JPWO2004038256A1 - 変速機 - Google Patents
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Abstract
本発明による変速機は、断面円形を持つ第1の軸体の外周面に周方向に第1の繰返し数の第1の溝(12A)を有する第1の外ローラ(10)と、断面円形を持つ第2の軸体の外周面に周方向に第1の繰返し数と異なる第2の繰返し数を持つ第2の溝(22A)を有する第2の外ローラ(20)と、内径面に周方向に間隔をおいて軸方向に延びる複数の溝(30A)を有する円筒状の内ローラ(30)とを含む。第1の外ローラ(10)と第2の外ローラ(20)とは、第1の溝(12A)に位置せしめられた複数のボール(32)と第2の溝(22A)に位置せしめられた複数のボール(32)とを介してそれぞれ内ローラ(30)と対向している。
Description
本発明は変速機に関し、特にボール型変速機に関する。
この種の変速機には様々なタイプのものが提案されており、以下にその幾つかの例を説明する。
第1の例は、入力回転軸と、この入力回転軸の外周面に軸心線方向に離間してそれぞれが軸心線方向を縦軸とし周方向を横軸とした周期関数的に曲がりくねって形成された第1及び第2の無端カム溝と、入力回転軸の外側に入力回転軸と同心円的に回転自在に装着された円筒体と、この円筒体の内周面で第1の無端カム溝に対向する部分に第1の無端カム溝と同様に周期関数的に第1の無端カム溝と等しい振幅値で曲がりくねって形成された第3の無端カム溝及び上記円筒体の内周面で第2の無端カム溝に対向する部分に第2の無端カム溝と同様に周期関数的に第2の無端カム溝と等しい振幅値で曲がりくねって形成された第4の無端カム溝と、第1の無端カム溝と第3の無端カム溝との間でかつ両カム溝が交叉する位値及び第2の無端カム溝と第4の無端カム溝との間でかつ両カム溝が交叉する位置にそれぞれ介在した転動体と、第1の無端カム溝と第3の無端カム溝との間に位置する転動体を軸心線方向へ移動自在に保持する静止した第1の保持部材と、第2の無端カム溝と第4の無端カム溝との間に位置する転動体を軸心線方向へ移動自在に保待すると共に自身が軸心線を中心にして回転自在に支持された第2の保持部材と、この第2の保持部材に連結された出力回転軸とを具備して成る減速機である。
つまり、この第1の例では、入力軸とつながる大径部に第1、第2の無端カム溝があり、第1の無端カム溝は第1の保持部材と、第2の無端カム溝は出力軸とつながる第2の保持部材とそれぞれ転動体、すなわちボールにより接する(例えば、特開昭59−180153号公報参照)。
第2の例は、同一軸線上に何れも回転自在に支持された2軸と、一方の軸の端部に固着された内筒と、他方の軸の端部に固着され内筒外面に臨ませた外筒と、内筒外筒の対向面で何れか一面に一方を、他面に他方を設けた、共にエンドレスの傾斜溝及び複数個のサイン波溝と、等角度軸線方向にサイン波溝の数と相異する複数個の狭長窓が穿たれ内筒外筒の隙間へ回転自在に挿入されたガイド筒と、ガイド筒の各狭長窓へ1個ずつ転動自在に挿入され傾斜溝及びサイン波溝に係合するボールとから構成されたカップ形ギアレス変速装置である(例えば、特開昭60−179563号公報参照)。
しかしながら、第1の例では円筒体の内周面に曲がりくねった溝を2条形成する必要があり、第2の例でも外筒の内周面に曲がりくねった溝を形成する必要があるので、加工が難しく手間がかかる。
一方、第2の例では、ボールの転動面にボールのエントリープラグを設ける必要がある。そして、転動面にエントリープラグによる段差があるとボール寿命短縮の原因となる。
そこで、本発明の目的は、加工が比較的簡単で済む変速機を提供することにある。
本発明の他の目的は、組立が比較的簡単でボールの長寿命化を図れる変速機を提供することにある。
第1の例は、入力回転軸と、この入力回転軸の外周面に軸心線方向に離間してそれぞれが軸心線方向を縦軸とし周方向を横軸とした周期関数的に曲がりくねって形成された第1及び第2の無端カム溝と、入力回転軸の外側に入力回転軸と同心円的に回転自在に装着された円筒体と、この円筒体の内周面で第1の無端カム溝に対向する部分に第1の無端カム溝と同様に周期関数的に第1の無端カム溝と等しい振幅値で曲がりくねって形成された第3の無端カム溝及び上記円筒体の内周面で第2の無端カム溝に対向する部分に第2の無端カム溝と同様に周期関数的に第2の無端カム溝と等しい振幅値で曲がりくねって形成された第4の無端カム溝と、第1の無端カム溝と第3の無端カム溝との間でかつ両カム溝が交叉する位値及び第2の無端カム溝と第4の無端カム溝との間でかつ両カム溝が交叉する位置にそれぞれ介在した転動体と、第1の無端カム溝と第3の無端カム溝との間に位置する転動体を軸心線方向へ移動自在に保持する静止した第1の保持部材と、第2の無端カム溝と第4の無端カム溝との間に位置する転動体を軸心線方向へ移動自在に保待すると共に自身が軸心線を中心にして回転自在に支持された第2の保持部材と、この第2の保持部材に連結された出力回転軸とを具備して成る減速機である。
つまり、この第1の例では、入力軸とつながる大径部に第1、第2の無端カム溝があり、第1の無端カム溝は第1の保持部材と、第2の無端カム溝は出力軸とつながる第2の保持部材とそれぞれ転動体、すなわちボールにより接する(例えば、特開昭59−180153号公報参照)。
