JPH0990102A - 被膜を備えた光学物品およびその製造方法 - Google Patents

被膜を備えた光学物品およびその製造方法

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JPH0990102A
JPH0990102A JP7247823A JP24782395A JPH0990102A JP H0990102 A JPH0990102 A JP H0990102A JP 7247823 A JP7247823 A JP 7247823A JP 24782395 A JP24782395 A JP 24782395A JP H0990102 A JPH0990102 A JP H0990102A
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hard coat
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JP7247823A
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English (en)
Inventor
Tetsuo Suzuki
哲男 鈴木
Hiroshi Niikura
宏 新倉
Atsushi Abe
淳 阿部
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Original Assignee
Nikon Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐環境性が大きく、透明にすることが可能であ
り、干渉縞の発生を抑制する作用のある被膜を、気相成
長法により、連続した工程で、物品上に形成するための
製造方法を提供する。 【解決手段】基材上に、Si系および/またはTi系化
合物の少なくとも一方を含み、厚さ方向に向かって屈折
率が変化している変性層を形成し、その上に、SiとO
とを含み、屈折率が一定なハードコート層を形成する。
この時、変性層の膜厚を、100nmより厚く900n
mより薄くし、ハードコート層を変性層よりも厚く形成
する。変性層は、ハードコート層と基材との密着性を高
めるとともに、ハードコート層に加わる衝撃を吸収する
作用をする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐擦傷性向上のた
めの硬化層を表面に備えた物品の製造方法に係わり、特
に、CRTディスプレー、光学用レンズ、液晶表示素子
などの光学的物品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】眼鏡用プラスチックレンズ等の光学物品
の耐擦傷性を向上させるために、ハードコートと呼ばれ
る被膜を表面に形成する技術が知られている。この被膜
を形成するために、従来、シランカップリング剤に対象
物を浸漬する浸漬表面処理(ディッピング)技術が用い
られている。この浸漬表面処理技術は、対象物の素材が
合成樹脂である場合、耐熱性の点などから非常に有効な
技術であることが知られている。
【0003】しかしながら、浸漬表面処理技術において
は、被膜の材質が異なると、浸漬剤の組成も異なる。こ
のため、例えば、プラスチックレンズにハードコートを
形成する場合には、新たな高屈折率レンズが開発される
のに伴い、これに対応可能な屈折率のハードコートを形
成するための浸漬剤を開発しなければならない。そのた
め、浸漬剤の開発費用の負担が重くなってきている。
【0004】また、プラスチックレンズの場合、レンズ
の屈折率ごとに用いる浸漬剤が異なるため、浸漬表面処
理用の装置等の設備を、屈折率ごとに、複数台設置しな
ければならない。このため、設備の減価償却費が毎年増
大する傾向にある。
【0005】さらに、最近では特注品のプラスチックレ
ンズを受注する傾向がある。特に、眼鏡レンズの場合、
1ペア(2枚)で受注し、そのまま製造工場の一貫製造
ラインを流れる工程などが検討されている。この場合、
特注品がどのような屈折率であってもハードコートを形
成できるようにするためには、常に全屈折率分の浸漬表
面処理装置ラインを設置しておく必要があり、生産効率
が悪くなる欠点を有している。
【0006】また、従来の浸漬表面処理法でハードコー
トを形成する場合、コートする前の表面処理として、ア
ルカリ溶液に浸すというような表面の活性化処理等が不
可欠である。しかしながら、最近、環境問題などからこ
れらに使用される廃液処理等の問題が起こり始めてい
る。
【0007】さらにまた、従来の被膜の製造工程では縮
合硬化工程が必須であり、この工程に数時間要するた
め、納期の短縮化を計る上で非常に重要な改善上の課題
となっている。
【0008】また、複数の被膜を積層する必要のある対
象物の場合、これらの被膜を全て浸漬表面処理法で形成
すると、高価な浸漬剤が何種類も必要になり、製造コス
トに見合わなくなるという問題も生じている。
【0009】そこで、浸漬表面処理法を用いずに被膜を
形成する技術として、プラズマCVDによって被膜を製
造する技術が、特開平5ー140356に開示されてい
る。この技術は、車両などに使われる透明樹脂製窓に、
密着性及び表面硬度を向上させるための表面硬化膜を形
成するために、プラズマCVDによってシリコン含有膜
(SiOx膜)を形成するものである。
【0010】また、複数層の被膜を形成するために、ヨ
ーロッパ特許EP−203730号においては、光学部
品基材上に有機ケイ素化合物を浸漬表面処理法により形
成し、その上に反射防止膜を形成し、さらにその上に有
機物硬化性物質(撥水性コート)を形成させるものが提
案されている。
【0011】また、特開昭62−247302号公報で
は、無機物の反射防止コート膜上に、シラザン化合物を
形成させ、撥水性を持たせ表面を改質させる技術が開示
されている。
【0012】また、眼鏡プラスチックレンズの場合に
は、プラスチックレンズを保護するためのハードコート
