JPH0860243A - 耐食性に優れた自動車排気系機器用フェライトステンレス鋼板の製造方法 - Google Patents

耐食性に優れた自動車排気系機器用フェライトステンレス鋼板の製造方法

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JPH0860243A
JPH0860243A JP19815894A JP19815894A JPH0860243A JP H0860243 A JPH0860243 A JP H0860243A JP 19815894 A JP19815894 A JP 19815894A JP 19815894 A JP19815894 A JP 19815894A JP H0860243 A JPH0860243 A JP H0860243A
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】自動車排ガスの凝縮液が存在する環境での優れ
た耐食性を有し、安価に表面光沢にも優れた自動車排気
系機器用フェライト系ステンレス鋼板。 【構成】重量%で、C:0.015、Si:0.5、M
n:0.5、S:0.002、N:0.020、Cu:
0.80、Ni:0.80いずれも以下で、Cr:1
6.0〜20.0、Mo:0.3〜2.0、Nb:0.
20〜0.60、残部Fe及び不可避的不純物からなる
フェライトステンレス熱延鋼板または冷延鋼板を、軟化
焼鈍、酸洗を行い、次いで圧下率0.5%以下のスキン
パス圧延を行うことにより、圧延方向に対して直角方向
での表面平均粗さRa値を0.2μm以下とした後に、
40℃〜80℃の温度範囲の硝酸10〜40%を含有す
る酸化性酸水溶液中に浸漬するか、または電解処理して
鋼板表面の孔食電位を30℃、3.5%食塩水溶液中で
350mV vs.SCE以上とすることにより、鋼板
表面の不働態膜を強化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低温側自動車排気系機
器の中で、高温の排ガスが排気系機器と接触して生成す
る排ガス凝縮液に対する耐穴あき腐食性が要求されるマ
フラー、センターパイプ等に好適な高耐食性自動車排気
系機器用フェライトステンレス鋼板の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】精錬技術の革新的な進歩により最高水準
の高純度フェライト系ステンレス鋼が工業的規模で安定
して量産される状況となっている。代表的な高純度フェ
ライト系ステンレス鋼としては、高純度化が進行しつつ
あるSUH-409L鋼を含めSUS-430LX 系、SUS-436L系、SUS-
444 系、SUS-XM27系、SUS-447J1L系等がある。
【0003】自動車排ガス系への高純度系フェライトス
テンレス鋼の適用は、自動車の高出力と排ガス規制に対
応してここ十年で急速に拡大している。
【0004】自動車の高出力化により排ガス温度が上昇
しており、従来以上に高温での耐酸化性と耐食性、高温
強度が必要になり、従来はAlめっき鋼板が使用されてい
た部位に高純度フェライトステンレス鋼が適用されるよ
うになった。
【0005】また、排ガス規制に対応するために触媒が
搭載されることで排ガス凝結液の組成が変わり、従来以
上に耐食性が要求され、長期の耐久寿命保証のために高
純度フェライトステンレス鋼が適用されるようになり、
需要が増大してきている。
【0006】自動車排ガス系に適用されるフェライト系
ステンレス鋼としては、SUH-409L鋼が主体であり、高性
能が要求される部品にはSUS-430LX 系、SUS-436L系材が
用いられている。
【0007】これ等の高純度フェライト系ステンレス鋼
の汎用化が進むにつれて、低コスト化が進行しており、
製品価格においても高級めっき鋼板並みの水準に低下し
つつある。特に、自動車排ガス系での低コスト化要求に
は極めて厳しいものがある。
【0008】製造コストを削減する方法としては、例え
ば、熱延鋼帯の焼鈍省略、熱間圧延仕上げ材の直接使
用、普通鋼圧延プロセスを活用した冷間圧延、連続焼鈍
炉、酸洗ラインの活用等がある。
【0009】普通鋼圧延プロセスで製造したステンレス
鋼板は、ランクフォード値(r値) が高く成形性確保の観
点からは望ましい。 例えば、特開平3-219055号公報に
