JPH0958449A - 車輪特性推定装置 - Google Patents

車輪特性推定装置

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JPH0958449A
JPH0958449A JP22151495A JP22151495A JPH0958449A JP H0958449 A JPH0958449 A JP H0958449A JP 22151495 A JP22151495 A JP 22151495A JP 22151495 A JP22151495 A JP 22151495A JP H0958449 A JPH0958449 A JP H0958449A
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Shin Koike
伸 小池
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Abstract

(57)【要約】 【課題】車輪状態量と車輪発生力との関係である車輪特
性を精度よく推定する技術を提供する。 【解決手段】各々車輪状態量である車輪スリップ角αお
よび車輪スリップ率sと車輪発生力である車輪横力FY
三者間の関係である車輪特性を、車輪−路面間摩擦係数
μを反映するパラメータaと、車輪のタイヤ剛性を反映
するパラメータbを含む3次元関数で近似する。さら
に、その関数におけるパラメータa,bを、車輪スリッ
プ角αおよび車輪スリップ率sの各実際値とパラメータ
a,bの各候補値に基づいて推定した車輪横力FY に基
づいて車両のヨーレイトγを推定し、その推定ヨーレイ
トγが実ヨーレイトγに一致するようにパラメータa,
bの各候補値を変更することにより、同定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車輪特性を推定す
る技術に関するものであり、特に、その推定の精度を向
上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、車両ヨーレイト,車体スリップ
角等の車両状態量を推定するために、車輪に発生する力
を推定することが必要となる場合がある。そのような必
要に応えるため、車輪スリップ角等の車輪状態量と車輪
横力等の車輪発生力との関係である車輪特性を推定する
装置が既に提案されている。
【0003】その一従来例が特開昭62−88666号
公報に記載されている。それは、車輪状態量としての車
輪スリップ角と車輪発生力としての車輪横力とが比例関
係にあるとみなし、比例関係を表すコーナリングパワー
の候補値に基づいて現在の車両状態量を推定し、その推
定車両状態量と実車両状態量との関係からコーナリング
パワーを同定する車輪特性推定装置である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、よく知られて
いるように、車輪特性には線形領域のみならず非線形領
域も存在する。それにもかかわらず、上記従来の技術で
は、車輪特性が常に線形であるとみなして推定される。
そのため、その従来の技術では、実際の車輪特性を精度
よく推定することができないという問題がある。このよ
うな事情を背景とし、本発明は、車輪特性を精度よく推
定することを課題としてなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段,作用および発明の効果】
その課題を解決するため、本発明は、前記車輪状態量と
車輪発生力との関係である車輪特性を推定する装置を、
(a) 少なくとも1つのパラメータを用いることによって
車輪状態量と車輪発生力との関係を表す関数式であって
車輪特性のうち線形領域のみならず非線形領域をも表す
ことが可能なものを記憶する関数式記憶手段と、(b) 前
記車輪状態量を検出し、その検出値と前記関数式とに基
づいて現在の前記車輪発生力を推定し、その推定車輪発
生力に基づき、車輪発生力と車両状態量との間に予め定
められた関係に従って現在の車両状態量を推定し、その
推定車両状態量と実車両状態量との関係から前記パラメ
ータを同定するパラメータ同定手段とを含むものとされ
ている。
【0006】なお、ここに「車輪状態量」には例えば、
車輪スリップ率,車輪スリップ角,車輪回転速度,車輪
回転加速度,車輪上下荷重,タイヤ剛性等、車輪に関連
するすべての状態量が含まれる。また、「車輪発生力」
には例えば、車輪前後力,車輪横力,コーナリングフォ
ース等が含まれる。
【0007】したがって、本発明によれば、車輪特性の
うち線形領域のみならず非線形領域をも表すことが可能
な関数式によって車輪特性が推定されるから、車輪特性
の推定精度が向上するという効果が得られる。
【0008】
【発明の補足説明】以下、本発明の望ましい実施態様の
いくつかを特許請求の範囲と同じ表現形式で記載する。 (1) 請求項1の車輪特性推定装置であって、前記車輪状
態量が車輪横スリップ状態量を含むもの。 (2) (1) の車輪特性推定装置であって、前記車輪横スリ
ップ状態量が、車両の向きを基準にして車輪の向きを表
す車輪横スリップ角を含むもの。 (3) 請求項1,(1) または(2) の車輪特性推定装置であ
って、前記車輪状態量が車輪縦スリップ状態量を含むも
の。 (4) (3) の車輪特性推定装置であって、前記車輪縦スリ
ップ状態量が、車輪が路面に対して車両前後方向にスリ
ップする割合を表す車輪スリップ率を含むもの。 (5) 請求項1,(1) ないし(4) のいずれかの車輪特性推
定装置であって、前記車輪発生力が車輪横力を含むも
