JPWO2004108845A1 - 透明被膜形成用塗布液、該被膜付基材および液晶表示セル - Google Patents
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Abstract
Description
TFT型液晶表示装置は、透明基板上にTFT(薄膜トランジスタ)素子、データ電極などのTFTアレイが設けられた液晶表示セルが使用されている。このTFTアレイによる凹凸を、平坦化膜を設けることで平坦化し、その上にITOなどの表示電極を設けることで、TFT型液晶表示装置の開口率を向上させ、かつTFTアレイの凹凸による液晶の配向乱れをなくすようにしている。
さらに有機無機複合被膜では、被膜がもろく、また表面に引っかき傷がつきやすいなどの問題点がある上、該被膜上へのレジスト膜の形成性などに問題があった。
[1]水と有機溶媒とからなる混合溶媒にマトリックス形成成分が分散されてなる透明被膜形成用塗布液であって、該マトリックス形成成分がa)下記式(I)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物、b)下記式(II)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物あるいはc)それらの混合物から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
〔式中、R1−はR8(CR9 2)n−またはR10X−で表される。
R8は加水分解性基、水酸基、水素原子またはハロゲン原子を表す。
R10はメチル基、水素原子または加水分解性基を表す。
nは3〜30の整数。
−(CH2)q−(Ph)−、−(CH2)q−(Ph)−(CH2)y−、
−[(CH2)q(CF2)y(CH2)r]−および
−(CH2)q−(S)−(CH2)r−から選ばれる二価の基[ここで、q、rおよびyは1〜30の整数を表す]。
R3はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の有機基を表す。
mは1〜3の数を示す。
R4 nR5 3−nSi−(X)−SiR6 pR7 (3−p) (II)
〔式中、R4およびR6は、独立に加水分解性基を表す。
Xは、−(CH2)q−、−(Ph)−(ここで、Phはベンゼン環を表す)、
−(CH2)q−(Ph)−、−(CH2)q−(Ph)−(CH2)y−、
−[(CH2)q(CF2)y(CH2)r]−
−(CH2)q−(S)−(CH2)r−および−(S)q−から選ばれる二価の基[ここで、q、rおよびyは1〜30の整数を表す]。
pは0から3の数を示す。
但し、式(II)は1分子中に2個以上の加水分解性基を有する。〕
[2]前記式(I)の有機ケイ素化合物が1分子中に2個を超える加水分解性基を有するものであり、前記式(II)の有機ケイ素化合物が1分子中に2個を超える加水分解性基を有するものである[1]記載の透明被膜形成用塗布液。
[3]前記マトリックス形成成分が、さらに、a)下記式(III)で表される有機ケイ素化合物
RtSi(OR’)4−t (III)
〔ここで、Rはメチル基、エチル基、ビニル基またはエポキシ基から選ばれる。R’は炭素数1〜6のアルキル基。tは0〜4の数。〕、b)アセチルアセトナトキレート化合物、c)金属アルコキシドおよびd)ポリシラザンから選ばれる1種以上を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の透明被膜形成用塗布液。
[4]前記マトリックス形成成分が、さらに、無機化合物粒子を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液を基材表面に塗布してなる透明被膜が形成されていることを特徴とする透明被膜付基材。
[6]少なくとも一方の基板の表面に透明電極膜、透明被膜および配向膜が順次積層されてなる一対の透明電極付基板が、それぞれの透明電極同士が対向するように所定の間隔をあけて配置され、この一対の透明電極付基板の間にあけられた間隙に液晶が封入されている液晶表示セルにおいて、
透明被膜が、[1]〜[4]のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液を塗布して形成された被膜であることを特徴とする液晶表示セル。
[7]少なくとも一方の基板の表面にカラーフィルター、透明被膜、透明電極膜および配向膜が順次積層されてなる一対の透明電極付基板が、それぞれの透明電極同士が対向するように所定の間隔をあけて配置され、この一対の透明電極付基板の間にあけられた間隙に液晶が封入されている液晶表示セルにおいて、
