JPH09256129A - 絞り加工用高強度熱処理型アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

絞り加工用高強度熱処理型アルミニウム合金板の製造方法

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JPH09256129A
JPH09256129A JP8722996A JP8722996A JPH09256129A JP H09256129 A JPH09256129 A JP H09256129A JP 8722996 A JP8722996 A JP 8722996A JP 8722996 A JP8722996 A JP 8722996A JP H09256129 A JPH09256129 A JP H09256129A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 DI缶胴、DRD缶胴、缶蓋等に使用される
絞り加工用Al合金板として、高強度を有すると同時
に、絞り加工性、しごき加工性等の缶成形性が優れてお
り、しかも材料特性の経時変化の少ないものを提供す
る。 【解決手段】 請求項1:Zn3〜6%、Mg0.5〜
3%、Mn0.5%超1.5%以下、残部実質的にAl
なるAl合金を所定の板厚に仕上げた後、450〜55
0℃で5分以下の短時間溶体化処理を施し、さらに80
〜150℃×1〜24時間の人工時効処理を施してか
ら、70%以下の最終冷間圧延を施す。 請求項2:前
記各成分のほか、Cu1〜2.5%を含むAl合金につ
いて、所定の板厚まで仕上げた後、450〜540℃で
5分以下の短時間溶体化処理を施し、前記同様の人工時
効処理および最終冷間圧延を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は高強度が要求され
る絞り加工用の熱処理型アルミニウム合金板の製造方法
に関し、特にアルミニウム2ピースDI缶の缶胴材や缶
蓋材あるいは食缶(DRD缶)などの主として容器材料
として使用される絞り加工用アルミニウム合金板の製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】絞り加工が施されて用いられるアルミニ
ウム容器としては、DI加工(絞り−しごき加工)が施
されて成形される2ピースDI缶や、DRD加工(絞り
−再絞り加工)が施されて成形されるDRD缶(食
缶)、そのほか各種の深絞り缶がある。これらのアルミ
ニウム缶のうち最も代表的なDI缶の製造方法として
は、缶胴素材に対して深絞り加工、しごき加工によるD
I加工を施して缶胴形状を得た後、所定のサイズにトリ
ミングを施してから塗装焼付け処理を施し、その後缶胴
縁部に対してネッキング加工(口絞り加工)、フランジ
加工(口拡げ加工)を行ない、さらに別に成形した缶蓋
(缶エンド)を合せてシーミング加工(巻締め加工)を
行なうのが通常である。このようにDI缶などの製造に
は多種類の加工が施されるところから、深絞り性、しご
き性、口絞り性、口拡げ性、張出性などの種々の加工性
と強度とのバランスから、その材料が選択、検討されて
いる。
【0003】そして前述のような各種のアルミニウム缶
のうち、DI缶の缶胴材としてはJIS 3004合金
やAA3104合金のH19材あるいはH39材などが
多用され、またDI缶の缶蓋材にはJIS 5052合
金やJIS 5082合金、JIS 5182合金のH
18材もしくはH38材などが多用され、さらにDRD
缶やその他の深絞り缶にはJIS 5052合金のH1
8材もしくはH38材やAA5042合金のH38材な
どが多用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】アルミニウム2ピース
DI缶で代表されるアルミニウム缶に対しては、材料コ
スト低減のために従来より一層薄肉化することが強く望
まれている。そこでこれらのアルミニウム缶の材料に
は、薄肉化しても充分な高強度を有しかつ優れた絞り加
工性などの成形性を確保し得る材料が望まれている。し
かしながら前述のような従来のアルミニウム缶用アルミ
ニウム合金板では、例えば缶胴用合金板の場合製缶後の
200℃×20分程度の塗装焼付処理時において、また
缶蓋用合金板の場合製缶前の270℃×20秒程度の塗
装焼付処理時において軟化を起してしまうため、最終的
に得られる強度はせいぜい300N/mm2 程度となる
から、薄肉化を図るためには強度不足となってしまう。
また前述のような従来の合金系をベースとして例えばC
u等の強化元素を添加したり、あるいは素材の冷間加工
