JP3303647B2 - 耐サワー性と耐炭酸ガス腐食性とに優れた溶接鋼管 - Google Patents

耐サワー性と耐炭酸ガス腐食性とに優れた溶接鋼管

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JP3303647B2
JP3303647B2 JP00799996A JP799996A JP3303647B2 JP 3303647 B2 JP3303647 B2 JP 3303647B2 JP 00799996 A JP00799996 A JP 00799996A JP 799996 A JP799996 A JP 799996A JP 3303647 B2 JP3303647 B2 JP 3303647B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、湿潤硫化水素環境
や湿潤炭酸ガス環境に曝される原油輸送用ラインパイプ
や石油精製装置用圧力配管等に長期間、安定して使用し
うる耐水素誘起割れ性、耐硫化物応力割れ性および耐炭
酸ガス腐食性のいずれにも優れた溶接鋼管に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】図1は、原油あるいはガスの採掘、輸送
および精製時に遭遇する環境において発生する問題、お
よびそれらに対処するため溶接鋼管母材である鋼板に対
してとってきた従来の対策をまとめた図面である。同図
に即して、従来の技術の説明を行う。
【0003】硫化水素を含む原油あるいはガスを輸送す
るラインパイプ、または硫化水素を含む原油あるいはガ
スを精製する槽塔類に用いられる配管では水素誘起割れ
(以下、HIC:Hydrogen Induced
Cracking:という)あるいは硫化物応力割れ
(以下、SSC:Sulfide Stress Cr
acking:と称する)が問題となる。
【0004】HICとは外部応力のない状態で鋼材に生
じる割れであり、SSCは静的な応力下で起きる割れで
ある。HICおよびSSCは、どちらも湿潤硫化水素環
境(サワー環境という)で鋼が腐食したときに発生する
水素が鋼中に侵入することによって起きる割れまたは損
傷である。耐HIC性および耐SSC性の両者を合わせ
た性能を、耐サワー性という。
【0005】サワー環境でのHICおよびSSCの抑制
方法として、以下のものが知られている。
【0006】・Cu添加による水素の鋼への侵入抑制。
【0007】・Ca添加による硫化物の形態制御、すな
わち硫化物の割れの起点としての作用抑制(特公昭60
−35982号公報)。
【0008】・中心偏析部での高いHICおよびSSC
感受性低減のための偏析軽減、すなわち拡散焼鈍による
連続鋳造スラブ中心偏析部でのMnおよびPの偏析軽
減。
【0009】・制御圧延および圧延後の加速冷却による
硬化組織の生成防止(特公昭63−1369号公報)。
【0010】・高強度化と耐HIC性維持のための、中
心偏析を軽減するMn低減およびCr増量(特公平2−
50967号公報および特公平3−68101号公
報)。
【0011】これらの耐サワー性の改善が行われる一方
で、良質な石油資源の枯渇に伴い、過酷な環境の油田お
よびガス田の開発が進められたため、従来よりもpHが
低く、かつ硫化水素圧力の高い環境(この場合も、同じ
ようにサワー環境という)での使用に耐える鋼管の要求
が増大することとなった。
【0012】さらに、耐サワー性と同時に、または耐サ
ワー性とは関係なく、炭酸ガス腐食に対する抵抗性が高
い鋼が望まれるようになってきた。この要求に応えた耐
炭酸ガス腐食性の高い鋼材として、Crを高めた低合金
鋼が開示されている(特開平3−110071号公報お
よび特開平4−341540号公報)。とくに、特開平
3−110071号公報には、母材のCrを制限するだ
けでなく溶接金属のCrも母材のCrに対して一定量以
上とする溶接鋼管自体の発明が提示されている。
【0013】しかしながら、Crの増量は、湿潤炭酸ガ
ス環境での腐食を抑制するが、低pHの湿潤硫化水素環
境での腐食に対しては促進する作用がある。とくに溶接
金属の腐食速度および局部腐食深さは大きくなる。した
がって、低pHの硫化水素環境ではむしろCrを低減す
るほうが腐食を抑制するうえで好ましい。
【0014】本説明において、合金元素の“量”という
とき、その合金元素の“濃度”をさし、両者をとくべつ
区別せずに用いる。また、合金元素そのもの、たとえば
Crというとき、Cr量あるいはCr濃度をさす場合が
ある。
【0015】特開平7−216500号公報は、低pH
の硫化水素環境も含めたサワー環境および炭酸ガス環境
のいずれにも使用可能なX80級の強度(API (米国
石油協会) 規格:規格下限の降伏強さ80ksi=55
1MPa)をカバーする溶接鋼管母材として、低C−低
Mn−低Cr−微量Ti−中Nからなるフェライト−ベ
イナイト2相組織鋼を、提示している。しかし、これは
鋼管母材の鋼板に対する発明であって、溶接鋼管自体に
対する発明ではない。
【0016】径が16インチを超えるような大径管は一
般的には溶接鋼管であり、とくに24インチを超えるよ
うな大径鋼管は、サブマージアーク溶接(SAW)によ
って溶接される。SAW溶接鋼管全体の、低pHの硫化
水素も含めた環境での耐サワー性と耐炭酸ガス腐食性の
両者を同時に考慮した技術は開示されていない。とく
に、X80級以上の、耐サワー性と耐炭酸ガス腐食性と
を同時に備えた溶接鋼管の発明は見あたらない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、低pHの硫
化水素も含めたサワー環境での耐HIC性および耐SS
C性に優れ、同時に耐炭酸ガス腐食性も備えた溶接鋼
管、とくにX80級高強度溶接鋼管を提供することを目
的とする。
【0018】各性能の具体的な目標は下記のとおりであ
る。なお、溶接部とは、溶接金属を指し、溶接熱影響部
(HAZ)は、その硬さおよび組織が母材の化学組成で
ほぼ決まるので、母材として取り扱う。ただし、“フェ
ライトとベイナイトの2相組織の母材”というときは、
溶接熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)を除いた
母材を指す。HAZでは溶接の熱サイクルを受けて、
“フェライトとベイナイトの2相組織”でなくなるから
である。
【0019】(a-1 )母材の耐HIC性:割れ破面率
(CAR:Crack Area Ratio)2%以
下。
【0020】ただし、CAR=(HIC面積)/(試験
片幅×試験片長さ)である。
【0021】(a-2 )母材および溶接部の耐SSC性:
「SSCを発生しない最大応力である割れ発生限界応力
σth」を実降伏強さの80%以上とする。割れ発生限界
応力における「実降伏強さ」とは、母材の実際の降伏強
さのことをいう。
【0022】(a-3 )母材および溶接部の耐炭酸ガス腐
食性:無対策材に比べて、1/2以下の腐食速度とす
る。
【0023】(a-4 )強度レベル:とくに降伏強さの下
限を限定する後記する〔発明3〕および〔発明4〕の場
合、X80級(溶接鋼管として、降伏強さ551MPa
以上)とする。
【0024】ただし、〔発明1〕および〔発明2〕の場
合には、強度はとくに限定しない。