透明被膜が、[1]〜[4]のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液を塗布して形成された被膜であることを特徴とする液晶表示セル。
[8]少なくとも一方の基板の表面にTFTアレイ、透明被膜、透明電極膜および配向膜が順次積層されてなる一対の透明電極付基板が、それぞれの透明電極同士が対向するように所定の間隔をあけて配置され、この一対の透明電極付基板の間にあけられた間隙に液晶が封入されている液晶表示セルにおいて、
透明被膜が、[1]〜[4]のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液を塗布して形成された被膜であることを特徴とする液晶表示セル。
このため、得られる透明被膜は撥水性、靭性、可撓性等に優れている。
[透明被膜形成用塗布液]
まず本発明に係る透明被膜形成用塗布液について説明する。
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分は、a)下記式(I)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物、b)下記式(II)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物あるいはc)それらの混合物から選ばれる1種以上を含む。
〔式中、R1−はR8(CR9 2)n−またはR10X−である。
R8は加水分解性基、水酸基、水素原子またはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示される。
従って、R8(CR9 2)n−の典型的な例として、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、特にパーフロロアルキル基が挙げられる。
−(CH2)q−(Ph)−、−(CH2)q−(Ph)−(CH2)y−、
−[(CH2)q(CF2)y(CH2)r]−および
−(CH2)q−(S)−(CH2)r−から選ばれる二価の基である。
Xとしては、上記二価の基の中でも、特に−(CH2)q−、−(Ph)−が好ましい。
R2は加水分解性基を表す。加水分解性基としては前記と同様のものが例示され、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基から選ばれる。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
なお、式(I)の有機ケイ素化合物は1分子中に2〜3個の加水分解性基を有する。
式(I)で表される有機ケイ素化合物としては、1分子中に少なくとも1個のハロゲン化アルキル基を有するものが好ましい。
R4 nR5 3−nSi−(X)−SiR6 pR7 (3−p) (II)
〔式中、R4およびR6は、独立に加水分解性基を表す。
加水分解性基および有機基の具体例、好適例は、前記式(I)に関して説明したものと同様である。
pは0から3、好ましくは2または3の数を示す。
但し、式(II)の有機ケイ素化合物は1分子中に2個以上、好ましくは3〜6個の加水分解性基を有する。〕
式(II)で表される有機ケイ素化合物としては、ビス(トリフルオロプロピルジメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、(トリメトキシシリル)ペンタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリメトキシシリル)オクタン、ビス(トリメトキシシリル)ノナン、ビス(トリメトキシシリル)デカン、ビス(トリメトキシシリル)ドデカン、ビス(トリメトキシシリル)ヘプタデカン、ビス(トリメトキシシリル)オクタデカン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリプロポキシシリル)ヘキサン、ビス(トリn−ブトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリi−ブトキシシリル)ヘキサン、ビス(アリルジメトキシシリル)ヘキサン、ビス(ビニルジメトキシシリル)ヘキサン、ビス(アクリルジメトキシシリル)ヘキサン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1,4ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンなどが挙げられる。