と呼ばれる有機シリコーン被膜を浸漬表面処理法(ディ
ッピング法)によって形成した後、反射防止膜を真空蒸
着法により形成する方法を用いる。このとき、2〜3種
類のハードコート設備を利用して、数種類のプラスチッ
クレンズに対応したハードコート被膜を機能的に選択
し、複数種類のプラスチックレンズに同一のハードコー
ト被膜を形成させることにより、製造コストを低減させ
る工夫が行なわれている。
【0013】また、特開平7−56001号および特開
平7−56002号公報には、プラスチックレンズのハ
ードコート層の屈折率を、膜厚方向について変化させる
ことにより、干渉縞の発生を抑制することが開示されて
いる。このために、ハードコート層を高屈折率材料と低
屈折率材料とを混合した材料で形成し、膜厚方向につい
て混合割合を変化させることにより、屈折率を変化させ
ている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
特開平5−140356号公報に記載されている方法で
形成された被膜は、耐温水性が低く、眼鏡用プラスチッ
クレンズ等の耐温水性が要求される対象物には使用でき
ない。具体的には、この方法で形成された被膜は、80
℃、10分の温水浸漬テストにおいて、膜が***してし
まい、外観上の良好な品質が得られない欠点を有してい
る。
【0015】また、EP−203730号等のように、
浸漬表面処理法と、他の気相成長方法とを組み合わせて
複数層の被膜を形成する方法は、浸漬表面処理法により
形成する被膜の硬化時間に、非常に長い時間が必要であ
る。また、次の反射防止膜の形成工程へ移るために、一
度大気に晒される状態が避けられず、一貫した工程を連
続して行うことが困難である。
【0016】また、特開平7−56001号および特開
平7−56002号公報記載の技術においては、ハード
コート層の屈折率を変化させることにより、干渉縞の発
生を抑制することは可能であるが、この層を、プラスチ
ックレンズを保護するためのハードコート層として実際
に作用させるためには、硬い膜にする必要がある。その
ために、ハードコート層は、通常、厚い膜(通常3μm
以上)に形成される。
【0017】しかしながら、前記の開示された技術にお
いては、プラズマ中に発生する金属および酸素等の各正
負イオンからなる空間電荷を平衡状態に保つためには、
それらの各正負イオンを安定化させる制御が必要である
が、実際には、この制御を長い時間にわたり行なうこと
は、基板側に発生するバイアス電圧が不安定になりやす
い。そのため、プラズマによる放電が、断続あるいは中
断される現象が伴い、形成される薄膜内部の原子組成比
が不均一になり、ハードコート層内の酸素結合状態の欠
損が生じ、形成される酸化物膜が低級酸化物を含むよう
になり、ハードコート層自体が吸収を生じ、着色してし
まう。
【0018】したがって、特開平7−56001号およ
び特開平7−56002号公報記載の技術で、実際にハ
ードコート層を形成すると、ハードコート層が着色して
しまい、実用上、問題が生じる。この着色は、ハードコ
ート層の機械的耐久性を向上させるために、膜厚を大き
くするほど顕著になる。
【0019】よって、眼鏡等の透明なプラスチックレン
ズに、特開平7−56001号および特開平7−560
02号公報記載の技術を実施することは、実際には非常
に困難である。
【0020】また、本発明者は、基材とハードコート層
との間に、厚さ方向に向かって屈折率が変化する変性層
を、様々な条件で形成することを試みた。しかし、形成
された光学物品の中には、膜が剥離したり、光学的な特
性に問題が発生したり、また、衝撃に対して弱いという
問題点が生じた。
【0021】本発明は、上記問題点を解決し、耐環境性
が大きく、透明にすることが可能である被膜を備えた光
学物品と、このような被膜を、気相成長法により連続し
た工程で形成することができる製造方法を提供すること
を目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明者は、基材とハー
ドコート層との間に、厚さ方向に向かって屈折率が変化
する変性層を、様々な条件で形成し、その際の変性層の
材料、成膜条件、変性層とハードコート層または基材と
の相性など、各条件における問題点について研究した。
その結果、材料や成膜条件等を制御することでも好適な
変性層を得ることができたが、変性層の膜厚を調整する
ことが最も低コストかつ簡単な工程、つまり製造工程を
増やすことなく、また、これまでしようしていた材料を
用いて、適した変性層が得られることを見出した。
【0023】これにより、発明者は、上記目的を達成す
るために、合成樹脂基材、前記基材上に形成され、Si
系および/またはTi系化合物の少なくとも一方を含
み、厚さ方向に向かって屈折率が変化しており、膜厚が
100nmよりも厚く、900nmよりも薄い変性層、
前記変性層上に形成され、前記変性層よりも厚い膜厚を
有し、かつ、屈折率率が一定であり、SiおよびOを含
むハードコート層を有することを特徴とする光学物品が
提供される。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について説明
する。
【0025】Siを含む有機化合物ガスおよびTiを含
む有機化合物ガスの少なくとも一方をプラズマCVD装
置に導入し、基材のうえに、100nmよりも厚く90
0nmよりも薄い変性層を形成する。
【0026】つぎに、Siを含む有機化合物ガスと、酸
素ガスとの混合ガスをプラズマCVD装置に導入し、変
性層のうえにハードコート層を形成する。
【0027】変成層を形成する際には、プラズマに供給
するエネルギーを徐々に増加させたり、ガスの流量を徐
々に増加または減少させることにより、厚さ方向につい
て屈折率が徐々に変化した変性層を形成することができ
る。
【0028】本発明では、基材として、ポリカーボネイ
ト、ポリメチルメタクリレートおよびその共重合体、ジ
エチレングリコールビスアリルカーボネイト(ピッツバ
