JPH10331920A - 無段変速機用金属ベルト - Google Patents

無段変速機用金属ベルト

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JPH10331920A
JPH10331920A JP14161097A JP14161097A JPH10331920A JP H10331920 A JPH10331920 A JP H10331920A JP 14161097 A JP14161097 A JP 14161097A JP 14161097 A JP14161097 A JP 14161097A JP H10331920 A JPH10331920 A JP H10331920A
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JP
Japan
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pulley
metal belt
belt
convex portion
elements
Prior art date
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Application number
JP14161097A
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English (en)
Inventor
Toru Ide
徹 井手
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Subaru Corp
Original Assignee
Fuji Heavy Industries Ltd
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Publication date
Application filed by Fuji Heavy Industries Ltd filed Critical Fuji Heavy Industries Ltd
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Publication of JPH10331920A publication Critical patent/JPH10331920A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 入力側プーリと出力側プーリとの間に掛け渡
された金属ベルトをスムーズに走行し得るようにする。 【解決手段】 一方面に凸部31が設けられ他方面に凹
部32が形成された多数のエレメント21を相互に隣接
するエレメント21の凸部31と凹部32とを嵌合させ
て連ならせるとともに、エレメント21に形成されたス
リット27に無端帯状のキャリアを挟み込んで金属ベル
トは形成される。プーリ間のミスアライメントによるエ
レメント21のキャリアに対する傾きにより生ずる隣り
合うエレメント21の凸部31と凹部32との間の相対
位置ずれの2倍よりも、凸部31と凹部32とのクリア
ランスcが大きく設定されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車用のベルト式
無段変速機などに使用される金属ベルトに関し、特に、
多数の金属板製のエレメントとこれらのエレメントを保
持する無端帯状のキャリアとを有する無段変速機用金属
ベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】それぞれV形溝を有しプーリ間隔可変の
入力側プーリと出力側プーリとの間に金属ベルトを掛け
渡して形成される無段変速機は、入力側プーリと出力側
プーリとのV形溝の幅を整合的に変化させることによっ
て、金属ベルトがプーリ上で異なった半径位置に移動す
ることになり、入力側プーリの回転を出力側プーリに対
して連続的に無段階に調整して出力することができる。
このタイプの無段変速機に使用する金属ベルトとして
は、たとえば、米国特許第5004450 号公報に記載されて
いるものがある。
【0003】この無段変速機に使用される金属ベルト
は、重ねるようにループ状に連ねられる多数の横方向部
材である金属薄板製のエレメントと、無端帯状の金属製
