JPS6332485Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は車両懸架装置用アツパサポートに係
り、特にバウンド方向、リバウンド方向のバネ特
性を効果的に非線形バネ特性と為し得る、経済的
なアツパサポートに関するものである。

従来の車両のストラツト型懸架装置は、第１図
に示されるように、ピストン２とシリンダ４から
成る緩衝器６と、該緩衝器６の外周に配置された
コイルスプリング８とを含み、該ピストン２の上
端でアツパサポート１０を介して車体１２に固定
されている。そして、シリンダ４には、車輪１４
の車輪を備えたステアリングナツクル１６が設け
られており、更にその端部はアーム機構１８を介
して車体１２に支承されている。

そして、前記アツパサポート１０は、ピストン
２の上端が連結される円筒状の内筒金具２０と、
車体１２に取り付けられた円筒状の外筒金具２２
と、該両部材間に位置せしめられ、且つ、それら
に加硫接着などにて固着せしめられた環状の弾性
部材２４とから構成される。そして、この弾性部
材２４は前記緩衝器６並びにコイルスプリング８
で吸収しきれない車輪１４からの振動を吸収し、
斯る振動が車体１２に伝達されるのを阻止するよ
うになつている。

ところで、ピストン２より上下方向に伝達され
る上記振動は、該弾性部材２４に対して剪断応力
として作用することとなるが、そのような状況
下、自動車の乗り心地を確保する上において、該
弾性部材２４には微小荷重時には線形の柔らかに
バネ特性を示す一方、大荷重時には操縦安定性上
の要求により、大きく撓むことのない硬いバネ特
性を示す構造、すなわち非線形バネ特性を有する
ことが要求される。このため、従来より、適当な
ストツパ手段を設け、大荷重時における弾性部材
２４の変形を阻止するようにした構造のアツパサ
ポートが提案されているが、上下方向であるバウ
ンド方向、リバウンド方向のいずれの方向にも非
線形バネ特性を発揮するようにした構造のものは
少なく、またそれら両方向のバネ特性を非線形と
為すようにした構造のものはいずれも構造的に複
雑となつて、その加工組立や、車体への取り付け
が困難である等の問題を内在しているのである。
加えて、弾性部材２４が内筒金具２０、外筒金具
２２に対して加硫接着等にて固着される構造であ
るところから、その製作コストが高い等という経
済的な問題も内在しているのである。

ここにおいて、本考案はかかる事情に鑑みて為
されたものであつて、その目的とするところは、
車両の乗り心地に大きく寄与する荷重と撓みの関
係を、上下方向であるバウンド方向とリバウンド
方向のいずれにおいても効果的に非線形としたバ
ネ特性を確保し、しかも構造的にも簡略化され
た、また製作コストの安いアツパサポートを提供
することにある。

而して、本考案は、かかる目的を達成するため
に、車体側に取り付けられる外筒金具と、緩衝器
のピストンロツドが取り付けられる内筒金具と、
該外筒金具と該内筒金具との間に圧入され、該内
筒金具を介して入力される振動を吸収する環状の
弾性部材等とを含むアツパサポートにおいて、該
外筒金具の上部に内筒金具側に延びるフランジ部
を一体的に形成して、該フランジ部を該弾性部材
の外周に設けられた凹溝に嵌入せしめる一方、該
内筒金具の上部を側部外方に延長せしめてリバウ
ンドストツパ部を形成せしめ、該リバウンドスト
ツパ部と前記外筒金具のフランジ部との間に前記
弾性部材の一部分を挟持して、リバウンド荷重を
受けるようにするとともに、該弾性部材の内面と
該内筒金具の外面との間並びに該弾性部材の外面
と該外筒金具の内面との間に、それぞれ隙間を設
けて、上下方向における非線形バネ特性が発揮さ
れ得るようにしたことを特徴とするものである。

かくして、かくの如き本考案に従えば、弾性部
材の内、外面と内筒金具、外筒金具との間にそれ
ぞれ形成された隙間の存在によつて、バウンド方
向、リバウンド方向の上下方向における初期（低
荷重時）のバネ特性を柔らかいものと為し、また
高荷重域においては変形を少なくする非線形バネ
特性を効果的に発揮せしめ、しかもリバウンド方
向のかかる非線形バネ特性を簡単な構造にて達成
し得ることとなつたのであり、また弾性部材が内
筒金具、外筒金具に圧入される形式の非接着タイ
プの構造とされることによつて、その製作コスト
も一段と安価と為し得たのである。

以下、本考案を更に具体的に明らかにするため
に、本考案の一実施例を図面に基づいて詳細に説
明することとする。なお、ピストン、シリンダか
らなる緩衝器、コイルスプリング、車体、車輪、
ステアリングナツクル及びアーム機構などは第１
図の従来例と同様であるため、図示と説明を省略
する。

