JPH11292646A - 炭素系摺動部材及びその製造方法 - Google Patents

炭素系摺動部材及びその製造方法

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JPH11292646A
JPH11292646A JP10099479A JP9947998A JPH11292646A JP H11292646 A JPH11292646 A JP H11292646A JP 10099479 A JP10099479 A JP 10099479A JP 9947998 A JP9947998 A JP 9947998A JP H11292646 A JPH11292646 A JP H11292646A
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JP
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carbon
sliding member
carbon fiber
composite material
based sliding
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JP10099479A
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Mitsunobu Nikaido
光信 二階堂
Yoshio Inoue
良男 井上
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Nabco Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 摩擦係数及び耐摩耗性等の摩擦特性を安定的
に発揮でき、耐酸化性、機械加工性及び耐衝撃性に優れ
た炭素系摺動部材及びその製法を提供する。 【解決手段】 炭素繊維強化炭素複合材料を作製し、こ
れに有機珪素化合物を含浸させて熱処理を行い、炭化珪
素及び窒化珪素の少なくとも一方からなる非酸化珪素セ
ラミックスを生成させて、炭素繊維強化炭素複合材料と
セラミックスとがそれぞれ連続相を形成し、炭素繊維が
非侵食状態で残存しており、全気孔率が18%以下である
炭素系摺動部材を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素系摺動部材及
びその製造方法に関し、詳しくは、炭素繊維強化炭素複
合材料(以下、「C/Cコンポジット」と称す)とセラ
ミックスとからなり、航空機、レース用車両及び鉄道車
両等のブレーキディスク及びパッドの材料として特に好
適に用いられる炭素系摺動部材及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、宇宙用部材の材料等として開発さ
れてきたC/Cコンポジットが、航空機、レース用車両
及び鉄道車両等のディスクブレーキ装置の摺動部材とし
て多く使用されている。このC/Cコンポジットは熱容
量が大きく、軽量で、耐熱性に優れているので、軽量化
が要求される航空機用に特に適した摺動部材といえる。
一方、最近になって、炭化珪素及び窒化珪素等のセラミ
ックス(以下「非酸化珪素セラミックス」と称す)のマ
トリックスとセラミックス繊維とからなるセラミックス
繊維強化セラミックス(特開平9-157050号公報)、及び
C/Cコンポジットとセラミックスとからなる複合材料
を、摺動部材の素材として用いることが検討されてお
り、後者の複合材料として、C/Cコンポジットに非酸
化珪素セラミックスを分散添加したものや、SiOガス
雰囲気中で熱処理して、C/Cコンポジットの一部又は
全部を炭化珪素に転化させたもの(特開平5-59350 号公
報)等が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、C/Cコンポ
ジットを摺動部材として用いたディスクブレーキは、温
度により摩擦係数が変化し易く、摩耗量も比較的多いと
いう欠点がある。また、C/Cコンポジットは炭素材で
