情報から、DVD−R30に記録された記録ストラテジ及び記録パワー条件の内、同じDVD−Rレコーダで記録されたものがあるかどうか判別する。もしあれば、それらを推奨記録ストラテジ及び推奨記録パワー条件として採用する。その他に、同じ機種のDVD−Rレコーダで記録された記録ストラテジ又は記録パワー条件があれば、それらを採用しても良い。
こうして、本実施形態にかかるDVD−Rレコーダは、新たなタイトル記録時、DVD−R30に記憶された履歴から、設定記録速度と等しい記録速度での記録時に採用された記録ストラテジ及び記録パワー条件を読み出して再び採用できる。それにより、記録ストラテジ及び記録パワー条件の最適値からのずれの内、記録速度の相違に起因する部分を補償し直さなくても良い。その結果、記録ストラテジ及び記録パワー条件の決定を早くできる。また、外周PCAと内周PCAの両方の情報を共有比較できることから高速記録に対応した記録条件を精度良く決定することができる。
DVD−RやDVD−RWディスクが記録再生を行う際、線速度一定のCLV(constant liner velocity)方式のため、外周でのディスク回転数に比べて、内周での回転数は半径に反比例して上昇する。ディスクを高速で回転させると、モータ回転音や振動が増大しメカノイズが発生することから、内周から中周の所定の半径位置までは、低速で記録し、中周から最外周では高速で記録するZoneCLV方式が採用されている。ZoneCLV方式の場合、例えば内周側は4倍速で記録し、外周側は8倍速で記録するためには、内周PCAで4倍速のテスト記録を行った後、外周PCAで8倍速のテスト記録を行い、最適記録パワーやβ値を決定後、データ領域での記録を開始することも好ましい。もちろん、中周は6倍速で記録してもよい。6倍速を内周PCAと外周PCAのどちらを使用するかは、記録再生装置のディスクを回転させるモータ回転数の上限性能やサーボの面振れ、偏芯の追従性能によって判断される。
データ記録終了後、内外周PCAで決定した最適記録パワーやβ値などの記録履歴情報を内周にある記録管理情報(RMD:Recording Management Data)領域に、内外周PCAのどちらの領域で記録したかの選択情報および記録速度を関連付けして記録することも好ましい。これにより、そのディスクを記録再生装置より一旦取り出した後に、再度挿入して記録開始する際にも、RMDを見ることによって、内外周での記録パワーが分かる。従って、テスト記録は不要となり、記録開始時間を短縮することができる。また、DVD−Rの様なライトワンス系のディスクではPCAが有限であるが、上記の構成によれば、ディスクを脱着する度にテスト記録を行う必要がなくなり、PCAを消費する心配がない。
また、DVD−Rの様な有機色素系のディスクでは、スピンコートで色素膜が形成されるため、内外周で膜厚の違いが発生し、記録感度の差が発生してしまう。これに対して、内周PCAで低速記録し、外周でも同じ低速で記録し、ディスクの記録パワーの感度差を直線近似することにより、例えば中周までの記録パワーを補正することができる。内周では高速記録はできないが、同じ様に直線近似式を高速記録する際にも適応することによって、例えば中周から最外周までの記録パワーを補正することができる。
また、校正情報管理部23の制御により、内周PCAに記録されたテスト記録パターンを外周PCAにコピーすることによって、内周PCAがディスク表面の傷や汚れによって再生できない状態になった場合でも、外周にテスト記録パターンが残っていれば、指定された記録速度に対して記録可能とすることができる。なお、外周PCAの情報も内周PCAにコピーすると、外周PCAがディスク表面の傷や汚れによって再生できない状態になった場合でも、内周PCAにテスト記録パターンが残っているため、記録可能とすることもできる。内周PCAに記録されたテスト記録パターンを外周PCAにコピーするのは、(1)データ領域へのデータ記録前と、(2)データ領域へのデータ記録終了後、との二つの場合があるが、記録開始までの時間を短縮することを考えると、(2)のタイミングでコピーすることが望ましい。内周PCAに記録されたテスト記録パターンを外周PCAにコピーするタイミングは、(1)外周PCAにテスト記録パターンを記録するとき、(2)新たな記録速度で記録するとき、(3)新たな情報記録再生装置で記録するとき、(4)所定の記録動作回数毎、(5)記録動作を行う度毎、の5つの場合であるが、上述のように傷や汚れといった不慮の不具合を救済するには、(5)が好ましい。また、外周PCAに記録されたテスト記録パターンを内周PCAにコピーする際も、同様である。
また、PCAだけでなくRMAも外周側に設け、RMAの記録管理情報も、内周RMAから外周RMAにコピーしておくことが好ましく、外周RMAから内周RMAにコピーするとさらに好ましい。内周RMAに記述された記録管理情報を外周RMAにコピーするのは、前述のPCAと同様に(1)データ領域へのデータ記録前と、(2)データ領域へのデータ記録終了後、との二つの場合があるが、記録開始までの時間を短縮することを考えると、(2)のタイミングでコピーすることが望ましい。内周RMAに記録された記録管理情報を外周RMAにコピーするタイミングも、前述のPCAと同様に、(1)外周RMAに記録管理情報を記述するとき、(2)新たな記録速度で記録するとき、(3)新たな情報記録再生装置で記録するとき、(4)所定の記録動作回数毎、(5)記録動作を行う度毎、の5つの場合であるが、上述のように傷や汚れといった不慮の不具合を救済するには、(5)が好ましい。また、外周RMAに記述された記録管理情報を内周RMAにコピーする際も、同様である。
記録再生装置にディスク挿入後、内周PCAでのパワー校正と外周PCAでのパワー校正のどちらを先に実行するかはドライブ設計により異なる。内周PCAを先に実行する利点は、光ピックアップがディスクを記録再生する前に読み込むリードインエリア側に内周PCAが配置されるため、内周PCAでのパワー校正を先に実行し、高速記録の指令が出てから外周PCAでのパワー校正を実行することで低速記録から高速記録への移行がスムーズに行える点である。また、内周では高速での記録再生が困難であるため、テスト記録パターンを内周では低速で再生し、外周では高速で再生するというように、内周PCAと外周PCAとを使い分けることによって、読み取り時間の短縮を図ることができる。
なお、本実施形態では、単層ディスクを例示したが、複数の記録層を有するディスクであって、複数の記録層の全てについて内周側から外周側へ記録を行うディスクに対しても、本発明を適用可能である。すなわち、複数の記録層のそれぞれを図1に示したようなエリア構造とし、各記録層への記録の際に、記録速度等に応じて当該記録層の内周PCAと外周PCAとを使い分けるようにすれば良い。
(第2の実施形態)
本発明の他の実施形態にかかる光ディスク(DVD−R)について、以下に説明する。
図7に示すように、本実施形態にかかる光ディスク40は、記録層として、記録層L0およびL1を有する二層ディスクである。すなわち、光ディスク40は、透明基板41の表面に、記録層L0、半透過層42、中間層43、記録層L1、反射層44、保護層45を、この順に積層した構成である。記録再生時には、透明基板41側からレーザ光が入射する。
この光ディスク40では、記録層L0と記録層L1とは、トラックのスパイラル方向が逆になっている。すなわち、記録層L0に対してデータを記録する際は、内周側から外周側へ記録が進行するが、記録層L1に対してデータを記録する際は、外周側から内周側へ記録が進行する。
このような二層ディスクに対するユーザデータの記録方法としては、以下の4通りがある。第1の方法は、図8Aに示すように、記録層L0のデータエリアの最内周から外周側へ向かって記録を開始し、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了すると、記録層L1のデータエリアの最外周から内周側へ向かってユーザデータの記録を継続して行う方法である。
第2の方法は、光ディスクに対してデータを複数回にわたって記録する方法であり、図8Bに示すように、記録層L0のデータエリアの最内周から外周側へ向かって記録を開始する。そして、1回の記録を終了した後に、次の記録を開始する際は、記録層L0では、前回の記録によってユーザデータの記録が完了している領域よりも外周側から記録を再開し、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了すると、記録層L1のデータエリアの最外周からユーザデータの記録を開始する。そして、記録層L1では、前回の記録によってユーザデータの記録が完了している領域よりも内周側から記録を再開し、内周側へ向かってユーザデータの記録を行う。
第3の方法は、第1の方法と同様に記録層L0のデータエリアの最内周から記録を開始するが、記録層L0のデータエリアの最外周へ到達しないうちに、記録層L1へ移動して折り返し記録を行う方法である。この方法は、記録しようとするユーザデータの容量が分かっている場合に有効であり、記録層L0から記録層L1への折り返しは、一般に、記録しようとするユーザデータが均等に記録層L0,L1へ記録されるようになされる。これにより、ファイナライズ時にデータエリアの未記録領域をダミーデータで埋める処理に要する時間を短縮することができ、ユーザデータの記録を短時間で完了できるという利点がある。
第4の方法は、第2の方法と同様に記録層L0のデータエリアの最内周から記録を開始し、記録が完了した領域の後ろに続けて記録を行っていく方法であるが、記録層L0のデータエリアの最外周へ到達しないうちに、記録層L1へ移動して折り返し記録を行う点で、第2の方法と異なる。この方法は、例えば、直径12cmのDVD−Rにおいて半径4cm以内の領域を実質的な情報エリアとして使用する場合等に有効である。この場合、例えば、情報記録面において情報エリアとして使用しない領域(例えば半径4cmより外側の領域)に、作図機能を持つライティングソフトを用いて、ユーザが所望の画像をビットマップとして描画すること等が可能となる。また、直径12cmのDVD−Rを、8cm複層DVD−ROMとして、例えばソフト開発用のプリマスター等の用途に用いることも可能である。また、図8Eに示すように、記録層L0の最内周から記録を開始し、所定の位置で記録層L1へ移動して折り返し記録し、ファイナライズせず、折返し記録を連続して繋ぐ方法が考えられる。これにより、ファイナライズの時間を短縮できるだけでなく、未記録領域が少なくなるため、ユーザ記録領域を無駄にすることなく、有効に使用することができる。ファイナライズ前に機器から光ディスク取り出した場合でも、常に記録層L1にデータが記録されている状態になるため、ROMディスクとの互換性が比較的高くなる。
なお、第1および第3の方法は、光ディスクに対してデータを1回で書き込むため、ディスク・アット・ワンス(Disc at once)記録と呼ばれる。一方、第2および第4の方法は、光ディスクに対して逐次データを追記していくため、インクリメンタル(Incremental)記録と呼ばれる。
図9は、上述の第1または第2の方法による記録が行われた場合、すなわち、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了した後に、記録層L1のデータエリアの最外周から記録を開始する場合について、光ディスク40の記録層L0、L1のエリア構造を示す断面模式図である。なお、図9は、光ディスク40の半径断面を示すものであり、図9における左側が光ディスク40の内周側であり、右側が光ディスク40の外周側である。
この場合、図9に示すように、記録層L0は、内周側から外周側へ向かって、内周PCA(インナー・ディスク・テスティング・エリア)81、RMA82、リードインエリア83、データエリア84、ミドルエリア(中間領域)85、外周PCA(アウター・ディスク・テスティング・エリア)86を有している。また、記録層L1は、内周側から外周側へ向かって、内周PCA92、RMA91、リードアウト90、データエリア89、ミドルエリア88、外周PCA87を有している。図9において、Pout0は、データエリア84の最外周位置、すなわち、記録層L0においてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置を示す。また、Pout1は、データエリア89の最外周位置、すなわち、記録層L1においてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置を示す。例えば直径12cmのディスクの場合であれば、Pout0はディスク中心から例えば58.08mmの位置にあり、Pout1はディスク中心から58.00mm〜58.08mmの位置にある。
この光ディスク40へデータを記録する場合、光ディスク記録再生装置は、記録層L0へのデータ記録を開始する前に、記録層L0の内周PCA81または外周PCA86を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを校正する。ここで、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA81でテスト記録を行うことが可能であるが、例えば4倍速以上の高速記録を行う場合、光ディスクを回転させるスピンドルモータの性能があまり高くないドライブでは、スピンドルモータの回転数が限界に達する等の理由で、内周PCAでテスト記録ができない場合がある。このような場合は、外周PCA86を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA86を用いることに差し支えはない。その後、記録層L0について適切に校正された記録パワーに従って、記録層L0のデータエリア84へユーザデータを記録する。そして、記録層L0への記録を完了し、記録層L1への記録を開始する前に、記録層L1の内周PCA92または外周PCA87を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを再度校正する。その後、記録層L1に対して適切に校正された記録パワーに従って、記録層L1のデータエリア89へユーザデータを記録する。記録層L1についても、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA92でテスト記録を行うことが可能であるが、4倍速以上の高速記録を行う場合であれば、外周PCA87を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA87を用いることに差し支えはない。
あるいは、光ディスク記録再生装置は、データ記録を開始する前に、記録層L0および記録層L1の両方について、内周PCAおよび/または外周PCAを用いたテスト記録を行うことにより、各記録層に対するレーザ記録パワーを校正し、その後、記録層L0,L1のそれぞれに対して、校正されたレーザ記録パワーに従って記録を実行するようにしても良い。
あるいは、インクリメンタル記録の場合は、まず記録層L0の内周PCAおよび/または外周PCAを用いたパワー校正を行った上で記録層L0へのデータ記録を行い、記録層L0から記録層L1へ移動して記録を行うことが分かった時点で、記録層L1の内周PCAおよび/または外周PCAを用いたパワー校正を行うようにしても良い。
なお、リードイン83、ミドルエリア85,88、リードアウト90については、ファイナライズ時に光ディスク記録再生装置が記録しても良いし、光ディスク40の製造時に所定のデータが予め記録されていても良い。
図10は、上述の第3または第4の方法による記録が行われた場合、すなわち、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了する前に記録層L1への記録を開始する場合について、光ディスク40の記録層L0、L1のエリア構造を示す断面模式図である。なお、図10も、光ディスク40の半径断面を示すものであり、図10における左側が光ディスク40の内周側、右側が光ディスク40の外周側である。
この場合、図9と図10とを比較することから分かるように、第3および第4の方法による記録が行われた場合は、記録層L0において、データエリア84としてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置Pout0よりも内周側にミドルエリア85および外周PCA86の少なくとも一部が位置するよう、ミドルエリア85および外周PCA86の全体が、内周側へシフトされている。シフトされたミドルエリアをシフティッド・ミドル・エリア、シフトされた外周PCAをフレキシブル・アウター・ディスク・テスティング・エリアと呼ぶ。すなわち、ミドルエリア85は、記録層L0のデータエリア84においてユーザデータが記録されている最外周位置の外周側直近に確保され、外周PCA86は、ミドルエリア85の外周側直近に確保されている。また、記録層L1においては、データエリア89としてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置Pout1よりも内周側にミドルエリア88および外周PCA87の少なくとも一部が位置するよう、ミドルエリア88および外周PCA87の全体がシフトされている。すなわち、ミドルエリア88は、記録層L1のデータエリア89においてユーザデータが記録されている最外周位置の外周側直近に確保され、外周PCA87は、ミドルエリア88の外周側直近に確保されている。ミドルエリア85,88の幅は、リードアウトの幅とほぼ等しく、0.2mm程度以上確保されていることが好ましく、0.4mm程度が望ましい。ミドルエリア85,88は、リードアウトと同様にダミーデータが記録される領域である。0.2mm程度の幅があれば、光ディスク記録再生装置が、当該領域に有意なデータが記録されていないことを認識できるが、光ディスク記録再生装置及び/または光ディスク再生装置による認識の確実性を求めるのならば0.4mm程度を要するからである。
また、光ディスク40の製造時に、ユーザデータを記録可能な領域の最外周位置Pout0,Pout1の外周側直近に、ミドルエリアであることを表すダミーデータ(図11におけるミドルエリア93,94)が予め記録されている場合もある。この場合、上述の第3または第4の方法による記録を行って外周PCA86,87を内周側へシフトさせる場合は、図11に示すように、製造時に記録済みのミドルエリア93,94よりも内周側にミドルエリア85,88および外周PCA86,87の全体をシフト配置すれば良い。
図10または図11に示すように、第3または第4の方法による記録の場合も、光ディスク記録再生装置は、記録層L0へのデータ記録を開始する前に、記録層L0の外周PCA86を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを校正する。ここで、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA81でテスト記録を行うことが可能であるが、4倍速以上の高速記録を行う場合であれば、外周PCA86を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA86を用いることに差し支えはない。その後、記録層L0について適切に校正された記録パワーに従って、記録層L0のデータエリア84へユーザデータを記録する。そして、記録層L0への記録を完了し、記録層L1への記録を開始する前に、記録層L0の外周PCA87を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを再度校正する。その後、記録層L1に対して適切に校正された記録パワーに従って、記録層L1のデータエリア89へユーザデータを記録する。記録層L1についても、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA92でテスト記録を行うことが可能であるが、4倍速以上の高速記録を行う場合であれば、外周PCA87を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA87を用いることに差し支えはない。
なお、図9および図10において、斜線を付して示した領域は、データが記録されていない未記録領域である。また、記録層L1においてXで示した領域は、記録層L0からの影響を考慮して設けられたバッファ領域である。すなわち、図9および図10において、RMA91の両端、データエリア89の両端、および内周PCA92の最内周側にそれぞれ設けられたバッファ領域は、その直下の記録層L0にデータが記録されていると記録時のレーザ光強度が弱まって記録条件が変化する可能性があるため、これらのバッファ領域にはデータを記録しないことが好ましい。また、図9および図10において、記録層L0およびL1においてYで示した領域は、以下に詳述するが、記録層L0の内周PCAおよび外周PCAにおけるテスト記録領域と、記録層L1の内周PCAおよび外周PCAにおけるテスト記録領域とが、光ディスク40の記録面に垂直な方向に互いに重ならないようにするためのバッファ領域である。なお、バッファ領域は必ずしも設けなくても良い。
ここで、外周PCA86,87の内部構成について、図12および図13を参照しながら説明する。なお、外周PCA86,87の内部構成は、図9に示す場合と図10に示す場合とにおいて共通である。
図12に示すように、記録層L0の外周PCA86には、7088個のテスト記録フィールド(#1〜#7088)からなるテスト記録実行領域86aが存在する。各テスト記録フィールドには、パワー校正のために、1ECCブロック(16セクタ)のデータを記録可能である。図12において、左側が内周側、右側が外周側である。そして、外周PCA86に対するテスト記録は、外周PCA86の外周側のテスト記録フィールドから内周側へ向かって、すなわちテスト記録フィールド#1,#2,#3・・・の順に、順次実行される。各テスト記録フィールドに対するテスト記録は、図12に示すように、記録層L0におけるトラックの進行方向に沿って(内周側から外周側へ向かって)、実行される。つまり、テスト記録フィールドのそれぞれにおける16個のセクタ(#0〜#15)のうち、内周側から1番目(#0)および2番目(#1)のセクタを除く最大14個のセクタに対して、内周側から外周側へ向かって順次テスト記録が実行される。
一方、記録層L1の外周PCA87にも、図13に示すように、7088個のテスト記録フィールド(#1〜#7088)からなるテスト記録実行領域87aが存在する。各テスト記録フィールドには、パワー校正のために、1ECCブロック(16セクタ)のデータを記録可能である。図13においても、左側が内周側、右側が外周側である。そして、外周PCA87に対するテスト記録は、記録層L0の外周PCA86とは逆に、光ディスク40の内周側から外周側へ向かって、テスト記録フィールド#1,#2,#3・・・の順に、順次実行される。各テスト記録フィールドに対するテスト記録は、図13に示すように、記録層L1におけるトラックの進行方向に沿って(外周側から内周側へ向かって)、実行される。つまり、テスト記録フィールドのそれぞれにおける16個のセクタ(#0〜#15)のうち、外周側から1番目(#0)および2番目(#1)のセクタを除く最大14個のセクタに対して、外周側から内周側へ向かってテスト記録が順次実行される。
なお、記録層L0の外周PCA86のテスト記録実行領域86aと、記録層L1の外周PCA87のテスト記録実行領域87aは、図9および図10に示すように、光ディスク40のディスク面に垂直な方向において互いに重ならないように配置されている。また、記録層L0の外周PCA86において、テスト記録実行領域86a以外の領域86bは、未記録状態とされる。これは、以下の理由による。すなわち、記録層L0の領域86bにテストパターンとして何らかのデータが記録されると、その直上の記録層L1にテスト記録を行う際に、テスト記録実行領域86bに記録されたテストパターンによって、レーザ光の透過率が変化してしまう。つまり、記録層L1の実効パワーが記録層L0の記録状態によって変動し、正確なパワー校正が困難となるからである。もちろん、領域86bを記録層L0のテスト記録実行領域とし、領域87bを記録層L1のテスト記録実行領域としても構わない。
なお、上述では、外周PCA86,87の構造について説明したが、内周PCA81,92も外周PCA86,87と同様の構造を有するため、図を用いた詳細な説明は省略する。記録層L0の内周PCA81については、外周PCA86と同様に、外周側のテスト記録フィールドから順にテスト記録が実行されるが、各テスト記録フィールドのセクタに対する記録順序は、記録層L0のトラックの進行方向すなわち内周側から外周側へ向かう方向である。記録層L1の内周PCA92については、外周PCA87と同様に、内周側のテスト記録フィールドから順にテスト記録が実行されるが、各テスト記録フィールドのセクタに対する記録順序は、記録層L1のトラックの進行方向すなわち外周側から内周側へ向かう方向である。また、内周PCA81と内周PCA92についても、それぞれのテスト記録実行領域が、光ディスク40のディスク面に垂直な方向において互いに重ならないように配置されている。
以上の構成にかかる光ディスク40にデータを記録する際に、光ディスク記録再生装置は、第1の実施形態と同様に、比較的低速(例えば1倍速あるいは2倍速)で記録を行う場合は、内周PCA81,91を用い、比較的高速(例えば2倍速以上)で記録を行う場合は、外周PCA86,87を用いたテスト記録により、レーザの記録パワーを校正することが好ましい。