【0025】なお、〔発明3〕は〔発明1〕の、また、
〔発明4〕は〔発明2〕の限定した実施の態様の一例で
ある。
【0026】
【課題を解決するための手段】従来からある知見および
本発明者が今回新たに確認することができた課題解決手
段は、下記のようにまとめられる。
【0027】(a) 低pHの硫化水素環境下でのSAW溶
接部の腐食速度を低下させることを通じてSAW溶接部
のσthを向上させるために、溶接金属のCr量を一定範
囲以下とする。
【0028】図2は、低pHの硫化水素環境であるNA
CE TM0177浴中での母材の腐食速度に及ぼす母
材のCr量の影響を表す図面である。同図において母材
のCr量の増大につれて腐食速度が増大していることが
分かる。
【0029】また、図3は溶接金属における選択腐食深
さに及ぼす溶接金属のCr量および(Cu+Ni)含有
の影響を表す図面である。溶接金属のCrの増大に伴い
選択腐食深さも増大することは明白である。また、Cu
とNiを含有させることにより溶接部の選択腐食は抑制
されることも分かる。後記するように、選択腐食深さが
増大することにより、耐SSC性が劣化する。したがっ
て、つぎに述べる耐炭酸ガス腐食性を劣化させない範囲
で溶接金属のCrは低くしなければならない。
【0030】(b) 上記(a) に記載したCrを低下した溶
接金属の炭酸ガス環境下での腐食を防止するために、溶
接金属のCuとNiを適正量増加する。
【0031】図4は、湿潤炭酸ガス環境での母材の腐食
速度に及ぼす母材のCr量およびCuとNiの影響を表
す図面である。同図によれば、母材のCrが0.2%以
下で、CuとNiがともにゼロの場合、腐食速度はきわ
めて高いものになる。これに対して、たとえ母材のCr
が0.2%以下であっても、CuとNiが適正量含まれ
ていれば、その腐食速度は母材のCrがゼロで、Cuと
Niがいずれもゼロのものに比較して、その腐食速度を
確実に1/2以下にすることができる。
【0032】また、図5は湿潤炭酸ガス中での溶接金属
の選択腐食深さに及ぼす[溶接金属のCr量−母材のC
r量]の影響を表す図面である。母材に比べて溶接金属
のCrが少ないほど(横軸がマイナス側ほど)、選択腐
食深さは大きくなるが、溶接金属にCuとNiが適正量
含まれているときには、サワー環境中と同様に選択腐食
深さは抑制される。
【0033】(c) 上記の発明をX80級以上の高強度鋼
に適用する場合、母材の耐サワー性の維持のため、Mn
はむしろ低下させて連続鋳造スラブの中心偏析を軽減す
る。Mn低下による強度低下をCの適正量によって補う
ことによって、耐サワー性と耐炭酸ガス腐食性を同時に
満足させる化学組成とする。これらの化学組成の調整を
おこなった鋼に対して、制御圧延と加速冷却を組み合わ
せた製造方法を適用することによりフェライトとベイナ
イトの2相組織とする。これらの化学組成と組織を同時
に満たすことにより、X80級以上の強度を得て同時
に、耐サワー性および耐炭酸ガス腐食性を十分なものと
することができる。
【0034】(d) 高強度鋼の場合、鋼の焼入性は必然的
に高まるので、HAZの硬さが高くなり耐SSC性が劣
化するのでHAZ硬さを低減する対策を付加する必要が
ある。
【0035】この目的のためにTi、より好ましくはT
iとNを適正量添加して、HAZ組織を微細化し硬さ上
昇を抑制して溶接部のσthを実降伏強さの80%以上
とする。
【0036】図6は、これらを総合した溶接鋼管の母材
および溶接金属における本発明の要旨をまとめた図面で
ある。同図において、HAZに関する対策は、母材に対
する対策として挙げてある。
【0037】これらのことを確認する実験に用いた低p
Hのサワー環境としては、現在最も厳しい試験浴である
NACE TM0177浴と呼ばれる、〔1気圧の硫化
水素を飽和させた25℃の0.5%酢酸+5%食塩水溶
液〕とした。判定基準は、「耐HIC性に関してはCA
R2%以下」、また「耐SSC性に関してはNACET
M0177浴中で実降伏強さの80%以上の割れ発生限
界応力σth」を示すものを合格とした。後者は、従来
は、規格最小降伏強さ(SMYS:Specified
Minimum Yield Strength)の
80%以上とされていた。通常、溶接部よりも鋼管母材
のほうが強度は低いので、実降伏強さとしては、溶接鋼
管母材の降伏強さを採用する。母材の降伏強さは規格最
小降伏強さより高い値であることはいうまでもない。
【0038】本発明は上記の改良を総合したもので、下
記の化学組成および組織からなるX80級の溶接鋼管を
要旨とする。
【0039】(1)重量%で、C:0.02〜0.15
%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.1〜2%、
P:0.015%以下、S:0.002%以下、Cr:
0.2〜1%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜0.7
%、Mo:0〜0.3%、Nb:0〜0.1%、V:0
〜0.1%、Ti:0〜0.05%、Al:0.005
〜0.1%およびCa:0.0005〜0.005%を
含み残部Feおよび不可避的不純物の化学組成を有する
母材と、母材のCrに対してそのCrが下記の(イ)ま
たは(ロ)の範囲にある溶接金属とからなることを特徴
とする耐サワー性と耐炭酸ガス腐食性とに優れた溶接鋼
管(〔発明1〕とする)。
【0040】Crを母材のCr量とし、Crを溶接
金属のCr量とするとき、 (イ)Crが0.4%超え1%以下の場合: Cr(%)≦(1/2)×Cr(%) (ロ)Crが0.2%以上0.4%以下の場合: Cr(%)<Cr(%)−0.2 (2)重量%で、C:0.02〜0.15%、Si:
0.01〜0.5%、Mn:0.1〜2%、P:0.0
15%以下、S:0.002%以下、Cr:0.2〜1
%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜0.7%、Mo:
0〜0.3%、Nb:0〜0.1%、V:0〜0.1
%、Ti:0〜0.05%、Al:0.005〜0.1
%およびCa:0.0005〜0.005%を含み残部
Feおよび不可避的不純物の化学組成を有する母材と、
母材のCrおよびCuとNiの和に対してそのCrおよ
びCuとNiの和が下記(イ)または(ロ)の範囲にあ
る溶接金属とからなることを特徴とする耐サワー性と耐
炭酸ガス腐食性とに優れた溶接鋼管(〔発明2〕とす
る)。
【0041】Cr、CuおよびNiを、母材のC
r量、Cu量およびNi量とし、Cr、Cuおよび
Niを、溶接金属のCr量、Cu量およびNi量とす
るとき、 (イ)Crが0.4%超え1%以下の場合: Cr(%)≦(1/2)×Cr(%) Cu(%)+Ni(%)+(1/10)×{Cr
(%)−Cr(%)} ≦Cu(%)+Ni(%) ≦Cu(%)+Ni(%)+0.5 (ロ)Crが0.2%以上0.4%以下の場合: Cr(%)<Cr(%)−0.2 Cu(%)+Ni(%)+(1/10)×{Cr
(%)−Cr(%)} ≦Cu(%)+Ni(%) ≦Cu(%)+Ni(%)+0.5 (3)重量%で、C:0.03〜0.07%、Si:
0.01〜0.5%、Mn:0.7〜1.3%、P:
0.015%以下、S:0.002%以下、Cr:0.
