JPH0919988A - 化粧シートならびにその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 表面の樹脂層の弾性によりスエードのような
ソフトな触感を有すると共に伸縮が少なく、耐汚染性，
耐擦傷性，耐摩耗性，耐候性などの特性がすぐれ、鮮明
な意匠効果と均一な光沢度が得られ、生産性がよく、且
つ、ラッピング加工適性のよい化粧シートを得ることを
目的とする。 【構成】 熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエラス
トマー１００重量部に対し、ジアリルフタレートプレポ
リマー１〜３０部を含有させてなる樹脂組成物を加熱溶
融して化粧紙表面に塗布し、冷却ドラム面に接触させ固
化させた後、剥離し化粧シートを得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、建築内装材，住宅機
器，家具，什器などの表面材料に用いられる化粧シート
及びその製造方法に関する。本発明によって、得られる
化粧シートは、比較的薄く、強靱で耐屈曲性を有し、表
面の風合，触感がソフトで、耐摩耗性をはじめ物性がす
ぐれると共に、表面樹脂層の透明性が増し、光沢度が安
定するので、化粧シートとして広い範囲の用途に適して
いる。

【０００２】

【従来の技術】従来、可撓性を有する化粧シートとして
は、顔料を混練した不透明の塩化ビニルシートに模様の
印刷を施し、その上に更に透明な塩化ビニルフィルムを
加熱接着し、必要に応じ、表面を凹凸を有するロールで
加圧し、エンボス加工して得られる謂ゆる塩化ビニル化
粧シート、或いは塩化ビニル樹脂の代りに各種熱可塑性
フィルムを用いた熱可塑性樹脂化粧シート。

【０００３】坪量３０ｇ／m²程度の薄葉紙に着色ベタ印
刷を施し、その上から図柄を印刷し、アミノアルキッド
樹脂塗料或いはポリウレタン樹脂塗料などを塗装仕上げ
した薄葉化粧シート。

【０００４】坪量５５〜２００ｇ／m²の化粧紙にメラミ
ン樹脂，ジアリルフタレート樹脂，ポリエステル樹脂な
どの熱硬化性樹脂を含浸したものを、同様の熱硬化性樹
脂を含浸したクラフト紙など基材シートに重ね、多段式
ホットプレス機或いは、連続成形プレス機を用いて熱圧
成形して得られた厚さ０．３mm〜０．７mmの熱硬化性樹
脂化粧シートなどがあった。

【０００５】或いは、熱可塑性ポリエステル系樹脂より
なるエラストマーを加熱溶融して化粧紙表面に塗布した
後、冷却して固化させることにより化粧面を形成させた
化粧シートが考えられた。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
それぞれの化粧シートは、材質，製造方法によって固有
の特徴を有するが、外観，物性，加工性などの点に於い
て必ずしも汎用性をもつものではなく、特に弾性をもっ
たソフトな触感などについては満足すべきものではなか
った。

【０００７】塩化ビニル化粧シートは意匠性に対する適
応性がよく屈曲性に富み、加工が容易であるため、板材
に貼付した後、裏面よりＶ溝を切削して曲げる加工や複
雑な面形状のラッピング加工などに適しているが、耐熱
性が低く、傷つき易いので取扱に注意を要し、また、燃
焼した場合、人体に有害な塩素ガスを発生するなどの問
題点を有していた。その他、熱可塑性化粧シートに於い
ては、一般に接着性が劣り、使用する接着剤、接着方法
などを吟味，検討する必要があった。

【０００８】薄葉化粧シートは、低コストで生産可能で
あるが、基材に貼着した場合、凹凸などが現われ易く、
意匠性が十分でなく、耐摩耗性，硬度，耐水性なども低
く、高度の物性を必要としない限られた用途に使われて
いた。

【０００９】熱硬化性樹脂化粧シートは、硬度，耐熱
性，耐汚染性など各種の物性にすぐれ、外観性がよく、
接着剤とのなじみがよいが、塩化ビニル化粧シートなど
熱可塑性樹脂シートに較べ耐屈曲性が乏しく、Ｖカット
曲げやラッピング加工など複雑な形状や鋭角の曲げ加工
には適さなかった。軟質樹脂を用いた場合に於いても十
分な可撓性が得られず、耐汚染性などの物性が低下し、
満足すべき効果が得られなかった。

