JPS6321591B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、ワイヤをワイヤの抵抗成分とワイ
ヤに供給する電流とにより加熱して溶接部に送給
するいわゆるホツトワイヤ方式の非消耗電極式ア
ーク溶接に用いられる溶接トーチに関するもので
ある。

従来より、特公昭40−19731号公報に示される
ように、母材およびワイヤ間の連続的「無アー
ク」短絡により、母材の表面に金属を溶着する方
法が開示されている。即ち、ワイヤを給電チツプ
による加熱により融点近くまで加熱することによ
り、ワイヤを加熱しないで溶接部へ送給する場合
に比べて大幅に溶着量を増進できることが示され
ている。

このようなホツトワイヤ方式の非消耗電極式ア
ーク溶接に用いられる溶接トーチとして第１図に
示すものがあつた。この溶接トーチはアーク発生
用トーチおよびワイヤ加熱用トーチの独立した２
本のトーチが必要であり、トーチ回りが大型化し
てしまうという問題があつた。

第１図において、１はアーク溶接トーチ（以下
TIGトーチと称する）であり、その先端にはタン
グステンからなる非消耗電極２がほぼ中心軸に保
持され、この電極２と母材３との間にTIGアーク
４が発生され、そのアーク熱により母材３上に溶
融池５が形成される。６はワイヤ加熱用トーチで
あり、TIGトーチ１に対して傾斜して配設されて
おり、その先端から加熱されたワイヤ７が溶接部
に向つて送給される。第１図に示すように、ワイ
ヤ７は溶接進行方向の後方から、送給されてお
り、「無アーク」の状態で溶融池５に接触する。

非消耗電極式アーク溶接では、一般に溶接電
流，溶接速度，ワイヤ送給速度などの溶接条件に
より、ワイヤ加熱用トーチから供給されるワイヤ
の先端の位置を、TIGトーチに保持された電極位
置に対して微調整する必要があることが知られて
いる。図中，８〜１２は、ワイヤ加熱用トーチを
上下方向に微調する機構を構成するものであり、
ネジ棒８を回転することにより、スライド片９
が、ガイド棒１０に案内されて上下する。１１は
スライドベースであり、ネジ棒８およびガイド棒
１０を支持している。１２はガイド棒１０をスラ
イドベース１１に固定するネジである。１３は上
下方向微調機構と同様の構成を持つ左右方向の微
調機構を示す。１４はホルダーでTIGトーチ１に
固定されている。このホルダー１４に上下方向微
調機構のスライドベース１１が固定され、スライ
ド片９に左右方向微調機構のスライドベース（図
示せず）が固定されている。また、１５はワイヤ
加熱トーチ６を支持するホルダーであり、これは
左右方向微調機構のスライド（図示せず）に固定
されている。

従つて、上下微調機構のネジ棒８を回転するこ
とにより、ワイヤ７の先端は電極２に対して上下
方向に移動し、左右方向微調機構のネジ棒１３ａ
を回転することにより、同様に左右方向に移動す
ることになる。

従来のホツトワイヤ式アーク溶接トーチは上述
のように構成されており、ワイヤ加熱トーチ６全
体がTIGトーチ１に対して傾斜して取り付けられ
ており、トーチ回りが大型化してしまうという問
題があつた。また、溶接条件に応じてワイヤの先
端の位置を微調整する場合、上下微調機構のネジ
棒８及び左右方向微調機構のネジ棒１３ａの双方
を回転させて調整を行なう必要があり、調整が著
しく煩雑になるという欠点があつた。

この発明は上述の点に鑑みなされたものであ
り、ワイヤの先端位置の調整が容易に行なえ、且
つ小型化を計つたホツトワイヤ式アーク溶接トー
チを提供することを目的とする。

以下、この発明の一実施例を図について説明す
る。第２図はこの発明の一実施例を示し、第２図
ａは正面図、第２図ｂは部分断面図であり、図に
おいて、１はTIGトーチ、２はタングステンから
なる非消耗電極である。２０はホルダーであり、
ワイヤ加熱部をTIGトーチ１に固定支持する役目
を有している。ホルダー２０にはスリツト２０
ａ，ネジ穴２０ｂ，バカ穴２０ｃが設けられてお
り、ネジ２１によりスリツト２０ａを締め付けて
固定する。２２はスライドベースであり、ホルダ
ー２０に溶接等により固着されている。２３はス
ライドベース２２内に上下に移動可能に配設され
たスライド片であり、その上部にはネジ部２３ａ
が設けられている。２４は調節ナツトであり、ス
ライド片２３のネジ部２３ａに螺合している。ス
ライドベース２２には回り止め２２ａが設けられ
ており、スライド片２３のガイド溝２３ｂに係合
している。スライドベース２２とスライド片２３
とのすき間にはコイルバネ２５がはめ込まれてい
る。２６はガイドホルダーであり、スライド片２
３の下部に設けられた段付部２３ｃに連結されて
いる。ガイドホルダー２６には溝２６ａが、スラ
イド片２３にはネジ２３ｄが切つてあり、セツト
ネジ２７を溝２６ａに当接することにより、ガイ
ドホルダー２６をスライド片２３にロツクする。
ガイドホルダー２６の下端には、その延長線が電
極２に向かうようにネジ２６ｂが切つてあり、こ
のネジ２６ｂにはガイドカバー２８が螺合され
る。このガイドカバー２８の内部には、耐熱絶縁
体で構成されたワイヤガイド２９が挿入されてい
る。また、スライド片２３およびガイドホルダー
２６の内部にも絶縁部材３０が挿入されている。