の。 (6) 請求項1,(1) ないし(5) のいずれかの車輪特性推
定装置であって、前記車輪発生力が車輪前後力を含むも
の。 (7) 請求項1,(1) ないし(6) のいずれかの車輪特性推
定装置であって、前記関数式が、車輪と路面との間の摩
擦係数μの大きさを反映するμパラメータを有するも
の。 (8) 請求項1,(1) ないし(7) のいずれかの車輪特性推
定装置であって、前記関数式が、車輪のタイヤ剛性の大
きさを反映する剛性パラメータを有するもの。 (9) 請求項1の車輪特性推定装置であって、前記関数式
が、車輪スリップ角と車輪横力との関係を表すもの。 (10)請求項1の車輪特性推定装置であって、前記関数式
が、車輪スリップ角と車輪スリップ率と車輪横力との関
係を表すもの。 (11)(10)の車輪特性推定装置であって、前記関数式が、
【0009】
【数1】
【0010】であるもの。ただし、ここに「a」はμパ
ラメータ、「b」は剛性パラメータである。パラメータ
aは、摩擦係数μが大きいほど大きくなり、一方、パラ
メータbは、タイヤ剛性が高いほど大きくなる。また、
「tanh」は、双曲線正接の関数を表し、「sech」は、双
曲線正割の関数を表す。車輪スリップ角αと車輪スリッ
プ率sと車輪横力FY との関係である車輪特性は一般
に、図9の3次元グラフで示される。この車輪特性は、
概略的に説明すれば、車輪スリップ率sが同一の状況で
は、車輪スリップ角αが増加するにつれてほぼ比例的に
横力FY が増加するがやがて飽和し、さらに車輪スリッ
プ角αが増加すると逆に横力FY が減少する性質を有す
る。車輪スリップ角αが増加するにつれてほぼ比例的に
横力FY が増加する領域が線形領域であり、車輪スリッ
プ角αが増加すると逆に横力FY が減少する領域が非線
形領域である。また、この車輪特性は、車輪スリップ角
αが同一の状況では、車輪スリップ率sの絶対値が増加
するにつれて横力FY が減少する性質を有する。また、
この車輪特性は、車輪と路面との間の摩擦係数μや車輪
に装着されたタイヤの剛性(横剛性,ねじり剛性等)に
よって変化する。なお、摩擦係数μは、車輪側の摩擦係
数が不変であると仮定すれば、路面側の摩擦係数に依存
することになり、逆に、路面側の摩擦係数が不変である
と仮定すれば、車輪側の摩擦係数に依存することにな
る。それらの事情を背景とし、本発明者はそのような車
輪特性を関数式で近似することについて研究し、その結
果、その3次元グラフを近似する関数式として上記の関
数式を誘導したのである。 (12)請求項1の車輪特性推定装置であって、前記関数式
が、車輪スリップ率sと車輪前後力FX との関係を表す
もの。 (13)請求項1の車輪特性推定装置であって、前記関数式
が、車輪スリップ角αと車輪スリップ率sと車輪前後力
X との関係を表すもの。 (14)(13)の車輪特性推定装置であって、前記関数式が、
【0011】
【数2】
【0012】であるもの。ただし、ここに「a」はμパ
ラメータ、「b」は剛性パラメータである。パラメータ
aは、摩擦係数μが大きいほど大きくなり、一方、パラ
メータbは、タイヤ剛性が高いほど大きくなる。また、
「tanh」は、双曲線正接の関数を表す。車輪スリップ角
αと車輪スリップ率sと車輪前後力FX との関係である
車輪特性は一般に、図10の3次元グラフで示される。
この車輪特性は、概略的に説明すれば、車輪スリップ角
αが同一の状況では、車輪スリップ率sが増加するにつ
れてほぼ比例的に前後力FX が増加するがやがて飽和
し、さらに車輪スリップ率sが増加すると逆に前後力F
X が減少する性質を有する。車輪スリップ率sが増加す
るにつれてほぼ比例的に前後力FX が増加する領域が線
形領域であり、車輪スリップ率sが増加すると逆に前後
力FX が減少する領域が非線形領域である。また、この
車輪特性は、車輪スリップ率sが同一の状況では、車輪
スリップ角αの絶対値が増加するにつれて前後力FX
減少する性質を有する。また、この車輪特性も、摩擦係
数μやタイヤ剛性によって変化する。それらの事情を背
景とし、本発明者はそのような車輪特性を関数式で近似
することについて研究し、その結果、その3次元グラフ
を近似する関数式として上記の関数式を誘導したのであ
る。 (15)請求項1,(1) ないし(14)のいずれかの車輪特性推
定装置であって、前記パラメータ同定手段が、前記パラ
メータの候補値を一定量ずつ変更するとともに、その変
更毎に、各候補値が採用された関数式に基づいて現在の
車輪発生力を推定し、推定された車輪発生力に基づいて
現在の車両状態量を推定し、推定された車両状態量と実
車両状態量との差の絶対値が設定値以下となるまで候補
値の変更を繰り返し、その差の絶対値が設定値以下とな
ったときにおける候補値をパラメータの真の値に確定す
るもの。 (16)(15)の車輪特性推定装置であって、前記パラメータ
同定手段が、(a) 車輪状態量を検出する車輪状態量セン
サと、(b) 車両状態量を検出する車両状態量センサと、
(c) 車輪状態量センサにより検出された車輪状態量とパ
ラメータの候補値とに基づき、現在の車輪発生力を推定
する車輪発生力推定手段と、(d) 推定された車輪発生力
に基づき、2自由度の車両モデルを想定して現在の車両
状態量を推定する車両状態量推定手段と、(e) 推定され
た車両状態量と前記車両状態量センサにより検出された
車両状態量との関係から、パラメータの今回の候補値が
真の値に十分に近いか否かを判定する候補値適否判定手
段と、(f) 近いと判定された場合にはその値を真の値に
確定し、近くはないと判定された場合には、パラメータ
の候補値を変更するパラメータ確定・変更手段とを有す