また、図8C、図8D、および図8Eに示した記録方法により、図10に示すとおり、記録層L0のミドルエリア85および外周PCA86と、記録層L1のミドルエリア88および外周PCA87とを内周側へシフトさせた場合は、ユーザデータの最終アドレス(ラストアドレス)が、光ディスク記録再生装置により、RMA82,91内のRMDへ記録される。このラストアドレスが記録される領域は、第1の実施形態において図2の(b)〜(e)により示されるBP(バイトポジション)#25〜27である。但し、BP#25〜27は1層構成のDVD−Rにおけるラストアドレスを記録する領域であるため、2層構成でのラストアドレスを記録する領域は1層構成でラストアドレスを記録する領域とは別にした方が混同を避けることができる。2層構成のラストアドレスを記録する新たなBPとしては、図2の(d)及び(e)に示したようにBP#125までは1層構成におけるコピープリピット情報を記録する領域であるため、BP#125から数バイト間隔を持たせたBP、例えばBP#127まではリザーブとしBP#128〜131に2層構成のラストアドレス(通常はミドルエリアの開始アドレス)を割り当てても良い。
なお、記録層L0の外周PCA86、記録層L1の外周PCA87を内周側へシフトしてテスト記録を行った際に、光ディスク40のRMA82,91には、外周PCA86,87を内周側へシフトして用いたことを表す情報が、光ディスク記録再生装置により記録される。例えば、記録層L0の外周PCA86を内周側へシフトしてテスト記録を行った場合、図14に示すように、記録層L0のRMA82内のRMDにおけるフィールド#14にて、外周PCA86をシフトして使用したか否かを表すフラグが、「使用」を表す値に設定される。例えば、外周PCA86がシフトして使用された場合は、BP0に0001b、シフトしない場合は0000bが設定される。
以上のとおり、本実施形態にかかる光ディスク40では、複数の記録層のそれぞれに外周PCAが設けられているので、各記録層へ記録を行う際に、記録速度等に応じて、当該記録層の外周PCAを用いたテスト記録を行うことが可能である。
また、図10に示すように、図8C、図8D、および図8Eに示した記録方法により、記録層L0のミドルエリア85および外周PCA86と、記録層L1のミドルエリア88および外周PCA87とを内周側へシフトさせた場合は、データエリアの未記録領域へダミーデータを書き込む処理が不要となるため、ファイナライズ処理に要する時間を短縮することができる。この結果、ユーザデータの記録を短時間で完了できるという利点がある。
さらに、本実施形態では、記録速度に応じて各記録層において内周PCAと外周PCAとを使い分けるものとしたが、第1の実施形態に記載したように、低速記録であっても、内周PCAと外周PCAとの両方にテスト記録を行うことにより、ディスクの内外周で生じる記録感度の差に応じて記録パワーの補正を行うことも可能である。また、第1の実施形態で説明したように、ディスク表面に傷や汚れが生じた場合等に備えて、同一記録層における内周PCAと外周PCAのテスト記録パターンを互いの領域にコピーすることも好ましい。さらに、外周PCAに関する管理情報を記録するRMAを外周側にも設けても良いし、その場合に、内周RMAと外周RMAの情報を互いの領域にコピーすることもより好ましい。
なお、本実施形態では、片面二層構造の光ディスク40を例示したが、本発明は、三層以上の光ディスクへも適用できることは明らかである。また、複層構造の光ディスクを2枚貼り合わせた構造のディスクにも、本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態では何れも追記型光ディスクのDVD−Rを中心として説明したが、本発明の外周PCA及び/または外周RMAは、相変化型光ディスクにも同様に適用することができる。但し、書換型光ディスクにおける、データ領域に記録されたユーザデータの消去、及び記録されたユーザデータの上に別のユーザデータを記録(すなわち、記録されたユーザデータを消去し、別のユーザデータを重ね書き)するオーバーライトは、追記型光ディスクにはない機能である。この消去またはオーバーライトをする際には、当該消去またはオーバーライト対象のユーザデータに関する外周テスト記録パターン及び/または外周記録管理情報も消去またはオーバーライトすることで、当該ユーザデータの消去またはオーバーライトを保証することができる。また、外周テスト記録パターンや外周記録管理情報の記録領域の容量(例えば、PCAでは200ECC)を有効に利用することができる。なお、外周PCAが内周側にシフトされた場合、ユーザデータを新たに記録する際には、外周PCAの全てを消去またはオーバーライトしても構わない。
図15および図16は、外周側にもRMDを記録する領域(RMA321)が設けられている場合の物理フォーマットを示す。図2で説明した内周RMA102の構成と同様に、外周側のRMA321においても、図16に示すとおり、RMA321は701個のECCブロックから成る。すなわち、各RMDに1つのECCブロックが割り当てられる。各ECCブロックは、16個のセクタを含む。セクタはフィールドの先頭から#0から#14までの番号が付けられており、2番目のフィールド#1には、OPC関連の情報が格納される。OPC関連の情報とは、例えば、ドライブ製造ID、シリアルナンバー、記録パワー、記録ストラテジコード等の情報である。
図16の(f)に示すように、2番目のフィールド#1の内、バイトポジションBP#0〜#127にはタイトルT1を記録した時の記録条件の情報が格納されている。また、BP#128〜#255はタイトルT2を記録した時、BP#256〜#383はタイトルT3を記録した時の記録条件の情報が格納されている。
図15A〜図15Cは、ユーザデータであるタイトルT3のコンテンツを消去する動作を示す。ユーザの指示に従ってタイトルT3のコンテンツを消去した後、記録再生装置は、記録T3に該当する記録管理情報であるRMD情報BP#256〜#383も消去する。
図15BはタイトルT3のコンテンツを消去後の状態を示す。ユーザにとって不要となったタイトルT3のコンテンツが消去されると、記録再生装置が、図15Bおよび図15Cに示すように、タイトルT3の記録管理情報も消去することにより、ユーザデータとRMA321の空き容量が増え、RMA321を有効に使用することができる。
なお、上記では、コンテンツの消去に伴い、RMA321において当該コンテンツに対応するRMD情報を消去する例だけを説明したが、内周側のRMA102に対しても同様に、当該コンテンツに対応するRMD情報の消去を行っても良い。
また、本実施形態では、RMD情報の消去について述べたが、外周でのテスト記録パターンが記録されるPCA320についても、コンテンツに該当するテスト記録パターンを消去することにより、同様の効果を得ることができる。
本発明は高速で記録するDVD−R、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等の記録型DVDや、青色レーザを使用したブルーレイディスクやAOD等、光ディスクを用いる記録再生装置に適用可能である。
本発明は、光ディスク等の情報記録媒体およびこれを用いて記録/再生を行う情報記録再生装置に関し、特に、記録パワー校正領域を有する情報記録媒体とそれを用いる情報記録再生装置に関する。
光学的に情報信号を情報層にディジタル記録し、記録マークまたは記録ピット(以下、記録マークと称する)により情報層に記録された情報信号を再生できる情報記録媒体は、当該記録マークの品質及び検索性の高さで普及している。また、近年動画等のように大容量の情報信号を記録する要請に応えるべく、1枚に記録できる情報量を高めた高密度記録媒体としてDVD(ディジタル・バーサタイル・ディスク)が提案され、市場ニーズに合致した点で受け容れられている。また、例えばコンピュータプログラムを予め記録した再生専用の情報媒体(例えば、CD−ROM等)と同様に、この記録可能なDVD(以下、記録型DVDと称す)も、再生速度及び記録速度の高速化が要望されている。ところで、記録密度を高めるためには線速度一定(CLV)方式が有利であるため、記録型DVDを記録再生する記録再生装置では、CLV方式を基本とした記録方式(以下、ZCLV方式等も含めCLV方式またはCLV記録方式と称す)が開発され採用されている。
一方、記録型DVDは、前述したように大容量の情報信号を記録するために、記録密度が高くなるよう設計されているが、高記録密度を有しているがため、記録型DVDの製造メーカが推奨する記録速度や記録パワー等の記録情報、記録に際しての記録型DVDと記録再生装置との相性及び/または記録型DVDに記録した記録再生装置の情報を、当該記録型DVDに記述すること等が要請されている。このため、データ領域(Data Recordable area)の内周のリードイン領域の更に内周に、記録管理情報を記述した記録管理領域(Recording Management Area)と、データ領域に記録した際の記録速度や照射するレーザパワー等を記述したパワー校正領域(Power Calibration Area)とを備えている。このパワー校正領域は、記録管理領域の内周側に設けられ、記録速度が目標値に達した時点で、当該記録速度で情報層に照射するレーザパワー等の情報を記述する領域である。この情報は、記録再開時の記録速度に応じた照射パワーの学習のために、履歴として残される。
前述したように記録再生装置はCLV方式で記録するため、記録型DVDを回転させるスピンドルモータの回転数は、内周になるほど高速回転となる。従って、記録型DVDの最内周に備えるパワー校正領域では例えば4倍速の記録速度には記録履歴情報の記述はできるが、8倍速、16倍速のように高速化が進行するとスピンドルモータの回転に限界を来たし追従できなくなり、記録履歴をパワー校正領域に記述できなくなると言う問題が想定される。
このようにパワー校正領域を最内周に備えるだけでは、高速化の要請に対して何れ対応できなくなる事態を鑑み、非特許文献1には、内周ディスクテスト領域(Inner Disc Test Zone)では対応できない記録履歴情報を記述する領域として、リードアウト領域の外周側に外周ドライブ領域(Outer Drive Area)を新たに設け、当該外周ドライブ領域の外周ディスクテスト領域(Outer Disc Test Zone)に高速記録速度に対応できる記録履歴情報を記述する構成が開示されている。
例えば、図17、図18は、従来の光ディスクの断面概念図であって、図17はDVD−Rの内周側の記録領域、図18はDVD+RWの外周側の記録領域の概念図を示す。DVD−Rの場合、リードインエリアの内周側にRMA領域とOPC領域が設けられている。情報記録再生装置は、データ記録開始に最適記録パワー校正(OPC、Optimum
Power Calibration)を行い、それにより半導体レーザの記録パワーを決定する。ここで、OPCとは、光ディスクに所定のテスト記録マークを試し書きし、そのテスト記録マークから再生されたアナログ信号のβ値に基づいて半導体レーザの記録パワーを校正する操作をいう。OPC情報とは、OPCに関する情報で、OPC時の記録パワー条件と記録ストラテジを含む。また、DVD−RAMやDVD+RWの場合、内周側と外周側にディスクテストゾーンと呼ばれるOPC領域が設けられているが、図18は外周側のみ図示している。データ容量がフルに記録された時、データ領域が半径58mmまでで、その後に、リードアウト領域が半径58.0〜58.05mmに記録され、ディスクテストゾーンは半径58.1〜58.3mmに記録される。
ところが、記録再生光を透過する基板は、記録型DVDに限らず、ポリカーボネイト等の樹脂を射出成形することにより形成される。この射出成形で樹脂を射出するノズルは、成形型全面に樹脂が行き渡るように内周近辺に設けられている。しかしながら、成形型の表面にはトラックやエンボス等の複雑な形状を備えているため、成形型全面に樹脂が行き渡るように設計したとしても、基板の内周部と外周部とでは樹脂の供給量が異なり、外周部の成形精度が劣る。これにより、ディスク外周部の平面精度及び/またはトラックの成形精度は、内周部に比べると低下する。
また、従来、記録型DVDの情報層の主成分は、周知のように、書換可能型ディスクの場合は無機材料であり、追記型ディスクの場合は有機色素である。無機材料による情報層の形成には、スパッタまたは真空蒸着等のいわゆる気相堆積法が適用されるが、有機色素の場合は、一般的に、回転した基板に有機色素溶液を滴下する、いわゆるスピンコート法が適用されている。このスピンコート法は、基板の回転により発生する遠心力を利用するため、有機色素溶液は基板の内周部から滴下する。従って、特に有機色素溶液をスピンコートして形成する情報層を有する追記記録型DVD(いわゆるDVD−R、DVD+R)では、外周側の情報層は内周の情報層に比べて色素溶液の供給量が不足する傾向にあるため、情報層の膜質が低下する。
さらに、記録型DVDに限らず樹脂成形した基板を適用した情報記録媒体の平面度は、例えばガラスのような無機材料より低い。これに起因して、ディスクの回転時に、「面ぶれ」と称される、回転軸方向にディスク面が上下動する現象が発生する。この面ぶれ現象は、外周になるほど、また、回転速度が高速になるほど大きくなる。従って、高速で外周に情報を記録する際に、面ぶれが問題となる可能性がある。
以上のように、重要な情報を記述する領域としては、内周の方が適性が高く、外周になるほど信頼性の観点では劣る。従って、上述の非特許文献1に開示されているように、記録型DVDの最外周に外周ディスクテスト領域(Outer Disc Test Zone)を新たに設け、記録速度に対応する照射パワー等の情報(記録履歴情報)を記録する従来の構成では、この情報について信頼性の保証ができないという課題がある。
また、記録型DVDで情報信号を記録できる情報領域(Information Area)は、一般的に、パワー校正領域、記録管理領域、リードイン領域、データ領域、及びリードアウト領域を言うが、前記従来の構成では、リードアウト領域の更に外周までも記録を補償する情報領域の範囲を拡大しなければならないという課題もある。
「DVD+R4.7Gbytes Basic Format Specifications version1.2」 (2003年7月発行)(第48頁16.1 Physical Sector Numbers(PSNs) Figure22、第49頁 Table7のOuter Drive Area欄のOuter Disc Test Zone、第60頁21.3 Outer Disc Test Zone、及び第117頁〜第119頁 Annex H Optimum Power Control and Recording Conditions)
本発明は、係る従来提案されている構成が本質的に有する課題を解決し、信頼性が高いパワー校正領域を備えた情報記録媒体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明にかかる情報記録媒体は、ユーザ情報信号を記録するデータ領域と、前記データ領域の内周側に設けられたリードイン領域と、前記リードイン領域よりも内周側に設けられテスト記録パターンが記録される内周パワー校正領域と、前記内周パワー校正領域に関する記録管理情報が記録される記録管理領域とを備えた記録層を有する情報記録媒体であって、前記記録層において前記ユーザ情報信号の記録終端の外周に外周パワー校正領域を備えることを特徴とする。
本発明にかかる情報記録媒体は、記録層においてユーザ情報信号の記録終端の外周に、外周パワー校正領域を設けたことにより、従来のようにリードアウト領域よりも外周側(光ディスクの最外周)にパワー校正領域を設けた記録媒体と比較して、面振れ等の機械特性がより良好な領域でパワー校正を行うことが可能となる。これにより、情報記録再生装置が、最適な記録パワーを確実かつ短時間で決定できるという利点がある。
本発明にかかる情報記録媒体は、ユーザ情報信号を記録するデータ領域と、前記データ領域の内周側に設けられたリードイン領域と、前記リードイン領域よりも内周側に設けられテスト記録パターンが記録される内周パワー校正領域と、前記内周パワー校正領域に関する記録管理情報が記録される記録管理領域とを備えた記録層を有する情報記録媒体であって、前記記録層において前記ユーザ情報信号の記録終端の外周に外周パワー校正領域を備えた構成である。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記記録層にリードアウト領域をさらに備え、前記外周パワー校正領域が、前記データ領域と前記リードアウト領域との間に設けられた構成としても良い。あるいは、前記外周パワー校正領域が、前記データ領域の一部である構成としても良い。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記記録層を複数備え、前記複数の記録層のうち、相隣接して積層する二つの記録層のうち一方の記録層に対して当該情報記録媒体の内周側から外周側へ向かってユーザ情報信号の記録が行われ、前記二つの記録層のうち他方の記録層に対して当該情報記録媒体の外周側から内周側へ向かってユーザ情報信号の記録が行われ、前記一方の記録層においては前記ユーザ情報信号の記録終端の外周部に前記外周パワー構成領域が設けられ、前記他方の記録層においては前記ユーザ情報信号の記録始端の外周部に前記外周パワー構成領域が設けられた構成としても良い。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記記録層を複数備え、前記複数の記録層の全てにおいて、当該情報記録媒体の内周側から外周側へ向かってユーザ情報信号の記録が行われ、前記複数の記録層のそれぞれに、前記ユーザ情報信号の記録終端の外周部に前記外周パワー構成領域が設けられた構成としても良い。
上記の情報記録媒体において、相隣接して積層する第n層目の記録層と第n+1層目の記録層とにそれぞれ備える第n層目の内周パワー校正領域、第n+1層目の内周パワー校正領域、第n層目の外周パワー校正領域および第n+1層目の外周パワー校正領域において、それぞれのパワー校正領域に設けられたテスト記録実行領域が、当該記録層の積層方向において互いに重なり合わないよう設けられた構成とすることが好ましい。
上記の情報記録媒体において、前記第n層目の内周パワー校正領域および第n層目の外周パワー校正領域において、パワー校正のために行うテスト記録の方向が、第n層目の記録層に対するユーザ情報信号の記録方向とは逆方向から実行されることが好ましい。ここで、「記録層に対するユーザ情報信号の記録方向」とは、内周から外周へ向かう方向、あるいは、外周から内周へ向かう方向、のいずれかである。
上記の情報記録媒体において、相隣接して積層する第n層目の記録層と第n+1層目の記録層とに第n層目の外周パワー校正領域および第n+1層目の外周パワー校正領域をそれぞれ備え、前記n層目の記録層における前記第n層目の外周パワー校正領域の内周側に第n層目のミドル領域と、前記第n+1番目の記録層における前記n+1番目の外周パワー校正領域の内周側にn+1番目のミドル領域とを備えることが好ましい。
さらに、上記の構成にかかる情報記録媒体において、相隣接して積層する第n層目の記録層と第n+1層目の記録層の各々において、第n層目のミドル領域と第n+1層目のミドル領域および第n層目のパワー校正領域と第n+1層目のパワー校正領域の少なくとも一部が、ユーザ情報信号を記録可能な最外周位置よりも内周側に位置するよう、前記第n番目のミドル領域と前記第n+1番目のミドル領域および前記第n番目のパワー校正領域と前記第n+1番目のパワー校正領域の全体が前記内周側へシフト配置された構成とすることが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記外周パワー校正領域が、データ領域における記録可能な最外周位置から少なくとも0.2mm外周側に環状に設けられたことが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記外周パワー校正領域に関する記録管理情報も前記記録管理領域に記録されることが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記外周パワー校正領域に関する記録管理情報を記録する外周記録管理領域を、前記データ領域より外周側に備えた構成とすることが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記外周パワー校正領域は、前記データ領域へのデータ記録速度が所定の速度以上の場合にテスト記録パターンが記録されることが好ましい。あるいは、上記の構成にかかる情報記録媒体において、前記外周パワー校正領域は、前記データ領域へのデータ記録速度が、当該データ領域への過去の記録速度を超える場合にテスト記録パターンが記録されることも好ましい。なお、これらにおいて「データ領域への記録速度」とは、情報記録媒体が複数の記録層を有する場合であれば、外周パワー校正領域と同じ記録層に存在するデータ領域への記録速度を意味する。
また、本発明にかかる情報記録再生装置は、上述のいずれかの情報記録媒体の前記データ領域に所望のユーザ情報信号を記録する情報記録再生装置であって、前記情報媒体を回転させる回転駆動部と、前記情報記録媒体へ光を照射することにより情報信号の記録または情報信号の再生を行う光ピックアップと、前記情報記録媒体の内周および外周パワー校正領域の少なくとも一方へ前記光ピックアップを移動させて、前記光ピックアップによる照射パワーの校正を実行する校正制御部とを備えた構成である。
上記の構成において、前記回転駆動部による前記情報記録媒体の回転速度を制御する回転制御部をさらに備え、前記校正制御部が、前記回転制御部から前記情報記録媒体の回転速度情報を取得し、取得した回転速度情報に応じて、前記光ピックアップによる照射パワーの校正を前記内周および前記外周パワー校正領域のいずれにおいて実行するかを決定することが好ましい。
上記の構成において、前記回転速度情報が表す速度が所定速度を越える場合、前記校正制御部が、前記光ピックアップによる照射パワーの校正を前記外周パワー校正領域において実行することがさらに好ましい。
上記の構成において、記録動作を開始する度に、前記内周パワー校正領域に記載されているテスト記録パターンのうち最新のテスト記録パターンを、前記外周パワー校正領域に複写する手段をさらに備えたことが好ましい。
上記の構成において、前記データ領域からデータを消去するとき、前記外周パワー校正領域に記録されているテスト記録パターンのうち、前記消去対象のデータに対応するテスト記録パターンを消去する手段をさらに備えたことが好ましい。
上記の構成において、前記情報記録媒体の記録管理領域に、前記データ領域の記録可能な領域の範囲を表す情報が含まれ、前記情報記録再生装置が、前記データ領域の記録可能な領域の範囲を表す情報を、前記情報記録媒体における当該記録可能な領域の最外周が内周側へ移動するよう変更する手段をさらに備えたことが好ましい。
また、本発明にかかる情報記録再生装置は、上述の複数の記録層を備えた情報記録媒体の前記データ領域に所望のユーザ情報信号を記録する情報記録再生装置であって、前記情報記録媒体を回転させる回転駆動部と、前記情報記録媒体が備える複数の記録層のうち任意の記録層へ光を照射することにより、当該記録層へ情報信号の記録または情報信号の再生を行う光ピックアップと、情報信号の記録または再生を行おうとする記録層において前記情報記録媒体の内周および外周パワー校正領域の少なくとも一方へ前記光ピックアップを移動させて、前記光ピックアップによる照射パワーの校正を実行する校正制御部とを備えた構成としても良い。
以下、本発明の情報記録媒体および情報記録再生装置について、より具体的な実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
近年、光学式情報記録技術、すなわち、記録可能型光ディスクへのデータ記録技術が著しく発展している。それに伴い、光学式記録再生装置すなわち光ディスク記録再生装置が各種開発されている。特に、例えばDVD−RAMドライブのように、コンピュータの外部記録装置等として応用されたものが、既に広く普及し始めている。
記録可能型光ディスクは、追記型光ディスクと書換型光ディスクとに分類される。追記型光ディスクとは、データを一回のみ記録可能な光ディスクをいう。追記型光ディスクはCD−R(Recordable)とDVD−RとDVD+Rを含む。
追記型光ディスクでの記録マークの作成は次の通りに行われる。記録層が有機色素を含む。その有機色素は所定のパワーのレーザを照射されると分解する。その結果、特にその光学的反射率が低下する。こうして、レーザ照射を受けた記録層の部分が記録マークとなる。
追記型光ディスクではデータの記録が次の理由で一回に限られる。記録マークの作成時、記録層のレーザ照射部分で多量の熱が生じる。その熱は周囲の樹脂等を変形させる。それらの変形は不可逆的であるので、レーザ照射前の状態に戻すことができない。それ故、追記型光ディスクでは、データの記録が一回に限られる。
書換型光ディスクとは、データを書き換えて多数回記録可能な光ディスクをいう。書換型光ディスクはCD−RW(Re−Writable)、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等を含む。