第2の例は、同一軸線上に何れも回転自在に支持された2軸と、一方の軸の端部に固着された内筒と、他方の軸の端部に固着され内筒外面に臨ませた外筒と、内筒外筒の対向面で何れか一面に一方を、他面に他方を設けた、共にエンドレスの傾斜溝及び複数個のサイン波溝と、等角度軸線方向にサイン波溝の数と相異する複数個の狭長窓が穿たれ内筒外筒の隙間へ回転自在に挿入されたガイド筒と、ガイド筒の各狭長窓へ1個ずつ転動自在に挿入され傾斜溝及びサイン波溝に係合するボールとから構成されたカップ形ギアレス変速装置である(例えば、特開昭60−179563号公報参照)。
しかしながら、第1の例では円筒体の内周面に曲がりくねった溝を2条形成する必要があり、第2の例でも外筒の内周面に曲がりくねった溝を形成する必要があるので、加工が難しく手間がかかる。
一方、第2の例では、ボールの転動面にボールのエントリープラグを設ける必要がある。そして、転動面にエントリープラグによる段差があるとボール寿命短縮の原因となる。
そこで、本発明の目的は、加工が比較的簡単で済む変速機を提供することにある。
本発明の他の目的は、組立が比較的簡単でボールの長寿命化を図れる変速機を提供することにある。
本発明による変速機は、断面円形を持つ第1の軸体の外周面に周方向に第1の繰返し数の第1の溝を有する第1のローラと、断面円形を持つ第2の軸体の外周面に周方向に第1の繰返し数と異なる第2の繰返し数を持つ第2の溝を有する第2のローラと、内径面に周方向に間隔をおいて軸方向に延びる複数の溝を有する円筒状の第3のローラと含む。第1のローラと第2のローラとは、第1の溝に位置せしめられた複数の第1の転動体と第2の溝に位置せしめられた複数の第2の転動体とを介してそれぞれ第3のローラと対向している。
本変速機においては、第3のローラの複数の溝にはそれぞれ、1つの第1の転動体と第2の転動体とを保持し軸方向にスライド可能なリテーナが配設される。
本変速機においてはまた、リテーナと第3のローラとの間に摺動部材を介在させるようにしても良い。この場合、摺動部材は転がりユニットであっても良いし、第1及び第2の転動体が摺動部材を兼ねるように構成されていても良い。また、摺動部材は、リテーナと第3のローラとの対向部分の少なくとも一方を、例えばメッキにより摩擦低減材料でコーティングすることにより実現されても良い。
本変速機においてはまた、第1のローラが入力軸のとき、第3のローラ、第2のローラの一方が固定され、他方が出力軸とされる。
本変速機においては更に、第1の繰返し数はKS、第2の繰返し数はKS・KIで表され、複数の溝の数は最大でKS(KI±1)で表される。
本変速機における第1、第2のローラは、それぞれ中空にされていることが好ましい。
本変速機における第1、第2の溝は、正弦波あるいは三角波形状等の対称形状を持つことが好ましいが、非対称形状を持つようにされても良い。また、第1、第2の溝は、それぞれその断面形状が単純円弧形状、軸受円弧形状、三角形状のいずれかにされることが好ましい。
本変速機においては、第3のローラの複数の溝にはそれぞれ、1つの第1の転動体と第2の転動体とを保持し軸方向にスライド可能なリテーナが配設される。
本変速機においてはまた、リテーナと第3のローラとの間に摺動部材を介在させるようにしても良い。この場合、摺動部材は転がりユニットであっても良いし、第1及び第2の転動体が摺動部材を兼ねるように構成されていても良い。また、摺動部材は、リテーナと第3のローラとの対向部分の少なくとも一方を、例えばメッキにより摩擦低減材料でコーティングすることにより実現されても良い。
本変速機においてはまた、第1のローラが入力軸のとき、第3のローラ、第2のローラの一方が固定され、他方が出力軸とされる。
本変速機においては更に、第1の繰返し数はKS、第2の繰返し数はKS・KIで表され、複数の溝の数は最大でKS(KI±1)で表される。
本変速機における第1、第2のローラは、それぞれ中空にされていることが好ましい。
本変速機における第1、第2の溝は、正弦波あるいは三角波形状等の対称形状を持つことが好ましいが、非対称形状を持つようにされても良い。また、第1、第2の溝は、それぞれその断面形状が単純円弧形状、軸受円弧形状、三角形状のいずれかにされることが好ましい。
図1は、本発明の好ましい実施の形態による軸揺動型ボール減速機をケーシングを外して示した外観図であり、
図2は、図1の分解図であり、
図3は、図2に示された第1及び第2の外ローラに形成される第1及び第2の溝と内ローラに設置されるリテーナ及びこれに保持されるボールとの位置関係を、ボール配置A及び内ローラ固定の場合について説明するための図であり、
図4は、図2に示された第1及び第2の外ローラに形成される第1及び第2の溝と内ローラに設置されるリテーナ及びこれに保持されるボールとの位置関係を、ボール配置A及び第2の外ローラ固定の場合について説明するための図であり、
図5は、図2に示された第1及び第2の外ローラに形成される第1及び第2の溝と内ローラに設置されるリテーナ及びこれに保持されるボールとの位置関係を、ボール配置B及び内ローラ固定の場合について説明するための図であり、
図6は、図2に示された第1及び第2の外ローラに形成される第1及び第2の溝と内ローラに設置されるリテーナ及びこれに保持されるボールとの位置関係を、ボール配置B及び第2の外ローラ固定の場合について説明するための図であり、
図7は、図3〜図6の各ケースについて、第1、第2の外ローラ及び内ローラの回転数と減速比との関係を示した図であり、
図8は、図2に示された第1、第2の溝のうち、特に第2の溝の形状の第1の例を示した図であり、
図9は、図2に示された第1、第2の溝のうち、特に第2の溝の形状の第2の例を示した図であり、
