JPWO2003035705A1 - 水添共重合体 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、水添共重合体に関する。更に詳しくは、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添共重合体を水添して得られ、該ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロック(H)を少なくとも1つ含有する水添共重合体であって、該ビニル芳香族単量体単位の含有量、該重合体ブロック(H)の含有量、重量平均分子量、及び該共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が特定の範囲にあり、且つ該水添共重合体に関して得られた示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−50〜100℃の範囲に結晶化ピークが実質的に存在しない、水添共重合体に関する。本発明の水添共重合体は、柔軟性に富み、反発弾性と耐傷付き性が優れ、且つ取り扱い性(耐ブロッキング性)が良好である。なお、「耐ブロッキング性」とは、樹脂成形品を積み重ねたり、樹脂フィルムを巻いたりして、そのまま長時間放置した際に、接触面が接着し、簡単にはがれなくなる固着現象(ブロッキング)に対する耐性のことである。更に本発明は、上記の水添共重合体(a)、及び水添共重合体(a)以外の熱可塑性樹脂及び/又は水添共重合体(a)以外のゴム状重合体を成分(b)として包含する重合体組成物に関する。本発明の優れた水添共重合体を用いた重合体組成物は、耐衝撃性、成形加工性、耐磨耗性等に優れた組成物である。本発明の水添共重合体及び水添共重合体組成物は、発泡体、各種成形品、建築材料、制振・防音材料及び電線被覆材料などとして有利に用いることができる。
従来技術
共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とからなる共重合体は重合体中に不飽和二重結合を有するため、熱安定性、耐候性、耐オゾン性が劣る。このような問題点を改善するための方法として、不飽和二重結合を水素添加する方法が古くから知られている。この方法は、例えば、日本国特開昭56−30447号公報、日本国特開平2−36244号公報などに開示されている。
一方、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素からなるブロック共重合体の水素添加物は、加硫をしなくても加硫した天然ゴムや合成ゴムと同様の弾性を常温にて有し、しかも高温では熱可塑性樹脂と同様の加工性を有することから、プラスチックの改質、粘接着剤、自動車部品や医療器具等の分野で広く利用されている。近年、かかる特性に似た特性を共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素からなるランダム共重合体で発現させる試みがなされている。
例えば、日本国特開平2−158643号公報(米国特許第5,109,069号に対応)には、ビニル芳香族炭化水素含有量が3〜50重量%の共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素とのランダム共重合体であって、分子量分布(Mw/Mn)が10以下であり、かつ共重合体中の共役ジエン部のビニル結合量が10〜90%である共重合体を水素添加した水添ジエン系共重合体とポリプロピレン樹脂との組成物が開示されている。また、日本国特開平6−287365号公報には、ビニル芳香族炭化水素含有量が5〜60重量%の共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素とのランダム共重合体であって、かつ共重合体中の共役ジエン部のビニル結合量が60%以上である共重合体を水素添加した水添ジエン系共重合体とポリプロピレン樹脂との組成物が開示されている。
上記のような水添ジエン系共重合体に関しては、軟質塩化ビニル樹脂が従来用いられているような用途に用いることが試みられている。軟質塩化ビニル樹脂には、燃焼時におけるハロゲンの問題、可塑剤による環境ホルモンの問題等の環境問題があり、その代替材料の開発が急務である。しかし、上記のような水添ジエン系共重合体は、軟質塩化ビニル樹脂が従来用いられているような用途に用いるには、反発弾性や耐傷付き性といった特性が不十分であった。
また、上記のような水添ジエン系共重合体を、各種熱可塑性樹脂やゴム状物質と組み合わせて成形材料として使用する場合、水添ジエン系共重合体の機械的強度や成形加工性の改良が望まれていた。
WO98/12240には、塩化ビニル樹脂類に似た重合体として、スチレン主体のブロックとブタジエン/スチレンを主体とするブロックを含有する共重合体からなる水添ブロック共重合体をベースとする成形材料が開示されている。さらに日本国特開平3−185058号公報にはポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂とビニル芳香族−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物からなる樹脂組成物を開示しており、上記芳香族−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物として上記WO98/12240と同様の水添共重合体が使用されていた。しかしながら、上記公報に開示されている水添共重合体は、いずれも結晶性を有するポリマーであるため、柔軟性に乏しく、軟質塩化ビニル樹脂が使用されている用途には不適であった。
上記のように、様々な環境上の問題がある軟質塩化ビニル樹脂の代替材料の開発が急務であるにも関わらず、軟質塩化ビニル樹脂に匹敵する特性(柔軟性や耐傷付き性等)の材料が得られていないのが現実であった。
発明の概要
上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添共重合体を水添して得られ、該ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロック(H)を少なくとも1つ含有する水添共重合体であって、該ビニル芳香族単量体単位の含有量、該重合体ブロック(H)の含有量、重量平均分子量、及び該共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が特定の範囲にあり、且つ該水添共重合体に関して得られた示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−50〜100℃の範囲に結晶化ピークが実質的に存在しないという特性を有する水添共重合体によって、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
従って、本発明の1つの目的は、柔軟性に富み、反発弾性と耐傷付き性が優れ、且つ取り扱い性(耐ブロッキング性)が良好な水添共重合体を提供することにある。
本発明の他の1つの目的は、上記水添共重合体を他の熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体とブレンドして得られる、耐衝撃性、引張強さ、成形加工性、耐磨耗性等に優れた水添共重合体組成物を提供することにある。
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、添付の図面を参照しながら行う以下の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
発明の詳細な説明
本発明の1つの態様によれば、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添共重合体を水添して得られ、該ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロック(H)を少なくとも1つ含有する水添共重合体であって、下記の(1)〜(5)の特性を有することを特徴とする水添共重合体が提供される。
(1)該ビニル芳香族単量体単位の含有量が、該水添共重合体の重量に対して、60重量%を越え、90重量%未満であり、
(2)該重合体ブロック(H)の含有量が、該非水添共重合体の重量に対して、1重量%〜40重量%であり、
(3)重量平均分子量が10万を越え、100万以下であり、
(4)該共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が85%以上であり、
(5)該水添共重合体に関して得られた示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−50〜100℃の範囲に結晶化ピークが実質的に存在しない。
次に本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的特徴及び好ましい態様を列挙する。
1.共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添共重合体を水添して得られ、該ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロック(H)を少なくとも1つ含有する水添共重合体であって、下記の(1)〜(5)の特性を有することを特徴とする水添共重合体。
(1)該ビニル芳香族単量体単位の含有量が、該水添共重合体の重量に対して、60重量%を越え、90重量%未満であり、
(2)該重合体ブロック(H)の含有量が、該非水添共重合体の重量に対して、1重量%〜40重量%であり、
(3)重量平均分子量が10万を越え、100万以下であり、
(4)該共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が85%以上であり、
(5)該水添共重合体に関して得られた示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−50〜100℃の範囲に結晶化ピークが実質的に存在しない。
2.該非水添共重合体が、下記式(1)〜(4)で表されるブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体であることを特徴とする前項1に記載の水添共重合体。
S−H (1)、
S−H−S (2)、
(S−H)m−X (3)及び
(S−H)n−X−(H)p (4)
(式中、各Sは、各々独立して、該共役ジエン単量体単位と該ビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックを表し、各Hは、各々独立して、該ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロックを表し、各Xは、各々独立して、カップリング剤残基を表し、mは2以上の整数を表し、n及びpはそれぞれ独立して1以上の整数を表す。)
3.該非水添共重合体が、該式(1)で表されるブロック共重合体であることを特徴とする前項2に記載の水添共重合体。
4.発泡体であることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の水添共重合体。
5.成形品であることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の水添共重合体。
6.多層フィルム又は多層シートであることを特徴とする前項5に記載の水添共重合体。
7.押出成形、射出成形、中空成形、圧空成形、真空成形、発泡成形、複層押出成形、複層射出成形、高周波融着成形及びスラッシュ成形からなる群より選ばれる方法によって得られる成形品であることを特徴とする前項5に記載の水添共重合体。
8.建築材料、制振・防音材料又は電線被覆材料であることを特徴とする前項1〜3のいずれかに記載の水添共重合体。
9.前項1〜3のいずれかに記載の水添共重合体を、加硫剤の存在下で架橋することにより得られる架橋水添共重合体。
10.前項1に記載の水添共重合体(a)1〜99重量部、及び
該水添共重合体(a)以外の熱可塑性樹脂及び該水添共重合体(a)以外のゴム状重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体(b)99〜1重量部
を包含する水添共重合体組成物。
11.発泡体であることを特徴とする前項10に記載の水添共重合体組成物。
12.成形品であることを特徴とする前項10に記載の水添共重合体組成物。
13.多層フィルム又は多層シートであることを特徴とする前項12に記載の水添共重合体組成物。
14.押出成形、射出成形、中空成形、圧空成形、真空成形、発泡成形、複層押出成形、複層射出成形、高周波融着成形及びスラッシュ成形からなる群より選ばれる方法によって得られる成形品であることを特徴とする前項12に記載の水添共重合体組成物。
15.建築材料、制振・防音材料又は電線被覆材料であることを特徴とする前項10に記載の水添共重合体組成物。
16.前項10に記載の水添共重合体組成物を、加硫剤の存在下で架橋することにより得られる架橋水添共重合体組成物。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、重合体を構成する各単量体単位の命名は、該単量体単位が由来する単量体の命名に従っている。例えば、「ビニル芳香族単量体単位」とは、単量体であるビニル芳香族化合物を重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。また、「共役ジエン単量体単位」とは、単量体である共役ジエンを重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
本発明の水添共重合体は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添共重合体を水添して得られ、該ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロック(H)を少なくとも1つ含有する水添共重合体である。本発明の水添共重合体のビニル芳香族単量体単位の含有量は、該水添共重合体の重量に対して、60重量%を越え、90重量%未満である。ビニル芳香族単量体単位の含有量が60重量%を越えると優れた耐ブロッキング性(取り扱い性)及び耐傷付き性を発揮し、90重量%未満であると柔軟性や反発弾性が優れるのみならず、樹脂状組成物とした場合の耐衝撃性が優れる。好ましいビニル芳香族単量体単位の含有量は62〜88重量%、更に好ましくは64〜86重量%である。特に65〜80重量%が好ましい。尚、ビニル芳香族単量体単位の含有量は、紫外分光光度計を用いて測定することができる。水添共重合体のビニル芳香族単量体単位の含有量は、水素添加前の共重合体(非水添共重合体)中のビニル芳香族単量体単位含有量を測定してもかまわない。
本発明の水添共重合体において、ビニル芳香族化合物単量体単位の重合体ブロック(H)(以下、屡々、「ビニル芳香族重合体ブロック(H)」と称す)の含有量は、該非水添共重合体の重量に対して、1重量%〜40重量%である。ビニル芳香族重合体ブロック(H)の含有量が1重量%以上であれば耐ブロッキング性と反発弾性に優れ、40重量%以下であれば耐傷付き性に優れる。好ましいビニル芳香族重合体ブロック(H)の含有量は5〜35重量%、更に好ましくは10〜30重量%であり、特に13〜20重量%が好ましい。本発明においては、水添共重合体におけるビニル芳香族重合体ブロック(H)の含有量は、四酸化オスミウムを触媒として水素添加前の共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法、以下、屡々、「四酸化オスミウム分解法」と称する)で求めたビニル芳香族重合体ブロック成分の重量(但し、平均重合度が約30以下のビニル芳香族重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めた値である。
ビニル芳香族重合体ブロック(H)の含有量(重量%)=(水素添加前の共重合体中のビニル芳香族重合体ブロック(H)の重量/水素添加前の共重合体の重量)×100。
尚、水添共重合体におけるビニル芳香族重合体ブロック(H)の含有量は、水添後の重合体についても、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて(Y.Tanaka,et al.,RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54,685(1981)に記載の方法)直接測定することができるが、本発明においては前述した四酸化オスミウム分解法によって求めた値をビニル芳香族重合体ブロック(H)の含有量とする。前述した四酸化オスミウム分解法で測定した水素添加前の共重合体のビニル芳香族重合体ブロック(H)の含有量(「Os値」と称する)とNMR法により測定した水添後の共重合体のビニル芳香族重合体ブロック(H)の含有量(「Ns値」と称する)の間には、相関関係がある。ビニル芳香族重合体ブロック(H)の含有量の異なる種々の共重合体で検討した結果、その関係は以下の式で表すことができる。
Os値=−0.012(Ns値)2+1.8(Ns値)−13.0
従って、本発明においてNMR法で水添後の重合体のビニル芳香族重合体ブロック(H)の含有量を求めた場合には、上記式に基づいてNs値をOs値に換算し、ビニル芳香族重合体ブロック(H)の含有量とした。
本発明の水添共重合体の重量平均分子量は、10万を越え、100万以下である。重量平均分子量が10万を越えると、耐ブロッキング性、反発弾性及び耐傷付き性にすぐれ、100万以下ならば成形加工性に優れる。好ましい重量平均分子量は13万〜80万、更に好ましくは15万〜50万である。水添共重合体の分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。
本発明の水添共重合体の分子量分布は、成形加工性の点から1.5〜5.0が好ましく、より好ましくは1.6〜4.5、更に好ましくは1.8〜4.0である。水添共重合体の分子量分布は、分子量と同様にGPCによる測定から求めることができ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)である。
本発明の水添共重合体においては、共役ジエン単量体単位に基づく二重結合の85%以上が水添されている。共役ジエン単量体単位に基づく二重結合の85%以上が水添されていることで、優れた耐ブロッキング性と耐傷付き性を発揮する。水添されている二重結合の量は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上、特に好ましくは95%以上である。水素添加前の共重合体中の共役ジエン単量体単位に基づくビニル結合含量は、赤外分光光度計(ハンプトン法)を用いて求めることができ、水添共重合体の水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて求めることができる。
本発明の水添共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSCチャートにおいて、−50〜100℃の範囲に結晶化ピークが実質的に存在しない水素添加物である。ここで、「−50〜100℃の範囲に結晶化ピークが実質的に存在しない」とは、この温度範囲において結晶化に起因するピークが現れない、もしくは結晶化に起因するピークが認められる場合においても、その結晶化による結晶化ピーク熱量が3J/g未満、好ましくは2J/g未満、更に好ましくは1J/g未満であり、特に好ましくは結晶化ピーク熱量が無いことを意味する。結晶化ピークを有する水添共重合体は、著しく柔軟性の劣った重合体となり、本発明の目的である軟質な塩化ビニル樹脂が使用されている用途への展開には不適である。上記のような−50〜100℃の範囲に結晶化ピークが実質的に存在しない水添共重合体を得るためには、後述するようなビニル結合量調整剤を用いて後述するような条件下で重合反応を行うことによって得られる非水添共重合体を用いればよい。
本発明の水添共重合体は、柔軟性に富んでおり、引張試験における100%モジュラスが低いことがひとつの特徴である。100%モジュラスは120kg/cm2以下、好ましくは90kg/cm2以下、より好ましくは60kg/cm2以下であることが推奨される。
本発明の水添共重合体の構造に特に限定はなく、いかなる構造のものでも使用できる。しかし、該非水添共重合体が、下記式(1)〜(4)で表されるブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体であることが好ましい。
S−H (1)、
S−H−S (2)、
(S−H)m−X (3)及び
(S−H)n−X−(H)p (4)
(式中、各Sは、各々独立して、該共役ジエン単量体単位と該ビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックを表し、各Hは、各々独立して、該ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロックを表し、各Xは、各々独立して、カップリング剤残基を表し、mは2以上の整数を表し、n及びpはそれぞれ独立して1以上の整数を表す。)
生産性及び柔軟性の観点から、とりわけ該式(1)で表されるブロック共重合体を用いることが好ましい。
また、本発明の水添共重合体は、異なる構造を有する上記ブロック共重合体の水素添加物からなる混合物でもよい。また、本発明の水添共重合体にはビニル芳香族化合物重合体が混合されていても良い。
上記一般式(1)〜(4)において、該共重合体ブロックSにおけるビニル芳香族単量体単位の分布状態に関しては特に限定は無く、ランダム共重合体ブロックS中のビニル芳香族単量体単位は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。また、ビニル芳香族単量体単位が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよく、ビニル芳香族炭化水素含有量が異なるセグメントが複数個存在していてもよい。上記式(3)においてmは2以上、好ましくは2〜10の整数である。上記式(4)において、n及びpはそれぞれ独立して1以上、好ましくは1〜10の整数である。
本発明において共役ジエン単量体は1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(即ちイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。特に好ましいのは1,3−ブタジエンとイソプレンである。これらは一種のみならず、二種以上を使用してもよい。また、ビニル芳香族単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
