JPH09209154A - 被膜を備えた光学物品の製造方法 - Google Patents

被膜を備えた光学物品の製造方法

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JPH09209154A
JPH09209154A JP8021241A JP2124196A JPH09209154A JP H09209154 A JPH09209154 A JP H09209154A JP 8021241 A JP8021241 A JP 8021241A JP 2124196 A JP2124196 A JP 2124196A JP H09209154 A JPH09209154 A JP H09209154A
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JP
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hard coat
layer
coat layer
plasma
gas
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Application number
JP8021241A
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English (en)
Inventor
Tetsuo Suzuki
哲男 鈴木
Hiroshi Niikura
宏 新倉
Atsushi Abe
淳 阿部
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Original Assignee
Nikon Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐環境性が大きく、気相成長法により一貫した
工程で形成することができる被膜を備えた光学物品を提
供する。 【解決手段】基材の上に、Siを含む有機化合物ガスお
よびTiを含む有機化合物ガスの少なくとも一方を用
い、プラズマを用いた化学気相成長法により、厚さ方向
に向かって屈折率が変化している変性層を形成する。記
変性層の上に、Siを含む有機化合物ガスと、酸素ガス
との混合ガスを用い、プラズマを用いた化学気相成長法
により、ハードコート層を形成する。ハードコート層の
表面を、少なくとも酸素ガスを含むガスのプラズマによ
って活性化処理する。活性化処理されたハードコート層
の上に、反射防止膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐擦傷性向上のた
めの硬化層を表面に備えた物品の製造方法に係わり、特
に、CRTディスプレー、光学用レンズ、液晶表示素子
などの光学的物品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】眼鏡用プラスチックレンズ等の光学物品
の耐擦傷性を向上させるために、ハードコートと呼ばれ
る被膜を表面に形成する技術が知られている。この被膜
を形成するために、従来、シランカップリング剤に対象
物を浸漬する浸漬表面処理(ディッピング)技術が用い
られている。この浸漬表面処理技術は、対象物の素材が
合成樹脂である場合、耐熱性の点などから非常に有効な
技術であることが知られている。
【0003】また、浸漬表面処理技術においては、被膜
の材質が異なると、浸漬剤の組成も異なる。このため、
例えば、プラスチックレンズにハードコートを形成する
場合には、新たな高屈折率レンズが開発されるたびに、
これに対応可能な屈折率のハードコートを形成するため
の浸漬剤を開発しなければならない。そのため、浸漬剤
の開発費用の負担が重くなってきている。
【0004】また、プラスチックレンズの場合、レンズ
の屈折率ごとに用いる浸漬剤が異なるため、浸漬表面処
理用の装置等の設備を、屈折率ごとに、複数台設置しな
ければならない。このため、設備の減価償却費が毎年増
大する傾向にある。
【0005】さらに、最近では特注品のプラスチックレ
ンズを受注する傾向がある。特に、眼鏡レンズの場合、
1ペア(2枚)で受注し、そのまま製造工場の一貫製造
ラインを流れる工程などが検討されている。この場合、
特注品がどのような屈折率であってもハードコートを形
成できるようにするためには、常に全屈折率分の浸漬表
面処理装置ラインを設置しておく必要があり、生産効率
が悪くなる欠点を有している。
【0006】また、従来の浸漬表面処理法でハードコー
トを形成する場合、コートする前の表面処理として、ア
ルカリ溶液に浸すというような表面の活性化処理等が不
可欠である。しかしながら、最近、環境問題などからこ
れらに使用される廃液処理等の問題が起こり始めてい
る。さらにまた、従来の被膜の製造工程では縮合硬化工
程が必須であり、この工程に数時間要するため、納期の
短縮化を計る上で非常に重要な改善上の課題となってい
る。また、複数の被膜を積層する必要のある物品の場
合、これらの被膜を全て浸漬表面処理法で形成すると、
高価な浸漬剤が何種類も必要になり、製造コストに見合
わなくなるという問題も生じている。
【0007】そこで、浸漬表面処理法を用いずに被膜を
形成する技術として、プラズマCVDによって被膜を製
造する技術が、特開平5ー140356に開示されてい
る。この技術は、車両などに使われる透明樹脂製窓に、
密着性及び表面硬度を向上させるための表面硬化膜を形
成するために、プラズマCVDによってシリコン含有膜
(SiOx膜)を形成するものである。
【0008】また、複数層の被膜を形成するために、ヨ