図10は、図2に示された第1、第2の溝のうち、特に第2の溝の形状の第3の例を示した図である。
図11(a)〜(c)は、図2に示された第1、第2の溝の断面形状についていくつかの例を示した図であり、
図12(a)〜(d)は、本発明に使用されるリテーナの別の複数の例を説明するための図であり、
図13は、図12(a)、図12(b)に示されるリテーナに形成されるボールの受け部の形状を説明するための断面図であり、
図14は、図12(d)に示されるリテーナに形成されるボールの受け部の形状を説明するための断面図であり、
図15は、本発明による減速機をケーシングに収容した実機構造を示す。
図2は、図1の分解図であり、
図3は、図2に示された第1及び第2の外ローラに形成される第1及び第2の溝と内ローラに設置されるリテーナ及びこれに保持されるボールとの位置関係を、ボール配置A及び内ローラ固定の場合について説明するための図であり、
図4は、図2に示された第1及び第2の外ローラに形成される第1及び第2の溝と内ローラに設置されるリテーナ及びこれに保持されるボールとの位置関係を、ボール配置A及び第2の外ローラ固定の場合について説明するための図であり、
図5は、図2に示された第1及び第2の外ローラに形成される第1及び第2の溝と内ローラに設置されるリテーナ及びこれに保持されるボールとの位置関係を、ボール配置B及び内ローラ固定の場合について説明するための図であり、
図6は、図2に示された第1及び第2の外ローラに形成される第1及び第2の溝と内ローラに設置されるリテーナ及びこれに保持されるボールとの位置関係を、ボール配置B及び第2の外ローラ固定の場合について説明するための図であり、
図7は、図3〜図6の各ケースについて、第1、第2の外ローラ及び内ローラの回転数と減速比との関係を示した図であり、
図8は、図2に示された第1、第2の溝のうち、特に第2の溝の形状の第1の例を示した図であり、
図9は、図2に示された第1、第2の溝のうち、特に第2の溝の形状の第2の例を示した図であり、
図10は、図2に示された第1、第2の溝のうち、特に第2の溝の形状の第3の例を示した図である。
図11(a)〜(c)は、図2に示された第1、第2の溝の断面形状についていくつかの例を示した図であり、
図12(a)〜(d)は、本発明に使用されるリテーナの別の複数の例を説明するための図であり、
図13は、図12(a)、図12(b)に示されるリテーナに形成されるボールの受け部の形状を説明するための断面図であり、
図14は、図12(d)に示されるリテーナに形成されるボールの受け部の形状を説明するための断面図であり、
図15は、本発明による減速機をケーシングに収容した実機構造を示す。
図1、図2を参照して、本発明の好ましい実施の形態による軸揺動型ボール減速機(以下、ボール減速機と略称する)について説明する。本ボール減速機の基本的な構成は、図1に示すように、第1の外ローラ(第1のローラ)10及び第2の外ローラ(第2のローラ)20と内ローラ(第3のローラ)30とで構成されている。本形態では、第1の外ローラ10が入力軸であり、第2の外ローラ20、内ローラ30の一方が出力軸、他方が固定軸とされる。
図2の分解図に示すように、第1の外ローラ10は、入力側寄りの第1の円筒体11とこれより径の小さい出力側寄りの第2の円筒体12とから成る。第2の円筒体12の外径部分には第1の繰返し数KSの第1の溝12Aが周方向に延在するように形成されている。第2の外ローラ20は、出力側寄りの第1の円筒体21とこれより径の小さい入力側寄りの第2の円筒体22とから成る。第2の円筒体22の外径部分には第1の溝12Aと実質上同幅で第2の繰返し数KS・KIの第2の溝22Aが周方向に延在するように形成されている。なお、繰返し数というのは、本形態における第1、第2の溝12A、22Aは周期的に振幅の変化する、正弦波等の周期関数波形の溝であり、1周、つまり360度において振幅の最大値が何回繰り返されるかということを意味する。なお、第1の円筒体11と第2の円筒体12、及び第1の円筒体21と第2の円筒体22の径の大小関係は逆であっても良い。
内ローラ30も円筒体であって、第2の円筒体12、22の嵌入可能な内径を有し、内径部分には周方向に等間隔をおいて軸方向に延びる複数の溝30Aが形成されている。溝30Aの数は最大でKS(KI−1)あるいはKS(KI+1)だけ設けられる。各溝30Aには、これに沿って摺動可能なようにリテーナ31が設けられている。リテーナ31は溝30Aに沿ってのみ摺動可能であって相互に拘束されないようになっている。各リテーナ31は、軸方向に間隔をおいて2個ずつ、転動体、ここではボール32を保持する。そして、リテーナ31が保持する2個のボール32のうち、一方は第2の円筒体12の第1の溝12Aの上を、他方は第2の円筒体22の第2の溝22Aの上を転動することが可能なように構成される。リテーナ31は、ボール32を保持する機能だけでなく、2つのボール32を介して作用する引っ張り/圧縮力を受ける機能をも有する。
なお、後述されるように、このような構造体はケーシングに収容され、第1、第2の外ローラ10、20、内ローラ30は軸受などを用いて軸方向の動きが拘束される。勿論、第1、第2の外ローラ10、20、内ローラ30は、同心状に組み合わされる。
また、内ローラ30の溝30Aの数、つまりリテーナ31の数はn×360°/{KS(KI±1)}(nは正の整数)の間隔を保持できれば理論上はいくつでもかまわない。以降では、上記式中の±の符号が−の場合を配置A、+の場合を配置Bと定義する。