本発明において、水素添加前の共重合体の共役ジエン単量体単位のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができる。共役ジエン単量体として1,3−ブタジエンを使用した場合には1,2−ビニル結合量は5〜80%、好ましくは10〜60%、より好ましくは12〜50%であることが一般的に推奨され、特に柔軟性に富んだ共重合体を得るためには、12%以上であることが好ましい。共役ジエン単量体としてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量は一般に3〜75%、好ましくは5〜60%であることが推奨される。なお、本発明においては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)を「ビニル結合量」とする。
また、本発明において、水素添加前の共重合体鎖中におけるビニル結合量の最大値と最小値との差が10%未満、好ましくは8%以下、更に好ましくは6%以下であることが水添共重合体の反発弾性等の点で推奨される。尚、水素添加前の共重合体鎖中におけるビニル結合量の最大値と最小値との差は、以下の方法で得ることができる。例えば、水素添加前の共重合体の重合を、モノマーを逐次的に反応器に供給し、バッチ的に行う場合、モノマーを追加する毎に、その直前の重合体をサンプリングして、ビニル結合量を測定し、得られた値からビニル結合量の最大値と最小値との差を計算する。共重合体鎖中のビニル結合は、均一に分布していてもテーパー状に分布していても良い。ここで、ビニル結合量の差は、重合条件、すなわちビニル結合量調整剤(第3級アミン化合物又はエーテル化合物等)の種類、量及び重合温度などの影響で生ずる。従って、例えば、共重合体鎖中のビニル結合量の最大値と最小値との差は、共役ジエン重合時の重合温度によって制御することができる。第3級アミン化合物又はエーテル化合物等のビニル結合量調整剤の種類と量が一定の場合、重合中のポリマー鎖に組み込まれるビニル結合量は重合温度によって決まる。従って、この場合、重合温度を一定に保って重合するとビニル結合が均一に分布した重合体となる。これに対し、昇温で重合した重合体は、初期(低温で重合)が高ビニル結合量、後半(高温で重合)が低ビニル結合量といった具合にビニル結合量に差のある重合体となる。従って、本発明の水添重合体を製造する際には、初期と後半の重合温度の差は20℃以下、好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下とすることが推奨される。
水素添加前の共重合体(非水添共重合体)は、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤を用いてアニオンリビング重合によって製造することができる。炭化水素溶媒としては、例えばn−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタンなどの脂環式炭化水素類;及びベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
重合開始剤としては、一般的に共役ジエン及びビニル芳香族化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等を用いることができる。アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、好適な有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物であって、1分子中に1個のリチウムを含む化合物や1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が挙げられる。具体的にはn−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。更に、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
本発明において有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体を共重合する際には、重合体に組み込まれる共役ジエン単量体単位に起因するビニル結合(即ち、1,2ビニル結合又は3,4ビニル結合)の量や共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム共重合性を調整するために、調整剤として第3級アミン化合物又はエーテル化合物を用いることができる。第3級アミン化合物は、一般式R1R2R3N(ただしR1、R2、R3は、それぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭素数1から20の炭化水素基である)で表される化合物、具体的には、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等である。
またエーテル化合物としては、直鎖状エーテル化合物や環状エーテル化合物を用いることができる。直鎖状エーテル化合物としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類;及びジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。また、環状エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5−ジメチルオキソラン、2,2,5,5−テトラメチルオキソラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
本発明において有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体を共重合する方法は、バッチ重合であっても連続重合であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。特に成形加工性の点で分子量分布を適正範囲に調整する上では、連続重合方法が推奨される。重合温度は、一般に0℃〜180℃、好ましくは30℃〜150℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、特に好適には0.1〜10時間である。又、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲で単量体及び溶媒を液相に維持するのに充分な圧力の範囲であれば特に限定はない。更に、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないように留意する必要がある。
本発明の水添共重合体の製造過程においては、共重合体の重合が終了した時点で2官能以上のカップリング剤を用いてカップリング反応を行うこともできる。2官能カップリング剤としては公知のものを用いれば良く、特に限定はない。具体的には、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等を用いることができる。また、3官能以上の多官能カップリング剤を使用する場合にも、公知のものを用いればよく、特に限定はない。具体的には、3価以上のポリアルコール類;エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物;式R4−nSiXn(ただし、Rはそれぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3から4の整数を示す)で示されるハロゲン化珪素化合物、例えばメチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素及びこれらの臭素化物等;式R4−nSnXn(ただし、Rはそれぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3から4の整数を示す)で示されるハロゲン化錫化合物、具体的にはメチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物を用いることができる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチルも多官能カップリング剤として使用できる。
上記の方法で製造した共重合体を水素添加することにより、本発明の水添共重合体が得られる。水添触媒に特に限定はなく、従来から水添触媒として用いられている以下の化合物を用いることができる。
(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持した担持型不均一系水添触媒、
(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩を有機アルミニウム等の還元剤と共に用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、及び
(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒。
具体的な水添触媒としては、日本国特公昭42−8704号公報、日本国特公平1−37970号公報公報等に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒とはチタノセン化合物及びチタノセン化合物と還元性有機金属化合物の混合物である。
チタノセン化合物としては、日本国特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できる。具体的には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上有する化合物が挙げられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物や有機亜鉛化合物等が挙げられる。
本発明の水添共重合体を製造するための水添反応は、一般的に0〜200℃、好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施する。水添反応に使用する水素の圧力は0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜5MPaである。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
共重合体の水添反応によって、水添共重合体を含む溶液が得られる。水添共重合体を含む溶液から、必要に応じて触媒残査を除去し、水添共重合体を溶液から分離する。溶媒を分離する方法としては、例えば水添後の反応液にアセトン又はアルコール等の水添共重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法;反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法;又は直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等が挙げられる。
本発明の水添共重合体には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
本発明の水添共重合体は、α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えばその無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物でグラフト変性してもよい。このようにグラフト変性した水添共重合体も後述する組成物に使用することができる。α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、無水マレイン酸イミド、アクリル酸又はそのエステル、メタアクリル酸又はそのエステル、エンド−シス−ビシクロ〔2,2,1〕−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の付加量は、水添重合体100重量部当たり、一般に0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
本発明の他の1つの態様においては、
本発明の水添共重合体(a)1〜99重量部、及び
該水添共重合体(a)以外の熱可塑性樹脂及び該水添共重合体(a)以外のゴム状重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体(b)99〜1重量部
を包含する水添共重合体組成物が提供される。
本発明の水添共重合体(a)を、熱可塑性樹脂やゴム状重合体などのほかの重合体(b)と組み合わせることで、各種成形材料に適した水添共重合体組成物を得ることができる。本発明の水添共重合体組成物における、水添共重合体(a)(以下、屡々、成分(a)と称する)と熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体(以下、屡々、成分(b)と称する)の配合割合は、成分(a)/成分(b)の重量比で1/99〜99/1、好ましくは2/98〜90/10、更に好ましくは5/95〜70/30である。
本発明の水添共重合体(a)と熱可塑性樹脂(b)をブレンドした場合、耐衝撃性や成形加工性に優れた水添共重合体組成物が得られる。
本発明の水添共重合体組成物に用いる熱可塑性樹脂(b)としては、ビニル芳香族単量体単位含有量が60重量%を超える共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とのブロック共重合樹脂及びその水素添加物(但し、本発明の水添共重合体(a)とは異なる);前記のビニル芳香族単量体の重合体;前記のビニル芳香族単量体と他のビニル単量体(例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸及びアクリルメチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸及びメタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)との共重合樹脂;ゴム変性スチレン系樹脂(HIPS);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS);メタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(MBS);ポリエチレン;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びその加水分解物などの、エチレンと他の共重合可能なモノマーとからなるエチレン含有量が50重量%以上の共重合体;エチレン−アクリル酸アイオノマーや塩素化ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン;プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−アクリル酸エチル共重合体や塩素化ポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂、エチレン−ノルボルネン樹脂等の環状オレフィン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂及びその加水分解物などの、プロピレンと他の共重合可能な単量体とからなるプロピレン含有量が50重量%以上の共重合体;アクリル酸及びそのエステルやアミドの重合体;ポリアクリレート系樹脂;アクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルの重合体;アクリロニトリル系モノマーと他の共重合可能な単量体とからなるアクリロニトリル系単量体含有量が50重量%以上の共重合体であるニトリル樹脂;ナイロン−46、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−6ナイロン−12共重合体などのポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;熱可塑性ポリウレタン系樹脂;ポリ−4,4’−ジオキシジフェニル−2,2’−プロパンカーボネートなどのポリカーボネート系重合体;ポリエーテルスルホンやポリアリルスルホンなどの熱可塑性ポリスルホン;ポリオキシメチレン系樹脂;ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルなどのポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド、ポリ4,4’−ジフェニレンスルフィドなどのポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリエーテルケトン重合体又は共重合体;ポリケトン系樹脂;フッ素系樹脂;ポリオキシベンゾイル系重合体;ポリイミド系樹脂;1,2−ポリブタジエン、トランスポリブタジエンなどのポリブタジエン系樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂(b)は、水酸基、エポキシ基、アミノ基、カルボン酸基、酸無水物基等の極性基含有原子団が結合しているものでもよい。本発明に用いる熱可塑性樹脂(b)の数平均分子量は通常1,000以上、好ましくは5,000〜500万、更に好ましくは1万〜100万である。尚、熱可塑性樹脂(b)の数平均分子量は、上記した本発明の水添共重合体の分子量の測定と同様に、GPCにより測定することができる。
また、本発明の水添共重合体(a)とゴム状重合体(b)をブレンドした場合、引張強度や伸び特性、成形加工性に優れた水添共重合体組成物が得られる。
本発明の水添共重合体組成物に用いるゴム状重合体(b)としては、ブタジエンゴム及びその水素添加物;スチレン−ブタジエンゴム及びその水素添加物(但し、本発明の水添共重合体(a)とは異なる);イソプレンゴム;アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びその水素添加物;クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー;EPDMやEPM等を軟質相としたオレフィン系TPE;ブチルゴム;アクリルゴム;フッ素ゴム;シリコーンゴム;塩素化ポリエチレンゴム;エピクロルヒドリンゴム;α,β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム;ウレタンゴム;多硫化ゴム;スチレン−ブタジエンブロック共重合体及びその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体及びその水素添加物;スチレン−ブタジエン・イソプレンブロック共重合体及びその水素添加物等の、スチレン含有量が60重量%以下のスチレン系エラストマー;天然ゴムなどが挙げられる。これらのゴム状重合体は、官能基(カルボキシル基、カルボニル基、酸無水物基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基等)を付与した変性ゴムであっても良い。本発明に用いるゴム状重合体(b)の数平均分子量は好ましくは1万以上、より好ましくは2万〜100万、更に好ましくは3万〜80万である。尚、ゴム状重合体(b)の数平均分子量は、上記した本発明の水添共重合体の分子量の測定と同様に、GPCにより測定することができる。
上記した成分(b)として用いる熱可塑性樹脂及びゴム状重合体は、必要に応じて2種以上を併用することができる。2種以上を併用する場合には、2種以上の熱可塑性樹脂や2種以上のゴム状重合体を用いてもよいし、あるいは熱可塑性樹脂とゴム状重合体を併用してもかまわない。具体的には、樹脂状の組成物(即ち、樹脂が大部分を占める組成物)の衝撃性を上げたり、低硬度化するためにゴム状重合体を併用したり、ゴム状の組成物(即ち、ゴム状重合体が大部分を占める組成物)の強度や耐熱性を上げるために樹脂を併用することもできる。
本発明の水添共重合体及び水添共重合体組成物には、必要に応じて任意の添加剤を配合してもよい。添加剤は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体に一般的に配合されるものであれば特に限定はなく、「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)などに記載されたものが挙げられる。具体的には、後述する補強性充填剤や硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機充填剤;カーボンブラック、酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリルアルコール、石油系ワックス(例えば、マイクロクリスタリンワックス)及び低分子量ビニル芳香族系樹脂等のブロッキング防止剤;離型剤;有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;難燃剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;着色剤;及びこれらの混合物等を用いることができる。
本発明の水添共重合体組成物の製造方法に特に限定はなく、公知の方法が利用できる。例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法や、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等を用いることができる。本発明の水添共重合体組成物を製造するには、押出機による溶融混合法が生産性、良混練性の点から好ましい。水添共重合体組成物の形状に特に限定はないが、ペレット状、シート状、ストランド状、チップ状等を挙げることができる。また、溶融混練後、直接成形品とすることもできる。
