JPH08224628A - 熱可塑性樹脂ラミネート鋼板製押しボタン型易開缶性蓋の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂ラミネート鋼板製押しボタン型易開缶性蓋の製造方法

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JPH08224628A
JPH08224628A JP7033247A JP3324795A JPH08224628A JP H08224628 A JPH08224628 A JP H08224628A JP 7033247 A JP7033247 A JP 7033247A JP 3324795 A JP3324795 A JP 3324795A JP H08224628 A JPH08224628 A JP H08224628A
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JP
Japan
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resin film
thickness
temperature
steel sheet
guide groove
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JP7033247A
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Hiroshi Nishida
浩 西田
Yashichi Oyagi
八七 大八木
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、特定された樹脂皮膜特性を有する
鋼板を、押圧加工により切断案内溝を形成させ、内外面
の補修塗装の不要な、開缶性・フェザー性の優れた押し
ボタン型易開缶性蓋を得ること。 【構成】 開口片形状を構成する切断案内溝形成用上下
金型の肩半径が、0.05〜1.0mmである金型を用
い、上下金型の該肩半径にて、厚さ10〜100μ、伸
び200%以上、結晶化度10%以下で結晶融解熱10
Joul/g以上の結晶性飽和ポリエステル系樹脂皮膜
を両面に有する鋼板を該ポリエステル系樹脂皮膜温度が
該ポリエステル系樹脂皮膜のガラス転移点Tg以上、冷
結晶化温度以下で押圧加工成形し、加工最薄部の鋼板厚
みを加工前の鋼板厚みの40%以下に薄くすることによ
り切断案内溝を形成し、更にその後の製蓋工程あるいは
製缶工程において少なくとも切断案内溝周辺部の樹脂皮
膜温度を樹脂皮膜の冷結晶化開始温度以上融点以下とす
る加熱熱処理することを特徴とする熱可塑性樹脂ラミネ
ート鋼板製押しボタン型易開缶性蓋の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属容器蓋、特に缶蓋
の一部あるいはほぼその全面を人手により容易に開口で
きる易開缶蓋に関するものであり、飲料缶あるいは一般
食缶その他の幅広い用途に使用される。
【0002】
【従来の技術】容器蓋の一部あるいはほぼその全面を人
手により容易に開口できる易開缶蓋は、この原理を応用
した取っ手を付設したものと、取っ手が無く人間が指の
力で直接押し破り開缶するものの2つに大別できる。取
っ手付き型は、取っ手と開口片を引きちぎり缶本体と分
離されるテアーオフ方式と、取っ手および開口片共に開
缶後も缶本体に固着されたまま残るステイオンタブ方式
が実用化されている。両方式とも、殆どの易開缶蓋は製
造技術上の理由からアルミニウム板で製造されており、
一部の限られた用途に鋼板が使用されている現状にあ
る。
【0003】取っ手付き型易開缶蓋の従来技術の代表例
としては、塗装されたアルミニウム板あるいは鋼板を素
材とし、基本的な蓋形状に打抜き後、蓋本体を平らな下
型上にのせ、その上面より所要の輪郭形状を有する尖鋭
刃を押圧して、その刃先を蓋本体内へ食い込ませること
により、図5に示すように断面V字形の切断案内溝3で
囲まれる開口片形状を形成していた。切断案内溝の形成
に関しては、加工前の板厚の半分〜2/3程度に達する
尖鋭刃の激しい押圧が必要であり、かつこの切断案内溝
の深さが非常に重要となる。即ち、切断案内溝の深さ
が、浅すぎる場合には開缶性不良、深すぎる場合には外
部よりのショックに対する衝撃強度不足等をもたらすた
め、相当の精度が必要とされていた。従って、加工用工
具にも相当の精度が要求されるが、尖鋭刃の激しい押圧
が必要であるため、工具寿命が問題とされる。特に鋼板
においては、工具寿命が保たない問題点があった。
【0004】又、内容物に対する耐食性の確保あるいは
外面錆の発生防止のため、切断案内溝部の加工により金
属面が露出した部分には補修塗装が必要とされている。
工具寿命の延長対策としては、特開昭55−70434
号公報、特開昭57−175034号公報等に見られる
ごとく、複合押出し成形により切断案内溝を構成する方
法が提案されている。この公知の方法は、鋼板の使用を
前提としてなされたものであり、工具寿命の延長には有
効な方策であったが、切断案内溝部の断面構造が複雑な
ため、通常のスプレー塗装法では切断案内溝内の全ての
