JPH10108636A - アレルゲン低減化小麦粉の製造方法 - Google Patents

アレルゲン低減化小麦粉の製造方法

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JPH10108636A
JPH10108636A JP8281795A JP28179596A JPH10108636A JP H10108636 A JPH10108636 A JP H10108636A JP 8281795 A JP8281795 A JP 8281795A JP 28179596 A JP28179596 A JP 28179596A JP H10108636 A JPH10108636 A JP H10108636A
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JP
Japan
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wheat
allergen
flour
solution
treatment
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JP8281795A
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English (en)
Inventor
Sadasuke Shimada
禎祐 嶋田
Kazuyuki Mogi
和之 茂木
Kazufumi Tsubaki
和文 椿
Hiroshi Sugiyama
宏 杉山
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Adeka Corp
Original Assignee
Asahi Denka Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 作業性が良好で、効率的なアレルゲン低減化
小麦粉の製造方法を提供する。 【解決手段】 アレルゲン低減化小麦粉の製造工程にお
いてアレルゲン低減化処理すべき原料として用いる小麦
片の粒径が、16メッシュ(JIS)の篩を通過する
が、70メッシュ(JIS)の篩を通過しない大きさで
あることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アレルゲンを低減
化した小麦調製品の製造方法に関する。詳しくは、穀
物、特に小麦に対してアレルギー反応を起こす患者が、
食糧として用いることができるアレルゲンを低減化した
小麦粉の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】食物アレルギー患者の治療法としては、
物による対症療法の他、アレルギーの原因となる食物を
制限、あるいは摂取させない方法が試みられてきたが、
食物を制限することは、生命の維持、発育に支障をもた
らしかねない。そこで、アレルギーを起こす成分のみを
除去し、他の成分は損なわないような食品を摂取させる
方法が研究されている。例えば、近年、アレルギーを起
こす成分、即ちアレルゲンについて研究が進み、小麦の
場合は、塩水可溶画分であるグロブリン画分にアレルゲ
ンが存在することがわかり〔例えばピラー・パロミノ
(Pilar Palomino)ら,エフ・イー・ビ
ー・エスレターズ(FEBS Letters),26
1(1)85(1990)〕、塩水処理による小麦タン
パク質のアレルゲン低減化方法(特開平3−29734
3号及び特願平5−103613号各公報)又は酵素処
理によるアレルゲン低減化方法(特開平6−25375
8号及び特開平3−27253号各公報)等が報告され
ている。
【0003】しかし、前記の特開平3−297343
号、特願平5−103613号及び特開平3−2725
3号各公報に記載の方法では、小麦粉を処理する際に小
麦粉を水に分散させる必要があり、その際、小麦グルテ
ンにより粘性が発生し、場合によっては塊を生じるた
め、攪拌操作に支障をきたしたり、固液分離操作が困難
になり、収率が低下する。また、前記の特開平6−25
3758号公報には、小麦粒を破砕せずに、小麦粒のま
までアレルゲン低減化処理を実施する旨の記載がある
が、この場合、アレルゲンの抽出度が著しく悪く、十分
なアレルゲン低減化を行うためには長時間の処理を必要
とし、実用的でない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題
は、前記の従来技術の欠点を解消し、グルテンと小麦澱
粉又はグルテン同士の結合による粘性を従来より低下さ
せ、作業性が良好で、効率的なアレルゲン低減化小麦粉
の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記の課題は、本発明に
よる、アレルゲン低減化小麦粉の製造工程においてアレ
ルゲン低減化処理すべき原料として用いる小麦片の粒径
が、16メッシュ(JIS)の篩を通過するが、70メ
ッシュ(JIS)の篩を通過しない〔すなわち、70メ
ッシュ(JIS)の篩に残る〕大きさであることを特徴
とする、アレルゲン低減化小麦粉の製造方法によって解
決することができる。本発明方法において、前記のアレ
ルゲン低減化処理は、タンパク質分解酵素で小麦片を処
理する工程、塩水溶液で小麦片を処理する工程、及び/
又は糖類溶液中の乳酸菌分散液で小麦片を処理する工程
を含むことができる。あるいは、前記のアレルゲン低減
化処理は、エタノールに小麦片を浸漬させる工程、アル
