JPH09158050A - 抗ピリング性溶剤紡糸セルロース系繊維、その繊維構造物及びその製造法 - Google Patents

抗ピリング性溶剤紡糸セルロース系繊維、その繊維構造物及びその製造法

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JPH09158050A
JPH09158050A JP8220663A JP22066396A JPH09158050A JP H09158050 A JPH09158050 A JP H09158050A JP 8220663 A JP8220663 A JP 8220663A JP 22066396 A JP22066396 A JP 22066396A JP H09158050 A JPH09158050 A JP H09158050A
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pilling
woven
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tencel
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JP8220663A
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Kiyoshi Otoi
清 音居
Sumio Abe
純夫 阿部
Masaru Kitamura
優 北村
Shohei Miyata
昌平 宮田
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KANEBO SILK EREGANSU KK
OMORI KIKAKU KK
OOMORI KIKAKU KK
Kanebo Ltd
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KANEBO SILK EREGANSU KK
OMORI KIKAKU KK
OOMORI KIKAKU KK
Kanebo Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】テンセル繊維において生産性や布帛強度の不均
一性等の面で従来問題であった織編物の揉み叩き加工を
採らずに、代わってテンセル原綿のジグリシジル又はポ
リグリシジル化合物との架橋改質反応により高度の抗ピ
リング性改質を可能にし、しかもテンセル繊維特性の保
持をする上で、効果的で経済的な架橋反応触媒を提供す
る。 【解決手段】テンセル繊維及び該繊維構造物、特に原綿
の抗ピリング性改質において、ジグリシジル又はポリグ
リシジル化合物による架橋改質に硫酸ナトリウム又は硫
酸カリウムの50g/l以上の濃度の系の水溶液を反応
触媒とした場合、、テンセル繊維に、平均単繊維強度が
4.3g/d以上においても、高度の抗ピリング性を付
与することが可能になった。これにより織編物での揉み
叩き加工及びセルラーゼ加工を必要としない抗ピリング
性テンセル繊維、特に良好な紡績性のテンセル繊維原綿
の製造を可能にした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は改質された溶剤紡糸
セルロース系繊維、該繊維からなる繊維構造物及びその
製造法に係わり、特に限定された処理条件での該繊維原
綿のエポキシ化合物による架橋改質により、該繊維の布
帛加工に常用されている前処理としての揉み叩き加工及
びセルラーゼ加工を実施しなくて、抗ピリング性に改質
され、しかも布帛風合及び吸水性に変化の無い溶剤紡糸
セルロース系繊維及びその繊維構造物の改質法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】溶剤紡糸セルロース系繊維とは、精製パ
ルプを誘導体に化学反応せしめることなく、特殊な有機
溶媒、例えばN−メチルモルホリン−N−オキシド等に
加圧、加温下に溶解し、湿式紡糸したもので、英国コー
トルズ社の「テンセル」(商品名)が知られている。
【0003】この溶剤紡糸セルロース系繊維(以下テン
セル繊維)は綿糸やレーヨンに比べて、強度が非常に強
く、張りが有りながらレーヨン特有の柔らかい風合を持
っていることが特徴で、さらに湿潤時の繊維強度がレー
ヨンと違って強く、さらに湿潤で縮みにくいといった優
れた特性を有している。
【0004】テンセル繊維はN−メチルモルホリン−N
−オキシドを溶剤とし紡糸されたものであるが、上述の
優れた特性を持つ一方で、単繊維の構造が、スキン−コ
ア構造を持ち、このスキン層が家庭洗濯等の湿潤摩擦や
衝撃で非常にフィブリル化し易く、さらに該フィブリル
が絡んでピリングし易いという欠点を持っている。そし
て、最近のテンセル繊維に関する技術開発は、ほとんど
がピリング化を効率良く、効果的に防止しうる抗ピリン
グ技術に集中していると言っても過言では無い。例え
ば、「ニューレーヨンの実際知識」(繊維社)280〜
283頁には該繊維のピリング発現機構及びセルラーゼ
によるピリングの分解除去手法が理論的に解説されてい
る。該解説に記述されているように、現在、テンセル繊
維の抗ピリング対策としては、該繊維からなる布帛をロ
ータリーワッシャー等で揉み叩き加工を施すことで敢え
て単繊維のスキン層をフィブリル化さらにはピリング化
させ、発生したフィブリル及びピリングをさらに揉み叩
き加工しながら、セルラーゼで溶解除去する、いわゆる
バイオ加工が実施されている。従来、上述の揉み叩き加
工、セルラーゼ加工は布帛で実施されて来たが、絡み防
止対策を施した糸での揉み叩き加工やセルラーゼ加工の
研究も着手されている(特開平6−322667号公
報、特開平7−3626号公報参照)。
【0005】繊維のフィブリル化現象は、一般的には、
糸や布帛への摩擦や衝撃で単繊維がさらに割繊され、割
繊されて発生したミクロ繊維が毛羽状に立ち上がる状態
である。さらに、ピリング化の機構は未だ完全に解明さ
れていない面もあるが、フィブリル化した布帛にさらに
