JPH1026141A

JPH1026141A - ころ軸受の保持器

Info

Publication number: JPH1026141A
Application number: JP17957696A
Authority: JP
Inventors: Susumu Takano; 晋高野
Original assignee: NSK Ltd
Current assignee: NSK Ltd
Priority date: 1996-07-09
Filing date: 1996-07-09
Publication date: 1998-01-27

Abstract

(57)【要約】【課題】ころ軸受の合成樹脂製保持器において、円環内
でのウエルド部とその他の部分との強度差を解消すると
ともに、長時間の高速運転時にもころに十分な潤滑剤が
供給されるようにする。【解決手段】円環１のポケット５をなす面を凹凸状に形
成して、その凸面１２をころ端面を受ける面とする。ま
た、この凸面１２の形成で幅広となる円環１の幅広部分
に射出成形時のウエルド部Ｕを設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、高精度
の工作機械用主軸スピンドルのように、極少量の潤滑剤
の添加で高速回転される回転体用のころ軸受を構成する
保持器として好適なものに関する。

【０００２】

【従来の技術】工作機械用主軸スピンドルを支持する軸
受には、工作精度の向上を目的として、剛性が高いこ
と、回転精度が高いこと、発熱性が低いことなどの特性
が求められている。また、近年においてはこのような特
性に加え、加工効率の向上を目的として、高い回転速度
で長時間安定して使用できること（高回転性）が求めら
れている。そのため、従来の工作機械用主軸スピンドル
を支持する軸受は、剛性向上および回転精度向上のため
に円筒ころ軸受を予圧して用いるとともに、運転時の発
熱を抑えるために潤滑剤の添加量を必要最小限にしてい
る。

【０００３】このような軸受の保持器としては従来より
銅合金製のものが使用されているが、軸受が予圧状態で
且つ極少量の潤滑剤添加で高速回転されると、保持器が
ころや軌道輪と強く接触して摩耗が生じやすい。特に、
潤滑剤としてグリースを使用している場合には、保持器
から発生した摩耗粉がグリースを汚染して潤滑性能が低
下し、短時間で焼き付きなどの大きな損傷を軸受に与え
る恐れもある。

【０００４】このような問題を解決するために、近年で
は合成樹脂製の保持器が使用されつつある。すなわち、
耐摩耗性の高いポリアミド樹脂等を母材として用い、こ
れにガラス繊維等の補強材を適量混入したものを射出成
形して保持器を形成することにより、保持器から摩耗粉
を発生させないようにすることができる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、合成樹
脂製の保持器は銅合金製の保持器と比べて剛性や破壊強
度が小さいため、銅合金製の場合より肉厚に形成する必
要がある。そして、保持器が肉厚となると、軸受内で潤
滑剤を保持する空間が小さくなるため、長時間の高速運
転時には、保持器のポケットに保持されているころに付
着する潤滑剤の量が少なくなって、ころと軌道輪との間
が潤滑不良になる恐れがある。

【０００６】また、合成樹脂の射出成形により形成され
た成形体にはウエルド部（金型内に導入された溶融樹脂
が合流する部分）があり、その部分の強度は他の部分よ
り低くなる。そして、従来の合成樹脂製の保持器は、一
対の円環と両者を連結する複数の柱とでポケットが形成
され、各円環の幅を円周方向で同一にし、ポケットのこ
ろ端面が対向する面を含む円環の部分にウエルド部を設
けている。そのため、ウエルド部に応力が集中して、比
較的小さな負荷で保持器の破断が生じる恐れがある。

【０００７】この発明は、このような従来技術の問題点
に着目してなされたものであり、合成樹脂製の保持器に
おいて、円環内でのウエルド部とその他の部分との強度
差を解消するとともに、長時間の高速運転時にもころに
十分な潤滑剤が供給されるようにすることを課題とす
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、この発明は、一対の円環と両者を連結する複数の柱
とでポケットが形成され、且つ合成樹脂の射出成形によ
り形成されるころ軸受の保持器において、前記円環のポ
ケットをなす面を凹凸状に形成して、その凸面をころ端
面を受ける面とするとともに、この凸面の形成で幅広と
なる円環の幅広部分に射出成形時のウエルド部を設けた
ことを特徴とするころ軸受の保持器を提供する。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態につい
て説明する。図１は、この発明の一実施形態に相当する
保持器の一部を示す展開斜視図であって、ラジアル形の
円筒ころ軸受の円環状保持器が直線状に展開してある。