カリ性水溶液に小麦片を浸漬させる工程、又はアルカリ
性水溶液に小麦片を浸漬させる工程及び続けて実施する
酸性水溶液に小麦片を浸漬させる工程を含むこともでき
る。本明細書において「メッシュ(JIS)」は、JI
SZ8801−1966に規定されている標準篩による
ものであり、16メッシュ(JIS)は、1cm2中に
約29孔をもち、70メッシュ(JIS)は、1cm2
中に約46孔をもつ。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳しく説明
する。本発明方法で用いる小麦片は、その径が16メッ
シュ(JIS)の篩を通過し、70メッシュ(JIS)
の篩を通過せずに篩上に残るものである。70メッシュ
(JIS)より小さいと、アレルゲン低減化処理の際に
グルテンによる粘性が生じたり、あるいは塊が発生する
ので、作業性が著しく悪化する。また、16メッシュ
(JIS)より大きいとアレルゲン低減化処理の効率が
低下する。本発明方法で用いる小麦片は、一般的に、小
麦粒を荒粉砕して得ることができる。荒粉砕に用いる小
麦粒は、一般的な小麦製粉工程で原料として用いられる
ものであることができ、小麦の品種、産地、又は新古は
特に限定されない。
【0007】前記の小麦粒を荒粉砕する方法は特に限定
されず、公知の任意の方法を用いることができる。例え
ば、小麦製粉の際に用いる各種ロール機を使う方法をそ
のまま利用することができる。荒粉砕の後、得られた荒
粉砕化小麦片を必要に応じて篩にかけて、本発明方法で
用いることのできる小麦片を得ることができる。また、
径が前記の粒径範囲からはずれる小麦片は、一般の小麦
製品の原料に用いることができる。
【0008】上記の小麦片を用いると、各種のアレルゲ
ン低減化処理を効率よく実施することができる。アレル
ゲン低減化処理は、公知の方法で行うことができるが、
例えば、タンパク質分解酵素で処理する方法、塩水溶
液、低級アルコール、アルカリ性水溶液、及び/又は酸
性水溶液に接触させる方法、あるいは糖類及び糖類分解
微生物を分散した溶液で発酵処理する方法、更にはそれ
らを適宜組み合わせた方法を挙げることができる。
【0009】アレルゲン低減化処理として、タンパク質
分解酵素による処理を実施する場合、タンパク質分解酵
素としては、例えば、パパイン、コラゲナーゼ、トラス
グルタミナーゼ又はカルボキシペプチダーゼを用いるこ
とができ、それらの酵素は一般に微生物ないし植物起源
等のいずれであることもできる。酵素量としては、小麦
片100重量部に対し0.01〜5重量部、特に0.0
5〜1重量部であることが望ましい。酵素量が5重量部
より多いとアレルゲン以外のタンパク質が分解されてし
まい、しかも苦み成分が生成してしまうので好ましくな
い。また酵素量が少ないとアレルゲンの分解が十分でな
くなり好ましくない。必要量の酵素を緩衝液等に溶解又
は懸濁し、これに小麦片を浸漬することができる。必要
に応じ、界面活性剤を添加したり、加圧又は減圧下で処
理することができる。反応時間又は反応温度等の反応条
件は、酵素活性の至適条件や小麦の処理量等を考慮し、
適宜決定することができる。酵素反応の終了後、酵素を
失活させ、反応を停止させる。失活させる方法も特に限
定されず、任意の公知の方法(例えば、加熱)を用いる
ことができる。
【0010】アレルゲン低減化処理として、小麦粒を塩
水溶液で処理する場合、用いる塩水溶液の塩の種類は特
に限定されず、例えば、無機酸の塩(例えば、塩酸塩、
硫酸塩、炭酸塩又は燐酸塩)やアルカリ金属塩(例え
ば、ナトリウム塩又はカリウム塩)を挙げることがで
き、特に塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸
ナトリウム又は各種のリン酸塩を用いると、アレルゲン
低減化の効率が高いので、好ましい。水溶液中の塩の濃
度は0.05M〜5Mが好ましい。5Mを越えると、ア
レルゲンタンパク質の除去が十分でなくなり好ましくな
い。なお、塩水溶液処理の際や処理後の腐敗を防止する
ために、少量(10%〜20%)のアルコール(例えば
エタノール)をなどを、塩水溶液に含ませることもでき
る。また、界面活性剤及び還元剤などを必要により塩水
溶液に含ませることができる。アレルゲン低減化処理を
実施する際には、上記塩水溶液に小麦片を浸漬する。浸
漬処理は静置でもよいし、攪拌してもよい。攪拌は、浸
漬する容器を回転させてもよいし、撹拌羽を用いてもよ
い。処理する温度は5〜40℃が好ましく、処理するp
Hは特に限定されない。処理時間は10分間〜72時間
が好ましい。塩水溶液に浸漬させた後、脱塩する。脱塩
の方法は特に限定されず、任意の公知の方法(例えば、
流水にさらす)を用いることができる。
【0011】アレルゲン低減化処理として、塩水溶液に
よる前記の処理と、タンパク質分解酵素による前記の処
理とを併用することができる。その場合、塩水溶液処理
は、酵素溶液処理の処理前、処理中、又は処理後のいず
れにも実施することができる。酵素溶液での処理の処理
前又は処理後に塩水溶液で処理する場合、酵素溶液及び
塩水溶液によるそれぞれの処理は、前記の各々の方法と
同一でよい。酵素溶液での処理の処理中に塩水溶液で処
理する場合、用いる溶液は、塩水溶液に更に前記の酵素
を溶解又は懸濁したものである。すなわち、使用するタ
ンパク質分解酵素としては、一般には微生物ないし植物
起源等のいずれの酵素も用いることができる。酵素量と
しては、小麦片100重量部に対し0.01〜5重量
部、特に0.05〜1重量部であることが望ましい。酵
