【発明の詳細な説明】
(L)−2−クロルプロピオン酸及びその塩の製法
本発明は、(L)−2−クロルプロピオン酸及びそのアルカリ金属−、アルカ
リ土類金属−又はアンモニウム塩の新規製法に関する。
特開昭(JP)57−094295号公報、特開昭(JP)62−20579
7号公報、ヨーロッパ特許(EP−A)第196625号明細書、特開昭(JP
)61−111699号公報及びAppl.Biochem.Biotechnol.9.(3),(1984)255か
ら、ラセミ性2−クロルプロピオン酸エステルを、酵素を用いてエナンチオ選択
的に分割することは公知である。勿論、この場合の欠点は、たった50%の最大
可能収率と並んで、生じた2−クロルプロピオネートの不充分なエナンチオマー
純度である。
更に、ヨーロッパ特許(EP−A)第257716号明細書中に、D,L−2
−ブロムプロピオン酸メチルエステルをラセミ化合物として使用し、2−相系中
で、カンディダ シリンドラセア(Candida cylindracea)リパーゼを用いて、
L−(−)−2−ブロムプロピオン酸メチルエステルに変える連続的な方法が教
示されている。しかし、この方法では、加水分解生成物は単離されない。
更に、S.K.Dahod及びP.Sinta-Manganoは、Biotechnol.Bioeng.30(8),995(1987
)中に、四塩化炭素の存在下でのL−2−クロルプロピオン酸メチルエステルの
リパーゼ−触媒作用による加水分解を記載している。この場合の欠点は、塩素化
溶剤の使用と並んで、95%のみのエナンチオマー純度で約30%の僅かな収率
である。
更に、ヨーロッパ特許(EP−A)第511526号明細書は、水及びエステ
ルのための水と充分に混合不可能な有機溶剤からなる2−相系中でのラセミ性2
−クロルプロピオン酸エステルの酵素加水分解のための方法を記載している。こ
の方法は、非常に経費がかかる。というのも、有機相を何度も分離除去し、ヒド
ロラーゼと接触させ、かつ再び戻し導入しなければならないからである。比較的
長い反応時間にも関わらず、不完全な反応のみが起こり、かつエナンチオマー純
度の高い生成物が得られないので、この方法は、(L)−2−クロルプロピオン
酸及びそのナトリウム塩の工業的製造のためには、不適当である。
(L)−ナトリウム−2−クロルプロピオネート及び(L)−2−クロルプロ
ピオン酸は、従来、(L)−2−クロルプロピオン酸イソブチルエステルのアル
カリ性加水分解により製造された。しかし、この場合、しばしば質的に劣る生成
物(エナンチオマー過剰率約90〜95%)が生じ、これは更に、なお5〜10
%の乳酸を副産物として含有する。
従って、本発明の課題は、可能な限り高い化学的及び光学的純度(少なくとも
約98%のエナンチオマー過剰率及び1%を下回る乳酸)を伴う(L)−2−ク
ロルプロピオン酸及び(L)−ナトリウム−2−クロルプロピオネートの簡単な
製法であった。
相応して、L−クロルプロピオン酸イソブチルエステルを、4〜8のpH−値
で、シュードモナス(Pseudomonas)spec.DSM8246(*)に由来する
リパーゼの存在下に加水分解し、かつ光学活性反応生成物を直ちに、又はこの塩
を自体慣用の方法で酸に移行させた後に、反応混合物から単離するか、又はその
場で更に反応させることを特徴とする、(L)−2−クロルプロピオン酸及びそ
のアルカリ金属−、アルカリ土類金属−又はアンモニウム塩の製法を発見した。
(*)DSM=Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen G
mbH; Mascheroder Weg 1B,38124 Braunschweig
L−クロルプロピオン酸イソブチルエステルの製造を、例えば、生物工学的に
