JPH086760B2 - 電磁連結装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は車両の過給機などへの動力伝達を断続する
ための電磁連結装置に関し、なかでも電磁クラッチとし
て有効に機能する電磁連結装置に関するものである。

〔従来の技術〕

近年、高級車ではスーパーチャージャが装備されてお
り、自動車用エンジンが所定の回転数になると電磁クラ
ッチによりスーパーチャージャが断続的に駆動されるよ
うになっている。

この電磁クラッチは、励磁コイルを装着したステータ
ハウジング、ロータおよび環状のアーマチャを有してお
り、このアーマチャはロータに対して接離方向に移動で
きるようになっている。

そして、このアーマチャには非円形例えば十文字状の
筒状のフランジを有する外側保持板が取り付けられ、こ
の外側保持板にはクッションゴムを介して外側保持板と
同形状の筒状のフランジを有する内側保持板が同心的に
設けられている。この内側保持板は最終的には回転軸な
どを介してスーパーチャージャのプロペラに連結されて
いる。

そして、作動時には励磁コイルへの通電によりアーマ
チャがロータに吸着され、このロータの回転が外側保持
板、クッションゴム、内側保持板および回転軸を順に介
してプロペラに伝達されるようになっている。

〔発明が解決しようとする問題点〕

上述したような従来の電磁クラッチにおいはて、励磁
コイルの通電停止時にアーマチャがロータより所定の空
隙を隔てて対向配置されるため、励磁コイルが通電され
てロータに対してアーマチャが吸着する際に、アーマチ
ャがロータに衝突する。このため、ロータに対するアー
マチャの吸着衝撃が大きく、この際に比較的に大きな作
動音が発生するという問題点があった。

そこで、この発明は、上記の事情に鑑みてなされたも
ので、その目的は、ロータに対するアーマチャの吸着衝
撃を緩和して、ロータに対してアーマチャが吸着する際
の作動音の発生を低減することのできる電磁連結装置の
提供にある。

〔問題点を解決するための手段〕

この発明は、通電されることで磁力を発生する励磁コ
イルと、 回転駆動されるロータと、 このロータに対向して配置され、前記励磁コイルの磁
力により前記ロータに吸着するアーマチャと、 このアーマチャに一体的に取り付けられ、内周縁に筒
状のフランジを有する外側保持板と、 一端部が前記外側保持板のフランジに連結され、前記
アーマチャが前記ロータに吸着するのに抗する力を持つ
クッションゴムと、 このクッションゴムの他端部に連結され、外周縁に前
記外側保持板のフランジに対向して配置された筒状のフ
ランジを有する内側保持板と、 この内側保持板に設けられ、前記ロータに対する前記
アーマチャの吸引過程の途中で、ばね定数を吸引初期よ
り大きくするばね定数可変手段と を備えた構成を採用している。

〔作用〕

上記のように構成したこの発明によれば、励磁コイル
が通電されて、アーマチャがロータに吸引されて吸着す
る。このアーマチャがロータに吸引される際に、アーマ
チャの移動に伴って外側保持板のフランジがクッション
ゴムを変形させ、アーマチャがロータに近づくと、クッ
ションゴムの復元力がアーマチャの吸引初期より大とな
る。

つまり、吸引初期はアーマチャがロータに向けてす早
く移動し、アーマチャがロータに吸着する寸前で、アー
マチャがロータに吸着するのに抗する力が大きくなるの
で、その後はアーマチャがゆっくり移動することによ
り、ロータに対するアーマチャの吸着時の衝撃が緩和さ
れる。

〔発明の効果〕

この発明によれば、ばね定数がロータに対するアーマ
チャの吸引過程で吸引初期より大となるので、ロータに
対するアーマチャの吸着時の衝撃が緩和されることによ
り作動音を低減できるようになる。よって、低騒音化に
寄与するといった実用上、優れた効果を有する電磁連結
装置を提供できるようになるものである。

