JPH1072509A - 新規なポリビニルアルコール系重合体 - Google Patents

新規なポリビニルアルコール系重合体

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JPH1072509A
JPH1072509A JP8308653A JP30865396A JPH1072509A JP H1072509 A JPH1072509 A JP H1072509A JP 8308653 A JP8308653 A JP 8308653A JP 30865396 A JP30865396 A JP 30865396A JP H1072509 A JPH1072509 A JP H1072509A
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JP
Japan
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group
polyvinyl alcohol
structural unit
based polymer
gel
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JP8308653A
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English (en)
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Masao Tanihara
正夫 谷原
Yoshiharu Fukunishi
義晴 福西
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Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】柔軟性、透明性、耐湿熱性、耐熱水性、吸水
性、閉鎖性に優れるゲルを形成するPVA系重合体、そ
れよりなるゲル基材、ゲル及び該ゲルからなる創傷被覆
材の提供。 【解決手段】 下記の式(I)の構造単位(I)を0.05〜
0.50のモル分率で且つ下記の式(II)の構造単位(II)
を0.0001〜0.50のモル分率で有するPVA系重
合体により上記目的が達成される。 【化1】 [R1はH又は1価炭化水素基、R2及びR3は1価炭化
水素基、又はR2とR3が一緒に環を形成するか、或いは
1、R2及びR3が一緒に環を形成し、Xは式−CO−
Y、−Y又は式−CO−COOHで表される基(Yはカ
ルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基及び/又はリン
酸基が直接又は間接的に結合している炭化水素基)であ
るか、或いはそれが結合している酸素原子と共にリン酸
基を形成している。]

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なポリビニル
アルコール系重合体、該ポリビニルアルコール系重合体
を含むゲル基材およびゲル、並びに前記のゲルから主と
してなる創傷被覆材に関する。より詳細には、本発明
は、柔軟性および透明性に優れていて、しかも蒸気滅菌
処理や水中煮沸処理などに耐え得る良好な耐湿熱性およ
び耐熱水性を備え、しかも吸水性および閉鎖性にも優れ
るゲルを形成することのできる新規なポリビニルアルコ
ール系重合体、それよりなるゲル基材およびゲル、並び
に前記のゲルから主としてなる創傷被覆材に関する。
【0002】
【従来の技術】ゲル、特に水を媒体として含む高分子含
水ゲルは、古来から実生活などにおいても広く用いられ
ている。なかでも食品分野では、例えば寒天、ゼラチ
ン、コンニャクなどにもみられるように、天然高分子か
らなる各種のゲル基材があり、それらのゲル基材からな
る含水ゲル、すなわち食品が従来から汎用されている。
また、最近では、ゲルの有する優れた機能を活かした技
術開発が広く進められていて、それに伴ってゲルの用途
も広がる一方であり、例えば、紙おむつや生理用品に代
表される高吸水性ゲル、酵素や菌体を固定化するための
ゲル、コンタクトレンズ、人工筋肉、人工臓器、創傷被
覆材などのような生体に対して親和性のあるゲルの技術
開発が著しい。さらに、ゲルの相転移現象の発見に代表
される、ゲルに対する基礎科学の発展に伴い、例えばセ
ンサー、機能性分離膜、放出制御膜、スイッチ、アクチ
ュエータなどのような高機能製品の用途にゲルを利用す
ることも色々試みられるようになっている。
【0003】一方、ゲルの基材である高分子化合物につ
いてみると、ゼラチンや各種多糖類に代表される天然高
分子と、ポリアクリル酸、ポリ(メタクリル酸2−ヒド
ロキシエチル)、ポリアクリルアミド、ポリビニルアル
コールなどの合成高分子に大別されるが、最近の新しい
ゲルの用途によっては、柔軟性、透明性、耐湿熱性およ
び耐熱水性を兼ね備えたものが強く要求されるようにな
っており、そのようなゲルを形成し得る高分子基材の開
発が求められている。
【0004】ところで、上記したように、ゲルの用途の
一つに創傷被覆材があるが、創傷被覆材では、一般に創
傷からの滲出液中に含まれる治癒を促進する種々の増殖
因子を創傷被覆材によって創傷部に閉鎖的に保持して創
傷の治癒を促進させる機能を有していることが求められ
る。すなわち、外傷、熱傷、潰瘍、褥瘡などの創傷の治
療には従来からガーゼや軟膏類が用いられており、これ
は創傷部からの滲出液を吸収すると共に外部からの細菌
などの侵入を防ぐ効果を有している。近年、創傷部から
の滲出液中に治癒を促進する種々の増殖因子(例えばb
FGF、TGFβなど)が存在することが明らかになり
[Howell, J.M., Current and Future Trends in Wound
Healing, Emerg. Med. Clin. North Amer., 10, 655-6
63(1992)等を参照]、そのような増殖因子を創傷部に保
持することによって創傷部の治癒を促進する効果を示す
閉鎖性の創傷被覆材が注目されるようになってきた[Ea
glstein, W.E., Experience with biosynthetic dressi
ngs, J. Am. Acad. Dermatol., 12,434-440 (1985)参
照]。
【0005】そして、閉鎖性の創傷被覆材としては、ポ
リビニルアルコール含水ゲル、ポリエチレングリコール
含水ゲル、ポリアクリルアミド含水ゲルなどの含水ゲル
と共に、ポリウレタンフイルム、ハイドロコロイド、ア
ルギン酸塩繊維からなる不織布、ポリビニルアルコール
スポンジなどが知られている。特許公報上では、具体的
には例えば、(1)不溶性アルギン酸塩と可溶性アルギ
ン酸塩との混合アルギン酸塩の繊維の不織布よりなる傷
手当て具(特表平4−501067号公報);(2)生
体親和性の合成材料よりなる連続気泡フォームの細孔に
硼酸塩で変性したグアーガムのヒドロゲルを包含させ、
該ヒドロゲルに遊離ヒドロキシル基および/またはアミ
ノ基と二官能カップリング剤とにより創傷治癒を促進す
るペプチドを表面に結合させるか、および/または殺菌
性または抗真菌性の物質を含ませた創傷被覆材(特表平
6−500028号公報);(3)ケン化度が95モル
%以上で粘度平均重合度が1500以上のポリビニルア
ルコールと2〜8個の水酸基を有する水溶性有機化合物
を用いて形成したヒドロゲルよりなる創傷被覆材(特開
昭58−92359号公報);(4)ポリビニルアルコ
ールと、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン
酸)などの複合化剤とを物理的に架橋させた半結晶質の
半透明で水不溶性の、創傷被覆材などとして用いられる
ハイドロゲル(特開平6−212045号公報);
(5)ヒアルロン酸および/またはその塩を包括したポ
リビニルアルコール含水ゲルに塩酸ヒドロカルビンなど
を包含させた創傷被覆材などとして用いられる持続性活
性体(特開平3−215417号公報)などが提案され
ている。
【0006】そして、上記した従来公知の創傷被覆材に
おいて、ポリウレタンフイルムよりなる創傷被覆材は透
明性および閉鎖性の点ではある程度満足できるが、吸水
性がないために滲出液が多い創傷部には使用できないと
いう欠点がある。また、ポリエチレングリコール含水ゲ
ルおよびポリアクリルアミド含水ゲルには透明なものも
あるが、ハイドロコロイド系創傷被覆材の場合と同様に
創傷部に残存して慢性的な炎症反応を生ずる心配があ
り、しかも両者の原料モノマーは毒性が強く、含水ゲル
中に含まれる残存モノマーや分解成分による毒性の発現
の心配がある。そして、ハイドロコロイド、ポリビニル
アルコールスポンジおよび上記(1)に挙げた混合アル
ギン酸塩繊維の不織布よりなる傷手当て具は、滲出液の
保持能を有するものの、不透明であるために創傷部の観
察ができないという欠点があり、しかもハイドロコロイ
ド系創傷被覆材ではその主要成分が生体組織中に長期間
残存して慢性的な炎症を引き起こすということも報告さ
れている[Young, S.R.et al., Comparison of the eff
ect of semi-occlusive polyurethane dressings and h
ydrocolloid dressings on dermal repair:1. Cellula
r changes, J. Invest. Dermatol., 97,586-592(199
1)参照]。しかも、これらの創傷被覆材を使用した場
合は、一旦細菌感染を起こすとその湿潤環境が細菌にと
って好適な培地となるため、細菌が急激に増殖して重度
の感染に発展する恐れがある。
【0007】さらに、上記(2)に挙げた創傷被覆材で
は、表面に創傷治癒促進ペプチドが化学結合されてお
り、この結合は切断されないので、創傷部被覆材に接触
している生体部位でしか効果が発現しないという欠点が
ある。また、上記(3)に挙げた創傷被覆材は、ある程
度の機械的強度を有しているが、不透明であるために創
傷部に貼り付けた場合に創傷部を観察することができ
ず、しかも例えば121℃の温度で20分間湿熱蒸気滅
菌した場合には溶解してしまい、耐湿熱性に劣るので完
全な滅菌処理を行うことができないという欠点があり、
その上創傷被覆材が溶解しないような温度でも溶出物が
多く安全性が低いという欠点がある。
【0008】そして、上記(4)に挙げたハイドロゲル
は、その厚さが1000μm以下の場合には半透明であ
るとされているが、このハイドロゲルを創傷被覆材とし
て用いた場合には、厚さが1000μm以下の場合であ
っても創傷部を観察し得るに足る透明性を有していな
い。そして、閉鎖性創傷被覆材として十分な吸水性を発
現させるためには1000μmを超える厚さが必要であ
るが、その場合には不透明ないしはそれに近いものとな
って創傷部の観察は一層困難になる。その上、このハイ
ドロゲルでは複合化剤とポリビニルアルコールとの結合
が物理的な架橋であるために、湿熱蒸気滅菌が不可能で
あるため完全な滅菌処理を行うことができず、しかもハ
イドロゲルが溶解しないような低温においても溶出物が
多くて安全性が低く、創傷被覆材としては不適当であ
る。
【0009】また、上記(5)に挙げた持続性活性体に
おけるポリビニルアルコール含水ゲルは、製造条件によ
っては透明になることがあるが、物理的な強度が低いた
めに取り扱い性に劣っており、また架橋度が低いもので
は湿熱蒸気滅菌が不可能であって滅菌処理を完全に行う
ことができず、さらに含水ゲルが溶解しないような温度
でも溶出物が多くて安全性が低いという欠点がある。し
かも、この含水ゲルに放射線照射などを行って架橋度を
高くすると、放射線による主鎖の切断、含水率の低下、
柔軟性の低下などを生ずるという問題があり、創傷被覆
材として充分に満足のゆく特性を備えていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、透明
性および柔軟性に優れていて、しかも高温での蒸気滅菌
処理や水中煮沸処理などに耐え得る良好な耐湿熱性およ
び耐熱水性を備え、さらに吸水性および閉鎖性に優れる
ゲルを形成することができ、その上溶出物が少なくて安
全性に優れており、それによって、創傷被覆材をはじめ
として、貼付剤の基材、酵素や菌体を固定化するための
ゲル、コンタクトレンズ、人工筋肉、人工軟骨、人工関
節、人工臓器、センサー、機能性分離膜、放出制御膜、
スイッチ、アクチュエータ、マイクロマシンなどの種々
の用途に有効に使用することのできる含水ゲルや含溶媒
ゲルを形成し得るポリビニルアルコール系重合体を提供
することである。そして、本発明の目的は、上記のポリ
ビニルアルコール系重合体から主としてなるゲル基材お
よびゲルを提供することである。さらに、本発明の目的
は、上記のゲルから主としてなる創傷被覆材を提供する
ことである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記のような状況下に、
本出願人においては、ゲルの上記したような高機能性、
そのますます発展しつつある用途などに着目して、ポリ
ビニルアルコール系重合体をベースとするゲルやその用
途などに関して従来から色々研究を行ってきた。その結
果、シンジオタクティシティーが55%以上のポリビニ
ルアルコール系重合体、そのうちでも下記の一般式
(I);
【0012】
【化3】 (式中、R1は水素原子または1価の炭化水素基であ
り、そしてR2およびR3はそれぞれ独立して1価の炭化
水素基であるか又はR2とR3が一緒になってそれらが結
合している炭素原子と共に環を形成するか、或いは
1、R2およびR3が一緒になってそれらが結合してい
る炭素原子と共に環を形成している)で表される構造単
位を有するシンジオタクティシティーが55%以上のポ
リビニルアルコール系重合体から得られるゲルが、耐水
性、耐熱性、耐久性、機械的強度などに優れており、貼
付剤の基材、酵素や菌体を固定化するためのゲル、コン
タクトレンズ、人工筋肉、人工臓器、センサー、機能性
分離膜、放出制御膜、スイッチ、アクチュエータなどに
用い得ることを見出して、先に出願した(特開平3−2
24628号)。
【0013】そして、本発明者らが、本出願人による上
記の発明を踏まえて更に研究を重ねたところ、上記の一
般式(I)で表される構造単位を特定の割合で含有する
ポリビニルアルコール系重合体において、更に、下記の
一般式(II);
【0014】
【化4】 [式中、Xは、式−CO−Y、式−Yまたは式−CO−
COOHで表される基(前記式中Yは、カルボキシル
基、スルホン酸基、アミノ基およびリン酸基から選ばれ
る少なくとも1種の極性基で変性された炭化水素基、ま
たはカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基およびリ
ン酸基から選ばれる少なくとも1種の極性基を有する基
で変性された炭化水素基を示す)であるか、或いはそれ
が結合している酸素原子と共にリン酸基を形成してい
る]で表される構造単位を特定の割合で含有させると、
それによって得られるポリビニルアルコール系重合体
が、上記した特開平3−224628号の発明で得られ
るポリビニルアルコール系重合体よりなるゲルと同様に
耐水性、耐熱性(耐熱水性や耐湿熱性)、耐久性、機械
的強度などの特性に優れると共に、さらに柔軟性、透明
性、吸水性、閉鎖性などにも優れていること、しかも上
記の一般式(II)で表される構造単位を含有させても、
高温の熱水で処理したときに溶出物が少なくて安全性に
も優れていることを見出した。
【0015】そして、本発明者らは、上記した一般式
(I)で表される構造単位および一般式(II)で表され
る構造単位を含有するポリビニルアルコール系重合体の
物性や用途などについて更に研究を行ったところ、この
ポリビニルアルコール系重合体よりなるゲルは、上記し
た貼付剤の基材、酵素や菌体を固定化するためのゲル、
コンタクトレンズ、人工筋肉、人工臓器、センサー、機
能性分離膜、放出制御膜、スイッチ、アクチュエータな
どに用い得ることは勿論のこと、特にその優れた透明
性、柔軟性、耐熱水性、耐湿熱性、安全性、吸水性、閉
鎖性などの特性を活かして、創傷被覆材として極めて有
効に使用し得ることを見出し、それらの知見に基づいて
本発明を完成した。
【0016】すなわち、本発明は、(i) 下記の一般
式(I);
【0017】
【化5】 (式中、R1は水素原子または1価の炭化水素基であ
り、そしてR2およびR3はそれぞれ独立して1価の炭化
水素基であるか又はR2とR3が一緒になってそれらが結
合している炭素原子と共に環を形成するか、或いは
1、R2およびR3が一緒になってそれらが結合してい
る炭素原子と共に環を形成している)で表される構造単
位[以下「構造単位(I)」という]を0.05〜0.