書換型光ディスクの内、相変化記録方式によるものでは、記録マークの作成が次の通りに行われる。記録層は、結晶相とアモルファス相との二種類の固相を有する合金を含む。この記録層の光学的反射率は、一般的に、結晶相では高く、アモルファス相では低くなるように、設計される。従って、記録層の内、アモルファス相の部分が記録マークである。記録マークの作成、すなわち、結晶相からアモルファス相への転移は、次のようにして実現する。記録層に対して比較的高いパワーのレーザをパルス照射する。それにより、記録層の狭い範囲が融点以上の温度まで瞬間的に加熱され、その直後ガラス化点以下の温度まで急冷される。その結果、記録層のその狭い範囲がアモルファス相へ転移する。
更に、相変化記録方式による書換型光ディスクでは、既存の記録マークを次のようにして消去できる。記録マークは、上記の通り記録層のアモルファス相部分である。従って、記録マークを消去するには、記録マークの範囲でアモルファス相から結晶相へ転移させれば良い。アモルファス相から結晶相への転移は、次のようにして実現する。回転中の書換型光ディスクの記録層に対して比較的低いパワーのレーザを比較的長時間照射する。それにより、記録層の広い範囲が、ガラス化点より高く融点を超えない程度の温度、まで加熱される。その時、加熱された記録層の範囲は加熱後ゆっくりと冷える。その結果、記録層のその広い範囲が結晶相へ転移する。こうして、書換型光ディスクでは既存の記録マークを消去できる。なお、データ領域に記録されたユーザデータを消去、または記録されたユーザデータに別のユーザデータを記録(すなわち、記録されたユーザデータを消去し別のユーザデータを重ね書き)するオーバーライトを行う場合には、外周パワー校正領域における当該記録されたユーザデータに関するテスト記録パターン及び/または記録管理領域に記述された記録管理情報も消去またはオーバーライトする。
相変化記録方式による書換型光ディスクへの実際のデータ記録では、レーザを上記の高いパワーと低いパワーとの間で切り換えながら照射する。それにより、記録マークの消去と作成とを同時に実行して、データを光ディスクに上書きできる。
以下、本発明を実施するための形態について、その好ましい実施例を挙げて、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
(情報記録媒体)
図1に、本発明の情報記録媒体の一実施形態にかかる光ディスク(DVD−R)の記録領域の概念図を示す。なお、図1は、本実施形態にかかるDVD−Rの外周側の記録領域を示すものである。
図1に示すように、本実施形態にかかるDVD−Rは、リードアウトエリア60よりも内周側に、記録履歴情報を記述する外周PCA70(第2のPCA)を有する。なお、図1には示されていないが、このDVD−Rは、ユーザエリア50よりも内周側にリードインエリアを備え、そのさらに内周側に記録管理領域(RMA)と内周PCA(第1のPCA)とを備えている。
なお、本実施形態では、DVD−R上のインフォメーションエリアをユーザエリア50とリードアウトエリア60とに分類し、リードエンドデータ54および外周PCA70がユーザエリア50の一部であるものとして説明する。しかし、将来の規格では、リードエンドデータ54および外周PCA70を含む領域が、「ユーザエリア」とは別の領域として定義される可能性もある。
図1において、内周側の図示は省略されているが、ユーザエリアには、内周側から外周側へ向かって、順次、ユーザデータ51が記録されており、このDVD−Rに対して最後に記録されたユーザデータが、参照符号52で表されるユーザデータ(最終ユーザデータ)である。最終ユーザデータ52の外側には、ボーダアウト53が記録されている。なお、ボーダアウトについては後述する。図1の例では、ボーダアウト53の後端のアドレスが、ユーザデータ51の最終アドレスである。最終ユーザデータ52およびそのボーダアウト53の外側には、リードエンドデータ54が記録され、そのさらに外側に、外周PCA70(第2のPCA)が設けられている。リードエンドデータ54は、ユーザデータ51および外周PCA70との境界を明確にするためのデータであるので、これらと識別が可能であることを条件として、任意のデータを用いることができる。
従来のDVD−Rでは、データ領域(ユーザエリア)が半径58mmまで、リードアウト領域が58.0〜58.5mmであったが、本実施形態のDVD−Rは、従来ランドプリピット情報のコピーであったRMD情報の記録可能なデータ領域の最終アドレスを書き換えることで、データ領域のラストアドレスを、半径58mm位置よりも内周側に変更する。これによって、ユーザデータの記録はRMD情報の最終アドレス位置で終了し、その後にリードエンドデータ54を記録しても、外周PCA70を上書きすることはない。
本実施例ではユーザデータは半径57.7mmまで、リードエンドデータ54は半径57.9mmまで、外周PCAは半径57.9〜58.0mmとしている。つまりリードアウト領域は幅0.2mm、外周PCAは幅0.1mmとなる。データ容量はリードアウト領域で約100MB、PCAで約20MBとなる。リードエンドデータ54の領域は、DVDプレイヤーが再生時に検出できればよいので、互換性が確保できれば、幅0.1mmにすることも可能である。その際は、ユーザデータは57.7mmまで、リードエンドデータは57.8mmまで、外周PCAは57.8〜57.9mmとなり、より内周側に外周PCAを構成することができる。
図2は、本実施形態にかかる情報記録媒体としてのDVD−Rの記録領域上の物理フォーマットを示す図である。特に、図2の(a)はDVD−Rの記録領域全体の物理フォーマットを示す。DVD−Rの記録領域は、最内周から外側に向けて順に、R−情報領域100、リードインエリア200、データ領域300及びリードアウトエリア400に分割されている。それぞれの領域は、整数個のECCブロックから成り、プリピットにより識別される。R−情報領域100は、記録パワー校正領域(PCA:Power Calibration Area)101と記録管理情報領域(RMA:Recording Management Area)102とを含む。
PCA101は、後述の記録ストラテジの補正時、及び、レーザの記録パワーの校正(最適記録パワー校正(OPC:Optimum Power Calibration))時、所定の記録パターンを試し書きするための領域である。
RMA102は、本実施形態にかかるDVD−Rのファイルシステムの情報及び記録管理情報(RMD:Recording Management Data)を記録した領域である。
リードインエリア200はデータ領域300の先頭を示す所定のデータを記録するための領域である。リードインエリア200のデータは、最初の記録時に記録される一連のデータの記録終了時、すなわち、図2の(a)の場合であれば、タイトルT3のデータの記録終了時に記録される。
データ領域300は、記録目的のデータを書き込むための領域である。データ領域300は、記録時ごとにボーダゾーンBi(i=1,2,3・・・)で分割されている。ボーダゾーンBiは、ディスク内周側のボーダアウトエリアBioutと、外周側のボーダインエリアBiinとから成る。二つのボーダゾーンBiおよびB(i+1)の間に、一回の記録時に記録される一連のデータ、すなわち、一つのタイトルのデータが記録される。ボーダアウトエリアBiout及びボーダインエリアBiinは、対応するタイトルの記録開始時のリンキング処理で確保される。更に、それぞれの領域へのデータの書き込みは、対応するタイトルの記録終了時に実行される。なお、データ領域300におけるリードアウトエリア400側の末端部には、前述のリードエンドデータが記述されるリードエンド領域310と、外周側のPCA320(第2のPCA)とが設けられている。
リードアウトエリア400は、データ領域300の末尾を示す所定のデータを記録するための領域である。リードアウトエリア400のデータは、データ領域300への書き込みの完了時、すなわち、ファイナライズ処理時に記録される。
図2の(b)は、RMA102内の物理フォーマットの詳細である。RMA102は、例えば、701個のECCブロックから成る。先頭のECCブロックはRMAリードインエリア102aである。RMAリードインエリア102aは、PCA101と、RMDを記録した領域102b1〜102b700との間の緩衝領域である。それにより、PCA101上での試し書き時、誤ってRMDを上書きして破壊することを防ぐ。領域102b1〜102b700は、それぞれ、RMDを一つのタイトルごとに記録するための領域である。
図2の(c)は、一つのRMD内の物理フォーマットの詳細を示す図である。RMDは、一つのECCブロックから成り、それ故、16個のセクタを含む。先頭の1セクタはリンキングロスエリアである。リンキングロスエリアには、空白を示す所定のデータ、例えば00hだけが記録されている。つまり、リンキングロスエリアは、別々のRMDの間の緩衝領域である。それにより、一つのタイトルの記録終了後、別のタイトルの追加記録時、新たなRMDを既存のRMDに上書きすることを防ぐ。
RMDの残り15個のセクタは、それぞれフィールドと呼ばれる領域である。それぞれのフィールドには先頭から順に、#0から#14までの番号が付けられている。先頭のフィールド#0には、本実施形態にかかるDVD−Rの一般的な情報が記録される。例えば、ディスクステータス及びプリピット情報のコピー等が含まれる。二番目のフィールド#1には、OPC関連情報が記録される。
図2の(d)はフィールド#0内の論理フォーマットの詳細を示す図である。フィールド#0は一つのセクタから成る。従って、フィールド#0内に実質的に記録可能なデータは、2048バイト=2KBである。それぞれのデータには1バイトずつ、バイトポジション(BP)と呼ばれる通し番号#0〜#2047が付けられている。
BP#0〜#1にはRMDフォーマットコードが、BP#2にはディスクステータス(disc status )、BP#3にはリザーブが、それぞれ記録される。ディスクステータスは、ディスクの記録モードを示すものであり、未記録、ディスクアットワンス(Disc at once)、インクリメンタルレコーディング(incremental recording)、ファイナライズ(finalized)を識別するものである。
BP#4〜#21には、ユニークディスクID(Unique Disc ID)が記録されている。ドライブがテスト記録した時の年月日、時間が記録されるものである。
BP#22〜#127には、プリピット情報のコピーが、BP#128〜#2047にはリザーブがそれぞれ記録される。図2の(e)は、プリピット情報のコピーの詳細を示す図である。
また、プリピット情報は、フィールド#0〜#13まで存在し、その内のフィールド#1の情報はRMDの#22〜#29まで、フィールド#2の情報はRMDの#30〜#37、フィールド#3の情報はRMDの#38〜#45、というように、RMDの8バイト毎に、各フィールドの情報が入っている。なお、各フィールドには各記録速度に応じた記録パワー、記録ストラテジ情報が入っている。例えば、フィールド#2〜#5は1倍速に関する情報、フィールド#6および#7には2倍速に関する情報、フィールド#8〜#13には4倍速に関する情報が入っている。なお、これはあくまでも一例であり、さらに高速の記録速度に関する情報が記録されていても良い。
BP#22のフィールドIDは、プリピットフィールド#1に対応し、BP#23にはアプリケーションコードが、BP#24にはディスクフィジカルコードが、それぞれ記録される。ディスクフィジカルコードは、トラックピッチ、線速度、ディスク直径などが記録されるものである。
BP#25〜#27には、記録可能なデータ領域のラストアドレス情報(Last Address of Data Recordable area)が、BP#28には、パートバージョン(Part Version)が、BP#29にはリザーブが、それぞれ記録されている。BPデータ領域のラストアドレス情報は、ディスクの外周側の記録可能な範囲を決定するものである。BP#28は、どの規格のバージョンに対応したディスクかどうか識別するためのものである。
BP#25〜#27に記録されているラストアドレス情報をドライブで書き換えることによって、当該DVD−Rにおいて記録可能なデータ領域の範囲を変更することができる。すなわち、BP#25〜#27に記録されているラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置を指すアドレスに書き換えることにより、ユーザデータを記録可能な領域の範囲を内周側へ縮小し、ユーザエリアとリードアウトエリアとの境界部に外周PCAを確保することができる。また、これにより、あるドライブで本実施形態のDVD−Rに記録を行った後、同じDVD−Rに対して他のドライブで記録を行おうとする際に、外周PCAが破壊されることを防止できる。
例えば、本発明に対応する新しいドライブが、本発明にかかるDVD−Rの外周PCAにテスト記録パターンを記録した後に、同じDVD−Rを従来の低速記録ドライブ(過去から市場に存在する低速記録ドライブ)に装着した場合、この低速記録ドライブは、外周にPCAが存在することを認識できないため、外周PCAにユーザデータを上書きしてしまうおそれがある。しかし、本発明に対応する新しいドライブが記録を行う度に、外周PCAよりも内周を指すように、RMD情報の中のラストアドレス情報(BP#25〜#27)を書き換えれば、その後に同じDVD−Rを使用する従来の低速記録ドライブは、このラストアドレス情報が指す位置を超えるアドレスにデータを上書きすることはないので、外周PCAが破壊されることを防止できる。
8倍速ディスクや16倍速ディスクなど、高速記録に対応したディスクを高速で記録する際は、外周PCAを使用する頻度が高いと考えられる。このため、ドライブがラストアドレス情報を書き換える際、外周PCAがより内周側に構成されるようにラストアドレス情報を変更することで、より安定した記録条件を求めることができる。もちろん、ディスク製造段階で、ラストアドレス情報をより内周側にして、外周PCAをより内周側に構成させることも可能である。
図3に、あるドライブで記録を行った後、同じディスクに他のドライブが記録を行う場合を想定し、それぞれの場合について、どちらのドライブがラストアドレス情報を書き換えるべきかを示す。なお、DVD−Rのレコーディングモードとしては、ディスクアットワンス(Disc at once)モードと、インクリメンタルレコーディング(incremental recording)モードがあるが、ここでは、複数のドライブが1枚のディスクに記録するインクリメンタルレコーディングについて説明する。
図3のケース1は、先に記録を行う第1記録ドライブが外周PCAを使用し、それ以降に記録を行う第2記録ドライブも外周PCAを使用する場合である。この場合は、第1記録ドライブが、RMDのラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えることにより、ユーザデータを記録可能なデータ領域のラストアドレスが変更される。そして、第2記録ドライブも、外周PCAを使用する(すなわち外周PCAを正しく認識できるドライブである)ため、外周PCAは上書きされることはない。
ケース2は、第1記録ドライブが外周PCAを使用し、それ以降に記録を行う第2記録ドライブが内周PCAのみを使用する場合(すなわち第2記録ドライブが従来のドライブである場合)である。この場合は、第1記録ドライブが、RMDのラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えることにより、ユーザデータを記録可能なデータ領域のラストアドレスが変更される。第2記録ドライブは、内周PCAのみを使用し、外周PCAを使用することはない。また、RMDのラストアドレス情報が外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えられているので、第2記録ドライブがこのラストアドレス情報を超えてユーザデータを書くことはないので、外周PCAがユーザデータにより上書きされることはない。
ケース3は、第1記録ドライブが内周PCAのみを使用し(すなわち第1記録ドライブが従来のドライブである場合)、それ以降に記録を行う第2記録ドライブが外周PCAを使用する場合である。この場合は、第2記録ドライブが、外周PCAを使用すると共に、RMDのラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えることにより、ユーザデータを記録可能なデータ領域のラストアドレスが変更される。
ケース4は、第1記録ドライブが内周PCAのみを使用し、それ以降に記録を行う第2記録ドライブも内周PCAのみを使用する場合である。この場合は、外周PCAは使用されず、従来の低倍速記録動作と同じである。
以上のケース1〜4より、外周PCAを使用するドライブ(本実施形態にかかるドライブ)と、外周PCAを使用しない(認識しない)従来のドライブとの間で本実施形態にかかるDVD−Rを共用して記録を行ったとしても、全てのケースにおいて外周PCAが確保されることが分かる。
図4(A)にDVD−Rの8倍速記録用サンプルディスクの半径位置(最外周部)とジッタの関係を示す。X軸にディスク半径位置、Y軸にジッタを表す。記録条件は同一記録ストラテジで、各位置での最適記録パワーで記録している。半径58.0mmを超えると急激にジッタが悪化しているのが分かる。
図4(B)にDVD−Rの8倍速記録用ディスクの半径位置(最外周部)と記録パワーの関係を示す。X軸にディスク半径位置、Y軸に最適記録パワーを表す。記録条件は同一記録ストラテジで、各位置での最適記録パワーで記録している。半径58.0mmを超えると急激に記録感度が悪化しているのが分かる。
以上のことから、半径58.0mmより内周側に外周PCAを設けてパワー校正を行うことにより、より安定した特性が得られる。
(情報記録再生装置)
次に、上述した実施形態にかかる情報記録媒体(ここではDVD−R)の情報記録再生装置の例として、DVD−Rレコーダをとりあげ、その構成および動作について説明する。
[情報記録再生装置の構成]
本実施形態にかかる情報記録再生装置(DVD−Rレコーダ)の構成の一例を、図5に示す。図5に示すように、本実施形態にかかる情報記録再生装置は、ピックアップ1、ヘッドアンプ2、イコライザ3、二値化器4、PLL5、記録ストラテジ復調部6、記録ストラテジ補正部7、記録パターン決定部8、記録パルス決定部9、記録パワー条件復調部10、β値算出部11、記録パワー決定部12、レーザ駆動部13、スピンドルモータ14、記録速度情報復調部15、記録速度設定部17、制御部40等を備えている。制御部40は、他の各部との接続の図示を省略したが、情報記録再生装置の各部に必要な制御命令等を送ることにより、情報記録再生装置の全体動作を制御する。制御部40が行う制御動作は種々の種類に及ぶが、図5では、制御部40のサブブロックとして、校正制御部22と校正情報管理部23のみを示した。校正制御部22は、後述するように、外周PCAまたは内周PCAのいずれにおいてパワー校正を行うかを決定し、ピックアップ1やその他の必要なブロックを制御することにより、パワー校正を実行する。校正情報管理部23は、後述するように、内周PCAと外周PCAとの間でデータの複写を行ったり、各PCAにおけるテスト記録データの削除等を行ったりするために、ピックアップ1やその他の必要なブロックを制御する。
[再生系]
まず、図5に示す情報記録再生装置の再生系について説明する。
図5において、30は光ディスク(ここではDVD−R)である。光ディスク30は、スピンドルモータ14によりその中心軸の周りに回転している。
光ヘッドすなわちピックアップ1は次のようにして、光ディスク30に対してレーザを照射し、その反射光をアナログ信号へ変換する。半導体レーザ1aが所定のパワーのレーザを出力する。その時のパワー(再生パワー)は、光ディスク30の記録層を変質させない程度に小さい。半導体レーザ1aから出力されたレーザR1は、集光レンズ1b、スプリッタ1c及び対物レンズ1dを通して、光ディスク30の記録層に焦点を結ぶ。レーザR1は光ディスク30の記録層で反射される。反射されたレーザR2は対物レンズ1d、スプリッタ1c及び検出レンズ1eを通して、光検出器1f上に焦点を結ぶ。光検出器1fは反射されたレーザR2を検出し、アナログ信号d1へ変換する。その時、アナログ信号d1の振幅は、反射されたレーザR2の強度に実質的に比例している。
ピックアップ1は、ステッピングモータ(図示せず)により、光ディスク30の半径方向に移動する。それにより、半導体レーザ1aから出力されたレーザR1の焦点を光ディスク30の半径方向に移動させる。
ヘッドアンプ2は、ピックアップ1からのアナログ信号d1を増幅して得られるアナログ信号d2を、イコライザ3へ出力する。イコライザ3は、ヘッドアンプ2からのアナログ信号d2の波形を整形する。二値化器4は整形されたアナログ信号d3を所定の閾値と比較して、その閾値を境に二値化する。それにより、アナログ信号d3はディジタル信号d4に変換される。位相同期ループ(PLL)5はディジタル信号d4と所定のクロック信号とを同期させる。データ復調部(図示せず)は、クロック信号と同期したディジタル信号d5からデータを復調する。
[記録系]
次に、本実施形態にかかる情報記録再生装置の記録系について、一例を説明する。
記録パターン決定部8は、光ディスク30への記録目的のデータに対応して、記録パターンを決定する。ここで、記録パターンとは、一定の高さの矩形パルス列をいう。記録パターンのそれぞれのパルス幅が記録マークの長さ(マーク長)を、パルス間隔が記録スペースの長さ(スペース長)を、それぞれ示す。
記録パルス決定部9は、記録パターン決定部8により決定された記録パターンd8に基づいて、記録パルスd9を決定する。ここで、記録パルスとは、半導体レーザ1aから出力されるレーザパルスと実質的に同じ矩形波形のパルスをいう。記録パルスd9の波形は後述の通り、記録パターンd8の波形とは異なる。記録パルスd9は記録パターンd8に基づいて、一定の条件に従って決定される。その一定の条件を記録ストラテジ(Write Strategy)という。その他に、記録パルス条件又は記録パルス構造(Write Pulse Structure)ともいう。記録ストラテジの詳細については後述する。
記録パワー決定部12はデータ記録時、半導体レーザ1aのパワーを決定する。それにより決定されたパワーの値を記録パワーという。決定された記録パワーd12はレーザ駆動部13へ出力される。
レーザ駆動部13は半導体レーザ1aへの駆動電流d13を制御する。それにより、駆動電流d13は記録パワーd12に対応する大きさで半導体レーザ1aを流れる。その結果、半導体レーザ1aは記録パワーd12に相当するパワーのレーザR1を照射する。
[記録ストラテジの補正及び記録パワーの校正のための構成]
レーザ照射によって形成される記録マークの形は、記録パルス及び記録パワーだけでは一意には決まらない。例えば、記録層の冷却速度は、記録時の環境温度に依存する。更に、半導体レーザの波長は、半導体レーザの温度変動に実質的に比例して変動する。例えば、DVD−Rの記録層に含まれる有機色素の光吸収特性は吸収光の波長に依存するので、レーザの波長の変動は記録層による吸収エネルギーを変動させる。その上、半導体レーザの波長及び光ディスクの構造等は通常、製品ごとに規格値の周辺でばらついている。以上のような変動因子により、記録マークの形は変動する。従って、記録パルス及び記録パワーを規格通りの記録ストラテジ及び記録パワー条件に従って定めるだけでは、記録マークの整形の精度、特にエッジの位置決めの精度を十分には上げられない。その結果、実際に記録されたデータのエラーレートを十分に低減できない。そこで、光ディスク及び光ディスク記録再生装置ごとに記録ストラテジを補正し、かつ記録パワーを校正する。それにより、最適な記録パルス及び記録パワーをそれぞれ決定する。
また、本実施形態の光ディスク記録再生装置は、記録ストラテジの補正及び記録パワーの校正を目的として、例えば、以下のような構成を有している。
β値算出部11は、ヘッドアンプ2からの信号d2のβ値を算出する。ここで、アナログ信号のβ値とは、アナログ信号の極大値a及び極小値bにより次式で定義される:
β=(a+b)/(a−b)。
つまり、β値は、アナログ信号波形の上下方向での中心値((a+b)/2)を振幅(a−b)で規格化したもの、に相当する。
更に、アナログ信号のβ値は以下の通り、半導体レーザ1aの記録パワーを決定するパラメータである。ピックアップ1により再生されたアナログ信号d1は二値化器4により所定の閾値を境に二値化される。その時、アナログ信号d1の波形の上下方向での中心値が閾値からずれると、元のディジタルデータの再生精度が低下する。つまり、ディジタルデータのエラーレートがβ値に依存して変化する。従って、そのエラーレートが所定の許容値以下になるように、アナログ信号d1のβ値を最適値に選択しなければならない。アナログ信号d1のβ値は光ディスク30の記録マークの光学的反射率及び形で実質上決まるので、半導体レーザ1aから照射されるレーザR1の記録パワーで決まる。逆に、アナログ信号d1のβ値を決めると、それらに対応する記録パワーを決定できる。アナログ信号のβ値と記録パワーとの対応関係を記録パワー条件という。
