JPH1134843A - スリップ率サーボ制御装置 - Google Patents

スリップ率サーボ制御装置

Info

Publication number
JPH1134843A
JPH1134843A JP19290497A JP19290497A JPH1134843A JP H1134843 A JPH1134843 A JP H1134843A JP 19290497 A JP19290497 A JP 19290497A JP 19290497 A JP19290497 A JP 19290497A JP H1134843 A JPH1134843 A JP H1134843A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gain
braking force
slip ratio
wheel speed
micro
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP19290497A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3640126B2 (ja
Inventor
Masaru Sugai
賢 菅井
Katsuhiro Asano
勝宏 浅野
Hidekazu Ono
英一 小野
Koji Umeno
孝治 梅野
Hiroyuki Yamaguchi
裕之 山口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP19290497A priority Critical patent/JP3640126B2/ja
Publication of JPH1134843A publication Critical patent/JPH1134843A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3640126B2 publication Critical patent/JP3640126B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Regulating Braking Force (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】車速を推定することなく、スリップ率の良好な
追従制御性能を得る。 【解決手段】 目標スリップ率Sc を設定する目標スリ
ップ率設定部10と、車輪速度ωw を検出する車輪速セ
ンサ18と、車体と車輪と路面とからなる振動系の共振
周波数でブレーキ圧を微小励振したときのブレーキ圧微
小振幅に対する車輪速度微小振幅の比の微小ゲインGd
を演算する微小ゲイン演算部36と、制動力Fを推定す
る制動力推定部22と、車輪速度ωw と制動力Fとから
目標スリップ率Sc を基準ゲインGs に変換する目標ゲ
イン演算部20と、微小ゲインGdと基準ゲインGs
の差を零に一致させるように制御バルブ52に指令する
ことでブレーキ力を制御する制御器14と、から構成す
る。基準ゲインが制動力と車輪速度に応じて変化される
ので、車速を推定することなく、車速に応じて変化する
微小ゲインの最適な目標値が設定され、良好な制御性能
が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スリップ率サーボ
制御装置に係り、より詳しくは、目標スリップ率に基づ
く微小ゲインの目標値に微小ゲインを追従させる制御又
は微小ゲインに基づくスリップ率を目標スリップ率に追
従させる制御を行うスリップ率サーボ制御装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来のアンチロックブレーキ制御装置
(以下、「ABS装置」という)は、車輪速センサの信
号に基づいて車体速度、車体加減速度、または車体速度
に近似した速度信号等を作成し、これらの比較からブレ
ーキ力を制御してアンチロックブレーキ動作を行うもの
であった。
【0003】このうち特開昭61−196853号公報
記載のABS装置は、車体速度の近似値と車輪速度等か
ら得られる基準速度との比較から、車輪がロックする可
能性があるかどうかを判断し、車輪がロックする可能性
がある時にブレーキ力を減少させるというものである。
このABS装置では、推定車体速度vv は図12に示す
ように車輪速度より求めた速度vw の谷を一定勾配で接
続することにより得られるが、推定車体速度vv と実車
体速度vv*との間にずれが生じていることが理解でき
る。
【0004】また、このABS装置では、悪路走行時の
車輪接地荷重の変化によって推定車体速度vv が実車体
速度vv*より大きくなることを防止するために、推定車
体速度の変化以上に車輪速度が変化する場合には推定車
体速度の増加割合を抑制している。
【0005】また、車両がある速度で走行している時、
ブレーキをかけていくと車輪と路面との間にスリップが
生じるが、車輪と路面との間の摩擦係数μは、下式で表
されるスリップ率Sに対し、あるスリップ率でピークを
とる関数関係で変化することが知られている(図5参
照:図5は横軸がスリップ速度)。なお、vv*は実車体
速度、vw は車輪速度である。
【0006】S=(vv*−vw )/vv* このμ−S特性では、あるスリップ率(図5のA2領域
に相当)で摩擦係数μがピーク値をとるようになる。こ
のピーク値をとるスリップ率が予め分かっていれば車体
速度と車輪速度とからスリップ率を求めることによりス
リップ率制御を行うことができる。
【0007】このため、特開平1−249559号公報
のABS装置では、車体速度の近似値及び車輪速度等か
らスリップ率を演算し、演算したスリップ率と設定した
スリップ率との比較からブレーキ力を制御している。こ
のABS装置では、推定車体速度vv と実車体速度vv*
とのずれによって長時間ノーブレーキの状態となること
を防止するために、必要以上に長い時間ブレーキ圧を減
圧状態にしないようにしている。
【0008】これら従来からの制御システムは、車両の
運動系に対して車輪速度及び車体加速度から車体推定速
度を推定する部分と、車輪速度及び推定車体速度から車
輪のロック状態を検出してブレーキ力を制御する部分
と、から構成される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来のABS装置では、車体速度の推定のために図
12に示すように、車輪速度から求めた速度vw と実車
体速度vv*とが一致もしくは近い値になるまでブレーキ
力を戻す必要があり、そのためには車輪のブレーキ力の
増圧減圧を比較的低周波で繰り返す必要があった。ま
た、基準速度と比較する車体速度が車輪速度や車体加減
速度等から求めた近似値であるため、実際の車体速度と
大きく異なる時があり、場合によっては車輪が長時間ロ
ック状態に陥るとか、復帰のためブレーキ力を極端に減
少させてしまう等、車両の挙動に著しい影響を与えて制
動距離の増加や不快な振動を起こすことがあった。
