【発明の詳細な説明】
アデノシン誘導体
本発明は、アデノシン誘導体、および特にA1受容体アゴニストの新規使用の
提供に関する。
特に、本発明は式(I):
〔式中、
R1は水素、(C1-4)アルキル、アリル、メタリル、直鎖または分枝鎖(C3-7)ア
ルキニル、(C3-8)シクロアルキル、ヒドロキシ(C4-8)シクロアルキル、フェニ
ル(ここで、フェニルは、原子番号9から35のハロゲン、(C1-4)アルキル、(
C1-4)アルコキシまたはCF3からなる群から選ばれるもので、モノまたは独立
してジ置換されている);またはフェニル(C1-4)アルキル(ここで、フェニル環
は、非置換であるかまたは原子番号9から35のハロゲン、(C1-4)アルキル、(
C1-4)アルコキシまたはCF3からなる群から選ばれるもので、モノまたは独立
してジ置換されている);少なくとも一つのヒドロキシ基または少なくとも二つ
のフェニル環を有する(C1-4)アルキル、エンド−またはエキソ−ビシクロ[2,
2,1]ヘプチルのようなビシクロアルキル、ナフチル(C1-4)アルキル、アセナ
フチレニル(C1-4)アルキルもしくは式Aまたは式B
(式中、
Zは水素、ヒドロキシまたは(C1-4)アルコキシ、
Qは水素またはヒドロキシ、
Aは−CH2−、−O−、−S−または直接結合、
Yは−(CH2)n−または直接結合、
nは1から3の整数、
および式A中の点線は任意の結合を意味する)
で示される基、
R2は水素、(C1-4)アルキル、アミノ、(C3-5)シクロアルキルまたは原子番号
9から35のハロゲンおよび
R3は(C1-4)アルキル]
で示される化合物の新規使用に関する。
これらの化合物のいくつか、例えば、R1がヒドロキシシクロアルキル以外で
あるものは既知であり、例えば公開英国特許出願第2226027A号および欧
州特許出願第EP−0378518号およびEP−0269574号およびUS
P第4,843,066号および第4,985,049号に開示されている。
本明細書に記載の式において、テトラヒドロフラン環の2'、3'、4'および
5'置換体はアデノシンのような立体配置を有する。
式Iで示される化合物の一つの群において、R1はヒドロキシシクロアルキル
以外である。式Iで示される化合物の他の群において、R1はヒドロキシ(C4-8)
シクロアルキルである。
好ましくは式Iで示される化合物は、6−シクロヘキシル−2'−O−メチル
−アデノシンであり、以後化合物Mと称する。
典型的に、好ましい式Iで示される化合物のA1アデノシン活性は、以下のよ
うに決定される:アデノシン受容体への親和性
ブタ線状体膜を、先に、Molecular Pharmacology 29(1986)、331-344頁でH
. Bruns et al.が記載したように調製する。
3H−NECA、非選択的アデノシン受容体アゴニストをA1およびA2受容体
の両方を標識するのに使用する。IC50値はLangmuir方程式に合う荷重非直線
最小二乗(weighted non-linear least-square)曲線による置換曲線に由来し、p
KD値を計算する。
文献と一致して、CPAはA1受容体への結合について有効で非常に選択的な
置換基であることが証明され、CV1808は相対的に弱いが選択的A2受容体
配位子であり、CGS21680はA2受容体に高い有効性および選択性を示す
。
その1.5水和物の形である化合物Mは、A2受容体と比較して、A1受容体に
良好な親和性および高い選択性を示す。
既知の式Iで示される化合物は、抗高血圧剤および冠血管拡張剤として既知で
ある。
更に、式Iで示される化合物は、血小板凝集および白血球活性化の両方を阻害
することにより血管内皮を保護することが知られている。血液脂質濃度もまた減
少させる。更に、式Iで示される化合物は、鬱血性心不全、心筋梗塞または突然
心臓死および腎不全のような高血圧がもたらす疾患に対して防御効果を有する(
欧州特許出願第EP−0378518号および第EP−269574号参照)。
これらの化合物は、神経変性疾患、糖尿病性神経病のような末梢神経病および
末梢血管障害関連障害および/またはニューロン変性関連障害、高トリグリセリ
ド血症/低HDLコレステロール濃度、脂質機能障害、上昇遊離脂肪酸またはイ
ンシュリン非依存性糖尿病を含むI型またはII型糖尿病、不整脈、特に発作性上
室性頻拍および心房細動性頻脈の処置および心筋梗塞に対する防御のためにもま
た既知である。
本願出願人は、式Iで示される化合物が、特に、例えば、疼痛、例えば急性ま
たは慢性疼痛の処置に興味深い鎮痛剤であることを発見した。
式Iで示される化合物の鎮痛活性は、標準動物実験、例えば炎症および神経障
害モデルで、例えば頑固な炎症性機械的過剰無痛覚症[試験a)およびb)]および
慢性神経性疼痛を示す頑固な神経障害性熱痛覚過敏症[試験c)]の減少において
、その鎮痛活性により示唆される。炎症性痛覚過敏症
試験a)フロインドアジュバント誘発痛覚過敏症
ラットの一つの膝関節に関節内にフロインド完全アジュバント(100マイク
ロリットル)を注射する。ラットがその足で耐える荷重は5日まで減少し、抑制
されたままである。この作用は、機械的痛覚過敏症であり、NSAIDおよび麻
酔剤に反応する。式Iで示される化合物を、注射および好ましくは経口で、3−
60マイクログラム/動物体重kgの用量で投与する。注射部位で耐える増加した
荷重を測定し、痛覚過敏症の回復を決定する。
化合物Mは、約3から約60マイクログラム/kgのp.o.投与で、約1時間の活
性時間で特に興味深い活性を示す。3、30および60マイクログラム/kgの用
量の間の反応に明白な差がなく、3から30マイクログラム/kgの範囲で最大効
果に到達することを示唆する。
試験b)テレピン油誘発機械的痛覚過敏症
ラット足(左後)へのテレピン油/パラフィンの局所足底内注射は、局所炎症
反応および機械的刺激(足底圧)に対する逃げ閾値(分離閾値340g)の減少をも
たらす。式Iで示される化合物は、注射3日後の約1から100マイクログラム
/kg p.o.またはs.c.投与の量で、更に閾値読み取りを1および3時間後に行っ
て、活性である。
化合物Mは、30および60マイクログラム/kg経口で活性を示し、30マイ
クログラム/kgで最大効果である。モルヒネは、本試験で、1.2mg/kg s.c.の
ED50値を有する。神経障害性痛覚過敏症
試験c)神経障害性熱痛覚過敏症(Z.Seltzer et al.,Pain,1990,43,205-2
18の原則による)
坐骨神経の一側部分結紮は、ラット足の神経の分布を通して、線維を除去する
。ラットは、機械的および熱刺激に対する痛覚過敏症および部分的脱神経足の異
常な痛みを、自己切開なしに発症する。動物を有機ガラス箱中の薄ガラスプレー
トに置き、ランプ型熱刺激を足底の表面に適用する。足底逃げの潜伏を測定する
。式Iで示される化合物は、神経結紮12から15日後の投与で、約1から約1
