【発明の詳細な説明】
発泡しうるゼラチンカプセル充填物
本発明は、逆流食道炎、胃炎又は消化性潰瘍を治療するための薬学的製品、特
に組成物に関する。
逆流食道炎は、少量の胃液、食物及び/又は胆汁酸が食道の下方部分に入り、
胸やけの形で現れうる苦痛を伴う食道の炎症を引き起こすときに生じる。
逆流食道炎の問題の解決策の一は、胃酸との接触時に胃の内容物中に浮かぶ炭
酸塩化されたゼラチン状のフォーム又はラフトを発生させる調合剤の投薬を含む
。逆流が生じる際に、胃の内容物より先に食道に入って、粘膜を更なる刺激から
保護するのがこのラフトである。公知のこの種の調合剤には、アルギン酸、炭酸
水素ナトリウム及び制酸剤を含む粉末又は錠剤状の固体調合剤又はアルギン酸ナ
トリウム、炭酸水素ナトリウム及びGAVISCON(Reckitt & Colman Products Ltd製
)という商標名で市販されている炭酸カルシウムを含む液体調合剤が含まれる。
本出願人らによる英国特許第1524740号にはそのような液体調合剤が記載
されている。本出願人らによる対応する独国特許第2738014C2号には、
ラフトの剛性を評価するために使用する針入度試験が記載されている。記載され
ている方法は、ASTM D217-68“潤滑グリースの円錐針入度の標準方法”に基づく
。前記特許に記載されている方法においては、針入度計の軽量円錐集成体を開放
してラフトに針入させ、針入した深さを測定する。
本出願人らによる米国特許第4172120号には、長期間胃のなかに保有さ
れるので十二指腸に逆流された胆汁との結合に有効であるコレスチラミン(chole
styramine)を含む調合剤が記載されている。この調合剤は、アルギン酸及び/又
はアルギン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムを含み、飲み込まれたときに胃酸
と反応して、胃のなかで胆汁酸を吸収しうるコレスチラミンを十分ゆるく保有す
る炭酸塩化されたラフトを形成する。
炭酸塩化されたアルギン酸のラフトタイプの製品は、アルギン酸マグネシウム
、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム及び制酸剤物質として水酸化アルミニウ
ム/炭酸マグネシウム共乾燥ゲルを含むものとして欧州特許第0179858B
1
号に記載されているALGICON(Rhone-Poulenc Rorer製)により更に例示しうる。
本発明によれば、(a)アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、キサンタン、
ゲラン(gellan)、カラゲーナン(carageenan)及びそれらの混合物から選択される
高分子物質、(b)炭酸塩又は炭酸水素塩、(c)オイルを基剤とする又は親水
性物質を基剤とする液体ビヒクルを含む充填物を有する咀嚼しうる軟質ゼラチン
カプセルの形の、逆流食道炎、胃炎又は消化性潰瘍を治療するための薬学的製品
であって、経口的に摂取される際に、ゼラチンカプセルシェルが破裂して充填物
が胃のなかの酸性内容物と反応し、以下に定義するような針入度試験において完
全な針入度ではないような剛性の炭酸塩化された浮遊するゼラチン状のラフトを
生成する薬学的製品が提供される。
完全な針入度とは、針入度計の円錐状部分が完全にラフトを通り抜けることを
意味する。
好ましくは、高分子物質はアルギン酸のナトリウム、カリウム、アンモニウム
、マグネシウム又はカルシウム塩又はプロピレングリコールエステル又はそれら
の混合物である。
高分子物質がアルギン酸又はそれらの塩又はエステルの場合には、たとえ組成
物が架橋剤として作用する2価のカルシウム又は3価のアルミニウムイオン源を
含んでも改良された強度のラフトが得られることが示された。適するカルシウム
イオン源は炭酸塩、乳酸塩、塩化物、グルコネート、燐酸塩、燐酸水素塩、硫酸
塩、酒石酸塩又はくえん酸塩から誘導されたものである。適するアルミニウムイ
オン源は、炭酸塩、乳酸塩、グリシネート又は燐酸塩から又は水酸化炭酸マグネ
シウムアルミニウム、マガルドレート(Magaldrate)、水酸化炭酸ナトリウムアル
ミニウム又は珪酸ナトリウムアルミニウムから誘導されたものである。便宜上、
イオンとして計算されたカルシウム塩又はアルミニウム化合物のアルギン酸又は
アルギン酸塩に対する相対的な重量は、それぞれ4乃至120Ca2+対500アル
ギン酸塩-又は2乃至80Al3+対500アルギン酸塩-である。
適する炭酸塩又は炭酸水素塩は、炭酸又は炭酸水素カリウム、炭酸又は炭酸水
素ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸グリシンナトリウム、炭酸マグネシウム又
は炭酸アルミニウムである。炭酸塩又は炭酸水素塩は、高分子物質が胃のなかで
胃酸と接触する際に生成するゲルを浮遊させるのに十分な量のガス(二酸化炭素
)を提供する量だけ存在する。好ましくは、イオンとして計算された炭酸塩又は
炭酸水素塩の高分子物質に対する相対的な重量は35乃至300CO3 2-又はHCO3 -
対500高分子物質である。
胃酸と接触したときに形成される炭酸塩化されたラフトの剛性及び厚さは、炭
酸塩又は炭酸水素塩の高分子物質に対する比及び高分子物質のグレードに依存す
るであろうことは理解されよう。
適するオイルを基剤とする液体ビヒクルは、大豆油、分別されたヤシ油、鉱物
油、トリアセチン、エチルオレエート、水素化天然油及びそれらの混合物のよう
な天然油である。
適する親水性物質を基剤とする液体ビヒクルは、ポリエチレングリコール(P
EG)、特にPEG400及びPEG600、グリコフロール(glycofurol)、ポ
リグリセロール、プロピレングリコール、トランスクトール(Transcutol)、ポリ
ソルベート及びプロピレンカーボネート及びそれらの混合物である。
本発明は又、胃のなかの酸性内容物と接触した際に、浮遊するゼラチン状のラ
フトを生成しうる有効量の製品の投薬を含む逆流食道炎、胃炎又は消化性潰瘍を
治療する方法であって、前記ラフトが以下に定義するような針入度試験において
完全な針入度ではないような剛性であり、前記製品が、(a)アルギン酸、アル
ギン酸塩、ペクチン、キサンタン、ゲラン、カラゲーナン及びそれらの混合物か
ら選択される高分子物質、(b)炭酸塩又は炭酸水素塩、(c)オイルを基剤と
する又は親水性物質を基剤とする液体ビヒクルを含む充填物を有する咀嚼しうる
軟質ゼラチンカプセルの形である方法も含む。
ゼラチンカプセルは、例えば、Pharmaceutical Technology(1985年9月)のH.
シーガー(Seager)による文献に開示されているような従来の方法及び装置を用い
て同時に形成及び充填されうる。従って液体ビヒクルを含む充填物質の全ての成
分を、必要であれば加熱しながら、所望のコンシステンシーの充填物及び所望の
一様性が得られるまで混合する。カプセル化の機械は、R P Schererカプセル化
機が適する。
充填物の固体成分の液体ビヒクル中への一様な分散を容易にするためには、充
填物中に界面活性剤を混合しうる。
充填物において、高分子物質は液体充填物に増粘効果を及ぼしうる。この増粘
効果は、所望であれば、水素化植物油、グリセリルモノステアレート、グリセリ
ルモノパルミテート、蜜蝋(又はその他の高融点脂肪又は蝋)のような増粘剤又
はコロイド状二酸化珪素のような分散増粘剤を含むことにより更に増大しうる。
親水性ビヒクルの場合には、適する増粘剤は1種以上高分子量PEGである。
カプセルは、ヒトがその後咀嚼することにより容易に摂取されるような形状及
び寸法であることが適するであろう。
本発明を以下の実施例により説明する。実施例1
標準ゼラチンシェル内に以下の充填物を有するカプセルを調製した。
量/カプセル
アルギン酸ナトリウム(Protanal LF5/60) 500mg
炭酸水素ナトリウムBP 100mg
炭酸カルシウム 30mg
分別ヤシ油BP 600mg
レシチン 12mg
コロイド状二酸化珪素 34mg
ソルビタンの脂肪酸エステル 34mg
ポリソルベート80BP 20mg
香料、着色料、甘味料 80mg
1410mg実施例2
充填物質内の炭酸カルシウムの量を100mgに増大させたこと以外は実施例1
と同様にしてカプセルを調製した。実施例3
以下の充填物を有するカプセルを実施例1と同様にして調製した。
量/カプセル
アルギン酸ナトリウム 500mg
キサンタンガム 100mg
炭酸水素ナトリウム 100mg
炭酸カルシウム 100mg
エーロジル(aerosil) 35mg
香料、甘味料 適量
大豆油 適量加えて全量とする
1500mg実施例4
以下の充填物を有するカプセルを実施例1と同様にして調製した。
量/カプセル
アルギン酸 500mg
カラゲーナン 100mg
炭酸ナトリウム 100mg
塩化カルシウム 100mg
エーロジル 35mg
ポリソルベート80 20mg
香料、甘味料 適量
分別ヤシ油 適量加えて全量とする
1500mg実施例5
以下の充填物を有するカプセルを実施例1と同様にして調製した。