ークプレート ガラス社製 CR−39)の重合体、ポ
リエステル、不飽和ポリエステル、アクリロニトリルー
スチレン共重合体、塩化ビニル、ポリウレタン、エポキ
シ樹脂、ハロゲン(但し、フッ素を除く)および水酸基
を含有するモノまたはジ(メタ)アクリレートとイソシ
アネート化合物との重合体またはその共重合体等から任
意に選択された材料からなる基材を用いることができ
る。ポリエステルのなかでは、特にポリエチレンテレフ
タレートが好ましく使用される。
【0029】また、これらの中で特に好ましくは、ジエ
チレングリコールビスアリルカーボネイトの重合体、ポ
リウレタン、および、ハロゲン(但し、フッ素を除く)
および水酸基を含有するモノまたはジ(メタ)アクリレ
ートとイソシアネート化合物と重合体またはその共重合
体のうちのいずれかからなる基材が使用できる。
【0030】本発明の製造方法において、第1および第
2の工程において用いられるSiを含む有機化合物とし
ては、テトラエトキシシラン Si(OC25)4、ジメ
トキシジメチルシラン (CH3)2Si(OCH3)2、メチ
ルトリメトキシシラン CH3Si(OCH3)3、テトラ
メトキシシラン Si(OCH3)4、エチルトリメトキシ
シラン C25Si(OCH3)3、ジエトキシジメチルシ
ラン (C25O)2Si(CH3)2、メチルトリエトキシ
シラン CH3Si(OC25)3等が好適に用いられる。
【0031】また、本発明の製造方法において、第1の
工程において用いられるTiを含む有機化合物として
は、テトラメトキシチタン Ti(OCH3)4、テトラエ
トキシチタン Ti(OC25)4、テトラ-i-プロポキシ
チタン Ti(O-i-C37)4、テトラ-n-プロポキシチ
タン Ti(O-n-C37)4、テトラ-n-ブトキシチタン
Ti(O-n-C49)4、テトラ-i-ブトキシチタン Ti
(O-i-C49)4、テトラ-sec-ブトキシチタン Ti(O
-sec-C49)4、テトラ-t-ブトキシチタン Ti(O-t-
49)4、テトラジエチルアミノチタン Ti(N(C2
5)2)4等が好適に用いられる。
【0032】これらのSiを含む有機化合物およびTi
を含む有機化合物は、その一種類を単独で用いても良
く、また、二種類以上を併用してもよい。
【0033】また、本発明において変性層およびハード
コート層を形成する際に使用されるプラズマを用いた化
学気相成長(CVD)法は、原料ガスに熱エネルギー及
び電気的エネルギーを与えることにより放電させ、その
プラズマ雰囲気中の非熱平衡状態において反応を促進さ
せ、基材上に薄膜を堆積させる方法であり、通常使われ
てるものには平行平板電極型、容量結合型または誘導結
合型等がある。特に本発明においては、基材の主平面に
平行に電界と磁界とをかけるプラズマ促進CVD(PE
CVD)法により形成することが好適である。
【0034】というのは、電界と平行に磁界を印加する
ことにより、対向する電極の間には磁界による電場が起
こり、プラズマ中のイオンは基板ホルダー側に加速され
る。また、この磁界による電場により、プラズマ密度が
均一化され、基板へのイオン損傷および温度上昇などが
抑制できる。従って、特にプラスチックレンズのような
透明な基材材料に薄膜を形成させる場合や、イオン損傷
により側鎖基が破断されやすい材料や耐熱性の低い材料
からなる基材を用いる場合、基材の損傷が少ないため、
磁界をかけるプラズマ促進CVDが非常に有効である。
【0035】本発明では、第1の工程によって、基材の
上に、SiおよびTiのうち少なくとも一方を含む変性
層を、100nmよりも厚く900nmよりも薄い厚さ
に形成する。そしてその上に、SiとOとを含むハード
コート層を、変性層よりも厚い厚さに形成する。
【0036】この時、変性層の膜厚を、100nmより
も厚く900nmよりも薄くすることにより、基材と被
膜との密着性を向上させるとともに、ハードコート層に
加わる衝撃を吸収させることにより、被膜全体の耐環境
性を向上させることができる。また、ハードコート層
は、膜の組成と組織が耐環境性に優れている上、膜厚が
厚いことから、基材を保護するハードコート層として作
用する。
【0037】したがって、本発明の被膜は、耐環境性が
大きい。
【0038】また、変性層の屈折率を膜厚方向について
変化させた場合には、基材とハードコート層との屈折率
の差によって干渉縞が発生するのを抑制することができ
る。したがって、耐環境性に優れ、かつ、美的外観に優
れた被膜を備えた物品が得られる。
【0039】また、変性層、ハードコート層は、いずれ
も気相成長法で形成することができるため、複数層から
なる被膜を連続した工程で形成することができる。
【0040】この方法においては、変性層およびハード
コート層に含まれる酸素濃度を適切な濃度にすることに
より、変性層およびハードコート層を可視光に対して透
明にすることができる。したがって、眼鏡用プラスチッ
クレンズにハードコートとよばれる被膜を形成するため
に本発明の方法を好適に用いることができる。
【0041】
【実施例】以下、本発明の一実施例として、眼鏡用プラ
スチックレンズについて説明する。
【0042】(実施例1)まず、本発明の第1の実施例
として、基材のプラスチックレンズの表面に、変性層
と、第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射
防止膜とからなる被膜を備えたプラスチックレンズを製
造する方法について説明する。
【0043】基材のプラスチックレンズは、ジエチレン
グリコールビスアリルカーボネート(ピッツバーク プ
レート ガラス社製 CR−39)の重合体からなって
いる。
【0044】この基材上に、バルツェルス(Balze
rs)社製PECVD装置と真空蒸着装置とを用いて、
上述の構成の被膜を形成する。PECVD装置の真空室
と真空蒸着装置の真空室とは、ロードロック室で連結さ
れている。ロードロック室は、基材を、PECVD装置
の真空室から真空蒸着室の真空室へ真空を保った状態で
移動させるための空間である。
