JPS5919771Y2 - ２サイクルエンジンの潤滑装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、特にシュニート掃気式２サイクルエンジンの
潤滑装置に関し、詳しくは、高温の燃焼ガスが排出され
る排気ポート付近のシリンダとピストンとの間の潤滑性
能の向上を図るものに関する。

シュニーレ掃気式の２サイクルエンジンでは、掃気ポー
トと排気ポートが、シリンダ中心に対して、一方向側に
配設されているので掃気行程中にシリンダ内に供給され
るオイル混合ガスは、主として排気ポートと反対の側に
充填されてしまい、排気ポート側へのオイルの供給がよ
く行われない。

ところが、排気ポートからは、常時高温の燃焼ガスが排
出されるので、排気ポート付近のシリンダは、高温に加
熱され他の部分に比べて多量の潤滑用オイルを供給され
ることが望まれる。

従って、シリンダとピストンの間では、特に排気ポート
付近の潤滑状態が悪い傾向にあり、低燃費、オイル混合
比の低減化を図る場合には、低温時始動値後の急加速運
転、高負荷運転後の急減速運転等の過酷運転の際に、ピ
ストンの焼付、スカッフィング、シリンダ排気ポート側
上部の段摩耗等の問題を生じ易い。

本考案は、このような問題を解決するためなされたもの
で、シリンダ本体の排気ポート近傍と一致するピストン
のピストンリング部分に、ピストンの内側から外側のピ
ストンリング溝へ向は斜め上向きに噴油孔を穿設すると
共に、該噴油孔がピストンの内側に連通ずるオイル戻し
孔を設け、掃気、排気行程におけるクランク室圧力とク
ランクウェブの飛沫作用でクランク室に溜っているオイ
ルを、上記噴油孔を介して、排気ポート近傍のシリンダ
とピストンとの間に供給するようにしたものである。

なお、本考案に関連する先行技術例として実公昭５２−
２５５７１号公報に記載されたものがあるが、これは、
クランク室内の混合気を、排気ポートに縦方向に位置す
るよう設けた縦方向のリブに、ピストンの上記リブと接
する壁に設けた貫通孔を介し、しかも該孔より洩出しな
いように供給して、ノブとピストンとの間の潤滑を行う
ようにしたものである。

以下、図面を参照して本考案の一実施例を具体的に説明
すると、第１図ないし第３図において、符号１はシリン
ダ２を有するシリンダ本体であり、このシリンダ本体１
の一方に、クランク室３を形成するクランクケース４が
あり、その他方に、燃焼室５を形成するシリンダヘッド
６がある。

りランクケース４内部には、クランク軸７が回転自在に
枢支されており、このクランク軸７は、扇形のクランク
ウェブ８を取付けると共に、シリンダ２内部に挿入され
たピストン９にコンロッド１０を介して連結されている
。

ピストン９の頂部付近には、例えば２本のピストンリン
グ溝１１が形成されて、この溝１１内に、それぞれピス
トンリング１２が回り止めして嵌込まれている。

また、シリンダ２には吸気ポート１３が、該ポート１３
より燃焼室側の高所には排気ポート１４がそれぞれ設け
られ、排気ポート１４より少し低い所に、掃気ポート１
５が排気ポート側からその反対の側に斜めに設けられ、
この掃気ポート１５が通路１６を経てクランク室３に連
通している。

このようなシュニーレ掃気式の２サイクルエンジンにお
いて、本考案によると、ピストン９のリングゾーン部９
ａに噴油孔１７が穿設されるものである。

この噴油孔１７は、シリンダ本体１の排気ポート１４の
近傍の部分１ ａ、 １ ｂと一致した個所において、
ピストン９の径方向にピストン内側がら外側のピストン
リング溝１１に向は至るよう斜め上向きに形成される。

なお、符号１８はオイル戻し孔である。

そして、このように構成されることで、ピストン９が上
死点にあって燃焼室５内の混合ガスが圧縮されて爆発す
るとき、吸気ポート１３のみが開いてオイル混合ガスが
クランク室３に導入される。

次いで燃焼室５の混合ガスが燃焼膨張してピストン９が
下降し、これにより吸気ポート１３が閉塞してクランク
室３内のガスは圧縮され′るようになり、さらにピスト
ン９が下降してその頂部が排気ポート１４の頂部を通り
過ぎてそれを開くと燃焼ガスは排出され始めるが、その
直後ピストン９の頂部が掃気ポート１５の頂部を通って
それを開くことで、クランク室３の圧縮されたオイル混
合ガスが通路１６を介してシリンダ２内の排気ポート１
４と反対側に流れ込み、シリンダ２内では新しいオイル
混合ガスが燃焼ガスを押し出しその内部に充填され、掃
気作用が終了するのである。