摩擦や衝撃を加えて行った場合、ミクロ繊維同志及びミ
クロ繊維と単繊維が複雑に絡んで毛玉になり発現すると
言われている。フィブリル化は絹繊維の染色時や着用時
に白化現象として良く見られるものであるが、絹繊維の
場合は単繊維の強度が適度なものであるため、発生した
フィブリルは摩擦や衝撃で引きちぎられピリングが発生
することは無い。絹繊維の場合、フィブリル化は普通は
好ましい現象ではないが、時には布帛のピーチスキン加
工として利用される。
【0006】これに対してテンセル繊維の場合、前述の
ように単繊維強度が非常に強いため、発生したフィブリ
ルを摩擦や衝撃で引きちぎることが困難なため、著しく
ピリングし易い。そのためテンセル繊維の場合、前述の
ように揉み叩き加工で敢えてフィブリル及びピリングを
発生させ、これをセルラーゼ加工で溶解除去する加工手
段を採っている。一旦、表皮層をフィブリル化それに続
くセルラーゼ加工で溶解除去したテンセル繊維はもはや
摩擦や衝撃でピリングが発生することは無い。
【0007】しかしながら、揉み叩き加工、及びセルラ
ーゼ加工は対象が布帛であれ糸であれ、それぞれが小ロ
ット生産で、処理時間も全体として数時間〜10数時間
掛かり、大規模な生産手法としては問題があった。
【0008】特に、大規模生産と短時間処理で経済性を
改善し、しかも加工の均一性の改善が期待できる点、さ
らには揉み叩き加工やセルラーゼ加工が困難な他素材と
テンセル繊維との混紡を実施する要望から、テンセル繊
維の原綿での改質加工が望まれていたが、テンセル原綿
の場合、揉み叩き加工は後の紡績を不可能にするほど綿
を損傷するため、さらに一段と困難な課題であった。
【0009】エポキシ化、特にジグリシジル化合物又は
ポリグリシジル化合物を架橋剤とし、酸性化合物やアル
カリ性化合物を触媒とし、セルロース分子間を架橋する
方法で、木綿等のセルロース繊維からなる織編物の防し
わ性や耐洗濯性を向上させる手法は公知である。例えば
水酸化ナトリウム触媒についてはTextile Re
search Journal 29,918〜925
頁(1959)、繊維学会誌 26,226〜236頁
(1970)等、酸性触媒であるホウフッ化亜鉛触媒に
ついてはTextile Research Jour
nal 31,757〜769頁(1961)、及び繊
維学会誌 26,38〜50頁(1970)等に綿布に
防しわ性を付与する目的で詳しく検討されている。特公
昭34−5250号公報、特開昭51−32898号公
報にはセルロース繊維にW/W性や鮮明染色性を付与す
る目的で水酸化ナトリウムを触媒とするエポキシ化合物
によるセルロース繊維の改質が提案されている。特開昭
50−112598号公報、特開昭50−112599
号公報にはセルロース繊維に耐久性の良いセツト性を付
与する目的で酸や酸性塩を触媒とするエポキシ化合物に
よる改質が提案されている。特開昭50−63298号
公報、特開昭58−31171号公報にはW/W性、洗
濯耐久性、オイル・リリーズ性を付与する目的で酸や酸
性塩及びアミン塩を触媒とするエポキシ化合物によるセ
ルロース繊維の改質が提案されている。特開平6−29
9469号公報には形態安定性、防しわ性、耐磨耗性を
付与する目的で酸性塩やアミン及びアミン塩を触媒とす
るセルロース繊維の改質が提案されている。
【0010】本発明者等は、上述の従来技術をもとに種
々の触媒でジグリシジルエーテル化合物やポリグリシジ
ルエーテル化合物による架橋反応でテンセル繊維の抗ピ
リング性改質につき検討した。その結果、セルロース繊
維のエポキシ化合物による架橋改質に触媒効果が認めら
れている上述の酸性塩や強アルカリ或いはアミン化合物
が、テンセル繊維の該グリシジルエーテル化合物による
架橋反応での抗ピリング改質にはほとんど触媒効果が無
い、或いは実用性が無いことが分かった。
【0011】即ち、該架橋反応の最も良く知られた水酸
化ナトリウムや水酸化カリウム等の強アルカリ触媒を、
上述の繊維学会誌 26,36〜46頁(1970)に
準じて、テンセル繊維のグリシジルエーテル化合物によ
る架橋改質の反応触媒として検討したが、反応温度80
℃、ジグリシジル化合物2g/100ml、触媒濃度
1.0g/100ml、浴比15の通常の反応条件等で
テンセル繊維の抗ピリング性はほとんど改善されなかっ
た。又、これ以上の触媒濃度はテンセル繊維織編物の風
合がペーパーライクに変化するため採用できないことが
分かった。
【0012】同じく、該架橋反応の代表的触媒であるホ
ウフッ化亜鉛、ホウフッ化マグネシウムを、上述の繊維
学会誌 26,38〜50頁(1970)に準じて検討
したが、反応温度80℃、ジグリシジル化合物2g/1
00ml、触媒濃度1.0g/100ml、浴比15の
通常の反応条件でテンセル繊維の抗ピリング性はほとん
ど改善されなかった。該触媒は比較的高価で、これ以上
の触媒濃度は本発明の主たる目的である原綿加工の触媒
としては経済性が悪く採用できない。
【0013】その他、上述の従来技術で公知の触媒で、
無機酸として硫酸、塩酸、燐酸、有機酸として酢酸、ク
エン酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、プロピオン
酸、酸性塩として塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化ア
ンモニウム、塩化アルミニウム、塩化錫、硫酸マグネシ
ウム、硫酸亜鉛、硫酸アンモニウム、硫酸アルミニウ
ム、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、硝酸アンモニウム、
硝酸アルミニウム、燐酸アンモニウム、過塩素酸マグネ
シウム、アルカリ性塩として上記の有機酸のナトリウム
及びカリウム塩、アミン化合物としてベンジルジメチル
アミン、各種4級アンモニウム塩について、反応温度8
0℃、触媒濃度1.0g/100ml〜10g/100
mlの条件で、テンセル繊維のジグリシジルエーテル化
合物による架橋反応による抗ピリング性改質を検討した