素量が5重量部より多いとアレルゲン以外のタンパク質
が分解されてしまい、しかも苦み成分が生成してしまう
ので好ましくない。また酵素量が少ないとアレルゲンの
分解が十分でなくなり好ましくない。処理に用いる塩水
溶液の塩の種類は無機酸の塩(例えば塩酸塩、硫酸塩、
炭酸塩又は燐酸塩)やアルカリ金属塩(例えばナトリウ
ム塩、カリウム塩)を挙げることができ、特に塩化ナト
リウム、炭酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム又は各
種のリン酸塩が、アレルゲン低減化の効率が高いので、
好ましい。水溶液中の塩の濃度は0.05M〜5Mが好
ましい。5Mを越えると、アレルゲンタンパク質の除去
が十分でなくなるので好ましくない。必要量の酵素と塩
とを緩衝液等に溶解又は懸濁し、この溶液又は懸濁液に
小麦片を浸漬する。必要に応じ、界面活性剤、少量(1
0%〜20%)のアルコール(例えばエタノール)、及
び/又は還元剤を添加したり、加圧又は減圧してもよ
い。。浸漬処理は静置でもよいし、攪拌してもよい。攪
拌は、浸漬する容器を回転させてもよいし、撹拌羽を用
いてもよい。反応時間や反応温度等の反応条件は酵素活
性の至適条件や小麦の処理量等を考慮し、適宜決定する
ことができる。処理する温度は5〜40℃が好ましく、
処理するpHは特に限定されない。処理時間は10分間
〜72時間が好ましい。処理後、水洗して酵素、及び塩
を除く。
【0012】アレルゲン低減化処理として、糖類水溶液
に乳酸菌を分散した水性分散液で小麦片を処理する場
合、用いる分散液の糖濃度は2〜10%、乳酸菌の濃度
は分散液1mlあたり106 〜108 個になるよう調整
する。乳酸菌としては、例えば、Lactobacil
lus属、又はStreptococcus属に属する
ものを挙げることができる。糖は、使用する菌が資化す
ることのできるものであれば限定されないが、単糖類、
例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、又は
2糖類、例えばシュークロース等が一般的である。糖類
水溶液に乳酸菌を分散した前記水性分散液に小麦片を浸
積する。水性分散液の量は、小麦片の2〜20倍量(v
/w)であればよい。浸積処理は静置でよいが、弱く攪
拌することがより好ましい。攪拌は、浸積する容器を回
転させるか、又は攪拌羽を用いて実施することもでき
る。反応時間や反応温度等の反応条件は乳酸菌の至適条
件や小麦の処理量等を考慮して適宜決定することができ
る。発酵処理を終了した小麦片は、水洗して乳酸菌を除
去する。
【0013】アレルゲン低減化処理として、糖類水溶液
中の乳酸菌分散液により小麦片を処理する際に、タンパ
ク質分解酵素による前記処理及び/又は塩水溶液による
前記処理を併用することができる。その場合、用いる処
理液は、糖類水溶液中の乳酸菌分散液に、更に前記のタ
ンパク質分解酵素及び/又は塩を溶解又は懸濁したもの
で、糖類、乳酸菌、酵素及び/又は塩の種類及び濃度は
前記と同一でよい。なお、タンパク質分解酵素はその至
適pHが7.0以下である酸性タンパク質分解酵素が望
ましい。すなわち、使用するタンパク質分解酵素として
は、一般には微生物ないし植物起源等のいずれの酵素も
用いることができる。酵素量としては、小麦片100重
量部に対し0.01〜5重量部、特に0.05〜1重量
部であることが望ましい。酵素量が5重量部より多いと
アレルゲン以外のタンパク質が分解されてしまい、しか
も苦み成分が生成してしまうので好ましくない。また酵
素量が少ないとアレルゲンの分解が十分でなくなるので
好ましくない。処理に用いる塩水溶液の塩の種類は無機
酸の塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩又は燐酸塩)
やアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩又はカリウム
塩)を挙げることができ、特に塩化ナトリウム、炭酸ナ
トリウム、ポリリン酸ナトリウム又は各種のリン酸塩
が、アレルゲン低減化の効率が高いので、好ましい。溶
液中の塩の濃度は0.05M〜5Mが好ましい。5Mを
越えると、アレルゲンタンパク質の除去が十分でなくな
るので好ましくない。必要量の糖、乳酸菌、酵素及び/
又は塩を緩衝液等に溶解又は懸濁し、この溶液又は懸濁
液に小麦片を浸漬する。必要に応じ、界面活性剤、還元
剤、少量(10%〜20%)のアルコール(例えばエタ
ノール)を添加したり、加圧又は減圧してもよい。浸漬
処理は静置でもよいし、攪拌してもよい。攪拌は、浸漬
する容器を回転させてもよいし、撹拌羽を用いてもよ
い。反応時間や反応温度等の反応条件は乳酸菌の至適条
件、酵素活性の至適条件、及び/又は小麦の処理量等を
考慮し、適宜決定する。処理する温度は5〜40℃が好
ましく、処理するpHは特に限定されない。処理時間は
10分間〜72時間が好ましい。処理後、水洗して、乳
酸菌、糖、酵素及び/又は塩を除去する。
【0014】アレルゲン低減化処理として、小麦片をエ
タノールで処理する場合、エタノールとしては、無水
〔95%(v/v)〕エタノール又はエタノール水溶液
のいずれをも用いることができる。エタノール水溶液の
エタノール濃度は、50%以上、特には70%以上であ
ることが望ましい。エタノール濃度が50%未満になる
と、処理及び除去操作の効率が低下するため好ましくな
い。以下、無水エタノール又はエタノール水溶液をエタ
ノール処理液と称することがある。必要に応じ、エタノ
ール処理液に界面活性剤を添加してもよい。エタノール
