JP3692837B2 - ベルト式無段変速機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の平板エレメントを隙間無く配列して具え、この平板エレメント列に無終端バンドを掛け渡してなる伝達ベルトを、前記平板エレメントがロッキングエッジを中心に傾斜することによって、入出力プーリ間に巻き掛けたベルト式無段変速機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のベルト式無段変速機としては、例えば、特開平7−12177号公報に記載のものがあり、図9は、従来の平板エレメントを示した正面図、図10は、無終端バンド3が省略された伝達ベルト10の側面図である。このベルト式無段変速機は、図9,10に示すように、複数の平板エレメント20を隙間無く配列して具え、この平板エレメント列に無終端バンド3を掛け渡してなる伝達ベルト10を、固定プーリ4および可動プーリ5で構成される一対の入力プーリおよび出力プーリ間に巻き掛けたものである。
【0003】
伝達ベルト10は、図9,10に示すように、固定プーリ4および可動プーリ5間に対して、平板エレメント20がロッキングエッジ6を中心に傾斜することによって巻き掛けられ、このロッキングエッジ6は、肩部20sの上端から下方(通常、例えば、肩部20sの上端から1/5の位置)に形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来、固定プーリ4のシーブ面4fと可動プーリ5のシーブ面5fとがなす角度αは、平板エレメント20の肩部20sに連なる側面20f,20fがなす角度βと等しくなるように構成され、平板エレメント20の肩部側面20fは、固定プーリシーブ面4fまたは可動プーリシーブ面5fに対してほぼ均等に当接する。
【0005】
このため、平板エレメント20に対するプーリ推力Nの分布は、図11に示すように、平板エレメント20の肩部側面20fに対してほぼ均等な分布となる。よって、平板エレメント20に対するプーリ推力Nの作用中心C2 は、肩部側面20f幅のほぼ中心に位置する。
【0006】
図12は、平板エレメント列を示した側面図である。いま、平板エレメント20−1にプーリからトルクが伝達され、平板エレメント20−1と平板エレメント20−2との間に圧縮力が発生する状態を考えると、この状態は、平板エレメント20のプーリ推力Nの作用中心C2 に摩擦力Fがシーブ面に沿って作用している状態に置き換えて考えることができる。この場合、プーリ推力Nの作用中心C2 とロッキングエッジ6とは距離ΔL2 だけの間隔を有するため、平板エレメント20にはモーメントM2 (=F×ΔL2 )が矢印方向に作用する。
【0007】
よって、図10に示すように、トルクを伝達している平板エレメント20は、図12のモーメントM2 によって後傾しながらプーリに巻き付くことになるため、平板エレメント20の両肩部側面20f,20fが、固定プーリ4のシーブ面4fおよび可動プーリ5のシーブ面5fとエレメント側面全体で接触するのではなく、例えば、図12の領域Xに示すような部分に対して局部当たりする。この場合、平板エレメント20の一部分が極端に摩耗することにより、シーブ面に対する摩擦係数が低下するため、従来変速機には、伝達ベルト10の伝達トルク容量をさらに向上させ得る余地があった。
【0008】
本発明の解決すべき課題は、上述の事実に鑑みてなされたものであり、プーリ間で発生するモーメントによるエレメントの後傾を抑制して、プーリのシーブ面と、シーブ面に対向するエレメント側面との接触を全面当たりとすることにより、エレメントの摩耗による摩擦係数の低下を防止し、ベルト式無段変速機の伝達トルク容量を向上させることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的のため、先ず第1発明によるベルト式無段変速機は、複数の平板エレメントを隙間無く配列して具え、この平板エレメント列に無終端バンドを掛け渡してなる伝達ベルトを、前記平板エレメントがロッキングエッジを中心に傾斜することによって、入出力プーリ間に巻き掛けたベルト式無段変速機において、前記平板エレメントの前記プーリのシーブ面との接触領域は、両シーブ面のなす角と等しくなるように構成された平面であって、前記平板エレメントの側面形状は、前記ロッキングエッジを含む接触領域と前記ロッキングエッジを含まない接触領域とからなり、前記ロッキングエッジを含む接触領域が前記ロッキングエッジを含まない接触領域に対して凸となるように形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