が、全て、テンセル繊維の抗ピリング性改質に全く効果
は認められなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、テンセ
ル繊維のジグリシジルエーテル化合物及びポリグリシジ
ルエーテル化合物との架橋反応による抗ピリング性改質
に付き、技術的に容易で経済的に有利な反応触媒につい
て鋭意研究した結果、本発明を完成したものである。本
発明の目的とするところは、まず、従来テンセル繊維の
抗ピリング性改質に必須であった揉み叩き加工及びセル
ラーゼ加工を実施せず、代わってテンセル繊維の優雅な
風合や速やかな吸水性を損うことなく架橋改質し、該架
橋改質により高度な抗ピリング性を持ったテンセル繊維
及び該繊維からなる繊維構造物を提供するにある。特に
大規模生産と短時間処理で経済性を改善し、しかも加工
の均一性の改善が期待できる点、さらには揉み叩き加工
やセルラーゼ加工が困難な他素材との混紡を可能ならし
める抗ピリング性テンセル繊維原綿を提供するにある。
さらに本発明の目的はかかる架橋改質を工業的に有利に
製造する方法を提供するにあり、特に技術的に容易で経
済的に有利な該架橋反応の触媒及び該触媒反応の反応条
件を提供するにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために次の構成からなる。即ち、第1発明は、溶剤
紡糸セルロース系繊維において、該繊維が架橋改質され
ている結果、平均単繊維強度が4.3g/d以上で、該
単繊維の表面が揉み叩き加工及びセルラーゼ加工による
フィブリル化又はミクロフィブリル化構造を呈していな
いにもかかわらず、該繊維からなる織編物の家庭用洗濯
機法での抗ピリング性試験にJIS L−1076法の
ピリング判定写真を準用しての判定で4級以上の抗ピリ
ング性に改質されており、さらに架橋改質による織編物
の風合の変化が実質的に無く、さらにJIS L−10
96法の吸水性試験のA法による試験で該繊維からなる
織編物の吸水速度が1秒以下であることを特徴とする溶
剤紡糸セルロース系繊維及び該繊維からなる繊維構造物
であり、第2発明は溶剤紡糸セルロース系繊維におい
て、該繊維がジグリシジルエーテル化合物又はポリグリ
シジルエーテル化合物により架橋改質されている結果、
平均単繊維強度が4.3g/d以上で、該単繊維の表面
が揉み叩き加工及びセルラーゼ加工によるフィブリル化
又はミクロフィブリル化構造を呈していないにもかかわ
らず、該繊維からなる織編物の家庭用洗濯機法での抗ピ
リング試験にJIS L−1076法のピリング判定写
真を準用しての判定で4級以上の抗ピリング性に改質さ
れており、さらに架橋改質による織編物の風合の変化が
実質的に無く、さらにJIS L−1096法の吸水性
試験のA法による試験で該繊維からなる織編物の吸水速
度が1秒以下であることを特徴とする溶剤紡糸セルロー
ス系繊維及び該繊維からなる繊維構造物であり、第3発
明は溶剤紡糸セルロース系繊維の原綿、スライバー、紡
績糸或いは織編物の改質において、硫酸ナトリウム又は
硫酸カリウムを触媒として、該触媒濃度が50g/l以
上の濃度の系でジグリシジルエーテル化合物又はポリグ
リシジルエーテル化合物により架橋改質することを特徴
とする、単繊維の表面が揉み叩き加工及びセルラーゼ加
工によるフィブリル化又はミクロフィブリル化構造を呈
していないにもかかわらず、該繊維からなる織編物の家
庭用洗濯機法での抗ピリング性試験にJIS L−10
76法のピリング判定写真を準用しての判定で4級以上
の抗ピリング性に改質されており、さらに架橋改質によ
る織編物の風合の変化が実質的に無く、さらにJIS
L−1096法の吸水性試験のA法による試験で該繊維
からなる織編物の吸水速度が1秒以下である溶剤紡糸セ
ルロース系繊維及び該繊維からなる繊維構造物の製造法
である。
【0016】本発明者等は、テンセル繊維の抗ピリング
改質の手段として、ジグリシジルエーテル又はポリグリ
シジルエーテル化合物よる架橋改質を手法として採り、
その改質方法において、従来、木綿等のセルロース繊維
のグリシジル化合物による架橋改質の触媒に供されてい
た水酸化ナトリウム等の強アルカリや塩酸等の強酸及び
ホウフッ化亜鉛等の強酸性塩が布帛の品質維持や経済性
の点で許容される濃度ではテンセル繊維の抗ピリング性
改質には全く効果が無く、その他、従来セルロース繊維
のエポキシ化合物との反応触媒として公知の有機酸、弱
酸性塩及びアミン化合物も、これを高濃度で添加した場
合でも架橋反応そのものが全く進まず、これを打開すべ
く種々の化合物及びその反応条件について検討した。そ
の結果、テンセル繊維のジグリシジルエーテル化合物及
びポリグリシジルエーテル化合物による抗ピリング性架
橋改質の反応触媒として極めて安価に入手できる硫酸ナ
トリウム又は硫酸カリウムを無水物として50g/l以
上の濃度、及び他のアルカリ剤を混合することなく、反
応開始時のpHを9.0以下に調整した場合において
も、該架橋反応が速やかに、しかも架橋度の再現性良く
進むことを見出だした。本反応のメカニズムの正確なこ
とは分からないが、硫酸ナトリム及び硫酸カリウムがグ
リシジル化合物の塩析効果の他に、グリシジル基と反応
して該グリシジル基を遷移状態として高活性基に変化さ
せるものと思われる。事実、該架橋反応の系は、アルカ
リ剤を混合していないにもかかわらず、反応の進行とと
もにpHがアルカリ側に移動し、最終的にはpHは11
以上に上昇する。これが本発明の基本的技術である。し
かも、以上により得られた改質テンセル繊維の織編物の
品質は、平均単繊維強度が4.3g/d以上(改質前
4.8g/d以上)で、該単繊維の表面が揉み叩き加工
及びセルラーゼ加工によるフィブリル化又はミクロフィ
ブリル化構造を呈していないにもかかわらず、家庭用洗
濯機法での抗ピリング試験にJIS L−1076法の
ピリング判定写真を準用しての判定で4級以上の抗ピリ
ング性に改質されており、さらに該架橋改質による織編
物の風合が実質的に無く、さらにJIS L−1096
法の吸水性試験のA法による試験で該繊維からなる織編
