JPH11137286A - 乳酸の発酵方法 - Google Patents

乳酸の発酵方法

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JPH11137286A
JPH11137286A JP30858797A JP30858797A JPH11137286A JP H11137286 A JPH11137286 A JP H11137286A JP 30858797 A JP30858797 A JP 30858797A JP 30858797 A JP30858797 A JP 30858797A JP H11137286 A JPH11137286 A JP H11137286A
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fermentation
lactic acid
electrodialysis
membrane
lactate
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JP30858797A
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Toru Oshima
透 大島
Akira Kumagai
晃 熊谷
Tomohiro Arimura
友宏 有村
Shigenobu Miura
重信 三浦
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Musashino Chemical Laboratory Ltd
Original Assignee
Musashino Chemical Laboratory Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気透析の前に培地から膜分離、遠心分離な
どにより菌体を除去する必要がなく、さらに電気透析膜
のファウリング(よごれ)を生じさせない、新規な乳酸
の発酵方法を提供する。 【解決手段】 リゾプス属に属する乳酸発酵能を有する
微生物を用いた乳酸発酵装置11で生成される乳酸を、
バイポーラ膜BPとアニオン交換膜Aにより構成される
2室法バイポーラ膜電気透析装置31に導入し、逐次系
外に除去することを特徴とする乳酸の発酵方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な乳酸の発酵
方法に関する。より詳しくは、電気透析を利用して乳酸
発酵を円滑に行うことのできる乳酸の発酵方法に関する
ものである。
【0002】乳酸は、食品添加物として清酒、清涼飲
料、漬物、醤油、製パンまたはビールなどの製造に利用
され、また、工業として皮革、繊維、プラスチック、医
薬品または農薬などの製造に使用されている。
【0003】また、最近では乳酸の誘導体または合成中
間体である乳酸エチル、または乳酸ブチルなどのエステ
ル類は安全性の高い溶剤、洗浄剤としての用途が広がっ
ている。さらに乳酸のポリマーであるポリ乳酸は、生分
解性ポリマーとしての用途が拡大するものとして期待さ
れている。
【0004】
【従来の技術】乳酸塩から電気透析により乳酸を分離す
る方法としては、バイポーラ膜とカチオン交換膜からな
る2室法により、ナトリウムまたはアンモニアなどのア
ルカリをカチオン交換膜を透過させて分離するバイポー
ラ膜電気透析法、およびバイポーラ膜とアニオン交換膜
からなる2室法により、乳酸ないし弱塩基の乳酸塩をア
ニオン交換膜を透過させて分離するバイポーラ膜電気透
析法が知られている(月刊フードケミカル 1996−
6,p30〜35、特開平8−281077号公報)。
ここで、バイポーラ膜とは、アニオン交換膜とカチオン
交換膜とが接合された構造をしており、電気透析に供す
る際には、該バイポーラ膜のアニオン交換膜側を陽極
(+)側に、該バイポーラ膜のカチオン交換膜側を陰極
(−)側にして使用されるものであり、電場をかけると
接合された陰陽イオン交換膜間の水が解離***してH+
とOH- になり、電流が流れるものをいう。
【0005】また、乳酸発酵装置と電気透析装置を接続
して発酵中に乳酸を逐次系外に除去し、発酵の高速化を
計る、いわゆる電気透析発酵は数々の文献により知られ
ている。
【0006】上記バイポーラ膜電気透析法を電気透析発
酵に応用する場合には、バイポーラ膜とカチオン交換膜
からなる2室法により、ナトリウムまたはアンモニアな
どのアルカリをカチオン交換膜を透過させて分離するバ
イポーラ膜電気透析法では、培地から乳酸を分離するこ
とが不可能である事から実用化できない。
【0007】したがって、バイポーラ膜とアニオン交換
膜からなる2室法により、乳酸ないし弱塩基の乳酸塩を
アニオン交換膜を透過させて分離するバイポーラ膜電気
透析法が用いられることになる。
【0008】しかしながら、上記月刊フードケミカルお
よび特開平8−281077号公報に記載の乳酸塩のバ
イポーラ電気透析においては、下記のような技術的課題
があった。
【0009】1) 一般の乳酸菌、枯草菌などのバクテ
リアによる電気透析発酵では、乳酸発酵装置からバイポ
ーラ膜電気透析装置に持ち込まれる培地に含まれる栄養
成分や菌体の分泌するタンパク成分などが電気透析膜に
堆積してスケール化することによる、電気透析膜のファ
ウリング(よごれ)の問題がある。さらにこれらのバク
テリアでは、電気透析の前に培地から膜分離、遠心分離
などにより菌体を除去する必要があり、工業的に実用化
するには問題があった。
【0010】2) 上記公報を含め現在用いられている
回分式の2室法バイポーラ電気透析では、後半に塩室の
pHが上昇し、水酸化物イオンの移動が激しくなって電
