JPS6156045B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、エンドミル等の回転切削工具に関
する。

〔従来の技術〕

従来のエンドミル等の回転切削工具は、第１図
に示すようにシヤンクに続く切刃のすくい面を軸
方向に連続的な複数条の波形状とし、この外周に
適当な逃げ角を付すことにより、切刃稜の外周回
転軌跡が振巾の小さな波形の切刃を、その波形ピ
ツチ／切刃条数だけ順次軸方向に位相をずらした
ものがある。これを第１の工具という。

また、特開昭51―137186号公報には多重円形植
込刃型のフライス（以下、第２の工具という）が
開示されている。この第２の工具は環状の体部
と、前記体部の周部に形成された複数個の別個の
植込刃用ポケツトとを有し、前記ポケツトの各々
には前記体部の軸方向の面内にその切削面（すく
い面に相当する）を有する植込刃を保持するため
の座を有する割出し可能なフライスである。

〔発明が解決しようとする問題点〕

しかしながら第１の工具においては、すくい面
の波形が切削、鋳造、鍛造等の加工によらざるを
得ないので、超硬合金等の非熱処理形工具材料を
使用することはできず、高速度工具鋼等の熱処理
形工具材料を使用して加工していた。そのため工
具寿命が短いという問題点を有していた。

超硬合金等においては、予備焼結時点で成形す
る方法もあるが、加工の困難さに加えて、本焼結
後の精度低下もあり、更には素材が極めて高価な
ことからコスト高となり現実的ではない。

また、第１の工具においては切削加工中の切屑
の処理においても一刃当りの送りが切刃稜の外周
回転軌跡波形の振巾より小さい場合に限られ、従
つて比切削抵抗の低減効果は一刃当りの送りが大
きい程大きくなるので、その効果が極めて小さな
領域での切削に限られている。また波形底部に達
する送りをとつた場合、切屑の分断とその効果は
全くなくなるばがでなく、逆に凹円弧すくいでの
切屑も行われ、凸円弧すくいと全く逆の現象が生
じることになり、第１の工具の連続波形の刃形が
もつ決定的な問題点となつている。

さらに、第１の工具においては比較的外径の大
きな転削工具では、連続波形をもつ超硬合金等の
切刃片をロー付等によつて固着した場合、ロー付
応力は波形底部に集中して、ロー付クラツクが発
生しやすく、かつ残留応力と切削時の応力集中に
より、破損事故が起こり易いことである。そのう
え不要な波形底部をも高価な材料で製作されるこ
とになり、切刃の一部が欠損しても切刃片全体を
交換しなければならない等不経済であるという問
題点をも有していた。

一方、第２の工具においては、円筒状の植込刃
がその中空部を透通するアレン型頭付ねじによつ
て植込刃ポケツト内に固定されており、植込刃の
先端面がすくい面となつている。このように第２
の工具は平面状のすくい面を有するが故に、切刃
稜が被削材と接触する切削開始点において個々の
切刃稜の全体が同時に接触するので、切削抵抗が
高く、衝撃が大きいので、高速送り、深切込みが
むずかしく高速切削の高能率加工ができないとい
う問題点を有していた。

この発明は、上記した事情に鑑みてなされたも
のであり、高速送り、深切込み、高速切削の高能
率加工が可能である回転切削工具に関し、その目
的とするところは、工具寿命が長く、かつ従来の
設備で工具の刃縁を容易に再研削できる経済的な
回転切削工具を提供するにある。またこの発明の
他の目的は、工具の切刃を凸円弧状の切刃片を不
連続に配置することにより、切削抵抗を軽減し、
かつ超硬合金等の非熱処理形工具材料の利用によ
り耐摩耗性を高めた切削工具を提供するにある。

〔問題点を解決するための手段〕

この発明は上記目的を達成するため、先端面に
逃げ面が形成され、側面に凸曲面からなるすくい
面が形成されるとともに上記逃げ面とすくい面と
の交差箇所に切刃稜が形成された複数の柱状切刃
片が、上記柱状切刃片の凸曲面を工具本体の回転
方向側へ突出させるとともに上記柱状切刃片の軸
心を工具本体の軸心と略直角をなすように、かつ
上記柱状切刃片の軸心が工具軸心に向かうように
して上記柱状切刃片の先端面を突出させて工具本
体の軸方向に形成された複数列の直刃溝又は螺旋
条刃溝の溝壁に沿つて固着され、かつ相互の上記
柱状切刃片は工具本体回転軌跡上において各々の
切刃片列の間隔を埋め合うように１つの切刃列の
切刃片の間隔を他の切刃列の切刃片が埋め合い可
能な間隔を維持して不連続に配置されていること
を特徴としている。

〔作用〕

すくい面が凸曲面となつているので、切刃稜が
被削材と接触する部分は切削の進行に従つて移行
する。即ち、切削開始点においてはすくい面とな
つている凸曲面の頂点に相当する切刃稜の部分が
当接し、切削の進行に従つて上記凸曲面に沿つて
形成されている左右対称の切刃稜の部分に移行し
ていく。