あり、空気中で高温にさらされると酸化するので、摩擦
面以外の面に酸化防止剤を塗布する必要があるが、その
効果も十分とはいえなかった。
【0004】一方、前記セラミックスマトリックスの複
合材料は、摩耗量が少なく、摩擦係数が高いことから摺
動部材として適しているが、セラミックスマトリックス
は硬くて機械加工が困難であり、ブレーキディスク等の
複雑な形状に加工するには、工数と費用とがかかりすぎ
て実用的でないという問題があった。
【0005】また、C/Cコンポジットとセラミックス
とからなる複合材料は、セラミックス相が分散相である
ため、摺動部材として使用すると、表面に出たセラミッ
クス相が剥離してグルービングが生じ、摩耗量が増え、
強度も低下するという欠点がある。さらに、C/Cコン
ポジットの一部又は全部を炭化珪素に転化させた複合材
料からなる摺動部材は、表面と内部とで成分比が変わ
り、使用するに従って摩擦性能が変動するため摺動部材
としては問題があり、また、加工性もよくなかった。
【0006】本発明は、前記問題点を解決するものであ
り、摩擦特性を安定的に発揮できるとともに、耐酸化
性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐熱衝撃性、引張強度特性、
及び圧縮強度特性に優れ、機械加工も容易な炭素系摺動
部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る炭素系摺動
部材は、C/Cコンポジットを50〜90重量%、炭化珪素
又は窒化珪素の少なくとも一方からなるセラミックスを
50〜10重量%含み、前記C/Cコンポジット及びセラミ
ックスがそれぞれ連続相を形成し、炭素繊維が非侵食状
態で残存しているとともに、全気孔率が18%以下である
ことを特徴としている(請求項1)。前記の炭素系摺動
部材によれば、C/Cコンポジットと非酸化珪素セラミ
ックスとの比率が前記の範囲であるので、非酸化珪素セ
ラミックスが薄い連続相を形成し易くなり、その比率が
10重量%以上である点と相まって、非酸化珪素セラミッ
クスの特性である耐酸化性や耐摩耗性が効果的に発現す
るとともに、摩擦特性を安定的に発揮することができ
る。また、全気孔率を18%以下にしているので、非酸化
珪素セラミックスの連続相が剥離するのが抑制される。
このため、この剥離に起因して摩耗量が増加するのを防
止するとともに、圧縮強度が低下するのを防止すること
ができる。さらに、C/Cコンポジットの比率が50重量
%以上であるので、耐衝撃性に優れるとともに、略C/
Cコンポジット並の機械加工性を確保することができ
る。前記の炭素系摺動部材の内部組織は、実質的に炭素
繊維の周りを炭素相が覆っており、この炭素相の内部隙
間及び周囲を非酸化珪素セラミックスが覆っている状態
になっている。また、炭素繊維が非酸化珪素セラミック
スに侵食されることなく残存している。このため、炭素
繊維の特性である耐衝撃性及び引張強度をさらに良好に
発揮することができる。また、炭素相に由来して機械加
工性も良好であり、この機械加工性は、非酸化珪素セラ
ミックス相の厚みが薄いほど効果的に向上することが確
認されている。また、炭素相がクッションとなって耐熱
衝撃性も良好である。
【0008】本発明に係る炭素系摺動部材の製造方法
は、請求項1記載の炭素系摺動部材の製造方法であっ
て、炭素繊維と炭素質マトリックスとからなるプリフォ
ームを炭化させるか、又は炭素繊維のプリフォームに化
学的気相蒸着法(以下、「CVD法」と称す)により炭
素を沈積させて、C/Cコンポジットを作製し、このC
/Cコンポジットに非酸化珪素セラミックスを生成させ
ることを特徴としている(請求項2)。この炭素系摺動
部材の製造方法によれば、C/Cコンポジットと、非酸
化珪素セラミックスとがそれぞれ連続相を形成し、実質
的に炭素繊維が炭素相に覆われ、また、非侵食状態で残
存している炭素系摺動部材を容易かつ確実に得ることが
できるとともに、非酸化珪素セラミックス相の厚みを薄
くすることができる。また、非酸化珪素セラミックスが
表面相に偏在するのを防止することもできる。
