JPH1189572A - アクチン結合蛋白質l−アファディン - Google Patents
アクチン結合蛋白質l−アファディンInfo
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- JPH1189572A JPH1189572A JP9257043A JP25704397A JPH1189572A JP H1189572 A JPH1189572 A JP H1189572A JP 9257043 A JP9257043 A JP 9257043A JP 25704397 A JP25704397 A JP 25704397A JP H1189572 A JPH1189572 A JP H1189572A
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Abstract
新規なアクチン結合蛋白質と、この蛋白質を産業上利用
するための遺伝子材料を提供する。 【解決手段】 列番号1のアミノ酸配列または配列番号
1と実質的に同一のアミノ酸配列を有するアクチン結合
蛋白質l-アファディンと、この蛋白質をコードするcD
NA配列ならびにこのcDNA配列またはその一部配列
がハイブリダイズするゲノムDNA配列、およびl-アフ
ァディンを特異的に認識する抗体。
Description
結合蛋白質l-アファディン(l-Afadin)に関するものであ
る。さらに詳しくは、この発明は、動物の個体形成等に
重要な役割を果たす細胞間密着結合に関与する新規動物
性蛋白質l-アファディンに関するものである。
ば、細胞接着、細胞運動および細胞の形状決定等におい
ては、細胞接着分子、受容体およびチャンネル等の膜貫
通蛋白質によって形成される接着装置が重要な役割を果
たしており、これらの接着装置は、しばしばアクチン性
細胞骨格と結合することが知られている(Biochem. Bio
phys. Acta 737:305-341, 1983; Curr. Opin. Cell Bio
l. 1:103-109, 1989; Cell Motil. Cytoskeleton. 20:1
-6, 1991; Curr. Opin. Cell Biol. 3:849-853,1991; S
cience. 258:955-964, 1992; Curr. Opin. Cell Biol.
4:834-839, 1992; Curr. Opin. Cell Biol. 5:653-660,
1993; Trends Biochem. Sci. 22:53-58,1997 )。従っ
て、アクチン性細胞骨格と細胞質膜とは上記細胞現象に
おいて重要な役割を果たしており、それ故アクチン性細
胞骨格を膜貫通蛋白質に結合させる生体分子の特定に多
大な努力が払われてきた。しかしながら、アクチン性細
胞骨格と細胞質膜との結合に関する分子的基礎について
は、今だ充分に理解されてはいない。
理解するため、これまでに細胞接着部位が最も広範に研
究された(Biochem. Biophys. Acta 737:305-341, 198
3; Curr. Opin. Cell Biol. 1:103-109, 1989; Cell Mo
til. Cytoskeleton. 20:1-6,1991; Curr. Opin. Cell B
iol. 3:849-853, 1991; Science. 258:955-964, 1992;
Curr. Opin. Cell Biol. 4:834-839, 1992; Curr. Opi
n. Cell Biol. 5:653-660, 1993; Trends Biochem. Sc
i. 22:53-58, 1997 )。その結果、アクチン線維(F−
アクチン)に関連する細胞接着部位が2つのタイプ、す
なわち、細胞−細胞接着帯(adherens junctions: A
J)と、細胞−マトリックスAJとに分類されている。
細胞−細胞AJにおいては、その細胞外表面でカドヘリ
ン(cadherin)が互いに相互作用しており、多くの結合
蛋白質が同定されている(Development 102:639-655, 1
988; Cell Motil. Cytoskeleton. 20:1-6, 1991; Scien
ce 251:1451-1455,1991; Curr. Opin. Cell Biol. 4:83
4-839, 1992; EMBO J. 8:1711-1717, 1989; Cell 65:84
9-857, 1991; Science 251:1451-1455, 1991; Curr. Op