50のモル分率で含有し;且つ(ii) 下記の一般式(I
I);
【0018】
【化6】 [式中、Xは、式−CO−Y、式−Yまたは式−CO−
COOHで表される基(前記式中Yは、カルボキシル
基、スルホン酸基、アミノ基およびリン酸基から選ばれ
る少なくとも1種の極性基で変性された炭化水素基、ま
たはカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基およびリ
ン酸基から選ばれる少なくとも1種の極性基を有する基
で変性された炭化水素基を示す)であるか、或いはそれ
が結合している酸素原子と共にリン酸基を形成してい
る]で表される構造単位[以下「構造単位(II)」とい
う]の少なくとも1種を0.0001〜0.50のモル
分率で含有するポリビニルアルコール系重合体である。
【0019】そして、本発明は、上記の構造単位(II)
のモル分率が下記の数式;
【0020】
【数3】 {(1−Cest)×Cest}×0.01≦Cpol<{(1−Cest)×Cest}×2.0 [式中、Cpolは上記の一般式(II)で表される構造単
位のモル分率、そしてCestは上記の一般式(I)で表
される構造単位のモル分率を示す]を満足しているポリ
ビニルアルコール系重合体;および構造単位(I)の下
記の数式で表される平均連鎖長(Lest);
【0021】
【数4】 Lest=(Cest/Cmet)×2 [式中、Lestは構造単位(I)の平均連鎖長、Cest
構造単位(I)のモル分率、そしてCmetはポリビニル
アルコール系重合体の主鎖を構成するメチレン炭素のう
ちで、水酸基または式−OXで表される基が結合してい
るメチン炭素と構造単位(I)を構成するメチン炭素に
よって挟まれているメチレン炭素のモル分率を示す]が
2.0以上である上記のポリビニルアルコール系重合体
をその好ましい態様として包含する。
【0022】さらに、本発明は、上記のポリビニルアル
コール系重合体を含むことを特徴とするゲル基材、およ
び該ゲル基材から得られるゲルを包含する。
【0023】そして、本発明は、上記のゲルから主とし
てなる創傷被覆材である。
【0024】
【発明の実施の形態】以下で本発明について詳細に説明
する。本発明のポリビニルアルコール系重合体は、上記
の一般式(I)で表される構造単位(I)および上記の
一般式(II)で表される構造単位(II)を必須の構造単
位として含むポリビニルアルコール系重合体である。そ
して、本発明における「ゲル基材」とは、ゲルを形成す
るのに用いる、前記したポリビニルアルコール系重合体
基材(すなわちゲル化する前のポリビニルアルコール系
重合体)をいう。また、本発明における「ゲル」とは、
水および/または有機溶媒を含む、ゲル状を呈する前記
のポリビニルアルコール系重合体からなるゲルをいう。
【0025】本発明のポリビニルアルコール系重合体に
含まれる構造単位(I)において、基R1は水素原子ま
たは1価の炭化水素基であり、基R2および基R3はそれ
ぞれ独立して1価の炭化水素基であるか又は基R2と基
3が一緒になってそれらが結合している炭素原子と共
に環を形成するか、或いは基R1、基R2および基R3
一緒になってそれらが結合している炭素原子と共に環を
形成している。
【0026】構造単位(I)において、R1が水素原子
で、R2およびR3が1価の炭化水素基である場合は、R
2とR3が同じ1価の炭化水素基であっても又は異なる1
価の炭化水素基であってもよい。また、R1、R2および
3のすべてが1価の炭化水素基である場合は、3者が
同じ1価の炭化水素基であっても、2者が同じ1価の炭
化水素基からなり残りの1者が別の1価の炭化水素基で
あっても又は3者がそれぞれ異なる1価の炭化水素基で
あってもよい。
【0027】構造単位(I)におけるR1、R2およびR
3が1価の炭化水素基である場合は、炭素数1〜18の
アルキル基、1価の芳香族炭化水素基またはシクロアル
キル基であるのが好ましく、限定されるものではない
が、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブ
チル基、t−ブチル基、ヘキシル基、ペンチル基、オク
チル基、ラウリル基、ステアリル基などのアルキル基;
フェニル基、ナフチル基、アンスリル基などの1価の芳
香族基;シクロヘキシル基、ビシクロ[3.1.0]ヘ
キシル基、ビシクロ[2.2.0]ヘキシル基等のシク
ロアルキル基などを挙げることができる。
【0028】また、R2とR3が一緒になってそれらが結
合している炭素原子と共に環を形成するか、或いは
1、R2およびR3が一緒になってそれらが結合してい
る炭素原子と共に環を形成している場合は、それらの環
の例として飽和炭化水素環、不飽和炭化水素環などを挙
げることができ、具体例としては、ベンゼン環、シクロ
ヘキサン環、ノルボルナン環、アダマンタン環、ノルア
ダマンタン環、ナフタレン環などを挙げることができ
る。
【0029】限定されるものではないが、構造単位
(I)の具体例としては、下記の化学式で表される構造
単位を挙げることができる。
【0030】
【化7】
【0031】そして、本発明のポリビニルアルコール系
重合体は、その主鎖中に、1種類の構造単位(I)のみ
を含有していても、または2種以上の構造単位(I)を
含有していてもよい。特に、本発明では、ポリビニルア
ルコール系重合体における構造単位(I)が、上記した
式(Ia)および(Ib)で表される構造単位のいずれ
か一方または両方であるのが、ゲルの機械的強度、ポリ
ビニルアルコール系重合体の製造の容易性などの点から
好ましい。
【0032】また、ポリビニルアルコール系重合体がそ
の主鎖中に上記した構造単位(I)と共に含有する上記
の一般式(II)で表される構造単位(II)において、X
は、式−CO−Y、式−Yまたは式−CO−COOHで
表される基であるか、或いはそれが結合している酸素原
子と共にリン酸基を形成している。
【0033】構造単位(II)において、Xが式−CO−
Yまたは式−Yで表される基である場合に、前記の基Y
は、(イ) カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基
およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種の極性基で
変性された炭化水素基、すなわちカルボキシル基、スル
ホン酸基、アミノ基およびリン酸基から選ばれる少なく
とも1種の極性基が、ポリビニルアルコール系重合体の
水酸基に由来する酸素原子に結合している炭化水素基の
炭素原子に直接結合している炭化水素基;或いは(ロ)
カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基およびリン
酸基から選ばれる少なくとも1種の極性基を有している
基で変性された炭化水素基、すなわちカルボキシル基、
スルホン酸基、アミノ基およびリン酸基から選ばれる少
なくとも1種の極性基が、ポリビニルアルコール系重合
体の水酸基に由来する酸素原子に結合している炭化水素
基の炭素原子に直接結合しておらずに、他の基または他
の結合を介して該炭化水素基に結合している炭化水素
基;のいずれであってもよい。そして、上記(イ)およ
び(ロ)のいずれの場合も、基Yは、カルボキシル基、
スルホン酸基、アミノ基およびリン酸基から選ばれる少
なくとも1種の極性基を、何らかの結合形態で有してい
る炭化水素基である(かかる点から以下基Yを「極性基
変性炭化水素基Y」ということがある)。
【0034】また、極性基変性炭化水素基Yは、カルボ
キシル基、スルホン酸基、アミノ基および/またはリン
酸基以外に、必要に応じて、例えば、水酸基、ハロゲン
原子、ニトリル基、イミダゾール基、アミド結合、エー
テル結合、エステル結合、ウレタン結合、チオエーテル
結合、ジスルフィド結合などの他の基や結合を有してい
てもよい。
【0035】構造単位(II)におけるXが式−CO−Y
または式−Yで表される基である場合に、その極性基変
性炭化水素基Yにおける炭化水素基部分は、飽和または
不飽和の炭化水素基のいずれであってもよいが、炭素数
1〜18のアルキレン基、アリーレン基またはシクロア
ルキレン基であるのが好ましい。より具体的には、極性
基変性炭化水素基Yにおける炭化水素基の例としては、
メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、ブチレン
基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オク
チレン基などのアルキレン基;フェニレン基、ナフチレ
ン基などの2価の芳香族炭化水素基;シクロヘキシレン
基などの2価の脂環式炭化水素基などを挙げることがで
き、そのうちでもメチレン基、エチレン基、プロピレン
基、ブチレン基などの低級アルキレン基であるのが、本
発明のポリビニルアルコール系重合体の製造の容易性な
どの点から好ましい。
【0036】また、構造単位(II)において、基Xはそ
れが結合している酸素原子と共にリン酸基を形成しても
よく、その場合には、構造単位(II)は、リン酸基が直接
ポリビニルアルコール系重合体の主鎖を構成する炭素原
子に結合した構造を有する。
【0037】限定されるものではないが、構造単位(I
I)の例としては、下記の化学式で表される構造単位を
挙げることができる。 Xが、カルボキシル基変性炭化水素基Yまたは式−CO
−COOHで表される基を有している構造単位(II)で
ある場合の例としては、下記の化学式(IIa-1)〜(I
Ia-8)で表される構造単位を挙げることができる。
【0038】
【化8】
【0039】また、Xが、スルホン酸基変性炭化水素基
Yを有している構造単位(II)である場合の例として
は、下記の化学式(IIb-1)〜(IIb-10)で表される
構造単位を挙げることができる。
【0040】
【化9】
【0041】そして、Xが、アミノ基変性炭化水素基Y
を有している構造単位(II)である場合の例としては、
下記の化学式(IIc-1)〜(IIc-10)で表される構造
単位を挙げることができる。
【0042】
【化10】
【0043】そして、Xが、リン酸基変性炭化水素基Y
を有している構造単位(II)またはそれが結合している
酸素原子と共にリン酸基を形成している構造単位(II)
である場合の例としては、下記の化学式(IId-1)〜
(IId-3)で表される構造単位を挙げることができ
る。
【化11】
【0044】さらに、上記で例示した構造単位(II)以
外にも、構造単位(II)は、基Yがカルボキシル基、ス
ルホン酸基、アミノ基およびリン酸基のうちの2種以上
を有している極性基変性炭化水素基である、式−CO−
Yまたは式−Yで表される基であってもよい。また、本
発明のポリビニルアルコール系重合体は、その主鎖中
に、1種類の構造単位(II)のみを含有していても、ま
たは2種以上の構造単位(II)を含有していてもよい。
【0045】そして本発明では、ポリビニルアルコール
系重合体における構造単位(II)が、上記の化学式(II
a−1)、(IIa−4)、(IIb−1)、(IIb−
4)、(IIb−5)、(IIb−6)、(IIc−1)、
(IIc−4)、(IIc−5)、(IIc−6)、(IId−
1)、(IId−2)、(IId−3)で表される構造単位
のいずれかであるのが、ポリビニルアルコール系重合体
の製造の容易性や、得られるポリビニルアルコール系重
合体の性質などの点から好ましい。
【0046】そして、本発明のポリビニルアルコール系
重合体では、構造単位(I)が上記の化学式(Ia)お
よび/または化学式(Ib)で表される構造単位であ
り、且つ構造単位(II)が、上記したmが2〜4である
化学式(IIa-1)、nが1〜4である化学式(IIa-
4)、pが1〜4である化学式(IIb-1)、qが1〜
4である化学式(IIb-4)、rおよびsが1〜4であ
る化学式(IIb-5)、tが1〜4である化学式(IIb-
6)、uが1〜4である化学式(IIc-1)、vが1〜
4である化学式(IIc-4)、wおよびxが1〜4であ
る化学式(IIc-5)、化学式(IIc-6)、化学式(II
d-1)、yが1〜4である化学式(IId-2)、zが1
〜4である化学式(IId-3)で表される構造単位の少
なくとも1種であるのが特に好ましく、そのようなポリ
ビニルアルコール系重合体から得られるゲルは柔軟性、
透明性、耐湿熱性、耐熱水性、吸水性、閉鎖性、製造の
容易性などの点で一層優れている。
【0047】そして、本発明のポリビニルアルコール系
重合体は、上記した構造単位(I)を、ポリビニルアル
コール系重合体の主鎖を構成する全構造単位に基づい
て、0.05〜0.50のモル分率で含有していること
が必要であり、0.10〜0.40のモル分率で含有す
るのが好ましい。ポリビニルアルコール系重合体におけ
る構造単位(I)のモル分率が0.05未満であると、
ポリビニルアルコール系重合体から形成したゲルが充分
な強度を持たなくなり、しかもその耐熱水性および透明
性が低下して実用に耐えなくなり、創傷被覆材をはじめ
として上記した各種の用途に有効に使用できなくなる。