【0009】請求項2記載の炭素系摺動部材の製造方法
は、前記C/Cコンポジットに有機珪素化合物を含浸さ
せ、不活性ガス又は窒素ガス雰囲気中で熱処理を行うこ
とにより非酸化珪素セラミックスを生成させるものであ
ってもよい(請求項3)。前記の製造方法によれば、品
質の安定した炭素系摺動部材を得ることができる。
【0010】請求項2記載の炭素系摺動部材の製造方法
は、前記C/Cコンポジットを作製した後、当該C/C
コンポジットに樹脂若しくはピッチを含浸させて炭化さ
せる工程、又は化学的気相蒸着法により炭素を沈積させ
る工程と、非酸化珪素セラミックスを生成させる工程と
を少なくとも1回行うものであってもよい(請求項
4)。前記の製造方法によれば、前記樹脂若しくはピッ
チの炭化、又は炭素の沈積によって、炭素系摺動部材の
ブランクとしての中間体が緻密化し、全気孔率18%以下
の炭素系摺動部材が容易に得られる。また、緻密化によ
り、空孔比率及び空孔の大きさがより小さくなるので、
非酸化珪素セラミックス相の厚みをさらに薄くすること
ができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳述する。本発明に係る炭素系摺動部材は、以下のよ
うにして製造する。まず、炭素繊維と炭素質マトリック
スとからC/Cコンポジットを作製する。炭素繊維は、
PAN(ポリアクリロニトリル)系、ピッチ系及びレー
ヨン系等の原料、長繊維及び短繊維等の形状並びに織
布、不織布及びチョップドファイバー等の形態等により
多くの種類があるが、摺動部材の用途に応じて適宜選択
する。また、炭化前の耐炎繊維等の中間繊維、他の繊維
との混紡品及び混合品等も使用できる。なお、実験結果
から、摺動部材用途には、不織布が好ましいことが判っ
ている。
【0012】C/Cコンポジットを作製する方法は、前
記炭素繊維のプリフォームに、CVD法により炭素を沈
積させる方法と、炭素繊維を炭素質マトリックスととも
にプリフォーム化した後に炭化させる方法の、2つの方
法がある。前者のCVD法により炭素を沈積させる方法
は、マトリックスとなる原料ガス(メタンやプロパンガ
ス等)とキャリヤーガスとを、一定の温度に保持した前
記炭素繊維のプリフォーム内に導入し、その空孔部の内
面で化学反応させて炭素を析出させるものである。後者
の炭素質マトリックスを使用する方法は、フェノール樹
脂、フラン樹脂及びポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、
並びにコールタールピッチ及び石油系ピッチ等のピッチ
類等の種々の炭素質マトリックスの中から、摺動部材の
用途に応じて炭素質マトリックスを選択し、これを炭素
繊維に含浸させて硬化及び炭化させる。炭素質マトリッ
クスの含浸は、非酸化珪素セラミックスの含浸と比較し
て、摩擦特性に及ぼす効果は少ない。また、その中に炭
素粉及び黒鉛粉等の粉体を混ぜ込んでもよい。成形は、
ホットプレス成形及びハンドレイアップ等各種の手法を
使用することができ、成形時にいくつかのプリフォーム
を積み上げて、一体化してもよい。
【0013】本発明に係るC/Cコンポジットでは、炭
素繊維と炭素質マトリックスとの比率は限定されず、使
用する炭素繊維の種類(PAN系、ピッチ系等)及び形
態(織布、不織布、チョップドファイバー等)、炭素質
マトリックスの材質(樹脂系、ピッチ系、CVD系
等)、並びに要求される摩擦特性等を考慮して好適な比
率に設定されるが、例えば、プリフォームの作り易さ及
び摺動部材の性能保持の観点から、炭素繊維の比率を20
〜50体積比(全体に対して)程度に設定するのが好まし
い。
【0014】本発明の炭素系摺動部材は、C/Cコンポ
ジットの製造方法、空孔部の割合(空孔比率)、空孔の
大きさ及び均一性、並びに非酸化珪素セラミックスの生
成に寄与しない閉気孔の比率がどのくらいであるか等に
よって、最終的な非酸化珪素セラミックスの比率が決定
し、当該炭素系摺動部材の性能が決定する。ゆえに、閉
気孔が少なく、細かい孔が均一に存在するように、原料
及び製造方法の組み合わせを選択する。空孔比率は、前