2〜1%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜0.7%、
Mo:0〜0.3%、Nb:0〜0.1%、V:0〜
0.1%、Ti:0〜0.05%、Al:0.005〜
0.1%およびCa:0.0005〜0.005%を含
み残部Feおよび不可避的不純物の化学組成を有し、フ
ェライトとベイナイトの2相組織からなる母材と、母材
のCrに対してそのCrが下記の(イ)または(ロ)の
範囲にある溶接金属とからなり、降伏強さ551MPa
以上であることを特徴とする耐サワー性と耐炭酸ガス腐
食性とに優れた溶接鋼管(〔発明3〕とする)。
【0042】Crを母材のCr量とし、Crを溶接
金属のCr量とするとき、 (イ)Crが0.4%超え1%以下の場合: Cr(%)≦(1/2)×Cr(%) (ロ)Crが0.2%以上0.4%以下の場合: Cr(%)<Cr(%)−0.2 (4)重量%で、C:0.03〜0.07%、Si:
0.01〜0.5%、Mn:0.7〜1.3%、P:
0.015%以下、S:0.002%以下、Cr:0.
2〜1%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜0.7%、
Mo:0〜0.3%、Nb:0〜0.1%、V:0〜
0.1%、Ti:0〜0.05%、Al:0.005〜
0.1%およびCa:0.0005〜0.005%を含
み残部Feおよび不可避的不純物の化学組成を有し、フ
ェライトとベイナイトの2相組織からなる母材と、母材
のCrおよびCuとNiの和に対してそのCrおよびC
uとNiの和が下記の(イ)または(ロ)の範囲にある
溶接金属とからなり、降伏強さ551MPa以上である
ことを特徴とする耐サワー性と耐炭酸ガス腐食性とに優
れた溶接鋼管(〔発明4〕とする)。
【0043】Cr0 、Cu0 およびNi0 を母材のCr
量、Cu量およびNi量とし、CrW 、CuW およびN
W を溶接金属のCr量、Cu量およびNi量とすると
き、 (イ)Cr0 が0.4%超え1%以下の場合: CrW (%)≦(1/2)×Cr0 (%)Cu
0 (%)+Ni0 (%)+(1/10)×{Cr
0 (%)−CrW (%)}≦CuW (%)+Ni
W (%)≦Cu0 (%)+Ni0 (%)+0.5 (ロ)Cr0 が0.2%以上0.4%以下の場合: CrW (%)<Cr0 (%)−0.2 Cu0 (%)+Ni0 (%)+(1/10)×{Cr
0 (%)−CrW (%)}≦CuW (%)+Ni
W (%)≦Cu0 (%)+Ni0 (%)+0.5 上記の「溶接金属」は、大径管のいわゆる縦シーム溶接
部(シングルシームおよびダブルシーム)に限らず、ス
パイラル溶接部、またはこれら溶接管どうしの接合部で
ある円周溶接部にも適用される。また、“フェライトと
ベイナイトの2相組織の母材”とは、HAZを除いた母
材を指す。
【0044】図7は本発明(〔発明1〕、〔発明2〕、
〔発明3〕および〔発明4〕)における溶接金属のCr
量(CrW )と母材のCr量(Cr0 )の範囲を表す図
面である。同図において、1の範囲が本発明の範囲を表
す。母材のCr量と溶接金属のCr量の差、[Cr
0 (%)−CrW (%)]は、母材のCrが1%であ
り、かつ溶接金属のCrがゼロのとき最大となり、最大
値は1%であり、また最小となるのは母材のCrが0.
4%、かつ溶接金属のCrが0.2%のときで、最小値
は0.2%である。
【0045】Cr以外のそのほかの溶接金属の合金元素
については、CaとSを除いて母材に対して設定された
化学組成の範囲内にあるのが望ましい。耐食性等は母材
と溶接金属とにかかわらず化学組成できまるからであ
る。ただし、C量のみは、母材に対して設定された範囲
内にありながら母材に比べて低めにすることが望まし
い。
【0046】Caは溶接中に酸化して溶接金属中に留ま
る量は溶接材料のそれよりも少なくなり、一般に母材よ
り低くなる傾向がある。しかし後記するように溶接金属
中のSは、たとえばMnSを形成しても母材中のMnS
のように圧延により展伸しないために耐HIC性を劣化
させる程度が小さいので、溶接金属中のCa量は母材に
対して設定された範囲より低くてもよい。
【0047】Sも同様な理由により、溶接金属中でMn
Sを形成しても圧延されることがないので、耐HICを
劣化させる程度は小さく、母材に対して設定された範囲
より多くてもよい。
【0048】図8は〔発明2〕および〔発明4〕におけ
る[(CuW +NiW )(%)]と[(Cu0 +N
0 )(%)]との範囲を表す図面である。溶接金属の
CuとNiの和が母材に比べて多い量の上限は0.5%
である(図7の直線12)。しかし、下限は溶接金属お
よび母材のCrがともに決まらないと決まらない。上記
の図7で述べた溶接金属と母材のCrの差の最大値と最
小値をもとにすると、(1/10)×[Cr0 (%)−
CrW (%)]は、最大値が0.1%であり、最小値が
0.02%となる。したがって、溶接金属のCuとNi
の和の下限は、図8に示すように、最大の場合、直線1
3となり、最小の場合、直線14となる。
【0049】CrおよびCu+Ni以外のそのほかの溶
接金属中の合金元素については、〔発明1〕および〔発
明3〕と同様である。
【0050】
【発明の実施の形態】
1.鋼管母材の化学組成 以下の説明で、「%」は「重量%」を表示する。
【0051】C:〔発明1〕および〔発明2〕の場合、
Cは、強度を確保するために0.02%以上添加しなけ
ればならない。しかし、0.15%を超えると中心偏析
が著しく生じ溶接部の耐SSC性が損なわれるので0.