バンドを積層して形成され前記エレメントを保持する縦
方向部材であるバンド部材つまりキャリアとにより形成
される。エレメントの一方面には凸部が形成され、他方
面には凹部が形成されており、エレメント相互を重ねる
ようにして連ねると、1つのエレメントの凸部はその一
方面側に隣り合う他のエレメントの凹部に入り込み、エ
レメントの凹部はその他方面に隣り合う他のエレメント
の凸部を受け入れることになり、隣り合うエレメントの
位置決めなどが達成されることになる。
【0004】入力側プーリと出力側プーリのそれぞれの
V形溝の幅を整合的に変化させて変速比を変化させる場
合には、米国特許第4854919 号公報に記載されるよう
に、幾何学的な必然性により両方のプーリの溝幅の中心
にずれ、つまりミスアライメントを生じることが知られ
ており、このずれのために、両方のプーリ間で走行する
金属ベルトの直線部がしばしば不正確に走行することに
なる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような金属ベルト
の直線部の不正確な走行のために、前掲した米国特許第
5004450 号公報に示されるように、エレメントが傾けら
れてプーリに進入している現象が起こる。傾けられたエ
レメントは、プーリに受入れられる過程においてプーリ
を構成する両側シーブの接触面とキャリアとにより強制
的に所定の姿勢に矯正されることになる。この姿勢矯正
過程においては、エレメント相互に比較的大きな姿勢の
ずれが発生するので、このずれのために前後に隣り合う
エレメント間において、隣りのエレメントに設けられた
凸部とその凸部を受け入れているエレメントの凹部との
間で干渉が発生する。この凸部と凹部との相互干渉の発
生は、スムーズな金属ベルトの走行を妨げることにな
り、伝達効率の低下やベルトの摩耗などが生じ易くな
る。このため、凸部と凹部相互間の干渉の発生を避ける
ことが望ましい。
【0006】金属ベルトがプーリに受け入れられて傾き
姿勢が矯正される前の段階、つまりエレメントの両側面
がプーリの接触面に挟まれる前の段階におけるエレメン
トの傾きを小さくすれば、凸部と凹部相互間の干渉を大
きく低減することができる。
【0007】特開平7-12177 号公報には、エレメントに
形成されたキャリア受入れ用のスリットの幅とキャリア
の厚さとの寸法差を小さくし、キャリアに対してエレメ
ントが傾くことができないようにすることで、エレメン
トの傾きを低減するようにした金属ベルトが開示されて
いる。しかしながら、この公報には、ベルトがプーリに
受け入れられた段階での姿勢矯正過程において発生する
凸部と凹部との相互干渉については何ら言及されておら
ず、スムーズな金属ベルトの走行を保証することはでき
ない。
【0008】本発明の目的は、入力側プーリと出力側プ
ーリとの間に掛け渡された金属ベルトをスムーズに走行
し得るようにすることにある。
【0009】本発明の他の目的は、入力側プーリと出力
側プーリとの間のミスアライメントに起因する隣り合う
エレメントの凸部と凹部との干渉によるベルト伝達効率
の低下を防止して、プーリ、エレメントの摩耗や破損を
防止することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本願において開示される
発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、
以下のとおりである。
【0011】すなわち、本発明の無段変速機用金属ベル
トは、一方面に凸部が設けられ他方面に凹部が形成され
た多数のエレメントを相互に隣接するエレメントの前記
凸部と前記凹部とを嵌合させて連ならせるとともに、前
記エレメントに形成されたスリットに無端帯状のキャリ
アを挟み込んで形成され、プーリ間に装着される無段変
速機用金属ベルトであって、前記凸部と前記凹部とのク
リアランスを、前記プーリ間のミスアライメントによる
前記エレメントの前記キャリアに対する傾きにより生ず
る隣り合う前記エレメントの前記凸部と前記凹部との間
の相対位置ずれの2倍と同一あるいはそれよりも大きく
設定したことを特徴とする。
【0012】また、本発明の無段変速機用金属ベルト
は、前記凸部と前記凹部とのクリアランスを、エレメン
トの最大傾き角、エレメントピッチ部厚さ、エレメント
ピッチ幅、エレメントの凸部位置およびベルトの最小巻
き付き半径から求めた隣り合うエレメント間の相対位置
