JPH11323434A - 低温靭性に優れた厚手高張力鋼材の製造方法 - Google Patents

低温靭性に優れた厚手高張力鋼材の製造方法

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JPH11323434A
JPH11323434A JP10132404A JP13240498A JPH11323434A JP H11323434 A JPH11323434 A JP H11323434A JP 10132404 A JP10132404 A JP 10132404A JP 13240498 A JP13240498 A JP 13240498A JP H11323434 A JPH11323434 A JP H11323434A
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Toshinaga Hasegawa
俊永 長谷川
Yukio Tomita
幸男 冨田
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 平均α粒径が3μm以下でかつ混粒度が小さ
い整粒の超細粒フェライト組織を有する超細粒層を鋼材
表面に一定厚さ付与させて脆性き裂伝播停止特性の優れ
た高張力鋼材の製造方法を提供する。特に、板厚が50
mm以上の厚手材において確実に表層超細粒層の組織を均
一、微細に形成させるために有効な方法を提供する。 【解決手段】 所定の成分範囲に限定した鋼片を用い、
鋼片加熱後、適正条件で表層を冷却−復熱させる工程に
おいて、表層部に超細粒層を付与させるが、厚手材にお
いて該超細粒層の均一かつ安定な形成を確実にするため
に、冷却−復熱工程の前あるいはその途中に加工前組織
の超細化のための工程を含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は安全性の観点から良
好な低温靱性を要求される、海洋構造物、圧力容器、船
舶等の構造用鋼材及びその製造方法に関するものであ
る。具体的には鋼材の表層部に平均フェライト粒径が3
μm以下の超細粒組織(表層超細粒層)を一定厚みで有
することにより良好な低温靱性、特に良好な母材の脆性
き裂伝播停止特性(アレスト性)を有する鋼材及びその
製造方法に関するものである。特に、本発明は、板厚が
50mmから150mm程度までの厚手材において表層超細
粒層を均一かつ安定に製造する場合に有用である。
【0002】本発明により製造した鋼材は海洋構造物、
圧力容器、造船、橋梁、建築物、ラインパイプなどの溶
接鋼構造物一般に用いることができるが、アレスト性に
極めて優れていることから、特に安全性の配慮が必要
な、海洋構造物、圧力容器、船舶、さらには耐震性を必
要とする建築、橋梁等の構造物用鋼材として有用であ
る。また、鋼材の形態は問わないが、構造部材として用
いられ、低温靭性が要求される鋼板、特に厚板、鋼管素
材、あるいは形鋼で特に有用である。
【0003】
【従来の技術】構造物用鋼材は構造物の安全性確保の観
点から強度とともに低温靭性を要求されることが多い。
低温靭性を向上させる方法は種々提案されているが、N
iのような高価な合金元素を用いずに、他の特性劣化を
生じることなく低温靭性を向上させる方法としては、フ
ェライト粒径の微細化が代表的である。特に、一旦発生
した脆性き裂を停止せしめる能力(アレスト性)を付与
することは構造物の安全性を格段に高めるため、船舶の
重要部材やタンク、圧力容器等、破壊事故による人的、
物的な被害が甚大となる可能性の高い構造物で要求され
る場合が多いが、脆性破壊の発生特性(シャルピー特
性、CTOD特性)が硬さの低下や硬質脆化層の抑制
等、Ni添加や細粒化以外にも様々な改善策が存在する
のに対して、アレスト性はNiの添加と細粒化による以
外には顕著な改善が困難である。
【0004】Ni量の増加はミクロ組織にほぼ依存せず
にアレスト性を向上できるが、効果を明確にするために
は0.5〜数%程度の多量添加が必要なためコストの大
幅な増加を必然的に招く。従って、製造方法の工夫によ
り結晶粒径の微細化が可能であれば、その方が当然好ま
しい。
【0005】従来から結晶粒径微細化によるアレスト性
を含めた低温靱性改善の方法は種々提案されている。ご
く一般的には、熱間圧延における制御圧延の強化や、制
御圧延を容易にするためのNb添加、さらには制御圧延
後の強制冷却、あるいは熱処理における繰り返し焼入や
焼きならし等が周知されているが、これら既存の技術に
よっては達成されるフェライト粒径はせいぜい5μm程
度であり、アレスト性向上効果も小さい。また、制御圧
延では圧延温度待ちのために生産性が劣化し、繰り返し
熱処理では製造工程の増加による生産性の低下や製造コ
ストの増加を必然的に招く点でも好ましくない。
【0006】厚鋼板のアレスト性評価試験の脆性き裂の
伝播・停止挙動から、アレスト性に大きく寄与するのは
脆性き裂伝播時に厚鋼板表層部に発生するシアリップと
称する塑性変形量の大きい延性破壊領域であり、脆性き
裂の有する伝播エネルギーがこのシアリップ形成に費や
される場合には、脆性き裂が早期に停止してアレスト性
が飛躍的に向上する。従って、鋼材全体のアレスト性を
均一に向上させなくとも、表層部の一定領域のアレスト
性を高めることで鋼材全体のアレスト性も向上できる。
【0007】このような考え方に立って、鋼材の表層部
に超細粒組織を付与することによって、Ni添加によら
ずに飛躍的にアレスト性を向上する方法が最近示されて
いる。即ち、特開平4−141517号公報、特開平6
−88161号公報、等に示されている技術で、基本的
には表層部を急冷後、復熱中の圧延により表層部の結晶
粒径を顕著に微細化してアレスト性を飛躍的に向上させ
るものである。この方法によれば、表層部のフェライト
粒径が約3μm以下に超細粒化し、その結果として、脆
性き裂の伝播中に該表層部が早期にシアリップを形成す
るために、その化学組成から通常得られるレベルを遥か
に凌駕するアレスト性が達成される。シアリップの厚み
が不十分であると、たとえシアリップが形成されても脆
性き裂の停止に至らない場合が生じる。脆性き裂の伝播
を確実に停止するには、シアリップはある程度の厚みが
必要となる。
【0008】従って、超細粒層の厚みも厚ければ厚いほ
どき裂の停止効果が大となるが、必要以上の超細粒層の
厚みを確保しようとすると、製造工程に過大な負荷をか
けたり、製造条件によっては母材の延性や鋼板の形状、
表面性状等の劣化につながる。これらの問題を生じない
範囲は板厚に対する比率で規定され、実験に基づけば、
平均フェライト粒径が3μm以下の表層超細粒組織の厚
みは10以上あれば効果を発揮し、それ以上厚みを増す
ことによって効果も大きくなるが、33%超では効果が
飽和し、安定製造が困難となることから表層の一つの面
について、表層から板厚の10%〜33%の範囲が好ま
しい。なお、該表層超細粒層は鋼材の全ての表面に付与
することが好ましいが、上記条件を満足すれば、最低限
2つの表面に該超細粒層を付与すれば脆性き裂の停止に
は有効である。
【0009】上記方法における表層部の超超細粒化は、
主として復熱中のフェライトの加工・再結晶を利用した
もので、より詳細には、鋼片を熱間圧延するに際し、熱
間圧延中あるいは熱間圧延途中で表層部の適当な厚みの