【0010】更に、スリップ率によってブレーキ力を制
御するABS装置では、車両の走行する路面状態によっ
て最大の摩擦係数となるスリップ率が異なることは容易
に予想できることであり、この対策として路面状態を検
出、推定し、かつ路面状態に応じた基準スリップ率を複
数個用意するか、路面状態に応じて基準スリップ率を変
化させる必要があった。
【0011】また、一般に、路面と車輪との間の摩擦係
数μは、スリップ速度Δω(=(車体速度−車輪速度)
/車体速度)に対して、図3(a)や図3(b)に示す
ような関係で変化するが、上記従来技術では、図3
(b)に示すような特性を有する路面に対して安定なブ
レーキ制御が困難であるという問題がある。
【0012】すなわち、通常の図3(a)の路面では、
領域A2の最大の制動トルク(ピークμ)のときのスリ
ップ速度Sm の前後で、制動トルクのスリップ速度に対
する勾配(以下、「制動トルク勾配」という;直線lの
傾き)は零近傍の値の回りに緩やかに変化するが、タイ
ヤのロックのおそれのある領域A3の制動トルク勾配は
負値となり、領域A2の制動トルク勾配より小さくな
る。従って、制動トルク勾配をピーク時の零若しくはA
2領域始めの零近傍の正値に追従させることにより、A
2領域内に安定に収束させるブレーキ制御が可能とな
る。
【0013】これに対し、図3(b)の路面では、領域
A1では、スリップ速度に対して制動トルクが略比例の
関係で増大していくが、領域A2の始めで急激に制動ト
ルク勾配が変化しピーク時で零近傍の値となる。しか
し、それ以降は、領域A3に至っても、制動トルク勾配
は緩やかにしか減少せず、零に近い値をとる。従って、
A2領域内に安定に収束させることは難しくなり、場合
によってはA3領域に移行してタイヤがロックする可能
性がある。
【0014】本発明は、上記事実に鑑みて成されたもの
で、車速を推定することなく、各車速において最適なス
リップ率制御を実現すると共に、図3(b)の路面でも
良好なスリップ率制御が可能なスリップ率サーボ制御装
置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を実現するため
に、請求項1の発明は、目標スリップ率に追従する制御
を行うスリップ率サーボ制御装置であって、車輪速度を
検出する車輪速検出手段と、車輪に作用する制動力又は
制動力に関連した物理量を検知する制動力検知手段と、
車体と車輪と路面とから構成される振動系の共振周波数
でブレーキ圧を微小励振する微小励振手段と、前記微小
励振手段により微小励振されたブレーキ圧の微小振幅に
対する前記共振周波数での車輪速度の微小振幅の比であ
る微小ゲインを演算する微小ゲイン演算手段と、前記車
輪速検出手段により検出された車輪速度と、前記制動力
検知手段により検知された制動力又は制動力に関連した
物理量とに基づいて、前記目標スリップ率を目標微小ゲ
インに変換する演算を行う目標ゲイン演算手段と、前記
微小ゲイン演算手段により演算された微小ゲインが、前
記目標ゲイン演算手段により演算された目標微小ゲイン
に追従するように車輪運動を制御するサーボ制御手段
と、を有することを特徴とする。
【0016】また、請求項2の発明は、目標スリップ率
に追従する制御を行うスリップ率サーボ制御装置であっ
て、車輪速度を検出する車輪速検出手段と、車輪に作用
する制動力又は制動力に関連した物理量を検知する制動
力検知手段と、車体と車輪と路面とから構成される振動
系の共振周波数でブレーキ圧を微小励振する微小励振手
段と、前記微小励振手段により微小励振されたブレーキ
圧の微小振幅に対する前記共振周波数での車輪速度の微
小振幅の比である微小ゲインを演算する微小ゲイン演算
手段と、前記車輪速検出手段により検出された車輪速
度、前記制動力検知手段により検知された制動力又は制
動力に関連した物理量、及び前記微小ゲイン演算手段に
より演算された微小ゲインに基づいてスリップ率を演算
するスリップ率演算手段と、前記スリップ率演算手段に
より演算されたスリップ率が、前記目標スリップ率に追
従するように車輪運動を制御するサーボ制御手段と、を
有することを特徴とする。 (本発明の原理−微小ゲインに関する説明)重量Wv
車体を備えた車両が車体速度ωv で走行している時の車
輪での振動現象、すなわち車体と車輪と路面とによって
構成される振動系の振動現象を、車輪回転軸で等価的に
モデル化した図4に示すモデルを参照して考察する。
【0017】図4のモデルにおいて、ブレーキ力は、路
面と接するタイヤのトレッド115の表面を介して路面
に作用するが、このブレーキ力は実際には路面からの反
作用(制動力)として車体に作用するため、車体重量の
回転軸換算の等価モデル117はタイヤのトレッドと路
面との間の摩擦要素116(路面μ)を介して車輪11
3と反対側に連結したものとなる。これは、シャシーダ
イナモ装置のように、車輪下の大きな慣性、すなわち車
輪と反対側の質量で車体の重量を模擬することができる
ことと同様である。
【0018】図4でタイヤリムを含んだ車輪113の慣
性をJw 、リムとトレッド115との間のばね要素11
4のばね定数をK、車輪半径をR、トレッド115の慣
性をJt 、トレッド115と路面との間の摩擦要素11
6の摩擦係数をμ、車体の重量Wv の回転軸換算の等価
モデル117の慣性をJV とすると、ホイールシリンダ
圧により生じるブレーキトルクTb ’から車輪速ωw
での伝達特性は、車輪運動の方程式より、
【0019】
【数1】
【0020】となる。なお、sはラプラス変換の演算子
である。
【0021】タイヤが路面にグリップしている時は、ト
レッド115と車体等価モデル117とが直結されてい
ると考えると、車体等価モデル117とトレッド115
との和の慣性と、車輪113の慣性とが共振する。すな
わち、この振動系は、車輪と車体と路面とから構成され
た車輪共振系とみなすことができる。このときの車輪共
振系の共振周波数ω∞は、(1) 式の伝達特性において、 ω∞=√{(Jw +Jt +Jv )K/Jw (Jt +Jv )}/2π (2) となる。この状態は、図3(a)、(b)及び図5で
は、ピークμに達する前の領域A1に対応する。
【0022】逆に、タイヤの摩擦係数μがピークμに近
づく場合には、タイヤ表面の摩擦係数μがスリップ率
((車体速度−車輪速度)/車体速度)に対して変化し
難くなり、トレッド115の慣性の振動に伴う成分は車
体等価モデル117に影響しなくなる。つまり等価的に
トレッド115と車体等価モデル117とが分離され、
トレッド115と車輪113とが共振を起こすことにな
る。このときの車輪共振系は、車輪と路面とから構成さ
れているとみなすことができ、その共振周波数ω∞’
は、(2) 式において、車体等価慣性Jv を0とおいたも
のと等しくなる。すなわち、 ω∞' =√{(Jw +Jt )K/Jw t )}/2π (3) となる。この状態は、図3(a)、(b)及び図5で
は、ピークμ近傍の領域A2に対応する。
【0023】(2) と(3) 式とを比較し、車体等価慣性J
v が車輪慣性Jw 、トレッド慣性J t より大きいと仮定