一方、ポリビニルアルコール系重合体における構造単位
(I)のモル分率が0.50を超えると、ポリビニルア
ルコール系重合体からゲルを形成したときに、ゲルの含
水率などの溶媒の含有率が低下し、しかも柔軟性および
透明性が低下する。ここで、本発明でいうポリビニルア
ルコール系重合体における構造単位(I)のモル分率
は、1H−NMR測定により決定することができる。
【0048】また、本発明のポリビニルアルコール系重
合体は、上記した構造単位(II)を0.0001〜0.5
0のモル分率で含有することが必要であり、下記の数式
;
【0049】
【数5】 {(1−Cest)×Cest}×0.01≦Cpol<{(1−Cest)×Cest}×2.0 [式中、Cpolは構造単位(II)のモル分率、そしてC
estは構造単位(I)のモル分率を示す]を満足するモ
ル分率で含有していることが好ましく、下記の数式;
【0050】
【数6】 {(1−Cest)×Cest}×0.05≦Cpol≦{(1−Cest)×Cest}×1.0 (式中、CpolおよびCestは上記と同じ)を満足する範
囲で含有していることがより好ましい。
【0051】ポリビニルアルコール系重合体において、
構造単位(II)のモル分率Cpolが0.0001未満で
あるとポリビニルアルコール系重合体から形成されるゲ
ルの透明性および柔軟性が不足し、一方構造単位(II)
のモル分率Cpolが0.50を超えるとポリビニルアル
コール系重合体から形成されるゲルの耐熱水性が低下す
る。ここで、本発明でいうポリビニルアルコール系重合
体における構造単位(II)のモル分率は、1H−NMR
測定または水系溶媒中における電位差滴定などにより求
められるが、1H−NMR測定による場合は溶媒の選択
によっては分子鎖の局所の運動の束縛によってシグナル
の定量性がしばしば不正確になることがあるので、水系
溶媒中における電位差滴定により求めるのが構造単位
(II)のモル分率を正確に求めることができ好ましい。
【0052】また、本発明のポリビニルアルコール系重
合体では、ポリビニルアルコール系重合体から形成され
るゲルの透明性および耐水性を一層良好なものとする点
から、構造単位(I)の、下記の数式で表される平均連
鎖長(Lest);
【0053】
【数7】 Lest=(Cest/Cmet)×2 [式中、Cestは構造単位(I)のモル分率、Cmetはポ
リビニルアルコール系重合体の主鎖を構成するメチレン
炭素のうちで、水酸基または式−OXで表される基が結
合しているメチン炭素と構造単位(I)を構成するメチ
ン炭素によって挟まれているメチレン炭素のモル分率を
示す]が2.0以上であるのが好ましく、3.0以上で
あるのがより好ましく、4.0以上であるのがさらに好
ましい。
【0054】ここで、上記の平均連鎖長(Lest)の内容
について説明する。本発明のポリビニルアルコール系重
合体の部分構造を示すと、例えば、下記の化学構造式
(III);
【0055】
【化12】 (式中、R1、R2、R3およびXは上記と同じ基を示
す)のように、ビニルアルコール単位、構造単位(I)
および構造単位(II)などが結合した形態になっている
が、上記でいうCmetとは、ポリビニルアルコール系重
合体の主鎖を構成するメチレン炭素(−CH2−)のうち
で、水酸基または式−OXで表される基が結合している
メチン炭素[すなわち基:−CH(OH)−または基:−
CH(OX)−]と構造単位(I)を構成するメチン炭
素[すなわち基:−CH−O−CO−C(R1)(R2)
(R3)−]によって挟まれているメチレン炭素[すなわ
ち化学構造式(III)において*の印を付した炭素]のポ
リビニルアルコール系重合体の全構造単位に対するモル
分率をいう。
【0056】したがって、ポリビニルアルコール系重合
体において、複数の構造単位(I)が、ビニルアルコー
ル単位や構造単位(II)によって隔離されておらずに、
互いに隣接して存在しているほど、上記の化学構造式
(III)に示した*印を付したメチレン炭素の数が少な
くなってそのモル分率Cmetが小さくなり[構造単位
(I)のモル分率の値よりも小さくなり]、その結果、
上記の数式で表される構造単位(I)の平均連鎖長
(Lest)は1よりも次第に大きくなる。そして、本発明
のポリビニルアルコール系重合体では、構造単位(I)
の平均連鎖長(Lest)が2以上であるのが好ましく、し
たがってポリビニルアルコール系重合体において複数の
構造単位(I)が互いに隣接してかたまって存在してい
る割合が高いほど好ましい。
【0057】ちなみに、ポリビニルアルコール系重合体
において、構造単位(I)同士が全く隣接しておらず、
複数の構造単位(I)が、ビニルアルコール単位や構造
単位(II)が間に挟まっていて完全に隔離されている場
合には、上記のCmetは構造単位(I)のモル分率の2
倍になり、数式で表される構造単位(I)の平均連鎖
長(Lest)は1となる。ここで、上記したCmetは、ポリ
ビニルアルコール系重合体の13C−NMRから求められ
る。
【0058】また、本発明のポリビニルアルコール系重
合体は、この重合体から形成されるゲルの耐熱水性をよ
り良好なものとする点から、そのシンジオタクティシテ
ィーがダイアッドタクティシティー表示で55%以上で
あるのが好ましく、58%以上であるのがより好まし
く、60%以上であるのがさらに好ましい。ここで、本
発明でいうダイアッドタクティシティー表示とは、ポリ
ビニルアルコール系重合体を完全にケン化し、その完全
ケン化物をジメチルスルホキシドに溶解したもののプロ
トンNMRスペクトルにおける水酸基プロトンのシグナ
ルより求められるトライアッドタクティシティーでのシ
ンジオタクティシティーおよびヘテロタクティシティー
から下記の数式;
【0059】
【数8】 ダイアッドタクティシティー=S+(H/2) (式中、SおよびHはそれぞれプロトンNMRから求め
られるトライアッドタクティシティーにおけるシンジオ
タクティシティーおよびヘテロタクティシティーを示
す)で求めたダイアッドタクティシティー表示を意味す
る。
【0060】そして、本発明では、ポリビニルアルコー
ル系重合体から形成されるゲルの機械的強度、耐熱水
性、加工特性などの点から、ポリビニルアルコール系重
合体の粘度平均重合度が300以上であるのがよく、8
00以上であるのが好ましく、1500以上であるのが
より好ましい。また、ポリビニルアルコール系重合体の
粘度平均重合度は、それから形成されるゲルの加工特性
の点から、50000以下であるのが好ましい。ここで
いう、ポリビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度
は、ポリビニルアルコール系重合体を完全にケン化し、
その完全ケン化物を完全に酢化したときに得られるポリ
酢酸ビニルの極限粘度[η](dl/g、アセトン中、
30℃で測定)から、下記の数式;
【0061】
【数9】 P={[η]×(1000/7.94)}(1/0.62) (式中、P=ポリビニルアルコール系重合体の粘度平均
重合度を示す)によって求めた値をいう。
【0062】また、ポリビニルアルコール系重合体から
形成されるゲルを柔軟なものにするためには、ポリビニ
ルアルコール系重合体の結晶性を低下させることが必要
であり、一般にポリビニルアルコール系重合体の融点を
低下させるとその結晶性が低下する。したがって、ポリ
ビニルアルコール系重合体から形成されるゲルの柔軟性
を向上させるために、本発明ではポリビニルアルコール
系重合体の融点が200℃以下であるのが好ましく、1
80℃以下であるのがより好ましい。ここで、ポリビニ
ルアルコール系重合体の融点は、ポリビニルアルコール
系重合体を粉砕し、示差熱走査熱量分析により窒素雰囲
気下で昇温速度10℃/分の条件下に測定したときの吸
熱ピーク温度として求められる。
【0063】本発明のポリビニルアルコール系重合体
は、ビニルアルコール単位、上記した構造単位(I)お
よび構造単位(II)と共に、本発明の目的の妨げになら
ない範囲で必要に応じて他の構造単位を含有していても
よく、そのような他の構造単位の例としては、酢酸ビニ
ル、蟻酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリアン酸ビ
ニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどの他の
ビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレ
ン、α−オクテン、α−ドデセンなどのオレフィン類;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、無水マレイン酸、イ
タコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸やそれらのエ
ステルや塩;アクリロニトリル、メタクリロニトリルな
どの不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−
ビニルピロリドンなどの不飽和アミド類;エチレンスル
ホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸など
のオレフィンスルホン酸類またはその塩;イソプロピル
ビニルエーテルなどの不飽和エーテル類;塩化ビニル、
塩化ビニリデンなどのハロゲン化オレフィン類などの重
合性モノマーから誘導される単位を挙げることができ
る。但し、その場合に前記した他の構造単位の割合は、
ポリビニルアルコール系重合体の全構造単位に基づいて
モル分率で0.1以下であるのが好ましい。
【0064】また、本発明のポリビニルアルコール系重
合体では、その用途などに応じて、ポリビニルアルコー
ル系重合体中の水酸基を化学修飾してもよく、さらにポ
リビニルアルコール系重合体中の構造単位(I)のモル
分率、構造単位(II)のモル分率および/または構造単
位(I)の連鎖長(Lest)を上記した本発明の範囲内
で変化・調節することによって、その透明性、柔軟性、
物理的・機械的強度などを調節してもよく、したがって
本発明のポリビニルアルコール系重合体からなる創傷被
覆材では、例えばポリビニルアルコール系重合体の物性
を調節することにより、薬剤放出機能等の性質を付与し
てもよい。
【0065】本発明のポリビニルアルコール系重合体
は、上記した(i)および(ii)の要件を満足している
限りはその製法は特に制限されないが、例えば、下記の
製法1、製法2、製法3、製法4などにより製造するこ
とができる。
【0066】本発明のポリビニルアルコール系重合体の
製法1:常法にしたがって製造したポリビニルアルコー
ルを、下記の一般式(IV);
【0067】
【化13】 H−O−CO−C(R1)(R2)(R3) (IV) (式中R1、R2およびR3は上記と同じ基を示す)で表
されるカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘
導体[以下これを「カルボン酸類(IV)」という];並
びに下記の一般式(V);
【0068】
【化14】 Z−X (V) (式中、Xは上記と同じ基、そしてZは水酸基またはハ
ロゲンを示す)で表される化合物[以下これを「化合物
(V)」という]、そのエステル形成性誘導体および/
またはエーテル形成性誘導体を用いて、同時にまたは逐
次に変性して、ポリビニルアルコール中に上記した構造
単位(I)および構造単位(II)を上記した所定のモル
分率で含有させる方法。
【0069】本発明のポリビニルアルコール系重合体の
製法2: (1) 下記の一般式(VI);
【0070】
【化15】 CH2=CH−O−CO−C(R1)(R2)(R3) (VI) (式中R1、R2およびR3は上記と同じ基を示す)で表
されるビニルエステル化合物[以下「ビニルエステル化
合物(VI)」という]の1種または2種以上を用いて付
加重合を行って、上記の構造単位(I)の1種または2
種以上を繰り返し単位として有する単独重合体または共
重合体を製造するか、或いは上記のビニルエステル化合
物(VI)と他のビニルエステル化合物(例えばトリフル
オロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、蟻酸ビニル、
酢酸ビニルなど)および/またはビニルエーテル化合物
(例えばt−ブチルビニルエーテル、トリメチルシリル
ビニルエーテルなど)を共重合して上記の構造単位
(I)と前記他のビニルエステル化合物および/または
ビニルエーテル化合物から誘導される単位からなる共重
合体を製造し; (2) 次いで、上記(1)の工程で得られる単独重合
体または共重合体を、ケン化物中における構造単位
(I)のモル分率が0.05〜0.50になるように不
完全にケン化した後; (3) 上記(2)の工程で得られるケン化物中の水酸
基を、上記の一般式(V)で表される化合物(V)、そ
のエステル形成性誘導体および/またはエーテル形成性
誘導体を用いて、最終的に得られるポリビニルアルコー
ル系重合体中における構造単位(II)のモル分率が0.
