JPH09250639A - シリンダヘッドガスケット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ボアまわりのボルト締付け力によって生ずる
ボア変形を軽減してエンジンの高性能化に寄与できるシ
リンダヘッドガスケットを提供する。 【解決手段】 スペーサ６が配されたガスケット１で
は、ボルト穴５が配された部位に大きな面圧力が付与さ
れると、スペーサ６が配された部位にもスペーサ６を介
して大きな面圧力が付与されるようになるために、この
部位においても、そのボア内壁面を膨出させる力が作用
し、これがボルト穴５の配された部位におけるボア内壁
面を膨出させる力を抑制する結果、ボア穴４まわりのボ
ルト締付け力によって生ずるボア変形を軽減させ、ボア
は、ほぼ真円に等しい形状となる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、シリンダヘッドと
シリンダブロックとの間に介装されるシリンダヘッドガ
スケットに関し、特にブロックに穿設されるボアの変形
を軽減させるシリンダヘッドガスケットに関する。

【０００２】

【従来の技術】シリンダヘッドガスケットは、シリンダ
ヘッドとシリンダブロックとの間に介装され、ブロック
のボアまわりに配されるボルトを含む複数のボルトによ
って固定される。この場合、ボアまわりのボルトが配さ
れた部位には、このボルトから大きな面圧力が付与され
て、その部位のボア内壁面にこの内壁面から膨出した凸
部が形成される箇所がある。そこで、ある種のガスケッ
トでは、そのガスケット本体の、ボア穴まわりに配され
るボルト穴のうちの特定のボルト穴に対し、そのボルト
穴まわりに図４に示すような措置を講じ、上記凸部に基
づくボアの変形、又はボアにシリンダライナが配される
場合にはシリンダライナの変形（以下、「ボア変形」と
いう。）を軽減させるようにしている。けだし、このよ
うな変形が生ずると、オイル消費の増加やブローバイガ
スの流出、或いはボアやシリンダライナの摩耗を招き、
エンジンの高性能化を実現する上で、障害となるからで
ある。ところで、同図に示すガスケット１０は、その本
体１０ａを金属製薄板１１，１２で積層してなり、且
つ、ボア穴１３まわりに穿設された複数のボルト穴１４
のうちの特定のボルト穴１４ａまわりに半円形状のスペ
ーサ１５を配したものであり、このような措置を講ずる
ことにより上記ボア変形を軽減させている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな措置が講じられてなるガスケットでは、ボア変形が
２次変形を呈するような場合、即ち、上述のような特定
のボルト穴中心を結ぶ線を長軸（図４では１３ａ）とす
る楕円形状（同図の１３ｂ）に変形するような場合に、
これらのボルト穴まわりに上述のようなスペーサ等を配
し、このボルト穴まわりの面圧力を大きくして楕円形状
のボア変形を軽減させる措置は有効であると考えられる
が、ボア変形をフーリエ解析等を用いて次数分析してみ
ると、ある種のエンジン仕様に製造されたボアの変形形
態においては、上述の２次変形が現れるよりはむしろ、
三角形状を呈する３次変形、四角や五角形状を呈する高
次変形が現れる場合があり、このような場合には上記措
置は有効であるとは言えない。このような高次変形が現
れる原因は、ブロックのボアまわりに配されるボルトの
穴径や深さ、位置それにボルト締付け力の大きさ、及び
ブロックに形成されるウォータジャケットの形態等に拠
ることは言うまでもないが、ガスケットの特性、即ち、
それが積層構造のものであるのか、或いは所謂メタルコ
ア構造のものであるのか、更には、上述のボルト締付け
力に耐え得る高圧縮性や耐クリープ性を有するものであ
るのか否か等にも拠るのであり、ガスケットの特性もボ
ア変形に少なからず影響を与えている。

【０００４】本発明の目的は、この事実に鑑み、ガスケ
ットの特性、特に、ガスケット構造に着目し、ボアまわ
りのボルト締付け力によって生ずるボア変形を軽減して
エンジンの高性能化に寄与できるシリンダヘッドガスケ
ットを提供することにある。また、本発明の目的は、各
ボルト穴まわりの歪量に応じた措置を講じてボア変形を
更に軽減しエンジンの高性能化に寄与できるシリンダヘ
ッドガスケットを提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、本発明のシリンダヘッドガスケットは、シリンダブ
ロックのボアまわりに配されるボルトに対応して穿設さ
れたボルト穴間で、各ボルト穴中心間を結ぶ線に沿う部
位にスペーサを設け、このスペーサが配された部位の厚
みをガスケット本体の厚みより厚く形成せしめる構造と
したものであり、少なくともブロック端部に位置するボ
ルト穴及びボア間に位置するボルト穴以外の前記ボルト
穴中心間を結ぶ線に沿う部位にはスペーサを設けるよう
にして、スペーサが配された部位の厚みをガスケット本
体の厚みより厚く形成せしめる構造としたものである。
このような構造にすれば、ガスケットの特性、即ち、積
層構造のものであるのか、或いはメタルコア構造のもの
であるのかを問わずいずれのものにでも適用できる。そ
して、積層構造のものであればその積層間に配されるス
ペーサ、及びメタルコア構造のものであればその最表面
に配されるスペーサの材質は、高圧縮性、耐クリープ性
を有するものであれば、金属製、樹脂製或いはゴム製の
いずれでもよい。また、スペーサの形状は、ボルト穴中
心間を結ぶ線に沿って適宜な幅を有し、結果的にボア変
形を軽減させ得るものであれば、特に限定されるもので
はない。