るもの。 (17)(16)の車輪特性推定装置であって、前記車輪状態量
センサとして、運転者によって操作されるステアリング
ホイールの回転操作角である操舵角を検出する操舵角セ
ンサまたは車輪の実舵角を検出する舵角センサを有する
もの。 (18)(16)または(17)の車輪特性推定装置であって、前記
車輪状態量センサとして、車輪の回転速度である車輪速
を検出する車輪速センサを有するもの。 (19)(16)ないし(18)のいずれかの車輪特性推定装置であ
って、前記車両状態量センサとして、車両のヨーレイト
を検出するヨーレイトセンサを有するもの。 (20)(19)の車輪特性推定装置であって、前記ヨーレイト
センサが、ヨーレイトの検出に専用のものであるもの。 (21)(19)の車輪特性推定装置であって、前記ヨーレイト
センサが、左右輪の車輪速センサを流用し、左右輪間の
回転速度差に基づいてヨーレイトを間接に検出するもの
であるもの。 (22)(16)ないし(21)のいずれかの車輪特性推定装置であ
って、前記車両状態量推定手段が、 I・γ’=Lf (FYfl +FYfr )−Lr (FYrl +F
Yrr ) なるヨー運動方程式に、前記推定された左前輪の車輪横
力FYfl ,右前輪の車輪横力FYfr ,左後輪の車輪横力
Yrl および右後輪の車輪横力FYrr をそれぞれ代入す
ることによってヨーレイト角速度γ’を推定し、さら
に、それの時間積分値としてヨーレイトγを推定するも
のであり、前記候補値適否判定手段が、その推定ヨーレ
イトγと前記車両状態量センサにより検出された実ヨー
レイトγとの関係からパラメータの今回の候補値が真の
値に十分に近いか否かを判定するものである車輪特性推
定装置。ただし、上記式において「I」は固定値である
車両ヨー慣性モーメント、「L f 」は固定値である重心
−前輪車軸間距離、「Lr 」は固定値である重心−後輪
車軸間距離をそれぞれ表す。
【0013】なお付言すれば、本発明は別の観点から以
下のような発明として把握することもできる。 A.車両状態量推定装置 (1) 車輪モデルとして車輪特性の非線形性をも考慮した
非線形モデルを想定して車輪発生力を推定し、その推定
した車輪発生力に基づき、車両モデルとして2自由度モ
デルを想定して車両状態量を推定する車両状態量推定装
置。この車両状態量推定装置によれば、比較的安価なセ
ンサでは検出が困難な車両状態量を比較的簡単に推定可
能となる。 (2) (1) の車両状態量推定装置であって、少なくとも1
つのパラメータを用いることによって車輪状態量と車輪
発生力との関係を表す関数式を記憶する関数式記憶手段
と、そのパラメータを同定するパラメータ同定手段とを
有するもの。なお、ここにおける「パラメータ同定手
段」は例えば、前記(15)または(16)における態様をとり
得る。 (3) (1) の車両状態量推定装置であって、前記関数式記
憶手段が、前記関数式として、前記数1および数2の欄
にそれぞれ記載された2つの関数式の少なくとも一方を
記憶するもの。 (4) (1) ないし(3) のいずれかの車両状態量推定装置で
あって、さらに、ヨーレイトγを検出するヨーレイトセ
ンサと車速Vを検出する車速センサとを有し、 mV(β’+γ)=FYfl +FYfr +FYrl +FYrr なる車両の横運動方程式に、ヨーレイトγの検出値およ
び車速Vの検出値と、前記推定された左前輪の車輪横力
Yfl ,右前輪の車輪横力FYfr ,左後輪の車輪横力F
Yrl および右後輪の車輪横力FYrr をそれぞれ代入する
ことによって車体スリップ角速度β’を求め、さらに、
その時間積分値として車体スリップ角βを求め、それら
車体スリップ角速度β’および車体スリップ角βをそれ
ぞれ前記車両状態量として出力するもの。ただし、上記
式において「m」は固定値である車両質量を表す。
【0014】B.車輪−路面間摩擦係数推定装置 (1) 少なくとも1つのパラメータを用いることによって
車輪状態量と車輪発生力との関係を表す関数式であって
そのパラメータの少なくとも1つが車輪と路面との間の
摩擦係数μの大きさを反映するμパラメータであるもの
を記憶する関数式記憶手段と、前記少なくとも1つのパ
ラメータを同定するパラメータ同定手段と、同定された
μパラメータに基づき、摩擦係数μを推定する摩擦係数
推定手段とを含むことを特徴とする車輪−路面間摩擦係
数推定装置。なお、ここにおける「関数式」は、車輪特
性の非線形性をも考慮したものであっても非線形性まで
は考慮しないものであってもよい。また、ここにおける
「パラメータ同定手段」も例えば、前記(15)または(16)
における態様をとり得る。 (2) (1) の車輪−路面間摩擦係数推定装置であって、前
記μパラメータが、前記摩擦係数μが大きいほど大きく
なるもの。 (3) (2) の車輪−路面間摩擦係数推定装置であって、前
記関数式記憶手段が、前記関数式として、前記数1およ
び数2の欄にそれぞれ記載された2つの関数式の少なく
とも一方を記憶するもの。
【0015】C.タイヤ剛性推定装置 (1) 少なくとも1つのパラメータを用いることによって
車輪状態量と車輪発生力との関係を表す関数式であって
そのパラメータの少なくとも1つが車輪のタイヤ剛性の
大きさを反映する剛性パラメータであるものを記憶する
関数式記憶手段と、前記少なくとも1つのパラメータを
同定するパラメータ同定手段と、同定された剛性パラメ
ータに基づき、タイヤ剛性を推定するタイヤ剛性推定手
段とを含むことを特徴とするタイヤ剛性推定装置。な
お、ここにおける「関数式」も、車輪特性の非線形性を
も考慮したものであっても非線形性までは考慮しないも