次に、図3〜図6を参照して、具体的な実施例をあげて動作原理について説明する。
第1の実施例として第1の溝12Aの繰返し数が1、第2の溝22Aの繰返し数が16の場合(つまりKS=1、KI=16)の周方向の展開図を元に説明する。
内ローラ30の溝30Aをn×360°/{KS(KI−1)}の間隔とする場合(配置A)の実施例を図3、図4に、n×360°/{KS(KI+1)}の間隔とする場合(配置B)の実施例を図5、図6に示す。
配置Aで内ローラ30を固定する場合(図3)、すなわちリテーナ31を円周方向に対して固定する場合、入力軸である第1の外ローラ10が1/4回転、1/2回転するのに伴い、第1の溝12Aによってリテーナ31とボール32とが軸方向に揺動し、ボール32は第2の外ローラ20の第2の溝22Aを転がるため、第2の外ローラ20は第1の外ローラ10と同方向に1/64回転、1/32回転する。この場合、減速比1/iは1/KIとなる。
一方、配置Aで第2の外ローラ20を固定する場合は、図3の下側の2つの状態図を第2の外ローラ20が動かないように全体を右にずらしてやれば良いので図4に示す通りとなる。この場合、第1の外ローラ10の(16−1)/64回転、(16−1)/32回転に対して、リテーナ31、すなわち内ローラ30の回転は逆回転となり−1/64回転、−1/32回転となる。すなわち、減速比1/iは−1/(KI−1)となる。
次に、配置Bで内ローラ30を固定する場合(図5)、入力軸である第1の外ローラ10が1/4回転、1/2回転するのに伴い、第2の外ローラ20は第1の外ローラ10と逆方向に−1/64、−1/32回転する。すなわち、減速比1/iは−1/KIとなる。
一方、第2の外ローラ20を固定する場合は、図5の下側の2つの状態図を第2の外ローラ20が動かないように全体を左にずらしてやれば良いので図6に示す通りとなる。この場合、第1の外ローラ10の(16+1)/64回転、(16+1)/32回転に対してリテーナ31、すなわち内ローラ30の回転は同じ方向の1/64回転、1/32回転となる。すなわち、減速比1/iは1/(KI+1)となる。
図7は、第1、第2の外ローラ10、20及び内ローラ30の回転数と減速比との関係を示した図である。
以上、本発明を好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限らず、以下のような変更が可能である。
第1、第2の外ローラ10、20は、それぞれ中空の円筒形状にされているが、中空では無い断面円形を持つ軸体で構成されても良い。
第1、第2の溝12A、22Aは、図8に示すような正弦波形状、図9に示すような三角波形状等の対称形状を持つものの他、図10に示すような非対称形状を持つものでも良い。図9に示すような三角波形状の場合、圧力角を一定とすることができ、ボールに対する負荷変動を一定とすることができる。一方、第1、第2の溝12A、22Aの断面形状は、図11(a)に示すような単純円弧形状、図11(b)に示すような軸受円弧形状、図11(c)に示すような三角形状のいずれでも良いが、特に、軸受円弧形状、三角形状の場合にはボールと所望の圧力角をとり易く耐荷重性が向上するという利点がある。
また、リテーナ31は、それ自体をスライドのし易い材料で構成したり、あるいはスライドを容易にする材料でコーティングされていることが好ましい。
以下に、図12を参照して、ボール32の保持機能と、引っ張り/圧縮力を受ける機能を持つリテーナの他の例について説明する。図12(a)は、内ローラ30とリテーナ31−1との間に摺動部材として転がりユニット51を介在させた第1の例を示す。ここでは、内ローラ30における断面四角形状の溝30Aの内壁に対向するリテーナ31の3つの側面にそれぞれ転がりユニット51を介在させているが、少なくとも溝30Aの底壁に対向する側面に配置されていれば良い。
図12(b)は、内ローラ30とリテーナ31−2との間に摺動部材として転がりユニット52を介在させた第2の例を示すが、ここでは転がりユニット52を、摺動方向に平行なリテーナ31−2の2つのコーナ部に対応する位置に配置している。このため、内ローラ30の内壁及びリテーナ31−2の2つのコーナ部にはそれぞれ、転がりユニット52を収容するための曲面状の凹部30a、31−2aが軸方向に延びるように形成されている。
なお、上記第1、第2の例のいずれにおいても、転がりユニットは、例えばピンローラによるものや、複数のボールをリテーナで保持するようにしたものが使用できる。
また、第1、第2のいずれの例においても、ボール32を収容するためのリテーナ31−1、31−2に形成される受け部31−11、31−21は、図13に示されるように、断面形状で言えば半径が同一の円弧状ではなく、図11(b)で説明したような中心の異なる円弧を対向させた形状を持つ。勿論、この受け部31−11、31−21の形状は、受け部の中心線を通る平面による断面であれば、どの断面であっても同じ形状である。このような受け部によれば、ボール32の大きさに応じて接触半径を自由に選択することができる。
加えて、受け部31−11、31−21は切削ツールを使用して形成されるが、切削ツールの先端部の逃げを考慮して、受け部31−11、31−21の最奥部に更に凹部31−12、31−22を形成することが好ましい。この凹部31−12、31−22は、受け部31−11、31−21に潤滑剤が注入される場合にその溜まり部として利用することができる。
ボール32の受け部に関する上記説明は、図2で説明したリテーナ31の場合もまったく同じである。