部位に塗料が行き渡らず、補修塗装を行っても十分な耐
食性が得られない欠点があった。また、取っ手無し型
は、押しボタン型に代表され、成形された開口片を人が
直接指で押すことによって、開口片の周辺部が押し破ら
れて開口部が作り出されるものである。
【0005】従来技術としての取っ手無し型の押しボタ
ン型易開缶蓋の代表例としては、塗装あるいは熱可塑性
樹脂積層鋼板を素材とし、基本的な蓋形状に打抜き後、
開缶時に開口片が本体側に固着されるように一部切断し
ない部分を残し、開口部分が切断される。このとき、開
口片は開口部よりわずかに径が大きくなるように、かつ
缶内面側に切り出される。開口片の径が開口部より大き
く、かつ缶内面側にあることによって、缶内圧力によっ
て、開缶しないようにするためである。この様な開口部
を大小2個成形する。その後、切断された開口部と開口
片は、密閉性、内容物に対する耐食性の確保及び外面錆
の発生防止のため、内面側は熱可塑性樹脂によるシール
によって開口片と開口部の接着補修が、また、外面側は
補修塗装が必要とされる。開缶時は、小さな力で押すこ
とにより開缶できる小径の開口部を先に開缶した後、大
径の開口部を開口させる。内容物の流し出しには大径の
開口部を利用し、小径の開口部は空気穴として利用され
る。押しボタン型は、欧州で鋼板製のものが実用化され
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のごとく、従来の
易開缶蓋は、開口案内溝を成形後に補修塗装の必要があ
る。さらに、従来の取っ手無し型の易開缶蓋は、製造途
中で一度、開口片と開口部を切断するため、シール接着
及び補修塗装を行う必要がある。塗装を行うことは、焼
付け工程が煩雑であるばかりでなく、焼付けのため長時
間の加熱が必要であり、焼付け工程中で塗料中に含まれ
る多量の溶剤が排出されるため、公害面から排出溶剤を
特別な焼却炉で焼却しなければならないという問題点を
有している。さらに、塗装焼付けにおける加熱、溶剤の
焼却は、二酸化炭素を排出させるために、地球環境上か
らも問題である。また、リサイクルに関して、金属缶に
おいても、缶胴と缶蓋が同一素材より形成された、いわ
ゆる″モノメタル缶″がリサイクルに適した商品といえ
るが、これに対して、現在の易開缶蓋はほとんどがアル
ミニウム製である。一方、缶胴および易開缶蓋を除く缶
蓋はほとんど鋼板製である。このため、開缶性に優れ、
内外面の補修塗装不要な、耐食性の優れた、鋼板製易開
缶蓋を、生産性良く製造可能な方策の出現が熱望されて
いる所である。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、以上の課題を
解決するためになされたものであり、缶蓋の開口片縁を
構成する切断案内溝形成用の肩半径が0.05〜1.0
mmである上下金型で、厚さ10〜100μm、伸び2
00%以上、結晶化度10%以下、結晶融解熱10Jo
ul/g以上の結晶性飽和ポリエステル系樹脂皮膜を両
面に有する鋼板を押圧加工成形し、加工最薄部の鋼板厚
みを加工前鋼板厚みの40%以下とし、さらに必要に応
じて押戻し加工を行って切断案内溝を形成することを特
徴とする熱可塑性樹脂ラミネート鋼板製押しボタン型易
開缶性蓋の製造方法であって、さらに必要に応じて、押
圧加工成形と押し戻し加工の片方または両方を前記結晶
性飽和ポリエステル系樹脂皮膜のガラス転移点温度〜冷
結晶化温度で行うことと、少なくとも切断案内溝周辺部
の樹脂皮膜を該樹脂皮膜の冷結晶化開始温度〜融点の温
度に加熱熱処理することの、少なくとも一方を行うもの
である。
【0008】以下に本発明を詳細に説明する。本発明は
素材と加工方法とを組み合わせることにより達成される
発明である。先ず素材について説明する。本発明に使用
される鋼板は、通常、板厚t0 :0.080〜0.25
0mmの範囲にあり、硬度(HR30T)46〜68、伸
び:10〜60%程度の機械的性質を有するものが使用
される。この鋼板の表面に、Sn,Cr,Ni,Al,
Znの1種または2種以上の金属めっきを行い、クロメ
ート処理皮膜の上に、製蓋加工後の補修塗装を不要にす
るために密着性・加工性・耐食性に優れる樹脂皮膜が積
層される。具体的に用いられる鋼板としては、付着量
0.5〜3.0g/m2 の錫めっき後化成処理を施した
錫めっき鋼板、付着量0.3〜2.0g/m2 のニッケ
ルめっき後化成処理を施したニッケルめっき鋼板、Sn
及びNi付着量として各々0.5〜2.0g/m2
0.01〜0.5g/m2 をNi、Snの順にめっき後
化成処理を施したSn/Niめっき鋼板、金属Cr付着
量50〜200mg/m 2 、酸化Cr5〜30mg/m
2 の通常TFS(Tin Free Steel)と呼
ばれているクロム・クロメート処理鋼板などがある。
【0009】上述の鋼板の両面上の積層樹脂は、厚み1
0〜100μm、伸び200%以上、結晶化度10%以
下で結晶融解熱10Joul/g以上の結晶性飽和ポリ
エステル系樹脂皮膜である。この樹脂皮膜は、押圧成形
による切断案内溝の加工時に、密着性よく素地に追随し
皮膜自体も優れた加工性を有することにより、加工後も
素地を完全に被覆しており、従来必要であった補修塗装
