JPH11153105A - 液圧制御装置および作動液粘性取得装置 - Google Patents

液圧制御装置および作動液粘性取得装置

Info

Publication number
JPH11153105A
JPH11153105A JP9320690A JP32069097A JPH11153105A JP H11153105 A JPH11153105 A JP H11153105A JP 9320690 A JP9320690 A JP 9320690A JP 32069097 A JP32069097 A JP 32069097A JP H11153105 A JPH11153105 A JP H11153105A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pressure
viscosity
hydraulic
hydraulic pressure
fluid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9320690A
Other languages
English (en)
Inventor
Shoichi Miyanochi
昇一 宮後
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP9320690A priority Critical patent/JPH11153105A/ja
Publication of JPH11153105A publication Critical patent/JPH11153105A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Regulating Braking Force (AREA)
  • Fluid-Pressure Circuits (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 作動液の粘性を、温度以外の物理量に基づい
て取得する。 【解決手段】 定常状態にある場合(S1)には、リニ
アバルブ装置に作動液は流れておらず、両側の液圧差は
一定に保たれる。この状態からリニアバルブ装置を予め
定められた大きさの開口面積で開き、作動液を流れさせ
る(S3)。設定時間経過後のホイールシリンダ側液圧
の定常状態におけるマスタシリンダ側液圧に対する液圧
比率を求める(S4)。粘性が大きい場合は小さい場合
より、液圧比率が小さくなるため、これらの関係に基づ
けば、粘性を取得することができる(S5)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、液圧制御における
作動液の粘性の影響の軽減に関するものである。
【0002】
【従来の技術】作動液の粘性の影響を軽減した液圧制御
装置の一態様が実願昭61─157217号のマイクロ
フィルムに記載されている。この液圧制御装置において
は、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に設けら
れた液圧制御弁が、それの開口面積(流路面積)が作動
液の温度が低い場合は高い場合より大きくなるように制
御される。温度が低い場合は高い場合より作動液の粘性
が大きく、流れ難いため、液圧制御応答遅れが大きくな
る(変化勾配が小さくなる)。そこで、温度が低い場合
に開口面積を大きくして液圧制御応答遅れを小さくし、
粘性の液圧制御への影響が小さくされるのである。この
液圧制御装置においては、実質的に、作動液の粘性が温
度に基づいて取得されていることになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,解決手段,作用および
効果】本発明の課題は、作動液の粘性を上記液圧制御装
置における場合とは別の手段によって取得する装置を得
ること、すなわち、作動液の粘性を温度以外の物理量に
基づいて取得する作動液粘性取得装置および取得した粘
性を液圧制御に利用する液圧制御装置を得ることであ
る。本発明によって下記態様の液圧制御装置および作動
液粘性取得装置が得られる。各態様はそれぞれ項に分
け、項番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用し
て請求項と同じ形式で記載する。各項に記載の特徴を組
み合わせて採用することの可能性を明示するためであ
る。 (1)高圧部と低圧部との間に設けられ、それら高圧部
と低圧部との間の作動液の流れを制御する液圧制御弁装
置と、その液圧制御弁装置を制御することにより前記高
圧部と低圧部とのいずれか一方の液圧を制御する液圧制
御弁制御手段とを含む液圧制御装置であって、前記液圧
制御弁制御手段が、前記液圧制御弁装置の両側の液圧差
に関連する差圧関連量と前記作動液の流量に関連する流
量関連量とに基づいて、前記作動液の粘性を取得する粘
性取得手段と、その粘性取得手段によって取得された作
動液の粘性に基づいて前記液圧を制御する粘性対応制御
手段とを含むことを特徴とする液圧制御装置(請求項
1)。本項に記載の液圧制御装置においては、作動液の
粘性が、液圧制御弁装置における差圧関連量と流量関連
量とに基づいて取得される。そして、その取得された作
動液の粘性に基づいて液圧制御弁装置が制御される。例
えば、粘性が大きい場合も小さい場合も、同じ流量で作
動液が流れるように制御され、粘性の大きさにかかわら
ず、正確に所望量の作動液が流れるように制御されるの
である。その結果、粘性の液圧制御応答性への影響を小
さくし、あるいはなくすことができ、液圧制御精度を向
上させることができる。上述のように、作動液の粘性
は、液圧制御弁装置における差圧関連量と流量関連量と
に基づいて取得されるのであり、温度に基づいて取得さ
れるのではない。そのため、作動液の粘性を取得するた
めの作動液温センサが不要となる。本項に記載の液圧制
御装置においては、粘性を取得するために差圧関連量と
流量関連量とを取得する必要があるが、以下に述べるよ
うに、これらを取得するための専用のセンサ等は不要で
あることが多く、その場合には液圧制御装置全体として
コスト低減を図ることができる。差圧関連量について
は、液圧制御装置の制御のために設けられた液圧センサ
等を利用して取得することができる。差圧関連量には、
液圧制御弁装置の高圧部側の液圧(以下、高圧側液圧と
略称する)と低圧部側の液圧(以下、低圧側液圧と略称
する)との液圧差自体の他に、液圧差の変化に伴って変
化する量(液圧差に対応する量)が該当する。例えば、
高圧側液圧に対する低圧側液圧の比率である低圧側液圧
比率,高圧部と低圧部とのうち液圧が制御される側の液
圧である制御側液圧の他方の側の液圧である非制御側液
圧に対する比率である制御側液圧比率、両側の液圧差の
高圧側液圧と低圧側液圧とのいずれか一方に対する比率
である差圧比率,高圧側液圧と低圧側液圧とのいずれか
一方の、定常状態における液圧に対する流れ状態(過渡
状態)における液圧の比率である流れ状態液圧比率等が
含まれる。液圧制御弁装置が、両側の液圧差に基づいて
制御される場合には、液圧制御弁装置の制御のために設
けられた液圧差検出装置を粘性取得時に利用することが
できる。液圧制御弁装置が、高圧側液圧と低圧側液圧と
の少なくとも一方に基づいて制御される場合には、高圧
側液圧を検出する高圧側液圧センサと、低圧側液圧を検
出する低圧側液圧センサとの少なくとも一方が設けられ
ることになる。高圧側液圧センサと低圧側液圧センサと
の両方が設けられる場合には、両方の液圧センサを利用
して液圧差等を含む差圧関連量を取得することができ、
高圧側液圧センサと低圧側液圧センサとのいずれか一方
しか設けられない場合においても、高圧側液圧と低圧側
液圧との他方が一定の場合(高圧部と低圧部との他方が
定液圧源である場合がその一例である)には、一方の液
圧に基づいて差圧関連量を取得することができる。ま
た、流量関連量には、液圧制御弁装置を流れる作動液の
流量のみならず、流量を取得し得る液圧制御弁装置の状
態量,液圧制御弁装置に対する制御量等が該当する。状
態量には、液圧制御弁装置における開口面積,開度(開
口面積の最大値に対する開口率),開状態にある開時間
の閉状態にある閉時間に対する比率である開時間比率
(開時間比率は、開時間の制御時間に対する比率として
もよい)等が含まれ、制御量には、液圧制御弁装置に供
給される供給電力,供給電力のON時間のOFF時間に
対する比率であるON時間比率(ON時間比率は、ON
時間の制御時間に対する比率としてもよい)等が含まれ
る。これらのうちの、制御量は、センサ等によって検出
しなくても取得することができ、状態量,流量等を、制
御量等に基づいて演算により取得することもできる。本
項に記載の液圧制御装置においては、作動液の粘性が温
度に基づいて取得されるのではないため、粘性の取得精
度を向上させることができるという利点もある。粘性
は、作動液の温度によっても変わるが、劣化の程度等に
よっても変わる。そのため、粘性が作動液の温度のみに
基づいて取得される場合には、劣化に起因して粘性が小
さくなっていても、温度が低い場合には粘性が大きいと
誤って取得されてしまう。それに対して、差圧関連量と
流量関連量とに基づいて取得される場合には、作動液の
粘性が小さい場合には、温度が低くても、粘性が大きい
と誤って取得されることがないのである。液圧制御弁装
置は、高圧部と低圧部との間に設けられるものである
が、低圧部がホイールシリンダの場合には、例えば、高
圧部の作動液のホイールシリンダへの流入を制御する増
圧弁を含むものとされ、高圧部がホイールシリンダの場
合には、ホイールシリンダの作動液の低圧部への流出を
制御する減圧弁を含むものとされる。液圧制御弁装置
を、これら増圧弁と減圧弁との両方を含むものとするこ
ともできる。いずれにしても、液圧制御弁装置は粘性対
応制御手段によって制御される。例えば、液圧制御弁装
置が、供給電力に応じた開口面積で作動液の流れを許容
する電磁流量制御弁を含む場合には、供給電力が粘性に
基づいて制御される。粘性が大きく作動液が流れ難い場
合に開口面積が大きくされ、粘性が小さく流れ易い場合
に開口面積が小さくされるのである。その結果、粘性の
大きさにかかわらず、ほぼ同じ流量で作動液が流れるこ
とになり、粘性による液圧制御応答性への影響を小さく
できる。液圧制御弁装置が、供給電力のON/OFFに
より開閉する電磁開閉弁を含む場合には、例えば供給電
力のON時間比率が制御される。粘性が大きい場合は小
さい場合よりON時間比率が大きくされ、粘性が大きく
ても小さくても、ほぼ同じ流量で作動液が流れるように
されるのである。これら供給電力の大きさやON時間比
率等は、粘性に基づいて連続的に制御しても段階的に制
御してもよい。このように、供給電力の大きさやON時
間比率を制御することにより、作動液の流量が制御さ
れ、流量の制御により、高圧部と低圧部とのいずれか一
方の液圧の変化勾配が制御される。したがって、粘性対
応制御手段には、粘性対応流量制御手段,粘性対応液圧
変化勾配制御手段等が該当することになる。また、液圧
制御弁装置が、粘性の大きさにかかわらず、正確に所望
量の作動液を流れさせるように制御される場合には、粘
性対応制御手段を、粘性影響排除型制御手段と称するこ
ともできる。 (2)前記液圧制御弁装置が、高圧部に接続された高圧
側ポートと低圧部に接続された低圧側ポートとが形成さ
れた制御弁本体と、その制御弁本体に対して、前記高圧
側ポートと低圧側ポートとを連通させる連通位置とこれ
らを遮断する遮断位置とに移動可能な可動部材と、その
可動部材に供給電力に応じた電磁駆動力を付与する電磁
駆動力付与装置と、可動部材に電磁駆動力とは逆向きで
遮断位置からの移動量に応じて変化する弾性力を付与す