流効率が低下し、特に乳酸ナトリウムでは著しく効率が
悪い(ただし、乳酸アンモニウムでは、この効率低下が
軽減される。)。
【0011】3) 回分式の電気透析では、塩室がアル
カリ性となるために、アニオン交換膜は、耐アルカリ性
の特殊な膜が必要である。
【0012】4) 特開平8−281077号公報にも
記載されているように、弱塩基の乳酸塩が乳酸アンモニ
ウムの場合は、塩室でアンモニアがガス化して、ブリス
ターが発生し、塩室に不活性ガスを送るなどして、スト
リッピングする必要がある。
【0013】5) 乳酸アンモニウムの回分式2室法バ
イポーラ膜電気透析では、塩室のpHが上昇するとアン
モニア分子の拡散による移動が起こり、膜を透過して回
収室側に混入する。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、バイポーラ膜電気透析法を電気透析発酵に応用
してなる新規な乳酸の発酵方法を提供するものである。
【0015】また、本発明の目的は、電気透析の前に培
地から膜分離、遠心分離などにより菌体を除去する必要
がなく、さらに電気透析膜のファウリング(よごれ)を
生じさせない、新規な乳酸の発酵方法を提供するもので
ある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記諸問
題に鑑み、新規な乳酸の発酵方法に関し鋭意検討した結
果、糸状菌のリゾプス属に属する乳酸発酵能を有する微
生物による乳酸発酵装置と、バイポーラ膜とアニオン交
換膜によりセル構成される2室法バイポーラ膜電気透析
装置を組み合わせることにより、上記諸目的を達成する
ことができ、これにより工業的に有利な電気透析発酵を
可能とする事を見いだし、本発明を完成するに至ったも
のである。
【0017】すなわち、本発明の目的は、(1) リゾ
プス属に属する乳酸発酵能を有する微生物を用いた乳酸
発酵装置で生成される乳酸を、バイポーラ膜とアニオン
交換膜により構成される2室法電気透析装置に導入し、
逐次系外に除去することを特徴とする乳酸の発酵方法に
より達成される。
【0018】また、本発明の目的は、(2) 前記乳酸
発酵装置で生成される乳酸を、一価の乳酸塩の形に変換
した後、前記2室法電気透析装置に導入することを特徴
とする、上記(1)に記載の乳酸の発酵方法によっても
達成される。
【0019】さらに、本発明の目的は、(3) 前記一
価の乳酸塩が、乳酸アンモニウムであることを特徴とす
る、上記(2)に記載の乳酸の発酵方法によっても達成
される。
【0020】さらにまた、本発明の目的は、(4) 前
記一価の乳酸塩が、乳酸ナトリウムであることを特徴と
する、上記(2)に記載の乳酸の発酵方法によっても達
成される。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の乳酸の発酵方法は、リゾ
プス属に属する乳酸発酵能を有する微生物を用いた乳酸
発酵装置で生成される乳酸を、バイポーラ膜とアニオン
交換膜により構成される2室法電気透析装置に導入し、
逐次系外に除去することを特徴とするものである。
【0022】本発明に用いることのできるリゾプス属に
属する乳酸発酵能を有する微生物としては、例えば、リ
ゾプス-アリザス(Rhizopus arrhizus)、リゾプス-オ
リゼ(Rhizopus oryzae)等が挙げられる。こうしたリ
ゾプス属に属する乳酸発酵能を有する微生物は、ペレッ
ト状、塊状で培養できるので、電気透析装置に導く前の
培地からの菌体分離は容易に行なえる。
【0023】また、リゾプス属に属する乳酸発酵能を有
する微生物、特にリゾプス-オリゼ(Rhizopus oryzae)
では、培地の組成が単純であり、通常は炭素源の他に無
機塩を添加すればよく、このため乳酸発酵装置からバイ
ポーラ膜電気透析装置に持ち込まれる発酵液中に含まれ
る培地の栄養成分や微生物の分泌するタンパク成分など
がバイポーラ膜およびアニオン交換膜の表面に堆積して
スケール化することもなく、これら電気透析膜のファウ
リングも見られず、連続的に電気透析発酵を行なえる。
【0024】すなわち、こうしたリゾプス属に属する乳
酸発酵能を有する微生物では、培地と微生物の菌体の分
離が簡単になされるため、連続発酵などによって微生物
の菌体密度が増加しても、これによって電気透析装置の
電気透析膜の目詰まり、または電流効率の著しい低下が
おこらず、発酵液を電気透析装置に通液する前に微生物
の菌体を分離、除去するための分離装置は、一般の乳酸
菌や枯草菌などのバクテリアと比べ著しく簡単なもので
ある。なお、微生物の菌糸の一部または胞子が電気透析
装置に流入し、菌体が電気透析装置に固定化され内部で
育成するのを防ぐために、菌体を死滅させる滅菌装置を
設けることが好ましい。この場合の滅菌装置としては加
熱によるものが簡単であるが、他の滅菌方法を利用した
装置を用いることももちろん可能である。
【0025】また、リゾプス属に属する乳酸発酵能を有
する微生物も一般乳酸菌と同様に乳酸の蓄積が発酵阻害
を引き起こすので、発酵により生成される乳酸を逐次系
外に除去することのできる電気透析発酵は、発酵の高速
化の面でメリットがあることは明らかである。
【0026】乳酸発酵装置で生成される乳酸は、遊離の
乳酸の形で電気透析装置に導入し、乳酸を分離すること
も可能であるが、乳酸発酵装置内の培地のpHをリゾプ
ス属に属する乳酸発酵能を有する微生物の至適pHに保
つには乳酸濃度をかなり低くしなければならず、電気透
析の電流密度が低下する。このため適正濃度のアルカリ
を乳酸発酵装置内の培地中に添加して、培地のpHを微
生物の至適pHに保つとともに乳酸を一価の乳酸塩の形
に変換しておくことが好ましい。この場合、リゾプス属
