JPH1151167A - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 この発明の目的は、エンジン始動後の初回の
１速から２速への変速の際に油圧立ち上がりの遅れに起
因するエンジンの吹け上がりを防止し得て、自動変速機
の油圧回路の変更を要することなくプログラムの変更の
みで実現し得て、低コストに実施することにある。 【構成】 このため、この発明は、車両に搭載されるエ
ンジンに油圧により切換要素を作動させて変速される自
動変速機を連結して設け、エンジンを始動した際に油圧
確保制御実行条件が成立する場合は自動変速機を設定時
間だけ２速に変速するよう制御する制御手段を設けたこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は自動変速機の変速
制御装置に係り、特に、エンジン始動後の初回の１速か
ら２速への変速の際に油圧立ち上がりの遅れに起因する
エンジンの吹け上がりを防止し得て、自動変速機の油圧
回路の変更を要することなくプログラムの変更のみで実
現し得て、低コストに実施し得る自動変速機の変速制御
装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】車両に搭載されるエンジンには、トルク
コンバータと歯車変速機構とを備えた自動変速機を連結
したものがある。前記歯車変速機構は、油圧によりブレ
ーキやクラッチ等の切換要素を作動され、係合状態を切
換えられる。前記自動変速機は、変速制御装置により変
速制御される。変速制御装置は、切換要素に供給する油
圧を制御することにより歯車変速機構の係合状態を各速
係合状態に切換え、自動変速機を１速〜最高速に変速す
る。

【０００３】このように油圧により変速される自動変速
機は、油圧回路内に空気が混入すると、切換要素の作動
に応答遅れを生じる問題がある。

【０００４】このような問題に対処する自動変速機の変
速制御装置としては、特開平２−１５０５６１号公報、
特開平８−１６６０５８号公報に開示されるものがあ
る。

【０００５】特開平２−１５０５６１号公報に開示され
るものは、変速判断時に一時的に流体圧を増大させるこ
とにより油圧回路内の空気を排出させ、切換要素の作動
の応答遅れを解消するものである。

【０００６】特開平８−１６６０５８号公報に開示され
るものは、エンジン休止時間と油温及び外気温とから始
動時用の圧力を設定することにより、エンジンを長時間
停止して始動した際に油圧回路に混入した空気による切
換要素の作動の応答遅れを所定値内に収めるものであ
る。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】ところで、油圧により
変速される自動変速機は、エンジンを停止してから時間
が経過すると、油圧回路から油が抜けて油圧が低下す
る。

【０００８】自動変速機は、このように油圧が低下した
状態においてエンジンを始動した後の初回の１速から２
速への変速の際に、切換要素に油圧を供給する油圧回路
の油圧立ち上がりが遅れることになり、切換要素の作動
に応答遅れを生じてエンジンが吹け上がる問題がある。

【０００９】これは、油圧回路のボリュームの不適や、
エンジンの停止により油温が低下した状態における粘度
の高さが、主な原因となっている。

【００１０】このような問題に対しては、油圧の立ち上
がりに遅れを生じないように、自動変速機の油圧回路を
改良することが根本的な解決方法である。しかし、この
ような自動変速機の構造的な変更は、コストアップを招
く不都合がある。また、従来は、エンジン始動後の一定
時間内における１速から２速への変速制御条件を考慮し
て油圧立ち上がり遅れを解決しようとしているが、十分
な効果を得ることができない問題がある。さらに、変速
制御条件の変更は、エンジンの冷機、暖機にかかわらず
同様の制御としているため、停止したエンジンを暖機状
態で再始動して発進した場合に、初回の１速から２速へ
の変速が強い引き込みとなる問題があった。

【００１１】

【課題を解決するための手段】そこで、この発明は、上
述の不都合を除去するために、車両に搭載されるエンジ
ンに油圧により切換要素を作動させて変速される自動変
速機を連結して設け、前記エンジンを始動した際に油圧
確保制御実行条件が成立する場合は前記自動変速機を設
定時間だけ２速に変速するよう制御する制御手段を設け
たことを特徴とする。

【００１２】

【発明の実施の形態】この発明の変速制御装置は、制御
手段によって、エンジンを始動した際に油圧確保制御実
行条件が成立する場合は、自動変速機を設定時間だけ２
速に変速するよう制御することにより、この２速への変
速によって長時間のエンジン停止により油圧回路から抜
けてしまった油圧を補充することができ、油圧が低下し
た状態においてエンジンを始動した後の初回の１速から
２速への変速の際に、切換要素に油圧を供給する油圧回
路の油圧立ち上がりに遅れを生じることがない。

【００１３】

【実施例】以下図面に基づいて、この発明の実施例を説
明する。図１〜図９は、この発明の実施例を示すもので
ある。図３において、２は図示しない車両に搭載される
エンジン、４は自動変速機である。自動変速機４は、ト
ルクコンバータ６と歯車変速機構８とを備えている。