記C/Cコンポジットに、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂
若しくはコールタールピッチ等のピッチ類を含浸させ、
又はCVD法で炭素を沈積させることにより、調節する
ことができる。何れの方法でも摩擦特性に及ぼす影響は
少ない。
【0015】次に、前記C/Cコンポジットの空孔部及
び表面相に非酸化珪素セラミックスを生成させるが、そ
の方法は、ポリシラザン及びポリカルボシラン等の有機
珪素化合物を溶媒に溶かしたものを、C/Cコンポジッ
トに含浸させた後に、アルゴン等の不活性ガス又は窒素
ガス雰囲気中で、温度700 ℃以上で焼成し、非酸化珪素
セラミックスを反応生成させるものであり、アルゴンガ
スの場合には炭化珪素が、窒素ガスの場合には窒化珪素
がそれぞれ生成される。通常は、この含浸及び焼成の操
作を数回繰り返して非酸化珪素セラミックスを生成させ
るが、前記操作を繰り返す回数は、要求される非酸化珪
素セラミックスの重量%と、最終密度とにより決定す
る。さらに、炭化珪素の歩留を上げる目的で不融化処理
を行ってもよい。不融化処理を行った場合、不純物とし
て酸化珪素が生成するが、量的に少なければ問題はな
い。その他、製造方法及び原料に起因する、炭素及び水
素等の副生成物、並びに不純物が混在することがある
が、混在しても極少量であり、問題はない。また、C/
Cコンポジットに、CVD法により非酸化珪素セラミッ
クスを沈積させる方法もあるが、表面のCVD相を除去
するのにかなりの手間を要し、また奥まで沈積させるの
に時間がかかる。
【0016】前記の炭素系摺動部材は、C/Cコンポジ
ット50〜90重量%と非酸化珪素セラミックス50〜10重量
%とからなるものであるのが好ましい。両者の比率が前
記の範囲内にある場合には、非酸化珪素セラミックスが
薄い連続相を形成し易くなり、非酸化珪素セラミックス
の比率が10重量%以上である点と相まって、耐酸化性及
び摩擦特性が向上する。また、C/Cコンポジットの比
率が50重量%以上であると、機械加工性及び耐衝撃性が
良好である。そして、前記の範囲内で、摩擦材料の用途
等に応じて好適な比率を選択すればよい。
【0017】以上の構成の炭素系摺動部材の製造方法
は、前記非酸化珪素セラミックスを生成させた後、樹脂
若しくはピッチ類を含浸させて炭化させる工程、又はC
VD法により炭素を沈積させる工程を複数回行ってもよ
く、非酸化珪素セラミックスを生成させる工程をさらに
追加してもよい。また、前記C/Cコンポジットを作製
した後、樹脂若しくはピッチを含浸させて炭化させる工
程又はCVD法により炭素を沈積させる工程と、非酸化
珪素セラミックスを生成させる工程とを、この順にて複
数回繰り返してもよい。何れにおいても、炭素系摺動部
材のブランクとしての中間体が緻密化して空孔比率及び
空孔の大きさが小さくなるので、非酸化珪素セラミック
スの連続相が効果的に薄くなって、炭素系摺動部材の機
械加工性及び耐衝撃性がさらに向上する。
【0018】また、前記樹脂又はピッチの含浸工程等を
行わずに、前記非酸化珪素セラミックス生成工程のみで
全気孔率18%以下の炭素系摺動部材を得るには、前記非
酸化珪素セラミックス生成工程を何回も繰り返さねばな
らず、結果的に非酸化珪素セラミックスの連続相が厚く
なるが、前記樹脂又はピッチの含浸工程等を行って炭素
系摺動部材の中間体を緻密化させると、全気孔率18%以
下の炭素系摺動部材が容易に得られる。炭素系摺動部材
の全気孔率については、これが18%を超える場合には、
両成分が連続相を形成していても、摺動試験を行うと、
非酸化珪素セラミックスが剥離してグルービングを起こ
すため、摩耗量が極度に増大する。しかし、全気孔率が
18%以下である場合には、グルービングが生じず、摩耗
量もC/Cコンポジット単独である場合より少なくな
る。なお、全気孔率は各成分の真密度(測定法はJIS
による)と、重量比とから算出する。
【0019】
【実施例】以下に、実施例をあげて本発明を具体的に説
明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。 [実施例1]直径7μmのPAN(ポリアクリロニトリ
