JPH08232042A - 耐食性電縫溶接鋼管用鋼 - Google Patents

耐食性電縫溶接鋼管用鋼

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JPH08232042A
JPH08232042A JP15498995A JP15498995A JPH08232042A JP H08232042 A JPH08232042 A JP H08232042A JP 15498995 A JP15498995 A JP 15498995A JP 15498995 A JP15498995 A JP 15498995A JP H08232042 A JPH08232042 A JP H08232042A
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JP
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steel
cao
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hic
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JP15498995A
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Inventor
Akitoshi Teraguchi
彰俊 寺口
Hirofumi Kuraho
浩文 蔵保
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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  • Treatment Of Steel In Its Molten State (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 鋼中介在物の形態制御によって母材および電
縫溶接部の耐HIC 性、低温靱性をさらに改善できる技術
を開発する。 【構成】C:0.01〜0.20%、 Si:0.01〜0.50%、
Mn:0.5 〜1.8 %、P≦0.020 %、 S≦0.00
3 %、 Al:0.005 〜0.100 %、Ca:0.0005〜0.
0080%、さらに必要に応じて、Cu:0.2 〜0.8 %、
Ni:0.05〜0.6 %、 Cr≦1.0 %、Mo≦1.0 %、
Ti:0.01〜0.1 %、 Nb:0.01〜0.1 %、V≦
0.1 %の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不
可避的不純物から成る鋼組成を有する鋼において、S、
Ca、Oの含有量を、([Ca]-40/32[S])/[O] =1.1 〜1.6
の範囲にするとともに、脱酸生成物を、(I) (CaO) 単体
介在物を核とし、n(CaO)・m(Al2O3)の分子構成比をも
ち、かつその分子構成比が1≦m/n ≦3の範囲である複
合介在物がその周囲に存在する介在物と、(II)分散・球
状化した(CaO) 介在物とから成るようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、強度レベルがAPI X-42
〜X-80クラスの主にラインパイプに用いられる耐食性、
特に耐HIC(水素誘起割れ) 性にすぐれ、かつ電縫溶接部
低温靱性にすぐれた電縫鋼管用鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の石油および天然ガス中には、硫化
水素が多く含まれる場合が多く、そのため海水および淡
水が共存すると鋼表面の腐食だけでなく、腐食によって
生じた水素が鋼中に侵入し内部に割れを生じ問題とな
る。この割れは、HIC 、水素誘起割れ、水素ふくれ割れ
等と呼ばれている。以下、このような割れを本明細書で
はHIC と総称する。
【0003】石油および天然ガスを搬送するラインパイ
プにこのような割れが発生し板厚方向に貫通した場合、
油漏れ、ガス漏れなどパイプラインの破壊につながる。
また、近年、ラインパイプに電縫鋼管が用いられること