15%以下とする。〔発明3〕および〔発明4〕のX8
0級以上の高強度鋼管に対しては、Cはより狭く制限す
ることが必要である。0.03%未満とすると、後記す
る製造方法を駆使しても必要な降伏強さが得られない
が、0.07%を超えるとHAZの硬さが上昇し、HA
Z最外線近傍においてパーライトバンドが生成して耐S
SC性が低下するので、0.03〜0.07%とする。
〔発明3〕および〔発明4〕において、適切な強度と良
好な耐SSC性のバランスをほど良く得るには、さらに
0.04〜0.06%とすることが望ましい。
【0052】Si:Siは製鋼時に脱酸剤として使用す
るが、0.01%未満では脱酸が十分に行われず、後記
するAlの歩留まりを低下させるが、0.5%を超える
と靭性が劣化するので0.01〜0.5%とする。
【0053】Mn:〔発明1〕および〔発明2〕におい
て、Mnは安価に高強度を得るのに有効である。0.1
%未満では必要な降伏強さを得ることができないが、2
%を超えると中心偏析がいちじるしく生じ、かつHAZ
が著しく硬化して耐SSC性が損なわれるので0.1〜
2%とする。
【0054】〔発明3〕および〔発明4〕では、このM
n量をさらに限定する。X80級の降伏強さを確保する
には0.7%以上必要である。しかし、1.3%を超え
て多くすると、上記したように中心偏析部でMnとPの
共偏析による異常組織(硬化組織)を生じて耐HIC性
および耐SSC性が劣化するので0.7〜1.3%とす
る。
【0055】P:Pは低いことが好ましい。しかしPを
低減するにはコスト上昇を伴うので、性能劣化が著しく
ない範囲以下とする。0.015%を超えると連続鋳造
スラブの中心部にMnと共に濃厚偏析し、異常組織を生
じて耐HIC性を著しく劣化するので0.015%以下
としなければならない。
【0056】S:Sは低いことが望ましい。しかしSを
低下することもコスト上昇を伴うので、許容範囲以下と
する。0.002%を超えるとCaによる硫化物の形状
制御を行っても、中心偏析部ではMnSを生成し、耐H
IC性が損なわれるので0.002%以下とする。
【0057】Cr:耐炭酸ガス腐食性を高めるため、お
よびX80級の降伏強さを確保して良好な耐SSC性を
得るために0.2%以上必要である。しかし1%を超え
ると母材の耐SSC性が劣化するため、0.2〜1%と
する。さらに高い母材強度、例えばX80級以上の強度
および耐SSC性と耐炭酸ガス腐食性を同時に確保する
には、0.4〜0.7%とすることが望ましい。
【0058】Cu:Cuは添加しなくてもよい。しか
し、Cuは耐炭酸ガス腐食性を高めることができ、同時
に水素の侵入を防止して耐HIC性および低pHの硫化
水素環境下での耐SSC性を向上させるので、これらの
性能をさらに向上させる場合には添加する。しかし、添
加する場合でも0.5%を超えると、連続鋳造スラブの
表面に亀甲状の割れを発生し、製品歩留まりを著しく低
下するので、0.5%以下とする。
【0059】Ni:Niは添加しなくてもよい。しか
し、Niは靭性を高め、同時に耐炭酸ガス腐食性を高め
るので、これら性能をとくに向上させる場合には添加す
る。しかし、0.7%を超えると、耐SSC性および耐
HIC性能を劣化させるので、添加するとしても0.7
%以下とする。靭性をより向上し耐SSC性および耐H
IC性を劣化させない範囲としては、0.2〜0.5%
が望ましい。
【0060】Mo:Moは添加しなくてもよい。しか
し、添加することにより、強度および靭性を向上させ、
また、NACE TM0177浴のようにpHの低い環
境ではNiとの相乗作用で水素侵入を抑制して耐HIC
性を向上させるので、これら性能をさらに向上させる場
合には添加する。添加する場合でも0.3%を超えると
靭性および溶接部の耐SSC性が低下するので、0.3
%以下とする。より良好な強度および靭性を確保し、溶
接部の耐SSC性を維持するには、0.05〜0.15
%とするのが望ましい。
【0061】Nb:Nbは添加しなくてもよい。しか
し、Nbは細粒化と炭化物の析出により、強度および靭
性を向上させ、また、細粒化によって耐SSC性を向上
させるので、これらをさらに向上させる場合には添加す
る。しかし、添加する場合でも、0.1%を超えるとか
えって靭性の著しい低下を招くので、0.1%以下とす
る。より良好な強度靭性バランスを保つには、0.02
〜0.05%とするのが望ましい。
【0062】V:Vは添加しなくてもよい。しかし、V
はNbと同様に細粒化と炭化物析出により強度および靭
性を向上させ、かつ細粒化によって耐SSC性を向上さ
せる。したがって、これら性能をさらに向上させる場合
には添加する。しかし、添加する場合でも、0.1%を
超えると、靭性の著しい低下を招くので、0.1%以下
とする。より適度の強度靭性バランスを得るには、0.
02〜0.07%とするのが望ましい。
【0063】Al:Alは製鋼時の脱酸剤として有効で
ある。0.005%未満では脱酸が十分行われず、連続
鋳造の凝固の際ピンホールを生成するので、0.005
%以上とする。しかし、0.1%を超えると、鋼の清浄
度および靭性が劣化するので、0.005〜0.1%と
する。ピンホールの発生を抑制し、良好な靭性を得るに
は0.01〜0.03%とするのが望ましい。
【0064】Ca:Caは硫化物系介在物の形態を制御
するのに有効な元素であるが、0.0005%未満では
圧延により延伸するMnSを生成し、耐HIC性が損な
われるので0.0005%以上とする。しかし、0.0
05%を超えると、過剰のCaが酸化物の集合を形成し
て耐HIC性を劣化するので0.0005〜0.005
%とする。より一層の耐HIC性を得るには、0.00
1〜0.003%とするのが望ましい。
【0065】Ti:〔発明1〕および〔発明2〕におい
ては、Tiは添加しなくてもよい。しかし、Nと結合し
TiNを析出することにより、HAZ硬さを低下させる
ので〔発明3〕および〔発明4〕の対象とするX80級
の高強度鋼管のHAZの硬さを抑制し耐SSC性を高め
る効果があるので、〔発明3〕および〔発明4〕におい
ては0.005%以上としなければならない。0.00
5%未満では明確な効果が得られないからである。しか
し、その含有量が0.05%を超えると、高強度および
低強度の如何によらず母材および溶接部の靭性が劣化す
るので0.05%以下とする。〔発明1〕〜〔発明4〕
において、靭性を確保したうえで十分な耐SSC性を得
るには、0.01〜0.02%とするのが望ましい。
【0066】N:Nについては、とくに制限しないが、
Tiを添加する場合は、やや高め、例えば0.004〜
0.01%とし、またTiを添加しない場合はやや低
め、例えば0.002〜0.006%とするのが望まし
い。Tiを添加する場合は、HAZの軟化を図るためT
iNを積極的に生成させるためであり、Tiを添加しな
い場合は、低強度鋼においてはHAZはあまり硬化せ
ず、Nを低減してHAZの固溶N量を低くしたほうが靭
性が向上するからである。
【0067】2.母材の組織 〔発明1〕および〔発明2〕では、とくに母材の組織は
限定しない。〔発明3〕および〔発明4〕の場合は、つ
ぎのように母材の組織を限定する。X80級以上の高強
度溶接鋼管の母材の組織は、“フェライトとベイナイト
の2相組織”、すなわち“フェライトとベイナイトが均
一に混合した組織”とする。このような組織とすること
により、優れた母材の耐HICおよび耐SSC性が確保