上述したように、本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物を、所望により各種添加剤を配合して様々な用途に用いることができる。本発明の水添共重合体及び水添共重合体組成物の具体的態様に関しては、(i)補強性充填剤配合物、(ii)架橋物、(iii)発泡体、(iv)多層フィルム及び多層シートなどの成形品、(v)建築材料、(vi)制振・防音材料、(vii)電線被覆材料、(viii)高周波融着性組成物、(ix)スラッシュ成形材料、(x)粘接着性組成物、(xi)アスファルト組成物に好適に用いることができ、特に(ii)架橋物、(iii)発泡体、(iv)多層フィルム及び多層シートなどの成形品、(v)建築材料、(vi)制振・防音材料、(vii)電線被覆材料として有利に用いることができる。次に、上記の具体的態様に関して以下に説明する。
(i)補強性充填剤配合物
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物に、シリカ系無機充填剤、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸化物、カーボンブラックから選ばれる少なくとも1種の補強性充填剤(以下、屡々、成分(c)と称する)を配合して補強性充填剤配合物を調製することができる。補強性充填剤配合物における成分(c)の配合量は、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対して0.5〜100重量部、好ましくは5〜100重量部、更に好ましくは20〜80重量部である。本発明の水添共重合体組成物を用いて補強性充填剤配合物を調整する場合には、成分(a)である本発明の水添共重合体100重量部に対して、0〜500重量部、好ましくは5〜300重量部、更に好ましくは10〜200重量部の熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体(成分(b))を包含する水添共重合体組成物が適している。
補強性充填剤として用いるシリカ系無機充填剤は、化学式SiO2を構成単位の主成分とする固体粒子であり、例えば、シリカ、クレイ、タルク、カオリン、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質などが挙げられる。また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤の混合物も使用できる。シリカ系無機充填剤としてはシリカ及びガラス繊維が好ましい。シリカとしては、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、コロイダルシリカと呼ばれているもの等が使用できる。平均粒径は0.01〜150μmのものが好ましく、シリカが組成物中に分散し、その添加効果を十分に発揮するためには、平均分散粒子径は0.05〜1μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μmである。
補強性充填剤として用いる金属酸化物は、化学式MxOy(Mは金属原子、x、yは各々1〜6の整数)を構成単位の主成分とする固体粒子であり、例えばアルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等である。また、金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤の混合物を使用してもよい。
補強性充填剤として用いる金属水酸化物は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、酸化錫の水和物、硼砂等の無機金属化合物の水和物等の水和系無機充填材であり、中でも水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムが好ましい。
補強性充填剤として用いる金属炭酸化物としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
また、補強性充填剤として、FT、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用でき、窒素吸着比表面積が50mg/g以上、DBP(フタル酸ジブチル)吸油量が80ml/100gのカーボンブラックが好ましい。
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物を用いた補強性充填剤配合物においては、シランカップリング剤(以下、屡々、成分(d)と称する)を使用してもよい。シランカップリング剤は、水添共重合体と補強性充填剤との相互作用を緊密にするためのものであり、水添共重合体と補強性充填剤の一方又は両方に対して親和性あるいは結合性の基を有している化合物である。好ましいシランカップリング剤は、シラノール基又はアルコキシシランと共にメルカプト基及び/又は硫黄が2個以上連結したポリスルフィド結合を有するものであり、具体的にはビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどが挙げられる。目的とする作用効果を得る観点から、シランカップリング剤の配合量は、補強性充填剤に対して0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは1〜15重量%である。
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物と補強性充填剤を含有する補強性充填剤配合物は、加硫剤で加硫して(即ち架橋して)加硫組成物としてもよい。加硫剤としては、有機過酸化物及びアゾ化合物などのラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物(一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物など)を用いることができる。加硫剤の使用量は、通常は、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対し0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部の割合である。
加硫剤として用いる有機過酸化物(以下、屡々、成分(e)と称する)としては、臭気性やスコーチ安定性(各成分の混合時の条件下では架橋しないが、架橋反応条件にした時には速やかに架橋する特性)の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、ジ−ter−ブチルパーオキサイドが好ましい。上記以外には、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなども用いることができる。
また加硫する際には、加硫促進剤(以下、屡々、成分(f)と称する)として、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系の化合物などを必要に応じた量で使用してもよい。また、加硫助剤として、亜鉛華、ステアリン酸などを必要に応じた量で使用することもできる。
また上記した有機過酸化物を使用して補強性充填剤配合物を架橋する際には、特に加硫促進剤として硫黄;p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパン−N,N’−m−フェニレンジマレイミド等のペルオキシ架橋用助剤(以下、屡々、成分(g)と称する);ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー;ビニルブチラート、ビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマー(以下、屡々、成分(h)と称する)などを有機過酸化物と併用することもできる。このような加硫促進剤は、通常、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対し0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部の割合で用いられる。
加硫剤で補強性充填剤配合物を加硫する方法は通常実施される方法であり、例えば、120〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度で加硫する。加硫した補強性充填剤配合物は、加硫物の状態で耐熱性、耐屈曲性や耐油性を発揮する。
補強性充填剤配合物の加工性を改良するために、ゴム用軟化剤(以下、屡々、成分(i)と称する)を配合しても良い。ゴム用軟化剤には鉱物油や、液状もしくは低分子量の合成軟化剤が適している。なかでも、一般にゴムの軟化、増容、加工性向上に用いる、ナフテン系及び/又はパラフィン系のプロセスオイル又はエクステンダーオイルが好ましい。鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素の50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環の炭素数が30〜45%のものがナフテン系、また芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれる。補強性充填剤配合物には合成軟化剤を用いてもよく、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、流動パラフィン等が使用可能である。しかし、上記した鉱物油系ゴム用軟化剤が好ましい。補強性充填剤配合物におけるゴム用軟化剤の配合量は、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対して0〜100重量部、好ましくは10〜90重量部、更に好ましくは30〜90重量部である。ゴム用軟化剤の量が100重量部を超えるとブリードアウトを生じやすく、組成物表面にベタツキを生ずるおそれがある。
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物を含む補強性充填剤配合物は、建築材料、電線被覆材や制振材料などとして用いることができる。また、その加硫組成物は、その特徴を生かしてタイヤ用途や防振ゴム、ベルト、工業用品、はきもの、発泡体などに適用することができる。
(ii)架橋物
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物を加硫剤の存在下で架橋して、架橋物(即ち、架橋水添共重合体又は架橋水添共重合体組成物)とすることができる。本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物を架橋することにより、耐熱性[高温C−Set(compression set)]や耐屈曲性を向上することができる。本発明の水添共重合体組成物の架橋物を調製する場合には、水添共重合体(a)と熱可塑性樹脂(b)及び/又はゴム状重合体(b)との配合割合は、成分(a)/成分(b)の重量比率で、10/90〜100/0、好ましくは20/80〜90/10、更に好ましくは30/70〜80/20である。
本発明において、架橋の方法には特に限定はないが、所謂「動的架橋」を行うことが好ましい。動的架橋とは、各種配合物を溶融状態において、加硫剤が反応する温度条件下で混練させることにより、分散と架橋を同時に起こさせる手法であり、A.Y.Coranらの文献(Rub.Chem.and Technol.vol.53.141−(1980))に詳細に記されている。動的架橋は、通常、バンバリーミキサーや加圧式ニーダーのような密閉式混練機、又は一軸や二軸押出機等を用いて行われる。混練温度は通常130〜300℃、好ましくは150〜250℃であり、混練時間は通常1〜30分である。動的架橋に用いる加硫剤としては、有機過酸化物やフェノール樹脂架橋剤が用いられ、その使用量は、通常は、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対し0.01〜15重量部、好ましくは0.04〜10重量部である。
加硫剤として使用する有機過酸化物としては、前述の成分(e)を使用することができる。有機過酸化物を使用して架橋する際には、加硫促進剤として前述の成分(f)を使用することができ、また前述の成分(g)や成分(h)などを併用することもできる。これらの加硫促進剤の使用量は、通常は、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対して0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部である。
本発明の架橋物には、その目的を損なわない範囲内で必要に応じて、軟化剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、充填剤、着色剤、滑剤等の添加物を配合することができる。最終的な製品の硬さや流動性を調節する為に配合する軟化剤としては、前述の成分(i)を使用することができる。軟化剤は各成分を混練する時に添加してもよいし、水添共重合体の製造時に予め該共重合体の中に含ませて(即ち、油展ゴムを調製して)おいても良い。軟化剤の添加量は、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対し通常0〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、更に好ましくは20〜100重量部である。また、充填剤としては、前述の成分(c)を用いることができる。充填剤の添加量は、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対し通常0〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、更に好ましくは20〜100重量部である。
本発明の架橋物は、ゲル含量(ただし、無機充填材等の不溶物等の不溶成分は含まない)が5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは20〜60重量%になるように動的架橋することが推奨される。ゲル含量に関しては、沸騰キシレンを用いてソックスレー抽出器で架橋物1gを10時間リフラックスし、残留物を80メッシュの金網でろ過し、メッシュ上に残留した不溶物の乾燥重量(g)を測定して求められる、試料1gに対する不溶物の割合(重量%)をゲル含量とする。ゲル含量は、加硫剤の種類や量、加硫する時の条件(温度、滞留時間、シェア等)を変えることで調整することができる。
本発明の架橋物は、補強性充填剤配合物の加硫組成物と同様にタイヤ用途や防振ゴム、ベルト、工業用品、はきもの、発泡体などに適用でき、更には医療用器具材料や食品包装材料としても用いることができる。
(iii)発泡体
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物は、発泡体としても用いることができる。この場合、通常、本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物に充填剤(以下、屡々、成分(j)と称する)を配合した組成物を調製し、これを発泡させることにより発泡体を得ることができる。本発明の水添共重合体組成物を用いて発泡体を調製する場合には、成分(a)の水添共重合体に対して5〜95重量%、好ましくは5〜90重量%、更に好ましくは5〜80重量%の熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体(成分(b))を包含する水添共重合体組成物が適している。
また、充填剤(j)の配合量は、発泡体を構成する組成物全体に対して5〜95重量%であり、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは20〜70重量%である。
本発明の発泡体に用いる充填剤(j)としては、前述の補強性充填剤(成分(c))や硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウムウイスカー、マイカ、グラファイト、カーボンファイバー等の無機充填剤;木製チップ、木製パウダー、パルプ等の有機充填剤が挙げられる。充填剤の形状に特に限定はなく、鱗片状、球状、粒状、粉体、不定形状等のものを用いることができる。これらの充填剤は必要に応じ2種以上を併用しても良い。充填剤は、シランカップリング剤等であらかじめ表面処理を行ったものを使用することもできる。
本発明の発泡体を得るための発泡方法には、化学的方法や物理的方法があり、いずれも無機系発泡剤や有機系発泡剤等の化学的発泡剤、或いは物理発泡剤(以下、両者を、屡々、成分(k)と称する)の添加等により、組成物内部に気泡を分布させればよい。
組成物を発泡材料とすることにより、軽量化、柔軟性の向上、意匠性の向上等を図ることができる。無機系発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム、金属粉等が挙げられる。有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジニトロソ−N,N’−ジメチルテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。物理的発泡剤としては、ペンタン、ブタン、ヘキサン等の炭化水素;塩化メチル、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素;窒素、空気等のガス;トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ハイドロフルオロカーボン等のフッ素化炭化水素等が挙げられる。これらの発泡剤は組み合わせて使用してもよい。発泡剤の配合量は、本発明の水添共重合体あるいは水添共重合体組成物100重量部に対して0.1〜8重量部、好ましくは0.3〜6重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
本発明の発泡体には、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体に一般的に配合されているものであれば特に制限はない。例えば、前述の「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)などに記載された各種添加剤が使用できる。
また、本発明の発泡体は、必要に応じて架橋することもできる。架橋の方法は、過酸化物、イオウ等の架橋剤及び必要に応じて共架橋剤等の添加による化学的方法、電子線、放射線等による物理的架橋法を例示することができる。架橋プロセスとしては、放射線架橋等のような静的な方法(混練しないで架橋する方法)や、動的架橋法等を例示することができる。架橋した発泡体を得るための具体的な方法としては、例えば、ポリマーと発泡剤や架橋剤との混合物を用いてシートを作成し、このシートを160℃くらいに加熱すると、発泡と同時に架橋反応も起き、これにより架橋した発泡体を得ることができる。架橋剤としては、前述の成分(e)である有機過酸化物や成分(f)の加硫促進剤を使用することができ、また前述の成分(g)や成分(h)などを併用することができる。これらの加硫促進剤の使用量は、通常、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対し0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部である。
本発明の発泡体は、シートやフィルムやその他の各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成型品、真空成形品、押出成形品等に活用することができる。特に柔軟性が必要とされる果実や卵の包装材、ミートトレイ、弁当箱当の食品包装・容器等に好適である。食品包装・容器の素材の一例としては、PP等のオレフィン系樹脂/PS等のビニル芳香族化合物重合体やHIPS等のゴム変性スチレン系樹脂/本発明の水添共重合体又は変性水添共重合体(/必要に応じて共役ジエンとビニル芳香族化合物からなるブロック共重合体又はその水添物(但し、本発明の水添共重合体とは異なるもの))からなる組成物を発泡させた発泡体が挙げられる。
また本発明の発泡体は、日本国特開平6−234133号公報に開示されているようなインサート・型空隙拡大法などの方法による射出成形によって、硬質樹脂成形品と組み合わせたクッション性複合成形品を成形することもできる。
(iv)多層フィルム及び多層シート
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物は、多層フィルム又はシートとして使用することもできる。本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物からなるフィルムは、その耐熱性、収縮性、ヒートシール性、透明性、防曇性を維持した状態で、各種機能を付与するための他の樹脂層を積層することが可能である。従って、本発明の多層フィルムやシートを用いることで、さらに自己粘着性や耐引き裂き伝播性、突き刺し強度、破断伸び等の機械的強度、延伸性、結束性、弾性回復性、耐突き破れ性、耐引き裂き性、変形回復性、ガスバリアー性に優れた種々の多層フィルムを提供することができる。このような多層フィルム又はシートは、非塩ビ系のストレッチフィルムとしてハンドラッパー又はストレッチ包装機等にも使用可能である。本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物からなる層を包含する多層フィルム又はシートとしては、下記のものが例示される。
a.本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物からなる層を少なくとも一層含む、多層フィルム又はシート、
b.2つの最外層(即ち、フィルム又はシートの両表面を形成する層)のうち少なくとも一層が、粘着性樹脂(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA))からなることを特徴とする、上記a項の多層フィルム又はシート、
c.少なくとも一層がポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする、上記a項の多層フィルム又はシート、
d.少なくとも一層が、厚さ25μm、温度23℃、湿度65%RHの条件で測定した酸素透過度が100cc/m2・24hrs・atm以下であるガスバリアー性樹脂(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド系樹脂など)からなることを特徴とする、上記a項の多層フィルム又はシート、
e.少なくとも一層がヒートシール性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、α−オレフィン共重合体、水添共重合体など)からなることを特徴とする、上記a項の多層フィルム又はシート、