まず、第２図において、本考案に従うアツパサ
ポート３０は、外筒金具３２と、内筒金具３４
と、それら両者の間に介在せしめられた環状のゴ
ム３６とを含み、かかる外筒金具３２の外方に張
り出したフランジ部において、車体１２に対して
ボルト３８を介して取り付けられており、また内
筒金具３４がその下部において、第３図に示され
るように、バウンドストツパ４０と共に、緩衝器
６のピストン（ロツド）２の先端部に取り付けら
れている。

ところで、かかる外筒金具３２は、第２乃至４
図に示されるように、上方に向かつて径が小さく
なる円錐台形状を呈し、その上部が、内方に所定
長さで延びるフランジ部４２を形成するように、
２重に折り重ねられ、そして上端部が外方に向か
つて拡がる受け部４４として形成されている一
方、下部においては外方に延びるフランジ部４６
が設けられ、該フランジ部４６の約120度の位相
差を以て設けられている大なる部分に、車体１２
への取付け用のボルト３８が、カシメによつて取
り付けられている。なお、かかる外筒金具３２
は、それを形成するための金属材料（板材）を一
体プレス成形することによつて有利に製作され得
て、しかも上部のフランジ部４２が２重に折り曲
げられて形成されることとなるため、かかるフラ
ンジ部４２の強度を著しく高めることができるの
である。

また、内筒金具３４は、第３図及び第５図に示
されるように、上部が側部外方に所定長さで延び
るフランジ部（リバウンドストツパ部）４８を有
する金属製の有底円筒体であり、そしてその底部
中央に、ピストン２の先端部を貫通せしめるため
の穴５０が設けられている。

そして、前記ゴム３６は、第３図、第６図に示
されるように、外筒金具３２と内筒金具３４との
間に圧入されるべく、円環状に成形されたもので
あつて、その半径方向の断面が略ハの字型となつ
て、その内面が上方に向かつて拡がるテーパ面５
２とされている。また、かかるゴム３６の外面に
は、その上部に環状の周溝５４が形成され、該周
溝５４より上部に位置するゴム部分が、リバウン
ドゴム部５６とされている。更に、かかるゴム３
６の外面下部には、周方向に延びる環状の所定深
さの且つ所定幅の肉抜き部５８が形成されてお
り、そしてゴム３６の下端部周囲に、バウンドス
トツパ４０に押圧せしめられる環状突条６０が形
成されている。更に、ゴム３６の外周面上部に形
成された周溝５４の下方に位置するゴム外周面
が、該周溝５４に向かつて入り込むような傾斜面
６２とされており、またゴム３６の内面下端には
アール部６４が形成されている。

なお、第７図に示されるバウンドストツパ４０
は皿を伏せた形状を呈する金属材料からなり、そ
のほぼ中央部に緩衝器のピストンロツド２が貫通
せしめられる孔６６を有しており、そしてかかる
孔６６の回りには、前記内筒金具３４の底部とプ
ロジエクシヨン溶接をするための突起６８が複数
個形成されている。

このような外筒金具３２、内筒金具３４、そし
てゴム３６、更にバウンドストツパ４０を組み付
け、本考案に従うアツパサポート３０を完成させ
るには、先ず、第６図に示される形状のゴム３６
を加硫成形した後、かかるゴム３６を、その外面
の周溝５４に外筒金具３２の内側フランジ部４２
が嵌入するように、外筒金具３２に圧入せしめ、
更にかかるゴム３６の内側に内筒金具３４を圧入
せしめ、そしてかかる内筒金具３４の底部とバウ
ンドストツパ４０との間においてプロジエクシヨ
ン溶接を行い、一体的に各部品を組み付けるので
ある。なお、かかる組み付けによつて、ゴム３６
には、第３図に見られるように予備圧縮が与えら
れることとなるが、そのような圧縮によつても、
ゴム３６の内、外面と内筒金具３４、外筒金具３
２との間には、所定の隙間７０，７２が形成され
ているのである。すなわち、内筒金具３４の上部
外面とゴム３６の内面上部のテーパ面５２との間
に、隙間７０が形成され、また外筒金具３２のフ
ランジ部４２の下方に位置する内面とゴム３６の
周溝５４の下方に形成された傾斜面６２との間
に、隙間７２が形成されるのである。しかも、こ
の隙間７０，７２は、加速度零の場合の車両荷重
がこのアツパサポート３０に作用しても、なお所
定の間隙を残し得る寸法に定められている。

従つて、かかるアツパサポート３０にあつて
は、緩衝器、特にピストンロツド２から入力され
る振動荷重は、該アツパサポート３０のゴム３６
に対して、その軸心方向（上下方向）に作用する
こととなり、バウンド方向、リバウンド方向いず
れの方向の荷重に対してもゴム３６は圧縮変形を
受けることとなるが、ゴム３６と内筒金具３４、
外筒金具３２との間にはそれぞれ隙間７０，７２
が存在せしめられているところから、かかる隙間
７０，７２によつて、初期の低荷重域におけるゴ
ムの変形が吸収され、以てそのバネ特性を柔らか
いものと為すことができるのである。