ーロッパ特許EP−203730号においては、光学部
品基材上に有機ケイ素化合物を浸漬表面処理法により形
成し、その上に反射防止膜を形成し、さらにその上に有
機物硬化性物質(撥水性コート)を形成させるものが提
案されている。
【0009】また、特開昭62−247302号公報で
は、無機物の反射防止コート膜上に、シラザン化合物を
形成させ、撥水性を持たせ表面を改質させる技術が開示
されている。
【0010】また、眼鏡プラスチックレンズの場合に
は、プラスチックレンズを保護するためのハードコート
と呼ばれる有機シリコーン被膜を浸漬表面処理法(ディ
ッピング法)によって形成した後、反射防止膜を真空蒸
着法により形成する方法を用いる。このとき、2〜3種
類のハードコート設備を利用して、数種類のプラスチッ
クレンズに対応したハードコート被膜を機能的に選択
し、複数種類のプラスチックレンズに同一のハードコー
ト被膜を形成させることにより、製造コストを低減させ
る工夫が行なわれている。
【0011】また、特開平7−56001号および特開
平7−56002号公報には、プラスチックレンズのハ
ードコート層の屈折率を、膜厚方向について変化させる
ことにより、干渉縞の発生を抑制することが開示されて
いる。このために、ハードコート層を高屈折率材料と低
屈折率材料とを混合した材料で形成し、膜厚方向につい
て混合割合を変化させることにより、屈折率を変化させ
ている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
特開平5−140356号公報に記載されている方法で
形成された被膜は、耐温水性が低く、眼鏡用プラスチッ
クレンズ等の耐温水性が要求される対象物には使用でき
ない。具体的には、この方法で形成された被膜は、80
℃、10分の温水浸漬テストにおいて、膜が***してし
まい、外観上の良好な品質が得られない欠点を有してい
る。
【0013】また、EP−203730号等のように、
浸漬表面処理法と、他の気相成長方法とを組み合わせて
複数層の被膜を形成する方法は、浸漬表面処理法により
形成する被膜の硬化時間に、非常に長い時間が必要であ
る。また、次の反射防止膜の形成工程へ移るために、一
度大気に晒される状態が避けられず、一貫した工程を連
続して行うことが困難である。
【0014】また、特開平7−56001号および特開
平7−56002号公報記載の技術においては、ハード
コート層の屈折率を変化させることにより、干渉縞の発
生を抑制することは可能であるが、この層を、プラスチ
ックレンズを保護するためのハードコート層として実際
に作用させるためには、硬い膜にする必要がある。その
ために、ハードコート層は、通常、厚い膜(通常3μm
以上)に形成される。
【0015】
【0017】このような厚いハードコート層をプラズマ
CVDで形成するためには、プラズマ中に発生する金属
および酸素等の各正負イオンからなる空間電荷を、成膜
が終了するまでの長い時間、平衡状態に保つ必要があ
る。そのため、それらの各正負イオンを安定化させる制
御が必要であるが、実際には、この制御を長い時間にわ
たり行なうことは、基板側に発生するバイアス電圧が不
安定になりやすく、プラズマによる放電が、断続あるい
は中断される現象が伴い、形成される薄膜内部の原子組
成比が不均一になり、ハードコート層内の酸素結合状態
の欠損が生じ、形成される酸化物膜が低級酸化物を含む
ようになり、ハードコート層自体が吸収を生じ、着色し
てしまう。
【0016】したがって、特開平7−56001号およ
び特開平7−56002号公報記載の技術で、実際にハ
ードコート層を形成すると、ハードコート層が着色して
しまい、実用上、問題が生じる。この着色は、ハードコ
ート層の機械的耐久性を向上させるために、膜厚を大き
くするほど顕著になる。
【0017】よって、眼鏡等の透明なプラスチックレン
ズに、特開平7−56001号および特開平7−560
02号公報記載の技術を実施することは、実際には非常
に困難である。
【0018】また、本発明者は、基材とハードコート層
との間に、厚さ方向に向かって屈折率が変化する変性層
を、様々な条件で形成することを試みた。しかし、形成
された光学物品の中には、膜が剥離したり、光学的な特
性に問題が発生したり、また、衝撃に対して弱いという
問題点が生じた。
【0019】また、従来のディッピング(浸漬処理)に
よる有機系シリコーンハードコートをプラスチックレン
ズ上に設けた場合、レンズをディッピング溶液に垂直方
向に浸すため、レンズ半径方向における膜厚分布のムラ
が生じてしまう。例え、レンズとハードコートの屈折率
をほぼ同じにしたとしても、この両者の界面における反
射の相違が生じてしまい、干渉縞(リップル)が強調さ
れてしまい、美的外観を損なってしまうことは免れな
い。このことは、レンズ自体が曲面を有しているため、
特に顕著に現れることが判った。
【0020】本発明は、上記問題点を解決し、耐環境性
が大きく、気相成長法により一貫した工程で形成するこ
とができる被膜を備えた光学物品を提供することを目的
とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明者は、基材とハー
ドコート層との間に、厚さ方向に向かって屈折率が変化
する変性層を、様々な条件で形成し、その際の変性層の
材料、成膜条件、変性層とハードコート層または基材と
の相性など、各条件における問題点について研究した。
その結果、材料や成膜条件等を制御することでも好適な
変性層を得ることができたが、変性層の膜厚を調整する
ことが最も低コストかつ簡単な工程、つまり製造工程を
増やすことなく、また、これまでしようしていた材料を