が多くなり、HIC の発生防止が重要な技術課題となって
いる。
【0004】従来法にあって、HIC を防止する方法とし
ては、次のような方法がよく採用されている。 i)Cuを添加し耐食性皮膜を生成させ水素侵入を防止する
方法。 ii)HICの起点となる鋼中介在物をCa、Zr、REM 等で球状
化して応力集中を回避する介在物形態制御方法。例え
ば、特開昭50−97515 号、特開昭54−38214 号、特開昭
54−31020 号の各公報参照。
【0005】iii)連続鋳造材には中心偏析部にMnS 等の
硫化物から成るA系介在物や、Mn、Pの偏析が一般的に
見られ、それに起因して低温変態組織であるベイナイト
やマルテンサイトが生成するが、そのときの割れ発生を
防止するため、低S化や低P化もまたよく行われている
技術である。例えば、特開昭52−111815号、特開昭54−
131522号の各公報参照。 iv)Nb の炭窒化物もHIC 発生の起点となることも指摘さ
れ、Nb、C、N量の制限をしている例もある (特開昭56
−119759号公報参照) 。
【0006】これらの技術により現在までにかなりの厳
しい環境にも耐え得る鋼管が連続鋳造材を用いて電縫製
管法により開発・製造されている。一方、近年、石油・
天然ガスが産出される地域はアラスカ、ロシア、北極海
といった極寒地まで広がっており、こうした地域で使用
されるラインパイプや油井管には、当然ながら母材およ
び電縫溶接部の両方において耐HIC 性と低温靱性に優れ
ていることが要求される。
【0007】しかし、電縫鋼管においては、溶接部の靱
性が母材に比べて低下するため、電縫溶接部も含めて靱
性のすぐれた電縫鋼管を製造すべく、従来から様々な研
究がなされ、その結果、種々の方法および鋼管が提案さ
れている。それらは例えば、熱間圧延工程の仕上げ温
度および巻取り温度の制限による素材の靱性向上、造
管後の電縫溶接部の熱処理とその後の急冷による結晶粒
度の制御、Nb、V利用による結晶粒の微細化、造管
後の管体熱処理等である。
【0008】これらの技術によって現在までに靱性のか
なり優れた電縫鋼管が開発されている。例えば、特開昭
54−136512号、特開昭57−140823号、特公昭58−53707
号、特公昭58−53708 号等の各公報参照。
【0009】しかしながら、これらの電縫鋼管は通常の
環境で使用されるものであって、耐サワー環境での使用
を考慮したものではない。しかし、最近の使用環境の過
酷化に伴い、耐HIC 特性と低温靱性のさらなる改善要求
が増加してきている。
【0010】これら特性要求を共に満足させるために
は、Ca添加法が有効であることが知られている。ところ
がCa添加された電縫鋼管の電縫溶接部の靱性は母材部に
比べ著しく低下する場合がある。また電縫溶接部の衝合
面近傍に板厚方向にHIC が発生し、さらにこのHIC が起
点となって耐硫化物応力腐食割れ性能が母材に比べ低下
する。
【0011】この電縫溶接部靱性の低下および電縫溶接
部での板厚方向のHIC の発生は、種々の調査の結果、そ
の原因は電縫衝合部およびその近傍に存在する板状の介
在物であることがわかった。この板状の介在物は、母材
に存在した球状の介在物が電縫溶接時の熱影響によって
鋼の融点近くまで加熱されたうえ、溶接部アプセットに
よって両側から加圧されるために板状に変形することが
明らかとなった。またこの板状に変形する介在物は、成
分分析の結果、mCaO・nAl2O3の分子構成比を持つ複合介
在物である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従来にあっても、以上
のような板状介在物の生成による問題点を解決するため
に、種々の方法が提案されている。例えば、特開昭63−
137144号公報に見られるように、鋼中にZrを添加して介
在物をZrO2・Al2O3 の複合介在物に改質して、その融点
を上げ、電縫溶接時に延伸させない方法である。しか
し、Zr添加は製鋼コストが高い上に、その酸化性が大な
るため合金添加歩留が不安定であり、かつ連続鋳造時に
は浸漬ノズル閉塞を生じ易く工業的には一般的でない。
【0013】また、電縫部溶接部靱性の低下対策とし
て、含有するP、Sを制限し、かつCa<0.001 %に制限