in. Cell Biol. 4:834-839, 1992)。これらの結合タン
パク質のうち、α−カテニンは、F−アクチンと直接相
互作用する(Pro.Natl. Acad. Sci. USA. 92:8813-881
7, 1995)と共に、α−アクチニンおよび/またはZO
−1を介してF−アクチンに間接的に相互作用している
(J. Cell.Biol. 130:67-77, 1995;J. CellBiol. 138:1
81-192, 1997 )。また、別のF−アクチン結合蛋白質
であるビンキュリン(vinculin)は、細胞−細胞AJに
集中していることが知られているが、細胞−細胞AJに
おけるその相互作用分子は未だ特定されていない(Cell
Motil. Cytoskeleton. 20:1-6, 1991; Curr. Opin. Ce
ll Biol. 4:834-839, 1992)。さらに、細胞外表面にお
いてインテグリン(integrin)がマトリックス蛋白質と
相互作用する細胞−マトリックスAJでは、その細胞質
ドメインは、α−アクチニン、ビンキュリン、タリン
(talin )等のF−アクチン結合蛋白質と、直接または
関節的に相互作用している(Ann. Rev. Cell Dev. Bio
l. 11:379-416, 1995)。
白質が、アクチン性細胞骨格と細胞質膜のカドヘリンお
よびインテグリンとの結合因子(linker)として作用し
ていると考えられている。一方、アクチン性細胞骨格と
細胞質膜との結合は、神経細胞に特異的な現象(例え
ば、成長円錐の伸長やその後のシナプス結合の形成およ
び維持等)にとっても重要である(Neuron 1:761-772,
1988; Science 242:708-715, 1988; Curr. Opin. Neuro
biol. 4:43-48, 1994; Curr. Opin. Neurobiol. 4:640-
647, 1994; Cell 83:171-176, 1995)。しかしながら、
これらの神経細胞に特異的な現象において、どのような
分子がアクチン性細胞骨格を細胞質膜に結合させている
かは明らかではない。
明者等は、ラットの脳から幾つかの新規なF−アクチン
結合蛋白質を単離し、特に神経細胞に特異的で、シナプ
スに多く存在する蛋白質の構造を解析し、既に特許出願
している(特願平9−92615号)。この先願発明の
蛋白質(以下、発明者等の命名に従って「ニューラビ
ン」(neurabin) と記載する)は、1つのF−アクチン
結合ドメインと、1つのPDZドメインを有している。
PDZドメインは様々な蛋白質に見出されており、その
うちの幾つかは細胞間結合に局在している。例えば、シ
ナプス結合におけるPSD−95/SAP90(Neuro
n. 9:929-942, 1992; J. Biol. Chem. 268:4580-4583,
1993 )、隔膜結合におけるDlg(Cell. 66:451-464, 1
991)、密着結合におけるZO−1およびZO−2(J.
Cell Biol. 193:755-766, 1986; Proc. Natl. Acad. Sc
i. USA. 88:3460-3464, 1991; J. Cell Biol. 121:491-
502,1993; J. Cell Biol. 123:1049-1053, 1993; Proc.
Natl. Acad. Sci. USA. 90:7834-7838, 1993; J. Cell
Biol. 124:949-961, 1994)等である。また、最近の研
究から、PDZドメインは標的蛋白質のユニークなC−
末端モチーフに結合することが明らかにされたが(Tren
ds Biochem. Sci. 21:455-458, 1996 )、このモチーフ
は、N-methyl-D-aspartate受容体やShaker-type K+ チ
ャネル等の多くの膜貫通蛋白質に見出されている(Natu
re 378:85-88, 1995; Science 269:1737-1740, 1995;
J. Neurosci. 16:2157-2163, 1996)。
見から、この発明者等による先願発明の蛋白質ニューラ
ビンは、シナプスにおけるアクチン性細胞骨格と膜貫通
蛋白質との接着因子として機能しているものと考えられ
る。しかしながら、細胞間接着に関与する分子的基礎の
全容は未だ解明されておらず、そのためには、アクチン
結合蛋白質のさらなる同定が必須である。また、このよ
うな蛋白質は、例えば癌腫の浸潤、転移のメカニズムの
解明につながる可能性もあり、癌腫の悪性度の診断やそ
