JPH09256903A - 内燃機関のピストン及びその製造方法 - Google Patents

内燃機関のピストン及びその製造方法

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JPH09256903A
JPH09256903A JP8069552A JP6955296A JPH09256903A JP H09256903 A JPH09256903 A JP H09256903A JP 8069552 A JP8069552 A JP 8069552A JP 6955296 A JP6955296 A JP 6955296A JP H09256903 A JPH09256903 A JP H09256903A
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JP
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aluminum alloy
piston
particles
alloy member
ring groove
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Application number
JP8069552A
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Masato Sasaki
正登 佐々木
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Hitachi Unisia Automotive Ltd
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Unisia Jecs Corp
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Publication date
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F05INDEXING SCHEMES RELATING TO ENGINES OR PUMPS IN VARIOUS SUBCLASSES OF CLASSES F01-F04
    • F05CINDEXING SCHEME RELATING TO MATERIALS, MATERIAL PROPERTIES OR MATERIAL CHARACTERISTICS FOR MACHINES, ENGINES OR PUMPS OTHER THAN NON-POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES OR ENGINES
    • F05C2201/00Metals
    • F05C2201/02Light metals
    • F05C2201/021Aluminium

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  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)
  • Welding Or Cutting Using Electron Beams (AREA)
  • Laser Beam Processing (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ピストンの製造作業能率の向上とコストの低
廉化を確保しつつ耐摩耗性と耐凝着性を満足すると共
に、ピストン本体とアルミニウム合金部材との接合境界
面の接合強度を向上させる。 【構成】 アルミニウム合金製からなるピストン本体1
のリングランド部3に3つのピストンリング溝が形成さ
れた内燃機関のピストンである。前記ピストンリング溝
のトップリング溝に対応する位置に環状凹部22を形成
すると共に、該凹部22内に、炭化珪素SiCの粒子を
含有したアルミニウム合金部材11を鋳造により形成す
る。また、少なくともアルミニウム合金部材11の上下
面とトップリング溝4の内面との接合境界面20を、電
子ビームの高エネルギー密度のビームを照射して再溶融