を不要とする重要な存在である。又、開缶時に、切断案
内溝の切り口端面に、樹脂のみが局部的に残存(膜残り
現象、以下フェザーと称す)し、外観的な印象を損なう
ことを防ぐために、特定の樹脂を使用する必要がある。
【0010】本発明での結晶性飽和ポリエステル系樹脂
とは、ジカルボン酸とジオールの縮重合で得られる線状
熱可塑性ポリエステルであり、ポリエチレンテレフタレ
ートで代表されるものである。ジカルボン酸成分として
は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、アジピン
酸、セバチン酸、アゼライン酸、2,6−ナフタレンジ
カルボン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン
酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの単独または混合
物であり、ジオール成分としては、エチレングリコー
ル、ブタンジオール、デカンジオール、ヘキサンジオー
ル、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール
などの単独あるいは混合物である。2種以上のジカルボ
ン酸成分やジオール成分による共重合体や、ジエチレン
グリコール、トリエチレングリコールなどの他のモノマ
ーやポリマーとの共重合体であっても良い。さらに、本
発明で使用される金属板樹脂皮膜に、必要に応じ、可塑
剤・酸化防止剤・熱安定剤・無機粒子・顔料・有機滑剤
などの添加剤を配合することが行われる。
【0011】本発明に用いるラミネート鋼板の樹脂皮膜
の厚みを10〜100μとした理由は、後述する押圧加
工によって鋼板とともに樹脂皮膜も薄く成形されること
から、10μ未満では特に加工部での樹脂皮膜のバリア
ー性(耐食性、耐錆性)が確保されないためであり、1
00μ超では、樹脂皮膜のバリアー性に対して効果が飽
和し、経済的に不利を招くためである。性能の安定性・
経済性等を考慮した場合16〜60μ範囲のものが特に
有効である。本発明に用いるラミネート金属板上の積層
樹脂の必要物性として、破断伸びが200%以上かつ結
晶化度10%以下であることが重要である。破断伸び2
00%未満あるいは結晶化度5%超では、後述する押圧
加工時の薄肉部成形に対し伸び不足により、樹脂皮膜に
多数の欠陥を生じることになり好ましくない。さらに好
ましくは250%以上の伸びを有する皮膜が好ましい。
なお、積層樹脂皮膜の伸び特性は、素地より樹脂皮膜を
剥離し、JIS C2318に準じた方法で測定され
る。
【0012】なお、本発明でいう結晶化度とは次の手順
で測定した値である。 (1)樹脂層についてのX線回折強度を2θ=5〜40
の範囲で測定する。 (2)2θ=10,2θ=35におけるX線回折強度曲
線を直線で結び、ベースラインとする。 (3)樹脂層と同一樹脂を溶融後液体窒素中に投入する
などの手段により、ほぼ完全非晶質と考えられる試料と
し、これについて(1)と同一条件でX線回折強度を測
定する。 (4)(1)で得た回折強度線の結晶回折ピークのすそ
をなめらかな曲線で結ぶ。なお、その曲線の形状は
(3)で測定した非晶質試料の回折強度曲線と相似形に
なるようにする。 (5)(2)のベースラインと(4)の曲線に囲まれた
部分の面積をIa、(1)の回折強度曲線に囲まれた部
分の面積をIcとする。 (6){Ic/Ia+Ic}×100を結晶化度とす
る。
【0013】さらに、本発明に用いるラミネート金属板
上の積層樹脂の必要物性として、結晶融解熱が10Jo
ul/g以上であることが重要である。これまでの発明
者の知見から、後述する押圧加工によって得られる易開
缶性蓋においては、少なくとも切断案内溝周辺の缶内外
面の樹脂皮膜を、結晶化度20%以上、伸び100%以
下にしなければ、開缶時のフェザーリング問題が発生す
る。即ち、開口片を押し込んで開缶した場合、切断案内
溝周辺の樹脂皮膜を、結晶化度20%未満或いは伸び1
00%超では、切り口部に膜の破断片が目立ち、外観的
な不快感を与える。押圧加工における加工性について
は、ラミネート金属板の皮膜は低結晶化度と高い伸び性
とが必要である。一方、フェザーリングに関しては、高
結晶化度と低い伸び性とが必要であり、矛盾を生じるこ
とになる。
【0014】そこで、押圧加工前では、低結晶化度と高
い伸び性とを有する皮膜を、押圧加工後に、少なくとも
切断案内溝周辺の缶内外面の樹脂皮膜物性を加熱、冷結
晶化させることにより、高結晶化度と低い伸び性へと変
えることにより、この矛盾を解決した。種々検討を行っ
た結果、破断伸びが200%以上かつ結晶化度10%以
下の物性を有するポリエステル樹脂系皮膜を加熱によっ
て効率よく結晶化度20%以上、伸び100%以下とす
るには、樹脂皮膜物性として、結晶融解熱が10Jou
l/g以上必要であることを見いだした。
【0015】本発明における樹脂の結晶融解熱は、樹脂
を予め樹脂の融点+30℃まで加熱し、5分間保持溶融
した後、10℃/分の降温速度で30℃以下に冷却した
ものを試料として、示差走査熱量計(DSC)で10℃
/分の昇温速度で測定し、結晶の融解を示すピークの大
きさ(面積)が結晶融解熱(ΔHf)である。この結晶