【００１０】この保持器Ｈは、円周方向Ｅ全体で同一の
厚さ（径方向Ｋの寸法）に形成され、且つ幅方向（軸方
向Ｊ）の一端に凹凸面１１を有する一対の円環１と、複
数個の所定長さの柱３とで構成され、両円環１の凹凸面
１１同士を対向配置して凹部１１ａ同士および凸部１１
ｂ同士を対向させ、対向する凹部１１ａ間を連結するよ
うに柱３を配置した形状となっている。すなわち、円環
１の幅（軸方向Ｊの寸法）は、円周方向Ｅで同一ではな
く、凸部１１ｂの部分が凹部１１ａの面からの突出寸法
分だけ幅広となっている。また、凸部１１ｂの径方向Ｋ
両端面は、円環１の外周面および内周面と同一の面上に
あり、円環１の外周面および内周面から突出も凹みもし
ていない。

【００１１】そして、隣合う柱３と両円環１の凹凸面１
１とで囲まれた部分が円筒形のころ４を挿入するポケッ
ト５となり、円環１のポケット５をなす面は、凸部１１
ｂとその両脇の凹部１１ａ（凹部１１ａの凸部１１ｂ側
部分であり、中央部には柱３が配置されている）で凹凸
状に形成されている。すなわち、凸部１１ｂの凸面１２
の円周方向Ｅの寸法はころ４の直径より小さく設定さ
れ、対向する凸部１１ｂの間隔はころ４の軸方向長さに
対応させた寸法としてあり、凸面１２がころ４の端面を
受ける面となっている。そのため、ころ４を取り付けた
状態で、ポケット５内のころ４の端面より外側に空間
（凸部１１ｂの側面とその両脇の凹部１１ａところ４の
端面と柱３とで囲まれた空間）が生じる。

【００１２】柱３の外輪側Ａには、ころ４の周面を受け
る曲面３１ａを有する突起３１が形成されている。この
突起３１は、柱３の両ポケット面３２に所定の間隔を開
けて二つずつ設けてあり、各曲面３１ａがポケット面３
２より突出して（ポケット５の内部側に）配置されてい
る。そして、ころ４の周面は、ころ４の軸方向両端側で
突起３１の曲面３１ａに接触し、軸方向中央部は両突起
３１間に配置されるようになっている。そのため、ころ
４を取り付けた状態で、ポケット５の軸方向Ｊ中央部分
でころ４の周面とポケット面３２との間に空間が生じ
る。ここで、ころ４の軸方向中央部分は転動面で最も接
触面圧が大きくなる部分であるが、軸受の回転時には、
前記空間に潤滑剤が保持されてころ４の軸方向中央部分
に潤滑剤が付着しやすくなる。

【００１３】また、ポケット面３２に沿った二つの突起
３１の設置間隔は、ころ４のクラウニング形状（転動面
の軸方向端部での応力集中を防止するために、通常のこ
ろは転動面を軸方向中央部では軌道面と接触する円筒面
とし、端部へ向かうほど径の小さくなるテーパや球面状
にしておくこと、すなわちクラウニングがなされてい
る。）に応じ、非円筒面でころ４を受けるように設定す
る。このように、クラウニングされたころの円筒面を突
起３１に接触させないことで、突起３１による潤滑剤の
かきとりが防止されるため、常時軌道面に接触する円筒
面には安定した潤滑剤の膜が形成される。但し、荷重条
件があまり厳しくなく突起部３１による潤滑剤のかきと
りがそれほど問題にならない場合や、強度的な問題から
突起部３１の軸方向Ｊ寸法を大きくとる必要がある場合
には、柱３の軸方向Ｊ中央部付近にのみ突起部３１を設
けた構造としてもよい。

【００１４】また、ポケット５内で対向する両突起３１
の外輪側Ａ端部間の間隔は、ころ４の直径より僅かに小
さく形成され、ころ４は両突起３１内に外輪側Ａから両
突起３１を弾性変形させて挿入されるようになってい
る。

【００１５】すなわち、この保持器Ｈは、図２に示すよ
うな、内輪ＮにつばＴを設け外輪Ｇにつばを設けない円
筒ころ軸受の保持器Ｈとして使用されるものであり、内
輪Ｎに保持器Ｈを被せた後、保持器Ｈのポケット５内に
ころ４を外輪Ｇ側から挿入する。なお、図２は、工作機
械用として良く使用される複列円筒ころ軸受の断面図で
あり、この図の左側の保持器は図１のＣ−Ｃ線断面を示
し、右側の保持器は図１のＤ−Ｄ線断面を示している。

【００１６】この保持器Ｈは、合成樹脂を射出成形する
ことによって一体に形成され、凸部１１ｂの形成で幅広
となった円環１の各幅広部分の円周方向Ｅ中心位置に、
ウエルド部Ｕが設定されている。使用可能な合成樹脂と
しては、射出成形の容易な熱可塑性樹脂が好ましく、具
体的には、ポリアミド樹脂（例えば、ナイロン６６、ナ
イロン４６：デュポン社の商品名）やポリフェニレンサ
ルファイド樹脂を母材とし、これにガラス繊維を補強材
として１０〜３０重量％添加したものが挙げられる。