〔実施例〕

以下この発明の電磁連結装置を電磁クラッチに用いた
例を図に基づいて説明する。

第１図および第２図はこの発明の第１実施例を示した
もので、第１図（ａ）、（ｂ）は電磁クラッチを示す正
面図およびそのＡ−Ｏ−Ａ線に沿う断面図である。この
電磁クラッチは自動車の過給機すなわちスーパーチャー
ジャと自動車用エンジンとの駆動力の伝達を断続するた
めに用いられるものである。

まず、第１図（ｂ）において１はスーパーチャージャ
のハウジング、２は磁性体製のステータハウジングでそ
の内部はプラスチック製の巻枠3a内に円筒状に巻回され
た励磁コイル３が配設され巻枠3aはかしめによりステー
タハウジング２に固定されている。そして、この励磁コ
イル３は第１図（ｂ）に示すように、リード線（図示せ
ず）により外部電源に接続してあり、通電されると磁力
を発生して、第１図（ｂ）に破線ｉで示すように磁気回
路を形成する。

また、ステータハウジング２には取り付けフランジ2a
が接合してあり、この取り付けフランジ2aを介してサー
クリップ４によりスーパーチャージャのハウジング１に
固定されている。

５は磁性体製のロータで、プーリ６を溶接などで結合
してある。このロータ５は軸受７を介してハウジング１
に回転自在に装着されている。プーリ６は自動車用エン
ジンの出力軸にベルト（図示せず）を介して回転駆動さ
れる。前記軸受７はサークリップ7aによりハウジング１
の外周とロータ５の内周との間に取り付けられている。

ロータ５の円環板状の摺動部5aは、円環板状のアーマ
チャ８が所定の空隙を隔てて対向配置さている。そのア
ーマチャ８の対向側と逆側面には、外側保持板10がリベ
ット９により固定されている。そして、外側保持板10は
クッションゴム11を介して内側保持板12に連結してい
る。

外側保持板10の内周縁には十文字状に曲成された筒状
のフランジ10dを有し、内側保持板12も外側保持板10と
同様の形状に曲成され、フランジ10dの内周側に対向配
置される筒状のフランジ12dを有している。

内側保持板12のフランジ12dは、外側保持板10のフラ
ンジ10dに所定の間隔を介して同心的に配設されてい
る。

そして、これら外側保持板10と内側保持板12の各フラ
ンジ10d、12dとの間には先に述べたような態様にてクッ
ションゴム11が設けられている。

そして、外側保持板10と内側保持板12の各フランジ10
d、12dの間で外周縁部に存する部分のクッションゴム11
には、何も存しない空孔部50を略90度の角度間隔で都合
４箇所に設けている。なお、51はクッションゴム11に設
けられた空孔部50の中間に位置するようにして形成され
た穴部で、略90度の角度間隔で４個存しクッションゴム
11に加わる変形力の逃げとして作用する。しかしなが
ら、これら穴部51は常に要るものではなく、必要に応じ
て設けるようにしても良い。

そして、内側保持板12には、第１図および第２図に示
すように、略十文字状環板形状のスプリングプレート60
がリベット601により取り付けられている。

このスプリングプレート60は、本発明のばね定数可変
手段であって、ロータ５に対するアーマチャ８の吸引途
中にクッションゴム11に当接して、アーマチャ８の吸引
初期よりばね定数を大きくするようにクッションゴム11
を圧縮するもので、自身もある程度のばね定数を持つ。
スプリングプレート60の外周縁部には、第１図（ａ）お
よび第２図に示すように、クッションゴム11のハウジン
グ１側面に対向する対向部602が８箇所程形成されてい
る。なお、対向部602は、クッションゴム11と対向部602
との隙間が、ロータ５の摺動部5aとアーマチャ８との空
隙より狭くなるように設けられている。また、スプリン
グプレート60の内側には、後記するハブ13や回転軸13a
を挿通させるための円形状穴603が形成されている。

次に、外側保持板10、クッションゴム11および内側保
持板12の組み付け方法を第１図および第２図に基づいて
説明する。

先ず、外側保持板10のフランジ10dの内周面の接着面
および内側保持板12のフランジ12dの外周面の接着面に
接着剤を塗布する。このように、接着剤が塗布された外
側保持板10と内側保持板12の各フランジ10d、12dを所定
の間隔離して型内に挿入する。

