JPH11351405A - 密封装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 シール性の向上を図り、さらに取扱いを容易
にする信頼性に優れた密封装置を提供する。 【解決手段】 互いに同心的に相対回転自在に組み付け
られる２部材２，３間をシールするものであって、密封
流体側Ｏに延びる樹脂製シールリップを備えた密封装置
１において、樹脂製シールリップ５の摺動面の大気側端
部に配置され、２部材２，３の内いずれか一方の部材２
と摺動自在に密封接触するゴム状弾性体製のシール手段
９を備えたことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、各種装置の回転軸
封部に用いられる密封装置に関し、特に樹脂製のシール
リップを備えたものに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の密封装置としては、たと
えば図５に示すようなものがある。すなわち、この密封
装置１００は互いに同心的に相対回転自在に組み付けら
れるハウジング１０１と回転軸１０２間に装着されてい
る。

【０００３】密封装置１００は、ハウジング１０１の軸
孔１０３内に嵌着固定され、シールリップ１０５を保持
するシール部材１０４と、このシール部材１０４に一体
的に組み付けられるシールリップ１０５とから構成され
る。

【０００４】シール部材１０４は、金属製の外環１０６
及び内環１０７と、外環１０６に一体的に焼き付けられ
たゴム状弾性体１０８とから構成される。

【０００５】外環１０６及び内環１０７は、大気側Ａ端
縁が内向きに折曲された断面Ｌ字状の環状部材で、外環
１０６の内周に内環１０７が嵌合され、各々の内向きフ
ランジ部間にシールリップ１０５の外端部を挟持して、
外環１０６の密封流体側Ｏ端縁を内環１０７にかしめて
一体的に設けてある。

【０００６】そして、シールリップ１０５の外端部と外
環１０６の隙間は、外環１０６に焼き付けられたゴム状
弾性体１０８によってシールされている。

【０００７】シールリップ１０５は、軸方向密封流体側
Ｏに向かって徐々に小径となるように傾斜して筒状に延
びており、その先端内周面が回転軸１０２に摺動自在に
密封接触している。

【０００８】また、このシールリップ１０５の内周面に
は、ねじ溝１０９が刻設されており、回転軸１０２との
相対回転によるポンプ作用によって摺動面に濡れ出す密
封流体を押し戻すようになっている。

【０００９】ねじ溝１０９は、図５（ｂ）に示すよう
に、略台形状溝で、シールリップ１０５の円周方向に部
分的に複数設けられている。

【００１０】このような密封装置１００にあっては、ね
じ溝１０９はシールリップ１０５先端から大気側Ａに向
かって狭まるように傾斜しているので、左右いずれかの
傾斜で左右どちらの回転方向でもポンプ作用をし、密封
流体を押し戻す。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来技術の場合には、シールリップ１０５は一般的に
耐油性に優れた材料として４フッ化エチレン樹脂（以
下、ＰＴＦＥと称す）で形成されるが、このＰＴＦＥの
表面粗さが大きい場合や、微細な傷がある場合等に、シ
ールリップ１０５と回転軸１０２間に微小隙間が発生し
て、気密試験において少量のエアー漏れが発生する場合
があった。

【００１２】密封流体は粘性があり、漏れることは稀で
あるが、空気やガス等のエアーの漏れを防止する必要が
あり、これを防止するためにはＰＴＦＥ表面にワックス
等のコーティング加工を追加することもできるが、コー
ティングの出来合いで性能のばらつきが生じる可能性が
あった。

【００１３】また、上記のようにＰＴＦＥ表面に傷が生
じた場合は、致命的な欠陥を引き起こす可能性があり、
シールリップ１０５の慎重な取扱いが要求された。

【００１４】本発明は上記の従来技術の課題を解決する
ためになされたもので、その目的とするところは、シー
ル性の向上を図り、さらに取扱いを容易にする信頼性に
優れた密封装置を提供することにある。

【００１５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明にあっては、互いに同心的に相対回転自在に組
み付けられる２部材間をシールするものであって、密封
流体側に延びる樹脂製シールリップを備えた密封装置に
おいて、前記樹脂製シールリップの摺動面の大気側端部
に配置され、２部材の内いずれか一方の部材と摺動自在
に密封接触するゴム状弾性体製のシール手段を備えたこ
とを特徴とする。

【００１６】従って、樹脂製シールリップの表面粗さや
微細な傷に関係なく、ゴム状弾性体製のシール手段でシ
ールすることができるので、シールリップにコーティン
グ加工を施す必要もなく、気密試験においてエアー漏れ
が発生することがなくなり、シール性の向上を図ること
ができると共に、樹脂製シールリップに多少の傷が生じ
ても構わないことから取扱いも容易になる。