f.最外層以外の少なくとも一層が、接着性樹脂層からなることを特徴とする、上記a〜e項のいずれかに記載の多層フィルム又はシート、
g.上記a〜f項のいずれかに記載の多層フィルム又はシートよりなるストレッチフィルム、そして
h.上記a〜f項のいずれかに記載の多層フィルム又はシートよりなる熱収縮性1軸延伸フィルム又は熱収縮性2軸延伸フィルム。
本発明の多層フィルム又はシートについて、以下に具体的に説明する。
本発明の多層フィルム又はシートには、必要に応じて充填剤、安定剤、老化防止剤、耐候性向上剤、紫外線吸収剤、可塑剤、軟化剤、滑剤、加工助剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、発泡剤等を含ませることができる。上記の添加剤のうち、特にフィルムやシートのブロッキングを抑制するには、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸モノグリセライド、石油系ワックス(例えば、マイクロクリスタリンワックス)等のブロッキング防止剤の添加が有効である。安定剤、防止剤、耐候性向上剤、紫外線級吸収剤、滑剤、着色剤、顔料、ブロッキング防止剤、結晶核剤等の添加量に特に制限はないが、物性、経済性のバランスから10重量部以下が好ましく、とくに好ましくは5重量部以下である。但し、多量に添加することによって効果を発現する材料についてはこの限りではない。これらの添加剤は、フィルムやシートを製造する前の水添共重合体又は水添共重合体組成物に添加すればよい。
本発明の多層フィルム又はシートに本発明の水添共重合体組成物を用いる場合は、水添共重合体(a)に対する熱可塑性樹脂(b)及び/又はゴム状重合体(b)の配合割合は、成分(a)/成分(b)の重量比率で100/0〜5/95、好ましくは100/0〜20/80、更に好ましくは100/0〜40/60であることが推奨される。
本発明の多層フィルム又はシートは、必要に応じて、コロナ、オゾン、プラズマ等の表面処理、防曇剤塗布、滑剤塗布、印刷等を実施することができる。本発明の多層フィルム又はシートは必要に応じて1軸又は2軸等の延伸配向を行うことができる。本発明の多層フィルム又はシートは必要に応じて、熱、超音波、高周波等の手法による融着、溶剤による接着等の手法によるフィルム同士、あるいは他の熱可塑性樹脂等の材料と接合することができる。
本発明の多層フィルム又はシートの厚みに特に限定はないが、多層フィルムの好ましい厚さは3μm〜0.3mm、さらに好ましくは10μm〜0.2mmであり、多層シートの好ましい厚さは0.3mmを超え、3mm以下、さらに好ましくは0.5mm〜1mmである。ストレッチフィルムや熱収縮性を有する1軸延伸フィルム又は2軸延伸フィルム用途として好適に使用するための好ましい厚さは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。このようなフィルムを食品包装用ストレッチフィルムとして使用する場合には、自動包装機や手動包装機により好適に包装することが可能である。また、容器を成形するための材料としては、100μm以上の厚みがあることが好ましい。本発明の多層フィルムやシートは、真空成形、圧縮成形、圧空成形等の熱成形等の手法により、食品や電気製品等の包装用容器や包装用トレーを製造することができる。
本発明の水添共重合体自身が自己粘着性や接着性をある程度有するが、本発明の多層フィルム又はシートに更に強い自己粘着性が要求される場合には、自己粘着性を有する粘着層を配置した多層フィルム又はシートにすることもできる。粘着層には、好ましくはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂が用いられる。EVAとしては、酢酸ビニルの含量が5〜25重量%であり、230℃、荷重2.16kgfの条件で測定したメルトフローレシオ(以下MFRと略す)が0.1〜30g/分のものが好ましく、酢酸ビニルの含量が10〜20重量%であり、MFRが0.3〜10g/分のものが特に好ましい。また本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物に適当な粘着付与剤を適量添加し、粘着層を形成することもできる。
本発明の多層フィルム又はシートは、本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物からなる層の他に、物性の改善を目的として他の適当なフィルム、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のフィルムと多層化されている。ポリオレフィン系樹脂としては、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、直鎖低密度ポリエチレン(L−LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン及び/又はプロピレンとブテン、ヘキセン、オクテン等のα−オレフィンとのブロック、ランダム共重合体、ポリメチルペンテン等を例示することができる。
本発明の多層フィルム又はシートの一部としてヒートシール層を設けてもよい。ヒートシール層とは、加熱及び必要に応じて圧力をかけることで、他の樹脂に対する密着性を発現する樹脂層である。また、ヒートシール層のみでは十分な機能が得られず、押し出し加工性、フィルム形成性に難点があり、また最適なシール条件の範囲が狭い場合には、ヒートシール層に隣接するシール補助層を配置することが望ましい。ヒートシール層にはポリオレフィン系樹脂を主成分とした組成物を使用することが可能であり、ポリオレフィン系樹脂の含量は50〜100重量%であることが望ましい。ヒートシール層に配置されるポリオレフィンとしてはポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ブテン系樹脂が用いられる。特にエチレン系樹脂としてはエチレン−α−オレフィン共重合体が挙げられ、α−オレフィンとしては、炭素数が3〜10の化合物、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが挙げられる。具体的には、線状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、線状中密度ポリエチレン(M−LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等を用いることができる。本発明の水添共重合体もヒートシール層として用いることができる。
また、ヒートシール強度、剥離感等を調整するために、添加剤を用いることもできる。また、耐熱性が要求される場合には、ナイロン系樹脂及びエチレン−エステル共重合体を使用することが可能であり、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)などが挙げられる。シール補助層を用いる場合、シール層を構成する樹脂の結晶融点は、シール補助層を構成する樹脂の結晶融点より高いことが好ましい。
層間の接着力が充分でない場合、接着層を層間に配置してもよい。接着層としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−アクリル酸エチル共重合体;マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などで変性されたオレフィン共重合体のような熱可塑性重合体の不飽和カルボン酸変性物もしくは該酸変成物の金属変成物、並びにこれらを含む混合物;熱可塑性ポリウレタンエラストマーのブレンド樹脂などが挙げられる。この層の厚みに特に限定はなく、目的や用途に応じて選択することができるが、好ましくは0.1〜100μm、更に好ましくは0.5〜50μmである。
本発明の多層フィルム又はシートには、ガスバリアー性樹脂の層(ガスバリアー層)を用いることもできる。ガスバリアー性樹脂としては、例えば厚み25μmのフィルムとした時に、23℃、相対湿度65%の条件下における酸素透過度が100cc/m2・24hr・atm以下、好ましくは50cc/m2・24hr・atm以下である樹脂が挙げられる。具体的には、塩化ビニリデン共重合体(PVDC)、エチレン/ビニルアルコール共重合体(EVOH)、メタキシリレンジアミンより生成されるポリアミドなどの芳香族ナイロン及び非晶質ナイロン、ポリアクリロニトリル等、アクリロニトリルを主成分とする共重合体を本発明の多層フィルム又はシートに使用可能なガスバリアー性樹脂として例示することができる。また塩化ビニリデン共重合体を主体とし、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらの不飽和酸のアルキルエステルとの共重合体、又はMBS樹脂の少なくとも1種の共重合体などの混合樹脂組成物、ケン化度が95モル%以上のエチレンとビニルアルコール共重合体を主体とし、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、エチレンと酢酸ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸エステル共重合体、ケン化度が95モル%未満のエチレンとビニルアルコール共重合体などとの混合樹脂組成物、前記芳香族ナイロンや非晶質ナイロンと脂肪族ナイロンなどとの混合樹脂組成物も挙げられる。また、特に柔軟性が必要な場合には、エチレン/ビニルアルコール共重合体系が好ましい。
ガスバリアー層とこれに隣接する層の接着性を向上させる必要がある場合には、接着性樹脂層をその間に介在させることも可能である。
ガスバリアー層の厚みは、包装する対象物や目的に応じて選択すればよく、特に制限はないが、一般には0.1〜500μm、好ましくは1〜100μm、特に好ましくは5〜50μmである。例えばポリ塩化ビニリデンと共押出する場合には、その層の厚みは熱安定性と耐低温性の点からフィルム全体の30%以下であるのが望ましい。例えば、本願の水添共重合体と塩化ビニリデンの二層からなる100μmのフィルムにおいては、塩化ビニリデン層の厚みが20μm程度であればよい。
ガスバリアー樹脂と多層化された本発明の多層フィルム又はシートは、本発明で規定する水添共重合体が有する特徴と共に、酸素バリアー性を併せ持つ優れた多層フィルム又はシートである。このような多層フィルム又はシートで食品や精密機器等を包装することで、内容物の劣化、腐敗、酸化等の品質の低下を低減する事が可能となる。このような多層フィルム又はシートを成形することで、酸素バリアー性を有する容器が得られる。
本発明の多層フィルムを熱収縮性フィルムとする場合には、40〜100℃の範囲内の特定の温度において、その熱収縮率が、縦、横少なくとも一方の値で、20〜200%であることが好ましい。20%未満では低温収縮性が不十分となり、シュリンク処理後に、シワやタルミが生じる原因となりやすく、一方200%を越えると保管中に収縮を生じて寸法が変化することもある。
本発明の多層フィルム又はシートを製造するためには、一般にインフレーションフィルム製造装置やTダイフィルム製造装置などを用いる共押出し法、押出しコーティング法(押出しラミネート法ともいう)などの成形方法を採用することができる。またこれらの装置を用いて得た多層又は単層フィルム又はシートを用いてドライラミネート法、サンドラミネート法、ホットメルトラミネーション法等の公知の技術で目的とする多層フィルム又はシートを製造することもできる。また、本発明の多層フィルムが熱収縮フィルムの場合、その製造方法に特に制限は無いが、公知の延伸フィルム製造方法等を用いることができる。例えば、Tダイ法、チューブラー法、インフレーション法等で押出したシート又はフィルムを、1軸延伸、2軸延伸、多軸延伸等の延伸法により得ることができる。1軸延伸の例としては、押出シートを押出方向と直交する方向にテンターで延伸する方法、押出チューブ状フィルムを円周方向に延伸する方法等を挙げることができる。2軸延伸の例としては、押出シートを、押出方向にロールで延伸した後、押出方向と直交する方向にテンター等で延伸する方法、押出チューブ状フィルムを、押出方向及び円周方向に同時又は別々に延伸する方法等が挙げられる。また、必要に応じて、ヒートセット、コロナ処理、プラズマ処理等の後処理を行っても良い。
さらに、本発明の多層フィルム又はシートは少なくともその一層が架橋されていてもよい。架橋処理としては、電子線、γ線、パーオキサイド等従来の公知の方法が用いられる。また、架橋処理後に積層を行ってもよい。
本発明の多層フィルム又はシートの具体的用途に特に限定はないが、包装用フィルム、バッグ、パウチ等に使用することができる。ストレッチ性を有する多層フィルムの場合は、特に食品包装用ストレッチフィルム、パレットストレッチフィルム、保護フィルム等に好適に使用することができる。バリアー性フィルムの場合は、食品、飲料、精密機器、医薬品等の包装用に使用することができる。熱収縮性フィルムの場合は、シュリンク包装、シュリンクラベル結束等に使用することができる。
(v)建築材料
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物は建築材料として使用することもできる。この場合、本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物に充填剤及び/又は難燃剤を配合することが好ましい。このような建築材料は、耐磨耗性、耐傷付き性、引張特性等の優れた特性を持ち、特に、床材、壁材、天井材、シーリング材として好適である。また、本発明の建築材料は、発泡体構造を有する成形品としても利用できる。
本発明の水添共重合体組成物を用いて建築材料を調製する場合には、前述の成分(a)と前述の成分(b)の配合割合は、成分(a)/成分(b)の重量比率で100/0〜5/95、好ましくは95/5〜10/90、更に好ましくは95/5〜20/80である。
本発明の建築材料に用いる充填剤としては、「発泡体」の項で例示した充填材(成分(j))を使用することができる。
本発明の建築材料に用いる難燃剤(以下、屡々、成分(l)と称する)としては、主として臭素含有化合物などのハロゲン系難燃剤、主として芳香族系リン含有化合物などのリン系難燃剤、主として金属水酸化物などの無機系難燃剤等が挙げられる。
ハロゲン系難燃剤としては、テトラブロモエタン、オクタブロモジフェニルオキサイド、デカブロモジフェニルオキサイド、ヘキサブロモシクロドデカン、トリブロモネオペンチルアルコール、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエタン、トリス(トリブロモフェノキシ)Sトリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモ・エチルベンゼン、ヘキサブロモ・ビフェニル、デカブロモジフェニル・オキシド、ペンタブロモクロロ・シクロヘキサン、テトラブロモビスフェノールAハロゲン化物、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールA・ビスフェノールAオリゴマー、テトラブロモビスフェノールS、トリス−(2,3−ジブロモプロピル−1−)イソシアヌレート、2,2−ビス−[4−(2,3−ジブロモプロポキシ)−3,5−ジブロモフェニル]−プロパン、ハロゲン化エポキシ樹脂、アンチモニー・シリコ・オキシド、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(モノクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(2−ブロモ−3−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモ・クレジル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ジエチル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスフェート、ハロゲン化燐酸エステル、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、パークロロシクロペンタデカノン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロム無水フタル酸、ジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモフェノール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、クロレント酸、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、無水クロレント酸、テトラクロロ無水フタル酸等を例示することができる。
しかし、本発明で用いる難燃剤としては、実質的にハロゲンを含まない難燃剤が好ましい。具体的には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、レゾルシノール−ビス−(ジフェニルホスフェート)、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスフェート、トリアリルホスフェート等及びその縮合体、リン酸アンモニウム及びその縮合体、ジエチルN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネート等のリン系難燃剤や、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硼酸亜鉛、硼酸バリウム、カオリン・クレー、炭酸カルシウム、明ばん石、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、ホスフェイト化合物、赤リン、グアニジン化合物、メラミン化合物、3酸化アンチモン、5酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、シリコーン樹脂、等が挙げられる。
近年環境問題等により、無機難燃剤が難燃剤の主流となっている。無機難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、硼酸亜鉛、硼酸バリウム等の金属酸化物、その他炭酸カルシウム、クレー、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等、主に含水金属化合物等を好適な無機難燃剤として例示することができる。本発明の建築材料においては、上記無機難燃剤のうち、難燃性向上の点から水酸化マグネシウム等の金属水酸化物が好ましい。なお、上記難燃剤の中には、それ自身の難燃性発現効果は低いが、他の難燃剤と併用することで相乗的により優れた効果を発揮する、いわゆる難燃助剤も含まれる。
本発明の建築材料に使用する充填剤及び難燃剤は、シランカップリング剤等であらかじめ表面処理を行ってから使用することもできる。
充填剤及び/又は難燃剤の添加量としては、水添共重合体又は水添共重合体組成物の重量に対して、5〜95重量%であり、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは20〜70重量%である。充填剤と難燃剤は必要に応じて2種以上を併用しても良い。2種以上の充填剤や2種以上の難燃剤を用いるか、充填剤と難燃剤を併用してもかまわない。充填剤と難燃剤を併用する場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
本発明の建築材料には、必要に応じて上記以外の任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に限定はない。例えば、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料や着色剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;有機ポリシロキサン;フタル酸エステル系やアジピン酸エステル化合物、アゼライン酸エステル化合物等の脂肪酸エステル系;ミネラルオイル等の可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤やこれらの混合物等が挙げられる。
本発明の建築材料は、必要に応じて架橋することができる。架橋方法としては、過酸化物、イオウ等の架橋剤及び必要に応じて共架橋剤等の添加による化学的方法、電子線や放射線等による物理的架橋法を例示することができる。架橋プロセスとしては、静的な方法と動的な方法のいずれを用いることもできる。更に、架橋剤としては、前述の成分(e)である有機過酸化物や成分(f)の加硫促進剤を使用することができ、また前述の成分(g)や成分(h)などを併用することができる。これらの加硫促進剤の使用量は、通常、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対し0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部である。
更に本発明の建築材料は発泡成形体に加工して使用することもできる。本発明の建築材料を発泡成形体とすることにより、軽量化、柔軟性向上、意匠性向上等を図ることができる。本発明の建築材料を発泡する方法には、無機系発泡剤、有機系発泡剤等の化学的発泡剤を用いる化学的方法や、物理発泡剤等を用いる物理的方法等があり、いずれも発泡剤の添加等により材料内部に気泡を分布させることができる。発泡剤としては、上記の「発泡体」の項で例示した発泡剤(成分(k))を使用することができる。発泡剤の配合量は、本発明の水添共重合体あるいは水添共重合体組成物100重量部に対して0.1〜8重量部、好ましくは0.3〜6重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
本発明の建築材料は、シートやフィルムなどの各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成型品、真空成形品、押出成形品等として活用できる。また、本発明の建築材料からなる成形品の外観性、耐摩耗性、耐候性、耐傷つき性等の向上を目的として、成形品の表面に印刷、塗装、シボ等の加飾等を行うことができる。