融解熱はJoul/gで表され、これが大きいことは結
晶性の強い樹脂であることを示している。なお、ここで
の融点とは、示差走査熱量計(DSC)で10℃/分の
昇温速度で測定して得られる結晶融解を示す吸熱ピーク
の吸熱量が最大値となる温度を言う。
【0016】次に、加工方法について説明する。開口部
を形成するにあたり、従来技術による尖鋭刃の押圧方式
或いは剪断加工では、樹脂皮膜を破断させ成形後の補修
塗装を必要とするため好ましくない。本発明者らは、鋼
板及び樹脂皮膜を破断させることなく易開缶性を保障す
る切断案内溝を形成する加工方法として、開口片形状を
構成する切断案内溝形成用上下金型の肩半径が、0.0
5〜1.0mmである金型を用い、図2に示すように上
下金型の該肩半径部分にて、上述の両面を樹脂被覆され
た鋼板を該樹脂皮膜温度が該樹脂のガラス転移点以上冷
結晶化温度以下の温度に加熱し押圧加工成形し、加工最
薄部の金属厚みを加工前の金属厚みの40%以下に薄く
することにより切断案内溝を形成する方法が最適である
ことを見いだしたのである。
【0017】切断案内溝形成用上下金型の肩半径を、
0.05〜1.0mmとした理由について述べる。肩半
径0.05mmより小さい場合には、肩半径の部分が鋭
いために加工時に被加工素材のラミネート樹脂皮膜を疵
付けたりあるいは破断してしまう。また、1.0mm超
の条件で押圧加工を行うと、素材は、幅広い部分で押圧
される。この押圧部分においては、加工により金属と樹
脂との密着性が悪くなる。必要以上に密着不良部分を形
成する事は、フェザーを招く原因となる。また、塗膜の
密着不良部は耐食性の面からも好ましくない。
【0018】加工時の皮膜温度を皮膜樹脂のガラス転移
点以上冷結晶化温度以下とした理由について述べる。加
工時の皮膜温度がガラス転移点Tg未満では、加工時の
衝撃により、樹脂皮膜に微細な亀裂が発生することがあ
り、この微細亀裂が耐食性上の問題を引き起こすことが
ある。また、冷結晶化温度超では樹脂皮膜が結晶化す
る。結晶化した皮膜は伸びが低下し加工に追随できなく
なり、皮膜欠陥を生じる。このため、加工時の皮膜温度
をポリエステル系樹脂皮膜のガラス転移点Tg以上、冷
結晶化温度以下の範囲とする。さらに好ましくは、ポリ
エステル系樹脂皮膜のガラス転移点Tg+10℃以上、
冷結晶化温度−10℃以下の範囲とする。
【0019】加工の際、開口片周縁部は、望みの厚みに
到達するように上下金型の間にて押圧され、なだらかに
板厚変化した薄肉部を形成することとなる。最薄部金属
厚みは、開缶性の面より加工前の金属厚みの40%以
下、更に望ましくは30%以下とする必要がある。最薄
部板厚等は、加工条件を所要に設定することにより、材
料の加工性に応じた所望の値とすることが可能であり、
素地金属板およびラミネート皮膜の加工性に応じて加工
条件が選定される。この加工により形成された最薄部
が、開缶時の破断位置と確定されるが、開缶性の向上お
よび開缶後の開口部の形状を望ましいものとするため、
上方あるいは下方に押出された開口片部を蓋外面側に凸
状ボタンになるように加工を行うことが望ましい。な
お、押戻し加工時も、樹脂皮膜がガラス転移点以上冷結
晶化温度以下の温度範囲となるように加工されることが
望ましい。
【0020】さらに、本発明においては、切断案内溝を
形成させたのちに、その後の一連の製蓋工程あるいは製
缶工程中において少なくとも切断案内溝周辺部の樹脂皮
膜温度を樹脂皮膜の冷結晶化開始温度以上融点以下とす
る加熱熱処理を行う。熱処理を行う理由について述べ
る。上述したように、押圧加工に対してラミネート金属
板の樹脂皮膜が追随するためには、低結晶化度でかつ高
い伸び性即ち結晶化度10%以下かつ伸び200%以上
の皮膜特性が必要とされる。一方、開缶時のフェザー性
を良好とするためには、皮膜特性を結晶化度20%以上
かつ伸び100%以下とする必要がある。そこで、本発
明では先ず、押圧加工における加工性を確保するため
に、結晶化度10%以下で、伸びが200%以上あるポ
リエステル樹脂皮膜を有するラミネート金属板を用い切
断案内溝を形成した後に、樹脂皮膜の結晶化度を20%
以上かつ伸びを100%以下とするために熱処理を行
う。
【0021】熱処理による皮膜温度としては、効率的に
皮膜を結晶化させるために、樹脂皮膜の冷結晶化開始温
度を下限とし、樹脂皮膜の溶融流動による外観不良や樹
脂皮膜の熱劣化を防ぐことから、融点を上限とした。加
工時の皮膜温度及び熱処理の条件は、使用する熱可塑性
樹脂によってガラス転移点Tg、冷結晶化温度、冷結晶
化開始温度及び融点が異なるため、使用する熱可塑性樹
脂毎に選定しなければならない。これらは、示差走査熱
量計(DSC)にて、昇温速度10℃/分で、熱可塑性
樹脂皮膜について昇温測定を行い求める。ガラス転移点
Tgはガラス状態からゴム状態へ変化する変曲点、冷結
晶化温度は冷結晶化のピーク温度、冷結晶化開始温度
は、冷結晶化のピークの立ち上がり温度、融点は結晶融
解のピーク温度である。
【0022】また、皮膜の加熱方法としては、特に限定
しないが、一例としては、加熱炉中での加熱、熱風吹き
付けによる加熱、バーナーの直下火加熱、赤外線加熱、
誘導加熱による基板の金属板からの加熱、加熱された固
