JPH09269052A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

自動変速機の制御装置

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Publication number
JPH09269052A
JPH09269052A JP8103878A JP10387896A JPH09269052A JP H09269052 A JPH09269052 A JP H09269052A JP 8103878 A JP8103878 A JP 8103878A JP 10387896 A JP10387896 A JP 10387896A JP H09269052 A JPH09269052 A JP H09269052A
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JP
Japan
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pressure
shift
control
feedback
turbine
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Application number
JP8103878A
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English (en)
Inventor
Mitsuru Nagaoka
満 長岡
Yasuma Nishiyama
安磨 西山
Yasunari Nakayama
康成 中山
Hideji Hiruta
秀司 昼田
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Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 変速動作中におけるタービン回転変化率が目
標値に一致するように摩擦要素に対する作動圧の給排を
フィードバック制御する自動変速機において、運転状態
によってフィードバック系の動特性が異なることに対処
し、常に最適な制御状態を実現することを課題とする。 【解決手段】 タービン回転変化率の目標値に対する偏
差Edを算出すると共に、タービン回転数に対応する複
数の異なる計算式を用いて上記偏差に応じた仮フィード
バック操作量Fb1〜Fb3をそれぞれ算出し、これら
の仮フィードバック操作量をファジー合成して、実フィ
ードバック操作量Pfbを算出するように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車に搭載される
自動変速機の制御装置、特に変速時における摩擦要素に
対する作動圧の給排のフィードバック制御に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車に搭載される自動変速機
は、トルクコンバータと変速歯車機構とを組み合わせ、
この変速歯車機構の動力伝達経路をクラッチやブレーキ
等の複数の摩擦要素の選択的作動により切り換えて、所
定の変速段に自動的に変速するように構成したもので、
各摩擦要素の油圧室に対して作動圧を給排するデューテ
ィソレノイドバルブ等の油圧制御手段が備えられる。
【0003】その場合に、変速時に摩擦要素の締結動作
や解放動作を円滑に行わせて良好な変速フィーリングを
実現するため、摩擦要素に対する締結用もしくは解放用
の作動圧の給排をフィードバック制御することがあり、
例えば特開平6−11029号公報によれば、変速動作
中におけるタービン回転数の変化率とその目標値とを比
較し、その偏差を解消するように作動圧の給排をフィー
ドバック制御することにより、タービン回転数が良好に
変化するようにしたものが示されている。
【0004】このフィードバック制御は、上記公報の例
では、まず、タービン回転変化率の目標値に対する偏差
を求め、その偏差を解消するための作動圧の補正量とし
てのフィードバック操作量を算出すると共に、これをデ
ューティ率等の制御量に変換し、この制御量でデューテ
ィソレノイドバルブ等を作動させることにより行われ、
これにより、タービン回転変化率が目標値に一致するよ
うに作動圧が制御されることになる。その場合に、ター
ビン回転変化率の目標値に対する偏差からフィードバッ
ク量を算出する際の計算式として、所謂I−PD制御用
のものや各種の伝達関数を用いることにより、制御の応
答性を向上させることが行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、どのような計
算式を用いても、作動圧に対するタービン回転数の変化
の特性やデューティ率に対する作動圧の特性等が総合さ
れてなるフィードバック制御系の動特性は運転領域によ
って一定せず、そのため、常に最適の制御状態が実現さ
れるようにするのは困難であり、特に、タービン回転数
やタービントルク等の運転状態は広い範囲で変化するた
め、その運転状態によっては応答遅れや制御精度の低下
等が生じるのである。
【0006】そこで、本発明は、作動圧をフィードバッ
ク制御することにより変速動作中におけるタービン回転
変化率等を目標値に一致させる制御を、運転状態に拘わ
らず、常に良好に行い得るようにすることを課題とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明では次のような手段を用いる。
【0008】まず、本願の請求項1の発明(以下、第1
発明という)は、トルクコンバータと、変速歯車機構
と、作動圧の給排により選択的に締結されて上記変速歯
車機構の動力伝達経路を切り換える複数の摩擦要素と、
変速時に上記摩擦要素に対する作動圧の給排をタービン
回転数もしくはその変化率が目標値に一致するようにフ
ィードバック制御するフィードバック制御手段とを有す
る自動変速機において、上記タービン回転数とタービン
回転変化率との少なくとも一方とその目標値との偏差を
算出する偏差算出手段と、運転状態を示す所定の値を検
出する検出手段と、運転状態に応じて設定された複数の
異なる計算式のうちの検出された値に対応するものを用
いて上記偏差に応じたフィードバック操作量を算出する
フィードバック操作量算出手段とを設けたことを特徴と
する。
【0009】また、請求項2の発明(以下、第2発明と
いう)は、上記第1発明と同様に、トルクコンバータ
と、変速歯車機構と、作動圧の給排により選択的に締結
されて上記変速歯車機構の動力伝達経路を切り換える複
数の摩擦要素と、変速時に上記摩擦要素に対する作動圧
の給排をタービン回転数もしくはその変化率が目標値に
一致するようにフィードバック制御するフィードバック
制御手段とを有する自動変速機において、上記タービン
回転数とタービン回転変化率との少なくとも一方とその
目標値との偏差を算出する偏差算出手段と、運転状態を
示す所定の値を検出する検出手段と、検出された所定の
値を複数の層にファジー層別された運転状態にあては
め、各層に対応する複数の異なる計算式を用いて上記偏
差に応じた仮フィードバック操作量を算出する複数の仮
フィードバック操作量算出手段と、これらの異なる計算
式でそれぞれ算出された仮フィードバック操作量をファ
ジー合成して、上記フィードバック制御手段で作動圧を
制御するときの実フィードバック操作量を算出する実フ
ィードバック操作量算出手段とを設けたことを特徴とす
る。
【0010】そして、請求項3に係る発明(以下、第3
発明という)は、上記第1発明または第2発明におい
て、検出手段により、タービン回転数を検出するように
構成したことを特徴とし、また、請求項4に係る発明
(以下、第4発明という)は、同じく第1発明または第
2発明において、検出手段により、タービン回転数とタ
ービントルクとを検出するように構成したことを特徴と
する。
【0011】上記の構成によれば、本願のいずれの発明
においても、タービン回転変化率等の目標値に対する偏
差に基づいて、運転状態に応じて設定された複数の計算
式を用いてフィードバック操作量が算出されることにな
るから、上記各計算式を適切に設定することにより、タ
ービン回転数等の運転状態によってフィードバック制御
系の動特性が異なっても、常にその時点の運転状態に応
じた特性のもとでフィードバック制御を行うことが可能
となる。
【0012】そして、特に第2発明によれば、複数の計
算式によってそれぞれ算出された仮フィードバック操作
量が運転状態に応じて重み付けされた上でファジー合成
され、その合成されてなる実フィードバック操作量によ
って作動圧がフィードバック制御されることになるの
で、各運転状態においてフィードバック制御系の動特性
が異なる場合に、その時点の運転状態に応じた特性に一
層適合した状態でフィードバック制御を行うことが可能
となる。
【0013】そして、第3発明によれば、タービン回転
数に応じた複数の異なる計算式でフィードバック操作量
もしくは仮フィードバック操作量が算出されるので、フ
ィードバック制御系の動特性がタービン回転数によって
変化する場合に、該回転数のいずれの領域においても、
その領域での動特性のもとでフィードバック制御を行う
ことが可能となり、また、第4発明によれば、さらにフ
ィードバック制御系の動特性がタービントルクによって
も変化する場合に、タービン回転数及びタービントルク
のいずれの領域においても、良好なフィードバック制御
が行われることになる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、機
械的構成、油圧制御回路、及び変速制御動作にわけて説
明する。
【0015】機械的構成 まず、図1の骨子図により本実施の形態に係る自動変速
機10の全体の機械的な概略構成を説明する。
【0016】この自動変速機10は、主たる構成要素と
して、トルクコンバータ20と、該コンバータ20の出
力により駆動される変速歯車機構として隣接配置された
第1、第2遊星歯車機構30,40と、これらの遊星歯
車機構30,40でなる動力伝達経路を切り換えるクラ
ッチやブレーキ等の複数の摩擦要素51〜55及びワン
ウェイクラッチ56とを有し、これらによりDレンジに
おける1〜4速、Sレンジにおける1〜3速及びLレン
ジにおける1〜2速と、Rレンジにおける後退速とが得
られるようになっている。
【0017】上記トルクコンバータ20は、エンジン出
力軸1に連結されたケース21内に固設されたポンプ2
2と、該ポンプ22に対向状に配置されて該ポンプ22
により作動油を介して駆動されるタービン23と、該ポ
ンプ22とタービン23との間に介設され、かつ、変速
機ケース11にワンウェイクラッチ24を介して支持さ
れてトルク増大作用を行うステータ25と、上記ケース
21とタービン23との間に設けられ、該ケース21を
介してエンジン出力軸1とタービン23とを直結するロ
ックアップクラッチ26とで構成されている。そして、
上記タービン23の回転がタービンシャフト27を介し
て遊星歯車機構30,40側に出力されるようになって
いる。
【0018】ここで、このトルクコンバータ20の反エ
ンジン側には、該トルクコンバータ20のケース21を
介してエンジン出力軸1に駆動されるオイルポンプ12
が配置されている。
【0019】一方、上記第1、第2遊星歯車機構30,
40は、いずれも、サンギヤ31,41と、このサンギ