するか、あるいはCaを添加しない方法 (特公平5−5385
7 号公報、特開昭62−274049号公報) がある。しかし、
本発明者らの調査によれば、Ca<0.001 %あるいはCa非
添加ではHIC の発生起点であるMnS を消滅させるために
S量を極限まで低減させる必要があり、低S化のための
脱S処理コストが増大する。MnS を形態制御して無害化
するCa添加法の方が工業規模の生産工程において有利で
ある。しかも、S量が無害領域の極限量まで低下できな
かった場合は最近の過酷な環境において耐HIC 性能は確
保できないという問題もある。
【0014】そのため、特公平5−87582 号公報に見ら
れるように、Ca: 0.0005〜0.008 %、Al:0.005〜0.1 %
を含有し、かつS、O、Caの含有量が、1.0 ≦ (%Ca)
{1-72(%O)}/1.25(%S) ≦2.5 を満足したうえで、脱酸
生成物を (CaO)m(Al2O3)n[m(CaO)・n(Al2O3)] の複合介
在物とし、その分子構成比を m/n<1の範囲とすること
により介在物のAl2O3 分率を増加させて融点が1600℃以
上の複合介在物を生成させ、耐HIC 性能を確保した上で
電縫溶接部近傍での延伸を回避する方法が提案されてい
る。
【0015】さらに、特開平6−41684 号公報では、上
記と同一手段にて湿潤硫化水素環境下で電縫溶接部近傍
に生ずる板面垂直型 (電縫溶接衝合面に平行、板厚方向
に存在) 水素ふくれ割れ (HIC)を起点とする耐硫化物応
力腐食割れを防止することも提案されている。
【0016】前述の特公平5−87582 号公報の中では、
さらに脱酸生成物の(CaO)m(Al2O3)n複合介在物の分子構
成比を m/n<1の範囲とする組成制御法として、溶鋼の
CaとAlの含有量を制御して Ca/Al<0.10とすることも提
案されている。しかしながら、CaO-Al2O3 平衡状態図に
よれば、分子構成比 m/n<1の複合介在物は、 CaO・2A
l2O3、 CaO・6 Al2O3 およびAl2O3 との複合介在物であ
る。これらの複合介在物の中でHIC に無害な球状を呈す
るのは CaO・2Al2O3だけであることはよく知られてお
り、溶鋼のCaとAlの含有量のみで制御した場合、球状化
していないCaO-Al2O3 系介在物の生成も十分に考えら
れ、それらがHIC 発生をもたらすこととなり、この方法
による介在物組成制御も不十分である。
【0017】ここに、本発明の目的は、Zr等の特別な元
素を使用せず、鋼中介在物の組成制御によって母材およ
び電縫溶接部の耐HIC 性および低温靱性をさらに改善で
きる技術を開発することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らはかかる目的
を達成すべく、種々検討を重ね、次のような知見を得
た。 (1) 本発明者らは、Ca添加した鋼について、電縫溶接部
靱性値および耐HIC 性能と溶接部に存在する介在物の形
状および組成についてさらに詳細な検討を行った。この
結果、電縫溶接部の耐HIC 性と靱性の低下をもたらす電
縫溶接部で板状となる介在物はCaO とAl2O3 の複合介在
物であり、m(CaO)・n(Al2O3)の分子構成比で1≦m/n ≦
3の介在物であることが分かった。
【0019】この分子構成比をもつ介在物はCaO とAl2O
3 の平衡状態図をみると、1400℃以下の低融点介在物で
あり、電縫溶接部近傍で延伸することが十分考えられ
る。一方、電縫溶接部の耐HIC 性と低温靱性の劣化を生
じなかった鋼もあり、その介在物を調査したところ、(C
aO) 単体介在物を核としてm(CaO)・n(Al2O3)[Ca-Al-Oと
表される場合もある] の分子構成をもち、その分子構成
比が1≦m/n ≦3の範囲である複合介在物がその周囲に
存在する介在物が主体となっていることが分かった。
【0020】この介在物の核となっている(CaO) 単体介
在物の融点が1535℃以上であることより電縫溶接部にお
いて板状変形せず、かつ低融点で球状となり易いm(CaO)
・n(Al2O3)の複合介在物が周囲に存在することによっ
て、母材部では耐HIC 性能を満足させるための球状を保