用いて、適した変性層が得られることを見出した。
【0022】また、この変性層のうえにハードコート層
を形成し、ハードコート層の表面を酸素を含むガスのプ
ラズマまたは酸素ガスのイオンビームで活性化処理し、
その後反射防止膜を形成することにより、ハードコート
層と反射防止膜との密着性を向上させることができるこ
とを見いだした。
【0023】よって、上記目的を達成するために、本発
明によれば、基材上に被膜を備えた光学物品の製造方法
であって、前記基材の上に、Siを含む有機化合物ガス
およびTiを含む有機化合物ガスの少なくとも一方を用
い、プラズマを用いた化学気相成長法により、厚さ方向
に向かって屈折率が変化している変性層を形成する第1
の工程と、前記変性層の上に、Siを含む有機化合物ガ
スと、酸素ガスとの混合ガスを用い、プラズマを用いた
化学気相成長法により、ハードコート層を形成する第2
の工程と、前記ハードコート層の表面を、少なくとも酸
素ガスを含むガスのプラズマ、または、酸素ガスのイオ
ンビームによって活性化処理する第3の工程と、前記活
性化処理されたハードコート層の上に、反射防止膜を形
成する第4の工程とを有することを特徴とする被膜を備
えた光学物品の製造方法が提供される。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の発明の実施の形態につい
て説明する。
【0025】本発明においては、減圧容器内にアルコキ
シ基含有有機チタン化合物及びアルコキシ基含有有機珪
素化合物の各モノマーを気体状態にし、プラズマ雰囲気
中各モノマーガスを導入し、基材上にそれらのモノマー
とプラズマ反応で生成される形成化合物を各々のモノマ
ーの流量比を加減させながら薄膜堆積させていくとによ
り、基材とハードコートとの間に、中間的な密着性の良
好な有機または無機化合物屈折率変性層を形成する。
【0026】その上に、本来のハードコート層なるアル
コキシ基含有有機及び/または無機珪素化合物薄膜を形
成する。このとき変性層との界面付近のハードコード層
が疑似不定形のアモルファス状の構造となるように形成
する。これにより、プラスチック基材とハードコート層
との強固な密着強度与え、またさらには、干渉縞を抑制
させることができる。
【0027】こうして形成したハードコート層表面を少
なくとも酸素ガスからなる混合ガスプラズマ雰囲気ある
いは前記混合ガスイオンビーム照射により、表面の活性
化処理後、その表面のシラノール基(SiーOH)の濃
度を増加させることにより、ハードコート層表面付近の
架橋密度を増加させる。この架橋密度の増加に影響さ
れ、その界面の酸化速度も増加するものと考えられる。
従って、このハードコート層の上に形成される反射防止
層の第1層である二酸化珪素と界面の密着強度が上がる
ものと考えられる。
【0028】本発明では、基材として、ポリカーボネイ
ト、ポリメチルメタクリレートおよびその共重合体、ジ
エチレングリコールビスアリルカーボネイト(ピッツバ
ークプレート ガラス社製 CR−39)の重合体、ポ
リエステル、不飽和ポリエステル、アクリロニトリルー
スチレン共重合体、塩化ビニル、ポリウレタン、エポキ
シ樹脂、ハロゲン(但し、フッ素を除く)および水酸基
を含有するモノまたはジ(メタ)アクリレートとイソシ
アネート化合物との重合体またはその共重合体等から任
意に選択された材料からなる基材を用いることができ
る。ポリエステルのなかでは、特にポリエチレンテレフ
タレートが好ましく使用される。
【0029】また、これらの中で特に好ましくは、ジエ
チレングリコールビスアリルカーボネイトの重合体、ポ
リウレタン、および、ハロゲン(但し、フッ素を除く)
および水酸基を含有するモノまたはジ(メタ)アクリレ
ートとイソシアネート化合物と重合体またはその共重合
体のうちのいずれかからなる基材が使用できる。
【0030】基材は、低屈折率のものから、1.70以
上の高屈折率のものを用いることができる。
【0031】本発明の製造方法において、第1および第
2の工程において用いられるSiを含む有機化合物とし
ては、テトラエトキシシラン Si(OC2H5)4、ジメ
トキシジメチルシラン (CH3)2Si(OCH3)2、メチ
ルトリメトキシシラン CH3Si(OCH3)3、テトラ
メトキシシラン Si(OCH3)4、エチルトリメトキシ
シラン C25Si(OCH3)3、ジエトキシジメチルシ
ラン (C25O)2Si(CH3)2、メチルトリエトキシ
シラン CH3Si(OC25)3等が好適に用いられる。
【0032】また、本発明の製造方法において、第1の
工程において用いられるTiを含む有機化合物として
は、テトラメトキシチタン Ti(OCH3)4、テトラエ
トキシチタン Ti(OC25)4、テトラ-i-プロポキシ
チタン Ti(O-i-C37)4、テトラ-n-プロポキシチ
タン Ti(O-n-C37)4、テトラ-n-ブトキシチタン
Ti(O-n-C49)4、テトラ-i-ブトキシチタン Ti
(O-i-C49)4、テトラ-sec-ブトキシチタン Ti(O
-sec-C49)4、テトラ-t-ブトキシチタン Ti(O-t-
49)4、テトラジエチルアミノチタン Ti(N(C2
5)2)4等が好適に用いられる。
【0033】これらのSiを含む有機化合物およびTi
を含む有機化合物は、その一種類を単独で用いても良
く、また、二種類以上を併用してもよい。
【0034】また、本発明において変性層およびハード
コート層を形成する際に使用されるプラズマを用いた化
学気相成長(CVD)法は、原料ガスに熱エネルギー及
び電気的エネルギーを与えることにより放電させ、その