光ディスク30は、規格上定められた標準記録ストラテジ及び標準記録パワー条件と共に、過去に行われたデータ記録における記録ストラテジ及び記録パワー条件の履歴を所定領域に記録している。記録ストラテジ復調部6は、PLL5により出力されたディジタル信号d5から記録ストラテジd6を復調し、記録ストラテジ補正部7へ出力する。一方、記録パワー条件復調部10は、ディジタル信号d5から記録パワー条件d10を復調し、記録パワー決定部12へ出力する。
ジッタ検出部20は、二値化器4からディジタル信号d4aを、PLL5からディジタル信号d4のクロック信号からのずれ、すなわちジッタd5aを、それぞれ入力する。それらの入力に基づいて、ジッタ検出部20は、ディジタル信号d4のパルス前端でのジッタd20a、及び後端でのジッタd20bを検出し、記録ストラテジ補正部7へ出力する。
記録ストラテジ補正部7は、入力した記録ストラテジd6を内部のメモリ(図示せず)に記憶する。更に、記憶した記録ストラテジの補正時、ディジタル信号d4のパルス前端でのジッタd20a及び後端でのジッタd20bをそれぞれ所定の許容値と比較する。その比較結果を、記録ストラテジ補正部7は、その時記憶している記録ストラテジに対応づけて前記メモリへ記憶する。その後、記録ストラテジ補正部7は、その記録ストラテジを所定の補正値だけ補正する。補正後、その記録ストラテジd7を記憶すると共に、記録パルス決定部9へ出力する。
[DVD−Rへのタイトル記録動作]
本実施形態にかかる情報記録再生装置(DVD−Rレコーダ)では、次のようにしてタイトル記録を実行する。
図6は、本実施形態にかかる情報記録再生装置(DVD−Rレコーダ)が、光ディスク30としてDVD−Rを用い、これにタイトルを記録する動作を示すフローチャートである。
<ステップS1>
まず、DVD−RをDVD−Rレコーダへ装着する。
<ステップS2>
DVD−Rの装着の検知後、DVD−Rをスピンドルモータ14で回転させる。ピックアップ1はまず、DVD−RのRMAを参照し、RMDを読み出す。
<ステップS3>
DVD−Rレコーダのユーザが、記録速度設定部17により記録速度を設定する。具体的には、標準記録速度3.49m/sに対する設定記録速度の倍率を示す正の整数n0が、設定記録速度情報として入力される。
<ステップS4>
記録速度情報復調部15により、RMA内のRMDの一つから記録速度情報を読み出す。好ましくは、最新のものから順に読み出される。この時読み出された記録速度情報は、上記の通り、標準記録速度3.49m/sに対する記録速度の倍率を示す正の整数nである。
<ステップS5>
記録速度情報復調部15から読み出された記録速度情報d15は、制御部40の校正制御部22に入力され、記録速度情報nとして、設定記録速度情報n0と比較される。記録速度情報nが設定記録速度情報n0より大きい場合は、処理をステップS6へ進める。それ以外の時は、処理をステップS8へ進める。なお、RMA情報がない場合は、記録速度情報n0が予め設定した記録速度nより大きい場合はS6に進み、小さい場合はS8に進む。
ステップS4で読み出した記録速度情報と同じOPC情報から、記録ストラテジ復調部6により記録ストラテジを、記録パワー条件復調部10により記録パワー条件を、それぞれ読み出す。記録ストラテジ復調部6は記録ストラテジd6を記録ストラテジ補正部7へ出力する。記録ストラテジ補正部7は記録ストラテジd6を補正せずにそのまま内部のメモリに記憶した後、記録パルス決定部9へ出力する。一方、記録パワー条件復調部10は記録パワー条件を記録パワー決定部12へ出力する。
<ステップS6>
制御部40の校正制御部22の制御により、DVD−Rの外周部へ光ピックアップ1を移動させ、外周PCA内で既に記録された領域を読み取り、パワー校正を実行するための、外周PCAの未記録領域をサーチする。書き換え型のディスクの場合は、PCAの記録領域を使い切った場合は上書きするが、DVD−R/RWでは、記録領域がどこまで使用されているかの情報は存在しないため、外周PCAを再生することにより、未記録領域をサーチする。なお、このとき、外周PCAに既に記録されているテスト記録パターンも読み出す。
<ステップS7>
DVD−Rの外周PCAの記録開始位置はラストアドレス情報に基づいて決定され、外周PCAの最外周から記録される。記録される信号は、8−14変調ランダム信号や、3T信号と14T信号の混合パターン等である。記録パワーの校正は次のように行う。記録パターン決定部8が、テスト記録パターンd8を出力する。記録パルス決定部9が、テスト記録パターンd8に基づき、テスト記録パルスd9を決定する。次に、記録パワー決定部12が、記録パワーを所定の初期値に設定する。ただし、この初期値としては、目標のβ値に対応する記録パワーを、記録パワー条件から選択しておく(例えば、目標のβ値は、記録パワー条件復調部10で復調した記録パワー条件に含まれる等)。記録パワーd12に相当するレーザ光をディスクに照射し、テスト記録マークをPCAに作成する。
ピックアップ1は、PCAのテスト記録マークに再生パワーのレーザ光を照射し、反射光を得る。反射光は、アナログ信号d1に変換され、ヘッドアンプ2がアナログ信号d2を出力する。β値算出部11は、アナログ信号d2に基づき、β値d11を算出する。記録パワー決定部12は、算出したβ値を記憶する。その後、記録パワーを初期値から所定パワー幅で1ステップずつ変化させて、上記過程を繰り返す。例えば、記録パワー条件から最適記録パワーを30mWと読み取った場合、28mWから32mWまで1セクタ0.5mW幅毎に記録すると9ステップとなり、9セクタが割り当てられる。こうすることで、1ECCブロック(=16セクタ)内で記録が完結するようになる。記録後直ちに再生を行い、その結果、最も特性のよい記録パワーとβ値とを記録パワー決定部12で選択する。このように、記録パワーの変化回数(ステップ数)とβ値との対応表、すなわち新たな記録パワー条件が得られる。その新たな記録パワー条件から目標のβ値に対応する最適記録パワーが選択される。
<ステップS8>
制御部40の校正制御部22が、決定された記録速度で、内周PCAでテスト記録可能かどうか判断する。記録速度が高い場合や、内周PCAで特性が得られない場合は、ステップS6に進み、外周PCAへ移動してテスト記録する。
<ステップS9>
内周PCAで最適パワーを算出するため、OPCが実行される。
<ステップS10>
記録パワー決定後は、RMAより復調された記録ストラテジおよびメモリに記録された記録ストラテジでテスト記録を行う。この際、記録速度に応じたテスト記録が内周PCAおよび外周PCAで記録される。
<ステップS11>
記録ストラテジを決定する。
<ステップS12>
ストラテジを決定した後、内周に移動してデータ記録を開始する。
<ステップS13>
データ記録終了後、校正情報管理部23が、内周と外周でPCAに記録された最適記録情報をRMAおよび記録再生装置のメモリに記録する。
以上のステップS1〜S13により、DVD−Rへのタイトル記録が完了する。
なお、ステップS10では、DVD−R30から推奨記録ストラテジ及び推奨記録パワー条件を読み出す。ここで、推奨記録ストラテジ及び推奨記録パワー条件としては、例えば、次のようなものを選択できる。DVD−R30のRMDのフィールド#1を参照し、ドライブに関する情報を読み出す。それらの情報から、DVD−R30に記録された記録ストラテジ及び記録パワー条件の内、同じDVD−Rレコーダで記録されたものがあるかどうか判別する。もしあれば、それらを推奨記録ストラテジ及び推奨記録パワー条件として採用する。その他に、同じ機種のDVD−Rレコーダで記録された記録ストラテジ又は記録パワー条件があれば、それらを採用しても良い。
こうして、本実施形態にかかるDVD−Rレコーダは、新たなタイトル記録時、DVD−R30に記憶された履歴から、設定記録速度と等しい記録速度での記録時に採用された記録ストラテジ及び記録パワー条件を読み出して再び採用できる。それにより、記録ストラテジ及び記録パワー条件の最適値からのずれの内、記録速度の相違に起因する部分を補償し直さなくても良い。その結果、記録ストラテジ及び記録パワー条件の決定を早くできる。また、外周PCAと内周PCAの両方の情報を共有比較できることから高速記録に対応した記録条件を精度良く決定することができる。
DVD−RやDVD−RWディスクが記録再生を行う際、線速度一定のCLV(constant liner velocity)方式のため、外周でのディスク回転数に比べて、内周での回転数は半径に反比例して上昇する。ディスクを高速で回転させると、モータ回転音や振動が増大しメカノイズが発生することから、内周から中周の所定の半径位置までは、低速で記録し、中周から最外周では高速で記録するZoneCLV方式が採用されている。ZoneCLV方式の場合、例えば内周側は4倍速で記録し、外周側は8倍速で記録するためには、内周PCAで4倍速のテスト記録を行った後、外周PCAで8倍速のテスト記録を行い、最適記録パワーやβ値を決定後、データ領域での記録を開始することも好ましい。もちろん、中周は6倍速で記録してもよい。6倍速を内周PCAと外周PCAのどちらを使用するかは、記録再生装置のディスクを回転させるモータ回転数の上限性能やサーボの面振れ、偏芯の追従性能によって判断される。
データ記録終了後、内外周PCAで決定した最適記録パワーやβ値などの記録履歴情報を内周にある記録管理情報(RMD:Recording Management Data)領域に、内外周PCAのどちらの領域で記録したかの選択情報および記録速度を関連付けして記録することも好ましい。これにより、そのディスクを記録再生装置より一旦取り出した後に、再度挿入して記録開始する際にも、RMDを見ることによって、内外周での記録パワーが分かる。従って、テスト記録は不要となり、記録開始時間を短縮することができる。また、DVD−Rの様なライトワンス系のディスクではPCAが有限であるが、上記の構成によれば、ディスクを脱着する度にテスト記録を行う必要がなくなり、PCAを消費する心配がない。
また、DVD−Rの様な有機色素系のディスクでは、スピンコートで色素膜が形成されるため、内外周で膜厚の違いが発生し、記録感度の差が発生してしまう。これに対して、内周PCAで低速記録し、外周でも同じ低速で記録し、ディスクの記録パワーの感度差を直線近似することにより、例えば中周までの記録パワーを補正することができる。内周では高速記録はできないが、同じ様に直線近似式を高速記録する際にも適応することによって、例えば中周から最外周までの記録パワーを補正することができる。
また、校正情報管理部23の制御により、内周PCAに記録されたテスト記録パターンを外周PCAにコピーすることによって、内周PCAがディスク表面の傷や汚れによって再生できない状態になった場合でも、外周にテスト記録パターンが残っていれば、指定された記録速度に対して記録可能とすることができる。なお、外周PCAの情報も内周PCAにコピーすると、外周PCAがディスク表面の傷や汚れによって再生できない状態になった場合でも、内周PCAにテスト記録パターンが残っているため、記録可能とすることもできる。内周PCAに記録されたテスト記録パターンを外周PCAにコピーするのは、(1)データ領域へのデータ記録前と、(2)データ領域へのデータ記録終了後、との二つの場合があるが、記録開始までの時間を短縮することを考えると、(2)のタイミングでコピーすることが望ましい。内周PCAに記録されたテスト記録パターンを外周PCAにコピーするタイミングは、(1)外周PCAにテスト記録パターンを記録するとき、(2)新たな記録速度で記録するとき、(3)新たな情報記録再生装置で記録するとき、(4)所定の記録動作回数毎、(5)記録動作を行う度毎、の5つの場合であるが、上述のように傷や汚れといった不慮の不具合を救済するには、(5)が好ましい。また、外周PCAに記録されたテスト記録パターンを内周PCAにコピーする際も、同様である。
また、PCAだけでなくRMAも外周側に設け、RMAの記録管理情報も、内周RMAから外周RMAにコピーしておくことが好ましく、外周RMAから内周RMAにコピーするとさらに好ましい。内周RMAに記述された記録管理情報を外周RMAにコピーするのは、前述のPCAと同様に(1)データ領域へのデータ記録前と、(2)データ領域へのデータ記録終了後、との二つの場合があるが、記録開始までの時間を短縮することを考えると、(2)のタイミングでコピーすることが望ましい。内周RMAに記録された記録管理情報を外周RMAにコピーするタイミングも、前述のPCAと同様に、(1)外周RMAに記録管理情報を記述するとき、(2)新たな記録速度で記録するとき、(3)新たな情報記録再生装置で記録するとき、(4)所定の記録動作回数毎、(5)記録動作を行う度毎、の5つの場合であるが、上述のように傷や汚れといった不慮の不具合を救済するには、(5)が好ましい。また、外周RMAに記述された記録管理情報を内周RMAにコピーする際も、同様である。
記録再生装置にディスク挿入後、内周PCAでのパワー校正と外周PCAでのパワー校正のどちらを先に実行するかはドライブ設計により異なる。内周PCAを先に実行する利点は、光ピックアップがディスクを記録再生する前に読み込むリードインエリア側に内周PCAが配置されるため、内周PCAでのパワー校正を先に実行し、高速記録の指令が出てから外周PCAでのパワー校正を実行することで低速記録から高速記録への移行がスムーズに行える点である。また、内周では高速での記録再生が困難であるため、テスト記録パターンを内周では低速で再生し、外周では高速で再生するというように、内周PCAと外周PCAとを使い分けることによって、読み取り時間の短縮を図ることができる。
なお、本実施形態では、単層ディスクを例示したが、複数の記録層を有するディスクであって、複数の記録層の全てについて内周側から外周側へ記録を行うディスクに対しても、本発明を適用可能である。すなわち、複数の記録層のそれぞれを図1に示したようなエリア構造とし、各記録層への記録の際に、記録速度等に応じて当該記録層の内周PCAと外周PCAとを使い分けるようにすれば良い。
(第2の実施形態)
本発明の他の実施形態にかかる光ディスク(DVD−R)について、以下に説明する。
図7に示すように、本実施形態にかかる光ディスク40は、記録層として、記録層L0およびL1を有する二層ディスクである。すなわち、光ディスク40は、透明基板41の表面に、記録層L0、半透過層42、中間層43、記録層L1、反射層44、保護層45を、この順に積層した構成である。記録再生時には、透明基板41側からレーザ光が入射する。
この光ディスク40では、記録層L0と記録層L1とは、トラックのスパイラル方向が逆になっている。すなわち、記録層L0に対してデータを記録する際は、内周側から外周側へ記録が進行するが、記録層L1に対してデータを記録する際は、外周側から内周側へ記録が進行する。
このような二層ディスクに対するユーザデータの記録方法としては、以下の4通りがある。第1の方法は、図8(A)に示すように、記録層L0のデータエリアの最内周から外周側へ向かって記録を開始し、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了すると、記録層L1のデータエリアの最外周から内周側へ向かってユーザデータの記録を継続して行う方法である。
第2の方法は、光ディスクに対してデータを複数回にわたって記録する方法であり、図8(B)に示すように、記録層L0のデータエリアの最内周から外周側へ向かって記録を開始する。そして、1回の記録を終了した後に、次の記録を開始する際は、記録層L0では、前回の記録によってユーザデータの記録が完了している領域よりも外周側から記録を再開し、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了すると、記録層L1のデータエリアの最外周からユーザデータの記録を開始する。そして、記録層L1では、前回の記録によってユーザデータの記録が完了している領域よりも内周側から記録を再開し、内周側へ向かってユーザデータの記録を行う。
第3の方法は、第1の方法と同様に記録層L0のデータエリアの最内周から記録を開始するが、記録層L0のデータエリアの最外周へ到達しないうちに、記録層L1へ移動して折り返し記録を行う方法である。この方法は、記録しようとするユーザデータの容量が分かっている場合に有効であり、記録層L0から記録層L1への折り返しは、一般に、記録しようとするユーザデータが均等に記録層L0,L1へ記録されるようになされる。これにより、ファイナライズ時にデータエリアの未記録領域をダミーデータで埋める処理に要する時間を短縮することができ、ユーザデータの記録を短時間で完了できるという利点がある。
第4の方法は、第2の方法と同様に記録層L0のデータエリアの最内周から記録を開始し、記録が完了した領域の後ろに続けて記録を行っていく方法であるが、記録層L0のデータエリアの最外周へ到達しないうちに、記録層L1へ移動して折り返し記録を行う点で、第2の方法と異なる。この方法は、例えば、直径12cmのDVD−Rにおいて半径4cm以内の領域を実質的な情報エリアとして使用する場合等に有効である。この場合、例えば、情報記録面において情報エリアとして使用しない領域(例えば半径4cmより外側の領域)に、作図機能を持つライティングソフトを用いて、ユーザが所望の画像をビットマップとして描画すること等が可能となる。また、直径12cmのDVD−Rを、8cm複層DVD−ROMとして、例えばソフト開発用のプリマスター等の用途に用いることも可能である。また、図8(E)に示すように、記録層L0の最内周から記録を開始し、所定の位置で記録層L1へ移動して折り返し記録し、ファイナライズせず、折返し記録を連続して繋ぐ方法が考えられる。これにより、ファイナライズの時間を短縮できるだけでなく、未記録領域が少なくなるため、ユーザ記録領域を無駄にすることなく、有効に使用することができる。ファイナライズ前に機器から光ディスク取り出した場合でも、常に記録層L1にデータが記録されている状態になるため、ROMディスクとの互換性が比較的高くなる。
なお、第1および第3の方法は、光ディスクに対してデータを1回で書き込むため、ディスク・アット・ワンス(Disc at once)記録と呼ばれる。一方、第2および第4の方法は、光ディスクに対して逐次データを追記していくため、インクリメンタル(Incremental)記録と呼ばれる。
図9は、上述の第1または第2の方法による記録が行われた場合、すなわち、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了した後に、記録層L1のデータエリアの最外周から記録を開始する場合について、光ディスク40の記録層L0、L1のエリア構造を示す断面模式図である。なお、図9は、光ディスク40の半径断面を示すものであり、図9における左側が光ディスク40の内周側であり、右側が光ディスク40の外周側である。
この場合、図9に示すように、記録層L0は、内周側から外周側へ向かって、内周PCA(インナー・ディスク・テスティング・エリア)81、RMA82、リードインエリア83、データエリア84、ミドルエリア(中間領域)85、外周PCA(アウター・ディスク・テスティング・エリア)86を有している。また、記録層L1は、内周側から外周側へ向かって、内周PCA92、RMA91、リードアウト90、データエリア89、ミドルエリア88、外周PCA87を有している。図9において、Pout0は、データエリア84の最外周位置、すなわち、記録層L0においてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置を示す。また、Pout1は、データエリア89の最外周位置、すなわち、記録層L1においてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置を示す。例えば直径12cmのディスクの場合であれば、Pout0はディスク中心から例えば58.08mmの位置にあり、Pout1はディスク中心から58.00mm〜58.08mmの位置にある。
この光ディスク40へデータを記録する場合、光ディスク記録再生装置は、記録層L0へのデータ記録を開始する前に、記録層L0の内周PCA81または外周PCA86を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを校正する。ここで、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA81でテスト記録を行うことが可能であるが、例えば4倍速以上の高速記録を行う場合、光ディスクを回転させるスピンドルモータの性能があまり高くないドライブでは、スピンドルモータの回転数が限界に達する等の理由で、内周PCAでテスト記録ができない場合がある。このような場合は、外周PCA86を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA86を用いることに差し支えはない。その後、記録層L0について適切に校正された記録パワーに従って、記録層L0のデータエリア84へユーザデータを記録する。そして、記録層L0への記録を完了し、記録層L1への記録を開始する前に、記録層L1の内周PCA92または外周PCA87を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを再度校正する。その後、記録層L1に対して適切に校正された記録パワーに従って、記録層L1のデータエリア89へユーザデータを記録する。記録層L1についても、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA92でテスト記録を行うことが可能であるが、4倍速以上の高速記録を行う場合であれば、外周PCA87を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA87を用いることに差し支えはない。
あるいは、光ディスク記録再生装置は、データ記録を開始する前に、記録層L0および記録層L1の両方について、内周PCAおよび/または外周PCAを用いたテスト記録を行うことにより、各記録層に対するレーザ記録パワーを校正し、その後、記録層L0,L1のそれぞれに対して、校正されたレーザ記録パワーに従って記録を実行するようにしても良い。
あるいは、インクリメンタル記録の場合は、まず記録層L0の内周PCAおよび/または外周PCAを用いたパワー校正を行った上で記録層L0へのデータ記録を行い、記録層L0から記録層L1へ移動して記録を行うことが分かった時点で、記録層L1の内周PCAおよび/または外周PCAを用いたパワー校正を行うようにしても良い。
なお、リードイン83、ミドルエリア85,88、リードアウト90については、ファイナライズ時に光ディスク記録再生装置が記録しても良いし、光ディスク40の製造時に所定のデータが予め記録されていても良い。
図10は、上述の第3または第4の方法による記録が行われた場合、すなわち、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了する前に記録層L1への記録を開始する場合について、光ディスク40の記録層L0、L1のエリア構造を示す断面模式図である。なお、図10も、光ディスク40の半径断面を示すものであり、図10における左側が光ディスク40の内周側、右側が光ディスク40の外周側である。
この場合、図9と図10とを比較することから分かるように、第3および第4の方法による記録が行われた場合は、記録層L0において、データエリア84としてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置Pout0よりも内周側にミドルエリア85および外周PCA86の少なくとも一部が位置するよう、ミドルエリア85および外周PCA86の全体が、内周側へシフトされている。シフトされたミドルエリアをシフティッド・ミドル・エリア、シフトされた外周PCAをフレキシブル・アウター・ディスク・テスティング・エリアと呼ぶ。すなわち、ミドルエリア85は、記録層L0のデータエリア84においてユーザデータが記録されている最外周位置の外周側直近に確保され、外周PCA86は、ミドルエリア85の外周側直近に確保されている。また、記録層L1においては、データエリア89としてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置Pout1よりも内周側にミドルエリア88および外周PCA87の少なくとも一部が位置するよう、ミドルエリア88および外周PCA87の全体がシフトされている。すなわち、ミドルエリア88は、記録層L1のデータエリア89においてユーザデータが記録されている最外周位置の外周側直近に確保され、外周PCA87は、ミドルエリア88の外周側直近に確保されている。ミドルエリア85,88の幅は、リードアウトの幅とほぼ等しく、0.2mm程度以上確保されていることが好ましく、0.4mm程度が望ましい。ミドルエリア85,88は、リードアウトと同様にダミーデータが記録される領域である。0.2mm程度の幅があれば、光ディスク記録再生装置が、当該領域に有意なデータが記録されていないことを認識できるが、光ディスク記録再生装置及び/または光ディスク再生装置による認識の確実性を求めるのならば0.4mm程度を要するからである。
また、光ディスク40の製造時に、ユーザデータを記録可能な領域の最外周位置Pout0,Pout1の外周側直近に、ミドルエリアであることを表すダミーデータ(図11におけるミドルエリア93,94)が予め記録されている場合もある。この場合、上述の第3または第4の方法による記録を行って外周PCA86,87を内周側へシフトさせる場合は、図11に示すように、製造時に記録済みのミドルエリア93,94よりも内周側にミドルエリア85,88および外周PCA86,87の全体をシフト配置すれば良い。