、ヨーロッパ特許(EP−A)第069291号明細書から公知の方法に従い製
造することができるD−乳酸から出発して行うのが有利である。その際、グルコ
ース水溶液、自己分解されたビール酵母、ビタミン、触媒量のリン酸及び生ずる
乳酸のための緩衝剤、例えば炭酸カルシウムからなる
混合物を、乳酸菌の添加下に、約45℃で発酵させる。発酵ブイヨンのpH−値
は、4〜6であるのが有利である。二酸化炭素の排気下に、乳酸塩が生じ、これ
は酸、有利に水性濃硫酸の添加により、D−乳酸に移行される。引き続き、D−
乳酸を、イソブタノールで抽出する。その後、得られたD−乳酸−溶液を濃縮さ
せる。その際、乳酸の一部が、既にエステル化される。乳酸の残留量を、酸性触
媒下でエステル化し、その際、酸としては、硫酸が好適である(例えば、ヨーロ
ッパ特許(EP−A)第287426号明細書、ドイッ特許(DE−A)第32
14697号明細書及びドイツ特許(DE−A)第3433400号明細書参照
)。引き続き、生じた反応水を未反応のイソブタノールと共に留去する。
得られたD−乳酸イソブチルエステルは、更なる精製をせずに、公知の方法で
塩素化することができる(例えば、ヨーロッパ特許(EP−A)第401104
号明細書、特開昭(JP)61−057534号公報(1986)、特開平(J
P)02−104560号公報(1990)、特開昭(JP)61−06844
5号公報(1986)、及びフランス特許(FR−A)第2459221号明細
書参照)。この塩素化を、塩化チオニルを用いて、触媒、例えばN,N−ジメチ
ルホルムアミドの存在下に行うのが有利であり、その際、不斉C−原子の所で反
転が起こる。
粗製生成物を、高沸点物質から分離除去し、引き続き、蒸留により精製する。
前記の方法により、L−クロルプロピオン酸イソブチルエステルは、約98〜
99%の化学的純度で得ることができる。光学的純度(L:D)は、約98〜1
00%である。
リパーゼは、シュードモナスspec.DSM8246から得ることができ、
その際、この菌を培地中で培養し、かつ酵素を培養ブイヨンから単離する。炭素
源、窒素源、無機塩及び場合により少量の微量元素及びビタミンを含有する培地
が好適である。窒素源としては、無機又は有機窒素化合物又はこれらの化合物を
含有する物質を使用することができる。例は、アンモニウム塩、硝酸塩、トウモ
ロコシ源水(Maisequellewasser)、酵母自己分解物、酵母抽出物及び加水分解さ
れたカゼインである。炭素源としては、糖、例えばグルコース、ポリオール、例
えばグリセリン又は有機酸、例えばクエン酸又は脂肪酸を使用することができる
。炭素源としては、植物性油、例えば大豆油、アマニ油又はオリーブ油が、特に
好適である。無機塩の例は、カルシウム、マグネシウム、マンガン、カリウム、
亜鉛、銅、鉄及びその他の金属の塩である。塩のアニオンとしては、特に、ホス
フェート−及びニトレートイオンを挙げることができる。
有利な培養温度は、25〜33℃である。培地のp
H−値を、発酵の間、鉱酸、例えば2n−硫酸又は塩基、例えばアンモニアを用
いて、6〜7.5、有利に、6.5〜7に保持する。この培養を、液内培養とし
て、激しい通気及び撹拌下で実施する。3時間の間隔で連続する2回の酵素活性
測定での活性が一定になるまで、発酵させる。一般に、40〜60時間のインキ
ュベーション時間で充分である。この方法で、培養ブイヨン11当たり、50〜
500mgの酵素収量を達成することができる。
酵素を、培養ブイヨンから通常の方法で単離する。微生物及び不溶性物質を分
離除去するために、ブイヨンを遠心分離するか又は濾過する。次いで、集めた液
相から、リパーゼを、水と混合可能な有機溶剤、例えばアセトン又は低級アルコ
ールを用いて沈殿させるか、又は塩、殊に硫酸アンモニウムを添加することによ