ル)系炭素繊維(東レ(株) T300)の6000本束を長さ
25mmにカットしたものと、レーヨンの有機繊維とを重量
比90:10の割合で混合し、これをカード機により目付30
0g/m2 の不織布にした。この不織布について積層及びパ
ンチングを繰り返して目付10kg/m2 の高目付不織布に
し、これにその重量の2倍量のフェノール樹脂液(昭和
高分子 BRL-2854)を含浸させて乾燥し、さらに熱板プ
レスで170 ℃の条件で20mmに硬化成形して、その後190
℃及び210 ℃でそれぞれ3時間、後硬化を実施した。こ
のようにして得られた成形体を、不活性雰囲気中で、30
0 ℃までは10℃/Hr、300 〜600 ℃は5 ℃/Hr 、600 ℃
以上は20℃/Hr の昇温速度で、1000℃まで昇温して炭化
させた。炭化後の嵩密度は0.95g/cm3 であった。
【0020】さらに、このサンプルを黒鉛化炉に入れて
2500℃までの黒鉛化処理を行なった後、ポリカルボシラ
ン(日本カーボン ニプシ タイプS)のキシレン溶液
を含浸させて180 ℃で硬化処理を施し、Arガス雰囲気中
で、300 ℃までは20℃/Hr 、300 〜700 ℃は5 ℃/Hr 、
700 ℃以上は20℃/Hr の昇温速度で、1400℃まで昇温し
て炭化珪素を生成させた。さらに、含浸、硬化及び炭化
珪素生成の工程を4 回繰り返して炭素/セラミックス複
合材料を得た。
【0021】次に、前記炭素/セラミックス複合材料に
軟化点120 ℃のコールタールピッチを含浸させ、これを
300 ℃までは50℃/Hr 、300 ℃以上は前記と同じ条件で
1000℃まで昇温して炭化させ、さらにピッチ含浸及び炭
化の工程を繰り返して1500℃で焼成を行い、密度2.1 の
炭素系摺動部材を得た。この炭素系摺動部材の炭化珪素
の含有量は45重量%で、気孔率は11%であった。
【0022】[実施例2]実施例1の密度0.95g/cm3
サンプルに、軟化点120 ℃のコールタールピッチを含浸
させて、これを不活性雰囲気中で、300 ℃までは50℃/H
r 、300 ℃以上は前記と同じ条件で1000℃まで昇温して
炭化させ、さらに黒鉛化炉で2500℃までの黒鉛化処理を
行なって嵩密度1.25g/cm3 のサンプルを得た。このサン
プルについて、実施例1と同様に、ポリカルボシラン含
浸、硬化及び炭化珪素生成を2回行い、再度、ピッチ含
浸及び炭化の工程を2回繰り返し、1500℃で焼成を行っ
た。さらに、ポリカルボシラン含浸、硬化及び炭化珪素
生成を行って、密度1.76g/cm 3 の炭素系摺動部材を得
た。この炭素系摺動部材の炭化珪素の含有量は20重量%
で、気孔率は18%であった。
【0023】[実施例3]実施例1の炭化後の0.95g/cm
3 のサンプルについて、ピッチ含浸及び炭化の工程を3
回繰り返し行い、さらに黒鉛化炉で2500℃までの黒鉛化
処理を行った。このときの嵩密度は1.57g/cm3 であっ
た。その後、ポリカルボシラン含浸、硬化及び窒素雰囲
気中での窒化珪素化処理を行い、密度1.78g/cm3 の炭素
系摺動部材を得た。この炭素系摺動部材の窒化珪素の含
有量は10重量%で、他に炭化珪素が2重量%入ってお
り、気孔率は15%であった。
【0024】[比較例1]実施例2の途中工程のピッチ
含浸、黒鉛化処理後の嵩密度1.25g/cm3 のサンプルに、
金属珪素を含浸させ、1800℃で基材の炭素材と反応させ
て炭素系摺動部材を得た。この炭素系摺動部材の密度は
2.1g/cm3で、炭化珪素の含有量は58重量%、気孔率は15
%であった。
【0025】[比較例2]実施例3の黒鉛化処理後の嵩
密度1.57g/cm3 のサンプルに、炭素のCVD処理を行
い、密度1.75g/cm3 のC/ Cコンポジットの炭素系摺動
部材を得た。この炭素系摺動部材より炭化珪素は検出さ
れず、気孔率は12%であった。
【0026】[比較例3]実施例1のサンプルで、途中
工程のポリカルボシランを含浸後、炭化珪素生成工程を
終えた段階でサンプルを取り出し、炭素系摺動部材を得