0001〜0.50の範囲内になるようにして変性する
方法。
【0071】本発明のポリビニルアルコール系重合体の
製法3: (1) 上記したビニルエステル化合物(VI)の1種ま
たは2種以上を用いて付加重合を行って、上記の構造単
位(I)の1種または2種以上を繰り返し単位として有
する単独重合体または共重合体を製造するか、或いは上
記のビニルエステル化合物(VI)と他のビニルエステル
化合物(例えばトリフルオロ酢酸ビニル、トリクロロ酢
酸ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニルなど)および/また
はビニルエーテル化合物(例えばt−ブチルビニルエー
テル、トリメチルシリルビニルエーテルなど)を共重合
して上記の構造単位(I)と前記他のビニルエステル化
合物および/またはビニルエーテル化合物から誘導され
る単位からなる共重合体を製造し; (2) 次いで、上記(1)の工程で得られる単独重合
体または共重合体を、ケン化物中における構造単位
(I)のモル分率が0.05〜0.50になるように不
完全にケン化した後; (3) 上記(2)の工程で得られるケン化物中の水酸
基を、例えばエピハロヒドリンのようなエポキシ基含有
化合物と反応させて、上記単独重合体または共重合体の
側鎖にエポキシ基を導入し; (4) 次いで、上記(3)の工程で得られる変性重合
体中のエポキシ基を、エポキシ基と反応性の基を有し且
つ更にカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基および
リン酸基から選ばれる少なくとも1種の極性基を有する
化合物(例えばアミノアルキルスルホン酸、ジアミノア
ルカン類、アンモニア、ジカルボン酸類、水酸基とカル
ボキシル基を有する化合物、アミノ基とカルボキシル基
を有する化合物、リン酸など)と反応させて、カルボキ
シル基、スルホン酸基、アミノ基、リン酸基などを有す
る極性基変性炭化水素基Yを有する構造単位(II)を形
成させ、その際に最終的に得られるポリビニルアルコー
ル系重合体中における構造単位(II)のモル分率が0.
0001〜0.50の範囲内になるように調節する方
法。
【0072】本発明のポリビニルアルコール系重合体の
製法4: (1) 上記したビニルエステル化合物(VI)の1種ま
たは2種以上を用いて付加重合を行って、上記の構造単
位(I)の1種または2種以上を繰り返し単位として有
する単独重合体または共重合体を製造するか、或いは上
記のビニルエステル化合物(VI)と他のビニルエステル
化合物(例えばトリフルオロ酢酸ビニル、トリクロロ酢
酸ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニルなど)および/また
はビニルエーテル化合物(例えばt−ブチルビニルエー
テル、トリメチルシリルビニルエーテルなど)を共重合
して上記の構造単位(I)と前記他のビニルエステル化
合物および/またはビニルエーテル化合物から誘導され
る単位からなる共重合体を製造し; (2) 次いで、上記(1)の工程で得られる単独重合
体または共重合体を、ケン化物中における構造単位
(I)のモル分率が0.05〜0.50になるように不
完全にケン化した後; (3) 上記(2)の工程で得られるケン化物中の水酸
基を、例えば無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタ
ル酸などの環状構造を有するジカルボン酸無水物;クロ
ル酢酸、クロルプロピオン酸、ブロム酢酸、ヨード酢酸
などのハロゲンを有するカルボン酸などと反応させて、
上記単独重合体または共重合体の側鎖にカルボキシル基
を導入し; (4) 次いで、上記(3)の工程で得られる側鎖にカル
ボキシル基を導入した重合体を、カルボキシル基と反応
性の基(例えばアミノ基、水酸基、酸ハライド基など)
を有し且つさらにカルボキシル基、スルホン酸基、アミ
ノ基および/またはリン酸基を有する化合物(例えばア
ミノアルキルスルホン酸、ジアミノアルカン類、アミノ
酸、ヒドロキシカルボン酸、リン酸基含有化合物など)
と反応させて、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ
基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種の極性基
で変性された炭化水素基Yを有する構造単位(II)を形成
させ、その際に最終的に得られるポリビニルアルコール
系重合体中における構造単位(II)のモル分率が0.00
01〜0.50の範囲内になるように調節する方法。
【0073】そして、上記の製法1および製法2で用い
る化合物(V)、そのエステル形成性誘導体またはエー
テル形成性誘導体の例としては、限定されるものではな
いが、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フ
タル酸などのジカルボン酸;無水コハク酸、無水グルタ
ル酸、無水フタル酸などの環状構造を有するジカルボン
酸無水物;クロル酢酸、クロルプロピオン酸、ブロム酢
酸、ヨード酢酸などのハロゲンを有するカルボン酸;リ
ン酸、無水リン酸、酸化リン、塩化リン;ハロゲンを有
するスルホン酸系化合物;ハロゲンを有するアミン系化
合物などを挙げることができ、これらの化合物は単独で
用いても、または2種以上を組み合わせて用いてもよ
い。
【0074】また、上記の製法2〜製法4の工程(1)
で用いるビニルエステル化合物(VI)としては、限定さ
れるものではないが、例えば、ピバリン酸ビニル、ジメ
チルエチル酢酸ビニル、ジメチルプロピル酢酸ビニル、
ジエチルメチル酢酸ビニル、トリエチル酢酸ビニル、ト
リプロピル酢酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのト
リアルキル酢酸ビニル;ジメチル酢酸ビニル、ジエチル
酢酸ビニル、ジプロピル酢酸ビニルなどのジアルキル酢
酸ビニル;メチルシクロヘキシル酢酸ビニル、1−ノル
ボルナンカルボン酸ビニル、3−ノルアダマンタンカル
ボン酸ビニルなどの環状炭化水素基を有するビニルエス
テルなどを挙げることができ、上記の製法2〜製法4の
工程(1)ではそれらのビニルエステル化合物(VI)の
1種または2種以上を用いることができる。
【0075】上記の製法1において、ポリビニルアルコ
ールを上記のカルボン酸類(IV)および化合物(V)を
用いて同時にまたは逐次に変性するに当たっては、ポリ
ビニルアルコールの水酸基をエステル化またはエーテル
化するのに従来採用されているのと同様の反応条件下に
行うことができる。限定されるものではないが、例え
ば、ポリビニルアルコールを適当な溶媒(ジメチルスル
ホキシド、ジメチルホルムアミド、水、それらの混合溶
媒など)に溶解して、50〜150℃の温度で上記のカ
ルボン酸類(IV)および化合物(V)を同時にまたは逐
次に反応させることによって、構造単位(I)および構
造単位(II)を有する本発明のポリビニルアルコール系
重合体を製造することができる。
【0076】また、上記の製法2〜製法4によって本発
明のポリビニルアルコール系重合体を製造する場合は、
上記したビニルエステル化合物(VI)を、必要に応じて
少量の上記した他の重合性モノマーと共に、適当な重合
開始剤の存在下に、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、エ
マルジョン重合などによって−80〜300℃の範囲の
温度で重合させて、上記の構造単位(I)からなる単独
重合体または該構造単位(I)から主としてなる共重合
体を製造する[製法2〜製法4における工程(1)]。
そして、その際に、この工程(1)を約0〜100℃で
行うと、ダイアッドタクティシティー表示によるシンジ
オタクティシティーが上記した55%以上であるポリビ
ニルアルコール系重合体を円滑に得ることができるので
好ましい。次いで、前記の工程(1)で生成した重合体
を、好ましくは有機溶媒(エーテル類、ケトン類、アミ
ド類、スルホキシド類、芳香族炭化水素類、アルコール
類およびそれらの混合溶媒など)に溶解させた状態で、
好ましくは酸素の不存在下または酸化防止剤の存在下
に、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ
金属水酸化物、カリウムメトキシド、カリウムエトキシ
ド、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、
ナトリウムエトキシドなどの塩基性物質を用いて、通常
約40〜70℃の温度で、ポリビニルアルコール系重合
体中に構造単位(I)が上記した0.05〜0.50の
モル分率で残存するようにしてケン化処理を行い[製法
2〜製法4における工程(2)][なお前記した工程
(1)および工程(2)については本出願人の出願に係
る特開平3−121102号公報に詳述しているので参
照のこと]。そして、上記の工程(2)で得られるケン
化物を回収した後、ポリビニルアルコール系重合体にお
ける上記の構造単位(II)のモル分率が0.0001〜
0.50の範囲内になるようにして工程(3)以降の工
程を行う。その際に、工程(3)以降の工程を工程
(2)で用いたのと同様の有機溶媒を用いて、一般に約
50〜120℃の温度で行うのが好ましい。
【0077】構造単位(I)および構造単位(II)を上
記した特定のモル分率で有する本発明のポリビニルアル
コール系重合体は、ゲル状物にする前は、通常、乾燥粉
末または水もしくは有機溶媒を多少含有する粉末の状態
になっている。
【0078】上記した本発明のポリビニルアルコール系
重合体を用いてゲルを形成するに当たっては、ゲルの用
途などに応じて、含水ゲル、有機溶媒ゲル、有機溶媒と
水との混合溶媒ゲルなどの形態にすることができ、その
うちでも含水ゲルがその用途も多く極めて有効である。
含水ゲルの調製法は特に制限されずいずれの方法で調製
してもよいが、例えば、次のようにして調製することが
できる。
【0079】すなわち、本発明のポリビニルアルコール
系重合体を水溶性有機溶媒に溶解して濃度0.1〜50
重量%、好ましくは1〜20重量%の溶液にし、目的と
するゲルの形状や用途などに応じて、例えばガラス板な
どの型用板体上への流延、ガラス管などの型内への注
入、Tダイからフイルム状への押出し、紡糸、微小液滴
化などを行った後、水、水溶性有機溶媒、または水と水
溶性有機溶媒との混合溶媒中に浸漬してゲル化させ、次
いでそのゲル化物を水を含む溶媒中に浸漬することによ
って、例えば平板状、円筒状、塊状、繊維状、微粒子状
などの透明な含水ゲルを形成する。その場合にポリビニ
ルアルコール系重合体を溶解する上記した水溶性溶媒と
しては、ポリビニルアルコール系重合体を溶解し且つ水
に溶解し得る有機溶媒であればいずれでもよく、例え
ば、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパ
ノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミ
ド、グリセリン、エチレングリコールなどを挙げること
ができる。これらの溶媒は単独で使用してもまたは2種
以上を併用してもよい。また、場合により、溶解性向上
のために前記した溶媒に少量の無機塩(塩化リチウム、
塩化亜鉛、硝酸ナトリウムなど)を添加してもよい。
【0080】また、ポリビニルアルコール系重合体のゲ
ルの形成に当たっては、放射線や過酸化物による架橋、
ポリビニルアルコール系重合体を溶解した溶液の冷却、
凍結、凍結と融解の反復などを採用してもよい。
【0081】そして、上記した本発明のゲル、特に含水
ゲルは、その用途などに応じて、粉末(微粒子)、フイ
ルム、シート、繊維、織編物、不織布、網、円筒状、そ
の他の形状の塊や薄片状などの任意の形態にすることが
でき、例えば創傷被覆材として使用する場合は粉末(微
粒子)、フイルム、シート、繊維、織編物、不織布、
網、円筒状などの形態にして用いることができる。
【0082】また、本発明のゲル、特に含水ゲルは、含
水率や粘着性の調節のために、および/またはそれぞれ
の用途などに応じて、ゲルの製造時やゲルの製造後に他
の成分をゲル中に含有させることができる。その場合の
他の成分としては、ゲル化を阻害したり、ゲルの強度、
透明性、柔軟性などの特性を阻害しないものであれば特
に制限されず、例えば、アルギン酸、キトサンなどの多
糖類;ポリリジン、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミ
ン酸などのポリアミノ酸;コラーゲン、アルブミン、ゼ
ラチンなどの蛋白質;ポリアクリル酸、ポリメタクリル
酸、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビ
ニル、ポリエチレングリコールなどの合成高分子;エチ
レングリコール、グリセリン、コハク酸、シュウ酸など
の低分子化合物、それらの誘導体などを挙げることがで
きる。
【0083】特に、本発明のゲル、そのうちでも含水ゲ
ルを創傷被覆材に用いる場合は、その形態や形状などは
