JPS606582Y2 - エンジンのギヤトレイン潤滑装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、エンジンの潤滑装置に関し、そのなかでも
ギヤケース内において、潤滑油面上に位置するギヤ咬合
部の潤滑装置に関し、このギヤ咬合部を潤滑油温を高く
することなく充分に潤滑することを目的とする。

従来、油面上のギヤ咬合部の潤滑方法として、ギヤケー
ス内の潤滑油面を高くし、潤滑油面上のギヤ咬合部が、
潤滑油中に浸されているギヤで飛散される潤滑油と、ギ
ヤに付着して運ばれてくる潤滑油とにより潤滑されるよ
うにしたものがある。

ところが、このように潤滑油面を高くすると、油面上の
ギヤ咬合部に潤滑油がよく届くが、飛散される潤滑油量
が多くなり、これがギヤケース内の各部を冷却して熱せ
られて潤滑油室に戻るため油温かすぐに高められ、潤滑
効果が低下してしまつＯ 油温の上昇を防止するために、潤滑油面を低くすると、
油面上のギヤ咬合部に潤滑油が届きにくくなり、潤滑不
足になる。

これは、ギヤ咬合部が大きな力の作用する出力関係であ
る場合には大きな問題となる。

この考案は、上記の相反する問題を解消するもので、そ
のために潤滑油面は低くし、ギヤケースのギヤに対面す
る部分をギヤの周面に接近させ、その隙間で油路を形成
し、ギヤの回転によりこの油路で潤滑油を油面上のかな
り遠くて高い所まで移動可能にし、潤滑油面上のギヤ咬
合部を充分に潤滑できるようにしたものである。

以下この考案の実施例を図面に基き説明する。

第１図は縦型ディーゼルエンジンの要部破断側面図、第
２図は縦断正面図である。

このエンジンＥはクランクケース１の前側にギヤケース
２が、下側にオイルパン３がそれぞれ固定され、ギヤケ
ース２の前面はギヤケースカバー４で蓋され、クランク
室５の下部およびギヤケース２内の底部にそれぞれ潤滑
油室６・７が形成されている。

クランク室５下部の潤滑油室６内の潤滑油は、ストレー
ナ８を介して潤滑ポンプ９に吸い込まれ、クランク軸１
０や動弁カム軸などの各潤滑場所に圧送路１１を介して
圧送されるようになっている。

この圧力を一定に保つための圧力調整弁の出口１２はギ
ヤケース２内に開口され、濾過された潤滑油がギヤケー
ス２内の潤滑油室７に常時供給され、その規定油面りは
、両温滑油室７・６を連絡する連通孔１３により一定に
保たれる。

ギヤケース２内には、クランクギヤ１４を中心にして、
その上方の左右に燃料カムギヤ１５と動弁カムギヤ１６
とが、右側方には出力ギヤ１７が下側には潤滑ポンプ駆
動ギヤ１８が、それぞれ配置されている。

そうして、潤滑ポンプ駆動ギヤ１８は直接、燃料カムギ
ヤ１５と動弁カムギヤ１６とはアイドルギヤ１９を介し
て、出力ギヤ１７は出力用伝動ギヤ２０を介して、それ
ぞれクランクギヤ１４で駆動可能に連動連結されている
。

クランクギヤ１４は時計回りに回動し、潤滑ポンプ駆動
ギヤ１８と出力用伝動ギヤ２０は反時計回りに、出力ギ
ヤ１７は時計回りに、それぞれ回動される。

さて、ギヤケース２の周壁２ａのうち出力用伝動ギヤ２
０と出力ギヤ１７との各下周部に臨む部分は、各下周部
に近づけて対面させて潤滑油供給案内面２１に形成され
、この案内面２１と各ギヤ２０・１７の下周部との間に
油路２２が形成されている。

この油路２２の入口２２ａは前記規定油面りより上側で
、潤滑ポンプ駆動ギヤ１８の出力用伝動ギヤ２０に対面
する周面部分の少し回転方向下手側に臨ませて開口され
ている。

最下位に位置している潤滑ポンプ駆動ギヤ１８の下半部
は、規定油面り下にあるから、このギヤ１８が回動する
と、潤滑油が遠心力で斜め上方すなわち出力用伝動ギヤ
２０に向かって掻き出され、入口２２ａから油路２２に
入り、油路２２内を出力用伝動ギヤ２０でギヤポンプの
ように出力ギヤ１７に向かって運ばれる。

そうして、潤滑油の一部が出力用伝動ギヤ２０から遠心
力で出力ギヤ１７に向かって飛ばされる。

すなわち、エンジンＥを始動すれば、ギヤケース２底部
の潤滑油室７の潤滑油が各ギヤ１８・２０の回動により
、ギヤケース２内の高位置にある出力ギヤ１７まで運ば
れ、出力用伝動ギヤ２０および出力ギヤ１７に付着する
潤滑油で、出力ギヤ１７と出力用伝動ギヤ２０との咬合
部２３、さらにはクランクギヤ１４と出力用伝動ギヤ２
０との咬合部２３が良好に潤滑される。

もちろん、潤滑油が潤滑油室７から出力ギヤ１７まで運
ばれる間にかなりの潤滑油がギヤの端面側に漏れてしま
うが、各ギヤ１８・２０はそれぞれ相当の速度をもつ回
転しており、咬合部２３を潤滑するに充分な量は確保さ
れる。