領域を水冷等の手段によりAr3 変態点よりも低い温度
まで一旦冷却して内部と温度差を付けた後、温度差のつ
いたままの状態からさらに熱間圧延を行うと、Ar3
態点よりも低い温度まで一旦冷却された領域は、復熱及
びその過程の加工によりフェライト主体組織となるた
め、該フェライト主体組織を有する表層部は内部の顕熱
により復熱されながら加工を受けることになり、この復
熱中の加工条件を適正化することにより表層部のフェラ
イト結晶粒が顕著に細粒化する。従って、最終的な鋼材
における表層超細粒層の割合は、表層を一旦冷却した際
にAr3 変態点まで低下した領域の割合とほぼ一致する
ことになる。
【0010】該製造方法において、より均一な超細粒組
織を得て安定したアレスト性を得るためには復熱前の組
織の微細化や累積圧下率の確保が重要になってくる。そ
のため、厚手材になると、表層の冷却・復熱を行う段階
の鋼片厚の増加にともなって、前組織の微細化が困難に
なることや、累積圧下率が不足しがちになることによる
達成粒径の粗大化、混粒度の増加等の問題が顕在化して
くるため、厚手材製造においては、これらの問題が生じ
ないように、注意深い製造条件の選択が必要となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特開平4−
141517号公報、特開平6−88161号公報、特
開平7−126789号公報等に示されている、表層部
に超細粒層を形成することによりアレスト性を飛躍的に
向上させる鋼材の製造技術において、特に、板厚が50
〜150mm程度の厚手材において、混粒度の少ない平均
粒径が3μm以下の超細粒層を表層の一定厚さにわたっ
て確実に付与するための新たな方法を提供するものであ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、表層部に超細
粒層を形成することによりアレスト性を飛躍的に向上さ
せる鋼材の製造技術において、特に、板厚が50〜15
0mm程度の厚手材において、混粒度の少ない平均粒径が
3μm以下の超細粒層を表層の一定厚さにわたって確実
に付与するための新たな方法を提供するものであり、仕
上げ板厚が厚い場合の復熱段階での加工に入る前の組織
微細化と、累積圧下率が制限される条件における復熱段
階での加工に際しての均一超細粒化条件を詳細に検討し
た結果、発明するに至ったものであり、その要旨は以下
に示す通りである。
【0013】(1)重量%で、 C :0.01〜0.20% Si:0.01〜1.0% Mn:0.1〜2.0% Al:0.001〜0.1% N :0.001〜0.010%を含有し、さらに不純
物として、 P :0.025%以下 S :0.015%以下を含有し、残部が鉄及び不可避
不純物からなる鋼片をAc3 変態点以上、1050℃以
下の温度に加熱し、0.2〜20℃/sの冷却速度で50
0℃以下まで冷却した後、再度鋼片をAc3 変態点以
上、1150℃以下の温度に加熱し、累積圧下率が20
〜80%の熱間圧延を行う間に、熱間圧延の開始前ある
いは熱間圧延の途中段階で、その段階での鋼片厚みの1
0%〜33%に対応する少なくとも2つの外表面の表層
部領域をAr3 変態点超の温度から2〜40℃/sの冷却
速度で冷却し、Ar3 変態点未満で冷却を停止して復熱
させることを1回以上繰り返し、該熱間圧延を(Ac1
変態点−50℃)〜(Ac3 変態点−50℃)の温度で
完了させることを特徴とする低温靭性に優れた厚手高張
力鋼材の製造方法。
【0014】(2)重量%で、 C :0.01〜0.20% Si:0.01〜1.0% Mn:0.1〜2.0% Al:0.001〜0.1% N :0.001〜0.010%を含有し、さらに、不
純物として、 P :0.025%以下 S :0.015%以下を含有し、残部が鉄及び不可避
不純物からなる鋼片を、Ac3 変態点以上、1150℃
以下の温度に加熱した後、累積圧下率が20〜50%の
予備熱間圧延を行い、0.2〜20℃/sの冷却速度で5
00℃以下まで冷却した後、再度鋼片をAc3 変態点以
上、1150℃以下の温度に加熱し、累積圧下率が20
〜80%の熱間圧延を行う間に、熱間圧延の開始前ある
いは熱間圧延の途中段階で、その段階での鋼片厚みの1
0%〜33%に対応する少なくとも2つの外表面の表層
部領域をAr3変態点超の温度から2〜40℃/sの冷却
速度で冷却し、Ar3 変態点未満で冷却を停止して復熱
させることを1回以上繰り返し、該熱間圧延を(Ac1
変態点−50℃)〜(Ac3 変態点−50℃)の温度で
完了させることを特徴とする低温靭性に優れた厚手高張
力鋼材の製造方法。
【0015】(3)重量%で、 C :0.01〜0.20% Si:0.01〜1.0% Mn:0.1〜2.0% Al:0.001〜0.1% N :0.001〜0.010%を含有し、さらに、不
純物として、 P :0.025%以下 S :0.015%以下を含有し、残部が鉄及び不可避
不純物からなる鋼片をAc3 変態点以上、1150℃以
下の温度に加熱した後、累積圧下率が20〜80%の熱
間圧延を行う間に、熱間圧延の開始前あるいは熱間圧延
の途中段階で、その段階での鋼片厚みの10%〜33%
に対応する少なくとも2つの外表面の表層部領域をAr
3 変態点超の温度から2〜40℃/sの冷却速度で冷却
し、Ar3 変態点未満で冷却を停止して復熱させること
を2回以上繰り返すにおいて、最初の冷却・復熱過程に
おいては、復熱温度をAc3 変態点〜(Ac3 変態点+
100℃)の範囲とし、その後の冷却・復熱過程におい
ては復熱温度を(Ac3 変態点−20℃)以下とし、該
熱間圧延を(Ac1 変態点−50℃)〜(Ac3 変態点
−50℃)の温度で完了させることを特徴とする低温靭
性に優れた厚手高張力鋼材の製造方法。
【0016】(4)前記熱間圧延の前に、鋼片をAc3
変態点以上、1050℃以下の温度に加熱し、0.2〜
20℃/sの冷却速度で500℃以下まで冷却することを
特徴とする、前記(3)に記載の低温靭性に優れた厚手
高張力鋼材の製造方法。
【0017】(5)前記熱間圧延の前に、鋼片を、Ac
3 変態点以上、1150℃以下の温度に加熱した後、累
積圧下率が20〜50%の予備熱間圧延を行い、0.2
〜20℃/sの冷却速度で500℃以下まで冷却すること
を特徴とする、前記(3)に記載の低温靭性に優れた厚
手高張力鋼材の製造方法。
【0018】(6)最終の圧延終了後の鋼材を2〜40
℃/sの冷却速度で20℃〜600℃まで加速冷却するこ
とを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の
低温靭性に優れた厚手高張力鋼材の製造方法。
【0019】(7)450℃以上、Ac1 変態点以下で
焼戻しを行うことを特徴とする前記(1)〜(6)のい
ずれかに記載の低温靭性に優れた厚手高張力鋼材の製造
方法。
【0020】(8)重量%で、 Cr:0.01〜1.0% Ni:0.01〜3.0% Mo:0.01〜1.0% Cu:0.01〜1.5% Ti:0.003〜0.10% V :0.005〜0.50% Nb:0.003〜0.10% Zr:0.003〜0.10% Ta:0.005〜0.20% W :0.01〜2.0% B :0.0003〜0.0020% の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記
(1)〜(7)のいずれかに記載の低温靭性に優れた厚