接合した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術】本発明は、自動車等の内燃機関の
ピストン及び該ピストンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、近時、自動車用内燃機関
のピストンにあっては、高出力化高性能化の要請に伴い
軽量化を図るべくその材質を鋳鉄に代えてアルミニウム
合金で形成しており、また、シリンダボアの内壁面と対
向する外周面に、ピストンリングが装着される複数のピ
ストンリング溝が形成されている。さらに、このピスト
ンリング溝のうち燃焼室に最も近いトップリング溝は、
特に高温に晒され、かつ燃焼圧力を直接受けるため、ピ
ストンリング(トップリング)との摩耗が激しい。この
ため、トップリング溝とトップリングとの間には、アル
ミ凝着が発生し易くなる。
【0003】そこで、斯かるアルミ凝着を防止する種々
の技術が開発されており、例えば(1)トップリング溝
の表面部に無機繊維集合体を複合させて強化するもの
(特開昭59−201953号公報)や、(2)In−
SituプロセスによるハイブリッドMMC(金属基複
合材料)をピストンへ応用するもの(自動車技術198
9−5.NO891056)、(3)トップリング溝の
表面部にニッケル多孔体を複合させて強化するもの(特
公平3−30708号公報)などがある。また、(4)
トップリング溝の表面部をアルマイト処理層により強化
したり(特開平1−190951号公報)、(5)トッ
プリング溝の表面部に銅などを電子ビームで溶融拡散さ
せることにより合金層を形成するもの(三菱自動車19
88,NO1「テクニカルレビュー」,特開平2−12
5952号)があり、更には、(6)トップリング溝部
分にニレジスト鋳鉄をアルフィン処理してアルミニウム
合金に鋳ぐるんでリング支持部材とするものなど、多く
の改良技術が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、前記各従来
例には、以下のような欠点がある。即ち、(1),
(2),(3)の従来例にあっては、無機繊維材等の材
料上の点からその成形法として高圧凝固法を用いなけれ
ばならない。したがって、製造コストの上昇が余儀なく
されるばかりか、ピストンの形状が制約されてしまう。
【0005】また、(4)の従来例にあっては、アルマ
イト処理層によりピストンリングとの耐凝着性は向上す
るものの、耐摩耗性が不十分になる。更に、(5)の従
来例は、逆に耐凝着性が不足する惧れがある。
【0006】また、(6)の従来例は、最も古くから行
われている技術であり、耐摩耗性や耐凝着性は確保でき
るものの、鋳鉄製であるため、重量の増加が余儀なくさ
れる。 さらに、他の従来例として特開平2ー1011
41号に記載された発明のように、アルニミウム合金
を、Si,Cu,Mg,Fe,Mnを夫々所定の重量%
を割合で配合し、このアルミ合金の粉末のマトリックス
にAl23等の一種の粒子を分散させて高強度のアルニ
ミウム合金を成形するものも提供されているが、この材
料を高いエネルギー密度の熱源により再溶融させると、
該再溶融部の接合の際に、再溶融部にブローホールが発
生するおそれがある。なぜならば、粉末粒子間に不可避
の空気が存在して最終加工まで残留してしまう可能性が
あるからである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述の各従来
例における実情に鑑みて案出されたもので、請求項1の
発明は、アルミニウム合金製からなるピストン本体の外
周に複数のピストンリング溝が形成されてなる内燃機関
のピストンにおいて、前記ピストンリング溝の少なくと
もトップリング溝に対応する位置に環状凹部を形成する
と共に、該環状凹部内に、炭化珪素の粒子を含有したリ
ング溝形成用のアルミニウム合金部材を鋳造により形成
し、かつ前記アルミニウム合金部材と前記凹部との接合
境界面を、高エネルギー密度の熱源により再溶融接合す
ると共に、前記アルミニウム合金部材の外周にリング溝
を形成したことを特徴としている。
【0008】請求項2の発明は、アルミニウム合金製か
らなるピストン本体の外周にピストンリング溝形成用の
アルミニウム合金部材を鋳造する内燃機関のピストンの
製造方法であって、前記ピストン本体の成形時に、前記
ピストンリング溝の少なくともトップリング溝に対応す