00マイクログラム/kg注射(s.c.または好ましくは経口)の用量で活性である。
化合物Mは、熱痛覚過敏症に対して特に活性である。化合物Mは、30および6
0マイクログラム/kgで有意な活性を示し、30マイクログラム/kgで最大効果
である。ED50は約60マイクログラム/kg p.o.である。モルヒネは皮下投与
の場合、約3mg/kgのED50を有する。臨床試験
臨床試験を下記のように行い得る:
疼痛、手術後疼痛または庖疹後神経痛に苦しんでる患者に、式Iで示される化
合物、特に化合物Mを、0.02から5mgの用量でi.v.で投与する。疼痛の軽減
が認められる。
従って、本発明の化合物は鎮痛剤として、例えば急性または慢性疼痛、例えば
慢性神経障害性疼痛に対して有用である。
従って、一つの態様において、本発明は治療的有効量の上記で定義の式Iで示
される化合物を処置を必要とする患者に投与することを含む、疼痛の処置法を提
供する。
他の態様において、本発明は、上記で定義の式Iで示される化合物の、疼痛の
処置に好適な医薬の製造における鎮痛剤としての使用を提供する。
他の態様において、本発明は、疼痛の処置に使用するための上記で定義の式I
で示される化合物を提供する。
別の態様において、本発明は、鎮痛剤として上記で定義の式Iで示される化合
物を、薬学的に許容可能な担体または希釈剤と共に含む鎮痛組成物を提供する。
適用症は、疼痛、例えば組織障害および炎症に関連する急性疼痛(例えば、手
術後疼痛、熱傷疼痛、負傷等)、慢性炎症性疼痛(例えば、関節炎)および慢性神
経障害性疼痛(例えば、糖尿病性神経病、庖疹後神経痛、多発性硬化症、灼熱性
神経痛等)を含む。
上記で示唆の本発明の使用における化合物の用量は、当然、使用する化合物、
疾病の重症度、患者、患者の体重、投与形態および化合物の相対的効果に依存し
て変化する。しかしながら、一般に、動物における充分な結果が、一日当たり約
1から約100マイクログラム/動物体重kgの用量、例えば3から60、例えば
10から60マイクログラム/kg、3日で得られることが示唆される。大型哺乳
類、例えばヒトにおいて、示唆される一日量は約0.1から約10mgであり、簡
便には約0.02から約5mgの単位用量で投与し、このような単位用量は一日1
回以上、例えば一日に2、3、4、5または6回で投与し得るが、好ましくは一
日1または2回である。
上記試験a)において、NSAIDイブプロフェンは約4mg/kg p.o.および
インドメタシンは13mg/kg p.o.のED50を有する。化合物Mは約300倍活
性である。化合物Mについては、好ましい用量範囲は、約0.1mg/日から約1
0mg/日、例えば70kgの成人で、適用症(複数もあり)の重症度および投与の
頻度に依存して、3−30マイクログラム/kgである。
化合物Mは、5mg p.o.までの一回量投与後、ヒトにおいて重い不都合な作用
を有しないことが示されている。
本明細書で使用する場合、“薬学的に許容可能な”という用語は、ヒトおよび
家畜の両方への使用に適した物質を含む。
本発明の化合物は、任意の好適な経路による投与のために、好ましい経路は処
置が必要な疾病に依存し、好ましくは、ヒトの患者が自分自身で単位用量を投与
し得る単位用量形または形態で製剤し得る。有利には、組成物は経口、直腸、局
所、非経口、静脈内または筋肉内投与に適する。
本発明の組成物は、錠剤、カプセル、サシェット、バイアル、粉末、顆粒、口
腔錠、坐薬、再溶解可能粉末、または経口または滅菌非経口溶液または懸濁液の
ような液体製剤の形であり得る。局所製剤はまたどこが好適を考慮する。
投与の一貫性を得るために、本発明の組成物が単位用量の形であることが好ま
しい。
経口投与用単位用量形態は、本発明の化合物0.02−5mgを含む錠剤および
カプセルであり得、結合剤、例えばシロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトー
ル、トラガカントまたはポリビニルピロリドン;充填剤、例えばラクトース、糖
、トウモロコシ澱粉、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン;錠剤潤
滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;崩壊剤、例えば澱粉、架橋ポリビニル
ピロリドン、ナトリウム澱粉グリコラートまたは微小結晶セルロース;またはラ
ウリル硫酸ナトリウムのような薬学的に許容可能な湿潤剤のような既知の賦形剤
を含み得る。
固体経口用組成物は、混合、充填、成形等の既知の方法で製造し得る。反復混
合操作が使用され得、大量の充填剤を使用するこれらの組成物中へ活性剤を分散
させる。
このような操作は、もちろん当分野で既知である。錠剤は、通常の製薬実務で
周知の方法により、特に腸用コーティングで、コーティングし得る。
経口液体製剤は、例えば、エマルジョン、シロップまたはエリキシル剤の形で
あり得、または使用前に水または他の好適な溶媒で再溶解する乾燥製品として存
在し得る。このような液体製剤は、懸濁剤、例えばソルビトール、シロップ、メ
チルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセ
ルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、水酸化食用油:乳濁剤、例えばレシ
チン、モノオレイン酸ソルビタンまたはアカシア;非水性溶媒(食用油を含み得
る)、例えばアーモンド油、分画ココナッツ油、グリセリンのエステルのような
油状エステル、プロピレングリコール、またはエチルアルコール;防腐剤、例え
ばp−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピル、またはソルビン酸;および所
望ならば既知の香料または色素のような既知の添加剤を含み得る。
固体経口組成物、例えば錠剤およびカプセルの例は、下記の通りである:
錠剤は、対応する用量強度のカプセル顆粒から圧縮する。サイズ番号3の黄色
カプセルを化合物Mのカプセル包含に使用し、0.1および5mg用量強度のそれ
ぞれの製剤を下記に示す。
本組成物は、また、活性期間の延長を提供するために、持続性放出形で投与し
得る。既知のドラッグ・デリバリー・システムが持続性放出、例えば被覆ペレッ
トまたは押す−引く浸透系を提供するために使用し得る。
非経口投与について、液体単位用量形を、化合物および滅菌媒体を使用して製
造し、使用する濃度に依存して、媒体中に懸濁または溶解できる。溶液の製造に
おいて、化合物をポリエチレングリコールまたはエタノールに溶解し、注射用水
で希釈し、好適なバイアルまたはアンプルに充填する前に濾過滅菌し、封印する
。有利には、局所麻酔、防腐剤および緩衝化試薬としての補助薬を媒体に溶解で
きる。非経口懸濁液は、化合物を溶解する代わりに懸濁し、滅菌を濾過により行
わない以外、実質的に同様の方法で製造する。化合物は滅菌容器に懸濁する前に