式(II)で表される有機ケイ素化合物は、−(X)−を有し、Xが疎水性であり、Xの鎖長が大きくなると屈曲することもできるので、被膜の撥水性、可撓性、靭性を向上することができる。また、式(II)で表される有機ケイ素化合物では、両端が加水分解性基なので、反応性が高い。
a)有機ケイ素化合物[前記式(I)および前記式(II)の有機ケイ素化合物に相当するものを除く]、
b)アセチルアセトナトキレート化合物、
c)金属アルコキシドおよび
d)ポリシラザン。
(a)有機ケイ素化合物
マトリックス形成成分としては、上記(I)、(II)の有機ケイ素化合物に加えて、これら以外の他の有機ケイ素化合物(以下、有機ケイ素化合物(a)と記載することがある)が含まれていても良い。このような他の有機ケイ素化合物としては、たとえば下記式(III)にて示される有機ケイ素化合物が使用できる。
〔ここで、Rはメチル基、エチル基、ビニル基またはエポキシ基から選ばれる。
R’は炭素数1〜6のアルキル基。tは0から4の整数。〕
このような有機ケイ素化合物(a)としては、具体的には、たとえばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノエチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシトリエトキシシシランなどが好ましく用いられる。
アセチルアセトナトキレート化合物(b)はアセチルアセトンを配位子とするキレート化合物で、下記式(IV)で表される化合物またはその縮合体である。
(c)金属アルコキシド
また、金属アルコキシド(c)としては、
M2(OR)n(V)
(式中、M2は金属原子であり、Rはアルキル基または−CmH2mO2(m=3〜10)であり、nはM2の原子価と同じ整数である。)で表される化合物またはそれらの縮合体が好ましく、これらの化合物またはその縮合体から選ばれる1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記式中のM2は、金属であれば特に限定されることはないが、好ましいM2は、Be、Al、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Ni,Zn、Ga、Ge、As、Se、Y、Zr、Nb、In、Sn、Sb、Te、Hf、Ta、W、Pb、Bi、CeまたはCuである。
また、ポリシラザン(d)としては下記式(VI)で表される繰り返し単位を有するポリシラザンが用いられる。
マトリックス形成成分として、前記式(VI)で表されるポリシラザンを用いる場合、アルキル基がメチル基、エチル基、またはプロピル基であるポリシラザンが望ましい。この場合には、加熱時に分解するアルキル基がなく、加熱時に膜の収縮が少なく、このため収縮ストレス時にクラックが生じることが少なくなり、クラックのほとんどない透明被膜が得られる。
上記マトリックス形成成分は、水と有機溶媒とからなる混合溶媒に分散されてなる。
有機溶媒としては、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類などから選ばれる公知の有機溶媒が使用される。このような有機溶媒は単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。
無機化合物粒子
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、さらに無機化合物粒子(イオン吸着性粒子)を含んでいてもよい。
無機化合物粒子の平均粒子径が上記範囲にあると、凹凸を有する基板、例えばTFTアレイ付基板あるいはカラーフィルター付基板上に形成された透明被膜の表面は平坦化されており、このため液晶層と接触する配向膜表面も平坦化されているので、表面形状に起因する液晶の表示乱れの抑制、表示ドメインの発生防止、パネル表示時の光抜けの低減およびコントラストの向上などに有効である。
イオン吸着容量が0.1mmol/gより少ないと、イオンを充分吸着することができないので、可動イオンによる表示不良を起こしたり、長期信頼性に欠けることがあり、6.0mmol/gを超えるイオン吸着体は得ることが困難である。
(1)無機陽イオン吸着容量の測定
濃度1重量%のNaCl水溶液100gに、120℃で乾燥して恒量化した無機イオン吸着体1.5gを加え、室温(25℃)で15時間撹拌した後、濾過して濾液を採取し、濾液中のNaイオン濃度を原子吸光法により分析し、元のNaCl水溶液のNaイオン濃度との濃度差から、無機イオン吸着体のNaイオン吸着量(mmol/g)を求める。
(2)無機陰イオン吸着容量の測定