ずれの2倍と同一あるいはそれよりも大きく設定したこ
とを特徴とする。
【0013】本発明にあっては、クリアランスを前記し
たように設定したので、エレメントがプーリに入り込む
際にエレメントがキャリアに対して傾いており、プーリ
表面で姿勢矯正がなされるときには、凸部と凹部との干
渉がなく、きわめてスムーズに金属ベルトの走行が確保
される。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて詳細に説明する。
【0015】図1および図2はベルト式無段変速機を構
成する駆動側プーリつまり入力側プーリ11aと、従動
側プーリつまり出力側プーリ11bとを示す断面図であ
り、これらのプーリ11a,11bにはVベルトつまり
金属ベルト12が掛け渡されている。
【0016】入力側プーリ11aはシーブ13aを有す
る入力軸14aと、この入力軸14aに軸方向に摺動自
在に装着された可変シーブ15aとを有しており、それ
ぞれのシーブ13a,15aは円錐面つまりコーン面を
有し、可変シーブ15aを軸方向に摺動させることによ
り、両方のシーブ13a,15aにより形成されるV形
溝の幅が変化する。出力側プーリ11bはシーブ13b
を有する出力軸14bと、この出力軸14bに軸方向に
摺動自在に装着された可変シーブ15bとを有してお
り、両方のシーブ13b,15bにより形成されるV形
溝の幅を、入力側プーリ11aのV形溝の幅に整合的に
変化させることによって、金属ベルト12がプーリに対
して異なった半径位置に移動することになる。図1およ
び図2は、金属ベルト12が入力側プーリ11aに対し
て最小巻き付き半径rm となって掛け渡され、出力側プ
ーリ11bに対して最大半径となって掛け渡された状態
を示す。
【0017】図3は図1および図2に示された金属ベル
ト12の一部を拡大して示す分解斜視図であり、金属ベ
ルト12は多数枚の横方向部材である金属薄板製のエレ
メント21と、無端帯状の複数枚の金属製バンドを積層
して形成される縦方向部材であるキャリア22とにより
形成されており、それぞれのエレメント21は重ねるよ
うにしてループ状に連ねられ、キャリア22によって保
持されるようになっている。
【0018】1枚のエレメント21を拡大して示すと、
図4(A)の通りであり、エレメント21は中央のピラ
ー部23を介して連結されるイヤー部24とショルダー
部25とを有し、ショルダー部25のサドル面26とイ
ヤー部24との間には、一対のキャリア22を挿入する
ための一対のスリット27が形成されている。多数のエ
レメント21は、それぞれサドル面26とイヤー部24
との間にキャリア22を挟み込むことによって、無端の
キャリア22に沿って連ねられて配列されることにな
る。金属ベルト12はプーリ11a,11bに挟み付け
られて圧縮力を受けて動力を入力軸14aから出力軸1
4bに伝達する。
【0019】図4(B)に示すように、エレメント21
は寸法tの厚みを有しており、ショルダー部25のうち
金属ベルト12のピッチ径rに相当する部分よりも下側
の部分は上側の部分よりも厚みが薄くなっている。イヤ
ー部24の一方面の中央には断面円形となり外径がD1
の凸部31が形成され、他方面の中央には円形となり凸
部31の外径D1 よりも大きな内径D2 となった凹部3
2が形成されている。したがって、多数枚のエレメント
21を重ねるように連ならせるために、凸部31を凹部
32に嵌合させると、凸部31の外周面と凹部32の内
周面との間の隙間つまりクリアランスcは、D2 −D1
となる。また、図4(A)に示すように、エレメント2
1の幅寸法はwとなっており、プーリV溝角βに対応さ
せてエレメント21の側面33は角度βで傾斜してい
る。
【0020】図5はエレメント21にキャリア22が挟
み込まれた状態を示す正面図であり、図5(A)はエレ
メント21がキャリア22に対して水平となっている状
態を示し、図5(B)はエレメント21がキャリア22
に対して最大傾斜角α0 で傾いた状態を示す。図5
(B)においては、エレメント21がキャリア22に対
して右下がりに最大傾斜角α0 で傾いた状態を示してお
り、このときには、同図において左側のキャリア22が
左側のサドル面26に接触し、右側のキャリア22が右
側のイヤー部24に接触する。
【0021】図6はプーリ11とこれに巻き付くことに
なる金属ベルト12の直線部の一部を示す斜視図であ
り、プーリの回転中心軸に沿う方向をX軸とし、プーリ