る弾性部材と前記高圧側ポートと低圧側ポートとの少な
くとも一方の圧力に基づく圧力作動力を電磁駆動力とは
逆向きに付与する圧力作動力付与装置との少なくとも一
方とを含み、前記粘性対応制御手段が、前記電磁駆動力
付与装置に供給する電力を粘性に基づいて制御すること
により電磁駆動力を制御する粘性対応電磁駆動力制御手
段を含む(1) 項に記載の液圧制御装置。可動部材は、電
磁駆動力によって移動させられる。連通位置に移動させ
られれば、高圧側ポートから低圧側ポートへの作動液の
流れが許容され、液圧制御弁装置は開状態とされる。遮
断位置に移動させられれば、作動液の流れが阻止され、
閉状態とされる。可動部材には、弾性部材による弾性力
と、高圧側ポートと低圧側ポートとの少なくとも一方の
圧力に基づく圧力作動力との少なくとも一方も付与され
るため、この少なくとも一方と、電磁駆動力付与装置に
よる電磁駆動力とによって決まる開口面積で作動液の流
れが許容される。そして、電磁駆動力付与装置による電
磁駆動力は、粘性対応電磁駆動力制御手段によって制御
される供給電力によって決まるため、液圧制御弁装置の
開口面積が粘性に応じて制御されることとなり、粘性の
影響が軽減され、あるいはなくされる。ここで、圧力作
動力付与装置を、高圧側ポートと低圧側ポートとの圧力
差に応じた作動力を付与する圧力差対応力付与装置とす
ることができる。また、圧力作動力付与装置を、可動部
材に、高圧側ポートと低圧側ポートとのうち圧力が制御
される側のポートである制御圧ポートの制御圧力に応じ
た制御圧作動力を付与する制御圧作動力付与装置とする
ことができ、この場合には、可動部材が、少なくとも制
御圧作動力と電磁駆動力との関係で移動させられ、制御
圧力が制御されることになる。電磁駆動力は、可動部材
を連通位置に付勢する向きの力であっても、遮断位置に
付勢する向きの力であってもよい。制御弁装置は、スプ
ール弁を含むものであっても、(3) 項に記載のシーティ
ング弁を含むものであってもよいが、シーティング弁を
含むものとすることが望ましい。スプール弁においては
遮断状態においても僅かな液漏れが生じ易いが、シーテ
ィング弁においては生じないからである。スプール弁を
含む液圧制御弁装置が、高圧部としてのマスタシリンダ
と低圧部としてのホイールシリンダとの間に設けられる
場合には、スプール弁における液漏れに起因して、マス
タシリンダにおいて加圧ピストンが前進端位置に達する
ボトミングが生じ、液圧が低下するおそれがある。それ
に対して、シーティング弁においては実質的な液漏れは
生じないため、マスタシリンダとホイールシリンダとの
間に設けても、ボトミング発生の恐れがないのである。
ただし、スプール弁のバルブクリアランスがごく小さい
ものとされる等、液漏れが生じ難いものとされれば、マ
スタシリンダとホイールシリンダとの間に設けても差し
支えない。また、高圧部が作動液を圧送するポンプを含
む動力液圧源である場合には、スプール弁において液漏
れが生じても、高圧源の液圧が低下することはないた
め、高圧源とホイールシリンダとの間にスプール弁を設
けることが可能となる。粘性対応電磁駆動力制御手段に
より、予め決められた大きさの供給電力(液圧制御弁装
置を開状態に切り換えるのに十分な大きさの供給電力)
のON/OFFが制御される場合には、電磁駆動力付与
装置においては、ONの場合に一定の大きさの電磁駆動
力が発生させられ、OFFの場合に消滅させられる。応
答速度の大きい液圧制御弁装置においては、可動部材が
連通位置と遮断位置とに交互に移動させられ、開状態と
閉状態とに交互に切り換えられるが、応答速度の小さい
液圧制御弁装置においては、ON/OFFの時間比率で
決まる位置近傍に可動部材が保たれ、液圧制御弁装置の
開度が制御されることとなる。この開時間比率(供給電
力のON時間比率)が粘性に基づいて制御され、開状態
比率に応じた流量で作動液が流れさせられる。液圧制御
弁装置は、例えば電磁開閉弁により構成することができ
る。 (3)前記可動部材が、高圧側ポートの周辺部である弁
座に対して、接近・離間可能な弁子であり、前記電磁駆
動力付与装置が、前記弁子が弁座から離間する向きに電
磁駆動力を付与するものであり、前記制御弁装置が、前
記弁子が弁座に対して接近する向きの弾性力を付与する
スプリングを含む遮断付勢装置を含み、前記粘性対応電
磁駆動力制御手段が、前記供給電力の大きさを制御する
ものである(2) 項に記載の液圧制御装置。本項に記載の
液圧制御装置に含まれるシーティング弁においては、弁
子に、フプリングの弾性力および電磁駆動力の他に、高
圧側ポートと低圧側ポートとの液圧差に応じた差圧作用
力が加わり、弁子が、これら差圧作用力,弾性力および
電磁駆動力の関係に基づいて移動させられることにな
る。差圧作用力が同じであれば、弁子の弁座に対するス
トロークが、供給電力に基づいて決まり、作動液がその
ストロークに応じた開口面積で流れさせられる。粘性が
大きい場合は小さい場合より供給電力が大きくされれ
ば、ストロトークが大きくなり、粘性の大きさにかかわ
らず、ほぼ同じ流量で作動液を流れさせることができ
る。また、電磁駆動力付与装置が、弁子が弁座に接近す
る向きに電磁駆動力を加える装置とすることもでき、こ
の場合には、差圧作用力と電磁駆動力との関係によって
弁子のストローク,すなわち開口面積が決まることにな
る。 (4)前記粘性取得手段が、定常状態における前記液圧
制御弁装置の両側の液圧差である定常状態液圧差と、液
圧制御弁装置において予め定められた制御条件で作動液
の流れが開始させられてから設定時間経過後の前記高圧
部側と低圧部側とのいずれか一方の側の液圧の変化量と
に基づいて粘性を取得する定常時粘性取得手段を含む
(1) 項ないし(3) 項のいずれか1つに記載の液圧制御装
置。例えば、液圧制御弁装置がマスタシリンダとホイー
ルシリンダとの間に設けられている場合に、作動液が流
れておらず、両側の液圧差がほぼ一定の大きさに保たれ
た定常状態において、液圧制御弁装置を予め定められた
小さい開口面積で設定時間だけ開いた場合のホイールシ
リンダ側液圧の増大量は作動液の粘性が大きいほど小さ
くなる。したがって、これら定常液圧差,開口面積およ
びホイールシリンダ側液圧増大量から演算により粘性を
取得することができる。また、一定の定常液圧差および
開口面積の下におけるホイールシリンダ側液圧増大量と
粘性との関係を予め調べておけば、その関係とホイール
シリンダ側液圧増大量とから粘性を取得することもでき
る。液圧制御弁装置が、高圧部としてのホイールシリン
ダと低圧部としてのリザーバとの間に設けられている場
合には、リザーバ側液圧は常に一定(例えば大気圧)で
あるため、ホイールシリンダ側の液圧を検出すれば、定
常状態液圧差も、予め定められた条件で液圧制御弁装置
を開いた場合における設定時間後の液圧変化量(減少
量)も知ることができ、容易に粘性を取得することがで
きる。上記定常状態は、ブレーキ操作部材がほぼ一定の
操作力で操作されている場合に得られるのであり、車両
の走行中においても得られるが、走行中においては上記
ホイールシリンダ側液圧の増大もしくは減少が車両減速
度を増大もしくは減少させ、運転者に違和感を与える。
したがって、定常時粘性取得手段を車両走行中に作動す
るものとする場合には、上記設定時間を短くすることが
望ましい。それに対して、停車中にブレーキ操作部材が
一定の操作力で操作されている状態を定常状態として選
べば、ホイールシリンダ側液圧増大量に伴って減速度が
増大するという事態は生じないので、設定時間を十分に
長く設定することができ、粘性の検出精度を向上させる
ことができる。このように、液圧制御弁装置において作
動液が流れさせられ、高圧部側と低圧部側とのいずれか
一方の側の液圧が変化させられても、他方の側の液圧が
殆ど変化しない場合には、変化する一方の側の液圧変化
量を検出すれば、粘性を取得することができるのであ
る。また、定常状態液圧差が液圧制御弁装置の構造等に
より決まっている場合には、定常状態液圧差を検出する
必要もない。この場合には、上述の一方の側の液圧変化
量を検出すれば、粘性を取得することができるため、液
圧センサの個数を減らすことができ、装置のコストアッ
プを抑制することができる。なお、定常状態液圧差が大
きい場合は小さい場合より、ホイールシリンダ側液圧の
変化勾配が大きくなる。そのため、マスタシリンダ側あ
るいはリザーバ側の液圧がほぼ一定であっても、液圧制
御弁の両側の液圧差の変化量が大きくなる。そして、液
圧制御弁装置が(3) 項に記載のシーティング弁を含むも
のである場合のように、可動部材に差圧作用力が作用す
るものである場合には、供給電力が一定に保たれても差
圧作用力の変化により開口面積が変化する。したがっ
て、定常時粘性取得手段が、種々の定常状態液圧差の下
で作動するものである場合には、開口面積が一定である
との仮定の下で取得された粘性を定常状態液圧差に基づ
いて補正することが望ましい。ただし、設定時間が比較
的短く、差圧作用力の変化による開口面積の変化が小さ
い場合には、補正の必要はない。 (5)前記粘性取得手段が、前記液圧制御弁装置の高圧
部側の液圧に対する低圧部側の液圧の比率である低圧側
液圧比率を取得する低圧側液圧比率取得手段と、その低
圧側液圧比率取得手段によって取得された低圧側液圧比
率を前記差圧関連量として、前記粘性を取得する低圧側
液圧比率対応粘性取得手段とを含む(1) 項ないし(3) 項
のいずれか1つに記載の液圧制御装置。ここで、低圧側
液圧比率γ(=PL /PH )は、液圧制御弁装置の両側
の液圧差ΔP(=PH −PL )に基づいて、式 γ=1−ΔP/PH により取得することができる。この低圧側液圧比率γは
液圧差の変化に伴って変化する値であり、差圧関連量と
して使用することができる。作動液が液圧制御弁装置を
大きな流量で流れている過渡状態においては、作動液の
粘性が大きく流れ難い場合は粘性が小さく流れ易い場合
より、液圧差ΔP(=PH −PL ) が大きくなり、低圧
側液圧比率γ(=PL /PH ) が小さくなる。そして、
高圧側液圧と低圧側液圧とが接近するにつれて、つまり
液圧差ΔP(=PH −PL ) が小さくなるにつれて低圧
側液圧比率γは1に近づく。高圧側液圧と低圧側液圧と
のいずれか一方である制御液圧を、他方の側の液圧に近
づけること(両側の液圧差を0に近づけること)が液圧
制御の目標である場合には、低圧側液圧比率γが1に近
いほど目標に近づいたことになり、低圧側液圧比率を液
圧目標到達率と称することができる。また、上記他方の
液圧を目標液圧と称することができる。例えば、液圧制
御弁装置が、高圧部としてのマスタシリンダと低圧部と
してのホイールシリンダとの間に設けられる場合には、
低圧側液圧比率γはホイールシリンダ側液圧PW のマス
タシリンダ側液圧PM に対する比率(PW /PM )とな
る。作動液は粘性が大きい場合は小さい場合より流れ難
いため、過渡状態におけるホイールシリンダ側の液圧の
増加勾配が小さくなる。液圧制御弁装置において作動液
が流れ始めさせられてから設定時間経過後のホイールシ
リンダ液圧が小さくなり、低圧側液圧比率が小さくな
る。また、ホイールシリンダ側液圧とマスタシリンダ側
液圧とが同じ大きさになれば、低圧側液圧比率γは1に
なる。液圧制御弁装置が高圧部としてのホイールシリン
ダと低圧部としてのリザーバとの間に設けられる場合に
は、低圧側液圧比率γは、一定であるリザーバ側液圧P
R のホイールシリンダ側液圧PW に対する比率(PR /
PW )となり、ホイールシリンダ側液圧がリザーバ側液
圧PR になれば、低圧側液圧比率γは1になる。粘性が
大きい場合は小さい場合より、ホイールシリンダ液圧の
過渡状態における減圧勾配が小さくなる。液圧制御弁装
置において作動液が流れ始めさせられてから設定時間経