濃度1重量%のNaCl水溶液100gに、120℃で乾燥して恒量化したイオン吸着性微粒子1.5gを加え、室温(25℃)で15時間撹拌した後、濾過して濾液を採取し、濾液中のClイオン濃度を原子吸光法により分析し、元のNaCl水溶液のClイオン濃度との濃度差から、イオン吸着性微粒子のClイオン吸着量(mmol/g)を求める。
(3)有機陽イオン吸着容量の測定
濃度1重量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液100gに、120℃で乾燥して恒量化したイオン吸着性微粒子1.5gを加え、室温(25℃)で15時間撹拌した後、濾渦して濾液を採取し、濾液中のテトラメチルアンモニウムイオン濃度をイオンクロマト法により分析し、元の水溶液との濃度差から、イオン吸着性微粒子の有機陽イオン吸着量(mmol/g)を求める。
(4)有機陰イオン吸着容量の測定
濃度1重量%の酢酸水溶液100gに、120℃で乾燥して恒量化したイオン吸着性微粒子1.5gを加え、室温(25℃)で15時間撹拌した後、濾過して濾液を採取し、濾液中の酢酸イオン濃度をイオンクロマト法により分析し、元の水溶液との濃度差から、イオン吸着性微粒子の有機陰イオン吸着量(mmol/g)を求める。
さらに、必要に応じてこれらの無機化合物粒子以外の絶縁性または導電性の無機化合物微粒子あるいは樹脂微粒子を用いてもよい。
塗布液
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分は、固形分濃度として15重量%以下であることが好ましい。この値が15重量%を越えると、塗布液の保存安定性が低下する傾向が生じ、一方、この固形分濃度が極端に低いと、目的の膜厚を得るのに多数回の塗布操作を繰り返すことが必要となるので固形分濃度は0.1重量%以上が実用的である。
次に、本発明に係る被膜付基材について具体的に説明する。
本発明に係る被膜付基材は、基材表面に上記透明被膜形成用塗布液を塗布してなる透明被膜が形成されていることを特徴としている。
硬化促進処理として具体的には、上記塗布工程または乾燥工程の後に、あるいは乾燥工程中に、未硬化段階の被膜に可視光線よりも波長の短い電磁波を照射したり、未硬化段階の被膜を、硬化反応を促進するガス雰囲気中に晒したりする処理が挙げられる。
紫外線照射処理を行う際には、例えば、発光強度が約250nmと360nmとにおいて極大となり、光強度が10mW/cm2以上である高圧水銀ランプを紫外線源として使用し、100mJ/cm2以上、好ましくは1000mJ/cm2以上のエネルギー量の紫外線を照射することが好ましい。
上述したような硬化促進処理を行うと、透明被膜中に含まれるマトリックス形成成分の縮重合、複合化が促進されると同時に、被膜中に残存する水および溶媒の蒸発も促進される。このため、次の加熱工程において必要とされる加熱温度、加熱時間などの加熱硬化条件が緩和され、本発明に係る透明被膜付基材の製造を効率よく進めることができる。
次に、本発明に係る液晶表示セルについて具体的に説明する。
本発明に係る液晶表示セルは、いずれも上記透明被膜形成用塗布液を使用して形成された透明被膜を有する透明電極付基板を用いたものである。
図1は、本発明に係る第1の液晶表示セルの1態様例を模式的に表す断面図である。
この図2にその特徴的部分が示されているカラー液晶表示装置1’は、ガラス基板21a上にアルカリパッシベーション膜21b、複数の画素電極21c、透明被膜21dおよび配向膜21eが順次積層された電極板21と、ガラス基板22a上にアルカリパッシベーション膜22b、カラーフィルター22c、透明被膜22d、透明電極22eおよび配向膜22fが順次積層された対向電極板22を有する液晶表示セル2’と、この液晶表示セルの両側に一対の偏光板3、4とを備えている。このうち、透明被膜21dおよび22dは、前記透明被膜形成用塗布液を塗布して形成された膜である。
アルカリパッシベーション膜、画素電極、配向膜、ガラス基板、カラーフィルター、透明電極、偏光板、液晶としては公知のものを特に制限なく使用することが可能である。
この液晶表示セル1″は、表面にTFTアレイ32が形成され、このTFTアレイ32表面に、透明被膜33、画素電極34および配向膜35が順次積層された透明絶縁性基板31と、
表面にブラックマトリクス(遮蔽膜)42、カラーフィルター43、透明被膜44、対向電極45および配向膜46が順次積層された対向基板41とが、液晶層51とを挟んで配向膜35および46が対峙するように構成されている。
TFTアレイ32は、TFT(薄膜トランジスタ)素子、データ電極、補助容量などとからなるものである。
以上のような本発明に係る液晶表示セルは、前記透明被膜が特定の有機ケイ素化合物からなるマトリックス形成成分を含んで構成され、耐水性、撥水性、靭性、可撓性等に優れている。