のであってもよい。また、ここにおける「パラメータ同
定手段」も例えば、前記(15)または(16)における態様を
とり得る。 (2) (1) のタイヤ剛性推定装置であって、前記剛性パラ
メータが、タイヤ剛性が大きいほど大きくなるもの。 (3) (2) のタイヤ剛性推定装置であって、前記関数式記
憶手段が、前記関数式として、前記数1および数2の欄
にそれぞれ記載された2つの関数式の少なくとも一方を
記憶するもの。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて詳細に説明する。図1には車両挙動制御システ
ムがブロック図で示されている。車両挙動制御システム
は、4輪車両に搭載されて使用されるものであり、車輪
特性推定装置10と車両状態量推定装置12と車両挙動
安定化制御装置14とを備えている。それらのうち車輪
特性推定装置10が本発明の一実施形態である。
【0017】車輪特性推定装置10は、各輪毎に、車輪
スリップ角αと車輪スリップ率sと車輪の横力FY との
関係である車輪特性(3次元)を推定する。
【0018】車輪スリップ角αは、車両の向きを基準と
して車輪の向きを表す物理量である。前輪の車輪スリッ
プ角αf は、 αf =β+Lf ・γ/V−θf なる式で表され、一方、後輪の車輪スリップ角αr は、 αr =β−Lr ・γ/V なる式で表される。ただし、 β :車体スリップ角 Lf :重心−前輪車軸間距離 Lr :重心−後輪車軸間距離 γ :ヨーレイト V :車速 θf :前輪舵角(=δH /N) δH :ステアリングホイールの操舵角 N:オーバオールステアリング比
【0019】車輪スリップ率sは、車輪が路面に対して
前後方向にスリップする程度を表す物理量である。車輪
スリップ率sは、車輪速をVW 、車速をVとして、 s=(VW −V)/V なる式で表され、車両の駆動時には正の値、制動時には
負の値となる。
【0020】横力FY は、車両旋回中に車輪にそれの回
転面に直角な方向において発生する力をいう。なお、横
力FY は、車両旋回中に車輪に、車両の横方向において
発生する力であるコーナリングフォースCFという意味
で使用することもある。
【0021】車輪特性推定装置10は、車輪特性を表す
3次元グラフを近似する関数式として、前記数1の欄に
記載された関数式(車輪横力FY の式)を使用する。そ
の関数式はROM34の関数式メモリに予め記憶されて
いる。そして、車輪特性推定装置10は、車両走行中に
その関数式におけるパラメータa,bをそれぞれ同定す
ることによって車輪特性を推定する。パラメータaは前
記μパラメータの一例であり、パラメータbは剛性パラ
メータの一例である。
【0022】パラメータa,bの同定は、概略的に説明
すれば、図3に示すように、車輪モデルと車両モデルと
を用いて行われる。車輪モデルは、前記関数式によって
定義され、車輪特性の非線形性をも考慮した非線形モデ
ルである。これに対し、車両モデルは、車両の平面運動
のうちの横運動(並進運動)は、 mV(β’+γ)=FYfl +FYfr +FYrl +FYrr なる横運動方程式で記述され、ヨー運動(回転運動)
は、 I・γ’=Lf (FYfl +FYfr )−Lr (FYrl +F
Yrr ) なるヨー運動方程式で記述される2自由度モデルであ
る。ただし、 m :車両質量(固定値) V :車速 β’ :車体スリップ角速度 FYfl :左前輪に発生する横力 FYfr :右前輪に発生する横力 FYrl :左後輪に発生する横力 FYfr :右後輪に発生する横力 I :車両のヨー慣性モーメント(固定値) γ’ :ヨーレイトγの時間微分値であるヨー角加速度 なお、横運動方程式はROM34の横運動方程式メモリ
に、ヨー運動方程式はROM34のヨー運動方程式メモ
リにそれぞれ予め記憶されている。
【0023】車輪特性推定装置10は、パラメータa,
bをそれぞれ一定の規則に従って少量ずつ変更するとと
もに、その変更毎に、パラメータa,bの各候補値に基
づいてヨー角加速度γ’を演算する。さらに、それを積
分することによってヨーレイトγを推定し、その推定ヨ
ーレイトγと実車の実ヨーレイトγとの差を求め、その
差の絶対値が設定値A以下となるまで、パラメータa,
bの候補値の変更を繰り返し、これにより、現在の実車
に適合したパラメータa,bをリアルタイムで同定す
る。
【0024】車輪特性推定装置10は、図1に示すよう
に、操舵角センサ20,車速センサ22,ヨーレイトセ
ンサ24と4個の車輪速センサ26を備えている。操舵
角センサ20は、運転者によって回転操作されるステア
リングホイールの回転操作角である操舵角δH を検出す
るものである。車速センサ22は、車両の前後方向にお
ける走行速度である車速Vを検出するものである。ヨー
レイトセンサ24は、車両の実ヨーレイトγを検出する
ものである。4個の車輪速センサ26は、車両の4個の
車輪にそれぞれ設けられ、各車輪の周速度である車輪速
W を検出するものである。
【0025】なお、それらセンサは車両状態量推定装置
12と共用される。また、ヨーレイトセンサ24は、専
用のものであっても、左右輪の車輪速センサ26を流用
して左右輪の回転速度差からヨーレイトγを間接に検出
するものであってもよい。
【0026】車輪特性推定装置10はさらに、車輪特性
推定コントローラ30も備えている。車輪特性推定コン
トローラ30は、CPU32,ROM34およびRAM
36を含むコンピュータ38を主体として構成されてい
る。ROM34には、パラメータ同定ルーチンを始めと
する各種ルーチンが予め記憶されており、CPU32が