り得る。
得られた粗製−リパーゼの特異活性の向上及び不純物の更なる減少のために、
これらを、再び溶かし、かつ新たに、例えば、溶剤又は塩の添加により沈殿させ
ることができる(分別沈殿)。しかし、粗製−リパーゼは、好適な限外濾過膜を
介しての、酵素含有溶液のクロスフロー濾過(Querstromfiltration)により精製
することもできる。この方法では、低分子量の不純物が膜を通過し、酵素は留ま
る。
前記の方法で、得られる水溶液のリパーゼ−濃度が
、非常に高いことは特に有利である。これは、通常、約5〜30g/lである。
リパーゼ−溶液は、直ちに、本方法のために使用することができる。しかし、
リパーゼを、固体担体を用いて固定して使用する可能性もある。固体担体として
は、このために慣用の不活性担体物質が好適である(例えば、Enzyme and Micro
bial.Technology 14,426(1992)参照)。
本方法を、酵素水溶液及び反応の間に生じるイソブタノールと共に第2相を形
成するL−クロルプロピオン酸イソブチルエステルからなる2−相系中で実施す
るのが有利である。
有機相に、付加的に水と充分に混合不可能な溶剤、例えば炭化水素、例えばn
−ヘキサン、塩化炭化水素又はエーテルを添加することができる。
L−クロルプロピオン酸イソブチルエステルの加水分解を、約4〜8、有利に
5〜7のpH−範囲で行う。pH−値を、通常、リパーゼの添加前に調節し、か
つ通常、塩基を連続的に又は少量ずつ添加することにより、反応の間、ほぼ一定
に保持する。しかし、適当に緩衝された系中で操作すること、及び塩基(例えば
、炭酸水素ナトリウム)の全量を予め装入することも可能である。
この場合、塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナト
リウム及び−カリウム、ア
ルカリ金属−及びアルカリ土類金属炭酸水素塩、例えば炭酸水素ナトリウム、炭
酸水素カリウム及び炭酸水素カルシウム、アルカリ金属及び−アルカリ土類金属
炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸カルシウム又は3級ア
ミン、例えばトリエチルアミンが好適である。
経費の理由から、(L)−2−クロルプロピオン酸のナトリウム塩の製造が有
利であるので、相応するナトリウム化合物、例えば水酸化ナトリウム、炭酸水素
ナトリウム及び炭酸ナトリウムを塩基として使用する。
一般に、反応温度は、5〜60℃、有利に、20〜40℃である。
反応を、常圧で、反応混合物の自己圧下又は減圧下で実施することができる。
反応経過に関して特に有利な実施形の1つでは、反応の間に生じるイソブタノ
ールを、有利には、減圧下での蒸留により連続的に除去する。
光学活性反応生成物は、自体慣用の方法で反応混合物から単離するか、又はそ
の場で更に反応させることができる。更なる反応に関しては、例えば、出版物英
国特許(GB−A)第2054570号明細書、ドイツ特許(DE−A)第30
24265号明細書及びヨーロッパ特許(EP−A)第009285号明細書中
の実施を参照することができる。
光学活性反応生成物の単離のために、有機相を、リパーゼと共に分離除去する
。その後、水相中に溶けているイソブタノール分を、有利に蒸留(例えば、50
〜60℃及び20〜50ミリバールの圧力で)により除去する。この後、水性(
L)−ナトリウム−2−クロルプロピオネート水溶液は、経験的に、0.3重量
%を下回るイソブタノール残分を有する。しかし、これは20〜25℃で、比較
的長い時間に渡り貯蔵することはできないので、更なる処理まで冷却するか、又
は溶液を酸性にし、かつ所望の場合には(L)−2−クロルプロピオン酸に後処
理することが薦められる。約30重量%の(L)−ナトリウム−2−クロルプロ