図10または図11に示すように、第3または第4の方法による記録の場合も、光ディスク記録再生装置は、記録層L0へのデータ記録を開始する前に、記録層L0の外周PCA86を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを校正する。ここで、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA81でテスト記録を行うことが可能であるが、4倍速以上の高速記録を行う場合であれば、外周PCA86を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA86を用いることに差し支えはない。その後、記録層L0について適切に校正された記録パワーに従って、記録層L0のデータエリア84へユーザデータを記録する。そして、記録層L0への記録を完了し、記録層L1への記録を開始する前に、記録層L0の外周PCA87を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを再度校正する。その後、記録層L1に対して適切に校正された記録パワーに従って、記録層L1のデータエリア89へユーザデータを記録する。記録層L1についても、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA92でテスト記録を行うことが可能であるが、4倍速以上の高速記録を行う場合であれば、外周PCA87を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA87を用いることに差し支えはない。
なお、図9および図10において、斜線を付して示した領域は、データが記録されていない未記録領域である。また、記録層L1においてXで示した領域は、記録層L0からの影響を考慮して設けられたバッファ領域である。すなわち、図9および図10において、RMA91の両端、データエリア89の両端、および内周PCA92の最内周側にそれぞれ設けられたバッファ領域は、その直下の記録層L0にデータが記録されていると記録時のレーザ光強度が弱まって記録条件が変化する可能性があるため、これらのバッファ領域にはデータを記録しないことが好ましい。また、図9および図10において、記録層L0およびL1においてYで示した領域は、以下に詳述するが、記録層L0の内周PCAおよび外周PCAにおけるテスト記録領域と、記録層L1の内周PCAおよび外周PCAにおけるテスト記録領域とが、光ディスク40の記録面に垂直な方向に互いに重ならないようにするためのバッファ領域である。なお、バッファ領域は必ずしも設けなくても良い。
ここで、外周PCA86,87の内部構成について、図12および図13を参照しながら説明する。なお、外周PCA86,87の内部構成は、図9に示す場合と図10に示す場合とにおいて共通である。
図12に示すように、記録層L0の外周PCA86には、7088個のテスト記録フィールド(♯1〜♯7088)からなるテスト記録実行領域86aが存在する。各テスト記録フィールドには、パワー校正のために、1ECCブロック(16セクタ)のデータを記録可能である。図12において、左側が内周側、右側が外周側である。そして、外周PCA86に対するテスト記録は、外周PCA86の外周側のテスト記録フィールドから内周側へ向かって、すなわちテスト記録フィールド♯1,♯2,♯3・・・の順に、順次実行される。各テスト記録フィールドに対するテスト記録は、図12に示すように、記録層L0におけるトラックの進行方向に沿って(内周側から外周側へ向かって)、実行される。つまり、テスト記録フィールドのそれぞれにおける16個のセクタ(♯0〜♯15)のうち、内周側から1番目(♯0)および2番目(♯1)のセクタを除く最大14個のセクタに対して、内周側から外周側へ向かって順次テスト記録が実行される。
一方、記録層L1の外周PCA87にも、図13に示すように、7088個のテスト記録フィールド(♯1〜♯7088)からなるテスト記録実行領域87aが存在する。各テスト記録フィールドには、パワー校正のために、1ECCブロック(16セクタ)のデータを記録可能である。図13においても、左側が内周側、右側が外周側である。そして、外周PCA87に対するテスト記録は、記録層L0の外周PCA86とは逆に、光ディスク40の内周側から外周側へ向かって、テスト記録フィールド#1,♯2,♯3・・・の順に、順次実行される。各テスト記録フィールドに対するテスト記録は、図13に示すように、記録層L1におけるトラックの進行方向に沿って(外周側から内周側へ向かって)、実行される。つまり、テスト記録フィールドのそれぞれにおける16個のセクタ(♯0〜♯15)のうち、外周側から1番目(♯0)および2番目(♯1)のセクタを除く最大14個のセクタに対して、外周側から内周側へ向かってテスト記録が順次実行される。
なお、記録層L0の外周PCA86のテスト記録実行領域86aと、記録層L1の外周PCA87のテスト記録実行領域87aは、図9および図10に示すように、光ディスク40のディスク面に垂直な方向において互いに重ならないように配置されている。また、記録層L0の外周PCA86において、テスト記録実行領域86a以外の領域86bは、未記録状態とされる。これは、以下の理由による。すなわち、記録層L0の領域86bにテストパターンとして何らかのデータが記録されると、その直上の記録層L1にテスト記録を行う際に、テスト記録実行領域86bに記録されたテストパターンによって、レーザ光の透過率が変化してしまう。つまり、記録層L1の実効パワーが記録層L0の記録状態によって変動し、正確なパワー校正が困難となるからである。もちろん、領域86bを記録層L0のテスト記録実行領域とし、領域87bを記録層L1のテスト記録実行領域としても構わない。
なお、上述では、外周PCA86,87の構造について説明したが、内周PCA81,92も外周PCA86,87と同様の構造を有するため、図を用いた詳細な説明は省略する。記録層L0の内周PCA81については、外周PCA86と同様に、外周側のテスト記録フィールドから順にテスト記録が実行されるが、各テスト記録フィールドのセクタに対する記録順序は、記録層L0のトラックの進行方向すなわち内周側から外周側へ向かう方向である。記録層L1の内周PCA92については、外周PCA87と同様に、内周側のテスト記録フィールドから順にテスト記録が実行されるが、各テスト記録フィールドのセクタに対する記録順序は、記録層L1のトラックの進行方向すなわち外周側から内周側へ向かう方向である。また、内周PCA81と内周PCA92についても、それぞれのテスト記録実行領域が、光ディスク40のディスク面に垂直な方向において互いに重ならないように配置されている。
以上の構成にかかる光ディスク40にデータを記録する際に、光ディスク記録再生装置は、第1の実施形態と同様に、比較的低速(例えば1倍速あるいは2倍速)で記録を行う場合は、内周PCA81,91を用い、比較的高速(例えば2倍速以上)で記録を行う場合は、外周PCA86,87を用いたテスト記録により、レーザの記録パワーを校正することが好ましい。
また、図8(C)、図8(D)、および図8(E)に示した記録方法により、図10に示すとおり、記録層L0のミドルエリア85および外周PCA86と、記録層L1のミドルエリア88および外周PCA87とを内周側へシフトさせた場合は、ユーザデータの最終アドレス(ラストアドレス)が、光ディスク記録再生装置により、RMA82,91内のRMDへ記録される。このラストアドレスが記録される領域は、第1の実施形態において図2の(b)〜(e)により示されるBP(バイトポジション)#25〜27である。但し、BP#25〜27は1層構成のDVD−Rにおけるラストアドレスを記録する領域であるため、2層構成でのラストアドレスを記録する領域は1層構成でラストアドレスを記録する領域とは別にした方が混同を避けることができる。2層構成のラストアドレスを記録する新たなBPとしては、図2の(d)及び(e)に示したようにBP#125までは1層構成におけるコピープリピット情報を記録する領域であるため、BP#125から数バイト間隔を持たせたBP、例えばBP#127まではリザーブとしBP#128〜131に2層構成のラストアドレス(通常はミドルエリアの開始アドレス)を割り当てても良い。
なお、記録層L0の外周PCA86、記録層L1の外周PCA87を内周側へシフトしてテスト記録を行った際に、光ディスク40のRMA82,91には、外周PCA86,87を内周側へシフトして用いたことを表す情報が、光ディスク記録再生装置により記録される。例えば、記録層L0の外周PCA86を内周側へシフトしてテスト記録を行った場合、図14に示すように、記録層L0のRMA82内のRMDにおけるフィールド#14にて、外周PCA86をシフトして使用したか否かを表すフラグが、「使用」を表す値に設定される。例えば、外周PCA86がシフトして使用された場合は、BP0に0001b、シフトしない場合は0000bが設定される。
以上のとおり、本実施形態にかかる光ディスク40では、複数の記録層のそれぞれに外周PCAが設けられているので、各記録層へ記録を行う際に、記録速度等に応じて、当該記録層の外周PCAを用いたテスト記録を行うことが可能である。
また、図10に示すように、図8(C)、図8(D)、および図8(E)に示した記録方法により、記録層L0のミドルエリア85および外周PCA86と、記録層L1のミドルエリア88および外周PCA87とを内周側へシフトさせた場合は、データエリアの未記録領域へダミーデータを書き込む処理が不要となるため、ファイナライズ処理に要する時間を短縮することができる。この結果、ユーザデータの記録を短時間で完了できるという利点がある。
さらに、本実施形態では、記録速度に応じて各記録層において内周PCAと外周PCAとを使い分けるものとしたが、第1の実施形態に記載したように、低速記録であっても、内周PCAと外周PCAとの両方にテスト記録を行うことにより、ディスクの内外周で生じる記録感度の差に応じて記録パワーの補正を行うことも可能である。また、第1の実施形態で説明したように、ディスク表面に傷や汚れが生じた場合等に備えて、同一記録層における内周PCAと外周PCAのテスト記録パターンを互いの領域にコピーすることも好ましい。さらに、外周PCAに関する管理情報を記録するRMAを外周側にも設けても良いし、その場合に、内周RMAと外周RMAの情報を互いの領域にコピーすることもより好ましい。
なお、本実施形態では、片面二層構造の光ディスク40を例示したが、本発明は、三層以上の光ディスクへも適用できることは明らかである。また、複層構造の光ディスクを2枚貼り合わせた構造のディスクにも、本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態では何れも追記型光ディスクのDVD−Rを中心として説明したが、本発明の外周PCA及び/または外周RMAは、相変化型光ディスクにも同様に適用することができる。但し、書換型光ディスクにおける、データ領域に記録されたユーザデータの消去、及び記録されたユーザデータの上に別のユーザデータを記録(すなわち、記録されたユーザデータを消去し、別のユーザデータを重ね書き)するオーバーライトは、追記型光ディスクにはない機能である。この消去またはオーバーライトをする際には、当該消去またはオーバーライト対象のユーザデータに関する外周テスト記録パターン及び/または外周記録管理情報も消去またはオーバーライトすることで、当該ユーザデータの消去またはオーバーライトを保証することができる。また、外周テスト記録パターンや外周記録管理情報の記録領域の容量(例えば、PCAでは200ECC)を有効に利用することができる。なお、外周PCAが内周側にシフトされた場合、ユーザデータを新たに記録する際には、外周PCAの全てを消去またはオーバーライトしても構わない。
図15および図16は、外周側にもRMDを記録する領域(RMA321)が設けられている場合の物理フォーマットを示す。図2で説明した内周RMA102の構成と同様に、外周側のRMA321においても、図16に示すとおり、RMA321は701個のECCブロックから成る。すなわち、各RMDに1つのECCブロックが割り当てられる。各ECCブロックは、16個のセクタを含む。セクタはフィールドの先頭から#0から#14までの番号が付けられており、2番目のフィールド#1には、OPC関連の情報が格納される。OPC関連の情報とは、例えば、ドライブ製造ID、シリアルナンバー、記録パワー、記録ストラテジコード等の情報である。
図16の(f)に示すように、2番目のフィールド#1の内、バイトポジションBP#0〜#127にはタイトルT1を記録した時の記録条件の情報が格納されている。また、BP#128〜#255はタイトルT2を記録した時、BP#256〜#383はタイトルT3を記録した時の記録条件の情報が格納されている。
図15(A)〜図15(C)は、ユーザデータであるタイトルT3のコンテンツを消去する動作を示す。ユーザの指示に従ってタイトルT3のコンテンツを消去した後、記録再生装置は、記録T3に該当する記録管理情報であるRMD情報BP#256〜#383も消去する。
図15(B)はタイトルT3のコンテンツを消去後の状態を示す。ユーザにとって不要となったタイトルT3のコンテンツが消去されると、記録再生装置が、図15(B)および図15(C)に示すように、タイトルT3の記録管理情報も消去することにより、ユーザデータとRMA321の空き容量が増え、RMA321を有効に使用することができる。
なお、上記では、コンテンツの消去に伴い、RMA321において当該コンテンツに対応するRMD情報を消去する例だけを説明したが、内周側のRMA102に対しても同様に、当該コンテンツに対応するRMD情報の消去を行っても良い。
また、本実施形態では、RMD情報の消去について述べたが、外周でのテスト記録パターンが記録されるPCA320についても、コンテンツに該当するテスト記録パターンを消去することにより、同様の効果を得ることができる。
本発明は高速で記録するDVD−R、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等の記録型DVDや、青色レーザを使用したブルーレイディスクやAOD等、光ディスクを用いる記録再生装置に適用可能である。
図1は、本発明の一実施形態にかかる情報記録媒体における外周PCAとレコーダブルエリアの関係を示す断面模式図である。
図2は、DVD−R論理フォーマットの概念図である。
図3は、PCA記録選択の概念図である。
図4(A)は8倍速記録時の半径位置とジッタの関係を示すグラフである。
図4(B)は8倍速記録時の半径位置と記録パワーの関係を示すグラフである。
図5は、本発明の一実施形態にかかる情報記録再生装置の構成を示すブロック図である。
図6は、本発明の一実施形態にかかる情報記録再生装置の動作を表すフローチャートである。
図7は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体の構成を示す断面図である。
図8(A)は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
図8(B)は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
図8(C)は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
図8(D)は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
図8(E)は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
図9は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体のエリア構造の一例を示す断面模式図である。
図10は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体のエリア構造の他の例を示す断面模式図である。
図11は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体のエリア構造のさらに他の例を示す断面模式図である。
図12は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体のPCAの構造を示す断面模式図である。
図13は、本発明の第2の実施形態にかかる情報記録媒体のPCAの構造を示す断面模式図である。
図14は、本発明の第2の実施形態にかかるRMDフィールドの概念図である。
図15(A)は、コンテンツを消去する際に外周側のRMAからRMD情報も消去する動作を説明する図であって、消去前の状態を示す。
図15(B)は、コンテンツを消去する際に外周側のRMAからRMD情報も消去する動作を説明する図であって、タイトルが消去された状態を示す。
図15(C)は、コンテンツを消去する際に外周側のRMAからRMD情報も消去する動作を説明する図であって、RMD情報が消去された状態を示す。
図16は、DVD−R論理フォーマットの概念図である。
図17は、従来のDVD−Rの内周PCAの概念図である。
図18は、従来のDVD+RWの外周PCAの概念図である。
本発明は、光ディスク等の情報記録媒体およびこれを用いて記録/再生を行う情報記録再生装置に関し、特に、記録パワー校正領域を有する情報記録媒体とそれを用いる情報記録再生装置に関する。
光学的に情報信号を情報層にディジタル記録し、記録マークまたは記録ピット(以下、記録マークと称する)により情報層に記録された情報信号を再生できる情報記録媒体は、当該記録マークの品質及び検索性の高さで普及している。また、近年動画等のように大容量の情報信号を記録する要請に応えるべく、1枚に記録できる情報量を高めた高密度記録媒体としてDVD(ディジタル・バーサタイル・ディスク)が提案され、市場ニーズに合致した点で受け容れられている。また、例えばコンピュータプログラムを予め記録した再生専用の情報媒体(例えば、CD−ROM等)と同様に、この記録可能なDVD(以下、記録型DVDと称す)も、再生速度及び記録速度の高速化が要望されている。ところで、記録密度を高めるためには線速度一定(CLV)方式が有利であるため、記録型DVDを記録再生する記録再生装置では、CLV方式を基本とした記録方式(以下、ZCLV方式等も含めCLV方式またはCLV記録方式と称す)が開発され採用されている。
一方、記録型DVDは、前述したように大容量の情報信号を記録するために、記録密度が高くなるよう設計されているが、高記録密度を有しているがため、記録型DVDの製造メーカが推奨する記録速度や記録パワー等の記録情報、記録に際しての記録型DVDと記録再生装置との相性及び/または記録型DVDに記録した記録再生装置の情報を、当該記録型DVDに記述すること等が要請されている。このため、データ領域(Data Recordable area)の内周のリードイン領域の更に内周に、記録管理情報を記述した記録管理領域(Recording Management Area)と、データ領域に記録した際の記録速度や照射するレーザパワー等を記述したパワー校正領域(Power Calibration Area)とを備えている。このパワー校正領域は、記録管理領域の内周側に設けられ、記録速度が目標値に達した時点で、当該記録速度で情報層に照射するレーザパワー等の情報を記述する領域である。この情報は、記録再開時の記録速度に応じた照射パワーの学習のために、履歴として残される。
前述したように記録再生装置はCLV方式で記録するため、記録型DVDを回転させるスピンドルモータの回転数は、内周になるほど高速回転となる。従って、記録型DVDの最内周に備えるパワー校正領域では例えば4倍速の記録速度には記録履歴情報の記述はできるが、8倍速、16倍速のように高速化が進行するとスピンドルモータの回転に限界を来たし追従できなくなり、記録履歴をパワー校正領域に記述できなくなると言う問題が想定される。
このようにパワー校正領域を最内周に備えるだけでは、高速化の要請に対して何れ対応できなくなる事態を鑑み、非特許文献1には、内周ディスクテスト領域(Inner Disc Test Zone)では対応できない記録履歴情報を記述する領域として、リードアウト領域の外周側に外周ドライブ領域(Outer Drive Area)を新たに設け、当該外周ドライブ領域の外周ディスクテスト領域(Outer Disc Test Zone)に高速記録速度に対応できる記録履歴情報を記述する構成が開示されている。
例えば、図17、図18は、従来の光ディスクの断面概念図であって、図17はDVD−Rの内周側の記録領域、図18はDVD+RWの外周側の記録領域の概念図を示す。DVD−Rの場合、リードインエリアの内周側にRMA領域とOPC領域が設けられている。情報記録再生装置は、データ記録開始に最適記録パワー校正(OPC、Optimum Power Calibration)を行い、それにより半導体レーザの記録パワーを決定する。ここで、OPCとは、光ディスクに所定のテスト記録マークを試し書きし、そのテスト記録マークから再生されたアナログ信号のβ値に基づいて半導体レーザの記録パワーを校正する操作をいう。OPC情報とは、OPCに関する情報で、OPC時の記録パワー条件と記録ストラテジを含む。また、DVD−RAMやDVD+RWの場合、内周側と外周側にディスクテストゾーンと呼ばれるOPC領域が設けられているが、図18は外周側のみ図示している。データ容量がフルに記録された時、データ領域が半径58mmまでで、その後に、リードアウト領域が半径58.0〜58.05mmに記録され、ディスクテストゾーンは半径58.1〜58.3mmに記録される。
ところが、記録再生光を透過する基板は、記録型DVDに限らず、ポリカーボネイト等の樹脂を射出成形することにより形成される。この射出成形で樹脂を射出するノズルは、成形型全面に樹脂が行き渡るように内周近辺に設けられている。しかしながら、成形型の表面にはトラックやエンボス等の複雑な形状を備えているため、成形型全面に樹脂が行き渡るように設計したとしても、基板の内周部と外周部とでは樹脂の供給量が異なり、外周部の成形精度が劣る。これにより、ディスク外周部の平面精度及び/またはトラックの成形精度は、内周部に比べると低下する。
また、従来、記録型DVDの情報層の主成分は、周知のように、書換可能型ディスクの場合は無機材料であり、追記型ディスクの場合は有機色素である。無機材料による情報層の形成には、スパッタまたは真空蒸着等のいわゆる気相堆積法が適用されるが、有機色素の場合は、一般的に、回転した基板に有機色素溶液を滴下する、いわゆるスピンコート法が適用されている。このスピンコート法は、基板の回転により発生する遠心力を利用するため、有機色素溶液は基板の内周部から滴下する。従って、特に有機色素溶液をスピンコートして形成する情報層を有する追記記録型DVD(いわゆるDVD−R、DVD+R)では、外周側の情報層は内周の情報層に比べて色素溶液の供給量が不足する傾向にあるため、情報層の膜質が低下する。
さらに、記録型DVDに限らず樹脂成形した基板を適用した情報記録媒体の平面度は、例えばガラスのような無機材料より低い。これに起因して、ディスクの回転時に、「面ぶれ」と称される、回転軸方向にディスク面が上下動する現象が発生する。この面ぶれ現象は、外周になるほど、また、回転速度が高速になるほど大きくなる。従って、高速で外周に情報を記録する際に、面ぶれが問題となる可能性がある。
以上のように、重要な情報を記述する領域としては、内周の方が適性が高く、外周になるほど信頼性の観点では劣る。従って、上述の非特許文献1に開示されているように、記録型DVDの最外周に外周ディスクテスト領域(Outer Disc Test Zone)を新たに設け、記録速度に対応する照射パワー等の情報(記録履歴情報)を記録する従来の構成では、この情報について信頼性の保証ができないという課題がある。
また、記録型DVDで情報信号を記録できる情報領域(Information Area)は、一般的に、パワー校正領域、記録管理領域、リードイン領域、データ領域、及びリードアウト領域を言うが、前記従来の構成では、リードアウト領域の更に外周までも記録を補償する情報領域の範囲を拡大しなければならないという課題もある。
「DVD+R4.7Gbytes Basic Format Specifications version1.2」 (2003年7月発行)(第48頁16.1 Physical Sector Numbers(PSNs) Figure22、第49頁 Table7のOuter Drive Area欄のOuter Disc Test Zone、第60頁21.3 Outer Disc Test Zone、及び第117頁〜第119頁 Annex H Optimum Power Control and Recording Conditions)
