JPS646636Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、低音域における周波数特性が改善さ
れたヘツドホンに関し、特に、小口径のインナー
イヤー型のヘツドホンに適用するのに好適なもの
である。

背景技術とその問題点 従来のオープンエア型ヘツドホンの低音域再生
限界は、主として振動系のコンプライアンスC_nd
（ステイフネスＳの逆数）と振動系の等価質量M_d
とで決まり、第１図に示す如く、周波数が₀以下
の低音域におけるレスポンスが低下していた。こ
の₀はほぼ₀１／2π√_{d nd}（ｃ／ｓ）で与えられ
、₀ を低くするには振動系のコンプライアンスC_nd
（cm／dyne）を高くするか、等価質量M_d（gr）を
重くする必要がある。しかし、コンプライアンス
C_ndを高くするには限度があり、また振動系の等
価質量M_dを重くすると、感度の低下や高音域に
おける音響特性の劣化等を招くので、等価質量
M_dを重くするにも自ら限界がある。

それに、周知の如く、この低音域共振周波数₀
は小口径のヘツドホン程大きくなる傾向にあるか
ら、小口径のイヤホン等では、低音域の再生音が
聞きとりにくいという欠点があつた。

例えば第２図に示す従来のイヤホンは、円筒状
のマグネツト１と、このマグネツト１を両面から
挾んだ円筒状のヨーク２及びプレート３とから磁
気回路を形成し、その磁気ギヤツプ４内に挿入さ
れるボイスコイル５に結合された振動板６を前面
に組込んで、音響変換器としてのドライバーユニ
ツト７を構成し、このドライバーユニツト７の外
周部を筐体８に取付けている。そして、ドライバ
ーユニツト７の中央の貫通孔９には吸音材１０を
詰め、透孔１１の背面には制動層１２を設け、ま
た筐体８には幾つかの透孔１３を設けて、周波数
特性をコントロールしている。

従つて、上述の構成を音響等価回路で示すと、
第３図のようになる。ここで、M_d、C_nd及びR_d
は夫々振動系の等価質量、コンプライアンス及び
音響抵抗であり、V_sは信号源、R_aは上記吸音材
１０及び制動層１２による音響抵抗であり、並列
回路を構成しているR_b及びC_bは夫々筐体８の透
孔１３による音響抵抗と、筐体の後部空間（すな
わちバツクキヤビテイ）によるコンプライアンス
である。

なお、この第３図において、符号Ｇで囲んだ
M_cup、C_cup及びR_cupは夫々イヤホンを耳穴に挿着
した時に耳穴によつて形成される等価質量、コン
プライアンス及び音響抵抗である。

ところが、筐体８の透孔１３により音響抵抗
R_bはR_aに比べて無視できる程小さく、またC_dも
殆ど無視できるから、並列回路をなすこれらR_b
及びC_bの効果は少なく、第３図における音響等
価回路はほぼM_d、C_nd、R_d及びR_aの直列共振回
路となる。従つて、前記の通り低音共振周波数₀
はほほ₀１／2π√_{d nd}で与えられて低くならず、 また第１図に示す如く、R_aが小さいと₀付近で
特性に山が生じて、その付近の音だけが強調され
て響く音になる。一方、R_aが大きいと₀より高
い周波数から特性が低下して来て、低音の再生が
充分でなくなる。

考案の目的 本考案は以上の実情に鑑みなされたもので、そ
の目的は、従来から用いられているドライバーユ
ニツト（すなわち音響変換器）の構造を特に変え
ることなく、この音響変換器の背面側の音響等価
回路を変えることによつて、低音域におけるレス
ポンスを改善することであり、換言すれば、小口
径で大口径級の低音域レスポンスを得ることがで
きるヘツドホーンを提供することにある。