る位置に環状の凹部を形成し、続いて、該凹部内に、炭
化珪素の粒子を含有したアルミニウム合金部材を鋳造し
て凝固させた後、該アルミニウム合金部材と前記凹部と
の接合境界面を、高エネルギー密度の熱源により再溶融
して冷却接合したことを特徴としている。
【0009】請求項3の発明は、アルミニウム合金製か
らなるピストン本体の外周に複数のピストンリング溝が
形成されてなる内燃機関のピストンにおいて、前記ピス
トンリング溝の少なくともトップリング溝に対応する位
置に環状凹部を形成すると共に、該凹部内に、炭化珪素
の粒子を含有しかつピストン本体の母材よりも高濃度の
合金元素を含むリング溝形成用のアルミニウム合金部材
を鋳造により形成し、かつ該アルミニウム合金部材と前
記凹部との接合境界面を、高エネルギー密度の熱源によ
り再溶融し、さらに、この再溶融部のアルミニウム合金
を、10.0重量%≦Cu≦23.0重量%、及び不可避
不純物を含むアルミニウム合金マトリックスに、Al2
3粒子,SiC粒子,Si34粒子,ZrO2粒子,S
iO2粒子,TiO2粒子,WC粒子及び金属Si粒子か
ら選択される少なくとも一種の硬質粒子を、前記アルミ
ニウム合金マトリックスに対して5体積%以上、25体
積%以下分散させたことを特徴としている。
【0010】
【作用】前記構成の本発明によれば、ピストンリング溝
を形成するためのアルミニウム合金部材は、材料上の点
から鋳造等によって成形できると共に、該アルミニウム
合金部材を単にピストン本体の成形時に鋳造することに
よって形成したため、その製造コストの低廉化が図れ
る。また、前記アルミニウム合金部材内のSiC粒子に
よってピストンリングに対する耐摩耗性が向上すると共
に、耐凝着性も向上する。
【0011】しかも、凹部とアルミニウム合金部材との
接合境界面を、例えば電子ビームを照射して再溶融し、
その後冷却接合するようにしたため、再溶融による均質
な合金層が形成されて該両者の境界面の接合強度を著し
く高くすることができる。
【0012】請求項3の発明によれば、溶融後の再溶融
部の合金成分を最適に調整することにより合金濃度の低
下を防止して、耐摩耗性,耐凝着性等の向上を図ること
ができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基
づいて詳述する。
【0014】図1〜図2は本発明に係る内燃機関用ピス
トンの断面図を示し、このピストンは、ピストン本体1
がアルミ合金製(JISAC8A−T6)で略円筒状に
形成され、燃焼室に臨む冠部2と、該冠部2の下部に有
するリングランド部3の外周面に形成された3つのピス
トンリング溝4,5,6と、該各トップ,セカンド,オ
イルリング溝4〜6に嵌着されるピストンリング7,
8,9と、各リング溝4〜6下部のスカート部10とを
備えている。
【0015】前記トップリング溝4は、冠部2の頂面2
aから9mm離れた位置を中心に、幅4mm,深さ8mmに形
成されていると共に、この表面部が後述の成形方法で成
形されたアルミニウム合金部材11によって形成されて
いる。
【0016】このアルミニウム合金部材11は、炭化珪
素(SiC)の粒子を含有したアルミニウム合金で構成
され、前記ピストン本体1の環状凹部22内に鋳造によ
って一体に形成されている。
【0017】以下、前記ピストンの具体的な製造方法に
ついて説明する。すなわち、まず、ピストン本体1のア
ルミニウム合金材(JIS AC8A−T6)を溶解し
て、993Kに保持する。一方、アルミニウム合金部材
11については、最大径で数μmから数十μmのSiC
粒子を10〜20%含有したアルミニウム合金鋳造イン
ゴットを、アルゴンガス等の不活性雰囲気中で溶解し、
993Kに保持した後、機械撹拌を行いSiC粒子をア
ルミニウム合金材内に均一に分散させる。
【0018】その後、図3A〜Dに示す鋳型によってピ
ストン本体1とアルミニウム合金部材11の鋳造を行
う。図中の31は上型、32は主型、33は下型、34
は中子、35は内周部に凸部35aを有する凹部形成用
型、36は成形工程時に凹部形成用型35と交換される
ほぼ円環状の合金部材形成用型、37,38は湯道、3
9は押湯口である。
【0019】そして、図3A,Bに示すように、まずア
ルミニウム合金材(AC8A)の溶湯を湯道37の湯口
37aからキャビティ40内に注湯する。この溶湯をキ