物の吸水速度が1秒以下である。これが本発明の物質的
特徴である。
【0017】テンセル繊維のジグリシジルエーテル及び
ポリグリシジルエーテル化合物との架橋反応に水酸化ナ
トリウム等の強アルカリ、塩酸等の強酸、ホウフッ化亜
鉛等のホウフッ化化合物、その他の酸性塩や有機酸さら
にはアミン化合物が触媒効果が事実上無く、それ等より
化学的に不活性な硫酸ナトリウム及び硫酸カリウムに顕
著な触媒効果があることは新規な発見であり驚くべき事
実である。ただし、これらの強アルカリ、強酸、ホウフ
ッ化化合物、酸性塩、有機酸及びアミン化合物は、それ
単独では触媒効果は無いのは前述の通りであるが、硫酸
ナトリウムや硫酸カリウムの50g/l以上の系に混合
した場合、前述の文献での通常の触媒濃度の1/100
〜1/10程度の0.1g/l〜1g/l程度の微量混
合でも補助触媒としての効果はある。この補助触媒効果
は高温反応である浸漬法ではほとんど意味は無いが、低
温反応であるコールドバッチ法の場合、硫酸ナトリウム
や硫酸カリウム単独の場合に比して架橋反応の時間短
縮、架橋度の均一性の面で若干ではあるが効果が認めら
れる。
【0018】本発明において、揉み叩き加工が不必要な
ことは、大規模生産と短時間処理で経済性を改善し、し
かも均質な改質が期待できる点、さらには揉み叩き加工
やセルラーゼ加工が困難な他素材とテンセル繊維との混
紡を可能にするための必須条件であるテンセル原綿での
抗ピリング加工を可能にする点で重要である。
【0019】さらに、ポリエステル繊維やアクリル繊維
の抗ピリング加工としては、一般に平均単繊維強度を
3.5g/d程度以下に調整する手段が採られるが、本
発明の場合、平均単繊維強度4.3g/d以上のテンセ
ル繊維に抗ピリング改質ができたことは意味が大きい。
このことは細番手紡績糸による薄地布帛の実用強度を保
持するうえでも重要である。
【0020】以上のように本発明はテンセル原綿の改質
加工に特に有用であるが、これに限定されるものでは無
く、紡績糸及び織編物から、ピーチスキン調の布帛にと
らわずにフラットの織編物を製造するテンセル繊維の改
質に有用である。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成要件を具体的
に説明する。本発明の溶剤紡糸セルロース系繊維とは、
具体的には、現在のところ商業的に実用化されているテ
ンセル(商品名)が唯一該当する。そして本発明はテン
セル原綿、スライバー、紡績糸、或いは織編物等の全て
に適用できるが、特に原綿に適用した場合の効果が生産
性及び経済性及び他素材との複合性の面で大きい。
【0022】本発明においては、現在テンセル繊維の抗
ピリング加工の処理として必ず実施されている揉み叩き
加工及びセルラーゼ加工を必要としないのが大きな特徴
である。これにより、大規模生産と短時間処理で経済性
の改善が期待でき、さらには揉み叩き加工やセルラーゼ
加工が困難な他素材とテンセル繊維との混紡を可能にす
るテンセル原綿での抗ピリング加工が容易に実現でき
る。
【0023】本発明のテンセル繊維の平均単繊維強度は
4.3g/d以上、好ましくは4.5g/d以上であ
る。当然ながら4.3g/d以下でも本発明を準用すれ
ばさらに高度で均一な抗ピリング性改質が可能である
が、このためにはセルラーゼ加工や、酸又はアルカリ処
理で繊維強度の調整が必要になる。
【0024】本発明のテンセル繊維はグリシジル化合物
により架橋改質されている。該グリシジル化合物として
は、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プ
ロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリ
セリン、ソルビトール、ポリグリセロール、ペンタエリ
スリトール等のジ、及びポリグリシジルエーテルである
が、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プ
ロピレングリコール及びポリプロピレングリコールのジ
グリシジルエーテルが効果及び経済性の面で好ましい。
【0025】本発明のグリシジル化合物による架橋度
は、これを重量増加率で表した場合、1〜20重量%、
好ましくは2〜20重量%が望ましい。1重量%以下で
は抗ピリング性が3級以下であるし、20重量%を越え
た場合布帛の風合が固くなる。
【0026】本発明の架橋改質によって、テンセル繊維
が平均単維強度が4.3g/d以上でも該繊維の織編物
の家庭用洗濯機法での抗ピリング試験にJIS L−1
076法のピリング判定標準写真を準用しての判定で4
級以上である。本発明によって平均単繊維強度が4.3
g/d以上でも抗ピリング性繊維にテンセル繊維を改質
できたことは、テンセル原綿からの紡績生産性や紡績糸
の品質規格の維持及びテンセル細番手紡績糸よる薄地織
編物に抗ピリング性と充分な実用強度を付与するに極め
て効果的である。
【0027】本発明の家庭用洗濯機法での抗ピリング試
験は、JIS L−0217の103法に準拠した方法
で、家庭用洗濯機(JIS L−0217の103号の
規定するもの)を使用し、衣料用合成洗剤2g/lを含
む液温40℃の洗濯液浴比1:30で、試験片3枚と負
荷布2枚(計5枚)を5分間洗濯した後脱液し、次に常
温の水で2分間すすぎ洗いと脱液を各々2回行い、試験
片と負荷布を取り出しタンブル乾燥機で乾燥する(吹き
出し温度約70℃)。この操作を5回くり返し、得られ
た試験片をJIS L−1076法のピリング判定標準
写真を準用して試験片の抗ピリング性を判定する。
【0028】本発明のジグリシジルエーテル化合物及び
ポリグリシジルエーテル化合物により架橋改質したテン
セル繊維は、架橋改質前のテンセル繊維と同様に吸水性
が極めて良好で、JIS L−1096法の吸水性試験
のA法による試験で、該繊維からなる織編物の吸水速度
は1秒以下である。該吸水性が極めて良好なのが、本発
明のグリシジルエーテル化合物による架橋改質の顕著な
特徴である。
【0029】因に、テンセル繊維の抗ピリング性改質を