処理液に小麦片を浸漬する。エタノール処理液の液量は
小麦片の2〜20倍量(v/w)あればよい。浸漬処理
は静置でもよいが、攪拌することがより好ましい。攪拌
は、浸漬する容器を回転させてもよいし、撹拌羽を用い
てもよい。処理温度は5〜40℃が好ましい。処理時間
は1分〜72時間、好ましくは2〜12時間である。エ
タノール処理液に浸漬した後、小麦片からエタノール成
分を除く。除く方法としては、任意の公知の方法(例え
ば、水にさらす方法)を用いることができる。
【0015】アレルゲン低減化処理として、小麦片をア
ルカリ性水溶液で処理する場合、アルカリ性水溶液とし
ては、強アルカリの塩でpH7〜10、好ましくはpH
8〜10に調製した水溶液を用いることができる。用い
る水溶液のpHが7未満になると、アレルゲン低減化処
理及びアルカリ成分の除去操作の効率が低下するため好
ましくない。また、用いる水溶液のpHが10を越える
と、グルテニン等の小麦の特性を有するタンパク質画分
がこの水溶液中に抽出除去されてしまうので好ましくな
い。上記強アルカリの塩としては、ナトリウム又はカリ
ウム等の水酸化物等を挙げることができる。なお、必要
に応じ、アルカリ性水溶液に界面活性剤を添加してもよ
い。上記アルカリ性水溶液に小麦片を浸漬する。水溶液
の液量は小麦片の2〜20倍量(v/w)あればよい。
浸漬処理は静置でもよいが、攪拌するのがより好まし
い。攪拌は、浸漬する容器を回転させてもよいし、撹拌
羽を用いてもよい。処理温度は5〜40℃が好ましい。
処理時間は1分〜72時間、好ましくは2〜12時間で
ある。アルカリ性水溶液に浸漬した後、アルカリ分を除
く。除く方法は、任意の公知の方法を用いればよく、例
えば、水にさらすか、希酸で中和する方法などを挙げる
ことができる。
【0016】アレルゲン低減化処理として、アルカリ性
水溶液につづいて酸水溶液で処理することもでき、この
場合のアルカリ性水溶液による処理も、上記の操作と同
一でよい。酸水溶液は、酸を希釈した水溶液で、pH5
以下であれば特に限定されないが、好ましくは、pH4
以下に調製した水溶液である。上記酸性水溶液の種類は
特に限定されず、無機酸(塩酸、リン酸、又は硫酸等)
の水溶液でも、有機酸(酢酸、又はクエン酸等)の水溶
液でもよい。なお、必要に応じて界面活性剤を添加して
もよい。上記アルカリ性水溶液に浸漬した小麦片を酸水
溶液に浸漬する。水溶液の液量は小麦片の2〜20倍量
(v/w)あればよい。浸漬処理は静置でもよいが、攪
拌することがより好ましい。攪拌は、浸漬する容器を回
転させてもよいし、撹拌羽を用いてもよい。処理する温
度は5〜40℃が好ましい。処理時間は1分間〜72時
間、好ましくは2〜12時間である。酸性水溶液に浸漬
した後、酸分を除く。除く方法は、任意の公知の方法を
用いればよく、例えば、水にさらす方法などを挙げるこ
とができる。
【0017】前記のアレルゲン低減化処理を実施した
後、アレルゲン低減化小麦片を微細化し、製粉処理を実
施することができる。この微細化及び製粉処理は、小麦
片を乾燥して実施することも、乾燥せずに実施すること
もできる。乾燥方法は特に限定されず、通常の食品の乾
燥に用いられる方法を利用することができ、例えば、噴
霧、真空、熱風、通風、凍結、天日、マイクロ波、又は
これらを組み合わせた乾燥方法等を挙げることができ
る。微細化及び製粉の方法は特に限定されず、公知の任
意の方法を用いることができる。例えばロール機、ピュ
リファイアー、及び/又はシフター等を組み合わせて用
いる方法あるいは臼式の微細化及び製粉方法などがあ
る。
【0018】小麦粉のアレルゲン低減化の度合いを確認
するには、電気泳動法、又は高速液体クロマトグラフィ
ー等で、除去すべきタンパク質画分の存在を確認して判
定することができる。この場合、除去すべきタンパク質
は、1M塩化ナトリウム水溶液に可溶性でSDS−PA
GEによる見かけの分子量が3万以下、特に1.3万〜
1.5万と2.3万〜2.5万のタンパク質、及び5万
〜7万のタンパク質である。
【0019】上記操作によりアレルゲン低減化処理を実
施すると、1M塩化ナトリウム水溶液に可溶性でSDS
−PAGEによる見かけの分子量が、特に1.3万〜
1.5万と2.3万〜2.5万近辺のタンパク質を中心
とした、3万以下のタンパク質と、5万〜7万のタンパ
ク質を除去もしくは低減化したアレルゲン低減化小麦粉
を得ることができる。すなわち、本発明により得られる
アレルゲン低減化小麦粉は、該アレルゲン低減化小麦粉
1gに1M塩化ナトリウム水溶液(10ml)を加えて
30分間室温で攪拌した場合に、その上清中に含まれる
分子量1.3万〜1.5万のタンパク質濃度が、好まし
くは200μg/ml以下、より好ましくは100μg
/ml以下、更に好ましくは50μg/ml以下であ
る。分子量1.3万〜1.5万のタンパク質濃度が20
0μg/mlより高いと、アレルゲンの低減化か不十分
で、食用に供した場合にアレルギーが発症する危険性が
高くなる。また、前記の上清中に含まれる分子量2.3
万〜2.5万のタンパク質濃度は、好ましくは10μg
/ml以下、より好ましくは5μg/ml以下、更に好
ましくは2μg/ml以下である。分子量2.3万〜
2.5万のタンパク質濃度が10μg/ml未満である
と、アレルゲンの低減化が不十分で、食用に供した時に
アレルギーが発症する危険性が高くなる。5μg/ml
以下であれば、発症する危険性が極めて低い。更にま
た、分子量3万以下のタンパク質濃度が、好ましくは5
00μg/ml以下、より好ましくは200μg/ml