充分な潤滑油量を確実に確保するために、潤滑油供給案
内面２１を出力用伝動ギヤ２０および出力ギヤ１７の各
下周部の真近かに位置させること、潤滑油供給案内面２
１を板材２４で独立部品として造り各ギヤ２０・１７の
各下周部に沿わせてギヤケース２内に固定すること（第
３図および第４図参照）、その板材２４を断面コ字形に
して各ギヤ２０・１７の歯を覆うようにすることが考え
られる。

この考案は以上のように構威し作用するから、つぎの効
果を奏する。

（イ）出力ギヤと出力用伝動ギヤの各下周部とギヤケー
スの潤滑油案内面との間に形成される油路で、各ギヤの
回転により規定油面上にある出力ギヤと出力用伝動ギヤ
との咬合部まで潤滑油を持ち上げられるようにしたから
、潤滑油規定油面よりかなり遠くて高い位置にある咬合
部を強制的に潤滑することができる。

そのうえ、冒述の規定油面を高くしたものに比ベギヤに
よりギヤケース内に飛散される潤滑油量が過多になるの
を防ぎ、潤滑油温が高く、なることはないから、潤滑効
果が低下することもなく、良好に潤滑できる。

（ロ）潤滑油を規定油面上のギヤ咬合部まで移動させる
ための構造は、出力ギヤと出力用伝動ギヤの各下周部に
潤滑油案内面を近づけて形成するだけの簡単なものであ
り、特別な配管は不要であるから容易かつ安価に実施で
きる。

（ハ）潤滑油案内面を板材でギヤケースと別体に造る場
合には、新規のエンジンにはもちろん、既存のエンジン
にも適用することができる。

に）潤滑油を潤滑油室から潤滑場所であるギヤの咬合部
まで、導くための動力源は、ギヤの回転であるから、エ
ンジンの始動により直ちに潤滑がはじめられる。

したがって、潤滑油を圧送する場合のようには作動遅れ
がないうえ、圧送路の油漏れによる潤滑不足を起こすよ
うなこともない。

【図面の簡単な説明】

図面はこの考案の実施例を示し、第１図は縦型ディーゼ
ルエンジンの要部破断側面図、第２図は縦断正面図、第
３図は別の実施例を示す第２図相当図、第４図は第３図
ＩＶ−ＩＶ線断面図である。 Ｌ・・・・・・規定油面、２・・・・・・ギヤケース、
２ａ・・・・・・周壁、７・・・・・・潤滑油室、１４
・・・・・・クランクギヤ、１５・・・・・・燃料カム
ギヤ、１６・・・・・・動弁カムギヤ、１７・・・・・
・出力ギヤ、１８・・・・・・潤滑ポンプ駆動ギヤ、１
９・・・・・・アイドルギヤ、２０・・・・・・出力用
伝動ギヤ、２１・・・・・・潤滑油供給案内面、２２・
・・・・・油路、２２ａ・・・・・・入口、２３・・・
・・・咬合部、２４・・・・・・板材。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ ギヤケース２内で、クランクギヤ１４の上方左右に
   燃料カムギヤ１５と動弁カムギヤ１６を、横側方に出力
   ギヤ１７を、下側に潤滑ポンプ駆動ギヤ１８をそれぞれ
   配置し、クランクギヤ１４に対して燃料カムギヤ１５と
   動弁カムギヤ１６はアイドルギヤ１９を介し、出力ギヤ
   １７は出力用伝動ギヤ２０を介して連動連結し、ギヤケ
   ース２内の底部に潤滑油室７を形成し、潤滑油室７の規
   定油面り下に潤滑ポンプ駆動ギヤ１８の下半部を位置さ
   せ、各ギヤ１８，２０．１７について、潤滑ポンプ駆動
   ギヤ１８は出力用伝動ギヤ２０に臨む周面部分が上向き
   に回転し、出力用伝動ギヤ２０はその下周部が出力ギヤ
   １７に向かって回転し、出力ギヤ１７はその下周部が出
   力用伝動ギヤ２０に向かって回転するように設定し、潤
   滑油供給案内面２１を出力用伝動ギヤ２０の下周部と出
   力ギヤ１７の下周部とにわたって近づけて対面させ、潤
   滑油供給案内面２１と出力用伝動ギヤ２０および出力ギ
   ヤ１７との間に、出力用伝動ギヤ２０と出力ギヤ１７と
   の咬合部２３に潤滑油を供給する油路２２を形成し、こ
   の油路２２の入口２２ａを、潤滑油室７の規定油面りよ
   りも上側で、潤滑ポンプ駆動ギヤ１８の出力用伝動ギヤ
   ２０に対面する周面部分の少し回転方向下手側に臨ませ
   て開口したことを特徴とするエンジンのギヤトレイン潤
   滑装置。 ２ 実用新案登録請求の範囲第１項に記載したエンジン
   のギヤトレイン潤滑装置において、ギヤケース２の周壁
   ２ａを出力用伝動ギヤ２０および出力ギヤ１７の各下周
   部に接近させて形成し、この接近させた周壁２ａの内面
   で潤滑油供給案内面２１を形成したもの。 ３ 実用新案登録請求の範囲第１項または第２項に記載
   したエンジンのギヤトレイン潤滑装置において、潤滑油
   供給案内面２１を出力用伝動ギヤ２０および出力ギヤ１
   ７の各下周面の真近かに接近させたもの。 ４ 実用新案登録請求の範囲第１項に記載したエンジン
   のギヤトレイン潤滑装置において、潤滑油供給案内面２
   １を板材２４で独立部品として造り、ギヤケース２内に
   固定したもの。