は耐食性に優れたエンジン排ガス系材料用ステンレス鋼
が開示されており、普通鋼プロセスの大径ロ−ルにより
冷間圧延することが記載されている。
【0010】自動車排ガス系以外の用途向けの高純度フ
ェライト系ステンレス鋼においても、今後は普通鋼ライ
ンによる製造が増加することが予想される。それは、国
内での普通鋼消費が頭打ちになる中で、高性能生産設備
の増強により普通鋼の供給能力過剰が現実の問題となっ
ているためである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記普通鋼圧延プロセ
スの冷間圧延機、連続焼鈍炉、酸洗ラインを活用する方
法には、通板速度の高速化、連続処理化の利点等がある
が、この普通鋼圧延プロセスを活用して生産したステン
レス冷延鋼帯は、従来のステンレス専用ラインを用いて
生産した冷延鋼帯に比べ、大径ロールでの冷間圧延にな
るため、潤滑油の溜まり等に起因する鋼板表面状態が悪
化し、表面光沢が劣るという問題がある。
【0012】また、表面状態が劣ることから、鋼帯表面
の不働態皮膜が不安定となり、表面耐食性が安定しない
という問題もある。
【0013】本発明の目的は、自動車排ガスの凝縮液が
存在する環境での優れた耐食性を有し、安価に表面光沢
にも優れた自動車排気系機器用フェライト系ステンレス
鋼板を製造する方法を提供することにある。
【0014】特に、普通鋼圧延ライン利用により製造さ
れる鋼帯、あるいは、熱延仕上げままで(冷間圧延工程
を通さずに)酸洗によりスケール除去して製品化される
ような鋼帯の耐食性能を改善するのに好適な成分と製造
方法を提供するものである。
【0015】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、従来の
排気系機器材料よりも排ガス凝縮液環境での耐食性の優
れた製造方法を開発すべく鋭意研究を行った結果、下記
のような知見を得た。
【0016】A )前記高性能材である SUS-430LX系、SU
S-436L系材であっても耐食性が劣化する場合があるが、
それは鋼板表面の粗さと最表層の耐食性に依存している
こと。
【0017】B )表面粗さは、従来問題視されなっかた
ような表面光沢を低下させる程度の粗度であっても、排
気系機器用材料の耐食性確保においては重要な管理項目
であること。
【0018】C )最終製品の表面粗さを改善する実用的
で簡便な方法は、熱延鋼板または冷延鋼板を焼鈍、酸洗
した後に、スキンパス圧延を施す方法であること。ま
た、スキンパス圧延は、普通鋼圧延ライン利用により製
造されたステンレス鋼板や熱延仕上げのままの鋼板にも
効果があること。
【0019】D )スキンパス圧延の圧下率を 0.5%以下
とすることにより、圧延方向に対して直角方向での表面
平均粗さRa値を 0.2μm 以下にすることができること。
しかし、圧下率が 0.5%超えると耐食性が劣化し始める
こと。
【0020】F )自動車排ガス環境での耐食性を安定し
て確保するためには、表面粗さ制御と併せて、表面の不
働態化を十二分に強化しておく必要があり、不働態強化
の方法としては、10〜40%の硝酸を含有する40〜80℃の
酸化性酸水溶液中に浸漬するか、あるいは電解処理する
のが好適であること。
【0021】H )冷延鋼板の焼鈍後にスキンパス圧延を
行い、圧延方向に対し直角方向の表面粗さを低減し、且
つ、硝酸を含有する酸化性酸水溶液で処理すると耐食性
向上効果のあるステンレス鋼は、特定範囲のCr、Moを複
合添加した鋼であること。
【0022】本発明は、これらの知見に基づき完成させ
たものであり、その要旨とするところは、 「重量%で、C:0.015 %以下、Si:0.5 %以下、M
n:0.5 %以下、S:0.002 %以下、N:0.020 %以
下、Cr:16.0〜20.0%、Mo:0.3 〜2.0 %、Cu:0.80%
以下、Ni:0 〜0.80%、Nb:0.20〜0.60%、残部Fe及び
不可避的不純物からなるフェライトステンレス冷延鋼
板、または 重量%で、C:0.015 %以下、Si:0.5 %以下、Mn:
0.5 %以下、S:0.002 %以下、N:0.020 %以下、C
r:16.0〜20.0%、Mo:0.3 %〜 2.0%、Cu:0.80%以
下、N i 0 〜080 %、Nb:0.20〜0.60%、Ti:0.03〜0.