目的にした従来技術の一つとして、ジメチロールジヒド
ロキシエチレン尿素加工やジ、又はトリクロルトリアジ
ン系化合物による改質加工が提案されている(特開平6
−146168号公報、特開平5−117970号公
報)。しかしながら、この場合、テンセル織編物の上記
吸水速度は10秒以上になり、該改質加工により吸水性
が顕著に低下し、テンセル繊維を差別化繊維たらしめて
いる特性が大きく阻害され好ましくない。
【0030】JIS L−1096法の吸水性試験のA
法の概要は、水1mlを25±3滴に分割できるビュレ
ットを用い、ビュレットの先端が試験織編物片の表面か
ら1cmの高さになるようにして、水滴を1滴落下さ
せ、水滴が試験片に落ちた時から、その水滴が特別な反
射をしなくなるまでの時間(秒)を測定する。試験回数
は10回とし、その平均値で表す。特別な反射をしなく
なったのは、試験片が水滴を吸収するにつれて鏡面反射
が消え、湿潤だけが残る状態を言う。
【0031】本発明方法はジグリシジルエーテル化合物
又はポリグリシジルエーテル化合物よる架橋改質を行
う。架橋改質の方法としては、浸漬加熱法、パッド−ス
チーム法、パッド−ドライ−スチーム法、コールドバッ
チ法の何れでも可能であるが、均一性の面では浸漬法が
好ましい。何れの方法においても、グリシジル化合物及
び架橋反応の触媒の水溶液にテンセル繊維を浸漬し、浸
漬法の場合はそのまま、パッド法及びコールドバッチ法
の場合はピックアップ量を70%〜130%に搾液し、
通常は加温又は加熱下、コールドバッチ法の場合は室温
又は加温下で反応させる。
【0032】本発明方法の架橋反応に必要なグリシジル
化合物の施与量はグリシジル化合物のエポキシ当量等に
よっても異なるが、浸漬法ではテンセル繊維に対して2
〜30重量%、パッド−スチーム法、パッド−ドライ−
スチーム法では2〜40重量%、コールドバッチ法では
2〜50重量%である。
【0033】本発明方法の架橋改質反応の触媒として
は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、の高濃度水溶液が
好ましく、硫酸ナトリウムが最も効果的である。本発明
の触媒の量は、処理液中の濃度として5〜15重量%、
好ましくは8〜12重量%である。
【0034】本発明者等は先にセルラーゼ加工を施した
テンセル繊維のグリシジル化合物による架橋改質を提案
しているが、その場合にはセルロース繊維のエポキシ化
合物による架橋改質の反応触媒として公知の、中性塩、
弱アルカリ性塩、アルカリ性塩、酸性塩、アルカリ金属
の水酸化物、アンモニア、及びアミン類と広範囲の化合
物が反応触媒として効果が認められたが、本発明のセル
ラーゼ加工を施してないテンセル繊維のジグリシジルエ
ーテル化合物及びポリグリシジルエーテル化合物による
架橋改質の反応触媒としては、硫酸ナトリウム及び硫酸
カリウムの濃厚水溶液が顕著な選択性を持って有効であ
る。この理由は明確には分からないが、アルカリ金属の
硫酸塩の濃厚水溶液がセルロース系繊維に対して強い膨
潤作用を持っていることと関係があると考えられる。こ
れ以外の中性塩、弱アルカリ性塩、アルカリ性塩、酸性
塩、低濃度のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、ア
ミン類はセルラーゼ加工で繊維構造が膨潤したテンセル
繊維の場合には、該架橋改質の反応触媒効果はあるが、
セルラーゼ加工を施してない場合、繊維構造が緻密であ
るため該反応触媒効果は無いものと思われる。水酸化ナ
トリウム等のアルカリ金属の水酸化物も高濃度の場合テ
ンセル繊維の膨潤作用を持っているが、その場合、テン
セル繊維の風合が劣化するとか、経済性が無い等の理由
で実用触媒としては採用できない。
【0035】絹繊維の抗ピリング改質加工として、ジグ
リシジルエーテル及びポリグリシジルエーテル化合物に
よる架橋改質の場合に触媒として硫酸ナトリウムが効果
があることは公知である(特開昭64−26784号公
報、特開昭62−231079号公報)。しかしなが
ら、絹繊維の場合はグリシジル基と反応するのは、主と
してチロシンのフェノール性水酸基であるのに対して、
テンセル繊維の場合は、グルコース環のアルコール性水
酸基であり、さらに、繊維構造の気孔度、結晶構造や結
晶化度の差、等で必ずしも絹繊維の知見、技術がセルロ
ース系繊維に適用できるものでは無い(続絹糸の構造
信州大学繊維学部発行 628〜630頁参照)。事
実、これまで公知技術文献としてセルロース系繊維のグ
リシジル化合物等による改質の反応触媒として硫酸ナト
リウム及び硫酸カリウムが触媒として有効としたものは
無い。又、上記の絹繊維に関する特開昭64−2678
4号公報及び特開昭62−23107号公報において触
媒として有効とされた多くの化合物の中で、テンセル繊
維の架橋改質に有効なのは硫酸ナトリウムのみで、亜硫
酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム、塩化ナトリウ
ム、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酢酸ナト
リウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、2−メチ
ルイミダゾール、トリエチレンテトラミン、炭酸ナトリ
ウム、炭酸水素ナトリウム等は全て触媒活性は無い。従
って、硫酸ナトリウム及び硫酸カリウムはテンセル繊維
のグリシジル化合物との反応による抗ピリング改質に特
異な触媒活性を持っていると言える。
【0036】特開平4−316687号公報には木綿と
絹の混紡繊維の染色性の差を無くして1浴での染色を可
能にするために、グリシジル化合物で絹繊維を改質する
ことが効果があり、この反応に硫酸ナトリウムが触媒活
性があるとされている。該公報の技術は、発明の詳細な
説明から分かるように、絹繊維のアミノ末端基をグリシ
ジル基と反応させることで染色性を変化させることにあ
り、セルロース基はグリシジル基と反応しないと潜在的