ヤ31,41に噛み合った複数のピニオン32…32,
42…42と、これらのピニオン32…32,42…4
2を支持するピニオンキャリヤ33,43と、ピニオン
32…32,42…42に噛み合ったリングギヤ34,
44とで構成されている。
【0020】そして、上記タービンシャフト27と第1
遊星歯車機構30のサンギヤ31との間にフォワードク
ラッチ51が、同じくタービンシャフト27と第2遊星
歯車機構40のサンギヤ41との間にリバースクラッチ
52が、また、タービンシャフト27と第2遊星歯車機
構40のピニオンキャリヤ43との間に3−4クラッチ
53がそれぞれ介設されていると共に、第2遊星歯車機
構40のサンギヤ41を固定する2−4ブレーキ54が
備えられている。
【0021】さらに、第1遊星歯車機構30のリングギ
ヤ34と第2遊星歯車機構40のピニオンキャリヤ43
とが連結されて、これらと変速機ケース11との間にロ
ーリバースブレーキ55とワンウエイクラッチ56とが
並列に配置されていると共に、第1遊星歯車機構30の
ピニオンキャリヤ33と第2遊星歯車機構40のリング
ギヤ44とが連結されて、これらに出力ギヤ13が接続
されている。
【0022】そして、この出力ギヤ13が、中間伝動機
構60を構成するアイドルシャフト61上の第1中間ギ
ヤ62に噛み合わされていると共に、該アイドルシャフ
ト61上の第2中間ギヤ63と差動装置70の入力ギヤ
71とが噛み合わされて、上記出力ギヤ13の回転が差
動装置70のデフケース72に入力され、該差動装置7
0を介して左右の車軸73,74が駆動されるようにな
っている。
【0023】ここで、上記各クラッチやブレーキ等の摩
擦要素51〜55及びワンウェイクラッチ56の作動状
態と変速段との関係をまとめると、次の表1に示すよう
になる。
【0024】なお、上記の骨子図に示す自動変速機10
の変速歯車機構の部分は、具体的には図2に示すように
構成されているが、この図に示すように、変速機ケース
11には後述する制御で用いられるタービン回転センサ
305が取り付けられている。
【0025】
【表1】 油圧制御回路 次に、図1、図2に示す各摩擦要素51〜55に設けら
れた油圧室に対して作動圧を給排する油圧制御回路の構
成を図3により説明する。
【0026】なお、上記各摩擦要素のうち、バンドブレ
ーキでなる2−4ブレーキ54は、作動圧が供給される
油圧室として締結室54aと解放室54bとを有し、締
結室54aのみに作動圧が供給されているときに当該2
−4ブレーキ54が締結され、解放室54bのみに作動
圧が供給されているとき、両室54a,54bとも作動
圧が供給されていないとき、及び両室54a,54bと
も作動圧が供給されているときに、2−4ブレーキ54
が解放されるようになっている。また、その他の摩擦要
素51〜53,55は単一の油圧室を有し、該油圧室に
作動圧が供給されているときに当該摩擦要素が締結され
る。
【0027】図3に示すように、この油圧制御回路10
0には、主たる構成要素として、オイルポンプ12の吐
出圧を調整して所定のライン圧を生成するレギュレータ
バルブ101と、手動操作によってレンジの切り換えを
行うためのマニュアルバルブ102と、変速時に作動し
て各摩擦要素51〜55に通じる油路を切り換えるロー
リバースバルブ103、バイパスバルブ104、3−4
シフトバルブ105及びロックアップコントロールバル
ブ106と、これらのバルブ103〜106を作動させ
るための第1、第2ON−OFFソレノイドバルブ(以
下、「第1、第2SV」と記す)111,112と、第
1SV111からの作動圧の供給先を切り換えるソレノ
イドリレーバルブ(以下、「リレーバルブ」と記す)1
07と、各摩擦要素51〜55の油圧室に供給される作
動圧の生成、調整、排出等の制御を行う第1〜第3デュ
ーティソレノイドバルブ(以下、「第1〜第3DSV」
と記す)121,122,123等が備えられている。
【0028】ここで、上記第1、第2SV111,11
2及び第1〜第3DSV121〜123はいずれも3方
弁であって、上、下流側の油路を連通させた状態と、下
流側の油路をドレンさせた状態とが得られるようになっ
ている。そして、後者の場合、上流側の油路が遮断され
るので、ドレン状態で上流側からの作動油を徒に排出す
ることがなく、オイルポンプ12の駆動ロスが低減され
る。
【0029】なお、第1、第2SV111,112はO
Nのときに上、下流側の油路を連通させる。また、第1
〜第3DSV121〜123はOFFのとき、即ちデュ
ーティ率(1ON−OFF周期におけるON時間の比
率)が0%のときに全開となって、上、下流側の油路を
完全に連通させ、ONのとき、即ちデューティ率が10
0%のときに、上流側の油路を遮断して下流側の油路を
ドレン状態とすると共に、その中間のデューティ率で
は、上流側の油圧を元圧として、下流側にそのデューテ
ィ率に応じた値に調整した油圧を生成するようになって
いる。
【0030】上記レギュレータバルブ101によって生
成されるライン圧は、メインライン200を介して上記
マニュアルバルブ102に供給されると共に、ソレノイ
ドレデューシングバルブ(以下、「レデューシングバル
ブ」と記す)108と3−4シフトバルブ105とに供
給される。
【0031】このレデューシングバルブ108に供給さ
れたライン圧は、該バルブ108によって減圧されて一
定圧とされた上で、ライン201,202を介して第
1、第2SV111,112に供給される。
【0032】そして、この一定圧は、第1SV111が
ONのときには、ライン203を介して上記リレーバル
ブ107に供給されると共に、該リレーバルブ107の
スプールが図面上(以下同様)右側に位置するときは、
さらにライン204を介してバイパスバルブ104の一
端の制御ポートにパイロット圧として供給されて、該バ
イパスバルブ104のスプールを左側に付勢する。ま
た、リレーバルブ107のスプールが左側に位置すると
きは、ライン205を介して3−4シフトバルブ105
の一端の制御ポートにパイロット圧として供給されて、
該3−4シフトバルブ105のスプールを右側に付勢す
る。
【0033】また、第2SV112がONのときには、
上記レデューシングバルブ108からの一定圧は、ライ
ン206を介してバイパスバルブ104に供給されると
共に、該バイパスバルブ104のスプールが右側に位置
するときは、さらにライン207を介してロックアップ
コントロールバルブ106の一端の制御ポートにパイロ
ット圧として供給されて、該コントロールバルブ106
のスプールを左側に付勢する。また、バイパスバルブ1
04のスプールが左側に位置するときは、ライン208
を介してローリバースバルブ103の一端の制御ポート
にパイロット圧として供給されて、該ローリバースバル
ブ103のスプールを左側に付勢する。
【0034】さらに、レデューシングバルブ108から
の一定圧は、ライン209を介して上記レギュレータバ
ルブ101の制御ポート101aにも供給される。その
場合に、この一定圧は、上記ライン209に備えられた
リニアソレノイドバルブ131により例えばエンジンの
スロットル開度等に応じて調整され、したがって、レギ
ュレータバルブ101により、ライン圧がスロットル開
度等に応じて調整されることになる。
【0035】なお、上記3−4シフトバルブ105に導
かれたメインライン200は、該バルブ105のスプー
ルが右側に位置するときに、ライン210を介して第1
アキュムレータ141に通じ、該アキュムレータ141
にライン圧を導入する。
【0036】一方、上記メインライン200からマニュ
アルバルブ102に供給されたライン圧は、D,S,L
の各前進レンジでは第1出力ライン211及び第2出力
ライン212に、Rレンジでは第1出力ライン211及
び第3出力ライン213に、また、Nレンジでは第3出
力ライン213にそれぞれ導入される。
【0037】そして、上記第1出力ライン211は第1
DSV121に導かれて、該第1DSV121に制御元
圧としてライン圧を供給する。この第1DSV121の
下流側は、ライン214を介してローリバースバルブ1
03に導かれ、該バルブ103のスプールが右側に位置
するときには、さらにライン(サーボアプライライン)
215を介して2−4ブレーキ54の締結室54aに導
かれる。また、上記ローリバースバルブ103のスプー
ルが左側に位置するときには、さらにライン(ローリバ
ースブレーキライン)216を介してローリバースブレ
ーキ55の油圧室に導かれる。ここで、上記ライン21
4からはライン217が分岐されて、第2アキュムレー
タ142に導かれている。
【0038】また、上記第2出力ライン212は、第2
DSV122及び第3DSV123に導かれて、これら
のDSV122,123に制御元圧としてライン圧をそ
れぞれ供給すると共に、3−4シフトバルブ105にも
導かれている。
【0039】この3−4シフトバルブ105に導かれた
ライン212は、該バルブ105のスプールが左側に位
置するときに、ライン218を介してロックアップコン
トロールバルブ106に導かれ、該バルブ106のスプ
ールが左側に位置するときに、さらにライン(フォワー
ドクラッチライン)219を介してフォワードクラッチ
51の油圧室に導かれる。
【0040】ここで、上記フォワードクラッチライン2
19から分岐されたライン220は3−4シフトバルブ
105に導かれ、該バルブ105のスプールが左側に位
置するときに、前述のライン210を介して第1アキュ
ムレータ141に通じると共に、該バルブ105のスプ
ールが右側に位置するときには、ライン(サーボリリー
スライン)221を介して2−4ブレーキ54の解放室
54bに通じる。
【0041】また、第2出力ライン212から制御元圧
が供給される第2DSV122の下流側は、ライン22
2を介して上記リレーバルブ107の一端の制御ポート
に導かれて該ポートにパイロット圧を供給することによ
り、該リレーバルブ107のスプールを左側に付勢す
る。また、上記ライン222から分岐されたライン22
3はローリバースバルブ103に導かれ、該バルブ10
3のスプールが右側に位置するときに、さらにライン2
24に通じる。
【0042】このライン224からは、オリフィス15
1を介してライン225が分岐されていると共に、この
分岐されたライン225は3−4シフトバルブ105に
導かれ、該3−4シフトバルブ105のスプールが左側
に位置するときに、前述のサーボリリースライン221
を介して2−4ブレーキ54の解放室54bに導かれ
る。
【0043】また、上記ライン224からオリフィス1
51を介して分岐されたライン225からは、さらにラ
イン226が分岐されていると共に、このライン226
はバイパスバルブ104に導かれ、該バルブ104のス
プールが右側に位置するときに、ライン(3−4クラッ
チライン)227を介して3−4クラッチ53の油圧室
に導かれる。
【0044】さらに、上記ライン224は直接バイパス
バルブ104に導かれ、該バルブ104のスプールが左
側に位置するときに、上記ライン226を介してライン
225に通じる。つまり、ライン224とライン225
とが上記オリフィス151をバイパスして通じることに
なる。
【0045】また、第2出力ライン212から制御元圧
が供給される第3DSV123の下流側は、ライン22
8を介してロックアップコントロールバルブ106に導