率を大きくするなどの手段によって強度向上を図ること
も考えられるが、その場合には成形性が著しく低下して
しまい、缶材料としては不適当となってしまう。
【0005】ところで各種のアルミニウム合金のうちで
も2000系(Al−Cu−Mg系)あるいは7000
系(Al−Zn−Mg系)の熱処理型合金では、耐力で
400N/mm2 を越える高強度を得ることができるこ
とから、高強度を要する構造用材料として多用されてい
るが、構造用材料の場合溶体化処理のままの状態、ある
いは人工時効処理を施した状態で使用されるのが通常で
あり、成形加工が施されたとしても極く軽微な加工に過
ぎない。またこれらの熱処理型合金を強い成形加工を必
要とする用途に用いる場合には、軟質材の状態で成形し
て、その後溶体化処理や人工時効処理を施して強度を確
保することも行なわれているが、缶用材料としてはこの
ようなプロセスは不適切である。いずれにしても、これ
らの従来の熱処理型合金では、強度は充分に高いもの
の、溶体化処理後の状態で成形性、とりわけ絞り性、し
ごき性、張出し性に劣り、そのため缶用材料に適用する
ことは考えられていなかった。
【0006】さらにDI缶の缶胴用材料の場合、高強度
と優れたDI成形性(絞り加工性、しごき加工性)が要
求されるばかりでなく、DI缶胴に成形して塗装焼付処
理を施した後のネッキング加工、フランジ加工、シーミ
ング加工での成形性も要求される。近年の缶胴の薄肉化
に伴ってフランジ部の肉厚も減少してきているため、フ
ランジ加工、シーミング加工中におけるフランジ部の破
断が生じやすくなっており、そのためフランジ加工性や
シーミング加工性の改善が強く望まれ、さらに缶蓋の軽
量化のためにネック径の小径化、したがってネッキング
加工量の増加の要請もあり、そこでより一層のフランジ
部の成形性向上が求められている。また缶蓋材の場合は
深絞り性のほか、張出し性、開口性のより一層の向上も
望まれている。
【0007】ところで本願発明は、既に特願平7−15
3899号において、「絞り加工用高強度熱処理型アル
ミニウム合金板およびその製造方法」を提案している。
この提案は、基本的には7000系合金をベースとした
熱処理型DI缶用合金と、その熱処理方法についてのも
のである。具体的には、Zn3〜6wt%、Mg0.5
〜3wt%、Mn0.5wt%を越え1.5%wt以下
を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるD
I缶用合金、あるいは前記各合金元素のほか、Cu0.
1〜2.5wt%を添加したDI缶用の合金を提案する
と同時に、これらの合金について、所定の板厚まで仕上
げた後、450〜550℃の範囲内あるいは450〜5
40℃の範囲内の温度で溶体化処理を施し、さらに30
%を越え75%以下の圧延率で冷間圧延を施す方法を提
案している。
【0008】上記提案によれば、熱処理型合金として高
強度を示すと同時に、絞り加工性等の良好な成形性を確
保することができ、そのほか前述の諸要求を満たすこと
が可能となった。しかしながらさらに実用化のための検
討を進めたところ、上記提案の合金は、素材製造メーカ
ーにおいて板材を製造後、製造メーカーにおいて製缶す
るまでの間の保管などの期間中において熱処理型合金に
特有の経時変化によって材料の強度、特に耐力が上昇
し、そのため板製造から製缶まで長期間経過した場合に
は製缶時におけるしごき性などの成形加工性が低下して
しまう問題があり、そのほか板製造後の製缶までの期間
によって製缶時の強度、成形性にばらつきが生じてしま
う問題があることが判明した。
【0009】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、前述の諸要求を満たすことができると同時
に、板製造後の経時変化が少なく、板を製造してから長
期間経過してから製缶する場合でもしごき性等の成形加
工性の低下や材料特性のばらつきを招くおそれが少ない
絞り加工用アルミニウム合金板の製造方法を提供するこ
とを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するた
め、本発明者等が鋭意実験・研究を重ねた結果、前記提
案の成分組成の合金に対する製造プロセス、製造条件を
適切に定めることによって、熱処理型合金として高強度
を示すと同時に絞り加工性等の良好な成形性を確保する
ことができるばかりでなく、板製造後の経時変化が少な
いアルミニウム合金板が得られることを見出し、この発
明をなすに至った。
【0011】具体的には、請求項1の発明の絞り加工用
高強度熱処理型アルミニウム合金板の製造方法は、Zn
3〜6%、Mg0.5〜3%、Mn0.5%を越え1.