手高張力鋼材の製造方法。
【0021】(9)重量%で、 Mg:0.0005〜0.01% Ca:0.0005〜0.01% REM:0.005〜0.10% のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする
前記(1)〜(8)のいずれかに記載の低温靭性に優れ
た厚手高張力鋼材の製造方法。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明者らは詳細な実験・解析の
結果、本発明が目的としている板厚が50mm〜150mm
程度の厚手鋼材において、表層部の冷却・復熱工程中に
圧延(以降復熱中加工)を施すことによるフェライトの
加工・再結晶を利用して表層部に超細粒層を付与するた
めの要件は、復熱中加工の前あるいは初期段階におけ
る、実質的に二相域〜フェライト域加工に入る前の組織
を極力微細化することであることを見出した。
【0023】そして、そのための具体的方法の基本的要
件としては、冷却・復熱工程を含む熱間圧延工程前の
鋼片を予め熱処理あるいは熱間圧延を施すことにより鋼
片の粗大な凝固組織を微細化することで二相域〜フェラ
イト域加工前の組織を微細化する、繰り返しの冷却・
復熱工程において、冷却・復熱中のオーステナイト/フ
ェライト変態を利用して、二相域〜フェライト域加工前
の組織を微細化する、前記とを組み合わせる、の
3種類が実用的に最適であるとの結論に至った。即ち、
請求項1及び2に記載の方法が上記に基づく製造方法
であり、請求項3に記載の方法が上記に基づく製造方
法であり、請求項4及び5に記載の方法がこれらの組み
合わせである。従って、請求項1〜3に示す製造方法が
本発明の製造方法の具体的要件になる。以下に、請求項
1〜3についてさらに詳細に説明する。
【0024】先ず、請求項1に示す製造方法は、「本発
明を満足する適正な化学組成を有する鋼片をAc3 変態
点以上、1050℃以下の温度に加熱し、0.2〜20
℃/sの冷却速度で500℃以下まで冷却した後、さらに
鋼片をAc3 変態点以上、1150℃以下の温度に加熱
し、熱間圧延の開始前あるいは熱間圧延の途中段階で、
その段階での鋼片厚みの10%〜33%に対応する少な
くとも2つの外表面の表層部領域をAr3 変態点超の温
度から2〜40℃/sの冷却速度で冷却を開始し、Ar3
変態点未満で冷却を停止して復熱させることを1回以上
経由させる過程で、最後の復熱が終了するまでの間に累
積圧下率が20〜80%の仕上げ圧延を行い、該圧延を
(Ac1 変態点−50℃)〜(Ac3 変態点−50℃)
の温度で完了させること」を特徴とする低温靭性に優れ
た厚手高張力鋼材の製造方法である。
【0025】上記方法においては、冷却・復熱工程を含
む熱間圧延を行う前に、鋼片の粗大な凝固組織を解消し
て、最終の冷却・復熱工程を含む熱間圧延工程における
冷却・復熱工程中の超細粒化のための二相域〜フェライ
ト域での加工に入る前の組織を微細化する。その際、鋼
片をAc3 変態点以上、1050℃以下の温度に加熱す
るが、これは、加熱温度がAc3 変態点未満であると、
その後の冷却条件如何によらず粗大な組織が残存し、1
050℃超であると加熱時のオーステナイト粒径が粗大
化して冷却後の組織の微細化が不十分となるためであ
る。
【0026】また、加熱保持後の冷却も0.2〜20℃
/sの冷却速度で500℃以下まで制御する必要がある。
該条件は加熱温度を前記のように規定して加熱オーステ
ナイト粒径を微細化しても、その後の冷却による変態組
織を微細化するために必要である。即ち、鋼片は一般的
に厚手であるために、放冷程度でも鋼片内部の冷却は徐
冷となる場合が多く、その場合には変態組織は粗大とな
る。そのため、冷却後の組織を微細化するためには0.
2℃/s以上で冷却する必要がある。冷却速度は大きけれ
ば大きいほど組織微細化には好ましいが、板厚の大きい
鋼片では冷却速度を極端に大きくすることは現実的でな
く、20℃/s以上であれば最終的なフェライトの加工・
再結晶組織に有害な極端な粗大組織の出現は抑制できる
ことから、本発明では上限を20℃/sとした。また、こ
のような粗大組織の出現は、該制御冷却を500℃まで
実施すれば、その後の冷却条件によらずに抑制できる。
なお、鋼片厚さが比較的小さく、空冷によっても0.2
℃/s以上で冷却される場合には当然空冷でも構わない。
【0027】このようにして鋼片の組織を微細化するこ
とで、以後の工程によって厚手材の表層部の超細粒化が
確実に達成される。表層部に必要厚み(板厚の10〜3
3%)の超細粒層付与のためには、鋼片をAc3 変態点
以上、1050℃以下の温度に加熱し、0.2〜20℃
/sの冷却速度で500℃以下まで冷却して鋼片組織の微
細化を図った後、さらに鋼片をAc3 変態点以上、11
50℃以下の温度に加熱し、熱間圧延の開始前あるいは
熱間圧延の途中段階で、その段階での鋼片厚みの10%
〜33%に対応する、少なくとも2つの外表面の表層部
領域をAr3 変態点超の温度から2〜40℃/sの冷却速
度で冷却を開始し、Ar3 変態点未満で冷却を停止して
復熱させることを1回以上経由させる過程で、最後の復
熱が終了するまでの間に、累積圧下率が20〜80%の
仕上げ圧延を行い、該圧延を(Ac1 変態点−50℃)
〜(Ac3 変態点−50℃)の温度で完了させる必要が
ある。
【0028】即ち、鋼片を熱間圧延するに際し、熱間圧
延中あるいは熱間圧延途中で表層部の適当な厚みの領域
を水冷等の手段により、Ar3 変態点よりも低い温度ま
で一旦冷却して内部と温度差を付けた後、温度差のつい
たままの状態からさらに熱間圧延を行うと、Ar3 変態
点よりも低い温度まで一旦冷却された領域は、復熱及び
その過程の加工によりフェライト主体組織となるため、
該フェライト主体組織を有する表層部は、内部の顕熱に
より復熱されながら加工を受けることになり、この復熱
中の加工条件を適正化することにより、表層部のフェラ
イト結晶粒が顕著に細粒化する。従って、最終的な鋼材
における表層超細粒層の割合は、表層を一旦冷却した際
にAr3 変態点未満まで低下した領域の割合とほぼ一致
することになる。
【0029】本発明においては、該超細粒化のための上
記熱間圧延工程を、以下に示すような条件に限定するこ
とによって超細粒化が達成される。先ず、鋼片をオース
テナイト域に再加熱するが、この場合の温度としてはA
3 変態点以上、1150℃以下が好ましい。即ち、A
3 変態点未満ではオーステナイト単相にならず、フェ
ライト相が残存し、該フェライト相が残存すると後の工
程の如何によらず、表層に均一な超細粒組織を形成する
ことができない。また、内部も二相域加工されるため、
鋼材の異方性が増大する問題も生じる。一方、再加熱温
度が高すぎると加熱オーステナイト粒径が粗大化して、
折角鋼片の粗大な凝固組織を前述した熱処理により微細
化しても、最終圧延前の変態組織が粗大化するため、好
ましくない。特に、厚手材の場合は鋼片が厚いために冷
却速度が遅い、累積圧下率が限定される等のために、超
細粒化及び中心部の靱性確保に不利な条件が多く、最終
圧延前の組織粗大化は避ける必要がある。そのため、再
加熱温度の上限は薄手材よりも低めの1150℃にする
ことが好ましい。即ち、本発明では鋼片の加熱温度をA
3 変態点〜1150℃に限定する。
【0030】最終板厚と鋼片厚みに応じて、工程負荷軽