ピオネート−水溶液を、50〜70重量%に濃縮し、かつ引き続き、(−20)
から(−50)℃に冷却することにより、例えば、数週間安定である結晶懸濁液
が得られる。
(L)−ナトリウム−2−クロルプロピオネートは、自体公知の方法で、例え
ば前記の低温結晶化により、又噴霧−又は凍結乾燥により単離することができる
。噴霧乾燥の場合には、例えば、200℃の入り口温度及び80〜90℃の固体
の出口温度で、(L)−ナトリウム−2−クロルプロピオネートが、0.2〜0
.7%の残留水含分を有する乾燥した流動可能な粉末として得られる。光学活性
は、いずれの場合でも、完全に保持される。
(L)−ナトリウム−2−クロルプロピオネート−水溶液を、例えば硫酸で2
を下回るpH−値に酸性化することにより、遊離の(L)−2−クロルプロピオ
ン酸が得られる。後者を水相から、2−クロルプロピオン酸に対して良好な可溶
性を有し、かつ水に殆ど混合しない好適な有機溶剤で抽出することができる。こ
のために、例えば、エーテル、例えばメチル−t−ブチルエーテル又は塩化炭化
水素、例えばジクロルメタン及び1,2−ジクロルエタンがこれに該当する。
有機溶剤の除去の後に、次いで、(L)−2−クロルプロピオン酸を、通常の
方法、有利に、減圧下での蒸留(12ミリバールの圧力で、頭部温度は、例えば
、約80℃)により精製することができる。
(L)−2−クロルプロピオネート及び(L)−2−クロルプロピオン酸は、
植物保護剤及び薬剤のための重要な中間体である。殊に、これらは、生物工学的
にR−2−(4−ヒドロキシフェノキシ)−プロピオン酸に移行する(このため
に、例えば国際公開WO90/11362号明細書及びヨーロッパ特許(EP−
A)465494号明細書参照)ことができるD−2−フェノキシプロピオン酸
の製造(例えば、ドイツ特許(DE−A)第1543841号明細書参照)のた
めに好適である。R−2−(4−ヒドロキシ−フェノキシ)−プロピオン酸は、
最終的に、除草作用のあるアリールオキシフェノキシプロピオン酸−誘導体の製
造の際の出発生成物として役にたつ。
製造例
例1
シュードモナスspec.DSM8246からのリパーゼの製造及び精製:
微生物シュードモナスspec.DSM8246の培養のために、次の培地を
使用した:
KH2PO4 20g/l
Na2HPO4 10g/l
MgSO4 5g/l
CaCl2×2H2O 3g/l
FeSO4×7H2O 0.5g/l
MnSO4×4H2O 0.005g/l
CoCl2×6H2O 0.005g/l
CuSO4×5H2O 0.005g/l
ZnSO4×7H2O 0.005g/l
酵母抽出液 5g/l
炭素源として、精製された大豆油を使用し、これを1g/l×hの一定の配量
率でポンプ導入した。pH−値を、全発酵時間に渡り、2nH2SO4及び25%
NH4OHを用いて常にpH6.5に保持した。
接種培養液を、栄養素−肉汁−培地400ml(pH6.5)に微生物シュー
ドモナスspec.DSM8246を接種することにより得た。
接種培養液を、30℃で10時間、振とう装置上でインキュベーションした。
培地に、30℃、及び6.5のpH−値で、培地100容量部当たり、接種培
養液5容量部を接種した。主培養を、30℃で、101−撹拌培養器中、81の
内容量で実施した。備えられた平板撹拌機(Blattruehrer)の撹拌速度は、1分当
たり1000回転であり、通気速度は、1分及び1発酵ブイヨン容量当たり、1
容量である。60時間の後に、発酵ブイヨンは、2回の連続する活性測定で、F
.I.P.(=Federation International Pharmaceutique)による1ml当たり3
00酵素単位の一定の活性を示した(この方法のために、例えば、R.Ruyssen u.