過後のホイールシリンダ液圧が大きくなり、低圧側液圧
比率が小さくなる。ここで、低圧側液圧および高圧側液
圧は、液圧制御弁装置に作動液が流れさせられている状
態における液圧であるが、必ずしも両者が変化している
状態である必要はなく、いずれか一方の液圧が、例えば
(4) 項で記載した定常状態における液圧のようにほぼ一
定であってもよい。例えば、液圧制御弁装置が、マスタ
シリンダとホイールシリンダとの間に設けられ、ブレー
キ操作部材が一定の操作力で操作されている状態におい
て、液圧制御弁装置に作動液が僅かに流れさせられれ
ば、ホイールシリンダ側の液圧PW は増加させられる
が、マスタシリンダ側の液圧PM はほぼ一定に保たれ
る。そのため、液圧制御弁装置において作動液が流れ始
めさせられてから設定時間経過後のホイールシリンダ液
圧PW*を取得すれば、設定時間経過後の低圧側液圧比率
γを(PW*/PM )として取得することができる。な
お、液圧制御弁装置がホイールシリンダとリザーバとの
間に設けられた場合においては、差圧関連量を、液圧制
御弁装置において作動液が流れ始めさせられた後のホイ
ールシリンダ側液圧の定常状態におけるホイールシリン
ダ側液圧に対する比率であるホイールシリンダ液圧変化
比率(PW*/PW )とすることもできる。粘性が大きい
場合は小さい場合より減圧勾配が小さくなるため、液圧
変化比率が大きくなる。 (6)前記粘性取得手段が、前記作動液が基準作動液
である場合の、前記差圧関連量と前記流量関連量との関
係を表す基準関係情報を記憶する基準関係情報記憶手段
と、その基準関係情報記憶手段に記憶された基準関係
情報と、前記液圧制御弁装置に実際に流れる作動液につ
いての差圧関連量と流量関連量との関係を表す検出関係
情報とに基づいて前記実際の作動液の粘性を取得する記
憶情報依拠粘性取得手段とを含む(1) 項ないし(5) 項の
いずれか1つに記載の液圧制御装置。前述のように、差
圧関連量,流量関連量および粘性の間には一定の関係が
ある。作動液として基準作動液、すなわち、粘性が基準
粘性(粘性係数が基準値)である作動液を使用して、目
的とする液圧制御弁装置における差圧関連量と流量関連
量との関係である基準関係情報を予め求めて、基準関係
情報記憶手段に記憶させておけば、その基準関係情報
と、実際の作動液を使用して検出した差圧関連量と流量
関連量との関係を表す検出関係情報とに基づいて、実際
の作動液の粘性の基準粘性からの隔たりを取得すること
ができ、作動液の粘性を取得することができる。 (7)前記粘性取得手段が、前記イグニッションスイッ
チがONに切り換えられてから設定時間以内において
は、取得値を前記作動液の粘性とし、その設定時間を越
えた場合には、一定値を前記作動液の粘性とする粘性切
換手段を含む(1) 項ないし(6) 項のいずれか1つに記載
の液圧制御装置。本項に記載の液圧制御装置において
は、イグニッションスイッチがONに切り換えられてか
ら設定時間以内においては粘性取得手段による実際の粘
性の取得が行われるが、設定時間を越えれば実際の粘性
の取得は行われず、一定値が実際の粘性として使用され
る。車両が長時間停止状態に保たれる場合には、ブレー
キも作動させられず、作動液の温度がほぼ大気温まで低
下させられる。この状態では作動液の粘性が大きくなっ
ているが、イグニッションスイッチがONに切り換えら
れて車両が走行させられれば、ブレーキもしばしば作動
させられるのが普通であるため、イグニッションスイッ
チがONに切り換えられてからの時間の経過につれて作
動液の温度が上昇し、粘性が減少する。そして、やがて
粘性がほぼ一定値に落ちつく。したがって、上記設定時
間を、イグニッションスイッチがONに切り換えられて
からごく短い時間(常温維持時間と称する)に設定して
おけば、大気温近傍における作動液の粘性を取得するこ
とができる。また、大気温近傍の粘性を取得すれば、そ
れより高い温度の作動液の粘性を推測することができ
る。それに対し、上記設定時間を、作動液の粘性がほぼ
一定値に落ちつくに十分な長さの時間(定常状態到達時
間と称する)に設定しておけば、粘性が変化する間は実
際の粘性の取得が行われる一方、粘性がほぼ一定値に落
ちついた後は実際の粘性の取得が行われず、一定値が作
動液の粘性として使用される。その一定値としては、現
実に作動液の粘性がほぼ落ちついた値を使用すること
も、予め定められている基準値とすることもできる。設
定時間を常温保持時間に設定する場合でも、定常状態到
達時間に設定する場合でも、無駄な粘性の取得を省略す
ることができる。その意味において、粘性切換手段を必
要時粘性取得手段と称することもできる。なお、本項に
記載の液圧制御装置においては、イグニッションスイッ
チがONに切り換えられてからの経過時間に基づいて粘
性の切換えが行われるが、経過時間とは別に、または、
経過時間と組み合わせて、ブレーキパッドの温度、エン
ジンの冷却水の温度、ブレーキ作動時間,回数等に基づ
いて切換えが行われるようにすることもできる。さら
に、順次取得される粘性がほぼ一定値に落ちついた後は
粘性の取得が省略されるようにすることもできる。 (8)前記粘性対応制御手段が、前記液圧制御弁装置に
対する制御規則を粘性に基づいて変更する粘性対応制御
規則変更手段を含む(1) 項ないし(7) 項のいずれか1つ
に記載の液圧制御装置。例えば、作動液の粘性が設定粘
性より大きい場合(粘性係数が設定粘性係数より大きい
場合)と小さい場合とで、液圧制御弁装置に対する制御
規則が変更されるようにするのである。この粘性対応制
御規則変更手段には、粘性が設定粘性より小さい場合に
は粘性に基づく制御を行わないで、大きい場合に行う高
粘性時粘性対応制御実行手段や低粘性時粘性対応制御解
除手段も含まれる。また、(7) 項に記載の液圧制御装置
において設定時間が定常状態到達時間とされる場合に
は、一定値に基づく制御を通常制御(粘性に基づかない
制御)と考えることもできる。そのため、粘性切換手段
を粘性対応制御規則変更手段の一種と考えることもでき
る。 (9)前記粘性対応制御手段が、前記液圧制御弁装置へ
の制御量を粘性に基づいて補正する粘性対応制御量補正
手段を含む(1) 項ないし(8) 項のいずれか1つに記載の
液圧制御装置。液圧制御弁装置に流れる作動液が基準作
動液の場合、すなわち、粘性係数が基準粘性係数(粘性
が基準粘性)の場合における供給電力(基準供給電力)
やON時間比率(基準ON時間比率)を予め定めてお
き、それら基準供給電力や基準ON時間比率が、実際の
作動液の粘性と上記基準作動液の粘性との粘性差に応じ
て補正されるようにすることができる。 (10)高圧部と低圧部との間に設けられた液圧制御弁
装置を制御することにより、これら高圧部と低圧部との
間の作動液の流れを制御し、高圧部と低圧部とのいずれ
か一方の液圧を制御する液圧制御方法であって、前記作
動液の粘性を、前記液圧制御弁装置の両側の液圧差に関
連する差圧関連量と前記作動液の流量に関連する流量関
連量とに基づいて取得する粘性取得工程と、その粘性取
得工程において取得した作動液の粘性に基づいて、前記
液圧制御弁装置を制御する粘性対応液圧制御弁装置制御
工程とを含む液圧制御方法。 (11)高圧部と低圧部との間に設けられ、それら高圧
部と低圧部との間の作動液の流れを制御する液圧制御弁
装置を流れる前記作動液の粘性を取得する粘性取得装置
であって、前記液圧制御弁装置の高圧部と低圧部との間
の液圧差に関連する差圧関連量を取得する差圧関連量取
得装置と、その差圧関連量取得装置によって取得された
差圧関連量と、前記作動液の流量に関連する流量関連量
とに基づいて前記粘性を取得する粘性取得手段とを含む
ことを特徴とする粘性取得装置(請求項2)。ハーゲン
・ポアジュイユの法則によれば、細管を流れる作動液の
粘性μと、細管の互いに長さL隔たった2か所の液圧勾
配dP(=ΔP/L)と、作動液の流量Qおよび細管の
半径aとの間には、次式 Q=π・dP・a4 /8μ で表される関係が成立する。この式は、差圧関連量の一
種である液圧勾配dPと流量関連量の一種である流量Q
および半径aに基づいて細管を流れる作動液の粘性を取
得し得ることを示している。そして、液圧制御弁装置の
弁の開口部を一種の細管と見なせば、差圧関連量と流量
関連量とに基づいて液圧制御弁装置を流れる作動液の粘
性を取得することができる。本項に記載の粘性取得装置
においては、粘性,差圧関連量および流量関連量の間の
関係を利用して、液圧制御弁装置を流れる作動液の粘性
が取得されるのであり、温度に基づいて取得されるので
はない。粘性が温度に基づいて取得するのではないた
め、前述のように、作動液の劣化に起因する粘性の低下
も検出でき、粘性の取得精度を向上させることができ
る。また、単なる細管を流れる作動液の粘性を取得する
のではないため、流量関連量の制御が可能であり、その
ことを利用して粘性の取得精度を向上させることができ
る利点もある。通常の液通路(細管)を流れる作動液の
粘性を取得する場合には、流量関連量は、液通路の内径
等、構造により予め決められてしまうが、液圧制御弁装
置においては、流量関連量を、供給電力の制御等により
所望の大きさに制御することができる。そのため、流量
関連量を複数の異なる大きさに制御し、それら複数の流
量関連量と、それら複数の流量関連量各々に対応する差
圧関連量とに基づいて、粘性を平均値取得等統計的な手
法を用いて精度よく取得することができる。 (12)前記差圧関連量取得装置が、定常状態における
前記液圧制御弁装置の両側の液圧差である定常状態液圧
差と、液圧制御弁装置において予め定められた制御条件
で作動液の流れが開始させられてから設定時間経過後の
前記高圧部側と低圧部側とのいずれか一方の側の液圧の
変化量とに基づいて粘性を取得する定常時粘性取得手段
を含む(11)項に記載の粘性取得装置。 (13)前記差圧関連量取得装置が、定常状態における
高圧部側の液圧に対する前記設定時間経過後の低圧部側
の液圧の比率を取得する低圧側液圧比率取得手段を含む
(12)項に記載の粘性取得装置。 (14)前記粘性取得手段が、前記作動液が基準作動液
である場合における前記差圧関連量と流量関連量との関
係を表す基準関係情報を記憶する基準関係情報記憶手段
と、その基準関係情報記憶手段によって記憶された基準
関係情報と、前記差圧関連量取得装置によって取得され
た差圧関連量と前記流量関連量との関係を表す検出関係
情報とに基づいて、実際の作動液の粘性を取得する記憶
情報依拠粘性取得手段とを含む(11)項ないし(13)項のい
ずれか1つに記載の粘性取得装置。 (15)前記(11)項ないし(14)項のいずれか1つに記載
の粘性取得装置と、その粘性取得装置によって取得され
た作動液の粘性に基づいて作動液の劣化の状態を取得す
る劣化状態推定手段とを含む作動液状態取得装置。作動
液の劣化の進行に伴い粘性が低下するため、粘性に基づ
いて劣化の進行の程度を取得することができる。粘性が
温度に基づいて取得される場合には、作動液の粘性を直
接取得するのではないため、作動液の劣化に起因する粘
性の低下を検出できない。それに対して、本項に記載の
作動液状態取得装置においては、粘性が差圧関連量と流
量関連量とに基づいて取得されるため、粘性に基づいて
劣化の程度を推定することができる。例えば、イグニッ
ションスイッチがONとされてから作動液の温度が実質
的に常温に維持される時間である常温維持時間内に粘性
を取得し、その取得した粘性が設定粘性より小さい場合
には、劣化が進行していると推定することができる。ま
た、粘性の取得を複数回行い、取得した複数の粘性がす
べて設定粘性より小さい場合に、劣化が進行していると
推定することもできる。当該作動液状態取得装置に、劣
化状態推定手段によって推定された作動液の劣化がひど
く、作動液の交換が必要な場合には、そのことを知らせ