ャビティ40内に充填した後に凝固させてピストン本体
1を鋳造する。その際、図3Bに示すように、凹部形成
用型35によってピストン本体1のトップリング溝に対
応する位置に円環状の凹部22を形成する。
【0020】次に、図3Cに示すように、凹部形成用型
35を主型32から取り外し、合金部材形成用型36と
交換する。つまり、合金部材形成用型36を取り付け
る。したがって、この合金部材形成用型36の内周面と
凹部22の内面との間に円環状の空洞部23が形成され
る。また、凹部形成用型35は湯道38とキャビティ4
0との間を遮断していたが、合金部材形成用型36の所
定部位に形成された連通孔36aによって湯道38とキ
ャビティ40は連通される。
【0021】続いて、図3Dに示すように、湯道38の
湯口38aから炭化珪素の粒子を含有したアルミニウム
合金材の溶湯を空洞部23内に注湯して凝固させる。
【0022】その後、離型を行って鋳造物を取り出し、
押湯口39の残部と湯道37,38の残部を切断する
と、ピストン本体1の凹部22内に炭化珪素の粒子を含
有したアルミニウム合金部材11が形成されたピストン
の粗材が完成する。
【0023】また、炭化珪素を含有したアルミニウム合
金部材11を注湯する際に溶湯の加熱温度を上げたり、
またピストン本体1を十分に予熱した場合などには、該
両者の接合境界面20が十分に溶着する現象が認められ
るが、その温度条件範囲は極めて狭く、均一に接合する
ことがむずかしい。そこで、本実施例ではアルミニウム
合金部材11とピストン本体1の接合境界面20を、電
子ビームやTiGレーザ等の高エネルギー密度の熱源
で、再溶融して接合するようになっている。
【0024】以下、斯かるアルミニウム合金部材11を
ピストン本体1と再溶融して接合する工程を図4〜図5
に基づいて説明する。まず、図4に示すように前記アル
ミニウム合金部材11の外周面11aが露出しているピ
ストン本体1のリングランド部3の外周を切削加工して
表面を平滑にする。その後、図5A,Bに示すようにア
ルミニウム合金部材11の上下面とリングランド部3と
の間の境界面20を、例えば電子ビームの高いエネルギ
ービームを照射して高熱源により再溶融する。つまり、
ピストン本体1とアルミニウム合金部材11の各アルミ
ニウム合金を再溶融し、その後、急冷却して固化させ
る。したがって、斯かる再溶融部21によって、境界面
20に均質な合金層が形成されて高い接合強度が得られ
る。尚、再溶融して強固に接合した後は、図5Cに示す
ようにアルミニウム合金部材11の外周部にリング溝4
を環状に切削加工する。
【0025】また、図6A,Bは第2実施例を示し、前
記アルミニウム合金部材11とリングランド部3との接
合境界面20全体を再溶融して接合したものである。ア
ルミニウム合金部材11の外周部に図に示すようにトッ
プリング溝4を形成することは先の実施例と同様であ
り、再溶融によって前記実施例と同様にアルミニウム合
金部材11とピストン本体1との強固な接合が得られ
る。特に、この実施例では、再溶融部21のSiC粒子
の分散が非常に均一になる。これは、電子ビームの高エ
ネルギービームによる撹拌効果と急冷効果によるもので
ある。
【0026】図7Aは前記高ネルギービームで再溶融さ
せる前の断面組織写真を図面化したもので、図7Bは再
溶融させた後の断面組織写真を図面化したものであっ
て、図7Aで明らかなように再溶融前のアルミニウム合
金部材11の上下面付近ではアルミニウム合金内のSi
C粒子(黒点)が局部的に集合した形になっているが、
再溶融後は、図7Bで明らかなようにSiC粒子が全体
に均一に分散した形になり、アルミニウム合金部材11
とピストン本体1の各アルミニウム合金が均質な合金相
となり、金属学的に強固に結合されている。
【0027】そして、アルミニウム合金部材11とピス
トン本体1とは、互いのアルミニウム合金自体が再溶融
して金属接合するものであり、したがって、再溶融部2
1のSiC粒子の体積%はやや低下してしまう。このた
め、第1実施例のようにトップリング溝4が再溶融部2
1に掛からない場合は問題が生じないが、再溶融部に掛
かる場合や第2実施例の場合には、SiC粒子の体積%
を大きく低下させないために、ピストン本体1側のアル
ミニウム合金の溶解量を少なくする必要がある。したが
って、少なくともアルミニウム合金部材11の外周面か