【0045】PECVD装置は、真空室外に電磁コイル
を備えている。電磁コイルは、真空室内に配置された一
対の電極の間の空間に、電界と平行な方向に磁界をかけ
るように配置されている。電極間の空間には、カローセ
ルタイプの基材ホルダーが、基材の主平面を電界の向き
と平行に保持するように配置されている。
【0046】蒸着装置は、電子ビームによって蒸着源を
加熱する構成である。
【0047】まず、準備工程として、基材のレンズを超
音波洗浄機に通して洗浄し、PECVD装置の真空室内
の基材ホルダーに設置する。その後、真空室内を2.7
×10~4Paまで排気する。
【0048】つぎに、変性層を形成する工程について説
明する。
【0049】真空室に接続されたメチルトリエトキシシ
ランの入った容器を加熱することにより、メチルトリエ
トキシランを気化させ、メチルトリエトキシランガスを
流量100SCCMで真空室内に流す。真空室の圧力が
0.7Paになったら、真空室外の電磁石コイルに5A
の電流を流して、電極間に磁場をかけ、同時に、カソー
ドに高周波出力2KWを3分間印加する。これにより、
電極間にプラズマが発生する。磁場は、低気圧アーク放
電を安定化させる。この間のメチルトリエトキシシラン
ガスの流量は、100SCCMである。その後、カソー
ドの高周波出力を段階的に40W/minの割合で徐々
に上げていき、12分間で2.5KWに達するように制
御する。この12分間のメチルトリエトキシシランガス
の流量は、180SCCMにして一定にしておく。
【0050】この工程において、膜厚が200nmにな
るように制御して、変性層を形成する。変性層は、膜厚
方向について、屈折率が、徐々に変化している。
【0051】つぎに、第1、第2、第3のハードコート
層を形成する工程について説明する。
【0052】変性層を形成する工程に連続させて、酸素
ガスを真空室に50SCCM流し、真空室圧力を2.1
Paにして、メチルトリエトキシシランガスの流量18
0SCCM、高周波出力2.5KW、電磁石コイル5A
で、20分間、第1のハードコート層を形成する。
【0053】その後、酸素ガス流量を100SCCMに
増加し、真空室圧力を2.5Paにすると同時に、カソ
ードの高周波出力を3KWに変え、メチルトリエトキシ
シランガスの流量180SCCM、電磁石コイル5Aの
ままで、さらに20分間、第2のハードコート層を形成
する。
【0054】最後に、酸素ガス流量を200SCCMに
増加して流し、真空室圧力をそのまま2.5Paに保持
するように排気系のコンダクタンスをバリアブルオリフ
ィスにより調整し、メチルトリエトキシシランガスの流
量180SCCM、電磁石コイル5A、カソードの高周
波出力3KWのままで、さらに第3のハードコート層を
形成する。
【0055】第1、第2、第3のハードコート層は、こ
れらの膜厚をあわせたものが、変性層の膜厚よりも厚く
なるように、膜厚を制御した。本実施例では、第1、第
2、第3のハードコート層の膜厚をあわせたものが、1
μmよりも大きく、5μmよりも小さい範囲に入る特定
の膜厚になるように形成した。
【0056】これらの工程で、基材のレンズの両面に、
変性層、第1、第2、第3のハードコート層からなる被
膜が形成される。
【0057】つぎに上述の被膜の形成された基材レンズ
を、基材ホルダーごとロードロック室に移動して、基材
レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方向に向く
ように、基材レンズの向きを変え、真空蒸着室へ基材レ
ンズを送る。
【0058】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源の方を向いた基材レンズ面の第3のハード
コート層の上に、下記4層から成る反射防止膜を下記蒸
着条件により形成する。但し、蒸着源として、第1層目
と第3層目は、TiOx(0<x<2)を用い、第2層
目と第4層目は、SiO2を用いる。
【0059】 真空蒸着諸条件 (但し、Aは、オングストロームを表す) 第1層目 二酸化チタン 114A(幾何的膜厚) 0.049λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 380A(幾何的膜厚) 0.1605λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 第3層目 二酸化チタン 1167A(幾何的膜厚) 0.5λ (光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 871A(幾何的膜厚) 0.244λ (光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=525nm
であり、第1層目と第3層目の二酸化チタンの屈折率
は、2.25、第2層目と第4層目の二酸化珪素の屈折
率は、1.47である。
【0060】これにより、基材レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基材面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0061】これらの工程により、基材レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0062】(実施例2)本発明の第2の実施例の被膜
を備えたプラスチックレンズは、第1の実施例の被膜を
備えたプラスチックレンズと同様な構成であるが、変性
層の膜厚を500nmにした。他の構成は、第1実施例
と同じであり、製造工程も同じであるので説明を省略す
る。
【0063】(実施例3)本発明の第3の実施例の被膜
を備えたプラスチックレンズは、第1の実施例の被膜を
備えたプラスチックレンズと同様な構成であるが、変性
層の膜厚を800nmにした。他の構成は、第1実施例
と同じであり、製造工程も同じであるので説明を省略す
る。
【0064】(実施例4)つぎに、本発明の第4の実施