考案の概要 本考案は、以上の目的を達成するため、音響変
換器と、この音響変換器が取付けられる筐体とか
ら成り、上記音響変換器の後面より出る音を外部
に放出し得ると共にその音響等価回路にインダク
タンス成分を付与するために内径よりも大きい長
さに選定されたダクト部を上記筐体に設けたもの
である。

以上のように構成することにより、音響等価回
路全体としての低音共振周波数₀が下げられるか
ら、低音域におけるレスポンスが改善され、従つ
て、これ迄と同じ音響変換器を用いても、従来の
ヘツドホンと異なつて低音域の充実した再生音を
得ることができる。

実施例 以下において、本考案をインナーイヤー型ヘツ
ドホン（すなわちイヤホン）に適用した一実施例
を図面に基づいて説明する。

第４Ａ図及び第４Ｂ図に示す如く、本考案のイ
ヤホンには、前記第２図に示したと同一の音響変
換器（すなわちドライバーユニツト）７が使用さ
れているので、前記のものと同一のものには同じ
符号を付してその説明を省略する。なお、この実
施例において、ドライバー７の背面の透孔１１及
び中央の貫通孔９には、ナトロンメツシユ等の抵
抗成分がほぼゼロに等しい布やウレタン等の制動
材（すなわち吸音材）などを設けてもよい。

筐体２０は、リード線２１に関係する部分以外
は後方に円錐形状に絞られた形状に形成され、そ
の後端部には、夫々上方及び下方に向けられた上
側ダクト２２及び下側ダクト２３が形成されてい
る。そして、上側ダクト２２は開口２４を有して
おり、下側ダクト２３には可撓性のジヨイント２
５が嵌入され、このジヨイント２５を介してリー
ド線２１が筐体２０内に導入されている。なお、
これらのダクト２２，２３の長さは、それらの内
径（すなわち開口２４の直径）よりもそれぞれ充
分に大きく選定されている。

筐体２０の側面には、複数個の透孔２６が形成
され、これらの透孔２６の内側面には、ウレタン
等から成る制動板２７が設けられている。そし
て、筐体２０の前部には、ドライバーユニツト７
の前面を覆うゆるやかに湾曲した円板形状の各種
の保護板が取付けられている。すなわち、これら
の保護板は、内側から順次、比較的大きな孔径の
メツシユのパンチングメタルから成りかつ外部か
らの圧力等からドライバーユニツト７を機械的に
保護する保護板２８、その外側の基布から成る防
塵用の保護板２９及び小孔径のメツシユのパンチ
ングメタルから成る耳穴用の保護板３０から構成
されている。

以上のように構成された本考案によるイヤホン
の音響等価回路を示すと第５図のようになる。こ
こに、M_d、C_nd及びR_dは夫々前記第３図の場合
と同様にドライバーユニツト７の振動系に関する
ものである。またR_aはドライバー７の透孔１１
及び中央の貫通孔９による音響抵抗でほぼR_a≒
０である。またC_bは筐体２０を円錐形状に形成
したことによるバツクキヤビテイによるコンプラ
イアンス、R_bは制動板２７による音響抵抗、L_d
及びR′_dはダクト２２，２３によるインダクタン
ス（等価質量）及び音響抵抗で、R′_dは非常に小
さい。従つて、本考案によるイヤホンの場合に
は、振動系の等価質量M_dにダクト２２，２３の
等価質量L_dが追加されている。このため、イヤ
ホンの背面側の制動はL_d、C_b及びR_bの並列共振
回路となり、これが前記M_d、C_nd及びR_dの直列
共振回路に加えられることになる。

上述の通りであるから、このイヤホンの音響等
価回路全体としての低音共振周波数は、第６図に
示す如く、インダクタンス（等価質量）L_d分に
よつて、ドライバーユニツト７自体の低音共振周
波数₀よりも低い′₀に下げられるから、音域、
特に低音域を広げることができる。また第６図に
示す如く、L_dに並列に入る抵抗分R_bを小さくす
ると′₀は上昇し、一方、R_bを大きくすると中域
が落ち込む。従つてL_dに対しR_bを適当に選ぶこ
とによつて、音域を広げると共に低音域から高音
域まで平坦化したり、音域を広げた状態で高音域
を増強したり、或いは所望の周波数特性を得るよ
うにしたりすることができる。