そして、型内の各フランジ10d、12d間に未だ加硫され
ていないゴムを充填し、その後型締めを行って加熱し接
着剤により外側保持板10および内側保持板12とクッショ
ンゴム11とを接着すると共にクッションゴム11を所定の
形状に成形する。

なお、内側保持板12はこれと一体となっているハブ13
を介してスーパーチャージャのプロペラ（図示せず）に
連結された回転軸13aに六角ナット14で接合固定されて
いる。この場合、ハブ13と回転軸13aとはキー13bにより
連結されている。このとき、キー13bに代わってセレー
ションあるいはスプラインなどを用いても良い。

また、外側保持板10とアーマチャ８との結合は、第１
図（ａ）に示すように、外側保持板10のフランジ10dに
４個設けられたリベット９により結合されている。

次に、この実施例の作動を第１図および第２図に基づ
いて説明する。

スーパーチャージャの起動時には励磁コイル３に通電
されると磁束は第１図（ｂ）の破線ｉで示すように生
じ、アーマチャ８にはロータ５に吸い付けられる力が加
えられる。これにより、クッションゴム11が弾性的に撓
みアーマチャ８は外側保持板10と共に軸方向に移動して
ロータ５の摺動部5aに吸引密着する。

このとき、クッションゴム11が変形し、そして、アー
マチャ８の吸引途中でクッションゴム11がスプリングプ
レート60の対向部602に当接してクッションゴム11が圧
縮される。これにより、クッションゴム11とスプリング
プレート60が一体となりばね定数が大きくなってロータ
５の摺動部5aにアーマチャ８が吸着する。つまり、吸引
初期はアーマチャ８がロータ５に向けてす早く移動し、
アーマチャ８がロータ５の摺動部5aに吸着する寸前で、
アーマチャ８がロータ５の摺動部5aに吸着するのに抗す
る力が大きくなるので、その後はアーマチャ８がゆっく
り移動することにより、ロータ５に対するアーマチャ８
の吸着時の衝撃が緩和されて作動音が小さくなるため、
低騒音化に寄与することができる。

そして、ロータ５は図示しない自動車用エンジンによ
りプーリ６およびベルトを介して回転駆動されているた
め、ロータ５とアーマチャ８が吸着した時にはその駆動
力がアーマチャ８に伝達され、このアーマチャ８の回転
はリベット９を介して外側保持板10に伝達され、さらに
クッションゴム11、内側保持板12、ハブ13および回転軸
13aを順に介してスーパーチャージャのプロペラに伝達
される。

しかしながら、このとき未だスーパーチャージャは停
止しているため内側保持板12はプロペラなどの負荷と慣
性モーメントによる力を受けて静止している。したがっ
て、外側保持板10を介して受ける駆動側の駆動力と内側
保持板12の静止状態の慣性モーメントによる力とがクッ
ションゴム11に衝撃的に加わり、回転方向に捩じり変形
力を受けるようになる。

このように、クッションゴム11に捩じれ変形力が加わ
るものの、この実施例ではクッションゴム11の外周縁部
に空孔部50を設けているので、従来と異なりクッション
ゴム11は剪断力を受けることがなくなる。このため、ク
ッションゴム11が繰り返し剪断力を受けていた従来と相
違し、クッションゴム11には疲労による早期劣化が起こ
らず、長い期間にわたって使用することができ、実施例
上、耐久性が増し寿命が長寿命化するものである。

しかして、励磁コイル３への通電が停止されると、電
磁クラッチによる電力の伝達が断たれる。このときに
は、アーマチャ８はクッションゴム11の復元力によりロ
ータ５の摺動部5aと所定の空隙を隔てた元の位置に復帰
する。

次に、第３図はこの発明の第２実施例を示したもの
で、電磁クラッチの主要部を示す断面図である。なお、
第１実施例と同一部分には同一符号を付して異なる部分
のみ説明した。