酸化エチレンにさらすことにより滅菌できる。有利には界面活性剤または湿潤剤
を組成物中に含ませ、化合物の均一分散を促進する。
組成物は、投与法に依存して、約0.1%から約99重量%、好ましくは10
から60重量%の活性物質を含み得る。
本発明の化合物Mまたは水和物または他の溶媒との付加物またはその塩は、既
知の局所用賦形剤と組み合わせた局所用製剤として投与し得る。
局所用製剤は、例えば、軟膏、クリームまたはローション、湿布、ジェル、ジ
ェルスティック、スプレーおよびエアロゾルとして存在し得、防腐剤、溶媒のよ
うな好適な既知の添加剤を含み得、軟膏およびクリームにおいて医薬浸透および
皮膚軟化を助ける。製剤は、軟膏基材のクリームおよびローションのためのエタ
ノールまたはオレイルアルコールのような適合した既知の担体を含み得る。
式Iで示される化合物または水和物または他の溶媒との付加物またはその塩に
使用し得る好適なクリーム、ローション、ジェル、軟膏、スプレーまたはエアロ
ゾル製剤は、例えばLeonard Hill Bokks出版のHarry's Cosmeticology、R
emington's Pharmaceutical Sciencesならびに英国および米国薬局方のような
医薬および化粧品の標準教則本に記載のような、当分野で既知の製剤である。
他の態様において、本発明は式Ia
〔式中、
R1'はヒドロキシ基により置換されている(C4-8)シクロアルキル、
R2は上記で定義の意味または好ましくは水素、(C1-4)アルキルまたは原子番号
9から35のハロゲンおよび
R3は上記で定義の意味〕
で示されるアデノシン誘導体を提供する。
式Iaで示される化合物は、エナンチオマーまたはジアステレオマー混合物と
して存在できる。
式Iaにおいて、原子番号9から35のハロゲンはフッ素、塩素または臭素;
(C1-4)アルキルはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル
、i−ブチル、tert−ブチル、特にメチル;および(C4-8)シクロアルキルはシ
クロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオ
クチル、特にシクロヘキシルまたはシクロペンチルである。
式Iaて示される化合物は、式IIa
〔式中、
R2およびR3は上記で定義の意味、および
Xは塩素または臭素〕
で示される化合物を式IIIa
R1'−NH3 IIIa
〔式中、R1'は上記で定義の意味〕
で示される化合物を反応させることを特徴とする工程により製造し得る。
上記工程は、簡便には式IIaで示される化合物と式IIIaで示される化合物と
共に、ジオキサンのような溶媒の存在下、約80℃から120℃、好ましくは沸
点に加熱することにより行う。
本工程の出発物質として使用する式IIaで示される化合物において、Xは特に
塩素である。式IIaで示される化合物およびその製造法は、公開欧州特許出願第
269574号に記載されている。
式Iaで示される化合物の更なる製造法は、式IVa
〔式中、R1'、R2およびR3は上記で定義の意味〕
で示される化合物をテトラブチルアンモニウムフロリド三水和物で処理すること
を含む。
上記反応は、有機溶媒、例えばテトラヒドロフラン中、室温で撹拌しながら行
い得る。式IVaで示される化合物は、式IIaで示される化合物を1,3−ジクロ
ロ−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサンと、アルカリ溶媒、例えば
ピリジン中で処理し、このようにして得た式Va
〔式中、X、R2およびR3は上記で定義した意味〕
で示される化合物を式IIIaで示される化合物と反応させることにより得ること
ができる。
以下の実施例1から8において、すべての温度は摂氏であり、未補正である。実施例1:
6−[(トランス)−4−ヒドロキシシクロヘキシル]−2'−O−メチ
ルアデノシン
6−[(トランス)−4−ヒドロキシシクロヘキシル]−9−プリニル−2'−O
−メチル−3',5'−O−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキシ−1,3
−ジイル)−D−リボース1gを、テトラヒドロフラン20ml中のテトラブチル
アンモニウムフロリド三水和物2gと、室温で15分間撹拌する。続いて、混合
物を蒸発乾燥させ、残渣をシリカゲルから、酢酸エチル/メタノール85:15
の混合物で溶出する。精製生産物をメタノール/酢酸エチルから結晶化する。標
題化合物が1等量のメタノールから結晶化し、121−124℃の融点を有する
。[α]D 20=−50.2°(ジメチルホルムアミド中c=1)
化合物をまたエタノールから再結晶し、高湿度空気に放置した後、1等量の水
と結晶化し得る。融点:114−117°。
[α]D 20=−46.9°(c=1 ジメチルホルムアミド)。
上記工程に出発物質として使用する6−[(トランス)−4−ヒドロキシシクロ
へキシル]−9−プリニル−2'−O−メチル−3',5'−O−(1,1,3,3−テ
トライソプロピル−ジシロキシ−1,3−ジイル)−D−リボースは下記の様に製
造し得る:
6−クロロ−9−プリニル-2'−O−メチル−3',5'−O−(1,1,3,3−
テトライソプロピルジシロキシ−1,3−ジイル)−D−リボース2gを、ジオキ
サン80ml中のトランス−4−ヒドロキシシクロヘキシルアミン1.32gおよ
びN−エチル−ジイソプロピルアミン1.4mlと共に6時間、105℃の油浴中
で撹拌する。続いて、混合物を室温まで冷却し、濾過し、濾液を濃縮乾燥する。
精製のために、このようにして得た混合物を、最初、ヘキサン/酢酸エチル7:
3の混合物および次いで酢酸エチル/メタノール95:5の混合物で、シリカゲ
ルから溶出する。このように精製した油状化合物は、0.3のRf値を有する(酢
酸エチル/メタノール95:5から)。実施例2:
6−[(シス)−4−ヒドロキシシクロヘキシル]−2'−O−メチルア
デノシン
標題化合物は、トランス−4−ヒドロキシシクロヘキシルアミンの代わりにシ
ス−4−ヒドロキシシクロヘキシルアミンを使用した場合、実施例1と同様にし
て得られる。
このようにして得た標題化合物を、酢酸エチル半等量と結晶化させ、110−
111℃の融点を有する。[α]D 20=−48.6°(ジメチルホルムアミド中c=
1)。実施例3:
6−[(1S,トランス)−4−ヒドロキシシクロペンチル]−2'−O−
メチルアデノシン
標題化合物は、トランス−4−ヒドロキシシクロヘキシルアミンの代わりに1
S,トランス−2−ヒドロキシシクロペンチルアミンを使用した場合、実施例1
と同様にして得られる。このようにして得た標題化合物は、以下の特性を有する
:泡状物、酢酸エチル/エタノール75:25中のRf=0.44、[α]D 20=−
25.5°(ジメチルホルムアミド中c=1)。実施例4:
6−[(1R,トランス)−2−ヒドロキシシクロペンチル]−2'−O−
メチルアデノシン