RAM36を使用しつつそれら各種ルーチンを実行する
ことにより、車輪特性推定が行われる。
【0027】パラメータ同定ルーチンは図2にフローチ
ャートで表されている。本ルーチンは一定時間が経過す
る毎に実行を繰り返される。
【0028】本ルーチンの各回の実行時にはまず、ステ
ップS1(以下、単にS1で表す。他のステップについ
ても同じとする)において、RAM36のパラメータメ
モリからパラメータa,bの現在値がそれぞれ読み込ま
れる。ただし、本ルーチンの今回の実行はコンピュータ
28の電源投入開始後の初回である場合には、パラメー
タa,bが一度も同定されていないから、ROM34の
パラメータメモリから標準値(初期値)が読み込まれ、
それが現在のパラメータとしてRAM36に記憶され
る。
【0029】その後、S2において、各種センサによ
り、車速V,各輪の車輪速VW ,実ヨーレイトγおよび
操舵角δH が検出される。続いて、S3において、各輪
毎に、車輪スリップ率sと車輪スリップ角αがそれぞれ
演算される。車輪スリップ率sは、車速Vと車輪速VW
とから演算され、車輪スリップ角αは、操舵角δH と車
体スリップ角βとから演算される。なお、車体スリップ
角βは、本ステップの初回の実行時には0とされ、次回
以後の各回の実行時には、車両状態量推定装置12によ
り演算された最新の車体スリップ角βが近似値として使
用される。
【0030】その後、S4において、それら検出値と前
記パラメータa,bとに基づき、車輪モデルすなわち前
記関数式を利用して各輪毎に現在の横力FY が推定され
る。続いて、S5において、推定された4輪分の横力F
Y に基づき、車両モデルすなわち前記ヨー運動方程式を
利用して車両のヨー角加速度γ’が推定され、それの時
間積分値としてヨーレイトγが推定される。その後、S
6において、その推定ヨーレイトγと実ヨーレイトγと
の差の絶対値が設定値A以下であるか否かが判定され
る。今回は設定値A以下であると仮定すれば、判定がY
ESとなり、S7において、パラメータa,bがそのま
ま確定されてRAM36に記憶され、以上で本ルーチン
の一回の実行が終了する。
【0031】これに対し、今回はヨーレイトの推定値と
実際値との差の絶対値が設定値A以下ではないと仮定す
れば、S6の判定がNOとなり、S8において、パラメ
ータa,bの各候補値が別の候補値に変更される。この
変更は例えば、図4に概念的に示すように、各パラメー
タa,bがとり得る範囲内における複数の候補値を予め
用意しておき、パラメータbのある候補値についてパラ
メータaの候補値をそれの全範囲にわたって変更し、そ
のようにしてもヨーレイトγの推定値と実際値との差の
絶対値が設定値A以下にはならない場合には、パラメー
タbを別の候補値に変更した上でパラメータaの候補値
をそれの全範囲にわたって変更することによって行われ
る。
【0032】その後、S2〜S6およびS8の実行が何
回か繰り返されるうちに、ヨーレイトγの推定値と実際
値との差の絶対値が設定値A以下となれば、S6の判定
がYESとなり、S7において、パラメータa,bが最
新の候補値で確定される。以上で本ルーチンの一回の実
行が終了する。
【0033】なお付言すれば、本ルーチンは、車輪のコ
ーナリング特性が線形領域にある場合に限って実行さ
れ、非線形領域にある場合には実行が中止されるように
なっている。図9に示すグラフから明らかなように、車
輪スリップ角αと横力FY との対応関係は、常に単調増
加または単調減少を示すものではない。すなわち、同じ
横力FY が車輪のコーナリング特性が線形領域にある状
態でも非線形領域にある状態でも発生するのである。そ
のため、パラメータa,bについて上記のようにして確
定された候補値が必ずしも真の値に精度よく一致すると
は限らない。また、ヨー運動方程式を用いた横力FY
推定精度は一般に、車輪のコーナリング特性が線形領域
にある場合において非線形領域にある場合におけるより
高い。そこで、本ルーチンは、車輪スリップ角αと横力
Y との対応関係が単調増加を示す線形領域にある場合
に限って実行され、これにより、パラメータa,bの同
定精度が向上させられている。なお、車輪のコーナリン
グ特性が現在、非線形領域にあるか否かの推定は、例え
ば、車速Vと操舵角δH とに基づき、車両が定常円旋回
状態にある場合に車両に発生するヨーレイトγを推定
し、その推定ヨーレイトγと実ヨーレイトγとの差が設
定値以上である場合に、車輪のコーナリング特性が非線
形領域にあると判定することによって行うことができ
る。
【0034】ただし、本ルーチンを、車輪のコーナリン
グ特性が線形領域にあるか非線形領域にあるかを問わず
実行することは可能である。この場合、例えば、以下の
処理を追加することが望ましい。すなわち、パラメータ
a,bの各候補値を変更予定範囲全体において変更さ
せ、その結果、真の値である可能性がある候補値対(パ
ラメータaの候補値とbの候補値との組み合わせ)が1
つしか取得されなかった場合には、直ちにその候補値対
を真の値に決定するが、2つ取得された場合には、車輪
のコーナリング特性が現在、線形領域にあるか非線形領
域にあるかを推定し、その推定結果を考慮して、取得さ
れた2つの候補値対から真の値であると予想されるもの
を選択し、その選択された候補値対を真の値に決定する
処理を追加することが望ましいのである。
【0035】次に、車両状態量推定装置12について説
明する。車両状態量推定装置12は、図1に示すよう
に、車輪特性推定装置10と車両挙動安定化制御装置1
4との間に接続されている。車両状態量推定装置12
は、各種センサからの信号と車輪特性推定装置10から