３１はコンジツトケーブルであり、その他端は
ワイヤ送給装置（図示せず）に接続されている。
３２はストツパーであり、コンジツトケーブル３
１に接着されて一体となり、給電金具３３に挿入
される。給電金具３３にはネジ３３ａが切つてあ
り、セツトネジ３４によりコンジツトケーブル３
１が給電金具３３に固定される。３５はワイヤ加
熱電流を通電する銅線であり、一端が給電金具３
３にろう付されており、他端はワイヤ加熱用電源
（図示せず）に接続されている。３６は給電チツ
プであり、絶縁キヤツプ３７を間にはさんで、給
電金具３３に切つてあるネジ３３ｂと螺合してい
る。図に示すように、絶縁キヤツプ３７の段付部
３７ａと給電チツプ３６の段付部３６ａとを当接
させ、絶縁キヤツプ３７をスライド片２３のネジ
部２３ａにネジ込むことにより、給電部分が微調
整機構に取り付けられる。このとき、絶縁部材３
０の段付部の深さL₁より給電チツプ３６の段付
部の長さL₂を長くしているため、スライド片２
３からガイドカバー２８までの金属部材の電気的
絶縁が保たれる。３８は絶縁カバーであり、給電
金具３３，コンジツトケーブル３１，銅線３５を
覆つており、電気的に外部と絶縁している。

上記銅線３５と給電金具３３とにより、給電チ
ツプ３６にワイヤ加熱電流を通電する通電部を構
成しており、この通電部とスライド片２３とは絶
縁キヤツプ３７を介して絶縁されている。

また、上記給電チツプ３６と、通電部と、絶縁
体である絶縁部材３０及びワイヤガイド２９とに
より給電機構を構成している。

次に、この第２図の実施例装置の動作について
説明する。先ず、ワイヤ送給装置（図示せず）か
ら送給されたワイヤ７は、コンジツトケーブル３
１、給電チツプ３６，絶縁部材３０，ワイヤガイ
ド２９を通つて電極２の近傍に送られる。一方、
ワイヤ７への通電は、ワイヤ加熱電源（図示せ
ず）から銅線３５，給電金具３３，給電チツプ３
６を経て、給電チツプの下端３６ｂにて行なわれ
る。これより後においてワイヤ７は、絶縁部材３
０，ワイヤガイド２９により電気的に絶縁されて
いるため、ワイヤ７は、給電点３６ｂから、母材
間（以下加熱距離）のワイヤの電気抵抗により加
熱される。なお、電流を大きくしてワイヤ７にお
ける発熱量を大きくするためには、給電部分を大
きく構成する必要があるので、手溶接用の溶接ト
ーチとしては好ましくない。従つて、ワイヤ７を
加熱するための電流値を実用的な範囲にとどめる
ためには、加熱距離を適正に選ぶ必要がある。実
験的には、加熱電流を150A以下で使用する場合、
加熱距離を60〜70mmに選択すると好適な溶接条件
が得られた。従つて給電点より後のガイドホルダ
ー２６及びガイドカバー２８の部分は、本実施例
のように、絶縁部材３０や絶縁ガイド２９により
電気絶縁を保ちつつ、ワイヤ７をアーク部へ案内
する必要がある。

次に電極２に対するワイヤ７の位置の微調整に
ついて説明する。上下方向の微調整は調節ナツト
２４にて行なう。コイルバネ２５の上端はスライ
ドベース２２に、下端はスライド片２３に当接し
ているため、スライド片２３は常に下方へ移動す
る力を与えられている。しかしながら、スライド
片２３の上部ネジ２３ａに螺合した調節ナツト２
４がスライドベース２２の上部に当接するため、
スライド片２３の位置は調節ナツト２４の位置に
より決められる。すなわち、調節ナツト２４を左
へ回転させると、コイルバネ２５は伸びてスライ
ド片２３は下方へ移動し、逆に右へ回転させる
と、コイルバネ２５は圧縮されてスライド片２３
は上方へ移動する。このとき、回り止め２２ａが
ガイド溝２６ａに係合しているため、調節ナツト
２４を回転させてもスライド片２３は回転せず、
上下移動だけを行なう。

次に、左右方向の調整はガイドホルダー２６の
回転によつて行なう。セツトネジ２７を少し緩め
ると、ガイドホルダー２６はスライド片２３の段
付部２３ｃを軸受として自由に回転できる。しか
して、ガイドホルダー２８およびワイヤガイド２
９はガイドホルダー２６の中心軸に対して斜めに
取り付けられているため、ワイヤ７の先端はガイ
ドホルダー２６の回転に対して円弧を描く。従つ
て、タングステン電極２の近傍ではほぼ直線的に
左右方向に移動する。このようにして移動調整し
た後、適切な位置において、セツトネジ２７を堅
固にロツクし固定する。