ら約1mm以内のピストン本体1側のアルミニウム合金の
溶融量とすることが望ましい。
【0028】図8〜図9は本発明の第3実施例を示し、
アルミニウム合金部材11をピストン本体1の冠部2に
露出させて、トップランドハイトHを最小にする場合の
製造方法を示している。
【0029】即ち、予めアルミニウム合金部材11を、
図8に示したようにピストン本体1の冠部2に形成され
た凹部22内に設けた後、図9Bに示すように冠部2の
上方とリンングランド部3の側方から電子ビームの高エ
ネルギービームをアルミニウム合金部材11と凹部22
との接合境界面20に照射して再溶融し、その後該再溶
融部21を冷却固化することによって接合する。続い
て、図9Cに示すように、アルミニウム合金部材11の
外周面にトップリング溝4を形成する。
【0030】したがって、この実施例によれば、トップ
ランドハイトHを可及的に小さくすることができること
は勿論のこと、冠部2のコーナ部Cがアルミニウム合金
部材11になっているため、強度が著しく向上し、エン
ジンの高出力化に十分に対応することが可能になる。
【0031】また、この場合、高熱に晒される冠部2の
上面にアルミニウム合金部材11とピストン本体1との
境界面20が露出することになるが、この部位は接合強
度の大きな再溶融部となっているため、両者間での剥離
現象が確実に防止される。即ち、従来例の前記(6)の
ようにニレジスト鋳鉄をアルフィン処理によってアルミ
ニウム合金部材とピストン本体とを接合する場合には、
冠部に発生する熱応力に耐えられず接合境界面20に剥
離が生じる惧れがあるが、前記本実施例の場合には斯か
る剥離現象を確実に回避できる。
【0032】以下、前述のような工程で成形されたアル
ミニウム合金部材11の接合境界面20の強度と耐摩耗
性と耐凝着性及び機械加工性についての特性変化を実験
した結果を述べる。
【0033】まず、マトリックスのアルミニウム合金の
成分を表1に示す。この実験においては、鋳造法で製作
した試料を用いた。またSiC粒子の添加量は、0,
5,10,15,20,25,30体積%として7種の
材料について評価した。
【0034】
【表1】
【0035】そして、耐摩耗性の評価方法は、図10に
示す装置を用いて行った。即ち、図外のモータで回転す
る回転台15上にピストンリング7を固定して、この上
部にヒータ16の下端に固定されたテストピース17を
押し付けて摩耗させる。このテストピース17は、ピス
トン本体1のリング溝から切り出したアルミニウム合金
部材である。この方法における温度,潤滑状態等の試験
条件は実際のエンジンのピストンと相関性のあるものと
した。評価は、試験後の摩耗深さで行った。
【0036】また、耐凝着性の評価方法は、図11に示
す装置を用いて行い、ピストン本体1のトップリング溝
4下面にピストンリング7を押し当てて、アクチュエー
タ18,19を介して矢印一方向にのみ摺動させる加速
試験法によった。評価は、リング溝4のピストンリング
7摺動面積に対する凝着摩耗した面積の割合で行った。
【0037】機械加工性の評価は、直径70mmの円柱粗
材を以下の加工条件で加工し、工具の摩耗量が0.3mm
になるまでの加工数で評価した。切削速度:200m/mi
n,切り込み量:0.3mm,送り量:0.03mm(1回転
毎),工具:気相合成ダイヤモンド工具(旭ダイヤ
(株)製) 前記各評価結果を表2に示す。
【0038】ここで、耐摩耗性は、SiC粒子が無添加
(O)の摩耗量を100とした割合を示す。数値が小さ
い程摩耗しないことを示す。
【0039】また、耐凝着性は、SiC粒子が無添加の
凝着した面積を100とした割合を示す。数値が小さい
程凝着しないことを示す。
【0040】機械加工性は、SiC粒子の無添加の粗材
を、工具としてCPXを使って加工した場合の工具寿命
を100とした。但し、SiC粒子が添加された粗材は
気相合成ダイヤモンド工具で加工している。
【0041】
【表2】
【0042】上記表2から明らかなように、SiC粒子
の添加量が5重量%でも無添加の場合に比べて耐摩耗性
は著しく向上し、10体積%でほぼその効果は一定とな
る。
【0043】一方、耐凝着性も同様な傾向にあり、Si
C粒子の添加量が5体積%でも無添加に比べて著しく向
上していることがわかる。しかし、10体積%以上では
凝着の発生はない。