【０００６】このようにボルト穴中心間を結ぶ線に沿う
部位にスペーサを設け、スペーサが配されたその部位の
厚みをガスケット本体の厚みより厚く形成することによ
り、ボアまわりのボルトが配された部位に大きな面圧力
が付与され、この部位のボア内壁面に対しこの内壁面を
膨出させる力が作用しても、スペーサが配された部位に
も大きな面圧力が付与されるようになる。そのために、
スペーサが配された部位のボア内壁面に対しこの内壁面
を膨出させる力が作用し、これがボルトの配された部位
におけるボア内壁面を膨出させる力を抑制する結果、ボ
アまわりのボルト締付け力によって生ずるボア変形を軽
減させる。ところで、原則として、ガスケットのボルト
穴中心間を結ぶ線に沿う部位にスペーサを設け、この部
位に大きな面圧力が付与されるようにするのであるが、
ある種のエンジンでは、上記ボアまわりに配されるボル
トのうちブロック端部に位置するボルト中心間を結ぶ線
に沿う部位には、大きな面圧力が付与される場合があ
り、このような場合には、この部位のボア内壁面に対し
この内壁面を膨出させる力が作用するので、この部位に
は上記スペーサを配するには及ばない。また、相隣り合
うボア間に位置するボルト中心間を結ぶ線に沿う部位に
は、このボルトが配された部位におけるボア内壁面を膨
出させる力が、相隣り合うボアのそれぞれの内壁面に分
散される場合があり、このような場合にも、敢えて上記
スペーサを配するには及ばない。

【０００７】また、前記課題を解決するために、本発明
のシリンダヘッドガスケットは、スペーサが配された部
位の厚みをガスケット本体の厚みより厚く形成する場合
に、ボルトの締め付け力によって生ずるこのボルトまわ
りの歪量に相当する量だけ厚く形成せしめたものであ
る。即ち、ガスケット本体の厚みは、一般的には１．２
〜１．５ｍ／ｍであり、一方、ボルトの締め付け力によ
って生ずるこのボルトまわりの歪量、即ち、ブロックの
歪量にガスケットの歪量を加えたものは、０．０１〜
０．３ｍ／ｍであるので、スペーサの厚みは、この大き
さに相当するものを使用するが、通常、０．１〜０．２
ｍ／ｍ位としている。しかし、この歪量は一様でないの
で、その歪量に応じた厚みのスペーサを配するようにす
ると、ボア変形を尚一層軽減させることができるので好
ましい。

【０００８】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態の一例を図１
〜図３を参照して説明する。本実施の形態に係るシリン
ダヘッドガスケット１は、シリンダヘッド２とシリンダ
ブロック３との間に介装され、ブロック３の図示しない
ボア及びボアまわりに配されるボルトに対応して穿設さ
れたボア穴４及びボルト穴５をそれぞれ有する。そし
て、このガスケット本体１ａには、３つのボア穴４が設
けられ、そのボア穴４まわりに略６等分間隔でボルト穴
５がそれぞれ穿設され、相隣り合うボア穴４間に位置す
るボルト穴５ａは、これらのボア穴４同士間で重複する
状態で穿設されている。このようにして穿設されたボル
ト穴５のうち、ボア穴４同士間に位置するボルト穴５ａ
のそれぞれの中心を結ぶ線に沿う部位１ｂを除く、ボル
ト穴５ａの中心とボルト穴５ｂの中心間等を結ぶ線に沿
う部位に、図１に示すように、適宜な大きさで長方形状
の金属製スペーサ６を設けている。