の治療法、治療薬等の開発への応用も期待される。
なされたものであって、細胞間接着に関与する新規なア
クチン結合蛋白質を、その構造(アミノ酸配列)および
性状を明らかにして提供することを目的としている。ま
た、この発明は、このアクチン結合蛋白質の遺伝子工学
的操作のための材料を提供することも目的としている。
を解決するものとして、配列番号1のアミノ酸配列を有
するアクチン結合蛋白質l-アファディンを提供する。ま
たこの発明は、配列番号1と実質的に同一のアミノ酸配
列を有する動物性蛋白質を提供する。
配列または配列番号1と実質的に同一のアミノ酸配列を
コードするcDNAと、このcDNAまたはその一部配
列がハイブリダイズするゲノムDNA配列をも提供す
る。さらにまた、この発明は、上記のアクチン結合蛋白
質l-アファディンを免疫原として作成した抗体を提供す
る。
アファディンは、配列番号1のアミノ酸配列を含む蛋白
質であって、この蛋白質には、配列番号1のアミノ酸配
列のいかなる部分アミノ酸配列を含むペプチド断片(5
アミノ酸残基以上)も含まれる。これらのペプチド断片
は抗体を作製するための抗原として用いることができ
る。さらに、この発明の蛋白質には、他の任意の蛋白質
(例えば、蛍光蛋白質など)との融合蛋白質も含まれ
る。
ヒトの臓器、細胞株などから単離することができる。ま
た、ペプチドとして使用する場合には、この発明によっ
て提供されるアミノ酸配列に基づき化学合成によって調
製することもできる。あるいはこの発明によって提供さ
れるcDNA断片を用いて組換えDNA技術によりイン
ビトロで生産することにより取得することもできる。例
えば、組換えDNA技術によって蛋白質を取得する場合
には、この発明のcDNA断片を適当な発現ベクターに
組換え、この組換えベクターによる形質転換体細胞(大
腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞等)からこの発明の蛋白
質を大量に発現させることができる。具体的には、例え
ば、大腸菌などの微生物で発現させる場合には、微生物
中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結
合部位、cDNAクローニング部位、ターミネーター等
を有する発現ベクターに、この発明のcDNAを挿入結
合して発現ベクターを作成し、この発現ベクターで宿主
細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養し
てやれば、cDNAがコードしている蛋白質を微生物内
で大量生産することができる。あるいは、他の蛋白質と
の融合蛋白質として発現させることもできる。得られた
融合蛋白質を適当なプロテアーゼで切断することによっ
て、cDNAがコードする蛋白質部分のみを取得するこ
ともできる。一方、この発明の蛋白質を動物細胞で分泌
発現させる場合には、cDNA断片を、動物細胞用プロ
モーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等
を有する動物細胞用発現ベクターに組換え、動物細胞内
に導入してやれば、この発明の蛋白質を動物細胞内で発
現させることができる。
質をコードするヒトおよび他の哺乳動物の遺伝子であっ
て、例えば、この発明のcDNAまたはその一部配列を
プローブとして既存のゲノムライブラリーから単離する
ことができる。この発明のcDNAは、配列番号1のア
ミノ酸配列からなる蛋白質をコードしているDNA断片
であって、たとえば、その塩基配列に基づいて合成した
オリゴヌクレオチドプローブを用いて、ヒト細胞から作
製したヒトcDNAライブラリーをスクリーニングする
ことにより、この発明のcDNAのクローンを容易に得
ることができる。あるいは、これらのオリゴヌクレオチ
ドをプライマーとして、ポリメラーゼ連鎖反応(PC
R)法を用いて、目的cDNAを合成することもでき
る。一般にヒト遺伝子は個体差による多型が頻繁に認め
られる。従って1または複数個のヌクレオチドの付加、
欠失および/または他のヌクレオチドによる置換がなさ
れているcDNAもこの発明に含まれるものである。同
様に、これらの変更によって生じる1または複数個のア
ミノ酸の付加、欠失および/または他のアミノ酸による
置換がなされている蛋白質も、配列番号1のアミノ酸配
列を有する蛋白質の活性を有する限り、この発明の範疇
に含まれるものである。
10bp以上の連続配列であり、この連続配列からなるDN
A断片(センス鎖およびアンチセンス鎖)もこの発明の
範囲に含まれる。これらのDNA断片は遺伝子診断用の
プローブとして用いることができる。さらに、この発明