かれ、該バルブ106のスプールが右側に位置するとき
に、上記フォワードクラッチライン219に連通する。
また、該ロックアップコントロールバルブ106のスプ
ールが左側に位置するときには、ライン229を介して
ロックアップクラッチ26のフロント室26aに通じ
る。
【0046】さらに、マニュアルバルブ102からの第
3出力ライン213は、ローリバースバルブ103に導
かれて、該バルブ103にライン圧を供給する。そし
て、該バルブ103のスプールが左側に位置するとき
に、ライン(リバースクラッチライン)230を介して
リバースクラッチ52の油圧室に導かれる。
【0047】また、第3出力ライン213から分岐され
たライン231はバイパスバルブ104に導かれ、該バ
ルブ104のスプールが右側に位置するときに、前述の
ライン208を介してローリバースバルブ103の制御
ポートにパイロット圧としてライン圧を供給し、該ロー
リバースバルブ103のスプールを左側に付勢する。
【0048】以上の構成に加えて、この油圧制御回路1
00には、コンバータリリーフバルブ109が備えられ
ている。このバルブ109は、レギュレータバルブ10
1からライン232を介して供給される作動圧を一定圧
に調圧した上で、この一定圧をライン233を介してロ
ックアップコントロールバルブ106に供給する。そし
て、この一定圧は、ロックアップコントロールバルブ1
06のスプールが右側に位置するときには、前述のライ
ン229を介してロックアップクラッチ26のフロント
室26aに供給され、また、該バルブ106のスプール
が左側に位置するときには、該一定圧はライン234を
介してリヤ室26bに供給されるようになっている。
【0049】このロックアップクラッチ26は、フロン
ト室26aに上記一定圧が供給されたときに解放される
と共に、上記ロックアップコントロールバルブ106の
スプールが左側に位置して、第3DSV123で生成さ
れた作動圧がフロント室26aに供給されたときには、
その作動圧に応じたスリップ状態に制御されるようにな
っている。
【0050】また、上記マニュアルバルブ102から
は、D,S,L,Nの各レンジでメインライン200に
通じるライン235が導かれて、レギュレータバルブ1
01の減圧ポート101bに接続されており、上記の各
レンジで該減圧ポート101bにライン圧が導入される
ことにより、これらのレンジで、他のレンジ、即ちRレ
ンジよりもライン圧の調圧値が低くなるようになってい
る。
【0051】ここで、上記2−4ブレーキ54の油圧ア
クチュエータの具体的構造を説明すると、図4に示すよ
うに、この油圧アクチュエータは、変速機ケース11と
該ケース11に固着されたカバー部材54cとで構成さ
れたサーボシリンダ54d内にピストン54eを嵌合
し、その両側に前述の締結室54aと解放室54bとを
形成した構成とされている。また、上記ピストン54e
にはバンド締め付け用ステム54fが取り付けられてい
ると共に、被制動部材(図示せず)に巻き掛けられたブ
レーキバンド54gの一端側に上記ステム54fが係合
され、また、該バンド54gの他端側はケース11に設
けられた固定用ステム54hに係合されており、さら
に、上記解放室54b内にはピストン54eを締結室5
4a側、即ちブレーキバンド54gの緩め側に付勢する
スプリング54iが収納されている。
【0052】そして、上記油圧制御回路100を構成す
るコントロールバルブユニットから油孔(図示せず)を
介して締結室54aと解放室54bとに作動圧が供給さ
れ、その供給状態に応じてブレーキバンド54gを締め
付けもしくは緩めることにより、2−4ブレーキ54を
締結もしくは解放するようになっていると共に、特に、
この油圧アクチュエータにおいては、上記ピストン54
eの締結室54a側および解放室54b側の受圧面積が
ほぼ等しくされ、したがって、例えば両室54a,54
bに等しい圧力の作動圧を供給すると、これらの圧力は
互いに打ち消し合い、スプリング54iの付勢力のみが
解放側に作用することになる。
【0053】一方、当該自動変速機10には、図5に示
すように、油圧制御回路100における上記第1、第2
SV111,112、第1〜第3DSV121〜123
及びリニアソレノイドバルブ131を制御するコントロ
ーラ300が備えられていると共に、このコントローラ
300には、当該車両の車速を検出する車速センサ30
1、エンジンのスロットル開度を検出するスロットル開
度センサ302、エンジン回転数を検出するエンジン回
転センサ303、運転者によって選択されたシフト位置
(レンジ)を検出するシフト位置センサ304、トルク
コンバータ20におけるタービン23の回転数を検出す
るタービン回転センサ305、作動油の油温を検出する
油温センサ306等からの信号が入力され、これらのセ
ンサ301〜306からの信号が示す当該車両ないしエ
ンジンの運転状態等に応じて上記各ソレノイドバルブ1
11,112,121〜123,131の作動を制御す
るようになっている。なお、上記タービン回転センサ3
05については、図2にその取り付け状態が示されてい
る。
【0054】次に、この第1、第2SV111,112
及び第1〜第3DSV121〜123の作動状態と各摩
擦要素51〜55の油圧室に対する作動圧の給排状態の
関係を変速段ごとに説明する。
【0055】ここで、第1、第2SV111,112及
び第1〜第3DSV121〜123の各変速段ごとの作
動状態の組合せ(ソレノイドパターン)は、次の表2に
示すように設定されている。
【0056】この表2中、(○)は、第1、第2SV1
11,112についてはON、第1〜第3DSV121
〜123についてはOFFであって、いずれも、上流側
の油路を下流側の油路に連通させて元圧をそのまま下流
側に供給する状態を示す。また、(×)は、第1、第2
SV111,112についてはOFF、第1〜第3DS
V121〜123についてはONであって、いずれも、
上流側の油路を遮断して、下流側の油路をドレンさせた
状態を示す。
【0057】
【表2】 まず、1速(Lレンジの1速を除く)においては、表2
及び図6に示すように、第3DSV123のみが作動し
て、第2出力ライン212からのライン圧を元圧として
作動圧を生成しており、この作動圧がライン228を介
してロックアップコントロールバルブ106に供給され
る。そして、この時点では該ロックアップコントロール
バルブ106のスプールが右側に位置することにより、
上記作動圧は、さらにフォワードクラッチライン219
を介してフォワードクラッチ51の油圧室にフォワード
クラッチ圧として供給され、これにより該フォワードク
ラッチ51が締結される。
【0058】ここで、上記フォワードクラッチライン2
19から分岐されたライン220が3−4シフトバルブ
105及びライン210を介して第1アキュムレータ1
41に通じていることにより、上記フォワードクラッチ
圧の供給が緩やかに行われる。
【0059】次に、2速の状態では、表2及び図7に示
すように、上記の1速の状態に加えて、第1DSV12
1も作動し、第1出力ライン211からのライン圧を元
圧として作動圧を生成する。この作動圧は、ライン21
4を介してローリバースバルブ103に供給されるが、
この時点では該ローリバースバルブ103のスプールが
右側に位置することにより、さらにサーボリリースライ
ン215に導入され、2−4ブレーキ54の締結室54
aにサーボアプライ圧として供給される。これにより、
上記フォワードクラッチ51に加えて、2−4ブレーキ
54が締結される。
【0060】なお、上記ライン214はライン217を
介して第2アキュムレータ142に通じているから、上
記サーボアプライ圧の供給ないし2−4ブレーキ54の
締結が緩やかに行われる。そして、このアキュムレータ
142に蓄えられた作動油は、後述するLレンジの1速
への変速に際してローリバースバルブ103のスプール
が左側に移動したときに、ローリバースブレーキライン
216からローリバースブレーキ55の油圧室にプリチ
ャージされる。
【0061】また、3速の状態では、表2及び図8に示
すように、上記の2速の状態に加えて、さらに第2DS
V122も作動し、第2出力ライン212からのライン
圧を元圧として作動圧を生成する。この作動圧は、ライ
ン222及びライン223を介してローリバースバルブ
103に供給されるが、この時点では該バルブ103の
スプールが右側に位置することにより、さらにライン2
24に導入される。
【0062】そして、この作動圧は、ライン224から
オリフィス151を介してライン225に導入されて、
3−4シフトバルブ105に導かれるが、この時点では
該3−4シフトバルブ105のスプールが左側に位置す
ることにより、さらにサーボリリースライン221を介
して2−4ブレーキ54の解放室54bにサーボリリー
ス圧として供給される。これにより、2−4ブレーキ5
4が解放される。
【0063】また、上記ライン224からオリフィス1
51を介して分岐されたライン225からはライン22
6が分岐されており、上記作動圧は該ライン226によ
りバイパスバルブ104に導かれると共に、この時点で
は該バイパスバルブ104のスプールが右側に位置する
ことにより、さらに3−4クラッチライン227を介し
て3−4クラッチ53の油圧室に3−4クラッチ圧とし
て供給される。したがって、この3速では、フォワード
クラッチ51と3−4クラッチ53とが締結される一
方、2−4ブレーキ54は解放されることになる。
【0064】なお、この3速の状態では、上記のように
第2DSV122が作動圧を生成し、これがライン22
2を介してリレーバルブ107の制御ポート107aに
供給されることにより、該リレーバルブ107のスプー
ルが左側に移動する。
【0065】さらに、4速の状態では、表2及び図9に
示すように、3速の状態に対して、第3DSV123が
作動圧の生成を停止する一方、第1SV111が作動す
る。
【0066】この第1SV111の作動により、ライン
201からの一定圧がライン203を介してリレーバル
ブ107に供給されることになるが、上記のように、こ
のリレーバルブ107のスプールは3速時に左側に移動
しているから、上記一定圧がライン205を介して3−
4シフトバルブ105の制御ポート105aに供給され
ることになり、該バルブ105のスプールをが右側に移
動する。そのため、サーボリリースライン221がフォ
ワードクラッチライン219から分岐されたライン22
0に接続され、2−4ブレーキ54の解放室54bとフ
ォワードクラッチ51の油圧室とが連通する。
【0067】そして、上記のように第3DSV123が
作動圧の生成を停止して、下流側をドレン状態とするこ
とにより、上記2−4ブレーキ54の解放室54b内の
サーボリリース圧とフォワードクラッチ51の油圧室内
のフォワードクラッチ圧とが、ロックアップコントロー
ルバルブ106及びライン228を介して該第3DSV
123でドレンされることになり、これにより、2−4
ブレーキ54が再び締結されると共に、フォワードクラ
ッチ51が解放される。
【0068】一方、Lレンジの1速では、表2及び図1
0に示すように、第1、第2SV111,112及び第
1、第3DSV121,123が作動し、この第3DS
V123によって生成された作動圧が、Dレンジ等の1
速と同様に、ライン228、ロックアップコントロール
バルブ106及びフォワードクラッチライン219を介
