JPS6153140B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、例えば自動車のリングギアの如き線
径の細いリングギアを製造する方法に係り、特に
リング状素材の素材径を内周側から拡張するよう
に素材をテーパポンチで鍛造して外周に歯形を成
形するリングギアの鍛造方法に関する。

一般にダイス２に成形された歯形３に素材５を
充満させる従来のギア鍛造方法では、第１図およ
び第２図に示すように、歯筋の一方に隣接する歯
７を互に連結する余肉部分９あるいは多量のバリ
を備えて成形歯車６が成形される。そのため必然
的に鍛圧力は増大し、能力の大きな鍛造機が必要
となり、かつ型の寿命は短命とならざるを得な
い。および鍛造後に余肉部分９を切除するなどの
多くの機械加工を必要とし、材料の無駄も多い。

また従来のように、素材に軸線方向の圧延荷重
を如え素材外径を増大させて外周に歯形を成形す
る方法は、特に線径の細いリングギアの場合、圧
造比が高くなり歯形の成形が極めて困難であつ
た。そこで、素材の流動性を良くするため高温に
加熱し熱間鍛造すると、膚あれを生じるばかりか
所望の歯精度を得ることができなかつた。

そこで本発明は、このような従来技術の欠点を
除くために工夫されたものであつて、リング状素
材の外周に小さな成形力で精度および強度の高い
歯形を成形できる鍛造方法の提供を目的とする。

本発明の特徴は、内周に歯成形用の歯形が形成
された下型を機台定盤上に固定しておき、その下
型の歯形の内周位置にリング状素材を挿入し、そ
の素材の内周に先端方向に向かつて緩く傾斜する
円錐形外周表面を有するポンチを圧入し、それに
よつてポンチの下降運動をポンチ軸線と直角な平
面方向の拡張運動に変換し、すなわちポンチをく
さびの如く作用させ、リング状素材の素材径を内
周側から拡張させて素材外周を歯形に押し付け、
もつてリング状素材外周に完成歯を成形すること
にある。

以下本発明の実施例のその構成を図面によつて
説明する。

第３図に部分的に示されたリングギア３１を成
形するために用いるリング状素材３０は、引抜き
または圧延加工により所定の断面形状に成形され
た鋼線に巻線加工を施して所望の直径とし、その
突合わせ面を溶接することなどにより、第４図お
よび第６図に示す如く用意される。

第４図は、鍛造装置の要部の断面を表わすもの
で、左半分はリング状素材３０を装着した状態を
示し、右半分はポンチ２６が下降を開始した状態
を示す。ポンチ２６は、その先端側の外周に先端
方向に向かつて緩いテーパ角度θで傾斜する載頭
円錐状の案内部分２７を有し、案内部分２７の上
方には水平方向に広がつた肩部端面２８を介して
案内部分２７より大きな直径の外周に歯形が形成
された外周歯形２９が続けて設けられている。

このポンチ２６は、鍛造装置のラム（図示せ
ず）に上型本体２４および受圧板２５を介して固
定され、機台定盤１１の上面に対向して往復動自
在に装着されている。

鍛造装置の機台定盤１１には、その上面に受圧
板１３およびスペーサリング２２を介し、ダイス
１８が締付リング２１により固定されている。

ダイス１８は、リング状素材３０の外周に歯形
成形するための歯形１９を内周に有し、ポンチ２
６と同一軸心上に固定されている。

１４はノツクアウトで、ポンチ２６軸線方向に
進退自在にポンチ先端と対向して設けられてお
り、その上方に受圧板１３、さらにその上方に円
筒状のノツクアウトリング１５が配置されてい
る。

１２は受圧リングである。

このノツクアウトリング１５の外周にはダイス
１８内周の歯形１９に隙間なく係合する噛合歯形
２０が形成されており、この噛合歯形２０が歯形
１９に噛み合い、この状態でアツクアウトリング
１５の上面が歯形成形空間の型彫底表面１６（第
６図）を形成している。およびこのノツクアウト
リング１５は、ノツクアウト１４の昇降にともな
つて歯形１９に噛み合つた状態のまま、歯形成形
空間を軸線方向に進退するように成つている。