15%、残部不可避的不純物からなるフェライトステンレ
ス冷延鋼板、または 重量%で、C:0.015 %以下、Si:0.5 %以下、Mn:
0.5 %以下、S:0.010 %以下、N:0.020 %以下、C
r:16.0〜20.0%、Mo:0.3 〜2.0 %、Cu:0.80%以
下、Ni:0 〜0.80%、Ti:0.15〜0.40%、残部不可避的
不純物からなるフェライトステンレス冷延鋼板、または 重量%で、Si量が0.20%以下とする場合に、Alを0.01
〜0.10%含有させる上記〜のフェライトステンレス
冷延鋼板 を軟化焼鈍、酸洗を行い、次いで圧下率で 0.5%以下の
スキンパス圧延を行うことにより、圧延方向に対して直
角方向での表面平均粗さRa値を 0.2μm 以下とした後
に、40℃〜80℃の温度範囲の硝酸を10〜40%含有する酸
化性酸水溶液中に浸漬するか、または電解処理して処理
後の鋼板表面の孔食電位を30℃、 3.5%食塩水溶中で35
0mV vs.SCE以上とすることにより、鋼表面の不働態皮膜
を強化することを特徴とする耐食性食性に優れた自動車
排気系機器用フェライトステンレス鋼板の製造方法」で
ある。
【0023】
【作用】本発明の製造方法において、対象鋼成分及び製
造条件を上記のように限定した理由を以下に説明する。
【0024】C 鋼中のCは、溶接部の耐食性能、溶接部および母材の靱
性に影響をおよぼし、0.015 %を超えると耐食性、靭性
が劣化する。
【0025】N 鋼中のNはCと同様に、溶接部の耐食性能、溶接部およ
び母材の靱性に影響をおよぼし、0.020 %を超えると耐
食性、靭性が劣化する。
【0026】Si,Al Siは有効な脱酸元素であるが、その含有量が 0.5%を超
えると常温での引張強度を高め、伸びを減じ成形性が悪
化する。従って、Siの含有量の上限を0.50%とするが、
Siは成形性の面からは低い方がよいので、望ましい量と
しては0.20%以下である。
【0027】Alは、Siと同様有効な脱酸元素である。特
に、Si濃度が低い場合には、適正量のAl添加によって脱
酸を図る必要があり、Siが0.20%以下である場合には、
Alは0.01〜0.10%の量で添加するのが望ましい。
【0028】Mn Mnは、Siと共存することで脱酸上有益な元素であるが、
その含有量が多いと鋼中SとMnSを形成し、耐食性劣化
を招くので低い方が望ましい。従って、Mn含有量の上限
を0.5 %とした。
【0029】S SはMnと非金属介在物を形成し、耐食性を劣化させる傾
向がある。また、Mn量が低い場合には、Fe系硫化物とし
て固定され、MnSと同様耐食性を低下させる影響があ
る。これらの影響は、0.002 %を超えると大きくなるの
で上限を0.002 %とする。
【0030】Tiを添加した場合には、鋼中Sは、MnSよ
り安定なTi系硫化物として固定されるが、特に、C、N
が低い条件でTi量が0.15%以上である場合には、鋼中S
はMnSより熱的に安定なTi−C−S系のTi系介在物とし
て固定される。TiCSで安定化された場合には、耐食性
上好ましいばかりでなく、成形性を向上させる効果があ
る。従って、本発明では、Ti量が0.15%以下の場合に
は、S量を0.002 %以下に限定にするが、Ti量が0.15%
以上では鋼中S量は0.010 %以下とする。
【0031】Cu Cuは耐食性を改善する効果があり、必要に応じて添加す
る。しかし、0.80%を越えて含有させると金属間化合物
を生成し性能が劣化するため上限を0.80%とする。
【0032】Ni Niには、鋼中S量が低い条件下で添加すると鋼の耐食性
を改善する作用があるので必要に応じて添加する。。し
かし、0.80%を越えて含有させても耐食性改善効果が飽