本発明は、係る従来提案されている構成が本質的に有する課題を解決し、信頼性が高いパワー校正領域を備えた情報記録媒体と情報記録再生装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明にかかる情報記録媒体は、複数の記録層を備えた情報記録媒体であって、テスト記録パターンが記録される第n−1層目の内周パワー校正領域と、前記内周パワー校正領域に関する記録管理情報が記録される第n−1層目の記録管理領域と、第n−1層目のリードイン領域と、情報信号を内周側から外周側に向かって記録する第n−1層目のデータ領域とをこの順番に配置した第n−1層目の記録層と、テスト記録パターンが記録される第n層目の内周パワー校正領域と、前記内周パワー校正領域に関する記録管理情報が記録される第n層目の記録管理領域と、第n層目のリードアウト領域と、情報信号を外周側から内周側に向かって記録する第n層目のデータ領域とをこの順番に配置した第n層目の記録層とが積層され、前記第n−1層目および前記第n層目において、前記データ領域として情報信号を記録可能な領域の最外周位置よりも内周側に、ミドルエリアの少なくとも一部、または、ミドルエリア全体と外周パワー校正領域の少なくとも一部が位置するとともに、前記ミドルエリアは前記データ領域に記録された前記情報信号の最外周位置の外周側直近に位置し、前記外周パワー校正領域は当該ミドルエリアの外周側直近に位置するよう、ミドルエリアおよび外周パワー校正領域が配置されていることを特徴とする。
本発明にかかる情報記録媒体は、データ領域として情報信号を記録可能な領域の最外周位置よりも内周側に、ミドルエリアの少なくとも一部、または、ミドルエリア全体と外周パワー校正領域の少なくとも一部が位置するとともに、前記ミドルエリアは前記データ領域に記録された前記情報信号の最外周位置の外周側直近に位置し、前記外周パワー校正領域は当該ミドルエリアの外周側直近に位置するよう、ミドルエリアおよび外周パワー校正領域が配置されていることにより、従来のようにリードアウト領域よりも外周側(光ディスクの最外周)にパワー校正領域を設けた記録媒体と比較して、面振れ等の機械特性がより良好な領域でパワー校正を行うことが可能となる。これにより、情報記録再生装置が、最適な記録パワーを確実かつ短時間で決定できるという利点がある。
本発明にかかる情報記録媒体は、複数の記録層を備えた情報記録媒体であって、テスト記録パターンが記録される第n−1層目の内周パワー校正領域と、前記内周パワー校正領域に関する記録管理情報が記録される第n−1層目の記録管理領域と、第n−1層目のリードイン領域と、情報信号を内周側から外周側に向かって記録する第n−1層目のデータ領域とをこの順番に配置した第n−1層目の記録層と、テスト記録パターンが記録される第n層目の内周パワー校正領域と、前記内周パワー校正領域に関する記録管理情報が記録される第n層目の記録管理領域と、第n層目のリードアウト領域と、情報信号を外周側から内周側に向かって記録する第n層目のデータ領域とをこの順番に配置した第n層目の記録層とが積層され、前記第n−1層目および前記第n層目において、前記データ領域として情報信号を記録可能な領域の最外周位置よりも内周側に、ミドルエリアの少なくとも一部、または、ミドルエリア全体と外周パワー校正領域の少なくとも一部が位置するとともに、前記ミドルエリアは前記データ領域に記録された前記情報信号の最外周位置の外周側直近に位置し、前記外周パワー校正領域は当該ミドルエリアの外周側直近に位置するよう、ミドルエリアおよび外周パワー校正領域が配置されていることを特徴とする。
本発明にかかる情報記録再生装置は、複数の記録層を備えた情報記録媒体であって、テスト記録パターンが記録される第n−1層目の内周パワー校正領域と、前記内周パワー校正領域に関する記録管理情報が記録される第n−1層目の記録管理領域と、第n−1層目のリードイン領域と、情報信号を内周側から外周側に向かって記録する第n−1層目のデータ領域とをこの順番に配置した第n−1層目の記録層と、テスト記録パターンが記録される第n層目の内周パワー校正領域と、前記内周パワー校正領域に関する記録管理情報が記録される第n層目の記録管理領域と、第n層目のリードアウト領域と、情報信号を外周側から内周側に向かって記録する第n層目のデータ領域とをこの順番に配置した第n層目の記録層とが積層され、前記第n−1層目および前記第n層目において、前記データ領域として情報信号を記録可能な領域の最外周位置よりも内周側に、ミドルエリアの少なくとも一部、または、ミドルエリア全体と外周パワー校正領域の少なくとも一部が位置するとともに、前記ミドルエリアは前記データ領域に記録された前記情報信号の最外周位置の外周側直近に位置し、前記外周パワー校正領域は当該ミドルエリアの外周側直近に位置するよう、ミドルエリアおよび外周パワー校正領域が配置されている情報記録媒体を用い、前記情報記録媒体の前記データ領域に所望のユーザ情報信号を記録する情報記録再生装置であって、前記情報記録媒体を回転させる回転駆動部と、前記情報記録媒体へ光を照射することにより情報信号の記録または情報信号の再生を行う光ピックアップと、前記情報記録媒体の内周および外周パワー校正領域の少なくとも一方へ前記光ピックアップを移動させて、前記光ピックアップによる照射パワーの校正を実行する校正制御部と、ユーザ情報信号を記録する際に前記情報記録媒体の内周側の記録管理領域に記述した内周記録管理情報を、前記情報記録媒体の外周側の記録管理領域にコピーする手段を備えたことを特徴とする。
上記の構成にかかる情報記録再生装置は、前記データ領域からデータを消去するとき、前記外周パワー校正領域に記録されているテスト記録パターンのうち、前記消去対象のデータに対応するテスト記録パターンを消去する手段をさらに備えたことが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録再生装置は、前記データ領域からデータを消去するとき、前記外周側の記録管理領域に記述されている記録管理情報のうち、前記消去対象のデータに対応する記録管理情報を消去する手段をさらに備えたことが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録再生装置は、前記情報記録媒体の記録管理領域に、前記データ領域の記録可能な領域の範囲を表す情報が含まれ、前記情報記録再生装置が、前記データ領域の記録可能な領域の範囲を表す情報を、前記情報記録媒体における当該記録可能な領域の最外周が内周側へ移動するよう変更する手段をさらに備えたことが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録再生装置は、前記回転駆動部による前記情報記録媒体の回転速度を制御する回転制御部をさらに備え、前記校正制御部が、前記回転制御部から前記情報記録媒体の回転速度情報を取得し、取得した回転速度情報に応じて、前記光ピックアップによる照射パワーの校正を前記内周および前記外周パワー校正領域のいずれにおいて実行するかを決定することが好ましい。
上記の構成にかかる情報記録再生装置は、前記回転速度情報が表す速度が所定速度を越える場合、前記校正制御部が、前記光ピックアップによる照射パワーの校正を前記外周パワー校正領域において実行することが好ましい。
以下、本発明の情報記録媒体および情報記録再生装置について、より具体的な実施形態と参考例を説明する。
(参考例)
近年、光学式情報記録技術、すなわち、記録可能型光ディスクへのデータ記録技術が著しく発展している。それに伴い、光学式記録再生装置すなわち光ディスク記録再生装置が各種開発されている。特に、例えばDVD−RAMドライブのように、コンピュータの外部記録装置等として応用されたものが、既に広く普及し始めている。
記録可能型光ディスクは、追記型光ディスクと書換型光ディスクとに分類される。追記型光ディスクとは、データを一回のみ記録可能な光ディスクをいう。追記型光ディスクはCD−R(Recordable)とDVD−RとDVD+Rを含む。
追記型光ディスクでの記録マークの作成は次の通りに行われる。記録層が有機色素を含む。その有機色素は所定のパワーのレーザを照射されると分解する。その結果、特にその光学的反射率が低下する。こうして、レーザ照射を受けた記録層の部分が記録マークとなる。
追記型光ディスクではデータの記録が次の理由で一回に限られる。記録マークの作成時、記録層のレーザ照射部分で多量の熱が生じる。その熱は周囲の樹脂等を変形させる。それらの変形は不可逆的であるので、レーザ照射前の状態に戻すことができない。それ故、追記型光ディスクでは、データの記録が一回に限られる。
書換型光ディスクとは、データを書き換えて多数回記録可能な光ディスクをいう。書換型光ディスクはCD−RW(Re−Writable)、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等を含む。
書換型光ディスクの内、相変化記録方式によるものでは、記録マークの作成が次の通りに行われる。記録層は、結晶相とアモルファス相との二種類の固相を有する合金を含む。この記録層の光学的反射率は、一般的に、結晶相では高く、アモルファス相では低くなるように、設計される。従って、記録層の内、アモルファス相の部分が記録マークである。記録マークの作成、すなわち、結晶相からアモルファス相への転移は、次のようにして実現する。記録層に対して比較的高いパワーのレーザをパルス照射する。それにより、記録層の狭い範囲が融点以上の温度まで瞬間的に加熱され、その直後ガラス化点以下の温度まで急冷される。その結果、記録層のその狭い範囲がアモルファス相へ転移する。
更に、相変化記録方式による書換型光ディスクでは、既存の記録マークを次のようにして消去できる。記録マークは、上記の通り記録層のアモルファス相部分である。従って、記録マークを消去するには、記録マークの範囲でアモルファス相から結晶相へ転移させれば良い。アモルファス相から結晶相への転移は、次のようにして実現する。回転中の書換型光ディスクの記録層に対して比較的低いパワーのレーザを比較的長時間照射する。それにより、記録層の広い範囲が、ガラス化点より高く融点を超えない程度の温度、まで加熱される。その時、加熱された記録層の範囲は加熱後ゆっくりと冷える。その結果、記録層のその広い範囲が結晶相へ転移する。こうして、書換型光ディスクでは既存の記録マークを消去できる。なお、データ領域に記録されたユーザデータを消去、または記録されたユーザデータに別のユーザデータを記録(すなわち、記録されたユーザデータを消去し別のユーザデータを重ね書き)するオーバーライトを行う場合には、外周パワー校正領域における当該記録されたユーザデータに関するテスト記録パターン及び/または記録管理領域に記述された記録管理情報も消去またはオーバーライトする。
相変化記録方式による書換型光ディスクへの実際のデータ記録では、レーザを上記の高いパワーと低いパワーとの間で切り換えながら照射する。それにより、記録マークの消去と作成とを同時に実行して、データを光ディスクに上書きできる。
以下、本発明を実施するための形態について、参考例と好ましい実施例を挙げて、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
(情報記録媒体)
図1に、参考例にかかる光ディスク(DVD−R)の記録領域の概念図を示す。なお、図1は、参考例にかかるDVD−Rの外周側の記録領域を示すものである。
図1に示すように、本参考例にかかるDVD−Rは、リードアウトエリア60よりも内周側に、記録履歴情報を記述する外周PCA70(第2のPCA)を有する。なお、図1には示されていないが、このDVD−Rは、ユーザエリア50よりも内周側にリードインエリアを備え、そのさらに内周側に記録管理領域(RMA)と内周PCA(第1のPCA)とを備えている。
なお、本参考例では、DVD−R上のインフォメーションエリアをユーザエリア50とリードアウトエリア60とに分類し、リードエンドデータ54および外周PCA70がユーザエリア50の一部であるものとして説明する。しかし、将来の規格では、リードエンドデータ54および外周PCA70を含む領域が、「ユーザエリア」とは別の領域として定義される可能性もある。
図1において、内周側の図示は省略されているが、ユーザエリアには、内周側から外周側へ向かって、順次、ユーザデータ51が記録されており、このDVD−Rに対して最後に記録されたユーザデータが、参照符号52で表されるユーザデータ(最終ユーザデータ)である。最終ユーザデータ52の外側には、ボーダアウト53が記録されている。なお、ボーダアウトについては後述する。図1の例では、ボーダアウト53の後端のアドレスが、ユーザデータ51の最終アドレスである。最終ユーザデータ52およびそのボーダアウト53の外側には、リードエンドデータ54が記録され、そのさらに外側に、外周PCA70(第2のPCA)が設けられている。リードエンドデータ54は、ユーザデータ51および外周PCA70との境界を明確にするためのデータであるので、これらと識別が可能であることを条件として、任意のデータを用いることができる。
従来のDVD−Rでは、データ領域(ユーザエリア)が半径58mmまで、リードアウト領域が58.0〜58.5mmであったが、本参考例のDVD−Rは、従来ランドプリピット情報のコピーであったRMD情報の記録可能なデータ領域の最終アドレスを書き換えることで、データ領域のラストアドレスを、半径58mm位置よりも内周側に変更する。これによって、ユーザデータの記録はRMD情報の最終アドレス位置で終了し、その後にリードエンドデータ54を記録しても、外周PCA70を上書きすることはない。
本参考例ではユーザデータは半径57.7mmまで、リードエンドデータ54は半径57.9mmまで、外周PCAは半径57.9〜58.0mmとしている。つまりリードアウト領域は幅0.2mm、外周PCAは幅0.1mmとなる。データ容量はリードアウト領域で約100MB、PCAで約20MBとなる。リードエンドデータ54の領域は、DVDプレイヤーが再生時に検出できればよいので、互換性が確保できれば、幅0.1mmにすることも可能である。その際は、ユーザデータは57.7mmまで、リードエンドデータは57.8mmまで、外周PCAは57.8〜57.9mmとなり、より内周側に外周PCAを構成することができる。
図2は、本参考例にかかる情報記録媒体としてのDVD−Rの記録領域上の物理フォーマットを示す図である。特に、図2の(a)はDVD−Rの記録領域全体の物理フォーマットを示す。DVD−Rの記録領域は、最内周から外側に向けて順に、R−情報領域100、リードインエリア200、データ領域300及びリードアウトエリア400に分割されている。それぞれの領域は、整数個のECCブロックから成り、プリピットにより識別される。R−情報領域100は、記録パワー校正領域(PCA:Power Calibration Area)101と記録管理情報領域(RMA:Recording Management Area)102とを含む。
PCA101は、後述の記録ストラテジの補正時、及び、レーザの記録パワーの校正(最適記録パワー校正(OPC:Optimum Power Calibration))時、所定の記録パターンを試し書きするための領域である。
RMA102は、本参考例にかかるDVD−Rのファイルシステムの情報及び記録管理情報(RMD:Recording Management Data)を記録した領域である。
リードインエリア200はデータ領域300の先頭を示す所定のデータを記録するための領域である。リードインエリア200のデータは、最初の記録時に記録される一連のデータの記録終了時、すなわち、図2の(a)の場合であれば、タイトルT3のデータの記録終了時に記録される。
データ領域300は、記録目的のデータを書き込むための領域である。データ領域300は、記録時ごとにボーダゾーンBi(i=1,2,3・・・)で分割されている。ボーダゾーンBiは、ディスク内周側のボーダアウトエリアBioutと、外周側のボーダインエリアBiinとから成る。二つのボーダゾーンBiおよびB(i+1)の間に、一回の記録時に記録される一連のデータ、すなわち、一つのタイトルのデータが記録される。ボーダアウトエリアBiout及びボーダインエリアBiinは、対応するタイトルの記録開始時のリンキング処理で確保される。更に、それぞれの領域へのデータの書き込みは、対応するタイトルの記録終了時に実行される。なお、データ領域300におけるリードアウトエリア400側の末端部には、前述のリードエンドデータが記述されるリードエンド領域310と、外周側のPCA320(第2のPCA)とが設けられている。
リードアウトエリア400は、データ領域300の末尾を示す所定のデータを記録するための領域である。リードアウトエリア400のデータは、データ領域300への書き込みの完了時、すなわち、ファイナライズ処理時に記録される。
図2の(b)は、RMA102内の物理フォーマットの詳細である。RMA102は、例えば、701個のECCブロックから成る。先頭のECCブロックはRMAリードインエリア102aである。RMAリードインエリア102aは、PCA101と、RMDを記録した領域102b1〜102b700との間の緩衝領域である。それにより、PCA101上での試し書き時、誤ってRMDを上書きして破壊することを防ぐ。領域102b1〜102b700は、それぞれ、RMDを一つのタイトルごとに記録するための領域である。
図2の(c)は、一つのRMD内の物理フォーマットの詳細を示す図である。RMDは、一つのECCブロックから成り、それ故、16個のセクタを含む。先頭の1セクタはリンキングロスエリアである。リンキングロスエリアには、空白を示す所定のデータ、例えば00hだけが記録されている。つまり、リンキングロスエリアは、別々のRMDの間の緩衝領域である。それにより、一つのタイトルの記録終了後、別のタイトルの追加記録時、新たなRMDを既存のRMDに上書きすることを防ぐ。
RMDの残り15個のセクタは、それぞれフィールドと呼ばれる領域である。それぞれのフィールドには先頭から順に、#0から#14までの番号が付けられている。先頭のフィールド#0には、本参考例にかかるDVD−Rの一般的な情報が記録される。例えば、ディスクステータス及びプリピット情報のコピー等が含まれる。二番目のフィールド#1には、OPC関連情報が記録される。
図2の(d)はフィールド#0内の論理フォーマットの詳細を示す図である。フィールド#0は一つのセクタから成る。従って、フィールド#0内に実質的に記録可能なデータは、2048バイト=2KBである。それぞれのデータには1バイトずつ、バイトポジション(BP)と呼ばれる通し番号#0〜#2047が付けられている。
BP#0〜#1にはRMDフォーマットコードが、BP#2にはディスクステータス(disc status )、BP#3にはリザーブが、それぞれ記録される。ディスクステータスは、ディスクの記録モードを示すものであり、未記録、ディスクアットワンス(Disc at once)、インクリメンタルレコーディング(incremental recording)、ファイナライズ(finalized)を識別するものである。
BP#4〜#21には、ユニークディスクID(Unique Disc ID)が記録されている。ドライブがテスト記録した時の年月日、時間が記録されるものである。
BP#22〜#127には、プリピット情報のコピーが、BP#128〜#2047にはリザーブがそれぞれ記録される。図2の(e)は、プリピット情報のコピーの詳細を示す図である。
また、プリピット情報は、フィールド#0〜#13まで存在し、その内のフィールド#1の情報はRMDの#22〜#29まで、フィールド#2の情報はRMDの#30〜#37、フィールド#3の情報はRMDの#38〜#45、というように、RMDの8バイト毎に、各フィールドの情報が入っている。なお、各フィールドには各記録速度に応じた記録パワー、記録ストラテジ情報が入っている。例えば、フィールド#2〜#5は1倍速に関する情報、フィールド#6および#7には2倍速に関する情報、フィールド#8〜#13には4倍速に関する情報が入っている。なお、これはあくまでも一例であり、さらに高速の記録速度に関する情報が記録されていても良い。
BP#22のフィールドIDは、プリピットフィールド#1に対応し、BP#23にはアプリケーションコードが、BP#24にはディスクフィジカルコードが、それぞれ記録される。ディスクフィジカルコードは、トラックピッチ、線速度、ディスク直径などが記録されるものである。
BP#25〜#27には、記録可能なデータ領域のラストアドレス情報(Last Address of Data Recordable area)が、BP#28には、パートバージョン(Part Version)が、BP#29にはリザーブが、それぞれ記録されている。BPデータ領域のラストアドレス情報は、ディスクの外周側の記録可能な範囲を決定するものである。BP#28は、どの規格のバージョンに対応したディスクかどうか識別するためのものである。
BP#25〜#27に記録されているラストアドレス情報をドライブで書き換えることによって、当該DVD−Rにおいて記録可能なデータ領域の範囲を変更することができる。すなわち、BP#25〜#27に記録されているラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置を指すアドレスに書き換えることにより、ユーザデータを記録可能な領域の範囲を内周側へ縮小し、ユーザエリアとリードアウトエリアとの境界部に外周PCAを確保することができる。また、これにより、あるドライブで本参考例のDVD−Rに記録を行った後、同じDVD−Rに対して他のドライブで記録を行おうとする際に、外周PCAが破壊されることを防止できる。
例えば、本参考例に対応する新しいドライブが、本参考例にかかるDVD−Rの外周PCAにテスト記録パターンを記録した後に、同じDVD−Rを従来の低速記録ドライブ(過去から市場に存在する低速記録ドライブ)に装着した場合、この低速記録ドライブは、外周にPCAが存在することを認識できないため、外周PCAにユーザデータを上書きしてしまうおそれがある。しかし、本参考例に対応する新しいドライブが記録を行う度に、外周PCAよりも内周を指すように、RMD情報の中のラストアドレス情報(BP#25〜#27)を書き換えれば、その後に同じDVD−Rを使用する従来の低速記録ドライブは、このラストアドレス情報が指す位置を超えるアドレスにデータを上書きすることはないので、外周PCAが破壊されることを防止できる。
8倍速ディスクや16倍速ディスクなど、高速記録に対応したディスクを高速で記録する際は、外周PCAを使用する頻度が高いと考えられる。このため、ドライブがラストアドレス情報を書き換える際、外周PCAがより内周側に構成されるようにラストアドレス情報を変更することで、より安定した記録条件を求めることができる。もちろん、ディスク製造段階で、ラストアドレス情報をより内周側にして、外周PCAをより内周側に構成させることも可能である。
図3に、あるドライブで記録を行った後、同じディスクに他のドライブが記録を行う場合を想定し、それぞれの場合について、どちらのドライブがラストアドレス情報を書き換えるべきかを示す。なお、DVD−Rのレコーディングモードとしては、ディスクアットワンス(Disc at once)モードと、インクリメンタルレコーディング(incremental recording)モードがあるが、ここでは、複数のドライブが1枚のディスクに記録するインクリメンタルレコーディングについて説明する。
図3のケース1は、先に記録を行う第1記録ドライブが外周PCAを使用し、それ以降に記録を行う第2記録ドライブも外周PCAを使用する場合である。この場合は、第1記録ドライブが、RMDのラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えることにより、ユーザデータを記録可能なデータ領域のラストアドレスが変更される。そして、第2記録ドライブも、外周PCAを使用する(すなわち外周PCAを正しく認識できるドライブである)ため、外周PCAは上書きされることはない。
ケース2は、第1記録ドライブが外周PCAを使用し、それ以降に記録を行う第2記録ドライブが内周PCAのみを使用する場合(すなわち第2記録ドライブが従来のドライブである場合)である。この場合は、第1記録ドライブが、RMDのラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えることにより、ユーザデータを記録可能なデータ領域のラストアドレスが変更される。第2記録ドライブは、内周PCAのみを使用し、外周PCAを使用することはない。また、RMDのラストアドレス情報が外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えられているので、第2記録ドライブがこのラストアドレス情報を超えてユーザデータを書くことはないので、外周PCAがユーザデータにより上書きされることはない。
ケース3は、第1記録ドライブが内周PCAのみを使用し(すなわち第1記録ドライブが従来のドライブである場合)、それ以降に記録を行う第2記録ドライブが外周PCAを使用する場合である。この場合は、第2記録ドライブが、外周PCAを使用すると共に、RMDのラストアドレス情報を、外周PCAの最内周位置より内周側を指すように書き換えることにより、ユーザデータを記録可能なデータ領域のラストアドレスが変更される。
ケース4は、第1記録ドライブが内周PCAのみを使用し、それ以降に記録を行う第2記録ドライブも内周PCAのみを使用する場合である。この場合は、外周PCAは使用されず、従来の低倍速記録動作と同じである。
以上のケース1〜4より、外周PCAを使用するドライブ(本参考例にかかるドライブ)と、外周PCAを使用しない(認識しない)従来のドライブとの間で本参考例にかかるDVD−Rを共用して記録を行ったとしても、全てのケースにおいて外周PCAが確保されることが分かる。