5%以下を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よ
りなる合金を所定の板厚まで仕上げた後、450〜55
0℃の範囲内の温度で5分以下の溶体化処理を施し、次
いで80〜150℃の範囲内の温度で1〜24時間の人
工時効処理を施し、さらに70%以下の圧延率で冷間圧
延を施すことを特徴とするものである。
【0012】また請求項2の発明の絞り加工用高強度熱
処理型アルミニウム合金板の製造方法は、Zn3〜6
%、Mg0.5〜3%、Cu0.1〜2.5%、Mn
0.5%を越え1.5%以下を含有し、残部がAlおよ
び不可避的不純物よりなる合金を所定の板厚まで仕上げ
た後、450〜540℃の範囲内の温度で5分以下の溶
体化処理を施し、次いで80〜150℃の範囲内の温度
で1〜24時間の人工時効処理を施し、さらに70%以
下の圧延率で冷間圧延を施すことを特徴とするものであ
る。
【0013】
【発明の実施の形態】この発明においては、成分組成面
においては、基本的には熱処理型合金としてZnおよび
Mgによる析出硬化に基づく強度向上を図るとともにM
nの添加により組織の安定化、しごき加工性の向上を図
り、さらに必要に応じてCuを添加して固溶強化により
強度向上を図り、また製造プロセス面からは、溶体化処
理の時間を短時間として絞り加工用材料として充分な成
形性が確保されるようにし、併せて溶体化処理後に適切
な条件で人工時効処理を行なうことによって、板製造後
の経時変化を抑制することとしている。
【0014】そこで先ずこの発明における成分組成の限
定理由を説明する。
【0015】Zn:ZnはMgとともにMgZn2 を形
成して、析出硬化による強度向上に有効である。Zn量
が3%未満では強度向上の効果が充分に得られず、一方
6%を越えれば圧延性が低下するとともに缶成形性も低
下させ、さらには耐食性の低下を招く。したがってZn
量は3〜6%の範囲内とした。
【0016】Mg:MgはZnとともにMgZn2 を形
成して、析出硬化による強度向上に有効である。またM
gは、単独でも固溶強化による強度向上に有効である。
Mg量が0.5%未満では強度向上の効果が充分に得ら
れず、一方3%を越えれば圧延性が低下するとともに、
缶成形性を低下させる。したがってMg量は0.5〜3
%の範囲内とした。
【0017】Mn:Mnは結晶粒の微細化、安定化に有
効な元素であり、またMn系金属間化合物による固体潤
滑効果によってしごき加工性を向上させる。Mn量が
0.5%以下ではこれらの効果が充分に得られず、一方
1.5%を越えればMnAl6 の初晶巨大金属間化合物
が生成されて、成形性、とりわけフランジ成形性を著し
く損なってしまい、またMn系金属間化合物にMgZn
2 析出物が不均一に粗大析出して、強度向上が図れなく
なってしまう。したがってMn量は0.5%を越え1.