る警告装置を設けることもできる。 (16)高圧部と低圧部との間に設けられた液圧制御弁
装置を流れる作動液の粘性を取得する粘性取得方法であ
って、前記液圧制御弁装置の高圧部と低圧部との間の液
圧差に関連する差圧関連量を取得する差圧関連量取得工
程と、その差圧関連量取得工程において取得された差圧
関連量と、前記作動液の流量に関連する流量関連量とに
基づいて前記粘性を取得する粘性取得工程とを含むこと
を特徴とする粘性取得方法。 (17)高圧部と低圧部との間に設けられ、それら高圧
部と低圧部との間の作動液の流れを制御する液圧制御弁
装置を流れる前記作動液の粘性を取得する粘性取得方法
であって、定常状態における前記液圧制御弁装置の高圧
部側の液圧を検出する高圧側液圧検出工程と、前記液圧
制御弁装置に予め定められた制御条件で作動液の流れを
開始させてから設定時間経過後の前記高圧部側と低圧部
側とのいずれか一方の側の液圧を検出する一方側液圧検
出工程と、前記高圧側液圧に対する前記一方の側の液圧
の比率と前記流量関連量との関係である検出関係と、作
動液が基準作動液である場合における同じ関係である基
準関係とに基づいて、実際の作動液の粘性を取得する粘
性取得工程とを含むことを特徴とする粘性取得方法。
【0004】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態である
液圧制御装置を備えた液圧ブレーキ装置を図面に基づい
て説明する。図1に示す液圧ブレーキ装置は、駆動源と
して内燃機関と電動モータとを共に含むハイブリッド車
両に用いられるものである。本実施形態のハイブリッド
車両の制動は、本液圧ブレーキ装置による制動と、図示
しない回生制動システムによる回生制動とによって行わ
れる。回生制動システムは、上記電動モータを発電機と
して機能させ、それによって発生させられた電気エネル
ギを蓄電装置に蓄積することによって、車両を制動する
システムである。電動モータの回転軸が外部からの力に
よって強制的に回転させられる際に、電動モータに発生
する起電力により蓄電装置を充電すれば、電動モータが
上記外部の力に対して負荷となり、制動力が発生する。
制動中の車両の運動エネルギの一部が電気エネルギに変
換され、蓄電装置内に蓄えられるのであり、このことに
よって車両を制動し得るのみならず、蓄電装置内の電気
的エネルギの消費を低減させることができ、無充電で走
行できる距離を延ばすことができる。
【0005】回生による制動力(回生制動力と称する)
の大きさは、常に一定であるわけではない。例えば、車
両の走行速度が極めて小さい場合は、回生制動力はほと
んど0になる。また、蓄電装置の容量が完全に満たされ
ている場合に、過充電による蓄電装置の劣化を防止する
ためにエネルギの回生を禁止する制御が行なわれること
が多く、回生が禁止されている期間中は回生制動力は0
になる。一方、車両の制動力の大きさは、回生制動力の
大きさとは直接関係のない操縦者の意図に応じた大きさ
に制御される必要がある。したがって、液圧ブレーキ装
置によって発生させるべき液圧制動力の大きさは、操縦
者の意図に応じた所要制動力から回生制動力を減じた大
きさであることになる。このような液圧ブレーキ装置の
制御を回生制動協調制御と称する。所要制動力の大きさ
は、ブレーキ操作部材の操作力,操作ストローク,操作
時間等ブレーキ操作状況から容易に知ることができる。
また、回生制動力の大きさに関する情報は回生制動シス
テムから得ることができる。
【0006】図3に操縦者の意図に応じた所要制動力
と、回生制動システムによる回生制動力と、液圧ブレー
キ装置による液圧制動力との関係の一例を概念的に示
す。図から明らかなように、ブレーキ操作状況から取得
される所要制動力が増大するにつれて、液圧制動力およ
び回生制動力が増大させられる。図においては、回生制
動力が液圧制動力よりやや遅れて増大を開始することと
されているが、これは不可欠なことではない。液圧制動
力が遅れて増大を開始するようにすることもできる。回
生制動力が車速等に応じて決まる最大値に達した後は、
所要制動力の増大は液圧制動力の増大により実現され
る。本実施形態においては、回生制動システムが回生制
動力をできる限り有効に利用するように構成されている
のである。制動が行われれば車速が漸減するため、回生
制動力も漸減するのであるが、図は、単純化のために回
生制動力が一定であるとして描かれている。車速が小さ
くなり、所要制動力が減少すれば、回生制動力が減少さ
せられる。車速が小さくなり、電動モータの回転数が小
さくなった場合には、大きな回生制動力を得るために多
くの電力が必要になったり、回生制動力の制御ハンチン
グが大きくなったりするため、回生制動力が減少させら
れ0とされるのである。回生制動力が0にされた後は液
圧制動力が所要制動力とほぼ等しい大きさを保って減少
することになる。回生制動力が0にされるのは、後述す
るが、ホイールシリンダの液圧を制御することが不可能
となった場合(減圧用リザーバに収容された作動液が多
くなり、ホイールシリンダから流出させられた作動液を
収容できなくなった場合)もある。
【0007】図1に示すように、液圧ブレーキ装置は、
マスタシリンダ12,ポンプ14,そのポンプ14から
供給される高圧の作動液を蓄積するアキュムレータ16
等を含んでいる。マスタシリンダ12およびポンプ14
には、マスタリザーバ18から作動液が供給される。マ
スタシリンダ12は、2つの加圧室F,Rを含むもので
あり、2つの加圧室には、ブレーキペダル19の踏み込
みに応じてほぼ同じ大きさの液圧が発生させられる。加
圧室Rには、上記ポンプ14,アキュムレータ16およ
びマスタリザーバ18等を含む定液圧源20が接続さ
れ、ブレーキペダル19の踏込みに伴って、定液圧源2
0から作動液が供給される。それにより、ブレーキペダ
ル19のストロークを軽減させることが可能となる。ア
キュムレータ16には、ポンプ14の作動によって、設
定圧力範囲(本実施形態においては、17MPa〜18
MPa≒174〜184kgf/cm2 の範囲)の作動
液が常時蓄えられるようにされている。アキュムレータ
16には圧力スイッチ21a,21bが取り付けられて
おり、これら圧力スイッチ21a,21bのヒステリシ
スを有するON,OFFに応じてポンプ14が起動,停
止させられるようになっているのであり、ポンプ14お
よびアキュムレータ16によって、ほぼ一定の液圧が供
給可能とされている。
【0008】マスタシリンダ12の加圧室Fには液通路
22を介して、左前輪23のホイールシリンダ24と、
右前輪25のホイールシリンダ26とが接続されてい
る。液通路22には、常開の電磁開閉弁30,32が設
けられ、ホイールシリンダ24,26とマスタリザーバ
18とを接続する液通路40の途中には、それぞれアン
チロック制御用減圧弁としての電磁開閉弁42,44が
設けられている。
【0009】一方、加圧室Rには、液通路48を介し
て、左後輪49のホイールシリンダ50と、右後輪51
のホイールシリンダ52とが接続されている。液通路4
8の途中には、加圧室R側から順に、リニアバルブ装置
56,アンチロック制御用増圧弁としての電磁開閉弁5
8およびプロポーショニングバルブ60が設けられてい
る。液通路48の、マスタシリンダ12とリニアバルブ
装置56との間の部分には液圧センサ62が、また、リ
ニアバルブ装置56と電磁開閉弁58との間の部分には
液圧センサ64が設けられている。液圧センサ62によ
って取得される液圧を入力液圧Pin,液圧センサ64に
よって取得される液圧を出力液圧Pout1と称する。これ
ら液圧センサ62,64によって、リニアバルブ装置5
6の前後の液圧が検出可能とされている。アンチロック
制御等が行われていない場合には、液圧センサ64によ
って取得される出力液圧Pout1は後輪のホイールシリン
ダ50,52の液圧Pr でもある。液圧センサ62およ
び64はコントローラ66に接続されている。コントロ
ーラ66は、後述するが、液圧センサ64によって検出
された出力液圧Pout1に基づいてリニアバルブ装置56
を制御する。なお、ホイールシリンダ50,52とマス
タリザーバ18とを接続する液通路70の途中にアンチ
ロック制御用減圧弁としての電磁開閉弁72が設けられ
ている。
【0010】液通路48のリニアバルブ装置56と電磁
開閉弁58との間の部分には、液通路76が接続されて
いる。液通路76は、リニアバルブ装置56とホイール
シリンダ24,26とを接続する通路であり、液通路7
6の途中には、常閉の電磁開閉弁80が設けられてい
る。また、電磁開閉弁80のホイールシリンダ24,2
6側には、それぞれアンチロック制御用増圧弁としての
電磁開閉弁84,86が設けられている。液通路76
の、電磁開閉弁80と電磁開閉弁84,86との間の部
分には、液圧センサ88が接続されている。液圧センサ
88による測定結果を、出力液圧Pout2とする。出力液
圧Pout2は、液圧センサ64の出力が正常か否かの監視
に使用される。電磁開閉弁80が開状態にある場合に、
液圧センサ64により検出された出力液圧Pout1の値が
出力液圧Pout2の値から離れている場合に液圧センサ6
4の出力が異常である可能性があると判定されるのであ
る。これは、電磁開閉弁80が開状態にあれば、液圧セ
ンサ64と液圧センサ88とが互いに連通した状態とな
り、液圧センサ64,88が共に正常であれば、出力液
圧Pout1と出力液圧Pout2とがほぼ同じになるはずであ
るからである。本実施形態においては、この判定結果に
基づいて操縦者に液圧センサ異常が報知されるが、この
報知と共に、あるいは報知に代えて、コントローラ66
によるリニアバルブ装置の制御が禁止されるようにして
もよい。これら複数の各電磁開閉弁30,32,42,
44,58,72,80,84および86のソレノイド
は、コントローラ66からの指令に基づいて制御され
る。
【0011】上記、常開の電磁開閉弁58をバイパスす
るバイパス通路の途中には、逆止弁90が設けられ、電
磁開閉弁84,86をそれぞれバイパスするバイパス通
路の途中には、それぞれ逆止弁92,94が設けられて
いる。これらの逆止弁90,92および94は、対応す
るホイールシリンダからマスタシリンダ12に向かう作
動液の流れは許容するが、その逆向きの流れは阻止する
向きに取り付けられている。これら逆止弁90,92,
94により、電磁開閉弁58,84,86が閉状態にあ
る場合においてブレーキペダル19の踏込みが緩められ
た場合に、ホイールシリンダの作動液をマスタシリンダ
12に早急に戻すことが可能となる。また、各車輪2
3,25,49,51には、これら車輪の回転速度を検
出する車輪速センサ110〜116が設けられている。
車輪速センサ110〜116によって検出された車輪速
等に基づいて制動スリップ状態等が検出され得る。
【0012】図2は、図1に示したリニアバルブ装置5
6の構成を概略的に示す系統図である。リニアバルブ装
置56は、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ
152,減圧用リザーバ154および逆止弁156,1
58を含んでいる。増圧リニアバルブ150は、液通路
48の途中に設けられ、減圧リニアバルブ152は、液
通路48と減圧用リザーバ154とを接続する液通路1
60の途中に設けられている。増圧リニアバルブ150
をバイパスするバイパス通路の途中には、逆止弁156
が、ホイールシリンダからマスタシリンダ12に向かう
作動液の流れは許容するが、その逆の流れは阻止する向
きに設けられている。減圧リニアバルブ152をバイパ
スするバイパス通路の途中には、逆止弁158が減圧用
リザーバ154からマスタシリンダ12に向かう作動液
の流れは許容するが、その逆の流れは阻止する向きに設
けられている。