に属する乳酸発酵能を有する微生物の至適pHは7以下
であるため、水酸化ナトリウムなどの強アルカリにおい
ても水酸化物イオン(OH- )が乳酸より優先的に透過
することはなく、電流効率を非常に高く維持することが
できる。アンモニア、ナトリウムなどのアルカリは乳酸
発酵装置と電気透析装置の間を循環することになる。
【0027】上記一価の乳酸塩としては、特に制限され
るものではなく、例えば、乳酸ナトリウム、乳酸カリウ
ム、乳酸リチウム等の乳酸のアルカリ金属塩および乳酸
アンモニウム等が挙げられる。このうち、乳酸ナトリウ
ム等の乳酸のアルカリ金属塩では、乳酸アンモニウムに
比して、電流効率が下がるものの、膜を透過することは
ない利点を有する。一方、乳酸アンモニウムでは、乳酸
ナトリウム等が膜を透過することがないのに比して、若
干ではあるが透過する(ただし、従来の回分式2室法バ
イポーラ膜電気透析の場合のアンモニア分子の拡散によ
る移動に比較した場合、塩室が常に中性に保たれるので
乳酸アンモニウムとして存在し、遊離したNH3 の形で
膜を透過することは極めて少なくなる)ものの、電流効
率がよいという利点を有するものであり、いずれを用い
るかは、使用用途等に応じて適宜決定されるものであ
る。また、乳酸を上記一価の乳酸塩の形に変換するため
に添加されるアルカリは、適正な濃度に調製された水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水
溶液、アンモニア水、アンモニアガスなどを用いること
ができる。
【0028】本発明に用いられる電気透析発酵方法で
は、回分式、連続式、または菌体を残して培地を新鮮培
地と交換する繰り返し回分式のいずれでも可能である。
【0029】次に、本発明に係る乳酸の発酵方法に用い
ることのできる電気透析発酵装置の一実施態様として、
リゾプス属に属する乳酸発酵能を有する微生物を用いた
乳酸発酵装置と、バイポーラ膜とアニオン交換膜により
構成される2室法電気透析装置とを組み合わせた電気透
析発酵装置を概略的に表した図面を図1に示す。
【0030】図1に示すように、本発明に用いることの
できる電気透析発酵装置1は、培地中にリゾプス属に属
する乳酸発酵能を有する微生物を培養し、乳酸を発酵さ
せる発酵部12を備えてなる乳酸発酵装置11と、該乳
酸発酵装置11から導入される発酵液中から乳酸を逐次
系外に分離、除去するためのバイポーラ膜BPとアニオ
ン交換膜Aからなるセル構成を備えてなる2室法バイポ
ーラ膜電気透析装置31とからなる。さらに、上記乳酸
発酵装置11本体と2室法バイポーラ膜電気透析装置3
1本体とは、発酵液取り出しポンプ13、クッションタ
ンク14および発酵液循環ポンプ15を介して配管16
a〜16dで接続されている。また、クッションタンク
14と乳酸発酵装置11本体とは、クッションタンク1
4内の発酵液の一部(好ましくは発酵液から乳酸を除去
した液)を発酵部12に戻すために、配管16eで接続
されている。
【0031】また乳酸発酵装置11には、連続発酵によ
り乳酸が発酵できるように、発酵部12と原料タンク
(図示せず)とがポンプ(図示せず)を介して配管(図
示せず)で接続されていてもよい。これにより、発酵部
12に原料タンク(図示せず)よりポンプ(図示せず)
を介して配管より発酵原料が供給される。
【0032】さらに、乳酸発酵装置11には、電気透析
の電流密度を低下させることなく、微生物の至適pHに
保つべく、発酵部12で生成される乳酸を乳酸塩の形に
変換するために、発酵部12にpHセンサーを備えたp
H感知装置17を設けるとともに、発酵部12とアンモ
ニアなどのアルカリ貯蔵タンク(図示せず)とがアルカ
リ供給ポンプ(図示せず)を介して配管(図示せず)で
接続されている。これにより、pH感知装置17により
培地のpHをモニターしながら、常に発酵部12内の発
酵培地がリゾプス属に属する乳酸発酵能を有する微生物
による発酵の至適pHの範囲(一般に4〜8、好ましく
は5〜7)とすべく、pHの変化に応じて、該pH感知
装置17からの信号により上記アルカリ供給ポンプの電
磁開閉弁等を動作してアルカリ水溶液が発酵部12内に
供給されるpH自動監視制御システムが構築されていて
もよい。なお、上記pH感知装置に変えて電気伝導度感
知装置あるいは濃度感知装置を用いてもよい。
【0033】さらに、上記pH自動監視制御システム
は、2室法バイポーラ膜電気透析装置31側の整流器3
2で電流密度などの特定のパラメーターをモニターしな
がら、例えば、電気透析の電流密度の低下を感知した場
合にも、該発酵部12の培地内が適正濃度となるよう
に、該パラメーターの変化に応じて、整流器32からの
信号により上記アルカリ供給ポンプの電磁開閉弁等を動
作してアルカリ水溶液が発酵部12内に供給されるよう
に上記pH自動監視制御システムを構築しておく事がよ
り望ましい。
【0034】また、上記発酵部12には、図1に示すよ
うに、上部に開閉式の蓋部18を有する発酵タンク19
を用い、該発酵タンク19の下部には菌体や微生物の侵
入を防ぐための焼結金属フィルター等のフィルター部材
20が設けられており、該フィルター部材20を通して
無菌化されたエアー等を発酵タンク19内に吹き込み、
培地の撹拌を行った後、該エアーを上部の蓋部18に設
けられた排気口より配管21を通して(さらに、必要に
よりフィルター部材などを有する濾過器を通して大気汚
染物質を取り除いた後に)系外に排気する、いわゆるエ
アリフト式リアクター方式のものなどを用いる事ができ
る。なお、本発明で用いることのできる発酵部として
は、上述のものに限定されるものではなく、例えば、通
常の撹拌羽による撹拌式の発酵タンク、あるいはカラギ
ーナン、アルギン酸カルシウムなどのゲルビーズなどに