【００１４】歯車変速機構８は、例えば前進用の１速〜
４速係合状態と後退用係合状態との変速歯車列（図示せ
ず）を有し、図示しない駆動車輪に連絡されている。歯
車変速機構８は、係合状態を切換える切換要素として、
後述のリヤクラッチＣ１とフロントクラッチＣ２とオー
バードライブブレーキＢ０とファースト・セカンドブレ
ーキＢ１とリバースブレーキＢ２とを備えている。

【００１５】前記自動変速機４は、図４・図５に示す如
く、歯車変速機構８の係合状態を切換える油圧回路１０
を設けている。油圧回路１０は、エンジン２により駆動
されるオイルポンプ１２とプライマリレギュレータバル
ブ１４とセカンダリレギュレータバルブ１６とマニュア
ルバルブ１８とシフト用第１〜第４ソレノイドバルブ２
０〜２６とを有している。

【００１６】前記プライマリレギュレータバルブ１４と
セカンダリレギュレータバルブ１６とにより調整された
油圧は、トルクコンバータ６に供給される。前記プライ
マリレギュレータバルブ１４とマニュアルバルブ１８と
シフト用第１〜第４ソレノイドバルブ２０〜２６とによ
り調整された油圧は、切換要素であるリヤクラッチＣ１
とフロントクラッチＣ２とオーバードライブブレーキＢ
０とファースト・セカンドブレーキＢ１とリバースブレ
ーキＢ２とに供給され、歯車変速機構８の係合状態を１
速〜４速係合状態に切換える。

【００１７】なお、油圧回路１０は、前記バルブ１４〜
２６に加えて、フロントクラッチＣ２及びリバースブレ
ーキＢ２用のアキュムレータ２８とリヤクラッチＣ１用
のアキュムレータ３０とオーバードライブブレーキＢ０
用のアキュムレータ３２と第１フェイルバルブ３４と第
２フェイルバルブ３６とを有している。これらのバルブ
及びアキュムレータ１４〜３６は、図３に示す如く、自
動変速機４のバルブボディ３８に設けられている。

【００１８】前記シフト用第１〜第４ソレノイドバルブ
２０〜２６は、変速制御装置４０の制御手段４２に接続
されている。制御手段４２には、電源４４とエンジン回
転数センサ４６とスロットル開度センサ４８と車速セン
サ５０とシフト位置スイッチ５２とオーバードライブス
イッチ５４とタービン軸回転数センサ５６と油温センサ
５８とブレーキスイッチ６０とが接続されている。

【００１９】制御手段４２は、これらセンサ及びスイッ
チ４６〜６０から入力する信号により、図６〜図９に示
す如く、シフトレバー（図示せず）のシフトされた各レ
ンジにおいて、シフト用第１〜第４ソレノイドバルブ２
０〜２６をＯＮ・ＯＦＦしてクラッチＣ１〜Ｃ２及びブ
レーキＢ０〜Ｂ２に供給する油圧を制御し、これらクラ
ッチＣ１〜Ｃ２及びブレーキＢ０〜Ｂ２を作動させて歯
車変速機構８の係合状態を切換え、自動変速機４を１速
〜４速に変速する。

【００２０】例えば、制御手段４２は、図４に示す如
く、Ｐレンジ及びＮレンジにおいて、歯車変速機構８の
係合状態をニュートラルにするように、油圧回路１０の
シフト用第１・第３・第４ソレノイドバルブ２０・２４
・２６をＯＦＦしてシフト用第２ソレノイドバルブ２２
をＯＮし、リヤクラッチＣ１を作動させる。

【００２１】また、制御手段４２は、図５に示す如く、
Ｄレンジ及び２レンジの２速において、歯車変速機構８
の係合状態を２速係合状態にするように、シフト用第１
・第３ソレノイドバルブ２０・２４をＯＮしてシフト用
第２・第４ソレノイドバルブ２２・２６をＯＦＦし、フ
ロントクラッチＣ２及びファースト・セカンドブレーキ
Ｂ１を作動させる。

【００２２】この自動変速機４の変速制御装置４０は、
制御手段４２によって、エンジン２を始動した際に、油
圧確保制御実行条件が成立する場合は、自動変速機４を
設定時間ｔだけ２速に変速するよう制御する。

【００２３】前記油圧確保制御実行条件の成立・不成立
は、シフト位置スイッチ５２から入力するシフト位置信
号とエンジン回転数センサ４６から入力するエンジン回
転数信号とタービン軸回転数センサ５６から入力するト
ルクコンバータ６のタービン回転数信号とスロットル開
度センサ４８から入力するスロットル開度信号とブレー
キスイッチ６０から入力するブレーキＯＮ信号とによ
り、判断される。