5%以下の範囲内とした。
【0018】Cu:Cuは固溶強化による強度向上に有
効な元素であり、そこで請求項2の発明の合金において
積極的に添加することとした。Cu量が0.1%未満で
は強度向上の効果が充分に得られず、一方2.5%を越
えれば成形性、耐食性が劣化する。したがって請求項2
の発明においてCu量は0.1〜2.5%の範囲内とし
た。なお請求項1の発明の合金においても、Cuは不純
物として0.1%未満含有される場合があることは勿論
である。
【0019】以上の各元素のほかは、基本的にはAlお
よび不可避的不純物とすれば良い。一般的な不純物とし
てはFe,Si,Cr,Zr等があるが、Feは0.7
%未満、Siは0.5%未満、Crは0.3%未満、Z
rは0.3%未満であればこの発明の効果を損なうこと
はない。また一般のアルミニウム合金では鋳塊組織微細
化のために微量のTiを単独であるいはBと複合して添
加することがあり、またTi,Bは不純物として含有さ
れることもあるが、この発明でもTiは0.2%未満、
Bは0.05%未満であれば特にこの発明の効果を損な
うことはない。
【0020】次にこの発明における製造プロセスについ
て説明する。
【0021】前述のような成分組成の合金を所定の中間
板厚に仕上げるまでの工程(溶体化処理前までのプロセ
ス)は特に限定しないが、通常はDC鋳造法(半連続鋳
造法)によって鋳造した後、均質化処理を施し、さらに
熱間圧延を行ない、必要に応じて冷間圧延を施して、所
定の中間板厚とすれば良い。あるいはまた連続鋳造法を
適用し、さらに必要に応じて均質化処理、冷間圧延を行
なって、所定の中間板厚としても良い。
【0022】ここで、DC鋳造は常法に従って行なえば
良い。また均質化処理も常法に従って400〜500℃
において1〜24時間程度加熱すれば良い。均質化処理
の加熱時間が1時間未満、加熱温度が400℃未満では
いずれも均質化の効果が得られず、一方加熱時間が24
時間を越えれば均質化の効果が飽和して経済性を損なう
だけであり、また加熱温度が500℃を越えれば共晶融
解による局所溶解が発生するおそれがある。
【0023】均質化処理後には直ちに、あるいは熱間圧
延前予備加熱を行なってから、熱間圧延を行なうが、こ
の熱間圧延は、その開始温度を400〜500℃の範囲
内、終了温度を200〜350℃の範囲内とすることが
好ましい。熱間圧延開始温度が400℃未満では変形抵
抗が大きく、圧延性が悪くなり、一方500℃を越える
熱間圧延開始温度では熱延割れが発生するおそれがあ
る。なおこの熱間圧延は、均質化処理温度以上で開始す
ることが望ましく、このようにすることによって、均質
化処理後の粗大析出物の形成を抑制することができる。
また熱間圧延終了温度が200℃未満では圧延が困難で
あり、一方350℃を越える熱間圧延終了温度では熱間
圧延上り後に金属間化合物の不均一な粗大析出が促進さ
れてしまって、その後の溶体化処理性が低下し、さらに
は絞り性、張出性、口拡げ性を劣化させる。
【0024】一方連続鋳造法を適用する場合、ロール間
に直接溶湯を注入して凝固させる方法(薄板連続鋳造
法)を適用しても、あるいはベルトやブロック間に溶湯
を注入して凝固させる方法を適用しても良く、いずれの
場合も必要に応じて熱間圧延を行なっても良い。なお連
続鋳造法を適用する場合、鋳造板厚は1〜10mmの範
囲内が好ましい。鋳造板厚が1mm未満では鋳造が困難
であり、一方10mmを越えればその後の製品板厚まで
の冷間圧延の負荷が大きくなり、量産性が低下する。
【0025】熱間圧延後あるいは連続鋳造後に必要に応
じて中間板厚とするために行なう冷間圧延は、常法に従
って行なえば良く、圧延率も特に限定されるものではな
い。
【0026】上述のようにして中間板厚まで仕上げた後
には、溶体化処理を施す。この溶体化処理は、450〜
550℃の範囲内の温度もしくは450〜540℃の範
囲内の温度で5分以下の短時間加熱とする必要がある。
溶体化処理温度が450℃未満では、時効析出によって
強度向上に寄与する元素の溶体化が不充分となり、その