【００１０】スエードのようなソフトな質感をもった表
面材料としては、プロテインの微粒子を含む塗料を吹付
塗装する方法などがあったが手数を要し、シート状の製
品として量産することが困難であった。

【００１１】熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエラ
ストマーを加熱溶融して、化粧紙表面に塗布する方法で
は、樹脂が結晶化して固化する迄に、可成りの時間を要
すので、生産性が低下し、結晶化が不十分な状態では、
ツヤ消し仕上げを施した冷却ドラムのマット面が完全に
転写されず、均一なツヤ消し面が得られないなどの問題
があると共に、樹脂が固化した場合、透明性が低下し、
化粧シートの外観の鮮明さが損なわれるものであった。
樹脂の結晶化を速めるために、タルクなど結晶核剤を添
加する方法もあるが、これらの添加物は、透明性を阻害
するものであった。

【００１２】本発明は、表面の樹脂層の弾性により、ス
エードのようなソフトな触感を有すると共に、伸縮が少
なく、耐汚染性，耐擦傷性，耐摩耗性，耐候性などの特
性がすぐれ、鮮明な意匠効果と均一な光沢度が得られ、
生産性がよく、且つ、ラッピング加工適性のよい化粧シ
ートを得ることを目的とする。

【００１３】

【課題を解決するための手段】本発明は、熱可塑性ポリ
エステル系樹脂よりなるエラストマー１００重量部に対
し、ジアリルフタレートプレポリマー１〜３０部を含有
させてなる樹脂組成物を加熱溶融して化粧紙表面に塗布
した後、固化させたことを特徴とする化粧シートであ
り、熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエラストマー
１００重量部に対し、ジアリルフタレートプレポリマー
１〜３０部を含有させてなる樹脂組成物を加熱溶融して
化粧紙表面に塗布した後、冷却して固化させることを特
徴とする化粧シートの製造方法である。

【００１４】本発明に用いる熱可塑性ポリエステル系樹
脂エラストマーとしては、好ましくは、ハードセグメン
トにポリブチレンテレフタレート，ソフトセグメントと
してポリカプロラクトンや、ポリブチレンアジペートの
ような脂肪族ポリエステルをそれぞれ用いたポリエステ
ル・ポリエステル型のエラストマーが適している。該エ
ラストマーは、結晶性ポリマーであるため、他のエラス
トマーに較べ耐熱性が高く、耐汚染性，耐候性などが優
れている。

【００１５】化粧紙表面に熱可塑性ポリエステル系樹脂
よりなるエラストマーを加熱溶融して塗布する場合、該
エラストマー単体のみでは、樹脂膜が白濁し、十分な透
明感が得られ難い。また、該エラストマーの塗布後、化
粧シートの塗膜の表面をツヤ消し加工された冷却ドラム
面に当て結晶化に適した温度まで冷却して樹脂の結晶化
を進め、固化させ、冷却ドラム面より剥離させ、冷却ド
ラム表面のツヤ消し面を塗膜上に転写することにより、
化粧シートの仕上り面が得られるが、該エラストマーの
結晶化までに要する時間が生産ライン速度に影響する。

【００１６】結晶化が十分に行われていない状態で化粧
シートを冷却ドラム面から剥離させると、冷却ドラムの
ツヤ消し面を安定した状態で樹脂膜面に転写することが
できず、ツヤむら、光沢のバラツキを生じ易い。

【００１７】結晶核剤としてタルク，シリカ粉末などを
熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエラストマーに添
加することにより、結晶化が促進され固化が早くなる
が、これらの添加物は樹脂と相溶せず、樹脂膜の透明性
を低下させ、化粧シートの外観を損うものである。

【００１８】熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエラ
ストマー１００重量部に対して、ジアリルフタレートプ
レポリマー１〜３０重量部を含有せしめることによっ
て、該エラストマーの結晶化に於いて白濁することがな
くなり、化粧シートの柄の鮮明さが保持され色調が安定
する。

【００１９】また、ジアリルフタレートプレポリマーの
添加によって、樹脂の結晶化速度が速くなり、タルクな
どの結晶核剤を添加しなくても、同等の時間で固化させ
ることができるので、生産ライン速度を低下させること
がなく、冷却ドラムのツヤ消し面を完全に樹脂膜上に転
写することができ、化粧シートの表面仕上りが安定す
る。