量/カプセル
アルギン酸マグネシウム 500mg
ゲランガム 50mg
マガルドレート 200mg
炭酸水素ナトリウム 150mg
グリセリルモノステアレート 100mg
ポリソルベート80 20mg
香料、甘味料 適量
分別ヤシ油 適量加えて全量とする
1600mg実施例6
以下の充填物を有するカプセルを実施例1と同様にして調製した。
量/カプセル
アルギン酸 300mg
ペクチン 300mg
炭酸カルシウム 150mg
炭酸水素ナトリウム 150mg
水素化植物油 150mg
レシチン 15mg
香料、甘味料 適量
大豆油 適量加えて全量とする
1550mg
ラフト針入度試験
本発明の製品により製造されたラフトの剛性を、ASTM D217-68の方法を改作し
た円錐針入度試験により評価する。この方法は、本出願人らによる独国特許第D
E273801C2号においてアルギン酸塩ラフトの剛性の測定について既に記
載されている。本出願においては、図1に示されるような26.0gの金属円錐
集成体(ASTM D217-68の150.0gの重量と比較されたい)を使用した。ラフト試料の調製
ラフトは以下のようにして調製した。6個のラフトを調製するのに十分なバル
クの試料を調製した。
適量の製品(高分子物質1gの6投与量に相当)を秤量して、既に秤量済の
250mlのトールビーカー(高さ120mm及び直径60mm)に入れた。120ml
の脱イオン水を添加し、直径2.54cm(1インチ)のTurbular Unit及び角孔高
剪断スクリーンを具備するSilverson Model L4Rホモジナイザーを用い、混合物
を5分間均質化させた。ホモジナイザーの速度は4/5000〜5200rpmの
速度に設定した。Liquid Gaviscon及びAlgicon Mintの場合には、120mlの製
品を秤量して250mlのトールビーカーに入れた。120mlの脱イオン水を添加
し、前述のように混合物を5分間均質化させた。
均質化後、1gの高分子物質に相当する量の均質化混合物を、60mlの目盛り
とロックチップ(Iok tip)のある50mlのPlastipakシリンジで、37℃に予熱さ
れた250mlの浅いビーカー(高さ94mm及び直径67mm)内の150mlの0.1M
のHClに添加した。ラフトを30分間放置した。その後、ラフトの深さを測定し
、円錐針入度試験を実施した。方法
26.0gの前述のような円錐形状の針入度計(Surrey EnglandのStanhope-Set
a)を用いて円錐針入度試験を実施した。円錐部分の先端を注意深くラフトの上部
表面に接触させて、ダイヤルゲージのアームを円錐集成体の上部表面に接触させ
、ダイヤルゲージを零の目盛りに併せた。ばねを具備する開放ボタンを約1秒押
し下げ、円錐集成体をラフト内に下降させた。ダイヤルゲージの中心ノブを回し
て、マイクロメータのアームが再び円錐集成体の上部表面に十分接触するように
した。針入度の深さを記録した。この深さはラフトの剛性に逆比例する。5個の
ラフトの評価の平均を計算した。実験結果
実施例1及び2の製品より製造されたラフトの剛性を前述の方法により評価し
た。
2つの比較例(a)10ml当たり500mgのアルギン酸ナトリウム、267mg
の炭酸水素ナトリウム、160mgの炭酸カルシウムを含むLiquid Gaviscon及び
(b)5ml当たり250mgのアルギン酸マグネシウム、140mgの水酸化アルミ
ニウム/炭酸マグネシウム共乾燥ゲル、175mgの炭酸マグネシウム、50mgの
炭酸水素カリウムを含むAlgicon懸濁液についても試験を実施した。
得られた結果を以下の表に示す。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ),AM,
AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,CH,C
N,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE
,HU,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,
LR,LT,LU,LV,MD,MG,MN,MW,N
L,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE
,SI,SK,TJ,TT,UA,US,UZ,VN
(72)発明者 ハッチソン キース グレイム
イギリス グロースターシャー ジーエル
7 5ビーワイ ケニングトン コーニガ
ー ロード 8