よる固定化増殖微生物充填カラム式リアクター、膜によ
り微生物を高密度に封じ込めた膜型リアクターなどを用
いることができる。なお、上記発酵部12の発酵タンク
19内部の培地液面より下側に、上述したような乳酸
(ないし乳酸塩)濃度、発酵培地のpHまたは電気伝導
度を測定することができるように各種センサーが設けら
れていることが望ましい。
【0035】さらに、上記発酵部12を構成する発酵タ
ンク19の側面外周部には熱交換装置22を設けていて
もよい。該熱交換装置22により、発酵部12内の培地
の温度を該リゾプス属に属する乳酸発酵能を有する微生
物の生育範囲(一般に30〜35℃が至適とされる)に
保持する事ができるものである。該熱交換装置として
は、特に制限されるものではなく、図1に示すように、
温水または冷水を媒体として、これを循環する方式など
を利用する事ができる。
【0036】さらに、発酵部12に水を適宜供給するた
めに、レベルコントローラ23と、発酵部12に水供給
ポンプ24を介して配管で接続された水タンク(図示せ
ず)とを具備してなるレベルコントローラーシステムを
設けてもよい。該レベルコントローラーシステムでは、
発酵部12内の発酵培地の液面の変化を液面感知センサ
ーなどを用いてモニターし、該液面感知センサーからの
入力データ(入力信号)をレベルコントローラー23で
解析処理し、電気透析によりバイポーラ膜内で水の電気
分解が進むことなどの原因により、該発酵培地の液面が
一定レベル以下に下がった場合、該レベルコントローラ
ー23からの出力信号により水供給ポンプ24の電磁開
閉弁バルブを動作して開放し、配管25を通じて発酵部
12内に適量の滅菌水を供給するようなシステムを設け
てもよい。
【0037】一方、上記2室法バイポーラ膜電気透析装
置31には、陽極(+)側から陰極(−)側に向けて、
バイポーラ膜BPとアニオン交換膜Aの順に交互に並ん
で構成される2室を基本単位(以下、単にセルともい
う)として、該セルが4つ設けられている。各セルは、
電気透析装置31のバイポーラ膜BPのアニオン交換膜
側とアニオン交換膜Aとで形成された室(以下、単に塩
室ともいう)aと、バイポーラ膜BPのカチオン交換膜
側とアニオン交換膜Aとで形成された室(以下、単に回
収室ともいう)bとの2室で構成されている。
【0038】そして、各塩室aには、発酵液(発酵タン
ク19内部から取り出された発酵液と電気透析され戻さ
れてきた発酵液を含む)を導入するための入口33と、
電気透析後の発酵液を排出するための出口35とが設け
られている。各入口33は、分岐された配管16dによ
り発酵液循環ポンプ15と接続されている。各出口35
は、配管34によりクッションタンク14と接続されて
いる。これにより、各塩室aからクッションタンク14
へ、該クッションタンク14から発酵液循環ポンプ15
を介して塩室aへと、発酵液(発酵液から乳酸の抜き取
られたアルカリ成分を含む)を循環する循環系が形成さ
れている。
【0039】また、回収室bには、発酵液よりアニオン
交換膜を通して分離された乳酸成分を含む回収液を排出
するための出口36と、該回収液を導入するための入口
37とが設けられている。各回収室bの出口36は、回
収液タンク38の入口に配管39により接続されてお
り、該回収液タンク38の出口は、回収液循環ポンプ4
0を介して各回収室bの入口37に配管41により接続
されている。これにより、回収液を循環する循環系が形
成されている。また、回収室bを含めて、回収液を循環
する循環系には回収液の電気伝導度を上げて電流密度を
高めるために強酸の水溶液または強酸の塩の水溶液を、
水溶液の電気伝導度が好ましくは5〜50mS/cmと
なるような濃度で予め仕込んでおくのが望ましい。上記
の強酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸などを挙げる
ことができ、またその塩としてはナトリウム塩、カリウ
ム塩、アンモニウム塩、リチウム塩などとすることがで
きる。
【0040】また、陽極(+)および陰極(−)を有す
る両サイドには、電極室cが設けられている。そして、
両電極室cの出口42と電極液タンク43の入口とが配
管44を通じて接続されており、さらに該電極液タンク
43の出口は、電極液循環ポンプ45を介して両電極室
cの入口47に配管46により接続されている。これに
より、電極液を循環する循環系が形成されている。ま
た、陽極(+)板と陰極(−)板とは、整流器32を介
して接続されている。また、電極室cを含めて、電極液
を循環する循環系には、予め電極液として適当な濃度の
硫酸アンモニウム水溶液、硫酸ナトリウム水溶液、硫酸
水溶液、塩化アンモニウム水溶液、塩化ナトリウム水溶
液や塩酸水溶液等を仕込んでおくことが望ましい。
【0041】上記構成を有する電気透析発酵装置1を作
動することにより、乳酸発酵装置11の発酵部12の発
酵タンク19内部を発酵培地中のリゾプス属に属する乳
酸発酵能を有する微生物の培養に適した環境にすべく、
熱交換器により温水を循環させながら適温に保ち、ま
た、発酵タンク19の下部よりエアーをフィルター部材
20を介して供給して発酵培地を撹拌し(配管21を通
じて排気し)ながら、該発酵タンク19内部の発酵培地
のpHを適量のアルカリ水溶液を供給しながら調節し、
さらに必要に応じて、水や培地成分等を補給することに
より、安定的に培養を続けながら生成されてくる乳酸を
乳酸塩の形に変換する。
【0042】次に、十分に乳酸発酵がなされ、変換され
た乳酸塩を含む発酵液を、乳酸発酵装置本体の乳酸タン
ク19から発酵液取出ポンプ13、クッションタンク1
4および発酵液循環ポンプ15を介して配管16a〜1
6dを通じて電気透析装置31本体の4つの塩室aの入