減、表層超細粒層を得るための復熱後の必要圧下率の確
保の観点から判断して、鋼片を加熱後、鋼片ままか、粗
圧延により鋼片厚みを適当な厚みに減厚した後、該鋼材
の超細粒層とすべき表層部を水冷等の手段により冷却
し、該鋼材の水冷前の熱間圧延時点での板厚の10〜3
3%に対応する各表層部の領域をAr3 変態点未満まで
冷却するとともに、表層部と内部に温度差をつけるが、
その際、該鋼材の水冷前の熱間圧延時点での板厚の10
〜33%に対応する各表層部の領域の冷却速度は2℃/s
以上にする必要がある。これは冷却速度が2℃/s未満で
は冷却前の熱間圧延により、オーステナイトを微細化し
ておいても冷却後の変態組織が粗大となり、その後の復
熱中の圧延で均一な超微細フェライト組織を得ることが
困難となるためである。冷却速度は大きい方が組織微細
化の観点からは好ましいが、40℃/sを超えて急冷して
も効果が飽和する上に、不必要に急冷することは鋼板の
形状維持のためには好ましくないため、上限を40℃/s
とする。
【0031】なお、Ar3 変態点未満まで冷却する表層
部の厚みを、該鋼材の水冷前の熱間圧延時点での板厚の
10〜33%とするのは、超細粒層となるのがAr3
態点未満まで冷却された領域であるため、前述の通り、
鋼材のアレスト性を発揮させるために必要かつ十分な超
細粒層の厚みである、最終板厚の10〜33%となる表
層超細粒層を付与するためである。
【0032】また、上記の冷却はAr3 変態点超から開
始する。これは、単相オーステナイトから冷却すること
で表層超細粒層を均一に形成させるためである。即ち、
該表層部が強制冷却前にAr3 変態点以下になると、フ
ェライトが一部粗大に生成し、その部分での超細粒化が
阻害されるためである。
【0033】表層超細粒層付与のための冷却前に必要に
応じて行う鋼片厚み調整のための粗圧延の条件は特に規
定するものではないが、内部組織の微細化のためには、
オーステナイトの未再結晶域での圧延を行う方が有利で
ある。ただし、オーステナイトの未再結晶域での圧延は
必然的に低温圧延となり、生産性の低下、表層部の復熱
のための内部の顕熱の減少等の悪影響も生ずる。生産性
の極端な低下を招かず、表層超細粒層の形成に不利にな
らない条件として、オーステナイトの未再結晶域での圧
延を行う場合の累積圧下率は50%以下が好ましい。
【0034】以上の理由により、該鋼材の冷却前の熱間
圧延時点での板厚の10〜33%に対応する各表層部の
領域を2℃/s〜40℃/sの冷却速度でAr3 変態点未満
まで冷却し、その後仕上げ圧延を行う際、内部の顕熱に
よるか、及び/または外部からの加熱を利用して板厚の
10〜33%に対応する各表層部の領域を昇温中に圧延
を施すことにより該領域の組織が超微細化し、脆性亀裂
伝播停止特性向上に寄与できるようになる。
【0035】後述するように、上記復熱過程の加工は1
回もしくは2回以上繰り返してもよいが、最後の冷却後
の復熱過程での圧延後の復熱温度は(Ac1 変態点−5
0℃)〜(Ac3 変態点−50℃)の範囲にする必要が
ある。即ち、該最終復熱温度が(Ac1 変態点−50
℃)よりも低いと、加工後の加工フェライトの回復・再
結晶が十分でないため、超細粒化が不十分で、脆性き裂
伝播停止特性が向上しない。一方、該最終復熱温度が
(Ac3 変態点−50℃)よりも高いと、加工により超
細粒化したフェライトの一部が再度オーステナイトに逆
変態することによって消失してしまい、その割合が無視
できないほど多くなるため、また、超細粒化したフェラ
イトが粒成長により粗大化するため、靭性及び脆性き裂
伝播停止特性を損なう。従って、本発明においては、最
後の冷却後の復熱過程での圧延後の復熱温度は、(Ac
1 変態点−50℃)〜(Ac3 変態点−50℃)の範囲
に限定する。
【0036】以上の、Ar3 変態点未満への冷却と復熱
中の加工工程は1回でも良いが、複数回繰り返すことに
より効果が重畳するため、2回以上繰り返しても所望の
微細組織を得ることが可能である。その場合、各復熱段
階の最高温度あるいは最低温度は任意であっても、本発
明の温度条件に従えば超細粒化する。即ち、最後の冷却
後の復熱過程での圧延後の復熱温度を(Ac1 変態点−
50℃)〜(Ac3 変態点−50℃)とすればよい。た
だし、好ましくは途中の復熱温度の上限はAc3 変態点
以下とする方が細粒化の効果が確実に重畳する点で好ま
しい。
【0037】最初の冷却後から最後の復熱に至るまでの
圧延としての熱間圧延の累積圧下率は、大きい方が均一
かつ安定に超細粒組織を得られる。厚手材の場合には、
粗大な凝固組織を有する鋼片を用いると、該圧延に入る
前の組織が粗大となって超細粒化のために必要な累積圧
下率を大きくする必要がある一方で、厚手材故に累積圧
下率を大きくすることには限度があるため、鋼片厚や鋼
種によっては超細粒化が困難となる場合が多くなるが、
本発明のように、鋼片組織を適正条件により微細化して
おけば、薄手材と同程度の20%以上の累積圧下率であ
れば超細粒化が可能となる。累積圧下率は大きいほど超
細粒化には有利であるが、圧下率が80%を超えるよう
な圧延は効果が飽和し、生産性を極端に阻害するため好
ましくなく、また、厚手材では実質的にこのような過大
な圧下率の圧延を加えることができない場合が多い。従
って、本発明では該熱間圧延の累積圧下率は20〜80
%に限定する。
【0038】次いで、請求項2に示す方法は、請求項1
に示す方法と同様、鋼片の粗大な凝固組織を微細化する
ことにより、厚手材の表層部の超細粒化を達成する別の
方法を示したものである。従って、鋼片の組織微細化工
程以外は請求項1の方法と同一である。
【0039】請求項2における鋼片組織微細化のための
要件は、「本発明を満足する適正な化学組成を有する鋼
片をAc3 変態点以上、1150℃以下の温度に加熱し
た後、累積圧下率が20〜50%の予備熱間圧延を行
い、0.2〜20℃/sの冷却速度で500℃以下まで冷
却すること」にある。即ち、請求項1の方法では熱処理
により組織微細化を図るが、請求項2の方法では予備熱
間圧延により鋼片組織を微細化する。予備熱間圧延を行
う方が組織微細化には有利であるが、鋼片厚みを減ずる
ことにもなるため、鋼片厚みが仕上げ板厚に対して厚
く、累積圧下率の裕度が高い場合に好ましい方法とな
る。
【0040】該方法において、先ず鋼片をAc3 変態点
以上、1150℃以下の温度に再加熱する。Ac3 変態
点以上に再加熱するのは請求項1と同じ理由であり、一
方、後の圧延がオーステナイトの細粒化効果を有するた
め、再加熱温度の上限は圧延のない場合に比べて緩和さ
れるが、再加熱オーステナイト粒径が過大であると、後
の圧延によっても細粒化が不十分となるため、本発明で
は上限を1150℃とする。
【0041】Ac3 変態点以上、1150℃以下の温度
に再加熱した後、オーステナイト組織微細化のために熱
間圧延を行うが、その際、該熱間圧延の累積圧下率を2
0〜50%とする。これはAc3 変態点〜1150℃の
再加熱に続く圧延の場合に、累積圧下率が20%未満で
あると、折角圧延を行ってもオーステナイト粒の微細化
とその結果としての変態組織の微細化が不十分であり、
一方、50%超では、最終的なフェライトに加工を加え
る復熱段階での圧延段階での累積圧下率が十分とれなく
なるためである。熱間圧延後の冷却は請求項1と同じ
で、変態組織を十分微細化するための条件として、0.