V溝中心線に沿ってプーリの径方向をY軸とすると、エ
レメント21の横方向はX軸方向となり、X軸方向に沿
ったプーリの断面はV形状となる。ベルトの直線部と平
行な面でプーリを切断すると、プーリを構成するシーブ
の表面がコーン面、つまり円錐面16となっているの
で、ベルトの直線部は図6において二点鎖線で示すよう
に、湾曲したプーリ表面に沿って進行することになる。
【0022】図7は図6に示された金属ベルト12の直
線部を示す断面図であり、図7に示されるプーリ11
は、図6において二点鎖線で示される部分に相当する。
図7(A)はプーリ間のミスアライメントにより両方の
プーリのプーリV溝中心がx1だけずれた状態を示し、
同図(B)はミスアライメントが0となっている状態を
示す。
【0023】図6に示すように、金属ベルト12の直線
部がプーリ11の巻き付き部に進入する場合を想定す
る。エレメント21の左右両側面33がともに始めてプ
ーリ表面16に接触する位置が、図7(A)に示す位置
4 であるとし、この段階での傾き角が最大傾斜角α0
であるとする。傾いているエレメント21はこの段階か
ら図7に示す巻き付き開始点S0 に向かって進むにつれ
て、両側面33がプーリ表面16に案内され、片側のシ
ョルダー部25のサドル面26がキャリア22により案
内されてエレメント21は位置決めされる。そして、エ
レメント21は徐々にその傾き角αが0に戻されて姿勢
が矯正される。この矯正はプーリ表面16とキャリア2
2とにより強制的に行われる。
【0024】連なっているどのエレメント21も全く同
じように傾き姿勢が矯正されていくはずであるから、あ
る瞬間においてはプーリ入口部で両側面33がプーリ1
1に接触して挟まれている部分のエレメント21は各々
が少しずつ異なる傾斜角αを持つことになる。したがっ
て、各々のエレメント21は凸部31と凹部32の中心
軸の位置がすべて異なってずれている。
【0025】図8(A)は2つのエレメント21がこれ
らの一方の凸部31を他方の凹部32に嵌合させて相互
に重なった状態を示しており、凸部31が凹部32に嵌
合した部分の断面が、図8(B),(C)に示されてい
る。図8(B)は凸部31の中心が凹部32の中心に一
致した状態を示し、図8(C)は凸部31の中心が凹部
32の中心に対して最大値pm となってずれている状態
を示す。
【0026】このずれの最大値pm は、後述するよう
に、エレメント21の厚さt、エレメントの最大傾き角
α0 、最小ベルト巻き付き半径rm 、エレメント21の
幅寸法wおよび凸部31の外径D1 によって定められ
る。したがって、クリアランスcとずれの最大値pm
の寸法関係を以下のように設定する。
【0027】すなわち、c/2=pm あるいはc/2>
m となるように設定する。
【0028】上述のようにエレメント21が傾いてプー
リ11に進入し、傾き姿勢が矯正される過程において、
各々のエレメント21の凸部31と凹部32の中心軸の
位置はすべて異なるので、図8(A)に示すように前後
に隣り合うエレメント21間では、後側のエレメント2
1の凸部31を受け入れている前側のエレメント21の
凹部32とがそれぞれ異なる中心軸を持ち、その位置ず
れ量pが凸部31と凹部32との間の隙間つまりクリア
ランスcの1/2よりも大きい場合には、図8(C)に
おいて二点鎖線で示すように凸部31と凹部32間で干
渉が起こり、スムーズな金属ベルト12の運行が妨げら
れる。
【0029】本発明にあっては、前述のように、c/2
>pm となるように、クリアランスcを設定したので、
プーリ11に入り込むエレメント21の両側面33がプ
ーリ表面16に接触して挟まれることによって姿勢矯正
過程にある金属ベルト12の部分における凸部31と凹
部32相互間の中心ずれの最大値pm よりもクリアラン
スc/2の方が大きく、この姿勢矯正過程において凸部
31と凹部32相互間での干渉の発生がなく、極めてス
ムーズな金属ベルト12の走行が保証される。
【0030】次に、エレメント21の相対的な位置ずれ
量の算出方法について説明する。
【0031】図7(B)に示すように、プーリ11のミ
スアライメントが0の状態で、エレメント21がキャリ
ア22に対して傾きを持たずに真っ直ぐにプーリ11に
入っていく場合において、エレメント21の前記ピッチ
半径rにおけるX軸方向つまり横方向のエレメント21
の側面33とプーリ11との間の隙間をδとする。