の抗体は、上記の蛋白質それ自体、またはその部分ペプ
チドを抗原として、公知の方法により、ポリクローナル
抗体またはモノクローナル抗体として得ることができ
る。
細かつ具体的に説明するが、この発明は、以下の例によ
って限定されるものではない。
精製 胎児ラット脳より成長円錐を単離し、125Iで標識したF
−アクチンによるブロット・オーバーレイ(blot overla
y)法(Cell Motil. Cytoskeleton. 18:164-179, 1991)
を行い、分子量205KDa(p205)のバンドを確
認した。競合的結合阻害を試験した結果、この蛋白質は
F−アクチンに特異的に結合したが、 125 Iで標識した
G−アクチンには結合しないことから、F−アクチン結
合蛋白質であることが確認された。
PAGEで処理し、分子量約205KDaの蛋白質バン
ドを、複数のカラムクロマトグラフィー(Q-Sepharose,
phenyl-5PW, hydroxyapatite, Mono Q )で精製した。
最終的な Mono Q カラムクロマトグラフィーの結果を図
1に示す。図1(a)は280nmでの吸光度、(b)
は 125I標識F−アクチンによるブロット・オーバーレ
イ、(c)はCoomassie brilliant blueで染色した蛋白
質バンドである。この図1(c)に示したように、精製
蛋白質は、最終的に、約205KDa(p205)と約
190KDa(p190)が得られた。そこで、これら
2種類の精製蛋白質をポリアクリルアミドゲルから切り
出し、分解酵素 (lysil endopeptidase)によって限定分
解した後、ペプチドマッピングを行い、2つの蛋白質に
共通する5つのペプチドを単離し、それらの部分アミノ
酸配列を決定した。そして、配列データベースによる相
同性検索の結果、5つのペプチドはヒトAF−6蛋白質
と高い相同性を有することが確認された。一方、p20
5に特異的な2つのペプチドの配列は、既存のデータベ
ースには存在しなかった。これらの結果から、p205
およびp190はヒトAF−6蛋白質に関連するラット
蛋白質であり、p190はp205のスプライシングバ
リアント、相同体または分解産物であることが示唆され
た。また、p205は、AJ部位に局在することから、
「a large splicing variant of AF-6protein localize
d at adherens junction:l-afadin」と命名した(以
下、この発明の蛋白質を、l-アファディンまたはp20
5と記載する)。 実施例2:アクチン結合蛋白質l-アファディン遺伝子ク
ローニング 実施例1で得た205KDa蛋白質l-アファディンの部
分アミノ酸配列に基づいて7種類のオリゴヌクレオチド
プローブを作成し、ラットの脳cDNAライブラリーを
スクリーニングした。その結果、図2に示したような幾
つかのオーバープクローンが得られた。配列決定の結
果、これらのクローンのうち、クローン20は、約4.9k
bpからなるコード領域を含んでおり、このコード領域か
ら推定されたアミノ酸配列は、p205の全てのペプチ
ドを含んでいた。また、p205に特異的な2つのペプ
チドはC−端側に位置していた。なお、クローン94は
p190をコードする約4.5kbpからなるコード領域を含
んでいた。ただし、これらのクローン20および94は
開始コドンを含んでおらず、その開始コドンはクローン
84に含まれていた。そこで、p205の全長cDNA
をクローン84および20から構築し、p190の全長
cDNAをクローン84と94から構築した。
ローブとしたFISH分析(Cytogenet. Cell Genet. 6
1:282-285, 1992; Electrophoresis. 16:261-272, 199
5)の結果、これらのcDNAはラット染色体1q1
2.2に位置することも確認された。 実施例3:アクチン結合蛋白質l-アファディンの動物細
胞での発現 実施例2で構築したp205のcDNAを発現ベクター
に組み込み、このベクターをCOS7細胞に導入して、
細胞の発現産物について 125I標識F−アクチンを用い
たブロット・オーバーレイ法による分析を行った。得ら
れた組換え蛋白質(myc-l-afadin)は、図3(a)に示
したように、SDS−PAGE上でネイティブなp20
5と類似の泳動を示し、また 125I標識F−アクチンに
対する結合活性を有してもいた。一方、C−端側の15
6アミノ酸残基を欠くp205の変異体は、 125I標識
F−アクチンに対する結合活性を示さなかった。これに