【０００９】そして、このスペーサ６は、その中心線
が、上記ボルト穴５ａの中心とボルト穴５ｂの中心間等
を結ぶ線に一致するように配され、また、本実施例のよ
うにガスケット本体１ａを積層構造とするものであれ
ば、このガスケット本体１ａを構成する金属製薄板７と
８との間に配される。この場合、スペーサ６が配された
部位の厚みＢをガスケット本体１ａの厚みＣより厚く形
成し、スペーサ６の厚さを０．１〜０．２ｍ／ｍとす
る。ところで、スペーサ６の形状は、所定ボルト穴５の
中心間を結ぶ線に沿って適宜な幅を有し、結果的にボア
変形を軽減させ得るものであれば、特に限定されるもの
ではなく、例えば、図２に示すようなスペーサ６ａや６
ｂの形状のものであってもよい。

【００１０】次に、このような構造をなすガスケット１
を用いて、ボア変形が軽減されるメカニズムを図３を参
照して説明する。ところで、スペーサ６が配されていな
い場合には、ボア穴４まわりのボルト穴５が配された部
位に大きな面圧力が付与されると、この部位のボア内壁
面に対しその内壁面を膨出させる力が作用して、ボア
は、同図の２点鎖線で示すような高次変形を呈するボア
変形を生ずる。しかし、本実施例のようにスペーサ６が
配されたガスケット１では、ボルト穴５（５ａ，５ｂ，
５ｃ等）が配された部位に大きな面圧力が付与される
と、スペーサ６が配された部位にもスペーサ６を介して
大きな面圧力が付与されるようになるために、この部位
においても、そのボア内壁面を膨出させる力が作用し、
これがボルト穴５の配された部位におけるボア内壁面を
膨出させる力を抑制する結果、ボア穴４まわりのボルト
締付け力によって生ずるボア変形を軽減させ、ボアは、
同図の実線で示すような、ほぼ真円に等しい形状とな
る。

【００１１】ところで、本実施例に係るガスケット１を
使用するエンジンでは、ボア穴４まわりに配されるボル
ト穴５のうち相隣り合うボア穴４間に位置する、例えば
ボルト穴５ａのそれぞれの中心を結ぶ線に沿う部位１ｂ
においては、これらのボルト穴５ａが配された部位にお
けるボア内壁面を膨出させる力が、相隣り合うボアのそ
れぞれの内壁面に分散されて小さくなるために、スペー
サ６を配する必要はない。尚、ある種のエンジンでは、
ブロック３端部に位置する、例えばボルト穴５ｃのそれ
ぞれの中心を結ぶ線に沿う部位１ｃには、スペーサ６を
配さずとも大きな面圧力が付与されて、そのボア内壁面
を膨出させる力が作用する場合がある。そのような場合
には、ボア変形を軽減させる目的で、この部位１ｃにス
ペーサ６を配する必要はない。

【００１２】

【発明の効果】本発明のシリンダヘッドガスケットによ
れば、ブロックに設けられるボアの、そのまわりに配さ
れるボルトの締付け力によって生ずるボア変形を軽減さ
せ、エンジンの高性能化に寄与することができる。ま
た、本発明のシリンダヘッドガスケットによれば、各ボ
ルト穴まわりの歪量に応じた措置を講じてボア変形を更
に軽減させ、エンジンの高性能化に寄与できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本実施の形態に係るシリンダヘッドガスケッ
トの平面図及びその平面図におけるＡ−Ａ拡大断面図で
ある。

【図２】 本ガスケットに設けられる各種スペーサ形状
の部分拡大断面図である。

【図３】 図１のガスケットによるボア変形の軽減メカ
ニズムを説明するための説明図である。

【図４】 従来のシリンダヘッドガスケットの平面図及
びその平面図におけるＡ１−Ａ１拡大断面図である。

【符号の説明】

１ シリンダヘッドガスケット １ａ ガスケット本体 ４ ボア穴 ５（５ａ，５ｂ，５ｃ） ボルト穴 ６ スペーサ Ｂ スペーサが配された部位の厚み Ｃ ガスケット本体の厚み

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石井 崇夫 千葉県八千代市八千代台北12丁目21番地９ 号 レオパレス八千代台13−205

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダブロックのボア及び該ボアまわ
   りに配されるボルトに対応して穿設されたボア穴及びボ
   ルト穴をそれぞれ有するシリンダヘッドガスケットにお
   いて、前記ガスケット本体の前記ボルト穴であって、少
   なくとも前記ブロック端部に位置するボルト穴及び前記
   ボア穴間に位置するボルト穴以外の前記ボルト穴の中心
   間を結ぶ線に沿う部位にスペーサを設け、該スペーサが
   配された部位の厚みを前記ガスケット本体の厚みより厚
   く形成せしめたことを特徴とするシリンダヘッドガスケ
   ット。
2. 【請求項２】 前記部位の厚みを前記ガスケット本体の
   厚みより厚く形成する場合に、前記ボルト締め付け力に
   よって生ずる該ボルト穴まわりの歪量に相当する量だけ
   厚く形成せしめたことを特徴とする請求項１に記載のシ
   リンダヘッドガスケット。