第2発明によるベルト式無段変速機は、複数の平板エレメントを隙間無く配列して具え、この平板エレメント列に無終端バンドを掛け渡してなる伝達ベルトを、前記平板エレメントがロッキングエッジを中心に傾斜することによって、入出力プーリ間に巻き掛けたベルト式無段変速機において、前記平板エレメントの両側面は、前記プーリのシーブ面との接触領域において両シーブ面のなす角と等しくなるように構成された平面であって、前記平板エレメントの側面形状は、前記ロッキングエッジを含む接触領域と前記ロッキングエッジを含まない領域とからなり、前記ロッキングエッジを含む接触領域が前記ロッキングエッジを含まない領域に対して張り出した2段型に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
第3発明によるベルト式無段変速機は、複数の平板エレメントを隙間無く配列して具え、この平板エレメント列に無終端バンドを掛け渡してなる伝達ベルトを、前記平板エレメントがロッキングエッジを中心に傾斜することによって、入出力プーリ間に巻き掛けたベルト式無段変速機において、前記平板エレメントの側面形状は、前記プーリとの接触領域において前記ロッキングエッジを含む側面領域が前記ロッキングエッジを含まない側面領域に比べてプーリとの接触領域が大きくなるように複数の横溝が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
第4発明は、第3発明において、前記横溝を形成する間隔は、前記ロッキングエッジを含む側面領域において疎となることを特徴とするものである。
【0013】
第5発明は、第3発明において、前記横溝の溝幅は、前記ロッキングエッジを含む側面領域において狭くなることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の効果】
第1発明によるベルト式無段変速機は、平板エレメントの前記プーリのシーブ面との接触領域が、両シーブ面のなす角と等しくなるように構成された平面であって、前記平板エレメントの側面形状は、前記ロッキングエッジを含む接触領域と前記ロッキングエッジを含まない接触領域とからなり、前記ロッキングエッジを含む接触領域が前記ロッキングエッジを含まない接触領域に対して凸となるように形成させたことにより、前記平板エレメントに対するプーリ推力の作用中心は、常に前記ロッキングエッジに等しくなるように位置決めされる。
【0015】
この場合、前記平板エレメントを後傾させるようなモーメントは前記ロッキングエッジ周りに生じない。このため、プーリのシーブ面に対向する平板エレメントの側面領域は、このシーブ面に局部当たりすることなく該側面領域全体で該シーブ面と接触するから、前記平板エレメントの側面領域の一部分が極端に摩耗することによって、シーブ面に対する摩擦係数が低下するようなことがない。
【0016】
また、前記平板エレメントの側面形状は、前記ロッキングエッジを含む接触領域が前記ロッキングエッジを含まない接触領域に対して凸となるように形成されているから、両プーリシーブ面の間に形成されるシーブ角度が多少ばらついたとしても、前記平板エレメントに対するプーリ推力の作用中心は前記ロッキングエッジからずれることがない。
【0017】
従って本発明によれば、前記平板エレメントの側面に作用する摩擦力を確実に伝達し、ベルト式無段変速機の伝達トルク容量を向上させることができる。
【0018】