ち、かつ電縫溶接部においても板状への変形がほとんど
生じないことが判明した。
【0021】(2) さらに、母材部において分散・球状化
した (CaO)介在物は高融点のため電縫溶接部において板
状に変形しないことも確認された。溶接部において観察
された板状化した介在物の形態および分析結果を図4
に、板状化しなかった介在物の形態および分析結果を図
5にそれぞれ示す。
【0022】また高温圧縮試験機でのCa酸化物系介在物
変形挙動のラボ試験結果を図6に示す。Ca−Al−O 組成
のみの介在物は、高温で圧縮することにより球状の介在
物が板状に変化することがわかる。
【0023】このように、電縫溶接部の耐HIC 性と低温
靱性を劣化させるのは、電縫溶接時に板状化する低融点
の脱酸生成物である介在物であり、介在物の板状化を抑
制するため高融点介在物とする必要があることがわか
る。
【0024】介在物を高融点化するには、CaO とAl2O3
の平衡状態図より (CaO)と(Al)の重量構成比
を高 (CaO)組成とするか、特公平5−87582 号公
報、特開平6−41684 号公報の提案のように高(Al2O3)
組成とするかである。
【0025】しかし、高(Al2O3) 組成の場合、前述のよ
うに高Al2O3 組成比の複合介在物(CaO・6Al2O3) は、HI
C に無害な球状化が行われず、またCaがSよりもOとの
親和力が強いことより、溶鋼中に添加されたCaはまず(A
l2O3) と反応して複合介在物となり、その後Sと反応し
て(CaS) となる形態をとるため、添加されたCaは (Al2O
3)との反応に大部分が使われ、Sとの反応に必要なCaが
不足し、耐HIC 性能に重大な悪影響を及ぼすMnS が生成
する可能性が非常に高く好ましくない。
【0026】また、高 (CaO)組成時においても、過剰な
Ca添加は分散・球状化した (CaO)介在物だけではなく(C
aO) および(CaS) 介在物が巨大化することにより、 (Ca
O)、(CaS) のクラスター状介在物を多く生成し耐HIC 性
に有害であることが知られている。
【0027】つまり、母材と電縫溶接部の耐HIC 性能お
よび電縫溶接部低温靱性の両方を満足させるためには、
脱酸生成物を (CaO)単体介在物を核とし、m(CaO)・n(Al
2O3)の分子構成をもち、かつその分子構成比が1≦m/n
≦3の範囲である複合介在物がその周囲に存在する介在
物と、分散・球状化した (CaO)介在物とすれば良いこと
が判明した。
【0028】(3) そこで、本発明者らは、脱酸生成物の
組成制御を種々検討した結果、介在物組成である(CaO)
と(Al2O3)に着目し、鋼中のCaとOの含有量を制御する
方法を考えた。
【0029】すなわち、鋼中のO含有量は (CaO)と(Al2
O3) を構成するOの含有量を示したものであることと、
(Al2O3) を構成する酸素量と (CaO)を構成する酸素量に
3倍の重量比差があることよりCaとOの含有量により脱
酸生成物としての(CaO) と (Al2O3)の構成比を制御する
方法である。
【0030】つまり、Caと酸素の含有量により本発明の
主要構成点である脱酸生成物を、 (CaO)単体介在物を核
としm(CaO)・n(Al2O3)の分子構成をもち、かつその分子
構成比が1≦m/n ≦3の範囲である複合介在物がその周
囲に存在する介在物と分散・球状化した (CaO)介在物と
から成るように制御するものである。
【0031】そこで本発明者らは、まず各種成分で製造
された電縫鋼管をCaとOの含有量比([Ca]/[O])とHIC 性
能についての調査を実施した。その結果、鋼中Sが (Ca
S)の形態となっているためSの影響を除外する必要があ
ることを見い出した。そこでSを固定するに必要なCa量
を除いた ([Ca]−40/32[S])/[O] でHIC 性能を整理し、
図1に示すグラフを得た。
【0032】この図から明らかなように、0.6 ≦([Ca]-
40/32[S])/[O] ≦1.6 の範囲を満足することにより、(M
nS) や (CaO)・(CaS) クラスターによる母材部における
HICの発生は防止できる。
【0033】さらに電縫溶接部のHIC 性能について整理