読み込まれたパラメータa,bとに基づき、車体スリッ
プ角速度β’と車体スリップ角βとをそれぞれ推定す
る。車両状態量推定装置12は、前記横運動方程式を用
いて車体スリップ角速度β’を推定し、それの時間積分
値として車体スリップ角βを推定する。
【0036】車両状態量推定装置12は、図1に示すよ
うに、車両状態量推定コントローラ50を備えている。
車両状態量推定コントローラ50は、CPU52,RO
M54およびRAM56を含むコンピュータ58を主体
として構成されている。ROM54には、車両状態量推
定ルーチンを始めとする各種ルーチンが予め記憶されて
おり、CPU52がRAM56を使用しつつそれら各種
ルーチンを実行することにより、それぞれ車両状態量の
一つである車体スリップ角速度β’と車体スリップ角β
とをそれぞれ推定する。
【0037】車両状態量推定ルーチンは図5にフローチ
ャートで表されている。本ルーチンは一定時間が経過す
る毎に実行を繰り返される。なお、本ルーチンは車輪の
コーナリング特性が線形領域にあるか非線形領域にある
かを問わず実行される。したがって、現在非線形領域に
ある場合には、線形領域にあった過去において同定され
たパラメータa,bに基づいて非線形領域にある現在の
車両状態量が推定されることとなる。
【0038】本ルーチンの各回の実行時にはまず、S1
00において、車輪特性推定装置10のRAM36のパ
ラメータメモリからパラメータa,bの現在値がそれぞ
れ読み込まれ、自身のRAM56に記憶される。
【0039】その後、S101において、各種センサに
より、車速V,各輪の車輪速VW ,実ヨーレイトγおよ
び操舵角δH が検出される。続いて、S102におい
て、各輪毎に、車輪スリップ率sと車輪スリップ角αが
それぞれ演算される。なお、車体スリップ角βは、本ス
テップの初回の実行時には0とされ、次回以後の各回の
実行時には、自身により演算された最新の車体スリップ
角βが使用される。
【0040】その後、S103において、それら検出値
と前記パラメータa,bとに基づき、車輪モデルすなわ
ち前記関数式を利用して、各輪毎に現在の横力FY が推
定される。続いて、S104において、推定された4輪
分の横力FY と実ヨーレイトγとに基づき、車両モデル
すなわち前記横運動方程式を利用して車体スリップ角速
度β’が推定され、S105において、それの時間積分
値として車体スリップ角βが推定される。以上で本ルー
チンの一回の実行が終了する。
【0041】次に、車両挙動安定化制御装置14につい
て説明する。車両挙動安定化制御装置14は、車両旋回
時に車両がドリフトアウトまたはスピンする傾向が現れ
た場合には実際にドリフトアウト等が発生することを抑
制し、また、それにもかかわらず実際にドリフトアウト
等が発生した場合には発生したドリフトアウト等が迅速
に解消されるように車両のヨーモーメントを制御し、こ
れによって車両の挙動を安定化させる。
【0042】車両挙動安定化制御装置14は、車両非制
動時に左右輪について独立にブレーキを作動させて左右
輪間に制動力左右差を発生させ、車両に発生している予
定外のヨーモーメントを打ち消すのに適当なヨーモーメ
ントを車両に発生させて車両の挙動を安定化させる。こ
の車両挙動安定化制御装置14は、制動力左右差を図6
に示すマニュアル−電気制御二系統式のブレーキシステ
ムによって発生させる。以下、そのブレーキシステムの
構成を詳細に説明するが、このブレーキシステムは図示
しないアンチロック制御装置およびトラクション制御装
置によっても使用されるものであるため、アンチロック
制御およびトラクション制御に必要な要素も付加されて
おり、それについても併せて説明する。なお、ここに、
アンチロック制御とは、車両制動時に車輪がロックしな
いように車輪の制動トルクを制御することをいい、一
方、トラクション制御とは、車両駆動時に駆動輪がスピ
ンしないように駆動輪の駆動トルクと制動トルクとの少
なくとも一方を制御することをいう。
【0043】このブレーキシステムは、マスタシリンダ
60を備えている。マスタシリンダ60は、互いに独立
した2個の加圧室を直列に備えたタンデム型であり、ブ
レーキ操作部材としてのブレーキペダル62の踏力が液
圧ブースタ64によって倍力されて入力され、それに応
じた高さの液圧をそれら加圧室にそれぞれ発生させる。
【0044】一方の加圧室は主通路66によって左右前
輪14のブレーキシリンダ68にそれぞれ接続されてい
る。主通路66は加圧室から延び出た後に二股状に分岐
させられ、1本の基幹部分と2本の分岐部分とから構成
されている。
【0045】2本の分岐部分の各々には、電磁方向切換
弁であるマスタシリンダカット弁70が設けられてい
る。マスタシリンダカット弁70は、常には、各ブレー
キシリンダ68をマスタシリンダ60に接続するが、車
両挙動安定化制御時とアンチロック制御時とにはマスタ
シリンダ60から遮断し、各々電磁液圧制御弁としての
電磁開閉弁である増圧弁72と減圧弁74とにそれぞれ
接続する。増圧弁72は電磁方向切換弁である電気制御
液圧源選択弁76に接続されている。電気制御液圧源選
択弁76は、常には、増圧弁72を液圧ブースタ64を
経由してリザーバ80に接続するが、車両挙動安定化制
御時にはリザーバ80から遮断して電気制御液圧源82
に接続する。したがって、車両挙動安定化制御時には電
気制御液圧源82によって左右前輪14のブレーキシリ
ンダ68が作動させられる。一方、減圧弁74は前記リ
ザーバ80に接続されている。
【0046】マスタシリンダ60の他方の加圧室は主通
路86によって左右後輪22のブレーキシリンダ68に