特に制限されず、従来既知の創傷被覆材用のゲルと同様
にして用いることができる。本発明の創傷被覆材は、例
えば、上記したグリセリンやポリエチレングリコールな
どの柔軟剤、安定化剤などの通常の薬理学的に許容され
る添加剤を含有していても、Ca2+などの薬理作用を有
する金属イオン、消毒剤、抗生剤などの抗菌剤、PGE
1などの血行改善剤、TGFβ、PDGF、FGFなど
の増殖因子、ウリナスタチン、TIMPなどの酵素阻害
剤、ステロイド、非ステロイド性抗炎症剤などの創傷治
療に有効な活性を持つ薬剤や生理活性物質を含有してい
てもよい。また、適当なスペーサーや刺激に応答して開
裂するリンカーを介して上記した薬剤を生理活性物質を
本発明のゲルに固定化して創傷被覆材として用いてもよ
い。
【0084】本発明のゲル、特に含水ゲルは、耐熱水性
に優れていて高温で熱水処理しても溶出物が少ないので
低毒性であり、しかも耐湿熱性に優れていて例えば12
1℃の高温で20分間にわたって湿熱蒸気滅菌しても、
上記した良好な諸特性を保つことができ、その上吸水性
および閉鎖性に優れていて創傷からの滲出液を良好に吸
収し且つ保持するので、特に創傷被覆材として用いたと
きにその効果を十分に発揮できる。
【0085】
【実施例】以下に実施例によって本発明について具体的
に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。
【0086】《実施例 1》 (1) 撹拌機を備えた反応容器に、ピバリン酸ビニル
200gおよびメタノール70gを仕込み、系を窒素ガ
スで置換した。別途、メタノール5gに重合開始剤とし
て2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.04gを
溶解した溶液を調製して窒素ガスで置換した。前記の反
応容器を昇温し、内温が60℃に達したところで、前記
で調製した重合開始剤の溶液を添加して重合を開始さ
せ、同温度に保って5時間重合を行って、重合率が40
%に達した時点で、系を20℃に冷却して重合を停止さ
せた。系にt−ブタノールを徐々に添加しながら減圧下
で未反応のピバリン酸ビニルを除去して、ポリピバリン
酸ビニルのt−ブタノール溶液を回収し、これにテトラ
ヒドロフランの適量を加えて減圧下にt−ブタノールを
留去して、ポリピバリン酸ビニルのテトラヒドロフラン
溶液(濃度45.7重量%)を得た。 (2) 撹拌機と還流冷却管を備えた反応器に、上記
(1)で得たポリピバリン酸ビニルのテトラヒドロフラ
ン溶液の50gを入れ、60℃に加温して窒素ガス置換
し、60℃に保って、別途調製し窒素置換した水酸化カ
リウムの25%溶液20gを添加して充分に撹拌した。
系は約30分でゲル化したが、さらに60℃に60分間
保った後、酢酸5.5gおよびメタノール5.5gを系
に加えて水酸化カリウムを中和した。次いで、ゲルを粉
砕した後、メタノールによるソックスレー洗浄を行っ
て、構造単位(I)を含有する部分ケン化ポリビニルア
ルコール系重合体を得た。
【0087】(3) 上記(2)で得られた構造単位
(I)を有する部分ケン化ポリビニルアルコール系重合
体における構造単位(I)のモル分率およびビニルアル
コール単位のモル分率を下記の方法により測定したとこ
ろ、構造単位(I)のモル分率=0.19およびビニル
アルコール単位のモル分率=0.81であった。
【0088】[構造単位(I)およびビニルアルコール
単位のモル分率の測定]上記(2)で得られた構造単位
(I)を有する部分ケン化ポリビニルアルコール系重合
体0.01gを重水素化ジメチルスルホキシド1.0g
と重水素化クロロホルム0.2gの混合溶媒に溶解して
日本電子社製のNMR測定装置「JNM−GSX27
0」を用いて、その1H−NMR測定を行って、ポリ酢
酸ビニル(すなわちポリビニルアルコール系重合体)中
における構造単位(I)のモル分率、およびビニルアル
コール単位のモル分率を測定した。
【0089】(4) また、上記(2)で得られた構造
単位(I)を有する部分ケン化ポリビニルアルコール系
重合体の粘度平均重合度を下記の方法で測定したとこ
ろ、1650であった。
【0090】[ポリビニルアルコール系重合体の粘度平
均重合度の測定]上記(2)で得られた構造単位(I)
を有する部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体2g
を10gのメタノールに溶かした後、水酸化カリウム
1.6gを加えて、60℃の温度で120分間加熱し
て、ポリビニルアルコール系重合体中の構造単位(I)
を含めてそのエステル結合を完全にケン化した。その結
果得られた完全ケン化ポリビニルアルコール1gに、無
水酢酸30g、ピリジン6gを加えて封管した後、11
0℃で5時間加熱して、ポリビニルアルコール中の水酸
基を完全に酢化した後、n−ヘキサンを加えて酢化によ
り生成したポリ酢酸ビニルを沈殿させた。次に沈殿物を
アセトンに溶解し、n−ヘキサンで沈殿させる操作を2
回を繰り返して精製した。その結果得られた精製ポリ酢
酸ビニル0.4gをアセトン80gに溶かして、30℃
におけるその極限粘度[η]を測定し、上記の数式に
基づいて粘度平均重合度を求めた。
【0091】(5) そして、上記(2)で得られた構
造単位(I)を有する部分ケン化ポリビニルアルコール
系重合体のシンジオタクティシティーを下記の方法で測
定したところ、上記した数式で求められるダイアッド
タクティシティー表示によるシンジオタクティシティー
は61%であった。
【0092】[シンジオタクティシティーの測定]粘度
平均重合度の測定に用いたのと同じ上記の精製したポリ
ビニルアルコール0.01gを重水素化ジメチルスルホ
キシド1gに溶解し、その溶液のプロトンNMRスペク
トルにおける水酸基プロトンのシグナルより求められる
トライアッドタクティシティーでのシンジオタクティシ
ティーおよびヘテロタクティシティーを日本電子社製の
NMR測定装置「JNM−GSX270」を用いて測定
し、上記の数式によって、ダイアッドタクティシティ
ー表示によるシンジオタクティシティーを求め、これを
もって構造単位(I)を有する部分ケン化ポリビニルア
ルコール系重合体のシンジオタクティシティーとした。
【0093】(6) 上記(2)で得られた構造単位
(I)を含有する部分ケン化ポリビニルアルコール系重
合体10gをジメチルスルホキシド190gに溶解し、
無水コハク酸0.41gおよびピリジン0.32gを加
えて110℃で1時間反応させた。その結果得られた溶
液約200gを、ポリスチレントレー(縦×横=240
mm×240mm)に流延し、これをトレーごと25℃
の水中に一晩浸漬してゲル化させた。生成したゲルを充
分に水洗した後、生理食塩水中に浸漬して水と置換させ
たところ、透明で柔軟性に優れるシート状含水ゲル(縦
×横×厚さ=約240mm×240mm×3.5mm)
を得た。 (7) 上記(6)で得られた含水ゲルまたは該含水ゲ
ルを構成しているポリビニルアルコール系重合体につい
て、構造単位(II)のモル分率、構造単位(I)の平均
連鎖長(Lest)、水分含量、吸熱ピーク温度、耐熱水
性、取り扱い性、柔軟性、透明度、吸水率、および溶出
物量を下記の方法で測定または評価したところ、下記の
表1に示すとおりであった。
【0094】[含水ゲルの構造単位(II)のモル分率]
上記(6)で得られた含水ゲル2.26gをすり潰し
て、0.02N 塩酸5mlと純水10mlに分散さ
せ、撹拌しながら0.01N 水酸化ナトリウム水溶液
を用いて滴定して、該水酸化ナトリウム水溶液の滴下量
とpHとの関係から、含水ゲルにおけるカルボキシル基
の量(μmol)を求め、その結果から、含水ゲルを構
成するポリビニルアルコール系重合体における構造単位
(II)のモル分率を算出した。
【0095】[ポリビニルアルコール系重合体における
構造単位(I)の平均連鎖長(Lest)]上記(6)で得ら
れた含水ゲルを110℃で6時間加熱して水分を完全に
除去し、その結果得られたポリビニルアルコール系重合
体を粉砕し、該ポリビニルアルコール系重合体粉砕物
1.0gを、重水素化ジメチルスルホキシド/重水素化
クロロホルム=5/1(w/w)溶液10mlに溶か
し、その溶液における13C−NMRを日本電子社製「J
NM−GSX270」を用いて測定して、上記したC
met[すなわちポリビニルアルコール系重合体における
構造単位(I)を構成するメチン炭素と水酸基または式
−OXで表される基が結合しているメチン炭素によって
挟まれているメチレン炭素のモル分率]を求め、上記の
数式から、構造単位(I)の平均連鎖長(Lest)を
求めた。
【0096】[含水ゲルの水分含量]上記(6)で得ら
れた含水ゲルを110℃で6時間乾燥して完全に水分を
除去して、乾燥前の重量(W0)(g)と乾燥後の重量
(W1)(g)から、下記の数式により含水ゲルの水分
含量を求めた。
【0097】
【数10】含水ゲルの水分含量(%)={(W0−W1
/W0}×100
【0098】[ポリビニルアルコール系重合体の吸熱ピ
ーク温度]上記(6)で得られた含水ゲルを150℃で
10分間加熱して水分を完全に除去し、その結果得られ
たポリビニルアルコール系重合体を粉砕し、示差熱走査
熱量分析(測定装置:メトラー社製「DSC−30」)
により窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分の条件下に測
定した吸熱ピーク温度を求めた。
【0099】[含水ゲルの耐熱水性] (a) 上記(6)で得られた含水ゲルを20mm×2
0mmの寸法に切断して得た試験片を、130℃の水中
で1時間熱水処理をして、熱水処理後も透明なままで且
つ熱水処理を行う前と同じ寸法およびゲル形状を保って
いる場合を○、そして熱水処理後に透明性が失われた
り、熱水処理を行う前と異なる寸法および/または形状
になっている場合、或いは熱水処理により溶けてしまっ
た場合を×として評価した。 (b) 上記(6)で得られた含水ゲルを20mm×2
0mmの寸法に切断して得た試験片を、生理食塩水中で
121℃で20分間熱水処理をして、熱水処理後も透明
なままで且つ熱水処理を行う前と同じ寸法およびゲル形
状を保っている場合を○、そして熱水処理後に透明性が
失われたり、熱水処理を行う前と異なる寸法および/ま
たは形状になっている場合、或いは熱水処理により溶け
てしまった場合を×として評価した。
【0100】[含水ゲルの取り扱い性]上記(6)で得
られた含水ゲルを20mm×20mmの寸法に切断して
得た試験片を、歯科用ピンセットでつまんで、含水ゲル
が破れずにつまみあげることができた場合を○、そして
含水ゲルが破れてつまみあげることができなかった場合
を×として評価した。
【0101】[含水ゲルの柔軟性]上記(6)で得られ
た含水ゲルを20mm×20mmの寸法に切断して試験
片を作製し、その一方の端部をスパーテルを用いてもう
一方の端部と接触するまで折り曲げて、含水ゲルに破損
や亀裂が生じずにもう一方の端部と接触でき、折り曲げ
にほとんど力を要しない場合を○、そしてもう一方の端
部と接触できないかまたは折り曲げ中に含水ゲルに破損
や亀裂が生じた場合を×として評価した。
【0102】[含水ゲルの透明度]上記(6)で得られ
た含水ゲルを約1〜2mm程度の大きさに粉砕して、そ
れを生理食塩水を満たした光路長10mmの吸光度測定
用セルに透き間なく充填し、ベックマン社製DU−65
型分光光度計を用いて波長700nmの光の透光度を測
定し、生理食塩水の透光度を100%として、それに対
する割合(%)として求めた。
【0103】[吸水率]上記(6)で得られた含水ゲル
を室温で24時間減圧乾燥して完全に水分を除去して、
乾燥時の重量(W2)(g)を測定した後、その乾燥物
を37℃の生理食塩水中に24時間浸漬して飽和状態に
なるまで生理食塩水を吸収させて、その時の重量
(W3)(g)を測定し、吸水率を、乾燥時の重量
(W2)(g)と生理食塩水を吸収させた時の重量
(W3)(g)の比(W3/W2)として求めた。
【0104】[含水ゲルの溶出物量]上記(6)で得ら
れた含水ゲルの1gを採取し、それを10mlの生理食
塩水中に入れて、37℃で24時間加熱し、その時の生
理食塩水中に含まれる総有機炭素濃度(TOC)を島津
製作所製「全有機体炭素計;TOC−5000」により
測定して、含水ゲルの溶出物量とした。
【0105】《実施例 2》 (1) 実施例1の(1)および(2)と同じ操作を行
って、実施例1におけるのと同じ構造単位(I)を有す
る部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体を製造し
た。 (2) 上記(1)で得られた構造単位(I)を含有す
る部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体10gを蒸
留水90gと共にオートクレーブに入れて、130℃で
3時間処理し、次いでブロム酢酸0.56gおよび水酸
化ナトリウム0.34gを加えて、煮沸下で6時間撹拌
反応させた。その結果、粒子状ポリマーが得られたの
で、これを水洗後乾燥し、その乾燥ポリマーを水/プロ
パノール=3/7(w/w)混合溶媒95gに溶解し、