本発明の建築材料は、オレフィン系モノマーのみからなる樹脂に比べて優れた印刷性、塗装性を有するが、更に印刷性、塗装性等を向上させる目的で表面処理を行うこともできる。表面処理の方法に特に限定は無く、物理的方法、化学的方法等を使用することができ、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、火炎処理、酸・アルカリ処理等を挙げることができる。これらのうち、コロナ放電処理が実施の容易さ、コスト、連続処理が可能等の点から好ましい。
本発明の建築材料を床材、壁材、天井材等のように、フィルム、シート、タイル、ボード等の平面構造を有する成形品として用いる場合、単層構造と多層構造のいずれの構造にすることも可能である。他の形状の成形品についても、必要に応じて多層構造とすることができる。多層構造の場合には、組成、組成分布、分子量、分子量分布等の異なる本発明の水添共重合体や水添共重合体組成物、充填剤や難燃剤の種類や配合量の異なる本発明の建築材料、他の樹脂成分や材料等を各層に使用することができる。
本発明の建築材料の使用形態に特に制限はないが、床材、壁材や天井材として用いる場合には、コンクリート、金属、木材等の構造材料を被覆するための、最外層部分の被覆材料として使用することが可能である。本発明の建築材料を床材、壁材と天井材の製造に用いる際には、シート、フィルム、タイル、ボード等の形状で提供され、接着剤、粘着材、釘、ねじ等の手法により構造材等の基材に接合される。また本発明の建築材料は、シーリング材として、密閉性を向上させるためのガスケット等に用いることもできる。具体的な用途としては、一般住宅、オフィスビル、商業施設、公共施設等において、タイル等の床材、内壁材、天井内壁材、窓枠ガスケット等に用いることができる。
(vi)制振・防音材料
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物は制振・防音材料として用いることもできる。この場合、本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物に充填剤及び/又は難燃剤を配合することが好ましい。本発明の制振・防音材料は、柔軟性に富み、優れた制振性、防音性、耐磨耗性、耐傷付き性、強度等の特性を有する。
本発明の水添共重合体組成物を用いて制振・防音材料を調製する場合には、前述の成分(a)と前述の成分(b)の配合割合は、成分(a)/成分(b)の重量比率で100/0〜5/95、好ましくは95/5〜10/90、更に好ましくは95/5〜20/80である。
本発明の制振・防音材料に用いる充填剤としては、「発泡体」の項で例示した充填材(成分(j))を使用することができる。また、難燃剤としては、「建築材料」の項で例示した難燃剤(成分(l))を使用することができる。好ましい難燃剤も建築材料の場合と同様である。
本発明の制振・防音材料に使用する充填剤及び難燃剤は、シランカップリング剤等の表面処理剤であらかじめ表面処理を行ってから使用することもできる。
充填剤及び/又は難燃剤の添加量としては、水添共重合体又は水添共重合体組成物の5〜95重量%であり、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは20〜70重量%である。充填剤と難燃剤は必要に応じ2種以上を併用しても良い。2種以上の充填剤や2種以上の難燃剤を用いるか、充填剤と難燃剤を併用してもかまわない。充填剤と難燃剤を併用する場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
本発明の制振・防音材料には、必要に応じて上記以外の任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、前述の「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)などに記載された各種添加剤を使用することができる。
本発明の制振・防音材料は、必要に応じて架橋することができる。架橋方法としては、過酸化物、イオウ等の架橋剤及び必要に応じて共架橋剤等の添加による化学的方法、電子線や放射線等による物理的架橋法を例示することができる。架橋プロセスとしては、静的な方法と動的な方法のいずれを用いることもできる。更に、架橋剤としては、前述の成分(e)である有機過酸化物や成分(f)の加硫促進剤を使用することができ、また前述の成分(g)や成分(h)などを併用することができる。これらの加硫促進剤の使用量は、通常、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対し0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部である。
更に本発明の制振・防音材料は発泡成形体に加工して使用することもできる。本発明の制振・防音材料を発泡成形体とすることにより、軽量化、柔軟性向上、意匠性向上等を図ることができる。本発明の制振・防音材料を発泡させる方法には、無機系発泡剤、有機系発泡剤等の化学的発泡剤を用いる化学的方法や、物理発泡剤等を用いる物理的方法等があり、いずれも発泡剤の添加等により材料内部に気泡を分布させることができる。発泡剤としては、上記の「発泡体」の項で例示した発泡剤(成分(k))を使用することができる。発泡剤の配合量は、本発明の水添共重合体あるいは水添共重合体組成物100重量部に対して0.1〜8重量部、好ましくは0.3〜6重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
本発明の制振・防音材料は、シート、フィルムなどの各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成型品、真空成形品、押出成形品等として活用できる。また、本発明の制振・防音材料からなる成形品の外観性、耐摩耗性、耐候性、耐傷つき性等の向上を目的として、成形品の表面に印刷、塗装、シボ等の加飾等を行うことができる。
本発明の制振・防音材料は、オレフィン系モノマーのみからなる樹脂に比べて優れた印刷性、塗装性を有するが、更に印刷性、塗装性等を向上させる目的で表面処理を行うこともできる。表面処理の方法に特に限定は無く、物理的方法、化学的方法等を使用することができ、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、火炎処理、酸・アルカリ処理等を挙げることができる。これらのうち、コロナ放電処理が実施の容易さ、コスト、連続処理が可能等の点から好ましい。
本発明の制振・防音材料を床材、壁材、天井材等のように、フィルム、シート、タイル、ボード等の平面構造を有する成形品の製造に用いる場合、単層構造と多層構造の何れの構造にすることも可能である。他の形状の成形品についても、必要に応じて多層構造とすることができる。多層構造の場合には、組成、組成分布、分子量、分子量分布等の異なる本発明の水添共重合体や水添共重合体組成物、充填剤、難燃剤の種類や配合量の異なる本発明の制振・防音材料、他の樹脂成分や材料等を各層に使用することができる。互いに異なる複数の共重合体を積層することにより、広い温度範囲での制振、防音性能を発揮することができる。
(vii)電線被覆材料
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物は電線被覆材料として用いることもできる。この場合、本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物に充填剤及び/又は難燃剤を配合することが好ましい。本発明の電線被覆材料は電気絶縁性、可とう性、皮むき性に優れるので、電線、電力ケーブル、通信ケーブル、送電用ケーブルなどの被覆用材料として好適である。
本発明の水添共重合体組成物を用いて電線被覆材料を調製する場合には、前述の成分(a)と前述の成分(b)の配合割合は、成分(a)/成分(b)の重量比率で100/0〜5/95、好ましくは95/5〜10/90、更に好ましくは95/5〜20/80である。
本発明の電線被覆材料に用いる充填剤としては、「発泡体」の項で例示した充填材(成分(j))を使用することができる。また、難燃剤としては、「建築材料」の項で例示した難燃剤(成分(l))を使用することができる。好ましい難燃剤も建築材料と同様である。
本発明の電線被覆材料に使用する充填剤及び難燃剤は、シランカップリング剤等であらかじめ表面処理を行ってから使用することもできる。
充填剤及び/又は難燃剤の添加量としては、水添共重合体又は水添共重合体組成物の5〜95重量%であり、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは20〜70重量%である。充填剤と難燃剤は必要に応じ2種以上を併用しても良い。2種以上の充填剤や2種以上の難燃剤を用いるか、充填剤と難燃剤を併用してもかまわない。充填剤と難燃剤を併用する場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
本発明の電線被覆材料には、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、前述の「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)などに記載された各種添加剤が使用できる。
本発明の電線被覆材料は、必要に応じて架橋することができる。架橋した電線被覆材料は、架橋する前のものに比べて、繰返しインパルスによる絶縁破壊電圧の低下がさらに改良され、しかも絶縁破壊が生じるまでの繰返しインパルスの印加回数がさらに延長される。架橋方法としては、過酸化物、イオウ等の架橋剤及び必要に応じて共架橋剤等の添加による化学的方法、電子線や放射線等による物理的架橋法を例示することができる。架橋プロセスとしては、静的な方法、動的な方法のいずれを用いることもできる。更に、架橋剤としては、前述の成分(e)である有機過酸化物や成分(f)の加硫促進剤を使用することができ、また前述の成分(g)や成分(h)などを併用することができる。これらの加硫促進剤の使用量は、通常、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対し0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜15重量部である。
更に本発明の電線被覆材料は発泡成形体に加工して使用することもできる。本発明の電線被覆材料を発泡成形体とすることにより、軽量化、柔軟性向上、意匠性向上等を図ることができる。本発明の電線被覆材料を発泡させる方法には、無機系発泡剤、有機系発泡剤等の化学的発泡剤を用いる化学的方法や、物理発泡剤等を用いる物理的方法等があり、いずれも発泡剤の添加等により材料内部に気泡を分布させることができる。発泡剤としては、上記の「発泡体」の項で例示した発泡剤(成分(k))を使用することができる。発泡剤の配合量は、本発明の水添共重合体あるいは水添共重合体組成物100重量部に対して0.1〜8重量部、好ましくは0.3〜6重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
(viii)高周波融着性組成物
本発明の水添共重合体を用いて、以下のα又はβの組成を有する高周波融着性組成物を調製することができる。
α)本発明の水添共重合体100重量部、並びに
エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及び分子鎖中に水酸基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の成分(以下、屡々、成分(m)と称する)1〜50重量部、又は
β)本発明の水添共重合体100重量部、成分(m)1〜50重量部、並びに上記成分(m)とは異なる熱可塑性樹脂及びゴム状重合体から選ばれる少なくとも1種の成分5〜150重量部。
高周波融着性組成物とは、高周波又はマイクロ波による融着が可能な組成物、即ち、高周波融着成形可能な組成物である。
本発明の高周波融着性組成物に用いるエチレン−アクリル酸エステル共重合体は、最終的な組成物の柔軟性やシール性、特に高周波ウェルダー適性、押出し加工性などの点でアクリレート含有率が5重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは5〜20重量%である。エチレン−アクリル酸エステル共重合体に用いるアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられるが、最も好ましいのはエチルアクリレートである。
本発明の高周波融着性組成物に用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、最終的な組成物の柔軟性やシール性、特に高周波ウェルダー適性、押出し加工性などの点で、酢酸ビニル含有率が5重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは5〜20重量%である。
また、分子鎖中に水酸基を有する化合物としては、多価アルコール化合物、フェノール化合物、ビニルアルコール系樹脂、エポキシ基含有化合物、両末端水酸基含有樹脂及び水酸基グラフトポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
多価アルコール化合物とは、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物であり、具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、無水エンネアヘプチトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンチトール類(リビトール、アラビニトール、D−アラビニトール、L−アラビニトール、D,L−アラビニトール、キシリトール等)、ヘキシトール類(アリトール、ダルシトール、ガラクチトール、グルシトール、D−グルシトール、L−グルシトール、D,L−グルシトール、D−マンニトール、L−マンニトール、D,L−マンニトール、アルトリトール、D−アルトリトール、L−アルトリトール、D,L−アルトリトール、イジトール、D−イジトール、L−イジトール等)、テトリトール類(エリトリトール、スレイトール、D−スレイトール、L−スレイトール、D,L−スレイトール)、マルチトール、ラクチトール等を例示することができる。これらの中でも、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール類、グリセリン、トリメチロールプロパンが特に好ましい。
フェノール化合物とは、分子内に1個又は2個以上の水酸基を有する芳香族化合物であり、その具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、3,5−キシレノール、カルバクロール、チモール、α−ナフトール、β−ナフトール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ジメチロールフェノール、ピロガロール、フロログルシン等を例示することができる。これらの中でも、カテコール、ジメチロールフェノールなどの2価フェノール又はピロガロールなどの3価フェノールが好ましい。
ビニルアルコール系樹脂とは、酢酸ビニル樹脂を苛性ソーダ、苛性カリなどを用いて鹸化反応に付して得られるポリビニルアルコール樹脂(PVA)又はエチレン、プロピレンに代表されるα−オレフィンと酢酸ビニル共重合体を鹸化反応に付して得られるα−オレフィン−酢酸ビニル共重合体鹸化物樹脂が挙げられる。通常、重合が容易なことから、α−オレフィン成分としてエチレンが用いられており、エチレン−酢酸ビニル樹脂をポリビニルアルコール樹脂と同様に鹸化反応に付して得られるエチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)がよく知られている。上記したPVAに関しては、多くのものが市販されており、これらを使用することができる。市販品の例としては、日本国、(株)クラレの「ポバール」(商品名)や、日本国、日本合成化学(株)の「ゴーセノール」(商品名)が挙げられる。また、EVOHとしては、エチレン含有量が15〜90モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を鹸化して得られる鹸化度が30〜100%の重合体が好ましい。これに相当する市販品の例としては、日本国、(株)クラレの「エバール」(商品名)や日本国、日本合成化学(株)の「ソアノール」(商品名)などが挙げられる。
両端水酸基含有樹脂とは、ポリブタジエン、ポリイソプレン及び石油樹脂等の両末端にヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基を含む炭化水素化物である。その分子量は、10,000以下、好ましくは5,000以下のものが好適である。両端水酸基含有樹脂についても、市販されているものが使用できる。市販品の例としては、日本国、三菱化成(株)製の「ポリテールH」(商品名)や、日本国、出光石油化学(株)製の「エポール」(商品名)等が挙げられる。
水酸基グラフトポリオレフィン系樹脂とは、ポリプロピレンなどのポリオレフィンに有機過酸化物などを使用して水酸基をグラフトさせたグラフト変性ポリオレフィンであり、日本国、三洋化成(株)製の「ユーメックス」(商品名)が市販されている。
上記の成分(m)は、単独で使用しても良く、また、2種類以上の混合物として使用してもよい。
本発明の高周波融着性組成物には、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、前述の「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)などに記載された各種添加剤が使用できる。
本発明の高周波融着性組成物は柔軟性、耐磨耗性、耐傷付き性に優れ、かつ高周波又はマイクロ波による融着が可能である。このような高周波融着性組成物は、そのままでも、或いは各種添加剤を配合した後でも、シート、フィルム、不織布や繊維状の成形品などの各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成型品、真空成形品、押出成形品に活用することもできる。これらの成形品は、食品包装材料、医療用器具材料、家電製品及びその部品、自動車部品・工業部品・家庭用品・玩具等の素材、履物用素材などの用途分野において、基材に高周波融着させて利用できる。
(ix)スラッシュ成形材料
本発明の水添共重合体をスラッシュ成形材料として用いることができる。具体的には、インストルメントパネルなどの自動車内装用の表皮などの表皮材の材料に適した加工性、耐傷つき性を有するスラッシュ成形材料、該スラッシュ成形材料からなるスラッシュ成形用パウダー、及びそれらからなる表皮材を提供する。
本発明のスラッシュ成形材料としては、本発明の水添共重合体(a)と熱可塑性樹脂(b)及び/又はゴム状重合体(b)を含有する水添共重合体組成物を用いる。水添共重合体組成物における成分(b)の配合量は、成分(a)/成分(b)の重量比で、50〜97/50〜3、好ましくは70〜95/30〜5、更に好ましくは80〜90/20〜10である。
本発明のスラッシュ成形材料には、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、前述の「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)などに記載された各種添加剤が使用できる。
本発明のスラッシュ成形材料は、成形加工性の維持及び優れた耐熱性を発揮させるために、成分(a)と成分(b)から構成される水添共重合体組成物を有機過酸化物等の架橋剤を用いて架橋するのが好ましい。この架橋体のゲル分率は、50〜98%であることが好ましく、70〜95%の範囲であることが更に好ましい。ここでゲル分率は、例えば架橋した水添共重合体組成物5mg(W1とする)を試料瓶に入れて、その中にトルエン50mlを加えアルミブロックバスを用いて120℃にて12時間抽出を行い、その後、ステンレス金網でろ過して金網上の未溶解分を105℃にて5時間乾燥して秤量し(W2とする)、次式に従い求めた値である。
ゲル分率=(W2/W1)×100。
架橋剤は、水添共重合体組成物に架橋構造を導入させて耐熱性を付与する目的で使用されるものであり、前述の成分(e)の有機過酸化物、成分(f)の加硫促進剤を使用することができ、また前述の成分(g)や成分(h)などを併用することができる。有機過酸化物等の架橋剤の使用量は、通常、水添共重合体組成物100重量部に対し、0.1〜7重量部、好ましくは0.5〜5重量部であり、架橋助剤の使用量は、水添共重合体組成物100重量部に対し、通常0.03〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部である。
架橋構造を導入するには、例えば、水添共重合体組成物と有機過酸化物等の架橋剤と、さらに必要に応じて、架橋助剤とをドライブレンドしたのち、加圧ニーダーを用いて120〜230℃で溶融混練する方法や、2軸押出機で連続的に溶融混練する方法などが挙げられる。
本発明のスラッシュ成形材料は、平均粒径が50〜500μm、好ましくは60〜450μmのパウダーとすることが望ましい。このようなパウダーは、本発明のスラッシュ成形材料をターボミル、ピンミル、ハンマーミルなどの粉砕機を用いて微粉砕して得ることができる。この際、通常では常温粉砕であるが、冷媒や冷却設備を使用して−60℃以下の温度に冷却して機械粉砕することもできる。平均粒径が50〜500μmのパウダーとすることにより、パウダー流動性が向上し、このようなパウダーを成形すると、ピンホールが無く、表面の平滑な成形品が得られる。パウダーの平均粒径が50μm未満では、パウダーの流動性が悪く、また、それを成形して得られる成形品の表面外観が劣る。一方、パウダーの平均粒径が500μmを超えると、溶融成形性に劣り、ピンホールの発生が生じる傾向がある。
本発明においては、スラッシュ成形材料を、例えば、圧縮成形、ロール成形、押出成形、射出成形などの各種成形加工法に供するか、又はスラッシュ成形材料を粉砕して得られたパウダーを、パウダースラッシュ成形に供することにより表皮材を製造することができる。
パウダースラッシュ成形について、図2(a)〜2(d)に参照しながら具体的に説明する。スラッシュパウダー成形材料のパウダーを、一軸回転ハンドル1の付いた一軸回転パウダースラッシュ成形装置に取り付けたステンレス製角形容器3(以下「パウダー供給ボックス3」という)に投入する。次いで、このパウダー供給ボックス3の上部に、予め180〜300℃、好ましくは200〜280℃に加熱した、アンダーカット部(金型の開閉方向に対して引っかかりとなる部分)を有する電鋳金型4をクランプで取り付ける(図2(d)参照)。成形装置の回転軸2に軸支された一軸回転ハンドル1を回転させて、パウダー供給ボックス3と電鋳金型4を同時に左右に各5回転づつ回転を繰り返す。その後、電鋳金型4を木ハンマーなどで数回たたき、過剰のパウダー5を払い落とす。パウダー供給ボックス3から電鋳金型4を外し、250〜450℃、好ましくは300〜430℃の加熱炉中で5〜60秒、好ましくは10〜30秒間加熱することで、水添共重合体組成物を溶融する。次に金型を水冷し、金型より成形品を取り出す。