【0013】減圧用リザーバ154は、ホイールシリン
ダから流出させられた作動液を収容するものである。そ
の作動液を収容する液収容室の容積がリザーバ容量であ
り、リザーバ容量は、減圧用リザーバ154が一制動中
に収容し得る作動液の最大量と等しくなる。そして、本
実施形態においては、リザーバ容量が、ホイールシリン
ダ24,26,50,52の容量の和より小さくされて
いる。したがって、前述のように、減圧用リザーバ15
4に収容された作動液量が多くなるとホイールシリンダ
液圧を減圧すること、すなわち、制御することが不可能
となり、回生制動力が0とされるのである。ここで、ホ
イールシリンダ24,26,50,52の容量は、ホイ
ールシリンダが非作動状態から作動状態までに収容し得
る作動液の最大量を意味することとする。
【0014】増圧リニアバルブ150は、シーティング
弁190と、電磁付勢装置194とを含むものである。
シーティング弁190は、弁子200と、弁座202
と、弁子200と一体的に移動する被電磁付勢体204
と、弁子200が弁座202に着座する向きに被電磁付
勢体204を付勢する付勢手段としての弾性部材として
のスプリング206(以下、このスプリング206の弁
子200を弁座202に着座させる方向の付勢力をスプ
リングの付勢力と称する)とを含んでいる。また、電磁
付勢装置194は、ソレノイド210と、そのソレノイ
ド210を保持する樹脂製の保持部材212と、第一磁
路形成体214と、第二磁路形成体216とを含んでい
る。ソレノイド210の巻線の両端に電圧が印加される
と、ソレノイド210の巻線に電流が流れ、磁界が形成
される。磁束は、その多くが、第一磁路形成体214,
被電磁付勢体204,第二磁路形成体216と被電磁付
勢体204との間のエアギャップおよび第二磁路形成体
216を通る。ソレノイド210の巻線に印加される電
圧を変化させれば、被電磁付勢体204と第二磁路形成
体216との間に作用する磁気力も変化する。この磁気
力の大きさは、ソレノイド210の巻線に印加される電
圧の大きさと共に増加し、それら印加する電圧と磁気力
との関係は予め知ることができる。したがって、印加電
圧をその関係に従って連続的に変化させることにより、
被電磁付勢体204を付勢する力(上述の磁気力のうち
の被電磁付勢体204を第二磁路形成体216に接近さ
せる方向の力のことであり、以下、電磁駆動力と称す
る。電磁駆動力は、スプリングの付勢力とは反対向きの
力である)の大きさを任意に変更することができる。な
お、被電磁付勢体204の第一磁路形成体216に対向
する面には、係合突部220が形成され、それに対する
第一磁路形成体216の被電磁付勢体204に対向する
部分には、係合凹部222が形成されており、被電磁付
勢体204と第一磁路形成体216との相対位置の変化
に応じて係合突部220と係合凹部222との間の対向
部の面積が変化させられる。
【0015】被電磁付勢体204と第二磁路形成体21
6とによって形成される磁路の磁気抵抗は、被電磁付勢
体204と第二磁路形成体216との軸方向の相対的な
位置に依存して変化する。具体的には、被電磁付勢体2
04と第二磁路形成体216との軸方向の相対位置が変
化すれば、被電磁付勢体204の嵌合突部220と第二
磁路形成体216の嵌合凹部222との微小間隙を隔て
て互いに対向する円筒面(嵌合突部220の外周面と嵌
合凹部222の内周面とのうち互いに対向する部分)の
面積が変化する。もし、被電磁付勢体204と第二磁路
形成体216とが単純に端面同士で微小間隙を隔てて対
向しているのであれば、被電磁付勢体204と第二磁路
形成体216との軸方向の距離の減少、すなわち接近に
伴って磁気抵抗が加速度的に減少し、両者の間に作用す
る磁気力が加速度的に増大する。それに対し、本実施形
態の増圧リニアバルブ150においては、被電磁付勢体
204と第二磁路形成体216との接近に伴って、嵌合
突部220と嵌合凹部222との上記円筒面の面積が増
加し、この円筒面を通る磁束が増加する一方、被電磁付
勢体204の端面と第二磁路形成体216の端面とのエ
アギャップを通る磁束が減少する。その結果、ソレノイ
ド210に印加される電圧がそれほど大きくない範囲内
において一定であれば、被電磁付勢体204を第二磁路
形成体216方向へ付勢する磁気力(電磁駆動力)が、
被電磁付勢体204と第二磁路形成体216との軸方向
の相対的な位置に関係なくほぼ一定となる。一方、スプ
リング206による被電磁付勢体204を第二磁路形成
体216から離間する方向へ付勢する付勢力(スプリン
グの付勢力)は、被電磁付勢体204と第二磁路形成体
216との接近に伴って増大する。したがって、入口側
の液圧と出口側の液圧との液圧差に基づく付勢力(この
液圧差に応じて作用する作用力を、差圧作用力と称す
る)が作用していない状態では、被電磁付勢体204の
第二磁路形成体216方向への移動が、上記スプリング
206の付勢力と電磁駆動力とが等しくなることにより
停止することとなる。
【0016】図4に示すように、増圧リニアバルブ15
0の弁子200には、スプリング206の付勢力Fp ,
差圧作用力Fd ,電磁駆動力Fs が作用し、差圧作用力
Fdと電磁駆動力Fs との和が、スプリングの付勢力Fp
より大きくなると弁子200が弁座202から離間さ
せられる。電磁駆動力Fs が0の場合には、差圧作用力
Fd がスプリングの付勢力Fp より大きくなれば離間さ
せられるが、この時の増圧リニアバルブ150の液圧差
(開弁圧)は、本実施形態においては、約3MPa(約
30.6kgf/cm2 )とされている。
【0017】図5(a)には、増圧リニアバルブ150
における電磁駆動力Fs に対応した印加電圧Va と差圧
作用力Fd に対応した液圧差ΔPinとの関係が示されて
いる。印加電圧Va は、増圧リニアバルブ150の前後
における液圧差ΔPin( ΔPin=Pin−Pout1) が生じ
ている場合における最小開弁電圧であり、液圧差ΔPin
(差圧作用力)が大きい場合は印加電圧Va (電磁駆動
力)が小さくても開弁させることが可能なのである。こ
こで、液圧差ΔPinは液圧センサ62,64によってそ
れぞれ検出された入力液圧と出力液圧との差であるた
め、マスタシリンダ液圧が一定であれば、液圧差が大き
い場合は小さい場合よりホイールシリンダ液圧が小さい
ことになる。すなわち、ホイールシリンダ液圧が小さい
場合に増圧させる場合には印加電圧は小さくてよいが、
ホイールシリンダ液圧が大きい場合に増圧させる場合に
は、大きな印加電圧が必要となる。
【0018】弁子200が弁座202から離間させられ
れば、これらの間の隙間を経て作動液が流れる。図6に
は、開度(開口面積の最大値に対するその時点における
開口面積の比率)Avaと印加電圧Va との関係が示され
ており、液圧差が同じ場合には、印加電圧Va が大きい
場合は小さい場合より開度Avaが大きくなり、大きな流
量で作動液がマスタシリンダ側からホイールシリンダ側
へ流れさせられる。しかし、開度Avaが同じであって
も、作動液の粘性が異なると流量が異なり、図7に示す
ように、増圧リニアバルブ150を開状態に切り換えて
から設定時間後の入力液圧Pinに対する出力液圧Pout1
の比率が異なってしまう。粘性が大きい場合は小さい場
合より流れ難いため、比率γが小さくなるのであり、開
度Avaが同じであっても、ホイールシリンダ液圧の増加
勾配が小さくなり、設定時間後の出力液圧Pout1が小さ
くなる。換言すれば、粘性が大きい場合に小さい場合よ
り開度を大きくすれば、ホイールシリンダ液圧の増加勾
配をほぼ同じ大きさとすることが可能となる。
【0019】減圧リニアバルブ152も、基本的には増
圧リニアバルブ150と同じものであるが、後述するよ
うに、弾性部材としてのスプリング224の付勢力が増
圧リニアバルブ150のスプリング206と異なってい
る。減圧リニアバルブ152の構成のうち、増圧リニア
バルブ150と同様であるものには、同じ符号を付して
示して説明を省略する。また、減圧リニアバルブ152
における開度も、減圧リニアバルブ前後における液圧差
ΔPout (ΔPout =Pout1−Pres )が同じであれ
ば、印加電圧に基づいて決まる。ここで、減圧リニアバ
ルブ152の減圧用リザーバ154の側の液圧Pres は
ほぼ大気圧に保たれるため、液圧差ΔPout は、Pout1
と同じ大きさとなる。また、減圧リニアバルブ152に
おける弁子200と弁座202との間の隙間の開口面積
の最大開口面積に対する比率は開度Avrで表す。
【0020】減圧リニアバルブ152についても同様
に、弁子200には、スプリング224の付勢力Fp ,
差圧作用力Fd ,電磁駆動力Fs が作用する。また、減
圧リニアバルブ152の開弁圧は、18MPa(≒18
4kgf/cm2 。定液圧源20により供給される作動
液の最大液圧)よりも大きくされている。スプリング2
24による付勢力が、スプリング206によるそれより
も大きく(約6倍)されているのである。減圧リニアバ
ルブ152における弁子200に作用する作動液の液圧
の最大値は、ポンプ14により供給され、また、アキュ
ムレータ16に蓄えられる最大の液圧である。したがっ
て、操縦者の踏力による液圧がこの最大液圧を上回っ
て、減圧リニアバルブ152の入力側のポートに作用す
る作動液の液圧が、減圧リニアバルブ152の開弁圧を
上回ることは事実上ないと考えてよい。
【0021】図5(b)に示すように、減圧リニアバル
ブ152の前後における液圧差ΔPout が大きい場合は
小さい場合より印加電圧Vr が小さくても開弁させるこ
とができる。ここで、液圧差は、ホイールシリンダ側液
圧と減圧用リザーバ側液圧との差であるため、液圧差が
大きい場合は小さい場合よりホイールシリンダ液圧は大
きいことになる。そのため、ホイールシリンダ液圧を減
圧する場合において、ホイールシリンダ液圧が大きい場
合は印加電圧が小さくてよいが、ホイールシリンダ液圧
が小さい場合は、大きな電圧を印加する必要がある。ま
た、開度が同じであっても、作動液の粘性が大きい場合
は小さい場合より作動液が流れ難いため、ホイールシリ
ンダ液圧の低下勾配が小さくなる。そのため、液圧低下
勾配(流出流量)を同じにする場合には、作動液の粘性
が大きい場合は小さい場合より開度を大きくする必要が
ある。
【0022】一方、液通路22には液圧センサ228
(図1参照)が接続されており、加圧室Fの液圧が検出
される。加圧室Fの液圧は、運転者の意図する目標制動
力に対応する液圧とすることができる。また、液通路2
2には、ストロークシミュレータ230が接続され、電
磁開閉弁30および32が共に閉状態とされた状態にお
いてブレーキペダル19のストロークが殆ど0になるこ
とが回避されている。本液圧制動システムには、ブレー
キペダル19が踏み込まれた状態にあることを検出する
ブレーキスイッチ250および図示しないブレーキパッ
ド表面の温度を検出するパッド温度検出装置252が設
けられている。ブレーキパッドの温度に応じて作動液温
度が推定される。
【0023】前記コントローラ66には、上記各液圧セ
ンサ62,64,88,228、各車輪23,25,4
9,51の車輪速度を各々検出する車輪速センサ110
〜116および上記スイッチ250,252等が接続さ
れ、出力部には、リニアバルブ装置56のソレノイド等
が図示しない駆動回路を介して接続されている。また、
ROMには、図9のフローチャートで表される粘性取得
プログラム,図10のフローチャートで表されるリニア
バルブ装置制御プログラム,図5〜7のグラフで表され
るテーブル等が格納されている。
【0024】ブレーキペダル19が踏み込まれれば、加
圧室F,Rにそれぞれほぼ同じ大きさの液圧が発生させ
られ、ホイールシリンダ24,26およびホイールシリ