してフォワードクラッチ51の油圧室にフォワードクラ
ッチ圧として供給され、該フォワードクラッチ51が締
結される。また、このとき、ライン220、3−4シフ
トバルブ105及びライン210を介して第1アキュム
レータ141に作動圧が導入されることにより、上記フ
ォワードクラッチ51の締結が緩やかに行われるように
なっている点も、Dレンジ等の1速と同様である。
【0069】また、第1SV111の作動により、ライ
ン203、リレーバルブ107、ライン204を介して
バイパスバルブ104の制御ポート104aにパイロッ
ト圧が供給されて、該バルブ104のスプールを左側に
移動させる。そして、これに伴って、第2SV112か
らの作動圧がライン206及び該バイパスバルブ104
を介してライン208に導入され、さらにローリバース
バルブ103の制御ポート103aに供給されて、該バ
ルブ103のスプールを左側に移動させる。
【0070】したがって、第1DSV121で生成され
た作動圧がライン214、ローリバースバルブ103及
びローリバースブレーキライン216を介してローリバ
ースブレーキ55の油圧室にローリバースブレーキ圧と
して供給され、これにより、フォワードクラッチ51に
加えてローリバースブレーキ55が締結されて、エンジ
ンブレーキが作動する1速が得られる。
【0071】さらに、Rレンジでは、表2及び図11に
示すように、第1、第2SV111,112及び第1〜
第3DSV121〜123が作動する。ただし、第2、
第3DSV122,123については、第2出力ライン
212からの元圧の供給が停止されているから作動圧を
生成することはない。
【0072】このRレンジでは、上記のように、第1、
第2SV111,112が作動するから、前述のLレン
ジの1速の場合と同様に、バイパスバルブ104のスプ
ールが左側に移動し、これに伴ってローリバースバルブ
103のスプールも左側に移動する。そして、この状態
で第1DSV121で作動圧が生成されることにより、
これがローリバースブレーキ圧としてローリバースブレ
ーキ55の油圧室に供給される。
【0073】一方、Rレンジでは、マニュアルバルブ1
02から第3出力ライン213にライン圧が導入され、
このライン圧が、上記のようにスプールが左側に移動し
たローリバースバルブ103、及びリバースクラッチラ
イン230を介してリバースクラッチ52の油圧室にリ
バースクラッチ圧として供給される。したがって、上記
リバースクラッチ52とローリバースブレーキ55とが
締結されることになる。
【0074】なお、上記第3出力ライン213には、N
レンジでもマニュアルバルブ102からライン圧が導入
されるので、ローリバースバルブ103のスプールが左
側に位置するときは、Nレンジでリバースクラッチ52
が締結される。
【0075】制御動作 次に、前述のコントローラ300による変速制御、特に
アップシフト変速に関する特徴的な制御動作について説
明する。
【0076】なお、アップシフト変速の制御は、図12
に示すように、タービン回転数Ntの低下時における変
化率dNtが目標の変化率dNt0に一致するように、
主として締結側の摩擦要素に対する作動圧の供給をフィ
ードバック制御することにより行われる。このタービン
回転変化率dNt は、図13に示すように、イナーシャ
フェーズ、即ち変速によるタービン回転数が変化する期
間における変速機出力トルクToの変速終了後における
トルクに対する高さΔToに対応するもので、これが変
速前のトルクより高くなると変速ショックが大きくな
り、また、低くすぎると変速時間が長くなる。そこで、
図示のように、変速前の高さにほぼ等しくなるように、
この高さΔToに対応する目標タービン回転変化率dN
0を設定するのである。
【0077】(1)1−2変速制御 まず、アップシフト変速の全般的動作について、1−2
変速を例に取って説明する。
【0078】1−2変速は、図6、図7から明らかなよ
うに、第3DSV123で生成された作動圧がフォワー
ドクラッチ51の油圧室に供給されて該クラッチ51が
締結されている状態で、第1DSV121によってサー
ボアプライ圧を生成し、これを2−4ブレーキ54の締
結室54aに供給することによって行われる。その場合
に、この第1DSV121によるサーボアプライ圧のフ
ィードバック制御が行われる。
【0079】ここで、前述のように、第1〜第3DSV
121〜123は、デューティ率100%で作動圧が発
生しないドレン状態、0%で作動圧が元圧に等しくなる
全開状態となり、その中間のデューティ率で作動圧の制
御が行われる。
【0080】1−2変速時における第1DSV121に
よるサーボアプライ圧の制御は、図14に示すプログラ
ムに従って行われ、1−2変速指令が出力されたとき
に、まず、ステップS1〜S3で、ベース油圧Pb、フ
ィードバック油圧Pfb、及び学習油圧Padを算出す
る。そして、ステップS4で、これらの油圧Pb,Pf
b,Padを加算して、算出油圧Psを求める。
【0081】ここで、図15に示すように、上記ベース
油圧Pbは、変速指令の出力後、タービン回転数が低下
し始めた時点、即ち符号アで示すイナーシャフェーズの
開始時まで、一定の初期値Pb′に保持されると共に、
イナーシャフェーズの開始時から一定割合で上昇するよ
うに設定されるが、その具体的設定動作については後述
する。
【0082】また、フィードバック油圧Pfbは、イナ
ーシャフェーズ開始時から所定時間T1が経過した時点
から該イナーシャフェーズ中におけるタービン回転変化
率dNtを目標変化率dNt0に一致させるように設定
されるが、このフィードバック油圧Pfbの計算につい
ても、後に詳しく説明する。なお、イナーシャフェーズ
が開始されても所定時間T1が経過するまではフィード
バック油圧Pfbの算出を行わないのは、イナーシャフ
ェーズ開始時にはフィードバック油圧算出の基礎となる
タービン回転変化率dNtが正確に求められないからで
ある。
【0083】さらに、学習油圧Padは、前回の1−2
変速時の変速動作の終了後に、そのときのイナーシャフ
ェーズの状態に基づいて設定されて、今回の変速時に用
いられるものであるが、この学習油圧Padの計算につ
いても後に詳しく説明する。
【0084】次に、上記プログラムのステップS5で、
変速指令出力時に行われるプリチャージの制御期間中で
あるか否かを、プリチャージフラグFpの値に基づいて
判定する。
【0085】このプリチャージ制御は、変速開始時に2
−4ブレーキ54の締結室54aに至る油路に作動油を
速やかに充満させて、変速動作の応答性を向上させるた
めのもので、Fp=1のとき、すなわち、後述するプロ
グラムによって設定されたプリチャージ期間中、ステッ
プS6で、第1DSV121にデューティ率0%の信号
を出力し、該第1DSV121を全開状態とする。
【0086】そして、Fp=0となったとき、即ちプリ
チャージ期間が終了すれば、さらに、ステップS7で当
該1−2変速が終了したか否かを判定する。この変速終
了の判定は、タービン回転変化率dNtがマイナスから
プラスに転じたこと、タービン回転変化率dNtの絶対
値が変速中の値の半分以下に減少したこと、タービン回
転数Ntが変速開始時の回転数から算出される変速終了
時の回転数まで低下したこと、のいずれか1つが成立す
ることによって行われる。
【0087】そして、変速終了前、即ちプリチャージ制
御の終了後、変速終了までの間に、ステップS8で、上
記のようにして求めた算出油圧Psに対応したデューテ
ィ率の信号を第1DSV121に出力し、該第1DSV
121により上記デューティ率、即ち上記算出油圧Ps
に応じたサーボアプライ圧を生成して、2−4ブレーキ
54の締結室54aに供給する。また、変速終了後に
は、ステップS9,S10で、デューティ率が0%にな
るまで、該デューティ率を一定割合で減少させながら出
力する。
【0088】これにより、図15に示すようなサーボア
プライ圧が得られ、イナーシャフェーズ中におけるター
ビン回転変化率dNtが目標変化率dNt0に一致する
ように制御される。
【0089】(2)ベース油圧の計算 上記算出油圧Psを構成する各油圧のうち、ベース油圧
Pbの計算は、図16に示すプログラムに従って次のよ
うに行われる。
【0090】まず、ステップS11で、変速中の目標タ
ービン回転変化率dNt0を算出し、次いで、ステップ
S12で、この目標タービン回転変化率dNt0に対応
する油圧Piをマップに基づいて算出する。このマップ
は図17に示すように、目標タービン回転変化率dNt
0が小さくなるほど(絶対値が大きくなるほど)大きな
値になるように設定されている。
【0091】また、ステップS13,S14で、変速時
の目標タービントルクTt0に応じた油圧Ptと、この
目標タービントルクTt0の2乗に応じた油圧Pt2と
を、それぞれ図18、図19に示すように設定されたマ
ップに基づいて算出し、ステップS15で、これらの油
圧Pt,Pt2を上記の目標タービン回転変化率dNt
0に対応する油圧Piに加算することにより、ベース油
圧の初期値Pb′を算出する。
【0092】ここで、目標タービントルクTt0は、変
速前のタービントルクに変速中におけるエンジン出力ト
ルクのダウン率を掛けたものであり、これに対応する油
圧Pt,Pt2で、目標タービン回転変化率dNt0
対応する油圧Piを補正することにより、変速中の変速
機出力トルクの変動がさらに抑制されることになる。
【0093】そして、ステップS16で実際のタービン
回転変化率dNtが所定値K1より小さくなったか否か
を判定する。これは、イナーシャフェーズの開始により
タービン回転数が低下し始めた時期(図15の符号ア参
照)を判定するものであり、dNt<K1となるまで
は、ステップS17でベース油圧Pbを上記の初期値P
b′に保持し、dNt<K1となれば、ステップS18
で、その時点からの経過時間tに所定値K2を掛けた値
を初期値Pb′に加算して、ベース油圧Pbを一定割合
で上昇させる。これにより、図15に示すようなベース
油圧Pbが得られる。
【0094】(3)フィードバック油圧の計算 また、上記のような作動圧のフィードバック制御におい
て、フィードバック油圧Pfbは、図20に示すプログ
ラムに従って次のように算出される。なお、このフィー
ドバック油圧Pfbは、タービン回転数Nt等の運転状
態よってフィードバック制御系の動特性が異なることに
対処するため、ファジー制御の手法を用いて算出され
る。
【0095】まず、ステップS21で、タービン回転変
化率dNtの目標変化率dNt0に対する偏差Ed
(t)を算出する一方、ステップS22で、タービン回
転数Ntについての領域を複数の領域にファジー層別
し、これらの層によって0から1までの間で異なるグレ
ード値をとる3つのメンバーシップ関数Mn1,Mn
2,Mn3を設定する。
【0096】ここで、添字(t)は今回の制御サイクル
で得られた値を示す。また、上記のメンバーシップ関数
Mn1,Mn2,Mn3は、それぞれ式1〜式3に示す
ように定義され、図示すれば図21のようになる。
【0097】
【式1】
【0098】
【式2】
【0099】
【式3】 次に、ステップS23で、動特性が異なるタービン回転
数Ntの3つの領域にそれぞれ対応するように係数等を
設定した3つの計算式を用い、上記ステップS1で求め
た偏差Ed(t)等に応じたフィードバック操作量Fb