2〜20℃/sの冷却速度で500℃以下まで冷却する。
【0042】以上が、厚手材の表層部の超細粒化を達成
するための、冷却・復熱工程を含む熱間圧延工程前の
鋼片を予め熱処理あるいは熱間圧延を施すことで、鋼片
の粗大な凝固組織を微細化することで二相域〜フェライ
ト域加工前の組織を微細化する、繰り返しの冷却・復
熱工程において、冷却・復熱中のオーステナイト/フェ
ライト変態を利用して、二相域〜フェライト域加工前の
組織を微細化する、の2種類の方法のうちのの基本要
件を示したものである。次にの方法に関する詳細な説
明を以下に示す。
【0043】表層部の冷却・復熱過程において、冷却停
止温度と復熱温度とを規定し、フェライトを加工・再結
晶させることで表層部の一定厚領域を超細粒化させる。
具体的には、熱間圧延の開始前あるいは熱間圧延の途中
段階で、その段階での鋼片厚みの10%〜33%に対応
する少なくとも2つの外表面の表層部領域を、Ar3
態点超の温度から2〜40℃/sの冷却速度で冷却を開始
し、Ar3 変態点未満で冷却を停止して復熱させること
を2回以上経由させる過程で所定の累積圧下率の圧延を
加える。請求項1、2の方法では、前述したように、鋼
片の前組織微細化を前提とすれば、最終的な仕上げ温度
が該圧延を(Ac1 変態点−50℃)〜(Ac3 変態点
−50℃)の温度であれば超細粒化が達成される。ただ
し、前組織の工程が増える分、生産性は若干低下する。
【0044】請求項3の方法は鋼片組織の微細化工程を
行わずに厚手材の表層部の超細粒化を図るための方法で
あって、その要件は、「本発明を満足する適正な化学組
成を有する鋼片をAc3 変態点以上、1150℃以下の
温度に加熱した後、熱間圧延の開始前あるいは熱間圧延
の途中段階で、その段階での鋼片厚みの10%〜33%
に対応する少なくとも2つの外表面の表層部領域をAr
3 変態点超の温度から2〜40℃/sの冷却速度で冷却を
開始し、Ar3 変態点未満で冷却を停止して復熱させる
ことを2回以上経由させる過程で、最初の冷却・復熱過
程においては、復熱温度をAc3 変態点〜(Ac3 変態
点+100℃)の範囲とし、その後の冷却・復熱過程に
おいては復熱温度を(Ac3 変態点−20℃)以下と
し、最後の復熱が終了するまでの間に累積圧下率が20
〜80%の仕上げ圧延を行い、該圧延を(Ac1 変態点
−50℃)〜(Ac3 変態点−50℃)の温度で完了さ
せること」にある。
【0045】即ち、請求項3の方法は、「最初の冷却・
復熱過程においては、復熱温度をAc3 変態点〜(Ac
3 変態点+100℃)の範囲とし、その後の冷却・復熱
過程においては復熱温度を(Ac3 変態点−20℃)以
下とし、最後の復熱が終了するまでの間に累積圧下率が
20〜80%の仕上げ圧延を行う」ことが請求項1、2
と異なり、該工程によって粗大な凝固組織を有する鋼片
を用いても、厚手材において表層部に超細粒層を形成さ
せることが可能となる。
【0046】本発明の請求項3の方法における最初の冷
却・復熱工程は、フェライト→オーステナイト→フェラ
イト変態を繰り返し行うことにより、加工前あるいは加
工中の組織を微細化させる目的の工程である。従って、
本発明の請求項3の方法における最初の冷却・復熱工程
においては、変態による組織微細化を確実する必要性か
ら、復熱温度をAc3 変態点以上とする。また、該復熱
温度が(Ac3 変態点+100℃)を超えるとオーステ
ナイト粒径の粗大化を招き、組織微細化が不十分となる
ことから、上限を(Ac3 変態点+100℃)とする。
なお、上述のように最初の冷却・復熱工程は組織微細化
を目的としているので、加工をともなっても、ともなわ
なくとも構わない。該冷却・復熱中に加工を行えば、そ
の後の加工前の組織微細化が進むが、一方でフェライト
に対する累積加工率が減少するため、効果は相殺され
る。また、二相域加工前組織微細化を目的とする、該A
3変態点〜(Ac3 変態点+100℃)の範囲への復
熱工程は、繰り返しても構わないものではあるが、その
効果は加算的でなく、2回目以降は効果が飽和してしま
う一方で、超細粒化に最も重要なフェライトへの加工段
階での加工温度確保が容易でなかったり、内部の温度低
下が著しくなって、材質の劣化や形状の圧下を招く可能
性が高くなるため、本発明においては該冷却−復熱工程
は最初のみとした。従って、冶金的効果上、該冷却−復
熱工程を繰り返すこと自体は本発明の範疇を逸脱するも
のではない。
【0047】また、請求項3に示す方法においては、鋼
片組織の微細化を考慮しない分、上記の最初の冷却・復
熱の温度を限定するとともに、その後の加工においても
さらに復熱温度が過大にならないよう注意すべきで、請
求項1、2と同程度のフェライトの超細粒化を得るため
には、復熱温度が(Ac3 変態点−20℃)を超えない
ようにする必要がある。その他の加工上の要件は請求項
1、2と同じであり、最後の復熱が終了するまでの間
に、累積圧下率が20〜80%の熱間圧延を行うことに
より、厚手材においても表層部に均一な超細粒層を安定
して形成することが可能となる。
【0048】請求項4及び5の方法は、請求項1、2に
示す鋼片組織微細化のための方法と請求項3に示す冷却
・復熱中の組織微細化の方法とを組み合わせたものであ
る。各々加算的な効果が期待されるため、方法について
の限定条件は今までに述べた請求項1〜3の方法におけ
るものと同様であり、また、その超細粒化の達成度、均
一度とも請求項1〜3の方法と比べて一段と優れてお
り、さらなる靱性、アレスト性向上が期待できる。
【0049】以上が、本発明における基本要件について
の説明であるが、その他、製造方法に関する要件の限定
理由を以下に付け加える。即ち、鋼材の強度調整、靱性
向上を目的として、最終の圧延終了後の鋼材を2〜40
℃/sの冷却速度で20℃〜600℃まで加速冷却するこ
とができる。加速冷却により内部の組織が微細化すると
ともに、第二相がより硬質なものへと変化することによ
る。この効果を発揮するためには冷却速度は、2℃/s以
上必要である。冷却速度は大きい方が組織微細化、硬質