ンダ50,52に供給される。液圧ブレーキ装置が正常
に作動している状態において、回生制動協調制御が行な
われる場合には、電磁開閉弁30,32が閉状態、電磁
開閉弁80が開状態とされ、また、他の電磁開閉弁は図
1に示した状態とされる。ホイールシリンダ24,26
への作動液の供給が、マスタシリンダ12の加圧室Fか
ら液通路22を経て行なわれるのではなく、加圧室Rか
ら液通路48を経て行なわれるのであって、ホイールシ
リンダ50,52と同様にリニアバルブ装置56によっ
て制御された作動液が供給される。すべてのホイールシ
リンダの液圧が、リニアバルブ装置56の増圧リニアバ
ルブ150および減圧リニアバルブ152の制御により
制御されることになる。減圧時においては、ホイールシ
リンダから作動液が流出させられ、減圧用リザーバ15
4に収容される。回生制動協調制御とアンチロック制御
とが並行して行われる場合には、リニアバルブ装置56
によって制御された作動液に基づいて、電磁開閉弁5
8,72,84,86,42,44が開状態と閉状態と
に切り換えられることにより、ホイールシリンダの液圧
が、各車輪23,25,49,51の制動スリップ状態
がほぼ適正状態に保たれるように制御される。
【0025】回生制動協調制御においては、リニアバル
ブ装置56が、液圧センサ64によって検出された出力
液圧Pout1が目標液圧Pref に近づくように制御され
る。増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152
の各ソレノイド210への印加電圧が制御されるのであ
る。目標液圧Pref は液圧センサ228の出力値である
マスタシリンダ液圧Pmc(操縦者の意志に対応する)か
ら、回生制動による制動力に対応する液圧を減じた値と
して取得される。増圧リニアバルブ150のソレノイド
に印加される電圧Va と減圧リニアバルブ152のソレ
ノイドに印加される電圧Vr とは、それぞれ、図8に示
すように、一定電圧Vca,Vcrに変化電圧Vga,Vgrを
加えた大きさとされる。変化電圧Vga,Vgrは、目標液
圧Pref の変化分に定数GAINa ,GAINr を乗じ
た大きさとされる。増圧制御においては、ホイールシリ
ンダ液圧の増圧につれて液圧差ΔPinが小さくなるが、
さらに、ホイールシリンダ液圧を増圧する必要がある場
合には、増圧リニアバルブ150を開状態に保たなけれ
ばならず、前述のように、大きな電圧を印加する必要が
生じるのである。減圧リニアバルブ152においても同
様に、ホイールシリンダ液圧の減圧に伴って液圧差ΔP
out が小さくなるが、さらに減圧する必要がある場合に
は、減圧リニアバルブ152を開状態に保つのに必要な
印加電圧は大きくなるのである。
【0026】増圧リニアバルブ150に印加される一定
電圧Vcaは、図5(a)のグラフで表されるテーブルに
基づいて決定される。増圧制御が開始される場合(直
前)は、増圧リニアバルブ150のソレノイド210へ
の印加電圧は0とされ、閉状態にある。しかし、増圧リ
ニアバルブ150を開状態に切り換えるには、ソレノイ
ド210に最小開弁電圧以上の電圧を印加する必要があ
る。最小開弁電圧の大きさは、増圧制御開始時の液圧差
ΔPin、すなわち、減圧制御(あるいは保持制御)終了
時の液圧差ΔPinに基づいて決まる。ここで、増圧リニ
アバルブ150のソレノイド210への印加電圧を0か
ら増加させると、最小開弁電圧に達するまで閉状態に保
たれることになり、その分、増圧遅れが生じる。この増
圧遅れを小さくするために、一定電圧として、減圧制御
終了時の増圧リニアバルブ150の前後の液圧差に応じ
た最小開弁電圧が一定電圧とされ、一定電圧に基づいて
印加電圧が決定されるのである。減圧リニアバルブ15
2についても同様に、増圧制御が終了した時点における
減圧リニアバルブ152の前後の液圧差に応じた一定電
圧Vcrが図5(b)のグラフで表されるテーブルに基づ
いて決定されるため、減圧制御開始時に、減圧リニアバ
ルブ152が直ちに開状態に切り換えられ、減圧遅れが
小さくされる。
【0027】このように、一定電圧Vca,Vcrの大きさ
は、図5(a),(b)のグラフに基づいて決められる
が、本実施形態においては、作動液の粘性が大きい場合
には、一定電圧の大きさが、後述するように、リニアバ
ルブ装置56を流れる作動液の粘性に基づいて決められ
る。印加電圧の大きさが粘性に基づいて決められること
により、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ1
52の開度が粘性に基づいて制御され、粘性の液圧変化
勾配への影響を小さくし、液圧制御精度の向上を図るこ
とが可能となる。
【0028】まず、作動液の粘性の取得について説明す
る。本実施形態においては、高圧部と低圧部との液圧差
は、増圧リニアバルブ150の前後の液圧をそれぞれ検
出する2つの液圧センサ62,64によって検出された
入力液圧Pinおよび出力液圧Pout1と、増圧リニアバル
ブ150における開度Avaとに基づいて取得される。ま
た、作動液の流量は開度Avaに応じて決まるため、開度
Avaが流量関連量とされる。運転者によりブレーキペダ
ル19が踏み込まれ、定常状態に達すれば、増圧リニア
バルブ150のマスタシリンダ側とホイールシリンダ側
との液圧差は2MPa程度となる。定常状態における液
圧差は液圧センサ62,64の出力信号に基づいて取得
することができる。前述のように、増圧リニアバルブ1
50のソレノイド210に電圧が印加されていない場合
においては、差圧作用力が3MPaに達すると、開弁さ
せられるようにされているため、定常状態における液圧
差が2MPa程度となるのである。このように、リニア
バルブ装置56の構造により定常状態における液圧差が
ほぼ決まっている場合には、液圧差を検出する必要は必
ずしもない。
【0029】定常状態にある場合においては、増圧リニ
アバルブ150には電圧は印加されていない。この状態
において、ソレノイド210に予め定められた大きさの
電圧を印加すれば、印加電圧に応じた開度Avaで作動液
がマスタシリンダ側からホイールシリンダ側へ向かって
流れさせられ、出力液圧Pout1が時間の経過に伴って増
加させられる。定常状態における液圧差はほぼ一定であ
るため、印加電圧が同じであれば、開度もほぼ同じにな
るのである。それに対して、入力液圧Pinは、運転者の
ブレーキペダル19の踏力がほぼ一定に保たれるため、
一定である。したがって、作動液が流れ始めてから設定
時間後の液圧差は、定常状態における定常状態液圧差と
設定時間経過後の出力液圧Pout1の変化量(増加量)と
に基づいて取得することができる。
【0030】ハーゲン・ポアジュイユの法則によれば、
これら液圧差と開口面積とに基づいて作動液の粘性を取
得することができる。開口面積が同じ場合には、作動液
の粘性が大きい場合は小さい場合より流れ難いため、出
力液圧Pout1の変化勾配が小さくなり、設定時間経過後
の液圧差ΔPinが大きくなる。作動液が基準作動液であ
り、粘性が基準粘性である場合のこれら液圧差と開口面
積との基準関係を予め記憶させておき、基準関係と、実
際の作動液における液圧差と開口面積との検出関係とに
基づいて、実際の作動液の粘性を取得することが可能で
ある。本実施形態においては、液圧差がそのまま使用さ
れるのではなく、液圧差を定常状態における入力液圧P
inで除した値を1から引いた値(液圧比率)と開口面積
との関係に基づいて粘性が取得されるようにされてい
る。液圧比率は、液圧差に基づいて求めなくても、定常
状態における入力液圧Pinに対する設定時間経過後の出
力液圧Pout1*の比率としても同じである(γ=Pout1
*/Pin)。粘性が大きい場合は小さい場合に比較し
て、液圧差は大きくなるが、液圧比率γは小さくなる。
粘性が大きい場合は小さい場合より、ホイールシリンダ
液圧の増加勾配が小さいため、設定時間経過後の出力液
圧Pout1*がそれほど大きくならないのである。
【0031】前述のように、定常状態においては、液圧
差はほぼ一定であるため、図4に示す差圧作用力Fd は
ほぼ一定であり、図6に示すように開度Avaは印加電圧
によって決まることになる。また、リニアバルブ装置5
6を流れる作動液が基準作動液である場合(粘性係数が
基準値μ*である場合)における、設定時間経過後の出
力液圧Pout1*の入力液圧Pinに対する液圧比率γと開
度Avaとの基準関係(図7参照)が予め記憶されてい
る。そのため、この基準関係と、実際に検出された液圧
比率γおよび開度との検出関係とに基づけば、実際の作
動液の粘性を求めることが可能となる。また、定常状態
液圧差はほぼ一定であるが、スプリング206のへたり
等に起因して変化する可能性があるため、定常状態液圧
差に基づいて粘性を補正することもできる。定常状態液
圧差が大きい場合は小さい場合より差圧作用力Fd が大
きくなるため、設定時間後の液圧比率γが大きくなり、
粘性が実際より小さい値に検出されてしまう。そのた
め、定常状態液圧が大きい場合には粘性を取得値より大
きい値に補正するのである。また、印加電圧が同じであ
っても、液圧差が異なると開度が異なるため、液圧差に
基づいて開度を補正し、その補正された開度と液圧比率
γとに基づいて粘性が取得されるようにしてもよい。液
圧差が大きい場合は開度が大きくなり、粘性が小さい値
に検出されてしまうため、大きい値に補正する。なお、
本実施形態においては、開度が流量関連量とされたが、
その他、印加電圧の大きさを流量関連量とすることもで
きる。図6に示すように、開度は印加電圧に基づいて一
義的に決まるからである。また、流量関連量を流量自体
とすることもできる。流量は、開口面積,液密度等に基
づいてよく知られた式に従って求めることが可能であ
る。
【0032】粘性の取得は、定常状態にある場合に行わ
れる。例えば、イグニッションスイッチがOFFからO
Nにされ、かつ、ブレーキペダル19が操作状態にある
場合、イグニッションスイッチがOFFからONにされ
た後、最初にブレーキペダル19が操作された場合等に
は、定常状態にあると推定される。定常状態において
は、リニアバルブ装置56に作動液が殆ど流れておら
ず、液圧差が一定の大きさに保たれる。これらの場合
は、車両が走行中にブレーキペダル19が踏み込まれた
わけではないため踏力が一定しており、かつ、踏み込ま
れている状態が継続させられるからである。ブレーキペ
ダル19を踏み込んでいる状態で、イグニションスイッ
チをONにする運転者が多いが、そうでなくても、シフ
トポジションを、パーキング位置からドライブ位置に切
り換える場合にはブレーキペダル19が踏み込まれてい
ないとシフトレバーを操作できなくなっている車両が多
く、シフトレバーを操作する際には、ブレーキペダル1
9が踏み込まれることになるのである。また、イグニッ
ションスイッチがONにされた時だけでなく、停止信号
等により、車両が停止状態にある場合にブレーキペダル
19が踏み込まれている場合にも、定常状態になる。い
ずれにしても、走行中に制動が行われた場合(制動中)
に粘性の取得が行われるわけではないため、増圧リニア
バルブ150の開度が粘性の取得のために変化させられ
ても運転者の違和感を軽減することができる。しかし、
イグニッションスイッチがONにされてからそれほど長
い時間が経過していない間においては、作動液の温度が
比較的安定しており、粘性が安定しているため、粘性を
精度よく取得し得る。
【0033】イグニッションスイッチがONにされた直
後には、リニアバルブ装置56への印加電圧は0であ
る。そのため、ブレーキペダル19の踏み込まれた後に
定常状態に達すれば、液圧センサ62,64によって検
出された入力液圧Pinと出力液圧Pout1との液圧差ΔP