得られた溶液をガラス平板上に流延し、これを25℃の
水中に一晩浸漬してゲル化した。生成した含水ゲルは、
柔軟性および透明性に優れるものであった。 (3) 上記(2)で得られた含水ゲルまたは該含水ゲ
ルを構成するポリビニルアルコール系重合体について、
その構造単位(II)のモル分率、構造単位(I)の平均
連鎖長(Lest)、水分含量、吸熱ピーク温度、耐熱水
性、取り扱い性、柔軟性、透明度、吸水率、および溶出
物量を、実施例1におけるのと同様にして求めたとこ
ろ、下記の表1に示すとおりであった。
【0106】《実施例 3》 (1) 実施例1の(1)および(2)と同様の操作を
行って、構造単位(I)のモル分率0.37、シンジオ
タクティシティー61%および粘度平均重合度1650
の部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体(すなわち
ポリピバリン酸ビニルの部分ケン化物)を製造した。 (2) 上記(1)で得られた構造単位(I)を含有す
る部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体10gをジ
メチルスルホキシド190gに溶解し、無水コハク酸
0.85gおよびピリジン0.66gを加え、それ以外
は、実施例1の(6)と同様に行って、含水ゲルのシー
トを製造した。その結果得られた含水ゲルシートは、柔
軟性および透明性にも優れるものであった。 (3) 上記(2)で得られた含水ゲルまたは該含水ゲ
ルを構成するポリビニルアルコール系重合体について、
その構造単位(II)のモル分率、構造単位(I)の平均
連鎖長(Lest)、水分含量、吸熱ピーク温度、耐熱水
性、取り扱い性、柔軟性、透明度、吸水率、および溶出
物量を、実施例1におけるのと同様にして求めたとこ
ろ、下記の表1に示すとおりであった。
【0107】《比較例 1》 (1) 実施例1の(2)で得られた構造単位(I)を
有する部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体の代わ
りに、酢酸ビニル単位を0.12のモル分率で有する、
シンジオタクティシティー53%、粘度平均重合度17
00の部分ケン化ポリビニルアルコールを用いて、実施
例1の(6)と同様の反応を行ったが、得られた水分含
有物は強度が極めて低くて、シートの形態を保つことが
できず、含水ゲルとしては役立たなかった。 (2) 上記(1)で得られた水分含有物またはそれを
構成するポリビニルアルコール系重合体について、その
構造単位(酢酸ビニル単位)の平均連鎖長(Lest)、
水分含量、吸熱ピーク温度、耐熱水性、取り扱い性、柔
軟性、透明度、吸水率、および溶出物量を、実施例1に
おけるのと同様にして求めたところ、下記の表2に示す
とおりであった。
【0108】《比較例 2》 (1) 実施例1の(2)で得られた構造単位(I)を
有する部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体の代わ
りに、酢酸ビニル単位を0.015のモル分率で有す
る、シンジオタクティシティー53%、粘度平均重合度
1700の部分ケン化ポリビニルアルコールをそのまま
用いて、その5gを10%のグリセリンを含む水溶液1
00mlに混合して加熱溶解し、その水溶液の全量をポ
リスチレン製平板に流延し、−20℃での凍結と室温で
の融解を3回繰り返すことにより、部分ケン化ポリビニ
ルアルコールのシート状の含水ゲルを得た。得られた含
水ゲルは白色不透明であり、水中で煮沸すると溶解して
しまった。 (2) 上記(1)で得られた含水ゲルまたはそれを構
成するポリビニルアルコール系重合体について、その構
造単位(酢酸ビニル単位)の平均連鎖長(Lest)、水
分含量、吸熱ピーク温度、耐熱水性、取り扱い性、柔軟
性、透明度、吸水率、および溶出物量を、実施例1にお
けるのと同様にして求めたところ、下記の表2に示すと
おりであった。
【0109】《比較例 3》 (1) 実施例1の(1)および(2)と同様の操作を
行って、構造単位(I)のモル分率が0.001、シン
ジオタクティシティー61%および粘度平均重合度16
50の部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体(すな
わちポリピバリン酸ビニルの部分ケン化物)を製造し
た。 (2) 上記(1)で得られた構造単位(I)を含有す
る部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体10gをジ
メチルスルホキシド190gに溶解し、無水コハク酸
0.85gおよびピリジン0.66gを加え、それ以外
は、実施例1の(6)と同様に行って、含水ゲルのシー
トを製造した。その結果得られた含水ゲルシートは、透
明であったが、強度が極めて低く、シート状の形態を保
つことができなかった。 (3) 上記(2)で得られた含水ゲルまたはそれを構
成するポリビニルアルコール系重合体について、その構
造単位(ピバリン酸ビニル単位)の平均連鎖長
(Lest)、水分含量、吸熱ピーク温度、耐熱水性、取
り扱い性、柔軟性、透明度、吸水率、および溶出物量
を、実施例1におけるのと同様にして求めたところ、下
記の表2に示すとおりであった。
【0110】《比較例 4》 (1) 比較例2で用いたのと同じ部分ケン化ポリビニ
ルアルコール(すなわちポリ酢酸ビニルの部分ケン化
物)10gをジメチルスルホキシド50mlと水50m
lとの混合溶媒に入れて90℃で2時間加熱撹拌して溶
解した後、溶液の温度を60℃まで冷却し、それにメチ
ルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体(アルドリ
ッチ社製:分子量20,000)の25%水溶液を20
ml加えて60℃で更に30分間撹拌した。その結果得
られた溶液の全量をポリスチレン製トレー(縦×横=2
40mm×240mm)に流延し、室温まで放冷した
後、−20℃で14時間静置して、半透明のゲルを得
た。このゲルを充分に水洗した後、生理食塩水中に約2
4時間放置してシート状の含水ゲルとした。 (2) 上記(1)で得られた含水ゲルまたはそれを構
成する部分ケン化ポリビニルアルコールについて、その
構造単位(酢酸ビニル単位)の平均連鎖長(Lest)、
水分含量、吸熱ピーク温度、耐熱水性、取り扱い性、柔
軟性、透明度、吸水率、および溶出物量を、実施例1に
おけるのと同様にして求めたところ、下記の表2に示す
とおりであった。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】上記の表1および表2の結果から、実施例
1〜3の本発明のポリビニルアルコール系重合体より形
成された含水ゲルは、透明性、柔軟性、耐熱水性、取り
扱い性に優れており、しかも溶出物がないか極めて少な
く、高い安全性を有していることがわかる。更に、上記
の表1および表2の結果から、本発明における上記した
(i)および(ii)の要件の両方を満足しないかまたは
いずれかを満足しない比較例1〜4の場合には、含水ゲ
ルが形成されないか、または含水ゲルが形成されても、
その耐熱水性や透明性が不良であったり、溶出物量が多
かったり、強度が弱かったりして、良好な含水ゲルが得
られないことがわかる。
【0114】《参考例 1》 (1) 実施例1の(2)で得られた構造単位(I)を
有する部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体は、本
出願人の出願に係る上記した特開平3−224628号
公報に記載のものに相当するので、参考のために、この
部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体の5%ジメチ
ルスホキシド溶液をガラス板上に流延し、ついで水に浸
漬することにより含水ゲルを製造した。 (2) 上記(1)で得られた含水ゲルについて、上記
した方法でその物性を調べたところ、耐熱水性、取り扱
い性、透明性および溶出物の点では実施例1〜3と同様
に優れたものであった。ただ、柔軟性を調べるためにそ
の含水ゲルを折り曲げると、破損や亀裂を生ずることな
く折り曲げることができたが、折り曲げ中にバネ様の反
発力を生じ、実施例1〜3の含水ゲルに比べて柔軟性の
低いものであった。
【0115】《実施例 4》 (1) 実施例1の(2)と同様にして製造した、構造
単位(I)を含有する部分ケン化ポリビニルアルコール
系重合体[構造単位(I)のモル分率0.19、シンジ
オタクティシティー61%、粘度平均重合度1650]
10gをジメチルスルホキシド190gに溶解し、無水
コハク酸0.41gおよびピリジン0.32gを加えて
110℃で1時間反応させた。その結果得られた溶液約
200gを、ポリスチレントレー(縦×横=240mm
×240mm)に流延し、これをトレーごと25℃の水
中に一晩浸漬してゲル化させた。生成したゲルを充分に
水洗して、上記の一般式(II)におけるXが式−CO−
CH2CH2−COOHで表される基であるカルボキシル
基で変性されたポリビニルアルコール系重合体のシート
状の含水ゲルを得た。
【0116】(2) 実施例1と同様にして、上記
(1)で得られた含水ゲル中のカルボキシル基の量を求
めたところ12.2μmolであった。その結果から、
実施例1と同様にして含水ゲルを構成するポリビニルア
ルコール系重合体におけるカルボキシル基を含有する構
造単位のモル分率を算出したところ0.012であっ
た。また、上記(1)で得られた含水ゲルの吸熱ピーク
温度、および構造単位(I)の平均連鎖長(Lest)を
実施例1と同様にして測定したところ、それぞれ171
℃および4.8であった。また、上記(1)で得られた
含水ゲルの水分含量を実施例1と同様にして測定したと
ころ、97.2重量%であり、水中130℃で1時間処
理しても透明なゲル形状を保っていた。
【0117】(3) 上記(1)で得られたシート状の
含水ゲルの21.1gを50%ジメチルホルムアミド水
溶液に浸漬し、N−ヒドロキシコハク酸イミド(株式会
社ペプチド研究所製)23mgと水溶性カルボジイミド
(株式会社ペプチド研究所製)200mgを加えて、室
温で一晩震盪した。ついで、タウリン(和光純薬工業株
式会社製)25mgとトリエチルアミン(ナカライテス
ク株式会社製)16μlを加えて室温で一晩震盪した。
その後充分に水洗し、生理食塩液に置換して、透明で且
つ柔軟性に優れるシート状のスルホン酸基含有含水ゲル
を得た[構造単位(II)が上記した化学式(IIb-5)
で表される構造単位であるポリビニルアルコール系重合
体含水ゲル]。
【0118】(4) 上記(3)で得られたスルホン酸
基含有含水ゲルの吸水率および水分含量を実施例1と同
様にして求めたところ、それぞれ11.0および91重
量%であった。また、上記(3)で得られたスルホン酸
基含有含水ゲルの一部を採取して充分に水洗した後、ア
セトンに置換し、減圧乾燥した。これを酸素雰囲気中で
焼成し、純水に吸収させてイオンクロマトアナライザー
(横川電機社製「IC500S」)により定量したとこ
ろ、そのイオウ含有量は0.12重量%であり、この値
から求められる構造単位(II)[上記した化学式(IIb
-5)で表される構造単位]のモル分率は0.0023
であった。そして、上記(3)で得られたスルホン酸基
含有含水ゲルの減圧乾燥物を含む臭化カリウム錠剤の赤
外線スペクトルを測定したところ、エステル基に相当す
る1732cm-1と、アミド基に相当する1635cm
-1の部分に特徴的な吸収が観察された。さらに、上記
(3)で得られたスルホン酸基含有含水ゲルの耐熱水
性、取り扱い性、柔軟性、透明度、および溶出物量を、
実施例1におけるのと同様にして求めたところ、下記の
表3に示すとおりであった。
【0119】《実施例 5》 (1) 実施例1の(2)と同様にして製造した、構造
単位(I)を含有する部分ケン化ポリビニルアルコール
系重合体[構造単位(I)のモル分率0.19、シンジ
オタクティシティー61%、粘度平均重合度1650]
6gをジメチルスルホキシド200gに溶解し、無水コ
ハク酸0.55gおよびピリジン0.43gを加えて7
0℃で約3時間加熱下に撹拌して反応させた。その結果
得られた溶液約200gを、ポリスチレントレー(縦×
横=225mm×225mm)に流延し、これをトレー
ごと25℃の水中に一晩浸漬してゲル化させた。生成し
たゲルを充分に水洗して、上記の一般式(II)における
Xが式−CO−CH2CH2−COOHで表される基であ
るカルボキシル基で変性されたポリビニルアルコール系
重合体のシート状の含水ゲルを得た。
【0120】(2) 実施例1と同様にして、上記
(1)で得られた含水ゲル中のカルボキシル基の量を求
めて、その結果から実施例1と同様にして含水ゲルを構
成するポリビニルアルコール系重合体におけるカルボキ
シル基を含有する構造単位のモル分率を算出したところ
0.011であった。また、上記(1)で得られた含水
ゲルの吸熱ピーク温度、および構造単位(I)の平均連
鎖長(Lest)を実施例1と同様にして測定したとこ
ろ、それぞれ173℃および4.8であった。また、上