対して、p205のC−端(199アミノ酸残基)とG
TS(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)との融
合蛋白質は 125I標識F−アクチン結合活性を示した。
番号1に記載した1,829 アミノ酸残基からなる蛋白質を
コードしており、その推定分子量は207,667 で、C−端
199アミノ酸残基にF−アクチン結合ドメインを有す
ることが明らかになった。また、p190遺伝子は、C
−端約160アミノ酸残基を欠失した蛋白質をコード
し、p205遺伝子のスプライシングバリアントとであ
ると結論づけられた。
果、p190のアミノ酸配列は、ヒトAF−6蛋白質の
全配列と90%一致した。ただし、ヒトAF−6蛋白質
もp190も、p205のC−端領域を欠失していた。
また、p205のC−端(F−アクチン結合ドメイン)
は、他の如何なるF−アクチン結合蛋白質との有意な相
同性を示さなかった。従って、p190がラットにおけ
るヒトAF−6の類似体であるのに対し、p205は新
規なF−アクチン結合蛋白質であることが確認された。
なお、図3(b)に示したように、p205およびp1
90は、いずれもPDZを有していた。 実施例4:抗l-アファディン抗体の作成 公知の方法に従い、配列番号1の1814−1829番目までの
アミノ酸配列からなる合成ペプチドを免疫原として、l-
アファディンを特異的に認識するウサギ・ポリクローナ
ル抗体を作成した。また、配列番号1の 557−592 番目
までのアミノ酸配列からなる合成ペプチドを免疫原とし
て、l-アファディンおよびS-アファディンを認識するウ
サギ・ポリクローナル抗体を作成した。 実施例5:l-アファディンの発現組織の確認 l-アファディンcDNAに特異的な配列をプローブとし
て用いたノーザンブロット分析の結果、図4(a)に示
したとおり、l-アファディンは検査したラット組織(心
臓、脳、脾臓、肺臓、肝臓、骨格筋、腎臓、精巣)の全
てで発現していた。
ン抗体を用いたウエスタンブロット分析の結果からも、
図4(b1)に示したように、l-アファディンはラット
の全ての組織で発現することが確認された。しかしなが
ら、図4(b2)に示したように、l-アファディンとS-
アファディンの両方を認識する抗体を使用したウエスタ
ンブロットの結果からは、これらの臓器のうち、S-アフ
ァディンは脳のみに発現していることが確認された。
ンは全ての組織で発現するのに対し、s-アファディンは
脳のみに発現していることが確認された。 実施例6:l-アファディンの生化学的特性 実施例1で得た205KDa蛋白質(l-アファディン)
のアクチン結合様式をブロット・オーバーレイ法を用い
て検討した結果、l-アファディンとアクチンとの結合は
ミオシンS1によって特異的に阻害されたが(図5
a)、この阻害はMgATPの添加によって消失した。
ミオシンS1はF−アクチンの側面に結合することが確
認されている蛋白質であり(Science 261:58-65, 1993;
Nature 364:171-174, 1993 )、MgATPはアクチン
−ミオシン複合体を分離することが知られているため
(Biochemistry 14:2207-2214, 1975 )、l-アファディ
ンはF−アクチンの側面に結合することが確認された。
85:211-233, 1982; J. Biol. Chem. 271:31775-31778,
1996 )を用いて、l-アファディンによるF−アクチン
の粘度変化を調べた結果、図5(b)に示したように、
l-アファディンはF−アクチンの粘度を用量依存的に増
加させ、粘度は最大約3倍にまで増加した。さらに、ス
トイキオメトリー(stoichiometry )を計算した結果
(図5c)、アクチン約500分子に対してHis6−l-ア
ファディン−C1分子の割合で結合すると計算され、そ
のKd値は10-7オーダーと計算された。
果をpyrene−アクチンを用いて検討したところ、l-アフ
ァディンはアクチンの核形成促進作用を示さないことも
判明した。 実施例7:l-アファディンの局在位置の確認 抗l-アファディン抗体を用い、様々なマウスまたはラッ
ト組織の凍結切片を免疫蛍光顕微鏡で検査してl-アファ
ディンの局在位置を確認した。
った帯状結合複合体領域(belt-like junctional compl
ex region )に局在していた(図6a)。小腸では、抗
E−カドヘリン−モノクローナル抗体を併用して調べた
ところ、l-アファディンは腸吸収上皮の結合複合領域に
E−カドヘリンと共に検出されたが、E−カドヘリンに
比べ同部位により濃縮されていた(図6b1−3、c1