すると、(3) 式の場合の車輪共振系の共振周波数ω∞’
は(2) 式よりもω∞よりも高周波数側にシフトすること
になる。従って、車輪共振系の共振周波数の変化を反映
する物理量に基づいて、車輪と路面との間の摩擦状態を
判定することが可能となる。
【0024】そこで、本発明では、このような共振周波
数の変化を反映する物理量として、以下のような微小ゲ
インGd を導入する。
【0025】まず、本発明の微小励振手段が、車輪と車
体と路面とからなる振動系の共振周波数ω∞((2) 式)
でブレーキ圧Pb を微小励振すると、車輪速度ωw も平
均的な車輪速度の回りに共振周波数ω∞で微小振動す
る。ここで、このときのブレーキ圧Pb の共振周波数ω
∞の微小振幅をPv 、車輪速度の共振周波数ω∞の微小
振幅をωwvとした場合、微小ゲインGd を Gd =ωwv/Pv (4) とする。なお、この微小ゲインGd を、ブレーキ圧Pb
に対する車輪速ωw の比(ωw /Pb )の共振周波数ω
∞の振動成分とみなし、 Gd =((ωw /Pb )|s=jω∞) (5) と表すこともできる。
【0026】この微小ゲインGd は、(5) 式に示すよう
に(ωw /Pb )の共振周波数ω∞の振動成分であるの
で、摩擦状態がピークμ近傍の領域に至ったとき、共振
周波数がω∞’にシフトするため急激に減少する。これ
は、ピークμ近傍で路面μ勾配が零近傍に減少すること
と対応しており、微小ゲインGd が路面μ勾配と等価な
物理量であることを示唆している。そこで、以下に、微
小ゲインGd が、図3(a)、(b)に示した制動トル
ク勾配(路面μ勾配)と等価であることを厳密に証明す
る。
【0027】図5に示すように、スリップ速度Δωと、
車輪−路面間の摩擦係数μとの間には、あるスリップ率
で摩擦係数μがピークをとる関数関係が成立することが
知られている。
【0028】ところで、微小励振手段によりブレーキ圧
を微小励振すると、車輪速度が微小振動するので、スリ
ップ率もあるスリップ率の回りで微小振動する。ここ
で、図5の特性を有する路面において、あるスリップ率
の回りで微小振動したときの摩擦係数μのスリップ速度
Δωに対する変化を考える。
【0029】このとき、路面の摩擦係数μは、 μ = μ0 +αRΔω (6) と近似できる。すなわち、微小振動によるスリップ速度
の変化が小さいため、傾きαRの直線で近似できる。
【0030】ここで、タイヤと路面間の摩擦係数μによ
り生じる制動トルクTb =μWRに(6) 式を代入する
と、 Tb = μWR = μ0 WR+αR2 ΔωW (7) となる。ここで、Wは輪荷重である。(7) 式の両辺をΔ
ωで1階微分すると、
【0031】
【数2】
【0032】を得る。よって、(8) 式により、制動トル
ク勾配(dTb /Δω)が、αR2 Wに等しいことが示
された。
【0033】一方、ブレーキトルクTb ’がブレーキ圧
b と比例関係にあることから、微小ゲインGd は、ブ
レーキトルクTb ’に対する車輪速度ωw の比(ωw
b’)の共振周波数ω∞の振動成分と比例関係にあ
る。従って、(1) 式の伝達特性により、微小ゲインGd
は次式によって表される。
【0034】
【数3】
【0035】一般に、(11)式において、 |A| = 0.012 << |B| = 0.1 (12) となることから、(8) 、(9) 式より、
【0036】
【数4】
【0037】を得る。すなわち、スリップ速度Δωに対
する制動トルクTb の勾配は微小ゲインGd に比例す
る。
【0038】以上により、微小ゲインGd が制動トルク
勾配と等価な物理量であることが示された。 (本発明の作用)一般に、路面μ特性において、制動ト
ルクTb (又は摩擦係数μ)は、ピークμの近くまで
(領域A1)、スリップ速度Δωに対し略比例の関係に
あると近似できる。なお、この近似は、図3(b)の路
面の領域A1では、特に有効に成り立っている。よっ
て、比例係数をαとおくと、領域A1において、 Tb = αΔω (14) を得る。
【0039】ここで、α=(dTb /dΔω)であるこ
とから、(13)、(14)式より、 Tb = k’Gd Δω (15) が成立する。ただし、k’は(13)式の比例係数である。
【0040】また、制動力Fは、制動トルクTb と比例
関係(F=Tb /R;Rは車輪の有効半径)にあるの
で、(15)式を制動力Fについて表すと、 F = kGd Δω (16) となる。ただし、k=k’/Rである。
【0041】制動力Fについては、実施の形態で後述す
るように推定方法があるので、(16)式をΔωについて表
すと、
【0042】
【数5】
【0043】となる。ただし、K=1/k(定数)であ
る。ここで、スリップ率Sは、車輪速度をωw 、車体速
度(角速度換算)をωv とすると、
【0044】
【数6】
【0045】と表せる。ただし、スリップ速度Δω=ω
v −ωw である。(18)式に(17)式を代入すると、
【0046】
【数7】
【0047】となる。すなわち、スリップ率Sは、車輪
速度ωw 、制動力F、微小ゲインGdから演算すること
ができる。
【0048】(19)式を、微小ゲインGd について変形す
ると、
【0049】
【数8】
【0050】となる。すなわち、微小ゲインGd は、ス
リップ率S、車輪速度ωw 、制動力F、から演算するこ
とができる。
【0051】そこで、請求項1の発明では、目標ゲイン
演算手段が、車輪速検出手段により検出された車輪速度
ωw と、制動力検知手段により検知された制動力Fとに
基づいて、目標スリップ率Sc を目標微小ゲインGs
変換する演算を行う。この目標ゲイン演算手段による演
算は、例えば、(20)式において、スリップ率Sを目標ス
リップ率Sc に、微小ゲインGd を目標微小ゲインGs
に置き換えた以下の(21)式により行うことができる。
【0052】
【数9】
【0053】ここで、制動力Fとして、制動力に関連す
る物理量、例えば制動トルクTb 等を用いても良い。こ
の場合、制動力Fと制動トルクTb との比例関係より、
(21)式において制動力Fの代わりに制動トルクTb で表
した変形式を用いることはいうまでもない。また、制動
力Fは、車輪に加えられたブレーキ力の反力として車輪
に作用するため、関連した物理量として、検出若しくは
推定されたホイールシリンダ圧を用いることもできる。
【0054】なお、目標ゲイン演算手段の演算方法は、
(21)式若しくはその変形式に限定されるものではなく、
直線近似の(14)式を、さらに近似度の良い関数で表した
ものから導き出された、微小ゲイン、スリップ率、制動
力、及び車輪速度の間の関係式より演算することもでき
る。
【0055】そして、本発明のサーボ制御手段は、微小
ゲイン演算手段により演算された微小ゲインGd が、目
標ゲイン演算手段により演算された目標微小ゲインGs
に追従するように車輪運動を制御する。
【0056】例えば、本発明をABS装置に適用した場
合、微小ゲインGd が目標微小ゲインGs に追従するよ
うに、車輪に作用する平均的なブレーキ力を制御する。