マトリックス形成成分として、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)25.6gを、純水47.0gおよびエチルアルコール526.4gとの混合溶媒に添加し、これに濃度61重量%の硝酸1.0gを加え、攪拌を行いながら60℃で24時間保持し、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンの部分加水分解物溶液(A−1)とした。室温に冷却後、部分加水分解物溶液(A−1)に両イオン交換樹脂(ダイヤイオン)18gを添加し、16時間室温で攪拌してイオン除去した後、イオン交換樹脂を濾別した。さらに、この溶液にヘキシレングリコール85gを添加し減圧蒸留により、ヘキシレングリコールを主溶媒成分とした固形分濃度16重量%の加水分解物溶液(A−2)を得た。
パターニングされたITO表示電極つきガラス基板(旭硝子(株)製:30Ω/□以下品)上にフレキソ印刷にて透明被膜形成用塗布液(A)を塗布し、得られた塗膜を90℃で5分間乾燥させた後、高圧水銀ランプで積算光量6,000mJ/cm2(365nm用センサにて測定)の条件で紫外線を照射し、次いで200℃で30分間焼成を行い透明被膜(A)を形成した。得られた透明被膜(A)の膜厚を触針式表面粗さ計で測定したところ80nmであった。
垂直荷重テスト
ITO電極面と透明被膜上面との間に直流電圧12Vの電圧を印加した曲率半径1mmの先端を持つ針を透明被膜面に押し付け、電圧が3Vになった時点での荷重値を電気的短絡とみなして膜の垂直方向の荷重耐性を評価した。透明被膜上の10カ所について荷重耐性を測定した。平均値を表2および表3に示す。
スクラッチ強度をスクラッチテスター(レスカ(株)製:CSR−02)を用いて透明被膜(A)のスクラッチ強度を測定した。平均値を表2および表3に示す。
次に、透明被膜(A)上にポリイミド膜形成用塗料(日産化学(株)製:サンエバー)をフレキソ印刷で塗布し、100℃で5分間乾燥した後、200℃で30分間加熱処理してポリイミド膜(配向膜)を形成し、ついでラビング処理を行った。
得られた液晶表示セル(A)中の可動イオン量をイオン密度測定機(東陽テクニカ(株)製:MTR−1)を用いて、印加電圧10V、三角波周波数0.1Hzの条件で測定した。印加電圧が0.8Vの付近に可動イオンによるピークが検出され、可動イオン量は0.8nC/cm2であった。
また、上記方法にて30枚の液晶表示セルを作成し、点灯表示テストを実施し、表示ムラの有無について目視観察を行った。このとき、表示ムラの発生したパネルの枚数を調べた。平均値を表2および表3に示す。
上記方法で表示ムラが発生しなかった液晶表示セル(A)を用いて、10枚について高温環境下(相対湿度20%、温度80℃)で、他の10枚については高温高湿の環境下(相対湿度95%、温度80℃)で500時間曝した後に、液晶表示セルの点灯表示テストを実施し、表示ムラの有無について目視観察を行った。このとき、表示ムラの発生しなかったパネルの枚数を調べた。平均値を表2および表3に示す。
マトリックス形成成分として、実施例1と同様にして調製した加水分解物溶液(A−2)94.2gにイオン吸着性微粒子として、平均粒子径25nm、Naイオン吸着容量0.5mmol/gのSiO2・Al2O3微粒子をヘキシレングリコール中に均一分散させた固形分濃度10重量%のイオン吸着性微粒子ゾル42.2gを加えて1時間攪拌し、ついでテトライソプロポキシチタニウム(TiO2として28重量%)7.5gとヘキシレングリコール205.9gと水2.0gとを加え、40℃で24時間攪拌を行い、固形分濃度6重量%の透明被膜形成用塗布液(B)を調製した。
透明被膜形成用塗布液(B)を用いた以外は実施例1と同様にして透明被膜(B)を形成した。得られた透明被膜(B)の膜厚を触針式表面粗さ計で測定したところ70nmであった。また、垂直荷重テスト、スクラッチ強度測定を行った。結果を表2および表3に示した。
ついで、透明被膜(B)上にポリイミド膜の形成等を行った以外は実施例1と同様にして液晶表示セル(B)を作成した。得られた液晶表示セル(B)について可動イオン量の測定、表示ムラの観察、長期信頼性の評価を行った。結果を表2および表3に示した。
マトリックス形成成分として、実施例1と同様にして調製した加水分解物溶液(A−2)94.2gにイオン吸着性微粒子として、平均粒子径45nm、Clイオン吸着容量0.3mmol/gのMgO微粒子をヘキシレングリコール中に均一分散させた固形分濃度10重量%のイオン吸着性微粒子ゾル42.2gを加えて1時間攪拌し、ついでジブトキシ−ビスアセチルアセトナトジルコニウム(ZrO2として14重量%)15.1gとヘキシレングリコール198.3gと水2.0gとを加え、40℃で24時間攪拌を行い、固形分濃度6重量%の透明被膜形成用塗布液(C)を調製した。