た。この炭素系摺動部材の密度は1.90g/cm3 、炭化珪素
の含有量は50重量%で、気孔率は22%であった。
【0027】[評価試験]前記の6種類のサンプルにつ
いて以下の(1) 〜(4) の評価試験を行った。この評価試
験の結果を表1に示す。 (1) 一辺が5mmの立方体を作り、昇温速度5℃/min、エ
アー流量200ml/min の条件で、熱天秤試験を行って重量
減が5%を超えるときの温度を測定した。 (2) 外径150mm 、内径110mm 、厚み10mmのリング状の板
を加工するときの加工時間を測定した。 (3) 前記のリング状の板に加工し、コンクリートの地面
の上に3mの高さから落下させ、割れを調べた。 (4) 非酸化珪素セラミックスと炭素との界面を偏光顕微
鏡で観察し、珪素の炭素繊維に対する侵食の有無を調べ
た。
【0028】
【表1】
【0029】表1に示す評価試験結果より、比較例2の
C/Cコンポジットは耐酸化性が劣るのに対し、他の実
施例及び比較例の酸化温度は高く、耐酸化性が良好であ
ることが判った。また、金属珪素を含浸させて反応焼結
させた、炭化珪素の比率が高い比較例1は、加工性が悪
く、加工された板は落下試験で割れたのに対し、他の実
施例及び比較例は加工性がよく、加工された板は落下試
験でも端が少し欠けた程度で、衝撃に強いことが明らか
になった。
【0030】次に、前記の6種類のサンプルを機械加工
し、外径約150mm のステーター2枚と、外径約130mm の
ローターとを作成し、ダイナモテストを実施した。な
お、比較例1のサンプルは加工性が悪いので、事前に機
械加工した後、炭化珪素生成を実施し、再度手直しをす
ることによりテスト材を得た。試験は、押しつけ圧力45
KPa 、速度30〜150km/s の範囲5段階で実施し、繰り返
し50回の停止試験をした後に摩耗量を測定した。この結
果を表2に示す。さらに、実施例2、比較例1及び比較
例2については、ダイナモテストにより得られた瞬間摩
擦係数の変化を、図1のグラフに示す。
【0031】
【表2】
【0032】以上の結果より、比較例1は強度特性と瞬
間摩擦係数とが、比較例2は摩擦係数が、比較例3は耐
摩耗性が、実施例と比較して劣ることが明らかになり、
本発明の炭素系摺動材料は、摺動部材として良好な摩擦
特性、機械加工性、耐衝撃性及び耐酸化性を有している
ことが明らかになった。
【0033】図2に、偏光顕微鏡により本発明の炭素系
摺動部材を観察した結果を示す。図2に示すように、本
発明の炭素系摺動部材の内部組織は、実質的に炭素繊維
1の周りを炭素相2が覆っており、炭素相2の内部隙間
及び周囲を非酸化珪素セラミックス相3が覆った状態と
なっている。また、炭素繊維1が、非酸化珪素セラミッ
クス相3により侵食されずに残存している。従って、炭
素繊維1の特性である耐衝撃性及び引張強度を良好に発
揮することができる。また、耐熱衝撃性も、炭素相2が
クッションとなって良好に発揮することができる。な
お、非酸化珪素セラミックス相3内には、島状に空孔4
が分布している。
【0034】以上のように、前記炭素系摺動部材は、C
/Cコンポジットの空孔比率、空孔の大きさと均一性及
び開気孔率が好適であるので、非酸化珪素セラミックス
は、上述のように、炭素繊維を侵食することなく、炭素
相の狭い隙間に侵入した状態で、さらにはC/Cコンポ
ジットの表面相を層状に薄く覆った状態で、薄い連続相
を形成し、その比率が好適なものとなっている。従っ
て、炭素材料及びセラミックスの特性をバランスよく発
揮することができ、耐衝撃性、耐熱衝撃性、耐酸化性、
耐摩耗性、摩擦特性、引張強度特性、圧縮強度特性、及
び機械加工性等の諸特性を良好に発揮することができ
る。
【0035】
【発明の効果】以上のように構成された本発明は、以下
の効果を奏する。請求項1記載の炭素系摺動部材によれ
ば、C/Cコンポジットと非酸化珪素セラミックスとの
比率が、非酸化珪素セラミックスが薄い連続相を形成し
易い比率となっており、しかも、その比率が10重量%以
上であるので、非酸化珪素セラミックスの特性である耐
酸化性及び耐摩耗性が効果的に発現するとともに、摩擦