ため充分な強度向上を図れなくなる。またCuを積極的
に添加していない請求項1の合金の場合、溶体化処理温
度が550℃を越えれば共晶融解が生じてしまうおそれ
があり、一方Cuを積極的に添加した請求項2の合金の
場合は、Cu添加により融点が下がるため、溶体化処理
温度が540℃を越えれば共晶融解が生じてしまうおそ
れがある。さらにこの溶体化処理は、その処理時間を5
分以下の短時間とし、不完全溶体化とすることが重要で
ある。すなわち、一般に7000系熱処理合金の溶体化
処理時間はJIS 4000において板厚との関係で最
低時間が規定されているが、JISに準拠した長時間の
溶体化処理を施して、完全に溶体化させた場合、高強度
は得られるものの、その後の冷間圧延性が低下するばか
りでなく、絞り性、張出性などの缶成形性が劣化する。
また長時間溶体化処理を行なえば、表面酸化皮膜が厚く
なって、これにより成形性、特にしごき性を劣化させて
しまうところから、溶体化処理後にアルカリ洗浄や酸洗
浄などの表面洗浄処理が必要となり、コストアップを招
いてしまう。これに対し溶体化処理時間を5分以下とし
て、不完全な溶体化を行なえば、缶の肉薄化に必要な程
度の高強度化を図りつつも、絞り性、張出性、しごき性
などの缶成形性を充分に確保することができ、かつ溶体
化処理後の表面洗浄処理も不要となる。このような短時
間の溶体化処理は、連続焼鈍炉を用いれば容易に行なう
ことができる。なお溶体化処理後の冷却速度は、10℃
/sec以上であれば充分である。したがって溶体化処
理後の冷却は、水焼入れのみならず、強制空冷を適用す
ることもできる。
【0027】溶体化処理後には80〜150℃の範囲内
の温度で1〜24時間保持する人工時効処理を施す。こ
のような人工時効処理を施すことによって、微細な析出
物が生成されて加工歪が均質化されるとともに材料強度
の向上が図られ、またその後の最終冷間圧延によって付
与される強度が安定化して冷間圧延性が向上するばかり
でなく、特に最終板の経時変化が抑制されて、製缶時ま
で長期間経過しても製缶時の成形性の低下が少なく、ま
た製缶までの経過期間による強度、成形性のばらつきを
少なくすることができる。すなわち、溶体化処理後にそ
のまま最終の冷間圧延を行なった場合には板製造後に経
時変化が生じて製缶時の強度が上昇して成形性が低下し
たり、製缶時の強度、成形性にばらつきが生じるおそれ
があるが、溶体化処理後に人工時効処理を行なって予め
微細な析出物を生成させておくことにより、板製造時の
放置期間中における微細析出物の析出が少なくなり、経
時変化を防止することができるのである。ここで、人工
時効処理における温度が80℃未満、または保持時間が
1時間未満では上述の効果が充分に得られず、一方温度
が150℃を越えるかまたは保持時間が24時間を越え
れば過時効となって強度の低下を招いてしまう。したが
って人工時効処理は80〜150℃の温度で1〜24時
間と規定した。
【0028】なお溶体化処理後には、直ちに人工時効処
理を施さず、室温に1日(24時間)以上放置して室温
時効させてから人工時効処理を施すことが望ましい。こ
のように人工処理前に24時間以上の室温時効を行なえ
ば、その室温時効中に生成される微細析出物がその後の
人工時効処理による析出物分布を緻密化し、その結果そ
の後の冷間圧延で導入される転位(加工歪)を均質化さ
せる効果を奏することができる。
【0029】前述のようにして人工時効処理を行なった
後には、最終板厚とするための冷間圧延を行なう。この
最終冷間圧延は、圧延率70%以下とする必要がある。
圧延率が70%を越えれば、高強度は得られるものの成
形性が著しく低下し、また深絞り加工における耳率も大
きくなる。なお最終の冷延圧延における圧延率の下限は
特に定めないが、充分な高強度を得るためには30%以
上とすることが望ましい。
【0030】最終の冷間圧延によって製品板厚に仕上げ
られた後には、必要に応じて80〜160℃の範囲内の
温度で1〜12時間保持する最終焼鈍を行なっても良
い。このような最終焼鈍を行なうことによって歪を安定