第2発明によるベルト式無段変速機は、前記平板エレメントの両側面が、前記プーリのシーブ面との接触領域において両シーブ面のなす角と等しくなるように構成された平面であって、前記平板エレメントの両側面形状は、前記ロッキングエッジを含む接触領域と前記ロッキングエッジを含まない領域とからなり、前記ロッキングエッジを含む接触領域が前記ロッキングエッジを含まない領域に対して張り出した2段型に形成されることにより、前記平板エレメントに対するプーリ推力の作用中心は、常に前記ロッキングエッジに等しくなるように位置決めされる。
【0019】
この場合、前記平板エレメントを後傾させるようなモーメントは前記ロッキングエッジ周りに生じない。このため、プーリのシーブ面に対向する平板エレメントの側面領域は、このシーブ面に局部当たりすることなく該側面領域全体で該シーブ面と接触するから、前記平板エレメントの側面領域の一部分が極端に摩耗することによって、シーブ面に対する摩擦係数が低下するようなことがない。
【0020】
また、前記平板エレメントの側面形状を前記ロッキングエッジを含む接触領域が前記ロッキングエッジを含まない領域に対して張り出させた2段型に形成するから、両プーリシーブ面の間に形成されるシーブ角度が多少ばらついたとしても、前記平板エレメントに対するプーリ推力の作用中心は前記ロッキングエッジからずれることがない。
【0021】
従って第2発明によれば、第1発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0022】
第3発明によるベルト式無段変速機は、前記平板エレメントの側面形状を、前記プーリとの接触領域において前記ロッキングエッジを含む側面領域が前記ロッキングエッジを含まない側面領域に比べてプーリとの接触領域が大きくなるように複数の横溝を形成することにより、前記平板エレメントに対するプーリ推力の作用中心は、常に前記ロッキングエッジに等しくなるように位置決めされる。
【0023】
この場合、前記平板エレメントを後傾させるようなモーメントは前記ロッキングエッジ周りに生じない。このため、プーリのシーブ面に対向する平板エレメントの側面領域は、このシーブ面に局部当たりすることなく該側面領域全体で該プーリシーブ面と接触するから、前記平板エレメントの側面領域の一部分が極端に摩耗することによって、シーブ面に対する摩擦係数が低下するようなことがない。
【0024】
また、前記平板エレメントの側面形状は、前記プーリとの接触領域において前記ロッキングエッジを含む側面領域が前記ロッキングエッジを含まない側面領域に比べてプーリとの接触領域が大きくなるように複数の横溝が形成されるから、該ロッキングエッジを含む側面領域での接触面を大きく得ることができるため、両プーリシーブ面の間に形成されるシーブ角度が多少ばらついたとしても、前記平板エレメントに対するプーリ推力の作用中心は前記ロッキングエッジからずれることがない。
【0025】
従って第3発明によれば、第1発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
第4発明によるベルト式無段変速機は、前記横溝を形成する間隔が、前記ロッキングエッジを含む側面領域において疎となることから、前記横溝の溝幅を変更する必要がないため、溝加工を容易に行うことができる。
【0027】
従って第4発明によれば、第3発明で説明した作用効果を効率的に得ることができる。
【0028】
第5発明によるベルト式無段変速機は、前記横溝の溝幅が、前記ロッキングエッジを含む側面領域において狭くなることから、第3発明で説明した作用効果を効率的に得ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、各実施形態を説明するため、図12を適宜参照するものとする。
【0030】
図1は、本発明によるベルト式無段変速機の第1実施形態を示した正面図であって、回転シャフト8に固定されたプーリ(以下、固定プーリという)4と、回転シャフト8を軸線方向に移動可能なプーリ(以下、可動プーリという)5とで形成されたプーリが、エンジン回転が入力されるプーリ(以下、入力プーリという)と、該入力プーリの回転を伝達ベルト1を介して変速出力するプーリ(以下、出力プーリという)とを構成する。