されるからである。このような組織は、上記の母材の化
学組成と後記する製造方法により製造しないと得られな
い。強度を高めるために合金元素を増量すると、“Cが
濃縮した残留オーステナイトの混じった組織”、“中心
偏析部の硬いマルテンサイト組織”、“ブロック状ベイ
ナイト組織”あるいは“パーライトの混じった組織”が
生じやすいが、このような組織では良好な耐HIC性お
よび耐SSC性を得られない。このような組織を避ける
ために後記する製造方法により溶接鋼管母材である鋼板
を製造する。ここで“ブロック状ベイナイト組織”と
は、初析フェライトがオーステナイト粒界から十分成長
した後、Cが濃縮したオーステナイトから生成するベイ
ナイトをいう。
【0068】3.溶接金属 上記したように低pHの硫化水素環境下では、Cr濃度
が高いほど母材および溶接金属ともに腐食速度は大き
い。また、Cr濃度および腐食環境によらず、一般的に
母材よりも溶接金属のほうが腐食速度は大きいので、同
一Cr量の溶接金属および母材が低pHの湿潤硫化水素
に曝されるとき、溶接金属は母材に比べて選択的に腐食
される。このような腐食の不均衡が溶接金属の耐SSC
性を劣化させるので、溶接金属に対して以下の成分制限
を行う(図6〜図8参照)。
【0069】Cr: (イ)母材のCr量(Cr0 )が0.4%超え1%以下
の範囲にある場合、溶接金属のCr量(CrW )は
[(1/2)×Cr0 (%)]以下とする。溶接金属の
Cr量が[(1/2)×Cr0 (%)]を超えて母材の
Cr量に近づくか、等しくなるか、または母材のCr量
を上回ると、図2および図3に示すように低pHの硫化
水素環境下での母材および溶接金属の腐食が大となる。
その結果、溶接金属と母材の腐食速度の不均衡が生じる
と、溶接部の耐SSC性が劣化して、溶接部の割れ発生
限界応力σthが実降伏強さの80%以上とならない。
【0070】溶接金属が低pHの硫化水素環境下で良好
な耐食性および耐SSC性をもちながら同時に、良好な
耐炭酸ガス腐食性をも備えるには、溶接金属のCr量
(CrW )を上記の範囲内で出来るだけ高くすることが
望ましい。例えば、母材のCr量(Cr0 )を0.4〜
0.7%とするとき、溶接金属のCr量(CrW )は、
[(1/2)×Cr0 (%)]以下を満たした上で、で
きるだけ高いこと、すなわち0.15〜0.3%とする
ことが望ましい。
【0071】(ロ)母材のCr量(Cr0 )が0.2%
以上0.4%以下の範囲にある場合、溶接金属のCr量
(CrW )は、[Cr0 (%)−0.2(%)]未満と
する。溶接金属のCr量(CrW )が、[Cr0 (%)
−0.2(%)]以上となり、母材のCr量に近づく
か、等しくなるか、またはそれを超えると、低pHの硫
化水素環境下での腐食速度の絶対値は小さいものの、上
記したように、溶接金属と母材の腐食速度の不均衡が生
じ、それが原因で溶接金属の耐SSC性が劣化する。ま
た、上記したように、耐炭酸ガス腐食性も同時に備える
には、溶接金属のCr量(CrW )は[Cr0 (%)−
0.2(%)]未満であることを満足しつつ、できるだ
け高いことが望ましい。
【0072】〔発明1〕および〔発明3〕においては、
上記した溶接金属のCr量(CrW)のみ限定する。C
r以外のほかの溶接金属の元素は、CaおよびSを除い
て、〔発明1〕および〔発明3〕ともに母材に対して設
定された化学組成範囲と同じとすることが望ましい。た
だし、溶接金属のC量は母材の化学組成範囲内を満足し
ながら、母材よりも低めにするのがよい。急冷凝固した
溶接ままの状態においては、母材と同じC量では硬さが
高くなりすぎて耐SSC性が劣化するからである。
【0073】溶接金属のCaは前述の理由により母材に
対して設定された範囲より低くてもよく、また溶接金属
のSは母材に対して設定されたSの範囲より高くてもよ
い。
【0074】〔発明2〕および〔発明4〕においては、
上記したCrについての限定の他に、溶接金属の耐炭酸
ガス腐食性をさらに向上させるためにCuおよびNiに
ついてつぎのような限定をつけ加える。
【0075】CuおよびNi:CuおよびNiは、図4
に示すように耐炭酸ガス腐食性を向上させ、pHの高い
湿潤硫化水素環境下では水素侵入を抑制して耐HIC性
をも向上させる。また、溶接金属のCuおよびNiを母
材に比べて高くすることは、同時に低pHの硫化水素環
境での耐SSC性も向上させる効果がある。
【0076】〔発明2〕および〔発明4〕においては、
溶接金属のCuおよびNiを適正量増加して耐炭酸ガス
腐食性を向上できるので、低pHの硫化水素環境下での
耐サワー性を向上するために溶接金属のCrを十分下げ
られる利点もある。
【0077】溶接金属のCuとNiの和(CuW +Ni
W )は、母材のそれ(Cu0 +Ni0 )よりも[(1/
10)×{Cr0 (%)−CrW (%)}]以上高くな
ければならない。それ未満の量では、溶接金属の耐炭酸
ガス腐食性は十分でなく、溶接金属が選択腐食を受け溶
接金属の耐SSC性が劣化する。上記したように、この
量は溶接金属および母材のCrが両方とも決まらなけれ
ば決まらないが、最大値は0.1%であり(図8の直線
13)最小値は0.02%である(図8の直線14)。
しかし、溶接金属のCuとNiの和(CuW +NiW
が、母材のそれ(Cu0 +Ni0 )より0.5%(図8
の直線12)を超えて多くなると、耐炭酸ガス腐食性が
飽和するばかりか、耐SCC性が逆に低下するので、母
材のそれを超える量は0.5%以下とする。
【0078】〔発明2〕または〔発明4〕においては、
それぞれ〔発明1〕または〔発明3〕のCrの限定につ
け加えて上記のCuおよびNiの限定を行う。そのほか
の元素は、〔発明1〕または〔発明3〕と同様である。
【0079】4.母材の製造方法 以下において、〔発明3〕および〔発明4〕において、
溶接鋼管の素材である鋼板の組織を“フェライトとベイ
ナイトの2相組織”、すなわち“フェライトとベイナイ
トが均一に混合した組織”とし、降伏強さ551MPa
以上を確保する方法について説明する。
【0080】(1)圧延 スラブ加熱温度は1050〜1250℃とする。105
0℃未満では、炭化物が固溶せず粗大化したままなので
強度が上昇せず、また所定の圧延温度の確保が困難とな
る。一方、1250℃を超えると組織が粗くなり靭性が
確保できない。
【0081】同時に、耐SSC性も劣化するので、12
50℃以下とする。組織が微細なまま高強度を得るに
は、1100〜1200℃とするのが望ましい。
【0082】スラブから溶接鋼管の素材である鋼板への
圧延は、950℃以下で50%以上の圧下率(圧下率=
〔(スラブ厚さ−鋼板厚さ)/スラブ厚さ〕)となるよ
うにする。950℃以下での圧下率が50%未満では、
オーステナイト粒の再結晶による微細化が得られず、そ
の結果微細なフェライト粒が得られず、靭性および耐S
SC性が不十分となる。一層の耐SSC性の向上を得る
には950℃以下での圧下率を60%以上とするのが望
ましい。
【0083】圧延の仕上げ温度はAr3 点以上とする。
仕上げ温度がAr3 点未満では、加速冷却の開始が、初
析フェライトが多量に生成したフェライトとオーステナ
イトの2相域の状態からとなり、“Cの濃縮した残留オ
ーステナイト組織”や“中心偏析部が硬いマルテンサイ
ト組織”や“ブロック状ベイナイト組織”となり耐サワ
ー性が低下する。このような硬化組織をより一層抑制す