以下、更に好ましくは50μg/ml以下である。分子
量3万以下のタンパク質濃度が500μg/mlより高
いであると、アレルゲンの低減化が不十分で、食用に供
した時にアレルギーが発症する危険性が高くなる。更
に、前記上清中に含まれる分子量5万〜7万のタンパク
質濃度は、好ましくは100μg/ml以下、より好ま
しくは80μg/ml以下、更に好ましくは60μg/
ml以下である。分子量5万〜7万のタンパク質濃度が
100μg/mlより高いと、アレルゲンの低減化が不
十分で、食用に供した時にアレルギーが発症する危険性
が高くなる。80μg/ml以下であれば、発症する危
険性は低くなる。60μg/ml以下であれば、発症す
る危険性が極めて低い。
【0020】アレルギー発症の危険性を更に厳密に測定
するには、免疫学的分析法、例えばエンザイムイムノア
ッセイ法、又はラジオイムノアッセイ法等の方法を用い
ることができる。
【0021】本発明方法によって得られたアレルゲン低
減化小麦粉は、一般の小麦粉を使用することができる任
意の用途に、同様に使用することができる。例えば、ベ
ーカリー製品又は焼き菓子製品、具体的には、各種パ
ン、ビスケット、クラッカー等に使用することができ
る。また、ケーキ等の洋生菓子、麺類(うどん、中華
麺、そば、パスタ等)、又は調理用製品などに使用する
ことができる。
【0022】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例1 16メッシュ(JIS)の篩を通過し70メッシュ(J
IS)の篩に残った粒径を有する小麦片1kgに、パパ
イン粉末1gを溶解した酵素溶液1リットルを加え、全
体が均質になるまで懸濁した。37℃の恒温漕で16時
間静置して酵素反応を行った。反応生成物は、直ちに凍
結乾燥し、石臼式粉砕機で粉末化して本発明方法による
アレルゲン低減化小麦粉(以下S−1と称する)0.9
5kgを得た。
【0023】実施例2 パパインの代わりにコラゲナーゼを用いたこと以外は、
実施例1と同様の操作を行い、本発明方法によるアレル
ゲン低減化小麦粉(以下S−2と称する)0.95kg
を得た。
【0024】実施例3 16メッシュ(JIS)の篩を通過し70メッシュ(J
IS)の篩に残った粒径を有する小麦片10kgに50
0mM−NaCl水溶液50リットルを加え、1時間、
8℃にて攪拌した後、デカンタ型の連続遠心機を用い
て、分離された液体の上清における懸濁物質が2.0m
g/ml以下になるまで固液分離して(条件:遠心力=
3,000G;相対回転差=20rpm)、沈澱を得
た。得られた沈澱に、500mM−NaCl水溶液40
リットルを加え、1時間、8℃にて攪拌した後、再度デ
カンタ型の連続遠心機(条件:前述に同じ)を用いて固
液分離した。更に、この操作を5回繰り返した。このよ
うにして得られた固形物に、水道水40リットルを加
え、1時間、8℃にて攪拌した後、再度デカンタ型の連
続遠心機(条件:前述に同じ)を用いて固液分離し、脱
塩した。得られた小麦片14kgを、真空乾燥機を用い
て乾燥し、粉砕して、本発明方法によるアレルゲン低減
化小麦粉(以下S−3と称する)約9.5kgを得た。
【0025】実施例4 500mM−NaCl水溶液に代えて500mM炭酸ナ
トリウム水溶液を用いること以外は、実施例3と同様の
操作を行い、本発明方法によるアレルゲン低減化小麦粉
(以下S−4と称する)9.5kgを得た。
【0026】実施例5 500mM−NaCl水溶液に代えて500mMポリリ
ン酸ナトリウム水溶液を用いること以外は、実施例3と
同様の操作を行い、本発明方法によるアレルゲン低減化
小麦粉(以下S−5と称する)9.5kgを得た。
【0027】実施例6 16メッシュ(JIS)の篩を通過し70メッシュ(J
IS)の篩に残った粒径を有する小麦片10kgに70
%エタノール水溶液50リットルを加え、1時間、8℃
にて攪拌した後、デカンタ型の連続遠心機を用いて、分
離された液体の上清における懸濁物質が2.0mg/m
l以下になるまで固液分離して(条件:遠心力=3,0
00G;相対回転差=20rpm)、沈澱を得た。得ら
れた沈澱に、70%エタノール水溶液〔40リットルを
加え、1時間、8℃にて攪拌した後、再度デカンタ型の
連続遠心機(条件:前述に同じ)を用いて固液分離し
た。更に、この操作を5回繰り返した。このようにして
得られた固形物に、水道水40リットルを加え、1時
間、8℃にて攪拌した後、再度デカンタ型の連続遠心機
(条件:前述に同じ)を用いて固液分離した。得られた
小麦片14kgを、真空乾燥機を用いて乾燥して、粉砕
して、本発明方法によるアレルゲン低減化小麦粉(以下
S−6と称する)約9.3kgを得た。
【0028】実施例7 16メッシュ(JIS)の篩を通過し70メッシュ(J
IS)の篩に残った粒径を有する小麦片10kgに、p
H9.0に調整したNaOH水溶液50kgを加えて5
℃で攪拌した。30分間放置した後、上澄み液をデカン
テーションにより取り除き、沈澱を得た。この沈澱に対
し上記抽出処理を更に3回繰り返し行った。得られた沈
殿物に、水30リットルを加えて、5℃で攪拌して水洗
を行った。30分間放置した後、上澄み液を取り除き、
沈殿物を得た。この沈殿物に対して、上記水洗処理を3
回繰り返し、遠心分離(3,000rpm)処理した
後、沈殿物を得た。得られた沈殿物は真空乾燥し、石臼
式粉砕機にて粉砕し、本発明方法によるアレルゲン低減
化小麦粉(以下S−7と称する)9.5kgを得た。
【0029】実施例8 pH9.0に調整したNaOH水溶液に代えてpH9.