プラズマ雰囲気中の非熱平衡状態において反応を促進さ
せ、基材上に薄膜を堆積させる方法であり、通常使われ
てるものには平行平板電極型、容量結合型または誘導結
合型等がある。特に本発明においては、基材の主平面に
平行に電界と磁界とをかけるプラズマ促進CVD(PE
CVD)法により形成することが好適である。
【0035】というのは、電界と平行に磁界を印加する
ことにより、対向する電極の間には磁界による電場が起
こり、プラズマ中のイオンは基板ホルダー側に加速され
る。また、この磁界による電場により、プラズマ密度が
均一化され、基板へのイオン損傷および温度上昇などが
抑制できる。従って、特にプラスチックレンズのような
透明な基材材料に薄膜を形成させる場合や、イオン損傷
により側鎖基が破断されやすい材料や耐熱性の低い材料
からなる基材を用いる場合、基材の損傷が少ないため、
磁界をかけるプラズマ促進CVDが非常に有効である。
【0036】透明樹脂基材に屈折率変性層及びハードコ
ート層を形成する場合、それらの形成材料として、Ti
系及び/またはSi系アルコキシ基含有有機化合物から
なるモノマー及び/または酸素ガスを真空室へ導入し、
プラズマ雰囲気中で反応させ、透明樹脂基材に屈折率変
性層及びハードコート層を堆積させる。特に、屈折率変
性層を形成させる場合は、特に、屈折率変性層とその上
のハードコート層との界面付近が疑似不定形アモルファ
ス状に形成させることが、透明樹脂基材との密着性,耐
擦傷性,耐衝撃性,干渉縞の抑制などの点から好まし
い。さらに、ハードコート層表面を活性化処理する場合
の前段階の処理としては、ハードコート層形成終了直前
にTi系及び/またはSi系アルコキシ基含有有機化合
物からなるモノマーガスを、所定膜厚形成終了前から約
500秒前から徐々に減少させながら所定膜厚になった
時に、これらのモノマーガスの供給を停止し、酸素ガス
のみをプラズマ中に100秒間流しながら、ハードコー
ト層表面の活性化処理を行うのが好ましい。
【0037】本発明におけるプラズマ中における活性化
処理とは、少なくとも酸素ガスを含む混合ガスを真空中
に導入し、そこで形成された前記ハードコート層の表面
を酸素ガスを含む混合ガスにより生成されたプラズマ雰
囲気中に、一定の時間晒すことを、意味するものであ
る。混合可能なガスとしては窒素,水素,炭酸ガス,ヘ
リウム,ネオン,アルゴン,アンモニア,一酸化炭素,
塩素,一酸化窒素,二酸化窒素等からなる無機物が使用
可能である。これらは、一種のみならず、二種以上混合
して酸素ガスと共に混合させても良い。
【0038】本発明において反射防止膜の形成は、前記
活性化処理後行われるが、その形成方法は特に限定され
ものではない。即ち、化学的気相成長法(CVD),物
理的気相成長法が適宜に利用できる。具体的形成方法
は、真空蒸着法、スパッタリング法,イオンプレーティ
ング法,プラズマCVD法等で適宜に選択すれば良い。
【0039】また、本発明において必要に応じて、水ヤ
ケ防止コートを前記反射防止膜の上に設けても良い。な
お、水ヤケ防止コートに用いられる有機シラザン化合物
として下記単位式で示す Cp2p+1CH2CH2Si(NH)1.5 (ただし、pは正の整数) のものが好適に用いられる。
【0040】水ヤケ防止コートの形成方法は、浸漬法等
の湿式法または真空蒸着、スパッタリング、CVD法等
の乾式法で形成することが可能である。
【0041】次に本発明による具体的な製造方法につい
て示す。Tiアルコキシ基含有有機化合物が入ったモノ
マー容器が真空室に接続器を外部から加熱することによ
り、気化させて真空室へ導入すると同時に酸素ガスも導
入する。その時の各々のガスの流量はそれぞれの目的に
あったものを適宜に選択すればよいが、好ましくは、S
i系アルコキシ基含有有機化合物のガスの場合は80〜
200SCCM、Ti系アルコキシ基含有有機化合物の
ガスの場合は30〜200SCCM、また、酸素ガスは
50〜200SCCMをそれぞれ単独若しくは併用させ
て真空室へ流す。
【0042】その際の真空室内の圧力を0.5〜12P
aの範囲で安定させ、カソード側に高周波2〜3.5K
Wを印加する。それと同時に、真空室外部に設置されて
いる電磁石コイルに電流を流し、プラズマ雰囲気中に磁
界がかかるようにして低気圧アーク放電を安定化させ
る。このような磁界のかけ方により、対向する電極の間
には電場が起こり、プラズマ中のイオンは基材ホルダー
側に加速される。また、この電場により、プラズマ密度
が均一化され、基材へのイオン損傷および温度上昇など
が抑制できる。従って、特にプラスチックレンズのよう
な基材材料に薄膜を形成させる場合、イオン損傷により
側鎖基が破断されやすい材料や耐熱性の低い材料などを
扱う場合、非常に有効な薄膜形成が可能となる。
【0043】以上このような手法により、プラスチック
レンズ上に直接Ti系及び/あるいはSi系アルコキシ
基含有有機化合物薄膜からなる屈折率変性層、及び、ハ
ードコート層を形成することができる。活性化処理する
場合の前段階の処理としては、ハードコート層形成終了
直前にTi系及び/またはSi系アルコキシ基含有有機
化合物からなるモノマー及び酸素混合ガスを、所定膜厚
形成終了前から約500秒前からTi系及び/またはS
i系アルコキシ基含有有機化合物からなるモノマーの
み、徐々に11SCCM/min割合で減少させなが
ら、所定膜厚になった時に、これらのモノマーガスのみ
供給を停止させる処理を行うことが好ましい。
【0044】次に活性化処理として、前述の前段階処理
に続いて、酸素ガスのみを引き続いて100〜200S
CCMの範囲でプラズマ中に継続して100秒間流しな