【００１７】前記シール手段は、前記樹脂製シールリッ
プを組み付けた金属環に焼付けたゴム状弾性体から延び
る支持部に支持されたリングであることが好ましい。

【００１８】これにより、ゴム状弾性体製のリングが樹
脂製シールリップの摺動面の大気側端部に配置され、他
方の部材と摺動自在に連続接触面を有して密封接触する
ことができる。

【００１９】前記シール手段は、前記樹脂製シールリッ
プを組み付けた金属環に焼付けたゴム状弾性体と一体に
成形されたことが好ましい。

【００２０】これにより、他の部品を必要とすることな
く、シール手段を備えることができる。また、シール手
段がリングであれば、支持部も一体に成形することがで
きる。

【００２１】前記樹脂製シールリップの摺動面にねじ溝
を設けたことが好ましい。

【００２２】これにより、ねじ溝のポンプ作用によって
密封流体を押し戻すことができ、ゴム状弾性体製のシー
ル手段は密封流体による硬化、腐食等の劣化が生じにく
い。

【００２３】

【発明の実施の形態】以下に図面を参照して、この発明
の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただ
し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、
材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載が
ないかぎりは、この発明の範囲をそれらのみに限定する
趣旨のものではない。

【００２４】図１は本発明の実施の形態に係る密封装置
の構成を示し、図２は密封装置の作動状態を示す。

【００２５】１は密封装置を示しており、互いに同心的
に相対回転自在に組み付けられる２部材としての回転軸
２とハウジング３間をシールするものであり、密封装置
１は略環状のシール部材４と、このシール部材４に一体
的に設けられる樹脂製のシールリップ５とから構成され
る。

【００２６】シールリップ５は、図１に示すように耐油
性に優れた樹脂である４フッ化エチレン樹脂（以下、Ｐ
ＴＦＥと称す）で板状に成形され、シール部材４に一体
的に組み付けられている。このシールリップ５は図２に
示すように密封流体側Ｏに曲げて回転軸２とハウジング
３間に装着される。

【００２７】シール部材４は、金属環としての内環６
と、内環６に一体的に焼き付けられ、内環６を覆うゴム
状弾性体７とから構成されている。内環６は、大気側Ａ
縁が内向きに折曲された断面Ｌ字状の内向きフランジ部
を備えた環状部材である。

【００２８】内向きフランジ部の内端に焼き付けられた
ゴム状弾性体７を延ばした支持部８は、シールリップ５
の大気側Ａ表面に沿って延び、その支持部８先端にゴム
状弾性体製のシール手段としてのリング９が設けられて
いる。

【００２９】図２に示すように、このゴム状弾性体製の
リング９は、シールリップ５の摺動面の大気側Ａ端部に
配置され、回転軸２に対して連続接触面を有し、摺動自
在に密封接触している。

【００３０】本実施の形態では、リング９は支持部８と
共に、ゴム状弾性体７と一体に成形されている。

【００３１】また、内環６の円筒部外周とハウジング３
内周間にはゴム状弾性体７が介され、外周嵌合部のシー
ルを図っている。

【００３２】シールリップ５は、軸方向密封流体側Ｏに
向かって徐々に小径となるように傾斜して筒状に延びて
おり、その先端内周面がリング９を回転軸２に押し付け
ている。

【００３３】そして、このシールリップ５の内周面に
は、ねじ溝１０が刻設されており、回転軸２との相対回
転による各々の回転方向によって各々のねじ溝１０の傾
斜部分でポンプ作用をして、摺動面間に漏れ出す密封流
体を押し戻すようになっている。ねじ溝１０は、略台形
状の溝で、シールリップ５の円周方向に部分的に複数設
けられている。

【００３４】本実施の形態では、ねじ溝１０の形状を略
台形状としているが、これに限られず、回転軸２との相
対回転によって、密封流体を密封流体側Ｏに押し戻す作
用を発生するねじ形状であればよい。

【００３５】上記構成の密封装置１にあっては、内向き
フランジ部の内端に焼き付けられたゴム状弾性体７を延
ばした支持部８を介して設けられたゴム状弾性体製のリ
ング９がシールリップ５の大気側Ａで回転軸２に密封接
触して、ＰＴＦＥで形成されたシールリップ５の表面粗
さの大小や微細な傷にかかわらず、リング９によって回
転軸２とのシール性を得ているので、気密試験における
エアー漏れは皆無となる。また、従来のようにシールリ
ップ５表面にコーティング加工を施す必要もなくなる。

【００３６】また、上記のように回転軸２とゴム状弾性
体製のリング９が密封接触してシール性を得ているため
に、ＰＴＦＥで形成されたシールリップ５を取扱い時に
損傷させた場合でも、シールリップ５の損傷と関係なく
安定したシール性を得ることができ、シールリップ５の
取扱いを容易にする。