他方ポンチ上方外周の外周歯形２９も、ポンチ
２６が下降した際に、ダイス１８の歯形１９にほ
ぼ隙間なく噛み合い、この状態で外周歯形２９の
下面すなわち肩部端面２８が歯形成形空間の型彫
上面（第８図）を形成する。

つぎに素材内外径と歯形１９内径およびノツク
アウトリング１５内径などの寸法関係について説
明する。

ノツクアウトリング１５の内周上縁３７の内径
は、所望するリングギア３１の内径にほぼ等しく
成形されている。

リング状素材３０は、その外径がダイス１８の
歯形１９の内径よりわずかに小さく、かつその内
径がノツクアウトリング内周上縁３７の内径より
も相当小さく成形されている。およびノツクアウ
トリング内周上縁３７と隣接する素材３０内周の
下方周縁には、ノツクアウトリング内周上縁３７
の内径より相当に大きな直径位置までその周縁が
欠肉された面取り部３２を有する。

また、円錐形状のポンチ案内部分２７は、その
先端側外周の直径がリング状素材３０の内径より
小さく、かつその上端外周の直径がノツクアウト
リング内周上縁３７の内径と同等程度に成形され
ている。

つぎに上記構成の装置の作動をリング状素材３
０の外周に歯形を成形する過程に合わせて説明す
る。

まず第４図左側に示すように、予め用意された
リング状素材３０を歯形成形空間であるダイス１
８の歯形１９内周側位置に挿入する。このとき素
材３０は、第６図に拡大して示すように、素材３
０内周の下方周縁に面取り部３２が形成されてい
るため、ノツクアウトリング１５内周上縁３７よ
りも適当に外周側位置で型彫底表面１６に接して
いる。

つぎに第４図右側に示すように、ポンチ２６を
下降させて案内部分２７を素材３０の内周に進入
させる。これによりポンチ案内部分２７の円錐状
の表面がくさびの如く作用して、第７図に示すよ
うにリング状素材３０の素材径を内周側から拡張
させて素材３０外周をダイスの歯形１９に押し付
ける。

これにより素材３０は、外周側が歯形内の空間
部分に押し込まれるようになる。またこのとき、
素材内周の下方周縁の面取り部３２は、ポンチ２
６の下降にともなつて、ノツクアウトリングの内
周上縁３７と案内部分２７表面との間に向かつて
素材が膨らむため小さくなる。しかし内周上縁３
７と案内部分２７表面との間隔も相対的に小さく
なるので、素材３０がノツクアウトリング１５と
ポンチ２６との間に侵入することがない。

やがて、第５図左側に示すようにポンチが所定
の位置まで下降すると、第８図に示すように素材
３０すなわちリングギア３１は、その上下方向が
ポンチ２６の肩部端面２８とノツクアウトリング
１５の型彫底表面１６とに包囲され、かつその内
外周がポンチ２６の案内部分２７の外周表面とダ
イス１８の歯形１９表面とに包囲される。

このとき、ポンチ２６の外周歯型２９は、ダイ
ス１８の歯形１９と噛み合つた状態で下降してダ
イスの歯形１９の歯と歯の間に押し込まれた素材
を下方に押圧する。しかも歯形１９との対向面間
には隙間が形成されないのでその間に発生するバ
リは微少となる。

他方、ノツクアウトリング１５の内周上縁３７
とポンチ案内部分２７の外周との隙間も、このと
き微少である。

このように素材３０は、最終的にほぼ密封され
た型彫空間の中で押圧されてその空間を充満し、
リングギアとしての形状をほぼ完全に整える。

このように成形が終了すると、第５図右側に示
す如く、まずポンチ２６が上昇し、続いてノツク
アウトリング１５を上昇させて成形されたリング
ギア３１を押し上げる。

このようにして成形されたリングギア３１は、
従来のリングギア鍛造方法により成形されたリン
グギアのような、歯筋の一方に隣接する歯を互に
連結する未成形部分あるいは大きなバリを伴うこ
とが無い。すなわち従来のように素材を軸線方向
に圧延して素材外周に歯を形成するのでなく、素
材を径方向に拡張して素材外周に歯を形成するの
で、転造歯車の如く材料の流れが円滑でフローの
連結が良く、強度的に優れた歯が成形される。し
かも素材外周における材料の流れに無理がないた
め、リングギアの冷間鍛造成形が可能であるばか
りでなく、ダイス１８の歯形１９の摩耗が少な
い。型の摩耗はむしろポンチ２６の案内部分２７
の摩耗の方が大きいが、案内部分２７の摩耗は成
形精度に与える影響が少ないためリングギアの大
量生産においても支障がない。