【0031】
図2は、無終端バンド3が省略された図1の側面図である。伝達ベルト1は、図1,2に示すように、複数の平板エレメント2を隙間無く配列して具え、この平板エレメント列に一対の無終端バンド3を掛け渡してなり、平板エレメント2がロッキングエッジ6を中心に傾斜することによって、上記固定および可動プーリ4,5で構成された一対の入力プーリおよび出力プーリ間に巻き掛けられている。
【0032】
図3は、図1を正面から示した拡大図である。平板エレメント2には、無終端バンド3を嵌着するための肩部2sと、固定プーリ4および可動プーリ5のシーブ面4f,5fに接触する肩部側面2fと、ロッキングエッジ6とが形成され、このロッキングエッジ6は、従来の平板エレメントと同様に、肩部2sの上端から下方(具体的には、肩部2sの上端から1/5の位置)に形成されている。
【0033】
上記実施形態において、平板エレメント2の肩部側面2fの形状は、符号2f1 に示すように、ロッキングエッジ6を含む側面領域だけプーリ接触面、つまりシーブ面4f(5f)に対して凸となるように形成されている。
【0034】
即ち、本実施形態によるベルト式無段変速機は、ロッキングエッジ6を含む側面領域だけシーブ面4f(5f)に対して凸となるよう、平板エレメント2の側面形状2fに側面形状2f1 を形成したことにより、平板エレメント2に対するプーリ推力Nの作用中心C1 は、常にロッキングエッジ6に等しくなるように位置決めされる。
【0035】
この場合、平板エレメント2には、平板エレメント2を後傾させるモーメントM2 (図12参照)をロッキングエッジ6周りに生じさせない。このため、プーリのシーブ面4f(5f)に対向する平板エレメント2の側面領域は、図12で説明の如くシーブ面4f(5f)に局部当たりすることなく、該側面領域全体で該シーブ面4f(5f)と接触するから、平板エレメント2の側面領域の一部分が極端に摩耗することによって、シーブ面4f(5f)に対する摩擦係数が低下するようなことがない。
【0036】
また、平板エレメント2の側面形状は、ロッキングエッジ6を含む側面領域 2f1だけシーブ面4f(5f)に対して凸となるように形成されているから、両プーリシーブ面4f(5f)の間に形成されるシーブ角度αが多少ばらついたとしても、平板エレメント2に対するプーリ推力Nの作用中心は、図3に示す如く、ロッキングエッジ6からずれることがない。
【0037】
従って本発明によれば、平板エレメント2の側面に作用する摩擦力F(図12参照)を確実に伝達し、ベルト式無段変速機の伝達トルク容量を向上させることができる。
【0038】
図4は、本発明によるベルト式無段変速機を説明する上での参考例を示した正面図であって、平板エレメント2aには、第1実施形態と同様、無終端バンド3を嵌着するための肩部2sと、固定プーリ4および可動プーリ5のシーブ面4f,5fに接触する肩部側面2fa と、ロッキングエッジ6とが形成され、このロッキングエッジ6は、従来の平板エレメントと同様に、肩部2sの上端から下方(具体的には、肩部2sの上端から1/5の位置)に形成されている。
【0039】
上記参考例において、平板エレメント2aの側面形状は、プーリ接触面、つまりシーブ面4f(5f)に対して曲率半径Rで凸となるように形成されると共に、この曲率半径Rは、ロッキングエッジ6と当接するプーリ稜線4L(5L)との交点4p(5p)から、このプーリ稜線4L(5L)に対して引いた垂直線L4 ,L5 上に設定される。
【0040】
即ち、上記参考例は、平板エレメント2aの側面形状を、シーブ面4f(5f)に対して曲率半径Rで凸となるように形成すると共に、この曲率半径Rを、ロッキングエッジ6と当接するプーリ稜線4L(5L)との交点4p(5p)から、このプーリ稜線4L(5L)に対して引いた垂直線L4 ,L5 上に設定したことにより、平板エレメント2aに対するプーリ推力Nの作用中心Ca は、常にロッキングエッジ6に等しくなるように位置決めされる。
【0041】