に認識されている。これからも、硫酸ナトリウム及び硫
酸カリウムがテンセル繊維のグリシジルエーテル化合物
による架橋反応による抗ピリング性改質に特異な触媒活
性を持っているのが分かる。
【0037】本発明のグリシジルエーテル化合物による
架橋改質の処理法としては、浸漬加熱法、パッド−スチ
ーム法、パッド−ドライ−スチーム法、コールドバッチ
法の何れも用いることができる。浸漬加熱法の場合、グ
リシジル化合物とテンセル繊維を速やかに、しかも収率
良く反応させるためには、処理温度を70℃以上とする
必要がある。浴比は浸漬処理の場合、10〜30程度が
好ましい。パッド−スチーム法は、例えばテンセル繊維
に対して50〜350重量%、好ましくは80〜500
重量%の処理液を付与後、120℃、好ましくは110
℃以下の飽和水蒸気で10分〜数10分間スチーミング
する。パッド−ドライ−スチーム法の場合も、パッド−
スチーム法に準ずるが、スチーミングの前に80〜12
0℃で乾燥する。
【0038】コールドバッチ法では、例えばシート状の
テンセル原綿に50〜200重量%、好ましくは80〜
120重量%の処理液を付与した後、ラップ状に巻取
り、乾燥することなくフィルム等で覆って水分の蒸散を
防止した上で室温〜加温下で20時間程度置く。この
間、反応が均一に進むように該ラップを回転させること
が望ましい。
【0039】グリシジル化合物による架橋改質処理した
テンセル繊維は、常法に従って湯洗、油剤処理等の通常
の工程を経て乾燥する。
【0040】
【実施例】以下実施例にて本発明を具体的に説明する。
【0041】実施例1 テンセル原綿(単繊維:1.5d/38mm長、英国コ
ートルズ社製)を処理容量1800lのオーバーマイヤ
ーを用いて、グリシジル化合物による架橋改質を行っ
た。該架橋改質の条件はグリシジル化合物としてエチレ
ングリコールジグリシジルエーテル(デナコール EX
−810 ナガセ化成工業)を20g/l、触媒として
無水硫酸ナトリウムを100g/l溶解した水溶液18
00lにテンセル原綿約120Kgを室温で浸漬し、良
く攪拌した後昇温し、90℃で60分間反応させた。反
応初期のpHは6.47、反応終点におけるpHは1
1.5であった。水洗後、遠心脱水機で脱水し、パンソ
フター−S(商品名 第一工業製薬製)の水溶液に浸漬
し該油剤を1.2%重量付着させた後乾燥した。得られ
たテンセル原綿の単繊維強度は4.5g/d、重量増加
率で測定した架橋度は8.5%であった。得られた改質
原綿を綿番手30/1の紡績糸に紡績した。該紡績糸の
IPI値/1000mのネップ数は23個であった。続
いて、これを仕上織設計で織幅114cm、径:100
本/インチ、緯:70本/インチの平織物に製織した。
該織物をビニールスルホン酸系の反応染料で染色後,前
記した家庭用洗濯機法でピリング試験を実施し、得られ
た試験布片をJIS L−1076法のピリング判定写
真を準用して判定した結果5級で、テンセルの抗ピリン
グ性規格を満足していた。次に該織物をJIS L−1
096法の吸水性試験のA法により吸水性を試験した。
吸水時間は1秒以下と改質前と変わらず極めて良好であ
った。風合も改質前と変わらずテンセル織物特有の柔ら
かくてしかも反発感に優れたものであった。
【0042】比較例1 実施例1に準じて、テンセル原綿の架橋改質を行った。
但し触媒としては水酸化ナトリウムを該架橋改質反応の
標準的濃度の10g/lの濃度で使用した。得られた改
質テンセル原綿の平均単繊維強度は4.7g/dであっ
た。該原綿を実施例1と全く同じ条件で紡績した。該紡
績糸のIPI値/1000mのネツプ数は26個であっ
た。引き続き製織、染色した後、ピリング試験を実施し
た結果、抗ピリング性は1級で著しく不良であった。こ
の結果、従来、セルロース繊維のグリシジル化合物によ
る改質において、確実な触媒効果が認められている水酸
化ナトリウム及びその公知反応条件で、テンセル繊維の
グリシジル化合物との架橋改質による抗ピリング改質に
全く触媒効果が無いことが分かる。
【0043】比較例2 実施例1に準じて、テンセル原綿の架橋改質を行った。
但し触媒としてはホウフッ化亜鉛を10g/lの濃度で
使用した。得られた改質テンセル原綿の平均単繊維強度
は4.6g/dであつた。該原綿を実施例1と全く同じ
条件で紡績した。得られた紡績糸のIPI値/1000
mのネツプ数は25個であった。引き続き、実施例1に
準じて、製織、染色した後、ピリング試験を実施した。
抗ピリング性は2級で著しく不良であった。この結果、
従来、セルロース繊維のグリシジル化合物による改質に
おいて、確実な触媒効果が認められるホウフッ化亜鉛
が、同じく確実な公知反応条件でテンセル繊維のグリシ
ジル化合物との架橋改質による抗ピリング改質に全く触
媒に効果が無いことが分かる。
【0044】比較例3 実施例1に準じて、テンセル原綿の架橋改質を行った。
但し触媒としては、従来、絹繊維のグリシジル化合物と
の架橋改質に触媒効果が認められている表1の化合物を
使用した。得られた改質原綿を実施例1と全く同じ条件
で綿番手30/1の紡績糸に紡績した。以降、実施例1
に準じて、製織、染色、ピリング試験を実施した。ピリ
ング試験は表1に示すように全て1〜2級であった。こ
の結果、従来、絹繊維のグリシジル化合物による抗ピリ
ング性改質において触媒効果が報告されている表1の化
合物が、テンセル繊維のグリシジル化合物との架橋改質
による抗ピリング改質に全く効果が無いことが分かる。
これは絹繊維の場合、グリシジル基との反応が主として
チロシンのフェノール性水酸基とで行われるのに対し
て、セルロース系繊維の場合はアルコール性水酸基とで
行われ、両者の反応性の差によるものと思われる。又、
繊維構造の気孔度、結晶構造や結晶化度の差も反応性の
差に影響しているものと思われる。
【0045】
【表1】
【0046】比較例4 テンセル原綿(単繊維:1.5d/38mm長 英国コ
ートルズ社製)を処理容量1800lのオーバマイヤー
を用いて、ジクロルトリアジン化合物による架橋改質を