1(t),Fb2(t),Fb3(t)をそれぞれ算出
する。
【0100】ここで、3つの計算式は、一般形として、
次の式4〜式6に示すような関数F1,F2,F3で表
現される。なお、添字(t−i)はi回前の制御サイク
ルで得られた値を示す。
【0101】
【式4】
【0102】
【式5】
【0103】
【式6】 これらの式は、今回の制御サイクル及び前回以前の各制
御サイクルで得られた偏差Ed(t),Ed(t−i)
と、当該式で前回以前の制御サイクルで得られたフィー
ドバック操作量Fb1(t−i)〜Fb3(t−i)と
を所定の関数に代入することにより、今回のフィードバ
ック操作量Fb1(t)〜Fb3(t)が得られるよう
にしたものである。
【0104】そして、ステップS24で、これらのフィ
ードバック操作量Fb1(t)〜Fb3(t)を、前述
のメンバーシップ関数Mn1,Mn2,Mn3の現時点
のタービン回転数Ntでのグレード値Mn1(Nt),
Mn2(Nt),Mn3(Nt)を用いて、次式7に従
ってファジー合成することにより、最終フィードバック
操作量Fb(t)を算出する。
【0105】
【式7】 この最終フィードバック操作量Fb(t)は、図14の
プログラムにおけるフィードバック油圧Pfbであり、
このように、フィードバック油圧Pfbが、フィードバ
ック制御系の動特性が異なるタービン回転数Ntの3つ
の領域にそれぞれ対応した計算式を用いて求められたフ
ィードバック操作量Fb1(t)〜Fb3(t)をター
ビン回転数Ntの領域に応じて重み付けして合成するこ
とにより算出されるので、このフィードバック油圧Pf
bを用いることにより、例えば作動圧に対するタービン
回転数の変化の特性やデューティ率に対する作動圧の特
性等のフィードバック制御系の動特性がタービン回転数
Ntの領域によって異なる場合にも、常にその領域での
動特性のもとでフィードバック制御が行われることにな
る。
【0106】なお、上記式4〜式6として一般形で表現
されたフィードバック操作量Fb1(t)〜Fb3
(t)の3つの計算式としては、具体的には、次のよう
な式が用いられる。
【0107】
【式8】
【0108】
【式9】
【0109】
【式10】 この式8〜式10は、フィードバック操作量Fb1
(t)〜Fb3(t)を所謂伝達関数形式で求めるもの
であり、これらの式中、A10〜A16,B11〜B16
A20〜A26,B21〜B26,A30〜A36,B31
B36は、伝達関数としての係数であって、これらの係
数のセットが3つの領域における動特性にそれぞれ対応
するように、それぞれ異なる値に設定されるのである。
【0110】また、次の式11〜式13は、所謂I−P
D制御形式でフィードバック操作量Fb1(t)〜Fb
3(t)を求めるものである。
【0111】
【式11】
【0112】
【式12】
【0113】
【式13】 ここで、C11〜C13,C21〜C23,C31〜C33
各式で用いられる係数のセットであって、上記式8〜式
10の場合と同様に、各式でそれぞれ異なる値に設定さ
れる。
【0114】次に、フィードバック制御系の動特性に応
じて、運転領域をタービン回転数Ntの領域とタービン
トルクTtの領域とにファジー層別し、これらの層にそ
れぞれ対応した計算式を用いて最終フィードバック操作
量Fb(t)をファジー合成で算出する例について説明
する。
【0115】この例においては、まず、タービン回転数
Ntをパラメータとするメンバーシップ関数Mn1,M
n2と、タービントルクTtをパラメータとするメンバ
ーシップ関数Mt1,Mt2とを、式14〜式17に示
すように定義する。なお、これらのメンバーシップ関数
Mn1,Mn2,Mt1,Mt2は、図示すれば図2
2、図23に示すようになる。
【0116】
【式14】
【0117】
【式15】
【0118】
【式16】
【0119】
【式17】 次に、図24に示すタービン回転数Ntとタービントル
クTtをパラメータとする4つの領域Z11,Z12,
Z21,Z22に応じてそれぞれ設定された式18〜式
21に示す4つの計算式を用い、これらの式に偏差Ed
(t)やタービン回転変化率dNt(t)等を代入し
て、それぞれの式からフィードバック操作量Fb11
(t),Fb12(t),Fb21(t),Fb22
(t)を算出する。
【0120】
【式18】
【0121】
【式19】
【0122】
【式20】
【0123】
【式21】 なお、これらの式における係数D11〜D13,D21
D23,D31〜D33,D41〜D43も、それぞれの領
域Z11,Z12,Z21,Z22におけるフィードバ
ック制御系の動特性に応じて、フィードバック操作量F
b11(t),Fb12(t),Fb21(t),Fb
22(t)が算出されるように設定されたものである。
【0124】そして、これらの計算式で求められたフィ
ードバック操作量Fb11(t),Fb12(t),F
b21(t),Fb22(t)を、前述のメンバーシッ
プ関数Mn1,Mn2の現時点のタービン回転数Ntで
のグレード値Mn1(Nt),Mn2(Nt)、及びメ
ンバーシップ関数Mt1,Mt2の現時点のタービント
ルクTtでのグレード値Mt1(Tt),Mt2(T
t)を用いて、次式22に従ってファジー合成すること
により、最終フィードバック操作量Fb(t)を算出す
る。
【0125】
【式22】 この例によれば、最終フィードバック操作量Fb(t)
は、タービン回転数Ntの領域及びタービントルクTt
の領域による動特性の相違を考慮して設定されることに
なるので、運転状態がタービン回転数Nt及びタービン
トルクTtのいずれの領域にあっても、それぞれの運転
状態に適合して、フィードバック制御が行われることに
なる。
【0126】(4)学習油圧の計算 1−2変速の変速開始時には、2−4ブレーキ54の締
結室54aに対して、プリチャージの終了後にベース油
圧Pbの初期値Pb′が供給され、これによってトルク
フェーズが実現されることになるが、実際には、図14
のプログラムのステップS3,S4に示すように、この
ベース油圧Pbに、前回の1−2変速時に算出された学
習油圧Padが加算された作動圧が供給される。
【0127】この学習油圧Padは、変速動作が終了し
たときに、その変速動作のイナーシャフェーズ中、どの
ようにフィードバック制御が行われたかを検出し、その
フィードバック制御の状態に応じて設定されるようにな
っており、具体的には図25に示すプログラムに従って
設定される。
【0128】まず、ステップS31で変速が終了したか
否かを判定し、終了したときに、ステップS32で、図
26に示すように定義されるイナーシャフェーズで最初
に発生したタービン回転変化率dNtのピークの大きさ
(絶対値)dNtpと、その発生時期Tpとを検出す
る。
【0129】また、ステップS33で、ピーク発生時期
Tpをパラメータとするメンバーシップ関数Mp1,M
p2を式23、式24に従って設定する。
【0130】
【式23】
【0131】
【式24】 ここで、ピーク発生時期Tpの値はイナーシャフェーズ
開始時からの制御サイクル数を示す。また、これらのメ
ンバーシップ関数Mp1,Mp2を図示すると、図27
のようになる。
【0132】そして、ステップS34で、ピーク発生時
期Tpに応じて補正量Pxp1,Pxp2を算出する式
25、式26を用い、これらの式にピークの大きさdN
tpを代入して補正量Pxp1,Pxp2を算出する。
【0133】
【式25】
【0134】
【式26】 これらの式は、タービン回転変化率dNtのピークの大
きさdNtpと目標変化率dNt0との差に比例した補
正量Pxp1,Pxp2を求めるようにしたもので、係
数E1,E2はピーク発生時期Tpに応じた補正量Px
p1,Pxp2が得られるように異なる値に設定されて
いる。
【0135】次に、ステップS35で、イナーシャフェ
ーズ中におけるフィードバック操作量(フィードバック
油圧Pfb)の平均値Mfbを算出すると共に、ステッ
プS36で、その平均値Mfbをパラメータとするメン
バーシップ関数Mf1,Mf2,Mf3を式27〜式2
9に示すように設定する。
【0136】
【式27】
【0137】
【式28】
【0138】
【式29】 なお、これらのメンバーシップ関数Mf1〜Mf3を図
示すれば、図28に示すようになる。
【0139】そして、ステップS37で、上記フィード
バック操作量の平均値Mfbに応じて補正量Pxf1,
Pxf2,Pxf3を算出する式30〜式32を用い、
これらの式に上記平均値Mfbを代入して、この平均値
Mfbに応じた補正量Pxf1,Pxf2,Pxf3を
算出する。
【0140】
【式30】
【0141】
【式31】
【0142】
【式32】 これらの式は、フィードバック操作量の平均値Mfbに
比例した補正量Pxf1,Pxf2を求めるようにした
もので、係数F1,F2は上記平均値Mfbに応じた補
正量Pxf1,Pxf2が得られるように異なる値に設
定されている。なお、補正量Pxf3は常に0とされ
る。
【0143】さらに、ステップS38で、イナーシャフ
ェーズ中におけるタービン回転変化率dNtの目標変化
率dNt0に対する偏差Edの平均値Medを算出する
と共に、ステップS39で、その平均値Medをパラメ
ータとするメンバーシップ関数Me1,Me2,Me3
を式33〜式35に従って設定する。
【0144】
【式33】
【0145】
【式34】
【0146】
【式35】 なお、これらのメンバーシップ関数Me1〜Me3を図
示すれば、図29のようになる。
【0147】そして、ステップS40で、上記偏差の平
均値Medに応じて補正量Pxe1,Pxe2,Pxe
3を算出する式30、式36〜式38を用い、これらの
式に上記平均値Medを代入して、この平均値Medに
応じた補正量Pxe1,Pxe2,Pxe3を算出す
る。
【0148】
【式36】
【0149】
【式37】
【0150】
【式38】 これらの式は、イナーシャフェーズ中におけるタービン
回転変化率dNtと目標変化率dNt0との偏差Edの
平均値Medと、上記目標変化率dNtoとに比例した
補正量Pxe1,Pxe2,Pxe3を求めるようにし
たもので、係数G1,G2の値と符号とが、上記平均値
Medに応じた補正量Pxe1,Pxe2,Pxe3が
得られるように異なる値に設定されている。なお、補正
量Pxe3は常に0とされる。
【0151】そして、以上の各式で求められた補正量P
xp1,Pxp2,Pxf1〜Pxf3,Pxe1〜P
xe3を、これらに対応するメンバーシップ関数Mp
1,Mp2,Mf1〜Mf3,Me1〜Me3のそれぞ
れのパラメータの値でのグレード値を用いて、次式39
に従ってファジー合成することにより、最終補正量Pa
dを算出する。
【0152】
【式39】 このようにして、最終補正量として学習油圧Padが算
出され、これが次回の同種の変速時にベース油圧Pbに
加算されて、トルクフェーズにおける作動圧が設定され
ることになる。その場合に、この学習油圧Padは、上
記のようにして前回の同種の変速時におけるイナーシャ
フェーズでのフィードバック制御の状態、具体的には、
イナーシャフェーズで最初に発生したタービン回転変化
率dNtのピークの大きさdNtpとその発生時期T
p、イナーシャフェーズ中におけるフィードバック操作
量(フィードバック油圧Pfb)の平均値Mfb、及び
同じくイナーシャフェーズ中におけるタービン回転変化
率dNtの目標変化率dNt0に対する偏差Edの平均