この場合、平板エレメント2aは、平板エレメント2を後傾させるようなモーメントM2 (図12参照)をロッキングエッジ6周りに生じさせない。このため、プーリのシーブ面4f(5f)に対向する平板エレメント2aの側面領域は、図12に説明の如くシーブ面4f(5f)に局部当たりすることなく、該側面領域全体で該シーブ面4f(5f)と接触するから、平板エレメント2aの側面領域の一部分が極端に摩耗することによって、シーブ面4f(5f)に対する摩擦係数が低下するようなことがない。
【0042】
また、平板エレメント2aの側面形状は、平板エレメント2aの側面形状をプーリ接触面に対して曲率半径Rで凸となるように形成されるから、両プーリシーブ面4f(5f)の間に形成されるシーブ角度αが多少ばらついたとしても、平板エレメント2aに対するプーリ推力Nの作用中心Ca は、図4に示す如く、ロッキングエッジ6からずれることがない。
【0043】
従って上記参考例によれば、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
図5は、上記参考例の具体例であって、図4に示すプーリシーブ面5fと平板エレメント2aの側面2fa との接触部分を拡大した正面図である。
今、プーリシーブ面5fを鋼製の平面と考えると共に、平板エレメント2aの側面2fa を曲率半径Rの鋼製の円柱と考えて、ヘルツの公式を用いて接触面の片幅b(mm)を求めると、プーリ5から平板エレメント2aに作用する単位長さ(厚さ)当たりのプーリ推力Nの最大値q(kgf/mm)と、半シーブ角度βと、鋼のヤング率E(kgf/mm2) とから、
【数1】
で計算することができる。
【0045】
ここで、無終端バンド3との接触面、つまり肩部2sの表面とロッキングエッジ6との間隔をdr とおけば、接触片幅bが間隔dr よりも小さければ、プーリ推力Nの作用中心は必ずロッキングエッジ6に一致するから、
【数2】
を満たす曲率半径Rを設定すればよい。
【0046】
そこで上式に、E=21000(鋼の場合)を代入することによって、曲率半径Rについて解くと、下式が得られる。
R≦ (dr)2 ×9065÷(q×cos β)(mm)・・ (1)
【0047】
即ち、図5に示す参考例は、平板エレメント2aの無終端バンド3との接触面2fとロッキングエッジ6との間隔dr と、平板エレメント2aに作用する単位長さ当たりのプーリ推力Nの最大値qと、入出力プーリがなすシーブ角度の半分の角度βとから、
R≦ (dr)2 ×9065÷(q×cos β)(mm)・・ (1)
の関係で曲率半径Rを設定することにより、曲率半径Rの設定が容易であるため、最も好適な値を容易に取ることができる。従って図5に示す参考例によれば、図4に示す参考例で説明した作用効果を効率的に得ることができる。
【0048】
なお、上記(1)式の具体的な数値としては、例えば、間隔dr =1(mm)、半シーブ角度β=11( °) が一般的であって、プーリ推力Nの最大値qは、30〜90(kgf/mm)の範囲が考えられる。
【0049】
上記数値に基づいた参考数値は、
q=30(kgf/mm)の場合、R≦308(mm) ・・・(2)
q=50(kgf/mm)の場合、R≦185(mm) ・・・(3)
q=90(kgf/mm)の場合、R≦103(mm) ・・・(4)
である。
【0050】
図6は、本発明によるベルト式無段変速機の第2実施形態を示した正面図であって、平板エレメント2bには、第1実施形態と同様、無終端バンド3を嵌着するための肩部2sと、固定プーリ4および可動プーリ5のシーブ面4f,5fに接触する肩部側面2f1 と、ロッキングエッジ6とが形成され、このロッキングエッジ6は、従来の平板エレメントと同様に、肩部2sの上端から下方(具体的には、肩部2sの上端から1/5の位置)に形成されている。
【0051】
上記実施形態において、平板エレメント2bの側面形状は、ロッキングエッジ6を含む側面領域2f1 のみがプーリ接触面、つまりシーブ面4f(5f)に対して張り出した2段型に形成される。この場合、張り出し側面領域2f1 は、該張り出し側面領域2f1 以外の領域2f2 に比べて大きく設定することが好ましい。