【００２４】制御手段４０は、これらの信号により、Ｐ
レンジにおいてエンジン２を始動した際に運転者に発進
の意思が無い場合に油圧確保制御実行条件の成立とし、
自動変速機４を設定時間ｔだけ２速に変速するよう、つ
まり、シフト用第１・第３ソレノイドバルブ２０・２４
をＯＮしてシフト用第２・第４ソレノイドバルブ２２・
２６をＯＦＦし、フロントクラッチＣ２及びファースト
・セカンドブレーキＢ１を作動させるよう制御する。

【００２５】次に作用を説明する。

【００２６】自動変速機４の変速制御装置４０は、図１
に示す如く、制御がスタート（ステップ１００）する
と、シフト位置がＰレンジであるか否かを判断（ステッ
プ１０２）する。

【００２７】この判断（ステップ１０２）において、Ｐ
レンジでなくＮ、Ｒ、Ｄ、２、ＬレンジのいずれかでＮ
Ｏの場合は、通常制御（ステップ１１４）を行う。この
判断（ステップ１０２）において、ＰレンジでＹＥＳの
場合は、エンジン回転数Ｎが設定回転数域（例えば、３
００＜Ｎ＜２０００）であるか否かを判断（ステップ１
０４）する。

【００２８】この判断（ステップ１０４）において、エ
ンジン回転数Ｎが設定回転数域でなく（例えば、Ｎ≦３
００、Ｎ≧２０００）ＮＯの場合は、通常制御（ステッ
プ１１４）を行う。この判断（ステップ１０４）におい
て、エンジン回転数Ｎが設定回転数域でＹＥＳの場合
は、自動変速機４のタービン軸（図示せず）が回転して
いるか否かを判断（ステップ１０６）する。

【００２９】この判断（ステップ１０６）において、タ
ービン軸が回転していずにＮＯの場合は、通常制御（ス
テップ１１４）を行う。この判断（ステップ１０６）に
おいて、タービン軸が回転していてＹＥＳの場合は、エ
ンジン２がアイドル運転状態か否かを判断（ステップ１
０８）する。

【００３０】エンジン２がアイドル運転状態か否かは、
例えば、スロットル開度センサ４８の検出するスロット
ル開度が０゜か否か、あるいは、アイドルスイッチ（図
示せず）がＯＮかＯＦＦにより判断する。

【００３１】この判断（ステップ１０８）において、エ
ンジン２が非アイドル運転状態（例えば、スロットル開
度が０゜以上）でＮＯの場合は、通常制御（ステップ１
１４）を行う。この判断（ステップ１０８）において、
エンジン２がアイドル運転状態（例えば、スロットル開
度が０゜）でＹＥＳの場合は、ブレーキ（図示せず）が
踏み込まれているか否かを判断（ステップ１１０）す
る。

【００３２】ブレーキが踏み込まれているか否かは、例
えば、ブレーキスイッチ６０の信号がＯＮかＯＦＦによ
り判断する。

【００３３】この判断（ステップ１１０）において、ブ
レーキが踏み込まれていず（例えば、ブレーキスイッチ
６０がＯＦＦ）にＮＯの場合は、通常制御（ステップ１
１４）を行う。この判断（ステップ１１０）において、
ブレーキが踏み込まれて（例えば、ブレーキスイッチ６
０がＯＮ）いてＹＥＳの場合は、油圧確保制御を実行
（ステップ１１２）する。

【００３４】油圧確保制御は、自動変速機４を設定時間
ｔだけ２速に変速するよう、即ち、図２に示す如く、Ｐ
レンジにおいてシフト用第１・第３ソレノイドバルブ２
０・２４をＯＮしてシフト用第２・第４ソレノイドバル
ブ２２・２６をＯＦＦし、フロントクラッチＣ２及びフ
ァースト・セカンドブレーキＢ１を作動させるよう制御
する。

【００３５】この制御によって、２速状態におけるフロ
ントクラッチＣ２及びファースト・セカンドブレーキＢ
１にいたる油圧回路１０に油圧を供給することができ、
長時間のエンジン２の停止により油圧回路１０から抜け
てしまった油圧を補充することができ、また、油圧回路
１０内部の混入空気を押し出すことができる。

【００３６】油圧確保制御を実行（ステップ１１２）し
て設定時間ｔが経過した場合は、通常制御に戻し（ステ
ップ１１４）、制御をエンド（ステップ１１６）にす
る。通常制御においては、図２に示す如く、Ｐレンジに
おいてシフト用第１・第３・第４ソレノイドバルブ２０
・２４・２６をＯＦＦしてシフト用第２ソレノイドバル
ブ２２をＯＮし、リヤクラッチＣ１を作動させるよう制
御する