−3)。心臓については、抗ビンキュリン−モノクロー
ナル抗体を併用して調べた。ビンキュリンは、細胞−細
胞AJだけでなく、細胞−マトリックスAJに対するマ
ーカーとして知られている(Cell 18:193-205, 1979; B
iochem. Biophys. Acta 737:305-341, 1983 )。その結
果、l-アファディンは、心臓の境界膜にビンキュリンと
共に検出された(図6d1−3)。ただし、ビンキュリ
ンは心筋細胞の外側縁に沿っても検出されたが、l-アフ
ァディンはこの領域には検出されなかった。また、E−
カドヘリンを発現する培養EL細胞(Nature 329:341-3
43, 1987)を、抗ZO−1抗体を併用して調べたとこ
ろ、l-アファディンの局在はZO−1の局在と類似して
いた(図7a,b)。ZO−1は、線維芽細胞における
カドヘリン性細胞−細胞AJに存在することが知られて
いるので(J. Cell Biol. 115:1149-1462, 1991; J. Ce
ll Biol. 121:491-502, 1993)、l-アファディンもま
た、このカドヘリン性細胞−細胞AJに局在することが
示唆された。
べるために、小腸の凍結切片を抗Zo−1モノクローナ
ル抗体と抗l-アファディン抗体で共染色し、また肝臓の
毛細胆管を抗デスモプラキン(desmoplakin )モノクロ
ーナル抗体と抗l-アファディン抗体で共染色した。ZO
−1は密着結合に対するマーカーとして知られており
(J. Cell Biol. 103:755-766, 1986; J. Cell Biol. 1
21:491-502, 1993)、デスモプラキンはデスモソームの
マーカーとして知られている(J. Cell Biol. 63:515-5
23, 1974; Eur. J. Cell Biol. 32:117-130, 1983; J.
Mol. Biol. 163:647-671, 1983; EMBO J. 6:885-889, 1
987 )。その結果、小腸の吸収上皮では、l-アファディ
ンはZO−1より僅かに基底側に存在していた(図8a
1−3)。また、胆管では、l-アファディンの局在とデ
スモプラキンの局在は一致していなかった(図8b1−
3)。
着結合やデスモソームよりもむしろ、細胞−細胞AJに
局在していることが示された。そしてさらに、免疫電子
顕微鏡によりl-アファディンは、小腸の吸収上皮細胞の
細胞−細胞AJに局在することが観察された(図9a、
b)。以上により、この発明のl-アファディンは、アク
チン性細胞骨格と細胞−細胞AJとを連結する新規なタ
ンパク質であることが確認された。
よって、カドヘリン性細胞−細胞密着結合に局在する新
規なアクチン結合蛋白質l-アファディンと、このl-アフ
ァディンを産業上利用するための遺伝子材料が提供され
る。
(a)、 125I標識F−アクチンによるブロット・オー
バーレイの結果(b)およびSDS電気泳動の染色結果
(c)である。
ィン(p190)のcDNAの模式図である。
F−アクチン結合活性を示す。左は 125I標識F−アク
チンによるブロット・オーバーレイ、右はウエスタンブ
ロットの結果である。(b)は、l-アファディンおよび
S-アファディンの構造を示した模式図である。
り、(a)はノーザンブロット、(b)は抗l-アファデ
ィン抗体(b1)および抗l-アファディン/S-アファデ
ィン抗体(b2)を用いたウエスタンブロットの結果で
ある。
l-アファディンのFアクチン結合活性のミオシンS1に
よる阻害、(b)はl-アファディンによるF−アクチン
粘度の増加、(c)はHis6−l-アファディン−CのF−
アクチンへの結合を示す。
ファディン、E−カドヘリンおよびビンキュリンの局在
を示す写真図である。
1の局在を示す写真図である。
ンの異なる局在を示す写真図である。
す写真図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 配列番号1のアミノ酸配列を有するアク
チン結合蛋白質l-アファディン。 - 【請求項2】 配列番号1と実質的に同一のアミノ酸配
列を有する動物性蛋白質。 - 【請求項3】 配列番号1のアミノ酸配列または配列番
号1と実質的に同一のアミノ酸配列をコードするcDN
A。 - 【請求項4】 請求項3のcDNAまたはその一部配列
がハイブリダイズするゲノムDNA配列。 - 【請求項5】 請求項1のアクチン結合蛋白質l-アファ
ディンを免疫原として作成された抗体。
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