口33より導入する。また、整流器32により両電極間
に直流電圧を流して電気透析を行うことで、塩室aに供
給された発酵液中の乳酸成分がアニオン交換膜Aを透過
して、各回収室b側に移動し分離される。
【0043】発酵液から分離された乳酸を含む回収液
は、回収室bの出口36より排出され、配管39を通じ
て回収液タンク38に収容される。回収液タンク38内
の回収液は、回収液循環ポンプ40により配管41を通
じて、回収室bの入口37より導入される。これによ
り、回収液の循環がなされ乳酸の濃縮が行われる。そし
て、乳酸が所期の濃度に濃縮された時点で、回収液循環
タンク38等より逐次系外に抜き出して回収を行う。
【0044】他方、塩室aの発酵液から乳酸が分離され
抜き取られた、アルカリ成分を含む発酵液は、塩室aの
出口35から配管34を通じてクッションタンク14に
戻される。そして、クッションタンク14に収容された
発酵液は、その一部(特に発酵液から乳酸が分離され抜
き取られた、アルカリ成分を含む発酵液)は、配管16
eを通じて再び発酵部12の発酵タンク19内部に戻さ
れアルカリ水溶液としてリサイクル使用される。また、
他の一部(特に発酵タンク19内部より取り出された乳
酸塩を含む発酵液)は、発酵液循環ポンプ15により配
管16c〜16dを通じて電気透析装置12の塩室aの
入口33より導入(循環)される。
【0045】電気透析によって分離される乳酸液中には
微生物や非イオン性の有機物や高分子化合物が含まれな
いため、十分な精製(濃縮)がなされることになる。
【0046】以上が、図1に示す構成を有する電気透析
発酵装置を用いて、本発明に係る乳酸の製造方法を行う
ための一実施態様の説明であるが、本発明では、上記に
説明した実施態様に限定されるものではなく、従来公知
の、リゾプス属に属する乳酸発酵能を有する微生物を用
いた乳酸発酵装置およびバイポーラ膜とアニオン交換膜
により構成される2室法バイポーラ膜電気透析装置を適
宜選択して利用する事ができることは言うまでもない。
以下に本発明に係る乳酸の製造方法の他の一般的な実施
の形態に関し説明する。
【0047】まず、乳酸発酵装置の発酵部に用いること
のできる微生物の培養のための培地組成としては、通常
の微生物の培養に用いられるものを適用することがで
き、例えば、YM培地、ポテト・グルコース培地、ゴロ
ドコワ培地、酢酸ソーダ培地、麦芽汁培地、麦芽エキス
培地、野菜汁培地、石膏培地、コーンミール培地、ポテ
ト・イースト浸出液・グルコース培地、ツァペック培
地、サブロー培地、オートミール培地、合成ムコール培
地、YpSs培地、グルコース・ドライイースト培地、
肉汁培地、イースト・麦芽培地、スターチ・無機塩培
地、グリセリン・アスパラギン培地、ペプトン・イース
ト・鉄培地、チロシン培地およびプリドハム・ゴトリー
ブ培地などが挙げられるが、上記培地の成分としては該
リゾプス属に属する乳酸発酵能を有する微生物による乳
酸発酵を促進する栄養素を含むものが望ましく、また、
この目的を達成する範囲において、電気透析膜のファウ
リングを防ぐために、できるだけ低濃度(ただし、乳酸
の原料となる炭素源を除く)であることが望ましい。
【0048】乳酸発酵装置の発酵部に用いることのでき
る発酵原料としては、リゾプス(Rhizopus)属に属する乳
酸発酵能を有する微生物がその対象となることから、原
料となる糖源として、例えば、D−グルコース、シュー
クロース、ラクトース、D−およびL−アラビノース、
D−リボース、D−キシロース、D−マンノース、D−
ガラクトース、L−ラムノース、D−フラクトース、L
−ソルボース、マルトース、ラクトース、メリビオー
ス、セロビオース、トレハロース、ラフィノース、メレ
ジトース、α−メチル−D−グルコシド、D−グルコサ
ミン、N−アセチルグルコサミン、アルブチン、デキス
トリン、可溶性デンプン、イヌリン、メタノール、エタ
ノール、アドニトール、エリスルトール、イノシトー
ル、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトー
ル、D−グルコン酸塩、グリセリン、ヘキサデカンおよ
びスターチなどであり、さらにこれら糖源の他に燐酸第
一カリウム、燐酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩
化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、塩
化マンガン、硫酸亜鉛および炭酸カルシウムなどの無機
塩を添加する事が望ましい。
【0049】本発明に係る乳酸の発酵方法では、乳酸発
酵に用いる微生物の培養のための最適条件となるべく、
アルカリの添加によって発酵培地のpHを、通常4〜
8、好ましくは5〜7の範囲となるようにコントロール
しつつ行うことが望ましい。かかる方法においては、生
成する乳酸塩を2室法バイポーラ膜電気透析によって発
酵液から分離し、透析された乳酸成分は回収し、透析後
の発酵液は、循環系を用いて再び発酵部に戻し、該発酵
液を含めた発酵培地全体のpH値および電気伝導度、並
びに乳酸塩濃度が所望の設定値となるようにコントロー
ルすることにより、生成物阻害なく、高生産性を維持し
ながら発酵が進められる事が望ましい。
【0050】また、発酵部での発酵液中の乳酸塩濃度
は、できるだけ低く保つことによって発酵速度を高める
ことができるが、乳酸塩濃度が低くなるに従い発酵培地
の電気伝導度が低下し、かかる発酵液を電気透析する際
の電流密度および電流効率が悪化し、電気透析装置の生
産性が低下するとともに他の成分の透析量が増加するた
めに選択性の低下にもつながるので、電気透析装置に導
入する際の発酵液中の乳酸塩濃度が、好ましくは0.2