例として、基材のプラスチックレンズの表面に、変性層
と、第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射
防止膜とからなる被膜が形成されたプラスチックレンズ
を製造する方法について説明する。
【0065】本実施例では、基材としてポリウレタン系
重合体からなるレンズを用いた。PECVD装置は、第
1の実施例と同じ装置を用いた。
【0066】まず、準備工程として、基材レンズを超音
波洗浄機に通して洗浄し、PECVD装置の真空室内の
カソード電極とアノード電極との間のカローセルタイプ
の基板ホルダーに設置し、2.7×10~4Paまで排気
する。
【0067】つぎに、変性層を形成する工程について説
明する。
【0068】真空室に接続されたメチルトリエトキシシ
ランの入った容器を加熱することにより、メチルトリエ
トキシランを気化させ、メチルトリエトキシランガスを
流量35SCCMで真空室内に流す。同時に、真空室に
接続されたジメトキジメチルシランの入った容器を加熱
することにより、ジメトキシジメチルシランを気化さ
せ、ジメトキシジメチルシランガスを流量148SCC
Mで真空室内に流す。真空室の圧力が、2.0Paなっ
たら、ガスの流量を保持したまま、真空室外の電磁石コ
イルに5Aの電流を流して、電極間に磁場をかける。そ
して、メチルトリエトキシシランガスの流量を、1分間
当たり110SCCMの割合で徐々に増加させ、同時
に、ジメトキシジメチルシランガスの流量を、1分間当
たり98.7SCCMの割合で徐々に減少させながら、
カソードに高周波出力2KWを1.5分間印加し、変性
層を形成させる。
【0069】この工程において、膜厚が200nmにな
るように制御して、変性層を形成する。
【0070】第1、第2、第3のハードコート層を形成
する工程について説明する。
【0071】さらに続いて、メチルトリエトキシシラン
のガスを流量200SCCMと酸素ガスを流量50SC
CM流し、真空室の圧力が2.0Paになって流量が安
定したところで、外部電磁石コイルに5Aの電流を流す
と同時に、カソードに高周波出力2.5KWを17分間
印加して第1のハードコート層を形成する。
【0072】さらに、酸素ガスの流量を100SCCM
に増加して、真空室の圧力が2.0Paになるように排
気系のコンダクタンスをバリアブルオリフィスにより調
整し、カソードの高周波出力を3KWに上げて、メチル
トリエトキシシランガスの流量200SCCM、外部電
磁石コイル5Aで、引き続き17分間、第2のハードコ
ート層を形成する。
【0073】最後に、酸素ガスの流量を200SCCM
に増加して、真空室の圧力2.0Pa、カソードの高周
波出力3KW、メチルトリエトキシシランガスの流量2
00SCCM、外部電磁石コイル5Aで、17分間、第
3のハードコート層を形成する。
【0074】本実施例の第1、第2、第3のハードコー
ト層の膜厚をあわせた膜厚は、第1の実施例の第1、第
2、第3のハードコート層の膜厚をあわせた膜厚と同じ
になるように膜厚を制御した。
【0075】つぎに上述の被膜の形成された基材レンズ
を、基材ホルダーごとロードロック室に移動して、基材
レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方向に向く
ように、基材レンズの向きを変え、真空蒸着室へ基材レ
ンズを送る。
【0076】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源の方を向いた基材レンズ面の第3のハード
コート層の上に、下記4層から成る反射防止膜を下記蒸
着条件により形成する。但し、蒸着源として、第1層目
と第3層目は、TiOx(0<x<2)を用い、第2層
目と第4層目は、SiO2を用いる。
【0077】 真空蒸着諸条件 (但し、Aは、オングストロームを表す) 第1層目 二酸化チタン 130A(幾何的膜厚) 0.055λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 333A(幾何的膜厚) 0.0915λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 第3層目 二酸化チタン 1189A(幾何的膜厚) 0.5λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 880A(幾何的膜厚) 0.242λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=525nm
であり、第1層目と第3層目の二酸化チタンの屈折率
は、2.25、第2層目と第4層目の二酸化珪素の屈折
率は、1.47である。
【0078】これにより、基材レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基材面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0079】これらの工程により、基材レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0080】(実施例5)本発明の第5の実施例の被膜
を備えたプラスチックレンズは、第4の実施例の被膜を
備えたプラスチックレンズと同様な構成であるが、変性
層の膜厚を500nmにした。他の構成は、第4実施例
と同じであり、製造工程も同じであるので説明を省略す
る。
【0081】(実施例6)本発明の第6の実施例の被膜
を備えたプラスチックレンズは、第4の実施例の被膜を
備えたプラスチックレンズと同様な構成であるが、変性
層の膜厚を800nmにした。他の構成は、第4実施例
と同じであり、製造工程も同じであるので説明を省略す
る。
【0082】(実施例7)第7の実施例のプラスチック
レンズは、基材のプラスチックレンズの表面に、変性
層、第1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射