【００３７】さらに、密封流体は、ねじ溝１０によるポ
ンプ作用で押し戻されつつ、シールリップ５の摺動面で
シールされるので、ゴム状弾性体製のリング９は密封流
体による硬化、腐食等の劣化が生じにくい。

【００３８】尚、本実施の形態の密封装置だけでなく、
リング９が回転軸２に密封接触する構成の密封装置であ
ればよく、例えば、図３に示すような内環６と外環１１
間にシールリップ５と、リング９を内径側に備えたゴム
状弾性体７と、を挟持して、内環６の密封流体側Ｏ端縁
をかしめて一体的に設けるものや、図４に示すようなダ
ストリップ１２を設けたものであっても、本実施の形態
の効果を同様に得ることができる。

【００３９】また、外周側にシールリップを設けるもの
でも本発明を適用することができ、シール対象側との反
対側を大気側としていたがこれに限られるものではな
く、材質はＰＴＦＥを使用したがこれに限られるもので
はない。

【００４０】

【発明の効果】本発明は、樹脂製シールリップの摺動面
の大気側端部に配置され、２部材の内いずれか一方の部
材と摺動自在に密封接触するゴム状弾性体製のシール手
段を備えたことで、樹脂製シールリップの表面粗さや微
細な傷に関係なく、ゴム状弾性体製のシール手段でシー
ルすることができるので、シールリップにコーティング
加工を施す必要もなく、気密試験においてエアー漏れが
発生することがなくなり、シール性の向上を図ることが
できると共に、樹脂製シールリップに多少の傷が生じて
も構わないことから取扱いも容易になる。

【００４１】シール手段は、樹脂製シールリップを組み
付けた金属環に焼付けたゴム状弾性体から延びる支持部
に支持されたリングであると、ゴム状弾性体製のリング
が樹脂製シールリップの摺動面の大気側端部に配置さ
れ、他方の部材と摺動自在に連続接触面を有して密封接
触することができる。

【００４２】シール手段は、樹脂製シールリップを組み
付けた金属環に焼付けたゴム状弾性体と一体に成形され
たことで、他の部品を必要とすることなく、シール手段
を備えることができる。また、シール手段がリングであ
れば、支持部も一体に成形することができる。

【００４３】樹脂製シールリップの摺動面にねじ溝を設
けたことで、ねじ溝のポンプ作用によって密封流体を押
し戻すことができ、ゴム状弾性体製のシール手段は密封
流体による硬化、腐食等の劣化が生じにくい。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１（ａ）は実施の形態に係る密封装置を示す
断面図であり、図１（ｂ）は大気側からのシールリップ
を示す平面図である。

【図２】図２は密封装置の作動状態を示す断面図であ
る。

【図３】図３は実施の形態の一例の密封装置を示す断面
図である。

【図４】図４は実施の形態の一例の密封装置を示す断面
図である。

【図５】図５（ａ）は従来技術の密封装置の作動状態を
示す断面図であり、図５（ｂ）は大気側からのシールリ
ップを示す平面図である。

【符号の説明】

１ 密封装置 ２ 回転軸 ３ ハウジング ４ シール部材 ５ シールリップ ６ 内環 ７ ゴム状弾性体 ８ 支持部 ９ リング １０ ねじ溝 １１ 外環 １２ ダストリップ １００ 密封装置 １０１ ハウジング １０２ 回転軸 １０３ 軸孔 １０４ シール部材 １０５ シールリップ １０６ 外環 １０７ 内環 １０８ ゴム状弾性体 １０９ ねじ溝

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 互いに同心的に相対回転自在に組み付け
   られる２部材間をシールするものであって、密封流体側
   に延びる樹脂製シールリップを備えた密封装置におい
   て、 前記樹脂製シールリップの摺動面の大気側端部に配置さ
   れ、２部材の内いずれか一方の部材と摺動自在に密封接
   触するゴム状弾性体製のシール手段を備えたことを特徴
   とする密封装置。
2. 【請求項２】 前記シール手段は、前記樹脂製シールリ
   ップを組み付けた金属環に焼付けたゴム状弾性体から延
   びる支持部に支持されたリングであることを特徴とする
   請求項１に記載の密封装置。
3. 【請求項３】 前記シール手段は、前記樹脂製シールリ
   ップを組み付けた金属環に焼付けたゴム状弾性体と一体
   に成形されたことを特徴とする請求項１又は２に記載の
   密封装置。
4. 【請求項４】 前記樹脂製シールリップの摺動面にねじ
   溝を設けたことを特徴とする請求項１、２又は３に記載
   の密封装置。