るには〔Ar3 点から30℃以上高温〕で仕上げること
が望ましい。
【0084】(2)加速冷却 加速冷却開始は、〔Ar3 点から30℃低い温度〕以上
からとする。〔Ar3点から30℃低い温度〕よりも低
い温度から冷却を始めると、初析フェライトが多量に生
成したフェライトとオーステナイトの2相域からの冷却
となり、“Cの濃縮した残留オーステナイト組織”や
“中心偏析部が硬いマルテンサイト組織”や“ブロック
状ベイナイト組織”となり耐サワー性が低下する。この
ような組織の生成を中心偏析部においても一層抑制する
ためには、加速冷却開始温度はAr3 点以上とするのが
望ましい。加速冷却開始温度の上限は圧延仕上げ温度と
する。
【0085】加速冷却停止温度は、400℃以上550
℃以下とする。550℃を超えると加速冷却時に未変態
のオーステナイトが残るので、偏析部にCが濃縮し、母
材の耐SSC性を損なうパーライト等に変態するので耐
HIC性が低下する。400℃未満では、硬化したブロ
ック状ベイナイトが生成しやすく母材の耐サワー性が低
下する。硬化組織をより完全に避けるには450℃以上
500℃以下とすることが望ましい。
【0086】加速冷却を停止した後は、放冷または徐冷
する。また、この後焼戻ししてもよいし、しなくてもよ
い。
【0087】上記の条件で製造された溶接鋼管の母材で
ある鋼板は、厚鋼板でも、また熱延鋼板、すなわちいわ
ゆるホットコイルでもよい。ホットコイルの場合は、加
速冷却停止した後は巻取られ、コイルの状態で徐冷さ
れ、通常、焼戻しは行われない。ホットコイルは、厚鋼
板よりも幅が狭いので大径鋼管に加工し溶接する場合、
スパイラル溶接鋼管か、あるいはダブルシームの溶接鋼
管とする場合が多い。
【0088】5.製管 上記の方法で製造された鋼板は、管状に加工を受けた
後、SAWによって溶接鋼管とされる。製管方法は、厚
鋼板に対してUプレスおよびOプレスを施し加工するU
O法、熱延鋼板をスパイラル状に溶接するスパイラル法
および狭幅の熱延鋼板または厚鋼板を加工したものを2
枚合わせ、2本の縦シームをもつ鋼管とするダブルシー
ム法のいずれでもよい。
【0089】図9(a)は、溶接前の開先の形状を、ま
た、図9(b)は、溶接後の溶接線垂直断面を表す図面
である。同図において、溶接金属21は、溶接に際して
溶解した開先近傍の母材および溶接材料から移行した分
により構成されることが分かる。溶接材料から溶接金属
に移行した分を、とくに“溶着金属”という。HAZ2
2は、溶接による熱影響は受けるが、水素などの特殊な
元素を除いて、化学組成は母材23の組成そのものであ
る。
【0090】溶接金属のCrを母材に比べて低くするに
は、それに見合ったCr濃度の溶接材料を用いなければ
ならない。SAWでは、溶接金属の元素量は、母材の寄
与が4割〜6割、また“溶着金属”の寄与が6割〜4割
となる。したがって、 〔溶接金属のCr濃度(%)〕 =〔母材のCr濃度(%)〕×(0.4〜0.6) + 〔溶接材料のC r濃度(%)〕×(0.6〜0.4)・・・・・・・・・・・(A) なる式において、母材および溶接金属のCr濃度を設定
すると、使用すべき溶接材料のCr濃度を算出でき、使
用すべき溶接材料を選択することができる。すなわち、
母材と溶接材料の比重は同一とみてよいので、溶接金属
の4〜6割は母材から移行したものであり、また、溶接
金属の6〜4割は“溶着金属”である。Crあるいは後
記するCuおよびNiは溶接中に大気中に消失すること
がない。
【0091】溶接金属のCuおよびNiを高めるには、
CuおよびNiともに4〜6割が母材から、また6〜4
割が溶接材料から移行するとして、同様の方法により使
用すべき溶接材料のCu量およびNi量を算出し、適当
な規格の溶接材料を選定することができる。
【0092】溶接鋼管の降伏強さは、溶接部を含んだ部
分の降伏強さをいうが、通常は溶接部は母材よりも高い
強度となるように溶接材料を選定するので、母材の降伏
強さを溶接鋼管の降伏強さとして採用する。〔発明3〕
および〔発明4〕では、降伏強さは551MPa(AP
I規格X80の規格最小降伏強さ)以上でなければなら
ない。
【0093】溶接の入熱は、大きいほうが溶接能率から
も、またHAZの硬さ低減からも望ましいが、あまり大
きくし過ぎると、HAZの靭性が劣化するので、20〜
150kJ/cmとするのがよい。
【0094】上記はSAWの場合の溶接鋼管のシーム溶
接の場合の説明である。溶接鋼管を使用する際には溶接
鋼管どうしを溶接する円周溶接を行わなければならな
い。円周溶接は通常、ガスメタルアーク溶接(GMA
W)により行う。GMAWは、通常、入熱15〜50k
J/cmで行うため、母材のとけ込みは小さいので上記
の(A)式において、母材の寄与は0.3〜0.5(S
AWでは0.4〜0.6)、溶接材料の寄与は0.7〜
0.5(SAWでは0.6〜0.4)として計算する。
【0095】
【実施例】表1〜表4は、それぞれ〔発明1〕〜〔発明
4〕の実施の効果を示すために区分けした、溶接鋼管母
材の化学組成の一覧表である。すなわち、例えば、表1
は〔発明1〕の実施の効果を示すために用いた溶接鋼管
母材の一覧表である。
【0096】表5は、これらの溶接鋼管母材を製造する
圧延および熱処理条件を示す一覧表である。比較例の鋼
Iは、母材の化学組成に関しては〔発明3〕の範囲内に
入るが、組織がフェライトとマルテンサイトの2相組織
であるので、母材組織に関して〔発明3〕の範囲外の母
材である。また、鋼A〜鋼Eは組織は、フェライトとベ
イナイトの2相組織ではないものの、〔発明1〕におい
ては組織をとくに限定しないので、組織に関しては〔発
明1〕の範囲外のものではない。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】表6〜表9は、UプレスおよびOプレスを
経て突き合わされた上記の溶接鋼管母材のエッジ部を縦
シームSAWする際に用いた溶接ワイヤの組成、SAW
の結果形成された溶接金属の組成などを示す一覧表であ
る。これら表6〜表9は、それぞれ〔発明1〕〜〔発明
4〕の実施の効果を説明するための溶接金属に対応す
る。これらの表には、それぞれの発明において限定した
溶接金属の合金元素のみが表示されているが、他の合金
元素はそれぞれの試番の対応する鋼(母材)とほぼ同じ
である。縦シームを形成するSAWは、溶接入熱40k
J/cmの両面一層溶接であり、製造した溶接鋼管の寸
法は、径36インチ(914.4mm) ×肉厚1インチ(25.4mm)
である。これら表6〜9の「溶接金属−母材」の欄に、
CrおよびCu+Niに関して溶接金属と母材の組成の
差を示す。
【0103】
【表6】
【0104】
【表7】
【0105】
【表8】
【0106】
【表9】
【0107】図10(a)は、耐SSC性を評価するた
めに用いた試験片を、また、図10(b)はその採取位
置を表す図面である。図示するように、試験片の形状は
丸棒であり、管内面側より溶接金属部が試験片平行部中
央に位置するように採取した。負荷応力は、母材の実Y
S(降伏強さ)の80%とした。試験溶液はNACET
M0177−90(Test Method by National Associat
ion of Corrosion Engineering)に規定されるNACE
TM0177浴(0.5%酢酸+5%食塩水、1気圧
硫化水素飽和、25℃)とした。720hの試験期間中