【0044】また、機械加工性は、SiC粒子の添加量
が5体積%でも無添加に比べて加工性が悪くなる。更
に、添加量の増加に伴って加工性は悪化してゆき、30
体積%では工具の刃先に欠けが生じて加工不能である。
【0045】以上の実験から、最適なSiC粒子の添加
量は5体積%から25体積%までで、望ましくは10体
積%から20体積%であることがわかる。
【0046】さらに、以上説明してきたアルミニウム合
金のピストン本体1内にアルミニウム合金部材11を鋳
造により形成したピストンを、内燃機関に組み込んで試
験を行った。ここで、アルミニウム合金部材11のSi
C粒子の添加量は10体積%に設定した。尚、比較のた
めに前述のようなアルミニウム合金部材11をピストン
本体1に形成しないピストンの試験も行った。
【0047】運転条件は、4気筒で排気量が1,600
ccのガソリン機関を用い油温150度,冷却水温度1
20度にて100時間の連続運転を行った。
【0048】この結果、アルミニウム合金部材11を設
けないピストンは50μmの摩耗が発生し、トップリン
グ溝下面の85%に凝着の発生が認められたのに対し、
前記アルミニウム合金部材11を鋳ぐるんだピストンに
は、摩耗も凝着も認められなかった。
【0049】更に、本発明の実施例におけるSiC粒子
10体積%のアルミニウム合金部材11とピストン本体
1の接合部のせん断強度を、従来におけるニレジスト鋳
鉄をアルフィン処理したアルミニウム合金部材とピスト
ン本体の接合部のせん断強度と比較した実験を行った。
この結果、本発明によるせん断強度は、図12に示すよ
うに従来例よりも4倍以上の強度を有していることが明
らかになった。
【0050】請求項3に記載した発明の実施例は、前記
各実施例におけるピストン本体1内に鋳込まれるアルミ
ニウム合金部材11のアルミニウム合金母材に含有され
る成分を変更して、後述する再溶融部の合金成分を最適
に調整したものである。
【0051】即ち、アルミニウム合金部材11は、Si
C粒子を20体積%を含んだアルミニウム合金インゴッ
トを溶解し、溶湯温度を約740℃に保持する。前記ア
ルミニウム合金インゴットは、商品名DURALCAN
(F3K・20Sカタログ参照)の主成分をベースとし
て、目標成分となるようにCu,Ni,Mn,Siを夫
々母合金または純金属の形で以下の表に示すように添加
する。ここで、Cuは銅線、Niは粉末またはワイヤ
ー、MnはAl−60Mn、SiはAl−40Siの母
合金の形で添加した。
【0052】
【表3】
【0053】硬質粒子の添加量を前記のように特定する
と、アルミニウム合金マトリックスにおける硬質粒子の
分散状態が、そのアルミニウム合金の耐摩耗性を向上さ
せる上で最適になる。また、硬質粒子は、アルミニウム
合金マトリックスの結晶転位を固着してクリープ特性及
び耐応力腐食割れ特性の改善,熱膨張係数の低下,ヤン
グ率及び疲労強度,耐摩耗性,耐凝着性の向上等の諸効
果を有する。
【0054】ただし、アルミニウム合金マトリックスに
対する硬質粒子の含有量が0.5重量%を下回ると、耐
摩耗性が改善されず、またヤング率の向上及び熱膨張係
数の減少の程度も低くなり、一方、15.0体積%を上
回ると、相手材の摩耗が増大する。
【0055】他の成分の含有理由及び含有量の限定理由
は以下の通りである。
【0056】(a) Cuについて Cuは、金属間化合物を形成し、アルミニウム合金マト
リックスを強化し耐摩耗性、耐凝着性を向上させる効果
を有する。ただし、10重量%を下回ると前記効果を得
ることができず、一方、23重量%を上回ると、非常に
硬くなる一方、脆くなり、耐摩耗性が悪化する。そし
て、溶融部のCu量を変化させ、摩耗試験を行い、図1
3のような結果を得た。また、耐摩耗性の評価方法は、
図10に示す装置を用いて行った。即ち、図外のモータ
で回転する回転台上にピストンリングを固定して、この
上部にヒータの下端に固定されたテストピースを押し付
けて摩耗させる。このテストピースは、ピストン本体の
リング溝から切り出したアルミニウム合金部材である。
この方法における温度、潤滑状態等の試験条件は、実際
のエンジンのピストンと相関性のあるものとした。評価
は試験後の摩耗深さで行った。
【0057】このような成分構成になる様にアルミニウ
ム合金部材の成分をあらかじめ調整しておく。