行った。該架橋改質の条件は、反応染料のミカシオン
イエロー RS(日本化薬製)を6g/l、無水硫酸ナ
トリウムを30g/l、炭酸ナトリウムを5g/lを溶
解した水溶液1800lにテンセル原綿120Kgを室
温で浸漬し、良く攪拌した後昇温し、90℃で60分間
反応させた。続いて水洗し、遠心脱水機で脱水した後、
パンソフター−S(第一工業製薬製)の水溶液に浸漬し
該油剤を1.2%重量付着させた後乾燥した。得られた
テンセル原綿の単繊維強度は4.3g/d、架橋度は
5.2%であった。得られた改質原綿を綿番手30/1
の紡績糸に紡績した。該紡績糸のIPI値/1000m
のネツプ数は25個であった。続いて、これを実施例1
に準じて製織し、ピリング試験を実施した。抗ピリング
性は5級でテンセル織物の抗ピリング性規格を満足して
いた。しかしながら、該織物をJIS L−1096法
の吸水性試験のA法により吸水性試験を実施したとこ
ろ、吸水時間は平均12秒でテンセル織物の吸水性とし
ては不合格であった。
【0047】比較例5 テンセル原綿(未改質 単繊維:1.5d/38mm
長、英国コートルズ社製)を綿番手30/1の紡績糸に
紡績した。該紡績糸のIPI値/1000mのネップ数
は23個であった。続いて、これを実施例1に準じて製
織した。得られた織物をジメチロールジヒドロキシエチ
レン尿素(スミテックスレジンFSK 住友化学製)を
30g/l、触媒として塩化マグネシウムを10g/l
を溶解した水溶液に浸漬した後、マングルで70%ピッ
クアップに絞り、110℃で乾燥後160℃でベーキン
グした後、水洗し乾燥した。得られた改質テンセル織物
をビニールスルホン酸系の反応染料で染色し、以降、実
施例1に準じてピリング試験を実施した。抗ピリング性
は4級でテンセル織物の抗ピリング性規格を満足してい
た。しかしながらJIS L−1096法の吸水性試験
の吸水時間は平均10秒でテンセル織物の吸水性規格と
して不合格であった。又、風合も改質前のテンセル織物
に比べてやや固く不満足なものであった。
【0048】実施例2 実施例1に準じて、テンセル原綿の架橋改質を行った。
但し、グリシジル化合物としてプロピレングリコールジ
グリシジルエーテル(デナコール EX−911 ナガ
セ化成工業)を20g/l、触媒として無水硫酸カリウ
ムを80g/lの濃度の水溶液1800lでテンセル原
綿120Kgを処理した。反応初期のPHは7.0、反
応終点におけるpHは11.7であった。架橋改質後の
テンセル原綿の平均単繊維強度は4.3g/dであっ
た。得られた改質原綿を実施例1と全く同じ条件で綿番
手30/1の紡績糸に紡績した。該紡績糸のIPI値/
1000mのネップ数は20個であった。架橋度は8.
0%であった。以降、実施例1に準じて製織、染色した
後、ピリング性試験を実施した。抗ピリング性は5級で
ピリングは全く発現しておらず良好であった。JIS
L−1096法の吸水性試験による吸水時間は1秒以下
で改質前と変わらず極めて良好であった。風合も改質前
と変わらずテンセル織物特有の柔らかくてしかも反発感
に優れたものであった。
【0049】実施例3 テンセル原綿(未改質 単繊維:1.5d/38mm
長)を混打綿しラップ状に巻取った。該ラップをポリエ
チレングリコール(n=13)ジグリシジルエーテルを
80g/l、触媒として無水硫酸ナトリウムを100g
/l含む水溶液に浸漬し、マングルでピックアップ70
%に絞った後、加熱水蒸気を用いて120℃で10分間
蒸熱した。反応初期のpHは6.70、反応終点におけ
るpHは11.0であった。その後、水洗し実施例1に
準じて油剤処理をし乾燥した。得られた改質テンセル原
綿の平均単繊維強度は4.6g/d、架橋度は6%であ
った。続いて実施例1と全く同じ条件で綿番手30/1
の紡績糸に紡績した。該紡績糸のIPI値/1000m
のネップ数は28個であった。以降、実施例1に準じて
製織、染色した後、ピリング試験を実施した。抗ピリン
グ性は4級でテンセル織物の抗ピリング性規格を満足し
ていた。JIS L−1096法の吸水性試験による吸
水時間は1秒以下で改質前と変わらず極めて良好であっ
た。風合も改質前と変わらずテンセル織物特有の柔らか
くてしかも反発感に優れたものであった。
【0050】実施例4 実施例1に準じて、但し、硫酸ナトリウムの濃度を表2
に示す濃度で変化させ、これとテンセル原綿の抗ピリン
グ性との関係を検討した。その結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
【発明の効果】以上のように、本発明はテンセル繊維、
特にテンセル原綿のジグリシジルエーテル及びポリグリ
シジルエーテル化合物による架橋改質による抗ピリング
性改質に、硫酸ナトリウム及び硫酸カリウムが特異的に
触媒効果があることを見出だし、テンセル繊維の単繊維
強度を調整することなく高度の抗ピリング性の改質テン
セル繊維及びその製造法を開発した。その効果として次
ぎの項目等があげられる。
【0053】1.セルロース系繊維のエポキシ化合物に
よる改質反応には水酸化ナトリウム等の強アルカリ又は
ホウフッ化亜鉛等の強酸塩が反応触媒として公知である
が、テンセル繊維の抗ピリング性改質には、これらの公
知反応触媒及び公知反応条件では触媒効果が無い。これ
に対して硫酸ナトリウム及び硫酸カリウムの高濃度水溶
液が該改質反応に特異的な触媒効果があり、これにより
テンセル繊維の品質を損傷することなく、経済的有利に
高度の抗ピリング性改質テンセル織編物の製造が可能に
なった。 2.これにより、従来テンセル繊維の抗ピリング性改質
の手段であるテンセル織編物の揉み叩き加工及びセルラ
ーゼ加工が不要になり、大規模生産、短時間処理の観点
で要望されていたテンセル繊維原綿での抗ピリング加工
が可能になり、該繊維の抗ピリング性改質の経済性が顕
著に改善された。 3.抗ピリング性改質の通常の一般的な手段である繊維
強度の低強度への調整が不要になった。これにより、テ
ンセル原綿からの紡績生産性や紡績糸の品質規格の維持
及びテンセル細番手紡績糸による薄地織編物に高度の抗
