JPH10168618A - 防塵衣 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 衿部からの漏洩塵埃の発生を防止することが
可能な防塵衣を提供すること。 【解決手段】 衿部及び袖口部が人体に密着する構造を
有するオーバーオール型防塵衣において、該襟部がスタ
ンドカラー形状を呈しており、且つその肌側に、複数の
畝状部及び／または弁状部からなる衣服内空気の漏洩防
止機構を備えている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、クリーンルーム内
での作業に適した防塵衣に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】半導体の製造や、バイオテクノロジー分
野における製造や研究では、極めて高い清浄度のクリー
ンルームが不可欠であるが、この清浄度を維持するに
は、入室する作業者からの発塵をいかに低減させるかが
キーポイントとなる。

【０００３】この作業者からの発塵は３種に大別され、
作業者が着用している防塵衣そのものよりの発塵、その
内側に着用しているインナーやミドラーからの発塵及び
作業者自身の体表面より剥離する塵埃がある。

【０００４】又、これらの塵埃はその発生経路より、防
塵衣よりの素材発塵、防塵衣の衿口、袖口、顔面、裾等
の開口部よりの漏洩塵埃及び防塵衣の構成素材を通過し
た透過塵埃に３区分される。

【０００５】防塵衣素材は通常合成繊維の長繊維が用い
られるので、素材発塵はほとんど問題にはなっていな
い。又、該合成繊維の長繊維からなる布帛は高密度化さ
れている上に、カレンダーやコーティング加工等により
補集効率が向上し、透過塵埃についてもほぼ満足のいく
レベルに到達している。

【０００６】しかしながら、高密度化やカレンダー及び
コーティング加工を施した布帛は著しく通気度が低いた
め、該布帛よりなる防塵衣を着用し、動作した場合、衣
服のベローズ効果（フイゴ効果）により衣服内圧の上昇
が大きくなるため、逆に衣服開口部よりの漏洩塵埃は増
加するといった矛盾が起きていた。

【０００７】この問題を解決するために、衣服の開口部
を種々のストレッチ部材にて締め付ける方法が用いられ
ている。

【０００８】例えばゴム紐を用いて衣服開口部を締め付
けた場合は、その周辺に発生する収縮皺が衣服内塵埃の
流通路となり漏洩塵埃の増大につながっている他、局所
的な線状圧迫は、作業者に不快感を催すことになる。

【０００９】別の方法としては、編物を衣服開口部に用
いる方法が知られている。しかし一般に編物組織は、織
物のそれと比較し、表面の凹凸が大きくかつ編物組織内
空隙が大きいため、塵埃が付着堆積し易く、堆積した塵
埃は編地の伸長時に脱落し汚染源となっていた。

【００１０】更に該編地は、クリーンルーム内にて純水
を用いて洗濯をした際、同時に投入した他の洗濯物に付
着した塵埃を吸着又は物理的に編物組織間に取り込み、
再着用時の編地伸長時に該塵埃が脱落することがありう
る。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、特に
オーバーオール型防塵衣を着用した際、衿部よりの漏洩
塵埃の発生を防止することが可能な防塵衣を提供するこ
とにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決すべく鋭意研究を重ねた結果、防塵衣の衿部をスタ
ンドカラーにすること、及び襟部の内側に複数の畝状部
及び／または弁状部を設けて衣服内空気の漏洩を防止す
れば良いことを見い出し、本発明を完成するに至った。

【００１３】即ち、本発明によれば衿部及び袖口部が人
体に密着する構造を有するオーバーオール型防塵衣にお
いて、該襟部がスタンドカラー形状を呈しており、且つ
その肌側に、複数の畝状部及び／または弁状部からなる
衣服内空気の漏洩防止機構を備えていることを特徴とす
る防塵衣が提供される。