【0052】
即ち、本実施形態によるベルト式無段変速機は、平板エレメント2bの側面形状を、ロッキングエッジ6を含む側面領域2f1 のみがシーブ面4f(5f)に対して張り出した2段型に形成することにより、平板エレメント2bに対するプーリ推力Nの作用中心Cb は、常にロッキングエッジ6に等しくなるように位置決めされる。
【0053】
この場合、平板エレメント2bは、平板エレメント2bを後傾させるようなモーメントM2 (図12参照)をロッキングエッジ6周りに生じさせない。このため、プーリのシーブ面4f(5f)に対向する平板エレメント2bの側面領域は、図12に説明の如くシーブ面4f(5f)に局部当たりすることなく、該側面領域全体で該シーブ面4f(5f)と接触するから、平板エレメント2bの側面領域の一部分が極端に摩耗することによって、シーブ面4f(5f)に対する摩擦係数が低下するようなことがない。
【0054】
また、平板エレメント2bの側面形状は、ロッキングエッジ6を含む側面領域2f1 のみをシーブ面4f(5f)に対して張り出した2段型に形成するから、両プーリシーブ面4f(5f)の間に形成されるシーブ角度αが多少ばらついたとしても、平板エレメント2bに対するプーリ推力Nの作用中心Cb は、図6に示す如く、ロッキングエッジ6からずれることがない。
【0055】
従って本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、本実施形態においては、張り出し側面領域2f1 の段差面には、面取り加工が施されていることが好ましい。
【0056】
図7は、本発明によるベルト式無段変速機の第3実施形態を示した正面図であって、(a)は平板エレメントを正面から示した拡大図、(b)は平板エレメントの側面領域の一部を示した拡大図である。但し、符号gは横溝、符号Lは溝幅、符号pは横溝gが形成される間隔である。
【0057】
平板エレメント2cには、第1実施形態と同様、無終端バンド3を嵌着するための肩部2sと、固定プーリ4および可動プーリ5のシーブ面4f,5fに接触する肩部側面2fc と、ロッキングエッジ6とが形成され、このロッキングエッジ6は、従来の平板エレメントと同様に、肩部2sの上端から下方(具体的には、肩部2sの上端から1/5の位置)に形成されている。
【0058】
本実施形態では、図7(a)に示す如く、平板エレメント2cの側面領域に複数の横溝gが形成され、この側面形状は、ロッキングエッジ6を含む側面領域での接触領域が該接触領域以外の側面領域に比べて大きくなるようにするため、横溝gを形成する間隔pは、ロッキングエッジ6を含む側面領域において疎とする。
【0059】
具体的には、図7(a)に示すように、一定の溝幅Lで形成される横溝gのうちで、ロッキングエッジ6を含む側面領域に形成される横溝gの間隔p1 は、それ以外の側面領域に形成される横溝gの間隔p2 よりも大きく形成されている。
【0060】
即ち、本実施形態によるベルト式無段変速機は、図7(b)に示す如く、平板エレメント2cの側面形状をロッキングエッジ6を含む側面領域がロッキングエッジ6を含まない側面領域に比べてプーリとの接触領域が大きくなるように複数の横溝gを形成し、これら横溝gを形成する間隔pは、ロッキングエッジ6を含む側面領域において疎(p1 >p2 )となることにより、平板エレメント2cに対するプーリ推力Nの作用中心Cc は、常にロッキングエッジ6に等しくなるように位置決めされる。
【0061】
この場合、平板エレメント2cは、平板エレメント2cを後傾させるようなモーメントM2 (図12参照)をロッキングエッジ6周りに生じさせない。このため、プーリのシーブ面4f(5f)に対向する平板エレメント2cの側面領域は、図12に説明の如くシーブ面4f(5f)に局部当たりすることなく、該側面領域全体で該シーブ面4f(5f)と接触するから、平板エレメント2cの側面領域の一部分が極端に摩耗することによって、シーブ面4f(5f)に対する摩擦係数が低下するようなことがない。
【0062】