相形成には有利であるが、厚手材では無制限に冷却速度
を大きくすることは実用上困難であることから、組織制
御に対する加速冷却効果が飽和しない範囲として、本発
明においてはその上限を40℃/sとする。また、該加速
冷却は20℃〜600℃まで行うことが好ましい。即
ち、20℃未満まで冷却しても組織制御に有効でなく、
加速冷却の停止温度が600℃超では、組織微細化が十
分でなく、また硬質相が形成され難いために強度調整に
有効でなく、靱性が劣化する場合があるためである。ま
た、本発明で規定した加速冷却条件によれば、一旦形成
された表層部の超細粒組織の粒成長抑制にも有効であ
る。
【0050】またさらに、強度調整、靭性向上、形状改
善の目的で、焼き戻し処理を施すことも可能である。そ
の場合には、表層部に形成された超細粒組織を損なわな
いことが必須要件となる。本発明では焼き戻し温度を、
450℃〜Ac1 変態点に限定するが、これは、450
℃未満では焼き戻しの効果が明確ではなく、Ac1 変態
点超では表層部の超細粒組織の形態を損なうためであ
る。ただし、超細粒層の粒成長抑制をより確実にするた
めには、焼戻し温度は700℃を超えないことがより好
ましい。なお、本発明の焼き戻し温度範囲であれば、焼
き戻しの加熱保持時間は任意であるが、同様に表層部の
超細粒組織保存の観点からは、保持時間は5h以内であ
ることが好ましい。
【0051】以上が、本発明の低温靱性に優れた高張力
鋼材の製造方法に関する要件であるが、該製造方法によ
り効果を発揮するためには、個々の化学成分についても
下記に述べる理由により、各々限定する必要がある。
【0052】即ち、Cは鋼の強度を向上させる有効な成
分として含有するもので、0.01%未満では構造用鋼
に必要な強度の確保が困難であるが、0.20%を超え
る過剰の含有は母材及び溶接部の靭性や耐溶接割れ性を
低下させるので、0.01〜0.20%の範囲とした。
【0053】次に、Siは脱酸元素として、また、母材
の強度確保に有効な元素であるが、0.01%未満の含
有では脱酸が不十分となり、また強度確保に不利であ
る。逆に1.0%を超える過剰の含有は粗大な酸化物を
形成して延性や靭性の劣化を招く。そこで、Siの範囲
は0.01〜1.0%とした。
【0054】また、Mnは母材の強度、靭性の確保に必
要な元素であり、最低限0.1%以上含有する必要があ
るが、過剰に含有すると、硬質相の生成や粒界脆化等に
より母材靱性や溶接部の靭性、さらに溶接割れ性など劣
化させるため、材質上許容できる範囲で上限を2.0%
とした。
【0055】Alは脱酸、オーステナイト粒径の細粒化
等に有効な元素であるが、効果を発揮するためには0.
001%以上含有する必要がある。一方、0.1%を超
えて過剰に含有すると、粗大な酸化物を形成して延性を
極端に劣化させるため、0.001%〜0.1%の範囲
に限定する必要がある。
【0056】NはAlやTiと結びついてオーステナイ
ト粒微細化に有効に働くため、微量であれば機械的特性
に有効に働く。また、工業的に鋼中のNを完全に除去す
ることは不可能であり、必要以上に低減することは製造
工程に過大な負荷をかけるため好ましくない。そのた
め、工業的に制御が可能で、製造工程への負荷が許容で
きる範囲として下限を0.001%とする。過剰に含有
すると、固溶Nが増加し、延性や靭性に悪影響を及ぼす
可能性があるため、許容できる範囲として上限を0.0
10%とする。
【0057】P、Sは不純物元素で、延性、靭性を劣化
させる元素であり、極力低減することが好ましいが、材
質劣化が大きくなく、許容できる量として、Pの上限を
0.025%,Sの上限を0.015%に限定する。
【0058】以上が本発明の鋼材の基本成分の限定理由
であるが、本発明においては、強度・靭性の調整のため
に、必要に応じて、Cr、Ni、Mo、Cu、Ti、
V、Nb、Zr、Ta、W、Bの1種または2種以上を
含有することができる。
【0059】Cr及びMoはいずれも母材の強度向上に
有効な元素であるが、明瞭な効果を生じるためには0.
01%以上必要であり、一方、1.0%を超えて添加す
ると、靭性及び溶接性が劣化する傾向を有するため、各
々0.01〜1.0%の範囲とする。
【0060】また、Niは母材の強度と靭性を同時に向
上でき、非常に有効な元素であるが、効果を発揮させる
ためには0.01%以上含有させる必要がある。含有量
が多くなると強度、靭性は向上するが3.0%を超えて
添加しても効果が飽和する一方で、溶接性が劣化するた
め、上限を3.0%とする。また、3.0%を超える添
加では焼入性が過大となるため、フェライトの生成が抑
制されるためにフェライトの超細粒化に好ましくない効
果も顕在化する。
【0061】次に、CuもほぼNiと同様の効果を有す
るが、1.5%超では熱間加工性に問題を生じるため、
0.01〜1.5%の範囲に限定する。
【0062】Tiは析出強化により母材強度向上に寄与
するとともに、TiNの形成により加熱オーステナイト
粒径微細化にも有効な元素であり、靭性向上にも有効な
元素であるが、効果を発揮するためには0.003%以
上の含有が必要である。一方、0.10%を超えると、
粗大な析出物、介在物を形成して靭性や延性を劣化させ
るため、上限を0.10%とする。
【0063】VもVNを形成して強度向上に有効な元素
であるが、過剰の含有では析出脆化により靭性が劣化す
る。従って、靭性の大きな劣化を招かずに、効果を発揮
できる範囲として、0.005〜0.50%の範囲に限
定する。
【0064】NbはNb(C、N)を形成することで強
度・靭性の向上に有効な元素であるが、過剰の含有では
析出脆化により靭性が劣化する。従って、靭性の劣化を
招かずに、効果を発揮できる範囲として、0.003〜
0.10%の範囲に限定する。
【0065】Zrも窒化物を形成する元素であり、Ti
と同様の効果を有するが、その効果を発揮するためには
0.003%以上の含有が必要である。一方、0.10
%を超えると、Tiと同様、粗大な析出物、介在物を形
成して靭性や延性を劣化させるため、0.003〜0.