【００１４】

【発明の実施の形態】本発明の防塵衣は、上半身部と下
半身部が一体化した構造を有するオーバーオール型防塵
衣であって上衣部と下衣部が分離していない防塵衣であ
る。

【００１５】さらに、上記防塵衣の衿部はスタンドカラ
ーであることが必要であり、これは衿を着用者の首にす
き間なく密着させ、衣服内塵埃をクリーンルーム内に放
出させないようにするためである。

【００１６】つまり、一般の衣服の様に首の周囲で折り
返され、肩に密着する衿では、衣服内塵埃の漏洩を防止
できないので、図１に示す様なスタンドカラー形状が必
須である。

【００１７】更に、上記衿部の肌側には、複数の畝状部
及び／または弁状部からなる衣服内空気の漏洩防止機構
が備えられていることが肝要である。

【００１８】ここで、畝状部とは、例えば図２の（ａ）
に示す如く、衿部の見頃地１に対して布帛２を送り込み
ながら縫着し、あたかも蒲鉾の断面のような凸部を形成
させた状態を言う。

【００１９】上記畝状部を衿部の肌側に、しかも凸部が
衣服内空気の漏洩方向と直交する方向に設けることによ
り、衿部を着用者の肌に密着させることができ、衣服内
の塵埃の漏洩を防止することが可能となる。従って、上
記畝状部は布帛から形成されることが好ましい。

【００２０】また、弁状部とは、図２の（ｂ）に示す如
く、衿部の見頃地１に布帛３の一端のみを縫着し、布帛
３を揺動可能として、衣服内空気の漏洩を防止する弁の
働きを持たせた状態を言う。

【００２１】上記弁状部を衿部の肌側に設けることによ
り、衣服内圧力の増加に伴う空気の漏洩、及びそれに伴
う衣服内の塵埃の漏洩を防止することができる。

【００２２】この際、布帛３が図２の上方まで移動して
しまうことがない様、少なくとも３本程度の係留紐４を
用い、布帛３を見頃時１に繋ぎ止めておくことが好まし
い。

【００２３】一般に伸縮性布帛は、織物や編物を問わ
ず、非伸縮性布帛に較べ表面の凹凸及び伸縮によって形
成される組織内空隙が大きいため、これを防塵衣の衿部
に用いると、衣服内の塵埃を多く含む空気が該伸縮性布
帛を通過する際、その多くの塵埃が布帛の組織内空隙に
補集され、付着堆積したうえ、身体の動作による布帛伸
長時に脱落し、大きな汚染源のひとつになっていた。

【００２４】さらに伸縮性布帛は、例えクリーンルーム
内にて純水を用いて洗濯しても、他の洗濯物と同浴洗濯
する限り、それらより脱落した塵埃により洗濯再汚染が
起こり易く、この塵埃も着用時に脱落し、問題となるこ
とがわかった。

【００２５】そこで、本発明においては、衿部の肌側に
畝状部及び／または弁状部からなる衣服内空気の漏洩防
止機構を設けることにより、衣服内の塵埃の漏洩を防止
した。

【００２６】即ち、畝状部は、着用者動作時のベンチレ
ーション効果により、衣服内空気が塵埃と共に衣服外へ
漏洩することを防ぐ役割をしている。その際該畝状部
は、着用者の肌に密着する作用があるため、より、塵埃
を閉じ込める効果が大きい。

【００２７】また、弁状部は、着用者動作時に衣服内塵
埃を含む空気が衿部より、クリーンルーム内に放出され
るのを防ぐ作用を呈する。

【００２８】その際、急激な動作により発生する高い衣
服内圧による空気流により、弁状部が鉛直上向きにな
り、塵埃を含む衣服内空気が容易に衣服外へ流出するこ
とを防ぐため少くとも３箇所以上でこの弁状部を見頃地
に係留しておけば良い。

