JPS6221142Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、車輛用デイスクブレーキのロータに
関し、特に制動時の鳴音を抑制し得る通風型デイ
スクブレーキロータに関するものである。

デイスクブレーキの作動時に不快なノイズが発
生することがある。これはブレーキの鳴きと称
し、デイスクブレーキロータとこれに押圧される
摩擦パツドとの摩擦振動によるデイスクブレーキ
ロータの共振振動がその大きな原因となつてい
る。これに対し、デイスクブレーキロータの剛性
や材質を変更する等の対策が為されて来たが、型
式や使用履歴等に対してその効果が一定せず未だ
現実的かつ決定的な鳴き防止手段は知られていな
い。

本考案者は以上の事情を背景として鋭意研究を
重ねた結果、デイスクブレーキの鳴きが発生して
いる場合の通風型デイスクロータが、その円周方
向の節（節自体が円周方向に沿つて延びるもので
あつて、円周節と称することとする）を含んでお
らず殆んどその直径方向の節（直径節）を殆んだ
振動モードで振動している事実を見い出した。本
考案は以上の知見に基づいて為されたものであ
る。

すなわち、本考案の要旨とするところは、イン
ナ側摩擦板部とアウタ側摩擦板部との間におい
て、その内周縁から外周縁に至る通風が可能であ
るようにインナ側摩擦板部とアウタ側摩擦板部と
を結合する結合壁を備えたデイスクブレーキロー
タにおいて、その結合壁を、内周縁と外周縁との
中間位置において当該デイスクブレーキロータの
回転中心を中心とする一円周上に形成され、内周
縁側と外周縁側とを連通させる通風孔を備えた周
壁部と、その周壁部より外周縁側においてほぼ半
径方向に延びる外壁部と、周壁部より内周縁側に
おいてほぼ半径方向に延びる内壁部とを含むもの
としたことにある。

以下、本考案の一実施例を示す図面に基づいて
詳細に説明する。

第１図及び第２図において、２はベンチレーテ
ツドタイプ（通風型）のデイスクブレーキロータ
であり、一方の端面に取付用の穴４を備えた筒状
部６と該筒状部６の他端に半径方向外向きに突設
されたフランジ状の摩擦板部とから構成されてい
る。その摩擦板部は、インナ側摩擦板部８とこれ
に一定の間隔を保つて重ねられた状態のアウタ側
摩擦板部１０とから成り、結合壁によつてこれ等
の摩擦板部８，１０が結合されている。

その結合壁は、摩擦板部８，１０の内周縁１２
と外周縁１４との中間位置においてデイスクブレ
ーキロータ２の回転中心を中心とする一円周上に
形成された周壁部１６と、この周壁部１６から外
周縁１４に向つて半径方向に形成された複数の外
壁部１８と、周壁部１６から内周縁１２に向つて
半径方向に形成された内壁部２０とから構成され
ている。この内壁部２０は周壁部１６に対して外
壁部１８と非対称に設けられている。すなわち、
外壁部１８は外周縁１４に沿つて等間隔に１２箇
所に形成されているのに対し、外壁部１８の円周
方向の位置及び形状（壁の円周方向の厚み）と異
なつて円周方向の厚みが厚い内壁部２０が内壁縁
１２に沿つて３箇所に形成されている。尚、周壁
部１６には３ヶ所の通風孔２２が円周上等間隔に
形成されており、この通風孔２２間の周壁部１６
の円周方向の長さが内壁部２０の厚みと一致して
いるので、これ等の壁１６，２０で半径方向に厚
い円弧状の壁を成しているように見える。

以下、本実施例の作用効果を説明する。

車輪とともに回転するデイスクブレーキロータ
２のイント側摩擦板部８及びアウタ側摩擦板部１
０に図示しない摩擦パツドが押圧されると、その
摩擦部分に摩擦振動が発生しデイスクブレーキロ
ータ２が該摩擦振動によつて振動させられる。し
かしながら、デイスクブレーキロータ２は、従来
のロータと異なり、直径節を有するモードの振動
が発生し難く、デイスクブレーキロータ２自体の
共振に基づく鳴音が極めて小さいのである。すな
わち、インナ側摩擦板部８とアウタ側摩擦板部１
０とが結合されている結合壁部分は相互の自由振
動が抑制されるのでそれ等摩擦板部８，１０の振
動における節となる。このため、摩擦板部８，１
０は、周壁部１６部分と一致した円周節を有する
振動モードにおいて共振する。換言すれば、摩擦
運動を受けた摩擦板部８，１０が結合壁の作用に
よつて直径節を殆んど含まず円周節による振動モ
ードで振動させられるように構成され、この振動
モードにおけるデイスクブレーキロータ２の振動
には可聴周波数帯域の振動が殆んど含まれないの
である。このような効果は周壁部１６に基づくも
のであるから、デイスクブレーキロータの型式や
材質に拘らず得られるのである。