【００１７】ここで、工作機械主軸用軸受の保持器材料
としては、価格と機械的強度および化学的安定性等の求
められる機能との兼ね合いで、一般用では価格の安いナ
イロン６６を、高温で使用される場合には高温特性の高
いナイロン４６を、特に高い温度特性、化学的安定性、
および湿度に対する寸法安定性が要求される場合にはポ
リフェニレンサルファイド樹脂を、それぞれ母材とする
ことが好適である。

【００１８】したがって、この保持器Ｈは、円環１のポ
ケット５をなす面に凹凸を設けて幅（軸方向Ｊの寸法）
に差を付け、他の部分より肉厚となって強度増大された
幅広部分にウエルド部Ｕを設けたことにより、ウエルド
部となることで低下する強度が肉厚化により補足される
ため、円環１の円周方向Ｅ全体で強度が均一化される。
また、軸受の回転時に、円環１のポケット５をなす面の
凹部（凸部１１ｂの両脇の凹部）ところ４の端面との空
間に潤滑剤が保持されるため、長時間の高速運転時にも
ころに十分な潤滑剤が供給されるようになる。

【００１９】凸部１１ｂの突出寸法（幅広部分の幅Ｈ_b
と他の部分の幅Ｈ_aとの差：Ｈ_b−Ｈ_a）は、ウエルド
部の他の部分に対する強度低下率を考慮して設定するこ
とが望ましい。そして、前記強度低下率は通常１０〜２
０％と見込まれるため、この点からは、前記突出寸法の
他の部分の幅に対する割合（（Ｈ_b−Ｈ_a）／Ｈ_a）を
例えば１５％またはそれ以下とすることが好ましい。ま
た、潤滑剤の溜まり易さおよび成形精度を考慮すると、
前記突出寸法は０．２ｍｍ以上とすることが好ましい。

【００２０】なお、前記実施形態では、円環１の幅広部
分を形成する凸部１１ｂの径方向Ｋ両端面を円環１の外
周面および内周面に合わせてあるが、これに限定され
ず、円環１の外周面および内周面から徐々に凹むテーパ
状としてもよい。ただし、この発明では凸部１１ｂを含
む円環１の幅広部分にウエルド部を設けるため、前記実
施形態のように凸部１１ｂを簡単な形状とした方が幅広
部分全体としての強度が高くなって、円環１内での強度
均一化の効果が大きくなる。

【００２１】また、前記実施形態では、凹部１１ａの面
と凸部１１ｂの凸面１２とをこれら両面に直角な面では
なく傾斜した面で連結することにより、成形性を向上さ
せるとともにその部分での応力集中を防止しているが、
これに加えて前記両面と連結面との角部を曲面に形成す
る（例えば円周面とする）ことにより、成形性の向上と
応力集中の防止効果がさらに高いものとなる。

【００２２】また、前記実施形態では、円環１のポケッ
ト５をなす面を凹凸状に形成し、前記面に凸面１２を一
つずつ設けているが、複数の凸面が設けてあってもよ
い。また、ウエルド部は、円環１の各幅広部分内にあれ
ば円周方向Ｅ中心位置（図１のＵ）より外れた位置に設
けてもよい。また、ころ４の周面を保持する突起３１の
形状および柱３の形状等は、前記実施形態の形状に限定
されない。また、前記実施形態では、ラジアル形の円筒
ころ軸受用の保持器について説明してあるが、この発明
の保持器はこれに限定されず、スラスト形の円筒ころ軸
受用の保持器や円すいころ軸受用の保持器にも適用され
る。

【００２３】

【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、合成樹脂製の保持器において、円環内でのウエルド
部とその他の部分との強度差を解消するとともに、長時
間の高速運転時でもころに十分な潤滑剤が供給される。
そのため、このような保持器を使用することによって、
極少量の潤滑剤の添加で高速回転される回転体用のころ
軸受の寿命を長くすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施形態に相当する保持器の一部
を示す展開斜視図である。

【図２】図１の保持器が使用された複列円筒ころ軸受を
示す断面図である。

【符号の説明】

１円環３柱４ころ５ポケット１１ａ凹部１１ｂ凸部１２凸面Ｈ保持器Ｕウエルド部

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】一対の円環と両者を連結する複数の柱と
でポケットが形成され、且つ合成樹脂の射出成形により
形成されるころ軸受の保持器において、前記円環のポケットをなす面を凹凸状に形成して、その
凸面をころ端面を受ける面とするとともに、この凸面の
形成で幅広となる円環の幅広部分に射出成形時のウエル
ド部を設けたことを特徴とするころ軸受の保持器。