5に調整したKOH水溶液を用いること以外は、実施例
6と同様の操作を行い、本発明方法によるアレルゲン低
減化小麦粉(以下S−8と称する)9.5kgを得た。
【0030】実施例9 16メッシュ(JIS)の篩を通過し70メッシュ(J
IS)の篩に残った粒径を有する小麦片10kgに、p
H9.0に調整したNaOH水溶液50kgを加えて5
℃で攪拌した。30分間放置した後、上澄み液をデカン
テーションにより取り除き、沈澱を得た。この沈澱に対
し上記抽出処理を更に3回繰り返し行った。得られた沈
殿物に、水30リットルを加えて、5℃で攪拌して水洗
を行った。30分間放置した後、上澄み液を取り除き、
沈殿物を得た。この沈殿物に対して、上記水洗処理を3
回繰り返し、遠心分離(3,000rpm)処理した
後、沈殿物を得た。得られた沈澱に、pH3に調整した
硫酸水溶液50kgを加えて5℃で攪拌した。30分間
放置した後、上澄み液をデカンテーションにより取り除
き、沈澱を得た。この沈澱に対し上記抽出処理を更に3
回繰り返し行った。得られた沈殿物に、水30リットル
を加えて、5℃で攪拌して水洗を行った。30分間放置
した後、上澄み液を取り除き、沈殿物を得た。この沈殿
物に対して、上記水洗処理を3回繰り返し、遠心分離
(3,000rpm)処理した後、沈殿物を得た。得ら
れた沈殿物は真空乾燥し、石臼式粉砕機にて粉砕し、本
発明方法によるアレルゲン低減化小麦粉(以下S−9と
称する)9.5kgを得た。
【0031】実施例10 pH3に調整した硫酸水溶液に代えてpH3に調整した
塩酸水溶液を用いたこと以外は、実施例8と同様の操作
を行い、本発明方法によるアレルゲン低減化小麦粉(以
下S−10と称する)9.5kgを得た。
【0032】実施例11 pH3に調整した硫酸水溶液に代えてpH3に調整した
酢酸水溶液を用いたこと以外は、実施例8と同様の操作
を行い、本発明方法によるアレルゲン低減化小麦粉(以
下S−11と称する)9.5kgを得た。
【0033】実施例12 16メッシュ(JIS)の篩を通過し70メッシュ(J
IS)の篩に残った粒径を有する小麦片10kgに、5
%フルクトース水溶液に乳酸菌(Lactobacil
lus bulgaricus)の前培養液(250×
106 /ml)を1%となるよう植菌した分散液50リ
ットルを加え、ゆるやかに攪拌しながら37℃にて1日
間乳酸発酵を行った。発酵後30分間放置し、上澄み液
をデカンテーションにより取り除き、沈澱を得た。得ら
れた沈殿物に、水30リットルを加えて、5℃で攪拌し
て水洗を行った。30分間放置した後、上澄み液を取り
除き、沈殿物を得た。この沈殿物に対して、上記水洗処
理を3回繰り返し、遠心分離(3,000rpm)処理
した後、沈殿物を得た。得られた沈殿物は真空乾燥し、
石臼式粉砕機にて粉砕し、本発明方法によるアレルゲン
低減化小麦粉(以下S−12と称する)9.5kgを得
た。
【0034】実施例13 16メッシュ(JIS)の篩を通過し70メッシュ(J
IS)の篩に残った粒径を有する小麦片1kgに、パパ
イン粉末1gを溶解した500mM−NaCl酵素溶液
1リットルを加え、全体が均質になるまで懸濁した。3
7℃の恒温漕で16時間静置して酵素反応を行った。反
応生成物は、直ちに凍結乾燥し、石臼式粉砕機で粉末化
して本発明方法によるアレルゲン低減化小麦粉(以下S
−13と称する)0.95kgを得た。
【0035】実施例14 16メッシュ(JIS)の篩を通過し70メッシュ(J
IS)の篩に残った粒径を有する小麦片10kgに、4
%ソルビトール及び0.1%パパイン水溶液に乳酸菌
(Lactobacillus bulgaricu
s)の前培養液(300×106 /ml)を1%となる
よう植菌した分散液50リットルを加え、ゆるやかに攪
拌しながら、37℃にて12時間乳酸発酵を行った。発
酵後、30分間放置し、上澄み液をデカンテーションに
より取り除き、沈澱を得た。得られた沈殿物に、水30
リットルを加えて、5℃で攪拌して水洗を行った。30
分間放置した後、上澄み液を取り除き、沈殿物を得た。
この沈殿物に対して、上記水洗処理を3回繰り返し、遠
心分離(3,000rpm)処理した後、沈殿物を得
た。得られた沈殿物は真空乾燥し、石臼式粉砕機にて粉
砕し、本発明方法によるアレルゲン低減化小麦粉(以下
S−14と称する)9.5kgを得た。
【0036】実施例15 16メッシュ(JIS)の篩を通過し70メッシュ(J
IS)の篩に残った粒径を有する小麦片10kgに、5
%フルクトース含有500mM塩化ナトリウム水溶液に
乳酸菌(Streptococcus thermop
hilus)の前培養液(260×106 /ml)を1
%となるよう植菌した分散液50リットルを加え、ゆる
やかに攪拌しながら37℃にて1日間乳酸発酵を行っ
た。発酵後、30分間放置し、上澄み液をデカンテーシ
ョンにより取り除き、沈澱を得た。得られた沈殿物に、
水30リットルを加えて、5℃で攪拌して水洗を行っ
た。30分間放置した後、上澄み液を取り除き、沈殿物
を得た。この沈殿物に対して、上記水洗処理を3回繰り