値Medに基づいてそれぞれ算出された補正量を、ファ
ジー合成することにより求めたものであるから、次回の
同種の変速時に、トルクフェーズでの作動圧として、こ
の学習油圧Padをベース油圧Pbに加算した作動圧を
供給することにより、次回の同種の変速時におけるイナ
ーシャフェーズのフィードバック制御が良好に行われ
て、タービン回転変化率dNtのピークを小さくした
り、上記フィードバック油圧Pfbや偏差Edを小さく
したりすることが可能となる。もって、イナーシャフェ
ーズ中、タービン回転変化率dNtが目標変化率dNt
0によく一致することになる。
【0153】ここで、この学習油圧Padは、変速の種
類毎に算出されて次の同種の変速時に用いられるもので
あるが、同種の変速であってもタービントルクの大きさ
によって区別して記憶し、次の同種の変速であって、タ
ービントルクがほぼ等しい変速時にのみ利用することに
より、トルクフェーズの作動圧の制御、ひいてはイナー
シャフェーズにおけるフィードバック制御を一層精度よ
く行わせることが可能となる。
【0154】なお、以上のベース油圧Pbの計算、フィ
ードバック油圧Pfbの計算及び学習油圧Padの計算
は、1−2変速以外の他の変速時にも同様に行なわれ
る。
【0155】(5)イナーシャフェーズ初期の作動圧補
正制御 1−2変速時のイナーシャフェーズにおいては、上記の
ようにして算出されたフィードバック操作量を用いて作
動圧をフィードバック制御することにより、タービン回
転変化率dNtを目標変化率dNt0に一致させなが
ら、該回転数Ntを変速終了後の回転数まで低下させる
のであるが、例えばトルクフェーズにおける作動圧、即
ち図15に示すベース油圧Pbの初期値Pb′が適切で
なかったため、イナーシャフェーズに移行してからのフ
ィードバック制御が良好に行われない場合がある。
【0156】例えば、この初期値Pb′が高すぎた場合
には、フィードバック制御の開始時における作動圧を低
くする方向の動作の遅れのために、イナーシャフェーズ
初期の作動圧も高くなって、2−4ブレーキ54が急激
に締結されることになり、逆に、上記初期値Pb′が低
すぎた場合には、フィードバック制御の開始時における
作動圧を高くする方向の動作の遅れのために、イナーシ
ャフェーズの時間が長くなり、その結果、いずれの場合
にも良好な変速フィーリングが得られないのである。
【0157】そこで、この実施の形態においては、イナ
ーシャフェーズの開始時におけるフィードバック制御の
状態を検出し、その状態に応じた補正制御を行うことに
より、それ以後のイナーシャフェーズにおけるフィード
バック制御を良好に行わせるようになっている。
【0158】このイナーシャフェーズ初期の補正制御は
図30に示すプログラムに従って次のように行われる。
なお、このプログラムは、1−2変速時については、図
14のプログラムと並行して実行され、このプログラム
のステップS2で算出されるフィードバック油圧Pfb
を補正するのものである。
【0159】まず、1−2変速指令が出力されたとき
に、ステップS51で、イニシャライズとして、タービ
ン回転変化率dNtの積分値Sdnt、及び目標変化率
dNt0の積分値Sdnt0をクリアする。そして、次に
ステップS52でトルクフェーズが終了したか否かを判
定する。この判定は、タービン回転変化率dNtが正の
値から負の値に変化する時点(図31の符号ア参照)を
検出することにより行われる。
【0160】次に、トルクフェーズが終了してイナーシ
ャフェーズに移行すれば、ステップS53〜S55に従
って、その時点から所定時間T2(例えば1制御サイク
ルが25msの場合に、75ms:図31参照)が経過
するまで、タービン回転変化率dNtと目標変化率dN
0を積分し、それぞれの積分値Sdnt(=Sdnt
+dNt),Sdnt0(=Sdnt0+dNt0)を算
出する。
【0161】また、上記所定時間T2が経過すれば、ス
テップS56で、タービン回転変化率dNtの積分値S
dntの目標変化率dNt0の積分値Sdnt0に対する
偏差Es(=Sdnt −Sdnt0)を算出し、ステッ
プS57で、この偏差Esの絶対値が所定値K3より大
きいか否かを判定する。ここで、偏差Esの絶対値は、
図31に斜線部で示す面積に相当する。
【0162】そして、上記偏差Esの絶対値が所定値K
3より大きいとき、換言すれば、タービン回転変化率d
Ntの目標変化率dNt0に対するずれが大きく、以後
のフィードバック制御が良好に行われる可能性が少ない
と考えられるときは、ステップS58で、その偏差Es
に応じた補正量Px(=Es×K4:K4は定数)を算
出し、ステップS59でこの補正量Pxを用いて、図1
4のプログラムのステップS2、もしくは図20のプロ
グラムのステップS24におけるフィードバック油圧P
fbを補正する(Pfb=Pfb+Px)。
【0163】ここで、図31に示す場合のように積分値
の偏差Esがマイナスの値となる場合は作動圧が高すぎ
る場合であって、この場合は図に鎖線イで示すように、
タービン回転変化率dNtの絶対値が目標変化率dNt
0の絶対値より大きくなり、タービン回転数Ntが急激
に低下することになるが、このとき、マイナスの補正量
Pxがフィードバック油圧Pfbに加算されることによ
り、該フィードバック油圧Pfbが、図31に符号ウで
示すように、一時的かつ強制的に低下されることにな
る。これにより、次にフィードバック制御が再開された
ときに、実線エで示すように、タービン回転変化率dN
tが目標変化率dNt0に速やかに収束することにな
る。なお、上記偏差Esがプラスの値の場合も、同様に
してタービン回転変化率dNtが目標変化率dNt0
速やかに収束することになる。
【0164】なお、このイナーシャフェーズ初期の補正
制御も、1−2変速以外の他の変速時に、必要に応じて
同様に行われる。
【0165】(6)プリチャージ期間の設定 次に、図14のプログラムのステップS5で値が判定さ
れるプリチャージフラグFpの設定、即ち変速開始時に
おけるプリチャージ期間の設定制御について説明する。
【0166】この制御は図32のプログラムに従って行
われるが、このプログラムは、変速指令が出力されたと
きに図14に示す第1DSV121の制御プログラムと
並行して実行されるものであり、まず、ステップS61
で、イニシャライズとしてトータル流量Qtを0とし、
次いで、ステップS62で、図33に示すように設定さ
れたマップに基づいて、その時点のライン圧から第1D
SV121を全開(デューティ率0%)としたときのバ
ルブ通過流量、即ちベース流量Qを求める。
【0167】その場合に、上記マップでは、ライン圧が
高いほどベース流量Qが多くなるように設定されている
が、これは、第1DSV121が全開であっても、これ
を通過する作動油の流量Qはそのときのライン圧によっ
て変化し、ライン圧が高いほど流量Qも多くなるからで
ある。
【0168】次に、ステップS63で、図34に示すよ
うに設定されたマップから油温補正係数K5を読み取
る。この油温補正係数のマップでは、作動油の温度が低
くなるに従って補正係数K5が1より小さくなるように
設定されている。そして、ステップS64で、上記ベー
ス流量Qに補正係数K5を掛けることにより流量の補正
値Qx(=Q×K5)を算出する。
【0169】これにより、作動油の温度が低く、従って
粘度が高いために、同じライン圧であってもバルブ通過
流量が標準的な状態よりも減少する場合に、その実情に
合せて算出される流量も減少され、常に実際の流量に適
合したベース流量Q(補正流量Qx)が算出されること
になる。
【0170】さらに、ステップS65で、この補正流量
Qxを次式40に従って積算し、制御開始時から現時点
までのトータル流量Qtを算出する。ここで、添字(t
−1)は、前回の制御サイクルで得られた値であること
を示す。
【0171】
【式40】 次に、ステップS66で、このトータル流量Qtが所定
値K6を超えたか否かを判定し、この所定値K6を超え
るまでは、ステップS67でプリチャージフラグFpを
1にセットすると共に、所定値K6を超えた時点で、ス
テップS68で該フラグFpを0にセットする。
【0172】その場合に、上記所定値K6は、油圧制御
回路100における当該バルブから当該摩擦要素の油圧
室に至る油路、即ち1−2変速時にあっては、第1DS
V121から2−4ブレーキ54の締結室54aに至る
油路の容積に対応した値に設定されている。したがっ
て、Q>K6となった時点で上記油路が作動油で充満さ
れたことになり、この時点でプリチャージ制御を終了さ
せるために上記フラグFpを0にするのである。
【0173】そして、このようにして設定されたプリチ
ャージフラグFpの値を用い、Fp=1の間、図14の
プログラムのステップS6で、第1DSV121のデュ
ーティ率を0%にする制御が行われることにより、2−
4ブレーキ54の締結室54aに至る油路が作動油で速
やかに充満されることになる。
【0174】なお、このプリチャージ制御も、1−2変
速時に限らず、他の変速時にも必要に応じて行われる。
【0175】(7)2−3変速制御 次に、アップシフト変速の他の例として、2−3変速時
の制御について説明する。
【0176】2−3変速は、基本的には、2速の状態に
加えて、第2DSV122によって3−4クラッチ圧及
びサーボリリース圧を生成し、これを3−4クラッチ5
3の油圧室と2−4ブレーキ54の解放室54bとに供
給して、3−4クラッチ53を締結すると同時に、2−
4ブレーキ54を解放することにより行われる。このと
き、3−4クラッチ53の締結中のイナーシャフェーズ
における油圧、即ち棚圧の高さをフィードバック制御し
て、該3−4クラッチ53を適度にスリップさせること
により、タービン回転変化率dNtを目標回転変化率d
Nt0に一致させることが行われるが、この棚圧制御
は、3−4クラッチ圧を生成する第2DSV122によ
ってではなく、前述の第1DSV121によるサーボア
プライ圧の制御によって行われる。
【0177】つまり、油圧制御回路100においては、
図3に示すように、サーボリリースライン221に通じ
るライン225と、3−4クラッチライン227に通じ
るライン226とは、いずれも第2DSV122から導
かれたライン224に連通しているが、その連通部には
オリフィス151が設けられているので、作動油の給排
が行われているときには、上記サーボリリースライン2
21と3−4クラッチライン227とは、油圧的には上
流側の第2DSV122から切り離された状態にある。
【0178】一方、2−4ブレーキ54の解放室54b
へのサーボリリース圧の供給により、図4に示すピスト
ン54eがシリンダ54d内でストロークしている間
は、該解放室54bに連通している3−4クラッチ53
の油圧室内の油圧の制御が困難となるが、同図に示すよ
うに、2−4ブレーキ54の締結室54aと解放室54
bとは上記ピストン54eによって仕切られた構成であ
るから、解放室54b内の油圧は締結室54a内の油圧
に直接的に影響を受けることになり、したがって、この
解放室54bに連通している3−4クラッチ53の油圧
室内の作動圧、即ち3−4クラッチ圧を、第1DSV1
21によるサーボアプライ圧の制御によって制御するこ
とが可能となる。
【0179】そして、第2DSV122は、上記オリフ
ィス151を介して、3−4クラッチ53の油圧室と2