inは、ほぼ2MPa である。増圧リニアバルブ150の
ソレノイド210に予め定められた大きさの電圧が印加
されれば、それに応じた開度Avaで作動液が流れさせら
れる。液圧差がほぼ同じ場合には、印加電圧がほぼ一定
であれば、開度もほぼ一定となる。作動液の流れに伴っ
て出力液圧Pout1が大きくなり、液圧比率γが小さくな
る。増圧リニアバルブ150はオリフィスとしての機能
も兼ねるのである。増圧リニアバルブ150のソレノイ
ド210に電圧が印加されてから設定時間後の出力液圧
Pout1の入力液圧Pinに対する液圧比率γが求められ、
その液圧比率γと開度Avaとの検出関係と、図7のグラ
フで表されるテーブルの基準関係とに基づけば、作動液
の粘性を取得することができる。
【0034】粘性の取得は、図9のフローチャートで表
される粘性推定プログラムの実行に従って行われる。ス
テップ1(以下、S1と略称する。他のステップについ
ても同様とする)において、定常状態にあるか否かが判
定される。すなわち、ブレーキペダル19が踏み込まれ
ているか否か、イグニッションスイッチがOFFからO
Nに切り換わったか否か、または、ブレーキペダル19
が踏み込まれたのが、イグニッションスイッチがOFF
からONにされてから初回か否かが判定される。いずれ
か一方の条件が満たされれば、S2において、液圧セン
サ62,64によってそれぞれ検出される入力液圧Pi
n,出力液圧Pout1が読み取られ、定常状態における定
常状態液圧差が取得される。S3において、増圧リニア
バルブ150のソレノイド210に予め定められた大き
さの電圧が印加される。S4において、設定時間後の出
力液圧Pout1が読み込まれる。設定時間経過後の液圧比
率γが取得され、S5において、図7のグラフで表され
るテーブルに基づいて作動液の粘性が取得される。開度
と液圧比率γとの検出関係と基準関係とを比較して、検
出関係が基準関係より粘性が大きい側に、どの程度隔た
っているかを求めれば、作動液の粘性の基準値からの隔
たりの大きさを検出することができる。図7に示すよう
に、検出関係γAの基準関係γNからの隔たりが大きい
ほど、作動液の粘性の基準値からの隔たりが大きいこと
がわかるのである。ここで、定常状態液圧差が2MPa
から大きく隔たっている場合には、粘性を補正すること
もできる。液圧差が2MPaより大きい場合には、差圧
作用力が大きく開度が大きいため、実際の作動液の粘性
より小さい値として取得される。そのため、粘性を大き
くするのであり、逆に、液圧差が小さい場合には粘性を
小さくするのである。
【0035】このように、本実施形態においては、作動
液の粘性が、リニアバルブ装置56の前後の液圧差に基
づいて取得されるのであり、作動液の温度に基づいて取
得されるわけではない。そのため、作動液の温度を検出
する専用の作動液温センサ等が不要となり、その分コス
トアップを回避することができる。本実施形態において
は、差圧関連量,流量関連量を取得するための専用のセ
ンサ等は不要なのである。また、作動液の粘性を精度よ
く取得することができる。作動液の粘性は、温度によっ
て変わるが、劣化の程度によって変わる場合もある。温
度に基づいて取得される場合は、作動液が劣化して粘性
が小さくなっていても、温度が低い場合は粘性が大きい
と誤って取得されてしまう。それに対して、差圧関連
量,流量関連量に基づいて取得される場合には、劣化に
起因する粘性の低下も取得できるため、粘性の取得精度
の低下を抑制し得るのである。従来の粘性取得装置にお
いては、作動液の温度を直接検出するのは困難であるた
め、ブレーキパッドの温度,エンジンにおける冷却水の
温度,イグニッションスイッチがONに切り換えられて
からの経過時間等に基づいて推定されていたが、このよ
うな推定温度に基づいて粘性を取得する場合に比較し
て、取得精度の向上を図ることが可能となる。
【0036】なお、上記実施形態においては、入力液圧
Pinに対する設定時間後の出力液圧Pout1*の液圧比率
γに基づいて粘性が取得されていたが、設定時間後
の、入力液圧Pin*と出力液圧Pout1*との液圧差に基
づいて取得したり、定常状態における出力液圧Pout1
と設定時間経過後における出力液圧Pout1*との液圧差
である液圧変化量(Pout1−Pout1*)に基づいて取得
したり、これら液圧差の定常状態における入力液圧に
対する比率に基づいて取得したりすることができる。粘
性が小さい場合は大きい場合より出力液圧Pout1の変化
勾配が大きいため、設定時間後の出力液圧が大きくな
り、出力液圧ΔPout1の変化量も大きくなるのである。
また、上記実施形態においては、粘性が定常状態液圧差
に基づいて補正可能とされていたが、補正可能とする必
要は必ずしもない。定常状態液圧差のバラツキはそれほ
ど大きくないからである。
【0037】さらに、上記実施形態においては、ソレノ
イド210に予め定められた大きさの電圧が印加された
場合における液圧比率γに基づいて粘性が取得された
が、複数の異なる大きさの電圧が印加された場合におけ
るそれぞれの液圧比率γに基づいて取得されるようにし
てもよい。その場合には、上記S1〜5が複数回実行さ
れ、これらの粘性の平均的な値が作動液の粘性とされ
る。また、粘性が、イグニッションスイッチがONに切
り換えられてから長時間経過する以前に取得されるよう
にすることは不可欠ではなく、停車時に行われるように
してもよい。その場合には、S1において、車両がブレ
ーキペダル19が踏み込まれた状態で設定時間以上停止
状態(車速0)に保たれたか否かが判定されることによ
り、定常状態にあるか否かが判定される。
【0038】同様に、減圧リニアバルブ152を流れる
作動液の粘性を取得することも可能である。この場合に
は、減圧リニアバルブ152が設定時間だけ開状態に保
たれ、設定時間経過後の出力液圧Pout1*が検出され、
液圧比率γ(=Prev /Pout1*)が取得される。リザ
ーバ側液圧Prev は常時大気圧に保たれるため、1とな
る。そして、作動液が基準作動液の場合の、液圧比率γ
と開口面積との基準関係を増圧リニアバルブ150にお
ける場合と同様に記憶させておけば、基準関係と検出関
係とに基づいて作動液の粘性を取得することができる。
なお、減圧リニアバルブ152については、定常状態に
おける出力液圧に対する設定時間経過後における出力液
圧の比率γ′に基づいて粘性を取得することもできる。
粘性が大きい場合は小さい場合より出力液圧Pout1の変
化勾配が小さいため、液圧比率γ′が大きくなる。
【0039】次に作動液の粘性の大きさに基づく制御に
ついて説明する。前述のように、印加電圧は、図5のグ
ラフで表されるテーブルに従って求められた一定電圧V
caと変化電圧Vgaとの和の大きさとされるが、本実施形
態においては、粘性が大きいと推定された場合には、一
定電圧Vcaが作動液の粘性に基づいて決定される。すな
わち、式 Vcaμ=Vca+k・(μ−μ*)・・・(1) に従って求められ、粘性がほぼ基準値μ*であると推定
された場合には、図5のグラフで表される電圧Vcaのま
まとされる。ここで、kは定数であり、粘性が大きい場
合は小さい場合より、一定電圧Vcaμが大きくされ、開
度が大きくされる。粘性が大きい場合は、作動液が流れ
難く、液圧変化勾配が小さくなり、増圧遅れが生じるお
そがあるからである。開度が大きくされれば、増圧遅れ
を抑制し得る。
【0040】図10のフローチャートにおいて、S20
において、目標液圧Pref が、液圧センサ228の出力
液圧に応じた目標制動力から実際に得られた実回生制動
力を引いた大きさに対応する液圧として求められる。S
21,22において、ブレーキパッドの温度が設定温度
以上か否か、イグニッションスイッチがONとなってか
ら設定時間以上経過したか否かが判定される。ブレーキ
パッドの温度が設定温度以上であるか、経過時間が設定
時間以上であるかのいずれかの場合には、S23におい
て、作動液の粘性は基準値μ*であるとされる。それに
対して、設定温度より小さく、経過時間が設定時間に達
していない場合には、S24において、粘性が取得値と
される。
【0041】粘性が基準値μ*であるとされた場合に
は、S25において、図5のグラフで表されるテーブル
に従って一定電圧Vcaμが決定されるが、取得値とされ
た場合には、S26において、上式に従って決定され
る。その後、S27において、変化電圧が決定され、印
加電圧が決定される。このように、本実施形態において
は、粘性が大きい場合は小さい場合より、一定電圧が大
きくされるため、印加電圧が大きくなり、その分、開度
が大きくされる。その結果、粘性が大きくても小さくて
も、液圧変化勾配をほぼ同じにすることができ、液圧制
御を良好に行い得る。
【0042】上記実施形態においては、作動液の粘性
は、イグニッションスイッチがONに切り換えられてか
ら常温維持時間以内に取得される。そのため、ブレーキ
が実際に作動させられる場合より粘性が大きめの値とし
て取得されることになる。作動液の温度は、イグニッシ
ョンスイッチがONに切り換えられてからの時間の経過
に伴って高くなり、粘性が小さくなる。そのため、イグ
ニッションスイッチがONにされてからの継続時間がそ
れほど長くない間(常温維持時間内)は、作動液の粘度
が大きく、増圧遅れが生じる恐れがあるが、イグニッシ
ョンスイッチがONにされてからの継続時間が長くなれ
ば、作動液の粘性も小さくなったと推定することがで
き、増圧遅れが生じる恐れもない。そのため、イグニッ
ションスイッチがONに切り換えられてから常温維持時
間内であれば、粘性を取得値のままとして、その取得値
に基づく制御を行うが、定常状態到達時間経過後であれ
ば、取得値とせず、基準値μ*とするのである。この場
合には、開度を大きくする必要がないのである。このよ
うに、本実施形態においては、粘性が大きく増圧遅れが
生じるおそれがある場合のみに粘性に基づく制御が行わ
れるようにされているため、粘性の大きさにかかわらず
粘性に基づく制御が行われる場合に比較して、制御を簡
単にすることができる。
【0043】このように、上記実施形態においては、粘
性が大きいと推定される場合のみに粘性に基づく制御が
行われ、粘性が小さいと推定される場合には行われない
ようにされると考えることができる。換言すれば、粘性
が大きい場合と小さい場合とで、印加電圧の決定規則が
変更されるのである。また、一定電圧が作動液の粘性と
粘性の基準値との差に基づいて補正されると考えること
もできる。
【0044】以上のように、本実施形態においては、リ
ニアバルブ装置56によって液圧制御弁装置が構成さ
れ、コントローラ66,液圧センサ62,74等によっ
て液圧制御手段が構成される。コントローラ66のう
ち、粘性取得プログラムを実行する部分およびリニアバ
ルブ制御プログラムを実行する部分等により、粘性対応
制御手段が構成される。粘性対応制御手段は粘性影響排
除型制御手段でもある。また、粘性対応制御手段のうち
粘性取得プログラムを実行する部分等により、粘性取得
手段が構成される。そして、粘性取得手段および液圧セ
ンサ62,64等により構成された差圧関連量取得装置
等により粘性取得装置が構成されることになる。
【0045】なお、上記実施形態においては、イグニッ
ションスイッチがONに切り換えられてからの経過時間
に基づいて、制御規則が変更させられていたが、取得値
の大きさに基づいて変更してもよい。例えば、取得値が
基準値より設定値以上大きい場合と、設定範囲内の場合
とで制御規則を変更することもできる。また、ブレーキ
パッドの温度を検出することも不可欠ではなく、経過時
間のみに基づいて粘性を取得してもよい。さらに、取得
値が基準値より設定値以上小さい場合には、劣化してい
ると推定することができるため、その場合には、開度を
小さくする制御も加えて行われるようにすることもでき