また、平板エレメント2cの側面形状は、ロッキングエッジ6を含む側面領域がロッキングエッジ6を含まない側面領域に比べてプーリとの接触領域が大きくなるように複数の横溝gが形成されるから、両プーリシーブ面4f(5f)の間に形成されるシーブ角度αが多少ばらついたとしても、平板エレメント2cに対するプーリ推力Nの作用中心Cc は、図7に示す如く、ロッキングエッジ6からずれることがない。
【0063】
従って本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施形態によれば、横溝gの溝幅Lを変更する必要がないから、溝加工を容易に行うことができる。
【0064】
図8は、本発明によるベルト式無段変速機の第3実施形態の他の一例を示した正面図であって、(a)は、平板エレメントを正面から示した拡大図、(b)は平板エレメントの側面領域の一部を示した拡大図である。但し、符号gは横溝、符号Lは溝幅、符号pは横溝gが形成される間隔である。
【0065】
平板エレメント2dには、第1実施形態と同様、無終端バンド3を嵌着するための肩部2sと、固定プーリ4および可動プーリ5のシーブ面4f,5fに接触する肩部側面2fd と、ロッキングエッジ6とが形成され、このロッキングエッジ6は、従来の平板エレメントと同様に、肩部2sの上端から下方(具体的には、肩部2sの上端から1/5の位置)に形成されている。
【0066】
本実施形態では、図8(a)に示す如く、平板エレメント2dの側面領域に複数の横溝gが形成され、この側面形状は、ロッキングエッジ6を含む側面領域がロッキングエッジ6を含まない側面領域に比べてプーリとの接触領域が大きくなるようにするため、横溝gの溝幅Lは、ロッキングエッジ6を含む側面領域において狭くなる。
【0067】
具体的には、図8(b)に示すように、一定の溝間隔pで形成される横溝のうちで、ロッキングエッジ6を含む側面領域に形成される横溝の幅L1 は、それ以外の側面領域に形成される溝幅L2 よりも小さく形成されている。
【0068】
即ち、本実施形態によるベルト式無段変速機は、平板エレメント2dの側面形状をロッキングエッジ6を含む側面領域がロッキングエッジ6を含まない側面領域に比べてプーリとの接触領域が大きくなるようにするため、複数の横溝gを形成し、これら横溝gの溝幅Lが、ロッキングエッジ6を含む側面領域において狭くなることにより、平板エレメント2dに対するプーリ推力Nの作用中心Cd は、常にロッキングエッジ6に等しくなるように位置決めされる。
【0069】
この場合、平板エレメント2dは、平板エレメント2dを後傾させるようなモーメントM2 (図12参照)をロッキングエッジ6周りに生じさせない。このため、プーリのシーブ面4f(5f)に対向する平板エレメント2dの側面領域は、図12に説明の如くシーブ面4f(5f)に局部当たりすることなく、該側面領域全体で該シーブ面4f(5f)と接触するから、平板エレメント2dの側面領域の一部分が極端に摩耗することによって、シーブ面4f(5f)に対する摩擦係数が低下するようなことがない。
【0070】
また、平板エレメント2dの側面形状は、ロッキングエッジ6を含む側面領域がロッキングエッジ6を含まない側面領域に比べてプーリとの接触領域が大きくなるように複数の横溝gが形成されるから、両プーリシーブ面4f(5f)の間に形成されるシーブ角度αが多少ばらついたとしても、平板エレメント2bに対するプーリ推力Nの作用中心Cd はロッキングエッジ6からずれることがない。
【0071】
従って本実施形態によれば、横溝gの溝幅Lがロッキングエッジ6を含む側面領域において狭くなるから、ロッキングエッジ6を含む側面領域での接触面を大きく得ることができ、第1実施形態と同様の作用効果を効率的に得ることができる。
【0072】
上述したところは、本発明の好適な実施形態を示したにすぎず、当業者によれば、請求の範囲において種々の変更を加えることができ、例えば、無終端バンド3としては、例えば、無終端状のバンドを積層した無終端積層バンドがあるが、無終端バンドは単体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明であるベルト式無段変速機の第1実施形態を示した正面図である。