返し、遠心分離(3,000rpm)処理した後、沈殿
物を得た。得られた沈殿物は真空乾燥し、石臼式粉砕機
にて粉砕し、本発明方法によるアレルゲン低減化小麦粉
(以下S−15と称する)9.5kgを得た。
【0037】実施例16 16メッシュ(JIS)の篩を通過し70メッシュ(J
IS)の篩に残った粒径を有する小麦片10kgに、4
%ソルビトールと0.1%パパインとを含有する500
mM塩化ナトリウム水溶液中に乳酸菌(Strepto
coccusthermophilus)の前培養液
(280×106 /ml)を1%となるよう植菌した分
散液50リットルを加え、ゆるやかに攪拌し37℃にて
12時間乳酸発酵を行った。発酵後、30分間放置し、
上澄み液をデカンテーションにより取り除き、沈澱を得
た。得られた沈殿物に、水30リットルを加えて、5℃
で攪拌して水洗を行った。30分間放置した後、上澄み
液を取り除き、沈殿物を得た。この沈殿物に対して、上
記水洗処理を3回繰り返し、遠心分離(3,000rp
m)処理した後、沈殿物を得た。得られた沈殿物は真空
乾燥し、石臼式粉砕機にて粉砕し、本発明方法によるア
レルゲン低減化小麦粉(以下S−16と称する)9.5
kgを得た。
【0038】比較例1〜16 16メッシュ(JIS)の篩に残った粒径を有する小麦
片を用いたこと以外は、実施例1〜16と同様の操作を
それぞれ行い、小麦粉(以下C−1〜C−16と称す
る)をそれぞれ、0.95kg(C−1)、0.95k
g(C−2)、9.5kg(C−3)、9.5kg(C
−4)、9.5kg(C−5)、9.5kg(C−
6)、9.5kg(C−7)、9.5kg(C−8)、
9.5kg(C−9)、9.5kg(C−10)、9.
5kg(C−11)、9.5kg(C−12)、0.9
5kg(C−13)、9.5kg(C−14)、9.5
kg(C−15)、及び9.5kg(C−16)の量で
得た。
【0039】比較例17〜32 小麦片として市販小麦粉〔粒径70メッシュ(JIS)
の篩を通過するもの〕を使用したこと以外は、実施例1
〜16と同様の操作をそれぞれ行い、小麦粉(以下C−
17〜C−32と称する)をそれぞれ0.60kg(C
−17)、0.60kg(C−18)、7.5kg(C
−19)、7.5kg(C−20)、7.5kg(C−
21)、7.5kg(C−22)、7.5kg(C−2
3)、7.5kg(C−24)、7.5kg(C−2
5)、7.5kg(C−26)、7.5kg(C−2
7)、7.5kg(C−28)、0.60kg(C−2
9)、7.5kg(C−30)、7.5kg(C−3
1)、7.5kg(C−32)の量で得た。市販小麦粉
を原料として使用すると、いずれの場合も、酵素処理、
塩水溶液処理、又は、アルカリ性水溶液処理を実施した
際に、小麦粉がよく分散せずに粒状の固まりとなったた
め作業は煩雑で、固液分離の際に流去するものがあっ
た。これに対して本発明ではそのようなことはなく、作
業性は著しく良好であった。また、このように、本発明
のアレルゲン低減化小麦粉は70メッシュ(JIS)の
篩を通過した小麦粉を原料としたものに比して、著しく
収量が優れていた。
【0040】実施例17 実施例1〜16で得られた本発明方法によるアレルゲン
低減化小麦粉S−1〜S−16、及び比較例1〜32で
得られた小麦粉C−1〜C−32のアレルゲン低減化の
度合いをSDS−PAGEで検査した。各小麦粉1gに
1M−NaCl(10ml)を加えて30分間室温で攪
拌した。次いで、遠心分離処理(9,000rpm;5
分間)して、その上清を得、上清を常法によりドデシル
硫酸ナトリウム化し、SDS−PAGEにかけた。電気
泳動後、デンシトメータにより、各分子量バンドの強度
に相当するタンパク質量を測定した。結果を表1に示
す。
【0041】
【表1】
【0042】このように、本発明方法によって得られる
アレルゲン低減化小麦粉は、その1M−NaCl抽出液
の上清中に含まれる分子量1.3万〜1.5万のタンパ
ク質濃度が200μg/ml以下、また、分子量2.3
万〜2.5万のタンパク質濃度は10μg/ml以下、
分子量3万以下のタンパク質濃度が500μg/ml以
下、また、分子量5万〜7万のタンパク質濃度は100
μg/ml以下であった。このように、本発明のアレル
ゲン低減化小麦粉は16メッシュ(JIS)の篩に残っ
た小麦片を原料としたものより効率的にアレルゲンが除
去されていた。また、70メッシュ(JIS)の篩を通
過した小麦粉を原料としたものに劣らない程度にアレル
ゲンが除去されていた。
【0043】実施例18 実施例1〜16で得られた本発明方法によるアレルゲン
低減化小麦粉S−1〜S−16及び、比較例1〜32で
得られた小麦粉C−1〜C−32のアレルゲン低減化の
度合いを小麦アレルギー患者の皮内反応で検査した。す
なわち、アレルゲン低減化小麦粉S−1〜S−16及
び、比較例1〜32で得られた小麦粉C−1〜C−32
のそれぞれ0.8gに尿素抽出剤〔7M尿素と20mM
メルカプトエタノールとを含む76mMトリスクエン酸