したものを図2に、電縫溶接部低温靱性について整理し
たものを図3に示す。また図3には、 (CaO)・(Al2O3)
複合介在物を構成しているCaおよびOの原子量より求め
た (CaO)・(Al2O3) 複合介在物状態も参考のために示し
ている。
【0034】これらの図から明らかなように、さらに狭
い範囲の 1.1≦([Ca]-40/32[S])/[O] ≦1.6 を満足させ
れば、介在物組成を制御して、介在物の延伸を防止し電
縫溶接部の低温靱性劣化を回避し、かつ電縫溶接部およ
び母材の耐HIC 性も十分確保することができる。すなわ
ち、Ca介在物の組成形態を制御するには鋼中のCaならび
にS、Oの含有量にて制御することが有効な手段である
ことが分かる。図7に示すように溶鋼中O含有量と成品
における([Ca]-40/32[S])/[O] の間には明確な相関関係
を持つことが分かる。
【0035】したがって、Ca添加前溶鋼中のS含有量お
よびO含有量あるいはAl2O3 含有量を迅速分析し、スラ
グ組成の制御や溶鋼攪拌によりO含有量およびS含有量
を制御し所定のCaを添加するか、あるいはCa添加前溶鋼
中のS含有量およびO含有量に応じてCa添加量を変化さ
せることで、鋼中のS、Ca、Oの含有量を1.1 ≦([Ca]-
40/32[S])/[O] ≦1.6 の範囲に制御することにより、Ca
介在物の組成形態、すなわち (CaO)と(Al2O3) の構成比
を制御して、CaO 単体介在物を核とし、m(CaO)・n(Al2O
3)の分子構成をもち、その分子構成比が1≦m/n ≦3で
ある複合介在物がその周囲に存在する介在物および分散
・球状化したCaO 介在物とすることで、母材が良好なHI
C 性能を持ちかつ介在物の板状化を防止して、電縫溶接
部の耐HIC 性および靱性の劣化を回避することができ
る。
【0036】ここに、本発明の要旨とするところは、重
量%で、C:0.01〜0.20%、 Si:0.01〜0.50%、
Mn:0.5 〜1.8 %、P≦0.020 %、 S≦0.00
3 %、 Al:0.005 〜0.100 %、Ca:0.0005〜0.
0080%、さらに必要に応じて、Cu:0.2 〜0.8 %、
Ni:0.05〜0.6 %、 Cr≦1.0 %、Mo≦1.0 %、
Ti:0.01〜0.1 %、 Nb:0.01〜0.1 %、V≦
0.1 %の1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不
可避的不純物から成る鋼組成を有する鋼において、S、
Ca、Oの含有量を、([Ca]-40/32[S])/[O] =1.1 〜1.6
の範囲にすることにより、脱酸生成物が、(CaO) 単体介
在物を核とし、m(CaO)・n(Al2O3)の分子構成比をもち、
かつその分子構成比が1≦m/n ≦3の範囲である複合介
在物がその周囲に存在する介在物と、分散・球状化した
(CaO) 介在物から成るようにしたことを特徴とした電縫
溶接部低温靱性にすぐれた耐食性電縫溶接鋼管用鋼であ
る。
【0037】かくして、本発明によれば、上述のように
脱酸生成物の形態制御を行うことによって、強度レベル
がAPI X-42〜X-80クラスの主にラインパイプに用いられ
る鋼であって、耐HIC(水素誘起割れ) 性にすぐれ、かつ
電縫溶接部低温靱性にすぐれた耐食性電縫溶接鋼管用鋼
が得られるのである。
【0038】
【作用】次に、本発明の対象となる鋼の鋼組成を限定し
た理由を述べる。本発明の対象となる鋼は、高強度の耐
食性ラインパイプ用電縫鋼管であるため、その鋼組成は
以下の通りとした。
【0039】C:Cは、鋼の強度を向上させる基本的な
元素であるため、強度確保のため0.01%以上とした。し
かし、0.20%超では靱性や溶接性などに望ましくない使
用上に影響があるほか、連続鋳造材での中心偏析帯の異
常組織 (ベイナイトやマルテンサイト) の発生防止に望
ましくないため0.01〜0.20%とした。
【0040】Si:Siは、精錬時の脱酸剤として使用する
ほか強度向上のため0.01%以上添加するが、0.50%を超
えると脆性が増すため、0.50%以下とした。
【0041】Mn:Mnは、強度・靱性を付与するのに必要
な元素であり、強度確保のため0.5 %以上とし、溶接性