【0032】一方、プーリ11のミスアライメントなど
の影響によってエレメント21がキャリア22に対して
傾斜してプーリ11に進入していく場合について、図5
(B)を参照して考える。同図にあっては、傾き方向は
エレメント21のうち凹部32が形成されている面を裏
面とすると、裏面から見て右側が下がる方向で傾斜して
いる場合を想定する。ただし、逆方向に傾いている場合
には左右が逆となる。
【0033】図5(B)に示すように、エレメント21
の傾きが最大の傾き角α0 あるいはこれよりも小さな傾
き角α1 の状態となってプーリ11に進入した場合であ
って、図7(A)においてS4 の位置のエレメント21
の両側面33が、金属ベルト12のZ方向つまり進行方
向にz=nt(tはエレメント21の厚さであり、nは
整数とは限られない)の位置で初めてプーリ11に挟ま
れたとする。
【0034】エレメント21が傾いていない場合には、
図7(B)に示すようにz=0の位置までエレメント2
1が進行しないとプーリ11に接触しないが、傾いてい
るとz=0よりも手前側で接触する。傾き角α1 は、エ
レメント21がキャリア22により傾斜が規制されるの
で、図5(B)に示すように、エレメント21の最大傾
き角α0 よりも小さい角度となる。最大傾斜角α0 は、
図5(A)に示される接点間寸法Aと、隙間寸法Bとの
関係から、α0 =tan -1(A/B)となる。
【0035】図7(A)に示すように、巻き付き開始点
の位置S0 、つまりz=0の位置よりもz=ntだけ手
前の位置S4 で傾いた状態となってプーリ11に初めて
挟まれたエレメント21は、ベルトの進行とともに傾き
が矯正され、巻き付き開始点においてα=0となる。
【0036】図9は図7(A)における位置S4 のエレ
メント21が巻き付き開始点位置S0 の位置までS3
1 の位置を経て進行しながら、姿勢が矯正される状態
を模式的に示す展開図である。プーリV溝幅はエレメン
ト21がプーリ巻き付き開始点S0 に近づくにつれて狭
くなる。姿勢矯正過程では、図9に示す左側のショルダ
ー部25の上下方向の位置がキャリア22と円錐面16
から規制されるので、エレメント21全体の上下方向の
位置が規制されながら、図9に示す接触点RUがエレメ
ント21の進行とともにプーリ11に沿って持ち上げら
れる。この動きは、近似的にはエレメント21の左下側
の接触点LL を中心とした回転と考えられる。エレメン
ト21が巻き付き開始点S0 に近づくにつれて、プーリ
V溝幅が狭まるので、接触点LL は、図9に示されるよ
うに右側にずれていく。
【0037】全てのエレメントが上述したような軌跡を
描いてプーリに進入していくとすると、ある瞬間におい
て、プーリ入口付近ではプーリに挟まれている状態の複
数のエレメントを、Z方向からX−Y平面上に投影した
とすると、やはり図9に示すように表される。
【0038】このように、各々のエレメントはそれぞれ
姿勢がずれているので、凸部31の軸中心位置はZ方向
の位置においてそれぞれ異なる。前後方向に隣り合う任
意の2つのエレメント間の凸部31と凹部32のX−Y
平面に投影した中心間距離をpとすると、最初に両側面
33がプーリに挟まれる位置S4 、つまりz=ntの位
置のエレメントと、その隣りの位置S3 、つまりz=
(n−1)tの位置のエレメントとの間で、その中心間
距離pが最も大きくなる。これをpm とする。
【0039】エレメントが傾いてプーリに進入するとき
には、エレメントの姿勢矯正過程において、エレメント
相互の姿勢つまり傾きがずれることになるので、凸部3
1の中心位置に差が生じ、前後に隣り合うエレメントで
は凸部と凹部の位置が一致しない。図8(C)において
二点鎖線で示すように、前後に隣り合うエレメントの凸
部の位置の差pがクリアランスcの1/2よりも大きい
場合には、凸部と凹部相互間で干渉が起こる。干渉が起
こると、スムーズなエレメントの動きが妨げられて伝達
トルクのロスが生じる。さらには、前後に連なるエレメ
ント相互間では前側のエレメントがその凹部で後側のエ
レメントの凸部により下向きの力を受けて姿勢の矯正が
妨げられることになる。このため、プーリとの接触点に
大きな力が働くことになり、スムーズなベルトの進行を
妨げ、動力伝達効率の低下をもたらし、プーリの摩耗を
促進することになる。これらの不都合を避けるために
は、凸部と凹部相互間の隙間つまりクリアランスcを、