10%の範囲に限定する。
【0066】Taも強度・靭性の向上に有効な元素であ
るが、効果を発揮するためには0.005%以上の含有
が必要である。一方、0.20%を超えると、析出脆化
や粗大な析出物、介在物による靭性劣化を生じるため、
上限を0.20%とする。
【0067】Wは固溶強化及び析出強化により母材強度
の上昇に有効であるが、効果を発揮するためには0.0
1%以上必要である。一方、2.0%を超えて過剰に含
有すると、靭性劣化が顕著となるため、上限を2.0%
とする。
【0068】Bは微量で確実にNと結びつくため、固溶
N固定により靭性向上や、焼入性向上による強度・靭性
向上に有効な元素であるが、効果を発揮するためには
0.0003%以上必要である。一方、0.0020%
を超えて過剰に含有するとBNが粗大となり、延性や靭
性に悪影響を及ぼす。また溶接性も劣化させるため、上
限を0.0020%とする。
【0069】さらに、延性の向上、継手靭性の向上のた
めに、必要に応じて、Mg、Ca、REMの1種または
2種以上を含有することができる。
【0070】Mg、Ca、REMはいずれも硫化物の熱
間圧延中の展伸を抑制して延性特性向上に有効である。
酸化物を微細化させて継手靭性の向上にも有効に働く。
その効果を発揮するための下限の含有量は、Mg及びC
aは0.0005%、REMは0.005%である。一
方、過剰に含有すると、硫化物や酸化物の粗大化を生
じ、延性、靭性の劣化を招くため、上限を各々、Mg、
Caは0.01%、REMは0.10%とする。
【0071】
【実施例】以上が、本発明の要件についての説明である
が、さらに、実施例に基づいて本発明の効果を示す。表
1に示す化学組成の供試鋼を用いて、表2、表3に示す
製造条件で板厚が50mm以上の厚手鋼板を製造した。製
造した鋼板の、本発明の特徴となる表層超細粒層の厚さ
や該超細粒層のフェライト組織の特徴(該超細粒層の中
央部の平均粒径、混粒度、粒形態等)や機械的性質(強
度、2mmVノッチシャルピー衝撃特性、ESSO特性)
の測定結果も合わせて表2、表3に示す。
【0072】表層部の組織観察、粒径の測定は、本発明
鋼及び比較例のうちのフェライト粒径の比較的粒径の微
細な鋼については、倍率1000倍から5000倍の走
査型電子顕微鏡(SEM)組織写真に基づいて実施し、
粒径が粗い比較例については倍率500倍の光学顕微鏡
組織写真に基づいて実施した。引張特性は、圧延方向に
直角な方向(C方向)の板厚中心部から丸棒引張試験片
を採取して実施した。2mmVノッチシャルピー衝撃試験
は、引張試験板厚10mmの標準試験片で行い、板厚中心
部に加えて、表層部の靱性評価のために、表面下1mm
(試験片中心部が鋼板表面下6mm)についても評価し
た。両位置ともC方向から試験片を採取し、破面遷移温
度( vTrS)で靱性を評価した。ESSO試験もC方向
で試験片を採取し、Kcaが400kgf/mm1.5 となる温度
(TKca400)でアレスト性を評価した。
【0073】なお、表2は、本発明の第1の方法、即
ち、“冷却・復熱工程を含む熱間圧延工程前の鋼片を予
め熱処理あるいは熱間圧延を施すことにより鋼片の粗大
な凝固組織を微細化することで二相域〜フェライト域加
工前の組織を微細化する”方法に関する本発明の方法に
従って製造した鋼板と、その比較例の製造方法、組織、
特性を示したものであり、表3は本発明の第2の方法、
即ち、“繰り返しの冷却・復熱工程において、冷却・復
熱中のオーステナイト/フェライト変態を利用して、二
相域〜フェライト域加工前の組織を微細化する”方法
と、本方法と第1の方法を組み合わせた方法に従って製
造した鋼板と、その比較例の製造方法、組織、特性を示
したものである。
【0074】表2のうちの試験No.A1〜A9と表3
のうちの試験No.A10〜A18は本発明の化学組成
を有する鋼番1〜12を用いて、本発明の製造方法によ
り製造した鋼板であり、厚手であるにもかかわらず、良
好な靱性、アレスト性が得られている。即ち本発明によ
れば、全厚でのESSO特性が、板厚が50mmから15
0mmの鋼板において、TKca400で−95℃〜−140℃
と、極めて良好となり、鋼材の安全性が飛躍的に増加し
ている。
【0075】一方、表2、表3の結果から、本発明の範
囲を逸脱している試験No.B1〜B14の鋼板は本発
明により製造された試験No.A1〜A18の鋼板に比
べて、靱性、アレスト性が大幅に劣っていることが明ら
かである。
【0076】試験No.B1〜B4、及びNo.B8〜
B10は、化学組成が本発明を満足していないために、
製造方法は本発明を満足しているものの、十分な靱性、
アレスト性が達成できなかった例である。即ち、試験N
o.B1は、表層部の超細粒層の粒径、厚さともに十分
であるが、C量が過剰なために、第二相による脆化が大
となり、特に板厚中心部の vTrSとアレスト性が劣る。
試験No.B2は、Mn量が過剰なために全般的にシャ
ルピー特性が劣り、全厚でのアレスト性も不十分であ
る。試験No.B3は、合金元素量の化学組成におい
て、不純物であるP量が過剰なため、表層部、板厚中心
部ともシャルピー特性が本発明に比べて劣り、全厚での
アレスト性も不十分である。試験No.B4は、同様に
不純物としてのS量が過剰なために、特に板厚中心部の
靱性が顕著に劣化しており、その結果、全厚でのアレス
ト性も向上していない。
【0077】試験No.B8は、試験No.B1と同じ
C量の過剰な鋼片を用いた例で、製造方法をNo.B1
と変えているが、C量が過剰によることの靱性劣化要因
は同様に働くために、やはり靱性、アレスト性は大幅に
劣る。試験No.B9は、Cr、Moの添加が過剰であ
るために、強度は高くなるが、靱性に好ましくない硬質
相の割合が増加するため、靱性、アレスト性が向上しな
い。試験No.B10は、Crに加えてNiが過剰な化
学組成を有しているために、過剰なCrによる靱性劣化
が生じている。Niはマトリクスの靱性改善には有利で
あるが、焼入性が過剰となって、表層部の組織の一部が
超細粒化せず、伸長粒が混在して組織の均一さが損なわ
れているため、Niを多量に添加している割には靱性、
アレスト性の向上が認められない。
【0078】一方、試験No.B5〜B7、B11〜B
14は、化学組成は本発明を満足しているが、製造法が
本発明の範囲を逸脱しているために、表層超細粒層を有
する厚手鋼材としては、本発明により製造したものに比
べて劣っている例である。
【0079】試験No.B5は、“冷却・復熱工程を含
む熱間圧延工程前の鋼片を予め熱処理あるいは熱間圧延
を施すことにより鋼片の粗大な凝固組織を微細化するこ
とで二相域〜フェライト域加工前の組織を微細化する”
表層部超細粒層を有する厚保で鋼材を製造する方法にお
いて、最も重要な、鋼片組織微細化のための工程が施さ
れていないために、薄手材では十分超細粒化する製造方
法にも関わらず、板厚が75mmの厚手材である故に、表
層部の超細粒層が若干混粒となり、十分な靱性、アレス
ト性が達成されていない。
【0080】試験No.B6は、前組織微細化処理は施
しているが、表層部の冷却−復熱工程での圧延の終了温
度が、Ac3 変態点を超えており、高すぎるために、フ
ェライトの加工再結晶により形成された超細粒組織の大
部分がフェライトからオーステナイトへの逆変態で解消
されてしまい、超細粒化が達成されず、そのため、靱
性、アレスト性の改善が見られない。
【0081】試験No.B7は、鋼片組織微細化工程は
実施しているものの、表層の急冷工程を全く含まないた
めに、本発明鋼に特徴的な内部と全く組織形態の異なる
表層組織層が形成されない。即ち、通常の熱間圧延と異
なることがないため、表層から内部にわたって、連続的
に通常程度のフェライト粒径の組織で構成されているた
めに、靱性、アレスト性も従来レベルに止まっている。
【0082】試験No.B11〜B14は本発明のうち
の、“繰り返しの冷却・復熱工程において、冷却・復熱
中のオーステナイト/フェライト変態を利用して、二相
域〜フェライト域加工前の組織を微細化する”製造方法
に関連した比較例である。
【0083】試験No.B11は、鋼片の組織微細化を
目的とした最初の冷却−復熱工程における復熱温度が本
発明の上限である、Ac3 変態点+100℃よりも高い