標題化合物は、トランス−4−ヒドロキシシクロヘキシルアミンの代わりに1
R,トランス−2−ヒドロキシシクロペンチルアミンを使用した場合、実施例1
と同様にして得られる。このようにして得た標題化合物は、以下の特性を有する
:融点:164−166°、酢酸エチル/エタノール75:25中のRf=0.4
4、[α]D 20=−80.2°(ジメチルホルムアミド中c=1)。実施例5:
6−[(1S,トランス)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]−2'−O−
メチルアデノシン
標題化合物は、トランス−4−ヒドロキシシクロヘキシルアミンの代わりに1
S,トランス−2−ヒドロキシシクロヘキシルアミンを使用した場合、実施例1
と同様にして得られる。このようにして得た標題化合物は、以下の特性を有する
:泡状物、酢酸エチル/エタノール75:25中のRf=0.42、[α]D 20=−
26.2°(ジメチルホルムアミド中c=1)。実施例6:
6−[(トランス)−4−ヒドロキシシクロヘキシル]−2'−O−エチ
ルアデノシン
実施例5と同様にして製造する。0.4水和物、融点98℃(液化)。[α]D 20=
−58°(ジメチルホルムアミド中c=1)。実施例7:
6−[1S,(トランス)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]−2'−O−
エチルアデノシン
実施例5の記載と同様にして製造する。実施例8:
6−[(1R,トランス)−2−ヒドロキシシクロヘキシル]−2'−O−
メチルアデノシン
標題化合物は、トランス−4−ヒドロキシシクロヘキシルアミンの代わりに1
R,トランス−2−ヒドロキシシクロヘキシルアミンを使用した場合、実施例1
と同様にして得られる。このようにして得た標題化合物は、以下の特性を有する
:泡状物、酢酸エチル/エタノール75:25中のRf=0.42、[α]D 20=−
69.5°(ジメチルホルムアミド中c=1)。
本発明の化合物は、興味深い薬理学的特性を有する。したがって、それらは医
薬として有用である。このために、本発明の化合物は、水和物または有機溶媒、
例えばメタノール、エタノールまたは酢酸エチルとの付加物として使用できる。
最も興味深い式Iaで示される化合物は、上記実施例1に記載の化合物であり、
以下、化合物1と称する。
式Iaで示される化合物は、上記のように鎮痛剤として興味深い。それらは、
他の活性のためにまた興味深い。他の活性の中で、本発明の化合物は、以下の実
験の結果により示唆されるように、抗高血圧活性を有する:
ラット皮質またはブタ脳の皮質または線状体の膜のアデノシンA1およびA2受
容体への結合の、MOLEC.PHARMACOL.29、331-346(1986)に記載のR.F.BRUNS,G
.H.LUおよびT.A.PUGSLEYの方法を使用した測定。本化合物の活性の更なる試験
は、単離、還流ラット腎臓を使用して、以下のパラメーターについて行う:
−レニン分泌
−腎臓血液動学
−HYPERTENSION 4,251-256(1982)に記載のP.M.VANHOUTTE,D.BROWNING,E.C
OEN,T.J.VERBEUREN,L.ZONNEKEYENおよびM.G.COLLISの方法に従った腎臓神
経の電気刺激に続く、神経末端からのノルアドレナリンの遊離の阻害
−Am.J.Physiol.247,R1003-R1008(1984)に記載のJ.F.M.SMITSおよびJ.M.
BRODYの方法に従った、本発明の化合物のi.v.投与または点滴または丸薬として
、本発明の化合物の投与に続く、腹部大動脈および大静脈にカテーテルを移植し
た覚醒、NaCl−枯渇および再蓄積正常血圧および本態性高血圧ラットの、血圧
、心拍数、尿製造および血漿におけるレニン活性。
試験の結果から、レニン分泌および神経末端からのノルアドレナリンの放出の
両方の阻害および直接の血管拡張が、式Iaの化合物の抗高血圧活性に貢献して
いることが推測される。血圧低下と対比して、尿産生および電解質分泌は変化し
ないままである。これから、式Iaで示される化合物は、抗高血圧剤として使用
できるだけでなく、冠血管拡張剤として有効であるということが結論付られる。
更に、血小板凝集および白血球の活動を両方阻害することにより、血管内皮を防
御する。血中脂質濃度もまた低下させる。
上記の適用に、式Iaで示される化合物、実施例1の化合物が好ましい。心臓
防御および鎮痛への適用が好ましい。
更に、式Iaで示される化合物は、例えば、下記の試験a)に記載するような
A2受容体に対するその活性と比較して選択的である、アデノシンA1受容体アゴ
ニスト活性により、および、例えば、下記試験b)に示唆されるように、心臓の
心房−心室(A−V)弁を経由した伝達を延長できる能力により示唆されるように
不整脈の処置にもまた活性である。したがって、それらは、室上部頻脈、特に発
作性室上部頻拍において、洞リズムを回復させ、頻脈性心房細動における心拍数
を減少させ、β−アドレナリン刺激誘発洞頻脈を正常リズムに戻す。
式Iaで示される化合物は、短期間の虚血が、続く虚血からの梗塞に心臓耐性
を付与する方法である、“前条件付”の効果を模倣する。したがって、それらは
不安定狭心症中、付加する血栓溶解治療ありまたはなしの心筋梗塞に対して、ま
たは(例えば)冠状動脈バイパス移植手術、血管形成、心臓移植または非心臓手術
を行っている患者の虚血性疾患における心臓の保護に有用である。
式Iaで示される化合物は、例えば、診断の結果心筋梗塞を起こし易い、また
は既に心筋梗塞に罹患している、患者に投与するのに特に有用である。
式Iaで示される化合物は、グルコース耐性に影響を与えることなく血漿イン
シュリンを更に低下させる。それらはインシュリン作用を促進し、グルコース取
り込みを増加し、脂肪性組織の脂肪分解を減少させ、血漿遊離脂肪酸濃度を減少
させる(下記試験d)参照)。低血漿遊離脂肪酸は、次に低トリグリセリドを導き
、これは増加したHDLコレステロールを導く。
インシュリン節約効果および/または低遊離脂肪酸の活性は、式Iaで示され
る化合物を、I型糖尿病およびII型糖尿病、すなわち非インシュリン依存性糖尿
病の治療に有用にする。
式Iaで示される化合物は、血漿トリグリセリドおよび遊離脂肪酸を減少させ
(下記試験e)参照)、HDLコレステロールを増加させ、すなわち、脂質機能障
害および増加した遊離脂肪酸およびグリセリドに関連する状態および増加したH
DLコレステロールが望ましい場合の処置に有用である。
式Iaで示される化合物は、良好な代謝安定性を示す。
他の態様において、本発明は、式Iaで示される化合物の疼痛の治療への使用
または疼痛の治療に適した医薬の製造における使用を提供する。
他の態様において、疼痛の処置に使用するための上記で定義の式Iaで示され
る化合物を提供する。
更なる態様において、本発明は、上記で定義の式Iaで示される化合物を、薬