〜2重量%程度となるように、電気透析装置のON−O
FF、または電圧や電流の増減により、その濃度を調節
することが好ましい。
【0051】また、電気透析装置のコントロールは、発
酵部(装置)中の発酵培地の電気伝導度を測定すること
によって簡単に行うことができる。電気伝導度によって
電気透析をコントロールすることは一般的であるが、従
来の乳酸の電気透析発酵法においては、発酵部(装置)
中の発酵液中の乳酸塩濃度を測定して電気透析装置をコ
ントロールすることが行われていた。しかし本発明者ら
の知見によると他の無機塩や供雑物を多く含み大きな緩
衝能を持つ発酵培地においても電気伝導度の測定によっ
て十分に乳酸塩濃度を推定することが可能であることが
分かり、これによって従来の乳酸の電気透析発酵法に比
較して非常に簡単な電気伝導度センサーにより電気透析
発酵のコントロールが可能となったものである。かかる
電気伝導度は、乳酸塩濃度と相間関係を有することか
ら、前述の好ましい乳酸塩濃度範囲である0.2〜2重
量%に対応するような電気伝導度であればよく、かかる
電気伝導度としては、1〜30mS/cm、より好まし
くは5〜15mS/cmの範囲となるように調整するこ
とが望ましい。
【0052】次に電気透析の選択性であるが、乳酸成分
を透析する際に、微生物の培養に必須の成分である無機
塩も透析によって発酵液から失われる。しかし回分式の
電気透析発酵の場合に発酵開始前に適当量の無機塩を培
地中に存在させておけば途中でそれらの無機塩を発酵液
に補充することなしに発酵が完了することができる。こ
れははじめに存在していた無機塩が発酵初期に菌体内に
取り込まれ、一回分の回分発酵には充分だったものと考
えられる。
【0053】また発酵部(装置)の培地中に含まれる発
酵の主原料となる糖成分としては、先述のごとく、D−
グルコース、シュークロース、ラクトースなどあるが、
これらは乳酸成分の電気透析の際に同時に、塩室側から
アニオン交換膜を透過して回収室側に移動するため、糖
成分の循環回収率の低下を招き、選択性も落ちることに
なる。一般に低分子量のものほどイオン交換膜を透過
し、例えば回分式の電気透析発酵で原料の糖成分にグル
コースを用いた場合には、原料糖成分の仕込み濃度を1
0重量%とすると、イオン交換膜の種類および電気透析
の運転条件によっても異なるが、発酵終了時に1〜10
重量%のグルコースが回収室側に移動してしまう。従っ
て糖成分の場合には発酵液中の濃度を常に低く保つよう
に発酵中に少量ずつ添加することにより、回収室への分
離による損失を低いレベルに抑えることができる。
【0054】また分子量の大きなスターチやその部分加
水分解物であるデキストリンなどを発酵原料とすれば、
該発酵原料の損失を充分に抑えることが可能である。
【0055】さらに、本発明の電気透析発酵を連続化す
る場合には、微生物の菌体の高密度培養も可能である。
発酵部(装置)に新鮮培地を連続的または断続的に送
り、生成する乳酸成分を電気透析によって除去、回収す
ることにより、菌体が発酵部(装置)に蓄積されて高密
度となるために、回分式よりも高い生産性が得られるこ
とになる。
【0056】電気透析装置本体に発酵液を導入する前に
菌体を分離する場合には、菌体ペレットの沈降装置や簡
単なフィルター部材を用いた濾過器などの分離装置等に
より、菌体を濾過(回収)することにより菌体の密度を
コントロールする方法などを用いることができる。該フ
ィルターとしては、リゾプス属に属する乳酸発酵能を有
する微生物のペレットは容易に2〜3mm以上の直径と
なるため、孔径1mm程度のもので十分であり、バクテ
リアに比べはるかに簡単なものである。
【0057】なお、本発明に用いることのできる電気透
析発酵法に関しては、上述した実施の形態に制限される
ものではなく乳酸発酵及び電気透析に関する従来既知の
技術が幅広く適用できるものであり、乳酸発酵装置や電
気透析装置等に用いられる各種構成などを適宜組み合わ
せるなどして利用することができ(例えば、乳酸発酵装
置側では、発酵槽の材質、大きさ、槽の数等、電気透析
装置側では、バイポーラ膜およびアニオン交換膜の材
質、強度等の特性、有効膜面積、厚さ、使用枚数(セル
数)、セルの構成、電極の材質、電気透析槽の構造や具
備する各種部材の構成など、循環・回収システム内の配
管やポンプ、各種タンク等の構造や各種部材の構成な
ど)、また培養条件ないし動作条件(例えば、発酵液な
ど各室内の溶液の温度、pH、濃度、電極液、印加電流
・電圧等)等に関し、適宜決定することができる。
【0058】
【実施例】以下、本発明に関し、実施例を挙げてより詳
細に説明する。
【0059】 実施例1 下記に示す組成 グルコース 100.0 g/l MgSO4 ・7H2 O 0.25 g/l (NH4 2 SO4 0.125 g/l KH2 PO4 0.6 g/l 酵母エキス 0.125 g/l の培地2lにリゾプス-オリゼ(Rhizopus oryzae) A
HU 6537の胞子を2×107 個/mlとなるよう
に植菌し、3lエアリフト式リフターで培養した。培養
条件は、温度37℃、通気2l/minで、培養開始後
20時間から10%アンモニア水でpH5.5にコント
ロールした。160時間で培地中のグルコースは完全に
消費され、菌体は直径3〜4mm程度のペレット状とな
って培地中に分散していた。
【0060】このペレット全量を滅菌水で十分に水洗
し、乳酸を全量回収して定量したところ、グルコースか
らの乳酸収率は72%であった。
【0061】水洗したペレットに、新たに上記に示す組
成の培地2lを添加して、図1に示す電気透析発酵装置
により乳酸発酵を行なった。
【0062】電気透析装置は、1枚の膜面積が1.0d