図4(A)にDVD−Rの8倍速記録用サンプルディスクの半径位置(最外周部)とジッタの関係を示す。X軸にディスク半径位置、Y軸にジッタを表す。記録条件は同一記録ストラテジで、各位置での最適記録パワーで記録している。半径58.0mmを超えると急激にジッタが悪化しているのが分かる。
図4(B)にDVD−Rの8倍速記録用ディスクの半径位置(最外周部)と記録パワーの関係を示す。X軸にディスク半径位置、Y軸に最適記録パワーを表す。記録条件は同一記録ストラテジで、各位置での最適記録パワーで記録している。半径58.0mmを超えると急激に記録感度が悪化しているのが分かる。
以上のことから、半径58.0mmより内周側に外周PCAを設けてパワー校正を行うことにより、より安定した特性が得られる。
(情報記録再生装置)
次に、上述した参考例にかかる情報記録媒体(ここではDVD−R)の情報記録再生装置の例として、DVD−Rレコーダをとりあげ、その構成および動作について説明する。
[情報記録再生装置の構成]
本参考例にかかる情報記録媒体の情報記録再生装置(DVD−Rレコーダ)の構成の一例を、図5に示す。図5に示す情報記録再生装置は、ピックアップ1、ヘッドアンプ2、イコライザ3、二値化器4、PLL5、記録ストラテジ復調部6、記録ストラテジ補正部7、記録パターン決定部8、記録パルス決定部9、記録パワー条件復調部10、β値算出部11、記録パワー決定部12、レーザ駆動部13、スピンドルモータ14、記録速度情報復調部15、記録速度設定部17、制御部40等を備えている。制御部40は、他の各部との接続の図示を省略したが、情報記録再生装置の各部に必要な制御命令等を送ることにより、情報記録再生装置の全体動作を制御する。制御部40が行う制御動作は種々の種類に及ぶが、図5では、制御部40のサブブロックとして、校正制御部22と校正情報管理部23のみを示した。校正制御部22は、後述するように、外周PCAまたは内周PCAのいずれにおいてパワー校正を行うかを決定し、ピックアップ1やその他の必要なブロックを制御することにより、パワー校正を実行する。校正情報管理部23は、後述するように、内周PCAと外周PCAとの間でデータのコピーを行ったり、各PCAにおけるテスト記録データの削除等を行ったりするために、ピックアップ1やその他の必要なブロックを制御する。
[再生系]
まず、図5に示す情報記録再生装置の再生系について説明する。
図5において、30は光ディスク(ここではDVD−R)である。光ディスク30は、スピンドルモータ14によりその中心軸の周りに回転している。
光ヘッドすなわちピックアップ1は次のようにして、光ディスク30に対してレーザを照射し、その反射光をアナログ信号へ変換する。半導体レーザ1aが所定のパワーのレーザを出力する。その時のパワー(再生パワー)は、光ディスク30の記録層を変質させない程度に小さい。半導体レーザ1aから出力されたレーザR1は、集光レンズ1b、スプリッタ1c及び対物レンズ1dを通して、光ディスク30の記録層に焦点を結ぶ。レーザR1は光ディスク30の記録層で反射される。反射されたレーザR2は対物レンズ1d、スプリッタ1c及び検出レンズ1eを通して、光検出器1f上に焦点を結ぶ。光検出器1fは反射されたレーザR2を検出し、アナログ信号d1へ変換する。その時、アナログ信号d1の振幅は、反射されたレーザR2の強度に実質的に比例している。
ピックアップ1は、ステッピングモータ(図示せず)により、光ディスク30の半径方向に移動する。それにより、半導体レーザ1aから出力されたレーザR1の焦点を光ディスク30の半径方向に移動させる。
ヘッドアンプ2は、ピックアップ1からのアナログ信号d1を増幅して得られるアナログ信号d2を、イコライザ3へ出力する。イコライザ3は、ヘッドアンプ2からのアナログ信号d2の波形を整形する。二値化器4は整形されたアナログ信号d3を所定の閾値と比較して、その閾値を境に二値化する。それにより、アナログ信号d3はディジタル信号d4に変換される。位相同期ループ(PLL)5はディジタル信号d4と所定のクロック信号とを同期させる。データ復調部(図示せず)は、クロック信号と同期したディジタル信号d5からデータを復調する。
[記録系]
次に、図5に示す情報記録再生装置の記録系について、一例を説明する。
記録パターン決定部8は、光ディスク30への記録目的のデータに対応して、記録パターンを決定する。ここで、記録パターンとは、一定の高さの矩形パルス列をいう。記録パターンのそれぞれのパルス幅が記録マークの長さ(マーク長)を、パルス間隔が記録スペースの長さ(スペース長)を、それぞれ示す。
記録パルス決定部9は、記録パターン決定部8により決定された記録パターンd8に基づいて、記録パルスd9を決定する。ここで、記録パルスとは、半導体レーザ1aから出力されるレーザパルスと実質的に同じ矩形波形のパルスをいう。記録パルスd9の波形は後述の通り、記録パターンd8の波形とは異なる。記録パルスd9は記録パターンd8に基づいて、一定の条件に従って決定される。その一定の条件を記録ストラテジ(Write Strategy)という。その他に、記録パルス条件又は記録パルス構造(Write Pulse Structure)ともいう。記録ストラテジの詳細については後述する。
記録パワー決定部12はデータ記録時、半導体レーザ1aのパワーを決定する。それにより決定されたパワーの値を記録パワーという。決定された記録パワーd12はレーザ駆動部13へ出力される。
レーザ駆動部13は半導体レーザ1aへの駆動電流d13を制御する。それにより、駆動電流d13は記録パワーd12に対応する大きさで半導体レーザ1aを流れる。その結果、半導体レーザ1aは記録パワーd12に相当するパワーのレーザR1を照射する。
[記録ストラテジの補正及び記録パワーの校正のための構成]
レーザ照射によって形成される記録マークの形は、記録パルス及び記録パワーだけでは一意には決まらない。例えば、記録層の冷却速度は、記録時の環境温度に依存する。更に、半導体レーザの波長は、半導体レーザの温度変動に実質的に比例して変動する。例えば、DVD−Rの記録層に含まれる有機色素の光吸収特性は吸収光の波長に依存するので、レーザの波長の変動は記録層による吸収エネルギーを変動させる。その上、半導体レーザの波長及び光ディスクの構造等は通常、製品ごとに規格値の周辺でばらついている。以上のような変動因子により、記録マークの形は変動する。従って、記録パルス及び記録パワーを規格通りの記録ストラテジ及び記録パワー条件に従って定めるだけでは、記録マークの整形の精度、特にエッジの位置決めの精度を十分には上げられない。その結果、実際に記録されたデータのエラーレートを十分に低減できない。そこで、光ディスク及び光ディスク記録再生装置ごとに記録ストラテジを補正し、かつ記録パワーを校正する。それにより、最適な記録パルス及び記録パワーをそれぞれ決定する。
また、図5に示す情報記録再生装置は、記録ストラテジの補正及び記録パワーの校正を目的として、例えば、以下のような構成を有している。
β値算出部11は、ヘッドアンプ2からの信号d2のβ値を算出する。ここで、アナログ信号のβ値とは、アナログ信号の極大値a及び極小値bにより次式で定義される:
β=(a+b)/(a−b)。
つまり、β値は、アナログ信号波形の上下方向での中心値((a+b)/2)を振幅(a−b)で規格化したもの、に相当する。
更に、アナログ信号のβ値は以下の通り、半導体レーザ1aの記録パワーを決定するパラメータである。ピックアップ1により再生されたアナログ信号d1は二値化器4により所定の閾値を境に二値化される。その時、アナログ信号d1の波形の上下方向での中心値が閾値からずれると、元のディジタルデータの再生精度が低下する。つまり、ディジタルデータのエラーレートがβ値に依存して変化する。従って、そのエラーレートが所定の許容値以下になるように、アナログ信号d1のβ値を最適値に選択しなければならない。アナログ信号d1のβ値は光ディスク30の記録マークの光学的反射率及び形で実質上決まるので、半導体レーザ1aから照射されるレーザR1の記録パワーで決まる。逆に、アナログ信号d1のβ値を決めると、それらに対応する記録パワーを決定できる。アナログ信号のβ値と記録パワーとの対応関係を記録パワー条件という。
光ディスク30は、規格上定められた標準記録ストラテジ及び標準記録パワー条件と共に、過去に行われたデータ記録における記録ストラテジ及び記録パワー条件の履歴を所定領域に記録している。記録ストラテジ復調部6は、PLL5により出力されたディジタル信号d5から記録ストラテジd6を復調し、記録ストラテジ補正部7へ出力する。一方、記録パワー条件復調部10は、ディジタル信号d5から記録パワー条件d10を復調し、記録パワー決定部12へ出力する。
ジッタ検出部20は、二値化器4からディジタル信号d4aを、PLL5からディジタル信号d4のクロック信号からのずれ、すなわちジッタd5aを、それぞれ入力する。それらの入力に基づいて、ジッタ検出部20は、ディジタル信号d4のパルス前端でのジッタd20a、及び後端でのジッタd20bを検出し、記録ストラテジ補正部7へ出力する。
記録ストラテジ補正部7は、入力した記録ストラテジd6を内部のメモリ(図示せず)に記憶する。更に、記憶した記録ストラテジの補正時、ディジタル信号d4のパルス前端でのジッタd20a及び後端でのジッタd20bをそれぞれ所定の許容値と比較する。その比較結果を、記録ストラテジ補正部7は、その時記憶している記録ストラテジに対応づけて前記メモリへ記憶する。その後、記録ストラテジ補正部7は、その記録ストラテジを所定の補正値だけ補正する。補正後、その記録ストラテジd7を記憶すると共に、記録パルス決定部9へ出力する。
[DVD−Rへのタイトル記録動作]
図5に示す情報記録再生装置(DVD−Rレコーダ)では、次のようにしてタイトル記録を実行する。
図6は、図5に示す情報記録再生装置(DVD−Rレコーダ)が、光ディスク30としてDVD−Rを用い、これにタイトルを記録する動作を示すフローチャートである。
<ステップS1>
まず、DVD−RをDVD−Rレコーダへ装着する。
<ステップS2>
DVD−Rの装着の検知後、DVD−Rをスピンドルモータ14で回転させる。ピックアップ1はまず、DVD−RのRMAを参照し、RMDを読み出す。
<ステップS3>
DVD−Rレコーダのユーザが、記録速度設定部17により記録速度を設定する。具体的には、標準記録速度3.49m/sに対する設定記録速度の倍率を示す正の整数n0が、設定記録速度情報として入力される。
<ステップS4>
記録速度情報復調部15により、RMA内のRMDの一つから記録速度情報を読み出す。好ましくは、最新のものから順に読み出される。この時読み出された記録速度情報は、上記の通り、標準記録速度3.49m/sに対する記録速度の倍率を示す正の整数nである。
<ステップS5>
記録速度情報復調部15から読み出された記録速度情報d15は、制御部40の校正制御部22に入力され、記録速度情報nとして、設定記録速度情報n0と比較される。記録速度情報nが設定記録速度情報n0より大きい場合は、処理をステップS6へ進める。それ以外の時は、処理をステップS8へ進める。なお、RMA情報がない場合は、記録速度情報nが設定記録速度情報n0より大きい場合はS6に進み、それ以外の場合はS8に進む。
ステップS4で読み出した記録速度情報と同じOPC情報から、記録ストラテジ復調部6により記録ストラテジを、記録パワー条件復調部10により記録パワー条件を、それぞれ読み出す。記録ストラテジ復調部6は記録ストラテジd6を記録ストラテジ補正部7へ出力する。記録ストラテジ補正部7は記録ストラテジd6を補正せずにそのまま内部のメモリに記憶した後、記録パルス決定部9へ出力する。一方、記録パワー条件復調部10は記録パワー条件を記録パワー決定部12へ出力する。
<ステップS6>
制御部40の校正制御部22の制御により、DVD−Rの外周部へ光ピックアップ1を移動させ、外周PCA内で既に記録された領域を読み取り、パワー校正を実行するための、外周PCAの未記録領域をサーチする。書き換え型のディスクの場合は、PCAの記録領域を使い切った場合は上書きするが、DVD−R/RWでは、記録領域がどこまで使用されているかの情報は存在しないため、外周PCAを再生することにより、未記録領域をサーチする。なお、このとき、外周PCAに既に記録されているテスト記録パターンも読み出す。
<ステップS7>
DVD−Rの外周PCAの記録開始位置はラストアドレス情報に基づいて決定され、外周PCAの最外周から記録される。記録される信号は、8−14変調ランダム信号や、3T信号と14T信号の混合パターン等である。記録パワーの校正は次のように行う。記録パターン決定部8が、テスト記録パターンd8を出力する。記録パルス決定部9が、テスト記録パターンd8に基づき、テスト記録パルスd9を決定する。次に、記録パワー決定部12が、記録パワーを所定の初期値に設定する。ただし、この初期値としては、目標のβ値に対応する記録パワーを、記録パワー条件から選択しておく(例えば、目標のβ値は、記録パワー条件復調部10で復調した記録パワー条件に含まれる等)。記録パワーd12に相当するレーザ光をディスクに照射し、テスト記録マークをPCAに作成する。
ピックアップ1は、PCAのテスト記録マークに再生パワーのレーザ光を照射し、反射光を得る。反射光は、アナログ信号d1に変換され、ヘッドアンプ2がアナログ信号d2を出力する。β値算出部11は、アナログ信号d2に基づき、β値d11を算出する。記録パワー決定部12は、算出したβ値を記憶する。その後、記録パワーを初期値から所定パワー幅で1ステップずつ変化させて、上記過程を繰り返す。例えば、記録パワー条件から最適記録パワーを30mWと読み取った場合、28mWから32mWまで1セクタ0.5mW幅毎に記録すると9ステップとなり、9セクタが割り当てられる。こうすることで、1ECCブロック(=16セクタ)内で記録が完結するようになる。記録後直ちに再生を行い、その結果、最も特性のよい記録パワーとβ値とを記録パワー決定部12で選択する。このように、記録パワーの変化回数(ステップ数)とβ値との対応表、すなわち新たな記録パワー条件が得られる。その新たな記録パワー条件から目標のβ値に対応する最適記録パワーが選択される。
<ステップS8>
制御部40の校正制御部22が、決定された記録速度で、内周PCAでテスト記録可能かどうか判断する。記録速度が高い場合や、内周PCAで特性が得られない場合は、ステップS6に進み、外周PCAへ移動してテスト記録する。
<ステップS9>
内周PCAで最適パワーを算出するため、OPCが実行される。
<ステップS10>
記録パワー決定後は、RMAより復調された記録ストラテジおよびメモリに記録された記録ストラテジでテスト記録を行う。この際、記録速度に応じたテスト記録が内周PCAおよび外周PCAで記録される。
<ステップS11>
記録ストラテジを決定する。
<ステップS12>
ストラテジを決定した後、内周に移動してデータ記録を開始する。
<ステップS13>
データ記録終了後、校正情報管理部23が、内周と外周でPCAに記録された最適記録情報をRMAおよび記録再生装置のメモリに記録する。
以上のステップS1〜S13により、DVD−Rへのタイトル記録が完了する。
なお、ステップS10では、DVD−R30から推奨記録ストラテジ及び推奨記録パワー条件を読み出す。ここで、推奨記録ストラテジ及び推奨記録パワー条件としては、例えば、次のようなものを選択できる。DVD−R30のRMDのフィールド#1を参照し、ドライブに関する情報を読み出す。それらの情報から、DVD−R30に記録された記録ストラテジ及び記録パワー条件の内、同じDVD−Rレコーダで記録されたものがあるかどうか判別する。もしあれば、それらを推奨記録ストラテジ及び推奨記録パワー条件として採用する。その他に、同じ機種のDVD−Rレコーダで記録された記録ストラテジ又は記録パワー条件があれば、それらを採用しても良い。
こうして、図5に示す情報記録再生装置(DVD−Rレコーダ)は、新たなタイトル記録時、DVD−R30に記憶された履歴から、設定記録速度と等しい記録速度での記録時に採用された記録ストラテジ及び記録パワー条件を読み出して再び採用できる。それにより、記録ストラテジ及び記録パワー条件の最適値からのずれの内、記録速度の相違に起因する部分を補償し直さなくても良い。その結果、記録ストラテジ及び記録パワー条件の決定を早くできる。また、外周PCAと内周PCAの両方の情報を共有比較できることから高速記録に対応した記録条件を精度良く決定することができる。
DVD−RやDVD−RWディスクが記録再生を行う際、線速度一定のCLV(constant liner velocity)方式のため、外周でのディスク回転数に比べて、内周での回転数は半径に反比例して上昇する。ディスクを高速で回転させると、モータ回転音や振動が増大しメカノイズが発生することから、内周から中周の所定の半径位置までは、低速で記録し、中周から最外周では高速で記録するZoneCLV方式が採用されている。ZoneCLV方式の場合、例えば内周側は4倍速で記録し、外周側は8倍速で記録するためには、内周PCAで4倍速のテスト記録を行った後、外周PCAで8倍速のテスト記録を行い、最適記録パワーやβ値を決定後、データ領域での記録を開始することも好ましい。もちろん、中周は6倍速で記録してもよい。6倍速を内周PCAと外周PCAのどちらを使用するかは、記録再生装置のディスクを回転させるモータ回転数の上限性能やサーボの面振れ、偏芯の追従性能によって判断される。
データ記録終了後、内外周PCAで決定した最適記録パワーやβ値などの記録履歴情報を内周にある記録管理情報(RMD:Recording Management Data)領域に、内外周PCAのどちらの領域で記録したかの選択情報および記録速度を関連付けして記録することも好ましい。これにより、そのディスクを記録再生装置より一旦取り出した後に、再度挿入して記録開始する際にも、RMDを見ることによって、内外周での記録パワーが分かる。従って、テスト記録は不要となり、記録開始時間を短縮することができる。また、DVD−Rの様なライトワンス系のディスクではPCAが有限であるが、上記の構成によれば、ディスクを脱着する度にテスト記録を行う必要がなくなり、PCAを消費する心配がない。
また、DVD−Rの様な有機色素系のディスクでは、スピンコートで色素膜が形成されるため、内外周で膜厚の違いが発生し、記録感度の差が発生してしまう。これに対して、内周PCAで低速記録し、外周でも同じ低速で記録し、ディスクの記録パワーの感度差を直線近似することにより、例えば中周までの記録パワーを補正することができる。内周では高速記録はできないが、同じ様に直線近似式を高速記録する際にも適応することによって、例えば中周から最外周までの記録パワーを補正することができる。
また、校正情報管理部23の制御により、内周PCAに記録されたテスト記録パターンを外周PCAにコピーすることによって、内周PCAがディスク表面の傷や汚れによって再生できない状態になった場合でも、外周にテスト記録パターンが残っていれば、指定された記録速度に対して記録可能とすることができる。なお、外周PCAの情報も内周PCAにコピーすると、外周PCAがディスク表面の傷や汚れによって再生できない状態になった場合でも、内周PCAにテスト記録パターンが残っているため、記録可能とすることもできる。内周PCAに記録されたテスト記録パターンを外周PCAにコピーするのは、(1)データ領域へのデータ記録前と、(2)データ領域へのデータ記録終了後、との二つの場合があるが、記録開始までの時間を短縮することを考えると、(2)のタイミングでコピーすることが望ましい。内周PCAに記録されたテスト記録パターンを外周PCAにコピーするタイミングは、(1)外周PCAにテスト記録パターンを記録するとき、(2)新たな記録速度で記録するとき、(3)新たな情報記録再生装置で記録するとき、(4)所定の記録動作回数毎、(5)記録動作を行う度毎、の5つの場合であるが、上述のように傷や汚れといった不慮の不具合を救済するには、(5)が好ましい。また、外周PCAに記録されたテスト記録パターンを内周PCAにコピーする際も、同様である。
また、PCAだけでなくRMAも外周側に設け、RMAの記録管理情報も、内周RMAから外周RMAにコピーしておくことが好ましく、外周RMAから内周RMAにコピーするとさらに好ましい。内周RMAに記述された記録管理情報を外周RMAにコピーするのは、前述のPCAと同様に(1)データ領域へのデータ記録前と、(2)データ領域へのデータ記録終了後、との二つの場合があるが、記録開始までの時間を短縮することを考えると、(2)のタイミングでコピーすることが望ましい。内周RMAに記録された記録管理情報を外周RMAにコピーするタイミングも、前述のPCAと同様に、(1)外周RMAに記録管理情報を記述するとき、(2)新たな記録速度で記録するとき、(3)新たな情報記録再生装置で記録するとき、(4)所定の記録動作回数毎、(5)記録動作を行う度毎、の5つの場合であるが、上述のように傷や汚れといった不慮の不具合を救済するには、(5)が好ましい。また、外周RMAに記述された記録管理情報を内周RMAにコピーする際も、同様である。
記録再生装置にディスク挿入後、内周PCAでのパワー校正と外周PCAでのパワー校正のどちらを先に実行するかはドライブ設計により異なる。内周PCAを先に実行する利点は、光ピックアップがディスクを記録再生する前に読み込むリードインエリア側に内周PCAが配置されるため、内周PCAでのパワー校正を先に実行し、高速記録の指令が出てから外周PCAでのパワー校正を実行することで低速記録から高速記録への移行がスムーズに行える点である。また、内周では高速での記録再生が困難であるため、テスト記録パターンを内周では低速で再生し、外周では高速で再生するというように、内周PCAと外周PCAとを使い分けることによって、読み取り時間の短縮を図ることができる。
なお、本参考例では、単層ディスクを例示したが、複数の記録層を有するディスクであって、複数の記録層の全てについて内周側から外周側へ記録を行うディスクに対しても、本参考例の記録方式を適用可能である。すなわち、複数の記録層のそれぞれを図1に示したようなエリア構造とし、各記録層への記録の際に、記録速度等に応じて当該記録層の内周PCAと外周PCAとを使い分けるようにすれば良い。
(実施形態)
本発明の実施形態にかかる光ディスク(DVD−R)について、以下に説明する。
図7に示すように、本実施形態にかかる光ディスク40は、記録層として、記録層L0およびL1を有する二層ディスクである。すなわち、光ディスク40は、透明基板41の表面に、記録層L0、半透過層42、中間層43、記録層L1、反射層44、保護層45を、この順に積層した構成である。記録再生時には、透明基板41側からレーザ光が入射する。
この光ディスク40では、記録層L0と記録層L1とは、トラックのスパイラル方向が逆になっている。すなわち、記録層L0に対してデータを記録する際は、内周側から外周側へ記録が進行するが、記録層L1に対してデータを記録する際は、外周側から内周側へ記録が進行する。
このような二層ディスクに対するユーザデータの記録方法としては、以下の4通りがある。第1の方法は、図8(A)に示すように、記録層L0のデータエリアの最内周から外周側へ向かって記録を開始し、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了すると、記録層L1のデータエリアの最外周から内周側へ向かってユーザデータの記録を継続して行う方法である。
第2の方法は、光ディスクに対してデータを複数回にわたって記録する方法であり、図8(B)に示すように、記録層L0のデータエリアの最内周から外周側へ向かって記録を開始する。そして、1回の記録を終了した後に、次の記録を開始する際は、記録層L0では、前回の記録によってユーザデータの記録が完了している領域よりも外周側から記録を再開し、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了すると、記録層L1のデータエリアの最外周からユーザデータの記録を開始する。そして、記録層L1では、前回の記録によってユーザデータの記録が完了している領域よりも内周側から記録を再開し、内周側へ向かってユーザデータの記録を行う。
第3の方法は、第1の方法と同様に記録層L0のデータエリアの最内周から記録を開始するが、記録層L0のデータエリアの最外周へ到達しないうちに、記録層L1へ移動して折り返し記録を行う方法である。この方法は、記録しようとするユーザデータの容量が分かっている場合に有効であり、記録層L0から記録層L1への折り返しは、一般に、記録しようとするユーザデータが均等に記録層L0,L1へ記録されるようになされる。これにより、ファイナライズ時にデータエリアの未記録領域をダミーデータで埋める処理に要する時間を短縮することができ、ユーザデータの記録を短時間で完了できるという利点がある。