【0058】そして、目標成分に調整後、溶湯中のSi
C粒子を均一に分散するため溶湯の撹拌を行う。その
後、アルミニウム合金部材11を前述の方法で鋳造す
る。
【0059】尚、鋳造後のアルミニウム合金部材11
は、合金母材が高硬度になるため、切削加工が困難にな
り、したがって、ニアネット(正味に近い)の形状に鋳
造することが望ましい。
【0060】また、アルミニウム合金部材11の鋳造後
に、リングランド部3の外周切削加工を行い、アルミニ
ウム合金部材11の外周面を平滑にしてもよい。その
後、アルミニウム合金部材11とピストン本体11の境
界面20を電子ビームの高いエネルギー密度の熱源で再
溶融して接合する。
【0061】ここで、ピストン本体1のアルミ合金母材
が例えばAC8Aである場合は、再溶融部21の合金濃
度は前述の目標成分より低くなり、Cuが約20.0重
量%,SiCが約10体積%になる。これらが、最終的
に得たい合金成分の代表値である。
【0062】即ち、再溶融部21のアルミニウム合金
は、10.0重量%≦Cu≦23.0重量%、Sic粒子
は5体積%以上、25体積%以下になる。
【0063】このように、再溶融部21の合金濃度とす
ることにより、該再溶融部21内にブローホールの発生
を防止できると共に、合金濃度の低下が防止される。
【0064】つまり、本実施例のように再溶融部21の
合金濃度を設定しておけば、粉末粒子間に空気の残留を
防止できると共に、合金濃度の低下が防止されて、アル
ミ合金粉末を使った材料の様に耐摩耗性,耐凝着性等の
向上を図ることができる。
【0065】なお、本発明は前記実施例の構成に限定さ
れるものではなく、例えばアルミニウム合金部材11の
巾を大きく設定して、外周部にトップリング溝と他の二
つのピストンリング溝を形成することも可能である。
【0066】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、請求項1
および2記載の発明によれば、SiC粒子を含有したリ
ング溝形成用のアルミニウム合金部材をアルミニウム合
金製のピストン本体の凹部内に鋳造により形成する構成
としたため、従来のような高圧凝固法を用いることなく
単に重力鋳造によって成形できる。
【0067】しかも、前記従来例のニレジスト鋳鉄の鋳
ぐるみ方法のように、別個に製造された鋳ぐるみ材をピ
ストン本体に鋳ぐるんで設けるのではなく、アルミニウ
ム合金部材をピストン本体の鋳造時に該ピストン本体に
直接形成したため、製造作業能率の向上とコストの低廉
化が図れる。
【0068】また、ピストン本体とアルミニウム合金部
材との境界面を、高エネルギー熱源によって再溶融して
冷却接合したため、該境界面部位の接合強度が極めて高
くなる。また、アルミニウム合金部材の特異な内部構造
によって軽量化が図れることは勿論のこと、SiC粒子
が均一に分散するため、耐摩性及び耐凝着性の向上が図
れる。
【0069】さらに、請求項3記載の発明によれば、合
金濃度の低下が防止されて、耐摩耗性,耐凝着性等が一
層向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施例を示すピストンの要部断面図。
【図2】本実施例のピストンの縦断面図。
【図3】A〜Dは本実施例のピストンの成形行程を示す
説明図。
【図4】ピストン冠部の凹部にアルミニウム合金部材を
形成した状態を示す縦断面図。
【図5】Aは図4の要部拡大図、Bはピストン本体とア
ルミニウム合金部材との境界面の再溶融部を示す要部拡
大図、Cはアルミニウム合金部材にリング溝を切削加工
した状態を示す要部拡大図。
【図6】Aは本発明の第2実施例を示し、リング溝形成
用のアルミニウム合金部材とピストン本体の再溶融部を
示す拡大断面図、Bはアルミニウム合金部材にリング溝
を切削加工した状態を示す拡大断面図。
【図7】Aは再溶融前におけるアルミニウム合金部材の
顕微鏡写真を図面化した組織図、Bは再溶融後における
境界面部の顕微鏡写真を図面化した組織図。
【図8】本発明の第3実施例を示し、冠部のトップラン
ド上部にアルミニウム合金部材を形成した状態を示す縦
断面図。
【図9】Aは本実施例の再溶融前における要部拡大図、
Bはアルミニウム合金部材全体とピストン本体の境界面
とを再溶融した状態を示す要部拡大図、Cは再溶融接合
後においてアルミニウム合金部材の外周にリング溝を切