【００２０】熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエラ
ストマー１００重量部に対して、ジアリルフタレートプ
レポリマーの含有量が１重量部より少ない場合は、塗膜
の固化後の透明性の向上及び固化速度の向上に対し、十
分な効果が認められない。

【００２１】ジアリルフタレートプレポリマーの含有量
が３０重量部を超えた場合は、化粧シートの冷却ドラム
に対する剥離性が低下すると共に、化粧シート表面樹脂
膜の強度が低下する。

【００２２】本発明に用いるジアリルフタレートプレポ
リマーは、ジアリルフタレートモノマーを重合して得た
二量体以上の部分重合体であり、アセトン，メチルエチ
ルケトンに可溶で、熱により軟化すると共に、熱硬化性
を有するプレポリマーである。

【００２３】熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエラ
ストマーにジアリルフタレートプレポリマーを含有せし
めることによって生ずる透明性の向上ならびに固化の促
進作用については、その機構はよく解らないが、エラス
トマー中にジアリルフタレートプレポリマーが微粒子で
分散することにより結晶の成長が阻害され、ハードセグ
メントのポリエステル樹脂結晶が微細化し透明性が向上
すると共に、ジアリルフタレートプレポリマーが結晶核
剤となり、結晶化を速め、固化を促進しているものと考
えられる。

【００２４】本発明に用いる化粧紙は、薄葉紙，紙間剥
離防止のためサイズ剤の添加により紙質強度を向上させ
た強化紙，或いは、隠蔽性を賦与するために二酸化チタ
ンを混抄したチタン紙などが用いられ、必要に応じて、
着色隠蔽性を強化するためのベタ印刷，或いは、各種の
図柄模様を表現するための印刷が行われる。

【００２５】とりわけ、化粧紙が坪量２３〜１００ｇ／
m²であり、密度が０．７０g／cm³以上、破裂強さが１．
００Kgf／cm²になるように、抄造工程でカルボキシ変性
ポリアクリルアミド，メラミン樹脂などの紙力増強剤の
添加により紙力を増強させた強化紙を用いることによっ
て、特に、セロファン粘着テープに対する紙間剥離を防
止することが可能になる。

【００２６】化粧紙表面に熱可塑性ポリエステル系樹脂
よりなるエラストマーによる化粧層を形成させる方法と
しては、押出成形機にＴダイを設置し、該熱可塑性ポリ
エステル系樹脂よりなるエラストマーを溶融状態でフィ
ルム状に押出し、化粧紙面に流延させ、加圧冷却する方
法、カレンダーでフィルム状に圧延して化粧紙面に圧着
させる方法、或いは、溶融状態でロールコーティングす
る方法などがある。また、あらかじめ、フィルムをつく
っておき、化粧紙面に重ね加熱ロール，加熱ベルトなど
で押えて融着させることも可能である。熱可塑性ポリエ
ステル系樹脂よりなるエラストマーの層の厚さは、好ま
しくは２０〜２００μmに於いて化粧シートとして必要
な外観，物性を経済的に得ることができる。塗膜の厚さ
が２０μm以下の場合は鱗片状の外観になり易く、耐摩
耗性など十分な表面物性が得られ難い。

【００２７】化粧紙への熱可塑性ポリエステル系樹脂よ
りなるエラストマーの表面層の形成に先だち、加熱ドラ
ムなどのドライヤーを用いて、あらかじめ加熱乾燥し、
水分を除去することによって気泡の発生を防ぎ接着性を
高め、塗膜を均一に形成させることが可能になる。

【００２８】塗膜を形成した後、必要に応じ、所望のデ
ザインの凹凸を有するエンボスロールで塗膜面を加圧
し、該凹凸を転写賦形し、エンボス仕上げを行うことが
できる。このエンボス加工によってスエードの如き弾力
性のあるソフトな触感が強調され、独得の風合が得られ
ると共に、耐擦傷性などが向上する。