−4ブレーキ54の解放室54bとに供給される作動油
の流量を調整することになり、これにより、3−4クラ
ッチ53の締結時のイナーシャフェーズにおける棚圧の
保持時間が制御されるのである。
【0180】したがって、この2−3変速制御において
は、第1DSV121によって3−4クラッチ53の締
結時における棚圧の高さが制御されると共に、その棚圧
の保持時間が第2DSV122によって制御されること
になり、次に、第1、第2DSV121,122の具体
的制御動作を説明する。
【0181】2−3変速時における第1DSV121に
よるサーボアプライ圧の制御動作は、図35に示すプロ
グラムに従って行われるが、このプログラムにおけるス
テップS71〜S74は、図14に示す1−2変速時の
第1DSV121の制御を示すプログラムのステップS
1〜S4と動作としては同じであり、ベース油圧Pb、
フィードバック油圧Pfb、及び学習油圧Pabを前述
の各プログラムと同様のプログラムに従ってそれぞれ計
算した上で、これらを加算して算出油圧Psを求める。
【0182】次に、ステップS75で、タービントルク
Ttに応じた下限油圧Pgを図36に示すように予め設
定されたマップから読み取って設定する。そして、ステ
ップS76で、変速動作が終了したか否かを判定し、変
速動作が終了するまでは、ステップS77で、上記のよ
うにして設定した算出油圧Psと下限油圧Psとを比較
し、算出油圧Psが下限油圧Pgより高いときは、ステ
ップS78で算出油圧Psに対応するデューティ率を出
力し、算出油圧Psが下限油圧Pgより低いときは,ス
テップS79で下限油圧Pgに対応するデューティ率を
出力する。
【0183】なお、この2−3変速時における変速前の
第1DSV121のデューティ率は0%であって、サー
ボアプライ圧が供給されている状態にあるから、プリチ
ャージ制御は行われない。
【0184】そして、変速動作が終了すれば、ステップ
S80,S81に従ってデューティ率を一定割合で減少
させ、これが0%となった時点で制御を終了する。
【0185】これにより、図38に示すように変化する
デューティ率の信号が出力され、これに伴って、同図に
示すように、所定値から一旦低下し、棚圧状態を経由し
て再び所定値まで上昇するサーボアプライ圧が得られる
ことになる。そして、このサーボアプライ圧が棚圧状態
にある間、3−4クラッチ圧及びサーボリリース圧が、
同図に符号オで示すように、サーボアプライ圧に対応す
る圧力の棚圧状態に制御されることになるのである。
【0186】なお、変速指令の出力直後におけるサーボ
アプライ圧の低下により該圧力が下限油圧Pg以下に低
下することになるときは、図38に符号カで示すよう
に、該サーボアプライ圧は下限油圧Pgに設定されるこ
とになるが、この点については後に詳しく説明する。
【0187】一方、第2DSV122の制御は、図37
に示すプログラムに従って行われ、まず、ステップS9
1で、タイマのカウント値Trに初期値として所定時間
Tr0をセットし、次いで、ステップS92でこのタイ
マカウント値Trを1づつ減算する。そして、ステップ
S93で、図32に示すプラグラムと同様のプログラム
で設定されたプリチャージフラグFpが1であるか否
か、または、上記タイマカウント値Trが0より大きい
か否か、即ち変速指令の出力後、上記所定時間Tr0
経過前であるか否かを判定し、プリチャージ期間中であ
るとき(Fp=1)、または、所定時間Tr0の経過前
であるときは、ステップS94で第2DSV122のデ
ューティ率を0%として、3−4クラッチ53の油圧室
及び2−4ブレーキ54の解放室54bに至る油路に作
動油を速やかに充満させるプリチャージ制御を行う。
【0188】その後、プリチャージ期間が経過し(Fp
=0)、かつ、上記所定時間Tr0が経過してタイマカ
ウント値Trが0になれば、ステップS95で、図35
のプログラムのステップS78で出力される第1DSV
121のデューティ率と同じデューティ率の信号を当該
第2DSV122に出力する。これにより、オリフィス
151を通って3−4クラッチ53の油圧室及び2−4
ブレーキ54の解放室54bに供給される作動油の流量
がプリチャージ制御中よりも減量され、所定量に抑制さ
れることになる。
【0189】ここで、プリチャージ制御の終了を、プリ
チャージフラグFpの値だけでなく、変速指令の開始時
からの経過時間によっても判断するようになっている点
については、後に詳しく説明する。
【0190】そして、特に、この第2DSV122のデ
ューティ率が第1DSV121のデューティ率と同じと
されることにより、2−4ブレーキ54の締結室54a
と解放室54bとには同一油圧のサーボアプライ圧とサ
ーボリリース圧とがぞれぞれ供給されることになる。そ
の場合に、図4に示すように、上記両室54a,54b
におけるピストン54eの受圧面積はほぼ等しくされて
いるから、該ピストン54eはスプリング54iによる
付勢力のみで解放方向にストロークすることになり、そ
の移動が比較的長い時間をかけて行われる。その後、ス
テップS96で、第1DSV121の制御が終了したこ
とを判定すれば、第2DSV122の制御も終了する。
【0191】これにより、3−4クラッチ53の締結中
の棚圧時間が十分確保され、その間にイナーシャフェー
ズが確実に完了することになって、例えばイナーシャフ
ェーズの完了前に棚圧期間が終了して作動圧が急激に上
昇することによる大きな変速ショックの発生が回避され
る。
【0192】(8)2−3変速時の作動圧低下規制制御 上記のように、2−3変速時には、サーボアプライ圧に
より3−4クラッチ圧を間接的に制御することが行われ
るが、このとき、イナーシャフェーズにおける3−4ク
ラッチ圧の制御が円滑に開始されるように、変速指令の
出力時に、2速状態で供給されていた比較的高い圧力の
サーボアプライ圧を一旦低下させ、この状態でトルクフ
ェーズを実現することになる。
【0193】その場合に、このトルクフェーズでの算出
油圧Psは、学習油圧Padで補正したベース油圧Pb
の初期値Pb′となり、イナーシャフェーズが開始され
れば、この初期値Pb′を基準としてサーボアプライ圧
のフィードバック制御が開始されることになるが、この
初期値Pb′は、1−2変速について説明したように、
目標タービン回転変化率dNt0に対応する油圧Pi
を、目標タービントルクTt0に応じた油圧Ptと、こ
の目標タービントルクTt0の2乗に応じた油圧Pt2
とで補正することにより求められる。
【0194】したがって、例えば運転者によるマニュア
ル操作等により、低回転領域で2−3変速が行われたと
きには、上記油圧Piが低いことに伴って初期値P
b′、即ちトルクフェーズにおけるサーボアプライ圧も
比較的低いものとなるが、このような変速がスロットル
開度が大きい高負荷状態で行われると、2−4ブレーキ
54への入力トルクに対してサーボアプライ圧が不足す
ることになり、そのため、イナーシャフェーズにおける
3−4クラッチ53の締結動作の開始前に2−4ブレー
キ54の滑りが生じ、エンジンの空吹き現象が発生する
のである。
【0195】そこで、前述のように、図35のプログラ
ムのステップS75で、変速歯車機構への入力トルクで
あるタービントルクTtに応じた下限油圧Pgを設定
し、算出油圧Psがこの下限油圧Pg以下となる場合に
は、上記プログラムのステップS79で、算出油圧Ps
に代えて、この下限油圧Pgに対応するデューティ率の
信号を第1DSV121に出力するのである。
【0196】これにより、トルクフェーズにおけるサー
ボアプライ圧が、そのときの2−4ブレーキ54への入
力トルクに対応する圧力以下に低下することが阻止さ
れ、該2−4ブレーキ54が3−4クラッチ53の締結
動作の開始前に滑ることによるエンジンの空吹き現象が
防止されることになる。
【0197】なお、変速指令の出力時にサーボアプライ
圧を低下させる場合、上記のように、その圧力をイナー
シャフェーズでのフィードバック制御の基準となる圧力
に等しくなるようにして、トルクフェーズからイナーシ
ャフェーズに移行した際のフィードバック制御の開始が
円滑に行われるようにすることが望ましいが、図39に
符号キで示すように、変速前の圧力とイナーシャフェー
ズでの圧力の中間の圧力まで低下させてもよく、また、
図40に符号クで示すように、変速前の圧力からイナー
シャフェーズの開始時まで徐々に低下させるようにする
ことも考えられる。
【0198】そして、いずれの場合にも、このトルクフ
ェーズ中のサーボアプライ圧が、タービントルクTtに
応じた下限油圧Pg以下に低下することになるときに
は、その下限油圧Pg以下への低下を阻止することによ
り、2−4ブレーキ54の滑りによるエンジンの空吹き
現象を防止することになる。
【0199】(9)2−3変速時のプリチャージ制御 また、2−3変速時には、前述のように、第2DSV1
22による2−4ブレーキ54の解放室54b及び3−
4クラッチ53の油圧室に対するプリチャージの期間
を、図32のプログラムによって決定されるプリチャー
ジフラグFpの値だけでなく、変速指令の開始時からの
経過時間によっても判断するようになっており、この点
で、1−2変速時における2−4ブレーキ54の締結室
54a等に対するプリチャージ制御とは異なっている。
【0200】次に、この2−3変速時における2−4ブ
レーキ54の解放室54b及び3−4クラッチ53の油
圧室に対するプリチャージ制御について説明する。
【0201】一般に、アップシフト変速時には、図41
に示すように、被締結摩擦要素の油圧室に3−4クラッ
チ圧等の作動圧を供給したときに、ピストンが所定量ス
トロークした時点で、符号ケで示すように作動圧が上昇
してトルクフェーズが開始されるが、このとき、符号コ
で示すように、出力トルクToが一時的に低下するトル
クの引き込み現象が発生する。そして、入力トルクが大
きいときに、この現象が変速ショックを大きくする一因
となるのである。
【0202】この問題に対しては、上記の引き込み現象
の時間もしくはこの現象が生じるトルクフェーズの時間
を短くし、或はトルクフェーズにおける作動圧の上昇率
を大きくすることにより結果として該トルクフェーズの
時間を短くすることにより、引き込み現象の変速フィー
リングに与える悪影響を低減することが考えられる。そ
こで、この実施の形態においては、上記のプリチャージ
制御を適切に制御することにより、トルクフェーズの時
間の短縮等を図っているのである。
【0203】つまり、前述のように、図37のプログラ
ムのステップS91で、タイマのカウント値Trに初期
値として所定時間Tr0をセットし、次いで、ステップ
S92で、このタイマカウント値Trを1づつ減算する
と共に、ステップS93で、プリチャージフラグFpが
1であるか否か、またはタイマカウント値Trが0より
大きいか否かを判定する。そして、プリチャージフラグ
Fpが0となり、かつ、タイマカウント値Trが0とな
って、変速指令の出力後、所定時間Tr0が経過した時
点で、初めてプリチャージ制御を終了し、第2DSV1
22による算出油圧Psの供給制御に移行するのであ
る。
【0204】その場合に、上記タイマカウント値Trの
初期値としての所定時間Tr0は、図42に示すよう
に、エンジンのスロットル開度θが大きいほど長くなる
ように設定されており、したがって、エンジンからの入
力トルクが大きい時には、プリチャージが、当該油路に