なお、鍛造装置および素材断面形状などについ
ては、上記実施例の他にも多々考えられるが、以
下その一例を述べる。

第９図は、ポンチ１２６を複数の部品に分割
し、また歯形１１９とノツクアウトリング１１５
とにより型彫底表面１１６を形成した実施例を表
わすもので、図中の記号は第４図の実施例の記号
に対応する箇所に100を加えて示されている。

この実施例でポンチ１２６は、ねじで連結され
たポンチホルダ１３４とマンドレル１３６および
ポンチホルダ１３４に焼ばめされた上型リング１
３８とから成り、上型フランジ１３５により上型
本体１２４に固定されている。

また図示されていないが、鍛造装置に複動プレ
スを使用する場合には、ポンチホルダ１３４と上
型リング１３８とを別々に昇降するようにし、鍛
造時にはまず案内部分１２７を有するポンチホル
ダ１３４を下降させその後に上型リング１３８を
下降するようにしても良い。

またノツクアウトリング１１５の上方は、その
外周が歯形１１９内周側を進退可能な直径を有す
る円筒形になつており、噛合歯形は形成されてい
ない。

およびなお、リングギア３１の歯３３に第３図
に示すようなチヤンフア面４１を成形する場合
は、第４図の実施例においてはノツクアウトリン
グの上面に、また第９図の実施例においては歯形
に対応する型彫形状を成形するか、あるいは第４
図、第９図の両実施例ともポンチの肩部端面に対
応する型彫形状を成形すれば良い。

第１０図は、リング状素材１３０の断面形状の
実施例を表わすもので、断面形状は円形で外周面
そのものが面取り部１３２を呈している。

第１１図は、リング状素材２３０の断面形状の
実施例を表わすもので、断面形状はリングの内外
周に平行な平面２３９，２４０が形成されたほぼ
円形で、内側平面２４０に隣接して面取り部２３
２が設けられている。

以上のように本発明の鍛造方法は、ダイスの歯
形内周に挿入したリング状素材をポンチ外周の緩
やかな円錐状のテーパ面によるくさび作用により
外径方向に拡散させて素材外周に完成歯を成形す
るものであるから、小さな成形力で精度および強
度の高い歯形を予め用意された線径の細いリング
状素材の外周に成形でき、しかも成形はポンチの
下降初期および中期におけるバリの発生がなく後
期において素材を余肉部分のないほぼ密封状態で
鍛造するので、バリおよび余肉部分が微少でかつ
高精度なリングギアを成形することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のリングギア鍛造方法の説明図。
第２図は第１図の方法によつて鍛造されたリング
ギアの断面説明図。第３図はリングギアの部分拡
大斜視図。第４図および第５図は本発明の実施例
を表わすもので、成形過程を段階的に表わす説明
図。第６図乃至第８図は第４図および第５図に示
された成形過程の一部分を拡大して表わす説明
図。第９図は第４図とは別の実施例を表わすもの
で鍛造装置の説明図。第１０図および第１１図は
第６図とは別の実施例を表わすもので素材断面の
説明図である。 （記号の説明）、１１……機台定盤。１５……
ノツクアウトリング。１６……型彫底表面。１７
……下型。１８……ダイス。１９……歯形。２３
……上型。２６……ポンチ。２７……案内部分。
２８……肩部端面。３０……素材。３１……リン
グギア。３２……面取り部。３３……形成歯。θ
……テーパ角度。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 機台定盤上に固定された内周に歯成形用の歯
   形が成形された下型のその歯形の内周位置に少な
   くとも内周の下方側周縁に面取り部が形成された
   リング状素材を挿入し、つぎに前記機台定盤の上
   面に対向して前記下型と同一軸心線上を往復動す
   るポンチを下降させて、そのポンチ先端側の外周
   に形成された先端方向に向かつて緩く傾斜する円
   錐形の案内部分を前記リング状素材の内周に圧入
   し、もつて前記リング状素材を内周側から外径方
   向に拡張して外周に歯形を鍛造することを特徴と
   するリング状素材の外周に歯形を成形する鍛造方
   法。