この第２実施例によれば、外側保持板10の内周縁部を
円周方向に部分的に略コの字状に切欠き、その部分を内
側に折り曲げることにより切曲部61が形成されている。

したがって、ロータ５に対するアーマチャ８の吸着時
には、アーマチャ８の吸引過程の途中で弾性変形可能な
環板状のスプリングプレート60に切曲部61が当接して、
クッションゴム11とスプリングプレート60が一体となり
ばね定数が大きくなってロータ５の摺動部5aにアーマチ
ャ８が吸着する。

つまり、吸引初期はアーマチャ８がロータ５に向けて
す早く移動し、アーマチャ８がロータ５の摺動部5aに吸
着する寸前で、スプリングプレート60と切曲部61との当
接により、アーマチャ８がロータ５の摺動部5aに吸着す
るのに抗する力が大きくなる。このため、その後はアー
マチャ８がゆっくり移動することにより、ロータ５に対
するアーマチャ８の吸着時の衝撃が緩和されて作動音が
小さくなるため、低騒音化に寄与することができる。

次に、第４図はこの発明の第３実施例を示したもの
で、電磁クラッチの主要部を示す断面図である。なお、
第１実施例と同一部分には同一符号を付して異なる部分
のみ説明した。

この第３実施例によれば、弾性変形可能な板状のスプ
リングプレート60の一端部にフック部60aを設け、フッ
ク部60aをアーマチャ８に形成した突部8aに対向させて
いる。

したがって、ロータ５に対するアーマチャ８の吸着時
には、アーマチャ８の吸引過程の途中でスプリングプレ
ート60のフック部60aにアーマチャ８の突部8aが当接し
て、クッションゴム11とスプリングプレート60が一体と
なりばね定数が大きくなってロータ５の摺動部5aにアー
マチャ８が吸着する。

つまり、吸引初期はアーマチャ８がロータ５に向けて
す早く移動し、アーマチャ８がロータ５の摺動部5aに吸
着する寸前で、スプリングプレート60のフック部60aに
アーマチャ８の突部8aが当接することにより、アーマチ
ャ８がロータ５の摺動部5aに吸着するのに抗する力が大
きくなる。このため、その後はアーマチャ８がゆっくり
移動することにより、ロータ５に対するアーマチャ８の
吸着時の衝撃が緩和されて作動音が小さくなるため、低
騒音化に寄与することができる。

その他、具体的な実施にあたっては適用対象は自動車
のスーパーチャージャに限られず空調装置の圧縮機と自
動車用エンジンとを断続する電磁連結装置に適用しても
良い。

【図面の簡単な説明】

第１図（ａ）、（ｂ）はこの発明の第１実施例にかかる
電磁クラッチを左半分を取り除いて部分的に示す正面図
およびその正面図のＡ−Ｏ−Ａに沿う断面図、第２図は
電磁クラッチの主要部を示す断面図である。 第３図はこの発明の第２実施例にかかる電磁クラッチの
主要部を示す断面図、第４図はこの発明の第３実施例に
かかる電磁クラッチの主要部を示す断面図である。 図中３……励磁コイル、５……ロータ、８……アーマチ
ャ、10……外側保持板、10d……フランジ、11……クッ
ションゴム、12……内側保持板、12d……フランジ、13
……ハブ、13a……回転軸、50……空孔部、51……穴
部、60……スプリングプレート（ばね定数可変手段）

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】通電されることで磁力を発生する励磁コイ
   ルと、 回転駆動されるロータと、 このロータに対向して配置され、前記励磁コイルの磁力
   により前記ロータに吸着するアーマチャと、 このアーマチャに一体的に取り付けられ、内周縁に筒状
   のフランジを有する外側保持板と、 一端部が前記外側保持板のフランジに連結され、前記ア
   ーマチャが前記ロータに吸着するのに抗する力を持つク
   ッションゴムと、 このクッションゴムの他端部に連結され、外周縁に前記
   外側保持板のフランジに対向して配置された筒状のフラ
   ンジを有する内側保持板と、 この内側保持板に設けられ、前記ロータに対する前記ア
   ーマチャの吸引過程の途中で、ばね定数を吸引初期より
   大きくするばね定数可変手段と を備えた電磁連結装置。