透明被膜形成用塗布液(C)を用いた以外は実施例1と同様にして透明被膜(C)を形成した。得られた透明被膜(C)の膜厚を触針式表面粗さ計で測定したところ90nmであった。また、垂直荷重テスト、スクラッチ強度測定を行った。結果を表2および表3に示した。
ついで、透明被膜(C)上にポリイミド膜の形成等を行った以外は実施例1と同様にして液晶表示セル(C)を作成した。得られた液晶表示セル(C)について可動イオン量の測定、表示ムラの観察、長期信頼性の評価を行った。結果を表2および表3に示した。
マトリックス形成成分として、実施例1と同様にして調製した加水分解物溶液(A−2)53.8gに、テトラメトキシシラン(SiO2として39.5重量%)32.1gとヘキシレングリコール264.3gと水2.0gとを加え、40℃で24時間攪拌を行い、固形分濃度6重量%の透明被膜形成用塗布液(D)を調製した。
透明被膜形成用塗布液(D)を用いた以外は実施例1と同様にして透明被膜(D)を形成した。得られた透明被膜(D)の膜厚を触針式表面粗さ計で測定したところ80nmであった。また、垂直荷重テスト、スクラッチ強度測定を行った。結果を表2および表3に示した。
ついで、透明被膜(D)上にポリイミド膜の形成等を行った以外は実施例1と同様にして液晶表示セル(D)を作成した。得られた液晶表示セル(D)について可動イオン量の測定、表示ムラの観察、長期信頼性の評価を行った。結果を表2および表3に示した。
マトリックス形成成分として、実施例1と同様にして調製した加水分解物溶液(A−2)121.1gにイオン吸着性微粒子として、平均粒子径20nm、Naイオン吸着容量2.4mmol/gのSb2O5・2.7H2O微粒子をプロピレングリコール中に均一分散させた固形分濃度20重量%のイオン吸着性微粒子ゾル5.3gを加えて1時間攪拌し、ついでトリブトキシ−モノアセチルアセトナトジルコニウムのブタノール溶液(ZrO2として10重量%)10.6gと水0.5gを加え、40℃で24時間攪拌を行い、固形分濃度15.6重量%の透明被膜形成用塗布液(E)を調製した。
カラーフィルターが形成されたガラス基板上に、透明被膜形成用塗布液(E)をスピンコーティング法により1500rpm、10秒間の条件で塗布し、ついで50℃で120分間乾燥した後120℃で60分間加熱処理を行い、透明被膜(E)を形成することによってカラーフィルター画素のオーバーコートを行った。得られた透明被膜(E)の膜厚を触針式表面粗さ計で測定したところ2μmであった。また、垂直荷重テスト、スクラッチ強度測定を行った。結果を表2および表3に示した。
液晶表示セル(E)の作成
このITO電極膜を常法によりパターニングして表示電極を形成し、その上に実施例1と同様にしてポリイミド配向膜を形成し、ついでラビング処理を行った。このようにして、ガラス基板上にカラーフィルター、透明被膜(E)、透明電極およびラビング処理した配向膜が順次積層した一対の透明電極付基板を得た。
マトリックス形成成分として、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3(信越化学(株)製、KBM7803)17gを、純水47.0gおよびエチルアルコール526.4gとの混合溶媒に添加し、これに濃度61重量%の硝酸1.0gを加え、攪拌を行いながら60℃で24時間保持し、ヘプタデカトリフルオロトリメトキシシランの部分加水分解溶液(F−1)とした。
透明被膜形成用塗布液(F)を用いた以外は実施例1と同様にして透明被膜(F)を形成した。得られた透明被膜(F)の膜厚を触針式表面粗さ計で測定したところ75nmであった。また、垂直荷重テスト、スクラッチ強度測定を行った。結果を表2および表3に示した。
ついで、透明被膜(F)上にポリイミド膜の形成等を行った以外は実施例1と同様にして液晶表示セル(F)を作成した。得られた液晶表示セル(F)について可動イオン量の測定、表示ムラの観察、長期信頼性の評価を行った。結果を表2および表3に示した。
(比較例1)
透明被膜形成用塗布液(G)の調製
マトリックス形成成分として、テトラエトキシシラン(SiO2として28.8重量%)51.3gを、純水9.0gおよびエチルアルコール432.2gとの混合溶媒に添加し、これに濃度61重量%の硝酸0.2gを加え、攪拌を行いながら60℃で24時間保持し、テトラエトキシシランの部分加水分解溶液(G−1)とした。
透明被膜形成用塗布液(G)を用いた以外は実施例1と同様にして透明被膜(G)を形成した。得られた透明被膜(G)の膜厚を触針式表面粗さ計で測定したところ80nmであった。また、垂直荷重テスト、スクラッチ強度測定を行った。結果を表2および表3に示した。