がら、ハードコート層を処理を行うのが好ましい。
【0045】この後、引き続いて真空蒸着法により、反
射防止膜を形成する。また、このプラズマ中における活
性化処理を行わずに、酸素のイオンビームにより、ハー
ドコート層表面を活性化させる方法をとっても同様な効
果が得られる。
【0046】また、基材上にウレタン系、ポリビニルア
セタール等からなる衝撃吸収層を設ければ更に密着性、
耐衝撃性の向上した光学物品が得られる。
【0047】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例により具体
的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるもの
ではない。以下の実施例は、眼鏡用プラスチックレンズ
に被膜を形成する実施例である。
【0048】(実施例1)本実施例では、ポリウレタン
系レンズ基材上に、バルツェルス(Balzers)社
製PECVD装置と真空蒸着装置とを用いて、屈折率変
性層と、3層構造のハードコート層と、反射防止膜とを
形成する。PECVD装置の真空室と真空蒸着装置の真
空室とは、ロードロック室で連結されている。ロードロ
ック室は、基材を、PECVD装置の真空室から真空蒸
着室の真空室へ真空を保った状態で移動させるための空
間である。
【0049】PECVD装置は、真空室外に電磁コイル
を備えている。電磁コイルは、真空室内に配置された一
対の電極の間の空間に、電界と平行な方向に磁界をかけ
るように配置されている。電極間の空間には、カローセ
ルタイプの基材ホルダーが、基材の主平面を電界の向き
と平行に保持するように配置されている。
【0050】まず、ポリウレタン系レンズを超音波洗浄
機に通して洗浄後、Balzers社製PECVD装置
の真空室に設置し、2.7×10ー4Paまで排気した
後、ジメチルジエトキシランのガスを流量11SCCM
及びテトライソプロポキシチタンのガスを流量9SCC
M流し、真空室の圧力が 2.9Paになるまで導入
し、外部電磁石コイルに2.6Aの電流を流すと同時
に、カソードに高周波出力0.6KWを45秒間印加す
る間にテトライソプロポキシチタンのガスを1分間当た
り9SCCMの割合で、徐々に減少させ、同時にジメチ
ルジエトキシシランのガスを1分間当たり11SCCM
の割合で増加させながら、膜厚260nmの屈折率変性
層を基材レンズの両面に形成した。
【0051】さらに、続いて、ジメチルジエトキシシラ
ンのガスを流量100SCCMと酸素ガスを流量35S
CCM流し、真空室の圧力が2.9Paになって流量が
安定したところで、外部電磁石コイルに2.6Aの電流
を流すと同時に、カソードに高周波出力0.8KWを2
5分間印加して、屈折率変性層の上にハードコート層を
形成した。さらに、酸素ガスの流量を70SCCMに増
加して、真空室の圧力が2.9Paになるように排気系
のコンダクタンスをバリアブルオリフィスにより調整
し、カソードの高周波出力を1KWに上げて、引き続き
25分間ハードコート層を形成した。最後に、酸素ガス
の流量を140SCCMに増加して、さらにまた25分
間ハードコート層を形成させたが、この後に行う活性化
処理の前段階処理として、ハードコート層形成終了直前
の約500秒手前からジメチルジエトキシシランのガス
を徐々に11SCCM/min割合で減少させながら、
所定膜厚になった時にこれらのモノマーガスのみ供給を
停止させた。
【0052】引き続いて酸素ガスのみ140SCCM流
しながら、カソードの高周波出力を1.2KWにあげ
て、ハードコート層表面の活性化処理を行った。
【0053】次に、レンズ基材ホルダーをロードロック
室に移動して、このレンズ基材ホルダーを90°反転さ
せることにより、真空蒸着装置の蒸着源の方にレンズ基
材の一方の面を向かせ、真空蒸着室へ送る。真空蒸着室
を1.3×10ー3 Paまで排気した後、電子ビーム加
熱蒸着法により、反射防止膜の各層を下記蒸着条件によ
りハードコート層の上に形成した。
【0054】 真空蒸着諸条件 A:オングストローム 第1層目 酸化チタン 420A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 4×10ー3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 420A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 1×10ー3Pa 第3層目 酸化チタン 2160A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 5×10ー3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 1200A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 1×10ー3Pa 以上により、レンズの片方の面に反射防止膜を形成させ
た後、今度はレンズ基板ホルダーに付随する両面反転機
構により、基材を反転させて、レンズ基材のもう一方の
面を蒸発源の方向に向かせて、再度、前記と同様の蒸着
条件により、反射防止膜を形成した。
【0055】(実施例2)ポリウレタン系レンズを超音
波洗浄機に通して洗浄後、Balzers社製PECV
D装置の真空室に設置し、2.7×10ー4Paまで排気
した後、ジメチルジエトキシランのガスを流量11SC
CM及びテトライソプロポキシチタンのガスを流量9S
CCM流し、真空室の圧力が 2.9Paになるまで導
入し、外部電磁石コイルに2.6Aの電流を流すと同時