和するばかりでなく、コストアップを招く。従って、Ni
の含有量の上限を0.80%とする。
【0033】Cr Crは本発明鋼の基本的な耐食性を決定する重要な元素で
あり、その含有量を増すに従い耐食性は向上する。スキ
ンパス圧延後の不働態皮膜強化処理によりマフラー内面
凝縮液が存在する腐食環境で耐食性を改善するためには
Moとの複合添加の形で16%以上が必要である。しかし、
20.0%を越えて含有させてもその耐食性を飽和し、コス
トアップを招くため、20.0%以下に限定する。
【0034】Mo Moは本発明鋼のマフラー内面凝縮液が存在する環境での
発銹および腐食の進展を著しく抑制する作用を有する添
加元素であり、Crと複合で添加する。0.3 %未満の含有
ではスキンパス圧延後の不働態皮膜強化処理によりマフ
ラー内面凝縮液が存在する腐食環境で耐食性の改善効果
はほとんどなく、2.0 %を越えて含有させてもコストア
ップを招く。従って、Moの含有は0.3 %以上2.0 %以下
とする。
【0035】Nb Nbは溶接の際の外部要因によるC,N汚染に起因する溶
接部の耐食性劣化および靱性劣化を防止する効果があ
り、更にNbには母材の結晶粒ならびに溶接熱影響部の結
晶粒粗大化を抑制する効果があり、このような効果を発
揮させるためには0.20%以上必要である。しかし、Nbが
多量に存在する場合はLaves 相析出が顕著となるほか、
鋼が必要以上に硬化するためその含有範囲を0.20〜0.60
%に制限する。
【0036】Ti TiはNbと同じく溶接部の耐食性劣化を防止する効果を有
するほかに、Nbと複合存在下で鋼の延性を改善し、成形
性を向上させる効果があり、必要に応じ、0.15%未満の
量をNbと複合添加する。0.15%以上添加すると成形性改
善効果が低下するので上限を0.15%とした。また、Tiを
単独で添加する場合、上記Sの項で述べたが、鋼中C,
Nが極低化された条件において、Tiが0.15%以上存在す
ると鋼中SとTi−C−S系介在物を形成し、熱的に安定
な炭化物として析出する。耐食性、加工性の観点より好
ましい安定化元素となり得る。ただし、0.40%を越えて
存在すると鋼板表面の疵が顕著となる。従って、0.40%
以下と限定する。
【0037】次に、上記成分範囲の鋼において、焼鈍後
の処理条件を前記の如く限定した理由を以下に示す。な
お、冷延鋼板の軟化焼鈍温度は通常の 900〜1050℃程度
で行うとよい。
【0038】(1) 表面粗さとスキンパス圧延 現在、自動車マフラー用フェライトステンレス鋼として
は、JIS G4305nにて規定されているNo. 2Dの仕様材が用
いられている。No. 2D仕様材においては、製造工程での
高温スケールによる肌あれ、酸化スケール生成むら、脱
スケール用ショット痕残り、コイルグラインダー目残
り、スケール押し込み疵、外来性異物押し込み等によ
り、圧延方向に対して直角方向での表面平均粗さRa値(J
IS B0601) は0.35μm 以上となることがある。この程度
の表面粗さは表面の光沢が低下する程度であり、従来は
問題視されていなかった。しかし、この程度の板表面粗
さであっても自動車マフラー環境での耐食性に影響があ
り、圧延方向に対して直角方向での表面平均粗さRa値で
0.2μm を超えると耐食性劣化が顕著となるので製品の
表面粗さの上限を 0.2μm とする。
【0039】最終製品の表面粗さを 0.2μm 以下に調整
する手段について種々の観点から検討した結果、スキン
パス圧延が好適であることが明かとなった。ステンレス
鋼に表面光沢や強度が要求される用途では数%の圧下率
でスキンパス仕上げが行われているが、自動車マフラー
用ステンレス鋼には表面光沢や強度を付与する必要がな