また、トラクションコントロール装置(以下、「TRC
装置」という)に適用する場合、TRC領域のスリップ
率に応じて演算された目標微小ゲインGs に、微小ゲイ
ンGd が追従するように、アクセル開度等を制御する。
【0057】このように請求項1の発明では、目標スリ
ップ率Sc に対応する目標微小ゲインGs を、車速ωv
からではなく、(19)式を介してスリップ率と関連する制
動力F及び車輪速度ωw から導いているので、車速の推
定を行うことなく、車速の変化に応じて変化する微小ゲ
インの最適な目標値をリアルタイムに設定することがで
きる。
【0058】また、請求項2の発明では、スリップ率演
算手段が、車輪速検出手段により検出された車輪速度ω
w 、制動力検知手段により検知された制動力F、及び微
小ゲイン演算手段により演算された微小ゲインGd 、に
基づいてスリップ率Sを演算する。このスリップ率演算
手段による演算は、例えば(19)式に基づいて実行するこ
とができる。
【0059】ここで、制動力Fとして、制動力に関連す
る物理量を用いることができるのは、請求項1の発明と
同様である。また、スリップ率演算手段の演算方法は、
(19)式若しくはその変形式に限定されるものではなく、
直線近似の(14)式を、さらに近似度の良い関数で表した
ものから導き出された、微小ゲイン、スリップ率、制動
力、及び車輪速度の間の関係式より演算することもでき
る。
【0060】そして、本発明のサーボ制御手段は、スリ
ップ率演算手段により演算されたスリップ率Sが、目標
スリップ率Sc に追従するように車輪運動を制御する。
【0061】このように請求項2の発明では、演算され
た微小ゲインGd を車速ωv からではなく、(19)式を介
してスリップ率と関連する制動力F及び車輪速度ωw
らスリップ率Sに変換し、該スリップ率Sを、目標スリ
ップ率Sc に追従させる制御を行っている。すなわち、
車速の推定を行うことなく、微小ゲインの車速依存性に
対応している。
【0062】ところで、一般に、制動力の勾配に変化の
ない部分では、該勾配に略比例する微小ゲインを制御し
た場合、基準ゲインが大き過ぎると、ブレーキ油圧を減
圧し過ぎる傾向にあり、逆に小さ過ぎるとピークの間際
まで達して、小さな外乱でも車輪ロックに陥る可能性が
ある。しかし、請求項1及び請求項2の発明によれば、
勾配の変化しない領域では、ブレーキ油圧に対して、ス
リップ率がほぼ単調に増加・減少することを利用して、
該スリップ率に基づいて制御することにより、ブレーキ
油圧の過減圧が防止できると共に、車輪ロックに陥る可
能性も少なくなる。
【0063】
【発明の実施の形態】以下、本発明のスリップ率サーボ
制御装置を、車両のABS装置に適用した場合の各実施
の形態を図面に基づいて詳細に説明する。 (第1の実施の形態)図1には、本発明の第1の実施の
形態に係るABS装置の構成ブロック図が示されてい
る。
【0064】図1に示すように、本実施の形態のABS
装置は、車輪速度ωw を検出する車輪速センサ18、検
出された車輪速度ωw から微小ゲインGd を演算する微
小ゲイン演算部36、車輪速度ωw から車輪に作用する
制動力Fを推定する制動力推定部22、目標スリップ率
c を設定する目標スリップ率設定部10、設定された
目標スリップ率Sc を、車輪速度ωw と制動力Fとを用
いて微小ゲインGd の基準ゲインGs に変換する演算を
行う目標ゲイン演算部20、基準ゲインGs と微小ゲイ
ンGd との差ΔG=Gd −Gs を演算する差分器12、
演算されたΔGを零に一致又は略一致させるための平均
ブレーキ力の指令信号Pr を算出する制御器14、及び
指令された平均ブレーキ力指令Pr と微小励振指令Pv
との和信号に基づいてブレーキ圧を制御する制御バルブ
52、から構成される。
【0065】このうち目標スリップ率設定部10は、通
常の路面状態でピークμとなるときのスリップ率(例え
ば0.2)を目標スリップ率Sc として記憶するメモリ
により実現することができる。また、路面状態毎にピー
クμを与えるスリップ率を記憶すると共に、車輪運動を
表す複数の物理量から路面状態を推定する路面推定手段
を設け、この路面推定手段により推定された路面状態に
応じてピークμとなるときのスリップ率を出力する手段
として構成することも可能である。
【0066】目標ゲイン演算部20は、図10に示すよ
うに、1からSc を減算する減算器70、この減算結果
をSc で除算する除算器71、この除算結果に制動力F
を乗算する乗算器72、この乗算結果を車輪速度ωw
除算する除算器73、及びこの除算結果に定数Kを乗算
する定数器74、から構成されており、上記(21)式を実
行することにより基準ゲインGs を算出する。
【0067】また、図1の制御器14は、ΔGを零に一
致又は略一致させるためのブレーキ圧指令信号を比例ゲ
イン及び積分ゲインにより演算する所謂PI制御器で構
成することができる。勿論、いわゆるH∞制御や2自由
度制御などを行うロバスト制御器等、より高次の制御を
行う制御器により構成することもできる。
【0068】また、制御バルブ52によるブレーキ圧の
制御は、該制御バルブ52回りに構成されたブレーキ部
16により実現することができる。ここで、ブレーキ部
16の詳細な構成を図8に示す。
【0069】図8に示すように、ブレーキ部16は、制
御バルブ52以外に、マスタシリンダ48、ホイールシ
リンダ56、リザーバー58及びオイルポンプ60を備
えている。
【0070】このうちブレーキペダル46は、ブレーキ
ペダル46の踏力に応じて増圧するマスタシリンダ48
を介して制御バルブ52の増圧バルブ50へ接続されて
いる。また、制御バルブ52は、減圧バルブ54を介し
て低圧源としてのリザーバー58へ接続されている。さ
らに、制御バルブ52には、該制御バルブによって供給
されたブレーキ圧をブレーキディスクに加えるためのホ
イールシリンダ56が接続されている。この制御バルブ
52は、ドライバの踏力によるブレーキ圧Pdを供給す
ると共に、入力されたバルブ動作指令(Pr +Pv )に
基づいて増圧バルブ50及び減圧バルブ54の開閉を制
御する。
【0071】なお、この制御バルブ52が増圧バルブ5
0のみを開くように制御されると、ホイールシリンダ5
6の油圧(ホイールシリンダ圧)は、ドライバがブレー
キペダル46を踏み込むことによって得られる圧力に比
例したマスタシリンダ48の油圧(マスタシリンダ圧)
まで上昇する。逆に減圧バルブ54のみを開くように制
御されると、ホイールシリンダ圧は、ほぼ大気圧のリザ
ーバ58の圧力(リザーバ圧)まで減少する。また、両
方のバルブを閉じるように制御されると、ホイールシリ
ンダ圧は保持される。
【0072】ホイールシリンダ56によりブレーキディ
スクに加えられるブレーキ力(ホイールシリンダ圧に相
当)は、マスタシリンダ48の高油圧が供給される増圧
時間、リザーバー58の低油圧が供給される減圧時間、
及び供給油圧が保持される保持時間の比率と、圧力セン
サ等により検出されたマスタシリンダ圧及びリザーバー
圧とから求められる。