学的に許容可能な担体または希釈剤と共に含む、鎮痛組成物を提供する。本出願
人は式Iについて上記で定義した適応症における式Iaで示される化合物の使用
を予期する。
以下の薬理試験は、式Iaで示される化合物の上記の活性を説明する。
a)アデノシン受容体への親和性
ブタ線状体膜を、H.Bruns et al.,Molecular Pharmacology 29(1986)331-34
4頁に記載のように調製する。非選択的アデノシン受容体アゴニストである3H−
NECAを、A1およびA2受容体の両方を標識するのに使用する。IC50値は、
Langmuir方程式に合う荷重非直線最小二乗(weighted non-linear least-square
)曲線による置換曲線に由来し、pKD値を計算する。
式Iaで示される化合物は、A1受容体に対して、例えば、1から500nMの
範囲で親和性を示す。
b)不整脈
アデノシンA1受容体活性化は、例えば、発作的室上部頻脈、頻脈性心房細動
および他の不整脈の症状を、P−R間隔の増加により検出される、心臓の心房−
心室(A−V)弁経由の伝導を遅くすることにより減少する。試験法は、意識があ
る成熟アカゲザルのECG変化の記録を含む。式Iaで示される化合物を、The
Pharmaceutical Journal 244,595-597(1990),C.Clarke et al.らが記載
の試験により、約0.1mg/kgから約1000mg/kg p.o.または0.03から3
0mg/kg i.v.の用量範囲で投与する。例えば、本試験において、化合物1は、
0.1、0.3および0.6mg/kg p.o.の用量で表面心電図(ECG)のP−R間
隔を延長し、AV弁を経由する伝導の遅延を示唆する。上記のように、このよう
な活性は、AV弁再入頻脈の終結および頻脈性心房細動の心拍数の減少をもたら
す。
c)前条件付による梗塞に対する防御
前条件付(5分の虚血、続く10分の回復)は、心臓を、続く虚血(30分)およ
び再還流(3時間)からの梗塞に対して非常に耐性にする。記載の試験は、G.S.Li
u et al,,1991-Circulation(84),1,350-356およびJ.D.Thornton et al,1992
-Circulation(85),659-665の文献に記載されている。式Iaで示される化合物
を、約0.01から10mg/kgの用量で、ウサギにi.v.投与する。本試験におい
て、化合物1 100μg/kgを投与されたウサギは、冠動脈閉塞の30分の期
間により誘発される梗塞から、内因性条件付とほとんど同程度保護された。
d)ラット脂肪性組織のグルコース輸送および脂肪分解
i)脂肪細胞を、正常食餌ラットの精巣上体脂肪パッドから、コラゲナーゼの
消化により単離する。細胞(細胞濃度2%v/v)をアデノシンデアミナーゼ(1U
/ml)および試験化合物、例えば化合物1およびグルコース輸送について示唆さ
れる他の添加物と、37℃で予備インキュベートする。
次いで、[3−3H]グルコース(最終濃度、50μM、0.5μCi/ml)を、3
0分後に添加し、インキュベーションを更に60分続ける。[3−3H]グルコー
スの放射活性の細胞脂質への取り込み(グルコース輸送の測定)を、細胞懸濁液(
0.5ml)のトルエン基本シンチラント(scintillant)5mlでの抽出、続く液体シ
ンチレーション計数により評価する;水性相に残る水溶性代謝物および残余[3
−3H]グルコースは検出されない。
脂肪分解は既知の方法で測定する。一つの方法において、細胞を1μMイソプ
ロテレノール存在下または非存在下でインキュベートし、次いでインキュベーシ
ョンを60分続ける。遠心後、上清をジノニルフタレートを通して細胞から分離
し、脂肪分解を上清に遊離されたグリセロールの酵素的測定により評価する。
式Iaで示される化合物は、0.1から1000nMの濃度範囲で活性である。
化合物1は、ラット脂肪細胞における脂肪分解を、0.1から100nMの濃度
で抑制する。
アデノシンデアミナーゼ(1U/ml)の存在下、化合物1は、インシュリン非存
在下で、細胞脂質への[3−3H]グルコースからの放射活性の取り込みに明白な
影響を有せず、最大剌激インシュリン濃度(8nM)の存在下で最低の効果のみを
有するが、濃度依存的に、0.1から50nMインシュリンの濃度で放射活性の取
り込みの刺激を明白に促進する。これらの観察は、化合物がインシュリンに対す
るグルコース輸送の感受性を増加させることを示唆する。ほぼ最大効果濃度の化
合物1の存在下、脂質への[3−3H]グルコース取り込みのインシュリン剌激に
ついてのEC50は、2から3倍の間に減少する。アデノシンデアミナーゼおよび
1μMイソプロテレノールの存在下、10−50nMの化合物1はインシュリン
への応答の感受性および強さの両方を増加する;インシュリンへのEC50は5倍
まで減少し、最大インシュリン濃度による剌激は、明白に増加する。
ii)正常18時間絶食ラットにおける脂質およびグルコース
2から3カ月齢、体重約250グラムのラットを、22℃の環境温度および1
2/12時間明/暗サイクルに制御された部屋に7日間置く。
プリナ(Purina)ラット餌および水は自由に摂取できる。18時間絶食後、ラッ
ト(5/群)に、試験化合物を0.5%CMC中で胃ゾンデで与える。動物は1.0
ml/体重100gを投与される。投与3時間後、ラットをCO2麻酔し、血液を
心臓穿刺により集める。血清を回収し、グルコース、遊離脂肪酸およびβ−ヒド
ロキシ酪酸測定に使用する。遊離脂肪酸をアシル−COAペルオキシダーゼ比色
酵素検定で、グルコースをグルコースオキシダーゼ法(YSIモデル27、Yell
ow Spring,Oh)でおよびβ−ヒドロキシ酪酸をβ−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲ
ナーゼ−結合酵素検定(Sigma Kit 310-A-St.Louis,Mo.)で測定する。式
Iaで示される化合物は、約1から約5000μg/kgの用量で活性である。
化合物1の遊離脂肪酸を低下させる用量(脂肪細胞における効果の主要結果)は
、2時間後用量で、5から100μg/kgの間である。これは、β−ヒドロキシ
酪酸および血中グルコース濃度の用量依存的減少をもたらす。
iii)非インシュリン依存性糖尿病(NIDD)ラットにおける効果
NIDDスクリーニング試験において、ラット(200−220g)に高脂肪食
を自由に食べさせる。食餌段階において、ストレプトゾトシン40mg/体重kgを
尾静脈から注射する。1週間後、ラットは、一夜絶食後の食後血中グルコースが
200mg/dlより高く、経口グルコース耐性試験の場合、試験3時間後、血中グ
ルコース濃度40から80mg/dlであり、糖尿病と見なされる。4日間後、血中
グルコース濃度が180mg/dlより高い場合、動物をスクリーニングに使用する
。血中グルコース濃度は、YSI Glucose Analyzerで測定する。長期スクリー