いためスキンパス圧延は採用されていない。
【0040】スキンパス圧延での圧下率を高めることで
表面粗度がより改善されるが、圧下率を高めすぎると耐
食性が返って劣化する範囲があることが判明した。理由
は定かでないが、スキンパス圧延による表面の凸部が倒
れ込むためと推定している。
【0041】圧下率が0.5 %を超えると耐食性が悪化す
るので圧下率の上限を0.5 %とする。
【0042】好ましくは0.1 〜0.3 %である。
【0043】なお、粗度を圧延方向に対して直角方向に
おける表面平均粗さとしたのは、前記したコイルグライ
ンダー目残りのような表面粗さに影響する疵は圧延によ
り圧延方向に延ばされるので、圧延後の鋼板表面状態は
板幅方向に微細に波打つような状態となっているため、
表面粗さは圧延方向に対し直角方向に測定する必要があ
るからである。
【0044】(2) 硝酸含有酸化性酸水溶液よる不働態強
化 ステンレス鋼の耐銹性は鋼板表面に生成している不働態
皮膜の特性によって左右されることはよく知られてお
り、より安定な不働態皮膜を鋼板表面に形成させること
が耐食性向上に好ましいことは周知の事実である。しか
しながら、不働態皮膜強化処理材を高温になるマフラー
として使用した場合に効果があるかは不明であり、従来
マフラー材に不働態皮膜強化処理が適用された例はな
い。不働態皮膜強化処理の適正条件については、ステン
レス鋼の種類、適用環境によって異なると考えられる。
そこで、本発明成分範囲の鋼板について種々の条件下で
不働態化処理を行い、耐食性を調査した。鋼板の不働態
皮膜の強さの指標には、NaCl水溶液中の孔食電位を用い
た。
【0045】図1、図2は18.2Cr−1.0Mo −0.4 %Nb及
び17.2Cr−0.5Mo −0.4 %Nbなる成分組成の鋼板につい
て、不働態化処理条件の検討を行った結果である。試験
片は、試験直前にエメリー紙で湿式#600まで研磨して研
磨方向に対して直角方向の表面平均粗さRa値を 0.12μ
m とした後、硝酸濃度と温度を変化させた水溶液中に30
分間浸漬させ、孔食電位測定に供した。孔食電位測定は
JIS G0577 に規定されている方法を用い、V'c100(電流
密度が 100μA/cm2 に対応する電位)を測定した。孔食
電位測定条件は以下に示すJIS G-0577によるものであ
る。
【0046】試験溶液:3.5 %NaCl水溶液 試験温度:30℃, 掃引速度:20mV/min 照合電極:SEC (飽和カロメル電極) アルゴン脱気下にて測定 図1、図2ともほぼ同様の挙動を示し、硝酸濃度範囲が
20〜30%で孔食電位に極大値がみられた。10%未満では
不働態皮膜強化が不十分で好ましくなく、一方40%を超
えると耐食性改善効果が低下するので硝酸濃度を10〜40
%と限定する。
【0047】図1では、硝酸水溶液の濃度が10〜15%、
35〜40%の範囲で孔食電位が350mVvs.SCE未満となって
いるが、このような濃度範囲で不働態化処理を行う場合
はステンレス鋼の成分を調整して350mV vs.SCE以上の電
位が得られるようにしなければならない。具体的にはC
r、Moを増量することにより電位を上げることができ
る。しかし、これらの成分を増量するとコストアップに
つながるので、15〜35%の濃度範囲で行うのが好まし
い。更に好ましい範囲は20〜30%である。
【0048】温度に関しては、60℃で孔食電位の最大値
が他の温度域より顕著に大きくなった。温度が40℃未満
では不働態化処理時間が長くなり充分な皮膜が得られな
く、一方80℃を超えるとCr主体の皮膜が生成されなくな
るので液の温度は40〜80℃とした。
【0049】なお、この不働態皮膜強化処理は処理液に
浸漬するだけで充分効果はあるが、電解処理をするとよ