A.Lauwers,Pharmaceutical Enzymes,E.Story-Scientia P.V.B.A.,Scientific P
ublishing Company,Gent/Belgien,1978,p78〜82参照)。
これに従い、発酵を中断し、かつ生じたリパーゼを次のように発酵エキスから
単離した:
発酵流出液を、n−プロパノールで、アルコール65%の容量部まで希釈した
。バイオマス及び生じた副産物を、遠心分離により分離除去した。澄明なアルコ
ール性酵素溶液を、真空下に出発容量の1/3に濃縮した。既に、L−クロルプ
ロピオン酸イソブチルエステルの加水分解のために好適であるが、この酵素溶液
を、更なる活性上昇のために、Diafiltrationsmodus(セルローストリアセテー
ト−クロスフロー−濾過型(Cellulosetriacetat-Querstrom-Filtrationsmodule)
、分離限界20000公称分子量、Sartorius社、Goettingen)中で、水3容量
を用いて洗浄し、かつその後に濾過毎に、出発容量の1/4まで濃縮した。この
酵素濃縮液から、n−プロパノールを、85%の容量部まで添加することにより
、リパーゼを沈殿させた。リパーゼ活性を有する沈殿物を、遠心分離により取得
し、かつn−プロパノール65容量部を有する水溶液中に入れた。沈殿物とn−
プロパノール/水−混合物との重量比は、1〜10である。
遠心分離により、不溶性の沈殿物を分離した。遠心分離の澄明な上澄みから、
n−プロパノール部を80容量部まで高めることによりリパーゼを沈殿させた。
沈殿物を、遠心分離により取得し、かつ凍結乾燥させた。このように得られた酵
素粉末は、蛋白質1ミリグラム当たりF.I.P.による酵素単位7100の比
活性を示した。
例2
リパーゼによるL−クロルプロピオン酸イソブチルエステルの鹸化(本発明に
よる):
水400ml中のL−クロルプロピオン酸イソブチルエステル200gからな
る懸濁液を、20〜25℃
で激しく撹拌し、かつ25重量%水酸化ナトリウム水溶液で中和(pH−値=7
.5)した。この後、リパーゼ500mg(シュードモナスspec.DSM8
246に由来;活性約400U/mg)を添加し、かつ反応混合物のpH−値を
、10n水酸化ナトリウム水溶液の連続的な添加により、7.5で一定に保持し
た。6 1/4時間後に、水酸化ナトリウムの理論的必要量の97.3%を消費した
。反応を中断するために、イソブタノール−相を、リパーゼと共に分離した。水
相から、凍結乾燥により、(L)−ナトリウム−2−クロルプロピオネートが、
99.2%のエナンチオマー純度で得られた。収率:95.8%。乳酸による不
純物は、0.05%を下回った。
例3
固定されたリパーゼによるL−クロルプロピオン酸イソブチルエステルの鹸化
(本発明による):
水2000g中のL−クロルプロピオン酸イソブチルエステル1000g(6
.08モル)からなる懸濁液を、20〜25℃で、激しく撹拌し、かつ25重量
%水酸化ナトリウム水溶液を、pH−値が、5〜6になるまで添加した。この後
、リパーゼ2.5g(活性約400U/mg;シュードモナスspec.DSM
8246に由来;Akzoのポリプロピレン−粉末”Accurel EP100”(登録商標)
、粒度200〜1000μ上に固定さ
れたリパーゼ)を添加し、その際、反応混合物のpH−値を、25重量%水酸化
ナトリウム溶液の連続的な添加により一定に(5〜6)に保持した。水酸化ナト
リウム溶液の理論的必要量の98%を消費した後(約18時間後)に、リパーゼ
を濾別した。濾液の有機相を分離除去した。水相から、60℃及び50ミリバー
ルで、薄層蒸発器を用いて、溶けたイソブタノールを水との共沸混合物として留
去した。水中のL−ナトリウムクロルプロピオネートの約30重量%溶液234
0gが得られた(収率:約88%)。
この溶液450gを、濃硫酸約60gを用いて約1のpH−値まで酸性にした
。メチル−t−ブチルエーテル約200mlの添加の後に、有機相を分離除去し