また高域に関しては、R_bを大にすると聴感上
ヘツドホン再生において必要な高域のレベルが向
上する。

なお、例えば、第４図におけるダクト２２の長
さｌ及び／又は制動板２７を可変とすることによ
つて、音響制御を行うこともできる。

第７図は、第２図に示した従来のイヤホンにお
ける音圧−周波数特性Ａと、これと同一のドライ
バーユニツトを使用し、第４Ａ図及び第４Ｂ図に
示すダクト２２のようにφ3×20mmのダクトを設
けた本考案によるイヤホンにおける音圧−周波数
特性Ｂとの比較を示したものである。この図より
明らかなように、₀が220Hzから150Hzに下がつて
いることが分かる。またヘツドホン再生において
必要な4KHz近辺の高域のレベルが上昇すること
も分かる。なお第２図及び第４図共にユニツトは
φ16口径のものである。

第８図に示したものは、ダクト３１の形状を逆
Ｕ字形としてその開口３２を下向きにすることに
よつて防塵を考慮し、またダクト３１の長さを所
望により長くした第２の実施例を示したもので、
その他の点においては前記第１の実施例で説明し
たものと全く同じである。そして、ダクト３１の
形状を逆Ｕ字状にしても、このダクト３１が前記
インダクタンス（等価質量）L_dとしての作用効
果を発揮することは明らかであるから、全体とし
て、この第２の実施例におけるイヤホンも前記第
１の実施例におけるイヤホンと同様の作用効果を
発揮することができる。

考案の効果 以上説明したように、本考案のヘツドホンは、
音響変換器と、この音響変換器が取付けられる筐
体とから成り、上記音響変換器の後面より出る音
を外部に放出し得ると共にその音響等価回路にイ
ンダクタンス成分を付与するために内径よりも大
きい長さに選定されたダクト部を上記筐体に設け
たものである。

従つて、上記ダクト部によるインダクタンス分
が音響変換器の音響等価回路に加えられるから、
本考案によるヘツドホンの音響等価回路全体とし
ての低音共振周波数が上記インダクタンス分によ
つて音響変換器自体の低音共振周波数よりも低い
値に下げられる。従つて、本考案によれば、低音
域におけるレスポンスが改善され、このため、同
一サイズの音響変換器を用いたヘツドホンであつ
ても、従来型のものとは異なつて低音域の充実し
た再生音を得ることができる。そして、低音域に
ついて述べれば、小口径でも大口径級のレスポン
スが得られて極めて有利である。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のヘツドホンの音圧特性図、第２
図及び第３図は従来型ヘツドホンの中心縦断面図
とその音響等価回路図、第４図〜第６図は本考案
によるイヤホンの一実施例を示すもので、第４Ａ
図は中心縦断面図、第４Ｂ図は外観斜視図、第５
図は音響等価回路図、第６図は低音特性図、第７
図は従来型と本考案によるものとの音圧−周波数
特性比較図、第８図は本考案による第２の実施例
を示す外観斜視図である。 なお図面に用いた符号において、１……マグネ
ツト、２……ヨーク、３……プレート、４……磁
気ギヤツプ、５……ボイスコイル、６……振動
板、７……ドライバーユニツト（音響変換器）、
２０……筐体、２２，２３，３１……ダクト、２
６……透孔、２７……制動板、である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 音響変換器と、この音響変換器が取付けられる
   筐体とから成り、上記音響変換器の後面より出る
   音を外部に放出し得ると共にその音響等価回路に
   インダクタンス成分を付与するために内径よりも
   大きい長さに選定されたダクト部を上記筐体に設
   けたことを特徴とするヘツドホン。