ピリング性と十分な実用強度を付与することが極めて容
易になつた。 4.テンセル繊維の抗ピリング性改質のもう一つの手段
である樹脂加工及びジ、又はトリクロルトリアジン系化
合物による改質がテンセル織編物の吸水性及び風合等の
特性を低下させるのに対して、ジグリシジル又はポリグ
リシジルエーテル化合物による改質は該特性を損傷する
ことが無い。 5.テンセル原綿での抗ピリング性改質が可能になり、
揉み叩き加工が繊維品質維持の関係で採用できない他繊
維との複合化が可能になった。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年9月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正内容】
【0036】特開平4−316687号公報には木綿と
絹の混紡繊維の染色性の差を無くして1浴での染色を可
能にするために、グリシジル化合物で絹繊維を改質する
ことが効果があり、この反応に硫酸ナトリウムが触媒活
性があるとされている。該公報の技術は、発明の詳細な
説明から分かるように、絹繊維のアミノ末端基をグリシ
ジル基と反応させることで染色性を変化させることにあ
り、セルロース基はグリシジル基と反応しないと潜在的
に認識されている。これからも、硫酸ナトリウム及び硫
酸カリウムがテンセル繊維のグリシジルエーテル化合物
による架橋反応による抗ピリング性改質に特異な触媒活
性を持っているのが分かる。Textile Rese
arch Journal 27,135〜145頁
(1957)には、さらに直接的な表現で、エポキシ化
合物によるセルロース繊維(具体的には綿糸)の架橋改
質の反応触媒として、ホウフッ化亜鉛、ホウフッ化マグ
ネシウムは優れた触媒であり、ホウフッ化銅、ホウフッ
化ニッケル、ホウフッ化カドミウムはかなり触媒活性が
あり、ホウフッ化鉛、ホウフッ化スズ、ホウフッ化水銀
は若干の触媒活性があり、ホウフッ化カルシウム、ホウ
フッ化ベリリウムは弱い触媒活性があるが、ホウフッ化
カリウム、ホウフッ化ナトリウムには事実上触媒活性は
無いと記述されている。さらに硫酸塩の場合もホウフッ
化塩の場合と同様に、触媒の活性度は該塩を構成する金
属の塩基度に依存し、弱塩基度の金属の硫酸塩は活性度
が高く、強塩基度の金属の硫酸塩は弱い活性度しか持た
ないと記述されており(139頁)、硫酸ナトリウムは
触媒活性は無いと記述されている(140頁)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北村 優 長野県小県郡丸子町大字東内774番地1 (72)発明者 宮田 昌平 神戸市東灘区深江南町1丁目3番5号

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶剤紡糸セルロース系繊維において、該
    繊維が架橋改質されている結果、平均単繊維強度が4.
    3g/d以上で、該単繊維の表面が揉み叩き加工及びセ
    ルラーゼ加工によるフィブリル化又はミクロフィブリル
    化構造を呈していないにもかかわらず、該繊維からなる
    織編物の家庭用洗濯機法での抗ピリング性試験にJIS
    L−1076法のピリング判定写真を準用しての判定
    で4級以上の抗ピリング性に改質されており、さらに架
    橋改質による織編物の風合の変化が実質的に無く、さら
    にJIS L−1096法の吸水性試験のA法による試
    験で該繊維からなる織編物の吸水速度が1秒以下である
    ことを特徴とする溶剤紡糸セルロース系繊維及び該繊維
    からなる繊維構造物。
  2. 【請求項2】 溶剤紡糸セルロース系繊維において、該
    繊維がジグリシジルエーテル化合物又はポリグリシジル
    エーテル化合物により架橋改質されている結果、平均単
    繊維強度が4.3g/d以上で、該単繊維の表面が揉み
    叩き加工及びセルラーゼ加工によるフィブリル化又はミ
    クロフィブリル化構造を呈していないにもかかわらず、
    該繊維からなる織編物の家庭用洗濯機法での抗ピリング
    性試験にJIS L−1076法のピリング判定写真を
    準用しての判定で4級以上の抗ピリング性に改質されて
    おり、さらに架橋改質による織編物の風合の変化が実質
    的に無く、さらにJIS L−1096法の吸水性試験
    のA法による試験で該繊維からなる織編物の吸水速度が
    1秒以下であることを特徴とする溶剤紡糸セルロース系
    繊維及び該繊維からなる繊維構造物。
  3. 【請求項3】 溶剤紡糸セルロース系繊維の原綿、スラ
    イバー、紡績糸或いは織編物の改質において、硫酸ナト
    リウム又は硫酸カリウムを触媒として、該触媒濃度が5
    0g/l以上の濃度の系でジグリシジルエーテル化合物
    又はポリグリシジルエーテル化合物により架橋改質する
    ことを特徴とする、単繊維の表面が揉み叩き加工及びセ
    ルラーゼ加工によるフィブリル化又はミクロフィブリル
    化構造を呈していないにもかかわらず、該繊維からなる
    織編物の家庭用洗濯機法での抗ピリング性試験にJIS
    L−1076法のピリング判定写真を準用しての判定
    で4級以上の抗ピリング性に改質されており、さらに架
    橋改質による織編物の風合の変化が実質的に無く、さら
    にJIS L−1096法の吸水性試験のA法による試
    験で該繊維からなる織編物の吸水速度が1秒以下である
    溶剤紡糸セルロース系繊維及び該繊維からなる繊維構造
    物の製造法。
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JP2002115179A (ja) * 2000-10-05 2002-04-19 Unitika Textiles Ltd 吸湿発熱性を有する繊維およびその製造方法
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