防止膜とからなる被膜を順に備えている。この製造方法
について、説明する。
【0083】まず、準備工程として、ポリウレタン系レ
ンズを超音波洗浄機に通して洗浄後、Balzers社
製PECVD装置の真空室に設置し、2.7×10~4
aまで排気する。
【0084】つぎに、変性層を形成する工程を行う。
【0085】ジメチルジエトキシランのガスを流量11
SCCMで、テトライソプロポキシチタンのガスを流量
9SCCMで真空室内に流した。真空室の圧力が2.9
Paになったら、真空室外の電磁石コイルに2.6Aの
電流を流して、電極間に磁場をかけ、同時に、カソード
に高周波出力0.6KWを45秒間印加する。この45
秒間に、テトライソプロポキシチタンガスの流量を1分
間当たり9SCCMの割合で徐々に増加させ、同時に、
ジメチルジエトキシシランガスの流量を1分間当たり1
1SCCMの割合で徐々に減少させる。
【0086】この工程により、膜厚が200nmになる
ように制御して、変性層を形成させる。
【0087】さらに続いて、ジメチルジエトキシシラン
のガスを流量100SCCMで、酸素ガスを流量35S
CCMで流し、真空室の圧力が2.9Paになって流量
が安定したところで、外部電磁石コイルに2.6Aの電
流を流すと同時に、カソードに高周波出力0.8KWを
25分間印加して、第1のハードコート層を形成する。
【0088】さらに、酸素ガスの流量を70SCCMに
増加して、真空室の圧力が2.9Paになるように排気
系のコンダクタンスをバリアブルオリフィスにより調整
し、カソードの高周波出力を1KWに上げて、ジメチル
ジエトキシシランガスの流量100SCCM、外部電磁
石コイル2.6Aで、引き続き25分間、第2のハード
コート層を形成する。
【0089】最後に、酸素ガスの流量を140SCCM
に増加して、他の条件は保持したまま25分間、第3の
ハードコート層を形成する。
【0090】第1、第2、第3のハードコート層は、こ
れらの膜厚をあわせたものが、第1の実施例の第1、第
2、第3のハードコート層の膜厚をあわせたものと同じ
厚さになるように、膜厚を制御しながら形成した。
【0091】つぎに上述の被膜の形成された基材レンズ
を、基材ホルダーごとロードロック室に移動して、基材
レンズの一方の面が真空蒸着装置の蒸着源の方向に向く
ように、基材レンズの向きを変え、真空蒸着室へ基材レ
ンズを送る。
【0092】そして、真空蒸着装置の真空室を1.3×
10~3 Paまで排気した後、電子ビーム加熱蒸着法に
より、蒸着源の方を向いた基材レンズ面の第3のハード
コート層の上に、下記4層から成る反射防止膜を下記蒸
着条件により形成する。但し、蒸着源として、第1層目
と第3層目は、TiOx(0<x<2)を用い、第2層
目と第4層目は、SiO2を用いる。
【0093】 真空蒸着諸条件 (但し、Aは、オングストロームを表す) 第1層目 二酸化チタン 130A(幾何的膜厚) 0.055λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 4×10~3Pa(O2雰囲気) 第2層目 二酸化珪素 333A(幾何的膜厚) 0.0915λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 第3層目 二酸化チタン 1189A(幾何的膜厚) 0.5λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 5×10~3Pa(O2雰囲気) 第4層目 二酸化珪素 880A(幾何的膜厚) 0.242λ(光学的膜厚) 蒸着時圧力 1×10~3Pa 但し、上述の光学的膜厚は、その層の屈折率と幾何的膜
厚との積で定義される。また、中心波長λ=525nm
であり、第1層目と第3層目の二酸化チタンの屈折率
は、2.25、第2層目と第4層目の二酸化珪素の屈折
率は、1.47である。
【0094】これにより、基材レンズの片方の面に反射
防止膜を形成させた後、今度はレンズ基板ホルダーに付
随する基材面反転機構により、もう一方の面を蒸発源の
方向に向かせ、再び、上述と同様の蒸着条件により、反
射防止膜を形成する。
【0095】これらの工程により、基材レンズの両面
に、変性層、第1、第2、第3のハードコート層、多層
の反射防止膜を備えたプラスチックレンズが製造でき
る。
【0096】(実施例8)本発明の第8の実施例の被膜
を備えたプラスチックレンズは、第7の実施例の被膜を
備えたプラスチックレンズと同様な構成であるが、変性
層の膜厚を500nmにした。他の構成は、第7実施例
と同じであり、製造工程も同じであるので説明を省略す
る。
【0097】(実施例9)本発明の第9の実施例の被膜
を備えたプラスチックレンズは、第7の実施例の被膜を
備えたプラスチックレンズと同様な構成であるが、変性
層の膜厚を800nmにした。他の構成は、第7実施例
と同じであり、製造工程も同じであるので説明を省略す
る。
【0098】(比較例1)つぎに、第1の比較例とし
て、基材のプラスチックレンズの表面に、変性層と、第
1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止膜
とからなる被膜を備えたプラスチックレンズを製造する
方法について説明する。
【0099】本比較例の被膜を備えたプラスチックレン
ズは、基材の材質、変性層、第1、第2、第3のハード
コート層の構成が第1の実施例とほぼ同じであるが、変
性層の膜厚が、第1の実施例とは異なり、100nmで
ある。製造工程では、第1の実施例と同じであるので説
明を省略する。
【0100】(比較例2)第2の比較例のプラスチック
レンズは、変性層の膜厚が1000nmである。他の構
成と製造工程は、第1の実施例と同じであるので説明を
省略する。
【0101】(比較例3)つぎに、第3の比較例とし
て、基材のプラスチックレンズの表面に、変性層と、第
1、第2、第3のハードコート層と、多層の反射防止膜
とからなる被膜を備えたプラスチックレンズを製造する
方法について説明する。