【００２９】

【実施例】

実施例１ 紙力増強剤としてカルボキシ変性ポリアクリルアミドを
添加して抄造した、坪量４５ｇ／m²、密度が０．７９８
g／cm³で、破裂強さが２．０Kgf／cm²の強化紙の表面に
ベタ印刷及び木目模様をグラビア印刷した化粧紙を加熱
ドラムで乾燥を行い、該化粧紙の表面にＴダイを設置し
た押出成形機により熱可塑性ポリエステル系樹脂よりな
るエラストマーであるヌーベランＰ４１４３ＤＡＮＪ
（帝人製）１００重量部にジアリルフタレートプレポリ
マーであるダイソーダップＫ（ダイソー製）５重量部を
含有せしめた樹脂組成物を温度２４０℃で押出し、塗布
量が、膜厚で５０μmになるように流延させて塗布し、
ライン速度４０m／min木目エンボスを施した冷却ロール
の温度が６０℃になるように保持し、化粧シート塗膜面
を圧着させ木目エンボスを施し、冷却して巻き取り、曲
面貼り加工に適した化粧シートを得た。

【００３０】熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエラ
ストマーへのジアリルフタレート添加は、２軸スクリュ
ー式押出成形機を用いたペレタイザーにより、２５０℃
の温度で、所定の配合比になるように混練して押出し、
ペレット化する方法により行った。

【００３１】この化粧シートをウレタン系接着剤を用い
て、長方形の断面形状で棒状に切削した中質繊維板基材
の表面を包むように、ラッピングマシンＰＬ−３００Ｃ
Ｅ（丸仲製）を用いて貼着し造作材を得た。このように
して得られた造作材は、ソフトな手触りと共に、意匠性
に優れ、ラッピング加工に於ける屈曲性がよく、美麗な
仕上りであった。また、耐熱性ならびに耐汚染性がよい
ものであった。更に、中質繊維板に貼付したものについ
て熱硬化性樹脂化粧板試験方法ＪＩＳ Ｋ６９０２に準
じて耐熱性試験を行った結果、以下に記す比較例１或い
は、比較例２の化粧シートに比べ、ツヤの変化が軽微で
あった。

【００３２】

【比較例１】熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエラ
ストマーにジアリルフタレートプレポリマーを含有させ
ず、タルクを０．５重量部含有させた他は、すべて実施
例１と同様の材料を用いると共に、同一の製造条件によ
り化粧シートを製造した。比較例１によって得られた化
粧シートは、実施例１の化粧シートに較べ、表面の樹脂
膜が白っぽく、印刷された木目模様の鮮明さを欠くもの
であった。

【００３３】

【比較例２】熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエラ
ストマーにジアリルフタレートプレポリマーを含有させ
ない他は、すべて実施例１に用いた材料と同様の材料な
らびに同一の製造条件により化粧シートを製造した。比
較例２によって得られた化粧シートは、表面の樹脂膜の
固化が不十分で冷却ドラムからの剥離性が悪く、表面に
異状な光沢部分や艶ムラが発生し、化粧シートとして実
用的な意匠性を損うものであった。

【００３４】

【発明の効果】熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエ
ラストマーに、ジアリルフタレートプレポリマーを含有
させることによって、樹脂の結晶化が速くなり、固化が
促進され、化粧シートの生産ライン速度が向上する。ま
た、冷却ドラムに接している状態で速やかに固化させる
ことができるので、ドラムとの離型性が向上すると共に
冷却ドラム面に施されたツヤ消し仕上げ、エンボスなど
の表面状態を確実に化粧シートの塗膜面に転写すること
ができ、均一な表面仕上げが得られる。

【００３５】更に、熱可塑性ポリエステル系樹脂よりな
るエラストマーの透明性が向上し、且つ、タルクなどの
結晶核剤を添加しなくても速やかに固化するので、樹脂
膜が白濁することがなく、化粧シートの色調、模様を鮮
明に表現することが可能になる。また、ジアリルフタレ
ートプレポリマーを含有させることによって、化粧シー
トの耐熱性が向上する。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエ
   ラストマー１００重量部に対し、ジアリルフタレートプ
   レポリマー１〜３０部を含有させてなる樹脂組成物を加
   熱溶融して化粧紙表面に塗布した後、固化させたことを
   特徴とする化粧シート。
2. 【請求項２】 熱可塑性ポリエステル系樹脂よりなるエ
   ラストマー１００重量部に対し、ジアリルフタレートプ
   レポリマー１〜３０部を含有させてなる樹脂組成物を加
   熱溶融して化粧紙表面に塗布した後、冷却して固化させ
   ることを特徴とする化粧シートの製造方法。