る。また、上記実施形態においては、一定電圧が粘性に
基づいて決定されていたが、粘性に基づいて印加電圧が
直接決定されるようにすることもできる。例えば、図
6,7のグラフで表されるテーブルをそれぞれ記憶させ
ておき、これらに基づいて開度,印加電圧を決定するの
である。図11に示すように、所望の液圧変化勾配が決
定されれば、その液圧変化勾配と粘性とに基づいて開度
を決定し、シーティング弁190における開度が、上記
開度に対応する大きさとなるように、図6に基づいて印
加電圧を決定するのである。また、粘性に基づいて制御
規則を変更することは不可欠ではなく、常時粘性に基づ
いて印加電圧が決定されるようにすることもできる。例
えば、一定電圧が、常時(1)式に従って決定されるよ
うにすることもできるのである。さらに、上記実施形態
においては、イグニッションスイッチがONにされてか
ら設定時間経過後には、粘性が基準値とされたが、基準
値とは別の大きさの一定値とすることもできる。
【0046】また、液圧制御弁装置は、上記実施形態に
おけるリニアバルブ装置56に限らず、複数の電磁開閉
弁を含むものとすることもできる。例えば、開状態の閉
状態に対する開時間比率に基づいて作動液流量が決定さ
れ、印加電圧のON時間比率の制御により、開時間比率
が制御され、流量が制御される場合もある。さらに、上
記実施形態においては、液圧ブレーキ装置がハイブリッ
ト車における液圧ブレーキ装置に適用されたが、電気自
動車における液圧ブレーキ装置適用することもできる等
種々の液圧ブレーキ装置に適用することができる。その
他、いちいち例示することはしないが、特許請求の範囲
を逸脱することなく当業者の知識に基づいて種々の変
形,改良を施した態様で本発明を実施することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である液圧制御装置を含む
液圧ブレーキ装置の全体を示す回路図である。この液圧
制御装置には、本発明の一実施形態である粘性取得装置
も含まれる。
【図2】上記液圧ブレーキ装置に含まれるリニアバルブ
装置の一部断面図である。
【図3】上記液圧ブレーキ装置において回生制動協調制
御が行われた場合の制御概念図である。
【図4】上記リニアバルブ装置に含まれる増圧リニアバ
ルブに作用する力を概念的に示す図である。
【図5】(a)上記増圧リニアバルブにおける液圧差と
最小開弁電圧との関係を示す図である。(b)上記リニ
アバルブ装置に含まれる減圧リニアバルブにおける液圧
差と最小開弁電圧との関係を示す図である。
【図6】上記増圧リニアバルブにおける開度と印加電圧
との関係を示す図である。
【図7】上記増圧リニアバルブにおける開度と設定時間
後の液圧比率との関係を示す図である。
【図8】上記液圧ブレーキ装置において回生制動協調制
御が行われた場合における目標液圧の変化と印加電圧の
変化との一例を示す図である。
【図9】上記液圧制御装置のROMに格納された粘性取
得プログラムを表すフローチャートである。
【図10】上記液圧制御装置のROMに格納されたリニ
アバルブ装置制御プログラムを表すフローチャートであ
る。
【図11】本発明とは別の実施形態である液圧制御装置
のROMに格納されたリニアバルブ装置の開度と目標液
圧変化勾配との関係を示すテーブルを表す図である。
【符号の説明】
56 リニアバルブ装置 62,64 液圧センサ 66 コントローラ

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高圧部と低圧部との間に設けられ、それ
    ら高圧部と低圧部との間の作動液の流れを制御する液圧
    制御弁装置と、 その液圧制御弁装置を制御することにより前記高圧部と
    低圧部とのいずれか一方の液圧を制御する液圧制御弁制
    御手段とを含む液圧制御装置であって、 前記液圧制御弁制御手段が、前記液圧制御弁装置の両側
    の液圧差に関連する差圧関連量と前記作動液の流量に関
    連する流量関連量とに基づいて、前記作動液の粘性を取
    得する粘性取得手段と、その粘性取得手段によって取得
    された作動液の粘性に基づいて前記液圧を制御する粘性
    対応制御手段とを含むことを特徴とする液圧制御装置。
  2. 【請求項2】 高圧部と低圧部との間に設けられ、それ
    ら高圧部と低圧部との間の作動液の流れを制御する液圧
    制御弁装置を流れる前記作動液の粘性を取得する粘性取
    得装置であって、 前記液圧制御弁装置の高圧部と低圧部との間の液圧差に
    関連する差圧関連量を取得する差圧関連量取得装置と、 その差圧関連量取得装置によって取得された差圧関連量
    と、前記作動液の流量に関連する流量関連量とに基づい
    て前記粘性を取得する粘性取得手段とを含むことを特徴
    とする作動液粘性取得装置。
JP9320690A 1997-11-21 1997-11-21 液圧制御装置および作動液粘性取得装置 Pending JPH11153105A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9320690A JPH11153105A (ja) 1997-11-21 1997-11-21 液圧制御装置および作動液粘性取得装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9320690A JPH11153105A (ja) 1997-11-21 1997-11-21 液圧制御装置および作動液粘性取得装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11153105A true JPH11153105A (ja) 1999-06-08

Family

ID=18124261

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9320690A Pending JPH11153105A (ja) 1997-11-21 1997-11-21 液圧制御装置および作動液粘性取得装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11153105A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100381468B1 (ko) * 1999-12-10 2003-04-26 도요다 지도샤 가부시끼가이샤 차량용 브레이크시스템
JP2009121543A (ja) * 2007-11-13 2009-06-04 Toyota Motor Corp 油圧システムの制御装置及びバルブタイミング制御装置
US7837280B2 (en) 2006-04-28 2010-11-23 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Vehicle brake system
JP2011069429A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Furukawa Unic Corp 作業機械用制御装置
JP2013010372A (ja) * 2011-06-28 2013-01-17 Nissan Motor Co Ltd 制動力制御装置
JP2019011045A (ja) * 2017-06-08 2019-01-24 ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 圧力媒体回路内の圧力媒体の粘性を算出するための方法

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100381468B1 (ko) * 1999-12-10 2003-04-26 도요다 지도샤 가부시끼가이샤 차량용 브레이크시스템
US7837280B2 (en) 2006-04-28 2010-11-23 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Vehicle brake system
JP2009121543A (ja) * 2007-11-13 2009-06-04 Toyota Motor Corp 油圧システムの制御装置及びバルブタイミング制御装置
JP2011069429A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Furukawa Unic Corp 作業機械用制御装置
JP2013010372A (ja) * 2011-06-28 2013-01-17 Nissan Motor Co Ltd 制動力制御装置
JP2019011045A (ja) * 2017-06-08 2019-01-24 ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 圧力媒体回路内の圧力媒体の粘性を算出するための方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1106461B1 (en) Vehicle braking system having devices for controlling fluid flows between the pressurizing and assisting chambers of a master cylinder , a pressure source and a reservoir
US7926887B2 (en) Brake control system and brake control method
JP3851043B2 (ja) ブレーキ液圧制御装置
US20190184958A1 (en) Brake Device and Method of Detecting Fluid Leakage in Brake Device
US9004617B2 (en) Brake device
JP4736839B2 (ja) 液圧ブレーキ装置
JP5924416B2 (ja) 車両のブレーキ制御装置
US11414090B2 (en) Brake control apparatus and brake control method
EP2915708A1 (en) Vehicle brake control device
JPH02227361A (ja) ロツク防止装置を備えた路面車両の駆動滑り調整装置
US20180194332A1 (en) Brake Control Apparatus and Brake System
JPH1159403A (ja) 液圧ブレーキ装置
US20180290636A1 (en) Brake Control Device
EP1039134B1 (en) Redundant pump control system
JP2002255021A (ja) ブレーキ装置
JP4830939B2 (ja) 車両用ブレーキ装置
US8240781B2 (en) Method for operating a brake system for motor vehicles
JP3580112B2 (ja) 液圧制御装置
JPH11153105A (ja) 液圧制御装置および作動液粘性取得装置
JP2004237982A (ja) 液圧ブレーキ装置、作動特性取得装置,制御弁検査装置
JP2003160045A (ja) 液圧ブレーキ装置
JP3905196B2 (ja) 流体制御装置
WO2009063300A1 (en) Brake control system
JPH11245784A (ja) 液圧制御装置
JP3508492B2 (ja) ブレーキ液圧制御装置