【0102】本比較例の被膜を備えたプラスチックレン
ズは、基材の材質、変性層、第1、第2、第3のハード
コート層の構成が第4の実施例と同じであるが、変性層
の膜厚が第4の実施例とは異なり、100nmである。
各層の製造工程では、第4の実施例と同じであるので、
説明を省略する。
【0103】(比較例4)第4の比較例のプラスチック
レンズは、変性層の膜厚が1000nmである。他の構
成と製造工程は、第4の実施例と同じであるので説明を
省略する。
【0104】つぎに、上述の実施例および比較例で得ら
れた眼鏡用プラスチックレンズの試料について、機械的
耐久性を評価した。下記に評価内容を示す。
【0105】評価項目 1)密着性 JIS D−202に準じて、試料表面に、1mm間隔
の切り込みを縦横にいれ、セロハンテープ(ニチバン製
商品名 セロテープ)をこの切り込みの上に貼り付
け、4kgの力でこのテープをはがし、膜はがれが生じ
るかどうかを調べる。
【0106】2)耐擦傷性 (a)粗さ#0000のスチールウールを荷重600g
で試料に押しつけ、15秒間に30回往復させた後、試
料表面の傷の有無を調べる。
【0107】(b)砂消しゴム(ライオン製 商品名
砂消しゴムER−502)を荷重500gで試料に押し
つけ、15秒間に30往復させた後、試料表面の傷の有
無を調べる。
【0108】3)耐温水 恒温槽の80℃の市水に10分間浸漬した後、試料表面
の膜に変化があるかどうかを調べる。
【0109】4)耐熱性 エアー・オーブンの100℃の大気中に5分間放置した
後、試料表面の膜に変化があるかどうかを調べる。
【0110】5)耐アルカリ性 水酸化ナトリウム水溶液(PH11)に6時間浸漬した
後、試料表面の膜に変化があるかどうかを調べる。
【0111】6)耐酸性 硝酸水溶液(PH1)に6時間浸漬した後、試料表面の
膜に変化があるかどうかを調べる。
【0112】7)耐衝撃性 上述の各実施例および比較例において、基材レンズとし
て、中心厚1.2mmのレンズを使用したものを試料と
する。そして、米国のFDA規格に基づき、127cm
の高さから試料レンズの中心部に、16.4gの鋼球を
落下させて、割れないものを合格とした。
【0113】8)干渉縞 自然光を照射した場合に、干渉縞がほとんど見えないも
のを良好、干渉縞が目視で見えるものを不良とする。
【0114】上述の評価項目について、実施例および比
較例の評価結果を、表1にまとめて示す。
【0115】
【表1】
【0116】表1からわかるように、上述の実施例の全
ての試料は、密着性、耐擦傷性(スチールウール)、耐
衝撃性において、比較例の全ての試料よりも耐久性が優
れている。また、耐熱性において、本実施例の試料は、
比較例3、4の試料よりも優れ、比較例1、2の試料と
同等である。また、耐擦傷性(砂消しゴム)、耐薬品性
については、比較例と同等の耐久性を示す。
【0117】また、干渉縞については、本実施例の全て
の試料が、比較例の全ての試料よりも優れている。
【0118】これは、つぎのようなことに起因すると考
えられる。
【0119】本実施例では、ハードコート層と基材との
間に変性層を配置している。このとき、変性層を、10
0nmより厚く、900nmよりも薄くすることによ
り、基材と被膜全体の密着性が高められている。また、
このような厚さの変性層が、ハードコート層に加わる衝
撃を吸収していると考えられ、比較例よりも衝撃に強い
資料が得られている思われる。
【0120】また、本実施例のハードコート層は、PE
CVDによって形成する際の混合ガス圧を、0.5〜1
2Paの範囲に制御している。これにより、本実施例の
ハードコート層は、組成と組織そのものが、耐久性に優
れたものになっている。また、これに加え、本実施例の
ハードコート層は、高屈折率材料を含まないため、酸素
量の調節により容易に透明にできるため、膜厚を厚く形
成することができ、この厚さにより、さらに機械的耐久
性と耐薬品性とが得られる。従って、ハードコート層
は、機械的耐久性、耐薬品性に優れ、ハードコート層と
して作用している。
【0121】このような変性層とハードコート層の作用
によって、本実施例の被膜を備えたプラスチックレンズ
は、高い耐環境性が得られている。
【0122】つぎに、本実施例の被膜を備えたプラスチ
ックレンズの光学的な作用と効果についてのべる。
【0123】変性層は、膜厚方向について屈折率が変化
しており、しかも、その厚さが、100nmより厚く9
00nmより薄い。これにより、被膜と基材との屈折率
の差による干渉縞の発生を効果的に抑制することができ
る。
【0124】また、反射防止膜は、第1および第2の層
の光学的膜厚が、それぞれ、0.05×λ以上0.15
×λ以下であり、第3の層の光学的膜厚が、0.36×
λ以上0.49×λ以下であり、第4の層の光学的膜厚
は、0.15×λ以上0.35×λ以下であるように設
定しているため、被膜と空気との屈折率の差による干渉
縞の発生を効果的に抑制することができる。
【0125】よって、本実施例では、干渉縞の発生を抑
制でき、美的外観に優れた被膜付き物品を得ることがで
きる。
【0126】また、本実施例のハードコート層は、低屈
折率材料のシリコンの酸化物を含んでいるため、厚さが
厚くとも、容易に透明にできる。
【0127】また、変性層は、ハードコート層であるハ
ードコート層とは別に設けられた膜であり、しかも、ハ
ードコート層よりも基材側に配置されているため、変性
層自体の機械的耐久性および耐薬品性は要求されない。
したがって、本実施例の変性層は、膜厚を薄くすること
ができる。変性層は、屈折率を変化させるために、酸素
が欠乏して着色しやすい高屈折率材料のTiの酸化物を
含んでいるが、本実施例では、膜厚を薄くすることがで
きるため、透明にすることができる。
【0128】また、反射防止膜も、各層の膜厚が薄いた
め、透明にすることができる。
【0129】このように、本実施例では、被膜全体の耐
久性を保ちながら、ハードコート層、変性層、反射防止
膜の各膜を透明にできるため、透明な被膜が得られ、眼