に破断しなかったものを耐SSC性良好とした。
【0108】図11(a)は耐食性を評価するために用
いた試験片を、また、図11(b)はその採取位置を表
す図面である。試験片は、厚さ3mm、幅10mm、長
さ40mmの板状試験片とした。耐SSC性試験片と同
様に、溶接部から溶接金属が中央に位置するように管内
表面から試験片を採取した。評価は、母材部の全面腐食
速度と溶接部の選択腐食深さにより評価した。母材部の
全面腐食速度は、脱スケール後の腐食減量を単位時間単
位面積あたりに換算して求めた。溶接部の選択腐食深さ
は、脱スケール後に、孔食深さ測定用のマイクロメータ
ーで、溶接金属部と母材部の肉厚差から求めた。母材部
の孔食深さのほうが溶接金属部のそれより深い場合は、
後記する表10〜13においてマイナス(−)の値とし
て表示した。試験溶液は硫化水素環境としてNACE
TM0177浴を、炭酸ガス環境として1気圧CO
で飽和させた50℃の人工海水の2種類とした。なお、
96hの試験期間中試験溶液は常に撹拌した。
【0109】表10〜表13は、上記の耐SSC性と耐
食性を評価した結果を表す一覧表である。表10〜表1
3は、それぞれ〔発明1〕〜〔発明4〕の実施の効果を
説明するものである。これらの表に記載した鋼管強度は
溶接鋼管母材の引張試験によって求めたものである。降
伏強さの“551MPa”の応力値は“79.9ks
i”に相当する。
【0110】
【表10】
【0111】
【表11】
【0112】
【表12】
【0113】
【表13】
【0114】鋼E(表1)、鋼I〜K(表3)および鋼
N(表4)を用いた試番9(表10)、試番20〜22
(表12)および試番30(表13)は、母材部の耐S
SC性が良好でなかった。鋼Eと鋼Nは母材のCr量が
1%超、高強度の溶接鋼管を対象とする鋼Iはフェライ
ト−マルテンサイト2相組織鋼(表5参照)、また、鋼
Jは母材のC量が高すぎ、鋼Kは母材のMn量が高すぎ
るからである。
【0115】母材のCr量が本発明の範囲に満たない鋼
C、D(表1)および鋼G(表2)を用いた試番7、8
(表10)および試番13(表11)は、耐SSC性と
NACE TM0177浴中における耐食性は良好であ
るが、CO 環境における母材部の全面腐食速度が4
mm/年以上と他の例に比べて著しく高い。
【0116】これに対して、母材のCr量が0.2〜1
%の、本発明範囲内の鋼A、B(表1)、鋼F(表2)
および鋼H(表3)〜鋼M(表4)を用いた試番1〜6
(表10)、10〜12(表11)および14(表1
2)〜29(表13)は、炭酸ガス中で、Cr量が高い
ほど全面腐食速度は小さく、2mm/年以下と良好であ
る。とくに、Cr量が0.5%程度以上の鋼B、Fおよ
びH〜Mを用いた試番4〜6、10〜12および14〜
29は、全面腐食速度が約1mm/年以下と良好であ
る。また、Cr量に関わらず、CuとNiを含む鋼F、
LおよびMを用いた試番10〜12、23〜28および
29は、図4に示したようにCuとNiのいずれも含ま
ない鋼A、BおよびH〜Kを用いた試番1〜6および1
4〜22よりも腐食速度が低めである。
【0117】溶接金属においてそのCr量が母材のCr
量の1/2以下または(母材のCr量−0.2)%未満
で、同時に母材のCrが0.2〜1%の試番1〜6(表
6、表10)、10〜12(表7、表11)、14〜2
2(表8、表12)および23〜29(表9、表13)
は、溶接金属の(Cu+Ni)量が母材部のそれより
0.1〜0.5%高い試番2、5(表6、表10)、1
0(表7、表11)、16、17(表8、表12)、2
3、24および29(表9、表13)では、溶接部の選
択腐食深さがCO 環境においては0.1mm未満、
NACE TM0177浴中においては0.11mm以
下に抑えられる。これに対して、試番1、4(表6、表
10)、14、15(表8、表12)、20〜22(表
9、表12)のようにCuとNiをともに含まないもの
は、溶接部の選択腐食深さがNACE TM0177浴
中においては0.10mm以下に抑えられるが、CO
環境において0.1mmを超える。
【0118】母材と溶接金属のCr量を揃えるほうが、
CO2 環境における選択腐食を抑え易いが、CuとNi
を適正量含有させることによっても効果がある。したが
ってサワー環境も考慮すると、溶接金属中のCuとNi
の和を母材よりも高めることが必要である。
【0119】NACE TM0177浴中においては、
母材のCrが高いほど母材の全面腐食は大きい。ただ
し、CuとNiを含むものは、図3に示した傾向と同様
に腐食速度が低い。
【0120】また、試番3、6(表6、表10)、12
(表7、表11)、18(表8、表12)および27
(表9、表13)のように、NACE TM0177浴
中では溶接金属中のCr量が高いほど選択腐食深さが大
きく、これが溶接部の耐SSC性の良くない理由の1つ
と考えられる。また、試番11、12(表7、表11)
および26、27(表9、表13)のように溶接金属の
(Cu+Ni)量が低く本発明(〔発明2〕あるいは
〔発明4〕)の範囲に入らないものも溶接部の耐SSC
性は良くない。逆に、試番19(表8、表12)および
28(表9、表13)は、溶接金属の(Cu+Ni)量
が母材よりも0.5%を超えて高いので溶接部にSSC
による破断を生じた。試番2、5(表6、表10)、1
0(表7、表11)、16、17(表8、表12)、2
3〜25(表9、表13)および29(表9、表13)
のように、溶接金属の(Cu+Ni)量が、母材よりも
高いものは選択腐食が抑えられている。したがって、耐
SSC性の観点からも溶接金属の(Cu+Ni)量を、
0.5%以下の範囲で母材より高める必要がある。
【0121】
【発明の効果】本発明は、耐HIC性、耐SSC性およ
び耐炭酸ガス腐食性のいずれにも優れた溶接鋼管、とく
にAPI規格X80級の高強度溶接鋼管を提供するもの
であり、石油および天然ガス関連産業等にとってきわめ
て有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、原油あるいはガスの採掘、輸送および
精製時に遭遇する環境で発生する問題、およびそれらに
対処するため溶接鋼管母材である鋼板にとった従来の対
策をまとめた図面である。
【図2】図2は、低pHの硫化水素環境であるNACE
TM0177浴中での母材の腐食速度に及ぼす母材の
Cr量(Cr0 )の影響を表す図面である。
【図3】図3は溶接金属における選択腐食深さに及ぼす
CrW の影響を表す図面である。
【図4】図4は、湿潤炭酸ガス環境での母材の腐食速度
に及ぼすCr0 、Cu0 およびNi0 の影響を表す図面
である。
【図5】図5は、湿潤炭酸ガス中での溶接金属の選択腐
食深さに及ぼす(CrW −Cr0 )の影響を表す図面で
ある。
【図6】図6は、溶接鋼管の母材および溶接金属におけ
る本発明の要旨をまとめた図面である。
【図7】図7は、本発明(〔発明1〕〜〔発明4〕にお
ける溶接金属のCr量(CrW)と母材のCr量(Cr
0 )の範囲を表す図面である。
【図8】図8は、〔発明2〕および〔発明4〕における
溶接金属のCuとNiの和(CuW +NiW )と母材の
CuとNiの和(Cu0 +Ni0 )の範囲を表す図面で
ある。
【図9】図9(a)は、溶接前の開先の形状を、また、
図9(b)は、溶接後の溶接線垂直断面を表す図面であ
る。
【図10】図10(a)はSSC試験片の形状を、また