緩衝液(pH8.0)〕を加え、10分間室温にて撹拌
した後、20分間遠心分離(3,000G)し、溶出す
る成分(抽出液)をそれぞれ得た。得られた抽出液をポ
アサイズ分子量3500カットの透析チューブを用い
て、0.15mM塩化ナトリウムを含む20mMリン酸
緩衝液(pH7.4)に対して、それぞれ24時間透析
した。透析後の抽出液を凍結乾燥し、それぞれ尿素抽出
物とした。得られた尿素抽出物に、50%グリセリンを
含む1M塩化ナトリウム水溶液10mlを加え、14時
間4℃にて撹拌した後、20分間遠心分離(10,00
0G)し、溶出する成分(抗原液)をそれぞれ得た。
【0044】小麦アレルギー患者の片腕全体を消毒し、
上記抗原液及びコントロール(50%グリセリンを含む
1M塩化ナトリウム水溶液)をそれぞれ0.3mlずつ
滴下し、消毒した針で、滴下した抗原液の上から斜めの
方向に皮膚内にそれぞれ接種した。接種から20分経過
後に、それぞれ接種した近辺の皮膚の膨疹の有無と発赤
の直径を判定した。判定は、シェルドン(Sheldo
n J.M.)らの方法(ア・マニュアル・オブ・クリ
ニカル・アラジー〔A manual ofclini
cal Allergy)159〕に準じて実施した。
すなわち、発赤がコントロールに同じ直径の場合は
(−)、発赤が認められるがその直径が21mm以下の
場合に(+)、21mm以上の発赤があるが膨疹はない
場合に(++)、発赤及び膨疹ともに認められる場合
(+++)とした。その結果は表2の通りであった。
【0045】
【表2】
【0046】このように、本発明方法によって得られる
アレルゲン低減化小麦粉は、16メッシュ(JIS)の
篩に残った小麦片を原料としたものより効率的にアレル
ゲンが除去されていた。また、70メッシュ(JIS)
の篩を通過した小麦粉を原料としたものに劣らない程度
にアレルゲンが除去されていた。
【0047】応用例1 本発明方法によるアレルゲン低減化小麦粉4.5kgに
10%食塩水を2.65kg加え、捏ねあげ、伸ばし、
裁断して、うどんを作成した。このうどんは、コシが強
くツルツルしたものであった。
【0048】応用例2 本発明方法によるアレルゲン低減化小麦粉0.5kg
に、水0.30リットル、イースト3%、マーガリン5
%を加え、捏ねあげた。20分間ねかせてから、型に入
れ、2次発酵の後に焼成し、食パンを作成した。このパ
ンは、食感が良好でかさ比重の大きいボリュームのある
ものであった。
【0049】
【発明の効果】本発明方法により得られる小麦片を用い
てアレルゲン低減化処理を実施することにより、グルテ
ンと小麦澱粉又はグルテン同士の結合による粘性を従来
より低下させ、作業性が良く、効率的なアレルゲン低減
化小麦粉を製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉山 宏 東京都荒川区東尾久7丁目2番35号 旭電 化工業株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アレルゲン低減化小麦粉の製造工程にお
    いてアレルゲン低減化処理すべき原料として用いる小麦
    片の粒径が、16メッシュ(JIS)の篩を通過する
    が、70メッシュ(JIS)の篩を通過しない大きさで
    あることを特徴とする、アレルゲン低減化小麦粉の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 アレルゲン低減化処理が、タンパク質分
    解酵素で小麦片を処理する工程を含む請求項1記載の方
    法。
  3. 【請求項3】 アレルゲン低減化処理が、塩水溶液で小
    麦片を処理する工程を含む請求項1又は2記載の方法。
  4. 【請求項4】 アレルゲン低減化処理が、糖類溶液中の
    乳酸菌分散液で小麦片を処理する工程を含む請求項1〜
    3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 アレルゲン低減化処理が、エタノールに
    小麦片を浸漬させる工程を含む請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】 アレルゲン低減化処理が、アルカリ性水
    溶液に小麦片を浸漬させる工程を含む請求項1記載の方
    法。
  7. 【請求項7】 アレルゲン低減化処理が、アルカリ性水
    溶液に小麦片を浸漬させる工程、及び続けて実施する酸
    性水溶液に小麦片を浸漬させる工程を含む請求項1記載
    のアレルゲン低減化小麦粉の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005198582A (ja) * 2004-01-16 2005-07-28 Soyu 小麦粉の低アレルゲン化方法及びそれによって得られる低アレルゲン化小麦粉並びに小麦粉加工食品
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