に、カソードに高周波出力0.6KWを45秒間印加す
る間にテトライソプロポキシチタンのガスを1分間当た
り9SCCMの割合で、徐々に減少させ、同時にジメチ
ルジエトキシシランのガスを1分間当たり11SCCM
の割合で増加させながら膜厚260nmの屈折率変性層
を基材レンズの両面に形成した。
【0056】続いて、ジメチルジエトキシシランのガス
を流量100SCCMと酸素ガスを流量35SCCM流
し、真空室の圧力が2.9Paになって流量が安定した
ところで、外部電磁石コイルに2.6Aの電流を流すと
同時に、カソードに高周波出力0.8KWを25分間印
加して、屈折率変性層の上にハードコート層を形成し
た。さらに、酸素ガスの流量を70SCCMに増加し
て、真空室の圧力が2.9Paになるように排気系のコ
ンダクタンスをバリアブルオリフィスにより調整し、カ
ソードの高周波出力を1KWに上げて、引き続き25分
間ハードコート層を形成した。最後に、酸素ガスの流量
を140SCCMに増加して、さらにまた25分間ハー
ドコート層を形成させるが、この後に行う活性化処理の
前段階処理として、ハードコート層形成終了直前の約5
00秒手前からジメチルジエトキシシランのガスを徐々
に11SCCM/min割合で減少させながら、所定膜
厚になった時に、これらのモノマーガスのみ供給を停止
させた。
【0057】引き続いて酸素ガスのみ140SCCM流
しながら、新規に真空室にアルゴンガスを28SCCM
流し、カソードの高周波出力を1.2KWにあげて、ハ
ードコート層表面の活性化処理を行った。
【0058】次に、レンズ基材ホルダーをロードロック
室に移動して、このレンズ基材ホルダーを90°反転さ
せて、基材レンズの一方の面を蒸着源に向かせて、真空
蒸着室へ送り、1.3×10ー3 Paまで排気した後、
電子ビーム加熱蒸着法により、反射防止膜の各層を下記
蒸着条件により各ハードコート層の上に形成した。
【0059】 真空蒸着諸条件 第1層目 酸化チタン 420A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 4×10ー3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 420A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 1×10ー3Pa 第3層目 酸化チタン 2160A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 5×10ー3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 1200A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 1×10ー3Pa 以上により、レンズの片方の面に反射防止膜を形成させ
た後、今度はレンズ基板ホルダーに付随する両面反転機
構によりレンズ基材を反転させ、もう一方の面を蒸発源
の方向に向かせて、再度、前記と同様の蒸着条件によ
り、反射防止膜を形成した。 (実施例3)ポリウレタン系レンズを超音波洗浄機に通
して洗浄後、Balzers社製PECVD装置の真空
室に設置し、2.7×10ー4Paまで排気した後、ジメ
チルジエトキシランのガスを流量11SCCM及びテト
ライソプロポキシチタンのガスを流量9SCCM流し、
真空室の圧力が 2.9Paになるまで導入し、外部電
磁石コイルに2.6Aの電流を流すと同時に、カソード
に高周波出力0.6KWを45秒間印加する間にテトラ
イソプロポキシチタンのガスを1分間当たり9SCCM
の割合で、徐々に減少させ、同時にジメチルジエトキシ
シランのガスを1分間当たり11SCCMの割合で増加
させながら、膜厚260nmの屈折率変性層をレンズ基
材の両面に形成した。
【0060】上記で形成した各々の屈折率変性層の上
に、さらに、続いて、ジメチルジエトキシシランのガス
を流量100SCCMと酸素ガスを流量35SCCM流
し、真空室の圧力が2.9Paになって流量が安定した
ところで、外部電磁石コイルに2.6Aの電流を流すと
同時に、カソードに高周波出力0.8KWを25分間印
加してハードコート層を形成した。さらに、酸素ガスの
流量を70SCCMに増加して、真空室の圧力が2.9
Paになるように排気系のコンダクタンスをバリアブル
オリフィスにより調整し、カソードの高周波出力を1K
Wに上げて、引き続き25分間ハードコート層を形成し
た。最後に、酸素ガスの流量を140SCCMに増加し
て、さらにまた25分間ハードコート層を形成させた
が、この後に行う活性化処理の前段階処理として、ハー
ドコート層形成終了直前の約500秒手前からジメチル
ジエトキシシランのガスを徐々に11SCCM/min
割合で減少させながら、所定膜厚になった時に、これら
のモノマーガスのみ供給を停止させる。
【0061】その際引き続いて酸素ガスのみ140SC
CM流しながら、新規に真空室に窒素ガスを20SCC
M流し、カソードの高周波出力を1.2KWにあげて、
ハードコート層表面の活性化処理を行った。
【0062】次に、レンズ基材ホルダーをロードロック
室に移動して、このレンズ基材ホルダーを90°反転さ
せて、基材の一方の面を蒸着源に向かせて、真空蒸着室
へ送り、1.3×10ー3 Paまで排気した後、電子
ビーム加熱蒸着法により、反射防止膜の各層を下記蒸着
条件により各ハードコート層の上に形成した。