ついで、透明被膜(G)上にポリイミド膜の形成等を行った以外は実施例1と同様にして液晶表示セル(G)を作成した。得られた液晶表示セル(G)について可動イオン量の測定、表示ムラの観察、長期信頼性の評価を行った。結果を表2および表3に示した。
マトリックス形成成分として、実施例6と同様にして調製した加水分解溶液(F−2)26.9gに、イオン吸着性微粒子として平均粒子径25nm、Naイオン吸着容量0.5mmol/gのSiO2−Al2O3微粒子をヘキシレングリコール中に均一分散させた固形分濃度10重量%のイオン吸着性微粒子ゾル21.1gを加えて1時間攪拌し、ついでテトライソプロポキシチタニウム(TiO2として28重量%)52.8gとヘキシレングリコール251.0gと水3.0gとを加え、40℃で24時間攪拌を行い、固形分濃度6重量%の透明被膜形成用塗布液(H)を調製した。
透明被膜形成用塗布液(H)を用いた以外は実施例1と同様にして透明被膜(H)を形成した。得られた透明被膜(H)の膜厚を触針式表面粗さ計で測定したところ75nmであった。また、垂直荷重テスト、スクラッチ強度測定を行った。結果を表2および表3に示した。
ついで、透明被膜(H)上にポリイミド膜の形成等を行った以外は実施例1と同様にして液晶表示セル(H)を作成した。得られた液晶表示セル(H)について可動イオン量の測定、表示ムラの観察、長期信頼性の評価を行った。結果を表2および表3に示した。
マトリックス形成成分として、実施例1と同様にして調製した加水分解物溶液(A−2)94.2gにヘキシレングリコール155.0gと水2.0gとを加え、40℃で24時間攪拌を行い、固形分濃度6重量%の透明被膜形成用塗布液(I)を調製した。
透明被膜形成用塗布液(I)を用いた以外は実施例1と同様にして透明被膜(I)を形成した。得られた透明被膜(I)の膜厚を触針式表面粗さ計で測定したところ80nmであった。また、垂直荷重テスト、スクラッチ強度測定を行った。結果を表2および表3に示した。
ついで、透明被膜(I)上にポリイミド膜の形成等を行った以外は実施例1と同様にして液晶表示セル(I)を作成した。得られた液晶表示セル(I)について可動イオン量の測定、表示ムラの観察、長期信頼性の評価を行った。結果を表2および表3に示した。
マトリックス形成成分として、実施例1と同様にして調製した加水分解物溶液(A−2)47.1gに実施例6と同様にして調製した加水分解物溶液(F−2)47.1gを加えて1時間攪拌し、ついでヘキシレングリコール155.0gと水2.0gとを加え、40℃で24時間攪拌を行い、固形分濃度6重量%の透明被膜形成用塗布液(J)を調製した。
透明被膜形成用塗布液(J)を用いた以外は実施例1と同様にして透明被膜(J)を形成した。得られた透明被膜(J)の膜厚を触針式表面粗さ計で測定したところ80nmであった。また、垂直荷重テスト、スクラッチ強度測定を行った。結果を表2および表3に示した。
ついで、透明被膜(J)上にポリイミド膜の形成等を行った以外は実施例1と同様にして液晶表示セル(J)を作成した。得られた液晶表示セル(J)について可動イオン量の測定、表示ムラの観察、長期信頼性の評価を行った。結果を表2および表3に示した。
[図2]図2は、本発明に係る第2の液晶表示セルの一態様例の概略断面図を示す。
[図3]図3は、本発明に係る第3の液晶表示セルの一態様例の概略断面図を示す。
1、1’、1″…液晶表示セル、2、2’…液晶表示セル、3、4…偏光板、5…スペーサ粒子、6…液晶、11…ガラス基板、12…透明電極膜、13…透明イオンゲッター膜、14…配向膜、21…電極板、21a…ガラス基板、21b…アルカリパッシベーション膜、21c…複数の画素電極、21d…透明被膜、21e…配向膜、22…対向電極板、22a…ガラス基板、22b…アルカリパッシベーション膜、22c…カラーフィルター、22d…透明被膜、22e…透明電極、22f…配向膜、23…液晶、31…透明絶縁性基板、32…TFTアレイ、33…透明被膜、34…画素電極、35…配向膜、36…絶縁膜、41…対向基板、42…ブラックマトリクス(遮蔽膜)、43…カラーフィルター、44…透明被膜、45…対向電極、46…配向膜、51…液晶層
Claims (8)
- 水と有機溶媒とからなる混合溶媒にマトリックス形成成分が分散されてなる透明被膜形成用塗布液であって、該マトリックス形成成分がa)下記式(I)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物、b)下記式(II)で表される有機ケイ素化合物またはその加水分解物あるいはc)それらの混合物から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