ニング試験は下記のように行う:
1日目、ラットから餌を9:00a.m.に奪う:最初の血液グルコース読み取り
を、尾の先を経由して行い、媒体(対象)または化合物(9ラット/処置)を経口投
与する。6時間後、血中グルコース濃度を測定する;およびその直後、ラットに
再び餌を与える。
同じラットに媒体または医薬のいずれかを一日一回、連続11日投与する。血
中グルコースは、4、8および11日の0時間および絶食後投与6時間後に測定
する。式Iaで示される化合物、例えば化合物1 100マイクログラム/kgは
、血中グルコースを明白に減少する血漿遊離脂肪酸の明白な減少をもたらす。
e)増加血清トリグリセリドを特徴とする、非脂肪血症(dyslipidemias)
いくつかの研究は、血清トリグリセリド濃度(および関連するHDLコレステ
ロール濃度の減少)と虚血性心疾患(CHD)の危険性の間に明確な関係があるこ
とを示す(Grundy,Cholesterol and Atherosclerosis:Diagnosis and Trea
tment,Lippincott,Philadelphia(1990))。CHDの危険性を減少するための
試みとしての増加トリグリセリド濃度の減少の価値は、Helsinki Heart Styd
yから明らかになり、それは、ゲンフィブロジルでの処置に続き、LDL−コレ
ステロールおよび全血清トリグリセリドの両方が増加し、HDLコレステロール
が一般に減少している、IIB型高脂血症患者において、深刻な冠状動脈事象の最
大の減少が起こる。式Iaで示される化合物は、約0.03から30(例えば、0
.1から30)mg/kg i.v.および0.1から100(例えば、0.1から10)mg/
kg p.o.の量でアカゲザルで活性である。化合物1は、0.03−0.6mg/kg
i.v.および0.1−1.2mg/kg p.o.の量でアカゲザルで用量依存的および長く
続く血漿遊離脂肪酸およびトリグリセリドの減少を産生する。化合物1の0.6m
g
/kg p.o.の代表的な結果は、300分後の対象と比較して約60%までの遊離
脂肪酸およびトリグリセリドの40%までの減少を示す。
式Iaで示される化合物は、麻酔ラットの平均動脈血圧、徐脈および末梢血管
拡張試験でもまた活性である。
実験は、雄ウィスター・ラット、体重300−350gで、ペントタール麻酔
(120mg/kg i.p.)下、Salzmann et al.(J.Cardiovasc.Pharmacol.12,
451-460,1988)の方法に従って行う。カテーテルを右頸静脈および右大腿静脈、
左心室(右頸動脈を経由して挿入)、左大腿動脈および大動脈(右大腿動脈を経由
して挿入)に配置する。以下の変数を測定または計算する:収縮期、拡張期およ
び平均動脈血圧(mmHg;左大腿動脈、Statham pressure transducer P23Gb)
、脈圧(mmHg)、心拍数(拍動/分;血圧曲線から誘因)、左心室圧の上昇率(dP
/dtmax、mmHg/s;Statham pressure transducer P23Gb)、心拍出量(ml/
分/体重100g、熱希釈法、右頸静脈および大動脈)、全末梢抵抗(dynes-s.cm-5
/100g体重)、表面ECG。大動脈血圧、左心室圧、dP/dtmax、心拍数
および心電図は、Schwarzerポリグラフで連続して記録する。パラメーターは試
験物質の投与30、20、10および2分前および右大腿静脈に試験物質を注入
した1、5、10および15分後に測定する。式Iaで示される化合物は、約0
.001から約10mg/kg動物体重の量で注射する。化合物1は、累積量0.00
3、0.010および0.03mg/kg、用量当たり3匹の動物を使用して試験した
。化合物1は血圧[ED50=49マイクログラム/kg iv]および心拍数を降下し
、全身血管コンダクタンスを増加した。
上記適用に使用した式Iaで示される化合物の用量は、疾病の重症度、罹患者
の体重および化合物の相対的効果によって通常の方法で変化する。しかしながら
、一般の指標として、好適な単位用量は、0.1から10、0.5から200、0
.5から100または0.5から10mgのような0.1から1000mg、例えば0.
1、0.5、1、2、3、4または5mgであり得る;およびこのような単位用量
は、70kgのヒトを含む哺乳類で、0.007から3、0.007から1.4、0.
007から0.14または0.01から0.5mg/kg/日のような約0.001か
ら
20mg/kg/日の範囲、例えば、0.01、0.02、0.04、0.05、0.0
6、0.08、0.1または0.2mg/kg/日である、約0.1から1000mg、例
えば経口または0.003から300mg i.v.となるように、一日一回以上、例
えば、一日2、3、4、5または6回投与し得るが、好ましくは一日当たり1ま
たは2回投与する;およびこのような治療は、数週間または数カ月にわたり得る
。化合物1について、本発明のすべての適用における好ましい用量範囲は、70
kgの成人で0.1mg/日から10mg/日である。好ましい適用症非インシュリン
依存性糖尿病および高トリグリセリド血症のためにヒトにおいて適用される用量
は0.2から2mg/日、経口および心不全および他の心臓疾患の処置には0.2か
ら10mg/日、特に0.5から5mg/日、経口または不整脈、例えば、心房細動
性頻脈のために0.25から5mg i.v.である。
式Iaで示される化合物は、好適な経路(好ましい経路は処置が必要な疾患に
依存する)で投与するためおよび好ましくは、単位用量形態または患者が自分自
身で一回の用量を投与し得る形に製剤し得る。有利には、組成物は、鎮痛使用に
関して、上記のように経口、直腸、局所、非経口、静脈内または筋肉内投与に適
する。
経口投与用単位用量存在形は、式Iaで示される化合物0.05−20mgを含
む錠剤およびカプセルであり得る。
好適には、本発明の化合物、水和物または有機溶媒との付加物は、製剤の約0
.5から約20重量%、好ましくは約1から約10%、例えば2から5%である
。
R'1がヒドロキシ(C4-8)シクロアルキルおよびR3がアルキルである式Iaで
示される化合物は、R1が(C4-8)シクロアルキルおよびR3がアルキルである式
Iで示される化合物を温血動物、例えばラット、イヌおよびヒトに投与した場合
の代謝物として検出される。
従って、化合物Mの投与は、ヒドロキシシクロヘキシル−2'−O−メチルア
デノシンの産生を導く。
更なる態様において、本発明はN6−シクロヘキシル−2'−O−メチルアデノ
シンを温血動物に投与し、N6−ヒドロキシシクロヘキシル−2'−O−メチルア
デノシンを産生させる方法を提供する。
別の態様において、本発明はN6−ヒドロキシシクロアルキル−2'−O−アル
キルアデノシンを、純粋な形、例えば95%以上の純度で提供する。本明細書に
記載の例示化合物は、この基準に合う。
別の態様において、本発明はシクロヘキシル−2'−O−メチルアデノシンを