それぞれ接続されている。主通路86も前記主通路66
と同様に、加圧室から延び出た後に二股状に分岐させら
れ、1本の基幹部分と2本の分岐部分とから構成されて
いる。
【0047】1本の基幹部分にはプロポーショニングバ
ルブ(図において「P/V」と略記する)90が設けら
れている。プロポーショニングバルブ90はよく知られ
ているように、マスタシリンダ60の液圧が折れ点以下
である領域ではマスタシリンダ60の液圧をそのまま左
右後輪22のブレーキシリンダ68に伝達するが、折れ
点を超えた領域ではマスタシリンダ60の液圧を一定比
率で減圧して左右後輪22のブレーキシリンダ68に伝
達する。
【0048】1本の基幹部分のうちプロポーショニング
バルブ90に対してマスタシリンダ60の側とは反対側
の部分には、電磁方向切換弁であるマスタシリンダカッ
ト弁92が設けられている。マスタシリンダカット弁9
2は、常には、ブレーキシリンダ68をマスタシリンダ
60に接続するが、車両挙動安定化制御時とアンチロッ
ク制御時とトラクション制御時とにはマスタシリンダ6
0から遮断して電磁方向切換弁である電気制御液圧源選
択弁94に接続する。その電気制御液圧源選択弁94
は、常には、マスタシリンダカット弁92を液圧ブース
タ64を経由してリザーバ80に接続するが、車両挙動
安定化制御時とトラクション制御時とにはリザーバ80
から遮断して電気制御液圧源82に接続する。したがっ
て、車両挙動安定化制御時とトラクション制御時とには
電気制御液圧源82によって左右後輪22のブレーキシ
リンダ68が作動させられる。
【0049】前記2本の分岐部分の各々には、電磁液圧
制御弁としての電磁開閉弁である増圧弁72が設けられ
ている。また、各ブレーキシリンダ68には、電磁液圧
制御弁としての電磁開閉弁である減圧弁74を経てリザ
ーバ80が接続されている。
【0050】電気制御液圧源82は、作動液を圧力下に
蓄えるアキュムレータ96,リザーバ80から作動液を
汲み上げてアキュムレータ96に押し込むポンプ98等
から構成されている。ポンプ98の運転状態が図示しな
いコンピュータによって制御され、アキュムレータ96
に常に一定液圧範囲で作動液が蓄えられる。
【0051】車両挙動安定化制御装置14はまた、図1
に示すように、車両挙動安定化コントローラ100を備
えている。車両挙動安定化コントローラ100は、CP
U102,ROM104およびRAM106を含むコン
ピュータ108を主体として構成されている。ROM1
04には、車両挙動安定化ルーチンを始めとする各種ル
ーチンが予め記憶されており、CPU102がRAM1
06を使用しつつそれら各種ルーチンを実行することに
より、左右輪間における制動力左右差を制御する。な
お、図においてブレーキアクチュエータ110は、前記
マスタシリンダカット弁70,92,電気制御液圧源選
択弁76,94,増圧弁72および減圧弁74の総称で
ある。
【0052】車両挙動安定化ルーチンは図7にフローチ
ャートで表されている。本ルーチンは一定時間が経過す
る毎に実行を繰り返される。本ルーチンの各回の実行時
にはまず、S201において、車両状態量推定装置12
のRAM56の車体スリップ角速度メモリから車体スリ
ップ角速度β’の現在値が読み込まれ、自身のRAM1
06に記憶される。次に、S202において、車両状態
量推定装置12のRAM56の車体スリップ角メモリか
ら車体スリップ角βの現在値が読み込まれ、これも自身
のRAM106に記憶される。
【0053】その後、読み込んだ車体スリップ角βおよ
び車体スリップ角速度β’に基づき、車両挙動が不安定
であるか否かが判定される。本実施形態においては、横
軸に車体スリップ角β、縦軸に車体スリップ角速度β’
が取られた座標面において車体スリップ角βの現在値と
車体スリップ角速度β’の現在値との対応点が、互いに
平行な2本の斜線(β/c+β’/d=1なる式で表さ
れる直線とβ/c+β’/d=−1なる式で表される直
線)で囲まれる領域(図8参照)の内側にあるか外側に
あるかによって車両挙動の安定性が判定される。車体ス
リップ角βの現在値と車体スリップ角速度β’の現在値
との対応点がその領域の内側にあるときには、車両挙動
が安定であると判定され、外側にあるときには車両挙動
が不安定であると判定されるのである。今回は車両挙動
が安定していると仮定すれば、S203の判定がNOと
なり、本ルーチンの一回の実行が直ちに終了する。
【0054】これに対し、今回は車両挙動が不安定であ
ると仮定すれば、S203の判定がYESとなり、S2
04において、制動力左右差制御のためのブレーキ圧制
御モードが選択される。S201およびS202におい
て読み込んだ車体スリップ角βと車体スリップ角速度
β’を含む複数の車両旋回情報に基づき、各輪のブレー
キ圧について実現されるべきブレーキ圧制御モードが選
択されるのである。
【0055】具体的には、まず、それら旋回情報に基づ
き、車両に過大なスピン傾向が発生したか、過大なドリ
フトアウト傾向が発生したか否かが判定される。車両に
過大なスピン傾向も過大なドリフトアウト傾向も発生し
ないと判定された場合には、4個の車輪すべてについて
減圧モードが選択される。いずれの車輪についても制動
力を発生させる必要がないからである。これに対し、車
両にスピン傾向が発生したと判定された場合には、左右
前輪のうち旋回外側のものについてのみ制動力を増加さ
せるために増圧モードが選択され、他の車輪については
減圧モードが選択される。これにより、スピン傾向を抑
制するためのヨーモーメントが車両に発生させられる。
また、車両にドリフトアウト傾向が発生したと判定され