ずれ量の最大値pm の2倍と同一あるいはそれよりも大
きく設定すれば良い。
【0040】徐々に幅が狭くなるV溝にエレメントが進
入していく場合に、キャリア22がなければ、エレメン
トは上方向に逃げられることになるが、キャリア22に
より押さえられるので逃げられない。したがって、エレ
メントが図9に示す方向に傾斜した場合には、左側のキ
ャリアとプーリとにより姿勢が決定され、両側面33と
プーリとの接触点における摩擦力は、プーリ溝幅がベル
トの進行とともに狭くなるので、エレメントが両側プー
リから受ける力が非常に大きくなり、接触点での摩擦力
も非常に大きくなると考えられる。したがって、凸部と
凹部相互間に干渉が発生すると、その干渉力も大きくな
り、スムーズなベルトの運行を妨げる原因となる。
【0041】凸部と凹部間のクリアランスcを大きくす
れば、干渉の発生は抑制されるが、エレメントの整列性
が悪化することになるだけでなく、キャリアの側面とエ
レメントのピラー部との干渉やその他の不都合が生じる
ので、クリアランスcを大きくすることは好ましくな
い。そこで、c/2>pm の条件を満たす最小のクリア
ランスcとすることで、スムーズなベルトの運行を確保
しつつ、エレメントの整列性なども充分に達成すること
ができる。
【0042】次に、凸部中心間距離の最大値pm の設定
方法について以下に説明する。
【0043】図7に示すように、プーリV溝幅は巻付け
開始点位置S0 よりも手前の方が、つまりzが大きい程
大きくなるので、ベルトが真っ直ぐな状態におけるエレ
メントとプーリとの間のX方向の隙間δもzが大きい程
大きくなる。
【0044】図10に示すように、巻付け開始位置の手
前近傍ではZ軸に垂直な断面内でのV溝は、左右両側と
も一定の傾き角βの直線で近似できるので、エレメント
とプーリとの隙間は両側面33の上側境界点R
U (LU )、下側境界点RL (LL )の両方に対しても
同じ値δで近似できる。したがって、エレメントとプー
リとの隙間は、図10に示すように、側面の上側境界点
U (LU )と下側境界点RL(LL )の両方に対して
同じ値δで近似できる。
【0045】図11はプーリの直線部と巻き付き部にお
けるプーリとエレメントの寸法を示す概略図であり、ベ
ルトの直線部におけるピッチ線とプーリとの接点の半径
をrb とすると、rb =(r2 +z2 1/2 であり、δ
=(rb −r) tanβであるので、隙間δはベルトの巻
付けピッチ半径rとエレメントの位置zとにより、以下
のように表される。
【0046】
【数1】
【0047】通常、図4(A)に示すように、エレメン
ト21はそのショルダー部25のうちプーリに挟まれる
台形部分における一方の側面の上側接点RU と他方の側
面の下側接点LL とを結ぶ対角線Lと側面33とが直角
に近くなるように寸法が選ばれる。なぜならば、この角
度が直角よりも大きいと、たとえば、エレメントが右に
傾いてプーリに進入して接点LL とRU とがプーリの円
錐面16に接触した場合に、接点LL に働く円錐面に垂
直な力は接点RU よりも上側に向くことになるため、エ
レメントの傾きが戻りにくくなる。一方、この角度を直
角よりも小さくすると、エレメントの高さが必要以上に
大きくなり、重量増による遠心力の影響が問題となるか
らである。そのため、図4(A)に示すように、対角線
Lの角度φは傾斜角βとほぼ同一に設定されている。
【0048】この近似値を用いると、図12(A)に示
すようにエレメント21の両側面33の隙間がδである
場合に、図12(B)に示すようにエレメントが傾斜し
て両接点が接触したとすると、エレメントの傾き角α
は、対角線Lの長さaとプーリの傾斜角βとにより以下
のように表される。なお、図12(A)に示すようにエ
レメントが水平状態となっているときの凸部31の中心
点Oa は、エレメントが図12(B)に示すように傾斜
したときには、中心点Ob の位置にずれることになる。
【0049】
【数2】
【0050】このように、z>0では、エレメント21
の傾き角αも、z,rにより一義的に定まる。ただし、
z<0においてはα=0である。
【0051】したがって、プーリ11との隙間がδであ
って、水平状態から角度αだけ傾いているエレメント2
1の凸部の中心位置Ob の水平状態の中心位置Oa に対
する座標(x,y)は、図4および図13に示されるエ
レメント寸法u,v,dを用いると、以下のように表さ
れる。
【0052】
【数3】