【0063】 真空蒸着諸条件 第1層目 酸化チタン 420A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 4×10ー3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 420A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 1×10ー3Pa 第3層目 酸化チタン 2160A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 5×10ー3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 1200A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 1×10ー3Pa 以上により、レンズの片方の面に反射防止膜を形成させ
た後、今度はレンズ基板ホルダーに付随する両面反転機
構により、もう一方の面を蒸発源の方向に向かせて、再
度、前記と同様の蒸着条件により、反射防止膜を形成し
た。 (比較例1)ポリウレタン系レンズを超音波洗浄機に通
して洗浄後、Balzers社製PECVD装置の真空
室に設置し、2.7×10ー4Paまで排気した後、ジメ
チルジエトキシランのガスを流量11SCCM及びテト
ライソプロポキシチタンのガスを流量9SCCM流し、
真空室の圧力が 2.9Paになるまで導入し、外部電
磁石コイルに2.6Aの電流を流すと同時に、カソード
に高周波出力0.6KWを45秒間印加する間にテトラ
イソプロポキシチタンのガスを1分間当たり9SCCM
の割合で、徐々に減少させ、同時にジメチルジエトキシ
シランのガスを1分間当たり11SCCMの割合で、増
加させながら膜厚260nmの屈折率変性層をレンズ基
材の両面に形成した。
【0064】上記で形成した各々の屈折率変性層の上
に、さらに、続いて、ジメチルジエトキシシランのガス
を流量100SCCMと酸素ガスを流量35SCCM流
し、真空室の圧力が2.9Paになって流量が安定した
ところで、外部電磁石コイルに2.6Aの電流を流すと
同時に、カソードに高周波出力0.8KWを25分間印
加してハードコート層を形成した。さらに、酸素ガスの
流量を70SCCMに増加して、真空室の圧力が2.9
Paになるように排気系のコンダクタンスをバリアブル
オリフィスにより調整し、カソードの高周波出力を1K
Wに上げて、引き続き25分間ハードコート層を形成し
た。最後に、酸素ガスの流量を140SCCMに増加し
て、さらにまた25分間ハードコート層を形成させた。
【0065】次に、レンズ基材ホルダーをロードロック
室に移動して、このレンズ基材ホルダーを90°反転さ
せて真空蒸着室へ送り、1.3×10ー3 Paまで排気
した後、電子ビーム加熱蒸着法により、反射防止膜の各
層を下記蒸着条件により各ハードコート層の上に形成し
た。
【0066】 真空蒸着諸条件 第1層目 酸化チタン 420A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 4×10ー3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 420A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 1×10ー3Pa 第3層目 酸化チタン 2160A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 5×10ー3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 1200A(幾何的膜厚) 蒸着時圧力 1×10ー3Pa 以上により、レンズの片方の面に反射防止膜を形成させ
た後、今度はレンズ基板ホルダーに付随する両面反転機
構により、もう一方の面を蒸発源の方向に向かせて、再
度、前記と同様の蒸着条件により、反射防止膜を形成し
た。つぎに、上述の実施例および比較例で得られた眼鏡
用プラスチックレンズの試料について、機械的耐久性を
評価した。下記に評価内容を示す。
【0067】評価項目 1)密着性 JIS D−202に準じて、試料表面に、1mm間隔
の切り込みを縦横にいれ、セロハンテープ(ニチバン製
商品名 セロテープ)をこの切り込みの上に貼り付
け、4kgの力でこのテープをはがし、膜はがれが生じ
るかどうかを調べる。
【0068】2)耐擦傷性 (a)粗さ#0000のスチールウールを荷重600g
で試料に押しつけ、15秒間に30回往復させた後、試
料表面の傷の有無を調べる。
【0069】(b)砂消しゴム(ライオン製 商品名
砂消しゴムER−502)を荷重500gで試料に押し
つけ、15秒間に30往復させた後、試料表面の傷の有
無を調べる。
【0070】3)耐温水 恒温槽の80℃の市水に10分間浸漬した後、試料表面
の膜に変化があるかどうかを調べる。
【0071】4)耐熱性 エアー・オーブンの100℃の大気中に5分間放置した
後、試料表面の膜に変化があるかどうかを調べる。
【0072】5)耐アルカリ性 水酸化ナトリウム水溶液(PH11)に6時間浸漬した
後、試料表面の膜に変化があるかどうかを調べる。
【0073】6)耐酸性 硝酸水溶液(PH1)に6時間浸漬した後、試料表面の
膜に変化があるかどうかを調べる。
【0074】7)耐衝撃性 上述の各実施例および比較例において、基材レンズとし
て、中心厚1.2mmのレンズを使用したものを試料と
する。そして、米国のFDA規格に基づき、127cm
の高さから試料レンズの中心部に、16.4gの鋼球を
落下させて、割れないものを合格とした。
【0075】8)干渉縞 自然光を照射した場合に、干渉縞がほとんど見えないも
のを良好、干渉縞が目視で見えるものを不良とする。