含まないN6−ヒドロキシシクロヘキシル−2'−O−アルキルアデノシンを提供
する。
他の態様において、本発明は、相間移動触媒の存在下アデノシンを好適なアル
キルスルフェートで処理することを含む、2'−O−アルキルアデノシンの製造
法を提供する。
好ましくは2'−O−アルキルアデノシンは上記で定義の化合物である。
更なる態様において、本発明は、式VI
で示される化合物を、式
(R3)2SO4
で示される化合物の塩基溶液と、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンスルフ
ェートおよび非極性溶媒の存在下反応させ、再結晶により生産物を精製すること
を含む、上記で定義の式Iで示される化合物の製造法を提供する。
必要であれば、反応基を一時的に保護し得る。
好ましくはアルキルスルフェートはジ(C1-4)アルキルスルフェートである。
好ましくは、相移動触媒はテトラブチルアンモニウムハイドロゲンスルフェー
トである。
好ましくは、反応を、例えば下に記載するような非極性溶媒中で行う。
R1が(C3-8)シクロアルキル、R2は水素または(C1-4)アルキルおよびR3が(
C1-4)アルキルである、式Iで示される化合物の群が定義される。
現在まで、式Iで示される化合物の製造は、典型的に6工程を含み、それは2
',3',5'−トリアセチルイノシンの製造;6−クロロ−9−β−D−リボフラ
ノシル−9H−プリンへの塩素化および加水分解;3'−O−および5'−O−位
のテトライソプロピリジシロキサン(TIPDS−CL2)での保護;2'−O−ア
ルキル化およびシリカゲルクロマトグラフィーでの精製;3'−O−および5'−
O−位の脱保護;およびR1NH2との反応および式Iで示される化合物を得るた
めの再結晶から成る。
本出願人は、式Iで示される化合物が、3'−O−および5'−O−ジシロキサ
ン保護および脱保護またはシリカゲルクロマトグラフィーの必要性なしに、良好
な収率よび純度で製造できることを発見した。出願人は、先行技術のイノシン−
2',3',5'−トリアセテート出発物質法を、有利に、親油性イノシン−2',3'
,5'−トリプロピオネートに変え得、2倍の効率および望ましくないピリジン溶
媒の除去を可能にすることを発見した。
本発明において、式Iで示される化合物は、相間移動触媒の存在下、下記の反
応スキームに従って製造する:
〔式中、R1、R2およびR3は上記で定義の意味〕。
式Iで示される化合物は、式(VI)で示される化合物の塩基性水性溶液を、ジ−
(C1-4)アルキルスルフェートと、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンスル
フェートおよび有機水不溶性溶媒の存在下で反応させて製造し得る。塩基性水性
溶液の製造に使用する塩基は、好ましくは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリ
ウムのような水酸化アルカリ金属である。溶媒は、式Iで示される化合物が可溶
性である、水不溶性または本質的に不溶性の溶媒、例えば二塩化メチレンまたは
t−アミルアルコールである。反応が、約−20℃から約50℃、特に室温で行
われるのがまた好ましい。反応時間は厳密ではないが、好ましくは約5から10
時間、特に約7から8時間にわたって行う。式Iで示される粗化合物を蒸発によ
り単離し、続いて水および不活性溶媒、好ましくはトルエンの1:1混合物と、
室温で5−7時間撹拌し、次いで濾過および乾燥する。純粋な化合物は、分画結
晶化、好ましくは:
1)粗化合物を80℃で溶媒に溶解し、約55℃で約1時間加熱し、室温に冷却
し、純粋な化合物を種晶添加し、濾過することによる、不活性溶媒、例えばトル
エンからの再結晶;
2)工程1)の再結晶の繰り返してあるが、室温に冷却する前に約65℃で加熱
する;および
3)還流温度で溶解し、水で希釈し、種晶添加、次いで濾過および乾燥すること
による、100%エチルアルコールからの再結晶
により得られ得る。
式VIで示される化合物の多くは既知であり、前記USP4,843,066およ
びUSP4,985,409のような文献に記載の方法により製造し得る。式VIで
示される化合物は、以下の好ましい反応スキームに従って、上記のように、有利
に製造し得る:
〔式中、R1およびR2は上記で定義の意味〕。
式VIで示される化合物は、式VIIで示されるイノシンを、無水プロピオン酸で
アシル化し、式VIIIで示される、2'−O−、3'−O−、5'−O−保護化合物
を形成する;式VIIIで示される化合物を、塩化チオニルでハロゲン化し、式IXで
示される中間体を形成する;および式IXで示される化合物を同時にアミノ化およ
び加水分解することにより製造し得る。イノシンのアシル化は、好ましくはトル
エン、トリブチルアミンおよび4−ジメチルアミノピリジンの混合物中で、10
0°から110℃の温度で、4から5時間にわたって行う。式VIIIで示される化
合物をヘタンによる沈殿により単離する。式VIIIで示される化合物のハロゲン化
は、好ましくはトルエンおよびN,N−ジメチルホルムアミドの混合物中、約6
0°から70℃の温度で3から4時間にわたって行い、式IXで示される化合物の
溶液を水および食塩水で洗浄後に使用し得る。式IXで示される中間体のアミノ化
および同時の加水分解は、好ましくはアミンR1H2を添加し、100°から11
0℃の温度で、15から20時間にわたり反応させることにより行う。式VIで示
される化合物は、室温での濾過により単離し、再結晶により精製する。
本発明の工程を、下記実施例により説明する。方法実施例1: N6−シクロヘキシル−2'−O−メチルアデノシン 工程A イノシン−2',3',5'−トリプロピオネート
イノシン271.2g、トリブチルアミン966ml、4−ジメチルアミノピリ
ジン3.30gおよびトルエン600mlの混合物を、内部温度104−105℃
に加熱する;35分にわたり、無水プロピオン酸453mlを、温度が104−1
05℃に保たれるような速度で添加する。混合物をその温度で更に4時間撹拌し
た後、混合物を氷浴で5−10℃に冷却する;ヘプタン1000mlを添加する。
得られる懸濁液を室温(20−22℃)で30分撹拌し、例えば、ブフナー漏斗で
濾過する。固体を、各150mlで3分割した全450mlのヘプタンで洗浄し、4
5−50℃(25mmHg)で一晩(14時間)乾燥し、イノシン−2',3',5'−トリ
プロピオネート425.9gを、白色固体として産生する(MP 171−172
℃;収率96.5%)。工程B N6−シクロヘキシルアデノシン
イノシン−2',3',5'−トリプロピオネート270.6g、N,N−ジメチル
ホルムアミド240mlおよびトルエン600mlの混合物を65℃で加熱する;1
時間にわたり、塩化チオニル67.84mlを、内部温度が62−65℃に保たれ
る速度で添加する。混合物をその温度で更に2.5時間撹拌し、次いで氷浴で1