〔実施例〕

以下、この発明の実施例を転削工具のエンドミ
ルに応用した場合について第２図ないし第７図に
基づいて具体的に説明する。符号１は工具本体で
あり、工具本体１の先端部２より軸方向に、例え
ば２本の螺旋条刃溝３，４が形成され、その刃溝
３，４に沿つて、超硬合金等から形成された円柱
状切刃片５が所定の間隔ごとにロー付等により固
着されて、上記刃溝３，４間に位置した、切刃片
５の凸曲面状すくい面６が形成される。なお、上
記切刃片５は、刃溝３、および４に沿つて所定間
隔ごとに固着されているが、工具回転軌跡上にお
いて相互の切刃片５が各々の切刃片５列の間隔を
埋め合うように、１つの切刃片列の切刃片５の間
隔を他の切刃列の切刃片５が埋め合つた不連続な
凸円弧状の切刃部が構成される。

また、上記各切刃片５の工具外周側には凸曲面
からなるすくい面６の頂点に沿つて、切刃片５列
に平行な線上に、切削逃げ角αをもつ逃げ面７を
形成する。工具本体１の先端部２に固着された底
刃片８にも逃げ面９を形成する。

上記各切刃片５の切刃稜１０の外周回転軌跡
は、第５図に示すように、１つの切刃列において
不連続の凸円弧状となり、他の刃列がその間隔を
補うことになる。このように各切刃片５の切刃稜
１０は最大でもその切刃片５の直径の幅に形成さ
れる。また、この発明の趣旨は、切刃片５に形成
された凸曲面によりすくい面を形成することにあ
るから、切刃片５は円柱状に限らず、第７図に示
すように、一部凸曲面を有するものであればよ
く、刃溝も螺旋条刃溝に限らず直刃溝のものでも
よく、エンドミルに限らず複数列の刃溝をもつす
べての回転切削工具に適用可能であることはもち
ろんである。

そして、この発明の転削工具は、切刃片５のす
くい面６が不連続の凸曲面となつているので、切
刃稜１０が被削材と接触する部分は切削の進行に
従つて移行する。即ち、切削開始点においてはす
くい面６となつている凸曲面の頂点に相当する切
刃稜１０の部分が当接し、切削の進行に従つて上
記凸曲面に沿つて形成されている左右対称の切刃
稜１０の部分に移行していく。

このようにこの発明の転削工具によれば、切刃
稜１０が被削材と接触する過程は切削の進行に従
つて進行し、切削開始の当初から切刃稜１０の全
体が当接しないので、切削抵抗の低減、及び分散
が計れ、これらの相乗作用により低抵抗、低衝撃
の安定切削ができる。また、切刃片は不連続に配
置されているので切屑は細かく分断される。

〔発明の効果〕

本発明によれば次の効果を得る。

切削衝撃の緩和、切削力とその方向の分散、
切屑の分断効果が大なるうえ、切削抵抗の低減
効果を有し、低抵抗安定切削が可能である。

一刃当りの送りを高くすることができること
から凸円弧すくい面の切削抵抗の低減効果をよ
り生かすことができるので高速送りの重切削加
工においてもより威力を発揮する。

一刃当りの送り量を大きくとつても分断され
た切屑が生成されるため深切込みにおいても高
速送りが可能となる。

連続波形すくい面の欠点である波形底部の凹
円弧面での切削がない。

従来、極めて困難とされていた超硬合金等の
非熱処理工具材料を利用できるので、より高い
切削速度、より速い送りの重切削加工が可能と
なる。

同一の刃溝を有する工具本体にも形状の異な
る切刃片を固着するだけで刃形の異なる工具が
容易に製作できる。

切刃片の一部欠損が生じても、その部分の切
刃片を交換するだけでよく経済的に再生でき
る。

切刃片にかかるロー付応力が小さく、ロー付
時のクラツク、及び残留応力による切削時の破
損が起こり難い。

工具本体は鋼等で造ることができるうえ、高
価な超硬合金等は切刃片のみに最小限使用する
だけであるから全体として安価でかつ強靭な工
具が製造できる。

等、従来の工具にみられないすぐれた実用上の効
果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の実施例を示す回転工具の側面
図、第２図はこの発明の一実施例を示す側面図、
第３図は同上正面図、第４図は第２図Ａ―Ａ断面
図、第５は切刃の外周回転軌跡を示す展開図、第
６図は第２図の外展開図、第７図は切刃片形状の
他の実施例を示す外周展開図である。 １…工具本体、２…先端部、３，４…刃溝、５
…切刃片、６…すくい面、７…逃げ面、８…底刃
片、９…逃げ面、１０…切刃稜、α…逃げ角。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 先端面に逃げ面が形成され、側面に凸曲面か
   らなるすくい面が形成されるとともに上記逃げ面
   とすくい面との交差箇所に切刃稜が形成された複
   数の柱状切刃片が、上記柱状切刃片の凸曲面を工
   具本体の回転方向側へ突出させるとともに上記柱
   状切刃片の軸心を工具本体の軸心と略直角をなす
   ように、かつ上記柱状切刃片の軸心が工具軸心に
   向かうようにして上記柱状切刃片の先端面を突出
   させて工具本体の軸方向に形成された複数列の直
   刃溝又は螺旋条刃溝の溝壁に沿つて固着され、か
   つ相互の上記柱状切刃片は工具本体回転軌跡上に
   おいて各々の切刃片列の間隔を埋め合うように１
   つの切刃列の切刃片の間隔を他の切刃列の切刃片
   が埋め合い可能な間隔を維持して不連続に配置さ
   れていることを特徴とする回転切削工具。