および靱性確保のため1.8 %以下とした。 P:Pは、中心偏析帯の異常組織を助長する元素である
ので、0.020 %以下とした。
【0042】S:Sは、Caを添加した場合でも含有量が
多いと硫化物系介在物を生成しHIC に多大に悪影響を及
ぼすため0.003 %以下とした。しかし、S量が多い場合
にはSを(CaS)として固定するためのCaが多く必要とな
り、HIC 性能に悪影響を及ぼす介在物を増加させるた
め、できるだけS量は低くした方が望ましい。重要なの
はCaおよびOとの成分比が、1.1 ≦([Ca]-40/32[S])/
[O] ≦1.6 を満たすことである。
【0043】Al:Alは、精錬時の脱酸に必要な元素であ
るので、0.005 %以上とした。しかし、0.100 %を超え
ると介在物の増加等で鋼質の劣化をもたらす。
【0044】Ca:Caは、介在物の形態制御に用いられる
が、MnS 、Al2O3 を球状化して耐HIC 性を向上させるた
めには少なくとも0.0005%以上は必要である。しかしな
がら、0.0050%を超えて添加してもそれ以上の効果がな
く、またCa系の介在物クラスターが増加しHIC 性能を低
下させるため、0.005 %を上限とした。重要なのはSお
よびOとの分子構成比が、1.1 ≦([Ca]-40/32[S])/[O]
≦1.6 を満たすことである。
【0045】なお、酸素 (O) は、鋼中に介在物の形態
として存在し、脱酸方法により決まる介在物の組成によ
って変化するため特に規定はしていないが、重要なのは
Ca、Sとの成分比で、1.1 ≦([Ca]-40/32[S])/[O] ≦1.
6 を満足することである。
【0046】次に、本発明においては、Cu、Ni、Cr、M
o、Ti、Nb、およびV の少なくとも1種を鋼の強度改
善、さらには靱性、耐食性改善を目的に添加してもよ
い。
【0047】Cu:Cuは、強度向上およびHIC に効果を有
する元素であるが、0.2 %以下では効果がなく、0.8 %
超では溶接性の劣化と共に熱間加工性に悪影響を及ぼ
す。
【0048】Ni:Niは、靱性向上の効果と、併せて強度
改善効果を有する元素でありその効果を得るために0.05
%以上添加するが、鋼中への水素浸透防止に対しては有
害であり少ない方が良いが、Cuを0.30%以上添加する場
合にはNiを添加しないとCu脆化を生じ、表面品質等に悪
影響を及ぼす。本発明鋼のCu≦0.8 %では、HIC に大き
な影響を及ぼさないNi≦0.6 %で良い。また、使用環境
によりCuを添加しない場合には、上記理由によりNiを添
加しなくとも良い。
【0049】Ti、Nb:Ti、Nbは、強度向上効果があるの
で0.01%以上添加する場合もある。0.01%以下では強度
向上効果は期待できない。また、0.1 %を超えて添加す
ると靱性を損なうので、上限を0.1 %とする。NACE環境
においては、Cuの耐食効果がないためCuを添加しなくと
もよいが、Cu添加しない場合強度確保のため、Ti、Nbの
0.01%以上の添加が必要である。
【0050】Cr、Mo、V:Cr、Mo、Vは、強度を向上させ
る元素であるが上限を1.0 %と規定したのは、上限を超
えて添加しても強度上昇効果が少ないことと経済的理由
による。これらの任意添加元素は、対象となる鋼の使用
環境、要求強度レベルにより組み合わせて使用される。
【0051】ここで、上述のような鋼中介在物の形態制
御に特に重要である鋼中のCaとOの含有量を制御する具
体的方法について述べる。本発明者らは、前述の溶鋼中
におけるCaの反応形態からCa添加前の溶鋼中のO含有量
およびAl2O3 含有量に着目した。なお、Ca添加前の溶鋼
中のO含有量についてはほとんどが脱酸生成物であるAl
2O3 を構成するOであるため、ここでは各種成分のCa添
加前の溶鋼におけるO含有量を分析し、成品分析より求
めた([Ca]-40/32[S])/[O] との関係について調査した。
【0052】
【実施例】表1に示す組成成分の各鋼を熱延コイルとし
た後、アズロールのまま電縫溶接し、得られた電縫鋼管
の母材部および電縫溶接部の耐HIC 性の評価試験を行う
と共に電縫溶接部靱性を測定した。
【0053】耐HIC 性の評価試験としては人工海水中に