り短時間で強化処理を行うことができる。従って、量産
規模で生産する場合、電解処理を行う方が効率がよい。
【0050】
【実施例1】まず、真空溶解炉にて表1に示す成分組成
を有するフェライトステンレス鋼を鋳込み、鋳込み後各
インゴットを鍛造し、次いで1200℃で熱間圧延を行っ
た。さらに、このようにして得られた熱延板を焼鈍後酸
洗した後、1.0 mmまで冷間圧延をし、980 ℃で軟化焼鈍
及び酸洗を実施後、表2〜表4に示すように圧下率を種
々変えてスキンパス圧延を行った。得られた冷延鋼板か
ら幅25111mm 、長さ 100mmの試験片を作成した。
【0051】
【表1】
【0052】また、供試鋼 No.2 については、冷間圧延
前の鋼板を採取し熱間圧延まま材とした。更に、同じく
供試鋼 No.2 の鍛造品を用いて、普通鋼圧延プロセスに
より板厚1mm の冷延鋼板も製造した。そして、各々の鋼
板について圧下率 0.4%のスキンパス圧延を施し、上記
と同様の試験片を作成した。
【0053】試験片を表2〜表4に示すように濃度、温
度、を変化させた硝酸水溶液による不働態化処理を実施
した。不働態化処理した各試験片について孔食電位測定
とマフラー模擬環境での腐食試験を行った。マフラー模
擬試験は内面側の模擬凝縮液浸漬試験と外面側の塩害試
験を行った。凝縮液腐食試験は表5に示した自動車技術
会規定のJASONo. 4 液を使用し、80℃で500 時間全浸漬
した。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
【表5】
【0058】試験片には、実自動車におけるマフラーの
環境を再現するため人工すすを試験片表面に付着させ、
試験液に空気を吹き込んだ。外面側試験は図3に示した
複合環境で行った。
【0059】孔食電位測定の結果及びマフラー模擬試験
結果を表2〜表4に示した。不働態処理後の孔食電位が
350mV を超える本発明鋼はほとんど発銹まで至らず、優
れた耐食挙動を示す。
【0060】表4に示した熱間圧延まま材及び普通鋼圧
延プロセスで製造した材料も本発明法を用いるとステン
レス鋼専用製造プロセスで製造した材料と同等以上の耐
食性を示した。
【0061】また、表1に示した鋼板については、常温
での引張試験を実施した。表1に伸び値を併せて示し
た。本発明成分範囲の鋼板は、マフラー加工で必要とさ
れる30%以上の伸び値を示し、さらにNb、Ti複合添加鋼
板や低Si鋼板はより優れた伸び値を示す。
【0062】
【実施例2】80トンのVOD 精錬炉を用いて、量産規模の
試作を行った。成分を表6に示す。
【0063】試作法は実施例1と同じ条件で、VOD 精
錬、連続鋳造を実施後、厚さ4.5 mm熱延鋼板を製造し、
さらに1.0 mmまで冷間圧延した。980 ℃仕上げ焼鈍、硝
弗酸による脱スケールを実施し、種々の条件でスキンパ
ス圧延を行い、60℃、20%硝酸電解槽を通板した。
【0064】
【表6】
【0065】このようにして製造した鋼板の表面粗さ、
孔食電位を測定し、実際の自動車マフラーを試作した。
成形性は良好で問題なく加工できた。マフラーは2年間
一般市内走行後回収し、内面の腐食状況を調査した。結
果は表7に示した。
【0066】
【表7】
【0067】孔食電位値はすべて350mV を超えており、
不働態強化は十分に行われている。
【0068】スキンパス圧延をしていない鋼板および
0.5%のスキンパス圧延を行った鋼板では、内面側に赤
銹がみられ、腐食孔深さは0.05mm以上であった。図4に
圧延方向に対し直角方向での平均表面粗さRaとマフラー
内面側の腐食孔深さの関係を示した。平均表面粗さRaが
小さくなるにつれ、耐食性は改善されているが、Ra=0.