図12(c)、図12(d)は、上記の摺動部材をボール32に兼用させるように構成した第3、第4の例を示す。
図12(c)において、リテーナ31−3は、ボール32の直径よりも小さな幅を有し、ボール32を保持するための受け部31−31が形成されている。受け部31−31の断面形状は、半径の同じ円弧状あるいは球面状のいずれでも良い。一方、内ローラ30に形成される溝30Aは、リテーナ31−3を収容するための断面四角形状部分30A−1とボール32の一部を受けるための曲面状部分30A−2とを持つ。勿論、このような断面四角形状部分30A−1と曲面状部分30A−2とから成る溝30Aは、軸方向に延びるように形成されている。この例でも、溝30Aの底部とリテーナ31−3との間には摺動部材として転がりユニット53が配置されている。
なお、上記第1〜第3の例における転がりユニット51〜53は、他の周知の摺動部材で実現されても良いことは言うまでも無い。例えば、摺動部材は、リテーナと内ローラ30との対向部分の少なくとも一方を、例えばメッキにより摩擦低減材料でコーティングすることにより実現されても良い。
図12(d)において、リテーナ31−4は、ボール32の直径よりも小さな幅を有し、ボール32を保持するための受け部31−41がリテーナ31−4本体を貫通するように形成されている。つまり、ボール32の上部の一部と下部の一部が露出するように形成されている。受け部31−41の断面形状は、図14に示すように、単なる貫通穴ではなく、上部、つまり内ローラ30側寄りにおいて上端面に近付くにつれて径が漸減するように形成されている。受け部31−41をこのような断面形状にすることにより、リテーナ31−4で保持されているボール32に逆にリテーナ31−4を保持する機能を持たせることができる。つまり、受け部31−4を単なる貫通穴にした場合には、内ローラ30の溝30A内に保持されるべきリテーナ31−4が外ローラ側に落下してしまう。しかし、受け部31−4を上記の形状にすることでリテーナ31−4の落下を防止することができる。
一方、内ローラ30に形成される溝30Aは、リテーナ31−4を収容するための断面四角形状部分30A−3とボール32の一部を受けるための曲面状部分30A−4とを持つ。勿論、このような断面四角形状部分30A−3と曲面状部分30A−4とから成る溝30Aは、軸方向に延びるように形成されている。必要に応じて、曲面状部分30A−4に、第1、第2の例で説明した凹部31−12、31−22と同様の凹部が軸方向に潤滑剤受け部として設けられても良い。なお、溝30Aは、断面四角形状部分30A−3を持たない曲面状部分30A−4のみで実現されても良い。つまり、ボール32のみを曲面状部分のみの溝30Aで受けるようにしても良い。
第3、第4の例においては、ボール32が溝30Aを転動するので、ボール32が摺動部材を兼ねていると言えるが、第4の例においてもリテーナ31−4と内ローラ30との間に、転がりユニットが配置されても良い。
また、第3、第4の例においては、ボール32が接線方向の力(図示されている内ローラ30の内径に接する接線方向の力)を受けることになるので、その分だけリテーナ31−3、31−4に作用する負荷を軽減することができる。
以上の4つの例のうち、第3、第4の例は、上述のようにリテーナ31−3、31−4に作用する負荷を軽減することができる利点を有する点において優れており、中でも第4の例は、第1〜第3の例に比べて構造がシンプルであり、しかも引っ張り/圧縮力に対する断面積を2倍程度とれるので最も有効であると言える。
図15は、図2に示された構造と同様の構造を持つ減速機をケーシングに収容した実機構造を示す。ここでは、第1の外ローラ10は、製作を容易にするために、入力側寄りの第1の円筒体11とこれより径の大きい出力側寄りの第2の円筒体12´とをボルト61で固着して成る。第2の円筒体12´の外径部分には第1の溝12Aが周方向に延在するように形成されている。第1の円筒体11には入力軸100が図示しないボルトで締結されている。第2の外ローラ20も、製作を容易にするために、出力軸200を一体的に有する円形板21´とこれより径の大きい入力側寄りの第2の円筒体22´とをボルト62で固着して成る。第2の円筒体22´の外径部分には第2の溝22Aが周方向に延在するように形成されている。内ローラ30の入力側には軸受支持リング111とカバー板112とから成る入力側ケーシング110が締結され、出力側には軸受支持リング211と取付け用板212とから成る出力側ケーシング210が組み付けられている。軸受支持リング111はボルト63で内ローラ30に締結され、カバー板112はボルト64で軸受支持リング111に締結されている。一方、軸受支持リング211はボルト65で内ローラ30に締結され、取付け用板212はボルト66で軸受支持リング211に締結されている。
入力軸100と入力側ケーシング110との間にはオイルシール120が設けられている。一方、出力軸200と軸受支持リング211との間には、スラスト方向やラジアル方向の荷重を受けられるようにクロスローラベアリング220が設けられている。また、出力軸200と取付け用板212との間にはO−リング225が配置されている。
本発明による変速機は以下のような効果を有する。
(1)加工が比較的簡単である。これは、前に述べた第1の例や第2の例のように第1、第2の外ローラの内径部分に繰返し数を持つ溝を形成する必要が無いからである。
(2)組立が比較的簡単でボールの長寿命化を図れる。これは、第2の例や第3の例のようにボール転動面にボールのエントリープラグを設ける必要が無く、段差が生じないからである。