【0076】上述の評価項目について、実施例および比
較例の評価結果を、表1にまとめて示す。
【0077】
【表1】
【0078】表1からわかるように、上述の実施例1、
2、3の全ての試料は、密着性、耐擦傷性(スチールウ
ール)、耐薬品性(酸)において、比較例の試料よりも
優れている。また、他の項目は、比較例と同等の耐久性
を示す。
【0079】これは、つぎのようなことに起因すると考
えられる。
【0080】本実施例では、ハードコート層と基材との
間に変性層を配置している。このとき、変性層を、10
0nmより厚く、900nmよりも薄くすることによ
り、基材と被膜全体の密着性が高められている。また、
このような厚さの変性層が、ハードコート層に加わる衝
撃を吸収していると考えられ、比較例よりも衝撃に強い
資料が得られている思われる。
【0081】また、本実施例のハードコート層は、PE
CVDによって形成する際の混合ガス圧を、0.5〜1
2Paの範囲に制御している。これにより、本実施例の
ハードコート層は、組成と組織そのものが、耐久性に優
れたものになっている。また、これに加え、本実施例の
ハードコート層は、高屈折率材料を含まないため、酸素
量の調節により容易に透明にできるため、膜厚を厚く形
成することができ、この厚さにより、さらに機械的耐久
性と耐薬品性とが得られる。従って、ハードコート層
は、機械的耐久性、耐薬品性に優れ、ハードコート層と
して作用している。
【0082】このような変性層とハードコート層の作用
によって、本実施例の被膜を備えたプラスチックレンズ
は、高い耐環境性が得られている。
【0083】また、本実施例では、ハードコート層表面
を少なくとも酸素ガスからなる混合ガスプラズマ雰囲気
あるいは前記混合ガスイオンビーム照射により、表面の
活性化処理した後、反射防止膜を形成している。これに
より、硬化層と反射防止層との密着性を良好になり、か
つ、耐擦傷性の向上を図られている。さらには光学素子
自体の耐衝撃性及び干渉縞を防止する効果がある。
【0084】また、本実施例の製造方法では、一貫した
気相成長による被膜形成の製造工程が確立されている。
これにより、従来の湿式ハードコートで必須である表面
活性化処理等が不要となり、廃液処理の問題ががなくな
るため、環境汚染問題が解決できる。また、従来からの
ディッピングによるハードコートと比べても縮合硬化工
程がなくなり、納期の短縮化が計れる効果がある。
【0085】
【発明の効果】上述してきたように、本発明によれば、
耐環境性が大きく、気相成長法により一貫した工程で形
成することができる被膜を備えた光学物品を提供するこ
とができる。
【0086】本発明の製造方法により製造された光学物
品は、各層の密着性が良く剥離しにくい。また、耐擦傷
性、耐衝撃性、耐温水性、耐熱性、耐薬品性にも優れ、
さらに干渉縞の発生しない光学物品が得られる。
【0087】

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材上に被膜を備えた光学物品の製造方法
    であって、 前記基材の上に、Siを含む有機化合物ガスおよびTi
    を含む有機化合物ガスの少なくとも一方を用い、プラズ
    マを用いた化学気相成長法により、厚さ方向に向かって
    屈折率が変化している変性層を形成する第1の工程と、 前記変性層の上に、Siを含む有機化合物ガスと、酸素
    ガスとの混合ガスを用い、プラズマを用いた化学気相成
    長法により、ハードコート層を形成する第2の工程と、 前記ハードコート層の表面を、少なくとも酸素ガスを含
    むガスのプラズマによって活性化処理する第3の工程
    と、 前記活性化処理されたハードコート層の上に、反射防止
    膜を形成する第4の工程とを有することを特徴とする被
    膜を備えた光学物品の製造方法。
  2. 【請求項2】基材上に被膜を備えた光学物品の製造方法
    であって、 前記基材の上に、Siを含む有機化合物ガスおよびTi
    を含む有機化合物ガスの少なくとも一方を用い、プラズ
    マを用いた化学気相成長法により、厚さ方向に向かって
    屈折率が変化している変性層を形成する第1の工程と、 前記変性層の上に、Siを含む有機化合物ガスと、酸素
    ガスとの混合ガスを用い、プラズマを用いた化学気相成
    長法により、ハードコート層を形成する第2の工程と、 前記ハードコート層の表面を、少なくとも酸素のイオン
    ビームを照射することにより活性化処理する第3の工程
    と、 前記活性化処理されたハードコート層の上に、反射防止
    膜を形成する第4の工程とを有することを特徴とする被
    膜を備えた光学物品の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1または2において、前記第1の工
    程は、プラズマに供給するエネルギーを徐々に増加また
    は減少させながら前記変性層を形成することを特徴とす
    る被膜を備えた光学物品の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000211948A (ja) * 1998-12-21 2000-08-02 Saint Gobain Vitrage 反射防止コ―ティングを備える透明基板
CN113684469A (zh) * 2021-08-06 2021-11-23 宁波摩华科技有限公司 一种用于电子器件的有机防护镀层及其制备方法

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