このような吸気から排気と掃気に至る行程における燃焼
室５とクランク室３の圧力は、それぞれ第４図の曲線ａ
、 ｌ）で示され、これによれは゛、吸気行程Ｓ１で
は燃焼室圧力が高く、クランク室圧力は低い負圧になっ
ており、排気行程Ｓ２と掃気行程Ｓ３では、燃焼室圧力
が略零でクランク室圧力が高い状態から低い状態に変化
していることがわがる。

このようにピストン９が下降している排、掃気行程中ク
ランク室３の圧力と共にピストン９の背圧が高くなり、
クランク室３の底に溜っているオイルは、クランクウェ
ブ８により下方がら上方へと掻き上げ飛散され、ピスト
ン９の内側がら外側のピストンリング溝１１に向けて斜
め上方に上向きに形成された噴油孔１７を介して、該リ
ング溝へ噴出されるが、その際ピストン９が下降中のた
めピストンリング１２は、その上側がピストンリング溝
１１の上側と接触しその下側と該リング溝１１の下側と
の間には間隙が生成されているので、上記の該リング溝
１１に噴出されたオイルは、上記間隙をピストンリング
溝１１の円周の両側方に沿い拡散して、シリンダ本体１
の排気ポート１４の近傍の部分１ａ、ｌｂとこれと対向
するピストン９との間にわたって供給され、この部分の
潤滑と冷却が行われるのである。

なお、こうして供給されたオイルの過量分はピストンリ
ング１２で掻き落し集合された後に、オイル戻し孔１８
を経てピストン内側に戻される。

このように本考案によると、燃焼ガスの通過により高温
加熱されると共に、オイル混合ガスの回りの遅い排気ポ
ート近傍のシリンダ２とピストン９との間の摺動部には
、円周方向にわたり、常時オイルが供給されて該摺動部
を良く潤滑、冷却作用するので、その部分の潤滑性能が
著しく向上し、過酷な運転の際のピストン焼付、スカッ
フィングが解消され、排気煙対策のためのオイル混合比
の低減化を図ることができ、また、従来トップリング部
分のオイルコントロールができないとの理由で、小型高
速エンジンの共通欠陥であった上死点トップリング付近
のシリンダ段摩耗問題も解消され、ピストン９のスラッ
プ音対策にも効果があり、しかも、これらの効果は、ク
ランク室３の圧力やクランクウェブ８の飛沫作用を利用
したもので、単に噴油孔１７を、上記のように穿設する
という既製のものにも容易に施し得る簡単な構造により
達成することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案による２サイクルエンジンの潤滑装置の
一実施例を示す断面図、第２図は要部の拡大断面図、第
３図は第２図のＩＩＩ−ＩＩＩ断面図、第４図は燃焼室
およびクランク室の圧力線図である。 １・・・・・・シリンダ本体、ｌａ、ｌｂ・・・・・・
部分、２・・・・・・シリンダ、３・・・・・・クラン
ク室、４・・・・・・クランクケース、５・・・・・・
燃焼室、６・・・・・・シリンダヘッド、７・・・・・
・クランク軸、８・・・・・・クランクウェブ、９・・
・・・・ピストン、９ａ・・・・・・リングゾーン部、
１０・・・・・・コンロッド、１１・・・・・・ピスト
ンリング溝、１２・・・・・・ピストンリング、１３・
・・・・・吸気ポート、１４・・・・・・排気ポート、
１５・・・・・・掃気ポート、１７・・・・・・噴油孔
、１８・・・・・・オイル戻し孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. シリンダ本体の排気ポート近傍と一致するピストンのピ
   ストンリング部分に、ピストンの内側から外側のピスト
   ンリング溝へ向は斜め上向きに噴油孔を穿設すると共に
   、該噴油孔がピストンの内側に連通ずるオイル戻し孔を
   設け、掃気、排気行程におけるクランク室圧力とクラン
   クウェブの飛沫作用でクランク室に溜っているオイルを
   、上記噴油孔を介して、排気ポート近傍のシリンダとピ
   ストンとの間に供給するように構成したことを特徴とす
   る２サイクルエンジンの潤滑装置。