(3)第1、第2の外ローラが中空にされている場合、特にロボットのアームのようなものを構成するのに適している。
図2の分解図に示すように、第1の外ローラ10は、入力側寄りの第1の円筒体11とこれより径の小さい出力側寄りの第2の円筒体12とから成る。第2の円筒体12の外径部分には第1の繰返し数KSの第1の溝12Aが周方向に延在するように形成されている。第2の外ローラ20は、出力側寄りの第1の円筒体21とこれより径の小さい入力側寄りの第2の円筒体22とから成る。第2の円筒体22の外径部分には第1の溝12Aと実質上同幅で第2の繰返し数KS・KIの第2の溝22Aが周方向に延在するように形成されている。なお、繰返し数というのは、本形態における第1、第2の溝12A、22Aは周期的に振幅の変化する、正弦波等の周期関数波形の溝であり、1周、つまり360度において振幅の最大値が何回繰り返されるかということを意味する。なお、第1の円筒体11と第2の円筒体12、及び第1の円筒体21と第2の円筒体22の径の大小関係は逆であっても良い。
内ローラ30も円筒体であって、第2の円筒体12、22の嵌入可能な内径を有し、内径部分には周方向に等間隔をおいて軸方向に延びる複数の溝30Aが形成されている。溝30Aの数は最大でKS(KI−1)あるいはKS(KI+1)だけ設けられる。各溝30Aには、これに沿って摺動可能なようにリテーナ31が設けられている。リテーナ31は溝30Aに沿ってのみ摺動可能であって相互に拘束されないようになっている。各リテーナ31は、軸方向に間隔をおいて2個ずつ、転動体、ここではボール32を保持する。そして、リテーナ31が保持する2個のボール32のうち、一方は第2の円筒体12の第1の溝12Aの上を、他方は第2の円筒体22の第2の溝22Aの上を転動することが可能なように構成される。リテーナ31は、ボール32を保持する機能だけでなく、2つのボール32を介して作用する引っ張り/圧縮力を受ける機能をも有する。
なお、後述されるように、このような構造体はケーシングに収容され、第1、第2の外ローラ10、20、内ローラ30は軸受などを用いて軸方向の動きが拘束される。勿論、第1、第2の外ローラ10、20、内ローラ30は、同心状に組み合わされる。
また、内ローラ30の溝30Aの数、つまりリテーナ31の数はn×360°/{KS(KI±1)}(nは正の整数)の間隔を保持できれば理論上はいくつでもかまわない。以降では、上記式中の±の符号が−の場合を配置A、+の場合を配置Bと定義する。
次に、図3〜図6を参照して、具体的な実施例をあげて動作原理について説明する。
第1の実施例として第1の溝12Aの繰返し数が1、第2の溝22Aの繰返し数が16の場合(つまりKS=1、KI=16)の周方向の展開図を元に説明する。
内ローラ30の溝30Aをn×360°/{KS(KI−1)}の間隔とする場合(配置A)の実施例を図3、図4に、n×360°/{KS(KI+1)}の間隔とする場合(配置B)の実施例を図5、図6に示す。
配置Aで内ローラ30を固定する場合(図3)、すなわちリテーナ31を円周方向に対して固定する場合、入力軸である第1の外ローラ10が1/4回転、1/2回転するのに伴い、第1の溝12Aによってリテーナ31とボール32とが軸方向に揺動し、ボール32は第2の外ローラ20の第2の溝22Aを転がるため、第2の外ローラ20は第1の外ローラ10と同方向に1/64回転、1/32回転する。この場合、減速比1/iは1/KIとなる。
一方、配置Aで第2の外ローラ20を固定する場合は、図3の下側の2つの状態図を第2の外ローラ20が動かないように全体を右にずらしてやれば良いので図4に示す通りとなる。この場合、第1の外ローラ10の(16−1)/64回転、(16−1)/32回転に対して、リテーナ31、すなわち内ローラ30の回転は逆回転となり−1/64回転、−1/32回転となる。すなわち、減速比1/iは−1/(KI−1)となる。
次に、配置Bで内ローラ30を固定する場合(図5)、入力軸である第1の外ローラ10が1/4回転、1/2回転するのに伴い、第2の外ローラ20は第1の外ローラ10と逆方向に−1/64、−1/32回転する。すなわち、減速比1/iは−1/KIとなる。
一方、第2の外ローラ20を固定する場合は、図5の下側の2つの状態図を第2の外ローラ20が動かないように全体を左にずらしてやれば良いので図6に示す通りとなる。この場合、第1の外ローラ10の(16+1)/64回転、(16+1)/32回転に対してリテーナ31、すなわち内ローラ30の回転は同じ方向の1/64回転、1/32回転となる。すなわち、減速比1/iは1/(KI+1)となる。
図7は、第1、第2の外ローラ10、20及び内ローラ30の回転数と減速比との関係を示した図である。
以上、本発明を好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限らず、以下のような変更が可能である。
第1、第2の外ローラ10、20は、それぞれ中空の円筒形状にされているが、中空では無い断面円形を持つ軸体で構成されても良い。
第1、第2の溝12A、22Aは、図8に示すような正弦波形状、図9に示すような三角波形状等の対称形状を持つものの他、図10に示すような非対称形状を持つものでも良い。図9に示すような三角波形状の場合、圧力角を一定とすることができ、ボールに対する負荷変動を一定とすることができる。一方、第1、第2の溝12A、22Aの断面形状は、図11(a)に示すような単純円弧形状、図11(b)に示すような軸受円弧形状、図11(c)に示すような三角形状のいずれでも良いが、特に、軸受円弧形状、三角形状の場合にはボールと所望の圧力角をとり易く耐荷重性が向上するという利点がある。