体接触させる方法等が挙げられる。また、特に製蓋工程
の途中での熱処理の場合には、その後の樹脂皮膜の加工
性を考慮すると、切断案内溝周辺部のみを加熱する事が
望ましい。これらの一連の加工工程において、前記特性
を有する樹脂皮膜は素地と共に均一に伸ばされ、全く加
工欠陥が発生しないため、加工後の補修塗装の必要はな
く、良好な耐食性を保障することができる。また、本発
明の方法によれば、互いに凸の潤らかな曲面を有する肩
半径部分による押出しあるいは押戻し等のプレス加工を
基本とした加工であるため、尖鋭刃の押圧方式に見られ
る工具寿命の問題は皆無であり、優れた生産性が保障さ
れる。さらに、切断案内溝を成形した後、熱処理を行う
ことにより、フェザー性の優れた易開缶蓋の製造が可能
となる。以下、本発明の実施例を示す。
【0023】
【実施例】
実施例1 板厚0.150mm、硬度54(HR30-T )の薄鋼板の
表面に、クロム酸を主体とする処理浴中にて電解後処理
を行い、金属クロム110mg/m2 およびその上層に
水和酸化クロム15mg/m2 (Crとして)を有する
クロメート皮膜を形成させた。水洗・乾燥後、この鋼板
を加熱し、異なった融点を有する2層構造ポリエステル
樹脂で、上層が厚み37μで下層が厚み3μであり、下
層樹脂は上層樹脂より低融点で全厚み40μの樹脂フィ
ルムを該鋼板の両面に積層した。積層された皮膜の結晶
化度は4%であった。また、積層後に剥離して測定した
皮膜の伸びは300%であった。さらに、樹脂皮膜の結
晶融解熱量は28Joul/g、冷結晶温度は130
℃、冷結晶化開始温度は113℃、ガラス転移点は72
℃、融点は230℃であった。
【0024】この両面にポリエステル樹脂皮膜を有する
鋼板を、図1に示すような易開缶蓋を作成するに当た
り、図2に示すように、開口片の形状寸法と対応し、肩
半径が0.5mmである上下金型A5,6をもって蓋本
体の要所をプレスによって押圧加工することにより、開
口片2に相当する部分を上方に押出し成形した。なお、
加工は皮膜温度が100℃となるように金型及び素材を
加熱して行った。この際、開口片2と蓋本体1とを結ぶ
連片7は、押圧によりなだらかな板厚変化を有する薄肉
部を形成するように加工した。次いで図3に示すよう
に、開口片2の周縁部に相当する部分に凸部13を有す
る下金型B11上へ、蓋本体1を載せ、図4に示すよう
に開口片2が蓋外面に凸状なるボタンを形成するように
皮膜温度100℃の温間加工条件で押し戻し加工を行っ
た。このようにして成形加工された易開缶蓋は、加熱炉
において、樹脂皮膜温度150℃で2分間熱処理され
た。
【0025】本実施例における最薄部の鋼板厚みは30
μになるように調整した。樹脂皮膜も鋼板同様に形成さ
れ、最薄部表面に残留した膜厚は両面とも約8μであっ
た。熱処理後の樹脂皮膜の結晶化度は28%、伸びは7
0%であった。この熱処理後の易開缶蓋は、開缶性の評
価と、缶内外面の樹脂皮膜の破壊程度を調べる通電試験
に供された。開缶性は良好であり、樹脂皮膜の通電値は
内面側0.2mA、外面側0.4mAで実用的に十分満
足出来るものであった。又、破断された切断案内溝の切
り口周辺には肉眼的に目立ったフェザーは認められなか
った。
【0026】実施例2 板厚0.130mm、硬度54(HR30-T )の薄鋼板の
表面に、付着量2.8g/m2 の電気錫めっきを施し
た。錫を加熱・溶融し、鏡面光沢を有する表面とした
後、クロム酸を主体とする処理浴中にて電解後処理を行
い、金属クロム12mg/m2 およびその上層に水和酸
化クロム12mg/m2 (Crとして)を有するクロメ
ート皮膜を形成させた。水洗・乾燥後、この鋼板を加熱
し、全厚み15μのポリエステル樹脂フィルムを該鋼板
の両面に積層した。積層された皮膜の結晶化度は6%で
あった。また、積層後に剥離して測定した皮膜の伸びは
220%であった。さらに、樹脂皮膜の結晶融解熱量は
13Joul/g、冷結晶温度は110℃、冷結晶化開
始温度は93℃、ガラス転移点は65℃、融点は220
℃であった。
【0027】この両面に樹脂皮膜を有する鋼板を図1に
示すような易開缶蓋を作成するに当たり、図2に示すよ
うに、開口片の形状寸法と対応し、肩半径が0.07m
mである上下金型A5,6を用いて、実施例1と同様に
蓋本体の要所をプレスによって押圧加工することによ
り、開口片2に相当する部分を上方に押出し成形した。
なお、加工は皮膜温度が85℃となるように金型及び素
材を加熱して行った。次いで図3に示すように、開口片
2の周縁部に相当する部分に凸部13を有する下金型B
11上へ、蓋本体1を載せ、図4に示すように開口片2
が蓋外面に凸状なるボタンを形成するように皮膜温度8
5℃の温間加工条件で押し戻し加工を行った。
【0028】本実施例では、最薄肉部の鋼板厚みは28
μになるように調整した。樹脂皮膜も鋼板同様に成形さ
れ、最薄肉部表面に残留した膜厚は約4μであった。上
記製蓋加工で作られた易開缶性蓋は、缶胴に巻締められ
た後に、赤外線加熱により、皮膜温度105℃で20秒
間熱処理された。熱処理後の樹脂皮膜の結晶化度は22
%、伸びは91%であった。開缶性は問題なく良好であ
り、樹脂皮膜の通電値は内面側0.3mA、外面側0.