化し、深絞り性を一層改善することができる。最終焼鈍
の温度が80℃未満、時間が1時間未満では、上述の効
果が得られない。一方最終焼鈍の温度が160℃を越え
れば過時効となって強度低下を招き、また最終焼鈍の時
間が12時間を越えれば強度が高くなり過ぎて成形性、
特に絞り加工性、しごき加工性、フランジ成形性が低下
し、またこの場合、温度によっては過時効となって強度
低下を招く。なお最近の冷間圧延機は高速高圧下のた
め、上り温度が100℃を越えることが多く、この場合
は特に積極的な加熱を行なわなくても、冷間圧延直後の
巻取コイル冷却中の自己焼鈍により最終焼鈍を行なうこ
とができる。
【0031】
【実施例】表1の合金No.1,2の合金について、常
法に従ってDC鋳造法により鋳造し、得られた鋳塊に4
60℃×12時間の均質化処理を施し、面削後470℃
で熱間圧延を開始し、板厚3mmの熱延板とした。また
表1の合金No.3の合金について5mm厚に連続鋳造
圧延し、その後460℃×12時間の均質化処理を施し
た。一方表1の合金No.4はJIS 3004合金相
当の従来材であり、これについてはDC鋳造後、600
℃×5時間の均質化処理を施し、面削後常法に従って2
mm厚まで熱間圧延した。
【0032】このようにして得られた熱延板(もしくは
連続鋳造圧延版)に対して、表2の製造条件符号A〜K
に示す各条件で1次冷間圧延→溶体化処理→人工時効処
理→2次冷間圧延→最終焼鈍を施した。なお一部の製造
条件符号B,E,G〜Iでは人工時効処理または最終焼
鈍を省き、また従来材(合金No.4)に対する製造条
件Kでは人工時効処理を行なわなかった。
【0033】以上のようにして得られた各板について、
機械的性能を調べるとともに、DI缶特性を調べた。そ
の結果を表3に示す。なお機械的性能としては、前述の
ような板製造直後(人工時効処理直後)の状態と、その
後塗装焼付処理として200℃×20分の加熱を行なっ
た後の状態との2状態において引張強度(TS)、耐力
(YS)、伸び(EL)を調べた。一方DI缶特性とし
ては製缶性、フランジ成形性、耐圧強度、外観品質につ
いて調べ、従来材(合金番号4;製造条件符号K)と比
較して評価し、従来材と同等の場合に○印、優れている
場合に◎印、劣る場合に×印を付した。ここで、製缶性
はDI缶胴を4000缶連続して成形し、DI加工での
破断の発生率で評価し、またフランジ加工性については
DI加工後のDI缶胴にネッキング加工を行なった後、
円錐型ポンチを押し込み、フランジ部の破断時の口拡げ
率で評価し、耐圧強度はDI缶に内圧を加えてバックリ
ング発生時の圧力で評価し、さらに外観品質はDI缶胴
表面におけるゴーリングおよびフローラインの発生の有
無および光沢の程度で評価した。
【0034】また、表1の合金No.1の合金につい
て、表2の製造条件符号A〜Dの各プロセスで製造して
得られた各板の材料特性の経時変化として、板製造直後
(最終焼鈍直後)から1日目、3日目、7日目、1ケ月
目、6ケ月目の耐力値を調べた。その結果を表4に示
す。なお表4において「耐力上昇量」は、6ケ月経過時
の耐力と1日目の耐力との差を表わす。また評価として
は、耐力上昇量が10N/mm2 以内の場合に○印を、
10N/mm2 を越える場合に×印を付した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】表3に示されるように、この発明で規定す
る成分組成範囲内の合金(合金No.1〜No.3)に
ついて、この発明で規定するプロセス範囲内の条件で板
を製造した場合(製造条件符号A,G,J)は、従来材
(合金No.4、製造条件符号K;3004合金)と比
較して高強度が達成されており、しかもDI缶特性も同
等以上であることが確認された。
【0040】一方、製造条件符号Cは人工時効処理の温
度が高過ぎた比較例、製造条件符号Eは人工時効処理の
時間が長過ぎた比較例であり、いずれも過時効によって
強度が低下し、またフランジ成形性にも劣っていた。ま
た製造条件符号Fは最終冷間圧延の圧延率が高過ぎた比