0℃に冷却する。予め氷浴で10−15℃に冷却した水600mlを、温度が20
℃以下に保たれる速度で添加した後、有機相を分離し、各200mlで4分割した
全800mlの10%水性塩化ナトリウムで洗浄する。粗6−クロロ−9−(2,3
,5−トリ−O−プロピオニル−β−リボフラノシル)−9H−プリンを含む有
機相を撹拌しながら、105℃に加熱したシクロヘキシルアミン620mlに、2
時間にわたり、内部温度が105℃に保たれる速度で添加する。この混合物をそ
の温度で更に17時間撹拌した後、室温(25℃)に約2時間にわたり、十分撹拌
しながら冷却し、次いで、例えばブフナー漏斗で溶液を濾過する。N6−シクロ
ヘキシルアデノシンおよびシクロヘキシルアミン塩酸塩含有固体を、各115ml
に4分割した全460mlのトルエンで洗浄し、撹拌機を備えた51フラスコに静
かに移動する。水性飽和炭酸水素ナトリウム溶液2リットルおよび酢酸エチル2
.5リットル添加後、混合物をすべての固体が溶解するまで(約10−15分)撹
拌する。有機相を分離する;水性相をそれぞれ1リットルおよび500mlに2分
割した酢酸エチル1.5リットルで抽出する。
有機相を合わせ、約3リットルの酢酸エチルがなくなるまで蒸発(40℃、1
00−200mbar)させる。残渣に、ヘプタン500mlを添加する;得られる混
合物を30分撹拌する。固体をブフナー漏斗で分離し、各100mlに3分割した
全300mlのヘプタンで洗浄する。次いで、固体を45−50℃(30−35mba
r)で、約3時間乾燥させ、粗N6−シクロヘキシルアデノシン148gを白色固
体として産生する。これを撹拌機を備えた1リットル丸底フラスコに移し、95
%エタノール175mlを添加する。懸濁液を15−20分撹拌し、95%エタノ
ール175mlを添加する。5分撹拌した後、懸濁液を氷浴で冷却し、更に15分
撹拌する。この懸濁液をフブナー漏斗で濾過し、各25mlに2分割した全50ml
のtert−ブチルメチルエーテルで洗浄する。
濾過固体を45−50℃(30−35mbar)で14時間乾燥し、N6−シクロヘ
キシルアデノシン130gを白色固体として得る(m.p.185−187℃;収率
60%)。工程C N6−シクロヘキシル−2'−O−メチルアデノシン
N6−シクロヘキシルアデノシン94.33gおよび5%水性水酸化ナトリウム
720gを室温(24−25℃)で、固体が全て溶解するまで(約5分)撹拌する。
付加漏斗を使用して、ジクロロメタン850mlおよびトリブチルアンモニウムハ
イドロゲンスルフェート5.5gを添加し、続いて硫酸ジメチル61.3gを5−
10分にわたって添加し、その間内部温度を24−25℃に維持する。付加漏斗
を更にジクロロメタン50mlで洗浄し、それを反応容器に添加する。2相混合物
を24−25℃(内部温度)で7.5時間撹拌した後、有機層を分離し、40℃(2
70−290mbar)で溶媒が蒸留しなくなるまで蒸発させる。残渣をトルエン2
00mlに溶解し、45−50℃(30mmHg)で、また溶媒が蒸留しなくなるまで
蒸発させる。
上記粗材料およびトルエン2470mlの混合物を室温で10分撹拌し、次いで
、水2470mlを22分にわたり添加する。得られる懸濁液を室温で更に6時間
撹拌し、固体を、例えば吸引ブフナー漏斗で濾過して回収する。固体をトルエン
114mlおよび各95mlで3分割した全285mlの水で洗浄し、固体を48−5
0℃(25mmHg)で一晩(14時間)乾燥させ、白色固体53.0gを産生する。ト
ルエン397ml中のこの固体の懸濁液を撹拌しながら80℃に加熱し、透明溶液
にし、45分にわたり56℃に冷却して、純粋産物10mgを種晶添加する。混合
物を55−56℃で45分撹拌し、次いで1時間にわたり、室温に冷却しする。
室温で更に1時間撹拌した後、固体を、例えば吸引フブナー漏斗で濾過して回収
する。固体を、各25mlに3分割した全75mlのトルエンで洗浄し、白色固体6
0gを産生する。トルエン159ml中のこの固体の懸濁液を、再び80℃に加熱
し、上記種晶添加工程を65°から66℃で行う。
1時間にわたり室温で冷却し、同じ温度で更に1時間撹拌した後、固体を濾過
および各14mlに3分割した全42mlのトルエンで洗浄し、48−50℃(25m
mHg)で一晩(14時間)乾燥し、白色固体57.7gを産生する。固体および10
0%エタノール122mlを還流温度に撹拌しながら加熱し、透明な溶液を得、予
め55℃に暖めた水288mlを25分にわたり添加する。混合物を55℃に冷却
し、純粋産物20mgで種晶添加する。混合物を1時間にわたり室温に冷却し、こ
の温度で一晩(16時間)撹拌する。固体を吸引ブフナー漏斗での濾過により回収
し、各19mlに3分割した全57mlの100%エタノールおよび水の1:2.3
6混合物(v/v)で洗浄する。固体を室温(29mmHg)で乾燥し、生産物62.2g
を1.5水和物の形の白色固体として得る(m.p.88°−91℃;収率42.5%
)。方法実施例2:
上記方法に従うが、等量のN6−シクロペンチルアデノシンを使用して、N6−
シクロペンチル−2'−O−メチルアデノシンを得る。方法実施例3:
方法実施例1の工程に従うが、工程C)のジクロロメタンをtert−アミルアル
コールに変えて、最初のエタノール/水結晶化に続き、生産物をエタノールおよ
び水から再結晶する。N6−シクロヘキシル−2'−O−メチルアデノシン32.
1g(収率約30%)が、98%以上の純度で得られる。
本発明の工程は、現在までに既知の方法より、時間的および経済的により実用
的である。方法は、N6−シクロヘキシルアデノシンの、相移動状態下での選択
的2'−O−メチル化および、2'−O−メチル誘導体の精製法を提供する。高価
な保護基およびクロマトグラフィーの使用が避けられる。
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(31)優先権主張番号 9416693.1
(32)優先日 1994年8月18日
(33)優先権主張国 イギリス(GB)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB
,GE,HU,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LK,LR,LT,LU,LV,MD,MG,M
N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU
,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TT,
UA,UG,US,UZ,VN
(72)発明者 プラシャド,マハビール
アメリカ合衆国07843ニュージャージー州
ホパットコング、ウエスト・エンド・ア
ベニュー 228番
(72)発明者 カパ,プラサド・ケイ
アメリカ合衆国07054ニュージャージー州
パーシッパニー、フェイバー・ロード4
番