2mAで実用的に十分満足出来るものであった。又、破
断された切断案内溝の切り口周辺には肉眼的に目立った
フェザーは認められなかった。
【0029】実施例3 板厚0.200mm、硬度49(HR30-T )の薄鋼板の
表面に、0.05g/m2 のNiをめっきし、さらに
1.0g/m2 のSnめっきを施し、次いでクロム酸を
主体とする処理浴中にて電解後処理を行い、金属クロム
13mg/m2 およびその上層に水和酸化クロム8mg
/m2 (Crとして)を有するクロメート皮膜を形成さ
せた。水洗・乾燥後、この鋼板を加熱し、厚み87μm
のポリエステル樹脂フィルムを、熱硬化性ポリエステル
接着剤を介して該鋼板の両面に積層した。樹脂皮膜の全
厚みは90μであった。積層された皮膜の結晶化度は8
%、結晶融解熱量は31Joul/gであった。また、
積層後に剥離して測定した皮膜の伸びは330%で、冷
結晶化温度は125℃で、冷結晶化開始温度は101℃
で、融点は225℃であった。
【0030】この両面に樹脂皮膜を有する鋼板を、肩半
径が0.9mmである上下金型A5,6を用いて、図2
に示す押圧加工することにより、開口片2に相当する部
分が蓋外面に凸状となるように上方に押出し成形した。
この際、開口片2の周縁部と蓋本体1と連片7は、押圧
によりなだらかな板厚変化を有する薄肉部を形成するよ
うに加工した。薄肉の切断案内線4が形成される。この
後、切断案内線の近傍は、赤外線によって、樹脂皮膜温
度200℃で10秒間熱処理された。
【0031】なお、本実施例では、最薄肉部の鋼板厚み
は55μになるように調整した。樹脂皮膜も鋼板同様に
成形され、最薄肉部表面に残留した膜厚は両面とも約1
6μであった。熱処理後の樹脂皮膜の結晶化度は29
%、伸びは52%であった。開缶性は良好であり、樹脂
皮膜の通電値は内面側0.1mA、外面側0.1mAで
実用的に十分満足出来るものであった。又、破断された
切断案内溝の切り口周辺には肉眼的に目立ったフェザー
は認められなかった。
【0032】実施例4 板厚0.100mm、硬度59(HR30-T )の薄鋼板の
表面に、クロム酸を主体とする処理浴中にて電解後処理
を行い、金属クロム110mg/m2 およびその上層に
水和酸化クロム15mg/m2 (Crとして)を有する
クロメート皮膜を形成させた。水洗・乾燥後、この鋼板
を加熱し、異なった融点を有する2層構造ポリエステル
樹脂で、上層が厚み22μで下層が厚み3μであり、下
層樹脂は上層樹脂より低融点で全厚み25μの樹脂フィ
ルムを該鋼板の両面に積層した。積層された皮膜の結晶
化度は8%であった。また、積層後に剥離して測定した
皮膜の伸びは240%であった。さらに、樹脂皮膜の結
晶融解熱量は29Joul/g、冷結晶温度は132
℃、冷結晶化開始温度は115℃、ガラス転移点は71
℃、融点は231℃であった。
【0033】この両面にポリエステル樹脂皮膜を有する
鋼板を、図1に示すような易開缶蓋を作成するに当た
り、図2に示すように、開口片の現状寸法と対応し、肩
半径が0.3mmである上下金型A5,6をもって蓋本
体の所要をプレスによって押圧加工することにより、開
口片2に相当する部分を上方に押出し成形した。なお、
加工は皮膜温度が115℃となるように金型及び素材を
加熱して行った。この際、開口片2と蓋本体1とを結ぶ
連片7は、押圧によりなだらかな板厚変化を有する薄肉
部を形成するように加工した。次いで図3に示すよう
に、開口片2の周縁部に相当する部分に凸部13を有す
る下金型B11上へ、蓋本体1を載せ、図4に示すよう
に開口片2が蓋外面に凸状なるボタンを形成するように
皮膜温度115℃の温間加工条件で押し戻し加工を行っ
た。このようにして成形加工された易開缶蓋は、加熱炉
において、樹脂皮膜温度220℃で30秒間熱処理され
た。
【0034】本実施例における最薄部の鋼板厚みは35
μmになるように調整した。樹脂皮膜も鋼板同様に成形
され、最薄肉部表面に残留した膜厚は両面とも約9μm
であった。熱処理後の樹脂皮膜の結晶化度は31%、伸
びは35%であった。開缶性は良好であり、樹脂皮膜の
通電値は内面側0.2mA、外面側0.3mAで実用的
に十分満足出来るものであった。又、破断された切断案
内溝の切り口周辺には肉眼的に目立ったフェザーは認め
られなかった。
【0035】実施例5 実施例1と同一の樹脂被覆鋼板を実施例1と同一金型を
用い、樹脂皮膜温度65℃なる温間条件で同様の加工を
行い、その後、実施例1と同一の熱処理を行った。本比
較例では、最薄肉部の鋼板厚みは30μになるように調
整した。樹脂皮膜も鋼板同様に成形され、最薄肉部表面
に残留した膜厚は約8μであった。熱処理後の樹脂皮膜
の結晶化度は28%、伸びは70%であった。樹脂皮膜
の通電値は内面側0.6mA、外面側0.7mAで実用
的に満足出来るものであった。又、破断された切断案内
溝の切り口周辺には肉眼的に目立ったフェザーは認めら
れなかった。
【0036】実施例6 実施例1と同一の樹脂被覆鋼板を実施例1と同一金型を
用い、樹脂皮膜温度135℃なる温間条件で同様の加工
を行い、その後、実施例1と同一の熱処理を行った。本
比較例では、最薄肉部の鋼板厚みは30μになるように