【0053】前後方向に隣り合うエレメント21は、z
方向に位置がtだけずれているので、図12および図1
3に示すように位置zにあるエレメントとその1つ前の
位置(z−1)のエレメントとの間での凸部の中心点O
a からOb への中心位置(x,y)のずれ量(Δx,Δ
y)はエレメントのピッチ厚さtを用いて次のように表
される。
【0054】
【数4】
【0055】したがって、位置zにあるエレメントの凸
部中心とその1つ手前にあるエレメントの凸部中心との
間の距離pは、以下のように表される。
【0056】
【数5】
【0057】この式(5) に示されるように、凸部中心間
距離pはzが大きい程、また進入先のプーリでのベルト
半径rが小さい程大きくなる。
【0058】エレメントが最大傾き角度α0 の傾きを伴
ってプーリに進入し、ある位置z0でエレメントの両側
面33がプーリと接触したとすると、凸部中心間距離p
はエレメントの進行とともに減少するので、その最大値
m はプーリに初めて挟まれた位置z0 =ntのエレメ
ントとその次の位置z1 =(n−1)tのエレメントの
間で最大となる。また、進入先のプーリでのベルト半径
rに関しては、pはrが小さい程大きくなるので、使用
される最小ベルト巻付け半径rm の場合についてのpm
を考えれば良い。
【0059】結果的に、干渉に関しての凸部中心間距離
pの最大値pm は、半径rが最小ベルト巻き付け半径r
m の場合についてのエレメントを考えれば良いので、最
大値pm は以下のように表される。
【0060】
【数6】
【0061】ただし、式(2) よりz0 は、
【0062】
【数7】
【0063】であり、式(6) はz0 >t すなわち、α
0 が以下の範囲で有効である。
【0064】
【数8】
【0065】エレメントのピッチ線における幅をw、凸
部31の中心とエレメント側面の上側境界点との間の距
離をeとすると、近似的に次の式が成立する。すなわ
ち、
【0066】
【数9】
【0067】この式(9) と前記式(6) (7) とにより、最
大値pm は以下の通りとなる。
【0068】
【数10】
【0069】先に述べたように、ベルトがプーリに進入
する際の凸部中心軸間距離pの最大値pm の2倍よりも
凸部と凹部とのクリアランスcが大きければ、凸部と凹
部との干渉は起こらない。したがって、干渉を決して起
こさずに、ベルトのスムーズな運行を保証して、動力伝
達効率の低下やプーリ摩耗を防止するためのクリアラン
スcの条件は、以下の通りとなる。
【0070】
【数11】
【0071】ここで、cは凸部凹部間のクリアランス、
eは凸部中心とエレメント側面の上側境界点との距離、
tはエレメントのピッチ線における厚さ、wはエレメン
トのピッチ線における幅、rm は使用される最小ベルト
半径、α0 はエレメントの傾き角度である。
【0072】式(11)により、クリアランスcの必要最小
値が求められるだけでなく、ベルトの寸法仕様に関する
値e,t,w,α0 とベルト駆動装置の仕様値である最
小ベルト巻付け半径rm との間の必要な関係も求められ
る。
【0073】以上、本発明者によってなされた発明を実
施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の
形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない
範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0074】
【発明の効果】本願において開示される発明のうち、代
表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、
以下のとおりである。
【0075】エレメントの姿勢矯正過程では、凸部と凹
部との干渉が全く起こらないので、極めてスムーズな金
属ベルトの走行が確保され、動力伝達効率が向上すると
ともに、プーリやエレメントの摩耗や破損が防止され
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ベルト式無段変速機を構成する入力側プーリお
よび出力側プーリとこれに巻き付けられた金属ベルトを
示す断面図である。
【図2】図1における2−2線に沿う断面図である。
【図3】図1および図2に示された金属ベルトの一部を
拡大して示す分解斜視図である。
【図4】(A)は金属ベルトを構成するエレメントを示