削加工した状態を示す要部拡大図。
【図10】耐摩耗性のテスト装置を示す説明図。
【図11】耐凝着性のテスト装置を示す説明図。
【図12】本発明と従来例のせん断強度を比較して示す
棒グラフ。
【図13】摩耗試験の結果を示すグラフ。
【符号の説明】
1…ピストン本体 2…冠部 3…リングランド部 4…トップリング溝 7…トップリング 11…アルミニウム合金部材 20…境界面 21…再溶融部。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B23K 15/00 505 B23K 15/00 505 26/00 310 26/00 310N F16J 1/01 F16J 1/01 9/00 9/00 A

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム合金製からなるピストン本
    体の外周に複数のピストンリング溝が形成されてなる内
    燃機関のピストンにおいて、 前記ピストン本体のピストンリング溝の少なくともトッ
    プリング溝に対応する位置に環状凹部を形成すると共
    に、環状凹部内に、炭化珪素の粒子を含有したリング溝
    形成用のアルミニウム合金部材を鋳造により形成し、か
    つ前記アルミニウム合金部材と前記凹部との接合境界面
    を、高エネルギー密度の熱源により再溶融接合すると共
    に、前記アルミニウム合金部材の外周にリング溝を形成
    したことを特徴とする内燃機関のピストン。
  2. 【請求項2】 アルミニウム合金製からなるピストン本
    体の外周にピストンリング溝形成用のアルミニウム合金
    部材を鋳造する内燃機関のピストンの製造方法であっ
    て、 前記ピストン本体の成形時に、前記ピストンリング溝の
    少なくともトップリング溝に対応する位置に環状の凹部
    を形成し、続いて、前記凹部内に、炭化珪素の粒子を含
    有したアルミニウム合金部材を鋳造して凝固させた後、
    該アルミニウム合金部材と前記凹部との接合境界面を、
    高エネルギー密度の熱源により再溶融して冷却接合した
    ことを特徴とする内燃機関のピストンの製造方法。
  3. 【請求項3】 アルミニウム合金製からなるピストン本
    体の外周に複数のピストンリング溝が形成されてなる内
    燃機関のピストンにおいて、 前記ピストンリング溝の少なくともトップリング溝に対
    応する位置に環状凹部を形成すると共に、該凹部内に、
    炭化珪素の粒子を含有しかつピストン本体の母材よりも
    高濃度の合金元素を含むリング溝形成用のアルミニウム
    合金部材を鋳造により形成し、かつ該アルミニウム合金
    部材と前記凹部との接合境界面を、高エネルギー密度の
    熱源により再溶融し、さらに、この再溶融部のアルミニ
    ウム合金を、 10.0重量%≦Cu≦23.0重量%、 及び不可避不純物を含むアルミニウム合金マトリックス
    に、Al23粒子,SiC粒子,Si34粒子,ZrO
    2粒子,SiO2粒子,TiO2粒子,WC粒子及び金属
    Si粒子から選択される少なくとも一種の硬質粒子を、
    前記アルミニウム合金マトリックスに対して5体積%以
    上、25体積%以下分散させたことを特徴とする内燃機
    関のピストン。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016535195A (ja) * 2013-07-31 2016-11-10 マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングMAHLE International GmbH 浸潤可能なインサート部品

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JP2016535195A (ja) * 2013-07-31 2016-11-10 マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングMAHLE International GmbH 浸潤可能なインサート部品

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