本発明のスラッシュ成形材料及びスラッシュ成形材料からなるスラッシュ成形用パウダーを用いて得られる表皮材は、自動車内装材であるインストルメントパネル、天井、ドア、座席シート、ピラー、ステアリングホイール、取っ手など、家具、雑貨、家屋の内張りなどの表皮材として有用である。
(x)粘接着性組成物
本発明の水添共重合体及び水添共重合体組成物に粘着付与剤(以下、屡々、成分(n)と称する)を配合し、粘接着性組成物を調製することができる。このような粘接着性組成物は粘着力等の粘着特性のバランス性能や高温加熱下における溶融粘度安定性に優れるので、例えば、粘着性テープ、粘着性シート又はフィルム、粘着性ラベル表面保護シート又はフィルムの粘着層や、接着剤に活用することができる。
本発明の水添共重合体組成物を用いて粘着性組成物を調製する場合には、水添共重合体組成物における成分(a)と成分(b)の配合割合は、成分(a)/成分(b)の重量比で50/50〜97/3、好ましくは60/40〜95/5、更に好ましくは70/30〜90/10である。
粘接着性組成物に用いる粘着付与剤に特に限定はなく、ポリテルペン系樹脂、水添ロジン系テルペン系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂などの公知の粘着付与性樹脂を用いることができる。これらの粘着付与剤は2種類以上混合して使用して良い。粘着付与剤の具体例としては、「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)に記載されたもの、例えば、ポリテルペン系樹脂であるクリアロンP105やP125、脂肪族系環状炭化水素樹脂であるアルコンP−90やP−115等が使用できる。粘着付与剤の使用量としては、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対して20〜400重量部、好ましくは50〜350重量部の範囲である。その使用量が20重量部未満では、粘接着性組成物の粘着性を付与しにくく、また、400重量部を超えると粘接着性組成物の軟化点の低下を起こし、いずれの場合も粘接着性特性を損ねる傾向を生じる。
また、粘接着性組成物には、公知のナフテン系、パラフィン系のプロセスオイル及びこれらの混合オイルを軟化剤として添加してもよい。具体的な軟化剤としては、補強性充填剤配合物の項で例示したゴム用軟化剤(成分(i))が挙げられる。軟化剤を添加することにより、粘接着性組成物の粘度が低下するので加工性が向上するとともに、粘着性が向上する。軟化剤の使用量は、水添共重合体又は水添共重合体組成物100重量部に対して好ましくは0〜200重量部、更に好ましくは0〜150重量部である。200重量部を超えると粘接着性組成物の保持力を著しく損ねる傾向がある。
更に、粘接着性組成物においては、必要に応じて前述の「ゴム・プラスチック配合薬品」(日本国ラバーダイジェスト社編)に記載された酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤を添加することもできる。更に、上記の安定剤以外には、ベンガラ、二酸化チタンなどの顔料;パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、低分子量ポリエチレンワックスなどのワックス類;無定形ポリオレフィン、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂;天然ゴム;ポリイソプレンゴム、ポリプタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレン−イソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム、及びスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体及びこれらの水添ブロック共重合体などの合成ゴムを粘接着性組成物に添加しても良い。
粘接着性組成物の製造方法に特に限定はなく、公知の混合機、ニーダーなどを用いて加熱下で均一混合する方法で調製することができる。
粘接着性組成物は、良好な溶融粘度、粘着力を示し、また溶融粘度変化率も小さく、粘接着特性において優れたバランス性能を有する。これらの特徴を生かして各種粘着テープ・ラベル類、感圧性薄板、感圧性シート、表面保護シート・フィルム、各種軽量プラスチック成型品固定用裏糊、カーペット固定用裏糊、タイル固定用裏糊、接着剤などに利用でき、特に粘着性テープ用、粘着性シート・フィルム用、粘着性ラベル用、表面保護シート・フィルム用、接着剤用として有用である。
(ix)アスファルト組成物
本発明の水添共重合体にアスファルト(以下、屡々、成分(o)と称する)を配合することにより、アスファルト組成物を調製することができる。このようなアスファルト組成物は、伸度、高温貯蔵安定性等のアスファルト特性のバランスが良好であり、このような特性を生かして、例えば、道路舗装用アスファルト組成物、ルーフィング・防水シート用アスファルト組成物及びシーラント用アスファルト組成物として活用することができる。
アスファルト組成物に用いるアスファルトは、石油を精製した際の副産物(石油アスファルト)や、天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの、もしくはこれらと石油類を混合したものなどが挙げられ、その主成分は瀝青(ビチューメン)と呼ばれるものである。具体的には、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、タール、ピッチ、オイルを添加したカットバックアスファルト、アスファルト乳剤などを使用することができる。これらは2種以上を混合して使用しても良い。
アスファルト組成物に用いる好ましいアスファルトは、JIS K2207に準じて測定した針入度が30〜300、好ましくは40〜200、更に好ましくは45〜150のストレートアスファルトである。アスファルト組成物に含まれる本発明の水添共重合体の量は、アスファルト100重量部に対して0.5〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは3〜20重量部である。
アスファルト組成物には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラス繊維、ガラスビーズ等の無機充填剤;有機繊維、クマロンインデン樹脂等の有機補強剤;有機パーオキサイド、無機パーオキサイド等の架橋剤;チタン白、カーボンブラック、酸化鉄等の顔料;染料;難燃剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;滑剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤;可塑剤;クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂などの粘着付与樹脂などを添加剤として加えてもよい。
また、アタクチックポリプロピレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのポリオレフィン系樹脂、低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレン−イソブチレンゴム、及び本発明の水添共重合体以外のスチレン−ブタジエン系ブロック共重合体又はその水添物、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体又はその水添物等の合成ゴム、イオウ等の加硫剤、加硫助剤、その他の増量剤あるいはこれらの混合物も添加剤として用いることができる。特に、アスファルト組成物を道路舗装用として用いる場合には、通常、鉱物質の砕石、砂、スラグなどの骨材と混合して使用する。
本発明の水添共重合体及び水添共重合体組成物は、上記のように様々な用途に使用できるが、成形品として使用する場合、成形方法としては、押出成形、射出成形、中空成形、圧空成形、真空成形、発泡成形、複層押出成形、複層射出成形、高周波融着成形、及びスラッシュ成形などを用いることができる。成形品の例としては、シート、フィルム、チューブや、不織布や繊維状の成形品、合成皮革等が挙げられる。本発明の水添共重合体及び水添共重合体組成物からなる成形品は、食品包装材料、医療用器具材料、家電製品及びその部品、電子デバイス及びその部品、自動車部品、工業部品、家庭用品、玩具等の素材、履物用素材、繊維素材、粘・接着剤用素材、アスファルト改質剤などに利用できる。自動車部品の具体例としては、サイドモール、グロメット、ノブ、ウェザーストリップ、窓枠とそのシーリング材、アームレスト、ドアグリップ、ハンドルグリップ、コンソールボックス、ベッドレスト、インストルメントパネル、バンパー、スポイラー、エアバック装置の収納カバー等が挙げられる。医療用具の具体例としては、血液バッグ、血小板保存バック、輸液(薬液)バック、人工透析用バック、医療用チューブ、カテーテル等が挙げられる。その他、粘接着テープ・シート・フィルム基材、表面保護フィルム基材及び該フィルム用粘接着剤、カーペット用粘接着剤、ストレッチ包装用フィルム、熱収縮性フィルム、被覆鋼管用被覆材、シーラントなどに用いることができる。
上記の各種用途に適応した組成物に関する説明においても成形品について述べているが、次に、複層押出成形品及び複層射出成形品を例に、本発明の成形品について具体的に説明する。
複層押出成形品
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物を用いた複層押出成形品は、本発明の水添共重合体、水添共重合体組成物又は上記した本発明の他の組成物(例えば、補強性充填剤配合物、架橋物や建築材料)を熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体と共押出することにより製造した複層シートを熱成形した複層押出成形品である。また、上記の多層フィルム・シートを熱成形したものも複層押出成形品である。
共押出法は1つのダイを共有する2台以上の押出機を使用し、1台以上の押出機に本発明の水添共重合体、水添共重合体組成物又は本発明の他の組成物を投入し、他方の1台以上の押出機に熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体を投入して複層シートを製造する。この複層シートを熱成形、例えば真空成形、圧空成形して複層押出成形品を得る。共押出用ダイとしてはマルチマニホールドダイ、コンバイニング、アダプターダイ、マルチスロットダイなどが使用される。マルチマニホールドダイ等を使用して複層中空成形品、多層チューブ状成形品を得ることもできる。
本発明の複層押出成形品において、使用する熱可塑性樹脂及びゴム状重合体としては、本発明の水添共重合体組成物に用いる成分(b)として例示したものを使用することができる。
本発明の複層押出成形品は、自動車の内外装部品、家具部品、家電・OA機器関連部品、食品包装材料・容器、医療用材料などに利用できる。特に、多層チューブ状成形品は、医療用チューブ(例えば血液回路チューブ、点滴用輸液チューブ、カテーテルなど)、ガーデンホース類などの家庭用ホース、チューブ、自動販売機用チューブなどに利用できる。
複層射出成形品
本発明の水添共重合体又は水添共重合体組成物を用いた複層射出成形品は、本発明の水添共重合体、水添共重合体組成物又は上記した本発明の他の組成物(例えば、補強性充填剤配合物、架橋物や建築材料)を熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体と二色射出成形法や複層インサート射出成形法にて成形した複層射出成形品である。
複層射出成形は2台以上の射出成形機を使用し、1台以上の射出成形機に本発明の水添共重合体、水添共重合体組成物又は上記した本発明の他の組成物を投入し、他方の1台以上の射出成形機に熱可塑性樹脂及び/又はゴム状重合体を投入して、最初に後者を一部分成形しておく。次にこれを前者を射出成形する金型にインサートして、残りの部分へ前者を射出成形して一体化させる。
本発明の複層射出成形品を成形するには、二色射出成形機とインサート射出成形機を単独又は組み合わせて使用することができる。二色射出成形機としては、一般的なコアバック方式金型を装着したものや、DC型機と呼ばれる金型が180度回転するタイプのものが好ましい。インサート射出成形機としては、堅型のシステム成形機、つまり自動インサート装置、製品取出し装置を備えた、前処理、後加工も含めた複合自動成形機等が好ましい。
本発明の複層射出成形品において、使用する熱可塑性樹脂及びゴム状重合体としては、本発明の水添共重合体組成物に用いる成分(b)として例示したものを使用することができる。
また、本発明においては、金属部品と組み合わせた複層射出成形品を得ることもできる。本発明の複層射出成形品に用いる金属部品の材質や形状には特に制限はない。代表的なものは鉄、ステンレス、銅、真ちゅう、ニッケル等でできた部品、例えばボルト、金属芯等が含まれる。
本発明の複層射出成形品は相互の密着性が良く、自動車の内外装部品、家具部品、家電・OA機器関連部品などに幅広く利用できる。
発明を実施するための最良の形態
以下、参考例、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
I.水添共重合体
実施例1〜6及び比較例1〜8においては、非水添共重合体を製造し、それを水添して水添共重合体を得た。
非水添共重合体又は水添共重合体に関する特性や物性は、以下の方法で測定した。
I−1)スチレン含有量
非水添共重合体及び非水添重合体のスチレン含有量は、紫外分光光度計(装置名:UV−2450;日本国、島津製作所製)を用いて測定した。
I−2)ポリスチレンブロック(H)含有量(Os値)
非水添共重合体のポリスチレンブロック(H)含有量は、I.M.Kolthoff,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の四酸化オスミウム分解法で測定した。非水添共重合体の分解にはオスミウム酸溶液の0.1g/125ml第3級ブタノール溶液を用いた。(尚、ここで得られるポリスチレンブロック含有量を「Os値」と称する。)
水添共重合体のポリスチレンブロック(H)含量を測定する場合は、核磁気共鳴装置(装置名:JMN−270WB;日本国、日本電子社製)を使用して、Y.Tanaka,et al.,RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54,685(1981)に記載の方法に準じて測定した。具体的には、水添共重合体の30mgを1gの重クロロホルムに溶解したものを試料とし、1H−NMRを測定した。NMRによって得られる水添共重合体のポリスチレンブロック含有量(Ns値)を全積算値に対する化学シフト6.9〜6.3ppmの積算値の比率から求め、その後、Ns値をOs値に換算した。
計算方法を下記に示す。
・ブロックスチレン(St)強度:
(6.9〜6.3ppm)積算値/2
・ランダムスチレン(St)強度:
(7.5〜6.9ppm)積算値−3(ブロックSt強度)
・エチレン・ブチレン(EB)強度:
全積算値−3{(ブロックSt強度)+(ランダムSt強度)}/8
・NMRで得られるポリスチレンブロック含有量(Ns値)
=104(ブロックSt強度)/[104{(ブロックSt強度)+
(ランダムSt強度)}+56(EB強度)]
・Os値=−0.012(Ns)2+1.8(Ns)−13.0
I−3)非水添共重合体及び非水添重合体のビニル結合量
赤外分光光度計(装置名:FT/IR−230;日本国、日本分光社製)を用い、共重合体の場合はハンプトン法により算出し、単独重合体の場合はモレロ法によって算出した。
I−4)共役ジエン単量単位の二重結合の水添率
水添率は核磁気共鳴装置(装置名:DPX−400;ドイツ国、BRUKER社製)を用いて測定した。
I−5)重量平均分子量及び分子量分布
水添共重合体及び水添重合体の分子量及び分子量分布は、GPC装置(米国、ウォーターズ製)を用いて測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、35℃で測定した。市販の標準ポリスチレンを用いて作製した検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を測定して作成)を使用し、クロマトグラムのピークの分子量から重量平均分子量を求めた。また、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である。
I−6)結晶化ピーク及び結晶化ピーク熱量
水添共重合体の結晶化ピーク及び結晶化ピーク熱量はDSC(装置名:DSC3200S;日本国、マックサイエンス社製)で測定した。室温から30℃/分の昇温速度で150℃まで昇温し、その後10℃/分の降温速度で−100℃まで降温して結晶化カーブを測定して結晶化ピークの有無を確認した。また、結晶化ピークがある場合、そのピークが現れる温度を結晶化ピーク温度とし、結晶化ピーク熱量を測定した。
I−7)ダンロップ反発弾性率
ダンロップ反発弾性率は、BS 903のダンロップ反発弾性試験に準拠して、23℃で測定した。
I−8)耐傷付き性(鉛筆引っかき試験)
JIS K5400の鉛筆引っかき試験に準拠して、耐傷付き性を測定した。硬度HBの鉛筆を使用し、温度が23℃、荷重が200gの条件下で水添共重合体からなる試料を引っかいた。引っかいた後の状態について、以下の基準に基づき目視で判定した。
I−9)水添共重合体の耐ブロッキング性
耐ブロッキング性は、以下の方法で測定した。直径5cmの金属円筒に、水添共重合体からなる、同じ形状(直径約3mm×3mmの円筒状)のサンプルペレット60gを入れ、その上から1160gの重りをのせた。この状態で、42℃に加温したギヤオーブン中で20時間加温した後、円筒の中のペレットの付着状態を観察した。具体的には、円筒から取り出したペレットの塊は崩れるので(但し、耐ブロッキング性の悪いものは塊のまま崩れない)、3粒以上のペレットからなる塊の重量を測定し、ペレットの総重量(60g)に対するペレットの塊の重さの比(%)を求めた。耐ブロッキング性の良否は、下記の基準に基づき評価した。尚、各サンプルペレットには、1500ppm相当のステアリン酸カルシウムを添加した上で評価を行った。
I−10)100%モジュラス
100%モジュラスを柔軟性の指標とした。JIS K6251に準拠して、水添共重合体の圧縮試験片の引張特性を測定し、100%延伸時の応力(以下、100%モジュラスと呼ぶ)を計測した。100%モジュラスは小さいほど柔軟性が良好であり、120kg/cm2以下が好ましい。
I−11)耐打痕性
水添共重合体からなる、厚さ2mmの圧縮試験片(シート)に対し、先端が長さ10mm、幅1mmの長方形で、重さが500gのくさびを高さ10cmから落下した。表面粗さ形状測定器(日本国、(株)東京精密社製)を用い、レーザー光で走査してシート上の傷の深さ(単位μm)を測定した。傷深さが40μm以下のものは耐打痕性が非常に良好である。
参考例1
<水添触媒の調整>
以下の実施例及び比較例において、非水添共重合体及び非水添重合体の水添反応に用いた水添触媒は下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加した。反応容器内の混合物を十分に攪拌しながら、そこに200ミリモルのトリメチルアルミニウムを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ、チタンを含む水添触媒を得た。
実施例1
内容積が10リットルの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を2基使用し、非水添共重合体の連続重合を以下の方法で行った。
ブタジエン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を4.51リットル/hr、スチレン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を5.97リットル/hr、モノマー(ブタジエンとスチレン合計)100重量部に対するn−ブチルリチウムの量が0.077重量部となるような濃度に調整したn−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液を2.0リットル/hrで1基目の反応器の底部にそれぞれ供給し、更にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの量がn−ブチルリチウム1モルに対して0.44モルとなる供給速度でN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのシクロヘキサン溶液を供給し、90℃で連続重合した。反応温度はジャケット温度で調整し、反応器の底部付近の温度は約88℃、反応器の上部付近の温度は約90℃であった。重合反応器における平均滞留時間は約45分であり、ブタジエンの転化率は、ほぼ100%、スチレンの転化率は99%であった。
1基目から出たポリマー溶液を2基目の底部へ供給し、それと同時に、スチレン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を2.38リットル/hrの供給速度で2基目の底部に供給し、90℃で連続重合して共重合体(非水添共重合体)を得た。2基目の出口におけるスチレンの転化率は98%であった。
連続重合で得られた非水添共重合体を分析したところ、スチレン含有量は67重量%、ポリスチレンブロック(H)含有量が20重量%、ブタジエン部のビニル結合量は14重量%であった。
次に、連続重合で得られた非水添共重合体に、上記水添触媒を非水添共重合体100重量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100重量部に対して0.3重量部添加し、水添共重合体(ポリマー1)を得た。