調整した。樹脂皮膜も鋼板同様に成形され、最薄肉部表
面では樹脂皮膜の破断が見られた。熱処理後の樹脂皮膜
の結晶化度は26%、伸びは60%であった。樹脂皮膜
の通電値は内面側0.8mA、外面側0.9mAで実用
的に満足出来るものであった。又、破断された切断案内
溝の切り口周辺には肉眼的に目立ったフェザーは認めら
れなかった。
【0037】比較例1 実施例1と同一のめっき鋼板上に、厚み8μmのポリエ
ステル樹脂フィルムを該鋼板の両面に積層した。積層さ
れた皮膜の結晶化度は6%であった。さらに、積層後に
剥離して測定した皮膜の伸びは220%、樹脂皮膜の結
晶融解熱量は13Joul/g、冷結晶温度は110
℃、冷結晶化開始温度は93℃、ガラス転移点は65
℃、融点は220℃であった。この両面に樹脂皮膜を有
する鋼板を、実施例1と同一金型を用い、実施例2と同
一の加工、熱処理を行った。本実施例では、最薄肉部の
鋼板厚みは48μになるように調整した。熱処理後の樹
脂皮膜の結晶化度は22%、伸びは91%であった。問
題なく開缶された、樹脂皮膜の通電値は内面側103m
A、外面側113mAで非常に大きな値を示し、切断案
内部の樹脂皮膜に多くの欠陥発生が認められ、実用的に
使用できるものでなかった。
【0038】比較例2 実施例1と同一のめっき鋼板上に、異なった融点を有す
る2層構造ポリエステル樹脂で、上層が厚み37μ、下
層が厚み3μで、下層樹脂は上層樹脂より低融点なる全
厚み40μの樹脂フィルムを該鋼板の両面に積層した。
積層された皮膜の結晶化度は13%であった。また、積
層後に剥離して測定した皮膜の伸びは210%、冷結晶
温度は130℃、冷結晶化開始温度は110℃、融点は
230℃、結晶融解熱量は28Joul/gであった。
この両面に樹脂皮膜を有する鋼板を、実施例1と同一金
型を用い、実施例1と同様の温間加工、熱処理を行っ
た。本比較例では、最薄肉部の鋼板厚みは48μになる
ように調整した。熱処理後の樹脂皮膜の結晶化度は26
%、伸びは60%であった。問題なく開缶された、樹脂
皮膜の通電値は内面側105mA、外面側110mAで
非常に大きな値を示し、切断案内部の樹脂皮膜に多くの
欠陥発生が認められ、実用的に使用できるものでなかっ
た。
【0039】比較例3 実施例1と同一のめっき鋼板上に、異なった融点を有す
る2層構造ポリエステル樹脂で、上層が厚み37μ、下
層が厚み3μで、下層樹脂は上層樹脂より低融点なる全
厚み40μの樹脂フィルムを該鋼板の両面に積層した。
積層された皮膜の結晶化度は9%であった。また、積層
後に剥離して測定した皮膜の伸びは180%、冷結晶温
度は130℃、冷結晶化開始温度は110℃、融点は2
30℃、結晶融解熱量は28Joul/gであった。こ
の両面に樹脂皮膜を有する鋼板を、実施例1と同一金型
を用い、実施例1と同様の温間加工、熱処理を行った。
本比較例では、最薄肉部の鋼板厚みは30μになるよう
に調整した。熱処理後の樹脂皮膜の結晶化度は36%、
伸びは50%であった。問題なく開缶された、樹脂皮膜
の通電値は内面側94mA、外面側87mAで非常に大
きな値を示し、切断案内部の樹脂皮膜に多くの欠陥発生
が認められ、実用的に使用できるものでなかった。
【0040】比較例4 実施例1と同一のめっき鋼板上に、全厚み8μの樹脂フ
ィルムを該鋼板の両面に積層した。積層された皮膜の結
晶化度は4%であった。また、積層後に剥離して測定し
た皮膜の伸びは220%であった。さらに、樹脂皮膜の
結晶融解熱量は8Joul/g、冷結晶温度は110
℃、冷結晶化開始温度は93℃、ガラス転移点は65
℃、融点は220℃であった。この両面に樹脂皮膜を有
する鋼板を、実施例1と同一金型を用い、実施例1と同
一の温間加工を行い、その後、実施例1と同一の熱処理
を行った。本比較例では、最薄肉部の鋼板厚みは30μ
になるように調整した。最薄肉部表面では樹脂皮膜の一
部に破断が見られた。熱処理後の樹脂皮膜の結晶化度は
24%、伸びは72%であった。樹脂皮膜の通電値は内
面側45.6mA、外面側47.4mAで大きな値を示
し、切断案内部の樹脂皮膜に多くの欠陥発生が認めら
れ、実用的に使用できるものでなかった。
【0041】比較例5 実施例1と同一の樹脂被覆鋼板を肩半径が0.03mm
である上下金型A5,6を用いて、実施例1と同一の温
間加工を行い、その後、実施例1と同一の熱処理を行っ
た。本比較例では、最薄肉部の鋼板厚みは30μになる
ように調整した。熱処理後の樹脂皮膜の結晶化度は26
%、伸びは60%であった。樹脂皮膜の通電値は内面側
50.6mA、外面側68.4mAで非常に大きな値を
示し、切断案内部の樹脂皮膜に多くの欠陥発生が認めら
れ、実用的に使用できるものでなかった。
【0042】比較例6 実施例1と同一の樹脂被覆鋼板を肩半径が1.2mmで
ある上下金型A5,6を用いて、実施例1と同一の温間
加工を行い、その後、実施例1と同一の熱処理を行っ
た。本比較例では、最薄肉部の鋼板厚みは30μになる
ように調整した。最薄肉部表面に残留した膜厚は約8μ
であった。熱処理後の樹脂皮膜の結晶化度は28%、伸
びは70%であった。樹脂皮膜の通電値は内面側26.