2 のバイポーラ膜BPとアニオン交換膜Aで構成する
4対の室(4セル)からなる2室法バイポーラ膜電気透
析装置であって、電極室cには1M硫酸アンモニウム水
溶液、回収室には0.45M硫酸水溶液が仕込まれてお
り、電極(+/−)にはTi/Pt板を使用し、1.6
5A定電流で運転を行った。
【0063】培養条件は温度37℃、通気2l/min
で、培養開始後から乳酸濃度が約20g/lとなるまで
10%アンモニア水でpH5.5にコントロールし、そ
れ以降は電気透析装置の駆動系(各種ポンプ)を可動さ
せて培地中の乳酸を分離し逐次系外に除去することによ
り培地のpHを5.5に保った。また培養の液面はレベ
ルコントローラーを設置して滅菌水を加えることにより
一定に保った。
【0064】この結果、50時間でグルコースを完全に
消費し、電気透析により116.7gの乳酸が回収さ
れ、培養中に残存する乳酸濃度は21g/lであった。
乳酸を全量回収して定量した結果、グルコースからの乳
酸収率は85.2%と高い値であった。
【0065】実験後、電気透析装置を分解して内部の電
気透析膜を観察したところ、膜上のファウリングは全く
見られなかった。
【0066】次に、下記実施例2および比較例1では、
電気透析装置の塩室pHを中性以下にコントロールした
場合の電流効率の向上およびアンモニアの移動量の減少
を確認する実験を行った。
【0067】実施例2 《電気透析装置の塩室pHを
5.5にコントロールした場合》 本実施例では、下記比較例1に示す従来の回分式の2室
法バイポーラ膜電気透析との対比をすべく、本発明の乳
酸発酵装置側の発酵モデルとして、乳酸アンモニウムお
よび乳酸ナトリウム共に、電気透析装置の塩室に供給さ
れる塩室初期乳酸濃度を1.9重量%とし、電気透析
中、塩室には常に50%乳酸水溶液を供給することによ
り塩室pHを5.5にコントロールして、電気透析を行
った。すなわち、下記に示す構成要件を備えた電気透析
装置を用いて表1および下記に示す条件下で運転して、
表1に示す乳酸アンモニウムおよび乳酸ナトリウムにつ
き、それぞれ電気透析を行った。得られた結果を下記表
1に示す。
【0068】・2室法バイポーラ膜電気透析(バイポー
ラ膜−アニオン交換膜) ・膜面積:1.0dm2 ×4セル ・回収室:0.5N硫酸水溶液300ml仕込み ・塩室pH:50%乳酸水溶液添加により、塩室pHを
5.5にコントロール ・総電圧:17V ・通電時間:100分
【0069】
【表1】
【0070】比較例1 《塩室pH調整せず、回分式バ
イポーラ膜電気透析の場合》 本比較例は、従来の回分式による2室法バイポーラ膜電
気透析の場合の例であって、乳酸菌等の発酵による乳酸
をアルカリで調整し、遠心分離して得られる乳酸塩溶液
のモデルとして、電気透析装置の塩室に初期に仕込まれ
る乳酸濃度を、乳酸アンモニウムでは7.42重量%と
し、乳酸ナトリウムでは7.95重量%とした。また、
該塩室への乳酸仕込み量を、乳酸アンモニウムでは0.
49molとし、乳酸ナトリウムでは、0.53mol
として電気透析を開始し、電気透析中、塩室pHはコン
トロールせずに、電気透析を行った。すなわち、下記に
示す構成要件を備えた回分式2室法バイポーラ膜電気透
析装置を用いて表2および下記に示す条件下で運転し
て、下記表2に示す乳酸アンモニウムおよび乳酸ナトリ
ウムにつき、それぞれ電気透析を行った。得られた結果
を下記表2に示す。
【0071】・2室法バイポーラ膜電気透析(バイポー
ラ膜−アニオン交換膜) ・膜面積:1.0dm2 ×4セル ・回収室:0.5N硫酸水溶液300ml仕込み ・塩室pH:コントロールなし ・総電圧:17V ・通電時間:80分
【0072】
【表2】
【0073】実施例2および比較例1の実験結果より、
上記表1〜2に示すように電気透析装置の塩室pHを中
性以下にコントロールした場合、電流効率の向上および
アンモニアの移動量の減少が図られることが確認でき
た。
【0074】
【発明の効果】本発明に係る新規な乳酸の発酵方法で
は、糸状菌のリゾプス属に属する乳酸発酵能を有する微
生物による乳酸発酵装置と、バイポーラ膜とアニオン交
換膜によりセル構成される2室法バイポーラ膜電気透析
装置を組み合わせることにより、工業的に有用でかつ実
用性のある電気透析発酵を可能とするものであり、食品
添加物として清酒、清涼飲料、漬物、醤油、製パンまた
はビールなどの製造への利用や、工業として皮革、繊
維、プラスチック、医薬品または農薬などの製造への使
用がますます促進され、さらには安全性の高い溶剤、洗
浄剤、生分解性ポリマーなどへの用途の拡大も可能とな
る。
【0075】また、本発明の方法では、従来技術のうち
本発明に近い技術内容を開示した月刊フードケミカル
(1996−6,p30〜35)や特開平8−2810
77号公報等に記載の乳酸塩のバイポーラ電気透析が抱
える下記の技術的課題を解決してなる優れた効果を奏す
るものである。
【0076】1) 一般の乳酸菌、枯草菌などのバクテ
リアによる電気透析発酵では、乳酸発酵装置からバイポ
ーラ膜電気透析装置に持ち込まれる培地に含まれる栄養
成分や菌体の分泌するタンパク成分などが電気透析膜に
堆積してスケール化することによる、電気透析膜のファ
ウリング(よごれ)の問題がある。さらにこれらのバク
テリアでは、電気透析の前に培地から膜分離、遠心分離
などにより菌体を除去する必要があり、工業的に実用化
するには問題があった。
【0077】しかしながら、本発明では、2室法バイポ
ーラ電気透析とリゾプス属に属する乳酸発酵能を有する
微生物による乳酸発酵の組み合わせにより、初めて長期
の連続運転が可能であり、工業的に実用化が図れる。こ
れは、リゾプス属に属する乳酸発酵能を有する微生物の
培地が他の乳酸発酵と比べて有機物栄養素などを必要と