【００３７】このように、この変速制御装置４０は、エ
ンジン回転数及びタービン軸回転数によりエンジン２の
始動を検出し、Ｐレンジとアイドル運転状態とブレーキ
のＯＮ信号とにより運転者の発進意思無しを検出し、エ
ンジン２を始動して運転者に発進の意思が無い場合に、
設定時間ｔだけ２速に変速するよう制御することによ
り、油圧回路１０の油圧が低下した状態においてエンジ
ン２を始動した後の初回の１速から２速への変速の際
に、２速状態に切換えるフロントクラッチＣ２及びファ
ースト・セカンドブレーキＢ１に油圧を供給する油圧回
路１０の油圧立ち上がりに遅れを生じることがない。

【００３８】このため、この変速制御装置４０は、エン
ジン２始動後の初回の１速から２速への変速の際に、油
圧立ち上がりの遅れに起因するエンジン２の吹け上がり
を防止することができる。また、この変速制御装置４０
は、自動変速機４の油圧回路１０の構造の変更でなく、
制御のプログラムの変更で、エンジン２を始動後の初回
の１速から２速への変速の際の油圧立ち上がりの遅れに
起因するエンジン２の吹け上がりを防止していることに
より、低コストに実施することとができる。

【００３９】なお、変速制御装置４０は、ステップ１０
２〜１１０のいずれか１つがＮＯとなった場合に、例え
ば、シフト位置がＲレンジやＤレンジにシフトされて運
転者の走行意思を検出した場合に、油圧確保制御（ステ
ップ１１２）の実行を中止して通常制御（ステップ１１
４）に戻すことにより、発進のもたつきを防止すること
ができる。

【００４０】また、油圧確保制御を実行する設定時間ｔ
は、油圧の立ち上がりに必要十分な時間に設定する。即
ち、設定時間ｔは、長時間のエンジン２の停止により２
速状態におけるフロントクラッチＣ２及びファースト・
セカンドブレーキＢ１にいたる油圧回路１０から抜けて
しまった油圧を補充することができ、また、油圧回路１
０内部の混入空気を押し出すことができるに足る時間に
設定するものであり、フロントクラッチＣ２及びファー
スト・セカンドブレーキＢ１を完全に係合させるに足る
時間に設定する必要はなく、極短時間（例えば、１秒以
下）で十分である。

【００４１】

【発明の効果】このように、この発明の自動変速機の変
速制御装置は、エンジンを始動した際の２速への変速に
よって、長時間のエンジン停止により油圧回路から抜け
てしまった油圧を補充することができ、油圧が低下した
状態においてエンジン始動後の初回の１速から２速への
変速の際に、切換要素に油圧を供給する油圧回路の油圧
立ち上がりに遅れを生じることがない。

【００４２】このため、この発明の自動変速機の変速制
御装置は、エンジン始動後の初回の１速から２速への変
速の際に油圧立ち上がりの遅れに起因するエンジンの吹
け上がりを防止することができ、また、自動変速機の油
圧回路の変更を要することなくプログラムの変更のみで
実現し得て、低コストに実施することとができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施例を示す変速制御装置の制御の
フローチャートである。

【図２】Ｐレンジにおける通常制御と油圧確保制御との
比較を示す図である。

【図３】変速制御装置の概略構成図である。

【図４】Ｐレンジ及びＮレンジにおける油圧回路を示す
図である。

【図５】Ｄレンジ及び２レンジの２速における油圧回路
を示す図である。

【図６】各レンジにおけるシフト用ソレノイドのＯＮ・
ＯＦＦ状態を示す図である。

【図７】シフト用ソレノイドのＯＮ・ＯＦＦにおける開
閉状態を示す図である。

【図８】各レンジにおけるシフト用ソレノイドの開閉状
態を示す図である。

【図９】各レンジにおける切換要素の作動状態を示す図
である。

【符号の説明】

２ エンジン ４ 自動変速機 ６ トルクコンバータ ８ 歯車変速機構 Ｃ１ リヤクラッチ Ｃ２ フロントクラッチ Ｂ０ オーバードライブブレーキ Ｂ１ ファースト・セカンドブレーキ Ｂ２ リバースブレーキ １０ 油圧回路 ２０ シフト用第１ソレノイドバルブ ２２ シフト用第２ソレノイドバルブ ２４ シフト用第３ソレノイドバルブ ２６ シフト用第４ソレノイドバルブ ４０ 変速制御装置 ４２ 制御手段 ４６ エンジン回転数センサ ４８ スロットル開度センサ ５２ シフト位置スイッチ ５６ タービン軸回転数センサ ６０ ブレーキスイッチ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 車両に搭載されるエンジンに油圧により
   切換要素を作動させて変速される自動変速機を連結して
   設け、前記エンジンを始動した際に油圧確保制御実行条
   件が成立する場合は前記自動変速機を設定時間だけ２速
   に変速するよう制御する制御手段を設けたことを特徴と
   する自動変速機の変速制御装置。