【００２９】この係留は、防塵衣の着用時に弁状部が摩
擦により、鉛直上向きに翻るのを防止する効果も有して
いる。

【００３０】

【実施例】以下実施例により本発明を詳述する。尚、実
施例中の物性は下記の方法により測定した。

【００３１】（１）着用動作発塵テスト 伸長１７０ｃｍ、体重６２ｋｇの標準的日本人体型の男
性を被験者とし、木綿の丸首半袖シャツ、木綿ブリーフ
を内衣として着用させ、その上に防塵衣を着用させて、
クラス１のクリーンルーム内に設置したディスパーサル
チャンバー（幅６６ｃｍ×奥行５３ｃｍ×高さ１９８ｃ
ｍ）の中で腕振りとその場足踏みを１分間に６０回行な
う動作を行なわせた。

【００３２】発塵量の評価は、上記の動作を５回繰返し
た際のディスパーサルチャンパー内の塵埃濃度を０．１
μｍの精度でリオン（株）製パーディクルカウンターで
計測し、平均値を算出した。

【００３３】（２）首振り発塵テスト 着用動作発塵テストとおなじ条件下で動作方法のみを変
え、左右９０℃ずつの首の回転のみを１分間に６０回行
ない、パーティクルカウンターで発塵量を計測し、５回
の平均値を算出した。

【００３４】［実施例１］ポリエステル７５ｄｅ／３６
ｆｉｌを経糸とし、ポリエステルウーリー糸１００ｄｅ
／４８ｆｉｌを緯糸として３／２の綾織物を製織し、こ
の布帛を２重にして一方の布帛を送り込みながら縫着
し、図２に示すような複数の畝状部を有する衿と、その
内側に鉛直下向きの弁状部を縫着し、該弁状部の３箇所
を見頃地に係留した防塵衣を縫製した。

【００３５】［実施例２］実施例１において、弁状部を
設けなかった以外は実施例１と同様に実施した。

【００３６】［実施例３］実施例１において、畝状部を
設けなかった以外は実施例１と同様に実施した。

【００３７】［比較例１］従来公知のスタンドカラー
で、畝状部も弁状部も縫着していない防塵衣を縫製し
た。

【００３８】得られた防塵衣は、クリーンルーム内で純
水を用いて清浄洗濯とすすぎを行った後測定に供した。
測定結果を表１に示す。

【００３９】

【表１】

【００４０】実施例１の防塵衣は、衿部よりの衣服内空
気の流出が防止されるので、着用動作発塵が少ない。ま
た、衿部の首への密着性が高いため、首振り発塵も低く
抑えることができた。

【００４１】実施例２及び３の防塵衣は、畝状部あるい
は弁状部のいずれか一方のみを設けたものであり、着用
動作発塵、首振り発塵とも実施例１よりは増加している
ものの、実用上充分な低い発塵性レベルであった。

【００４２】一方、比較例１の防塵衣は、着用動作によ
る衣服内の高濃度の塵埃を封じ込めることができず、多
量にクリーンルーム内へ放出していることがデータより
明らかである。また、比較的衣服内圧の上昇が低い首振
り発塵も高い値を示している。

【００４３】

【発明の効果】本発明の防塵衣は、衿部をスタンドカラ
ーにし、且つ襟部の内側に複数の畝状部及び／または弁
状部を設けて衣服内空気の漏洩を防止しているので、総
発塵量が低く、クリーンルーム内作業に適している。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の防塵衣の衿部の１例を示す斜視図。

【図２】畝状部及び弁状部の形状の１例を説明するため
の斜視図。

【符号の説明】

１ 見頃地 ２ 畝状部を形成する布帛 ３ 弁状部を形成する布帛 ４ 係留紐

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 衿部及び袖口部が人体に密着する構造を
   有するオーバーオール型防塵衣において、該衿部がスタ
   ンドカラー形状を呈しており、且つその肌側に、複数の
   畝状部及び／または弁状部からなる衣服内空気の漏洩防
   止機構を備えていることを特徴とする防塵衣。