8mA、外面側22.3mAで大きな値を示し、切断案
内部の樹脂皮膜に多くの欠陥発生が認められ、実用的に
使用できるものでなかった。
【0043】比較例7 実施例1と同一の樹脂被覆鋼板を実施例1と同一の金型
を用い、同一の温間条件で同様の加工を行い、その後、
108℃で2min熱処理を行った。本比較例では、最
薄肉部の鋼板厚みは30μになるように調整した。樹脂
皮膜も鋼板同様に成形され、最薄肉部表面に残留した膜
厚は約8μであった。熱処理後の樹脂皮膜の結晶化度は
3%、伸びは310%であった。樹脂皮膜の通電値は内
面側0.2mA、外面側0.4mAで開缶性は良好であ
ったが、開口時に破断された切断案内溝の切り口周辺に
は膜残りが激しく、外観的な不快感を与え、実用性に問
題が残った。
【0044】比較例8 実施例1と同一の樹脂被覆鋼板を実施例1と同一金型を
用い、実施例1と同一温間条件で同一加工を行い、熱風
加熱により、皮膜温度240℃となるように10秒間熱
処理を行った。本比較例では、最薄肉部の鋼板厚みは3
0μになるように調整した。樹脂皮膜も鋼板同様に成形
され、最薄肉部表面に残留した膜厚は約8μであった。
熱処理後の樹脂皮膜の結晶化度は35%、伸びは50%
であった。熱風により加熱された皮膜部分が黄色を帯
び、実用性に問題が残った。
【0045】比較例9 実施例1と同一の樹脂被覆鋼板を実施例1と同一金型を
用い、同一の温間条件で同様の加工を行い、その後同一
の熱処理を行った。本比較例では、最薄肉部の鋼板厚み
は70μになるように調整した。指で開缶することがで
きず、実用的に使用できるものでなかった。
【0046】
【発明の効果】以上述べたごとく、本発明による押しボ
タン型易開缶性蓋の製造方法は、樹脂フィルムを鋼板ラ
ミネートして得られる素材を使用して、尖鋭刃を使用し
ない押圧加工を温間で行うことによる薄肉部形成法によ
り切断案内溝を形成する方法を採用することによって、
製造工程において、一切塗装を行うこと無くして、従来
技術の大きな問題であった加工用工具寿命の問題、耐食
性面での不安等を全く皆無にすることが出来る。さら
に、切断案内溝の成形加工後に熱処理を行うことにより
フェザー性の良好な易開缶性蓋を製造することが可能と
なる。スチール製易開缶蓋が実用化されれば、″モノメ
タル缶″化が可能になることにより、近年の地球環境問
題に対応するリサイクルに適した商品を市場に提供する
ことが可能であることはもとより、鋼板そのものは経済
性に優れた存在であり、缶胴と缶蓋共に鋼板製とするこ
とにより、経済性により優れ、資源としての再利用を行
いやすい商品となることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により形成された押しボタン型易開缶性
蓋の図、
【図2】本発明の実施要領を工程順に示す縦断面図、
【図3】本発明の実施要領を工程順に示す縦断面図、
【図4】本発明の実施要領を工程順に示す縦断面図、
【図5】従来の尖鋭刃の押圧方式による断面V字型の切
断案内溝を示す図である。
【符号の説明】
1 蓋本体 2 開口片 3 切断案内溝 4 切断案内線 5 上金型A 6 下金型A 7 連片 8 上金型R部 9 下金型R部 1 0 上金型B 1 1 下金型B 1 2 金型凹部 1 3 金型凸部

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 缶蓋の開口片縁を構成する切断案内溝形
    成用の肩半径が0.05〜1.0mmである上下金型
    で、厚さ10〜100μm、伸び200%以上、結晶化
    度10%以下、結晶融解熱10Joul/g以上の結晶
    性飽和ポリエステル系樹脂皮膜を両面に有する鋼板を押
    圧加工成形し、加工最薄部の鋼板厚みを加工前鋼板厚み
    の40%以下とし、切断案内溝を形成することを特徴と
    する熱可塑性樹脂ラミネート鋼板製押しボタン型易開缶
    性蓋の製造方法。
  2. 【請求項2】 缶蓋の開口片縁を構成する切断案内溝形
    成用の肩半径が0.05〜1.0mmである上下金型
    で、厚さ10〜100μm、伸び200%以上、結晶化
    度10%以下、結晶融解熱10Joul/g以上の結晶
    性飽和ポリエステル系樹脂皮膜を両面に有する鋼板を押
    圧加工成形し、加工最薄部の鋼板厚みを加工前鋼板厚み
    の40%以下とし、さらに押し戻し加工を行って切断案
    内溝を形成することを特徴とする熱可塑性樹脂ラミネー
    ト鋼板製押しボタン型易開缶性蓋の製造方法。
  3. 【請求項3】 押圧加工成形を前記結晶性飽和ポリエス
    テル系樹脂皮膜のガラス転移点温度〜冷結晶化温度で行
    うことと、少なくとも切断案内溝周辺部の樹脂皮膜を該
    樹脂皮膜の冷結晶化開始温度〜融点の温度に加熱熱処理
    することの、少なくとも一方を行うことを特徴とする請
    求項1記載の熱可塑性樹脂ラミネート鋼板押しボタン型
    易開缶性蓋の製造方法。
  4. 【請求項4】 押圧加工成形と押し戻し加工の片方また
    は両方を前記結晶性飽和ポリエステル系樹脂皮膜のガラ
    ス転移点温度〜冷結晶化温度で行うことと、少なくとも
    切断案内溝周辺部の樹脂皮膜を該樹脂皮膜の冷結晶化開
    始温度〜融点の温度に加熱熱処理することの、少なくと
    も一方を行うことを特徴とする請求項2記載の熱可塑性
    樹脂ラミネート鋼板製押しボタン型易開缶性蓋の製造方
    法。
JP7033247A 1995-02-22 1995-02-22 熱可塑性樹脂ラミネート鋼板製押しボタン型易開缶性蓋の製造方法 Withdrawn JPH08224628A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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