また、リテーナ31は、それ自体をスライドのし易い材料で構成したり、あるいはスライドを容易にする材料でコーティングされていることが好ましい。
以下に、図12を参照して、ボール32の保持機能と、引っ張り/圧縮力を受ける機能を持つリテーナの他の例について説明する。図12(a)は、内ローラ30とリテーナ31−1との間に摺動部材として転がりユニット51を介在させた第1の例を示す。ここでは、内ローラ30における断面四角形状の溝30Aの内壁に対向するリテーナ31の3つの側面にそれぞれ転がりユニット51を介在させているが、少なくとも溝30Aの底壁に対向する側面に配置されていれば良い。
図12(b)は、内ローラ30とリテーナ31−2との間に摺動部材として転がりユニット52を介在させた第2の例を示すが、ここでは転がりユニット52を、摺動方向に平行なリテーナ31−2の2つのコーナ部に対応する位置に配置している。このため、内ローラ30の内壁及びリテーナ31−2の2つのコーナ部にはそれぞれ、転がりユニット52を収容するための曲面状の凹部30a、31−2aが軸方向に延びるように形成されている。
なお、上記第1、第2の例のいずれにおいても、転がりユニットは、例えばピンローラによるものや、複数のボールをリテーナで保持するようにしたものが使用できる。
また、第1、第2のいずれの例においても、ボール32を収容するためのリテーナ31−1、31−2に形成される受け部31−11、31−21は、図13に示されるように、断面形状で言えば半径が同一の円弧状ではなく、図11(b)で説明したような中心の異なる円弧を対向させた形状を持つ。勿論、この受け部31−11、31−21の形状は、受け部の中心線を通る平面による断面であれば、どの断面であっても同じ形状である。このような受け部によれば、ボール32の大きさに応じて接触半径を自由に選択することができる。
加えて、受け部31−11、31−21は切削ツールを使用して形成されるが、切削ツールの先端部の逃げを考慮して、受け部31−11、31−21の最奥部に更に凹部31−12、31−22を形成することが好ましい。この凹部31−12、31−22は、受け部31−11、31−21に潤滑剤が注入される場合にその溜まり部として利用することができる。
ボール32の受け部に関する上記説明は、図2で説明したリテーナ31の場合もまったく同じである。
図12(c)、図12(d)は、上記の摺動部材をボール32に兼用させるように構成した第3、第4の例を示す。
図12(c)において、リテーナ31−3は、ボール32の直径よりも小さな幅を有し、ボール32を保持するための受け部31−31が形成されている。受け部31−31の断面形状は、半径の同じ円弧状あるいは球面状のいずれでも良い。一方、内ローラ30に形成される溝30Aは、リテーナ31−3を収容するための断面四角形状部分30A−1とボール32の一部を受けるための曲面状部分30A−2とを持つ。勿論、このような断面四角形状部分30A−1と曲面状部分30A−2とから成る溝30Aは、軸方向に延びるように形成されている。この例でも、溝30Aの底部とリテーナ31−3との間には摺動部材として転がりユニット53が配置されている。
なお、上記第1〜第3の例における転がりユニット51〜53は、他の周知の摺動部材で実現されても良いことは言うまでも無い。例えば、摺動部材は、リテーナと内ローラ30との対向部分の少なくとも一方を、例えばメッキにより摩擦低減材料でコーティングすることにより実現されても良い。
図12(d)において、リテーナ31−4は、ボール32の直径よりも小さな幅を有し、ボール32を保持するための受け部31−41がリテーナ31−4本体を貫通するように形成されている。つまり、ボール32の上部の一部と下部の一部が露出するように形成されている。受け部31−41の断面形状は、図14に示すように、単なる貫通穴ではなく、上部、つまり内ローラ30側寄りにおいて上端面に近付くにつれて径が漸減するように形成されている。受け部31−41をこのような断面形状にすることにより、リテーナ31−4で保持されているボール32に逆にリテーナ31−4を保持する機能を持たせることができる。つまり、受け部31−4を単なる貫通穴にした場合には、内ローラ30の溝30A内に保持されるべきリテーナ31−4が外ローラ側に落下してしまう。しかし、受け部31−4を上記の形状にすることでリテーナ31−4の落下を防止することができる。
一方、内ローラ30に形成される溝30Aは、リテーナ31−4を収容するための断面四角形状部分30A−3とボール32の一部を受けるための曲面状部分30A−4とを持つ。勿論、このような断面四角形状部分30A−3と曲面状部分30A−4とから成る溝30Aは、軸方向に延びるように形成されている。必要に応じて、曲面状部分30A−4に、第1、第2の例で説明した凹部31−12、31−22と同様の凹部が軸方向に潤滑剤受け部として設けられても良い。なお、溝30Aは、断面四角形状部分30A−3を持たない曲面状部分30A−4のみで実現されても良い。つまり、ボール32のみを曲面状部分のみの溝30Aで受けるようにしても良い。
第3、第4の例においては、ボール32が溝30Aを転動するので、ボール32が摺動部材を兼ねていると言えるが、第4の例においてもリテーナ31−4と内ローラ30との間に、転がりユニットが配置されても良い。