また、摩擦板部８，１０は周壁部１６より外周
縁側において外壁部１８によつて、また、内周縁
側においては内壁部２０によつて互いに結合され
ており、しかも外壁部１８と内壁部２０とは半径
方向、すなわち周壁部１６と直交する方向に延び
ているため摩擦板部８，１０全体の剛性が従来よ
り高められており、これによつてもデイスクブレ
ーキロータ２に可聴周波数帯域の振動が発生し難
くなり、鳴音防止効果が高められている。

しかも本実施例においては、外壁部１８と内壁
部２０とが周壁部１６を境にして喰違つて配置さ
れているので、鳴音を発生し易い直径節が上記振
動に一層含まれ難いのである。

次に本考案の他の実施例を説明する。

第３図及び第４図において、結合壁は、内周縁
３２と外周縁３４との中間位置において一円周上
に形成された周壁部３６と、この周壁部３６から
外周縁３４に向つて半径方向に形成された複数の
外壁部３８と、周壁１６から内周縁３２に向つて
半径方向に形成された内壁部４０とから構成され
ている。そして、外壁部３８は前述の外壁部１８
と同様に外周縁３４に沿つて等間隔に12箇所形成
され、周壁部３６の外壁部３８の中間位置には内
周縁３２側から外周縁３４側へと通風を許容する
通風孔４２がそれぞれ設けられている。また、内
壁部４０は、周壁部３６に対して外壁部３８と非
対称位置に設けられている。すなわち、４箇所目
毎の通風孔４２を挟んで３対の内壁部４０が内周
縁３２に沿つて設けられている。

したがつて、本実施例によれば前述の実施例と
同様の効果に加えて、通風孔４２が多いため冷却
効率が高く、しかも特に内壁部４０の容積が小さ
いのでデイスクブレーキロータが軽量となる利点
がある。

尚、上述したのはあくまでも本考案の一実施例
であり、本考案はその精神を逸脱しない範囲にお
いて種々変更が加えられ得るものである。

たとえば、外周縁１４，３４と内周縁１２，３
２との中間位置の一円周上に形成される周壁部１
６，３６は、種々の型式のデイスクブレーキロー
タの特性に応じ、中央位置のみならずその中間位
置の範囲内において最も鳴き防止効果のある位置
に設けられ得るのである。

また、外壁部１８，３８及び内壁部２０，４０
の形状、位置及び配置数は種々変更が加えられ得
るものであり、外壁部１８，３８と内壁部２０，
４０とは周壁部１６，３６を境にして喰違つて配
置されておれば一層の効果が得られるのである。

以上詳記したように、本考案のデイスクブレー
キロータにおいては、インナ側摩擦板部とアウタ
側摩擦板部とが半径方向の中間部において円周方
向に延びる周壁部によつて互いに結合されている
ため、直径節を有する振動モードが発生し難く、
可聴周波数領域の振動の発生が良好に防止され、
デイスクブレーキロータの形状や材質に拘らず制
動時の鳴音が低減する効果が得られる。

また、本考案に係るデイスクブレーキにおいて
は、インナ側摩擦板部とアウタ側摩擦板部とが周
壁部の外側と内側とにおいて、ほぼ半径方向に延
びる外壁部と内壁部とによつて互いに結合されて
いるため、摩擦板部の剛性が高くなり、周壁部に
よつて結合された半径方向の中間部のみならず、
外周縁側及び内周縁側においても振動し難く、そ
の点からも鳴音防止効果が高められる。

しかも、周壁部には、内周縁側から外周縁側へ
の通風を許容する通風孔が形成されており、か
つ、周壁部、外壁部および内壁部から成る結合壁
はデイスクブレーキロータの放熱面積を増大させ
る上でも有効であるため、通風型デイスクブレー
キ本来の冷却性も良好に維持されるのである。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は本考案の一実施例を示す一
部を切欠いた正面図及び縦断面図である。第３図
及び第４図は本考案の他の実施例を示す第１図及
び第２図に相当する図である。 ２：デイスクブレーキロータ、８：インナ側摩
擦板部、１０：アウタ側摩擦板部、１２，３２：
内周縁、１４，３４：外周縁、｛１６，３６：周
壁部、１８，３８：外壁部、２０，４０：内壁
部｝（結合壁）、２２，４２：通風孔。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 インナ側摩擦板部とアウタ側摩擦板部との間に
   おいて、その内周縁から外周縁に至る通風が可能
   であるようにインナ側摩擦板部とアウタ側摩擦板
   部とを結合する結合壁を備えた通風型デイスクブ
   レーキロータであつて、 その結合壁が、前記内周縁と前記外周縁との中
   間位置において当該デイスクブレーキロータの回
   転中心を中心とする一円周上に形成され、内周縁
   側と外周縁側とを連通させる通風孔を備えた周壁
   部と、その周壁部より前記外周縁側においてほぼ
   半径方向に延びる外壁部と、周壁部より前記内周
   縁側においてほぼ半径方向に延びる内壁部とを含
   むことを特徴とする鳴音防止用デイスクブレーキ
   ロータ。