記(1)で得られた含水ゲルの水分含量を実施例1と同
様にして測定したところ、89.5重量%であり、水中
130℃で1時間処理しても透明なゲル形状を保ってい
た。 (3) 上記(1)で得られたシート状の含水ゲル2
1.1gを採取して、実施例4の(3)と同様にしてタ
ウリンと反応させ、得られた生成物を充分に水洗し、生
理食塩液に置換して、透明で且つ柔軟性に優れるシート
状のスルホン酸基含有含水ゲルを得た[構造単位(II)
が上記した化学式(IIb-5)で表される構造単位であ
るポリビニルアルコール系重合体含水ゲル]。
【0121】(4) 上記(3)で得られたスルホン酸
基含有含水ゲルの吸水率および水分含量を実施例1と同
様にして求めたところ、それぞれ9.1および89重量
%であった。また、上記(3)で得られたスルホン酸基
含有含水ゲルの一部を採取して、実施例4の(4)と同
様にして、イオンクロマトアナライザーにより定量した
ところそのイオウ含有量は0.12重量%であり、この
値から求められる構造単位(II)[上記した化学式(II
b-5)で表される構造単位]のモル分率は0.001
9であった。そして、上記(3)で得られたスルホン酸
基含有含水ゲルの減圧乾燥物を含む臭化カリウム錠剤の
赤外線スペクトルを測定したところ、エステル基に相当
する1732cm-1と、アミド基に相当する1635c
-1の部分に特徴的な吸収が観察された。さらに、上記
(3)で得られたスルホン酸基含有含水ゲルの耐熱水
性、取り扱い性、柔軟性、透明度、および溶出物量を、
実施例1におけるのと同様にして求めたところ、下記の
表3に示すとおりであった。
【0122】《実施例 6》 (1) 実施例1の(2)と同様にして製造した、構造
単位(I)を含有する部分ケン化ポリビニルアルコール
系重合体[構造単位(I)のモル分率0.19、シンジ
オタクティシティー61%、粘度平均重合度1650]
5gをジメチルスルホキシド150gに約80℃に加熱
撹拌して溶解し、その結果得られた溶液約150gを、
ポリスチレントレー(縦×横=225mm×225m
m)に流延し、これをトレーごと25℃の水中に一晩浸
漬してゲル化させた。生成したゲルを充分に水洗してシ
ート状の含水ゲルを得た。 (2) 上記(1)で得られた含水ゲルの構造単位
(I)の平均連鎖長(Lest)を実施例1と同様にして
測定したところ4.8であった。
【0123】(3) 上記(1)で得られたシート状の
含水ゲル15gに、エピクロルヒドリン(和光純薬工業
株式会社製)10mlと3N水酸化ナトリウム水溶液2
0mlを加え、40℃で4時間加温撹拌して反応させ
た。その後、生成物を純水で3回洗浄した後、25%ア
ンモニア水溶液20mlを加えて40℃で3時間加温撹
拌して反応させた。得られた生成物を充分に水洗し、生
理食塩液に置換して、透明で且つ柔軟性に優れるシート
状のアミノ基含有含水ゲルを得た[構造単位(II)が上
記した化学式(IIc-6)で表される構造単位であるポ
リビニルアルコール系重合体含水ゲル]。
【0124】(4) 上記(3)で得られたアミノ基含
有含水ゲルの吸水率および水分含量を実施例1と同様に
して求めたところ、それぞれ3.3および69重量%で
あった。また、上記(3)で得られたアミノ基含有含水
ゲルの一部を採取して、減圧乾燥して、その窒素含有量
を元素分析法により求めたところ、窒素含有量は0.2
8重量%であり、この値から求められる構造単位(II)
[上記した化学式(IIc-6)で表される構造単位]の
モル分率は0.0038であった。上記(3)で得られ
たアミノ基含有含水ゲルの減圧乾燥物を含む臭化カリウ
ム錠剤の赤外線スペクトルを測定したところ、エステル
基に相当する1730cm-1と、アミノ基に相当する1
647cm-1の部分に特徴的な吸収が観察された。さら
に、上記(3)で得られたアミノ基含有含水ゲルの耐熱
水性、取り扱い性、柔軟性、透明度、および溶出物量
を、実施例1におけるのと同様にして求めたところ、下
記の表3に示すとおりであった。
【0125】《実施例 7》 (1) 実施例1の(2)と同様にして製造した、構造
単位(I)を含有する部分ケン化ポリビニルアルコール
系重合体[構造単位(I)のモル分率0.19、シンジ
オタクティシティー61%、粘度平均重合度1650]
5gをジメチルスルホキシド150gに約80℃に加熱
撹拌して溶解し、その結果得られた溶液約150gを、
ポリスチレントレー(縦×横=225mm×225m
m)に流延し、これをトレーごと25℃の水中に一晩浸
漬してゲル化させた。生成したゲルを充分に水洗してシ
ート状の含水ゲルを得た。 (2) 上記(1)で得られた含水ゲルの構造単位
(I)の平均連鎖長(Lest)を実施例1と同様にして
測定したところ4.8であった。
【0126】(3) 上記(1)で得られたシート状の
含水ゲル15g中の水をジメチルホルムアミドに置換
し、五酸化リン(和光純薬工業株式会社製)0.5gと
メタンスルホン酸0.2gを加えて、室温で4時間反応
させた。得られた生成物を充分に水洗し、生理食塩液に
置換して、透明で且つ柔軟性に優れるシート状のリン酸
基含有含水ゲルを得た[構造単位(II)が上記した化学
式(IId-1)で表される構造単位であるポリビニルア
ルコール系重合体含水ゲル]。
【0127】(4) 上記(3)で得られたリン酸基含
有含水ゲルの吸水率および水分含量を実施例1と同様に
して求めたところ、それぞれ6.7および85重量%で
あった。また、 上記(3)で得られたリン酸基含有含
水ゲルの一部を採取し減圧乾燥して、実施例4における
のと同様にしてイオンクロマトアナライザーにてそのリ
ン含有量を測定したところリン含有量は0.43重量%
であり、この値から求められる構造単位(II)[上記し
た化学式(IId-1)で表される構造単位]のモル分率
は0.0084であった。さらに、上記(3)で得られ
たアミノ基含有含水ゲルの耐熱水性、取り扱い性、柔軟
性、透明度、および溶出物量を、実施例1におけるのと
同様にして求めたところ、下記の表3に示すとおりであ
った。
【0128】《比較例 5》 (1) 実施例5の(2)で得られた構造単位(I)を
有する部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体の代わ
りに、酢酸ビニル単位を0.12のモル分率で有する、
シンジオタクティシティー53%、粘度平均重合度17
00の部分ケン化ポリビニルアルコールを用いて、実施
例4の(3)と同様にしてタウリンとの反応を行った
が、得られた水分含有物は強度が極めて低くて、シート
の形態を保つことができず、含水ゲルとしては役立たな
かった。 (2) 上記(1)で得られた水分含有物またはそれを
構成するポリビニルアルコール系重合体について、その
構造単位(酢酸ビニル単位)の平均連鎖長(Lest)、
水分含量、吸熱ピーク温度、耐熱水性、取り扱い性、柔
軟性、透明度、吸水率、および溶出物量を、実施例1に
おけるのと同様にして求めたところ、下記の表4に示す
とおりであった。
【0129】《比較例 6》 (1) 実施例1の(1)および(2)と同様の操作を
行って、構造単位(I)がモル分率が0.001、シン
ジオタクティシティー61%および粘度平均重合度16
50の部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体(すな
わちポリピバリン酸ビニルの部分ケン化物)を製造し
た。 (2) 上記(1)で得られた構造単位(I)を含有す
る部分ケン化ポリビニルアルコール系重合体の5%ジメ
チルスルホキシド溶液を形成し、これを用いて実施例4
の(3)と同様にしてタウリンと反応させた後、ポリス
チレントレーに流延し、これを水中に浸漬してゲル化さ
せた。得られたゲルは透明であったが、強度が極めて低
く、シート状の形態を保つことができなかった。また、
実施例1と同様にして、得られたゲルの構造単位(I)
(ピバリン酸ビニル単位)の平均連鎖長(Lest)の測
定を試みたが、スルホン酸基含有構造単位[構造単位
(II)]の影響が大きく、有意な値が得られなかった。
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】上記の表3および表4の結果から、実施例
4〜7の本発明のポリビニルアルコール系重合体より形
成された含水ゲルは、透明性、柔軟性、耐熱水性、取り
扱い性、吸水性に優れており、しかも溶出物がないか極
めて少なく、高い安全性を有していることがわかる。更
に、上記の表3および表4の結果から、本発明における
上記した(i)および(ii)の要件の両方を満足しない
かまたはいずれかを満足しない比較例5および比較例6
の場合には、含水ゲルが形成されないか、または含水ゲ
ルが形成されても、その強度が極めて弱く、実用価値が
ないことがわかる。
【0133】《試験例 1》[ブタ全層欠損創モデル] (1) ブタ1頭(4週令)の背部に、20mm×20
mmの大きさの全層欠損創を8カ所作製した。 (2) 実施例1の(6)で得られたシート状の含水ゲ
ルを生理食塩水中で蒸気滅菌(121℃、20分間)し
て得られたものを20mm×20mmの大きさに切断
し、これを創傷被覆材として用いて、上記(1)で形成
した全創欠損創の2カ所に6日間にわたって貼付した。
この創傷被覆材は透明であり、試験期間中、創傷の治癒
状態が外部から良好に観察できた。 (3) 比較例2の(1)で得られた部分ケン化ポリビ
ニルアルコールのシート状の含水ゲルを20mm×20
mmの大きさに切断し、これを創傷被覆材として用い
て、上記(1)で形成した全創欠損創の2カ所に6日間
にわたって貼付した。この創傷被覆材は不透明であるた
めに、試験期間中、創傷の治癒状態が外部から観察でき
なかった。
【0134】(4) 比較例4の(1)で得られた部分
ケン化ポリビニルアルコールとメチルビニルエーテル/
無水マレイン酸共重合体とからなるシート状の含水ゲル
を20mm×20mmの大きさに切断し、これを創傷被
覆材として用いて、上記(1)で形成した全創欠損創の
2カ所に6日間にわたって貼付した。この創傷被覆材は
半透明であり、試験期間中、創傷の治癒状態を外部から
かろうじて観察することが可能であった。 (5) 対照として市販のポリウレタンフイルム創傷被
覆材(Johnson & Johnson Medical 社製「BIOCLUSIV
E」)を40mm×40mmの大きさに切断し、これを
創傷被覆材として用いて、上記(1)で形成した全創欠
損創の2カ所に6日間にわたって貼付した。 (6) 上記(2)〜(5)の貼付試験の6日目に、そ
れぞれ創傷部の組織標本を採取し、ヘマトキシリン−エ
オシン染色を常法により行って、それぞれの組織標本部
分における肉芽増殖の状態を調べると共に炎症性細胞の
浸潤の状態を調べて異物反応の強弱を観察した。そし
て、上記(5)の対照と比較して、肉芽増殖が促進され
ていて創傷部の治癒の程度が良好な場合を良好、肉芽増
殖が少なくて創傷部の治癒が劣っていた場合を不良とし
て、また異物反応が弱い場合を良好(弱)、異物反応が
強い場合を不良(強)として評価したところ、下記の表
5に示すとおりであった。
【0135】
【表5】 含水ゲル創傷被覆材 肉芽増殖 異物反応 実施例1のもの 良好 良好(弱) 比較例2のもの 良好 不良(強) 比較例4のもの 不良 不良(強)
【0136】上記の表5の結果から、構造単位(I)お
よび構造単位(II)を上記した(i)および(ii)の要
件を満たすモル分率で有するポリビニルアルコール系重
合体からなる本発明の実施例1の創傷被覆材を用いた場
合には、創部における異物反応を生ずることなく、肉芽
増殖が促進されていて創部の治癒が速やかに行われるこ
と、それに対して比較例2の創傷被覆材を用いた場合に
は、肉芽増殖は良好であるが異物反応が強くて安全性に
劣っていること、または比較例4の創傷被覆材は肉芽増
殖が遅く創部の治癒が円滑に行われず、しかも異物反応
が強くて安全性の点でも劣っていることがわかる。
【0137】《試験例 2》[ブタ全層欠損創モデル] (1) ブタ1頭(4週令)の背部に、20mm×20
mmの大きさの全層欠損創を8カ所作製し、この欠損創
部に、実施例1の(6)で得られたシート状の含水ゲル
および参考例1で得られた含水ゲルを生理食塩水中で蒸
気滅菌(121℃、20分間)して得られた20mm×
20mmの大きさの創傷被覆材をそれぞれ4枚づつ貼付
し、3日毎に同じ創傷被覆材を用いて交換を行い、試験
期間中、透明な創傷被覆材を通して創部の状態を観察し
ながら18日間に亙って試験を行った。そして、18日
目に上記した2種類の創傷被覆材を貼付した創部の面積
を測定したところ、それぞれ4カ所の平均で10mm2
になっており(試験当初の創部面積=400mm2)、
創部面積の残存率は2.5%と極めて少なく、創部の治
癒が円滑に行われていた。また、創部には、8カ所とも
ケロイド、肥厚性瘢痕などの兆候がなく、正常な治癒傾
向を示した。
【0138】(2) また、18日目の創部を周囲の皮
膚および支持筋肉層とともに切除し、切除組織を中性ホ
ルマリンで固定し、パラフィン包埋後5μmの切片を作
製した。この切片をヘマトキシリン−エオシンで染色し
て、創傷被覆材断片の残留(異物)および異物巨細胞の
存在程度を定量的に観察し、文献[Chakravarthy,D.,
Rodway,N.,et.al.,Evaluation of three new hydro
colloid dressings: Retention of dressing integrit
y and biodegradability of absorbent components att
enuate inflammation. J.Biomed.Mater.Res.,28,
1165−1173(1994)]に従って、それぞれ0(無し)、
1(僅か)、2(普通)、3(顕著)としてスコア付け
した。その結果、実施例1の(6)で得られた含水ゲル
から得られた創傷被覆材を貼付した4カ所の創における
創傷被覆材断片の残留(異物)および異物巨細胞の存在
の程度はすべてスコア0であったが、参考例1で得られ
た含水ゲルから得られた創傷被覆材を貼付した4カ所の
創における創傷被覆材断片(異物)および異物巨細胞の
存在程度はそれぞれ3カ所の創でスコア1、1カ所の創
でスコア2であった。
【0139】《試験例 3》[ブタ分層欠損創モデル] 国産雄性幼ブタ2頭(平均体重15kg)を試験に用い
た。ブタ背部に電動デルマトームを用いて22mm角の
分層欠損創を2個づつ作製した。それぞれの創部に実施
例1の(6)で得られた創傷被覆材を貼付した。5日目
には2頭のブタのいずれの創部も閉鎖し、瘢痕やケロイ
ドは観察されなかった。同日に、創部を周囲の皮膚およ
び支持筋肉層とともに切除した。切除組織を中性ホルマ
リンで固定し、パラフィン包埋後5μmの切片を作製
し、ヘマトキシリン−エオシンで染色した。創傷被覆材
断片の残留(異物)および異物巨細胞の存在程度を定量
的に観察して、試験例2と同様にしてスコア付けした。
その結果、2頭のブタの創部における創傷被覆材断片の
残留(異物)および異物巨細胞の存在程度はすべてスコ
ア0であった。
【0140】
【発明の効果】本発明のポリビニルアルコール系重合体
から得られるゲル、特に含水ゲルは、柔軟性および透明
性に優れていて、しかも蒸気滅菌処理や水中煮沸処理な
どに耐え得る良好な耐湿熱性および耐熱水性を備えてお
り、さらに吸水性および閉鎖性にも優れており、それら
の優れた特性を活かして、創傷被覆材、酵素や菌体を固
定化するためのゲル、コンタクトレンズ、人工筋肉、人
工軟骨、人工関節、人工臓器、センサー、機能性分離
膜、放出制御膜、スイッチ、アクチュエータ、マイクロ
マシンなどとして有効に使用することができる。
【0141】特に、本発明のポリビニルアルコール系重
合体からなる創傷被覆材は、例えば121℃で20分間
の湿熱蒸気滅菌を行っても、変質が生じず、溶出物も少
ないので、安全性が極めて高い。また、本発明の創傷被
覆材は、透明性が高いので、創傷部に貼り付けたままの
状態で創傷部の状態、例えば細菌感染の有無、真皮また
は上皮細胞の増殖の様子などの観察ができ、しかも柔軟
性が高いので創傷部に貼り付けたときに外部からの刺激
を緩和し、患者の疼痛感が少ない。その上、本発明の創
傷被覆材は、吸水性および閉鎖性に優れているので、体
液を良好に吸収・保持し、水分の蒸散をコントロールす
る機能を発揮し、閉鎖性の創傷被覆材として治癒促進効
果に優れている。また、本発明の創傷被覆材は、反応性
の水酸基を有していることにより種々の化学修飾が可能
であり、しかも創傷被覆材を構成するポリビニルアルコ
ール系重合体における構造単位(I)や構造単位(II)
のモル分率を上記した本発明の範囲内で調節することに
よって、その性質を適当なものにコントロールでき、創
傷被覆材の使用態様などにより適したものとすることが
でき、例えば薬剤放出機能などの付与も可能である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年12月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正内容】
【0005】 そして、閉鎖性の創傷被覆材としては、
ポリビニルアルコール含水ゲル、ポリエチレングリコー
ル含水ゲル、ポリアクリルアミド含水ゲルなどの含水ゲ
ルと共に、ポリウレタンフイルム、ハイドロコロイド、
アルギン酸塩繊維からなる不織布、ポリビニルアルコー
ルスポンジなどが知られている。特許公報上では、具体
的には例えば、(1)不溶性アルギン酸塩と可溶性アル
ギン酸塩との混合アルギン酸塩の繊維の不織布よりなる
傷手当て具(特表平4−501067号公報);(2)
生体親和性の合成材料よりなる連続気泡フォームの細孔
に硼酸塩で変性したグアーガムのヒドロゲルを包含さ
せ、該ヒドロゲルに遊離ヒドロキシル基および/または
アミノ基と二官能カップリング剤とにより創傷治癒を促
進するペプチドを表面に結合させるか、および/または
殺菌性または抗真菌性の物質を含ませた創傷被覆材(特
表平6−500028号公報);(3)ケン化度が95
モル%以上で粘度平均重合度が1500以上のポリビニ
ルアルコールと2〜8個の水酸基を有する水溶性有機化
合物を用いて形成したヒドロゲルよりなる創傷被覆材
(特開昭58−92359号公報);(4)ポリビニル
アルコールと、ポリ(メチルビニルエーテル/無水マレ
イン酸)などの複合化剤とを物理的に架橋させた半結晶
質の半透明で水不溶性の、創傷被覆材などとして用いら
れるハイドロゲル(特開平6−212045号公報);
(5)ヒアルロン酸および/またはその塩を包括したポ
リビニルアルコール含水ゲルに塩酸ピロカルピンなどを
包含させた創傷被覆材などとして用いられる持続性活性
体(特開平3−215417号公報)などが提案されて
いる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正内容】
【0007】 さらに、上記(2)に挙げた創傷被覆材
では、表面に創傷治癒促進ペプチドが化学結合されてお
り、この結合は切断されないので、創傷被覆材に接触し
ている生体部位でしか効果が発現しないという欠点があ
る。また、上記(3)に挙げた創傷被覆材は、ある程度
の機械的強度を有しているが、不透明であるために創傷
部に貼り付けた場合に創傷部を観察することができず、
しかも例えば121℃の温度で20分間湿熱蒸気滅菌し
た場合には溶解してしまい、耐湿熱性に劣るので完全な
滅菌処理を行うことができないという欠点があり、その
上創傷被覆材が溶解しないような温度でも溶出物が多く
安全性が低いという欠点がある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正内容】
【0030】
【化7】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正内容】
【0099】[含水ゲルの耐熱水性] (a) 上記(6)で得られた含水ゲルを20mm×2
0mmの寸法に切断して得た試験片を、130℃の水中
で1時間熱水処理して、熱水処理後も透明なままで且つ
熱水処理を行う前と同じ寸法およびゲル形状を保ってい
る場合を○、そして熱水処理後に透明性が失われたり、
熱水処理を行う前と異なる寸法および/または形状にな
っている場合、或いは熱水処理により溶けてしまった場
合を×として評価した。 (b) 上記(6)で得られた含水ゲルを20mm×2
0mmの寸法に切断して得た試験片を、生理食塩水中で
121℃で20分間熱水処理して、熱水処理後も透明な
ままで且つ熱水処理を行う前と同じ寸法およびゲル形状
を保っている場合を○、そして熱水処理後に透明性が失
われたり、熱水処理を行う前と異なる寸法および/また
は形状になっている場合、或いは熱水処理により溶けて
しまった場合を×として評価した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0117
【補正方法】変更
【補正内容】
【0117】 (3) 上記(1)で得られたシート状
の含水ゲルの21.1gを50%ジメチルホルムアミド
水溶液に浸漬し、N−ヒドロキシコハク酸イミド(株式
会社ペプチド研究所製)23mgと水溶性カルボジイミ
ド(株式会社ペプチド研究所製)200mgを加えて、
室温で一晩振盪した。ついで、タウリン(和光純薬工業
株式会社製)25mgとトリエチルアミン(ナカライテ
スク株式会社製)16μlを加えて室温で一晩振盪
た。その後充分に水洗し、生理食塩液に置換して、透明
で且つ柔軟性に優れるシート状のスルホン酸基含有含水
ゲルを得た[構造単位(II)が上記した化学式(II
b−5)で表される構造単位であるポリビニルアルコー
ル系重合体含水ゲル]。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正内容】
【0118】 (4) 上記(3)で得られたスルホン
酸基含有含水ゲルの吸水率および水分含量を実施例1と
同様にして求めたところ、それぞれ11.0および91
重量%であった。また、上記(3)で得られたスルホン
酸基含有含水ゲルの一部を採取して充分に水洗した後、
アセトンに置換し、減圧乾燥した。これを酸素雰囲気中
で焼成し、純水に吸収させてイオンクロマトアナライザ
ー(横河電機社製「IC500S」)により定量したと
ころ、そのイオウ含有量は0.12重量%であり、この
値から求められる構造単位(II)[上記した化学式
(IIb−5)で表される構造単位]のモル分率は0.
0023であった。そして、上記(3)で得られたスル
ホン酸基含有含水ゲルの減圧乾燥物を含む臭化カリウム
錠剤の赤外線スペクトルを測定したところ、エステル基
に相当する1732cm−1と、アミド基に相当する1
635cm−1の部分に特徴的な吸収が観察された。さ
らに、上記(3)で得られたスルホン酸基含有含水ゲル
の耐熱水性、取り扱い性、柔軟性、透明度、および溶出
物量を、実施例1におけるのと同様にして求めたとこ
ろ、下記の表3に示すとおりであった。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (i) 下記の一般式(I); 【化1】 (式中、R1は水素原子または1価の炭化水素基であ
    り、そしてR2およびR3はそれぞれ独立して1価の炭化
    水素基であるか又はR2とR3が一緒になってそれらが結
    合している炭素原子と共に環を形成するか、或いは
    1、R2およびR3が一緒になってそれらが結合してい
    る炭素原子と共に環を形成している)で表される構造単
    位を0.05〜0.50のモル分率で含有し;且つ(i
    i) 下記の一般式(II); 【化2】 [式中、Xは、式−CO−Y、式−Yまたは式−CO−
    COOHで表される基(前記式中Yは、カルボキシル
    基、スルホン酸基、アミノ基およびリン酸基から選ばれ
    る少なくとも1種の極性基で変性された炭化水素基、ま
    たはカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基およびリ
    ン酸基から選ばれる少なくとも1種の極性基を有する基
    で変性された炭化水素基を示す)であるか、或いはそれ
    が結合している酸素原子と共にリン酸基を形成してい
    る]で表される構造単位の少なくとも1種を0.000
    1〜0.50のモル分率で含有するポリビニルアルコー
    ル系重合体。
  2. 【請求項2】 上記の一般式(II)で表される構造単位
    のモル分率が、下記の数式; 【数1】 {(1−Cest)×Cest}×0.01≦Cpol<{(1−Cest)×Cest}×2.0 [式中、Cpolは上記の一般式(II)で表される構造単位
    のモル分率、そしてCestは上記の一般式(I)で表さ
    れる構造単位のモル分率を示す]を満足している請求項
    1のポリビニルアルコール系重合体。
  3. 【請求項3】 上記の一般式(I)で表される構造単位
    の、下記の数式で表される平均連鎖長(Lest); 【数2】 Lest=(Cest/Cmet)×2 [式中、Lestは上記の一般式(I)で表される構造単
    位の平均連鎖長、Cestは上記の一般式(I)で表され
    る構造単位のモル分率、そしてCmetはポリビニルアル
    コール系重合体の主鎖を構成するメチレン炭素のうち
    で、水酸基または式−OXで表される基が結合している
    メチン炭素と上記の一般式(I)で示される構造単位を
    構成するメチン炭素によって挟まれているメチレン炭素
    のモル分率を示す]が2.0以上である請求項1または
    2のポリビニルアルコール系重合体。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項のポリビニ
    ルアルコール系重合体を含むことを特徴とするゲル基
    材。
  5. 【請求項5】 請求項4のゲル基材から得られるゲル。
  6. 【請求項6】 含水ゲルである請求項5のゲル。
  7. 【請求項7】 請求項5または6のゲルから主としてな
    る創傷被覆材。
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