【図2】 図1において、無終端バンドが省略された側面図である。
【図3】 図1を正面から示した拡大図である。
【図4】 本発明であるベルト式無段変速機を説明する上での参考例を示した正面図である。
【図5】 図4に示す参考例をさらに詳細に説明するための説明図である。
【図6】 本発明であるベルト式無段変速機の第2実施形態を示した正面図である。
【図7】 (a)は第3実施形態を示した正面図であり、(b)は平板エレメントの側面領域の一部を示した拡大図である。
【図8】 (a)は第3実施形態の他例を示した正面図であり、(b)は平板エレメントの側面領域の一部を示した拡大図である。
【図9】 従来のベルト式無段変速機を例示した正面図である。
【図10】 図9において、無終端バンドが省略された側面図である。
【図11】 図9を正面から示した拡大図である。
【図12】 平板エレメント列を示した側面図である。
【符号の説明】
1 伝達ベルト(本発明)
2,2b,2c,2d 平板エレメント(本発明)
2s 肩部(本発明)
2f1 ,2f2 ,2fb ,2fc ,2fd 肩部側面(本発明)
3 無終端バンド
4 固定プーリ
4f 固定プーリシーブ面
5 可動プーリ
5f 可動プーリシーブ面
6 ロッキングエッジ
8 回転シャフト
C1 ,Cb ,Cc ,Cd プーリ推力の作用中心(本発明)
g 横溝
L 溝幅
p 溝間隔
10 伝達ベルト(従来)
20 平板エレメント(従来)
20f 肩部側面(従来)
20s 肩部(従来)
C2 プーリ推力の作用中心(従来)
α シーブ角
β 半シーブ角
Claims (5)
- 複数の平板エレメントを隙間無く配列して具え、この平板エレメント列に無終端バンドを掛け渡してなる伝達ベルトを、前記平板エレメントがロッキングエッジを中心に傾斜することによって、入出力プーリ間に巻き掛けたベルト式無段変速機において、
前記平板エレメントの前記プーリのシーブ面との接触領域は、両シーブ面のなす角と等しくなるように構成された平面であって、前記平板エレメントの側面形状は、前記ロッキングエッジを含む接触領域と前記ロッキングエッジを含まない接触領域とからなり、前記ロッキングエッジを含む接触領域が前記ロッキングエッジを含まない接触領域に対して凸となるように形成されていることを特徴とするベルト式無段変速機。 - 複数の平板エレメントを隙間無く配列して具え、この平板エレメント列に無終端バンドを掛け渡してなる伝達ベルトを、前記平板エレメントがロッキングエッジを中心に傾斜することによって、入出力プーリ間に巻き掛けたベルト式無段変速機において、
前記平板エレメントの両側面は、前記プーリのシーブ面との接触領域において両シーブ面のなす角と等しくなるように構成された平面であって、前記平板エレメントの側面形状は、前記ロッキングエッジを含む接触領域と前記ロッキングエッジを含まない領域とからなり、前記ロッキングエッジを含む接触領域が前記ロッキングエッジを含まない領域に対して張り出した2段型に形成されていることを特徴とするベルト式無段変速機。 - 複数の平板エレメントを隙間無く配列して具え、この平板エレメント列に無終端バンドを掛け渡してなる伝達ベルトを、前記平板エレメントがロッキングエッジを中心に傾斜することによって、入出力プーリ間に巻き掛けたベルト式無段変速機において、
前記平板エレメントの側面形状は、前記プーリとの接触領域において前記ロッキングエッジを含む側面領域が前記ロッキングエッジを含まない側面領域に比べてプーリとの接触領域が大きくなるように複数の横溝が形成されていることを特徴とするベルト式無段変速機。 - 前記横溝を形成する間隔は、前記ロッキングエッジを含む側面領域において疎となることを特徴とする請求項3に記載のベルト式無段変速機。
- 前記横溝の溝幅は、前記ロッキングエッジを含む側面領域において狭くなることを特徴とする請求項3に記載のベルト式無段変速機。
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