第4の方法は、第2の方法と同様に記録層L0のデータエリアの最内周から記録を開始し、記録が完了した領域の後ろに続けて記録を行っていく方法であるが、記録層L0のデータエリアの最外周へ到達しないうちに、記録層L1へ移動して折り返し記録を行う点で、第2の方法と異なる。この方法は、例えば、直径12cmのDVD−Rにおいて半径4cm以内の領域を実質的な情報エリアとして使用する場合等に有効である。この場合、例えば、情報記録面において情報エリアとして使用しない領域(例えば半径4cmより外側の領域)に、作図機能を持つライティングソフトを用いて、ユーザが所望の画像をビットマップとして描画すること等が可能となる。また、直径12cmのDVD−Rを、8cm複層DVD−ROMとして、例えばソフト開発用のプリマスター等の用途に用いることも可能である。また、図8(E)に示すように、記録層L0の最内周から記録を開始し、所定の位置で記録層L1へ移動して折り返し記録し、ファイナライズせず、折返し記録を連続して繋ぐ方法が考えられる。これにより、ファイナライズの時間を短縮できるだけでなく、未記録領域が少なくなるため、ユーザ記録領域を無駄にすることなく、有効に使用することができる。ファイナライズ前に機器から光ディスク取り出した場合でも、常に記録層L1にデータが記録されている状態になるため、ROMディスクとの互換性が比較的高くなる。
なお、第1および第3の方法は、光ディスクに対してデータを1回で書き込むため、ディスク・アット・ワンス(Disc at once)記録と呼ばれる。一方、第2および第4の方法は、光ディスクに対して逐次データを追記していくため、インクリメンタル(Incremental)記録と呼ばれる。
図9は、参考例として、上述の第1または第2の方法による記録が行われた場合、すなわち、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了した後に、記録層L1のデータエリアの最外周から記録を開始する場合について、光ディスク40の記録層L0、L1のエリア構造を示す断面模式図である。なお、図9は、光ディスク40の半径断面を示すものであり、図9における左側が光ディスク40の内周側であり、右側が光ディスク40の外周側である。
この場合、図9に示すように、記録層L0は、内周側から外周側へ向かって、内周PCA(インナー・ディスク・テスティング・エリア)81、RMA82、リードインエリア83、データエリア84、ミドルエリア(中間領域)85、外周PCA(アウター・ディスク・テスティング・エリア)86を有している。また、記録層L1は、内周側から外周側へ向かって、内周PCA92、RMA91、リードアウト90、データエリア89、ミドルエリア88、外周PCA87を有している。図9において、Pout0は、データエリア84の最外周位置、すなわち、記録層L0においてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置を示す。また、Pout1は、データエリア89の最外周位置、すなわち、記録層L1においてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置を示す。例えば直径12cmのディスクの場合であれば、Pout0はディスク中心から例えば58.08mmの位置にあり、Pout1はディスク中心から58.00mm〜58.08mmの位置にある。
この光ディスク40へデータを記録する場合、光ディスク記録再生装置は、記録層L0へのデータ記録を開始する前に、記録層L0の内周PCA81または外周PCA86を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを校正する。ここで、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA81でテスト記録を行うことが可能であるが、例えば4倍速以上の高速記録を行う場合、光ディスクを回転させるスピンドルモータの性能があまり高くないドライブでは、スピンドルモータの回転数が限界に達する等の理由で、内周PCAでテスト記録ができない場合がある。このような場合は、外周PCA86を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA86を用いることに差し支えはない。その後、記録層L0について適切に校正された記録パワーに従って、記録層L0のデータエリア84へユーザデータを記録する。そして、記録層L0への記録を完了し、記録層L1への記録を開始する前に、記録層L1の内周PCA92または外周PCA87を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを再度校正する。その後、記録層L1に対して適切に校正された記録パワーに従って、記録層L1のデータエリア89へユーザデータを記録する。記録層L1についても、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA92でテスト記録を行うことが可能であるが、4倍速以上の高速記録を行う場合であれば、外周PCA87を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA87を用いることに差し支えはない。
あるいは、光ディスク記録再生装置は、データ記録を開始する前に、記録層L0および記録層L1の両方について、内周PCAおよび/または外周PCAを用いたテスト記録を行うことにより、各記録層に対するレーザ記録パワーを校正し、その後、記録層L0,L1のそれぞれに対して、校正されたレーザ記録パワーに従って記録を実行するようにしても良い。
あるいは、インクリメンタル記録の場合は、まず記録層L0の内周PCAおよび/または外周PCAを用いたパワー校正を行った上で記録層L0へのデータ記録を行い、記録層L0から記録層L1へ移動して記録を行うことが分かった時点で、記録層L1の内周PCAおよび/または外周PCAを用いたパワー校正を行うようにしても良い。
なお、リードイン83、ミドルエリア85,88、リードアウト90については、ファイナライズ時に光ディスク記録再生装置が記録しても良いし、光ディスク40の製造時に所定のデータが予め記録されていても良い。
図10は、上述の第3または第4の方法による記録が行われた場合、すなわち、記録層L0のデータエリアの最外周まで記録が完了する前に記録層L1への記録を開始する場合について、光ディスク40の記録層L0、L1のエリア構造を示す断面模式図である。なお、図10も、光ディスク40の半径断面を示すものであり、図10における左側が光ディスク40の内周側、右側が光ディスク40の外周側である。
この場合、図9と図10とを比較することから分かるように、第3および第4の方法による記録が行われた場合は、記録層L0において、データエリア84としてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置Pout0よりも内周側にミドルエリア85および外周PCA86の少なくとも一部が位置するよう、ミドルエリア85および外周PCA86の全体が、内周側へシフトされている。シフトされたミドルエリアをシフティッド・ミドル・エリア、シフトされた外周PCAをフレキシブル・アウター・ディスク・テスティング・エリアと呼ぶ。すなわち、ミドルエリア85は、記録層L0のデータエリア84においてユーザデータが記録されている最外周位置の外周側直近に確保され、外周PCA86は、ミドルエリア85の外周側直近に確保されている。また、記録層L1においては、データエリア89としてユーザデータを記録可能な領域の最外周位置Pout1よりも内周側にミドルエリア88および外周PCA87の少なくとも一部が位置するよう、ミドルエリア88および外周PCA87の全体がシフトされている。すなわち、ミドルエリア88は、記録層L1のデータエリア89においてユーザデータが記録されている最外周位置の外周側直近に確保され、外周PCA87は、ミドルエリア88の外周側直近に確保されている。ミドルエリア85,88の幅は、リードアウトの幅とほぼ等しく、0.2mm程度以上確保されていることが好ましく、0.4mm程度が望ましい。ミドルエリア85,88は、リードアウトと同様にダミーデータが記録される領域である。0.2mm程度の幅があれば、光ディスク記録再生装置が、当該領域に有意なデータが記録されていないことを認識できるが、光ディスク記録再生装置及び/または光ディスク再生装置による認識の確実性を求めるのならば0.4mm程度を要するからである。
また、光ディスク40の製造時に、ユーザデータを記録可能な領域の最外周位置Pout0,Pout1の外周側直近に、ミドルエリアであることを表すダミーデータ(図11におけるミドルエリア93,94)が予め記録されている場合もある。この場合、上述の第3または第4の方法による記録を行って外周PCA86,87を内周側へシフトさせる場合は、図11に示すように、製造時に記録済みのミドルエリア93,94よりも内周側にミドルエリア85,88および外周PCA86,87の全体をシフト配置すれば良い。
図10または図11に示すように、第3または第4の方法による記録の場合も、光ディスク記録再生装置は、記録層L0へのデータ記録を開始する前に、記録層L0の外周PCA86を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを校正する。ここで、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA81でテスト記録を行うことが可能であるが、4倍速以上の高速記録を行う場合であれば、外周PCA86を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA86を用いることに差し支えはない。その後、記録層L0について適切に校正された記録パワーに従って、記録層L0のデータエリア84へユーザデータを記録する。そして、記録層L0への記録を完了し、記録層L1への記録を開始する前に、記録層L0の外周PCA87を用いてテスト記録を行うことにより、レーザの記録パワーを再度校正する。その後、記録層L1に対して適切に校正された記録パワーに従って、記録層L1のデータエリア89へユーザデータを記録する。記録層L1についても、1倍速または2倍速の低速記録を行う場合であれば、内周PCA92でテスト記録を行うことが可能であるが、4倍速以上の高速記録を行う場合であれば、外周PCA87を用いることが好ましい。なお、1倍速または2倍速のような低速記録の場合であっても、外周PCA87を用いることに差し支えはない。
なお、図9および図10において、斜線を付して示した領域は、データが記録されていない未記録領域である。また、記録層L1においてXで示した領域は、記録層L0からの影響を考慮して設けられたバッファ領域である。すなわち、図9および図10において、RMA91の両端、データエリア89の両端、および内周PCA92の最内周側にそれぞれ設けられたバッファ領域は、その直下の記録層L0にデータが記録されていると記録時のレーザ光強度が弱まって記録条件が変化する可能性があるため、これらのバッファ領域にはデータを記録しないことが好ましい。また、図9および図10において、記録層L0およびL1においてYで示した領域は、以下に詳述するが、記録層L0の内周PCAおよび外周PCAにおけるテスト記録領域と、記録層L1の内周PCAおよび外周PCAにおけるテスト記録領域とが、光ディスク40の記録面に垂直な方向に互いに重ならないようにするためのバッファ領域である。なお、バッファ領域は必ずしも設けなくても良い。
ここで、外周PCA86,87の内部構成について、図12および図13を参照しながら説明する。なお、外周PCA86,87の内部構成は、図9に示す場合と図10に示す場合とにおいて共通である。
図12に示すように、記録層L0の外周PCA86には、7088個のテスト記録フィールド(♯1〜♯7088)からなるテスト記録実行領域86aが存在する。各テスト記録フィールドには、パワー校正のために、1ECCブロック(16セクタ)のデータを記録可能である。図12において、左側が内周側、右側が外周側である。そして、外周PCA86に対するテスト記録は、外周PCA86の外周側のテスト記録フィールドから内周側へ向かって、すなわちテスト記録フィールド♯1,♯2,♯3・・・の順に、順次実行される。各テスト記録フィールドに対するテスト記録は、図12に示すように、記録層L0におけるトラックの進行方向に沿って(内周側から外周側へ向かって)、実行される。つまり、テスト記録フィールドのそれぞれにおける16個のセクタ(♯0〜♯15)のうち、内周側から1番目(♯0)および2番目(♯1)のセクタを除く最大14個のセクタに対して、内周側から外周側へ向かって順次テスト記録が実行される。
一方、記録層L1の外周PCA87にも、図13に示すように、7088個のテスト記録フィールド(♯1〜♯7088)からなるテスト記録実行領域87aが存在する。各テスト記録フィールドには、パワー校正のために、1ECCブロック(16セクタ)のデータを記録可能である。図13においても、左側が内周側、右側が外周側である。そして、外周PCA87に対するテスト記録は、記録層L0の外周PCA86とは逆に、光ディスク40の内周側から外周側へ向かって、テスト記録フィールド#1,♯2,♯3・・・の順に、順次実行される。各テスト記録フィールドに対するテスト記録は、図13に示すように、記録層L1におけるトラックの進行方向に沿って(外周側から内周側へ向かって)、実行される。つまり、テスト記録フィールドのそれぞれにおける16個のセクタ(♯0〜♯15)のうち、外周側から1番目(♯0)および2番目(♯1)のセクタを除く最大14個のセクタに対して、外周側から内周側へ向かってテスト記録が順次実行される。
なお、記録層L0の外周PCA86のテスト記録実行領域86aと、記録層L1の外周PCA87のテスト記録実行領域87aは、図9および図10に示すように、光ディスク40のディスク面に垂直な方向において互いに重ならないように配置されている。また、記録層L0の外周PCA86において、テスト記録実行領域86a以外の領域86bは、未記録状態とされる。これは、以下の理由による。すなわち、記録層L0の領域86bにテストパターンとして何らかのデータが記録されると、その直上の記録層L1にテスト記録を行う際に、テスト記録実行領域86bに記録されたテストパターンによって、レーザ光の透過率が変化してしまう。つまり、記録層L1の実効パワーが記録層L0の記録状態によって変動し、正確なパワー校正が困難となるからである。もちろん、領域86bを記録層L0のテスト記録実行領域とし、領域87bを記録層L1のテスト記録実行領域としても構わない。
なお、上述では、外周PCA86,87の構造について説明したが、内周PCA81,92も外周PCA86,87と同様の構造を有するため、図を用いた詳細な説明は省略する。記録層L0の内周PCA81については、外周PCA86と同様に、外周側のテスト記録フィールドから順にテスト記録が実行されるが、各テスト記録フィールドのセクタに対する記録順序は、記録層L0のトラックの進行方向すなわち内周側から外周側へ向かう方向である。記録層L1の内周PCA92については、外周PCA87と同様に、内周側のテスト記録フィールドから順にテスト記録が実行されるが、各テスト記録フィールドのセクタに対する記録順序は、記録層L1のトラックの進行方向すなわち外周側から内周側へ向かう方向である。また、内周PCA81と内周PCA92についても、それぞれのテスト記録実行領域が、光ディスク40のディスク面に垂直な方向において互いに重ならないように配置されている。
以上の構成にかかる光ディスク40にデータを記録する際に、光ディスク記録再生装置は、参考例と同様に、比較的低速(例えば1倍速あるいは2倍速)で記録を行う場合は、内周PCA81,91を用い、比較的高速(例えば2倍速以上)で記録を行う場合は、外周PCA86,87を用いたテスト記録により、レーザの記録パワーを校正することが好ましい。
また、図8(C)、図8(D)、および図8(E)に示した記録方法により、図10に示すとおり、記録層L0のミドルエリア85および外周PCA86と、記録層L1のミドルエリア88および外周PCA87とを内周側へシフトさせた場合は、ユーザデータの最終アドレス(ラストアドレス)が、光ディスク記録再生装置により、RMA82,91内のRMDへ記録される。このラストアドレスが記録される領域は、図2の(b)〜(e)により示されるBP(バイトポジション)#25〜27である。但し、BP#25〜27は1層構成のDVD−Rにおけるラストアドレスを記録する領域であるため、2層構成でのラストアドレスを記録する領域は1層構成でラストアドレスを記録する領域とは別にした方が混同を避けることができる。2層構成のラストアドレスを記録する新たなBPとしては、図2の(d)及び(e)に示したようにBP#125までは1層構成におけるコピープリピット情報を記録する領域であるため、BP#125から数バイト間隔を持たせたBP、例えばBP#127まではリザーブとしBP#128〜131に2層構成のラストアドレス(通常はミドルエリアの開始アドレス)を割り当てても良い。
なお、記録層L0の外周PCA86、記録層L1の外周PCA87を内周側へシフトしてテスト記録を行った際に、光ディスク40のRMA82,91には、外周PCA86,87を内周側へシフトして用いたことを表す情報が、光ディスク記録再生装置により記録される。例えば、記録層L0の外周PCA86を内周側へシフトしてテスト記録を行った場合、図14に示すように、記録層L0のRMA82内のRMDにおけるフィールド#14にて、外周PCA86をシフトして使用したか否かを表すフラグが、「使用」を表す値に設定される。例えば、外周PCA86がシフトして使用された場合は、BP0に0001b、シフトしない場合は0000bが設定される。
以上のとおり、本実施形態にかかる光ディスク40では、複数の記録層のそれぞれに外周PCAが設けられているので、各記録層へ記録を行う際に、記録速度等に応じて、当該記録層の外周PCAを用いたテスト記録を行うことが可能である。
また、図10に示すように、図8(C)、図8(D)、および図8(E)に示した記録方法により、記録層L0のミドルエリア85および外周PCA86と、記録層L1のミドルエリア88および外周PCA87とを内周側へシフトさせた場合は、データエリアの未記録領域へダミーデータを書き込む処理が不要となるため、ファイナライズ処理に要する時間を短縮することができる。この結果、ユーザデータの記録を短時間で完了できるという利点がある。
さらに、本実施形態では、記録速度に応じて各記録層において内周PCAと外周PCAとを使い分けるものとしたが、参考例に記載したように、低速記録であっても、内周PCAと外周PCAとの両方にテスト記録を行うことにより、ディスクの内外周で生じる記録感度の差に応じて記録パワーの補正を行うことも可能である。また、参考例で説明したように、ディスク表面に傷や汚れが生じた場合等に備えて、同一記録層における内周PCAと外周PCAのテスト記録パターンを互いの領域にコピーすることも好ましい。さらに、外周PCAに関する管理情報を記録するRMAを外周側にも設けても良いし、その場合に、内周RMAと外周RMAの情報を互いの領域にコピーすることもより好ましい。
なお、本実施形態では、片面二層構造の光ディスク40を例示したが、本発明は、三層以上の光ディスクへも適用できることは明らかである。また、複層構造の光ディスクを2枚貼り合わせた構造のディスクにも、本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態では何れも追記型光ディスクのDVD−Rを中心として説明したが、本発明の外周PCA及び/または外周RMAは、相変化型光ディスクにも同様に適用することができる。但し、書換型光ディスクにおける、データ領域に記録されたユーザデータの消去、及び記録されたユーザデータの上に別のユーザデータを記録(すなわち、記録されたユーザデータを消去し、別のユーザデータを重ね書き)するオーバーライトは、追記型光ディスクにはない機能である。この消去またはオーバーライトをする際には、当該消去またはオーバーライト対象のユーザデータに関する外周テスト記録パターン及び/または外周記録管理情報も消去またはオーバーライトすることで、当該ユーザデータの消去またはオーバーライトを保証することができる。また、外周テスト記録パターンや外周記録管理情報の記録領域の容量(例えば、PCAでは200ECC)を有効に利用することができる。なお、外周PCAが内周側にシフトされた場合、ユーザデータを新たに記録する際には、外周PCAの全てを消去またはオーバーライトしても構わない。
図15および図16は、外周側にもRMDを記録する領域(RMA321)が設けられている場合の物理フォーマットを示す。図2で説明した内周RMA102の構成と同様に、外周側のRMA321においても、図16に示すとおり、RMA321は701個のECCブロックから成る。すなわち、各RMDに1つのECCブロックが割り当てられる。各ECCブロックは、16個のセクタを含む。セクタはフィールドの先頭から#0から#14までの番号が付けられており、2番目のフィールド#1には、OPC関連の情報が格納される。OPC関連の情報とは、例えば、ドライブ製造ID、シリアルナンバー、記録パワー、記録ストラテジコード等の情報である。
図16の(f)に示すように、2番目のフィールド#1の内、バイトポジションBP#0〜#127にはタイトルT1を記録した時の記録条件の情報が格納されている。また、BP#128〜#255はタイトルT2を記録した時、BP#256〜#383はタイトルT3を記録した時の記録条件の情報が格納されている。
図15(A)〜図15(C)は、ユーザデータであるタイトルT3のコンテンツを消去する動作を示す。ユーザの指示に従ってタイトルT3のコンテンツを消去した後、記録再生装置は、記録T3に該当する記録管理情報であるRMD情報BP#256〜#383も消去する。
図15(B)はタイトルT3のコンテンツを消去後の状態を示す。ユーザにとって不要となったタイトルT3のコンテンツが消去されると、記録再生装置が、図15(B)および図15(C)に示すように、タイトルT3の記録管理情報も消去することにより、ユーザデータとRMA321の空き容量が増え、RMA321を有効に使用することができる。
なお、上記では、コンテンツの消去に伴い、RMA321において当該コンテンツに対応するRMD情報を消去する例だけを説明したが、内周側のRMA102に対しても同様に、当該コンテンツに対応するRMD情報の消去を行っても良い。
また、本実施形態では、RMD情報の消去について述べたが、外周でのテスト記録パターンが記録されるPCA320についても、コンテンツに該当するテスト記録パターンを消去することにより、同様の効果を得ることができる。
本発明は高速で記録するDVD−R、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等の記録型DVDや、青色レーザを使用したブルーレイディスクやAOD等、光ディスクを用いる記録再生装置に適用可能である。
図1は、参考例にかかる情報記録媒体における外周PCAとレコーダブルエリアの関係を示す断面模式図である。
図2は、DVD−R論理フォーマットの概念図である。
図3は、PCA記録選択の概念図である。
図4(A)は8倍速記録時の半径位置とジッタの関係を示すグラフである。
図4(B)は8倍速記録時の半径位置と記録パワーの関係を示すグラフである。
図5は、本発明の一実施形態にかかる情報記録再生装置の構成を示すブロック図である。
図6は、本発明の一実施形態にかかる情報記録再生装置の動作を表すフローチャートである。
図7は、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体の構成を示す断面図である。
図8(A)は、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
図8(B)は、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
図8(C)は、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
図8(D)は、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
図8(E)は、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体に対する記録モードの一例を示す模式図である。
図9は、参考例にかかる情報記録媒体のエリア構造の一例を示す断面模式図である。
図10は、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体のエリア構造の他の例を示す断面模式図である。
図11は、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体のエリア構造のさらに他の例を示す断面模式図である。
図12は、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体のPCAの構造を示す断面模式図である。
図13は、本発明の実施形態にかかる情報記録媒体のPCAの構造を示す断面模式図である。
図14は、本発明の実施形態にかかるRMDフィールドの概念図である。
図15(A)は、コンテンツを消去する際に外周側のRMAからRMD情報も消去する動作を説明する図であって、消去前の状態を示す。
図15(B)は、コンテンツを消去する際に外周側のRMAからRMD情報も消去する動作を説明する図であって、タイトルが消去された状態を示す。
図15(C)は、コンテンツを消去する際に外周側のRMAからRMD情報も消去する動作を説明する図であって、RMD情報が消去された状態を示す。
図16は、DVD−R論理フォーマットの概念図である。
図17は、従来のDVD−Rの内周PCAの概念図である。
図18は、従来のDVD+RWの外周PCAの概念図である。