較例であるが、この場合は強度が高過ぎて製缶性に劣る
とともに、DI加工後の耳率が高かった。さに製造条件
符号Hは溶体化処理の温度が高過ぎた比較例であるが、
この場合は共晶融解の発生により絞り性が低下し、また
DI缶表面のフローラインの発生により外観品質不良が
生じた。製造条件符号Iは溶体化処理の時間が長過ぎた
比較例であるが、この場合は製缶性が低下するとともに
酸化皮膜によるフローラインの発生によって外観不良が
生じた。
【0041】また材料特性の経時変化については、表4
に示すように、この発明で規定する成分組成範囲内の合
金についてこの発明で規定するプロセス条件で製造した
製造条件符号Aの場合は、6ケ月経過時でも耐力値の上
昇はわずか7N/mm2 に過ぎず、安定した材料特性を
有していることが判る。一方製造条件符号Bは溶体化処
理後に人工時効処理を施さなかった比較例、製造条件符
号Dは溶体化処理後の人工時効処理の温度が低過ぎた比
較例であり、これらの場合はいずれも1ケ月〜6ケ月経
過時の耐力値の上昇が著しく大きく、しごき性も低下し
てしまうことが判明した。
【0042】
【発明の効果】以上の実施例からも明らかなように、こ
の発明によれば、各種の缶等に使用される絞り加工用ア
ルミニウム合金板として、高強度を有すると同時に、優
れた成形性、特に優れた絞り性、しごき性を有し、しか
も経時変化が少なく、材料特性が長期間安定しているア
ルミニウム合金板を得ることが可能となった。すなわ
ち、従来のAl−Mn−Mg−Cu系合金やAl−Mg
−Mn系合金では強度を高めれば絞り性、しごき性が低
下するとされていたが、この発明の場合、成分組成を厳
しく規定し、さらには熱処理型合金として適切な溶体化
処理条件を適用して合金元素の固溶析出状態を適正化す
ることによって、強度を高めながらも良好な成形性を確
保することが可能となり、なおかつ溶体化処理後に適切
な人工時効処理を施しておくことによって、熱処理型合
金に特有の経時変化を抑制することが可能となったので
ある。したがってこの発明によるアルミニウム合金板を
用いれば、特に缶用素材として、薄肉化、高強度化が可
能となり、また板製造から製缶までの経過期間によって
製缶時の材料特性にばらつきが生じることが少なく、特
に板製造から製缶までに長期間経過しても製缶時の成形
性の低下を防止し、安定して製缶することができる。ま
たこの発明の方法によるアルミニウム合金板は、DI缶
胴、DRD缶胴のみならず缶蓋にも適用可能であり、そ
のため缶のユニアロイ化を達成できるから、リサイクル
性を良好にすることもできる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Zn3〜6%(重量%、以下同じ)、M
    g0.5〜3%、Mn0.5%を越え1.5%以下を含
    有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金を
    所定の板厚まで仕上げた後、450〜550℃の範囲内
    の温度で5分以下の溶体化処理を施し、次いで80〜1
    50℃の範囲内の温度で1〜24時間の人工時効処理を
    施し、さらに70%以下の圧延率で冷間圧延を施すこと
    を特徴とする、絞り加工用高強度熱処理型アルミニウム
    合金板の製造方法。
  2. 【請求項2】 Zn3〜6%、Mg0.5〜3%、Cu
    0.1〜2.5%、Mn0.5%を越え1.5%以下を
    含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金
    を所定の板厚まで仕上げた後、450〜540℃の範囲
    内の温度で5分以下の溶体化処理を施し、次いで80〜
    150℃の範囲内の温度で1〜24時間の人工時効処理
    を施し、さらに70%以下の圧延率で冷間圧延を施すこ
    とを特徴とする、絞り加工用高強度熱処理型アルミニウ
    ム合金板の製造方法。
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