【0073】従って、制御バルブ52の増減圧時間をマ
スタシリンダ圧に応じて制御することにより、所望のブ
レーキトルクを実現することができる。そして、ブレー
キ圧の微小励振は、平均ブレーキ力を実現する制御バル
ブ52の増減圧制御と同時に共振周波数に対応した周期
で増圧減圧制御を行うことにより可能となる。
【0074】具体的な制御の内容として、図9に示すよ
うに、微小励振の周期(例えば24[ms])の半周期
T/2毎に増圧と減圧のそれぞれのモードを切り替え、
バルブへの増減圧指令は、モード切り替えの瞬間から増
圧時間ti 、減圧時間tr のそれぞれの時間分だけ増圧
・減圧指令を出力し、残りの時間は、保持指令を出力す
る。平均ブレーキ力は、マスタシリンダ圧に応じた増圧
時間ti と減圧時間t r との比によって定まると共に、
共振周波数に対応した半周期T/2毎の増圧・減圧モー
ドの切り替えによって、平均ブレーキ力の回りに微小振
動が印加される。
【0075】上記のようなブレーキ部16の作用により
ブレーキ圧が微小励振されたときの微小ゲインを演算す
る微小ゲイン演算部36の構成を図6を用いて説明す
る。
【0076】図6に示すように、微小ゲイン演算部36
は、平均ブレーキ圧の回りに車体と車輪と路面とから構
成される振動系の共振周波数ω∞((2) 式)でブレーキ
圧を微小励振したときの、車輪速度ωw の共振周波数ω
∞での微小振幅(車輪速微小振幅ωwv)を検出する車輪
速微小振幅検出部40と、共振周波数ω∞のブレーキ圧
の微小振幅Pv を検出するブレーキ圧微小振幅検出部4
2と、検出された車輪速微小振幅ωwvをブレーキ圧微小
振幅Pv で除算することにより微小ゲインGdを出力す
る除算器44と、から構成される。
【0077】ここで、車輪速微小振幅検出部40は、共
振周波数ω∞の振動成分を抽出するフィルタ処理を行う
図7のような演算部として実現できる。例えば、この振
動系の共振周波数ω∞が40[Hz]程度であるので、
制御性を考慮して1周期を24[ms]、約41.7
[Hz]に取り、この周波数を中心周波数とする帯域通
過フィルタ75を設ける。このフィルタにより、車輪速
度信号ωw から約41.7[Hz]近傍の周波数成分の
みが抽出される。さらに、このフィルタ出力を全波整流
器76により全波整流、直流平滑化し、この直流平滑化
信号から低域通過フィルタ77によって低域振動成分の
みを通過させることにより、車輪速微小振幅ωwvを出力
する。
【0078】なお、周期の整数倍、例えば1周期の24
[ms]、2周期の48[ms]の時系列データを連続
的に取り込み、41.7[Hz]の単位正弦波、単位余
弦波との相関を求めることによっても車輪速微小振幅検
出部40を実現できる。
【0079】そして、ブレーキ圧微小振幅Pv は、マス
タシリンダ圧、図9に示したバルブの増圧時間ti の長
さ、及び減圧時間tr の長さによって所定の関係で定ま
るので、図6のブレーキ圧微小振幅検出部42は、マス
タシリンダ圧、増圧時間ti及び減圧時間tr からブレ
ーキ圧微小振幅Pv を出力するテーブルとして構成する
ことができる。
【0080】また、図1の制動力検出部22は、路面か
ら車輪に対し摩擦力として作用する制動力を、車輪の力
学的モデルに従って以下のように推定する。
【0081】すなわち、車輪には、車輪の回転方向と反
対方向に作用するブレーキトルクT B と、摩擦力として
車輪の回転方向に作用する制動力Fによるタイヤトルク
fと、が作用する。ブレーキトルクTB は、車輪のブ
レーキディスクに対し車輪の回転を妨げるように作用す
るブレーキ力に由来するものであり、制動力F及びタイ
ヤトルクTf は、車輪と路面との間の摩擦係数をμB
車輪半径をr、車輪荷重をWとしたとき、次式によって
表される。
【0082】F = μB W Tf = F×r = μB Wr 従って、車輪の運動方程式は、
【0083】
【数10】
【0084】となる。ただし、Iは車輪の慣性モーメン
トである。検出された車輪速度ωw から車輪加速度(d
ω/dt)を演算すると共に、ブレーキディスクに加え
られるホイールシリンダ圧に基づいてブレーキトルクT
Bを求めれば、(22)式に基づいて制動力Fを推定するこ
とができる。
【0085】また、特願平9−46100号の明細書に
詳細に記載されているように、アクセル開度などから求
めた車輪の駆動トルクと、外乱としての制動力Fとが車
輪に作用する(22)式と等価な力学モデルをオブザーバと
して構成することができる。このオブザーバでは、(22)
式を時間tに関し2階積分することにより得られる回転
位置と実際に検出された回転位置との偏差を0に一致さ
せるように制御周期毎に等価モデルの外乱及び回転速度
を修正し、修正された外乱に基づき制動力Fを推定す
る。このオブザーバによれば、ノイズ等の影響を受けや
すい車輪加速度を演算する必要が無いため、より高精度
に制動力Fを演算することができる。
【0086】次に、第1の実施の形態の作用を説明す
る。所定条件の成立により、制御バルブ52への動作指
令に微小励振指令が印加され、ブレーキ圧が共振周波数
ω∞で微小励振される。なお、この所定条件として、通
常のABS開始条件、例えば、ドライバがブレーキペダ
ルを踏み込み、かつ車輪減速度が一定値を越えた条件な
どが挙げられる。
【0087】ブレーキ圧が微小励振されると、微小ゲイ
ン演算部36が、微小ゲインGd を演算し、制動力推定
部22が制動力Fを推定する。そして、目標スリップ率
設定部10が、ピークμのときのスリップ率として目標
スリップ率Sc を出力すると、目標ゲイン演算部20
が、この目標スリップ率Sc を、検出された車輪速度ω
w と推定された制動力Fとを用いて、(21)式に基づき微
小ゲインの目標値となる基準ゲインGs に変換する。
【0088】現時点の微小ゲインGd と基準ゲインGs
との差ΔGが差分器12により算出されると、制御器1
4は、ΔGが零に一致又は略一致するような平均ブレー
キ力の指令Pr を算出する。例えば、ΔGが負値のと
き、すなわち、微小ゲインGdが基準ゲインGs より小
さくなったとき、ピークμとなるスリップ率Sc を越え
てブレーキ制動されたとみなして、平均ブレーキ力を低
減する指令Pr を出力する。この指令を受けた制御バル
ブ52は、ドライバの踏力によるブレーキ力Pdから、
ブレーキ力低減指令Pr に対応したブレーキ力が低減さ
れるようにバルブの増圧減圧時間を調整する。平均ブレ
ーキ力が低下すると、スリップ率が低下するので、ピー
クμとなるスリップ率の領域を越えてタイヤがロックさ
れるおそれを回避できる。
【0089】逆に、ΔGが正値の場合、すなわち、微小
ゲインGd が基準ゲインGs より大きくなったとき、ピ
ークμとなるスリップ率Sc 以下のスリップ率とみなし
て、ブレーキ力を増加させる指令Pr を出力する。この
指令を受けた制御バルブ52は、ドライバの踏力による
ブレーキ力Pd に、ブレーキ力増加指令Pr に対応した
ブレーキ力が加わるようにバルブの増圧減圧時間を調整
する。これにより、スリップ率がピークμ近傍まで増加
し、制動距離を短縮することができる。