た。水相を、更に3回、それぞれメチル−t−ブチルエーテル200mlを用い
て抽出した。合わせた有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、かつ300ミリ
バール/50℃で濃縮させ、その後、残留物を30cm Vireux−塔を介して蒸
留した。L−クロルプロピオン酸84gが、99%を上回る化学的純度及びL:
D=99:1の光学的純度を有する沸点82℃/13ミリバールの無色液体とし
て得られた。
水中のL−ナトリウムクロルプロピオネートの前記の溶液1500gを、スプ
レー塔上で、200℃の入り口温度で、スプレー乾燥させた。83℃の出口温度
で、固体L−ナトリウムクロルプロピオネート480
gが、0.4%の残留−水含分及び99:1(L:D)の光学的純度を有する白
色粉末として得られた。
例4
イソブタノールの連続的な除去下でのリパーゼを用いてのL−クロルプロピオ
ン酸イソブチルエステルの鹸化(本発明による)
L−クロルプロピオン酸イソブチルエステル164.5g(1.0モル)及び
水330gからの混合物に、35〜40℃で、撹拌下に、25重量%水酸化ナト
リウム水溶液を、pH−値5〜6まで添加した。引き続き、混合物に、約5重量
%リパーゼ溶液5.0ml(活性約100000U/ml)を添加した。反応を
、35〜40℃で行い、その際、反応混合物のpH−値を、25重量%水酸化ナ
トリウム溶液の配量により、5〜6に保持した。水酸化ナトリウム溶液の計算量
の約20%を消費した後に、反応混合物が沸騰するまで、圧力を徐々に80ミリ
バールまで下げた。80ミリバールで37℃の沸点を有する無色の留出液は、水
、イソブタノール及び少量のL−クロルプロピオン酸イソブチルエステルからな
った(*)。出発エステルの完全な反応(約2時間後)を、それぞれ水酸化ナト
リウムの更なる滴加の後の反応混合物のpH−値の著しい上昇で知ることができ
た。これに応じて、水酸化ナトリウム溶液の添加をすぐに終了した。引き続き、
pH−値が再びほぼ6になるまで数分撹拌した。0.5%を下回るイソブタノー
ル及び最大0.05%のL−クロルプロピオン酸イソブチルエステルを含有する
23%L−ナトリウム−2−クロルプロピオネート−溶液507gが得られた。
収率:89%(使用L−クロルプロピオン酸イソブチルエステルに対して)。
(*)2−相:水88%及びイソブタノール12%からなる水相39g;イソ
ブタノール76%、L−クロルプロピオン酸イソブチルエステル12%及び水1
2%からなる有機相73g。
例5(=比較例)
水酸化ナトリウム溶液を用いての(L)−2−クロルプロピオン酸イソブチル
エステルの鹸化(リパーゼを使用しない)
6l二重ジャケット−反応容器中に、撹拌下に、L−CIB2467g(15
モル;エナンチオマー純度少なくとも99%)及び水1.6lを入れた。約2の
pH−値を有する得られた懸濁液に、40〜45℃で、50重量%水酸化ナトリ
ウム水溶液全部で1200g(15モル)を添加した。その際、この添加を、水
酸化ナトリウム溶液の消費に応じて、pH−値が12.3で一定であるように行
う。添加の収量の後(約2時間)に、反応混合物を、20重量%塩酸で中和(p
H=7〜8)した。引き続き、圧力60ミリバール及
び約40℃で、イソブタノール及び水からなる共沸混合物を留去し、その際、蒸
留の間に、なお水約500mlを付加的に装入した。約100分の後に、共沸混
合物約2000gが留去された。残留物を、通常通り、生成物へと後処理した。
収率:約96%;光学的純度95.55:4.5(L:D)。
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フロントページの続き
(72)発明者 ツィッペラー,ベルンハルト
ドイツ連邦共和国 D―67246 ディルム
シュタイン アム ヘル ゴッツアッカー
6
(72)発明者 ハンゼン,ハンスペーター
ドイツ連邦共和国 D―67061 ルートヴ
ィヒスハーフェン レムブラントシュトラ
ーセ 3