そして、高荷重となるに従つて、ゴム３６は横
方向に漸次変形させられ、該ゴム３６の内、外に
形成されている隙間７０，７２は狭められること
となるのであるが、ついにはこの隙間７０，７２
が零となつて、ゴム３６全体が内筒金具３４、外
筒金具３２に対して全面的に接触して、一体化さ
れた状態となるようになるのである。この状態で
は、荷重はすべてゴム３６の圧縮荷重として受け
られ、そしてゴム３６の変形が内筒金具３４、外
筒金具３２によつて阻止されるところから、硬い
バネ特性を示すこととなり、撓みが効果的に抑制
されることとなる。

第８図は、かかるアツパサポート３０の荷重−
撓み曲線を略図的に示すものであるが、バウンド
方向、リバウンド方向において入力される振動荷
重が低荷重域である場合には、直線Ａ，A′で示
される柔らかいバネ特性を示し、そして高荷重域
になると、実線Ｂ，B′で示される硬いバネ特性
に移行するのである。なお、折曲点Ｇ，G′の位
置は隙間７０，７２の大きさによつて自由に選択
することが可能となるのである。

また、このように、ゴム３６は、外筒金具３２
及び内筒金具３４に対して接着されておらず、単
に圧入によつて組み付けられているため、従来の
アツパサポートの如きゴムの外筒、内筒金具に対
する接着面剥離の現象は全く起こり得ず、それ故
アツパサポート３０の組立、部品交換等に対して
も、極めて容易となる利点が生ずるのであり、加
えてゴム３６の加硫成形と同時に、外筒金具３２
或いは内筒金具３４を加硫接着せしめる必要もな
いところから、その製作コストも安価と為し得た
のである。

更にまた、かかる実施例においては、外筒金具
３２のバウンド荷重、リバウンド荷重を受ける内
側のフランジ部４２が一体プレス成形により折り
曲げによつて形成されているところから、当該フ
ランジ部４２の強度を高く保持することができ、
これによつてその耐久性を著しく向上せしめるこ
とが可能となつたのである。

以上、本考案の一実施例において説明してきた
が、本考案はかかる実施例のもののみに限定され
るものでは決してなく、本考案の趣旨を逸脱しな
い限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々な
る変更・修正等を加え得ることは言うまでもない
ところである。

例えば、第９図に示されるように、ゴム３６の
外面下部に設けられた肉抜き部５８を設けていな
いゴム７４を用いることも可能であり、またかか
るゴム７４の内面下部を外方に向かつて拡がるテ
ーパ面７６として（内面上部に形成されるテーパ
面５２に対して逆方向のテーパ面となる）、かか
るゴム７４を外筒金具３２及び内筒金具３４に対
して圧入し、組み付けた場合において、内筒金具
３４との間に第３の隙間７８が形成されるように
することも可能である。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のアツパサポートを備えた車両懸
架装置を概略的に示す一部断面正面図であり、第
２図は本考案に係る車両懸架装置用アツパサポー
トの一実施例の平面図、第３図は第２図における
−断面図、第４図、第５図、第６図、第７図
はそれぞれかかるアツパサポートを構成する外筒
金具、内筒金具、ゴム、バウンドストツパの断面
図であり、第８図はそのようなアツパサポートの
バネ特性を概略的に示すグラフであり、第９図は
本考案の他の実施例を示す第３図に対応する図で
ある。 ２：ピストン、４：シリンダ、６：緩衝器、
８：コイルスプリング、１２：車体、３０：アツ
パサポート、３２：外筒金具、３４：内筒金具、
３６，７４：ゴム、４０：バウンドストツパ、４
２：フランジ部、４４：受け部、４８：フランジ
部（リバウンドストツパ部）、５２，７６：テー
パ面、５４：周溝、５６：リバウンドゴム部、５
８：肉抜き部、６０：環状突条、６２：傾斜面、
６４：アール部、６８：突起、７０，７２，７
８：隙間。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 車体側に取り付けられる外筒金具と、緩衝器
   のピストンロツドが取り付けられる内筒金具
   と、該外筒金具を該内筒金具との間に圧入さ
   れ、該内筒金具を介して入力される振動を吸収
   する環状の弾性部材とを含むアツパサポートに
   おいて、 該外筒金具の上部に内筒金具側に延びるフラ
   ンジ部を一体的に形成して、該フランジ部を該
   弾性部材の外周に設けられた凹溝に嵌入せしめ
   る一方、該内筒金具の上部を側部外方に延長せ
   しめてリバウンドストツパ部を形成せしめ、該
   リバウンドストツパ部と前記外筒金具のフラン
   ジ部との間に前記弾性部材の一部分を挟持し
   て、リバウンド荷重を受けるようにすると共
   に、該弾性部材の内面と該内筒金具の外面との
   間並びに該弾性部材の外面と該外筒金具の内面
   との間に、それぞれ隙間を設けて、上下方向に
   おける非線形バネ特性が発揮され得るようにし
   たことを特徴とする車両懸架装置用アツパサポ
   ート。 (2) 前記外筒金具のフランジ部が、該外筒金具を
   形成する材料の一体プレス成形による折り曲げ
   によつて、一体的に形成されている実用新案登
   録請求の範囲第１項記載のアツパサポート。