【0090】なお、ドライバの踏力を越えたブレーキ力
がかからないように、制御器14への入力信号ΔGから
正値を除去する正値除去部を設けても良い。この場合、
制御器14への指令は前者のブレーキ力の低減指令のみ
となる。ところで、既に述べた通り、ピークμの状態に
おける微小ゲインGd は、車速が低速になるほど大きく
なるという実験事実から、ピークμの状態に維持するた
めの基準ゲインGs は、車速が低速のときほど大きくす
ることが望ましい。
【0091】本実施の形態では、ピークμとなるスリッ
プ率Sc を車輪速度及び制動力を用いてピークμに対応
する基準ゲインGs に変換することにより、上記の微小
ゲインの車速依存性に対応している。すなわち、車速を
推定することなく、基準ゲインを好適に変更しているの
で、各車速においてピークμを維持するための最適なブ
レーキ力の制御を正確に行うことができる。
【0092】また、車速に関連した物理量の1つである
車輪速度だけから基準ゲインGs を変更する従来の方法
では、スリップ率が大きくなるピークμ近傍において車
速と車輪速度との差が大きくなるので、基準ゲインGs
の実際値と理想値との差が大きくなり、最適なブレーキ
制動ができなくなるおそれがある。しかし、本実施の形
態では、車輪速度のみならず、スリップ率と関連のある
制動力Fを用いて基準ゲインを演算するため、ピークμ
近傍であるか否かに係わらず微小ゲインの車速依存性に
好適に対応することができ、各車速において最適なブレ
ーキ力の制御が可能となる。
【0093】さらに、本実施の形態では、実質的に目標
スリップ率Sc に追従させる制御を行うため、従来技術
と比較して次のような利点がある。すなわち、図3
(b)の路面のように、制動トルク勾配が領域A2で急
激に変化し、領域A3に移行するところでは変化の乏し
い路面で、ピークμのスリップ率Sc に追従する制御を
行う場合でも、該スリップ率Sc に対応した基準ゲイン
s が、正確に演算されるので、より良好なピークμ追
従性能が得られ、タイヤのロックを確実に防止すること
ができる。特に、図3(b)の路面では、(14)式の近似
がピークμ近傍まで正確に成り立っているので、(21)式
をそのまま用いて演算された基準ゲインにより、良好な
ピークμ追従制御が可能となる。
【0094】なお、制御器14への入力信号の形式は、
任意好適に変更可能である。例えば、上記差分器12の
代わりに、次式を演算する演算器を介在させても良い。
【0095】
【数11】
【0096】(23)式によれば、ピークμを越えて微小ゲ
インGd がGs より小さくなると、ΔGの負値が急激に
大きくなる。すなわち、感度が高くなるため、タイヤの
ロックに陥る可能性を回避しつつ、ピークμを維持する
制御をより高精度に行うことができる。 (第2の実施の形態)次に、第2の実施の形態を説明す
る。
【0097】図2には、本発明の第2の実施の形態に係
るABS装置の構成ブロック図が示されている。なお、
第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を
付して詳細な説明を省略する。
【0098】図2に示すように、本実施の形態のABS
装置は、車輪速センサ18により検出された車輪速度ω
w 、微小ゲイン演算部36により演算された微小ゲイン
d、及び制動力推定部22により推定された制動力F
に基づいてスリップ率Sを演算するスリップ率演算部2
3が備えられており、このスリップ率演算部23は、差
分器13の一方の入力端と接続されている。この差分器
13の他方の入力端には、目標スリップ率設定部10が
接続され、その出力端には制御器15が接続されてい
る。差分器13は、目標スリップ率設定部10により設
定された目標スリップ率Sc とスリップ率演算部23に
より演算されたスリップ率Sとの差ΔS(=Sc −S)
を演算し、制御器15へ出力する。
【0099】この制御器15は、ΔSを零に一致又は略
一致させるためのブレーキ圧指令信号Pr を演算する所
謂PI制御器(H∞制御や2自由度制御などを行う制御
器でも良い)により実現することができる。この制御器
15の指令信号Pr は、ブレーキ圧微小励振指令Pv
加算されて制御バルブ52へ入力される。
【0100】すなわち、第1の実施の形態では、目標ス
リップ率に対応する微小ゲインの基準ゲインGs を演算
し、この基準ゲインGs に微小ゲインGd を追従させる
制御を行ったが、第2の実施の形態では、演算した微小
ゲインGd をスリップ率に変換し、このスリップ率を目
標スリップ率に追従させる制御を行う。
【0101】また、スリップ率演算部23は、図11に
示すように、入力された制動力Fに定数Kを乗算する定
数器80、この乗算結果を微小ゲインGd で除算する除
算器81、この除算結果に車輪速度ωw を加算する加算
器82、除算器81の除算結果を加算器82の加算結果
で除算する除算器83、から構成されており、上記(19)
式を実行することによりスリップ率Sを算出する。
【0102】なお、制御器15への入力信号の形式が任
意好適に変更可能であることは、第1の実施の形態と同
様である。
【0103】次に、第2の実施の形態の作用を説明す
る。所定条件の成立により、制御バルブ52への動作指
令に微小励振指令が印加され、ブレーキ圧が共振周波数
ω∞で微小励振される。なお、この所定条件は、第1の
実施の形態と同様である。
【0104】ブレーキ圧が微小励振されると、微小ゲイ
ン演算部36が、微小ゲインGd を演算し、制動力推定
部22が制動力Fを推定する。そして、図11のスリッ
プ率演算部23が、検出された車輪速度ωw と演算され
た微小ゲインGd と推定された制動力Fとを用いて、(1
9)式に基づきスリップ率Sを演算する。
【0105】現時点で演算されたスリップ率Sと目標ス
リップ率Sc との差ΔSが差分器12により算出される
と、制御器15は、ΔSが零に一致又は略一致するよう
な平均ブレーキ力の指令Pr を算出する。例えば、ΔS
が負値のとき、ピークμとなるスリップ率Sc を越えて
ブレーキ制動されたとみなして、平均ブレーキ力を低減
する指令Pr を出力する。平均ブレーキ力が低下する
と、スリップ率が低下するので、ピークμとなるスリッ
プ率の領域を越えてタイヤがロックされるおそれを回避
できる。
【0106】逆に、ΔSが正値の場合、ピークμとなる
スリップ率Sc 以下のスリップ率であるので、ブレーキ
力を増加させる指令Pr を出力する。これにより、スリ
ップ率がピークμ近傍まで増加し、制動距離を短縮する
ことができる。なお、ドライバの踏力を越えたブレーキ
力がかからないように、制御器15への入力信号ΔSか
ら正値を除去する正値除去部を設けても良い。この場
合、制御器15への指令は前者のブレーキ力の低減指令
のみとなる。
【0107】このように第2の実施の形態では、微小ゲ
インを、車輪速度と制動力とを用いてスリップ率Sに変
換し、このスリップ率Sを目標スリップ率Sc に追従さ
せる制御を行うことにより、車速を推定することなく、
微小ゲインの車速依存性に対応している。すなわち、車