ために、表層組織の微細化が十分でなく、本発明鋼に比
べて、表層部のシャルピー衝撃特性、全厚のESSO特
性がともに若干劣る。
【0084】試験No.B12は、逆に最初の復熱温度
が本発明の下限未満となっているために、やはり表層部
におけるフェライト加工前の組織微細化が不十分で、靱
性、アレスト性が本発明鋼に比べて若干劣化する。
【0085】試験No.B13は、冷却復熱工程での累
積圧下率が過少なため、その他の条件については本発明
の要件を満足しているものの、表層部の超細粒化が十分
でなく加工組織が回復していない伸長粒主体組織となて
いるため、靱性、アレスト性が顕著に劣っている。
【0086】試験No.B14は、冷却−復熱工程が1
回のみで、最初の加工前組織微細化を目的としたAc3
変態点〜(Ac3 変態点+100℃)の温度への復熱工
程のみとなっているため、本発明で最も重要な、フェラ
イトへの加工・再結晶による超細粒化工程が行われてお
らず、その結果、表層部の超細粒化が達成されていない
ため、飛躍的なアレスト性の向上は実現されていない。
【0087】以上のように、本発明によれば、50mm以
上の厚手鋼材においても均一な超細粒層を表層部に安定
して一定厚み付与することが可能となり、アレスト性が
飛躍的な厚手高張力鋼材の製造が可能になることは明白
である。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
【発明の効果】本発明は、従来はNiの多量添加でしか
得られなかったようなレベルのアレスト性を板厚が50
mm以上の厚手高張力鋼材にも付与することを可能にした
画期的な製造方法を提供するものであり、構造物の安全
性を飛躍的に高めることが可能な厚手鋼材を経済性、生
産性を損なうことなく製造できる手段として、産業上の
効果は極めて大きい。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.01〜0.20% Si:0.01〜1.0% Mn:0.1〜2.0% Al:0.001〜0.1% N :0.001〜0.010%を含有し、さらに不純
    物として、 P :0.025%以下 S :0.015%以下を含有し、残部が鉄及び不可避
    不純物からなる鋼片をAc3 変態点以上、1050℃以
    下の温度に加熱し、0.2〜20℃/sの冷却速度で50
    0℃以下まで冷却した後、再度鋼片をAc3 変態点以
    上、1150℃以下の温度に加熱し、累積圧下率が20
    〜80%の熱間圧延を行う間に、熱間圧延の開始前ある
    いは熱間圧延の途中段階で、その段階での鋼片厚みの1
    0%〜33%に対応する少なくとも2つの外表面の表層
    部領域をAr3 変態点超の温度から2〜40℃/sの冷却
    速度で冷却し、Ar3 変態点未満で冷却を停止して復熱
    させることを1回以上繰り返し、該熱間圧延を(Ac1
    変態点−50℃)〜(Ac3 変態点−50℃)の温度で
    完了させることを特徴とする低温靭性に優れた厚手高張
    力鋼材の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量%で、 C :0.01〜0.20% Si:0.01〜1.0% Mn:0.1〜2.0% Al:0.001〜0.1% N :0.001〜0.010%を含有し、さらに、不
    純物として、 P :0.025%以下 S :0.015%以下を含有し、残部が鉄及び不可避
    不純物からなる鋼片を、Ac3 変態点以上、1150℃
    以下の温度に加熱した後、累積圧下率が20〜50%の
    予備熱間圧延を行い、0.2〜20℃/sの冷却速度で5
    00℃以下まで冷却した後、再度鋼片をAc3 変態点以
    上、1150℃以下の温度に加熱し、累積圧下率が20
    〜80%の熱間圧延を行う間に、熱間圧延の開始前ある
    いは熱間圧延の途中段階で、その段階での鋼片厚みの1
    0%〜33%に対応する少なくとも2つの外表面の表層
    部領域をAr3変態点超の温度から2〜40℃/sの冷却
    速度で冷却し、Ar3 変態点未満で冷却を停止して復熱
    させることを1回以上繰り返し、該熱間圧延を(Ac1
    変態点−50℃)〜(Ac3 変態点−50℃)の温度で
    完了させることを特徴とする低温靭性に優れた厚手高張
    力鋼材の製造方法。
  3. 【請求項3】 重量%で、 C :0.01〜0.20% Si:0.01〜1.0% Mn:0.1〜2.0% Al:0.001〜0.1% N :0.001〜0.010%を含有し、さらに、不
    純物として、 P :0.025%以下 S :0.015%以下を含有し、残部が鉄及び不可避
    不純物からなる鋼片をAc3 変態点以上、1150℃以
    下の温度に加熱した後、累積圧下率が20〜80%の熱
    間圧延を行う間に、熱間圧延の開始前あるいは熱間圧延
    の途中段階で、その段階での鋼片厚みの10%〜33%
    に対応する少なくとも2つの外表面の表層部領域をAr
    3 変態点超の温度から2〜40℃/sの冷却速度で冷却
    し、Ar3 変態点未満で冷却を停止して復熱させること
    を2回以上繰り返すにおいて、最初の冷却・復熱過程に
    おいては、復熱温度をAc3 変態点〜(Ac3 変態点+
    100℃)の範囲とし、その後の冷却・復熱過程におい
    ては復熱温度を(Ac3 変態点−20℃)以下とし、該
    熱間圧延を(Ac1 変態点−50℃)〜(Ac3 変態点
    −50℃)の温度で完了させることを特徴とする低温靭
    性に優れた厚手高張力鋼材の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記熱間圧延の前に、鋼片をAc3 変態
    点以上、1050℃以下の温度に加熱し、0.2〜20
    ℃/sの冷却速度で500℃以下まで冷却することを特徴
    とする、請求項3に記載の低温靭性に優れた厚手高張力
    鋼材の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記熱間圧延の前に、鋼片を、Ac3
    態点以上、1150℃以下の温度に加熱した後、累積圧
    下率が20〜50%の予備熱間圧延を行い、0.2〜2
    0℃/sの冷却速度で500℃以下まで冷却することを特
    徴とする、請求項3に記載の低温靭性に優れた厚手高張
    力鋼材の製造方法。
  6. 【請求項6】 最終の圧延終了後の鋼材を2〜40℃/s
    の冷却速度で20℃〜600℃まで加速冷却することを
    特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の低温靭
    性に優れた厚手高張力鋼材の製造方法。
  7. 【請求項7】 450℃以上、Ac1 変態点以下で焼戻
    しを行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項
    に記載の低温靭性に優れた厚手高張力鋼材の製造方法。
  8. 【請求項8】 重量%で、 Cr:0.01〜1.0% Ni:0.01〜3.0% Mo:0.01〜1.0% Cu:0.01〜1.5% Ti:0.003〜0.10% V :0.005〜0.50% Nb:0.003〜0.10% Zr:0.003〜0.10% Ta:0.005〜0.20% W :0.01〜2.0% B :0.0003〜0.0020% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
    項1〜7のいずれか1項に記載の低温靭性に優れた厚手
    高張力鋼材の製造方法。
  9. 【請求項9】 重量%で、 Mg:0.0005〜0.01% Ca:0.0005〜0.01% REM:0.005〜0.10% のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする
    請求項1〜8のいずれか1項に記載の低温靭性に優れた
    厚手高張力鋼材の製造方法。
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