図10(b)は同試験片の採取位置を表す図面である。
【図11】図11(a)は腐食試験片の形状を、また図
11(b)は同試験片の採取位置を表す図面である。
【符号の説明】 1…本発明の溶接鋼管の溶接金属および母材のCr量の
範囲、 2…CrW (%)=(1/2)×Cr0 (%)の関係を
あらわす直線 3…CrW (%)=CrW (%)−0.2の関係をあら
わす直線(点線) 4…Cr0 (%)=1をあらわす直線 5…CrW (%)=Cr0 (%) をあらわす直線(一
点鎖線) 11…本発明の溶接鋼管の溶接金属および母材のCuと
Niの和の範囲(すなわち、CuW (%)+Ni
W (%)とCu0 (%)+Ni0 (%)の範囲) 12…CuW (%)+NiW (%)=Cu0 (%)+N
0 (%)+0.5 をあらわす直線 13…CuW (%)+NiW (%)=Cu0 (%)+N
0 (%)+(1/10)×{(Cr0 (%)−CrW
(%))の最大値)}=Cu0 (%)+Ni0 (%)+
0.1をあらわす直線(点線) 14…CuW (%)+NiW (%)=Cu0 (%)+N
0 (%)+(1/10)×{(Cr0 (%)−CrW
(%))の最小値}=Cu0 (%)+Ni0 (%)+
0.02をあらわす直線(破線) 15…CuW (%)+NiW (%)=Cu0 (%)+N
0 (%)をあらわす直線(一点鎖線) 21…溶接金属、 22…溶接熱影響部(HAZ)、 23…母材(鋼板)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−110071(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.02〜0.15%、S
    i:0.01〜0.5%、Mn:0.1〜2%、P:
    0.015%以下、S:0.002%以下、Cr:0.
    2〜1%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜0.7%、
    Mo:0〜0.3%、Nb:0〜0.1%、V:0〜
    0.1%、Ti:0〜0.05%、Al:0.005〜
    0.1%およびCa:0.0005〜0.005%を含
    み残部Feおよび不可避的不純物の化学組成を有する母
    材と、母材のCrに対してそのCrが下記の(イ)また
    は(ロ)の範囲にある溶接金属とからなることを特徴と
    する耐サワー性と耐炭酸ガス腐食性とに優れた溶接鋼
    管。Crを母材のCr量とし、Crを溶接金属のC
    r量とするとき、 (イ)Crが0.4%超え1%以下の場合: Cr(%)≦(1/2)×Cr(%) (ロ)Crが0.2%以上0.4%以下の場合: Cr(%)<Cr(%)−0.2
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.02〜0.15%、S
    i:0.01〜0.5%、Mn:0.1〜2%、P:
    0.015%以下、S:0.002%以下、Cr:0.
    2〜1%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜0.7%、
    Mo:0〜0.3%、Nb:0〜0.1%、V:0〜
    0.1%、Ti:0〜0.05%、Al:0.005〜
    0.1%およびCa:0.0005〜0.005%を含
    み残部Feおよび不可避的不純物の化学組成を有する母
    材と、母材のCrおよびCuとNiの和に対してそのC
    rおよびCuとNiの和が下記(イ)または(ロ)の範
    囲にある溶接金属とからなることを特徴とする耐サワー
    性と耐炭酸ガス腐食性とに優れた溶接鋼管。Cr、C
    およびNiを、母材のCr量、Cu量およびNi
    量とし、Cr、CuおよびNiを、溶接金属のC
    r量、Cu量およびNi量とするとき、 (イ)Crが0.4%超え1%以下の場合: Cr(%)≦(1/2)×Cr(%) Cu(%)+Ni(%)+(1/10)×{Cr
    (%)−Cr(%)} ≦Cu(%)+Ni(%) ≦Cu(%)+Ni(%)+0.5 (ロ)Crが0.2%以上0.4%以下の場合: Cr(%)<Cr(%)−0.2 Cu(%)+Ni(%)+(1/10)×{Cr
    (%)−Cr(%)} ≦Cu(%)+Ni(%) ≦Cu(%)+Ni(%)+0.5
  3. 【請求項3】重量%で、C:0.03〜0.07%、S
    i:0.01〜0.5%、Mn:0.7〜1.3%、
    P:0.015%以下、S:0.002%以下、Cr:
    0.2〜1%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜0.7
    %、Mo:0〜0.3%、Nb:0〜0.1%、V:0
    〜0.1%、Ti:0〜0.05%、Al:0.005
    〜0.1%およびCa:0.0005〜0.005%を
    含み残部Feおよび不可避的不純物の化学組成を有し、
    フェライトとベイナイトの2相組織からなる母材と、母
    材のCrに対してそのCrが下記の(イ)または(ロ)
    の範囲にある溶接金属とからなり、降伏強さ551MP
    a以上であることを特徴とする耐サワー性と耐炭酸ガス
    腐食性とに優れた溶接鋼管。Crを母材のCr量と
    し、Crを溶接金属のCr量とするとき、 (イ)Crが0.4%超え1%以下の場合: Cr(%)≦(1/2)×Cr(%) (ロ)Crが0.2%以上0.4%以下の場合: Cr(%)<Cr(%)−0.2
  4. 【請求項4】重量%で、C:0.03〜0.07%、S
    i:0.01〜0.5%、Mn:0.7〜1.3%、
    P:0.015%以下、S:0.002%以下、Cr:
    0.2〜1%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜0.7
    %、Mo:0〜0.3%、Nb:0〜0.1%、V:0
    〜0.1%、Ti:0〜0.05%、Al:0.005
    〜0.1%およびCa:0.0005〜0.005%を
    含み残部Feおよび不可避的不純物の化学組成を有し、
    フェライトとベイナイトの2相組織からなる母材と、母
    材のCrおよびCuとNiの和に対してそのCrおよび
    CuとNiの和が下記の(イ)または(ロ)の範囲にあ
    る溶接金属とからなり、降伏強さ551MPa以上であ
    ることを特徴とする耐サワー性と耐炭酸ガス腐食性とに
    優れた溶接鋼管。Cr、CuおよびNiを、母材
    のCr量、Cu量およびNi量とし、Cr、Cu
    よびNiを、溶接金属のCr量、Cu量およびNi量
    とするとき、 (イ)Crが0.4%超え1%以下の場合: Cr(%)≦(1/2)×Cr(%) Cu(%)+Ni(%)+(1/10)×{Cr
    (%)−Cr(%)} ≦Cu(%)+Ni(%) ≦Cu(%)+Ni(%)+0.5 (ロ)Crが0.2%以上0.4%以下の場合: Cr(%)<Cr(%)−0.2 Cu(%)+Ni(%)+(1/10)×{Cr
    (%)−Cr(%)} ≦Cu(%)+Ni(%) ≦Cu(%)+Ni(%)+0.5
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