速の変動に応じてピークμ近傍の値が変動する微小ゲイ
ンが、車速が変動してもピークμ近傍のときにある特定
の値となるスリップ率Sに変換されるので、このスリッ
プ率Sの目標追従制御を行うことで、微小ゲインの車速
依存性を吸収し、各車速において、最適なブレーキ力の
制御を実現している。よって、第2の実施の形態におい
ても車速を推定しないで済むことから、第1の実施の形
態と同様の効果を奏することができる。
【0108】さらに、第2の実施の形態においても、目
標スリップ率Sc に追従させる制御を行うため、従来技
術と比較して、第1の実施の形態と同様の利点がある。
【0109】以上が本発明の各実施の形態であるが、本
発明は、上記例にのみ限定されるものではなく、本発明
の要旨を逸脱しない範囲内において任意好適に変更可能
である。
【0110】例えば、上記各実施の形態では、ピークμ
に対応する目標スリップ率に追従する制御を例にした
が、本発明は、これに限定されるものではなく、ピーク
μ以外のスリップ率を設定し、このスリップ率に追従す
る制御を行うこともできる。
【0111】また、上記各実施の形態では、本発明のス
リップ率サーボ制御装置を、ABS装置に適用する例を
示したが、本発明は、これに限定されるものではなく、
例えばTRC装置等にも適用することができる。この場
合、TRC領域のスリップ率に追従するようにアクセル
開度や過剰加速を防止する等の制御を行うが、ドライバ
の踏力とは無関係にブレーキ圧の微小励振を行うよう
に、図8のブレーキ部16の構成を変更する。例えば、
制御バルブ50の増圧バルブ50へ、ブレーキペダル4
6の踏み込みが無くても高油圧を供給できる高油圧供給
手段を設け、該手段とマスタシリンダ48とを切り替え
可能に構成する。TRC制御時には、増圧バルブ50へ
該高油圧供給手段を接続し、それ以外では、マスタシリ
ンダ48を接続するように切り替える。
【0112】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明に
よれば、目標スリップ率、制動力及び車輪速度から目標
微小ゲインを求めるようにしたので、車速の変化に応じ
て変化する微小ゲインの最適な目標値を、車速の推定を
行うことなく設定することができ、各車速に応じて良好
な制御性能が得られる、という効果がある。
【0113】また、請求項2の発明によれば、演算され
た微小ゲインを、制動力及び車輪速度を用いてスリップ
率に変換し、該スリップ率を、目標スリップ率に追従さ
せる制御を行うようにしたので、車速の推定を行う必要
がなく、各車速に応じて良好な制御性能が得られる、と
いう効果がある。
【0114】すなわち、請求項1及び請求項2の発明に
よれば、車体速度を推定しなくて済むので、従来技術の
ように推定車体速度と実車体速度とが一致若しくは略一
致するまでブレーキ圧の増減圧を繰り返す必要が無くな
り、よって車輪のロックを回避すると共に車両挙動への
影響を軽減することができる。
【0115】さらに、請求項1及び請求項2の発明によ
れば、ピークμに対応する目標スリップ率に追従させる
制御を行った場合、制動トルク勾配がピークμ近傍の領
域で急激に変化し、それ以降の領域では変化の乏しい路
面でも、ピークμに確実に追従し、タイヤのロックを防
止することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスリップ率サーボ制御装置が適用され
た第1の実施の形態に係るABS装置の構成を示すブロ
ック図である。
【図2】本発明のスリップ率サーボ制御装置が適用され
た第2の実施の形態に係るABS装置の構成を示すブロ
ック図である。
【図3】スリップ速度に対する制動トルクの変化特性
(制動トルク特性)を示すための図であって、(a)は
ピークμの前後で制動トルク勾配が緩やかに変化する路
面の制動トルク特性、(b)はピークμの前後で制動ト
ルク勾配が急激に変化する路面の制動トルク特性を示
す。
【図4】車輪と車体と路面とから構成される振動系の等
価モデルを示す図である。
【図5】スリップ速度に対する摩擦係数μの変化特性を
示すと共に、微小ゲインが制動トルク勾配と等価である
ことを説明するため、微小振動の中心の回りのμの変化
が直線で近似できることを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る微小ゲイン演算部の
構成を示すブロック図である。
【図7】上記微小ゲイン演算部の車輪速微小振幅検出部
の構成を示すブロック図である。
【図8】ブレーキ部のハードウェア構成を示すブロック
図である。
【図9】制御バルブへの動作指令を示す図である。
【図10】図1の第1の実施の形態に係るABS装置の
目標ゲイン演算部の構成例を示すブロック図である。
【図11】図2の第2の実施の形態に係るABS装置の
スリップ率演算部の構成例を示すブロック図である。
【図12】従来のABS装置で用いられる車体速度の推
定方法の概要を示す線図である。
【符号の説明】
10 目標スリップ率設定部 14 制御器 15 制御器 16 ブレーキ部 18 車輪速センサ 20 目標ゲイン演算部 22 制動力推定部 23 スリップ率演算部 36 微小ゲイン演算部 40 車輪速微小振幅検出部 42 ブレーキ圧微小振幅検出部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小野 英一 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 梅野 孝治 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 山口 裕之 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 目標スリップ率に追従する制御を行うス
    リップ率サーボ制御装置であって、 車輪速度を検出する車輪速検出手段と、 車輪に作用する制動力又は制動力に関連した物理量を検
    知する制動力検知手段と、 車体と車輪と路面とから構成される振動系の共振周波数
    でブレーキ圧を微小励振する微小励振手段と、 前記微小励振手段により微小励振されたブレーキ圧の微
    小振幅に対する前記共振周波数での車輪速度の微小振幅
    の比である微小ゲインを演算する微小ゲイン演算手段
    と、 前記車輪速検出手段により検出された車輪速度と、前記
    制動力検知手段により検知された制動力又は制動力に関
    連した物理量とに基づいて、前記目標スリップ率を目標
    微小ゲインに変換する演算を行う目標ゲイン演算手段
    と、 前記微小ゲイン演算手段により演算された微小ゲイン
    が、前記目標ゲイン演算手段により演算された目標微小
    ゲインに追従するように車輪運動を制御するサーボ制御
    手段と、 を有することを特徴とするスリップ率サーボ制御装置。
  2. 【請求項2】 目標スリップ率に追従する制御を行うス
    リップ率サーボ制御装置であって、 車輪速度を検出する車輪速検出手段と、 車輪に作用する制動力又は制動力に関連した物理量を検