05の鋼板では発銹を起こしている。この鋼板は 0.6%ス
キンパス圧延材であり、鋼板表面凸部の倒れ込みによる
隙間部が腐食の起点となっていると判断される。
【0069】なお、図4で圧下率0.05%のスキンパス圧
延を施してもRaが 0.2μm 以下にならないものがある
が、これは冷間圧延仕上げ後の表面粗さが粗いためであ
った。
【0070】冷間圧延仕上げ後の表面粗さが粗い場合
は、スキンパスの圧下率を上げる必要がある。
【0071】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法によ
り製造したステンレス鋼板は、自動車排気系環境におい
て優れた耐食性を示す。また、普通圧延プロセスにより
製造したステンレス冷延鋼板や圧延まま材にも適用がで
きるので安価に製造ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】18.2%Cr-1.0%Mo-0.4%Nbの鋼板における硝酸
濃度と孔食電位の関係を示す図である。
【図2】17.2%Cr-0.5%Mo-0.4%Nbの鋼板における硝酸
濃度と孔食電位の関係を示す図である。
【図3】マフラー外面側での模擬複合環境腐食試験条件
を説明する図である。
【図4】実機製造の鋼板の平均表面粗さRaと実車2年間
走行後マフラーの腐食孔深さを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C25F 1/06 B F01N 7/16 // C21D 9/46 R

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.015 %以下、Si:0.5 %
    以下、Mn:0.5 %以下、S:0.002%以下、N:0.020
    %以下、Cr:16.0〜20.0%、Mo:0.3 〜2.0 %、Cu:0
    〜0.80%、Ni:0 〜0.80%、Nb:0.20〜0.60%、残部Fe
    及び不可避的不純物からなるフェライトステンレス熱延
    鋼板または冷延鋼板を、軟化焼鈍、酸洗を行い、次いで
    圧下率 0.5%以下のスキンパス圧延を行うことにより、
    圧延方向に対して直角方向での表面平均粗さRa値を 0.2
    μm 以下とした後に、40℃〜80℃の温度範囲の硝酸10〜
    40%を含有する酸化性酸水溶液中に浸漬するか、または
    電解処理して鋼板表面の孔食電位を、30℃、 3.5%食塩
    水溶液中で350mV vs.SCE以上とすることにより、鋼板表
    面の不働態皮膜を強化することを特徴とする耐食性に優
    れた自動車排気系機器用フェライトステンレス鋼板の製
    造方法。
  2. 【請求項2】フェライトステンレス熱延鋼板または冷延
    鋼板が、重量%で、C:0.015 %以下、Si:0.5 %以
    下、Mn:0.5 %以下、S:0.002 %以下、N:0.020 %
    以下、Cr:16.0〜20.0%、Mo:0.3 %〜 2.0%、Cu:0
    〜0.80%、Ni:0 〜0.80%、Nb:0.20〜0.60%、Ti:0.
    03〜0.15%、残部不可避的不純物からなることを特徴と
    する第1項記載の自動車排気系機器用フェライトステン
    レス鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】フェライトステンレス熱延鋼板または冷延
    鋼板が、重量%で、C:0.015 %以下、Si:0.5 %以
    下、Mn:0.5 %以下、S:0.010 %以下、N:0.020 %
    以下、Cr:16.0〜20.0%、Mo:0.3 %〜2.0 %以下、C
    u:0 〜0.80%、Ni:0 〜0.80%、Ti:0.15%〜0.40
    %、残部不可避的不純物からなることを特徴とする第1
    項記載の自動車排気系機器用フェライトステンレス鋼板
    の製造方法。
  4. 【請求項4】フェライトステンレス熱延鋼板または冷延
    鋼板のSi含有量を、重量%で、0.20%以下とした場
    合に、Alを0.01〜0.10%含有させることを特徴とする
    る第1項、第2項または第3項記載のいずれかの自動車
    排気系機器用フェライトステンレス鋼板の製造方法。
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