しないことから、電気透析膜のよごれが生じないことに
よる。
【0078】2) よって上記公報を含め現在用いられ
ている回分式の2室法バイポーラ電気透析では、後半に
pHが上昇し、水酸化物イオンの移動が激しくなって電
流効率が低下し、特に乳酸ナトリウムでは著しく効率が
悪い(ただし、乳酸アンモニウムでは、この効率低下が
軽減される。)。
【0079】しかしながら、本発明では、発酵と組み合
わせることにより、常に中性以下で乳酸の回収をするこ
とになり、電流効率を高く維持できる。例えば、特開平
8−281077号公報の実施例によると、乳酸アンモ
ニウムの回分式バイポーラ膜電気透析では、電流効率は
70%であるが、本発明の方法による乳酸アンモニウム
のバイポーラ膜電気透析では、容易に電流効率90%以
上を得ることができる。
【0080】3) 回分式の電気透析では、塩室がアル
カリ性となるために、アニオン交換膜は、耐アルカリ性
の特殊な膜が必要である。
【0081】しかしながら、本発明の方法では、一般の
安価なアニオン交換膜を用いることができる。
【0082】4) 特開平8−281077号公報で
は、その実施例にあるようにバクテリアの1種である乳
酸菌による電気透析発酵を用いているため回分式の電気
透析を行っている(なぜならば、いわゆる電気透析発酵
では、上記1)に示す技術的課題を有するためであ
る。)。そのため、弱塩基の乳酸塩とする必要がある。
しかしながら、乳酸アンモニウムの場合は、塩室でアン
モニアがガス化して、ブリスターが発生し、塩室に不活
性ガスを送るなどして、ストリッピングする必要があ
る。
【0083】一方、本発明の方法において、乳酸ナトリ
ウム等の乳酸のアルカリ金属塩を用いる場合では、上記
のような技術的課題が生ずることはない。また、乳酸ア
ンモニウムでも、本発明のように中性では、アンモニア
は塩として存在し、ガス化の問題はない。
【0084】5) 乳酸アンモニウムの回分式2室法バ
イポーラ膜電気透析では、塩室のpHが上昇するとアン
モニア分子の拡散透析による移動が起こり、膜を透過し
て回収室側に混入する。
【0085】しかしながら、本発明の方法では、塩室が
常に中性以下に保たれるので、アンモニアは乳酸アンモ
ニウムとして存在し、アンモニアの拡散透析による移動
は極めて少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 リゾプス属に属する乳酸発酵能を有する微生
物を用いた乳酸発酵装置と、バイポーラ膜とアニオン交
換膜により構成される2室法電気透析装置とを組み合わ
せた電気透析発酵装置を概略的に表した図面である。
【符号の説明】
1…電気透析発酵装置、11…乳酸発酵装置、
12…発酵部、13…発酵液取り出しポン
プ、 14…クッションタンク、15…発酵
液循環ポンプ、 16a〜16e…配
管、17…pH感知装置、 18…
発酵タンク蓋部、19…発酵タンク、
20…フィルター部材、21…配管、
22…熱交換装置、23…レベルコ
ントローラ、 24…水供給ポンプ、25
…配管、31…2室法バイポーラ膜電気透析装置、 3
2…整流器、33…塩室の入口、
34…配管、35…塩室の出口、
36…回収室の出口、37…回収室の入口、
38…回収液タンク、39…配管、
40…回収液循環ポンプ、4
1…配管、 42…電極室
の出口、43…電極液タンク、 4
4…配管、45…電極液循環ポンプ、
46…配管、47…電極室の入口、BP…バイポーラ
膜、 A…アニオン交換膜、a…塩
室、 b…回収室、c…
電極室。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三浦 重信 東京都杉並区宮前一丁目16番2号 株式会 社武蔵野化学研究所東京研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リゾプス属に属する乳酸発酵能を有する
    微生物を用いた乳酸発酵装置で生成される乳酸を、バイ
    ポーラ膜とアニオン交換膜により構成される2室法バイ
    ポーラ膜電気透析装置に導入し、逐次系外に除去するこ
    とを特徴とする乳酸の発酵方法。
  2. 【請求項2】 前記乳酸発酵装置で生成される乳酸を、
    一価の乳酸塩の形に変換した後、前記2室法バイポーラ
    膜電気透析装置に導入することを特徴とする、請求項1
    に記載の乳酸の発酵方法。
  3. 【請求項3】 前記一価の乳酸塩が、乳酸アンモニウム
    であることを特徴とする、請求項2に記載の乳酸の発酵
    方法。
  4. 【請求項4】 前記一価の乳酸塩が、乳酸ナトリウムで
    あることを特徴とする、請求項2に記載の乳酸の発酵方
    法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007077081A (ja) * 2005-09-14 2007-03-29 Musashino Chemical Laboratory Ltd 乳酸アンモニウムの製造方法
JP2007215427A (ja) * 2006-02-14 2007-08-30 Musashino Chemical Laboratory Ltd 乳酸の製造方法
WO2007097260A1 (ja) 2006-02-24 2007-08-30 Toray Industries, Inc. 化学品の製造方法、および、連続発酵装置
WO2011068206A1 (ja) 2009-12-04 2011-06-09 三菱瓦斯化学株式会社 光学活性アミノ酸または光学活性アミノ酸アミドの製造法

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