す正面図であり、(B)は側面図である。
【図5】(A)はキャリアに対して水平となってプーリ
に巻き込まれるエレメントを示す正面図であり、(B)
は傾いた状態となって巻き込まれるエレメントを示す正
面図である。
【図6】プーリに巻き付くことになる金属ベルトの直線
部とプーリの入口部を示す斜視図である。
【図7】(A)はミスアライメントの状態における金属
ベルトの直線部を示す断面図であり、(B)はミスアラ
イメントがない状態における同様の断面図である。
【図8】(A)は2つのエレメントが重なった状態を示
す断面図であり、(B)は同図(A)における8B−8
B線に沿う断面図であり、(C)は同図(B)と同様の
部分において凸部中心間がずれた場合を示す断面図であ
る。
【図9】エレメントの傾き矯正過程を示す展開図であ
る。
【図10】金属ベルトのうちプーリの入口部に進行する
直線部分とプーリを示す斜視図である。
【図11】プーリと金属ベルトとの巻き付け部における
寸法を示す概略図である。
【図12】(A),(B)は、それぞれエレメントの傾
き矯正状態を示す模式図であり、(C)は同図(B)に
示すC部の拡大図である。
【図13】凸部中心間のずれを示す概略図である。
【符号の説明】
11a 入力側プーリ 11b 出力側プーリ 12 金属ベルト 13a,13b シーブ 14a 入力軸 14b 出力軸 15a,15b シーブ 16 円錐面(プーリ表面) 21 エレメント 22 キャリア 23 ピラー部 24 イヤー部 25 ショルダー部 26 サドル面 27 スリット 31 凸部 32 凹部 33 側面

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一方面に凸部が設けられ他方面に凹部が
    形成された多数のエレメントを相互に隣接するエレメン
    トの前記凸部と前記凹部とを嵌合させて連ならせるとと
    もに、前記エレメントに形成されたスリットに無端帯状
    のキャリアを挟み込んで形成され、プーリ間に装着され
    る無段変速機用金属ベルトであって、 前記凸部と前記凹部とのクリアランスを、前記プーリ間
    のミスアライメントによる前記エレメントの前記キャリ
    アに対する傾きにより生ずる隣り合う前記エレメントの
    前記凸部と前記凹部との間の相対位置ずれの2倍と同一
    あるいはそれよりも大きく設定したことを特徴とする無
    段変速機用金属ベルト。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の無段変速機用金属ベルト
    であって、前記凸部と前記凹部とのクリアランスを、エ
    レメントの最大傾き角、エレメントピッチ部厚さ、エレ
    メントピッチ幅、エレメントの凸部位置およびベルトの
    最小巻き付き半径から求めた隣り合うエレメント間の相
    対位置ずれの2倍と同一あるいはそれよりも大きく設定
    したことを特徴とする無段変速機用金属ベルト。
JP14161097A 1997-05-30 1997-05-30 無段変速機用金属ベルト Pending JPH10331920A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1013964A3 (en) * 1998-12-24 2000-07-12 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Metal V-belt
EP1221563A1 (en) * 2000-12-28 2002-07-10 Van Doorne's Transmissie B.V. Transmission belt comprising transverse elements and an endless carrier
US6755760B2 (en) * 2000-01-19 2004-06-29 Honda Giken Kogyo Kabushiki Kaisha Belt for non-stage transmissions
KR101158914B1 (ko) * 2003-11-14 2012-06-21 로베르트 보쉬 게엠베하 금속 푸쉬 벨트, 횡단 요소 및 제조 방법

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