ポリマー1の水添率は99%、重量平均分子量は20万、分子量分布は1.9であった。また、NMR法で測定したポリマー1のNs値は21重量%であり、Ns値から求めたポリスチレンブロック含有量(Os値)は20重量%だった。さらに、上記と同じNMR法でスチレン含有量を計算したところ、67重量%だった。また、DSC測定の結果、結晶化ピークは無かった。ポリマー1の特性を表1に示した。
実施例2
1基目に供給するブタジエン溶液の供給量を3.38リットル/hr、スチレン溶液の供給量を6.87リットル/hrに変更し、2基目に供給するスチレン溶液の供給量を2.95リットル/hrに変える以外は、実施例1と同様の方法で連続重合を行い、非水添共重合体を得た。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー2)を得た。ポリマー2の特性を表1に示した。
実施例3
n−ブチルリチウムの供給量をモノマー100重量部に対して0.067重量部となる濃度に変える以外は、実施例1と同様の方法で連続重合を行い、非水添共重合体を得た。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー3)を得た。ポリマー3の特性を表1に示した。
比較例1
1基目に供給するスチレン溶液の供給量を2.06リットル/hrに変更し、2基目に供給するスチレン溶液の供給量を1.37リットル/hrに変える以外は、実施例1と同様の方法で連続重合を行い、非水添共重合体を得た。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー4)を得た。ポリマー4の特性を表1に示した。
比較例2
市販のスチレン−ブタジエンランダム共重合体(商品名:アサプレン6500;日本国、日本エラストマー(株)製)をベースポリマーとして用い、実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー5)を得た。ポリマー5の特性を表1に示した。尚、ポリマー5に関しては、35℃に4.7J/gの熱量を有する結晶化ピークが認められた。
比較例3
1基目に供給するブタジエン溶液の供給量を1リットル/hr、スチレン溶液の供給量を10リットル/hrに変更し、2基目に供給するスチレン溶液の供給量を1リットル/hrに変える以外は、実施例1と同様の方法で連続重合を行い、非水添共重合体を得た。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー6)を得た。ポリマー6の特性を表1に示した。
比較例4
n−ブチルリチウムの供給量をモノマー100重量部に対して0.2重量部となるような濃度に変える以外は、実施例1と同様の方法で連続重合を行い、非水添共重合体を得た。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー7)を得た。ポリマー7の特性を表1に示した。
比較例5
水素添加率を80%に調整する以外は実施例1と同様の方法で水添共重合体(ポリマー8)を得た。ポリマー8の特性を表1に示した。
実施例4
内容積が10リットルの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を1基使用し、非水添共重合体の連続重合を以下の方法で行った。
モノマーとしてブタジエンとスチレンを含有するシクロヘキサン溶液(ブタジエン/スチレンの重量比は30/70、モノマー濃度22重量%)を13.3リットル/hr、モノマー100重量部に対するn−ブチルリチウムの量が0.067重量部となるような濃度に調整したシクロヘキサン溶液を1.0リットル/hrでそれぞれ反応器の底部へ供給し、更にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの量がn−ブチルリチウム1モルに対して0.82モルとなる供給速度でN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのシクロヘキサン溶液を供給し、90℃で連続重合し、共重合体(非水添共重合体)を得た。反応温度はジャケット温度で調整し、反応器の底部付近の温度は約87℃、反応器の上部付近の温度は約90℃であった。重合反応器における平均滞留時間は約45分であり、ブタジエンの転化率は、ほぼ100%、スチレンの転化率は約96%であった。
連続重合で得られた非水添共重合体を分析したところ、スチレン含有量は67重量%、ポリスチレンブロック含有量が1重量%、ブタジエン部のビニル結合量は14重量%であった。
次に、連続重合で得られた非水添共重合体に、上記水添触媒を非水添共重合体100重量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100重量部に対して0.3重量部添加し、水添共重合体(ポリマー9)を得た。
ポリマー9の水添率は99%、重量平均分子量は19万、分子量分布は1.9であった。また、NMR法で測定した水添共重合体のNs値は8.2重量%であり、Ns値から求めたポリスチレンブロック含有量(Os値)は1重量%だった。また、DSCを測定した結果、結晶化ピークは無かった。ポリマー9の特性を表1に示した。
実施例5
モノマーを含有するシクロヘキサン溶液のブタジエン/スチレンの重量比を23/77に変える以外は、実施例4と同様の方法で連続重合を行い、非水添共重合体を得た。次に、実施例4と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー10)を得た。ポリマー10の特性を表1に示した。
実施例6
内容積が10リットルの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器に、シクロヘキサンを3.3リットル、n−ブチルリチウム濃度が15重量%のシクロヘキサン溶液を16ml、及びN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンをその量がn−ブチルリチウム1モルに対して0.82モルとなるように加えた。その後、反応器の内部温度を90℃に設定し、モノマーとしてブタジエンとスチレンを含有するシクロヘキサン溶液(ブタジエン/スチレンの重量比は35/65、モノマー濃度30重量%)を反応器に供給してバッチ重合を1時間行い、共重合体(非水添共重合体)を得た。モノマーの供給量が790gになった時点でモノマーの供給を中止した。尚、重合温度の変化は、±2℃以内にコントロールした。また、重合開始から約30分後のブタジエンとスチレンの転化率は、ほぼ100%であった。
得られた非水添共重合体を分析したところ、スチレン含有量は65重量%、ポリスチレンブロック(H)含有量が8重量%、ブタジエン部のビニル結合量は13重量%であった。
次に、実施例4と同様に水添反応を行い、水添共重合体(ポリマー11)を得た。ポリマー11の特性を表1に示す。
比較例6
実施例1で使用したのと同じ反応器を1基使用した。スチレン6.5重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度24重量%)を反応器に投入し、モノマー100重量部に対して0.070重量部のn−ブチルリチウム(15重量%シクロヘキサン溶液)とn−ブチルリチウム1モルに対して1.1モルのテトラメチルエチレンジアミンを添加し、50℃で1時間重合した。次に、ブタジエン87重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度24重量%)を加えて50℃で1時間重合した。更に、スチレン6.5重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度24重量%)を加えて50℃で1時間重合し、共重合体(非水添共重合体)を得た。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、ブロック構造がH−B−H(Hはポリスチレンブロック、Bは水添ポリブタジエンブロック)である水添共重合体(ポリマー12)を得た。
ポリマー12の分子量は21万、分子量分布は1.1、スチレン含有量は13重量%、ポリスチレンブロック含有量は13重量%、ブタジエン部のビニル結合量は73重量%、水素添加率は99%であった。スチレン含有量とブロックスチレン量の分析値より、スチレンのブロック率は100%であった。
比較例7
実施例1で使用したのと同じ反応器を1基使用した。ブタジエン濃度が24重量%のシクロヘキサン溶液を13.0リットル/hr、モノマー100重量部に対するn−ブチルリチウムの量が0.160重量部となるような濃度に調整したシクロヘキサン溶液を1.0リットル/hrでそれぞれ反応器の底部へ供給し、更にN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの量がn−ブチルリチウム1モルに対して1.1モルとなる供給速度でN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンのシクロヘキサン溶液を供給して連続重合を行い、重合体を得た。反応温度はジャケット温度で調整し、反応器の上部付近の温度は約90℃であった。重合反応器における平均滞留時間は約45分であり、ブタジエンの転化率は、ほぼ100%であった。次に、実施例1と同様に水添反応を行い、水添重合体(ポリマー13)を得た。
ポリマー13の分子量は18万、分子量分布は1.9、スチレン含有量は0重量%、ブタジエン部のビニル結合量は22重量%であった。
比較例8
内容積が10リットルの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器にスチレン33.5重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20wt%)を投入し、モノマー100重量部に対して0.170重量部のn−ブチルリチウム(15重量%シクロヘキサン溶液)とn−ブチルリチウム1モルに対して0.35モルのテトラメチルエチレンジアミンを添加し、70℃で30分間重合した。次に、ブタジエン33重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20wt%)を加えて70℃で1時間重合した。更に、スチレン33.5重量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20wt%)を加えて70℃で30分間重合し、ブロック共重合体(非水添共重合体)を得た。得られたブロック共重合体のスチレン含有量は67重量%、ポリスチレンブロック(H)含有量は65重量%、ブタジエン部のビニル結合量は40重量%であった。スチレン含有量とスチレンブロック含有量の分析値より、スチレンのブロック率は97%であった。
次に、非水添共重合体に、上記水添触媒を非水添共重合体100重量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行い、ブロック構造がH−B−Hの水添共重合体(ポリマー14)を得た。
ポリマー14の水添率は98%、重量平均分子量は7万、分子量分布は1.1であった。
II.樹脂状重合体組成物
実施例7〜9及び比較例9〜12において、樹脂状重合体組成物(即ち、樹脂としての特性を示す組成物)を製造した。
樹脂状重合体組成物の物性は、以下の方法で測定した。
II−1)アイゾット衝撃強度(耐衝撃性)
JIS K7110に準拠して、アイゾット衝撃強度(ノッチ付き)を23℃で測定した。
II−2)加工特性
射出成形した成形品の外観を下記の評価基準に従って目視評価した。
○: 射出成形品の外観良好
×: 射出成形品の表面にフローマークを有する
II−3)引張特性(引張強さと伸び)
ASTM D638に準拠して測定した。引張速度は、5mm/分で行った。
実施例7、8及び比較例9〜11
表2に示した組成の重合体組成物を製造した。
熱可塑性樹脂としてPPE(2,6−キシレノールを酸化重合して得た、還元粘度0.43のポリフェニレンエーテル)とHIPS(高衝撃性ポリスチレン)(商品名:475D;日本国、A&Mスチレン(株)製)を用い、ポリマー1、9、5と6を水添共重合体として用いた。水添共重合体と熱可塑性樹脂を二軸押出機(装置名:PCM30;日本国、池貝鉄工社製)で混練し、ペレット化することにより組成物を得た。押出条件は、シリンダー温度が300℃、スクリュー回転数が150rpmであった。
得られた組成物を射出成形して試験片を調製した。試験片の物性を測定し、その結果を表2に示した。
実施例9及び比較例12
熱可塑性樹脂としてHIPS(高衝撃性ポリスチレン)(商品名:475D;日本国、A&Mスチレン(株)製)及びホモPP(ポリプロピレン)(商品名:L500A;日本国、モンテル・エスディーケー・サンライズ社製)を使用し、ポリマー1を水添共重合体として用いた。
実施例9では、70重量部のHIPSと30重量部のホモPPと共に、6重量部のポリマー1を二軸押出機(装置名:PCM30;日本国、池貝鉄工社製)で混練し、ペレット化することにより組成物を得た。比較例12では、水添共重合体を用いないこと以外は実施例9と実質的に同様に組成物を製造した。押出条件は、シリンダー温度220℃、スクリュー回転数250rpmであった。得られた組成物を射出成形して試験片を調製した。
試験片の物性を測定した結果、水添共重合体を含む実施例9の組成物は引張強度が300Kg/cm2、伸びが13%と優れた性能を示した。一方、水添共重合体を添加していない比較例12の組成物は、引張強度が270Kg/cm2であるが、伸びはわずか3%であった。
III.ゴム状重合体組成物
実施例10〜21及び比較例13〜19において、ゴム状重合体組成物(即ち、ゴムとしての特性を示す組成物)を製造した。
ゴム状重合体組成物の物性は、以下の方法で測定した。
III−1)硬さ
JIS K6253に従い、デュロメータタイプAで10秒後の値を測定した。
III−2)引張応力、引張強さ、切断時伸び
JIS K6251(3号ダンベル試験片を使用)に準拠して測定した。日本国、島津製作所製のAGS−100D型引張試験機を用い、引張速度500mm/分にて測定した。
III−3)ダンロップ反撥弾性
I−6)と同様に測定した。
III−4)耐傷つき性
学振磨耗試験器(装置名:AB−301型;日本国、テスター産業株式会社製)を用いて、摩擦布カナキン3号綿で成形シート表面(光沢鏡面)を荷重500gで100回摩擦し、摩擦前後の光沢度変化を、光沢度計にて測定した。耐傷つき性は以下の基準に基づいて判定した。
III−5)耐磨耗性
学振磨耗試験器(装置名:AB−301型;日本国、テスター産業株式会社製)を用いて、摩擦布カナキン3号綿で成形シート表面(皮シボ加工面)を荷重500gで摩擦し、摩擦後の体積減少量を測定した。耐磨耗性は以下の基準に基づいて判定した。
III−6)加熱変形性
JIS K6723に準拠して加熱変形試験を行った。変形率(%)が小さい程耐熱性が優れる。
実施例10〜13
以下のゴム状重合体成分を用いて、表3に示した組成のゴム状重合体組成物を製造した。
SEBS: スチレンブタジエンブロック共重合体の水素添加物(商品名:タフテックH1221;日本国、旭化成(株)製)、
SIS: スチレンイソプレンブロック共重合体(商品名:ハイブラー5127;日本国、クラレ(株)製)、
SEPS: スチレンイソプレンブロック共重合体の水素添加物(商品名:ハイブラー7125;日本国、クラレ(株)製)、及び
TPO: オレフィン系エラストマー(商品名:住友TPE820;日本国、住友化学(株)製)。
水添共重合体としては、ポリマー1を用いた。
70重量部のポリマー1と30重量部のゴム状重合体を二軸押出機(装置名:PCM30;日本国、池貝鉄工社製)で混練し、ペレット化することにより組成物を得た。押出条件は、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数300rpmであった。得られた組成物を圧縮成形して試験片を得た。
各試験片の引張特性性を測定し、その結果を表3に示した。
実施例14〜18及び比較例13〜19
表4に示した次の化合物を用いて重合体組成物を製造した。
PVC: ポリ塩化ビニルエラストマー(商品名:スミフレックスK580CF1;日本国、住友ベークライト株式会社製)、
PP: ポリプロピレン樹脂(230℃、2.16kgの条件下で測定したMFRが13g/分)(商品名:PM801A;日本国、サンアロマー製)、
PPE: ポリフェニレンエーテル樹脂[還元粘度が0.54のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルを合成した]、及び
Mg(OH)2: 水酸化マグネシウム(商品名:キスマ5A;日本国、協和化学工業株式会社製)。
表4に示す各成分をヘンシェルミキサーで混合後、二軸押出機にて230℃(実施例15、17と18、比較例14〜18)又は270℃(実施例16)の条件で溶融混練し、組成物のペレットを得た。尚、シートのブロッキング抑制のために水添共重合体にはエルカ酸アミド1重量%とマイクロクリスタリンワックス0.4重量%を添加した。二軸押出機のスクリューの回転速度は300rpmだった。得られた組成物を圧縮成形して2mm厚の成形シートを作成し、試験片を得た。
尚、実施例14ではポリマー1のみ、比較例13ではポリマー4のみ、比較例19ではポリ塩化ビニルエラストマーのみを用い、200℃で圧縮成形して2mm厚のシートを作成した。
各試験片の物性を測定し、その結果を表4に示した。
耐傷つき性及び耐磨耗性に優れた本発明のゴム状重合体組成物は、建築材料及び電線被覆材料に使用することができる。
更に、実施例18の組成物の動的粘弾性スペクトルをARESダイナミックアナライザー(装置名:ARES−2KFRTN1−FCO−STD;日本国、レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製)を用い、ねじりモード(測定周波数:1Hz)で求めた。動的粘弾性スペクトルを図1に示した。
実施例18の組成物の動的粘弾性スペクトルのtanδピークは室温近傍にあり、これは耐振性が良好であることを意味する。このように優れた耐振性を示す組成物は、制振・防音材料や建築材料に使用することができる。
実施例19〜21
以下の成分を用いて表5に示した組成のゴム状重合体組成物を製造した。
SEBS: スチレン/ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(商品名:タフテックH1221;日本国、旭化成(株)製)、
SEPS: スチレン/イソプレンブロック共重合体の水素添加物(商品名:セプトンS4055;日本国、クラレ(株)製)、
ランダムPP: ランダムポリプロピレン(商品名:PC630A;日本国、モンテル・エスディーケー・サンライズ社製)、及び
軟化剤: プロセスオイル(商品名:PW−90;日本国、出光興産(株)製)。
水添共重合体、ゴム状重合体(SEBS又はSEPS)と熱可塑性樹脂(PP)を表5の組成で用い、すべての成分を二軸押出機(装置名:PCM30;日本国、池貝鉄工社製)を用いて混練し、ペレット化することにより組成物を得た。押出条件は,シリンダー温度230℃,スクリュー回転数300rpmであった。得られた組成物を実施例14と同様に圧縮成形して2mm厚の試験片を得た。試験片の物性を測定し、その結果を表5に示した。
IV.難燃性組成物
実施例22において、難燃性組成物を製造した。
実施例22
水添共重合体としてポリマー1を用い、難燃剤として水酸化マグネシウム(商品名:キスマ5A;日本国、協和化学工業株式会社製)を用いた。40重量部のポリマー1と60重量部の水酸化マグネシウムをヘンシェルミキサーで混合後、二軸押出機(装置名:PCM30;日本国、池貝鉄工社製)にて溶融混練し、組成物のペレットを得た。溶融混練の温度は220℃、スクリューの回転数は250ppmだった。得られた組成物を圧縮成形して2mm厚の成形シートを作成し、試験片を得た。
得られた試験片の硬さ、引張特性(含伸び)及び耐磨耗性をそれぞれ上記III−1)、III−2)及びIII−5)の方法で測定し、難燃性をUL94に準じた燃焼性試験で評価した。具体的には、試験片から短冊片(127mm×12.7mm)を切り出し、UL94に準じて燃焼性試験を行った。そして、UL94の判定基準に基づきランク付けをした。評価結果を表6に示した。
この組成物は、難燃性が必要とされる建築材料や電線被覆材料に有利に使用することができる。
V.架橋水添共重合体
実施例23及び24において、架橋水添共重合体を製造した。
架橋水添共重合体の物性は、以下の方法で測定した。
V−1)硬さ
上記III−1)に記載の方法で測定した。
V−2)引張特性(含伸び)
上記III−2)に記載の方法で測定した。
V−3)圧縮永久ひずみ
JIS K6262に準拠した圧縮永久ひずみ試験を行った。測定条件は、温度70℃で22時間である。
V−4)耐屈曲性
JIS K6260に準拠し、亀裂発生試験を行った。長さ150mm×幅25mm、厚さ6.3mmの短冊片に半径2.38mmのくぼみを入れ、100,000回屈曲後の亀裂長さ(mm)を測定した。測定温度は23℃である。
実施例23と24
表7に示した有機過酸化物を架橋剤として用いて、水添共重合体を動的架橋して架橋水添共重合体を製造した。水添共重合体としてポリマー1を用い、有機過酸化物としてパーヘキシン25B(商品名)(日本国、日本油脂(株)製)又はパーヘキサ25B(商品名)(日本国、日本油脂(株)製)を用いた。水添共重合体と有機過酸化物を混合後、二軸押出機(装置名:PCM30;日本国、池貝鉄工社製)にて溶融混練し、架橋水添共重合体のペレットを得た。溶融混練の温度は、実施例23では220℃、実施例24では210℃とし、スクリューの回転数はいずれも250ppmとした。架橋水添共重合体を圧縮成形して2mm厚の成形シートを作成し、試験片とした。また、別途6.3mm厚のシートを作成し、耐屈曲性試験用の試験片とした。試験片の物性を測定し、その結果を表7に示した。
VI.発泡体
実施例25〜27においては、以下の成分を用いて発泡体を製造した。
熱可塑性樹脂: HIPS(商品名:475D;日本国、A&Mスチレン(株)製)、
タルク: ミクロエースP−4(商品名)(日本国、日本タルク製)、
架橋剤: パーオキサイド(商品名:パークミルD;日本国、日本油脂(株)製)、
架橋助剤: トリメチロールプロパン・トリメタクリレート(商品名:サンエステル TMP;日本国、三新化学製)、及び
発泡剤: アゾジカルボンアミド(商品名:ビニホール AC#3;日本国、永和化成製)。
実施例25
水添共重合体としてポリマー1を用いて発泡シートを製造した。100重量部のポリマー1に対し、タルク2重量部、ステアリン酸亜鉛0.3重量部を加えてミキサーで混合した。得られた混合物を押出機(単軸:L/D=30)に供給し、230℃で溶融混練し、その溶融混練物に押出機の中段に設けられた発泡剤注入孔より重合体の3重量%となるように混合ブタン(n−ブタン65%とi−ブタン35%の混合物)を注入した。次いで押出機スクリューの後段で160℃に冷却し、ダイより押出して発泡させ、発泡体を得た。
実施例26
50重量部のポリマー1と50重量部の熱可塑性樹脂(HIPS(商品名:スタイロン475D;日本国、A&Mスチレン(株)製)からなる組成物を用い、実施例19と同様に発泡剤を添加して発泡体を製造した。
実施例27
架橋された発泡体を製造した。ポリマー1を100重量部、タルクを10重量部、架橋剤(パーオキサイド)を0.7重量部、架橋助剤を0.3重量部、酸化亜鉛を1.5重量部、ステアリン酸を0.5重量部、ステアリン酸亜鉛を0.5重量部、発泡剤(アゾジカルボンアミド)2.5重量部をバンバリーミキサーで混練し、その後ロールミルで更に混練した後、厚さ12mmのシートに成形した。その後、そのシートを160℃に加熱して14分間発泡させ、発泡倍率(密度測定から算出した)が約4倍の発泡体を得た。
VII.多層フィルム
実施例28〜31においては、以下の成分を用いて多層フィルムを製造した。
EVA: エチレン/酢酸ビニル共重合体(商品名:NUC−3753;日本国、日本ユニカー社製)、
EVOH: エチレン/ビニルアルコール共重合体、
PP: ポリプロピレン(商品名:F−226D;日本国、グランドポリマー社製)、及び
接着性ポリオレフィン: アドマーNF500(商品名)(日本国、三井化学社製)。
多層フィルムの物性は、以下の方法で測定した。
VII−1)引張試験
JIS K−6251(1号型ダンベル試験片を使用)に準拠し、日本国、島津製作所製のAGS−100D型引張試験機を用いて引張速度500mm/分にて測定した。
VII−2)弾性回復
弾性回復性は、フィルムを幅方向に10%延伸した後、先端の曲率半径12.5mmの棒を直径45mmのフィルム面に押し込み、1分以内に回復する限界の深さとして求めた。5回の試験を行い、5回の実験の平均値で表した。
VII−3)全光透過率とヘイズ
JIS−K−7361−1に準じ、濁度計(装置名:NDH−2000;日本国、日本電飾社製)を用い、試験片厚さ2mmで測定した。
VII−4)熱収縮率
100mm角のフィルム試料を80℃の温度に設定したエアーオーブン式恒温層に入れ、自由に収縮する状態で10分間処理し、フィルムの収縮量を求めた。熱収縮率は、収縮量を元の寸法で割った値の百分率で表した。1軸延伸の場合は延伸方向の値を、そして2軸延伸の場合にはタテとヨコの両方向の値を各々測定した。
VII−5)酸素透過性
JIS−K−7126に基づいてB法(等圧法)により測定した。
VII−6)剥離試験
T型剥離試験を行った。シール幅15mmでヒートシール(120℃)したフィルムサンプルの未シール部分をチヤックに挟み、引張速度が300mm/分の条件で引張試験を行った。シール部が剥がれた時の強度を測定し、剥離強度とした。
実施例28
3層用T−ダイと単軸押出し機を組合せた三層フィルム押出成形機を用いて、厚さ30μm、層構成がEVA/ポリマー1/EVA(各層の厚み比率は20%/60%/20%)の3層フィルムを作成した。
このフィルムの評価結果を表8に示した。
実施例29
ポリマー1を両表面層とし、ポリマー1/接着性ポリオレフィン/EVOH/接着性ポリオレフィン/ポリマー1の5層になるように5層Tダイを用いて押出し、厚さが約60μmのフィルムを作成した。各層の厚み比率は外側から35%/7.5%/15%/7.5%/35%になるように調製した。尚、押出し時にフィルムブロッキング抑制のためにポリマー1にエルカ酸アミド1重量%とステアリン酸モノグリセライド1重量%を添加した。このフィルムの酸素ガス透過度を測定したところ、0.62cc/m2・24hr・atmと良好な値を示した。
実施例30
層構成がEVA/ポリマー1/PP(各層の厚み比率は20%/60%/20%)である3層からなる原反フィルム(後で加工してフィルムを得るためのフィルム)を実施例28と同様の方法で製造した。得られた原反フィルムをタテ3.2倍、ヨコ2.8倍に同時延伸して厚み約60μmmのフィルムを得た。80℃における熱収縮率は、タテが45%、ヨコが40%と良好であった。
実施例31
層構成がPP/ポリマー1(各層の厚み比率は50%/50%)である2層フィルムを実施例28と同様の方法で作成し、厚さ30μmのフィルムを得た。2枚のフィルムをポリマー1からなるヒートシール層同士が内側になるようにして重ね、15mm幅で、120℃でヒートシールを行った。ヒートシールしたフィルムを剥離試験に付したところ、剥離強度は2kgと良好なシール性を示した。
VIII.高周波融着性組成物
実施例32〜34において、高周波融着性組成物を製造した。
高周波融着性組成物の物性は、以下の方法で測定した。
VIII−1)誘電特性
厚み0.5mmのシートを用いて、ASTMD 150に準じて周波数100MHzの条件で、誘電率、誘電正接、損失係数を測定した。
VIII−2)透明性
厚み0.5mmのシートの透明性を目視で判定した。
実施例32〜34
以下の成分を用いて表9に示した組成の高周波融着性組成物を製造した。
PP: ポリプロピレン樹脂(商品名:PL500A;日本国、モンテル・エスディーケー・サンライズ社製)、
PEG: ポリエチレングリコール、
EVA: エチレン/酢酸ビニル共重合体(商品名:NUC−3195;日本国、日本ユニカー社製)。
水添共重合体としてポリマー1を用い、各成分を30mmφ二軸押出機(装置名:PCM30;日本国、池貝鉄工社製)を使用して溶融混練し、ペレット化することにより組成物を得た。押出しは、溶融混練温度が210℃、スクリュー回転数が200rpmの条件で行った。次に、圧縮成形機を用い、プレス温度200℃、プレス圧力100kg/cm2の条件で上記ペレットを圧縮成形し、0.5mm厚の成形シートを得た。得られた組成物の特性を表9に示した。
IX.スラッシュ成形材料
実施例35及び36において、スラッシュ成形材料を製造した。
スラッシュ成形材料の物性は、以下の方法で測定した。
IX−1)ゲル分率
架橋した組成物5mg(W1とする)を試料瓶に入れて、更にキシレン50mlを加え、アルミブロックバスを用いて120℃にて12時間の抽出を行った。抽出物をステンレス金網でろ過し、金網上の未溶解分を回収した。次に未溶解分を105℃にて5時間乾燥して秤量した(W2とする)。
W1とW2を用い、次式に従ってゲル分率を求めた。
ゲル分率=(W2/W1)×100
IX−2)パウダーの平均粒径
水添共重合体組成物のペレットを機械粉砕して得たパウダーについて、パウダーの平均粒径を測定した。パウダー100gを、以下に示す5つの呼び寸法(X1〜X5)のJIS Z8801の標準ふるい(枠の径200mm、深さ45mm)を使用し、ハンマー付きふるい振とう機(日本国、飯田製作所製)で15分間振とうした。その後、各ふるいに残存しているパウダーの重量(Y1〜Y5)を測定した。X1〜X5及びY1〜Y5の値を用いて、下記式より平均粒径を求めた。
ここで、X1〜X5は、次のとおりである。
X1: 500μm(タイラー標準32メッシュ)、
X2: 250μm(タイラー標準60メッシュ)、
X3: 180μm(タイラー標準80メッシュ)、
X4: 106μm(タイラー標準150メッシュ)、
X5: 75μm(タイラー標準200メッシュ)。
また、Y1〜Y5は、ぞれぞれ、X1〜X5に対応する残存パウダー重量である。
IX−3)パウダースラッシュ成形性
パウダースラッシュ成形性を評価するために、図2(a)〜2(d)に示した装置を用いてパウダースラッシュ成形品を製造した。なお、図2(a)〜2(c)はそれぞれパウダー供給ボックスの正面、側面、及び上部を示す説明的概略図であり、図2(d)は、水添共重合体組成物パウダーの入ったパウダー供給ボックスとその上部に取り付けられたスラッシュ成形用のシボ付きニッケル電鋳金型の説明的概略側面図であり、図3はスラッシュ成形品の断面図である。
水添共重合体組成物パウダーを、一軸回転ハンドル1の付いた一軸回転パウダースラッシュ成形装置に取り付けた300mm×300mm、深さ200mmのステンレス製角形容器(以下「パウダー供給ボックス」という)3に2kg投入した。次いで、このパウダー供給ボックス3の上部に、予め230℃に加熱した、アンダーカット部を有する階段形状のシボ付きニッケル電鋳金型4をクランプで取り付けた(図2(d)参照)。成形装置の回転軸2に軸支された一軸回転ハンドル1を回転させて、パウダー供給ボックス3とシボ付きニッケル電鋳金型4を同時に左右に各5回転づつ回転を繰り返した。その後、シボ付きニッケル電鋳金型4を木ハンマーで2〜3回たたき、過剰のパウダー5を払い落とした。パウダー供給ボックス3からシボ付きニッケル電鋳金型4を外し、300℃の加熱炉中で30秒間加熱することで、水添共重合体組成物を溶融した。次に金型を水冷し、金型より成形品6(図3参照)を取り出した。そして、得られた成形品の性状に基づき、水添共重合体組成物パウダーのパウダースラッシュ成形性を以下の基準に従って評価した。
成形品の性状
○: 成形品にピンホールがない。
×: 成形品にピンホールが目立ち、且つ内面の平滑不良。
IX−4)耐熱性試験
IX−3)でパウダースラッシュ成形した成形品から、50mm×50mm角の試験片を切り出した。試験片の上にガーゼを三層にしておき、40mmφ×500gの荷重を掛けたまま115℃のオーブン中で24時間放置した。試験片を取り出し、試験片表面の傷つき度合いを目視で観察し、以下の基準に基づいて耐熱性を評価した。
傷つき度合い
○: 成形品表面にガーゼの痕がない。
×: 成形品表面にガーゼの痕がはっきりと付いている。
IX−5)柔軟性
IX−3)でパウダースラッシュ成形した成形品から、50mm×50mm角の試験片を切り出した。試験片を180度に折り曲げた。その折り曲げ部分の白化の有無を目視で観察し、以下の基準に基づいて柔軟性を評価した。
白化痕の有無
○: 成形品の折り曲げ部に白化痕無し。
×: 成形品の折り曲げ部に白化痕有り。
実施例35
水添共重合体(ポリマー1)80重量部、ポリプロピレン(230℃のMFRが50g/10分の結晶性ポリプロピレン)(商品名:K7750;日本国、チッソ(株)製)20重量部をドライブレンドした。次に、加圧ニーダー(装置名:DS3−7.5MHH−E;日本国、森山製作所製)でドライブレンドを混練し、ロールでシート化した後、ペレットを得た。このペレットを液体窒素と共に粉砕機(装置名:ターボミルT−400型;日本国、ターボ工業社製)に導入し、冷凍粉砕を行ってパウダーを得た。このパウダーの100重量%が32メッシュ篩いを通過した。パウダーのパウダースラッシュ成形性を評価したところ、得られた成形品の重量は260g、厚みは1.1mmでピンホールが無く、はっきりしたシボ模様が成形品の定常部及びアンダーカット部(図3の6と7を参照)まで充分に再現された肉厚の均一性に優れた製品であった。耐熱性については、ガーゼ痕が無く良好だった。さらに、柔軟性の評価では、折り曲げ部に白化現象が無く、良好であった。結果を表10に示した。
実施例36
水添共重合体(ポリマー1)80重量部、エチレン/酢酸ビニル共重合体(190℃のMFRが20g/10分)(商品名:ウルトラセン633;日本国、東ソー(株)製)20重量部に、有機過酸化物として、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(商品名:パーヘキシン25B−40;日本国、日本油脂(株)製〕3.5重量部を配合し、ドライブレンドした。次に、加圧ニーダー(装置名:DS3−7.5MHH−E;日本国、森山製作所製)で混練し、ロールでシート化した後、架橋された組成物のペレットを得た。架橋された組成物のゲル分率は88%であった。このペレットを液体窒素と共に粉砕機(装置名:ターボミルT−400型;日本国、ターボ工業社製)に導入し、冷凍粉砕を行ってパウダーを得た。このパウダーの100重量%が32メッシュ篩いを通過した。パウダーのパウダースラッシュ成形性を評価したところ、得られた成形品の重量は260g、厚みは1.1mmでピンホールが無く、はっきりしたボ模様が成形品の定常部及びアンダーカット部(図3の6と7参照)まで充分に再現された肉厚の均一性に優れた製品であった。耐熱性については、ガーゼ痕が無く良好だった。さらに、柔軟性の評価では、折り曲げ部に白化現象が無く、良好であった。その結果を表10に示した。
X.粘接着性組成物
実施例37において、粘接着性組成物を製造した。
粘接着性組成物の物性は、以下の方法で測定した。
X−1)溶融粘度(cP)
ブルックフィールド型粘度計を使用して、180℃における粘接着性組成物の溶融粘度を測定した。
X−2)軟化点(リング&ボール法)
JIS−K2207に準じて、粘接着性組成物の軟化点を測定した。規定の環に試料を充填し、環を水中で水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置いた。液温を5℃/分の速さで上昇させ、球の重さで試料が環台の底板に触れたときの温度を測定した。
X−3)溶融粘度変化率
ブルックフィールド型粘度計を使用して、180℃における混練直後の粘接着性組成物の溶融粘度をη0とし、粘接着性組成物を180℃の温度雰囲気下に48時間放置後の180℃の溶融粘度をη1としたとき、以下の溶融粘度変化率を求め、熱安定性の尺度とした。
X−4)粘着力
粘接着性組成物を溶融状態で取り出し、アプリケーターでポリエステルフィルムに厚さ50μmになるようにコーティングし、粘着テープサンプルを作成した。25mm幅の粘着テープサンプルをステンレス板に張り付け、引き剥がし速度300mm/分で180度剥離力を測定した。
実施例37
水添共重合体としてポリマー1を用い、粘着付与剤としてクリアロンP−105(商品名)(日本国、ヤスハラケミカル製)及び軟化剤としてダイアナ プロセスオイルPW−90(商品名)(日本国、出光興産製)を用いた。100重量部のポリマー1に対して、粘着付与剤を300重量部、軟化剤を100重量部の配合比で配合して、180℃で2時間、1リットルの攪拌機付き容器で溶融混練し、ホットメルト型粘接着性組成物を得た。尚、粘接着性組成物には、100重量部のポリマー1に対して、安定剤として2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートを1重量部配合した。
得られた粘接着性組成物の180℃における溶融粘度は10,500、軟化点は116℃、溶融粘度変化率(%)は9.5%、粘着力は1,400gf/10mmであった。
XI.アスファルト組成物
実施例38及び比較例20において、アスファルト組成物を製造した。
アスファルト組成物の物性は、以下の方法で測定した。
XI−1)軟化点
水の代わりにグリセリンを用いる以外はX−2)と同様に測定した。
XI−2)伸度
JIS−K 2207に準じて測定した。試料を形枠に流し込んで規定の形状にした後、恒温水浴内で15℃に保持した。次に試料を5cm/分の速度で引っ張り、試料が切れるまでに伸びた距離を測定した。
XI−3)高温貯蔵安定性(分離特性)
製造直後のアスファルト組成物を内径50mm、高さ130mmのアルミ缶の上限まで流し込み、180℃のオーブン中で24時間加熱した。アルミ缶を取り出して自然冷却させ、室温まで下がったアスファルト組成物の下端から4cmと上端から4cmの部分をサンプルとして採取し、それぞれの軟化点を測定した。上層部と下層部の軟化点差を高温貯蔵安定性の尺度とした。軟化点差が小さいほど高温貯蔵安定性は良好である。
実施例38及び比較例20
表11に示した組成のアスファルト組成物を製造した。750mlの金属缶にストレートアスファルト60−80(日本国、日本石油(株)製)を400g投入し、180℃のオイルバスに金属缶を充分に浸した。次に、溶融状態のアスファルトの中に所定量の水添共重合体を攪拌しながら少量づつ投入した。水添共重合体を全て投入した後に5,000rpmの回転速度で90分間攪拌してアスファルト組成物を得た。
得られたアスファルト組成物の特性を表11に示した。
表11より明らかなように、本発明のアスファルト組成物は軟化点、伸度、高温貯蔵安定性の点で優れたバランス性能を示した。一方、比較例20のアスファルト組成物の伸度は非常に低かった。
産業上の利用可能性
本発明の水添共重合体は、柔軟性に富み、反発弾性と耐傷付き性が優れ、且つ取り扱い性(耐ブロッキング性)が良好である。さらに本発明の水添共重合体を他の熱可塑性樹脂やゴム状重合体とブレンドした水添共重合体組成物は、耐衝撃性、引張強さ、成形加工性等に優れる。これらの特徴を生かし、本発明の水添共重合体、水添共重合体組成物及びこれらの架橋物は、補強性充填剤配合物、発泡体、多層フィルム・シート、建築材料、制振・防音材料、電線被覆材料、高周波融着性組成物、スラッシュ成形材料、粘接着性組成物、アスファルト組成物などに有利に使用できる。また、本発明の水添共重合体、重合体組成物または上記の材料を射出成形や押出成形などによって得られる各種形状の成型品は、自動車部品(自動車内装材料、自動車外装材料)、食品包装容器などの各種容器、家電用品、医療機器部品、工業部品、玩具等に有利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例18で得られた組成物の動的粘弾性スペクトルであり;
図2(a)は、実施例35と36において行ったスラッシュ成形に用いたパウダー供給ボックスの説明的概略正面図であり;
図2(b)は、図2(a)のパウダー供給ボックスの説明的概略側面図であり;
図2(c)は、図2(a)のパウダー供給ボックスを上から見た説明的概略図であり;
図2(d)は、水添共重合体組成物パウダーが供給された図2(a)のパウダー供給ボックスと、そこに取り付けられたシボ付きニッケル電鋳金型の説明的概略側面図であり(パウダー供給ボックス内部のパウダーを見せるためにボックスの一部を取り除いた状態を示す);そして
図3は、実施例35と36において、スラッシュ成形材料の成形性を評価するために製造したパウダースラッシュ成形品の説明的概略断面図である。
符号の説明
1 一軸回転ハンドル
2 回転軸
3 パウダー供給ボックス
4 シボ付きニッケル電鋳金型
5 水添共重合体組成物パウダー
6 パウダースラッシュ成形品
7 パウダースラッシュ成形品の定常部
8 パウダースラッシュ成形品のアンダーカット部
Claims (16)
- 共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む非水添共重合体を水添して得られ、該ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロック(H)を少なくとも1つ含有する水添共重合体であって、下記の(1)〜(5)の特性を有することを特徴とする水添共重合体。
(1) 該ビニル芳香族単量体単位の含有量が、該水添共重合体の重量に対して、60重量%を越え、90重量%未満であり、
(2) 該重合体ブロック(H)の含有量が、該非水添共重合体の重量に対して、1重量%〜40重量%であり、
(3) 重量平均分子量が10万を越え、100万以下であり、
(4) 該共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が85%以上であり、
(5) 該水添共重合体に関して得られた示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−50〜100℃の範囲に結晶化ピークが実質的に存在しない。 - 該非水添共重合体が、下記式(1)〜(4)で表されるブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の水添共重合体。
S−H (1)、
S−H−S (2)、
(S−H)m−X (3)及び
(S−H)n−X−(H)p (4)
(式中、各Sは、各々独立して、該共役ジエン単量体単位と該ビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックを表し、各Hは、各々独立して、該ビニル芳香族単量体単位の重合体ブロックを表し、各Xは、各々独立して、カップリング剤残基を表し、mは2以上の整数を表し、n及びpはそれぞれ独立して1以上の整数を表す。) - 該非水添共重合体が、該式(1)で表されるブロック共重合体であることを特徴とする請求項2に記載の水添共重合体。
- 発泡体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水添共重合体。
- 成形品であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水添共重合体。
- 多層フィルム又は多層シートであることを特徴とする請求項5に記載の水添共重合体。
- 押出成形、射出成形、中空成形、圧空成形、真空成形、発泡成形、複層押出成形、複層射出成形、高周波融着成形及びスラッシュ成形からなる群より選ばれる方法によって得られる成形品であることを特徴とする請求項5に記載の水添共重合体。
- 建築材料、制振・防音材料又は電線被覆材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水添共重合体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の水添共重合体を、加硫剤の存在下で架橋することにより得られる架橋水添共重合体。
- 請求項1に記載の水添共重合体(a)1〜99重量部、及び
該水添共重合体(a)以外の熱可塑性樹脂及び該水添共重合体(a)以外のゴム状重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体(b)99〜1重量部
を包含する水添共重合体組成物。 - 発泡体であることを特徴とする請求項10に記載の水添共重合体組成物。
- 成形品であることを特徴とする請求項10に記載の水添共重合体組成物。
- 多層フィルム又は多層シートであることを特徴とする請求項12に記載の水添共重合体組成物。
- 押出成形、射出成形、中空成形、圧空成形、真空成形、発泡成形、複層押出成形、複層射出成形、高周波融着成形及びスラッシュ成形からなる群より選ばれる方法によって得られる成形品であることを特徴とする請求項12に記載の水添共重合体組成物。
- 建築材料、制振・防音材料又は電線被覆材料であることを特徴とする請求項10に記載の水添共重合体組成物。
- 請求項10に記載の水添共重合体組成物を、加硫剤の存在下で架橋することにより得られる架橋水添共重合体。
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