た場合には、左右後輪のうち旋回内側のものについての
み制動力を増加させるために増圧モードが選択され、他
の車輪については減圧モードが選択される。これによ
り、ドリフトアウト傾向を抑制するためのヨーモーメン
トが車両に発生させられる。
【0056】その後、S205において、選択されたブ
レーキ圧制御モードを実現するための信号がブレーキア
クチュエータ110に出力される。以上で本ルーチンの
一回の実行が終了する。
【0057】なお、車両挙動安定化制御中にブレーキ操
作が行われた場合には、直ちに車両挙動安定化制御が中
止され、各輪のブレーキシリンダ68がマスタシリンダ
60によって作動させられる通常状態に復帰させられ
る。
【0058】以上の説明から明らかなように、本実施形
態によれば、車輪特性が非線形性を考慮して推定され、
そのようにして推定された車輪特性に従い、かつ、車両
入力に基づいて車両状態量がフィードフォワード系で推
定されるから、車両状態量を迅速かつ正確に推定するこ
とが可能となるという効果が得られる。
【0059】また、本実施形態によれば、比較的安価な
センサである操舵角センサ20,車速センサ22,ヨー
レイトセンサ24および車輪速センサ26によって車体
スリップ角βという比較的検出が困難な車両状態量を推
定することが可能となるという効果も得られる。特に、
ヨーレイトセンサ24を左右輪の車輪速センサ24を流
用した構成とすれば、操舵角センサ20,車速センサ2
2および車輪速センサ26によって車体スリップ角βの
推定が可能となり、車体スリップ角βの推定にかかる装
置コストの大幅な節減が可能となる。
【0060】また、本実施形態においては、推定された
車輪特性が車両状態量の推定に用いられているが、例え
ば、車輪特性を記述する関数式におけるパラメータaは
路面摩擦係数μ、パラメータbはタイヤ剛性に依存して
変化するパラメータであることに着目すれば、パラメー
タaから路面摩擦係数μを推定したり、パラメータbか
らタイヤの空気圧,摩耗量等を推定することもできる。
すなわち、本発明は、車両状態量を推定する技術のみな
らず、路面摩擦係数を推定する技術やタイヤ空気圧,摩
耗量を推定する技術にも応用することができるのであ
る。
【0061】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、ROM34の関数式メモリが本発明にお
ける「関数式記憶手段」の一例を構成し、操舵角センサ
20,車速センサ22,ヨーレイトセンサ24,車輪速
センサ26および車輪特性推定コントローラ30のうち
図2のパラメータ同定ルーチンを実行する部分が、本発
明における「パラメータ同定手段」の一例を構成してい
るのである。
【0062】以上、本発明の実施形態を図面に基づいて
詳細に説明したが、この他にも特許請求の範囲を逸脱す
ることなく、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良
を施した形態で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である車輪特性推定装置
と、それに接続されて使用される車両状態量推定装置お
よび車両挙動安定化制御装置とをそれぞれ示すブロック
図である。
【図2】前記車輪特性推定装置のコンピュータにより実
行されるパラメータ同定ルーチンを示すフローチャート
である。
【図3】前記車輪特性推定装置,車両状態量推定装置お
よび車両挙動安定化制御装置の各々の機能とそれら相互
の関係とをそれぞれ示すブロック図である。
【図4】図2のパラメータ同定ルーチンにおいてパラメ
ータa,bをそれぞれ同定する際に使用する規則を表形
式で説明するための図である。
【図5】前記車両状態量推定装置のコンピュータにより
実行される車両状態量推定ルーチンを示すフローチャー
トである。
【図6】前記車両挙動安定化制御装置が使用するブレー
キシステムを示す系統図である。
【図7】前記車両挙動安定化制御装置のコンピュータに
より実行される車両挙動安定化制御ルーチンを示すフロ
ーチャートである。
【図8】図7のS203の判定の具体例を説明するため
のグラフである。
【図9】車輪特性としての、車輪スリップ角αと車輪ス
リップ率sと車輪横力FY との間に一般的に成立する関
係を示す3次元グラフである。
【図10】車輪特性としての、車輪スリップ角αと車輪
スリップ率sと車輪前後力FX との間に一般的に成立す
る関係を示す3次元グラフである。
【符号の説明】 10 車輪特性推定装置 12 車両状態量推定装置 14 車両挙動安定化制御装置

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車輪状態量と車輪発生力との関係である車
    輪特性を推定する装置であって、 少なくとも1つのパラメータを用いることによって前記
    車輪状態量と車輪発生力との関係を表す関数式であって
    前記車輪特性のうち線形領域のみならず非線形領域をも
    表すことが可能なものを記憶する関数式記憶手段と、 前記車輪状態量を検出し、その検出値と前記関数式とに
    基づいて現在の前記車輪発生力を推定し、その推定車輪
    発生力に基づき、車輪発生力と車両状態量との間に予め
    定められた関係に従って現在の車両状態量を推定し、そ
    の推定車両状態量と実車両状態量との関係から前記パラ
    メータを同定するパラメータ同定手段とを含むことを特
    徴とする車輪特性推定装置。
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