特性を安定的に発揮することができる。特に耐摩耗性
は、全気孔率を18%以下にして、非酸化珪素セラミック
スの連続相が剥離するのを抑制していることと相まっ
て、向上している。また、この剥離に起因して圧縮強度
が低下するのも防止されている。そして、C/Cコンポ
ジットの比率が50重量%以上であるので、耐衝撃性が良
好であるともに、機械加工性もほぼC/Cコンポジット
並になっている。従って、ローター・ステーター方式及
びディスク・パッド方式等の長い穴加工を含んだ複雑な
形状にも加工できる。さらに、炭素繊維が非酸化珪素セ
ラミックスに侵食されることなく残存しているので、炭
素繊維の特性である耐衝撃性及び引張強度をさらに良好
に発揮することができる。また、炭素相がクッションと
なって耐熱衝撃性も良好となる。従って、本発明の炭素
系摺動部材は、高速、高負荷条件で使用される、航空
機、レース用車両及び鉄道車両のブレーキディスク及び
パッド等に適用することができる。
【0036】請求項2記載の炭素系摺動部材の製造方法
によれば、C/Cコンポジットと、非酸化珪素セラミッ
クスとがそれぞれ連続相を形成し、実質的に炭素繊維が
炭素相に覆われ、また、非侵食状態で残存している炭素
系摺動部材を容易かつ確実に得ることができるととも
に、非酸化珪素セラミックス相の厚みを薄くすることが
できる。また、非酸化珪素セラミックスが表面相に偏在
するのを防止することもできるので、使用に伴って摩擦
係数が変化するおそれがなく、摩擦特性をより安定的に
発揮することができる。
【0037】請求項3記載の炭素系摺動部材の製造方法
によれば、品質の安定した炭素系摺動部材を得ることが
できる。
【0038】請求項4記載の炭素系摺動部材の製造方法
によれば、樹脂若しくはピッチの炭化、又は炭素の沈積
によって、中間体が緻密化し、全気孔率18%以下の炭素
系摺動部材が容易に得られる。また、緻密化により、空
孔比率及び空孔の大きさが小さくなるので、非酸化珪素
セラミックス相の厚みをさらに薄くすることができる。
したがって、機械加工性がより効果的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例の瞬間摩擦係数の変化を示す
グラフ図である。
【図2】本発明の炭素系摺動部材を偏光顕微鏡で観察し
た結果を示す概略図である。
【符号の説明】
1 炭素繊維 2 炭素相 3 非酸化珪素セラミックス相 4 空孔

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素繊維強化炭素複合材料を50〜90重量
    %、炭化珪素又は窒化珪素の少なくとも一方からなるセ
    ラミックスを50〜10重量%含み、前記炭素繊維強化炭素
    複合材及びセラミックスがそれぞれ連続相を形成し、炭
    素繊維が非侵食状態で残存しているとともに、全気孔率
    が18%以下である炭素系摺動部材。
  2. 【請求項2】請求項1記載の炭素系摺動部材の製造方法
    であって、 炭素繊維と炭素質マトリックスとからなるプリフォーム
    を炭化させるか、又は炭素繊維のプリフォームに化学的
    気相蒸着法により炭素を沈積させて、炭素繊維強化炭素
    複合材料を作製し、この炭素繊維強化炭素複合材料に前
    記セラミックスを生成させることを特徴とする炭素系摺
    動部材の製造方法。
  3. 【請求項3】前記炭素繊維強化炭素複合材料に有機珪素
    化合物を含浸させ、不活性ガス又は窒素ガス雰囲気中で
    熱処理を行うことにより、前記セラミックスを生成させ
    る請求項2記載の炭素系摺動部材の製造方法。
  4. 【請求項4】前記炭素繊維強化炭素複合材料を作製した
    後、当該炭素繊維強化炭素複合材料に樹脂若しくはピッ
    チを含浸させて炭化させる工程、又は化学的気相蒸着法
    により炭素を沈積させる工程と、前記セラミックスを生
    成させる工程とを少なくとも1回行う請求項2記載の炭
    素系摺動部材の製造方法。
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