R1−SiR2 mR3 (3−m) (I)
〔式中、R1−はR8(CR9 2)n−またはR10X−で表される。
R8は加水分解性基、水酸基、水素原子またはハロゲン原子を表す。
R9はそれぞれ独立に水素原子またはハロゲン原子を表す。
R10はメチル基、水素原子または加水分解性基を表す。
nは3〜30の整数。
Xは、−(CH2)q−、−(Ph)−[ここで、Phはベンゼン環を表す]、
−(CH2)q−(Ph)−、−(CH2)q−(Ph)−(CH2)y−、
−[(CH2)q(CF2)y(CH2)r]−および
−(CH2)q−(S)−(CH2)r−から選ばれる二価の基[ここで、q、rおよびyは1〜30の整数を表す]。
R2は加水分解性基を表す。
R3はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の有機基を表す。
mは1〜3の数を示す。
但し、式(I)は1分子中に2〜3個の加水分解性基を有する。〕
R4 nR5 3−nSi−(X)−SiR6 pR7 (3−p) (II)
〔式中、R4およびR6は、独立に加水分解性基を表す。
R5およびR7は、独立にハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜30の一価の有機基を表す。
Xは、−(CH2)q−、−(Ph)−(ここで、Phはベンゼン環を表す)、
−(CH2)q−(Ph)−、−(CH2)q−(Ph)−(CH2)y−、
−[(CH2)q(CF2)y(CH2)r]−
−(CH2)q−(S)−(CH2)r−および−(S)q−から選ばれる二価の基[ここで、q、rおよびyは1〜30の整数を表す]。
nは0から3の数を示す。
pは0から3の数を示す。
但し、式(II)は1分子中に2個以上の加水分解性基を有する。〕 - 前記式(I)の有機ケイ素化合物が1分子中に2個を超える加水分解性基を有するものであり、前記式(II)の有機ケイ素化合物が1分子中に2個を超える加水分解性基を有するものである請求項1記載の透明被膜形成用塗布液。
- 前記マトリックス形成成分が、さらに、a)下記式(III)で表される有機ケイ素化合物
RtSi(OR’)4t (III)
〔ここで、Rはメチル基、エチル基、ビニル基またはエポキシ基から選ばれる。R’は炭素数1〜6のアルキル基。tは0〜4の数。〕、b)アセチルアセトナトキレート化合物、c)金属アルコキシドおよびd)ポリシラザンから選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の透明被膜形成用塗布液。 - 前記マトリックス形成成分が、さらに、無機化合物粒子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液を基材表面に塗布してなる透明被膜が形成されていることを特徴とする透明被膜付基材。
- 少なくとも一方の基板の表面に透明電極膜、透明被膜および配向膜が順次積層されてなる一対の透明電極付基板が、それぞれの透明電極同士が対向するように所定の間隔をあけて配置され、この一対の透明電極付基板の間にあけられた間隙に液晶が封入されている液晶表示セルにおいて、
透明被膜が、請求項1〜4のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液を塗布して形成された被膜であることを特徴とする液晶表示セル。 - 少なくとも一方の基板の表面にカラーフィルター、透明被膜、透明電極膜および配向膜が順次積層されてなる一対の透明電極付基板が、それぞれの透明電極同士が対向するように所定の間隔をあけて配置され、この一対の透明電極付基板の間にあけられた間隙に液晶が封入されている液晶表示セルにおいて、
透明被膜が、請求項1〜4のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液を塗布して形成された被膜であることを特徴とする液晶表示セル。 - 少なくとも一方の基板の表面にTFTアレイ、透明被膜、透明電極膜および配向膜が順次積層されてなる一対の透明電極付基板が、それぞれの透明電極同士が対向するように所定の間隔をあけて配置され、この一対の透明電極付基板の間にあけられた間隙に液晶が封入されている液晶表示セルにおいて、
透明被膜が、請求項1〜4のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液を塗布して形成された被膜であることを特徴とする液晶表示セル。
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