    知する制動力検知手段と、 車体と車輪と路面とから構成される振動系の共振周波数
    でブレーキ圧を微小励振する微小励振手段と、 前記微小励振手段により微小励振されたブレーキ圧の微
    小振幅に対する前記共振周波数での車輪速度の微小振幅
    の比である微小ゲインを演算する微小ゲイン演算手段
    と、 前記車輪速検出手段により検出された車輪速度、前記制
    動力検知手段により検知された制動力又は制動力に関連
    した物理量、及び前記微小ゲイン演算手段により演算さ
    れた微小ゲインに基づいてスリップ率を演算するスリッ
    プ率演算手段と、 前記スリップ率演算手段により演算されたスリップ率
    が、前記目標スリップ率に追従するように車輪運動を制
    御するサーボ制御手段と、 を有することを特徴とするスリップ率サーボ制御装置。
JP19290497A 1997-07-17 1997-07-17 スリップ率サーボ制御装置 Expired - Fee Related JP3640126B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19290497A JP3640126B2 (ja) 1997-07-17 1997-07-17 スリップ率サーボ制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19290497A JP3640126B2 (ja) 1997-07-17 1997-07-17 スリップ率サーボ制御装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH1134843A true JPH1134843A (ja) 1999-02-09
JP3640126B2 JP3640126B2 (ja) 2005-04-20

Family

ID=16298921

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP19290497A Expired - Fee Related JP3640126B2 (ja) 1997-07-17 1997-07-17 スリップ率サーボ制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3640126B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2784186A1 (fr) * 1998-10-02 2000-04-07 Toyota Motor Co Ltd Procede et dispositif pour estimer une grandeur physique et dispositif de controle anti-blocage les utilisant
JP2018119293A (ja) * 2017-01-24 2018-08-02 住友重機械工業株式会社 作業機械

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR2784186A1 (fr) * 1998-10-02 2000-04-07 Toyota Motor Co Ltd Procede et dispositif pour estimer une grandeur physique et dispositif de controle anti-blocage les utilisant
JP2018119293A (ja) * 2017-01-24 2018-08-02 住友重機械工業株式会社 作業機械

Also Published As

Publication number Publication date
JP3640126B2 (ja) 2005-04-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6122585A (en) Anti-lock braking system based on an estimated gradient of friction torque, method of determining a starting point for anti-lock brake control, and wheel-behavior-quantity servo control means equipped with limit determination means
EP0699568B1 (en) Anti-lock brake controlling apparatus
US6064931A (en) Control apparatus for vehicle
US7059687B2 (en) Braking force distribution control device
JPH01275251A (ja) アンチスキッド制御装置
JP3435625B2 (ja) 路面状態演算装置
JP3454090B2 (ja) アンチロックブレーキ制御装置、トルク勾配推定装置及び制動トルク勾配推定装置
JPH1134843A (ja) スリップ率サーボ制御装置
EP0641697B1 (en) Apparatus for and method of resonance control in a brake intervention traction control system
JPH11263152A (ja) 制駆動力制御装置
JP3317196B2 (ja) 荷重配分推定装置、車体加減速度演算装置及び路面状態推定装置
JP3792756B2 (ja) アンチロックブレーキ制御装置
JP3319407B2 (ja) 路面状態推定装置
JP3424535B2 (ja) 路面状態推定装置
JPH1191539A (ja) 摩擦状態演算装置及び制駆動力制御装置
JP3454086B2 (ja) 車輪挙動量サーボ制御装置及び限界判定装置
JP2697079B2 (ja) アンチロック制御装置
JPH11321617A (ja) Abs用路面適応装置
JP2623652B2 (ja) アンチスキッド制御装置
JP3436124B2 (ja) 変動減少処理装置及び路面状態推定装置
JP3644218B2 (ja) アンチロックブレーキ制御装置
JPH1134842A (ja) アンチロックブレーキ制御装置
JPH1148937A (ja) アンチロックブレーキ制御装置
JP2003175813A (ja) 制動力制御装置
JPH1148940A (ja) ブレーキ圧振動装置

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20041228

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050110

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees