JPH10339284A - スクロール型圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 インジェクションサイクル用のスクロール型
圧縮機において、中間圧冷媒が低圧側に洩れることを防
止する。 【解決手段】 スラスト荷重を受けるフロントハウジン
グ２の受圧面２ａに、中間圧冷媒を導く導入ポート２ｂ
を形成し、一方、導入ポート２ｂに面する旋回スクロー
ル６の圧力面６ｄに噴射穴６ｇに連通する連通ポート６
ｅを形成するとともに両面２ａ、６ｄの間に貫通穴が開
いたスペーサ２１を介在させる。これにより、両面２
ａ、６ｄおよびスペーサ２１には、常にスラスト荷重が
作用しているので、両面２ａ、６ｄおよびスペーサ２１
を密着させることができ、中間圧冷媒が低圧側に洩れる
ことを防止することできる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ガスインジェクシ
ョン冷凍サイクルに適用されるスクロール型圧縮機に関
するものである。因みに、ガスインジェクション冷凍サ
イクル（以下、インジェクションサイクルと呼ぶ。）と
は、周知のごとく、凝縮器（冷却器）から流出した冷媒
を２つの減圧器にて減圧し、最初の減圧器にて減圧され
た冷媒（気相冷媒）の一部（以下、この冷媒を中間圧冷
媒と呼ぶ。）を圧縮工程中の作動室内に導く（噴射す
る）ことにより冷凍サイクルの効率（成績係数）の向上
を図ったものをいう。

【０００２】

【従来の技術】インジェクションサイクル用のスクロー
ル型圧縮機として、例えば特開昭６２−３１８４号公報
に記載のものでは、中間圧冷媒を噴射する噴射口（イン
ジェクションポート）を固定スクロールに形成してい
る。そして、噴射口に至る噴射通路の一部を旋回スクロ
ールを経由させるとともに、この噴射通路を旋回スクロ
ールの旋回によって断続することにより、中間圧冷媒の
噴射時期（噴射タイミング）を制御している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、旋回スクロ
ールには、圧縮反力により固定スクロールから離れる向
きの力が作用する。このため、上記公報に記載のごと
く、噴射通路の一部を旋回スクロールを経由させる手段
では、圧縮反力により両スクロール間に隙間が発生し、
この隙間から中間圧冷媒が低圧側に洩れてしまう。した
がって、中間圧冷媒を噴射することによる成績係数の向
上を十分に発揮することができない、という問題が発生
する。

【０００４】本発明は、上記点に鑑み、インジェクショ
ンサイクル用のスクロール型圧縮機において、中間圧冷
媒が低圧側に洩れることを防止することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、以下の技術的手段を用いる。請求項１ま
たは２に記載の発明では、旋回スクロール（６）に作用
する圧縮反力を受ける、ハウジング（２）に形成された
受圧面（２ａ）に、吸入圧力と吐出圧力との間の圧力を
有する中間圧冷媒が導かれる導入ポート（２ｂ）を開口
させ、一方、旋回スクロール（６）に形成された受圧面
（２ａ）に圧縮反力を及ぼす圧力面（６ｄ）に、作動室
（１０）に連通した連通ポート（６ｅ）を開口させる。
そして、旋回スクロール（６）の旋回により両ポート
（２ｂ、６ｅ）間の連通状態の断続を行うことを特徴と
する。

【０００６】ところで、受圧面（２ａ）および圧力面
（６ｄ）には、インジェクションサイクル用のスクロー
ル型圧縮機が稼働している間は常に圧縮反力が作用して
いるので、受圧面（２ａ）および圧力面（６ｄ）は、互
いに離隔することなく密に接触している。そして、各ポ
ート（２ｂ、６ｅ）は、互いに離隔することなく密に接
触している受圧面（２ａ）および圧力面（６ｄ）にそれ
ぞれ形成されているので、両ポート（２ｂ、６ｅ）間に
隙間が発生しない。したがって、中間圧冷媒が低圧側に
洩れることを防止することできるので、中間圧冷媒を噴
射することによる成績係数の向上を十分に発揮すること
ができる。

【０００７】請求項２に記載の発明では、受圧面（２
ａ）と圧力面（６ｄ）との間に、両面（２ａ、６ｄ）に
接触するとともにいずれか一方の部位（２ａ）に対して
固定したスペーサ（２１）を配設し、かつ、このスペー
サ（２１）のうちスペーサ（２１）が固定された面（２
ａ）のポート（２ｂ）に対応する位置に貫通穴（２１
ａ）を形成したことを特徴とする。

【０００８】これにより、両ポート（２ｂ、６ｅ）の形
状または位置を変更することなく、スペーサ（２１）の
貫通穴（２１ａ）の形状または位置を変更することによ
って容易に中間圧冷媒の噴射タイミングを変更（設定）
することができる。なお、上記各手段の括弧内の符号
は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を
示すものである。

【０００９】

【発明の実施の形態】図１は本実施形態に係るインジェ
クションサイクル用のスクロール型圧縮機（以下、圧縮
機と略す）１００を用いたインジェクションサイクルの
模式図である。１００は、本実施形態に係る圧縮機（一
点鎖線に囲まれた部分）を簡略して描いたもので、この
圧縮機１００で圧縮された気相冷媒は、吐出口から吐出
されて冷媒の凝縮（冷却）させる凝縮器（冷却器）２０
０に圧送される。３００は凝縮器２００で液化された冷
媒を減圧する第１絞り弁（第１減圧器）で、４００は第
１絞り弁３００で減圧されて気液２相状態となった冷媒
を気相冷媒と液相冷媒とに分離する気液分離器である。

【００１０】５００は気液分離器４００で分離された液
相冷媒を減圧する第２絞り弁（第２減圧器）であり、こ
の第２絞り弁５００で減圧された霧化状態の冷媒は、空
気冷却手段をなす蒸発器６００に流れ込み蒸発する。そ
して、蒸発（気化）した冷媒は、圧縮機１００の吸入口
から吸入され再び圧縮される。一方、気液分離器４００
で分離された気相冷媒は、圧縮機１００に設けられた、
後述する噴射穴６ｇから圧縮機１００の作動室に噴射
（インジェクション）される。

【００１１】次に、図２を用いて圧縮機１００の構造に
ついて述べる。２は圧縮機１００のフロントハウジング
で、このフロントハウジング２のほぼ中心部に、シャフ
ト３を回転可能に支持するため軸受４が配置されてい
る。このシャフト３の軸方紙面右側には、その軸中心か
ら偏心した位置にシャフト３と一体に駆動キー５ａが形
成されており、この駆動キー５ａの外側には、ブッシュ
８が挿入されている。ブッシュ８には、図３に示すよう
に、駆動キー５ａが挿入されるキー溝８ａが設けられて
おり、駆動キー５ａおよびキー溝８ａの断面形状は略長
方形に形成されている。

【００１２】また、駆動キー５ａ側のフロントハウジン
グ２端部には、図２に示すように、渦巻き状の歯部６ａ
を有する旋回スクロール６が配置されている。そして、
旋回スクロール６の中心に設けられたボス部６ｃには、
軸受７が圧入されており、この軸受７の内側には、ブッ
シュ８が配置されている。なお、軸受７はシェル型の針
状ころ軸受で、ブッシュ８の円筒側面（ブッシュ８と軸
受７の針状ころ７ａとの接触面）が軸受７の軌道面を兼
ねることにより、ボス部６ｃの小型化を図っている。

【００１３】そして、キー溝８ａの断面長手方向寸法
は、図３に示すように、駆動キー５ａの断面長手方向寸
法に比べて僅かに大きく、駆動キー５ａはキー溝８ａに
対して、断面長手方向寸法に移動可能に挿入されてい
る。また、駆動キー５ａおよびキー溝８ａの断面長手方
向は、旋回スクロール６の回転（公転）方向とは逆向き
に傾いて（図３のｗ）いる。

【００１４】以上に述べた駆動キー５ａ、ブッシュ８お
よびキー溝８ａにより、旋回スクロール６に作用する遠
心力を利用して旋回スクロール６の歯部６ａを、後述す
る固定スクロール９の歯部９ａに押し付けることによっ
て、後述する作動室１０の密閉性を確保する、いわゆる
従動クランク機構５が構成されている。また、図２中、
９は、渦巻き状の歯部９ａを有する固定スクロールで、
固定スクロール９は、図示されていないボルトによっ
て、フロントハウジング２に組付けられ、旋回スクロー
ル６と共に冷媒を吸入圧縮する作動室１０を形成してい
る。

【００１５】そして、旋回スクロール６は、固定スクロ
ール９とフロントハウジング２とから形成される空間内
で、フロントハウジング２および固定スクロール９に対
してシャフト３の回転軸周りに公転（旋回）することに
より作動室１０の体積を拡大縮小させる。また、固定ス
クロール９の端板９ｂには、圧縮された冷媒を吐出する
吐出口１１が設けられており、この吐出口１１は、固定
スクロール９の端板９ｂとリヤハウジング１２とによっ
て形成される吐出室１３と作動室１０とを連通させてい
る。

【００１６】なお、１４は吐出室１３から作動室１０へ
冷媒が逆流することを防止する吐出弁であり、１５が吐
出弁１４の最大開度を規制するストッパである。また、
旋回スクロール６の歯部６ａおよび固定スクロール９の
歯部９ａの先端部には、図１に示すように、作動室１０
の密閉性を保つための樹脂（本実施形態では、ＰＰＳ樹
脂）製のチップシール１６、１７が配置されている。

【００１７】また、旋回スクロール６の端板６ｂの外縁
部近傍には、複数個の円柱状のスクロール側ピン部材１
８が圧入され、一方、端板６ｂに対向するフロントハウ
ジング２の面には、スクロール側ピン部材１８にオフセ
ットして、スクロール側ピン部材１８と対をなすよう
に、円柱状のハウジング側ピン部材１９が圧入されてい
る。そして、両ピン部材１８、１９により旋回スクロー
ル６がブッシュ８回りに回転することを防止する自転防
止機構が構成されている。

【００１８】なお、両ピン部材１８、１９は、耐磨耗性
に優れ、強度の高い材質の金属（本実施の形態では、高
炭素クロム軸受鋼鋼材）製である。ところで、フロント
ハウジング２のうち旋回スクロール６の端板６ａに面す
る部位（以下、この部位を受圧面と呼ぶ。）２ａは、旋
回スクロール６に作用する圧縮反力のうちシャフト３の
軸方向成分の力（以下、この力をスラスト荷重と呼
ぶ。）を後述するスペーサ２１を介して受けている。

【００１９】なお、旋回スクロール６の端版６ａのうち
受圧面２ａと対向する面（以下、この面を圧力面６ｄと
呼ぶ。）は、スペーサ２１との摺動性を向上させるべ
く、研磨加工が施されている。また、受圧面２ａには圧
縮機１００の吸入圧力と吐出圧力との間の圧力を有する
中間圧冷媒が導かれる導入ポート２ｂが開口し、一方、
圧力面６ｄには作動室１０に連通した連通ポート６ｅが
開口している。なお、連通ポート６ｅから作動室１０
（噴射穴６ｇ）に連通する連通路６ｆは、図４に示すよ
うに、連通ポート６ｅから２つに分岐している。これ
は、スクロール型圧縮機では、等しい状態の作動室が必
ず２つあるため、２つの作動室１０に同時に中間圧冷媒
を噴射するためである。

【００２０】さらに、受圧面２ａと圧力面６ｄとの間に
は、図２に示すように、両面２ａ、６ｄに接触するとと
もにフロントハウジング２（受圧面２ａ）に対して固定
された炭素工具鋼（ＳＫ材）製のスペーサ（リテーナ）
が配設されており、スペーサ２１は、図５に示すよう
に、導入ポート２ｂに対応する位置に、スペーサ２１の
肉厚方向に貫通する弓型状の貫通穴２１ａがプレス形成
されている。

【００２１】なお、２１ｂは、フロントハウジング２
（受圧面２ａ）に形成された位置決め用ノックピン（図
示せず）が挿入される穴であり、この穴２１ｂによりス
ペーサ２１はフロントハウジング２（受圧面２ａ）に対
して固定している。また、２１ｃはフロントハウジング
２に形成された圧縮機１００の吸入口（図示せず）から
作動室１０に至る通路の一部を形成する穴であり、２１
ｄは、自転防止機構とスペーサ２１との干渉を避ける逃
げ穴である。

【００２２】また、フロントハウジング２に形成された
導入ポート２ｂに至る通路２ｃ（図２参照）のフロント
ハウジング２の外壁側の開口部２ｄは、圧縮機１００の
吸入口と近接して形成されており、この開口部２ｄと気
液分離器４００とを接続する配管（図示せず）と、蒸発
器６００と圧縮機１００の吸入口とを接続する配管（図
示せず）とが共通の締結部材（図示せず）により支持固
定されている。

【００２３】次に、本実施形態の特徴的作動を述べる。
旋回スクロール６の旋回とともに連通ポート６ｅが旋回
（公転）するため、連通ポート６ｅと導入ポート２ｂと
の連通状態の断続が、旋回スクロール６の旋回に機械的
に連動して行われる。したがって、両ポート２ｂ、６ｅ
もしくは貫通穴２１ａの形状または位置を変更すること
により、容易に中間圧冷媒を噴射する噴射タイミングを
設定することができる。

【００２４】因みに、本実施形態では、作動室１０の体
積が最大となり、吸入工程が終了した後、中間圧冷媒が
噴射されるように噴射タイミング（両ポート２ｂ、６ｅ
もしくは貫通穴２１ａの形状または位置）が設定されて
いる。ところで、受圧面２ａ、圧力面６ｄおよびスペー
サ２１には、圧縮機１００が稼働している間は常にスラ
スト荷重が作用しているので、受圧面２ａ、圧力面６ｄ
およびスペーサ２１は、互いに離隔することなく密に接
触している。

【００２５】したがって、各ポート２ｂ、６ｅは、互い
に離隔することなく密に接触している受圧面２ａおよび
圧力面６ｄにそれぞれ形成されているので、両ポート２
ｂ、６ｅ間に隙間が発生しない。延いては、中間圧冷媒
が低圧側に洩れることを防止することできるので、中間
圧冷媒を噴射することによる成績係数の向上を十分に発
揮することができる。

【００２６】また、本実施形態では、受圧面２ａと圧力
面６ｄとの間にスペーサ２１を介在させているので、両
ポート２ｂ、６ｅの形状または位置を変更することな
く、スペーサ２１の貫通穴２１ａの形状または位置を変
更することによって容易に噴射タイミングを変更（設
定）することができる。ところで、上述の実施形態で
は、スペーサ２１の貫通穴２１ａを弓型状としたが、貫
通穴２１ａの形状は、前述のごとく、噴射タイミングを
変更（設定）するものであるので、その形状は弓型状に
限定されるものではなく、図６に示すように、長円（楕
円）状としてもよい。

【００２７】また、上述の実施形態では、スペーサ２１
をフロントハウジング２に対して固定したが、本発明は
これに限定されるものではなく、旋回スクロール６側に
固定してもよい。また、上述の実施形態では、受圧面２
ａと圧力面６ｄとの間にスペーサ２１を介在させたが、
スペーサ２１を廃止して、両ポート２ｂ、６ｅの形状ま
たは位置を変更することにより噴射タイミングを変更
（設定）してもよい。

【図面の簡単な説明】

【図１】インジェクションサイクルの模式図である。

【図２】圧縮機の断面図である。

【図３】従動クランク機構の説明図である。

【図４】旋回スクロールの正面図である。

【図５】スペーサの正面図である。

【図６】変形例に係るスペーサの正面図である。

【符号の説明】

２…フロントハウジング、２ａ…受圧面、２ｂ…導入ポ
ート、６…旋回スクロール、６ｄ…圧力面、６ｅ…連通
ポート、９…固定スクロール。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ガスインジェクション冷凍サイクルに適
   用されるスクロール型圧縮機であって、 ハウジング（２）と、 前記ハウジング（２）に対して固定された固定スクロー
   ル（９）と、 前記固定スクロール（９）と共に冷媒を吸入圧縮する作
   動室（１０）を形成し、前記ハウジング（２）および前
   記固定スクロール（９）に対して旋回運動する旋回スク
   ロール（６）と、 前記ハウジング（２）に形成され、前記旋回スクロール
   （６）に作用する圧縮反力を受ける受圧面（２ａ）と、 前記受圧面（２ａ）にて開口し、吸入圧力と吐出圧力と
   の間の圧力を有する中間圧冷媒が導かれる導入ポート
   （２ｂ）と、 前記旋回スクロール（６）のうち前記受圧面（２ａ）に
   対向する部位に形成され、前記受圧面（２ａ）に前記圧
   縮反力を及ぼす圧力面（６ｄ）と、 前記圧力面（６ｄ）にて開口し、前記作動室（１０）に
   連通した連通ポート（６ｅ）とを備え、 前記旋回スクロール（６）の旋回により、前記両ポート
   （２ｂ、６ｅ）間の連通状態の断続を行うことを特徴と
   するスクロール型圧縮機。
2. 【請求項２】 前記受圧面（２ａ）と前記圧力面（６
   ｄ）との間に配設され、前記両面（２ａ、６ｄ）に接触
   するとともにいずれか一方の部位（２ａ）に対して固定
   したスペーサ（２１）と、 前記スペーサ（２１）のうち前記スペーサ（２１）が固
   定された面（２ａ）のポート（２ｂ）に対応する位置に
   形成され、前記スペーサ（２１）の肉厚方向に貫通する
   貫通穴（２１ａ）とを備えることを特徴とする請求項１
   に記載のスクロール型圧縮機。