なお、上記実施例では非消耗電極式トーチとし
てTIGトーチを用いて説明したが、プラズマトー
チなど他の消耗電極式トーチでもよい。

また上記実施例では特に、手溶接に適用する場
合について述べているが、もちろん自動溶接にお
いても、トーチの小型化は狭隘部への適用を可能
にするなど、その特長が発揮されることはいうま
でもない。

また、上下微調機構ではコイルバネを用いた
が、コイルバネの代わりに、他の部材とスライド
ベースとで調節ナツトをはさみ込んで調節ナツト
の移動を止めてもよい。

手溶接に適用可能なホツトワイヤ式アーク溶接
トーチの条件としては、(a)小型であること、(b)ワ
イヤ位置の微調整機構を有していること、(c)微調
整機構等露出部が電気絶縁されていること、(d)加
熱距離が十分であること、(e)は給電チツプ等の消
耗部品の交換が容易な構成であることなどが挙げ
られる。

この発明装置では、上記ホルダーに固着された
スライドベースと、このスライドベース内に保持
されて上下に移動可能なスライド片と、上記スラ
イドベース上端部に設けられこのスライド片に螺
合して該スライド片を昇降させる調節ナツトと、
上記スライド片下部に回転自在に取付けられ、セ
ツトネジでロツク可能なガイドホルダーと、この
ガイドホルダーの下端に取付けられ、上記非消耗
電極に向けて傾斜配設されたガイドガバーとによ
り上記ワイヤ先端位置微調整機構を構成し、上記
スライド片上部に着脱自在に螺合する絶縁キヤツ
プに上部が係合し、該スライド片内に絶縁物を介
して挿入され、内部を通過するワイヤに給電する
給電チツプと、上記スライド片とは上記絶縁キヤ
ツプを介して絶縁され、この給電チツプにワイヤ
加熱電流を通電する通電部と、上記スライド片、
ガイドホルダー及びガイドカバー内に挿入され、
上記給電チツプ下端の給電点から所定の加熱距離
を確保して内部を通過するワイヤを絶縁させるた
めの絶縁体とからなる給電機構を設けるという構
成をとつたことから、装置を小型化できることと
なり、また、ワイヤ先端位置を上下、左右両方向
に容易に微調整でき、しかも絶縁キヤツプ等を離
脱させて分解することにより給電チツプ等の消耗
部品を容易に交換することができて操作性を向上
させることができる。

さらに、ワイヤの加熱距離を所定距離にしたか
ら、ワイヤが適切に加熱されて良好な溶接を行な
うことができ、かつ、給電部分もコンパクトにな
つて容易に手溶接ができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のホツトワイヤ式アーク溶接トー
チを示す構成図、第２図は、この発明の一実施例
による、ホツトワイヤ式アーク溶接トーチを示
し、第２図ａは平面図、第２図ｂは部分断面図で
ある。 １……アーク溶接トーチ、２……非消耗電極、
７……ワイヤ、２０……ホルダー、２２……スラ
イドベース、２３……スライド片、２４……調節
ナツト、２６……ガイドホルダー、２７……セツ
トネジ、２８……ガイドカバー、３６……給電チ
ツプ、３６ｂ……給電点、３７……絶縁キヤツ
プ。なお、図中同一符号は同一または相当部分を
示す。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ワイヤが通過する中心軸が非消耗電極にほぼ
   平行になるように、ホルダーを介してワイヤ先端
   位置微調整機構を配設したアーク溶接トーチにお
   いて、 上記ホルダーに固着されたスライドベースと、 このスライドベース内に保持されて上下に移動
   可能なスライド片と、 上記スライドベース上端部に設けられこのスラ
   イド片に螺合して該スライド片を昇降させる調節
   ナツトと、 上記スライド片下部に回転自在に取付けられ、
   セツトネジでロツク可能なガイドホルダーと、 このガイドホルダーの下端に取付けられ、上記
   非消耗電極に向けて傾斜配設されたガイドカバー
   とにより上記ワイヤ先端位置微調整機構を構成
   し、 上記スライド片上部に着脱自在に螺合された絶
   縁キヤツプと、 この絶縁キヤツプに上部が当接し、上記スライ
   ド片内に絶縁物を介して挿入され、内部を通過す
   るワイヤに給電する給電チツプと、 上記スライド片とは上記絶縁キヤツプを介して
   絶縁され、上記給電チツプにワイヤ加熱電流を通
   電する通電部と、 上記スライド片、ガイドホルダー及びガイドカ
   バー内に挿入され、上記給電チツプ下端の給電点
   から所定の加熱距離を確保して内部を通過するワ
   イヤを絶縁させるための絶縁体とを設けたことを
   特徴とするホツトワイヤ式アーク溶接トーチ。