作動油が充満されてトルクフェーズに移行した後も行わ
れ、例えば図41に符号サで示すように、符号アで示す
イナーシャフェーズへの移行時まで行われることになる
のである。
【0205】これにより、図41に符号ケで示すトルク
フェーズにおける作動圧の上昇率が大きくなり、それに
伴ってトルクフェーズの時間もしくはこのトルクフェー
ズにおけるトルクの引き込み現象の時間が短くなって、
この現象による変速フィーリングに与える悪影響、即ち
変速ショックが低減されることになるのである。
【0206】そして、この2−3変速時は、前述のよう
に、締結側の摩擦要素である3−4クラッチ53の締結
時の棚圧の制御は、第1DSV121により2−4ブレ
ーキ54の締結室54aに供給されているサーボアプラ
イ圧を制御することによって行われるから、第2DSV
122によって上記のようにイナーシャフェーズの開始
時までプリチャージ制御を行っても、このイナーシャフ
ェーズの制御、即ちタービン回転変化率dNtを目標変
化率dNt0に一値させながらタービン回転数Ntを低
下させる制御に影響を及ぼすことがなく、良好なイナー
シャフェーズの制御を維持しながら、トルクフェーズに
おける変速ショックが抑制されることになるのである。
【0207】なお、図42に示すように、スロットル開
度θが所定値θ0以下では,上記所定時間Tr0は0とさ
れているので、入力トルクが小さい領域では、他の変速
時と同様に、プリチャージフラグFpの値のみでプリチ
ャージの終了時が判定される。したがって、入力トルク
が小さく、図43に示すように、もともとトルクの引き
込み現象や、その直後のトルクフェーズからイナーシャ
フェーズへの移行時に生じるトルクの突き上げ現象が顕
著ではなく、出力トルクToがなだらかに変化する変速
時には、このなだらかに変化する状態が維持されて、作
動圧の上昇率を高くすることによる新たな変速ショック
の発生が回避されることになる。
【0208】ここで、以上の説明では、プリチャージ制
御を変速指令の出力時から行うようにしたが、例えばト
ルクセンサ等により出力トルクToを検出し、この出力
トルクToが低下し始めるトルクフェーズの開始時から
プリチャージを行うようにすることもできる。
【0209】また、図44に示すように、プリチャージ
時間を一定とし、入力トルクが大きいときには、当該第
2DSV122のデューティ率を0%とする一方、入力
トルクが小さいときには、デューティ率を0より大きな
値とすることにより、入力トルクが大きくなるほど、小
さいときよりも第2DSV122を通過する作動油の単
位時間当たりの流量を多くするようにしてもよく、さら
に、プリチャージの時間と流量(デューティ率)の両者
を入力トルクに応じて変更するようにしてもよい。
【0210】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、変速動作
中に、タービン回転変化率等の目標値に対する偏差に基
づいて作動圧をフィードバック制御するように構成され
た自動変速機において、上記偏差に応じたフィードバッ
ク操作量を運転状態に応じた複数の異なる計算式を用い
て算出し、或は複数の異なる計算式で算出された値をタ
ービン回転数やタービントルク等の運転状態に応じて重
み付けした上でファジー合成することにより算出し、そ
の算出されたフィードバック操作量によって作動圧をフ
ィードバック制御するようにしたから、タービン回転数
等の運転状態によってフィードバック制御系の動特性が
異なっても、常にその時点の運転状態に応じた特性のも
とでフィードバック制御を行うことが可能となる。
【0211】これにより、全運転領域で常に最適のフィ
ードバック制御を行うことが可能となって、応答性や精
度のよい作動圧の制御が実現され、その結果、この種の
自動変速機の変速フィーリングが向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る自動変速機の機械
的構成を示す骨子図である。
【図2】 同自動変速機の変速歯車機構部の構成を示す
断面図である。
【図3】 油圧制御回路の回路図である。
【図4】 2−4ブレーキの油圧アクチュエータの構成
を示す断面図である。
【図5】 同油圧制御回路における各ソレノイドバルブ
に対する制御システム図である。
【図6】 図3の油圧制御回路の1速の状態を示す要部
拡大回路図である。
【図7】 同じく2速の状態を示す要部拡大回路図であ
る。
【図8】 同じく3速の状態を示す要部拡大回路図であ
る。
【図9】 同じく4速の状態を示す要部拡大回路図であ
る。
【図10】 同じくLレンジ1速の状態を示す要部拡大
回路図である。
【図11】 同じく後退速の状態を示す要部拡大回路図
である。
【図12】 アップシフト時の制御目標としてのタービ
ン回転変化率の説明図である。
【図13】 アップシフト時のトルク波形の説明図であ
る。
【図14】 1−2変速時における第1DSVの動作を
示すフローチャートである。
【図15】 同変速時における各データの変化を示すタ
イムチャートである。
【図16】 同じくベース油圧の計算動作を示すフロー
チャートである。
【図17】 同計算動作で用いられる目標タービン回転
変化率に応じた油圧のマップである。
【図18】 同じく目標タービントルクに応じた油圧の
マップである。
【図19】 同じく目標タービントルクの2乗に応じた
油圧のマップである。
【図20】 1−2変速時におけるフィードバック油圧
の計算動作を示すフローチャートである。
【図21】 同計算動作で用いられるメンバーシップ関
数の説明図である。
【図22】 同計算動作の他の例で用いられるタービン
回転数に関するメンバーシップ関数の説明図である。
【図23】 同じくタービントルクに関するメンバーシ
ップ関数の説明図である。
【図24】 同じくファジー層別した領域の説明図であ
る。
【図25】 1−2変速時における学習油圧の計算動作
を示すフローチャートである。
【図26】 同計算動作で用いるデータの説明図であ
る。
【図27】 同計算動作で用いられるタービン回転変化
率のピークに関するメンバーシップ関数の説明図であ
る。
【図28】 同じくフィードバック操作量の平均値に関
するメンバーシップ関数の説明図である。
【図29】 同じく偏差の平均値に関するメンバーシッ
プ関数の説明図である。
【図30】 1−2変速時におけるイナーシャフェーズ
の初期作動圧補正制御の動作を示すフローチャートであ
る。
【図31】 同制御動作による各データの変化を示すタ
イムチャートである。
【図32】 1−2変速時におけるプリチャージ制御の
動作を示すフローチャートである。
【図33】 同制御動作で用いられるベース流量のマッ
プである。
【図34】 同じく油温係数のマップである。
【図35】 2−3変速時における第1DSVの動作を
示すフローチャートである。
【図36】 同変速時に用いられる下限油圧のマップで
ある。
【図37】 同変速時における第2DSVの動作を示す
フローチャートである。
【図38】 同変速時における各データの変化を示すタ
イムチャートである。
【図39】 同変速時におけるサーボアプライ圧の制御
の他の例を示すタイムチャートである。
【図40】 同じくさらに他の例を示すタイムチャート
である。
【図41】 2−3変速時のプリチャージ制御の説明の
ためのタイムチャートである。
【図42】 同制御で用いられるマップの説明図であ
る。
【図43】 同制御における入力トルクが小さいときの
出力トルクの変化を示すタイムチャートである。
【図44】 2−3変速時のプリチャージ制御の他の例
を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
10 自動変速機 30,40 変速歯車機構 51〜55 摩擦要素 100 油圧制御回路 121〜123 デューティソレノイドバルブ 300 コントローラ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 昼田 秀司 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トルクコンバータと、変速歯車機構と、
    作動圧の給排により選択的に締結されて上記変速歯車機
    構の動力伝達経路を切り換える複数の摩擦要素と、変速
    時に上記摩擦要素に対する作動圧の給排をタービン回転
    数もしくはその変化率が目標値に一致するようにフィー
    ドバック制御するフィードバック制御手段とを有する自
    動変速機の制御装置であって、上記タービン回転数とタ
    ービン回転変化率との少なくとも一方とその目標値との
    偏差を算出する偏差算出手段と、運転状態を示す所定の
    値を検出する検出手段と、運転状態に応じて設定された
    複数の異なる計算式のうちの検出された値に対応するも
    のを用いて上記偏差に応じたフィードバック操作量を算
    出するフィードバック操作量算出手段とを有することを
    特徴とする自動変速機の制御装置。
  2. 【請求項2】 トルクコンバータと、変速歯車機構と、
    作動圧の給排により選択的に締結されて上記変速歯車機
    構の動力伝達経路を切り換える複数の摩擦要素と、変速
    時に上記摩擦要素に対する作動圧の給排をタービン回転
    数もしくはその変化率が目標値に一致するようにフィー
    ドバック制御するフィードバック制御手段とを有する自
    動変速機の制御装置であって、上記タービン回転数とタ
    ービン回転変化率との少なくとも一方とその目標値との
    偏差を算出する偏差算出手段と、運転状態を示す所定の
    値を検出する検出手段と、検出された所定の値を複数の
    層にファジー層別された運転状態にあてはめ、各層に対
    応する複数の異なる計算式を用いて上記偏差に応じた仮
    フィードバック操作量を算出する複数の仮フィードバッ
    ク操作量算出手段と、これらの異なる計算式でそれぞれ
    算出された仮フィードバック操作量をファジー合成し
    て、上記フィードバック制御手段で作動圧を制御すると
    きの実フィードバック操作量を算出する実フィードバッ
    ク操作量算出手段とを有することを特徴とする自動変速
    機の制御装置。
  3. 【請求項3】 検出手段は、タービン回転数を検出する
    ものであることを特徴とする請求項1または請求項2に
    記載の自動変速機の制御装置。
  4. 【請求項4】 検出手段は、タービン回転数とタービン
    トルクとを検出するものであることを特徴とする請求項
    1または請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
JP8103878A 1996-03-31 1996-03-31 自動変速機の制御装置 Pending JPH09269052A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100350149B1 (ko) * 1999-12-30 2002-08-27 현대자동차주식회사 차량용 자동 변속기의 변속 제어 방법

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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