H2S を飽和させた溶液 (PH=4.8 〜5.4 、いわゆるBP
環境) および0.5%CH3COOH を添加した5%NaCl水溶液に
H2Sを飽和させた溶液 (PH=2.7 〜4.0 、いわゆるNACE
環境) を使用した2種の条件にて96Hr浸漬しCAR[割れ面
積率:CAR(%)] にてHIC 性能を比較した。なお、表1中
には特公平5−87582 号公報による介在物組成制御法(m
/n<1)における関係式の値についてもその計算値を記
載している。
【0054】結果は表2に示すがこの表2より明らかな
ように、本発明鋼を使用した電縫鋼管では従来鋼および
特公平5−87582 号公報による比較鋼に対しHIC の発生
もなく、かつ電縫溶接部においてもvTrsでの評価をして
いるが−46℃以下が得られ低温靱性も著しく優れている
ことがわかる。
【0055】なお、同じくこれらの結果をCa/Al比でま
とめてみると、その結果は図8に示す通りであり、Caと
Alの含有量比Ca/Al<0.10により溶鋼中のCaとAlの含有
量を制御するだけでは、低温靱性を劣化させないために
要求される高融点脱酸生成物の生成、すなわち電縫溶接
部靱性劣化防止が不十分であることと耐HIC 性能につい
ても不十分であることを示している。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】以上述べたように、本発明は、比較的穏
やかなサワー環境 (BP環境) から厳しいサワー環境 (NA
CE環境) において電縫溶接部も含めた良好な耐HIC 性と
優れた低温靱性を有する電縫溶接鋼管を提供でき、特に
極寒地でのサワー環境でも、HIC の発生および低温脆性
破壊による事故の発生しないラインパイプの敷設を可能
とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】母材HIC 割れ性に及ぼす介在物形態の影響を示
すグラフである。
【図2】溶接部HIC 割れ性に及ぼす介在物形態の影響を
示すグラフである。
【図3】溶接部靱性に及ぼす介在物形態の影響を示すグ
ラフである。
【図4】板状に伸びた介在物形態を示す模式図である。
【図5】球状化した介在物形態を示す模式図である。
【図6】Ca系介在物の変形状況の説明図である。
【図7】Ca添加前溶鋼の[O] 量と介在物形態を表わす
([Ca]-40/32[S])/[O] との関係を示すグラフである。
【図8】実施例の結果を示すグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C:0.01〜0.20%、 Si:0.01〜0.50%、 Mn:0.
    5 〜1.8 %、 P≦0.020 %、 S≦0.003 %、 Al:0.
    005 〜0.100 %、 Ca:0.0005〜0.0080%、 残部Feおよび不可避的不純物から成る鋼組成を有する鋼
    において、S、Ca、Oの含有量を、([Ca]-40/32[S])/
    [O] =1.1 〜1.6 の範囲にすることにより、脱酸生成物
    が、(CaO) 単体介在物を核とし、m(CaO)・n(Al2O3)の分
    子構成をもち、かつその分子構成比が1≦m/n ≦3の範
    囲である複合介在物がその周囲に存在する介在物と、分
    散・球状化した(CaO) 介在物とから成るようにしたこと
    を特徴とした電縫溶接部低温靱性に優れた耐食性電縫溶
    接鋼管用鋼。
  2. 【請求項2】 重量%で、前記鋼組成が、 Cu:0.2 〜0.8 %、 Ni:0.05〜0.6 %、 Cr≦1.
    0 %、 Mo≦1.0 %、 Ti:0.01〜0.1 %、 Nb:0.
    01〜0.1 %、 V≦0.1 %の1種または2種以上をさらに含有する請求
    項1記載の電縫溶接鋼管用鋼。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN100359035C (zh) * 2005-01-26 2008-01-02 宝山钢铁股份有限公司 酸性环境用x65管线钢及其制造方法
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