また、第3、第4の例においては、ボール32が接線方向の力(図示されている内ローラ30の内径に接する接線方向の力)を受けることになるので、その分だけリテーナ31−3、31−4に作用する負荷を軽減することができる。
以上の4つの例のうち、第3、第4の例は、上述のようにリテーナ31−3、31−4に作用する負荷を軽減することができる利点を有する点において優れており、中でも第4の例は、第1〜第3の例に比べて構造がシンプルであり、しかも引っ張り/圧縮力に対する断面積を2倍程度とれるので最も有効であると言える。
図15は、図2に示された構造と同様の構造を持つ減速機をケーシングに収容した実機構造を示す。ここでは、第1の外ローラ10は、製作を容易にするために、入力側寄りの第1の円筒体11とこれより径の大きい出力側寄りの第2の円筒体12´とをボルト61で固着して成る。第2の円筒体12´の外径部分には第1の溝12Aが周方向に延在するように形成されている。第1の円筒体11には入力軸100が図示しないボルトで締結されている。第2の外ローラ20も、製作を容易にするために、出力軸200を一体的に有する円形板21´とこれより径の大きい入力側寄りの第2の円筒体22´とをボルト62で固着して成る。第2の円筒体22´の外径部分には第2の溝22Aが周方向に延在するように形成されている。内ローラ30の入力側には軸受支持リング111とカバー板112とから成る入力側ケーシング110が締結され、出力側には軸受支持リング211と取付け用板212とから成る出力側ケーシング210が組み付けられている。軸受支持リング111はボルト63で内ローラ30に締結され、カバー板112はボルト64で軸受支持リング111に締結されている。一方、軸受支持リング211はボルト65で内ローラ30に締結され、取付け用板212はボルト66で軸受支持リング211に締結されている。
入力軸100と入力側ケーシング110との間にはオイルシール120が設けられている。一方、出力軸200と軸受支持リング211との間には、スラスト方向やラジアル方向の荷重を受けられるようにクロスローラベアリング220が設けられている。また、出力軸200と取付け用板212との間にはO−リング225が配置されている。
本発明による変速機は以下のような効果を有する。
(1)加工が比較的簡単である。これは、前に述べた第1の例や第2の例のように第1、第2の外ローラの内径部分に繰返し数を持つ溝を形成する必要が無いからである。
(2)組立が比較的簡単でボールの長寿命化を図れる。これは、第2の例や第3の例のようにボール転動面にボールのエントリープラグを設ける必要が無く、段差が生じないからである。
(3)第1、第2の外ローラが中空にされている場合、特にロボットのアームのようなものを構成するのに適している。
本発明は減速機全般に適用可能であり、特に例えばロボットのアームや自動工具交換装置等の精密制御が要求される用途の駆動装置に使用されるのに適している。
Claims (9)
- 断面円形を持つ第1の軸体の外周面に周方向に第1の繰返し数の第1の溝を有する第1のローラと、
断面円形を持つ第2の軸体の外周面に周方向に前記第1の繰返し数と異なる第2の繰返し数を持つ第2の溝を有する第2のローラと、
内径面に周方向に間隔をおいて軸方向に延びる複数の溝を有する円筒状の第3のローラとを含み、
前記第1のローラと前記第2のローラとが、前記第1の溝に位置せしめられた複数の第1の転動体と前記第2の溝に位置せしめられた複数の第2の転動体とを介してそれぞれ前記第3のローラと対向していることを特徴とする変速機。 - 請求項1に記載の変速機において、前記第3のローラの複数の溝にはそれぞれ1つの前記第1の転動体と前記第2の転動体とを保持し前記軸方向にスライド可能なリテーナが配設されることを特徴とする変速機。
- 請求項2に記載の変速機において、前記リテーナと前記第3のローラとの間に摺動部材を介在させていることを特徴とする変速機。
- 請求項3に記載の変速機において、前記摺動部材は転がりユニットであることを特徴とする変速機。
- 請求項3に記載の変速機において、前記第1及び第2の転動体が前記摺動部材を兼ねるように構成されていることを特徴とする変速機。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の変速機において、前記第1のローラが入力軸のとき、前記第3のローラ、前記第2のローラの一方が固定され、他方が出力軸とされることを特徴とする変速機。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の変速機において、前記第1の繰返し数はKS、前記第2の繰返し数はKS・KIで表され、前記複数の溝の数は最大でKS(KI±1)で表されることを特徴とする変速機。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の変速機において、前記第1、第2のローラは、それぞれ中空にされていることを特徴とする変速機。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の変速機において、前記第1、第2の溝は、正弦波あるいは三角波形状等の対称形状を持つことを特徴とする変速機。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080611 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20081015 |