鏡用のプラスチックレンズの被膜として用いるのに適し
ている。
【0130】また、変性層の屈折率は、連続的に限ら
ず、段階的に変化させることもできる。これは、高周波
出力またはガス流量を段階的に変化させることにより実
施できる。変性層を、多段階に変化させ、基材側では基
材の屈折率に近く、ハードコート層側では、ハードコー
ト層の屈折率に近くすることにより、連続的に変化させ
た場合と同様に、干渉縞の発生を防止することができ
る。
【0131】また、本実施例のプラスチックレンズの製
造方法は、ドライプロセスのみで、変性層、第1、第
2、第3のハードコート層、反射防止膜を連続して形成
することができる。この製造方法は、工程が非常に単純
であり、しかも従来の湿式プロセスのように、廃液処理
や、表面活性化処理や、縮合硬化工程等が不要であるた
め、製造コストを低減することができる。また、環境汚
染問題も解決できる。さらに、本実施例の製造方法は、
ガスの種類や真空容器内の圧力等の成膜条件を変えるの
みで、1台のPECVD装置で、屈折率等の膜性質を変
化させた被膜を製造することができる。したがって、湿
式プロセスのように予め溶液を準備しておく必要はな
く、1ロット2枚のレンズのような特注レンズの製造を
短い納期で行うことができる。
【0132】上述の実施例では、磁界によってプラズマ
密度を高めるPECVD装置を用いたが、磁界を用いな
いプラズマCVD装置を用いることももちろん可能であ
る。
【0133】上述の実施例では、反射防止膜の第1層、
第2層、第3層、第4層の組成をTiO2、SiO2、T
iO2、SiO2にすることにより、可視光の透過率が高
い反射防止膜を構成したが、反射防止膜の可視光の透過
率が低くてもよい場合、例えば、基材が色付きレンズで
ある場合や、赤外光を入射させる基材の被膜として本実
施例の構成を用いる場合には、TiOx、SiOy、Ti
x、SiOyにすることもできる。但し、0<x<2、
0<y<2である。
【0134】また、上述の各実施例で形成した反射防止
膜の上に、真空蒸着等の気相成長法により、フッ素や珪
素化合物からなる撥水性の薄膜を形成することもでき
る。また、反射防止膜の上に、ディッピングとよばれる
浸漬表面処理法により、湿式工程で、水ヤケ防止コート
等を形成することもできる。例えば、ディッピング用溶
液として、下記単位式で表される有機シラザン化合物を
好適に用いることができる。
【0135】 また、上述の実施例において、PECVD装置で変性層
やハードコート層を形成する際のガスの流量は、それぞ
れの目的にあった流量を適宜に選択すればよいが、好ま
しくは、Siとアルコキシ基とを含む有機化合物のガス
の場合は80〜200SCCM、Tiとアルコキシ基と
を含む有機化合物のガスの場合は30〜200SCC
M、また、酸素ガスは50〜200SCCMに設定し、
単独若しくは併用させて真空室へ流す。
【0136】また、この際の真空室内の圧力は、0.5
〜12Paの範囲で安定させることがのぞましい。この
圧力範囲に設定することにより、上述の評価項目につい
て、耐久性の優れた変性層やハードコート層が形成でき
る。
【0137】また、電極に印加するエネルギーとして
は、高周波2〜3.5KWを印加することが望ましい。
【0138】また、屈折率変性層を形成する際に、ガス
導入時の流量あるいは高周波出力(RFパワー)を連続
的に変化させることにより、同じ薄膜内部において連続
的に屈折率を変化させることが可能となる。これによ
り、変性層の屈折率を、基材側では、基材の屈折率に近
く、ハードコート層側では、ハードコート層の屈折率に
近くすることができる。
【0139】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によっ
て提供される物品に備えられた被膜は、耐環境性が大き
く、透明にすることが可能であり、しかも、干渉縞が発
生するのを抑制することができる。本発明によれば、こ
のような被膜を、気相成長法により、連続した工程で形
成することが可能である。
【0140】また、本発明の構成により、耐摩耗性、耐
擦傷性、耐クラック性、耐衝撃性、耐薬品性、密着性、
耐温水性に優れた光学物品が得られた。また、浸漬法を
用いず、乾式法のみで、全ての膜を形成することが可能
であるため、各膜が大気に曝されることがなく、水分等
の付着が防止でき、本膜厚条件の変性層の効果に加え
て、さらに一層上記効果の優れた光学物品が得られる。
【0141】

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】合成樹脂基材、 前記基材上に形成され、Si系および/またはTi系化
    合物の少なくとも一方を含み、厚さ方向に向かって屈折
    率が変化しており、膜厚が100nmよりも厚く、90
    0nmよりも薄い変性層、 前記変性層上に形成され、前記変性層よりも厚い膜厚を
    有し、かつ、屈折率率が一定であり、SiおよびOを含
    むハードコート層を有することを特徴とする光学物品。
  2. 【請求項2】基材上に被膜を備えた光学物品の製造方法
    であって、 前記基材の上に、Siを含む有機化合物ガスおよびTi
    を含む有機化合物ガスの少なくとも一方を用い、プラズ
    マを用いた化学気相成長法により、100nmよりも厚
    く900nmよりも薄い変性層を形成する第1の工程
    と、 前記変性層の上に、Siを含む有機化合物ガスと、酸素
    ガスとの混合ガスを用い、プラズマを用いた化学気相成
    長法により、ハードコート層を形成する第2の工程とを
    有することを特徴とする被膜を備えた光学物品の製造方
    法。
  3. 【請求項3】請求項2の前記第1の工程は、プラズマに
    供給するエネルギーを徐々に増加または減少させながら
    前記変性層を形成することを特徴とする被膜を備えた光
    学物品の製造方法。
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